Battle of Princess

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1人目

さあ!始まりました!
おとぎ話のお姫様達が真のプリンセスの栄光をかけて競い合うBattle of Princess!!

司会は私!
風変わりな白うさぎを追いかけて不思議の国に迷い込んだ美少女ことアリス!

そして……!
審査員にはおとぎ話の主人公だけどプリンセスという括りではない皆さん!あとは王子様とか、ヴィランの皆さんなど沢山の方々に審査員をお願いしてあります!

審査員の皆さんの自己紹介は追々……。

ゴホンッ。

それでは。
そろそろ始めましょう。


true princessの栄光は誰の手に!【Battle of Princess】開幕です!!

2人目

「ひひひ、リンゴ……リンゴはいらんかね~? 美味しいよ~」

Battle of Princess会場では早速、黒マントで顔を覆ったリンゴ売りが声を上げていた。

「おい! 俺にもくれ!」
「こっちもだ!!」

「おいしいよぉ~。美味しいよぉ~」
「おい、そこのばあさん! リンゴを売る許可は取ったのか!?」

警備員が慌てて駆け寄ってくる。

「チッ、もう来たか……」

黒マント姿の老婆は舌打ちすると一目散に逃げていく。

「おい、そのリンゴは食べてはいかんぞ。あの婆さんは無許可で販売していたんだからな」

警備員の言葉に会場内がざわつく。
どうやらあの老婆は許可を取らずに勝手に商売をしていたようだ。

シャリッ……

静寂の中、小気味よい音が響く。
見れば赤髪の少女があの老婆から買ったリンゴを食べているではないか。
しかも一口食べただけで芯だけ残してしまっている。
少女はその残りカスをポイっと投げ捨てた。お行儀が悪い。
そう思った観客だったが、ふと違和感を覚える。

「あっ……」

捨てられたリンゴの芯が見る見る内に萎れていき、ついには枯れてしまったのだ。
それを見ていた他の出場者達の顔色がみるみると変わっていく。

「おい、それ毒リンゴじゃねえのか……」
「あんなもん丸かじりして大丈夫なのか?」

そんな言葉が次々と飛び交う中、少女は悠然とした足取りでその場を去っていく。
口笛まで吹いている余裕っぷりである。

「世の中、カラダに悪いものほど美味しく感じることもあるよねー」

なんとも恐ろしいことを言いながら。

「俺、食べなくて良かった~……」
「私も……」

結果的に、少女のおかげで毒リンゴを食べた観客は誰も居なかった。
偶然か、それとも……

3人目

「さあ!気を取り直していきますよ!」
司会のアリスが金のマイクを握って言った。
アリスはふわふわ金髪に青い目で、赤目の白いウサギのぬいぐるみを抱き締めたかわいらしい女の子だ。

「おいおい、あれが司会だって?」
「オレ、告ってみようかな」
「おっ、いいじゃんいっちゃえよ……」

「おだまりなさいっ!」

ざわついていた会場を甲高い声が貫いた。
会場が水を打ったように静まり返り、皆の目がただ1人の人物に集まる。

「あら、帽子屋さん」

アリスはいつの間にか隣に立っていたその人物を驚く様子もなく見上げた。

その人物——赤を基調としたファッションで長身を固めている。特に、もとはシルクハットだろうか、赤く染め上げごてごてと派手に飾り立てた帽子とも言えないような帽子が目を引く。

「あなた方は一体何のためにここに集まったと思っているのですか!」

その声はマイクも使わないのに鼓膜を破らんばかりに鋭い。
つい先ほどまで騒いでいた人々は嵐が過ぎるのを待つネズミのように耳を手で守り首をすくめた。

「まあまあ、落ち着いてくださいな。」

そんな中アリスは構わず帽子屋に言う。

「でも総合司会だというのに遅刻してくるとはいただけませんよ」

穏やかな口調だが、帽子屋はピエロのような白塗りの顔にうっすらと恐怖の表情を浮かべて首をすくめた。

「さあ、気を取り直していきますよ!」

アリスは気にせずマイクを握り直して群衆を見回す。

「1人目はぁ~?」

ドコドコドコドコ……

一拍遅れて始まったドラムロールが会場の空気を震わして温める。

ぱぁ~ん!

派手な音とともに、舞台を覆っていたキラキラ光る幕が取り払われる。
スチームの中から、1つのスレンダーな人影が歩み出て来た。

4人目

「カラーアニメの切り込み隊長にして、童話を知ってると彼女を知ってるが≒なお姫様の中のお姫様!知っている方も多いでしょうが、敢えて名前を高らかに叫びましょう!『白雪姫』!実はリンゴの毒ではなくリンゴを喉に詰まらせたという唖然呆然の死因持ちの白雪姫でございます!」
「……煽ってんのかなー?」

会場で先程、まさにその毒リンゴを平らげた赤髪の少女……白雪姫は、アリスの喧嘩腰な紹介にニッコリと……しかし静かな熱を込めた笑みを向ける。

「こ、これは私が書いたんじゃないんですよ!?ちょ、ちょっと床屋さん!この原稿どうなってるんですか!?」

想定外の原稿に今更ながら気づいたアリスは、舞台裏にいるはずの青年……ロバの耳の王様の髪を切った床屋に悲痛な叫び声を向ける。

「え?どれどれ……
『これ知って凄く言いふらしたくなったけど、俺が言ったら最悪ミンチだから紙に書きなぐったんだよね。原稿取り違えちゃったみたい、ごめんwww』!?
笑ってる場合じゃないでしょ、放送事故だよコレ!
『多分全部取り違えてる』って、更に爆弾を透過するなあ!嘘でしょ、私ミンチにされるの?だったらハートの女王に首チョンパされてた方がマシだったよ!」

悲惨な事態になるのが確定し、悲鳴を上げてその場に崩れ落ちるアリス。
その様子を舞台裏からカンペを出しつつ見ていた、原稿担当兼出演者たちのヘアセットを担当した『王様の耳はロバの耳』の床屋は、その状況に笑いをこらえていた。

「……ちょっとお時間、よろしいか?」
「えー、今取り込み中……って、はあ!?」

しかし、彼もまたおとぎ話の住人である。
何の因果か、そこにいたのは7人の小人……そう、白雪姫の育ての親にして白雪姫ファンの間では伝説となっている、最古参の厄介ファンだったのだ。

「原稿を取り違えた……」
「そう言っていたが……」
「本当か?」
「……いや、違うな」
「その反応……」
「明らかに意図してだろう?」
「ならば……」

明らかに日常で放ってはいけない圧を放ち、床屋へ詰め寄る。

「「「「「「「最悪(ミンチ)にしてやろう」」」」」」」
「……終わった」



ーーー



舞台袖から断末魔が響く。

「あーあ、やっぱわざとだったかあ……おとぎ話の世界でそんなことしたらどうなるかなんて、一目瞭然でしょ……?」

因果応報というこの世界の基本を忘れ去った哀れな挽き肉を軽く侮蔑してから、アリスは視界の本分に戻る。

「さて、気を取り直しまして……一人目の挑戦者は白雪姫さんです!何か意気込みはありますか?」
「うーん……小人さんたちが頑張ってくれたし、そのお礼に優勝する、かな?」
「アッハイ……素晴らしい意気込みですね!」

コメントに困る回答を受け、アリスは曖昧な返事で乗り切る。

「少々アクシデントがありましたので、紹介がアドリブになりますが……まあそれは気にしないでいただけたら幸いです!では次のお方に参りましょう!二人目の方も、白雪姫さんに負けず劣らずのお姫様ですよ!」

次なるお姫様の登場を告げるドラムロールが、再び会場に響き出した。

5人目

その瞬間、当たりに閃光が飛び散る。
「え、ちょ、えぇ!?」
アリスは目を見開き、その閃光を見つめた。
閃光が消えた時――――あたりに、無数の『竹槍』が現れた。
「相変わらずですねっ……『かぐや姫』さん!」
「腕は落ちてないっぽいっすね、白雪姫!」
竹槍で作られた空間は半径30mほどの大きさで、どれも鋭利に削られている。
「な、なんと紹介が終わってないのに戦い始めました!現れたのは『かぐや姫』!竹から生まれた、月の姫です!」
かぐや姫と白雪姫はお互いににらみ合う。
その直後だった。白雪姫は、なんと宙に浮きだした!
「ほぉ……やるっすね!白雪姫!」
「あなたもね!かぐや姫!」
かぐや姫は腕を相手に向け、無数の竹槍を向かわせる!
そこに現れる一つの鏡。それは――――白雪姫の必殺技。
「なっ、なんと!出し惜しみはしません白雪姫!最強の必殺技・バッファローミラーです!」
竹槍は方向を変え、なんとかぐや姫の方へ向かった!

6人目

 白雪姫の鏡が無数の竹槍を跳ね返し、かぐや姫に向かって迫っていたが、
かぐや姫はまったく動じなかった。優雅な笑みを浮かべたまま、
彼女は竹槍の雨を軽やかに避ける。

 かぐや姫と白雪姫の激しい戦いが続く中、突然、観客席の一部で
異様な盛り上がりが起こっていた。そこには、かぐや姫の婿候補たちが集まっていたのだ。

「よっしゃー! かぐや姫様! その調子だー!」
「俺たちのかぐや姫を応援するぞー!」

 彼らは、突然立ち上がると、勢いよく手を振り始めた。
リズムに乗った動きで、光る棒を振り回し、まるでヲタ芸を披露するかのように
激しく踊り始める。観客たちはその様子に驚き、目を見開いていた。

「え……なんだあれ?」
「かぐや姫の応援団か?」

「推しは全力で応援だぜー!」
「かぐや姫、愛してるー!」

 彼らは次々と掛け声を上げ、複雑な手の動きや足踏みを駆使して、
華麗なヲタ芸を披露していた。光の棒が回転し、カラフルな光の渦が観客席に広がる。
さらに、彼らはフォーメーションを組み、揃った動きで踊り続ける。

「かぐや姫! かぐや姫!」
「よっしゃ行くぞー! ウー! ハー!」

 ヲタ芸のリズムに合わせて、声を合わせて応援する彼らの姿は、
まるで祭りのような熱狂ぶりだった。かぐや姫本人は戦いに集中していたが、
ふと婿候補たちの騒ぎに気づいた。

「……あいつら、何やってるすか……」

 かぐや姫は微妙な表情を浮かべながら呟いた。
その一方で、白雪姫は困惑の表情を浮かべ、少し呆れた様子でその様子を見つめていた。
周囲の観客たちは彼らのヲタ芸に感心したり、驚いたりしていたが、
戦いの熱気はますます高まっていく。

「かぐや姫の婿候補たちの応援は、果たして彼女に届くのかー!?」

 アリスは、困惑しつつもマイクで実況を続けた。

 かぐや姫の婿候補たちのヲタ芸は、終わることなく続き、
会場全体をますます盛り上げていくのだった。

「オイ! オイ! オイ! オイ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ……サン、ハイ! フーワ! フーワ!!」

 かぐや姫の婿候補たちがヲタ芸を披露していたその時、
7人の小人たちがその様子に気づいた。彼らは白雪姫を応援しており、
かぐや姫の婿候補たちの熱狂的な応援に対抗心を燃やし始める。

「なあ、あいつら、やたらうるさいな……」
「こっちの応援がかき消されてるじゃないか!」
「白雪姫がんばってるんだから、黙ってろよ!」

 7人の小人たちは拳を握りしめ、互いに頷き合うと、
かぐや姫の婿候補たちのいる観客席へと向かった。

「おい、お前ら! ちょっと静かにしてくれないか? 
こっちは白雪姫を応援してんだィ!」

 一人の小人が声を上げる。

「なんだと!? かぐや姫の応援を邪魔するつもりか!? 俺たちが黙るわけないだろ!」

 婿候補たちも負けじと反論する。

 その瞬間、場の空気がピリピリと緊張し始めた。どちらも一歩も引かない様子だ。
観客たちは息を呑んで見守る。

「じゃあ、こっちも力で黙らせてやるぜ!」
「上等だ、かかってこい!」

 次の瞬間、7人の小人とかぐや姫の婿候補たちが、観客席で壮絶な殴り合いを始めた。

「おらぁ! 小さいからって油断するなよ!」

 婿候補の一人が小人を殴ろうとするが、すばしっこい小人はすぐに身をかわし、
逆に拳を振り上げる。

「こっちも負けてられないんだよ!」

 小人はそのまま婿候補の足にタックルをかけ、倒れた婿候補に追い打ちをかけるように次々と攻撃を加えた。

「うおおお! 負けるかぁ!」

 別の婿候補は光る棒を振りかざし、小人たちに応戦するが、
7人がかりの反撃に次第に押されていく。観客席は大混乱だ。拳が飛び交い、
光の棒や帽子が宙を舞い、完全に乱闘状態になっている。

「なんてことだ……今度は7人の小人と、かぐや姫の婿候補たちが
観客席で殴り合いを始めてしまったー!」

 アリスは驚きの声を上げながら、会場全体を見渡した。

「応援合戦がいつの間にか戦争みたいになっちゃって……愛って人を狂わせる毒よねー」

 白雪姫は袖に潜ませていた毒リンゴをかじり、
かぐや姫も少し呆れたように彼らを見つめている。

 観客席の乱闘は止まる気配がなく、戦いはますます激しくなっていく。
会場全体がその騒ぎでさらにヒートアップしていく中、次に何が起こるのか、
誰もが目を離せない状況になっていた。