プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:21

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1人目

「Prologue」

【DD編】原文:AMIDANTさん

 新宿と赤坂での戦いを終えた彼等に告げられたのは、
流星旅団の本拠地である東京ミッドタウンの崩壊だった。
戦いの間に手薄になっていた隙を狙われ、メサイア教団の大司教No.2「炎の化身」
焔坂 百姫による襲撃を受けたのだ。中に居た2000人の旅団員は全滅。
唯一生き残った天宮兄弟が辛うじて撃退したが、後には焼けた屍の山が残るのみ。
この事実には、誰もが衝撃を受ける他無く、それはDDもまた同じだった。
しかしここで立ち止まる訳には行かないと一同は一念発起。
次なる戦い、ギリシャのミケーネ神との闘いに備えるのであった。

 一方で、アビィは偶然にも悪魔将軍の奇怪な動きをDDから聞き出す事になる。
悪魔将軍は、不可侵条約以前から完璧超人の動向に目を付けていたという。
不可侵条約破棄時の不透明な部分があった悪魔超人の行動に関わりがあるとして、
アビィは特異点にいるであろう悪魔将軍との接触を図るべく、
アビダインと共にCHの元へ。
同時に、特異点での戦いに介入する事を決めるのであった。

【ルパン三世編】原文:AMIDANTさん

 俺の名はルパン三世、世界を股に掛ける大泥棒さ。
盗みの美学において、俺の横に並び立つ者はいないぜ?
今回狙うお宝は、かのソロモン王が使ったと言われるソロモンの指輪。
これがとんだ曲者で、世界をひっくり返す力を秘めてやがる。
それも10個はあるってもんだから一筋縄じゃ行かなそうだ。
一先ずは東京タワーにあった一つ目の指輪を次元と一緒に頂戴したんだけどもよ、
そこでいきなりとっつぁんが現れてさぁ大変!
しかも東京の騒動には動きを見せなかった警察を総動員してるってもんだから
きな臭くなってきやがった。
さっすがの俺も準備不足だってもんだから、一度仕切り直す事にしたんだ。
この一件、何か裏がありそうだと読んでな?
だから偽もんの指輪を相手さんに持たせて、一先ずは様子見ってところだ。
さぁ鬼が出るか蛇が出るか、楽しくなってきた所だ。
そんじゃま、続きと行きますか!

【神霊アマツミカボシ編】原文:霧雨さん

 愛宕神社から帰還した天宮兄妹。
時すでに遅く、東京ミッドタウンはメサイア教団大司教「焔坂 百姫」により全壊。
2000人の仲間も灰燼と化してしまった。
絶望と失意に襲われる2人。焔坂はそんな2人を挑発し、抹殺しようと試みる。

 その時、神體を手にしたことで彩香の身に宿った神霊「アマツミカボシ」が覚醒。
焔坂と互角以上の戦いを繰り広げる。
鬼種との混血たる焔坂とて神霊を相手にしては苦戦する。
と、その時ミケーネ神の復活を察知したカール大帝の命令により焔坂は撤退。
しかし仲間を喪ったという精神的ダメージは大きく、天宮兄妹は泣いてしまった。
残る流星旅団残党はわずか5人。彼らはこの先生存できるのだろうか……?

【カール大帝襲来編】原文:霧雨さん

 シャルル遊撃隊の前に出現した、メサイア教団首魁「カール大帝」。
かつてシャルルマーニュが対峙した圧倒的な力を前に、4人は最初から必殺技を繰り出す。
しかし、ソロモンの指輪が宿す膨大な力を引き出したカール大帝には
傷一つつけることができなかった。
圧倒的優勢から一気に絶望的状況に叩き落されるシャルル遊撃隊。
しかし、ギリシャで発生したミケーネ神の復活を察知したのと、
江ノ島の『女神』に関する質問により何かを察知した大帝は撤退。事なきを得る。
難を逃れたシャルル遊撃隊だったが、このまま戦いを挑んでも全滅は逃れられない。
次なる目標として、メサイア教団よりも先にソロモンの指輪を回収する為に
再び動き出すのだった。

【罪木オルタ邂逅編】原文:霧雨さん

 大妖怪___八雲紫に連れられ、東京ミッドタウンに到着した希望ヶ峰学園爆破事件の
生き残りたる西園寺日寄子。

 その時、焔坂の東京ミッドタウン襲撃の憂き目に遭う。
奇跡的に難は逃れたものの、そこで正史における因縁の存在___
『超高校級の復讐者』罪木蜜柑・オルタナティヴと出会ってしまう。
ぴりついた空気の中、西園寺は彼女に何と声をかけるのだろうか……?

【ブロリー編】

 伝説の超サイヤ人と化したブロリーには超サイヤ人3の悟空でさえも通用しなかった。
クリリンの太陽拳によってブロリーの目を眩ませ、CROSS HEROESは一時退却に成功。
悟空は最終最後の手段「フュージョン」を使う事に決断。
2人の戦士が左右対称のポーズを取って融合する技だ。
これならばブロリーにも対抗出来るかもしれない。

 悟空とベジータがフュージョンのポーズをマスターするまで
何としても時間稼ぎをしなくては……
ルフィ、バッファローマン、フェリシア、ピッコロ……傷ついた身体を引きずりながら
ブロリーの前に立つ。
その必死の抵抗が実を結びついに最強の融合戦士「ゴジータ」が誕生した!
神々も驚く超パワーは倒れた仲間たちの心にも火を点け、悪魔超人としての全パワーを
開放したバッファローマン、ギアの力を重ねがけしたルフィと共に
ついに強敵ブロリーを撃破する事に成功、そしてクローン・ナッパと戦っていた
いろはとやちよもコネクトによる強化で力を合わせ、見事これを撃退したのだった……

【ミケーネ復活編】原文:ノヴァ野郎さん

 GUTSセレクトを中心にミスリルやスーパーロボットのパイロットなどで
構成された救助部隊(別名生身部隊)は民間人の救助と晴明が召喚した
鬼達の殲滅を完了し他のメンバーと合流しようとしていたところ、
突如として青山にて膨大なエネルギーが発生、それを調査すべく青山に向かうと
そこにはバードス島で倒したあしゅら男爵がゴーゴン大公と共に居たのだ。

 あしゅらは自身を生贄に捧げることによってかつて全ての平行世界を巻き込んだ大戦争、通称最終戦争(ラグナロク)を起こした元凶であるオリュンポスの神々、
ミケーネ帝国を復活させようとしていた。
CROSS HEROESはそれを阻止しようとするがあしゅらと手を組んでいた
スウォルツと晴明の妨害によりあしゅらの儀式は成功してしまい、
ギリシャのパワースポットにハーデスを始めとしたミケーネの神々が蘇ってしまった。
そして儀式の際にゴーゴンもろともギリシャに飛ばされたスウォルツと晴明は
ミケーネの実質的な首領であるハーデスと出会う。 
晴明はミケーネの力を利用してゲッターを駆逐しようと考えていたが、
オーマジオウを超える力を欲していたスウォルツがハーデスに対して
無礼な振る舞いをしてしまったことによりそれに巻き込まれる形で
門前払いを食らってしまった。

 その後ハーデス達ミケーネは今度こそ全ての平行世界を支配する為に
再び最終戦争(ラグナロク)を起こすことを決め、リ・ユニオン・スクエアを
その為の前線基地にするべくリ・ユニオン・スクエアの人類を滅ぼすことにした。
そうしてギリシャを中心に世界各地へ進軍を開始したミケーネの復活を察知した
天津飯と餃子がミケーネと交戦を開始するも
ミケーネの戦闘獣軍団の圧倒的な強さに押されてしまい、この事を伝えるべく
CROSS HEROESのいる港区へ向けて戦術的撤退をした。

2人目

「2つの戦場へ向かう戦士達」

「お前達、ここに集まってたか」
「ゲイツ殿にツクヨミ殿!トゥアハー・デ・ダナンに向かってたお二人がどうしてここに?」
「それがトゥアハー・デ・ダナンに向かってる途中であのアビィって人から連絡を受けてね、急いでここに来たのよ」
「そうでしたか……」
「ソウゴ殿のことは我々の方で既に伝えておきました」
「オラが特異点からこっちの世界に飛ばされたあとにそんなことになってたなんてな……」
するとそこへナースデッセイ号もやって来た。
「遅れてすいません!……ってあれ?あの戦艦(アビダイン)、あの時俺たちを助けてくれた……」
「やあ、また会ったね」
「……これでほぼ全員集まったか……」
「とりあえずそれぞれの情報を交換しましょう」
こうして一同はそれぞれここまでにあったことや知った情報などを交換することにした。



「とりあえず現時点で最優先でなんとかしないといけないのは特異点にいるソウゴの救出とギリシャに出現したミケーネの対処か」
「けどよ、どうやってその特異点とやらに行くんだ?」
「あぁそこが問題だ、あの時と違ってゼンカイジャーが居ない今、俺達が特異点に行く方法は……」
「あるよ」
「なに!?」
「アビダインは世界を超えて移動することができる、それを使えば大人数をその特異点に送ることだってできるさ」
「よし、では早速2つのグループに別れましょう。一つはアビダインの力で特異点に行き、既に特異点にいる皆さんと合流してクォーツァーからソウゴさんを救出するグループ、もう一つはこの世界に残りトゥアハー・デ・ダナンと合流してギリシャへ向かい蘇ったミケーネの対処をするグループです」
「メンバーの振り分けはどうします?」
「そうですね、特異点に行くグループはゲイツさんとツクヨミさん、そしてアビィさんを中心に、ギリシャへ行くグループはマジンガーなどの巨大戦力を中心にしつつそれぞれ行きたい方を選んで貰いましょう」



数十分後
「ではまとめると、特異点に行くグループはゲイツさん、ツクヨミさん、いろはさん、黒江さん、やちよさん、さなさん、ルフィさん、バーサル騎士ガンダムさんとアルガス騎士団の皆さん、アレクさんとローラさん、アビィさん、カナディマンさん、バッファローマンさん、シャルル遊撃隊の皆さんと若森さん、そして悟空さん、ベジータさん、ピッコロさんです。
次にギリシャへ行くグループはマジンガーチームの皆さん、竜馬さんのゲッターロボ、ミスリルの皆さん、ハルキさん、月美さん、ペルさん、フェリシアさん、鶴乃さん、DDの皆さんとウーロンさん、流星旅団の皆さん、燕青さん、クリリンさん、そして我々GUTSセレクトです」
「松田さんとルクソードさんは?」
「私は特異点に行くつもりだが……少々用事があるゆえ、少し遅れてから向かうことになる」
「僕は港区に残ります。まだやらないといないことがありますし、何よりも一般人である僕じゃどちらもキツいので……」
「あ、特異点の方には私も同行させてもらうわよ。ちょっと調査したいことがあるからね」
(……さっきから当たり前のようにいるがこのおばさん誰なんだよ)
(……今誰かにおばさん呼ばわりされたような……まぁ気にしないでおきましょう)
「とりあえずこれでグループが決まったんだ。早速それぞれの行くべき場所へ行くとしよう」
「あぁ!」
(待ってろよソウゴ、お前は必ず俺達が助けてやる…!)
特異点へ行く組はアビダインに乗り込み特異点へワープした。
「よし、我々もトゥアハー・デ・ダナンと合流してギリシャへ…」
「待て!なにかこっちに飛んできてるぞ!」
「なに!?」
「っ!あれって…!」
一同のところへ飛んできたのはギリシャでミケーネと戦っていた天津飯と餃子であった。

3人目

「特異点へ向かう者たちの意気込み」

「天津飯! それに餃子も……」

「孫……この辺り一帯の荒れ具合……こっちも随分と派手にやったようだな」
「まあな……それより、どうしたんだ?」

 天津飯はミケーネ帝国の戦闘獣軍団と戦い、
餃子と共にここまで撤退して来た事を話した。

「そうか……よく無事でここまで戻って来れたな」
「ミケーネ帝国……あのDr.ヘルの機械獣は奴らの技術を模倣して造られたもの……
つまりオリジナルだと言う事か。
道理で俺の新気功砲を何発喰らってもケロリとしていたわけだぜ」

 マジンガーZの超合金Zを上回る耐久力と戦闘力、それが何百、何千と言う兵力で
襲いかかってくるのでは流石の天津飯でも苦戦は免れなかった。
それが現在も世界各地に分散し、各国の主要都市で暴れまわっているというのだから
厄介極まりない状況だった。

「ミケーネめ……こうしちゃいられない。すぐにマジンガーZで出撃しないと……」
「俺のゲッター共々、ミスリルでのオーバーホールは万全だ。
鬱憤晴らしに派手に暴れ回ってやろうぜ、甲児!」

 竜馬も気合は十分といった様子だ。

「悟飯の奴もあれから連絡が取れねえ……」
「悟飯がどうかしたのか?」

「ロンドンにボージャックが現れてな……悟飯は奴を食い止めるためにたった一人で
向かったのだ」
「そうだったのか……俺もミケーネ帝国と戦いつつ、悟飯の行方を探してみよう」
「俺も手伝うよ、天津飯」

 クリリンと天津飯は共に行動することを決めた。

「頼むな、クリリン」
「これくらいは役に立たねえとな。そっちの事は頼んだぜ、親友!」

 悟空とクリリンはお互いにグータッチし、お互いの健闘を祈った。

「特異点にスラッグの奴がいるのなら、ナメック星人として俺が引導を渡す……」

 悟空が特異点にてスラッグと交戦した事を聞かされていたピッコロは、
ナメック星人の名を穢す悪逆を振る舞うスラッグに対して沸々と怒りを滾らせていた。

「ターレス……カカロットと同じタイプの面をした下級戦士か。面白い。
ぶっ潰す甲斐があると言うもんだ」
「ひっでぇな、ベジータ……好きで似たような顔してんじゃねえぞ。
まあ、また神精樹の実で強くなられても困るしな。
特異点で馬鹿でっけぇ樹を育ててやがった時はぶったまげちまったかんなぁ。
承太郎やテリーマンたちが上手くやってくれてるといいけんどよ……」

 特異点の状況も、悟空が向かった時とは劇的な変化を遂げている。
どんな危険が待ち受けていても不思議ではないのだ。

「竜王が聖杯を手に入れ、自らが支配する世界を創造するまでに至っているとは。
俺は竜王にもう一度勝てるだろうか……」
「アレク様、心配する事はありません。あなたはきっと此度も竜王に打ち勝つ事でしょう。それに今回は私も全力でお手伝い致します。あなたはもう、ひとりではないのですから」

「ローラ……ありがとう。そうだった。今の俺には貴女を始め、こんなにも多くの仲間が
いるのだった。あの時とは違う……」

 一度は討ち果たした竜王と再び剣を交える……聖杯の力によって、
その実力はかつてのものとは比べ物にならない程に高まっているだろう。
しかし、勇者アレクもまた、これまでの冒険でさらに強くなっているのだ。
肉体的にも、精神的にも……

「鶴乃、私達が戻ってくるまでこっちの事を頼める?」

 やちよ達は鶴乃にフェリシアと共にリ・ユニオン・スクエアの守りを任せることにした。

「任せておいて!」
「神浜の魔法少女たちにも事情は伝えておいたわ。みふゆや十六夜なら
きっと力になってくれるはずよ」
「オレも特異点とか言うところに行きてーなー」

 フェリシアが駄々を捏ねるが、やちよは厳しい口調で叱る。

「遊びにいくんじゃないのよ、フェリシア」
「だってよぉ~」

「なるほど……天宮彩香と言う女の中に、神霊か……そいつは厄介だな。
霊的な力や魔術と言った類は流石に俺たちも専門外だ」

 ピッコロは月美とペルフェクタリアから、
彩香の中に憑依する神霊・アマツミカボシについての報告を受けていた。

「はい。なので、私やペルちゃんで彩香ちゃんの事を見守ろうと思います」
「ふん、お前たちも随分と逞しく成長したものだ。
俺の修行を受けた頃はまだまだ未熟さが抜けていなかったというのにな」

 ピッコロはフッと笑みを浮かべると、月美とペルの顔を見つめながら
かつて悟空と共に月美とペルフェクタリアに戦い方を教えていた時期の事を
思い返していた。

「こちらの世界の事は任せておけ」
「一丁前に言うようになったな、ペルフェクタリア。
少しは社交的になってきたんじゃないか?」
「む……」

 ペルフェクタリアに軽口を叩くピッコロだったが、彼女はどこか嬉しそうな表情を
していた。彼女なりに、少しずつではあるが成長している事がわかって
嬉しいのかもしれない。

「そうだろうか……」
「まあ、そんな事は良い。ミケーネ帝国とか言う連中も相当にブッ飛んだ連中だし、
メサイア教団も未だ健在だ。特異点にもクォーツァーを始めとして
化け物がうようよしていそうだからな。気を抜いてどうにかなる相手ではないだろう。
それを忘れるなよ」

「はい! ありがとうございます、ピッコロさん!」
「じゃあな……死ぬんじゃないぞ」

4人目

「シャルル遊撃隊、奮起す/レッド・エリミネーター」

「そうか、彩香の身体に神霊か……。」

 シャルルマーニュは、天宮彩香の身に宿る神霊アマツミカボシの心配をしていた。
 英霊である彼にとっても、神霊の存在は

「彩香。身体は大丈夫なのか?」
「うん、今は何とか。でも……ちょっと怖いかも。もしかしたらボクは、何かの拍子で暴走してしまいそうな気がして……怖いんだ。」

 強い神霊を宿すということ。それは己の弱さ、未熟さとの戦いである。
 彩香がもし心がくじけようものならば、暴走の果てに多くの仲間を傷つけてしまうかも。
 そうなってしまえば、きっと彼女の心は今度こそ耐え切れずに自滅する。

「彩香さん、先にこれを渡しておきますね。」

 フィオレは、彩香に小さな薬を渡す。

「霊障を抑える薬です。神霊にまで効くかどうかまでは分かりませんが、一時的な安定はできるかと思います。」
「うん、ありがとう。」

 一連の様子を江ノ島は、どこか羨ましそうな表情を浮かべていた。
 それは嫉妬心から来る憎悪か、或い。

「江ノ島、何呆けている?行くぞ。」
「あ、ああ!わりぃ今行く。」

 シャルル遊撃隊の4人は流星旅団を見届けたのち、そのままアビィの船に乗り込んだ。

「よし、次は負けねぇ!行くぞ!」



 特異点 杜王町郊外

 そこに、”彼”はいた。
 黒いスーツを着た、赤い髪と冷酷無比な蛇の目をした男が。

「HQ、到着いたしました。」
『了解、探査術式より大司教第4位芥志木の到着を確認。行動を開始せよ。』

 芥志木。メサイア教団大司教は第4位『鉄の化身』。

 彼の経歴にはかなり不明瞭な点が多い。
 分かっていることと言えば、その『芥志木』という名前くらいのもの。
 いつ生まれたのか、家族構成も通っていた学校の名前も、出身地すら分からない。むしろ名乗っている『芥志木』という名前すら本名かどうかすら怪しい。

 それでもはっきりしていることは、彼は___メサイア教団の大司教の一人であることと、CROSS HEROESの『敵』であること。

『目標はCROSS HEROESへの攻撃と”裏切り者”アルケイデスの抹殺。調査班の調査の結果、クォーツァーなる組織が持っているとされるソロモンの指輪の回収は別行動を取らせているゼクシオンに任せている。』

 無銘の異能者は通話を終え、歩みを進める。
 一見するとどこにでもいそうで地味。しかし何故か違和感を感じる。
 まるで白い紙の中に穿たれた、一つだけある黒い点のような妙な感覚を周囲の人間は覚えただろう。

「では、俺たちは殲滅に専念しよう。行こうか。」

 芥の宣言と共に、黒い棺桶サイズのカプセルが放たれた。
 そこの窓に映っているのは、一人の少女。
 まるでこの戦いに混沌を投げ込むかのような。そんな邪悪さすら感じる。

「AW-S06、これが最後のチャンスだ。暴走してくれるなよ。」

 赤い髪の鏖殺者は進軍する。
 邪悪なる救世を為すために。

5人目

「断章:蛇と豚と山猫と零 ①」

絶え間無く鳴り響くローターの風切り音。
東京ミッドタウン跡地、もといCH臨時拠点では、引っ切り無しにヘリや車両、重機類が稼働していた。
機械的なそれと共に、作業員や警備兵が発する大声も飛び交っている。
幾多もの音と声に満ちる中、DDの構成員達は、忙しなく走り回っていて。
幾つもの建物跡や臨時テントを、無数に行き来している。
特異点とギリシャ、双方へ向けた準備は絶え間なく忙しない物であり。

「しぃー…妙な動きはするなよ?」
「ヒエェ…」

そんな中では、人一人や二人が隠れて談合していても、気が付かないという物だ。
最も、それが談合等という生易しいモノでは無い事はその場の空気が物語っているが。

「気付くんじゃ無かったぜ…!」
「全くだ、有能過ぎるというのも考え物だな。」
「オセロット、お前…!」

使われていないテントの一角にて。
ヒエェと嗚咽に近い悲鳴を漏らした豚もといウーロンは、オセロットから向けられる冷たい視線にたじろいでいる。
その間を取りなす様にヴェノムが割って入る形になっているが、そのヴェノム自身も何処か動揺の相が浮かんでいる。
とてもでは無いが、穏やかな様子では無い。
事実、オセロットは懐より取り出したナイフの刃先を、ウーロンへと突き付けている。
冷静な表情で、ただ黙してウーロンを見つめる。

「い、いきなり何なんだよ、おっかねぇな…!」

離れている筈なのに、既に喉元に突き付けられている様な冷たい感触が身体を震わせる。
殺意という意識が刃先を通じて、ウーロンを貫いているのだ。
場数の一つ二つ踏んだだけでは、とても耐えられるものでは無い。
寧ろ気絶せず震える程度に済んでいるだけなのが、逆に肝っ玉の強さを証明していた。
そんな様子を見て、脅しの効果は薄いと踏んだのだろう。
溜息一つ付くと、一歩一歩近づく。
合わせてウーロンもまた一歩ずつ離れる。
間近に見える彼の目には、明らかに恐怖の色がある。
だが怯えこそすれ、体は防衛の為に的確な判断をして動いている。
優秀なサバイバーの証左だった。

「…はぁ、仕方ない。」

そんな様子を見てか、オセロットは嘆息しつつ懐へナイフを納めると、両手を挙げる。
戦闘の意思が無い事を、無言ながら示した。
少しして信用したのか、ホッと一息付くウーロン。
同時に、今の心境を漏らさざるを得なかった。

「何でこうなっちまったかなぁ。」
「…気付いたお前が悪い、という訳でも無い。だが今はその真実を暴かれるには困るんでな。」
「だろうなぁ、お前がそこまでするって事は相当な事実なんだろ?」

後悔に等しい呟きに、オセロットから本心の言葉が漸く出てくる。
それを聞いて、やっぱりなと内心思うウーロン。

「察しが良くて助かる。最も、そうでなければそもそもこうはならなかったかも知れないがな。」
「あぁくそ、首を突っ込むんじゃ無かったぜ。」

後頭部から覆い被さる様に襲い掛かる倦怠感と共に、悔いるウーロン。
何故こうなったか?
時間は少しばかり遡る事になる。



DDのメンバーと混じって、荷物の運搬を手伝うウーロン。
豚の見た目からイメージされる鈍重っぷりとは思えない程の、キビキビとした動きで現場に貢献している。
余り知られていないが、豚とは体脂肪率が極めて低い、所謂マッチョなのだ。
故にこういった力仕事は、彼の領域でもあった。

「しっかし俺が軍隊に加入する日が来るなんてよ、少し前なら思っても無かったな。」

荷物を一つ運び終えた所で、汗を拭い、今までの日々を振り返る。
思えば、ジンジャータウンでの騒動から全ては始まった。
そこから様々な事件に巻き込まれ、いつの間にやら此処まで来てしまった。
怯え逃げ惑うしか能が無かった自分が、遠い昔の事に思える。
あの時、自分はどうなってしまうんだろうかと思っていた。
そしてあの男に、スネークに出会った事で、全てが激変した。

「最初はソリッドスネーク(固体の蛇)なんて名乗って、その後はイシュメール、だったっけな?」

今はヴェノムスネークと名乗る男を思い浮かべ。
そういえば、彼はコロコロと名前を変えていたなと思いだす。
それも二度。
結局の所、スネークに帰結してる所に何かしらの拘りを感じていた。

「ウーロン、作業は終わったか?」
「お、スネークにオセロットじゃねぇか。」

噂をすれば影、と言うべきか。
丁度噂の張本人がひょっこりと顔を出してきた。
ウーロンが作業に勤しんでいる最中、別行動を取っていたスネークだ。
手には幾つかの書類やらファイル類を抱えている。
この臨時拠点で、主に作戦立案と指揮を執っているのがオセロットとヴェノムだ。
更には前線での戦闘をもこなすというのだから頭が上がらない。

「順調のようだな、白金や新宿で聞いた話が嘘の様だな?」
「止めてくれよ、改めて思ったけどあぁいうのは俺の仕事じゃねぇって。」
「そうか?意外に天職だと思うがな。」

苦笑交じりの会話を交わす二人。
白金での出来事等々の話は、当然二人も知っている。
オセロットが抱えているファイルは、それらの事件の報告書でもあるのだ。
頭脳労働はお世辞にも得意とは言えないウーロンからすれば、見ているだけでも嫌気が差すような作業だ。
それを難なくこなし、時に的確な指示を出しているオセロットには、尊敬の念を禁じ得ない。
またヴェノムの言う通り、本当に天職かもしれないなと思う自分もいる。
前の自分は逃げるしか能が無かったが、今の自分には自分だけが出来る事があると思っている。
その認識が、自分に勇気付けるいる事には相違なかった。
そうだ、セルに襲われたあの日も、強引だったがこうやって託されたのだ。
確か、送り届けなければならない人が居るとかだったか。
…はて、それは結局誰だったのか?
そんな興味を抱いたのが、事の発端だった。

「なぁスネーク、最初にあった時言ってた男って、結局何者なんだったんだ?」

そう、ウーロンが尋ねた瞬間、場の空気が凍った。
特にスネークの反応が顕著であった。
明らかに狼狽えている。
それに気付いて、ウーロンは慌てて撤回に入る。

「あ、いや、違う!別に詮索するつもりはなくてだな、ただちょっと気になっただけで。」

わたわたと慌てながら弁解するウーロン。
だが、その一方で彼の顔に目が行く。
行って、気付いてしまう。

「…あれ、待てよ?スネークって、目の色は茶色だったか?」

普段はよく見ていなかったが、彼の眼は茶褐色に見える。
記憶違いでなければ、ウーロンがあの日見た彼の目は、白人特有の青色だった筈だ。

「それにソリッドスネークって名前、確かトラオムで…」

加えて言えば、最初に名乗ったソリッドスネークなる名。
それは、トラオムで他とは違う培養槽に入れられていたホムンクルスの名では無かっただろうか?
あれもまた、白人の青い眼をしていた。
その事を追求しようとして。

「待て。」

そこで気付く。
オセロット、険しい表情をしている事に。
無言の時間が続く。
それが数秒程続いた次の瞬間、ウーロンの意識は刈り取られた。
そうして、気付けばテントの中に居た。

6人目

「怪盗と快盗 ~ It's SHOW TIME ~」

 特異点・杜王町で勃発したCROSS HEROES・心の怪盗団VSシャドウ軍団の戦い。

「ペルソナッ!!」

 狐面の男……フォックスが自身のペルソナである「ゴエモン」を呼び出す。

(あれは……)

 スタンド使いである承太郎は、フォックスの背後に立つ「天下の大泥棒」の名を冠した
大柄なペルソナの姿を捉えていた。

(あの仮面と言い、ペルソナとか言う『像(ヴィジョン)』と言い、やはりこいつらは……」
「おお、諸君らは!」

 杜王町の市民たちを避難させていたテリーマンやラーメンマンらと言った正義超人たちが
戦線に合流するなり、フォックスらの姿を見て驚愕した。

「うっそ! 正義超人!?」

 パンサーが驚きの声を上げる。

「なんでこんなところに!?」
「説明は後だ! 今は目の前の敵に集中しろ!」
「わ、分かりました……」

「テリーマン、やはり奴らはジョーカーと関係があるのか?」
「ああ、心の怪盗団……ジョーカーの仲間たちだ。以前、私も彼らと会ったことがある。
彼らは味方だ」
「なるほど……ならば話は早い」

 承太郎が帽子の鍔を指先で反らす。

「急に湧いて出てきた化け物共をブッ潰せばいいんだな? スタープラチナッ!!」

 ペルソナ使い達に続けとばかりに、承太郎も伝家の宝刀・スタープラチナを召喚する。

「あれもペルソナ?」
「いいえ、少し違うみたい……」

「キエエエエエエッ!!」

 二角獣のシャドウ・バイコーンが、クイーンとパンサーの会話を遮るように
雄叫びを上げながら突進してくる。

「おっと!」
「危ないじゃん!」

 二人は左右に散って攻撃を回避、そのまま背後へ回り込み、

「お返しっ!!」
「せいやあああああああああッ!!」

 パンサーは撓る鞭で、クイーンは護身術から派生させた
鋭い突きと回し蹴りを炸裂させる。

「グギィ……!?」

 強烈な打撃を受けて怯むシャドウ・バイコーン。

『オラァァァァァァァッ!!』
「はああああッ!」

 そこへすかさず、スタープラチナの拳とフォックスの剣撃が叩き込まれる。

「グギェェェェッ……」

「なかなか良い太刀筋だな」
「そちらこそ。貴方の背後に立つ闘士……歴戦の猛者といったところですか」
「フッ……」

 承太郎とフォックスが互いに目配せし合う。

「シャアアアアッ」

 低級の妖怪シャドウ・コッパテングが空中から風属性の魔法「ガル」を繰り出す。
触れるものを風の刃で切り刻むその一撃が、パンサーやクイーン、フォックスを襲う。

「くっ、空からか……」
「とぉああーッ!!」

 ラーメンマンが素早く跳躍して、コッパテングがいる高さにまで飛び上がる。

「シャオッ!?」
「上海延髄蹴りぃぃぃぃぃぃぃぃッ!! ホァタァーッ!!」

 コッパテングの延髄に、ラーメンマンの必殺キックが命中。

「グゲェェェェェーッ……」

 断末魔と共に地上へと錐揉み落下していく。その過程で灰となって消滅した。

「ナイスフォロー! さすがラーメンマンさん!」
「心の怪盗団か……だったら、いいものがある!」

【42バーン!】【ルパーンレンジャ~♪】

 ゼンカイザーは42番目のスーパー戦隊「快盗戦隊ルパンレンジャー」の
センタイギアをセット、ダイヤルを回してルパンレッドへと変身した。

「また変身した!?」
「もう滅多な事では驚かないつもりでいたけど……!」

「怪盗か……あんまり良いイメージが無いな」

 ディケイドは「怪盗」と言うフレーズから、「あの男」の事を連想していた。

「こっちは「快盗」ね。イタダキゼンカーイ!!」

 ルパンレッドに変身したゼンカイザーは、
追っ手の目を欺く華麗なイリュージョンで3人に分身。シャドウの群れを取り囲んだ。

「だったら俺はこいつだ」

【KAMEN RIDE WIZARD】

 対するディケイドは指輪の魔法使い、仮面ライダーウィザードへとカメンライド。

「!?」
「ゥオオ……!?」

「包囲ね! だったら……」
「今が好機!」
「総攻撃! いっけぇーッ!!」

「ショータイムと行くか……!」

 3人の分身ルパンレッドに続き、クイーン、フォックス、パンサー、
そしてフレイム・ウォーター・ハリケーン・ランドと火・水・風・土の属性を
巧みに使い分けるDCDウィザードが一斉に攻撃を仕掛けた。
初めてとは思えぬ息の合った連携攻撃で、四方八方から襲い掛かる。

「グアアアアアアッ……」
「――アデュー♪ なーんてね」

 ゼンカイザーがルパンレッドの決め台詞を真似てウィニングポーズを取ると、
同時にシャドウたちは爆発四散、灰になって消えた。
爆風がDCDウィザードのマントを華麗に靡かせる。

「グギャアアアアアアアアアアアアアッ……」
「おお、やるじゃないの、介人ォ!」
「カッコいいよ、介人! そっちの人間ちゅわん達も! 特に赤い豹の娘は
シンパシー感じちゃうなぁ! 僕にも尻尾とケモミミあるし!」
 
 ジュランやガオーンの褒め言葉に、マスクの下で得意げに鼻の下を伸ばす。

「えっへん!」
「だが、油断は禁物だ」
「そうだぜ、まだ戦いは終わってねえ」
「うん! 分かってる!」

 ディケイドが両手をパンパンと叩く。
かなりの数を倒したとは言え、町にはまだまだシャドウが溢れている。

「この人達……無茶苦茶強いよ、クイーン……!」
「ペルソナ使い以外に、シャドウと戦えるどころか、
逆に叩きのめせちゃう人達がこんなにいるなんてね……世界は広いわ……」

「ふふ……柄にもなく久々に気分が高揚している自分がいるぞ……!」
「フォックスが芸術の事以外でテンション上げてるなんて珍しい……」

7人目

「特異点襲来、絶対兵士」

「こうしてⅩⅢ機関メンバーが共に戦うというのも、いつぶりだ?」
「軽口言ってる場合か?」

 また別のエリアでは、サイクスとザルディンがシャドウ軍団と戦闘を行っていた。
 槍と大剣の暴威が、影共を襲う。

「しかし、本当に多いな。無限にいるんじゃないかってくらいだ。」
「ダスクでももっと少ないぞ。」

 その様子を尻目に、アルケイデスは。

「失せよ、影ども。」

 弓を構え、禍々しい呪気を纏わせてアルケイデスは矢を放つ。
 奥で戦闘をする仲間を援護するように、或いは今以て自身に迫りくるシャドウの群れを蹴散らすかのように。

 その時。

「……おい、貴様ら上を見ろ!」

 アルケイデスが遠く言いるディケイド達に警告する。 
 届いているかどうかは別として、今その周辺を驚異的な暴威が迫って来ていると伝えたのだ。

「何だこいつは……岩か?いや違う!」

 アルケイデスの眼に映っていたのは、黒い何か。
 それは、ディケイド達を狙って放たれたミサイルかの如く進撃してくる。

「あれ……なんだ?」
「ミサイル……じゃない?」
「為朝のあれじゃなさそうだが、何かまずい!」

「そこをどけ!射貫く!」

 このままでは周囲の仲間が”ミサイル”の一撃で
 アルケイデスは己の矢に魔力を込め、一射。
 レーザー光線が如き速度と精密性でカプセルを攻撃する。

『攻撃を察知__絶対兵士を射出します。カプセル破棄による爆発を回避する為、周辺のメサイア教団兵は避難してください。』

 カプセルに仕掛けられた合成音声が、恐るべき驚異の名を示す。

「絶対兵士!?」
「メサイア教団って……アルケイデスが言ってた!」

 絶対兵士。
 メサイア教団。
 めったに聞かない単語が、周囲を飛び交う。

 考察の暇もなく、カプセルを飛び出たのは血濡れの死に装束を来た女性。
 カプセルはアルケイデスの矢を受けて爆発。それから逃れるように、女は進軍する。
 赤黒に染まった服装であるが故、一見すると黒赤い矢が迫ってきたかのように。

「シャドウ……じゃないけど……何かまずい!。」

 その刹那。
 周囲を取り囲んでいたシャドウたちが。

「_____!」

 無言の一刀と共に、斬り伏せられた。
 黒と黒と赤と黒の切断竜巻が、敵味方問わずありとあらゆるものを切断する。

「女子高生……?」
「ホラー映画かよ!?」
「やれやれ、こいつはまたヘビーな奴が来たな。」

 赤く変色する高周波ブレード。
 狂気と暴威を纏い、少女はたたずむ。

「あー、思い出した。」
「思い出したって、戦ったことが?」
「ああ、一度な。」

 ザルディンには、この怪物の正体が分かった。
 何しろ、彼女はかつて見たことがあったし、戦ったことがある。
 錆びついた銀のような髪、放っておけば人を殺してしまいそうな残忍な眼。

「お前たち、この影共もそうだが目の前のこいつにも気をつけろよ。」
「おっさん、あんたこいつの知り合いか?」

 サイクスと共に駆け付けたザルディンが、ゼンカイジャーの皆にその暴威の名を告げる。

「絶対兵士『辺古山ペコ・オルタ』。だが……連中は完成したようだな。気をつけろ、奴は我らの敵だ。」

 ペコオルタは、狂った眼で高周波ブレードをゼンカイジャー達に向け、嗤う。

「……邪魔をするなら皆殺す。即刻殺してやる……!」

8人目

「抜錨、アビダイン発進。」

焦げたレンガの床に置かれた即製の焚火に、二人の男が並んで座っている。
炎に照らし出されるその姿は、カナディアンマンとスペシャルマンだった。

「スペシャルマン、お前は残るのか。」

カナディアンマンの言葉に、スペシャルマンは気恥ずかしそうに答える。

「うん。トラオムでの君の活躍を見てからかな、それ以来自分に出来る事がある筈だって、そう思ってさ。」
「それでギリシャか。俺が居ない分、気張れよ?」

明るく振舞うカナディアンマン。
だがその度に義手を軋ませる様は、暗に彼が巨大化出来ない事を示している。
彼に出来ない事が、明確に一つ。

「あ…」
「気にすんな、勲章の様なもんさ。」

その事に何処か負い目を感じるも、その必要は無いと言うカナディアンマン。
実際、義手になった事を何一つ後悔はしていない。
無論オーガマンを手に掛けた時に関しては、今も心の片隅で引っ掛かりを覚えている。
それでも、自分は成すべき事を成さねばならないと自負はしていた。

「小っちゃい事は気にしねぇってもんさ、文字通りな!」
「…ははっ、言えてるね!」

不自然ではない、明るい笑みを浮かべるカナディアンマンを見てか、心に掛かっていた暗雲が一つ晴れるスペシャルマン。
彼の言葉に、嘘偽りはない。

「それよりもこの世界の事、頼むぜ。」
「あぁ、任された!」

互いに拳をぶつけ、誓い合う二人。
そこに、別の拳がぶつけられる。

「水臭いじゃねぇか、俺達を誘わねぇなんてよ。」
「ベンキマン!それにティーカップマンも!」

オーガマンとの戦いにて傷付き、療養していた筈のベンキマン。
そしてティーカップマンにブロッケンJr、ウォーズマン。
全身に火傷を負った筈のロビンマスクも居るではないか。

「カレクックはまだ療養しているが、俺達は準備万端だぜ!」
「私も、おちおち寝ていられなくてな。」
「ははっ、頼もしいね!僕も頑張らなきゃ!」

すっかり元気になった姿を見せるロビンマスク達。
勇気奮わせる逞しい雄姿に、スペシャルマンも負けじと笑みを浮かべる。
ここに、超人戦線が結成された。

『あー、あー、マイクテステス、ワンツー。良し。』

そんな時だった、不意にスピーカーからアビィの声が響いたのは。

『君達、出立式を行うよ。』



夜闇の不夜城、東京ミッドタウン跡地。
そこに座する白銀の城、アビダイン。
その装甲には簡易的なビル柄迷彩布が施され、都会に紛れるよう静かに息を潜めている。
気配を殺し身を潜める様は、まるで出立の時を今か今かと待ち望んでいるかの様だ。

『やぁ皆、思い思いの時は過ごせたかな?口惜しいだろうが、大切な時間がやってきた。』

だがそれも後僅かな時間だと、アビィはマイク越しに告げる。
船の前に集められた面々を見渡しながら、演説でも振るうかの如く、仰々しい身振りで。
事実、士気を上げる為に行われる大袈裟な手振りだ。

『知っての通り、アビダインはこれより特異点へと突入する事になる。』

両手を広げ、盛大に宣言する。
同時に、外に滞在するDDの面々により布が取り払われていく。
青と白銀に彩られた装甲が、夜の街に露わになる。
その鈍い輝きが、出立の時を全員に思い知らせた。

『各自、それぞれの目的が有ってこの船に乗り込む事だろう。』

アビィの言うように、全員の大局的な目的は同じであれど、局地的な目的はそれぞれ異なる。
世界を救う為、己の因縁の為、その他多岐に渡る思いがある。

「あぁ。オラ、世界を破壊して得る力なんて認めねぇ。」
「ふん、俺は俺が一番で有ればそれで良い。」

中には自らの実力を試す者さえ居る。

「特異点には、確か蓮の奴も居たな。」
「あぁ、顔合わせするのも良いかもな?」

皆が思い思いの言葉を口にする中。

『注目っ!』

大声を張り上げ、響き渡る声。
その中心で、注目を集めたアビィは告げる。

『その全てを、この船は乗せて届けよう。アビダインは君達を歓迎する。』

それ等全てを、アビィは汲み取ると。

『さぁ、行こうか!新たなる英雄達よ!!』

そうして出立を宣言した。
それと同時に、背後のハッチが重厚な音を立てて開き出す。
やがて地面へと付いたハッチを上り坂として、アビィが先陣を切る形で登りだす。
それに釣られて、各々が付いて行く。
目指すは特異点、正に運命の分岐点だ。

「さぁ、いよいよだ。」

一人呟くアビィ。

「この命に懸けて、絶対に…」

決意を固める彼の目に、鼻から迷い等という物は無かった。



土煙を撒き上げて、静かに、だが重々しく浮き上がるアビダイン。
ある程度の高度まで上がった後、艦首はお台場のあった方角へと向く。
音を立ててメインスラスターに灯る蒼い火。
爆発的な推力を得て、一気に前へ加速するアビダイン。
ビル群、商店街、家屋。
それら全てを置き去りにして、アビダインは向かう。
音速を突破し、お台場跡地へと肉薄。
やがて、何か幕の様な物に衝突する。
強烈な抵抗が生む減速を横に、アビダインはその幕の中へと吸い込まれるように入っていった。
そう、特異点へと。
その後ろ姿を、ギリシャ・ロンドンへ向かうCHの面々は見送っていた。
彼等に特異点の行く末を託す意志を見せる為に。

「…窓から見えたブリッジの中、人が飛び交って無かったか?」

一抹の不安と共に。
なお、アビダインにG対策は無い。
体幹でどうにかせよ。

9人目

「超高校級の殺戮剣豪VS平安時代の天才歌人」

「――くっ!!」

 ゼンカイザー達の前にマシュがラウンドシールドを翳して立ちふさがり、
斬撃を受け止める。

(パワーが……足りない……!!)

 マスターである藤丸立香を欠いた状態での戦闘は厳しいものがあった。
魔力供給もままならず、宝具の使用などもってのほかだ。
それでもなお、マシュは歯を食いしばりながら耐える。

「あなたは……!」
「死ね……! 死ね……!! 死ね………!!!」

 絶対兵士は出撃する度に一切の記憶をリセットされ、ただ敵を殺戮するためにだけ
動く殺人兵器となる。

「これは……! あなたが本当に望んだことなんですか!? こんなことをしても、
あなたの心は何も満たされないはずです!」

 マシュ・キリエライトはデミ・サーヴァントである。
フィニス・カルデア前所長、マリスビリー・アニムスフィアによって
その身に英霊を宿すための依代として生み出された試験管ベビー。
つまりは、「造られた命」だ。
誰かの都合で生み出され、殺風景な無菌室の中で10数年もの時を過ごし、
そして死んでいくはずだった。

 そんな彼女が今こうして生きているのは、藤丸立香のおかげだ。
彼女は、何もかもを諦めていた彼女の手を引き、外の世界へ連れ出してくれた。
そう、世界は絶望だけで出来ているわけではないと教えてくれたのだ。
だから、マシュは戦う。そして今、目の前にいる辺古山ペコ・オルタも、
自分の意志とは関係なく、誰かの勝手な都合で戦いに駆り出されているのだとしたら、
助けたいと思った。

「私は……! 貴様らを殺すためだけにつくられた存在だ!! 心など不要!!」

 しかし、絶対兵士となったペコ・オルタに、マシュの言葉など届かない。

「ああッ……!!」

 ペコ・オルタに押し負かされたマシュは地面に叩きつけられる。

「マシュ!」
「やはり……先輩がいないと……」

 いつも背中越しに立香の魔力を受け取っていた彼女にとって、その喪失感は大きかった。
あの手の温もり、背中を預けられる安心感にどれだけ助けられていたのかを
痛感させられる。

「エリミネイト……死ぬがいい!」
「そう勝手にはさせられんな」

【ATTACK RIDE SLASH】

「はあああああッ!!」

 残像を纏ったブッカーソードを繰り出して斬りかかり、ペコ・オルタをマシュから
引き離すディケイド。

「チッ……!! 邪魔をするか!!」
「門矢さん……!!」

「無理をするな、盾ナスビ。藤丸がいないと辛いんだろう」
「ナ、ナス……!?」

 ディケイドはマシュの手を取って立たせると、そのまま彼女を庇うように立つ。

「うーりゃうりゃうりゃうりゃー!! よくもマシュちゃんをいじめたなー!」

 なぎこが手当たり次第に持ち物をペコ・オルタにぶつける。
クラス:アーチャーであるがために、どれだけの暴投であろうとも必ず当たるという
特性を持つ。

「……!」

 ペコ・オルタは攻撃こそしないものの、鬱陶しいと言わんばかりになぎこに目を向ける。

「つかアンタさー、何でそんな苦しそうなん?」
「苦しい? 私が?」

「顔見りゃ分かるよ。全然楽しそうじゃない。心のエモエモエンジンが錆びついちゃって
全然回ってないってカンジ。いつも心にラブ&ピース!」
「黙れ! 私に説教するな!」

「いいや、言うね! 誰かに無理矢理戦わされてさ、それで楽しいわけがないじゃん!」

 ペコ・オルタの攻撃が、なぎこを襲う。
その動きは、かつて戦った時の比ではないほど速く、鋭い。

「馬鹿か、貴様は!! 楽しい!? 戦いにそんな感情など不要だ!!」

 だが、なぎこはそれらを全てかわしてみせる。
全てを見透かすような視線で、ペコ・オルタを射抜く。

「何だ、こいつは……!? 私の攻撃を何故!?」

 なぎこの言葉が、ペコ・オルタの心の奥底に眠る何かを呼び起こす。
記憶と共に失われた感情を……

「私は……絶対兵士……! 任務を遂行するだけの兵器!
こんなところで……負けるはずが……!!」

「なぎこ……グレートじゃねえか……ただのパリピじゃなかったのか……!」

 仗助が思わずつぶやく。
 
「悲しさとか苦しさで曇った心じゃ、あたしちゃんには100万年経っても当たらないぜい」
「うあああああああッ!!」

「思い出してみ? 絶対なんちゃらになる前の事……きっと楽しい事だってあったはず」
「絶対兵士になる……前……!? 私には……そんなもの……!!」

 なぎこの言葉にペコ・オルタが揺さぶられ、隙が生じる。
同時に、なぎこの固有結界が発動した。彼女の心象風景を映す、無限に拡がる青空。
それがペコ・オルタの精神を侵食していく。彼女の心に、ほんの少しだけ、
昔の記憶が蘇る。

(そうだ……私は……)

 彼女の脳裏に浮かぶ、抹消されたはずの辺古山ペコとしての日々。

「春はあけぼの 夏は夜 並べてこの世は……いとをかし!」 

 春夏秋冬……美しき四季の風景がめくるめく移り変わる中で、
ペコ・オルタは抹消されたはずの記憶を思い出す。
自然の美しさに触れた時の心の情動。
モフモフした動物と触れ合った時に感じた心の温もり。
他愛のない日々の中に散りばめられた、宝石のようにキラキラと光る大切なもの。
しかし、それは一瞬の夢のように消え去り、彼女は絶対兵士に書き換えられた――

「塗り潰せ、枕草子! 
枕草子・春曙抄【エモーショナルエンジン・フルドライブ】ッ!!」

 エモさ、すなわち楽しさや喜びと言った感情を力に変えるなぎこの宝具が、
闇に囚われたペコ・オルタの心を眩く照らして、希望の光を灯す。

「う、うああああああああああああああああああああッ……!!」

 絶望と希望とがせめぎ合い、ペコ・オルタの精神は大きく掻き乱される。

「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ……!!」

「あの人の心も、シャドウに囚われた人達と同じように、
深い絶望の海に沈んでいるのね……」

 絶望に沈んだ者の魂は、その絶望によって汚染され、永遠に救われることは無い。
パンサーは、ペコ・オルタに憐みの視線を向ける。

「お、おかしくなりそうだ……!! 私は誰だ!? 私は何だ!? 
私は何のためにここにいるんだ?!!?!?
ぐああああああああああああああああああああああああああッ……」

 ペコ・オルタは頭を抱えて悶える。その眼からは血涙が流れ落ちていた。
果たしてなぎこは、ペコ・オルタの魂を救い出せるか……!?



「to be continued……だぜ☆」

10人目

「断章:蛇と豚と山猫と零 ②」

テントで目が覚めてからは先の通り、ナイフを向けられ脅されている。
頼りの綱であるスネーク自身も、どこか迷いがある様に見える。

「さて、今なら聞かなかった事にして引き返せるが。」

オセロットは、変わらず冷淡な視線で見据えている。
それはまるで、これから先の言動に気を付けろと言っている様であった。
事実、これまでの流れを考えれば、今はまさに分水嶺とも言える状況だ。
耳を塞いで、無かったことにしても良い。
何せ話に乗って、自分に明確な理がある訳では無いのだから。

「今降りても、別にこれまで通りで良い。」

話から降りたって、損はないのだ。

(俺も流れで協力してきたけどよ、これはハッキリ言わねぇとならねぇよなぁ。)
「どうする?」

だから、ウーロンは改めて決意を固め、決断する。

「いいや、降りねえよ。スネークの為にも話は聞きてぇ。」

敢えて火中の栗を拾う事を。
どれだけの厄話かは想像だにしないし、聞いて後悔するだけかもしれない。
だが。

「ウーロン、お前…!」

臆病者の自分を、ここまで変えてくれたスネークがこうも苦悶する姿を見せられたのだ。

(そんな物を見せられてよ、はい聞きませんでしたなんて出来るかよ。)

彼が抱えている何かに対して、せめて分かち合う事ぐらいはしなければ気が済まない。
今までの恩に報いる為ならば、例え泥を被る羽目になろうとも構わないと、覚悟は出来ていた。
そんな彼の言葉を聞いて、スネークは嬉しさと同時に苦しく思ってしまった。
朧気ながらも思い出してしまったからだ、自分の宿命を。
一端だけのソレですら、巻き込ませるには余りにも重い代物だ。

「…俺からも忠告しておく、恐らくだがこの話、後戻りはできないぞ。」
「それでもだよ。何だよ、水臭ぇじゃねぇか。」

だが止めようとした彼を制して、ウーロンは話を聞こうとする。
流れであれ何であれ、今や相棒と思っているからこそだ。
その様子に、オセロットは内心溜息をつく。

(こいつは、どうあっても話を聞くつもりらしいな。まあ、あのツラを見たら嫌でも察してしまうだろう。)
「そこまで言うなら仕方ない、話してやる。」

そして、意を決して、オセロットは口を開く。

「お前があの日、ジンジャータウンで出会ったBIG BOSSは、米国の元工作員だった。それもある英雄の弟子としてな。」

そう、全てはこの師弟から始まった。



「ザ・ボスと呼ばれる英雄が居た。」

懐から、ある女性の写真を取り出したオセロット。
古めかしいフィルムには、壮年ながらも若々しく見える女性が写っていた。

「彼女は第二次世界大戦において多大な活躍を見せ、その後あらゆる特殊部隊の創設等にも関わった。」

あらゆる軍事技術、例えばCQCやHALO降下なんかも彼女が編み出したものだ。
今、メサイア教団で運用されている絶対兵士。
その名もまた、彼女を再現しようとした計画の中で出来た代物。
軍事の大元を辿れば、大抵は彼女に行きつく。

「いつしか軍の英雄的象徴、イコン(印)として、全てのマザー、ザ・ボスと名称された。」

THE・BOSS。
その名は、彼女に向けられたあらゆる尊敬と畏怖の念を統括し、一つに表現したものだった。
まさに、全ての軍事の母だ。

「今も生きていれば、或いは世界を纏めていたかもしれない程のカリスマ性を奮っていた。」

生きていれば。

「…そう、生きていればだ。彼女は、俺の母は死んだ、裏切り者として。」
「母親、だったのか。すまない、そんな話を…」
「気にするな、心の整理は付いてる。」

そう、彼女はとっくの昔に死んでいる。
止むに止まれぬ事情があった。

「初めは、ソ連にある賢者達の遺産を狙った任務だった。」
「それって確かよ、すんげぇ金だっけか?」
「あぁ、第一次世界大戦を経た各国のお偉いさん、即ち賢者達が、二度と惨劇を起こすまいと溜め込んだへそくりだ。最も、二度目は起きたがな。」

賢者達の遺産。
それはスネークがトラオムでも聞いた名。
各国の識者が集って溜めた、莫大な隠し資産。
互いに技術競争し絶対的な差を付ける冷戦下では、徳川埋蔵金の如き『利益(爆アド)』だ。

「極秘裏に核を横流ししてまでソ連軍将校に取り入り、任務は順調だった。だが…」

その時の将校がヴォルギンだったのが、運の尽きだった。

「その将校は軍の過激派でな、本当に核を使いやがった。」

そこから全てが狂いだした。

「更にその時、丁度スネークがソ連から科学者を亡命させる任務が、その援護に居たアメリカ軍国籍機の存在がバレてな。」
「冷戦…ってのも戦争中だろ?不味くねぇか?」
「あぁ、事態は最悪の方向に向かった。」

スネーク初の任務。
ヴァーチャスミッション(貞淑な任務)と呼ばれた、科学者亡命計画。
世界初の有人ロケット打ち上げに成功した、ソ連のヴォストークロケット。
そのエンジンの開発者でもあり、ソ連の兵器開発の第一人者であるソコロフ博士を研究所から亡命させる任務。
折りしも核爆発は、亡命任務のバックアップに付いた管制機がソ連内に居る中、彼の設計局で行われた。

「当時は冷戦下。その相手さんだった『アメリカ軍の国籍機が居る中』で核爆発は起きた、するとどうなる?」
「えっと、ソ連から核爆発はお前(アメリカ)がやったんじゃないかって濡れ衣を着せられる…って事かよ?」
「そうだ、実際核はアメリカ製だしな。故に計画(筋書き)は変更された。」

半ば真実の、しかし不当な濡れ衣。
それは、遺産を巡るザ・ボスと逃亡に関わったスネークに被せられることになった。
核の横流しを行い亡命した裏切り者、という名目で。

「身の潔白の為に、弟子であるスネークが、ソコロフが当時開発していた核兵器とヴォルギン諸共、師匠であるザ・ボスを葬る事になった。」
「…っ。」
「…ひっでぇな、都合が悪くなりゃ即切り捨てかよ。しかも師弟で遣り合わせるなんて血も涙もねぇな。」
「それが当時の冷戦…いや『時代』だったんだ。」

何処か悔やむ様に語るオセロット。
彼もまた、あの場に居た。
言葉の節に出る無念さは、その時の核発射を、そこから始まった惨劇を止められなかった事への遺憾か。
その意を噛み殺して、オセロットは続ける。

「最終的に、スネークは全て成し遂げた。」

核兵器、ヴォルギン、そしてザ・ボス。
全てを葬ったのだと言う。
真実と共に。

「そして遺産は…待て。」

続けようとして、静止が入る。
同時にスネーク達は気付く、この場に漂う殺意に。
いや、『熱波』に!

「噂をすれば影か、来るぞ!」

即座に身を翻し、外へ飛び出るオセロット達。
瞬間、爆炎が立ち昇りテントが吹き飛ぶ。
爆発的な熱量と共に吹き荒れる熱風が、辺り一帯を蹂躙する。
その中心、スネークが居た場所に、燃える男が立っていた。

_ウ”ア”ァ”ァ”ァ”!!!
「燃える男…ヴォルギンだ!」

11人目

「逆流する殺意/キラとの衝突、その始まり」

 血涙を流し、絶望と希望に悶えるペコオルタ。

「思い出せない……思い出せない……!!」

 清少納言の攻撃を受け、希望の記憶が脳内を支配し始める。
 しかしそれを鎮圧するかのように、絶望的な殺意がせめぎあっている。

「殺す……殺さなければ……!私は『絶対兵士』……!」

 一歩、踏み込む。
 意識を殺し、希望を殺し、純然たる殺意に己の脳を支配する。
 そこに……希望が入る余地などない。

「死ねァアアアアアアアアア!!」

 暴威を纏わせ、まるで赤い風のように攻撃する。

「さっきより踏み込みが甘いぜ!?」

 しかしその全てが掠れ、命中しない。
 極限まで研ぎ澄まされた攻撃/殺意すら、当たらなければ意味がないとでも言わんばかりに。

「ドラァ!!」
「!!」

 仗助も援護攻撃をする。
 しかし、その拳は高周波ブレードに命中しただけでペコオルタそのものに命中はしない。

「不良ごときがッ余計な真似をするなァァ……がふっ!」

 暴走の代償。
 行き過ぎた力、そのツケが却ってきたのか血を吹き出す。
 口と鼻から血を吹き、息も絶え絶えの暴走剣豪。

「ねぇ……あの子おかしくない?」
「なんでしょう……段々生命力が減ってきているみたいな……。」

 パンサーとマシュがその不可解さを看破する。
 まるで眼前のペコオルタだけ、寿命が数十倍加速しているかのような。
 あまりの痛々しさに、二人の目に憐憫が集まる。

「憐憫だと……憐れむな下郎!!」

 憐憫の眼を前に、高周波ブレードが再び唸る。
 極限まで振り絞られた殺意が、再び皆を襲う。

「消えろ消えろッ!消え゛れば、私は無(ヌル)に゛戻れ゛る!」

 もはや殺すことでしか、この暴れん坊少女を止める手立てはない。
 暴走する特急列車が如き速度で、暴威の釼を振るい続ける。

「あ……!」

 狂おしいほどの殺意、その一刀がマシュの胴を切断しようと襲い掛かる。

「クソ、何でもありか!」

 その一撃を、サイクスが防ぐ。
 大剣、クレイモアと高周波ブレードがぶつかり合い、赫黒い閃光が炸裂する。

「邪魔するな……皆、皆ァ!!!」

 血を吹き、今にも倒れそうな彼女。
 その様子を、芥は見ていた。
 まるで何処かに運び込まれる豚を見るような、冷徹な目で。

「そうだ、貴様は兵器。それ以上でもそれ以下でもない。我らのためにその命を燃やせ。」

 彼はその右腕を力ませる。
 まるで辺古山ペコ・オルタという機械の動きを加速させるかのように。



「しかし兄さん。ボクたち一体どこに行くの?観光という訳じゃなさそうだけど……。」

 ところ変わって、DDたちが作業している港区のあるエリア。
 松田とルクソードが持ってきた端末と電源から、次の流星旅団の行き先であるロンドンの情報をまとめている。

「行先はロンドンの時計塔、もう一つはイギリスのウィンチェスターにある『ワイミーズハウス』だ。」
「ワイミーズハウス?確か情報だと……。」

 彩香は、端末を操作する。
 そこに映っていたのは。

「ある発明家が作り上げた、身寄りのない天才たちを集め英才教育を行っている場所。現在は創始者の死亡と共に彼の友人が経営している。……そこがどうかしたの?」
「……そこに、聖戦の情報が。」
「ああ、聖戦の果てにある『人類神化計画』の詳細がな。」

 その時だった。
 突如近くで、ズドン、と巨大な爆破音が鳴り響く。

「爆発!?」

 ふと、彩香が周囲を見てみる。
 テントのある方角を見ると、そこには燃える"何か"があった……。

12人目

「断章:蛇と豚と山猫と零 ③」

東京ミッドタウン跡地、DDの陣地の真っ只中。
にわか雨と日差しの混ざる、どんよりとした空模様の下で。
蒸気が、熱気が立ち上がる。

「敵襲ーっ!」

DDは、文字通り燃え盛る一人の男から、襲撃を受けていた。
それは過去の残影。
今を生きる者の足を引く、復讐の手。
燃える男、もといヴォルギン大佐が、そこにいた。

「ちっくしょう、あの時のかよ!何だってこんな所に!?」
「男は陰口に弱いのさ!」

噂をすれば影が差す、と言うのだろうが、今差しているのは超自然発火の遠赤外線だ。
それも肌を焦がし布を焼く、超高温の日向だ。

「捕えてたあの『ガスマスクの子ども』だ!」
「急に起きたと思ったら、次の瞬間に!?」

騒ぎの傍らで、飛び交う混乱。
その中に、答えはあった。

「『第三の子ども』か。ヴォルギンの報復心に『共感』して、最後の力を振り絞ったらしい。」

遠くに見える檻の中で倒れ伏す『第三の子ども』を横目に、ヴォルギンは動き出す。
一歩踏みしめる毎に大地が焼き焦がれ、赤熱した足跡が残る。
そうして地から舞い散った火花が、尚一層輝きをを増す。

「来るぞ、伏せろ!」

砲弾の如き熱波を、陰に隠れやり過ごすスネーク達。
ヴォルギンの放った熱波は、高密度に圧縮され、音速を超えた空気だ。
燃焼によって発生した高温が生み出す破壊力は、まるで地獄の業火の如く、空間を焦がす。
煤塵散り舞う焦熱が、火に群がる虫の如くDDの兵士達を蹴散らしていく。
その中を、ヴォルギンが駆けた。

「そっちに向かった!」

熱で歪んだ風景の中に、一点輝く紅蓮。
揺らめく陽炎の中、その輪郭は朧げだ。
しかしソレは確かに、炎の先を見据えていた。
その瞳は、獲物を狩らんとする研ぎ澄まされた獣の目。
獣は狩らんとする、蛇を。
その愚直さは、正しく脅威だ。

_ウ”ア”ァ”ァ”!!
「あぶねぇっ!」

だが同時に、盲目でもある。
ともすれば足元を掬う程のそれを、目敏い豚が見逃そう筈も無い。
ウーロンが変化したミサイルを鳩尾に叩き込まれ、爆風と共に大きく吹き飛ぶヴォルギン。
体は勢いそのままに金網を破って、地に倒れ伏す。
戦線に置かれ磨かれた咄嗟の判断が、功を奏した。

「ふぅ、確かコイツ、弾は駄目だったよな?」
「あぁ、それで正解だ!」

ナイス判断だと告げるスネーク。
ウーロンにとってあの会敵は、トラオムにおける記憶を占める割合は大きい。
だからこそ対処法も心得ている。
だが同時に、これでは死なない事もまた知っている。
ロングホーンに貫かれてなお健在の身体に、ただの爆風などノックバックに過ぎないのだ。

「ったく、何だって急に出てきやがったんだ!?」
「あぁ、執念深さには感心するが、いい加減墓に還って貰いたい所だな。」

文字通り執念の炎となられては、現実世界に生きる者としては困りものでしかない。
詰まる所、これといった決め手が無いのだ。

「_いや、丁度良い。冥途の手土産代わりに、話の続きをしてやろうじゃないか。」

だが、オセロットは何やら手立てがある口ぶりだ。
どうも、先の話が鍵らしい。

「おい、こんな時に話してる場合か!?」
「退場して貰うのさ、『時代遅れ』だと突き付けてな。」

そう言うなり、オセロットは指を鳴らす。
直後、湧いて出た様に十数人程の隊員が駆け付けてきた。
赤いベレー帽が特徴的な、オセロット直々の親衛隊だ。

「お前達、付近を封鎖して奴と俺達だけにしてくれ。」
「隊長、それはもしや…?」
「あぁ、4人切りだ。誰一人ここに立ち入らせるな。」

増援として駆け付けたつもりの彼等に下された指示は、封鎖。
一瞬動揺するも、そこは訓練された兵士達。
すぐさまオセロットに従い、スネーク達やヴォルギンとも離れて付近一帯を封鎖しだす。
わざわざ首を絞める様な行為に、ウーロンが疑問を呈する。

「お、おい?いいのかよ?」
「『話の続き』だからな、他の隊員にもアイツ等にも、聞かせる訳にはいかんのさ。」
「…そうだな、こればかりは他の誰にも聞かせる訳には行かない。」

オセロットの言動に、スネークが同意を示す。
お前が言うならよぉ、とウーロンも渋々納得した。

「じゃ、とっとと聞かせて貰おうじゃねぇか。」

ウーロンがオセロットの方に向き直ると、続きを促す。
スネークの意識は、未だ倒れているヴォルギンの方へと向けられながら。
しかし何処か、意識のブレの様な物がある。
それがどうにも、ウーロンには気になって仕方なかった。

「スネークがこんなだしよ。」
「分かった、だが奴さんにも聞いて貰わないとな。」

言うが早いか、スネークの目先で立ち昇る火柱。
その渦中から、紅蓮の輝きが溢れ出す。
ヴォルギン大佐の、復讐の業火が。
それを見届けると、彼は真実を語り出した。

「まず、結果的に遺産は俺が持ち帰った。」
「そういやあの作戦に居たって言ってたな、お前。」
「あぁ、表向きはGRU(ソ連過激派)でスネークの妨害だったがな。本当の所属はCIA(アメリカ)だ。」

スネークの記憶の中で、若き日のオセロットは確かになる。
スペズナズ(ソ連特殊部隊)のエリートGRU、その中でも上澄みたる山猫部隊として立ちはだかっていた。
だがそれもまた信用を得る為のブラフで、スネークが全てを成し遂げた後に遺産を回収する役回りだった。

「ホンット、めんどくせぇ世界だな。誰だよ、そんな役者配置しやがったの。」
「お前は本当に鋭いな、それが今回の話の肝だ。」

ウーロンの指摘に乗っかる様に、話の軌道を提示するオセロット。
その一方で、立ち上がったヴォルギンと相対するスネーク。
ウーロンが、焦る様に目線で続きを促した。

「遺産奪取、ソコロフ亡命任務、そして英雄殺し。これ等全てに関わったある男が居る。」
「スネーク、だけじゃねぇよな。」
「あぁ。その名はゼロ、CIAのゼロ少佐だ。」

ゼロ。
その名が出ると同時に、スネークがヴォルギンと組み合う。
にわか雨で濡れたヴォルギンの身体は、少しずつだが熱が失われている。
故に辛うじて耐えられる火傷を負いながら、CQCを駆使してヴォルギンを地面に叩き付ける。

「ゼロ、そいつが全部の元凶って事かよ?」
「そうでもない。ザ・ボスは、ゼロにとって英雄だった。それを討ったスネーク、いやBIG BOSSもな。」
「BIG BOSS?っと、変化!」

再び膨れ上がる肌を焦がす様な焦熱に、ウーロンが対応する。
再度ミサイルの姿になり、急上昇。
スネークが離れたのを確認すると同時に、急降下突撃。
爆炎と共に、人一人がすっぽり入れるクレーターが出来上がり、その真っ只中にヴォルギンは叩きのめされる。
一方のウーロンは爆発の反動を用いて、クルリと身を翻しながら戻ってきた。

「ああすりゃちったぁ大人しくなるだろうよ。」
「良いセンスだウーロン。」
「あぁ、あそこを奴の墓穴にして眠って貰うとしよう。この話を子守唄代わりにしてな。」

煙が晴れ、半ば地面にめり込んだヴォルギンは暫く動けそうな様子は無い。
いや、クレーターに沿って貯まる雨水に、段々と動きが鈍くなってすらいる。
この機を逃すまいと、オセロットは続けた。

13人目

「花の魔術師は動かない」

「エコーズッッッ!!」
「!?」

 暗躍する芥に攻撃を仕掛けたのは、広瀬康一のスタンドだった。

『見たぞッ!!』

 その言葉が物質化し、反響(エコーズ=こだま)する。
仗助のクレイジー・ダイヤモンドや承太郎のスタープラチナのように接近戦に特化した
スタンドとは打って変わり、康一のスタンド・エコーズは有効範囲が広く、
偵察用に使う事も出来る。そしてその能力は音を物質化し、
敵に染み込ませる事によって精神的なダメージを与える事だ。

「キミは何者だッ……! ここで『何』をしているんだッ!?」
「スタンド使いかッ……!!」

ドドドドドドドドドドドドドド……

 スタンドを操る康一と、ペコ・オルタを陰から操っていた芥。
奇しくも、使役する者とされる者の関係を持つ二人が対峙した瞬間であった。

「ぐっ……!! ああああああああああッ……!!」

 芥の支配が揺らいだ事で、ペコ・オルタは動きを止めてしまう。
まるで脳にノイズが入ったように、頭痛が彼女を蝕む。

「ま、また急に動かなくなった……!?」

 まるで脳に針を突き刺されているかのような痛み。
彼女の身体はまるで自分のものではないかのように、言う事を聞かない。
血涙を流す彼女は、マシュの方を睨む。

「やはり、この方は……」

 この苦しみよう。まるで何かに抗っているようだ。
まるで何者かに乗っ取られているような、そんな感じ。
ペコオルタの苦痛の表情を見て、マシュは確信する。

「誰かに、支配されている……!?」
「――潮時か。撤退するぞ、AW-S06。貴様にはまだ利用価値がある……」

 芥は、お付きの雀蜂を呼び寄せた。
銃撃で康一を牽制しつつ、撤退の準備を始める。

「うわっ!? 実弾……シャレにならない……!!」

 スタンド使いとて、本体である康一は至って普通の人間だ。
音速を超える弾丸を喰らってしまえば、間違いなく致命傷になるだろう。

「――ッ!!」

 緊急脱出プログラムを起動させられたペコ・オルタはマシュ達の包囲から急速上昇。
その速度はまさにジェット機の如く、あっという間に飛び去っていく。

「逃げた……!?」
「貴様はここで蜂の巣になるがいい」

 芥もまた、雀蜂が足止めをしている間に姿を眩ました。

「ど、どうしよう……!? でも、やるしか……」

 雀蜂と戦う決意をする康一。だが、その時、視界を覆い尽くす程の花びらが舞い散った。

「うわっぷ!? な、何だ、これ……!?」

 それはまるで美しき幻術。花吹雪が康一の視界を遮り、雀蜂たちも困惑している。
だが、康一は微かに見た。フードで素顔を覆い隠した何者かが、
雀蜂を鮮やかな剣捌きで斬り伏せていくところを。

「ぐあっ……」

 その者は、まるで花々が意思を持っているかのように自在に操る事が出来るらしい。

「ふむ。やはりこっちの方が手っ取り早くて良い。呪文は噛むからね」
「あ、あなたは……!?」
「なぁに、ほんの気まぐれさ。さ、君は仲間の所に戻りなさい。
伝えなければならない事があるはずだ」

 瞬く間に雀蜂達は全滅し、花吹雪が晴れるとそこにはもう誰もいなかった。

「消えた……確かに誰かがいたはずなのに……いや、そうだ! 
仗助くんたちに知らせなくっちゃあ!」

 康一は困惑しながらも、杜王町で戦っている仗助やCROSS HEROESの元へ急ぐ。

「さて、CROSS HEROES。私は楽園の果てで見届けさせてもらう事にしよう。
君たちの物語を……」

 花の魔術師・マーリン。
最後の楽園・アヴァロンの庭にて物語の終演の時を静かに待つ……

14人目

【何も無いところからこんにちわ/こんばんわ】

ー某時刻 某所よりー
この物語はやっぱり首を突っ込んで便乗してしまった異端者とその便乗に巻き込まれてしまった異端者と能力者と能力者の話である

「ええい!前置きがめちゃくちゃややこしいわい!!!」

この異端者、名を月影夢美
結構お調子者で主にボケ担当、基本いいやつだが大体トラブルの元である残念な少女である。

「大体どうしてこうなったんだ?」

この異端者、名を大空太陽
結構常識人に見せかけた世間知らずなところがある。主にツッコミと事態収集担当、基本にいいやつだ。

「えーと確か・・・何かの力に巻き込まれたんだよね・・・?」

この能力者、名をガンヴォルト
結構不運な所もあるが基本いいやつ・・・かもしれないがいいやつです。能力は蒼き雷霆を持っている穏便派だが戦闘担当かもしれない

「そうそう…でも悪意は感じなかったわよ?」

この能力者、名をモルフォ
結構素直な所もありますが基本いいやつ、能力は電子の謡精を持っており歌が歌えるのだ


「全員説明的にいいやつだったね」

「さて…誰が最初に地雷を踏むかな〜?」

「不安なこと言うんじゃない・・・」

「そうよ、誰も地雷なんて踏むわけないじゃない」


余裕な顔をしているが実際のところ全員、大困惑していた
何を隠そうこの4人がいる場所は見知らぬ場所に見知らぬ背景でたった4人ポツリといるだけだったのだ。


「そんなことよりも、帰れるんだろうな?」

「ハァ・・・もう疲れちゃて(魔力が無くて)全然動けなくってェ」


何故か地面に横たわる夢美に対して今思っていることを言い放つ太陽、本当に魔力が無くなったかどうか真相が分からないが恐らく嘘である


「うーん、私が見た感じ魔力はあるみたいね・・・」

「モルフォってそんなことも出来たんだね」

「ウルト〇ハンドでロケットを貼っつけて飛ばしてやりたいところだが"今回も"違うんだな」

「夢美、君は普段の行いのせいで信頼されてないんだよ」


モルフォにも指摘されたり信頼されないとか言われて顔がどんどん微妙になってくる。
「("今回も"ってなに!?)」
声には出さずとも微妙な感情が顔へと湧き上がってくるだけだったのだ


「こんなやつに頼るぐらいなら俺達だけで探索を開始するか・・・」

「こういう時"マリオさん"が居てくれたら良かったんだけど」

「ちょっと待ったぁー!!!」

「ん?」「えっ」「どうしたの?」

「その方のお名前を出したからには本気出さざるおえないだろ!!!」

「(なんだその、覇王〇吼拳みたいな言い方は・・・だがやる気を出してくれたのはいいことだ)」

「(地雷じゃなくてやる気を出させる名前だったのね・・・!)」


GVの発言によって急にやる気を出す夢美
彼女にとってマリオとはどういう存在なのかは分からないがやっとやる気を出してくれたのはありがたいこと思う太陽とモルフォ


「GV君はたまにズルいですよね!後、ここぞという時に総攻撃に加勢してきますよね!」

「それに関して申し訳ない・・・でもまさかやる気を出すとは思ったいなかったよ?」

「えーっ!!変なところで無自覚っ!?」

「あー・・・それで・・・どこ行くんだ?」

「うーん、さて、どこ行こうかな〜」


2人のたわいのないやり取り(?)が行われつつしっかりと話題の矯正していく、何故なら移動魔法はこのメンツの中でもコイツ(月影夢美)しか覚えてないからである


「(俺達、どうなっちゃうんだ・・・)」

「(何も起こらないといいんだけど・・・)」

「(あらら…不安が重なっちゃたわね…)」


本当に中間地点である茶番世界へ そして、そこから元の世界へとしっかり帰れるのだろうかとこの時、太陽とGVこの2名の心の奥底にある不安を感じ取っていたのはモルフォだけだったという・・・

15人目

「断章:蛇と豚と山猫と零 ④」

「任務を終え、ザ・ボスを超えたスネークは、THE BOSSを超える者、BIGG BOSSの称号を得た。」
「…散々仲間内で殺し合わせておいてよ、白々しいぜ、全く。」
「それが『時代』だったんだ、裏切り者を滅した英雄が求められたんだ。」

時代。
オセロットが度々口にする言葉。
ただの歴史的符号の意味では無いのだろうと、何となくだが感じ取っていた。

「その『時代』の中で、ビッグボスとゼロはせめてザ・ボスの意志だけは継ごうとした。」
「それって?」
「『世界は一つになるべき』という思想(ミーム)だ。だが、ここで解釈が二つに分かれた。」

二つ、というのは二人に別れたという事だろう。
スネークとゼロ、この二人に。

「ゼロは考えた、国家という垣根があるから世界は纏まらないのだと。」

人の思い、文化、価値観、或いは宗教的概念(イデオロギー)等々。
それは社会に生きる者達の意識に根付き、時に争いの火種となる、目に見えない爆導線の様な物。
分かりやすく表現すれば文明や国境、それらが明確に人々を別ち合っていたと。

「じゃあよ、トラオムであの髑髏顔が言ってた『言語を、情報を一括りにする』って…」
「そうだ。ゼロは遺産を元に、あらゆる文明や言語といった情報を統括して世界を一つにしようと考えたんだ。」
「…何だよそれ、個々人の意志はまるで無視かよ。侵略じゃねぇか。」

ウーロンの言う通り、情報を一括りにするという事は、即ち人々を一つの文明に纏める事。
言ってしまえば、思想面の世界侵略、国家規模の洗脳であった。

「一方で国に、いや今回の様な指示を下した『時代』に不審を抱いたボスは、ゼロとは違うやり方で世界に変革を齎そうとした。」
「それが、このDDか?」
「あぁ、正確にはその前身となるMSF…国に属さない軍人の、兵士達の集まりだ。」

『時代』では無く、他でもない自分に忠を尽くす。
トラオムでスネークは語った、信念と他者の思想を尊重する道徳があれば良いと。
それを体現したのがMSF、国境なき軍隊(アウターヘブン)だった。
しかし。

「だが、『時代』はゼロを、情報戦略による侵略を選んだ。世界平和という大義名目のある侵略をだ。その一環でMSF崩壊の一件もあったが、ソレはゼロの本意じゃない。」
「だったら、本当は何をしようとしてたってんだ?」
「ゼロは、『時代』はBIG BOSSを取り込み、英雄的象徴(イコン)として世界を一つにしようとした。だからこそ、スカルフェイスは核飽和で『時代』を作る事で立ち向かおうとしたのだろうがな。」

思い起こされるのは、トラオムでの狙撃塔の一件。
悪鬼羅刹の産声、或いは悲鳴。
核を持った言語、それによる文明侵略からの防衛が、彼の真の悲願だったのだろう。

「…何でだよ、そうじゃねぇだろ。ザ・ボスって女の人が思った事はよ。」

改めて、相棒のスネークが巻き込まれた陰謀の強大さと、余りにも無情な真相を知って、ウーロンの表情が曇る。
国に捨てられ、『時代』に見放された彼女の意志を想って。
文明が駆逐されない為に核を持たねばならないという強迫観念に駆らした『時代』の恐ろしさに怯えて。
同時に、改めて知りたいと願う。
ザ・ボスの本当の意志を、それを継ごうとしたスネークの本心を。
その一心で、オセロットの次の言葉を待った。

「…ボスが選んだ思想の方が正しいのか、正直まだ分からない。」

しかし、彼も自らの知る真実が全てとは思っていない。
故に自身の考えそのものには言葉を濁しながら、続けた。

「だが、少なくとも俺達は『時代』に立ち向かおうとしたボスを選んだ。そうしてボスとゼロは決別したが、ゼロはそれを快く思わなかった。」
「取り込もうとする程だもんな。」
「あぁ、対立して尚、ゼロはボスが欲しかった。」
「…まさかよ、あのホムンクルスって。」
「そうだ。BIG BOSSを模倣したクローン計画、『恐るべき子供達計画』の試作品だ。」

ぞわぁ、と背筋が凍り付く。
肌がひりつく程の熱が立ち込めているというのに、気分はまるでつららを刺された様だ。
同時に、沸々と憤りが湧き上がってくる。

「そんな悪魔にまでなって、彼女の何になるってんだよ!ザ・ボスって人はそんな事望んじゃいねぇだろ!?」
「…そうだな。母さんはきっと喜ばない。手向けにもならんだろうさ。」

静かに、噛み締めるように呟いた一言が、三人の間に流れる沈黙に溶けていく。
少しの間を置いて、オセロットは続けた。

「そうして完全に袂を別った二人だが、『時代』はゼロの、いや奴等の組織『サイファー』の物になった。ザ・ボスでも、ビッグボスでもなく。」
「つーことは、俺達は…」
「あぁ、『時代』を相手取る事になった。」

そこで初めて、スネークが口を挟んだ。
同時に、ヴォルギンの四肢がピクリと動きを見せる。
再び湧き上がる熱風が、彼の復活を告げる。
それを横目に、スネークは語る。

「だが、『時代』と戦うには、俺達は余りにも大きすぎた。そうして一度は滅んだ。」

事実、MSFは彼等を接収せんと襲撃を受けた。
次いで起こった、MSF崩壊。
あれはゼロの本意では無かったが、逆らい続ければどの道ああなっていたであろう。

「しかし、同時に転機でもあった。」

ここからは俺の役目だと、スネークが言葉を引き継ぐ。
その後ろに迫る燃える男、ヴォルギン。
彼の手が、背中に迫ろうとして。

「おい、後ろ!」
「俺達はMSFを再建する一方で、ボス本人には一人になって貰った。」

振り返って告げられた言葉に、男が手を止める。
まるで時間が凍り付いた様に。
ボス本人は一人になる。
それは即ち。

「俺は、BIG BOSSの影武者だ。あの日、お前が病院で出会った青い眼のボスこそ、本物だったんだ。」

衝撃、或いは戦慄。
誰もが言葉を失う中、スネークは己の正体を明かした。
鉛の如き重い沈黙が、空間を支配する。
英雄を、その思想を受け継ぐ者達を狂わせた『時代』の矛先を、一身に受ける身になるのだと言ったのだ。
誰よりも、何よりスネーク自身がその重圧を感じているだろう。

「漸く完全に思い出したな、エイハブ。」
「あぁ、俺の使命がやっと掴めた。」

だが、彼は恐れてはいない。
己の意志を貫くと、既に決めているからだ。
スネークは、いやエイハブはその静寂の中で決意を露わにする。
同時に、ヴォルギンの四肢が再び動く。
だが、それは明確な意思を持ったものではない。

_ア”ァ、ァ…

寧ろ、無意識的な反射に近いだろう。
当然だ、報復の一心だけで繋いできた命なのだ。
その報復相手がもう居ないとなれば、折れるのは必定という物。
にわか雨が一層強くなり、赤く燃えていた身体から熱が引き、軋みを上げる。
まるで糸が切れた操り人形の様に、虚ろな眼差しを浮かべ。
そのまま項垂れる様に、クレーターの中へと、びしゃりと水音を立てて転がり落ちた。
クレーターには、何時の間にか水たまりが出来ていた。

「コイツも下郎ではあったが、スカルフェイスの作ろうとした『時代』に翻弄された一人だった。」

そんな彼を、オセロットは哀れむように見つめ、呟いた。

16人目

「星と追跡者と絆の線」

 DDのテント爆破事件発生から、数分後。
 何とか炎は鎮圧されたようで、彩香が戻ってくる。

「あっちの方は大丈夫みたい。」
「そうか……良かった。ちょっと飯買ってくる。」

 そういって、月夜は仮宿のテントを出ようとする。

「あ、待ってください。」
「おう、フィオレか。身体は大丈夫か?もう動けるのか」
「何とか、怪我は浅いみたいで。ついていってもいいですか?水が欲しくて。」

 ふらつきながら、彼女は月夜と共についていくという。
 
「やめとけ、お前が倒れようものなら大変だ。」

 フィオレの体調を心配してか、月夜は残るように言う。
 しかし彼女の眼は真剣実を帯びている。

「それに、ちょっと話したいことが。」
「話したいことだ?それは、緊急性がある話?」
「ええ。少しでも可能性があるなら……。」

「あー、分かった。ちょっと歩くぞ。」



 少し歩いた先にあるコンビニで水と数日分の食料を買ったのち、彼らは帰路につく。

「月夜さん、ちょっといいですか?」
「いきなりどうした?」

 フィオレは、この状況下で月夜にのみ聞こえるように話し始める。

「私は、あなたの事に関して尊敬はしていますし、感謝もしています。教団から私なんかの命を助けてくれて、戦う理由も与えてくれて。」
「当然だろ、俺を冷血漢みたいに考えんなよ……。」

 フィオレは言葉を続ける。
 それは、月夜に関して全服の信頼を置いているから。

「でもこれに関しては流星旅団の一員という訳ではなく、私自身が気持ち悪いから言うんですけど……」
「回りくどいな、言いたいことがあるならはっきり言ってくれ。」

「ずっとあなたを、誰かが追跡していますよ?」

 一瞬、心拍が強まった。
 青天の霹靂が脳内に鳴り響く。
 恐怖心をこらえているつもりでも、俺の表情はこわばり、その歩みが止まる。
 しかし、冷静な脳は『何もしゃべるな』と命令している。
 今この状況で言ったら藪蛇になりそうな気がしたからだ。

「正直目障りなんです。私の探知術式に同じ人物が近づいてきて。変にストーカーされると嫌な気分になるんですよ。話したいことがあれば話せばいいのに。」
「それは邪魔だな。なるべく早く突き止め、始末するとしよう。」

 ストーカーの正体が誰かまでは分からない。
 2人は背後を警戒しながら、そのままテントに到着した。



「しかし問題は、どうやってロンドンに行くかだ。直行で行くにしても、ギリシャで頑張ってくれているうちに別行動をとるにしても、脚は必要になる。」

 戻ってきたテントの一室で、月夜は流星旅団残党とペルフェクタリアたちと共に今後の計画の詳細を詰めていた。

「移動手段はDDのヘリでどうにかなりそうだけど……問題は行ったとしての伝手。ロンドンにもメサイア教団の手が伸びていないとは考えられない。何しろ……ワイミーズハウスは世界最高の名探偵にして、キラと戦った『L』の育った施設だしね。」

「行先はロンドンの”時計塔”とワイミーズハウス、だが無許可で入るわけにも行かないしな……手配してくれる奴を探ってみるか。ダメもとで何人か当たってみよう。」
「何人か、当たる?」

 そういって、スマートフォンを弄る月夜。
 その表情は真剣そのもの。

「こう見えても伝手は多いんだよ俺。メサイア教団に反逆しているうちに友人や仲間が増えちまってな。港区の流星旅団だけじゃない。流星旅団の亜流組織は小規模だけどいっぱいいる。」
「なるほど、故に信頼できる同志に連絡する。という訳か。」

 感心するペルフェクタリアをよそに、月夜はスマートフォンから電話を開始する。
 その電話先は……。

「もしもし。俺だフラット。唐突で悪いが、ワイミーズハウス”訪問”の準備をしてくれるか?あと時計塔も。ちょっと調査したいことがあってな___訪問時の名前?あー『流星旅団』で通してくれ。…………すぐやる?わかった、ありがとうな。」

 誰にも聞こえない声で取引をする。
 数分後電話を切り、月夜は話をまとめる。

「時計塔の”フラット・エスカルドス”って奴に頼んだが、何とかなりそうだ。裏切る可能性は限りなく0だし、その辺は安心してもいい。」

「だがその……ワイミーズハウスに行って何をするつもりだ?」
「ニアってやつが『キラが死んだ後、その後継者及び後継組織が出る可能性』を調査しててだな。それにまつわる情報を渡す用意があるんだってさ……。」








「これでよかったのですか?焔坂同志?」

 ストーカーの正体は、か弱い女の子ではなく影にしのぶ雀蜂。
 しかし、抹殺しようともしないで斥候まがいの行動を取っている。

『うむ、あの男はまだ殺すな。わらわはあの男の”正体”が知りたい。なにしろ神體を身に宿す女の兄だ。そんなもの、ただの人間であるわけがない……!」

 その興味/恋心は、燃える焔の如く。

17人目

「断章:蛇と豚と山猫と零 Ⓥ」

にわか雨の終わり際、強い通り雨が過ぎ去った空の下。
熱気を振り絞り乾き切った体を転がすヴォルギンだったもの。

「これで、過去の因縁には決着が付いた。」

戦いの終わり、それは一つの結末でもある。
オセロットは、その結末に何を想い浮かべたのか。
ただ、一抹の感傷を胸に仕舞い込んだまま、雲の切れ目から降り注ぐ月明かりを背に受け。
彼等の物語の、第一章が幕を閉じた。

「もう、コイツは襲ってこねぇんだよな。」
「あぁ、完全に燃え尽きたんだ。」

同時に、ヴォルギンの死体がさらさらと灰に還っていく。
皮膚は跡形も無く崩れ、弾丸で穴だらけの骨はムラが出来る程に焼き付いている。
つい先程まで炎の化身となって襲ってきたとは、とても思えない。
その光景に、思わずウーロンは息を呑んだ。

「二度と蘇ってくんじゃねぇぞ、おっかねぇからな。」
「そうだな、いっそ丁重に埋葬してやろう。」

生前が下衆であろうとも、亡骸をいたぶる趣味は無い。
二人は静かに合掌した後、DDの隊員を呼び寄せる。

「隊長、指示を。」
「封鎖と厳戒体制は解除、全てが終わった。この男の遺体を埋めてやれ。」
「はっ。」

途端に兵士たちが行き交い、各々の事後処理作業に取り掛かる。
その一環で、決戦の地を墓場とすることで、彼への手向けとした。
それを見届けるまでも無く、二人と一匹はその場を後にする。

「なぁ、これから俺達、どうなっちまうんだ。」
「少なくとも、今までの様には行かない。」

オセロットの嘘偽りの無い答えは、真実に近かった。

「俺は一時期、ゼロのスパイになっていたから言える。これから思想や言論は一つに統制されていく。そんな『時代の流れ』に、俺達DDは抗った。」
「そういやスパイが本業だったなお前。それでゼロ、いや『サイファー』だっけか?そいつ等の作る『時代の流れ』って奴か。」
「あぁ、そして『反テロの時代』に何処にも属さない軍隊、即ちテロリストと同等のMSFが滅ぼされた様に。」

思い返すは、MSF崩壊の日。
そして、ジンジャータウンでBIG BOSSとすり替わった運命の日。

「これから思想統一という『ゼロの時代』、『サイファー』に狙われる事になる。」

エイハブの言葉は、ある種の予言めいたもの。
そう断言できるほど、確信に満ちていた。
サイファーがBIG BOSSという象徴を、時代に沿わない者を手中に収めようとする以上、再び相見える事になるだろう。
それまでは。

「本物のBIG BOSSが『時代』に、『世界』に立ち向かえる様になるまで、俺達はひたすら耐え忍び、待たなければならない。」
「そう、だな…」

ウーロンは、不安げな面持ちを浮かべる。
しかし、それは無理もない話。
何せ、彼にとっては人生初めての経験なのだ。
何が正解か、どうすれば良いか、分かるはずがない。
だが。

「…いいや、そうじゃねぇだろ。」
「何?」

ウーロンはいつもの不敵な表情を浮かべ、ニヤリと笑って見せた。
まるで、彼がそう言う事を分かっていたかのように。

「俺等DDは、何時だって駆け足差し足忍び足だったじゃねぇか。待ってるなんて、性に合わねぇだろ?」
「ウーロン、それは。」

相棒の言葉に、エイハブは苦笑を漏らした。

「ならビッグボスだけじゃねぇ、俺達も立ち向かってやろうじゃねぇか!」
「…全く、これだからお前は放っておけない。」

無鉄砲で怯えっぽい癖に、妙な所で肝が据わっていて、何故か気が楽になる。
その反面、危なっかしくもあるのだが。

「トラオムで言ってただろ、『核は要らない、己の信念と道徳があればそれで良い』ってよ。」
「違いない、だがそれは影武者としての…」
「関係ねぇよ、お前はお前だ。誰かの代わりじゃねぇ、俺達のボスだよ。」

影武者としての迷いを、ウーロンはスッパリと切り捨てる。

「俺もありのまま世界が繋がるってのが、ザ・ボスって女の人が残したかった意志だと思うぜ。だったらよ、実現させてやろうじゃねぇか!」
「…出来るのか、俺達に?」
「オイオイ、知らねぇのか?世界ってのはな、簡単に繋がっちまうんだぜ。ドラゴンワールドみたいによ。」
「ハッハッハ!言うじゃないか全く、ここまで肝の据わった豚は初めてだ!」

彼の言葉は、余りに突拍子が無く、無茶苦茶だった。
しかしその分、力強く、そして何より魅力的に響いた。
それ故に、オセロット達は笑い声を上げた。
今ここに、一つの分岐点(サーガ)が刻まれた。
この道の行く末は、誰も知らない。

「なぁ、この世界じゃ死人の魂って何処へ行くんだ?」

ふと、傍らの相棒に問い掛けるウーロン。
唐突な質問に、スネークは少し考えるそぶりを見せ、答える。

「さぁな。俺はオカルトは信じないが、サンズリバー(三途の川)の先で見守ってるのかもな。」
「はっ、おめぇが言うと洒落にならねぇよ。」

冗談半分で返したスネークの言葉に、ウーロンは笑った。
このDDという組織を見守ってる存在が言うには、重みが在り過ぎた。
そんな様を見て、ウーロンは空を見て、呟く。

「見守っててくれよな、ザ・ボスさんよ。」
「そうだな、アンタの意志、俺達が引き継ぐ。」

月光が映ったその眼は、嫌に美しく、そして凛々しく見えた。
だが、それは一瞬の事。
すぐに、いつも通りの彼に戻る。
何時もの、能天気で無謀な、彼の顔に。
これからどうなるか何て事は、まるで分からないが。

「改めて宜しくな、エイハブ。」
「ふっ、スネークで良い。」
「そうかよ。」

雨上がりに差す一際美しい星明かりが、彼等の行く末を照らし出している様に思えた。

「スネーク!」

そんな彼等を呼ぶ男の声が響く。
振り向けば、そこにはカズが居た。

「カズか、奴なら片付いたぞ。」
「それは聞いた、じゃなくて別件だ。」

片足の身で急いで来たのだろう、額には汗が浮かんでいる。

「ZEKEだ。連中、海底に隠したZEKEを引き上げられなかったらしい。今の俺達になら出来る、ギリシャに向かう手土産に丁度良い。」



薄暗い闇の中で行われる、談合。
そこでヒレステーキに舌鼓を打つ、子どもと老人がいた。

「順調みたいだね、CROSS HEROESって。」
「ふん、世界が垣根を超えて集うだったか?」

子どもの言葉に、老人は嘲笑する。
最後の一切れまで行儀良く口にし、食器を置くと口元を拭く。
次いで言葉にしたのは、絶対的な威信と暴威だった。

「そんな事は起きんよ、何より私がさせない。ありのままの世界など、出来もしない物を認めはしない。」
「じゃあ君は、どんなシナリオを立てるの?」
「私が描いた時代(筋書き)か?電子防諜(シギント)の時代だ。情報が人の無意識を誘導し、生き死にさえ決める時代だよ。」

人差し指を立て、彼は高らかに宣言した。
この世界に、新たな秩序を打ち立てると。
それは歴史に裏打ちされた思想。
一つの意志が全てを決める、ある種の独裁であった。

「その為にもDDから抑えねばなるまい。」



断章:蛇と豚と山猫と零 完

18人目

「インターミッション:取引、そして旅立ち」

「おーい! みんなァー!!」

 康一が大手を振って走って来る。杜王町のシャドウ騒ぎも一段落して、
町には平穏が戻りつつあった。

「康一、無事だったか! お前、どこに行ってたんだよォ~?」
「それが、ちょっと色々とあって……怪しい男がいてさ……」

「怪しい男? どういう事だよ、それェ~」
「まるで何かを操っているみたいに、高台から杜王町を眺めていたんだ。
それをエコーズで見つけた僕が『何者だ!』って叫んだら、
そいつは慌てて逃げちゃって……銃を持ってる奴らもいた。
ヤバいッ! って思った時、誰かが助けてくれたんだけど……」

「操る……? それってまさか……」
「あのやべー姉ちゃんを操っていたのか!?」
「可能性はあるな……」

「――何? AW-S06が帰還していないだと?」

 芥は雀蜂からの連絡に眉根を寄せた。

「はい。あれからすぐにコントロールが効かなくなり、撤退しました。
その後、AW-S06の姿は確認できませんでした」
「あの不良品め……やはり絶対兵士の成功例は報告書にあったフランク・イェーガー以外に無かったと言う事か」

 フランク・イェーガー。後に「グレイ・フォックス」と称される事になる男。
数ある絶対兵士の実験体の中においても最高峰とされた人物である。


『追い込まれた狐は……ジャッカルより凶暴だッッッ!!』


「はあ、はあ……」

 緊急脱出プログラムによって杜王町を離れた辺古山ペコ・オルタは、
樹海に不時着してしまっていた。まさに手負いの獣と言った様相だ。

「このまま戻っても……私は廃棄処分される……」

 度重なる戦闘と、芥による洗脳行為により、彼女は心身ともに疲弊していた。
なぎこ……もとい、清少納言の宝具によって希望と絶望の感情のせめぎ合いが起こった事がダメ押しとなり、彼女は既に限界を迎えようとしていたのだ。

『これは……! あなたが本当に望んだことなんですか!?
こんなことをしても、あなたの心は何も満たされないはずです!』

 マシュの言葉がリフレインする。

「心……私の心とは、何だ……そんなもの……私には……」

 彼女はゆっくりと立ち上がり、そして歩き出す。今の彼女には、何も残されていない。
戦う力もなく、帰る場所もない。

「私は……どうすればいい……」

「やや!! 怪我をした人が……」
「ぬぬぬ!? 大変っす~!!」

 もはや視界もぼやけている。意識を保つ事も難しくなっていた。

(ああ、これで終わりなのか……)

 最後に見たのは青と桃色の機械仕掛けの人影。
薄れゆく意識の中で、ペコ・オルタは膝から崩れ落ちた。
一方、杜王町では戦いを終えた心の怪盗団とCROSS HEROESがお互いの情報を
交換しているところであった。

「特異点……なるほど、ここは俺たちが暮らしていた世界とは違う……と言う訳か」
「この姿に変身できてペルソナも使えるから、認知世界の方が近いのかもね」
「シャドウが出てきたのもそのせいかも……」

 喜多川祐介、高巻杏、新島真……彼ら彼女らは都内にある秀仁学園や洸星高校に通う
ごく普通の高校生だった。
だが、人間の心の闇がもたらす事件に巻き込まれたことから、
「認知」が生み出す世界、そして人の心の奥底にある「もう一人の自分」、
別人格が具現化した特殊能力「ペルソナ」が存在する事を知る。
彼らは素性を仮面の下に隠し、世に蔓延る理不尽な悪を「改心」させる
「心の怪盗団」を結成。
その活躍は次第に世間に浸透し、ついには「世紀の大泥棒」との対決にまで
発展する事になるのだが、それはまた別の物語……

「私たちはジョーカーの行方を探しているの。今は何処にいるんだか……」
「恐らく、ジョーカーはキン肉マン達と行動を共にしているはずだ。
ストロング・ザ・武道がそう言っていた」

 テリーマンは、試作型神精樹で交戦したストロング・ザ・武道から
キン肉マンが特異点に来ている事を知らされていた。
そしてジョーカーもまた、デビルサマナーであるゲイルと共にCROSS HEROESに接触後、
完璧超人軍団を叩きのめす使命に燃えるアシュラマンやブラックホールら
悪魔超人の力を借りて特異点入りし、短期間ではあるが仗助や康一との共闘も
果たしている。
で、あるならば彼らもまた、この世界のどこかにいるはずだ。

「ジョーカーの知り合いだったとはなァ~。騎士アレックスの時もそうだが、
巡り巡って、『縁』ってのはあるもんだな」
「どうだ? 俺たちと手を組む気はないか?」

 シャドウとの戦いを通して、彼らの絆はより一層深まった。
共に戦える仲間がいる事は、大きな支えとなるだろう。

「取引……と言う事ですか」
「ああ。キン肉マンやジョーカーを見つけ出す事は俺たちにとっても
君たちにとっても共通の目的のはずだ」

 承太郎の申し出に対し、フォックスはパンサーとクイーンに視線を送る。
二人は小さくうなずいた。異論はないらしい。
フォックスは承太郎に向き直り、 手を差し出した。

「貴方たちならば……信頼できる」
「ああ……よろしく頼むぜ」

こうして、新たなる戦士が集った。

「しかし……問題は藤丸の大将だなァ」
「まだ目を覚まさないのか……」

 金時とアルキメデスは、未だに眠り続けている立香を心配する。
先の戦いにおいて、立香はサーヴァント達の魔力供給を担っていた。
特にマシュはその影響が顕著であり、ペコ・オルタとの戦いでは
明らかにパワー負けしていた。

「仕方ない。動ける者だけでクォーツァーの拠点に先行するしかないだろう」
「潜入なら、手慣れたものだ」
「心の怪盗団にお任せ♪」

 藤丸立香を欠いた状態で、マシュ、金時、アルキメデスは杜王町に残留、
心の怪盗団の3人を加えた残りのメンバーでクォーツァーの拠点を目指す事となった。

「なぎこ……ついてくる気か?」
「もち! 仗助たちだけじゃあ不安だからね~!」
「言ってくれるじゃあねえか……お前、アレだろ? よくわかんねーけど、
サーヴァントとか言う奴なんだろ?」

 なぎこには単独行動のスキルがあり、例えマスターの魔力供給が無くても数日は
活動できるらしい。

「だいじょぶ、だいじょぶ。我、星5ぞ? 期間限定ぞ?」
「何の話だよ……」

「うだうだやってる暇は無い。急ぐぞ」
「すみません、皆さん……先輩が目覚めたら急いで合流しますから……」

 こうして、CROSS HEROESと心の怪盗団一行は一路クォーツァーの本拠地へと向かう。
果たして、そこで彼らが目にするものとは――?

19人目

「迫りくる、開戦の時」

一方その頃ムーア界では、
「……遂にやつらも蘇ったか……」
「ジークジオン様どうします?今すぐ奴らのところへ攻めに行きましょうか?」
「いや、奴らと戦うのはもう少し後……第二の最終戦争(ラグナロク)が始まった時だ」
「ラグナロク……ジークジオン様がゾーマ様と共に参加した全平行世界を巻き込んだ戦いですか……」
「そうだ。あの時はガンダム族やロト、それにゼウス共に邪魔されたが今回は違う。
ゾーマだけと手を組んでたあの時とは異なり竜王やショッカーなどと同盟を組み、更には老人共も同盟とまではいかんが協力関係にある…!
邪魔になる可能性のある存在もガンダム族の末裔共とやつらに協力しているCROSS HEROESのみ…!今回こそは我々がラグナロクに勝利し全ての平行世界を我がものにする…!」
「なるほど……」
するとジオン族の魔物のうちの一体がやって来た。
「ジークジオン様、ご報告がございます」
「どうした?」
「どうやらあちらの世界(リ・ユニオン・スクエア)にいるCROSS HEROESが一部ではありますがこちらの世界に転移しようとしてるとあちらの世界に送った者達から連絡がありました、その中には我らが宿敵であるガンダム族と竜王様の宿敵であるアレクなる人物もいるとのことです」
「ほう、やつらが特異点に…」
「ジークジオン様、どうなさいます?」
「丁度いい、新たなラグナロクが始まる前に数少ない邪魔者である奴らを始末するとしよう……特異点にいる竜王にも伝えとけ!」
「はっ!」
(せっかくのチャンスだ、復活させたばかりではあるが、ヤツも向かわせるとするか…!)



一方その頃、リ・ユニオン・スクエアでは残留組がトゥアハー・デ・ダナンと合流しミケーネが暴れてるギリシャへ移動を開始していた。
「・・・」
「どうしたんですか竜馬さん?」
「いや、まさかこっちの世界でも神と戦うことになるとはな……」
「こっちの世界でも?」
「あぁ、俺はこの世界に飛ばされる前、訳あって神の奴らと戦ってたんだよ。
つっても、これから戦うミケーネとやらとは違うけどな」
「そ、そうだったんですか……」
(……そういや、あの時からこの世界に飛ばされるまでずっと神の奴らと戦ってたから、俺が元々いた世界に一回も帰ってねえんだよな……
……あいつら、元気してんのか?)
「……ところでテッサ艦長、今ギリシャはどうなってるんですか?」
「はい、弓教授やシズマ会長からの連絡によれば光子力研究所のマジンガー軍団や日本の自衛隊が私達よりも先にギリシャへ向かい現地の軍隊と共にミケーネと戦ったおりますが、苦戦を強いられているとのことです」
「そうですか……」
「更にミケーネの攻撃は他の国へ及んでおり、中には既に制圧されているところまであるらしいです」
「となると、余計に急いでギリシャへ行かねえとな」
「・・・」
「どうしたの甲児くん?」
「あっいや、なんでもないよ」
(ミケーネ……前にケドラによって見せられた夢の中で戦った時はゼウスの協力がなかったら勝つことができなかった相手……俺たちだけで勝てるのか…?)

20人目

「渾敦結社グランドクロス」

「……」

 藤丸立香は深い深い眠りの淵に沈んでいた。

「ここは……はっ!」

 目が覚めた立香はすぐに状況を確認した。

「私……また……?」

 周囲を見渡すと、そこは果てない宇宙だった。
だが、息はできる。立香は自分が何度目かの夢の世界へ迷い込んだことを自覚した。

「あら、見ない顔ね」

 背後から声がする。
振り返ると、そこには暁美ほむらがいた。

「どうやら、魂だけが彷徨っているようだけど……この娘のように」
「……」

 ほむらの背中から顔を覗かせたのは、ペルフェクタリアから分かたれた半身……
「平坂たりあ」だった。
彼女もまた、禍津星穢の襲撃により世界を滅ぼされ、魂だけの存在となっていたのだ。

「あなたたちは一体……」
「少し、貴女の事を探らせてもらうわね」
「なっ……」

 ほむらは手の甲に浮かぶダークオーブを光らせた。
すると、立香の中にあった記憶が全て引き出されていく。
それは、彼女が今まで歩んできた人生の軌跡であり、カルデアでの戦いの記録であった。

「これは……」
「なるほど……ディケイドの関係者。そして、人類最後のマスター……
あの人もつくづく、尋常ならざる者と縁を結ぼうとするみたいね」

「門矢さんの知り合い……?」
「まあ、時には共に戦い、時には殺し合った仲といったところかしら」
「……」

 立香にはその言葉の意味がよく理解できなかったが、少なくとも目の前の少女が
ただならぬ者であることは理解できた。

「でも、安心していいわよ。私たちは貴女の敵じゃない。味方でもないけれど」
「ここは一体どこなの? それに私はどうしてここに?」

「全ての始まりの場所……「ラグナロク」が引き起こされた世界」
「ラグナロク……?」

 聞いたことのない名前だ。
しかし、それが今の状況に深く関わっていることだけは分かる。

「ディケイドに会ったのならば、少なからず聞いているはず。
世界が次々と滅びの事象に蝕まれているって話をね」

 確かに、彼は言っていた。特異点とはまた別の脅威が襲い掛かっていると。
特異点と隣り合う世界が融合を始め、諸共に滅びつつあることを。
そう言った現象が平行宇宙の各地で起きているとも。

「滅びの現象……それは意図的に引き起こされている。例えば、そう……
この世界の歪みとか」

 ほむらは指差す。その先にあるものを見て、立香も思わず絶句してしまった。
そこにあったのは、巨大なブラックホールのようなものだった。
まるで周囲の空間を飲み込もうとしているかのように絶えず増長を続けており、
それを見ただけで本能的な恐怖を感じてしまう。
それは、紛れもなく人類が直面してはいけない脅威そのものの姿だった。

「意図的に……って言ってたわよね。一体、誰のせいなの!?」

 ほむらは静かに首を振る。
彼女は知っていた。この滅びを引き起こす存在の正体を。

「渾敦結社グランドクロス。それが彼らの名。
彼らは、人類の文明が発達する度に破壊工作を繰り返して文明を滅ぼしてきた。
彼らにとって人類の歴史は悪徳の象徴でしかないから」

 かつて、地球上で栄華を極めた文明が悉く破滅していった理由。
それは、彼らが人の歴史に介入することで歴史そのものを歪めていたからだ。
その組織を「老人たち」と形容する者もいる。

「私もかつて、この娘がいた世界で戦った事がある。その時に戦った組織の背後に、
彼らはいた」
「あの人達は、私やペルを利用して、色んな世界を滅ぼそうとしていた。
ペルはわたしを助けるためにほむらちゃんと一緒に戦ってきたんだ」

 ほむらの背中に隠れながら、たりあは言う。
彼女の話を聞く限り、どうやら目の前にいる少女達とその組織は浅からぬ因縁が
あるようだ。

「組織は壊滅したけれど、渾敦結社そのものは未だに活動を続けているわ。
この宇宙だけじゃなく、他の世界でも」

 立香の中に疑問が生じる。
もし仮に、渾敦結社という組織がまだ生きているとして、
なぜわざわざ他所の世界にまで侵攻しようとするのか。
そもそも、そんな危険な連中が存在しているのであれば、放っておくわけにもいかない。

「それじゃあ、もしかして私達が戦っていたメサイア教団とか言う人たちも……」

 立香の言葉に、ほむらは首肯した。
つまり、この宇宙以外にも似たような危険因子が蔓延っていることになる。
人類史が積み重ねた業そのものが形を成したもの。それが渾敦結社である。

「ラグナロクが成された世界は、全ての生命体が互いに殺し合い、その果てに
世界そのものが闇に葬られる。
或いは、ラグナロクに至る可能性が認められた世界もまた、そうなる前に渾敦結社によって
消されると言うわけね」

「まるで……人理焼却の再現みたい……」

 そう、ほむらの話を聞いて立香は思った。
世界を滅ぼす災厄。それは、かつて引き起こされた魔術王による人理焼却と
同じではないか。

「そうだと分かったら……早くマシュ達の所に戻らないと!」

 しかし、自らの意思で肉体に戻ることは叶わない。
なぜならば、ここは夢の世界なのだから。夢の世界のルールに従っている以上、
現実世界で目覚めない限りここから出ることはできない。

「ここで貴女と会ったのも、偶然ではなさそうね」

「ククク……クハハハハハ!!」
「!?」

 突如として響き渡る笑い声。
たりあは慌ててほむらに抱き着いて震えている。

「この声は……」

21人目

「断章:イマジナリー・ウィル ⑥」

 存在しなかった世界 休憩室

「お~いゼクシオ~ン~ゼクシオン同志ぃ~。」
「はぁ……何ですかカルネウス?私は今忙しいんですよ。」
「漬物作るのにか?」

 ゼクシオンが趣味で作っているであろう手製の漬物の様子を見ているところに、カルネウスがやってきた。
 飄々とした様子として話すカルネウス。

「いやそのなんだ、苗木クンだっけか?あいつの事を『この世全ての悪』にするんだろ?どうやるの?」
「ああ、そのことですか。さてどこから説明したものか……。」

 この世全ての悪と、苗木誠。
 しばらく考え込んだのち、ゼクシオンは口を開く。

「……ところでカルネウス同志、『アンリマユ』についてはご存じで?」
「なんだそら?おいしいのか?」

 アンリマユ。
 ゾロアスター教における絶対悪たる悪魔の名にして、復讐者の英霊。

「それをエネルギーの結晶たる聖杯に入れるとどうなるかを知っていますか?」
「さぁ?知らねぇや。」
「在り体的に言いますと、聖杯は汚染され、悪のエネルギーで満ちた『泥』が生まれます。それを苗木誠に与えることで、彼は……。」
「この世全ての悪になりえる、と。でも……んなもん与えたらあいつそうなる前に死んじまうんじゃねぇのか?」

 カルネウスの言うことももっともだ。
 いきなり聖杯の泥という禍々しく強力な物を与えようものならば、苗木誠は死んでしまう。
 成人したての大人に、いきなり度数の高いウォッカを飲ませるようなものだ。

「そこはまぁ、ゆっくりと与えるのです。最初は食事にほんの少し混ぜ、その量を増やし続けることでその体に聖杯の泥とアンリマユを適合させるのですよ。」



「なぁエイダムのじいさん。」
「どうしたカルネウス、改まって。」

 カルネウスは、まるで小遣いをねだる子供のように作った礼儀正しさを見せる。
 エイダムはその様子を訝しみながら、彼の質問を聞く体制を取る。

「グランドクソエイム……じゃねぇや、グランドクロスだっけか?アレって何だ?」
「!」

 グランドクロス。
 その一言を聞いたエイダムの表情が、一瞬強張る。
 今まで鉄仮面でもつけているのではないかと感情を表にしなかった彼の表情に変化が出たのだ。
 それを意に返さず、エイダムは質問をする。

「……それがどうかしたか?内容によっては貴様を追放することになる。」
「いやァ?俺は知りたいだけだぜ?あの組織が一体どんなものかをな。」
「……知っていたとしても、貴様のような口が羽毛よりも軽い男には決して言わんよ。」

 一笑に付しながら彼の質問をいなす。
 カルネウスは、何処か納得のいかない表情を浮かべるもこれ以上聞いても意味がないことを悟ったのかこれ以上追うことをやめた。

「そんなこと話している暇があるのならば、貴様も行ってきたらいい。ロンドンのワイミーズハウスに連中が行くつもりだ。先に行って情報を抹消して来い!」
「へいへいしゃあねぇ、俺も本腰据えて行きますか。」

 カルネウスは悪い笑みを浮かべ、その場を去った。
 銃を手に、死霊と黒魔術を操る魔術使い。

 彼こそは『アザゼル・O(オッド)・カルネウス』。
 メサイア教団大司教 第3位の「銃の化身」である。

22人目

「混戦の兆し」

空が罅割れた。
鈍い金切り声を上げて、引き裂かれるように。
罅は波及する様に広がり、波紋を描いた。

_ピキッ、ギイィィ…!

それは歪に膨らみ、捻じれ、渦を巻き。
やがて出来た虚空の坩堝は、内から食い破られ。
白銀に彩られた一隻の船が飛び出してきた。

「到、着…きっっつっ!」

_その船、アビダインの窓一杯に、人の顔が大量に押し付けられた状態で。

「ちょっと、席とか無かったの!?」
「いやぁ悪いね?ほら、元々一人乗りだったからさ。」

そんな醜態に晒され、ツクヨミが悲鳴に近い怒声を上げる。
仕方無いのだ、元より狭い艦内に対G機構は無い。
そんな物が音速を超えれば、まぁ踏ん張りなぞ効く筈も無いと言うのが道理という物。

「今度気が向いたら、重力制御とかで何とかするよ。」
「そうした方が良いよ、だってお前埋もれてバグってるじゃん。」

尚、当の艦長は食料として積み込んだ消毒済みの鹿の山に突っ込んで、全身が複雑怪奇に伸びていた。
元から物理演算の緩いゲームでバグった、ポリゴンの引き延ばされたラグドールの様であった。

「あっはっは!何だこれ、お前の船って面白れぇな!」
「お前の身体の方がよっぽど愉快な事になってるぞ。」

ルフィに至っては、鹿と人の隙間を縫う様に四肢と胴体が捻じれ絡まっていた。
此方はゴム人間故に精密に伸びるので、より一層不気味さを増している。
ちなみに鹿は無事だった。

「さて、ゴートシミュレーターはここまでにして、だ。」
「あいたぁ!?」

一瞬ガタガタと残像まみれのブレ移動の様な物を見せてから、スポッと音を立てて鹿の山を抜け出すアビィ。
その衝撃を皮切りに、絡まり合っていた全員が互いに抜け合う。
勢い余ってカナディアンマンの頭部にルフィの腕が吹っ飛んでいったが、それはご愛嬌。

「全く、外はどうなっている?ちゃんと到着しただろうな?」
「あぁ、間違いなく着いてるよ。」

ベジータが外の様子を伺う。
ブリッジから見える景色は、まさしく枯れた世界。
命の息吹を感じぬ、乾いた砂混じりの風が舞い上がっている。

「ここが特異点だ。」

草木一本見つからぬ不毛の大地があった。

「こりゃひっでぇな、オラが見た時はまだ緑があったぞ?」

以前、一度訪れた悟空がそう語る。
かつては幾多もの世界が連なり、繋ぎ合わされていた異形の大地だったのだろう。
しかし今は、どこもかしこも一様に朽ち果てた様が見受けられる。
大地という大地はその全てが乾き切り、地盤の体を成さない土地は建物の荷重に耐えられず陥没し、ドミノを砂山にばら撒いた様に建物を埋もれさせている。
かつてそこに有ったであろう文明の痕跡は、その全てが退廃した模様を描いていた。

「随分、荒れてしまったわね。」
「あぁ、やっぱ神精樹っちゅー奴の影響だろうな。」

世界そのものが死んだかの様な惨状を見て、ツクヨミと悟空がそう呟く。
今までも斯様な退廃世界を見てきたゲイツ達は、その景色と重ね合わせたのか、一様に眉を顰めざるを得ない。
それは彼等にとって忘れられず、同時に二度と見たくもなかった光景だったからだ。

「ここに、ソウゴが居るのね。」
「それだけじゃねぇ。世界をこんなにしちまった奴や、メサイア教団の奴等だっている、特異点を作った奴もいるかも知れない。」

ツクヨミの呟きに、シャルルが付け足す様に言う。
そう、ここは特異な空間であると同時にあらゆる意志の飛び交う場なのだ。
無数の策謀が複雑に絡み合い、入り乱れ、一つの特異点という箱庭に収まっている。
瞬きをする次の瞬間に、何が起きても可笑しくないと言える程のカオス。

「何だか、焼け付くような感覚がしてくるな…」

戦いに身を置く者ならば、その空気を肌で感じ取っていた。

「…多分擦り傷だぞそれ。」
「え、嘘…いやホントだ、さっきぐっちゃになったせいか!」

同時に勘を狂わせる作用もあったらしい。
そういう事にしておこう。



所変わって、ここは東京港区。
あらゆる災禍が舞い降りた、戦乱の跡地。
少しばかり見渡せば、火の手の10や20は上がっている惨状だ。
日本という中枢を担う機能は最早完全に麻痺している。
そんな場所の一角にて。

「全く、酷い有様ね、これは。」

一人の女医が、街の中心に聳えるビルの上に立っていた。
白衣の内側に赤と青のモノクロ模様を描いたニットを着こんだ女性。
即ち、人造人間21号。
この東京にクローン軍団を送り込んだ、言わば惨劇の担い手だ。
東京を混沌に陥れた一人でありながら白々しい物言いをすると共に、振り返る。

「悪魔、め…!」
「あらやだ、女性に悪魔だなんて。」

彼女が見下ろす先、そこには何人もの兵士達がいた。
誰もが満身創痍であり、一部に至っては全身に包帯を巻き、立っているのがやっとと言った様子だ。
そんな有り様でも、彼らはその目に敵意と憎悪を絶やす事は無い。
何故なら自分達を陥れた張本人が、眼前にいるのだから。

「黙れ、お前さえいなければ、こんな事には!!」
「まぁ、貴方の言う通りよね。」

21号は心底呆れるように肩をすくめる。
その所作が、振る舞いが、戦士として許せなかった。
人々を、仲間達を悪戯に傷付けられて、一体どうして黙っていられようか?
憤りはとうに振り切り、怨念さえも擦り切れた。
最後の気力を振り絞って、彼は立ち上がる。

「そうだ、貴様が、全て、貴様がぁっ!」
「ふぅん、まだ元気があったのね。それでこそよ。」

生まれて幼い赤ん坊が立ち上がるのを見たような、無邪気な目。
だが、その瞳の奥に宿るは、決して無垢な光ではない。
獲物を捕らえ、甚振る捕食者の愉悦と優越感。
そんな邪悪で嗜虐的な光を宿す視線に、男は激昂した。
怒声を上げ、身体中の筋肉を膨れ上がらせる。
残された最後の気力を振り絞って銃とナイフを構え、立ち向かわんとしているのだ。
その様子に21号はニヤリと笑い、一言。

「面白いわ、やってごらんなさい?」

直後、男が駆け出した。
とうの昔に、体力も精神もとっくに限界を超えている。
それでも、せめて一矢報いねば自分が許せない。
何より彼女に弄ばれた仲間達に、先に散っていった同胞達に申し訳が立たない。
その姿に、ただ打ちのめされるのみだった者達も次々と奮起していく。
各々が残った武器を手に取り、或いは己が肉体のみで、21号の元へと走り出す。

「お、おおお、おああアァッ!!!」

血を吐く雄叫びと共に、手にした拳銃を連射する。
乾いた破裂音が響く度に、銃弾が襲う。

「でも、こんな物なのよねぇ。」

しかしそれらは掠る事すら無く、空を切るばかり。
何度も、何度も、繰り返し撃つ。
肉薄する距離に至れば、武器を振るう。
その全てが空を切る。
どれだけ撃っても、どれだけ斬っても、一撃たりとも入りやしない。
それ程までに、実力差が開き過ぎている。
それを実感する頃には、既に彼は息を切らしていた。

「く、そ、が、アアッ!」

最早、立つ事もままならない。
それでもなお、膝を折る訳にはいかない。
そう思って、もう一度、拳銃を構え。

「もう良いわ、お菓子にしてあげる。」

次の瞬間には、意識が途切れていた。

23人目

「別働隊、動く」

 ――特異点・ルイーダの酒場。

『この特異点にいるCROSS HEROESとやつらに味方する全ての者達よ、
よく聞くがいい…! 俺は歴史の管理者クォーツァーの王、常磐SOUGOだ。
突然だが明日の昼頃に、貴様らの仲間である偽りの王、
常磐ソウゴの公開処刑を行うことになった』

 杜王町での出来事とほぼ同時刻。宮本武蔵、ロロノア・ゾロ、トランクスもまた、
クォーツァーの首魁・常磐SOUGOによるソウゴ処刑宣言のお触れを耳にしていた。

「ク……クォーツァーめ……! ふざけやがって……!!」

 タイムパトローラーであるトランクスにとって、クォーツァーは倒すべき敵だ。
メサイア教団の傀儡となった源為朝の宝具によって有耶無耶になった戦いの決着。

「クォーツァーは人質を処刑すると脅して、この特異点の何処かにいるであろう
CROSS HEROESや俺たちを誘き出そうとしているんだ……」
「んじゃ、お流れになったこないだの戦いの続きと行きましょっか」

 武蔵はそう言うと、鞘に収まったままの刀を肩に乗せた。

「酒の後の運動には丁度良いだろ。不完全燃焼だったからなァ」

 ゾロもニヤリと笑みを浮かべながら、戦いの準備を始める。

「マ、マスター!!」

 その時、マジーヌとブルーンが傷だらけの辺古山ペコ・オルタを運んで現れた。

「おや、これはまた……」

 ルイーダはペコを見て顔をしかめる。

「店の外で倒れてたんす~!」

 マジーヌの言葉を聞いて、ルイーダはペコを抱きかかえた。

「酷い怪我ね……一体何があったのかしら?」
「放ってはおけないか……」

 トランクスたちはひとまず、手当てのためにペコ・オルタを酒場の奥へと運んだ。

「……」
「この娘の身体……かなり消耗してしまっているわ」
「それに、無理な強化を施されてしまっている……本人の負担をまるで考えていない」

 武蔵とトランクスは、ペコの容態を確認していた。

「残念ながら、ここにはこの娘の身体を完治させるための設備が整っていない。
悪いけど、今は応急処置で我慢してもらうしかないわ」
「彼女をお願いできますか、マスター」

 トランクスが頼むと、ルイーダは快く引き受けてくれた。

「任せてちょうだい。それじゃあ、私は店に出てるから」

 ルイーダが去った後、残された者たちの間には沈黙が流れた。

「クォーツァーの立体映像、自分たちも見たっす」
「ソウゴさんは我々の仲間。放っておくことは出来ません。
きっと介人さんやジュランさん、ガオーンさんも処刑阻止に動いているはずです!」

 ブルーンがメガネを光らせながら力強く語る。

「ああ、そうだな。俺たちも行きましょう」

 こうして、トランクス、武蔵、ゾロ、ブルーン、マジーヌはルイーダの酒場を発ち、
杜王町のCROSS HEROES同様、クォーツァーの拠点を目指すのであった……

「……」

 ルイーダの酒場に残されたペコ・オルタ。彼女が目を覚ますのは、いつになるだろうか。

「ブルーンくんとマジーヌちゃん、良い働き手だったんだけどねぇ」
「すみませ~ん……お金に困ってまして……ここ、アルバイトとか募集してますぅ?」

 入れ替わりに、ツインテールに髪を束ねたメイド姿の女がやってきた。

「あら、ちょうど良かった。ウチで働きたいの? いいわよ、よろしくね」
「ありがとうございますぅ!」

「あなた、名前は?」
「川上……じゃなかった、べっきぃって言います! よろしくお願いしま~す。
宅配メイドのアルバイトしてたんでぇ、掃除に洗濯、お料理なんでもござれですよぉ」

 どうにも無理のある若々しさと、気の抜けた喋り方。
だが、彼女はそんなことを気にする素振りもなくニコニコしていた。

(なんか、ちょっとヤバそうな子が来たなぁ)

 ルイーダは内心、少し不安になりながらも、新たな従業員を迎え入れることになった。

(はあ、何とか職にはありつけたけど……ホント、ここ何なのよ……
変な怪物とかいるし……家にも学校にも連絡つかないし……)

 宅配メイドのべっきぃ。本名、川上貞代。秀仁学園に務める国語教師であるが、
何やらお金が必要らしく、学校に内緒でメイドのアルバイトを兼業していたようだ。

24人目

「衝撃!恐怖の戦闘獣軍団!」

一方その頃、スウォルツと晴明はというと
「クソ!おのれあしゅらめ…!約束と違うではないか!」
「スウォルツ殿、言葉を返すようですがあれは誰がどう見てもスウォルツ殿が悪いと思われ…」
「晴明、お前の意見は求めん」
「……そうですか。それで、これからどうなさいます?」
「……ミケーネ神の力を手に入れることができなかった以上、やはり常磐ソウゴ……やつを利用してオーマジオウの力を手に入れるしかない…!その為にも、まずはやつを探すとしよう」
「そうですか」
「晴明よ、そう言うお前はどうするつもりだ?」
「そうですね…我もスウォルツ殿のせいでミケーネの神々の力を借りることができなかった以上、ゲッターを…そしてCROSS HEROESを葬る術を探す必要がある……もう少しだけあなたと共にいるとしましょう」
「ふん、いいだろう。好きにしろ」
そう言いスウォルツがオーロラを出すとスウォルツと晴明はその中に入ってどこかへ移動した。



一方その頃ギリシャではギリシャの軍隊と日本の自衛隊、そして光子力研究所のマジンガー軍団がミケーネの戦闘獣軍団と戦っていた。
……が、それははっきりと言って戦いというにはあまりにも一方的な状況だった。
「ブレストファイヤー!」
「ルストハリケーン!」
「電磁砲発射!」
マジンガー軍団は戦闘獣軍団に対して一斉攻撃を仕掛ける。
「やったか!?」
しかし
「……なんなんだ今のは…?」
「っ!?嘘だろ…?バイオンβのルストハリケーンが効いてないだと!?」
「ダイオンγのブレストファイヤーもだ!?」
「ミリオンαの攻撃も効かないなんて……」
「そんな馬鹿な!?マジンガー軍団はマジンガーZと同じ武装を装備したスーパーロボットクラスの火力を持つロボット達の部隊……その一斉攻撃を食らって平気でだなんて……」
「その程度か人間共?先程戦った二人組の方がまだ歯ごたえがあったぞ?」
「クッ…!」
「隊長もう駄目です!マジンガー軍団の一斉攻撃ですら耐えるような化け物に我々の通常兵器やASじゃ勝てませんよ!?」
「馬鹿なことを言ってるんじゃない!我々の後ろにはこの国の人達がまだ居るのだぞ!?彼らを逃がす時間を稼ぐためにも我々がここで踏ん張る必要があるのだ!」
「し、しかし…」
「化け物だと?違うな……我々は神だ…!」
「ひぃ!?も、もう駄目だ!?神様があんなにいるんじゃ絶対に勝てない!?」
「落ち着け!神があんなに沢山いる訳がないだろ!」
「そうだ!あんな神を自称する化け物なんかに好き勝手させてたまるか!我々練馬レッドドラゴンの……いや、人間の力を思い知らせてやれぇ!全軍一斉攻撃!」
「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
2つの国の軍隊とマジンガー軍団は再び一斉攻撃を仕掛ける。
「フン、ちっぽけなアリ共が無駄なことを……はぁ!」
「ぐ…ぐわぁああああああああ!?」
戦闘獣軍団のうちの何体かが光線など発射するとマジンガー軍団もとい2つの国の軍隊のほとんどが一瞬で壊滅させられた。
「なっ!?あれだけいた戦力が一撃で……!?」
「どうだ?これが我々ミケーネの力だ…!」
「た、隊長!これ以上はもう駄目です!」
「チッ…!やむを得ん……一時期撤退だ!」
なんとか生き残った者たちは全員撤退した。
「所詮、人間ごときが我々に勝てるはずがないのだ……フハハハハハハハハハ!!」
戦える者達がいなくなった以上、もはやギリシャはこのままやつらに支配されると思われた……その時

「そこまでだ!」
「っ!?誰だ!?」
そこに駆けつけたのは、特異点へ向かった面々を見送り、港区からこのギリシャへ駆けつけたCROSS HEROESの面々…この星の…否、全ての世界の明日を守る為に戦う戦士達であった…!

25人目

「我が往くは恩讐の彼方」

「ククク……クハハハハハ!!」
「!?」

 突如として響き渡る笑い声。
たりあは慌ててほむらに抱き着いて震えている。

「この声は……」

 立香は知っている。その声の主が、誰なのかを。
思えば、藤丸立香の魂が時折肉体を抜け出て夢の世界を彷徨うようになったのも、
魔術王の策略によって監獄塔に幽閉された際に彼と出遭ったことが
切っ掛けだったのかも知れない。
その男は、ゆっくりと現れた。火を点けられた紙から炙り出される陰影が如く。
漆黒のマントに身を包む、宣教師風の男。

「――アヴェンジャー!」

 巌窟王。真名、エドモン・ダンテス。
クラス:アヴェンジャー……復讐者を名乗る謎多き英霊。

「ククク……叛逆の悪魔……太極の神子の半身か……
相も変わらず、なかなかどうして面白い運命だな、共犯者よ」

 愉快げな笑みを浮かべて、エドモンは二人を見つめていた。
しかし、その瞳の奥には深い怒りの炎が宿っている。
その視線に射抜かれて、たりあはすっかり怯えてしまっていた。

「こら! アヴェンジャー! 怯えてるじゃない、あの子。
ねー、怖いねぇ、このおじちゃんねぇ。ついでに何言ってるかよくわかんないねぇ」

 立香はたりあを宥めるように優しく語り掛けた。

「……!! ……!!」

 すると、彼女の言葉に安心したのか、こくこくと首を縦に振って同意を示す。

(……たりあが初めて会った人間に懐くなんて……)

 ほむらには少し意外だった。
世界を滅ぼされ、ペルフェクタリアとも離れ離れになった後、精神体となったたりあは
ほむら以外の人間にはその姿を視認することもできなかったし、触れることもなかった。
当然、誰かと話すこともできなければ、感情を共有することだってできない。
そんな孤独な時間の中で、彼女が唯一頼れる存在こそがほむらであったのだ。
常日頃から多種多様な英霊と触れ合っている立香だからこそ、
こういった時にはすぐに打ち解けることができるのだろう。

「不思議な人ね、貴女は」

 ほむらは立香を見て、素直な感想を漏らす。
彼女自身、自分がどういう存在であるかは理解しているつもりだが、
それでも目の前の少女のように誰彼構わず親しげに接するのは、
自分にとっては少々難しい事だと自覚している。

「はは、よく言われる」

 屈託のない笑顔で返す立香を見て、ほむらは思わず頬を緩めた。

「……おじちゃん……」

 巌窟王は目元をポークパイハットの鍔で隠し、肩を震わせている。
明らかにショックを受けているようだった。
だが、それも束の間。すぐに気を取り直して、口を開く。

「ん、んん……そんな事はどうでもいい。それよりもこの光景こそが、
お前が抗うべき現実だ。無明の闇に閉ざされ、星々の輝きさえ届かない暗黒の世界。
これこそ、終末たるラグナロクの具現」

 彼は語る。この宇宙の有様は、人類の悪徳によって生み出されたもの。
故に、人類の歴史は滅びへと向かって進み続ける定めにあると。
そして、その滅びを加速させる存在が、今まさに動き出そうとしていることを。
その先兵となるのが、人類を憎む者達。渾敦結社と呼ばれる、悪意の集合体。
顔の無い怪物。

「奴らは虎視眈々と機会を狙っている。世界が滅ぶその時を。
その破滅の時が訪れる前に、お前達は己の使命を果たす必要がある。
そうでなければ、宇宙に存在する全ての生命が消え失せることになるぞ」

 巌窟王の言葉に嘘はない。人類が築き上げた文明の全てが、悉く闇に飲み込まれていく。
この宇宙から光が失われ、やがて終焉を迎える。
それを防ぐためにも、人類は立ち上がらなければならない。
例え、それがどれほど過酷な道であろうとも。
人類が背負う業そのものに向き合わなければならないのだ。
だが、その時……

『……滅びよ、人類』

 それは、人類への怨念を具現化したような声。

「!!」
「クク……どうやら、世界の秘密を知った我々を黙って見過ごすわけには
いかないようだな」

 渾沌結社に紐づく怨念達が、立香やほむらたちを取り囲む。

『平坂たりあ……魔殺少女同様に我らを裏切った罪は重い』
『円環の理を繋ぐ鍵となりて、我らの悲願の礎となれば良かったものを……』

「……!!」

 たりあの震えが強くなる。
その様子を見かねたほむらは、咄嵯に彼女の手を握ると、 毅然とした態度で言い放った。

「心配は要らない。貴女の力を、二度と奴らに利用させはしない。
まどかの力の欠片……この私が必ず守ってみせる」

 ほむらは強く誓う。
まどかを二度と円環の理のシステムに利用されないために、渾敦結社と戦うと。
そして、まどかの力の一端を受け継ぐたりあも。
その想いは、藤丸立香も同じだ。
この宇宙を守るために、彼女は戦う。マシュ達と共に、これからもずっと。

「ククク……叛逆の悪魔よ。誰にも赦されず、己自身さえも赦さず、
調停者の慈悲にさえ背を向け地獄を歩み続ける貴様の魂……実に醜く、なればこそ美しい。その輝きに免じて、俺も一つだけ手助けをしてやるとするか……」

「アヴェンジャー!!」

 立香の右手の甲の令呪が赤く輝く。
エドモン・ダンテスは静かに笑みを浮かべながら、言葉を紡ぐ。

「良かろう! 我が共犯者! ならばこれより先は我が復讐の炎にて、
あまねく生者の尊厳を己が欲のみで脅かす愚かしき亡者の尽くを焼き尽くすまで!!」

 エドモン・ダンテスの身体から漆黒の炎が噴き上がる。
その炎はたちまちのうちに彼の全身を包み込み、その魂を焼いていった。

「クハハハハハ!! さあ、心せよ! この世ならざる者どもよ! 
今よりこの男は、復讐鬼として貴様らを葬り去る!」

 エドモン・ダンテスと暁美ほむら。
絶望の奈落の底に堕ちた者の苦しみと絶望を知る二人が、
渾沌結社グランドクロスに叛逆の牙を突き立てる。
これは、終わりゆく世界の物語である。

26人目

「怪盗団と正義超人のあれそれ」

特異点という異質な世界で思いがけぬ邂逅を果たし、一気に大所帯となったCH一行。

「まさかこんな世界で貴方達と出会えるなんてね、テリー!」
「本当にお久しぶりです、皆さん。」
「はっはっは!相変わらず固いな、もっとシャキッとするもんだぜ?」
「あいたっ!?」

その中でも、心の怪盗団と正義超人は旧知の中だ。
幾月の時を超えた再開という僥倖に、互いに積もる話が尽きない様子である。
必然出来上がる談笑の中で、自然と両者達の間には笑みが飛び交っていた。
今も、喜多川の背を叩き緊張をほぐさんとするウルフマンの姿が見受けられる程だ。

「テリーさんが居れば百人力ですね。」
「こちらも同じ思いだ、君達が居れば心強い限りだ。」
「その様に言われると、此方も嬉しいです!」

此方では、テリーと新島の二人が張り切る様な空気が二人の間にある。
双方、ボクシングスタイルのプロレスを行う身だ。
そこにシンパシーを感じ合ったのだろうか、心なしか距離が近く感じる。
お互いを見つめる二人の眼差しは、何処か誇らしげですらあった。
そんな二人の会話を、康一が興味深そうに聞いている。

「皆さん、結構面識があったんですね?」
「あぁ、"1年程まで"は直接会う事も多かった。彼等の集まるルブランというお店にもお邪魔させて貰った位だ。」
「あそこのカレーは美味かったなぁ、ごっつぁんです。」

返答したのはラーメンマンだ。
語りながら思い出したのか、微笑みを浮かべている。
一方でウルフマンの食欲を隠そうともしない有様に、仗助は苦笑する。

「へぇ~、結構年齢差が大きそうなのに意外だなぁ~!」
「フッ。正義を思う心に、年の差は関係無いからな。」

感嘆の声を上げる仗助に、ラーメンマンが答える。
そんな談笑を続ける一行であったが、不意にテリーが気付く。
怪盗団達の顔色が、何処か優れない様に。

「君達、ここで何か一悶着あったようだな?」

旧知と言えど、友人たる者の機微を見抜けぬテリーでは無い。
彼の指摘は、すぐさま仮初の笑顔を剥がす事になる杏達。
刹那の後、沈黙が場を支配する。
触れてはならない何かだったのか、そう錯覚させる程の変貌ぶりに、静かに狼狽する超人達。
だが、テリーは一歩踏み込んだ。

「差し支えなければで良い、話してくれないかい?」

どうかお願いだと、任せてくれないかと言わんばかりの言い分。
友だと胸を張って言わせて貰いからこそ、彼は親身になって聞こうとする。
そんな彼の言葉に、一瞬の間、思案に耽り。
そして覚悟を決めたのか罪を自白する様に、重々しい顔付きで杏達は語りだす。

「…そう、ね。私達、ずっと幸せな夢を見せられて、抜け出せないでいたの。」
「幸せな、夢?」

幸せな夢に浸り続けていた。
端から聞けば何の問題も無さそうな、寧ろ誰もが一度くらいは願うであろう文言。
だがそれを語る声色は、酷い罪悪感と後悔に震えていた。
何やらただならぬ雰囲気に、全員が傾聴する。
懺悔室にて、信者の罪を聞く神父にでもなった様な気分だった。

「そう、私達が一度は願った、でも叶えたらいけない夢。それに私達は、1年近く抜け出せなかった。」

彼女は続ける。
自身の咎を数える様に、或いは己の弱さを悔い改める様に。
ゆっくりと、しかし声色は力強く。
決して聞き逃さない様に真剣な眼差しを向ける彼らに、その全てを吐き出す。

「さっきラーメンマンさんが言ってた"約一年間"、それがきっと、私達が夢に囚われていた時間なんだと思う。」

彼女の脳裏に浮かぶのは、夢の中で共に過ごした、かけがえの無い仲間達の事。
その全員の姿を思い浮かべ、決意を新たに、全てを話し始めた。

「私達怪盗団はね、人の歪んだ心を正す、なんて御伽噺みたいな事をしてきたの。」
「歪んだ心を正す~?んなもんどうやって?」
「具体的な手段は込み入った話になるが、本当の事だ。」

仗助の疑問も最もだが、今はその問いを差し置いておく。
彼等がたった数ヶ月という僅かな期間ながら、しかし各々の人生で最も色濃く、輝いていた時期。
葛藤が、悲劇が、ソレ等を乗り越えた人生劇があった。
現実(リアル)に存在するあらゆる苦楽を清濁併せ飲み込んで、今の自分達が居ると誇りを持っていた。
だが、その一方で。

「そんな中で、願う事があったの。そもそも初めから、不幸や非道が無ければ良かったのにって。」
「そりゃあ、確かに最初からそんな物が無い方が良いよね…」

負の存在そのものを否定したいという、根本からの想い。
それには康一も思う所があった。
そもそも殺人鬼(吉良吉影)の様な奴が居なければ、或いは、しげちー達と今も。

「現実はそうもいかないって、だからこそ私達は巡り合えたし、決意して立ち上がったのに。」
「うっ…!」

しかし彼等はそれを否としていた。
苦難があったからこそ今の仲間と出会い、立ち向かう志を胸に宿せたのだと。
そう言われれば、仗助もまた負の存在否定は出来ない。
今の巡り合わせは、今までの苦難があってこそだから。
彼等はそれを肯定したくて、受け入れたくて、現実から目を背けたくなくて、自分なりに抗う為に必死に戦ってきた。

「でもやっぱり、思っちゃったの。」

それでも、心の何処かではどこか甘い考えを抱いていたのだ。

「今の繋がりを持ちながら、その上で不幸が無ければ、なんてIF。」

それこそが彼女達の抱いた、唯一の矛盾。
苦難があって初めて繋がれた事を否定すれば、そもそも邂逅は無かったというのに。
それでもやはり、想ってしまい。
ある日、ソレは現れた。

「その想いが、何時の日からか夢に現れたの。」
「それが、1年間見てたっつー夢?」
「そう、そしていつしかソレは現実を侵食したの。」
「げ、現実を!?」

夢は終わりを告げ、現実へと変貌した。
眼から覚めた時、そこに広がっていたのは、幸福一色に変わり果てた世界。
現実とは似ても似つかぬ平穏が約束された、偽りの現実だった。

「そう、周りの人は不幸を初めから認識していない、そんな現実。」
「初めは何かおかしいって、皆心の何処かで気付いてた。でも私達は…」
「その内、受け入れてしまったんだ。情けない事に。」

そう、結局はそれを認めてしまっていた。
幾月も浸っていた夢(リアル)の心地良さに、無意識的に、本能的に、堕落していった。
幸せに、甘んじていた。
この世界にいれば、何もかもが上手くいく。辛い事も、悲しい事も無い。
幸福だけが向こうからやってくる等、歪でも欲しくなるのは、無理も無い。
気付いた頃にはもう、手遅れだった。
彼女達の世界は、幸福と祝福で満たされていた。

「なら、どうやってそんな世界から抜け出せたの?」
「そう、それよ!竜司の奴が私達の目を覚まさせてくれたの!」

だがそんなものは虚構の理想郷だと理解し、夢から醒める日が来た。
皮肉にも、同じ夢を見ていた者によって。

「えっと、竜司さん?」
「俺達と同じ力を使う仲間だ、それも最古参のな。」

喜多川が、懐かしむ様に語る。
彼は、この歪んだ現実を否定する為に駆け付け、訴えかけた。

「癪だけどアイツに助けられたの。このままで良いのかよ、ってね。」

27人目

「Despair Drop Distance/絶望に至る距離」

 東京港区

「で、あんたは私の知る罪木じゃないわけだ。にわかには信じられないけど、アヴェンジャーのサーヴァントになった世界の……ありえざる兵器。それがあんたなのね、罪木オルタ……さん?」
「そう。お笑い草だろ?」

 ベンチで握り飯を食べながら、3人で話をしていた。

「笑えねぇよゲロブタ。哀しすぎる。」

 呵々、と自嘲する罪木オルタに対し、西園寺の表情は浮かない。
 そりゃあそうだ。西園寺日寄子が知っている罪木蜜柑という女はもっと卑屈で虫一匹殺せないほどやさしい女だ。
 依存しがちなのが玉に瑕だが、何らかの理由で道さえ違えなければ聖人になれただろう惜しい少女だ。
 しかし眼前にいる白髪赤眼の復讐者ときたらどうだ。
 その在り方も、ささくれ切った心も、見るに堪えないほど悲しい。

「復讐に囚われ、守るべきものもいないだなんて、あんたの在り方はまるで……その……殺人鬼と同じだよ。」
「……。」

 周囲の空気が重くなる。
 あまりの哀しさに、哀愁が漂いだす。

「はッ、何重い話してんだ、未来の話でもしようや。罪木オルタ、お前さんはどうする気だ今後。」

 話を聞いていたデュマが、罪木オルタに話しかける。

「これからあたしは特異点に向かう。デュマ、あんたはどうする気だい?」
「俺はいつものように部屋にこもって執筆でもするかねぇ。なぁに連中が無事に帰ってきたらすんばらしぃ修行部屋でも作ってやりますよっと。というか小説家に格闘させるなんざプロボクサーに執筆の勉強させるようなレベルの愚の骨頂ですよ、その辺相手さん方は分かってんのかねぇ。」

 デュマの言う相手、メサイア教団の在り方を愚痴る。
 メサイア教団は人も英霊も全て自分たちが掲げる救世のための道具/兵器としか思っていないのだ。
 為朝やペコオルタといったAWシリーズがその最たる例だ。

「私も帰るあてないし……あんたについてくよ。」
「そうかい、じっとしてないと死ぬぜ?」

「その方がいいぞ。西園寺よ。」

 西園寺が特異点に行くと言い出す。
 危険すぎると2人は止めようとするが、その話に割り込むようにルクソードがやってきた。

「罪木オルタの精神の不安定さを最も知るのは君だろう。善悪は問わず、君の在り方は今後彼女を支えるとカード占いに出ている。今後君は彼女と行動すべきだ。」
「「すげぇな、カード。」」



 特異点

「……ッ。」
「……何かしら、若森さん?」
「その名前で呼ぶなッ!」

 アビダイン内部。
 若森こと、ジェームズ・モリアーティと八雲紫が口論になっていた。

「何で君までついてきたのかネ!?」
「何でって……敵情調査?これから私たちが戦う敵がどれくらいの強さかを、ちょっと調べたくて……。」
「だとしても港区のアレを見た君なら分かるだろうに!」
「実際に誰がどんな強さかまではわからなかったし、そもそも見覚えがあるのよ。」

 見覚え、というワードにモリアーティは目を丸くする。

「皆がいたあのビル……東京ミッドタウンでしたっけ?あそこの破壊具合と幻想郷の妖k……ある場所にできた『孔』の出来方が似ていて、もしかしたらここでも同じ破壊具合が見れたら敵の強さがわかるかなと思って。」
「なるほど、破壊の形から強さを特定すると。あれと同じ規模の戦闘力を持った相手がいるかどうかとな。」
「そう。もちろん私も戦闘には参加しますわ。」

 などと話をしていると。モリアーティはふと何かを見た。

「む?何だあれは……!?」

 窓の外。
 そこに映し出されていたのjは。

「何者かと思えば……」
「懐かしい気だ……!」

 かつて悟空たちを苦しめた宿敵。スラッグとターレスだった。

28人目

「ほらすぐ目の前、破壊の神々」

「早速おいでなすったな……」

 アビダインから降りる悟空、ピッコロ、ベジータ。

「くはははははははは! まさか生きていたとはな、孫悟空!! 嬉しいぞ!!」
「おめえこそな……」

 スラッグと悟空は互いに睨み合う。

「ナメック星人の面汚しめ……!」
「ふん、ピッコロか……あの時殺してやったものだとばかり思っておったのに、
くたばり損ないが。そして勘違いをするなよ?
俺こそがナメック星人の頂点に立つに相応しいのだ。その俺に歯向かうばかりか、
孫悟空に肩入れする貴様は万死に値するぞ!」

 ピッコロとスラッグは今にも一触即発の雰囲気を醸し出していた。
同族でありながら、決して相容れぬふたり。
邪悪な心だけが異常増大した超ナメック星人を自負するスラッグと、
先代の神と融合し、誇り高き魂と共に押しも押されぬ超戦士へと成長したピッコロ……

「これはこれは、ベジータ王子……」
「サイヤ人の生き残りが、まだいたとはな……」

 宇宙の帝王フリーザによって惑星ベジータは消滅させられ、
純粋種のサイヤ人も悟空、ベジータを始めとしてごく僅かな数しか残っていなかった。
ターレスもまた、当時運良く惑星ベジータを離れていたおかげで星の爆発から免れた
数少ない生き残りの一人であった。

「惑星ベジータが消し飛んじまった後、フリーザに尻尾を振って
生き永らえていたらしいな。恥知らずもいいところだぜ。何がサイヤ人の王子だ」
「ただでさえカカロットに似た面をしてやがるってだけでも不愉快だと言うのに、
随分と舐めた口を叩くじゃないか。フリーザなんぞ、もはや過去の遺物だ。
貴様もあの野郎と同じ地獄に叩き落としてくれる!」

「おめえたちに構ってる暇ァねぇ。オラは仲間を助けに来たんだ!」
「ふん、常磐ソウゴとか言うガキか? 奴は今頃クォーツァーに処刑されているだろうさ」

 ターレスの言葉を聞き、悟空は怒りに満ちた表情を浮かべる。

「そんな事ぁさせねえ……! 今すぐ瞬間移動で……!!」

 悟空は額に2本指を当て、ソウゴの気を探ろうとする。

「やらせると思うかッ!!」

 しかし、ターレスがそれを許さなかった。悟空が意識を集中している一瞬の隙を狙い、
一気に距離を詰めて殴りかかってくる。

「おわっ……!!」

 しかし、その攻撃は悟空には当たらなかった。何故なら……。

「……」

 その攻撃を防いだのは、ベジータだったからだ。
一旦距離を取ると、ターレスが口を開く。

「ふん……やるじゃないか」
「な、何でだ……!? ソウゴの気が探れねえ……」
「クォーツァーも、貴様らが邪魔だてをしてくることぐらいは想定済みだろう。
だから予め妨害電波でも流しておいたんだろうよ」

 ターレスは余裕たっぷりといった様子で言う。
特に人の気を探り当てる事さえ出来れば星から星にまで転移する事さえ可能な
悟空の瞬間移動による強襲などは、彼らにとって最も警戒すべき事態。
故に、彼らは先手を打っていた。既に何度と無く悟空たちと交戦してきた
クォーツァーである。その行動パターンの大部分が把握されている。

「ち、ちきしょう……! 直接奴らの所に乗り込むしかねぇんか……!」
「こんな所で時間を食っている場合ではないぞ。スラッグは俺が相手をする。
孫、貴様らはアビダインの連中と共にクォーツァーの拠点へ迎え」

 ピッコロがそう提案する。

「なら、俺はあの下級戦士の方だな」

 さらにベジータも名乗りを上げた。

「……二度と俺をその名で呼ぶんじゃあない……! 
俺はもう誰にも見下されはしない……!! すべてを力で捻じ伏せるのだ……!!」

 ターレスはギリリと歯ぎしりする。
彼にとって、サイヤ人の下級戦士出身と言う出自はコンプレックスそのものだった。
それが故に、神精樹の実を食べ続けると言う禁忌を犯してまで、
自分たちの故郷を滅ぼしたフリーザさえも凌ぐパワーを求め続けたのだ。

「おや、気に触ったか? 下級戦士さんよ」
「貴様ァァァァァァァッ!!」

 挑発的な言葉を投げかけられたターレスは激昂するが、
それこそがベジータの狙いであった。
ターレスの注意を自分へと向けさせる事で、その間に悟空とピッコロはその場から離れる。

「ベジータ!」
「グズグズしているな、カカロット! 行くならさっさと行きやがれ! 
この俺があんな野郎如きに遅れをとるとでも思っているのか?」


「――すまねえ! 任せたぞ!!」

29人目

「怪盗団と正義超人のこれから」

竜司の声と言葉で、永い夢から目覚める事が出来た。
彼等にとって、とても大事な一幕だった。

「私ね、ある教師に親友を病院送りにされたの。精神に傷を負わせられて、飛び降り自殺して。」
「んなっ!?」

衝撃的な告白に、一同が絶句する。
堪らず耳を塞ぎたくなる程の、酷く残酷な物語だ。
だが彼女は、声を震わせながらも続ける。

「落ちた親友を見た時、酷い精神状態で…気付かずに助けられなかったのが悔しくて、それ以上に悲しかった。」

病院に送り込まれた彼女の心には、深いトラウマが刻まれていた。
大切な友がそんな変貌を遂げてしまったのを目撃して、胸中をかき乱す慟哭に蝕まれた。
だからこそ。

「こんな想いを、もう二度と誰にも背負わせない為に立ち上がって、戦い続けたの。」

彼女が願うのは、悪魔から人々を救う事。
心に傷を負った友の仇を討つ為に、何よりもう誰もあんな目に合わさないと強く願い、そうして変わっていく自分を受け入れた筈だった。

「なのに、その覚悟も想いも、気付いたら全部夢に奪われて、それで良いって自分がいた。」

夢の中に居る方が楽だから、こっちの方が楽しいから。
夢の世界を謳歌して、皆と過ごしている内に、いつの間にか現実との境目が曖昧になって。
その末に、叶えてはならない夢を現実として迎え入れてしまった。

「自分で大切だって決めた親友は、今もベッドの上で苦しんでいるのに。ソレに目を背けて、自分だけに都合の良い夢だけを見てた。それが私達の罪。」
「なんて、途方も無い…」

今も悪夢に苦しみ、死にたいと嘆いているかもしれない。
そんな友の姿を忘れ、都合の良いガワに囲まれた偽りの人生を歩んでいたと。
途方も無く荒唐無稽な話に、非日常に身を置いていた仗助達でさえ、思わず口を開けて呆けてしまう。
それだけ衝撃的で、受け入れ難い内容であった。
だが。

「なんつぅーか、言葉になんねぇけど…ソレが真実っつー事、俺は信じるぜ。」
「ありがとうね、突然こんな事言われて、呑み込めない事もある筈なのに。」

彼女の真剣な眼差しを見て、ソレが嘘偽りの無い告白だと仗助には心で分かった。
故に彼は、迷い無く信じる。
その意思を示す様に、仗助は厳とした声色で己の意志を語る。

「それでもだぜ。杏達が抱いた後悔は『正しい』んだと思う。だから俺は、お前等を信じるぜ!」

失った悲しみや苦しみが消える事は、例え死んでもあり得ないだろう。
だからこそ、彼女は親友の喪失に心を苛まれ、罪悪感を覚え。
その痛みを胸に、誰かの為に立ち上がれる。
そんな決意を抱く事が出来る彼女達に、仗助は『敬意』を抱いて信じる事で答えとした。

「アンタ、良い男ね。そういう素直な反応されると、ちょっと照れちゃうわ。」
「な、そんなんじゃねぇよ!」

ふふ、と口元に手を当てて微笑む杏に、仗助の心臓がドキリと跳ねる。

「んんっ、それよりそのぉ~、竜司って奴か?そいつが助けてくれた話はどうなったんだよ!?」

露骨な視線を向ける康一に、彼は咳払いをして誤魔化す。
そんな彼らの遣り取りに、クスッと笑みを零した。
この場の空気が、ほんの少しだけ和らいだ。

「そうそう、竜司よ!アイツ、私達より先に夢から抜け出したみたいでさ!」

だからだろうか、杏が語る声色は、先程よりも心持ち穏やかになった気がする。
それは彼女の心の中に、僅かながらでも余裕が生まれたからか。
少なくとも、今こうして話しているだけでも、彼女が前を向き始めているのは確かであった。

「『今のままで良いのか、俺達が抱いた想いっつーのはそうじゃねぇだろ!』ってさ、気付いたら私達、本当の現実を思い出せたの。」

親友の変わり果てた姿への後悔。
それを思い出す事が出来たお陰で、杏達は夢から覚めることが出来た。

「その後は私達の背中から、こう、サイバーチックな気持ち悪ーい触手?みたいなのを引っこ抜いてったのよ!」
「うぇ!?まさか夢を見せてたのって…?」
「そう、取り付いていた奴がずっと私達の認知を歪ませてたって訳!」

夢の事も徐々に明らかになっていく。
そして、話を聞く内に康一は夢を見せる原因と思しき存在を想像し、思わず悲鳴を上げて慄いた。
やっぱりろくでもないじゃないか、と。
それは兎も角、竜司の介入によって、夢に囚われた者は正気を取り戻したらしい。

「だが、夢を見せていた者の正体は不明のままだ。」
「竜司の奴は『他の奴等も助けに行く』って先に行っちゃったし、正直精神的に参ってて途方に暮れてたから、貴方達が来てくれて助かったわ。」
「そりゃあ、1年も夢を見ていたっつーならそうなるだろうよ…」
「そう、ね。でも、いつまでもうじうじしてられないし、何より性に合わない!だからもう私達は大丈夫!」

夢を見続けていた時間が長ければ、それだけ現実に戻る為に心にかかる負担は大きい。
一年ともなれば尚更だ。
夢を見た時の日常と、現在の日常とのギャップに、心がすぐ適応出来る筈は無い。
そこに真実を告げられ、彼女の心は不安と恐怖に苛まれている筈である。
そんな状況下で、人々を救う為に危険を顧みずに立ち向かう勇気と覚悟を見せる事がどれほど凄まじい事か。
大切な存在を失った喪失感がどれだけ深いものか、嫌と言うほど知っている。
だからこそ、彼女達の気高さを、その尊さを、彼等は偉大だと思う他無かった。

「ねぇ、ここって結局どういう所なのかしら」

ふと杏が疑問を呈する。
言われて見れば、この特異点という異質な空間は、彼等にとって謎に満ちた世界だ。
人の認識を歪め、幸せな夢に閉じ込め、かと思えば化け物が跋扈する異質な世界。
杏の言葉を受け、全員の視線がテリーマンに集中する。

「そうだな、ここは私が代表して考察・説明するとしよう。」

テリーマンは答える。
ここで情報を一纏めにしておこうという魂胆もまたあった。

「ここは元々、お台場だった場所だ。そこが一種の閉鎖空間となったのがこの特異点だ。」
「へぇ~お台場…あれ?でも俺達は超人なんて知らねぇっすよ?」
「そう、そこなのだ。君達は、世界で常識となる超人を知らない。」

話を聞いて、皆が成程といった表情をする。
超人が蔓延る世界。
仗助の持つ常識は、同じ世界とは思えない程かけ離れていた。

「そこから考えうるに、この空間は他の世界も取り寄せていると考えた方が良いだろう。仗助君、君達がその異世界人の例だ。」

それがテリーの認識。
そしてそれは、全員が共有する結論でもあった。

「そしてもう一つ、君達が怪盗の姿に成れるという事実。」
「そ、それってどういう意味なんですか!?」
「この怪盗の姿は叛逆の力って言ってね。本来、精神世界(イセカイ)でしか使えない力なのよ。」

康一の問いに、杏が答える。
それは、竜司やジョーカーといった者達だけがなれる、不思議な力の事だ。
現実には存在しない超常の力。
そこに喜多川が疑問を抱く。

「だが現実に居る今の自分達が、その姿になれる…どういう事だ?」
「そこだ。現実でありながら怪盗の姿に成れる世界、そこから考えうるに、ここは現実でもあり精神世界でもある!」

そこでテリーは、自らの推測を語った。

30人目

「Epilogue」

一方その頃、クォーツァーの拠点では
「申し上げます我らが王よ、あちらの世界にいたCROSS HEROESが謎の戦艦と共にこの特異点に出現しました」
「なんだと?やつらがこの世界に来たというのか?」
「はっ、現在やつらの存在に気づいたスラッグとターレスが謎の戦艦に乗ってた孫悟空を始めとしたZ戦士達と交戦してますが、謎の戦艦自体は今だに動き続けております」
「そうか、ならばタイムマジーン軍団とダイマジーン、それとアマルガムとこのAS部隊を出撃させろ。その謎の戦艦がなにかしでかす前に徹底的に叩き潰してやれ」
「ハッ!」

「……ウォズ、貴様しくじったな?」
「……申し訳ございません」
「まぁいい、お前にはジョウゲンやカゲンと共にここに来たやつらを迎え討ってもらう……もしも次またやらかしたらどうなるか……わかるよな?」
「……はい、もちろんでございます、我が王よ……」



一方その頃ギリシャでは
「あれがミケーネの…!」
「戦闘獣軍団…!」
「とんでもねえ数じゃねえか!」
「ミケーネ帝国!お前達の好きにはさせん!」
「ほう、先程我々と戦った二人組か、仲間を連れてリベンジ来たのか……ん?」
「・・・」
「ほう、まさか貴様までこの時代に蘇ってたかトリガー…!」
「しかも闇の巨人として人間共と敵対関係だった貴様が、ゼウスと同じ光の力を持つ光の巨人となって人間共に味方してるとはな」
『トリガーのことを知っている…?』
(やっぱり、ミケーネは超古代文明や闇の巨人と関係があるみたいだ……)
「それにあそこにいる2体のでくの坊……あれからはゼウスに似た力とゲッター線を感じる…」
「丁度いい、貴様らを倒してゼウスの力とゲッター線を我らミケーネのものとする!」
(あいつら…ゲッター線を狙ってやがる…!?)
「そうはさせるかよ!」
「あなた達の野望は私達CROSS HEROESが止めます!」
「っ!CROSS HEROESだと…?」
「やつらまでこの時代にいるというのか!?」
「まさか……いやそんなはずは…!?」
「落ち着け!あの時戦ったやつらとはメンバーが違う、恐らくは名前が偶然同じなだけの別物だ!」
「この時代?あの時?なにを言ってるんだ…!?」
「黙れ!」
「こうなればどちらでも構わん!貴様ら全員、皆殺しにしてやる!」
「っ!来るぞ!」
こうしてCROSS HEROESとミケーネの戦闘獣軍団による激しい戦いが始まった…!