プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:2「亡失ノ理想郷 幻想郷」

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1人目

「Prologue」

 クォーツァー・パレスの死闘はCROSS HEROESの勝利で幕を閉じた。
常磐SOUGOらクォーツァー一派、そしてスウォルツは
タイムパトローラー・トランクスによって拘束。
長きに渡るクォーツァーとの戦いはついに終焉を迎えたが、
彼らの戦いは終わってはいない。特異点にはまだやるべきことが残されているのだ。
そして、まだ見ぬ世界が戦士たちを待ち受けている……

【リビルド・ベース編】

 クォーツァーの拠点であったクォーツァー・パレス。
各地のオーバーテクノロジーを結集して作られたその城は、
見る陰もなく廃墟と化していた。カルデアとCROSS HEROESはここを再建し、
今後の特異点における活動拠点にする事を決めた。
周辺から素材を集め、拠点の修繕に取り掛かる者、お互いの力を確かめるべく
演習試合を行う者、特異点の地下に広がるメメントスへの探索を行う者など、
それぞれのやり方で拠点作りに取り掛かった。

【大泥棒ルパン三世、特異点を行く編】

 超時空戦艦・アビダインに随行し、特異点へと到達したルパン三世。
未だかつて見たことの無い摩訶不思議な光景に驚愕するルパンと次元であったが、
世紀の大泥棒と最速のガンマンはこの特異点でどのような冒険を繰り広げるのか?

【幻想入り編】原文:霧雨さん

 特異点、クォーツァーとの戦いを終えたCROSS HEROES。
シャルル遊撃隊の1人、リクは教団大司教のゼクシオンを追う為
新たなる舞台に身を乗り出す。

 同じころ、ギリシャのDDのベースキャンプに妖怪の賢者八雲紫が出現。
幻想郷に行く者を決めろと言われる。

 この号令に、天宮兄妹と月美、そしてペルフェクタリアが向かうことになった。
DDの持つ最新のワームホール転送技術で、幻想郷への道が開かれることになった。

次なる舞台、その一つの名は「幻想郷」。
忘れ去られたものが集う亡失の理想郷が、彼らを待ち受けている。

【Vengeance Bullet Order Ⅰ】原文:霧雨さん

 アメリカのある港町。
政府直属の魔術組織に所属する男、ファルデウス・ディオランドは
組織から『魅上照を釈放幇助をした教団メンバーの確保及び抹殺』の命令を
受けていた。
教団メンバーの抹殺をする彼。その傍らには、
希望ヶ峰学園爆破事件最後の生き残り『霧切響子』がいた。

 希望ヶ峰学園爆破事件から奇跡的に生存するも、
彼女の心にはもう教団とコロシアイの黒幕、江ノ島盾子への報復心しかなかった。

 今は遠い、CHとこの2人の邂逅。
彼らが歩む、教団への報復の先に待つ結末は―――――?

【超常会議編】原文:AMIDANTさん

 常盤ソウゴ勝利の裏で、敗北を喫したオーマジオウ。
その相手は、ショッカー頭領であった。
彼は去り際、全ての仮面ライダーを倒すと宣告した。
一方トキトキ都では、オーマジオウの消滅を機に、破壊神ビルスが来訪していた。
更には魔術師の世界における魔法使いゼルレッチ、
虚数空間の姫カグヤ、そして消滅したかと思われたオーマジオウまでもが集う。
正しく超常の集いに胃を痛めながらも、時の界王神も彼等の会議に参加する。
議題は、世界の危機。
オーマジオウに手を掛けたショッカー、ミケーネの神々、メサイア教団、ソロモンの指輪、そして特異点。
様々な要素を話し合い、議決を終えようとした時、特異点に異変が起こっていた。
新たなる世界、四季彩世界の降臨である。

 その会議の裏で、若き日のブルマはタイムパトロールに連行された
常盤SOUGOの押収品ライドウォッチから、トランスボールなる発明品を創り出す。
出来上がったソレをトランクスに預けると、彼女は颯爽と去っていってしまった。
この発明は、リユニオンスクエアに一体どんな変化を齎すのか?

【暗黒魔界編】原文:AMIDANTさん

 ターレス達を連れ帰ったトワは、暗黒魔界で、新たなる神精樹を育てていた。
通常の神精樹とは違う禍々しい樹が生まれる中、トワはターレス達にある指令を下す。
それは、ドラゴンボールの奪取であった。

【異端者組とカリギュラ2編】原文:渡蝶幻夜さん

 前回、月影夢美の不正行為(塔を斬ったこと)によりエピメテウスの塔の
ガバガバセキュリティがやっとこさ強化されてしまった、なんてことしてくれたんだ。

 そんな裏で地元である四季彩の世界がとんでもないことになっていることは
誰も知らなかったのである。

【守護神 - the Guardian -編】

 藤丸との仮契約を解消し、己の本来の使命……
生前、彼を苦しめてきたギリシャの神々への復讐を果たすべく
リ・ユニオン・スクエアに向かった英霊、アルケイデスは
ミケーネ帝国の戦闘獣と交戦中だった鉄の城、マジンガーZとの邂逅を果たす。
その機体に憎きギリシャの神々に似た気配を感じ取った彼は、
マジンガーのパイロットである兜甲児にやや手荒い接触を図った。
両者が触れ合った瞬間、マジンガーZの光子力エネルギーが急激な活性化を見せ
彼らはゼウス神が存在する精神世界へと吸い込まれていった。
そしてそこで出会ったゼウス神の導きによって、英霊アルケイデスはゼウス神が
人類抹殺を図るミケーネ帝国にただひとり反旗を翻した誇り高き英雄であり、
その意志を受け継いだのがゼウス神の遺産・マジンガーZを操る甲児である事を知る。

 ゼウス神から甲児らと共に人類を守る使命を託されたアルケイデスは、
決意を新たに人類の守護者となるのであった……

【黒平安京編】

 拠点再建に勤しむCROSS HEROESとカルデア。
しかし、そこにダ・ヴィンチからの緊急通信が届く。
特異点に突如、平安の京のような巨大構造物が出現したのだと言う。
早速調査に向かった藤丸立香やマシュ、CROSS HEREOSの選抜者たち。
だがそこで彼らは信じられないものを目にする────

 黒平安京。安倍晴明が根城とするこの都には、
鬼や妖怪と言った魑魅魍魎が跋扈している。そんな恐ろしい魔境の地へ、
藤丸立香たちは今まさに足を踏み入れようとしていた。
肺が腐り落ちそうな瘴気が漂う道を進む一行の前に、遂にその姿が現れる。
それはカルデアの一員であるはずの酒吞童子と茨木童子。
どうやら黒平安京の瘴気に当てられ、鬼としての本能が目覚めてしまったようだ。
かつて平安の世にて生前の彼女らと戦った因縁深き坂田金時や渡辺綱は、
躊躇いながらも戦闘態勢を取る。

2人目

「蒼白翠談義」

突如として現れた少年に、戸惑いを隠せないアタランテと罪木オルタ。
そんな二人の様子も気にせず少年、アビィは続ける。

「いやぁ、こうして直接対面するのは六本木以来かな?」
「…そういや、初めてお前と会ったのはあそこだったな。」

思い浮かべるのは、お世辞にも良いとは言えない対面。
六本木ヒルズでメサイア教団の大司教が放った口車に乗せられ暴走し、仲間とぶつかり合ってしまった場面だ。
思い返したくもない出来事が頭に浮かび、思わずしかめっ面になってガシガシと髪を掻く罪木オルタ。

「あ~、クソ。嫌なもん思い出しちまった。」

そんな罪木オルタを、アビィはただ微笑んで見つめるだけだ。
何やらただならぬ様子の二人に、アタランテが首を突っ込む。

「知り合いなのか?」
「如何にも!僕と彼女はあの日、運命の出会いを果たした赤い糸で結ばれた仲なのさ!」
「平然と嘘ついてんじゃねぇ!うっかりすれ違っただけだろ、角度ミスったっつったの聞き逃さなかったからな!?」
「ははっ、冗談冗談。偶然と運命の違いなんて見分けは付かないし、嘘も方便ってね。」

ケラケラと笑いながら欺瞞を称するアビィに、苛立ちながらツッコミを入れる罪木オルタ。
アタランテは呆れながらも、冷静にアビィの異常性について悟っていた。

「…ただの子どもでは無いのは分かった。何者なのだ?」
「そうだね、お互いに自己紹介といこうか。僕はアビィ・ダイブだ、アビィと呼んでくれたまえ。」

そう言って、帽子の鍔上げて胸を張る姿は、自信ありげな表情も相まって年相応の少年の様にも見えた。
何処となく胡散臭くもあるが、名乗られたのならば返さねば無作法という物。
罪木オルタ達も口を開く。

「あー、そうだな。知ってると思うが罪木オルタだ。」
「あぁ、君については良く知ってるさ。これからも宜しく。」
「アーチャー、真名をアタランテという。アタランテで良い。」

此方も宜しく、と返し、次いで質問が飛ぶ。

「ところでアタランテというと、ギリシャ神話における俊足の狩人アタランテ、で合っているかな?」
「…驚いたな、神話の私を知っているとは。」
「僕は博識でね。それより君の足には興味があるんだ、今度速さ比べでもしてみないかい?」
「ほう、知ってて挑むか?面白い奴だ、精々射られぬ様用心するのだな。」

不敵に笑うアタランテに対し、アビィもまた微笑みを返す。
速き足を自慢するならまだしも、速さ比べとは面白い事を言うものだと、口角を上げる。
アビィもまた、挑戦的な笑みを浮かべる。
そんな不穏な空気に、罪木オルタが割って入った。

「あー、ストップストップ。つーかお前何の用で来たんだ?」
「そうだった!聞いてくれ、僕の秘蔵のワイン類が変なのに飲み干されてさぁ~!これから買い出しに行くんだ。」
「待て、酒に手を出しているのか!?」

先程までの不敵な笑みが消え失せ、驚愕の色が浮かぶアタランテ。
しかし当の本人は、それがどうしたと言わんばかりにけろりとした態度だ。
アタランテはその態度に溜息を吐き、頭痛を抑える様に額を押さえた。

「酒か、丁度良い。あたしも何か買うか。」
「お、君も嗜むのかい?良い酒を知っているんだ、お勧めを紹介しようじゃないか!」
「お、おう?」
「待て待て待て、子どもが酒を飲むんじゃない!」

アビィのペースに巻き込まれている事に気付いていない罪木オルタにまたも頭を抱え、深いため息を吐く。
アビィはと言えば、そんなアタランテの様子を見て愉快気に微笑んでいる。

「おっと、勘違いして貰っては困るぞ?僕は見た目通りの年齢じゃないんだ。」
「そ、それならそうと…」
「晴れて3歳を迎えた。」
「もっと駄目だろう!!?」

そんな二人のやり取りに、罪木オルタは不思議そうな顔になる。
自分の時もそうだったが、この男は一体何者なのか。

「いや、マジでこいつ何なんだ?」
「僕かい?見た目通りのナイスガイだ。」
「自分で言うな。」

言いながら、軽く小突く罪木オルタ。
その様子はじゃれ合う姉弟の様であった。

「あいたっ、3歳相手に容赦ないねぇ~?」
「お前はどう考えても人間じゃねぇだろ。」
「ありゃ、バレてたか。全く人の子以外には手厳しいね、それとも子どもには特別優しいのかな?」
「はぁ、さっきの会話聞いてたんだろ?これ以上言わせんな。」

鬱陶しそうに手をひらひらとさせ、そっぽを向く。
そんな彼女の視界に飛び込む様に、アビィが顔を覗かせた。

「…んだよ?」
「ふふん、可愛い所もあるね。」
「殺すぞ。」
「うわっ、物騒だなぁ。」

悪びれる様子もなく、ケラケラと笑うアビィ。
その姿に、アタランテは確信していた。

(これは、絶対に面倒な奴だ。)

アビィ厄介さ加減に、またもや頭を悩ませるのだった。
そんなアタランテを余所に、会話は続く。

「マジで何なんだよ、お前。」
「アビィと呼んで欲しいね。」
「はいはいアビィ、何の用だ?」
「前に言ったかな?僕は、君に興味があるんだ。罪木オルタちゃん。」

罪木オルタの目を見つめ、その名を呼ぶアビィ。
対して、罪木オルタの瞳には動揺が走っていた。
何故かは分からないが、こうも真っ直ぐ見られると邪険に出来ない気持ちが込み上げてくる。
そして、気付いた時には彼の口車に乗せられていた。

「…あたしが復讐者のサーヴァントだって言うのは、聞いてるな?」
「勿論、でも君には復讐心よりも強い優しさがある。」
「んなもんじゃねぇ。何つーか、子どもを見てると放っておけねぇって。それだけだ。」

そう言って、にっこりと微笑む。
何故、会ったばかりの彼に自分の事が分かるのか。
疑問に思いながらも、どこか心地よさを感じる。
そんな複雑な感情に、思わず目を逸らしてしまう。
すると、彼は更に笑みを深めて続けた。

「うん、やっぱりだ。君には深い愛情があるんだね。」

その笑顔からは、無垢さと邪気が混ざり合った不思議な魅力があった。

「なっ…」
「よーし、僕からの奢りだ!金は出すから、好きな物何でも買うと良いさ!」
「~っ!言ったな!?だったら高い酒買いまくってやる!」
「良いとも良いとも!君の話を聞いたチップ代としては安い方さ!」
「だから!酒に!手を出すな!」

アビィの頭に拳骨を落とすアタランテ。
それでもアビィは、屈託の無い笑顔を浮かべるのであった。

(それに、請求はあの紫色の口座を突き止めれば良いからね!)



「何か、私の懐が危ない気がするわ。」
「どうした急に?」
「いえ、多分気のせいね…」

3人目

「ハチャメチャに暴れ野郎」

 特異点に出現した黒平安京の調査に向かったカルデア/CROSS HEROESの
メンバーたち。そこに待ち受けていたのはアルターエゴ・リンボ、
そしてカルデアを離反した酒吞童子と茨木童子であった。
共に戦ってきたはずの酒吞と茨木の裏切りに困惑する立香とマシュ。
黒平安京に漂うドス黒い瘴気が、酒吞たちの鬼としての闘争本能を掻き立てているのだ。
戦いたくはない……しかし、手加減していればこちらがやられる。
苦悩しながらも戦闘を開始するCROSS HEREOSとカルデア。
やちよはこのままでは戦況不利と判断して撤退すべきか悩むが……
その時、何処からか謎の高笑いが響いてきた。

「ハッハッハッハッハ……ハァーッハッハッハッハッハ……」
「!?」
「今度は何だ!?」

 高笑いの主に、戦場にいる誰もが目を向ける。
羽衣を纏った天女たちが舞い踊り、半裸の屈強な男たちが担ぐ神輿の上で、
その男は花吹雪を撒き散らしていた。
全身真っ赤なスーツ、頭頂部には丁髷、額には桃のマークの鉢巻、
黒いサングラスを象った仮面で顔を隠した男……

「やあやあやあ、祭りだ祭りだ〜ッ!! 袖振り合うも他生の縁、躓く石も縁の端くれ!
共に踊れば繋がる縁! この世は楽園! 悩みなんざ吹っ飛ばせ! 
笑え笑ええええええええッ!! ハァーハッハッハッハ!!」

 楽園とは真逆、この世の地獄めいた黒平安京に、
大胆不敵、無遠慮にも乗り込んできた大迷惑、その正体は……

「桃から生まれた、あ、ドン! モモタロウ!!」

 神輿から飛び降り、見栄を切って名乗りを上げたドンモモタロウ。
皆、唖然とした表情を浮かべる。

「ハッハッハッハーッ!!」

 神輿の上に搭載されていた近未来バイク「エンヤライドン」に跨り、
飛び降りるドンモモタロウ。
群がる妖怪たちを次々に撥ね飛ばしながら、縦横無尽に大爆走!

「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ギエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

「なんだアイツは……」
「バカなのか? 狂ってんのか? だが、大したバイク捌きだ! 
こんな状況じゃなけりゃ俺っちのゴールデンベアー号とタンデムりてぇ所だが」
「いや……でも強い……!」

「ンンン、これまた珍妙なお客様だ事で……」
「お前に言われたくは無い、半裸のピエロ男め」

 周囲の妖怪たちをエンヤライドンで粗方片付けると、
ザングラソードの切っ先を、羅生門の上から見下ろすリンボに向けて
突きつけるドンモモタロウ。

「ンンン……そうやって調子に乗る者ほど、足元を掬われますぞ?」
「いきなり現れて、何なのだ貴様ァァァ!! 綱との戦いに水を差しおってぇぇぇぇ!!」

 茨木が斬りかかる。しかし、

「ふんッ」

 ドンモモタロウは振り返る事もなく、ザングラソードで茨木の骨刀を弾き返した。

「片腕で……!?」
「へぇ……」

 マシュが驚き、酒吞が感心する中、
ドンモモタロウはザングラソードを振り抜き、茨木を遥か遠くへと吹き飛ばす。

「おのれェ……!!」
(!! 今がチャンスかも……)

 ドンモモタロウの乱入により、一瞬だけ生じた隙を逃すまいと、
やちよが皆に号令をかける。

「みんな! 今の内に撤退するわよ!」
「あっ……そうか! みんな! 今の内に!!」

 やちよの意図を悟った立香もすぐさまそれに倣う。

「逃がしませぬぞぉッ!」

【ドン! ブラスター!!】

「ぬっ……!?」

 リンボの足元に専用のハンドガンで着弾させ、ドンモモタロウが
その注意を引きつけている間に撤退を開始するやちよ。立香たちも後に続く。

「逃げるかぁッ!! 綱ァッ!!」
「勝負は預ける。だが、次に会った時こそ決着をつけよう。覚悟しておけ……!」

「運が良かったねぇ、小僧。また遊ぼな? 今度は源氏の棟梁も呼んで、
とことんまで楽しもか」
「酒吞……てめえは……」

「ンンンンン、何たる想定外。だが、まあ。お楽しみはこれから。
今は見逃して差し上げましょう。
……ですが、必ずや、あの者たちには然るべき報いを……フフフ、ハハハハハハハ……」

 リンボの嘲笑にも似た呟きを背にしながら、CROSS HEROESとカルデアは
止む無く撤退に成功した。

「――ああっ、マスター!! 母は……母は心配したのですよ!?」

 拠点に帰ってくるなり、頼光が立香を抱きしめて離さない。

「むぎゅっ」
「ら、頼光さん、先輩が潰れてしまっていますっ」

 その豊満な胸に顔を押しつけられ、窒息しそうになる立香。
そこにマシュが慌てて駆け寄り、頼光の腕を引っ張って助け出す。

「よもやあの性悪御坊が、懲りずに悪巧みを……」

 武蔵にとっても、リンボは許し難い敵であった。
下総国にて一刀両断に斬り伏せたはずなのに、復活してきたのだ。
そんな彼女を前に、立香は静かに首を振る。武蔵は眉根を寄せた。

「……それにしても、あの鬼どもがカルデアを裏切るとは。
だから常々言っていたのです。鬼など、信用ならないと。
問答無用に斬り伏せるのが正しい対処なのです。分かりますね? 綱、金時」

 先程までの態度とは打って変わり、冷淡に切り捨てる頼光に、
綱や金時も底冷えするような殺気を感じていた。
普段は沈着冷静な綱も、頭を下げたまま頬に冷や汗を伝わせ、動かない。

(頼光サン……マジでブチギレ金剛だぜ……)

 久々に見る「神秘殺し」の本気に、金時はゴクリと唾を飲み込む。

「ところで、あの赤い人は?」

 いろははドンモモタロウの姿を探して、辺りをキョロキョロと見回している。

「赤い人?」
「はい……どことなく、ゼンカイジャーの皆さんに似ていたような気がしたんですけど」

 首を傾げる介人に、いろはが答える。
確かに、ドンモモタロウはスーパー戦隊のレッドのカラーリングに酷似していた。

「ドンモモタロウ、って人なんですけど……ご存知ありませんか?」
『んん~……? 僕のスーパー戦隊データベースにも該当する情報は無いッチュン』

 ゼンカイジャーに至る全てのスーパー戦隊のデータを有するセッちゃんにも、
ドンモモタロウの素性はわからなかった。

「セッちゃんも知らないスーパー戦隊? 何か面白そう!」
「ゴライダーなんて方々もいらっしゃいましたしねぇ。
わたくしも知識欲と好奇心がブルンブルンしておりますよ!!」

「面白がってる場合じゃないぜ、介人よぉ。せっかくクォーツァーを
ぶっ倒したと思ったらまた厄介な奴が現れたじゃねえか」

 沸き上がる介人とブルーンを他所に、
ジュランは黒平安京が出現した方向を睨みながら、忌々しく吐き捨てる。

『拠点の建て直しもまだ途中、メメントスに向かった面々が帰ってくるのも
まだ時間がかかるだろう。現状のメンバーで、対応するしか無いだろう。
改めて、黒平安京に対応するための作戦を立てようじゃないか』

4人目

「アルケイデスvs戦闘獣/幻想入りの刻」

 アルケイデスの眼前には、無数の戦闘獣とミケーネ神。
 しかし、彼は一切の迷いはない。

「貴様らからは、感じるぞ。忌まわしき神の臭いが!」

 ほざくか!と言わんばかりに戦闘獣が一斉攻撃を開始する。
 片やミサイル。
 片やドリル。
 片やレーザー。
 片や機械の鎗。
 片や機械仕掛けの剣。
 人類の文明の中でも最悪の象徴が災厄の勢いでたった一人の英雄目がけて放たれる。
 殲滅、虐殺、鏖殺。その暴威がたった一人目がけて放たれているのだ。
 土煙が花を咲かせる威力を前に、機械獣たちは勝利を確信する―――――。

「ふ……ふふ……はははははは!!」

 はずだった。
 突如、土煙の奥からあざけるような高笑いが響きだす。

「……弱いな。」

 遠い世界にて、英雄王を前に言い放った台詞がこの地に放たれる。
 結論から言ってアルケイデスは傷一つついていなかった。
 彼の頭蓋をすっぽりと覆う皮衣。その奥から、アルケイデスの余裕の嘲笑が浮かんでくる。

「先の攻撃、その三倍の威力で攻めるがよい。それで対等だ。」

 挑発まがいの宣告をする。
 その声は冷淡で、所々に憎悪がにじみ出ている。

 その圧倒的な威圧感と異質さ、そして戦闘力の高さに機械獣の群れは恐れをなす。自分たちは何と戦っているのか、と。
 まるで、自分たちと姿かたちが異なる異形の怪物を相手にしているような。
 しかしいつまでも恐怖しているわけにはいかない。機械獣たちは諦めずに一斉攻撃を開始する。

「愚策だな。――――射殺す百頭(ナインライブズ)。」

 冷徹に、彼は矢をつがえて放つ。
 9本の矢は毒蛇の如く邪気を纏ってうねり、迫り猛る龍の如き速度で迫り敵陣を喰らい破壊してゆく。
 これこそは射殺す百頭。
 ヒュドラを下せしアルケイデスの流派にして、あらゆる武器を想定して放たれる人間の底力である。

「ーーーーー!!」

 戦闘獣は尚も諦めずに抗戦する。
 アルケイデスはそれを返り討ちにし続けてゆくのだった。



「準備はいいな?その……ゆかりん?彼女がいいって言うまでそのコンテナを出るなよ。変に動いて何が起きても対処のしようがないからな。」

 ギリシャのベースキャンプに、一台のコンテナが鎮座する。
 その扉の奥にいる4人に、イシュメールが警告する。

「こっちは準備OKだ。」
「では、歓迎いたしますわ。我らが幻想郷へ。」

 イシュメールは八雲紫にアイコンタクトを送る。
 そして準備が整ったのを確認して、幻想郷へのワームホールが起動するのだった。

 かくして、4人を乗せたコンテナは橙色の光に包まれる。
 やがて光はコンテナを上から覆い、遂には飲み込んでしまった。

「これより、当コンテナは幻想郷、幻想郷に向かいま~す。到着までの時間は、10秒ほどとなりま~す。」



 そこは、忘れ去られたものが集う理想郷。

 幻想郷はあらゆるものを受け入れる。
 善人、悪人、強者、弱者、神、魔、真祖、妖怪、機械、そして人間。
 その全てが等しく、この地では弱者なれば。

 忘却の彼方へ集いし者たちよ、剣を鍛えよ。
 その先にある希望を、掴むために。

 ―――――亡失の理想郷/忘却の廃棄孔にて、君を待つ。



Chase Remnant ACT2        人理定礎値:EROOR
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      ■.■.2013  亡失ノ理想郷 幻想郷

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         廃棄孔異変《前の章》

5人目

「メメントスの探検」

 地上が大混乱に陥っている中、メメントスに向かった悟空たちは……

「波ああああーッ!!」

 スライムに気功波を放つ悟空だったが、イマイチ効果が薄い。

「グヘヘ……」

「ダメだ! 効かねえ!」
「ここは私に任せて! カルメンッ!!」

 パンサーが自身のペルソナ「カルメン」を召喚した。
黒い猫型の仮面に、ツインドリルの髪。
情熱の赤い薔薇とフラメンコ風の意匠を併せ持つ
ドレスを身にまとう踊り子のイメージ。

「アギラオッ!!」

 ペルソナ使いには、それぞれ「属性」が存在する。
杏であれば、「火」を主に得意とする。カルメンは炎系の技を多く会得しており、
中でもカルメンの使う炎系魔法「アギラオ」は、敵単体に強力な火炎属性の攻撃を
行うものだ。

「はぁっ!」

 杏が放った魔法の一撃で、スライムは跡形もなく蒸発してしまった。

「グギャアアアアアッ……」

「ひょう、おめぇすげえなあ」
「イェーイ♪」
 
 悟空が感心して言った。満面の笑顔でピースサインを返すパンサー。

「シャドウには、属性相性と言うものがあるんです」

 そう言って説明を始めるクィーン。普段の心の怪盗団の戦闘においても
的確な指示を送り戦況を有利に進めるのは彼女の役目だ。

「さっきのシャドウは、物理攻撃に強く、炎に弱い。
だから、悟空さんの攻撃はいつもよりも効果が発揮されなかったんです」
「へええー、そうだったんかあ」
「力任せでは勝てない相手もいるという事か」

 ピッコロも少し納得している様子だった。

「敵の特性を知り、弱点を攻める。確かに理に適っているな」
「流石ですね、ピッコロさん」

 褒められたのが照れくさいのか、ピッコロはそっぽを向いてしまった。

「ふん、これくらいは当然だ。それより先に進むぞ」

 すると、今度は騎乗の騎士・エリゴールが悟空たちに立ちふさがった。

「また出た!」
「もう、うじゃうじゃ出てきて! こいつも私がやっちゃうんだから!」

 杏がカルメンを呼び出して臨戦態勢をとる。

「待って、パンサー! そいつは……!」

 クィーンが止める間もなく、カルメンのアギラオがエリゴールに向かって放たれる。
だがしかし、エリゴールにはまったくダメージを与えられなかった。

「えっ!? 効いてない……」
「あいつは火耐性が高めの敵よ! だからさっきのアギラオでも
効果が無かったんだわ……!」

 焦る一同を尻目に、エリゴールの槍による攻撃が始まる。
馬上から繰り出されるその猛攻を避わすと、地面に深い穴が出来てしまった。

(あの槍には、かなりの威力があるようね……。
それにスピードも速いし、このままじゃマズいわ)

 どうするか考えている間にも、エリゴールからの猛追が続く。

「電磁スピアーッ!!」

 バーサル騎士ガンダムがスピアの先端から電撃を放ち、エリゴールにダメージを与える。

「ぐわわわわーッ!!」
「おお……!」

「そうか、あいつは雷属性に弱かったんだわ!」

 クィーンの言う通り、エリゴールは電気系の攻撃にとても弱く、
バーサル騎士の攻撃によりダメージを受け、さらに感電状態に陥ってしまった。

「ぐおお、し、痺れる……!」
「おっしゃ、チャンスだ!」

「私の出番ね!」

 魂を閉じ込める手持ちサイズの檻を鐘のように鳴らすエレシュキガル。
地の底からティラノサウルスの骸骨が這い出て、エレゴールをひと飲みにして
食ってしまったのだ。敵を喰らい尽くすまで止まらないその姿はまさにモンスターである。

「グギャアアアアッ……」
「エレシュキガルさんは冥界の女神だから、呪霊属性があるのかも知れませんね」
「ふふん、どうかしら? 私の力、思い知ったかしら?」

 得意気に胸を張るエレシュキガル。

「あー……終わった?」

 徐福は戦いが済んだのを察して物陰から出てきた。

「あなた! もう少し真面目にやりなさい!」

 冥界をたったひとりで統治する真面目な委員長タイプのエレシュキガルは
徐福に指を指して怒鳴りつけた。

「私は肉体労働専門じゃないんだもーん。サポート系だもーん」

 そう言って頬っぺたを膨らませてむくれる徐福だった。

「まったく……」
「そんな事よりも先に進んだ方がいいのでは?」

 メドゥーサは至って冷静な口調で言った。
その言葉を聞いてハッとする一同。

「わ、分かっているのだわ! 行くわよ!」

「エレシュキガルに、メドゥーサ……カルデアには斯様な神々までもが
召喚されているのだな……」

 フォックスは改めて彼らの存在の大きさを感じたようだ。
先の祝勝会の宴でも、葛飾北斎やヴァン・ゴッホなどの芸術家と
楽しげに語らっていたのもあり、未だに夢見心地な気分に囚われている。

「よし、先に進むか……」
「このメメントスっちゅうんはどんくらいの広さがあるんだ?」

「さあ……このメメントスは私達にも未だ解明できない事も多いので……」

6人目

「GV、後の敵を頼む!」

「了解!」

雪が敵の動きを大半氷で足止めさせる
その間にGVのロックオン雷撃によって敵が一気に倒れていった

AIR-HIT
+30

AMAZING
+400

NICE-HIT
+10

「これで、最後!」

氷で止めきれなかった敵を二刀流でどんどん薙ぎ払っていく夢美、実はとっくのとうに魔力切れになっているらしいが体力だけは有り余っているとかなんとか


《エピメテウスの塔 東塔44F》


「全員、ご苦労」

「お前らふざけた奴らなのになかなかやるじゃん」

全くもって戦っていない太陽、しかし重要参考人と思わしきムー君を監視する為に仕方がなかったのだ。

「現場監督兼監視役の大空太陽よ、流石にぼかぁ限界でふぅ!」

そんな中、文句を言いながら休憩出来るスペースに寝っ転がる雪

「だーもう、流石にもう無理!やめやめ!」

「うん、とりあえず大丈夫そうだね」

武器をしまって座る夢美と周囲を確認し安全を確保するGV

『やっぱり、塔は敵が多いのね・・・』

ここまでぶっ続けで戦ってきたらしく全員
流石に休憩タイムらしい

「流石に俺は寝る・・・全然寝れてなかったし」

「周囲は警戒しておくから安心して」

「布団用意しておいたよ!」

「・・・分かった」

もう何が何だか分からないが多分そういう事なのだろうと勝手に理解してムー君は寝たのだった。他の人達、寝なさ過ぎ問題

「ところで夢美、気になったんだがGVとは何処で出会ったんだ?」

寝ていても監視は続けるのだがそれが暇なのか突然の質問をぶん投げたのは太陽だった。

「あーあのね。とある世界に色々な世界から人を呼んで集まってふざけた茶番するってことをしていたんだよ」

『あら、随分懐かしい話をするのね?』

「懐かしい…まあ確かに、約7〜9年ぐらいはやってたよね。おかげでGVやあのお方にも出逢えたって訳」

「前々から言ってるあのお方ってやっぱりマリオさんのこと・・・だよね?」

「マリオさんに出会わなかったら私は死んでいたけどね〜」

サラッと失われし7年の話をし始める月影夢美

「え、まさか、マリオってあのマリオ?」

「訳ありマリオさん・・・ですけどね、出せない事情があって出せませんけど」

ここだけの話でもありメタい話であるが、マリオさん訳ありなのである。
つまり夢美が言っていること…それは原作とは大きくかけ離れてた設定にしているからということである。
いや、マジで

『まあ、ちょっとね・・・』

「ご想像にお任せします」

「僕からもちょっといいかな?ずっと気になっていたけど夢美と太陽と雪って出身地とかってあるの?」

彼、GVにとってはかなり疑問だったらしいってよりずっと気になっていたらしい

「俺は夏風横丁出身」
「私、秋雨の街出身」
「おら氷結の街出身」

「一気に出てきたね・・・!?」

『でも、一度に喋らなくていいのよ?』

「「「シンクロ率100%」」」

「わぁ・・・」

あれは見事なシンクロ率だったよ。と後に彼はそう語った
そうではなく・・・

「ひょっとして、君達3人は同年代なの?」

「「「18歳(だよ! だ。 デース!)」」」

ますますシンクロ率を高める3人に感心し始めるがGV、だが彼も数多のクセ強能力者と戦ってきたのか、彼もまた鍛えられていたのだ

「ちょっとそのフルシンクロやめよっか」

☆トリプルカットイン☆
「「「プログラムアドバンス」」」
ブロンズトロフィー獲得
3人同時プログラムアドバンス 達成
君達、異端者は暇人なのか?

「べェェェェタソォォォォォォドッッッ!!!」

「ダブルヒーロー2!」

「ダークメシア!我はメシアなり!!」

「あ、綺麗に別れた」

途端に3人は睨みあって争い始めた

『呆れた・・・』

「あ、あっははは・・・」

争い始めていた3人の動きがピタッと止まる

「それで、GVとモルフォはどれが好き?もちろん、ベータソードだよね!」

「いや、ダブルヒーロー2だ」

「我はメシアなり!ハーッハッハッハ!セイ、ハッ、トゥ!滅びよ!消え去れ!オリャー!ヤッ!ヤッ!オリャー!」(ピピピピピッ)
(ここだけキャノンボール流てる)

「えーと、ちょっと僕その時期そんな余裕なかったから分かんない・・・かな〜って」

おっと、OSSはやったが未プレイ勢だからここまでにして頂こうか!(天の声)

「そ、そうか・・・」

「てか、雪さんさっきっから違うメシアばっかでうっさいんだけど!青のくせに!青のくせに!回復もすんな!!」

「ハァッ!」

「僕も蒼なんだけど」

『私もよ?』

「凄いな、ここの場に3人の青い人がいる」

「なに?トリッガー様3人いるとか嫌なんだけど、でも確かに・・・それは凄いけどさ!!」

話が凄まじい程、脱線したところでムー君が起きた。
GVは詳しく聞けなくてちょっと残念がってるとか何とか
忘れ物がないか念入りにチェックして休憩があっという間に終わっていた。

7人目

「幻想の邂逅」

 幻想郷の中央部にある、人間の里。
 ここは幻想郷完成の日から、脆弱な人間が外にいる危険な妖怪から身を守るために作った小さな里であり、小さいながらも慎ましやかに過ごしている。
 現在、この里ではある話が広がっている。

「なぁ、知ってるか?例の『悪霊』。」
「ああ知ってる。夜になると活発になりやがるからな、おちおち飲みにも行けねぇぜ。」
「例の黒服の男が来て以降妙に数が増えてるからな……しかも三月もの間ずっとこれだろ?」
「ほんと、今回ばかりは霊夢の嬢ちゃんもお手上げかねぇ。」

 3か月前から続いている、悪霊異変。
 幻想郷の守護者の多くが手をこまねいているというのもあってか、その会話も不穏さがにじみ出る。

「こりゃそろそろ、俺達もなんか自衛手段でも用意するかね。」
「しかし、相手はあのバケモンだぜ?俺達ごときが勝てるとは思えないが……。まぁ、ないよりましか。」
「だろ?それにおめぇ家族いるだろ?奥さんとか子供とかケガさせたかないだろう。」
「そうだな。なんか準備でもしていくかねぇ。」

 人間たちの談笑。
 しかし、迫る悪霊への対策をしないわけにもいかない。
 彼らにも家族や人生、守るべきものがある以上怠けている暇はないのだ。

 自衛手段を持たなければ、弱肉強食の幻想郷では生きていけないのだから。

「なんだ?博麗神社の方角から光が出てねぇか?」
「……流石に気のせいだろ。」
「凶兆、じゃないといいんだがなぁ。」

 博麗神社の方からほのかに見える光。
 果たしてその正体は、いかに。



 幻想郷 博麗神社
 時刻は外の世界単位で約10時ごろ。

「おちおち、休憩できる時間帯と言ったら今くらいのものよね……」
「なにお茶飲んでんだよ、お前は相変わらず呑気だなぁ!悪霊異変で私らみんな頭抱えてんのに!」
「うっさいわね、こういう時こそ休む時には休まないと……。」

 霊夢と魔理沙。
 この2人は悪霊がいない間に休憩をしている。
 悪霊異変という未曽有の事件の断章。

「ひ、光!?」

 橙色のまばゆい光が、博麗神社の境内にほとばしる。
 光の奥から、四角いコンテナが出現した。
 霊夢たちが知らない存在の出現に、一同は混乱し警戒する。

「ちょ、紫!?」
「あら霊夢、魔理沙。お客さんよ。」
「そ、その箱がか……考えられねえ。」
「まさか、この箱の中にいる人たちよ。もういいわよ、出てきなさい。」

 ぎぃ、とコンテナの扉が開く。
 そこから、4人の戦士が現れた。

 片や剣、片や刀といった多種多様の武器を持った

「やっと出れた。地味に暑いなこの中。」
「兄さん、わがまま言わない。」

 幻想郷では見ない風貌の4人。
 魔理沙は驚きの表情を浮かべるが、それとは対照的に霊夢が頭を抱える。

「もー、お客さん呼んできたの!?」
「いいじゃないの、彼らもこの異変を解決する為に来たんだから。」
「そうです。ボク達は」

 彩香がここまでの経緯を簡単に説明する。
 一通り聞き終えた霊夢は、ため息を吐く。

「はぁ……分かったわ、とりあえず上がりなさい。事情は中で聴くから。」

 かくして、霊夢は神社の中に月夜たちを入れた。
 紫はニッコニコで追記する。

「あと、後でもう一人来るから。」
「もーヤダ。」

 霊夢の気苦労は絶えない。



 同時刻 紅魔館にて

「で、あなた”本当に”あのナポレオンですか?」
「ウィ!いかにもだぜ。」

 紅魔館の庭、備え付けられた小さいテーブル。
 メイド長、咲夜が自称ナポレオンの男に紅茶を渡しながら質問を投げかける。
 否、質問というよりかは"詰問"だ。

「その傍らの大砲や顔つきからもフランス人であることは分かりますが……どうにも……史実とは図体の差が。」
「傷つくこと言うなぁ。図体は関係なく、俺は俺だ。あんたの言うナポレオンだ。」

 巨大な大砲。
 史実とは異なり、190センチ弱はありそうな体格。
 朝日のような笑顔を浮かべながら、快活に戦う炎が如き男。

 ―――弓の英霊『ナポレオン』。

 その正体は幻想郷に降り注いだ2つのソロモンの指輪の影響で出現した、人理を守るための英霊である。

(パチュリー呼ぼうかしら……。)

 ただ、眼前のメイド長は依然訝しんだままだが。

8人目

「おいでませ博麗神社」

 ――博麗神社・拝殿。

「ここが……幻想郷……」

「まあ、ゆっくりしていってね」
「お前が言うなよ、紫」

 月美やペルが辺りを見回す。一見すれば、日本の山奥にも見える風景。
幻想郷。そこはかつて、東方の国に実在した場所であったが、
人間と妖怪の調和のために現世とは隔絶された結界に包まれ、
今は別世界とも言える独自の文化を築いている。

「霊気を感じる……あなたも巫女か何か?」

 霊夢が月美の中にある神秘の力を感じて話しかける。
幻想郷と現世を隔離する博麗大結界の管理は代々博麗神社の巫女が担う。
現在では、霊夢がその役目を果たしているのだ。

「え? いいえ、私は退魔師の一族の者です」
「退魔師……ってことは妖怪退治とかをするの?」
「ええ、まあ……」

「こっちのチビっちゃいのからは魔力を感じるぜ。つーか、魔力しか感じねぇんだけど」

 魔理沙はペルの方をじっと見つめながら、その本質について言及する。

「お前とて背丈は私と変わらないだろう」

 そんな魔理沙に対してペルがいつもの仏頂面で反論を返す。

「何だこいつ、感じ悪いぜ!」
「やめなさい、魔理沙。アンタが先に失礼なことを言ったんでしょうが」

 霊夢は魔理沙の頭を叩くと、ペルの方を向いてこう続ける。

「ごめんなさいね、この子口が悪くて」
「良い。間違った事は言っていない。私は体内に埋め込まれたコアから生成される
魔力を動力源としている。それを感じたのだろう」

「じゃあお前、人間じゃないのか?」
「魔理沙!」

 霊夢がまたも魔理沙の頭にチョップを入れる。

「ぁ痛ッ! 霊夢! お前さっきから私の頭をポンポン叩きすぎだろ!
頭悪くなったらどうしてくれるんだぜ!?」
「もう手遅れでしょうが。踏み入った話をズケズケと……」

「そうだな。私は人間ではない。だが、私も人間のように生きたいと思った。
だからこそ、ここにいる」

「……」
「……」

 至って真面目な顔で話すペル。

「あー……そうかい」

 そんな彼女の表情を見て毒気を抜かれた魔理沙が、それだけ言って席に座った。

「悪かったよ、色々と言って」

 そう言うと、魔理沙は軽くペコリと頭を下げる。
しかし、そんな魔理沙にペルは少し首を傾げ、ややあってから
合点がいったような表情をして、

「ああ、気にしていない。むしろ、こちらこそすまなかった」
「でも、身長は私の方が高いもんね!」
「全然反省してないでしょ、アンタ……」

 全く懲りていない魔理沙に呆れた霊夢が、溜息を吐く。

「私とて成長期だ。これから伸びる」
(ペルちゃんちょっと張り合ってる……)

 月美がそんな二人に苦笑しつつ、話題を戻す。

「あなたたちに関しては、まあまあ分かったわ。それより、一番気になるのは……」

 霊夢が視線をもう一人の来訪者の方に向ける。

「……ボク?」

 月美やペルの本質を一目で見抜いた霊夢や魔理沙であれば、
彩香の中に宿る「彼の者」の存在に気付かないわけがない。

「お前……何つうモンを抱え込んでんだ?」
「人でありながら、神の気配を漂わせている。これは一体どういうこと? 紫」

「あーら、さっすが博麗神社のゴールデンコンビ。察しがいいのねぇ」

 何処からか持ち込んだ酒を飲みながら、片方の目だけを開いて
霊夢と魔理沙に視線を飛ばす紫。

「アマツミカボシ……の事?」

 ロンドンにて、メサイア教団の放った刺客「ラスターズ」を瞬く間に撃破した
彩香が背負う"力"の正体。神霊アマツミカボシ。
石川五ェ門が斬鉄剣に全身全霊を賭しての一騎打ちに挑み、
どうにか鎮める事が出来た神霊。それ以来、アマツミカボシは
彩香の中で深い眠りについている。だが、いつまた目覚めるかは分からない。
そうなれば、再び宿主である彩香の意志を乗っ取り暴れ出すだろう。
だから、ペルと月美は彩香の監視も兼ねて天宮兄妹と共に幻想郷にやって来たのだ。

「お客さんどころか、導火線に火が点いたダイナマイト持ち込んで来やがって……」
「あはは、上手い例えじゃない、魔理沙」
「笑いごっちゃ無いんだぜ!」

 紫が謝意のこもっていない声で軽く謝罪をする。

「ボクは……アマツミカボシの力を上手く使えるようになりたい。
でも、どうすればいいのか、分からなくて……」
「はあ……なるほどね」

 相談を受け、霊夢が思考を巡らす。
彩香は普通の人間だ。故に霊力が特別強い訳でもない。
だが、彼女の内に宿す神霊――アマツミカボシがもたらす力は、
幻想郷のパワーバランスさえ崩しかねない程のもの。
それを制御できずに暴走すれば、幻想郷そのものの危機にも繋がりかねない。

「面倒事は今に始まった事じゃないけど……今回はそれに輪をかけて大変そうね」
「よろしくお願いします。彩香を……妹を」

 すぐ隣にいるのに、妹・彩香に対して何もしてやれない事に悔しさを募らせる月夜。
己の非力さを呪うあまり、人である事を捨てようとさえ考えた。

「まあ、やれるだけは……ね」

9人目

「ミケーネ神vs破壊神!超常バトル勃発!」

激闘に次ぐ激闘。
荒れた大地に火炎の華が咲き乱れる、ここはギリシャ。
DDが受け持つ地区の一つである。
メタルギアの兵装が火を噴いて、ミケーネの戦闘獣が火花を上げる。
悲鳴めいた軋みを上げ爆散する戦闘獣達。
しかしその死骸をも踏み越えて、数多の戦闘獣が刻一刻と迫り来る。
犇き合う戦闘獣の群れに、大地が埋め尽くされる。
地上は、最早人間の手に負える状態では無かった。

「畜生、これじゃキリがねぇや!」

そうぼやきながら、サヘラントロプスで戦闘獣を手に掛けるのはウーロンだ。
彼の目覚しかった活躍も、今は陰りを見せている、
彼は元々軍人でも無ければ、訓練された兵士でもない。
長期の戦闘に慣れた身体ではないのだ。
疲れだって出てくる。

『こっちもそろそろ兵装が尽きる、不味そうだな…』

通信越しに届くスネークの声も、芳しくない。
此方は此方で、無数の戦闘獣相手に圧倒的な武装回転率を見せているのだが、同時に弾薬類の消耗も激しい事を意味している。
兵站も無限ではない。
対し戦闘獣の群れは未だ健在。
端的に行って、劣勢を強いられていた。

『他の地区も手一杯だ、ここを切り捨てる事も視野に入れないとならなくなってきたな。』

戦いは佳境をも超え、最早全滅戦争へと舵を切り出している
撤退も考えるべきかと、その時だった。

「僕の宇宙で、随分調子に乗って暴れてくれたね?」

上空から、凄まじい風切り音が響いた。
見上げれば、そこに人影が浮かんでいる。
否、紫色の猫と称すれば良い外観をしたソレは、明らかに人間ではない。
第一、只の人間は宙になど浮きはしない。
明らかに異質な存在に、両者共に動きを止める。

「ありゃ、一体…?」

一瞬の静寂。
先に動いたのは、戦闘獣の方だった。
味方では無い、ならば敵である事は明らかなのだ。
故に攻撃の手を休める必要も無いと、諸共に薙ぎ払おうとして。

「『破壊』ですかね。」

先頭の一体が、一瞬にして色を失った塵灰と化した。
気の抜けた音と共に、風に晒され粉微塵に崩れていく戦闘獣。
その余りにも理不尽な光景に、流石のスネークも言葉を無くす。

「僕の神としての沽券に関わるからね。良いよ、掛かってきな。」

人影は、ビルスは尚も悠然と空中を舞い、片手で挑発さえしてみせた。
戦闘獣の意識が、ビルス一人に向く。
一斉に襲い掛かる質量の暴力。

「ふん。」

それを、一蹴。
枯れ木の様な足先で、軽く薙ぐ。
それだけで、無数の戦闘獣が、轟音と共に紙切れの如く舞い散った。
戦闘獣の攻めは、1ミリたりともビルスを押す事すら叶わなかった。

「この程度じゃ、腹ごなしにもならないね?」

分かり切った結果だと言わんばかりに、平然とした顔で語るビルス。
次いで、片手に紫色のエネルギー球を生み出していく。
ソレを見たウーロンの本能が喧しく警鐘を鳴らし、背筋がつららを刺された様に冷え上がった。
あれは不味い、恐ろしい物だと。

「じゃあ、とっとと片付けるとしようか。」

次の瞬間、ソレは現実になった。
撃ち出された拳大のエネルギー球は、真っ直ぐ戦闘獣の集団へと飛んでいく。
直後、気化爆発めいて膨れ上がった。
けたたましく鳴る爆音、吹き荒れる烈風。
巨大なエネルギー球が放つ光が、空の青色を塗りつぶす。
地を埋め尽くす砂塵の波が、その威力を差し示す。
やがて、エネルギー球が音も無く消えていく。
それが収まった頃、後には何も残らなかった。

「や、やべぇ…!?」

格が違う、戦いの次元が違う。
最早、戦闘という領域でさえも収まり切らない、絶対的な力の差。
余りにも無慈悲な、一方的な蹂躙。
即ち、虐殺。
それが、二人の眼前で展開された光景の正体であった。
戦闘獣も、これには堪らずたじろいでしまう。

『ウーロン、今がチャンスだ!一旦引くぞ!』

そうして呆然と眺めていたウーロンの意識を、スネークが呼び戻す。
ハッと我に返って、咄嗟に逃げ出す。
ビルスの牽制もあってか、一先ず窮地を脱する事が出来た。

「ありゃ一体何なんだ…?」
『分からん、だが敵では無いのは確かだな。』

その意見には、ウーロンも同意だった。
少なくとも、DD対して何かしらの敵意を向ける様な様子は無かった。
寧ろ、此方を助ける為に動いた様に見える。
一体、彼は何者なのか?

『…まて、誰かが来るぞ?』
「へっ?まさかさっきの…?」

その時、金色の尾を引いて此方へと向かってくる存在に気付いた。
ビルスではない、彼は未だに彼方に佇んでいる。
敵かと身構えた時、ウーロンはその正体に気付いた。

「あれ、トランクスじゃねーか?」
「ウーロンさん!」

それは、見知った青年だった。
サイヤ人の王子、ベジータの息子であるトランクスだ。
駆け寄ってくる彼に、ウーロンが機体から出て声を掛ける。

「どうしたんだよ、こんな場所に?」
「丁度良かった、ウーロンさんにこれを。」

そう言って、トランクスは橙色のガラス玉めいた物と、一冊の紙を渡してきた。
紙には、大々的に『説明書』と書かれている。

「母さんがこれを、その、戦闘力が無さそうな人にって。」
「弱くて悪かったな、そんでこれは_」

何かと問いかけた時、一匹の戦闘獣が飛来する。
戦闘のどさくさに紛れて、吹き飛ばされたのだろう。
弧を描いて、此方へと落ちてくる。
押し潰される、そう予期して。

「やっべ…!?」
「ハァッ!」

一閃。
トランクスの冴えわたる剣技が、戦闘獣を一刀両断した。
真っ二つに分かれた身体は、ウーロン達の脇を通り過ぎる。
即死だった。

「説明している時間はありません。とにかくソレを使って、ソロモンの指輪という物を集めて欲しいと。」
「ソロモンの指輪?」
『それなら丁度情報が入った。』

会話に通信から割って入ったのは、オセロットだった。

『今、八雲ゆかりなる人物から依頼が入っている。内容は彼女の収める地域『幻想郷』の異変解決、報酬はソロモンの指輪だそうだ。』

まさにドンピシャなタイミングでの報告だった。

『CHと流星旅団が既に先行している。それにメタルギアを余り晒すのはこっちとしても良くない。俺達は幻想郷に回る方が良さそうだ。』

メタルギア、即ち核の存在はDDにとって弱味だ。
整備する意味でも、秘匿する意味でも、ここは引くのが最善手だろう。

『…分かった。ウーロン、引くぞ。』
「わーったよ。トランクス、任せたぞ!」

トランクスは軽く頷き、そのまま戦闘獣の群れへと突撃していった。
ウーロン達もまた、撤退した。
目指すは、幻想郷。



そうして手薄になった地上を、二人の人影が飛ぶ。
フードを深く被り姿を隠す彼等は、一体…?

10人目

「黒平安京・地獄変」

 ドンモモタロウと言う想定外の乱入者もあり、拠点へと撤退したCROSS HEROESと
カルデアは仕切り直して黒平安京への調査・攻略作戦を立て始める。

「チッ……カカロットの野郎はまだ帰って来ないのか」

 未だメメントスから帰還しない悟空に苛立ちを募らせ、ベジータが呟く。

「頼光さん……酒吞と茨木はあの黒平安京とか言う瘴気に当てられて
おかしくなってるだけだと思うんだ。この一件を解決すれば、きっと……」

 立香は、酒呑童子や茨木童子が黒幕の操り人形にされているだけであって、
事態を収拾すれば正気に戻るのではないか、と訴えかける。
しかし、頼光の返答は、立香を落胆させるものだった。

「いいえ。貴方は優しすぎる。母はそんな貴方が心配です。
……敵であれば、例え同じ英霊であろうとも、容赦なく斬ってみせる覚悟が
必要なのですよ」

 彼女の表情には、微塵も慈悲の色は見受けられなかった。
立香の善性を褒めながらも、それが心配だと説いて聞かせる。
源氏の棟梁として、カルデアの母として、サーヴァントたちを厳しく律していかねば、
と頼光は語気を強める。

「こうなっちまったら、頼光サンは止められねぇ。大将、諦めろ」

 金時の無情な言葉が、立香に突き刺さる。
彼女はカルデアの貴重な戦力だ。立香もそれは重々承知しているが、
だからと言って酒呑や茨木をこのまま放置しておく訳にはいかない。

「先輩……」

 マシュが不安げな視線を向ける。
カルデア陣営による黒平安京対策会議は紛糾していた。
酒呑や茨木を討伐するか、それとも説得を試みるべきか。だが、結論は出ない。

「ひとまず、リンボの奴を叩っ斬るって事だけは確定事項ね。
あいつがどんな罠を用意していようとも」

 武蔵が剣呑な目つきで宣言する。

「そうだね。やるべき事を、やろう」

 立香も力強く首肯し、カルデアの仲間たちに号令をかけた。
そして、作戦が始まる。
カルデア/CROSS HEROESの面々は、リンボのいる羅生門を目指した。

「おやおや、お早いお戻りで……ンンン?」
「久しいじゃない、御坊!」

「ンンンンンン、これはこれは、宮本武蔵殿! その節は世話になりましたなァ」

 相対し、牽制し合う。武蔵は、リンボの纏う邪気に覚えがあった。

(やっぱりね。こいつは、下総で出会った時と同じ……)

 武蔵は直感していた。あの時、確かに仕留めたと思っていたが……

「おかげで式神がひとつ、減ってしまいました、ンンン、誠に残念でございますれば」
「ハッ、セコい手使ってくれちゃって!」
 
 リンボは、身代わりの式神を用意して下総国を生き延びていたのだ。
その時の屈辱を胸に各地を彷徨い、安倍晴明の復活、CROSS HEROESとの交戦、
Dr.ヘル同盟への加入と裏切り、そして今はジェナ・エンジェル一味への接触と、
節操なく行動を重ねてきた。

 全ては、あの日の復讐を果たすために。
その為だけに、今日までの道を歩んできた。
己の悪性を隠そうともせず、悪逆の限りを尽くす。

「ふふふ、来た来た。源氏の棟梁はん」
「害虫が……今すぐ駆除して差し上げましょう」

 カルデア内においても、必要以上の接触を避けていた頼光と酒吞。
顔を一目でも見てしまったなら、怒りを抑えきれないのは火を見るより
明らかであったからだ。

「ええわぁ。これで心置きなく、あんたはんとやり合える」

 酒呑は、頼光の憎悪を向けられて悦に浸っていた。
酒呑童子と源頼光。鬼と源氏。何もかもが相反する属性の二人が対峙している。
頼光の憎しみを一身に受け止める事で快楽を得る。
互いに互いの存在を許し難いと思う事でしか、二人は繋がっていられなかったのだ。

「はああああああああああッ!!」

 頼光の薙刀が一閃される。
酒呑童子は大太刀を構えながら、楽しそうにそれを捌く。
両者の力は拮抗しており、互角の勝負を繰り広げている。
酒呑は頼光の強さに興奮を抑えられずに頬を上気させている。

「昂るわぁ、堪らんわぁ。もっとうちを熱くしてや、源氏の棟梁はん」

 攻撃を悉くいなしながら、頼光を煽っていく。
頼光は、怒りのあまり頭に血が昇りそうになるが、必死に抑え込む。
源氏の血族として、源氏の棟梁として、この程度の煽りで心を乱すなど許されない。
源氏の棟梁としての誇りを、決して汚してはならない。

「今すぐ私の前から姿を消しなさいッ!! 悪鬼、必滅!!」

 だが、酒呑童子の言葉は頼光に冷静さを取り戻させる事は無く。
むしろ、逆効果となって頼光の怒りをさらに燃え上がらせていった。

「綱ァァァァァァッ!! 今度は逃げるなよォォォォォッ!?」
「言われるまでもない。覚悟しろ茨木童子……!!」

 渡辺綱と茨木童子、再びの激突。
互いを仇敵として認識した以上、もはや殺し合いは避けられない。

「ンンンンン、素晴らしい! 皆々様の怒り、憎しみ、殺意! 
それらが全て、この黒平安京の力となっていく……!」

 リンボは歓喜に打ち震えていた。
人間たちの様々な感情が、黒平安京に集まってくる。
怨恨、憤怒、嫉妬、悲嘆、因縁。それら全てが、蘆屋道満の魔力によって強化され、
黒平安京の力へと変換されていく。

「!! そうか……私達を同士討ちさせて、負のエネルギーを回収しようって事か……!」

 立香が気付く。リンボは、カルデアと酒呑童子や茨木童子を争わせて、
双方の戦力が弱体化したところで漁夫の利を得ようと目論んでいるのだ。

「御明察! かつて貴方がたカルデアによって頓挫した我が計画!
それを! 今! この黒平安京にて今度こそ成就させていただく!!
ハハハハハハハハハ……」

(不味い……! あの野郎の言う事が確かなら、頼光サン中は今、
酒呑への殺意と憎しみで満たされちまってる……そんな状態で黒平安京の瘴気を
浴びちまったら……「あの時」みたいに……!!)


「うあああああああああああああああああああああああッ……!!
人に仇なすもの! 全て! 全て! 殺戮! 殺戮!! 殺戮!!!」
「はははははははは、そうそう。あんたはんもウチみたいに自分に正直になったらええ。
あんたはんの中にある『モノ』、ぜーんぶ吐き出してみぃな」

「ダメだ! 頼光サン! 『そいつ』を呼んじまっちゃあ……!!」

11人目

「嗣章:遠き空間/世界の来訪者」

 時の巣にて

「もきゅもきゅ。サンドイッチ美味しい。」
「……あんまり食べるとおなか下すぞ。」

 会議の合間、カグヤとゼルレッチは食事をしていた。
 傍から見ると、祖父と孫娘がピクニックしているようにしか見えないのはその風貌のせいか。

「あたし胃袋も虚数空間だから大丈夫!おじいちゃんもどお?」
「そういう問題じゃなくてな。だが、サンドイッチは頂こう。」

 先ほどの緊迫な空気とは打って変わったのどかな光景。
 2人は笑いながら食事を楽しむ。
 しかしそこはやはり超越者。

「そのうさぎ、触ってみても?」
「あっだめ!」

 タイムパトロールの職員の一人が、カグヤの傍らでパンの耳をかじる宇宙色のうさぎを触ろうとする。
 すると、そのうさぎは突如平べったくなり、虚数空間への穴を空けてしまった。
 平べったくなった、というのは何の誇張もない。
 文字通り丸く50センチ弱の小さな穴に変身し、その厚みは地面と同化しているかのような感覚すら覚えさせる。

「それに触れたら、虚数空間に堕ちて帰ってこれなくなっちゃうよ?」
「こ、こわ……。」

 世界の裏側、数理的にしか存在を証明できぬ謎多き空間『虚数空間』。
 一度生身で入ってしまえば、余程の幸運がない限り二度と這い上がることができないというのだから恐ろしい。

「あー、確か……ちょっと前に虚数空間を超高速で落ちていたおじさんがいたんだよね。警察?って言うのかなああいう人って。」
「ほう?それはまた面白い話だな。」
「誰かまでは分からなかったけど、日本人かな?その人が存在しなかった世界の方向へ落ちて行ってた。」

 少し前、メサイア教団のメンバーを追って存在しなかった世界へと落ちていった銭形警部。彼は人類史でも類を見ない、何の対策もせずに生身での虚数空間への潜航をしたのだ。
 そんなもの、虚数空間の管理者であるカグヤが見逃さないわけがない。

「で、どうした?」
「あまりにも速い速度で泳いでたからね、あたしが何とか追いついて制止しても『邪魔をするか馬鹿者』って言われてそのまま存在しなかった世界へ……。」
「ほうか。まだまだこの世界も捨てたものではないな。」

 ゼルレッチはただただ感心していた。
 この世界に魔術師でない者がそこまでの底力、ないしは才能を持っている者がいるのか、と。

「それにしても、人間の作ったこのお料理とてもおいしい!」
「どうやって作ったんだ?このサンドイッチ。」
「虚数空間にあるあたしのおうちで、作ってきたの!」

 と、カグヤがサンドイッチを食べ終えた。
 そうすると、彼女は真剣な顔つきで話し出す。

「存在しなかった世界の『女神』のスペックだけどね。多分……ここにいる4人でも倒しきれるかどうか……。」
「そんなことまでわかるのか?」
「多分。ソロモンの指輪がないとどれだけ強力な攻撃でも傷一つつけることができない。」
「魔力切れの可能性は?」
「ゼロね。多分アレ起動したら地球滅んでも生きてるよ。」

 と、女神の脅威について話していたその時。

「ねぇおじいちゃん。見える?あの先。」
「ああ、何か来るな。」

 時の巣の最奥、遠くぼやけるように見える四季彩の世界から何かが来るのを4人は見逃さなかった。

12人目

「異次元タッグバトルのゴングが鳴る」

 金時の悪い予感は、最悪の形で的中してしまった。

「ウウウウウウウウッ……!!」

 丑御前。頼光もまた、鬼子としてこの世に生を受けたものの、その側面を内に押し込め、封印する事で何とか正気を保っていた。
しかし、丑御前の側面が完全に消滅したわけではなく、源頼光と丑御前は
表裏一体の存在としてひとつの肉体の中に混じり合っていた。
頼光が本来の適正クラス:セイバーではなくバーサーカーとして
召喚された由来もそこにある。酒呑童子という憎悪の対象を討つべしと言う使命感と、
闘争心が黒平安京に漂う瘴気が悪い方向に作用してしまったことで
本来なら理性で制御できる筈の狂気を、彼女は抑えきれなくなってしまったのだ。

「ンンン、良いですぞ! またしても「怒り」のエネルギーが集まってきた!
これこそが! 拙僧が求めた真の混沌!」

 リンボはますます興奮を加速させていく。
このままでは、頼光は酒呑もろとも黒平安京の呪縛に取り込まれてしまう。

「頼光さん、もう止めてッ!!」
「先輩ッ!! 危険です!!」

 頼光の暴走を止めようと、立香とマシュが頼光に呼びかける。
しかし、その声は届かない。頼光はもはや正気を失っていた。

「ふ、ふふ、はははははははッ!!!」
「おお、怖い、怖いわぁ。けど、それでこそや……もっとうちを熱くしてやぁ……!!」

 頼光は雷神牛頭天王より賜ったとされる雷を伴う名刀『童子切安綱』を振り回しながら、
酒呑は大太刀を巧みに操りながら、互いに相手の首を狙い、己の闘志を煽り立てていた。

「うああああああああッ!! 私の邪魔をする者は……!! 
全て、全て、斬り伏せる!!」
「……!!」

 もはや誰が味方で誰が敵かも分からなくなった頼光の凶刃が、
戦いを止めようとする立香たちにまで襲いかかる。

「――ッ!!」

 しかし、その凶刃を受け止めたのは、他でもない、金時であった。

「ぐ……!!」
「金時さん!!」

「よう、無事か、大将……!? ぬぅぅぅうあああああああああああッ!!」

 金時は渾身の力を込めて、頼光の刀を押し返す。

「頼光サンよぉ、どうしたんだよ! こんなのアンタらしくねえだろうが!」
「……!!」

 金時の問いかけにも、頼光は応えない。
ただただ憎悪を垂れ流しながら、再び攻撃を仕掛けてくるだけだ。

(くっ……こりゃ本当にマズいかもしれねぇ……!! 
だが、大将はやらせるわけにはいかねぇ! なんとしてもこの場は
俺が抑えるしか……!!)

「やれやれ、厄介な事になってきたな」

【KAMEN RIDE HIBIKI】

 ディケイドが、仮面ライダー響鬼にカメンライドする。音撃道の清めの音にて、
世に蔓延る魔化魍と言った妖を鎮める事が可能な彼の能力は、
まさに今回の状況に適していると言える。
頼光の動きを封じることさえできれば、なんとかなるかもしれない。

「まあ、そう簡単にいくとは思っていないが……やるしかないだろ」
「悪い、力借りるわ……」

「ふふ、2対2ってわけやね。こんな時でも無いと、頼光はんとこうして
肩並べて戦うことなんてできんもんなぁ。ま、頼光……いや、丑御前はんにとっては
目に映るもん全部が敵みたいなもんかもしれへんけど」
「ウアアアアアアアアッ!!」

 丑御前の溢れ出す魔力が、黒い雷となって周囲に放たれていく。

「凄まじいな、あれは。さすがに真正面から相手にするのは厳しい……とはいえ、
放置する方が危険だな」
「酒呑に茨木の次は、頼光サンとも戦わなきゃなんねぇのかよ……まったく、
悪い夢ならさっさと醒めてくれ……」

 こうして仮面ライダーディケイド&坂田金時 対 丑御前&酒吞童子の
変則タッグマッチのゴングが打ち鳴らされた。

「フフフフフ、ますます面白くなってきましたなァ! 
どちら様もこの黒平安京で存分で暴れまわり、さらなる力を!」

「高みの見物も大概にしておくんだな」
「ヌウ……!?」

「つああああああああッ!!」

 ベジータがエネルギー弾をリンボに向かって撃ち放つ。

「おぉっと!」

 羅生門の上を飛び跳ね、難なくそれを回避して見せるリンボ。
エネルギー弾が屋根瓦の一部を爆散させる。

「ふん、すばしっこい奴だ」
「ンンンンン~。貴方様とはお初にお目にかかりますな。ベジータ殿……でしたかな?
ご活躍は兼ね兼ね」

「その人を食ったような喋り方……気に入らんぜ。貴様には地獄の苦しみを与えてやる」
「ンンンン! これはまた勇ましい! 拙僧を地獄に落とすと申されますか!
よろしい! ならばこちらもそれ相応の手をもって貴方様がたを葬り去って
差し上げましょうぞ!」

「それはこっちの台詞ッ!!」

 羅生門を駆け上がってきた武蔵も加わり、リンボの懐に飛び込んで、刃を振るう。

「ここまで迫って来られるとは、フフフ、些か物見遊山が過ぎたようでございますな……
では、拙僧も存分に楽しませていただきますか!!」

「二天一流、宮本武蔵! いざ尋常に、勝負!!」
「サイヤ人の王子、ベジータ様が相手だ!!」

「ベジータ殿、聞くところによれば貴方も戦闘民族のご出身だとか。
ならば彼女らのように、気の向くまま、本能のままにその力を振るっては如何です?
それはきっと素晴らしい快楽となりましょうぞ!」
「生憎だったな。俺は貴様の口車になど乗らん。そうやって俺を利用しようとしやがった
クソ野郎は過去にもいた……貴様のような醜悪なツラをしていたぞ」

 魔人ブウを使役し、悪逆を尽くそうとした魔導師バビディ。
人間の心の闇に付け込み、意のままに操る魔法でベジータを傀儡にしようとしたが、
ベジータは類稀なる強靭な精神力でバビディの支配をも退けた過去があるのだ。

「クケケケケッ……では、仕方がありますまい! 利用出来ぬのならば、
始末するまで!!」

 本性を現し、物の怪のように醜く表情を歪ませるリンボ。

「胡散臭い涼し気な顔を装うより、そっちの方が似合っているぞ。道化師め」
「言えてる。あの性悪坊主の化けの皮が剥がれて、ちょっとスッキリしたわ」

「拙僧を愚弄するは、誰であろうとも万死に値しますぞォォォォォォォォォ!!」

 宮本武蔵&ベジータ 対 アルターエゴ・リンボ。
地上と羅生門上で、激しいバトルの嵐が吹き荒ぶ!

13人目

「ギリシャ戦線、終結…?」

(……トラブルが発生したとはいえ俺はあしゅらの儀式を止めることができなかった……ならばせめて、復活したミケーネ帝国は俺が全て倒す!)
「来い!戦闘獣!俺が相手をしてやる!」
「キシャアアアアアアアアアッ!」
剣鉄也の乗るグレートマジンガーが戦闘獣軍団と戦いを始めた。
「マジンガーブレード!」
グレートマジンガーは両大腿部に収納された超合金ニューZ製のブロードソード「マジンガーブレード」を取り出し、戦闘獣を次々を切り裂いていく。
「グレートタイフーン!」
続いて口分スリットから風速150mの嵐を起こし、戦闘獣軍団を上空へ吹き飛ばすと、
「アトミックパンチ!」
グレートマジンガーの右腕が回転しながらマジンガーZのロケットパンチのように発射され、上空へ飛ばされた戦闘獣軍団を次々と貫いていく。
「必殺パワー!サンダーブレイク!」
そして倒しきれなかった戦闘獣を耳のアンテナ部分から300万ボルトの放電で雷を起こし、人差し指から秒速30万アンペアの超高圧指向性電流を投射するグレートマジンガーの必殺技サンダーブレイクで撃破した。

「馬鹿な…!?こんなはずでは…!?」
一時期は長期戦によるエネルギーや体力の消耗、連戦によるダメージなどによりピンチになったもののグレートマジンガー、アルケイデス、そして竜馬以外のゲッターチームが加わったことにより不利な状況を覆し、CROSS HEROESは見事形勢逆転することに成功したのである。
「何故だ!?何故我々ミケーネの神々が脆弱な人間どもごときにここまで追い詰められるのだ!?」
「まさか奴らは本当に我々がかつて戦ったあのCROSS HEROESだというのか!?」
「ええい!認めん!認めんぞ!奴らまでこの時代に存在するなどと…!」

「よし、戦闘獣はあらかた片付けた」
「あとは……あそこにいるミケーネ神だけだ!」
「クッ…!」
「よし、一気にトドメを指すぞ!」
CROSS HEROESが残ってるミケーネ神に攻撃をしようとしたその時…!

『っ!』
『ケンゴくんどうしたんですか?』
『……なにか来る…!』
「え…」
すると突然CROSS HEROESの目の前に黒い雷が降り注いだ。
「な、なんだ!?」
「……ほう、貴様らがこの時代のCROSS HEROESか……」
雷が降り注いだ場所に現れたのは黒い鎧を身に纏い、戦闘獣のように頭部とは別に腹部に顔を持つ巨大な武人…いや将軍であった。
「誰だお前は…!?」
「我が名は暗黒大将軍、ミケーネの神々の一人にしてハーデス様の右腕なり」
「暗黒…」
「大将軍…!?」
(……私の知ってるオリュンポスの神々の中にはそんな名前の存在はいなかった……恐らくはこの世界独自の存在なのだろう……)

「あ、暗黒大将軍様!?どうしてここに!?」
「……ハーデス様からの命令だ、この世界の前線基地化は諦め、準備が整い次第、先に本来の目的であった他の世界への侵略を開始すると…」
「なに!?」
「何故です!?この世界を全世界への侵略の為の前線基地にするはずではないのですか!?」
「そのつもりだったが……ゼウスに匹敵する厄介な存在……破壊神ビルスが降臨した」
「なっ!?」
「破壊神ビルスだと!?」
「やつまでもがこの時代に存在するというのか!?」
「あぁ……やつがいる以上、この世界の侵略は困難に近い……一度この世界の支配は後回しとし、侵略の機会ができ次第再び侵略を行う……」
「……わかりました」
「……この時代のCROSS HEROESよ、貴様らと戦える日を楽しみに待っておるぞ」
そう言うと暗黒大将軍は生き残ったミケーネ神と共に何処かへと消えてった。

『……皆さん、どうやらギリシャだけではなく他の国に出現したミケーネ神や戦闘獣も消えたようです』
「……どうやら、一応はなんとかなったらしいな……」
「そのようだ……だが、まだ安心はできん……」
「あぁ、あの暗黒大将軍ってやつの言うことが本当なら、やつらはまたこの世界に現れる……」
「しかも、ミケーネはこの世界以外の世界も狙ってるみたいね……恐らくは特異点も……」
「おまけに破壊神ビルスなる存在がこの世界に降臨したとも言っていたな……」
「破壊神ねぇ……名前からしてなんかヤバそうだぜ?」
『……とりあえず皆一度トゥアハー・デ・ダナンに戻ってくれ、いろいろと聞きたいことがある人が何人かいる』
「わかりました」

14人目

「廃棄孔の刺客、忌むべき者の名」

 幻想郷 博麗神社

「紫から事情は聴いているが、まずここで何が起きているかを説明してくれ。わかる範囲でいい。」

 月夜が、霊夢たちに現在幻想郷で発生している『異変』に対する質問を投げかける。
 人間でもできることはあるはずだ、と。

「そうね、この3か月の間何があったのかを説明するわ。」



「あれは3か月前。幻想郷に変な鬼が来たのよ。」
「変な鬼?」
「見かけたのは1回だけ。しかも遠目だけどその鬼は折れた赤い角を持っていてね……赤い服を着ていたわ。体格は私たちと同じくらいね。」

 折れた赤い角。
 霊夢たちと同じ体格。

 そんな風貌の奴、流星旅団の記憶のデータで該当するのはわずか一人だけである。

「折れた角……あいつか。」
「焔坂百姫……!」

 忌まわしき悪の名前。
 その声にも憎しみが籠る。

「え、知ってるの?」
「ボク達の仲間を大勢殺した、文字通りの鬼だよ。」

 メサイア教団大司教2位『炎の化身』焔坂百姫。
 東京ミッドタウンを全壊させるほどの暴威は、流星旅団残党の心に傷として刻まれている。

「そう……それはひどい相手ね。」

 あまりの暴虐ぶりに、霊夢の顔にも悲哀が浮かぶ。
 しかして、いつまでも悲しんでいるわけにはいかない。

「……で、それから。」
「それ以降、例の悪霊ってのがはびこってきたのよ。」
「その悪霊の特徴は?」

 外から来た彼らは知らない、悪霊の特徴。
 霊夢たちは事細かに説明する。

「黒い身体、三本の腕、心臓に当たる部位が『攻撃してください』と言わんばかりに赤く光っているってくらいか。」
「あとあの変な『油っぽい何か』ね。」
「……恐ろしい呪詛と悪意に塗れていて、触れたら重い病気になって数日後には死んじゃうくらいには危険よ。」

「そいつは……まだヘビィな。」

 異形の悪霊。それが纏う悪意の泥油。
 今回CROSS HEROESが邂逅し、戦う相手はかなりの強敵だ。



「話を総合すると、焔坂が来て以降その『悪霊』ってのが来て。」
「ここ3か月間幻想郷を苦しめているってことか。」

 全員、話の内容を聞いたがその顔は重い。

「しかも相手はどんどん強くなってきている。このままだとジリ貧ね。」
「下手したら幻想郷中に悪霊があふれるかもしれないからな……。」

「他に何か情報はあるか?悪霊以外でもいい。」
「私が知っているのは……紅魔館に変な奴が来たってくらいか?」
「紅魔館……。」

 もう一つの指輪の持ち主、レミリア・スカーレットとその主従、そして謎の英霊ナポレオンが待つ吸血鬼の領域だ。

「生身の人間の身では恐らく危険ね。妹さんは大丈夫だろうけど。」

 あからさまに見られながら、紫の忠告を受ける。
 それを受けて月夜は、少し考えた後に決断する。

「そうだな、俺の戦闘力が妖怪に届くとは思えない。俺は素直に留守番するとしよう。」
「その方がいいわ。」
「んじゃ、私も留守番するぜ。」

 かくして、紅魔館に向かう彩香達と博麗神社の守衛をする月夜と魔理沙に分かれて行動することになった。



 彩香たちがいなくなった後の博麗神社。
 月夜は、少し気になったことがあってか外にある輸送コンテナに向かう。

「そういや、コンテナの中って……なるほど。」
「うわすげぇ、武器がいっぱいだ。」

 月夜たちが移動のために使用した、DDの輸送コンテナ。その内部は当然と言わんばかりに緊急時用の物資が山ほどある。
 これが妖怪に通用するかまではわからないが、ないよりはマシだろう。

「食糧や治療道具もあるな。」
「外の世界って、こんな武器があるのか……。」

 2人は内部にある武装に関心をしていた。
 きっとこれは何かに使える、と思いつつ外に出る。

「なぁ月夜。そのボウガン、一回見せてもらってもいいか?」

 ふと、魔理沙が月夜の持つ武器であるボウガンに目を付ける。

「ああ、いいが……どうかしたか?」

 魔理沙は月夜から渡されたボウガンを一通り見た後月夜に提案する。

「このボウガン強化しようか?流石に弾幕は出せないが、悪霊や弱い妖怪ならぶち抜ける威力には出来ると思うぜ。」

 願ってもない、武装強化の提案。
 誰かを守るために苦心していた月夜にとっては僥倖だ。

「え?いいのか?じゃあ……お願いします。」

 月夜は、魔理沙に一礼する。
 その顔には、真剣味があった。
 これ以上、大切な何かを自分含めて守り通すという決意。

「頭下げるほどでもないぜ、ちょっと借りるぜ。―――10分で終わる。」

15人目

「丑御前戦①」

カルデアと鬼、CHとリンボ、各々の激突。
ソレを、影から覗き見る者が三人居た。

「あれがCROSS HEROESという方ですか。」
「みてぇだな、にしても急に同士討ちって一体どういう事だ…?」

髑髏の仮面を被った金髪の男が、訝しむ様に眉根を寄せる。
視線の先には、丑御前と化した頼光が敵味方の区別無く凶刃を振るっている光景。
まるで意味不明で唐突な展開に、唸り声を上げる。

「どうしてしまったのでしょう?」
「任せて、会話の記録が取れたから再生する!」

その疑問に答えるのは、ゴーグルを掛けた橙色の長髪をした少女だ。
宙に投影された光のキーボードを叩いて、先程までの録音を流す。
暫しの後、一行は事態を把握した。

「えーっと、つまり?」
「あの頼光って人、この街の嫌な気に当てられて、認知が歪んでる。多分、今は自分以外の全部が敵、みたいな感じだと思う。」

一通り聞いて、髑髏の男はなるほどなと納得がいったように腕を組む。
誰彼構わず斬りかかる等、それしか考えられない。
対して黒いシルクハットを被った女性は、不安げに自らの手の甲を握った。

「大丈夫でしょうか、あの人。このままじゃ、自滅も有り得るかも…」

頼光を案じての事だった。
何より、敵らしき人物に良い様に乗せられている様は、見ていて気分の良い物では無い。
髑髏の男が、よしと言って立ち上がる。
仮面の節から覗く表情は、頼もしそうな威厳を放っていた。

「これは、俺達がどうにかしねぇとな。」
「その言葉を待ってたぞスカル!」
「あたぼうよ!」

そう言って髑髏の男、スカルこと竜司が、任せろと言わんばかりにドンと胸を叩いた。
心の怪盗団、ここに決起する。



「あぁぁぁ…!!」
「チックショウ、頼むから正気に戻ってくれ!頼光サンよぉ!」

互いの武具を拮抗させる金時と頼光、いや丑御前と言うべきか。
一瞬の後、互いに半歩引き、返す刀で薙刀が振るわれる。
狂気に呑まれて尚衰えを見せぬ丑御前の絶技。
ソレを、鉞を以て強引にねじ伏せる。
舞い散る火花。
黒を帯びた雷と、眩い金色の雷が衝突する。
刹那、丑御前の姿が視界から消え失せた。

「ヤベッ…!?」

気付けば、背後に回り込んでいた。
振り切った筈の太刀は既に反転し、金時の首筋目掛けて襲い来る。
咄嵯に身を捩り、紙一重で回避するも、僅かに遅い。
凶刃が、首を絶つ_

「手が焼けるな。」
《音撃棒・烈火》

寸前、火球が間に向けて突き抜ける。
ディケイドの音撃棒から放たれた清めの炎だ。
自身を蝕む力に反応したのか、丑御前は即座に後退。
結果的に、金時の首を取るには至らなかった。

「助かったぜディケイドサンよ、でもコイツはちょっと骨が折れそうだぜ!」
「あまり援護は期待するな、こっちも手一杯だ。」

言うが早いか、くるりと反転し自らに迫った大太刀を音撃棒で弾く。

「連れへんなぁ、余所見なんて。もっと必死でウチを熱くさせてくれへんと、喰ってまうで?」
「鬼に食われる趣味は無い…!」

酒吞童子の一撃が重い。
流石は鬼の中でも名の知れた者と言った所か、小柄な体格に見合わぬ膂力だ。
ライダーシステムのパワーと清めの力を以てして、漸く拮抗出来る状態だ。
一進一退の光景を横目に、金時は自身を叱咤する。

「しっかりしろ俺!何としても俺一人で止めなきゃならねぇだろ!」

今度は此方から仕掛けていく。
猛牛の如く、勢いのままに丑御前へと突っ込む。
対する丑御前は、防御態勢を取る素振りすら見せない。
無防備なまま、丑御前はただ佇んでいる。

「目を覚ませッ!!」

全力の一閃。
轟音と共に雷鳴が木霊した。
金時の渾身の一太刀は、しかし丑御前に防がれた。
ノーモーションでの防御行動に、堪らず驚愕する。

「なっ…!?」
「あぁぁ!!!」

その隙を逃す丑御前では無い。
雄叫びと共に健脚が伸び、金時の腹部へと突き刺さる。

「がっ…!」

突き抜ける衝撃。
余りの威力に、身体がくの字に曲がる。
鉞を振るう力は抜けた。
その瞬間、太刀が金時の首に宛てがわれる。
丑御前の瞳には、殺意と憎悪だけが浮かぶ。
まるで、心の無い人形の様に。
金時は、悔しげに奥歯を噛み締める。
ソレは不覚をとった故か、或いは止められなかった事の懺悔か。

「ちく、しょう_」
「その勝負、待ったーーーっ!!!」

瞬間、乾いた音と共に無数の散弾が飛来した。
今度こそ首を取らんとした丑御前の隙を突いた鉛玉は、見事太刀を撃ち落とす。
カランと音を立てて転がる太刀から、次いで新たな声の主へと視線が向く。
そこは屋根瓦の並ぶ塀の上。

「心の怪盗団、参上っ!」

スカルの姿が、そこにあった。

「あぁ…?」
「うおぉっ!何だアイツは!?」

丑御前と金時、二人が揃って驚きの声を上げる。
突然の乱入者に、どう動くべきか迷いが出来ているのだ。
そうして戦いの手が止まった瞬間を逃さず、矢継ぎ早にスカルが問い掛ける。

「そこの金色の!」
「俺か!?ゴールデンって呼べ!」
「えっ、あっ、ゴールデン!そこの頼光って人を正気に戻したいんだろ!?」

戸惑うスカルだったが、直ぐ様軌道修正し本題に入る。
スカルの問いは、金時の求めている物だった。

「…おう!どうしても頼光サンを止めてぇ!」
「だったら俺達に任せろ!アンタは何とかして、頼光って人との戦いを長引かせてくれ!」
「何だか知らねぇが、手があるんだな?分かったぜ!」

了承するや否や、金時が丑御前に向き直り、太刀を取らせまいと陣取る。
武器さえ抑えれば、如何様にでも戦いを引き延ばせる。
そして、その間に何か策を打たれるのを待つ。
降って湧いた一縷の望みに、金時は賭けた。

「よし、じゃあ任せとけ!」

そう言うと、次の瞬間スカルの姿は消えていた。



次にスカルが身を現したのは、先の黒平安京と酷似した世界。
しかし現実ではない、認知上の世界だった。
この世界に存在するのは、スカル達心の怪盗団。
そして、塀の囲いの中心に佇む認知世界の頼光…丑御前だ。
彼女は正気を無くした様に、黒く淀んでいる。

「よし、ターゲット発見だ!行くぞ、ナビ、ノワール!」
「サポートは任せろ、スカル!」
「行きます!」
「うあぁぁぁ!!!」

雄叫びを皮切りに、両者の激突が始まった。

16人目

「刈り取るもの」

 ――メメントス。

「結構進んだな」

 下の階層に進めば進むほど、迷宮の複雑さは増していくと言う。
悟空たちはシャドウとの戦いにも慣れ、着実にダンジョンを進んでいた。

「ん……?」

 もう何度目かの曲がり角を抜けた時、

 ジャラ……
 ジャラ……

「何だ? 鎖を引きずってるみたいな……」
「あっ、やば! 『刈り取るもの』じゃん!」

 パンサーが慌てた声を出す。

「!! な、何だこの邪悪な気は……急に現れたぞ……」

 遠くからでもハッキリと感じ取れる、禍々しい気配。
その元凶が近付いて来るにつれ、全員が息を飲んだ。

「メメントスを彷徨う、恐ろしい奴です。刈り取るものの気配がしたら
逃げろと教えられました」

 心の怪盗団の発起人(ネコ?)、モルガナが常日頃から注意しろと
メンバーたちに忠告していた、危険極まる存在。メメントスに長居していると
何処からともなくやって来て、侵入者を皆殺しにするのだと言う。

「強ええ奴なんか? だったら、ちょっと戦ってみてえけど……」
「だ、ダメですよ! 命を落としますよ!」

 そんな会話を交わしている間にも、足音が迫ってくる。

「やべえ、こっち来るぞ!」
「急いでこのフロアから離脱するぞ!」

 全員踵を返し、一目散に走り出す。

「刈り取るものは足が遅いので、その場に留まり続けていなければ何とか振り切れます」

 後ろを振り返る余裕もない。ただひたすらに次のフロアへのホームを目指し、
どうにか無事に危機を脱したようであった。

 ジャラ……
 ジャラ……

 遠くから響いて来る鎖の音。まだ諦めていないようだ。

「冥界の女主人たる私だけど、少しばかり驚いてしまったのだわ」

 流石のエレシュキガルも冷や汗を浮かべていた程だ。
その後、一行は命からがら安全地帯であるホームにまで辿り着いた。。
メメントスでは不用意に動き回らず、刈り取るものの姿を見つけたなら、
決して目を合わせず、急いでその場から退避せよ。
それが、メメントス探索における鉄則であった。

「まったく……自分の足で逃げると言う選択肢は無いのですか?」
「やだー。だるいー」

 メドゥーサにおんぶされていた徐福。まるで緊張感がない。

「ライダーを乗り物にするなどとは……」
「私はアルターエゴだからライダーにも有利取れるんだぞー。敬えー」
(クラスマウント……)

 呆れた様子で溜息をつくメドゥーサと、いつも通り傲岸な態度の徐福。

「ふーん。刈り取るものか。一目だけでも見てみたかったぞ」

 残念そうに言う悟空に、皆がぎょっと目を剥いた。
刈り取るものが怖くないのか?
あの恐怖の権化とも言えるものの気配を感じて、どうして平然としていられるのか?
驚愕と困惑が入り混じった視線を一身に浴びながら、
悟空は不思議そうな顔をして言った。

「こいつはそう言う性分なんだ。だが、このメメントスと言う空間に関しては
心の怪盗団の方が詳しい。こればっかりは、こいつらの言葉に耳を傾けるべきだな」

 ピッコロに促され、悟空も渋々引き下がった。

「ちぇっ、つまんねえなあ……」

 そうは言っても、好奇心旺盛な悟空。どんなものか実際に目にしてみたい。

「オラが今よりもっと強くなったら、刈り取るものとかっちゅうのと戦えるかな?
うっし、修行だ!」

 早速刈り取るものと戦うための修業を計画し始める悟空を見て、
皆がポカンとした表情になる。何故にあんなにも前向きなのか?

「刈り取るものと戦おうなんて思う人、初めて見ましたよ……」

 クィーンの呟きに、全員がうんうんと深く首肯した。

「リュウジ……じゃない、スカルだってそんな事思いもしないでしょうね……
あいつも今何処にいるんだか……」
「だが、あの孫悟空と言う御仁……どんな状況にあっても、
己を高める事を決して忘れない。その心構えは、俺も見習うべきところがあると思うぞ」

 無謀で無鉄砲な悟空に、怪盗団の仲間の事を思い出しては頭を抱えるパンサーに対し、
芸術家志望のフォックスはそんな悟空の姿勢に好感を持ったようだ。

「確かに。悟空殿のその精神力には、我らCROSS HEROESも幾度となく助けられてきた。
共に戦っていく中でその飽くなき挑戦の精神に触れ、改めて感じ入ったものだ。
戦いの中でこそ、真の強さとは何かを思い知るのだ」

 バーサル騎士ガンダムも、振り返れば悟空で出会い、
CROSS HEROESの一員として戦う事になって久しい。
戦闘の時以外でも頼りになってきた。様々な経験を経て、絆を深めたひとりである。

「おしゃべりはそこまでだ。刈り取るものとやらの気配はまだ消えていない。
このフロアから移動すれば、奴の追跡から一時的に逃れる事が出来るだろう。
行くぞ。次の階へ」

 会話を遮り、ピッコロが告げる。
一行は一刻でも早くその場から逃げるべく、足早にホームを後にした。

17人目

「幕間:拠点と子供たちを守衛せよ」

「おーい、買ってきたぞー。」
「「ありがと~!」」

 罪木オルタ達が食糧を持って帰ってきた。
 彼女の復讐者らしからぬ笑顔に、子供サーヴァントたちにも笑みがこぼれる。

「んじゃ、あたしは建て直しの手伝いしに行くから大人しくしてんだよ。」
「「は~い!」」

 子供たちを安全な場所に誘導した後、罪木オルタは建て直しを手伝うために外に出た。

「元気なこった。」

 と、満足げにタバコを吸う。
 白く哀し気な煙が空中を漂う。
 しかしてその表情は満足げで、明るい。

「おい、白いのちょっと手伝えや。」
「へいへい。」

 同じく建て直しを手伝っていた森長可を手伝おうとする罪木オルタ。
 しかし、異変はそのときに発生した。

「ちょっと。なーんか奥に見えない?」

 真っ先にその異変に気づいたのは、戻って来て以降外をふらふらしていたアビィだ。

「あー、見えるな。」

 続くように近くにいたアタランテが、罪木オルタが、森長可が迫りくる何かを看破する。

「いたぞ!CROSS HEROESどもだ!」
「芥志木大司教の仇!殺せ!殺しつくせ!!」

 迫りくるのは、芥志木の訃報を知ったメサイア教団の雀蜂軍団。総勢100体以上。
 彼らは全員、辺古山ペコによって討たれた大司教の仇を取るためにクォーツァー・パレスを襲撃しにきたのだ。
 恐るべきは、メサイア教団への忠誠心。

 しかも恐るべきは、港区で腐食性メタリックアーキアという武器を手に入れ苦戦させた雀蜂の兵士長、AW-G01も来ているという点。
 量産体制の整ったAWシリーズの『Generic』個体も来ている。

「怖いわ!恐ろしいわ!」
「赤に黒に黄色のハチ!?」

 迫る蜂の群れを前に、子供サーヴァントたちも外に出る。

「雀蜂か、もう嗅ぎつけてきたな……子供たち下がってな。ここはあたしらがやる。」

 迫りくる雀蜂を前に、罪木オルタとアタランテ、そして森長可が立ちはだかる。
 雀蜂の数は目視できる限りでも100はいる。数では圧倒的に不利だ。

「ははっ、たった3人で何ができる……!一蹴してやるぜ!」

 数の優勢を武器に、3人を嘲笑する雀蜂の兵士長。
 しかしあざけるような笑みを曇らせたのは、森長可の突撃が起点だった。

「ヒィーハァアアアアア!くたばれェ!!」
「うわあああ!?」

 自身の得物である人間無骨を雀蜂兵士長に突き刺し、そのままの状態でぶんぶん振り回す。
 ただでさえ兇暴な鎗が、雀蜂という巨大なハンマーを絵てさらに兇悪になる。

「クソ……かくなる上は!!」

 強化された雀蜂は、腹部に刺さった状態でマシンガンを乱射する。
 しかし振り回されながらの攻撃だ。勇猛さは認めるがとても当たらない。そればかりか。

「兵士長!当たってます!」
「撃つのをやめて下さ……ぎゃぁ!」

 周りの同志に命中するという体たらく。
 やがて兵士長も槍の遠心力に負け、その体がバラバラに吹き飛んでしまった。

 兵士長の象徴たる赤いヘッドギアが、鮮血に染まったことにより生々しく映ってしまう。

「うわぁ!!」
「ぐ、グロい!!」
「き、キメェ!」

 あまりの惨劇に、雀蜂の軍団は狼狽するばかりだった。

「次はどいつだ!かかってきなァ!!」



「くそ、あの武者は危険だが……」
「案外弱そうなのもいるじゃねぇか……!」

 雀蜂9体が、罪木オルタを囲う。
 嘲笑交じりに銃口を向ける。何のことはない。相手はただの女だ。
 兵士長を殺ったあの武者ほどの戦闘力は、その見た目からは感じない。ただ撃てばすべて
完結する。
 そう、人間の女性ならば。

「あーそうかよ。」

 ドスッ。
 まるで重く鋭い槍が肉を刺したような音が、雀蜂の腹部を貫徹する。

「か……かふっ。」

 罪木オルタの右腕が、雀蜂の腹部を貫いた。
 そこから内臓部位をもぎ取り、渾身の力を込めて握りつぶす。
 ホムンクルスと言えど構造は人間のソレ、重要な臓器を潰されたら誰であれ絶命するのだ。

「なんだこいつ……バケモンかよ……!」

 圧倒的殺意を込めた罪木オルタを前に、残る雀蜂8体は銃口を向ける。
 対して、彼女は屈託のない笑みを浮かべて攻撃を開始した。

「あたしがバケモン?違うな、あたしは復讐者(アヴェンジャー)だ!にししっ!!」
「ひぃ!!」

 その刹那、雀蜂軍団総勢8体が罪木オルタの回し蹴りによって一蹴される。
 英霊として召喚された彼女のスキル『被虐体質(恩讐)』。
 評価規格外を誇るこのスキルにより敵の攻撃は全て彼女の方に向かう。その上で攻撃を受ければ受けるほど反撃の際の火力が増すという無法。
 これを前に、罪木オルタと相対した雀蜂は悉く斃れてゆく。

「どっからでもかかってきな!!」
「くそ!遠距離攻撃部隊!撃て!撃て!!」

 遠い位置から効くだろう、と罪木オルタたち目がけてマシンガンを構え接近する。
 しかし。

「二大神に奉る――――『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)!!』」

 彼らを守るように立ちはだかった、アタランテの詠唱。―――――その果てに雀蜂は神威を知る。
 神威は天空に、赤い空に浮かぶ二色の星羅が鮮烈に輝きだす。
 その輝きは無数の光の矢と化して、上空から迫ってゆく。
 やがて大地に激突した弾幕のオーロラを前に、雀蜂の鉛玉は叩き落され射手の頭蓋は次々に破砕されていった。

18人目

「母と子と――坂田金時 対 丑御前」

「さっきの人……心の怪盗団って……」
「と言う事は、パンサーさん達の味方で間違い無いでしょう」

 マシュと立香は、突如現れて姿を消したスカル――坂本竜司――たちが
拠点地下のメメントスに潜行しているパンサー達と同じく、
心の怪盗団の面々だという事を瞬時に理解した。

「うああああああああッ!!」

 丑御前は一瞬動きを止めたが、すぐさま戦線に復帰する。

「チッ……!」

 金時は立香を守りながら、必死に丑御前と鍔迫り合う。

「邪魔です、どきなさい!」
「うおっ……!?」

 刹那、丑御前が蹴りで金時の身体を弾き飛ばす。
吹き飛ばされた金時は、家屋に突っ込み壁を砕く。

「先輩、私の後ろに!」
「う、うん……!」

 マシュが盾を構え、前方からの攻撃を防いでいく。

「はあああああああああッ!!」
「くあっ……!!」

 雷を伴う薙刀の一閃。マシュの構えた盾に直撃する。あまりの衝撃に手が痺れる。
思わず手放しそうになる盾を何度も掴み直す。

「何のこれしき!」
「ちぃっ……!」

 丑御前の追撃を凌ぎ切る。そのまま、反撃の狼煙となる一手を切っていく。

「ちょわーッ!!」

 防戦一方になるマシュを、ゼンカイザーが両者の間に割って入り、援護した。

「うっ、またしても……!」
「頼光さん! 母子同士で戦うなんておかしいよ!」
「母……子……」

 ゼンカイザーが放ったその一言が、丑御前の心に響いた。
彼女の中で、何かが変わり始める。

「母と子が、争うなど……あってはならぬ事……!」
「そうだよ! 俺も、トジテンドの奴らに父ちゃんを改造されて……
戦う羽目になった事がある! とっても辛かった! 痛くて怖くて苦しかった! 
そんな想いはもう、誰にもさせたくないんだよ!!」

「ううううっ、私は……私は……!!」
「介人さん……」

 トジテンドの尖兵、ハカイザーに改造された父・功を、苦難の末に助け出した介人。
それはとても長い旅路だった。だが、諦める事だけはしなかった。
大切な者を取り戻す為に、介人は戦ったのだ。今、目の前の頼光も同じなのだろう。
源頼光と丑御前。表と裏。光と影。どちらも本人に変わりは無い。
どちらが欠けてもいけないのだと、介人は知っている。

「そうだぜ、頼光サンよ……アンタは、アンタはこんな事で……
何もかも駄目にするような人じゃないだろ!?」
「う、うう……!!」

 金時の言葉が、頼光の心を揺り動かす。
そして、金時もまた、介人に負けず劣らぬ心の持ち主だった。

「俺の知る頼光サンなら、何があっても必ず乗り越える筈だ。
だから、今回だってそうに違いない。俺達は信じてるぜ」

 頼光もまた、己の中の丑御前と必死に向き合っていた。
そして、その認知世界へと向かったスカル達も、また。

「はあああああああああああああぁっ……!」
「うおおおおおおおおおおおおおおっ……!」

 丑御前が渾身の一撃を放つ。金時もそれを受け止める。

「俺は、アンタとの約束を忘れちゃいねぇ……! 
頼光サン、アンタは必ず正気に戻す……!」
「うううぅぅ……! あぁぁぁぁッ!! 私を、私を惑わすなァッ!!」

 童子切安綱を頭上に振り被り、その切っ先に魔力を集中させる。

「あれは……!! 宝具!!」
「牛王招力・怒髪天昇――矮小十把(わいしょうじっぱ)、塵芥に成るがいいッ……!!」

 混乱状態に陥った末、丑御前の側面が頼光を無理矢理に押し込める。
何もかもを壊す破壊衝動と、正気を無くし暴走する感情と。
その二つを内包する、丑御前の"本当"が露になっていく。

「来いよ、全部受け止めてやる! 俺だけを狙って来い!!」

 回避するも、耐え抜くも不可能。
ならばこちらも、全力全開の宝具で以って迎え撃つのみ。
金時もまた、大斧・黄金喰い(ゴールデンイーター)を担ぎ、万端の体勢でその時を待つ。

「出血大サービスだ……!! カートリッジをリロード! フルパワーを叩き込む!!」

 雷のパワーを内蔵した15基のカートリッジを埋め込んだ黄金喰い。
それらを炸裂させる事で、強力無比な雷属性の魔力を開放する。
一度に消費するカートリッジの数が多ければ多いほど、その威力はさらに倍増するのだ。

「さあ……こっちだ、頼光サン!!」
「うあああああああああああああああああああああああああああああああぁぁッ!!!」

 狂乱の叫びと共に、落雷にも似た衝撃が一帯を襲う。

「派手に行くぜ、必殺……
黄・金・衝・撃(ゴォォォォォォルデン・スパァァァァァァァァァァァァァァクッ!!」

 少しでも周囲に被害が及ばないよう、自分自身を狙わせるために
金時が空中高く飛び上がり、上空から急降下しながら、最大威力の宝具を振り下ろす。
丑御前と金時の宝具が、今、真っ正面からぶつかり合う―――!!

「――!!」

 目も開けていられない程の眩い閃光と、耳を劈く轟音、全てを飲み込む衝撃風と土煙。

「うあああああああっ……!!」

 果たして、両者の生死は? 
そして、認知世界へと向かったスカル達は間に合うのか……!?

19人目

「何故、彼が生きているのか?」

トゥアハー・デ・ダナン内にて、CROSS HEROESはアルケイデスから特異点での出来事について教えてもらった。
「……そうか、特異点に行ったメンバーはソウゴを救出しクォーツァーを倒したか」
(カルデアと士も、無事だったようで何よりだ……)
「あぁ、今はクォーツァーの拠点を特異点における活動拠点として使えるように改装してる」
「アルケイデスさん、情報提供ありがとうございます」

「……で、次はあんたからいろいろ聞かせてもろうよ、剣鉄也」
「・・・」
「鉄也さん……あんたは確かバードス島でケドラに支配された父さんと一緒に母さんに殺されたはずじゃ……」
「……そうだ、俺はあの時死ぬはずだった……だが、あの後ある人物の手によって生かされた……」
「ある人物…?」
「……お前の父、兜剣造だ」
「え…」
「つばさに撃たれたあと、撃ちどころが悪かったのか運良く生き残り自我を取り戻した剣造は、ケドラに支配された身体のほとんどを切り落としてサイボーグ化することでなんとか生き延びることができたんだ。」
「父さんが……生きてる…!?」
「その後寄生されたケドラからのフィードバックでいつの日かミケーネが復活する事を知った剣造はその時に備え俺を蘇生させ、冷凍睡眠処置を施した……あのグレートマジンガーもミケーネが復活した時に対抗する為に作り出したものだ」
「グレートは……父さんが作り出したマジンガー……」
「……もっともミケーネ復活自体させるつもりはなく、お前達がDr.ヘルと一回の最後の戦いを行ったあと、ミケーネを復活させようとしたあしゅらを止めたのは良かったのだが……想定外のことが発生してしまった」
「想定外のこと?」
「……別の世界のDr.ヘルの出現だ」
「えっ!?」
「別の世界のDr.ヘル…!?」
「そうだ、どういうわけか知らんがブロッケン伯爵と共にこの世界へやって来た別の世界のDr.ヘルはこの世界のあしゅら男爵を連れ去り、この世界で活動を始めたんだ」
「それじゃあ私達が戦ったあのDr.ヘルは私達が過去に倒したDr.ヘルが復活したんじゃなくて、別の世界のDr.ヘルだったってこと…!?」
「そうだ。その後バードス島で別の世界のDr.ヘルと決着をつけると聞いた俺は別の世界のDr.ヘルがお前達の手によって倒された後に自由になったあしゅらが再び儀式を行う可能性を危惧して急いでバードス島へ向かったんだが……突如として出現した謎のモンスターに行く手を阻まれてしまってな……結局俺が着く前にバードス島が沈んでしまいあしゅら達も行方がわからなくなったんだ……」
「謎のモンスター?」
「あぁ、これがそのモンスターの写真だ」
鉄也が見せた写真、そこに写っていたのは特異点から帰還した宗介と合流しガウルン達と戦ってた時に禍津星穢が解き放った怪物だった。
「っ!これは…!」
「知ってるのか?」
「あぁ、この化け物は俺たちの仲間…月美やペルのいた世界を滅ぼしたやつが連れてたものだ」
「そうだったのか……」
「けどよ、どうしてその化け物共が鉄也の邪魔をしたんだ?」
「ぼ、ボス!流石に呼び捨てはまずいんじゃ…」
「気にしないでくれ。……恐らくだがそいつがあしゅらと裏で繋がってた……またはミケーネが復活した方がそいつに都合が良かったのだろう……で、バードス島が沈んだ後、行方不明になったあしゅらの捜索を暗黒寺に頼んだんだが……彼があしゅらを見つけた頃には既に儀式が始まっていて止めることができなかったんだ…」
「そうだったのか…」
「すまん、甲児…俺があしゅらを止めることさえできていれば、ミケーネの復活を阻止できたというのに…」
「なに言ってんだよ鉄也さん!さっきの戦いで鉄也さんが助けに来てくれたおかげで俺たちは助かったんだ」
「甲児…」
「終わった事は終わった事だ!こうしてダブルマジンガーが揃ったからにはミケーネも他のやつらも全部ぶっ飛ばしてやろうぜ!」
「…我が甥っ子ながら頼もしいやつだ。剣造が見たら喜ぶだろうな」
「あっ、そうだ鉄也さん……もしかして全ての戦いが終わったらさ、俺とシローを父さんと会わせてくれないか?」
「あぁ、もちろんだ。約束する」
「それを聞いたら、ますます死ぬわけにはいかないな!」
「そうだな」
(約束するぞ、剣造、姉さん…俺の生命に変えてでも甲児達を守り抜いてみせる。それが俺とグレートの新たな使命だ…!)



「……さて、次はテメェらだな。隼人、弁慶」
「・・・」
「テメェらがなんでこっちの世界にいてしかもゲットマシンに乗っていたか……詳しく聞かせてもらうぞ」
「……いいだろう、どうせ断ったところで話すまで何度も聞いてくるだろうからな」

20人目

「丑御前戦②/一蹴、瞬殺、アビィダイブ」

一番槍は、やはりスカルだった。

「先ずは一発、喰らいやがれぇ!」

得物は、北欧神話に習って名付けられたミョルニルという戦槌。
奇しくもそれは童子切安綱と同じ、雷神トールの象徴となる神具だ。
激しく明滅する雷雲と共に、雷を纏って上空高くから振り下ろす。
極めて単純で、だからこそ純粋に力強い一撃。

「はぁっ!」
「うおぉ!?」

それを丑御前は、事も無しげに太刀で切り払う。
返す刀でスカルを大きく弾き、黒い雷撃を纏って追撃の突きが放たれた。
迫り来る無数の刺突が、スカルを飲み込む。

「させません!」

そこへ、ノワールが斧を盾に割って入った。
巨大な刀身を誇る斧の身幅は、そのまま盾にもなる。
それを軽快に回転させ、刺突の嵐を薙いでみせた。

「サンキュー、ノワール!」
「気を付けて下さい、スカルさん! 」
「わ、わりぃ…!」

叱咤も程々に、次はノワールが斬り込んだ。
刺突後の太刀を引いた隙に乗じて、斧を斬り上げる。
袈裟斬りだ、直撃すれば大打撃は免れられない。

「あぁぁ…!!」

しかし、丑御前はこれを難なく避けてみせる。
余裕すら窺える、見事な体捌きであった。

「くぅ、まだまだです!」

続け様に二撃、三撃と攻撃を繰り出す。
しかし、悉くを捌かれてしまう。
それもその筈、丑御前は武神だ。
戦術のいろはが、本能レベルに染みついている。
斧の一振り程度、例え不意打ちでも対処できるだろう。

「そこだぁ!」

だが、二人以上から攻められれば話は別だ。
横合いからスカルの構えたショットガンが火を噴いて、鉛玉の雨を叩き込む。
身を捩り、幾つかは打ち払ったが、それでも多少の銃撃は浴びてしまう。
ここにきて、漸くダメージらしい負傷をする丑御前だった。

「あうぅぅ…!!」

痛みに声を上げ、動きを止める。
そこを狙い澄まし、スカルがミョルニルを振り下ろした。
落雷のような衝撃音、凄まじい雷光が轟く。
並の人間なら即死必至な威力、まともに喰らえば戦闘不能では済まない。
だが。

「_があぁぁぁ!!!」

獣のように叫び、丑御前は太刀を振るった。
刀身に雷光を宿し、迫り来る戦槌を一閃する。
激しい火花と、スパークする電光。

「うわっ!?」

そして、力負けしたスカルが大きく仰け反る。
すかさず距離を取った丑御前が、背中に携えた和弓を手に取る。
直後、目にも止まらぬ早業で矢が速射された。

「嘘だろ、あんな早く出来んのかよ!?」

絶え間無く、薙ぎ払う様に射られた矢の嵐は、スカル達を防戦一方に追い込んでいく。
さながら濁流の如き猛攻は、反撃の時間を一切与えない。
_普通ならば、ではあるが。

「「_ペルソナ!」」

覚悟し、念じる。
顕現するは、もう一人の人格(ペルソナ)。
大海の覇者キャプテン・キッドと、貴婦人の女王ミラディ。
宙に生み出される雷球が矢を焼き焦がし、念動力の奔流が明後日の方向へと受け流す。
勢いはそのまま丑御前へと直撃し、大きく怯ませる。

「チャンスだ、二人とも!」

そうして生まれた隙を突いて、二人が同時に飛びかかった。
戦槌と斧を、左右から挟み込むように叩きつける。
斬撃、殴打、共に強力な攻撃だ。
ペルソナの能力も込めた一撃に、さしもの丑御前も大きく弾き飛ばされた。
受け身を取りながらも、太刀を杖にして漸く立ち上がり、肩で息をする丑御前。
体力もまた、大きく消耗していた証左だった。

「…あんた、それで良いのかよ?」

ソレを見てか、不意にスカルが問い掛ける。

「アイツ等は、あんたが守りたいと願ってた仲間なんだろ?」
「うあ…!?」

突然の言葉に、丑御前は動揺を見せた。
次いで言葉を紡ぐスカル。

「アンタ、このまま良い様に使われてたら、本当に大事なもんを失っちまうぞ。」

諭すような、優しくも悲しい言葉。
それは、仲間の大切さを何よりも知っている彼だからこそ言える言葉。
言霊とも言うべき厚みの籠ったそれに、丑御前は額に手を当てて唸る。
頼光としての善性と、丑御前としての暴力性。
その両方が矛盾を生み、脳裏を締め付ける様に苦しめる。

「あぁ、やめろ、やめろぉ!」
「その叫びはあんたの本音だ!俺達が、必ず取り戻す!」

スカルが叫び、キッドが雄々しく応じた。



罪木オルタ達が繰り出す蹂躙劇に、思わず面食らう雀蜂。
数の差は歴然、にも拘らず一方的に押し負けているのはどういうことか。
このままでは不味いと、雀蜂の一人が悟る。
ならば、取るべき手段は一斉攻撃。

「怯むな!総員、攻げ_」

瞬間、蒼い線の束が、数体の雀蜂の頭部を過ぎる。
一条の線は雀蜂の頭部を起点に鈍い音を立てて直角に曲がり、次々に雀蜂を繋いで行く。
直後、真っ青な火柱と共に無数の血飛沫が静かに舞い上がった。
後に残ったのは、頭部の陥没した幾つもの死体のみ。
物言わぬソレは、ただ静かに倒れ伏した。

「なっ」
「何か、なんて質問は今更無しだぜ?」

次いで、数十mは離れていた広場から、一瞬にして眼前に蒼が伸びた。
舞い散る火花と共に命を落とす雀蜂。
照準が合わさらない、向ける暇が無い、視線の先にはもう居ない。
瞬く間に、50近い雀蜂がカオナシと成り果てた。
ご丁寧に、蒼炎による火葬付きだ。

「さあ、次は誰だい?」

その言葉を皮切りに、両者が動いた。
アビィが突撃し、雀蜂が銃撃を放つ。
奴も生身、であれば撃てばやれる筈だという、半ば祈りに近い心情だった。
曳光弾も混じった弾幕の嵐に、アビィが呑まれる。

「やった_」

歓喜の声が上がり。
直後、それは消え失せた。
鉛玉の弾幕の中で、尚も尾を引いて駆け抜ける蒼を見たからだ。
滑らかな弦を描いた軌道で迫る動きに衰えは見当たらない。
まさか、と雀蜂は悟る。

「野郎、弾を避けて_」
「正解。」

解答の対価は、生からの解放だった。
弾幕を潜り抜けたアビィの飛び蹴りが、雀蜂の頭部を刎ねた。
そのまま敵の臨時陣地で反復横跳びめいて飛び回る。
一度跳ねる度に、雀蜂が崩れ落ちる。
そして、遂に最後の雀蜂へと手が掛けられる。

「ヒィ!?」
「…君達は僕と敵対(かちあ)っただけだ、恨めよ。」

そうして目にも止まらぬ手練が繰り出され_

「_取った!」

瞬間、アビィの背後から大口径の機関銃が叩き込まれる。
死んだふりをした雀蜂による、背後からの奇襲だ。
弾倉が空になるまで撃ち込んだ。
濛々と、土煙が立ち昇る。

「なっ、テメェ…!」

やがて撃ち切った機関銃を手に、罪木オルタに頭をかち割られる雀蜂。
意識が明滅し、やがてブラックアウトしていく最中。
最後に見えたのは、穴だらけになった背中。

「_何だよ。」

では、無かった。
背を向けたまま、握り潰した弾丸を片手に収めるアビィの姿だった。

「直撃(あた)っても、防御(ふせげ)るの…かよ…」

改めて刈り取られる雀蜂。
消滅する二つの命。
ソレを喰らい、アビィは更に高まる。
その行いの愚かしさを噛み締めながら、欠片も表情には出さず、くるりと振り返って、告げる。

「さっ、他が来る前に片付けようか。このパーティ跡は、子どもにはちょっと刺激的だ。」

21人目

「抗うための力」

 魔理沙がボウガンを持っていってから、10分後

「おーい、出来たぜー!」

 超高速で飛行機……否、魔女の箒を飛ばしてきた魔理沙が月夜のボウガンを持ってやってきた。
 現実でもお目にかかることのない、魔女の飛行。
 絵本かアニメでしか見たことがなかった光景に、つい月夜は拍手してしまう。

「本当に、魔女みたいだ……。」
「失礼だな、普通の魔法使いだぜ私は。」

 そう言う魔理沙の顔は笑顔で満ちている。
 箒から降りた彼女は、月夜に改造済みのボウガンを渡す。

「とりあえずボウガンの改造は終わったぜ。これで悪霊とか弱い妖怪とかなら倒せると思う。」
「あ、ありがとう。試し撃ちしても?」
「いいと思うが、なるべく遠くを撃ってくれよ?」

 そう言われた月夜はボウガンを持つ。
 金属製の矢が複数本込められたカートリッジを装填し、博麗神社の遠くにある森の方角へと構える。
 引き金を引き、飛んで行く一矢は月夜の知る速度とは桁違いに速くなっていた。

「おぉ……。」

 空を切り、風を裂く速度。
 木々の間を縫うように飛んで行くそれは、やがて奥にある樹木に突き刺さった。

 どや、と自慢気に笑みを浮かべる魔理沙。
 対照的に月夜はボウガンを見つめ、質問を投げかける。

「しかし……悪霊の強さってどれくらいだ?弱っちい妖怪程度か?」
「あー、まちまちだな。強かったり弱かったりと個体さはあるけど、今は弱い。」
「”今”は?」

 これは月夜たちにとって死活問題だ。いくら強化しようとも効かなければ意味がない。
 魔理沙はちょっと考えて、月夜に言う。

「段々と強くなってくるんだよ。ゆっくりだけど、確実に強敵感が増してくる感じだ。」
「今の彩香達でも勝てるか?」
「余裕だと思うぜ、今の段階だとな。本当に成長は緩やかだからよっぽどのことがない限り……。」

 と、月夜が次のセリフを投げかけようとした瞬間だった。
 ガサガサ、と草むらから何かが出現する。

「おい、あれって……!」

 その正体は黒い穴。
 靄を纏ったその穴から、数体の黒い何かが出現する。
 見た目は幽霊の形を基本骨子としているが、左腕に当たる部位が退化しているせいか異形の怪物、というイメージを持たせてくる。

「ああ、悪霊のお出ましだ!」

 魔理沙たちの言っていた通りの見た目の怪物が、そこから出てきた。
 黒い身体、滴る悪性の油、左腕の対価を条件に得た第三の腕という異形。
 その禍々しい見た目たるや、まさに悪霊の名を冠するにふさわしい。

「来るぞ!」

 悪霊は背中より生えている鎌のような『第三の腕』を振るい、月夜の胴体を切断しようとする。
 その攻撃を回避し、月夜はボウガンの引鉄に指をかける。

「―――――!!」

 月夜が放ったボウガンの矢は的確に悪霊の心臓部を守る肋骨の部位を砕き、心臓の真っ赤な核を貫徹した。
 核を砕かれた悪霊は、即座に塵になって消失してゆく。

「よし、効いてる!」
「油断すんなよ、1体いたら10体くらい入ると思った方がいい!」
「分かった!行くぞ!」



 幻想郷 霧の湖
 博麗神社を少し進むと否応なしに見ることになる、巨大な湖。
 常に霧がかかっており、そのせいで陰鬱で寒々しい雰囲気を覚えさせる。

 妖精や精霊と呼ばれるものたちの遊び場でもあるこのエリア。この先に、目的地の紅魔館がある。

「ここは常にこんな感じか?見えにくいな……。」
「そうね、妖精なんかもいるから普段は私たちと妖怪以外は通らないエリアよ。」

「おーい!おーい!!」

 ふと、霊夢たちの前に小さな妖精が立っていた。
 蒼い服、氷の羽根。

 その姿は明らかに妖精だった。
 のだが……。

「急ごう、夜になったら大変だ。」
「そうだね。悪霊が出てきて厄介そうだし、何より兄さんが……。」

「おーい!無視するなー!!」
 残念ながら、気づいていないようだ。

22人目

「あたいはサイキョー! 氷の妖精チルノ」

 「うっ……急に寒気が……」

 彩香が突然悪寒を感じ取る。
パーカーを羽織り、ショートパンツから生足を晒していると言う服装の彼女は、
身体の芯まで冷えるような感覚に襲われていた。

「どうした? 天宮彩香」

 そんな彩香よりも輪をかけて薄着なペルは、その変化に気付かない。
ショート丈のタンクトップにへそ出し、ピンクのスカートの下にはスパッツ、
足首周りにサポーターを巻いた格好。

「ペルちゃん、そんな格好で良く寒くないね……」

 月美やペルは体表面を霊気や魔力でコーティングしているため、
多少の気温差には耐えられるのだ。
彩香にはそう言った術がないため、今にも凍えてしまいそうなほど寒いらしい。

「おい! あたいを無視すんなー!!」

 何者かが一行に話しかけてくる。霧の湖の上を浮遊する、
氷の羽根を持った幼い少女だった。

「このーっ!!」

 少女が投げつけてきたのは、氷漬けになったカエルだった。

「えっ……わ、わぁーっ! カエルーッ!!」

 不意に受け取ってしまった月美は、思わず湖にカエルを放り投げてしまう。
どぽんっ……と、小さな水しぶきを上げてカエルは沈んでいった。
やがて水温で氷が解け、カエルは何事も無かったかのように泳いで去っていく。

「何者だ、敵か?」
「いいえ、ただのバカよ」
 
 辟易とした顔でペルの質問に答える霊夢。敢えて気づかないフリをして
この場を通り過ぎようとしていたのだが、それももう無理のようだ。

「あたいはチルノ! 氷の妖精チルノ! サイキョーだ!!」
「最強……」

 ペルはチルノの言葉に耳を傾けた。

「……嘘の匂いがしない。本当に最強なのか……?」

 小声でそう呟き、考え込む。
チルノは自分自身が最強である事を信じて疑わない。確かにそこには「嘘」は無い。
良く言えば「純粋無垢」、悪く言ってしまえばそれは……

「ふふん、そうだぞ! あたいはサイキョ……」
「放っておきなさい、勝手に言ってるだけ。さっさと先に行くわよ? 時間のムダ」

 いつもの事だと言わんばかりに霊夢は言う。
常日頃から悪戯心で霊夢や魔理沙に絡んでは邪険に扱われると言うのがお約束だ。

「霊夢! 何だそいつら!? 見ない顔だな!? 新しい友達か!?
魔理沙は一緒じゃないのか!? あたい、たいくつしてたんだ! 遊ぼうぜ!? 
な!? なあ!?」

 行く先に回り込んで、霊夢たちの周りをやかましく飛び回るチルノ。
霊夢の眉間がどんどん皺が寄っていく。

「頭痛ったい……アンタのバカ声はキンキン響いてしょうがないのよね……」

 霊夢は額に手を当て、やれやれと言った具合にため息をつく。
それでもなお、チルノは止まらない。
この場にいる者たち全員に、自分の凄さを理解させようと躍起になっていた。

「遊ぼ! 遊ぼ!! あーそーぼー!!!」

 チルノが騒ぐ度、身体から発散される冷気。その冷気にやられた彩香が
ついにダウンしてしまう。妖精と言うカテゴリから考えれば、
確かにチルノは他よりも抜きん出た力を持ち合わせている証拠だ。

「ううっ、寒い……耐えられない……」
「仕方あるまい……」

 しゅる、とペルが魔力を込めたマフラーを彩香に巻いた。
彩香の身体が温まり、体温が低下していた彼女の身体に血が通う。

「あ、暖かい……ありがとうペルちゃん」
「きゃはは! あたいの冷気は凄いだろう! お前、あたいの凄さが分かったか!?」

 寒さで弱った彩香に、得意げな顔を見せるチルノ。
その態度にとうとう堪忍袋の緒が切れてしまったのか、ついに霊夢が動き出す。

「――いい加減に……しなさいッ!!」
「あぼふっ!?」

 お祓い棒によるフルスイングが、見事にチルノの顔面にめり込んだ。
そのまま湖の方へ錐揉み回転しながらぶっ飛んでいき、大きな水しぶきを上げて落水する。

「行くわよ。まったく、しょうもない時間取らせて……」

 霊夢が先陣を切り、一行は紅魔館に向けて歩を進める。

「――ぶはぁぁあッ!! 霊夢ー! お前ー!! 何すんだーッ!!」

 落水のダメージから復帰したチルノは怒り狂い、湖の中から顔を出して
大声で霊夢を威嚇する。
だが、当の霊夢たちは全く意に介さず。霧の湖をズンズンと進んでゆく。

「覚えてろよーッ!! その内ギャフンと言わせてやるからなーッ!!」
 
 今日び、「ギャフン」なんて言う奴が本当にいるのかはさておき。

23人目

「ゲッター線に導かれて」

「お前が俺たちを置いてあの巨大なゲッターロボに一人で突っ込んで消えた後、俺たちとミチルさんはそれぞれの道を進んでいた。そんなある日俺たちの目の前に……早乙女博士が現れた」
「なにっ!?」
「早乙女博士…?」
「早乙女博士はゲッター線の研究を行っていた科学者でゲッターロボの開発者だ」
「けどよ隼人、早乙女のジジイは確かあの時…」
「そうだ、早乙女博士はあの戦いで早乙女研究所の地下に蓄えられた膨大な量のゲッター線を解放し、消滅した……が、どうやら消滅したのは身体だけで精神だけはゲッター線と一体化して残ったらしい」
「まじかよ…!?」
「で、精神だけの状態で俺たちの前に現れた早乙女博士は『全ての世界が滅びようとしている、竜馬と合流してそれを阻止するんだ』て言ってきたんだ」
「その直後、俺たちはゲッター線と思わしき光に包まれて、気がついたらこの世界に飛ばされていた……ボロボロの状態のゲットマシンと共にな」
「本当ならすぐにでもお前と合流しに行くつもりだったが、マシンがボロボロ過ぎて使い物にならなかったからな。修理に時間が掛かってしまったんだ」
「なるほどな」
「けど、なんでお二人と鉄也さんが一緒に居たんですか?」
「……先程、バードス島が沈んだ後、暗黒寺に行方不明になったあしゅらの捜索を頼んだことは話しただろ?」
「うん」
「……実は暗黒寺があしゅらを捜索してた際に偶然にも彼らと出会ってな……こちらに協力してもらうことを条件にゲットマシンの修理を剣造と共に手伝ってたんだ」
「そんなことが……」
「もっとも、早乙女博士のことだ、そうなるように仕向けてる可能性もなくはないがな」



「皆さんの事情は大体わかりました」
「それで艦長、これからどうします?」
「そうですね……」
テッサ艦長が話しだそうとしたその時…!
「っ!?な、なんだ!?」
突如として爆発音と共に艦内かま大きく揺れだしたのだ。
「なにが起きたのですか!?」

「大変です艦長!格納庫に格納したゲッターロボのうちの一機が勝手に動き出し、艦の外へ出てしまいました!」
「なんですって!?」
「動き出したのはどっちの方だ?」
「竜馬さんがこの世界に来た時に乗ってた方です!」
「どういうことだ!?ゲッターが勝手に動き出すなんてよ!?」
「とりあえず止めに行くぞ!」
ゲッターチームは格納庫に残ってるもう一機のゲッターロボに乗り込み、勝手に動き出したゲッターロボを止めに行った。



トゥアハー・デ・ダナンの外では勝手に動き出したゲッターロボがボロボロの状態で海上に突っ立ってた。
「・・・」
「待ちやがれ!」
トゥアハー・デ・ダナンから出撃した竜馬達の乗るもう一機のゲッターロボが捕まえようとしたその時
「っ!竜馬避けろ!」
「なに!?」
突如として勝手に出撃した方のゲッターロボが竜馬達の乗るゲッターロボに向かってゲッタービームを発射したのだ
「っ!しまっ…」
ゲッタービームがゲッターロボに着弾すると着弾地点を中心に巨大なワームホールが出撃し、竜馬達の乗るゲッターロボはその中へと吸い込まれてしまった。
「ウォオオオオオオ!?」
「竜馬さーん!」
「・・・」
竜馬達が吸い込まれた後、ゲッタービームを撃った方のゲッターロボは機能を停止し、ボロボロのまま海の底へと墜落していった。



その後、ゲッターロボが出現させたワームホールをミスリルやTPU、DDやカプセルコーポレーションなどが調査をしたところ、2つのことがわかった。
1つはあのワームホールは特異点に繋がってること、そしてもう一つは……
「え!?特異点にトリガーのキーが!?」
「あぁ、あのワームゲートの向こうから、トリガーの力と似た反応があった。恐らくはトリガーが復活した際に散らばった力のうちの1つが特異点に飛ばされたのだろう」
「別の世界に飛んでいたなんて…」
「どうりで反応がどこにもなかったわけだ……」
「そしてここからが本題なのだが、我々GUTSセレクトはあのワームホールを使って特異点へ行くことになった。目的はキーの回収と吸い込まれたゲッターチームの救助だ。我々にとって未知の場所での活動になるが、必ず任務を達成して全員生きて帰るぞ!」
『ラジャー!』
「俺とZさんも行きます、もしもこっちの世界でなにかあったとしてもベリアロクさんの力を借りればすぐにでも戻ってこれますから」
「ありがとうございますハルキさん。よし、ナースデッセイ号発進!」
GUTSセレクトのメンバーとハルキが乗るナースデッセイ号はワームホールを通って特異点へとワープした。

24人目

「動き出す幻想の勢力」

「うぐ……ここは……。」

 気が付くと、彼は布団の上で寝かされていた。
 周囲は生活感の溢れる部屋であり、その様子と自身の不調から『助けられた』と男は察する。

「動かないでください!病み上がりであんまり無理したら……。」

 その傍らで、緑髪の女性が心配そうに彼を見ていた。
 見た目は彩香と同じくらいの女子高生だが、少し妖艶な体つきをしている。

「き、君は?」
「早苗、東風谷早苗と言います。今神奈子様を呼んできますね。」
「分かった……。」

 神奈子、という人物を呼ぶ早苗という女性。
 その間男は、自身の未熟さに頭を抱えていた。

「はぁ……。俺としたことが倒れるとは、情けない。」

 貫くは、高潔な意思。
 自分の未熟さと弱さを恥じる彼の前に……。

「よう。随分といい男じゃないか。戦士くん?」
「!?」

 神が、顕れた。

「私は『八坂神奈子』。御覧の通り神様だ。あんまり無理すんなよ。」

 太いしめ縄を、まるで後光のように背につける神奈子という人物。
 その威風堂々たるや、まるで昔からそこにいて信仰を集めている神様のようだ。

「あんた、名前なんて言うんだい?」

 男は少し警戒しながらも、自身の名を告げた。

「クラス:セイバー。ディルムッド……ディルムッド・オディナ、です。よろしく。」

 ディルムッド・オディナ。
 ケルト神話における伝説の騎士団、フィオナ騎士団の一番槍。しかして今回はより神話に近い冒険者としての姿、剣を振るう一戦士としての姿を取っている。
 今回彼が相対するのは、それ程の敵なのだろう。

「でぃるむっど・おでぃな、さん?随分よそ行きな名前だねぇ……とすると、あんた外の世界から来たのかい?」
「ディルムッドでいい。確かに私はあなたの言う……そのー、外の世界から来た。」

 依然朧気な頭を動かしながら、眼前の女性に事情を説明する。
 自身がソロモンの指輪の力によって召喚された人理の英霊であること、自身の目的は幻想郷に現れるという『脅威』に対抗するということ。

「へぇー、人理の英霊さんね。まったくあの妖怪の賢者様は何をしてんのやら。」

 妖怪の賢者、八雲紫に対して思うところがあるのか神奈子は彼女に対して愚痴る。
 その様子を見つつ、ディルムッドはその場を去ろうとする。

「そろそろ行かなければ。長居している暇はない。」
「どこへ行くつもりだい?」
「脅威を……この地に来るという脅威を倒しに……。」

 神奈子は、彼を引き留める。
 戦士であり勇者である彼は神奈子の手を振りほどこうとするが……。

「などといいつつ、実は結構腹減ってんだろ?もうちょっとここでゆっくりしてきな。何、悪りぃようにはしねぇから。」
「いや、そんな……あっ。」

 タイミングがいいのか悪いのか、ぐーっと腹の虫が悲鳴を上げた。
 それを聞いた神奈子の顔は何かを企んでいるかのような。されど屈託のない笑みを浮かべていた。

「やっぱだめだ。なんか食ってけ。」

 異邦とは言え、神様の提案を無碍にするわけにはいかず。
 ディルムッドの方が折れた。

「……感謝する。」



「もう寒いのは大丈夫だけど……そうじゃなくても寒いな……。」
「陰暗な空気ってのもあるけど、そんなんじゃ幻想郷じゃ生きていけないわよ。もっと強くなりなさい。」
「うん……。」

 霊夢たちの歩みは止まらない。
 道中の妖精や妖怪は霊夢が倒してゆく。
 そうしながら、霧の湖の外周を回っていくと……やがて目的地に到着した。

「紅魔館、到着ってところね。」

 霊夢たちの前に、巨大な赤い門が現れる。その奥にはそれ以上に紅い館が堂々と立ちはだかっている。
 その様子たるや、まさに魔が支配する紅い館。即ち紅魔館の名を冠するにふさわしいだろう。

「目が痛いほど赤いな……なんか変な気も感じる……。」
「彩香……お前魔力を感じ始めているのか?」

 側にいたペルフェクタリアが彩香の変化を真っ先に感じ始めた。
 魔力や霊力を感じないはずの、ただの人間であるはずの彩香がこの館から感じる魔力を肌で感じ始めていた。
 その理由はやはり。

「アマツミカボシ……あの神霊のせいか!?」
「多分そうだ。」

 彩香に憑依せし神霊アマツミカボシ。
 ロンドンにて大立ち回りをし、多くの人間に試練を与える存在。
 その影響か、彩香の身体にも変化が訪れていた。

「ちょっとだけだけど、肌がピリピリしてる……。」
「無理はするな。」
「ああ、分かってる。」

 ペルに『無理をしないように』と言われる。
 しかし現在の彩香に霊障はないようだ。

「嘘はないな。だが本当に無理することはないぞ。」
「分かってるよ。本当にまずかったら……神社に戻るから。」

 彼女なりに、彩香を心配しているようだ。
 そんな2人をよそに、霊夢は門の鉄柵の先を見る。

「というか見て。咲夜のやつ……何してんのかしら。」
「あの様子……喧嘩しているの?」

 月美と霊夢の視線の先。
 そこにいたのは、メイド服を着た女性と巨大な大砲を掲げた大男がいる。
 どうやら口論になっているようだが……。

「やはり信じられません!レミリア様は完全に信じたようですが……私にはとても!」

 テーブルを強くたたき、憤りを見せるメイド。

「”自称”ナポレオン!!あなたが本当にそうだというのならば!」

 その刹那。彼女は大男の目の前から消え複数本のナイフを投げつける。
 対するナポレオンという男はナイフを回避し、その傍らに置いた大砲を手にして咲夜に照準を合わせる。

「力を示せという訳か!いいだろう、勝負だ!!」

 メイド長『十六夜咲夜』と『ナポレオン』を名乗る巨大な体格の男が戦っている様子を眼前で見せつけられ、顔なじみの霊夢はただ呆れるばかりだった。

「どうする?」
「とりあえず……止めよっか。」

 5人は不用心に開錠されている門をゆっくりと開け、紅魔館の内部に突入するのだった。

「Zzz……」

 そんな混沌とした様子とは打って変わって、紅魔館の門番はただ眠りこけているのだった。



『む……』

 それは、白い精神世界にいた。
 ただでさえ白い空間に、耀ける白い靄がそこにいる。
 白い空間のソラに、おぼろげながらも光景が浮かび始める。

『感じるぞ……戦いの香り!生と死の香り!大いなる試練の香り!数多もの戦士の、猛る力の香りをぉぉおお!!』

 それを見て、彼は歓喜する。
 まるで戦いに飢えた獣、或いは狂戦士が如き咆哮を精神世界にて上げる。
 耀ける試練の神霊アマツミカボシ、その再覚醒の時は近い。

『これこそ、我が主の成長にふさわしき舞台だ!さぁ我が主よ、疾く毅き汝を見せるがいい!少なくともこのオレを御せるほどの強さを!!あの鬼種を討伐できる、その潜在能力の輝きを!!』

25人目

「丑御前戦③/裏会合再び」

けたたましい雷鳴が、絶えず轟く。
荒ぶる丑御前の御霊が雷雲と共鳴し、黒く淀んだ雷を放射する。
威圧とも言うべき神気で、塀ごと消し飛ばしかねない勢いだ。

「唸れ!キッドォーーー!!!」

だが、スカルも負けじと奮起する。
雷の海を掻き分けて、キッドと共にスカルとノワールが行く。
荒れ狂う神雷の中を突き進み、丑御前へと飛びかかった。

「ここが踏ん張りどころだ!」
「必ず、正気に戻します!」

腕に力を溜め、渾身の一振りを放つスカル。
対し丑御前が取った行動は、護身の構え。
先程とは打って変わって、鍔競り合いに持ち込めた。
明らかに疲弊していると、活路を見出した。

「ノワール!」
「任されました!」

スカルの要望に応え、全身を大きく振るい斧を回転させる。
咄嗟に片足を軸にし転身、太刀の角度を変えて両者の攻撃を防ぐ丑御前。
2、3回と回る度に叩き付けられる斧の衝撃たるや、大砲の如し。
ぶつかる度に太刀が金切り声を上げて、火花を散らしていく。
しかし、それでも尚押し切れず、力比べが続く。
この光景に歯噛みするのは、スカルも同じだった。

「くっ、こいつまだっ!」

まだ足りないのか、あと一歩届かないのか。
そんな焦燥感に駆られる。
だが、諦めない。
ここで折れてしまえば、今までの苦労が全て水泡に帰す。
そう言い聞かせ、必死に耐え忍ぶ。

「う、おぉ、おおおおぉぉぉっ!!」

更に一歩、踏み込む。
ズシリと痛む四肢を無視して、有らん限りの力を込める。
ブチリと筋が千切れる音がしたが、尚も圧し込んだ。
丑御前が、ここで圧され始めた。

「今だ、サポート!」

瞬間、後方のナビが駆るペルソナ『ネクロノミコン』から、スカルとノワールへ向けて光が飛ぶ。
膂力が増幅され、筋繊維が隆起する。

「サンキュー、ナビ!」
「ここで、決めます!」

圧倒的な力のベクトルが、突き刺さる。
丑御前の太刀へ、決壊したダムの水圧が如き力の濁流が押し寄せた。
やがて、抑えきれない力に流され。

「「ハァ!!」」
「あぁ…!?」

豪打。
激しく弾き飛ばされた丑御前は、受け身も取れずに地面を転がった。
同時に、遠くの地面で太刀が突き刺さる。
決着、そう言っても過言では無かった。

「はぁ…はぁ…!」
「終わった、の…?」

倒れ伏したまま動かぬ丑御前を見ながら呟くノワール。
先の猛威を警戒しつつ、近寄る。
一歩、また一歩と距離が狭まり、あと数歩といった所で、変化は起きた。

「うぉ!?」

丑御前の身体から瘴気が立ち昇る。
頼光を乱心させ、丑御前の封印を解いた正体。
度重なるダメージで憑りつき切れなくなったソレは、宙に発散されていく。
残った丑御前の身体は、先と比べて鮮やかな色を持っていた。

「これは、一体どうなったんだ?」

突然の出来事に困惑するナビ。
その問いに答える様に、丑御前の身体がピクリと動いた。
咄嗟に構える二人を前に、悠然と立ち上がる。
所作の節々からダメージは見受けられるものの、まだ戦闘不能には陥っていない様だ。
故に警戒心を上げる二人を、柔らかな声色であやす様に口を開いた。

「心配無用。私はもう、貴方達と戦うつもりはありません。」

そう言うと、両手を広げて敵意が無い事を示す。
その様子を見て、ようやく二人は武器を収めた。

「もう、大丈夫なんだな?」
「えぇ、結構です。私はもう、己の情緒に呪縛されてはいません。」

そう告げると、大きく深呼吸をする丑御前。
そして、改めて二人に向き直った。
その姿を見たナビが、ポツリと零す。

「まるで、別人みたいだ…」

先まで荒ぶっていた神気が、今は見る影も無い。
むしろ、穏やかな気質すら感じさせる程、落ち着いた雰囲気を纏っている。
何より、彼女の瞳に宿る確かな理性の輝きが、ナビの抱いていた印象を一変させていた。

「人の子よ」
「ひ、人の子って…」
「独特な言い回しだな…」

スカル達の言葉を無視して、丑御前は続ける。

「良くぞこの牛頭天王の御霊、丑御前を鎮めてくれました。」

そう言うと、深々とお辞儀をした。
予想外の反応に、戸惑うスカル達。
余りにも落ち着き払った態度に、疑問を抱かざるを得ない。
されど、丑御前は語る。

「敵の口車に乗せられ醜態を晒し、頼光(わたし)が丑御前(わたし)を露わにし、あまつさえ正気すら失った時、如何様にすれば良いかと狼狽したものですが…」

顔付きは暗く、苦い思い出を噛み締めるかのよう。
しかし、一変して柔らかな表情になる。

「けれど、貴方達が来てくれたおかげで、己を取り戻すことが出来ました。感謝いたします。」

再び、深くお辞儀をする丑御前。
憑き物が落ちた、そう表現するのが適切だろうか。
最早、先の荒ぶる形相は欠片も見受けられなかった。
困惑するスカル達。
だが、時間は刻一刻と迫っていた。
丑御前の身体が、光の素子へと還っていく

「そろそろ、戻らねばならぬ時の様です。」

消えゆく丑御前が、別れを告げる。

_ありがとう。

最後にそう言い残し、丑御前の姿は、完全に消えた。
後には、静寂だけが残った。

「…丑御前、頼光、まさか!?」
「ど、どうしたナビ?」

突然、点と点が繋がった様に驚愕の声を上げるナビ。
二人の注目を一身に浴び狼狽するも、直後に考えを告げた。

「丑御前、源頼光って昔の人に宿った神様だって話を思い出した!」
「えっ、つまりあの頼光ってもしかしたら、偉人…?」
「CROSS HEROES、一体どんな人達を抱えて…?」

ナビの推理は、的中していた。



フードを被った二人の者達は、未だ空を駆けていた。

「しかしどうする?ドラゴンボールの当てなぞ早々見つかる物ではあるまい。」
「まぁ待ちな、直ぐに向こうから来てくれるさ。」
「…?」

片方の者が、何かに気付いた。
雲の隙間から見える、白衣を着た女性の姿。

「そろそろ動き出す頃合いだと思っていたわよ。」

その正体が明らかになる。
人造人間21号だ。

「貴方達が求めているのはコレ、でしょう?」

そう言うや取り出したのは、橙色の珠が7つ入った袋。
ドラゴンボールが、揃っていた。

「なっ…これはどういう事だ!?」
「なぁに、俺達に上手く使って欲しいそうだ。」
「そうよ、フフフ…」

悪辣な笑みが、静かに響いた。

26人目

「勝負を分かつ雷光」

――黒平安京。

 スカル達が認知世界へ潜行したのとほぼ同刻。 
金時と丑御前の宝具が衝突する。凄まじい雷鳴と共に、視界が真っ白に染まる。

「うああっ……!!」
「先輩、ゼンカイザーさん、しっかり私の後ろへ!」

 マシュの盾を隠れ蓑にして、なんとか衝撃をやり過ごす一同。

「やっべぇ……想像以上だわ……!!」

 初撃、黄金喰いのカートリッジを一度に6基消費。通常の倍。
さらに1基、2基と撃ち込んでいく。しかし、気休めにしかならないのは明白。
丑御前の宝具の勢いは、金時が思っていたよりもずっと、強力無比な代物であった。
この攻防において先に限界を迎えるのは、間違いなく自分の方だと確信する。
だが、そう易々と倒れる訳にはいかないのだ。

「抜かれたら、そこで終わりだからな……!!」

 カートリッジの残量。それはまるで、死へのカウントダウンにも似ていた。

「ぬぎぎぎぎ……!!」

 力を込めた両腕に浮き出た血管が、今にもはち切れてしまいそうだ。

「頼光サン……アンタにゃ、負けらんねえんだ……!!」

 歯を食いしばり、競り負けまいと気張るが無情にも丑御前の宝具は
さらに威力を増していた。黒い雷が意志を持った蛇が如く暴れまわり
金時を喰らいつくさんと迫る。だが、決して屈しない。
そう言わんばかりに雄叫びを上げ続ける。

「ぬあああああああッ……!!」

 そしてとうとう、カートリッジは残すところ最後の1つとなってしまった。
しかし、そんな事は露知らず、目の前では雷神の荒技が繰り広げられている。
もはや後が無い。意地でも耐え切ってやる。そう決めた矢先の事。
丑御前に、変化が生じた。

「金……時……」
「!! 頼光サン!!」

 丑御前の宝具の威力が著しく低下。それに伴ってか、荒れ狂っていた雷撃の勢いが
徐々に収まっていく。
認知世界でのスカル達の戦いが黒平安京の丑御前にも影響を及ぼした。
それにより、頼光の人格が引き戻され始めたのだ。

「よっ……しゃああああああッ!!」
 
 この機を逃がす手は無い。金時は最後のカートリッジを砕きフルパワーで以て
遂に押し返すことに成功した。

「どぉぉぉう……りゃあああああッ!!」

 金色の雷が、漆黒の雷を真っ向両断。そのまま地上へと振り下ろされた。
轟音。そして静寂。決着の瞬間だった。

「ど、どうなった……!?」

 その場にいる誰もが、天下分け目の大勝負を固唾を飲んで見守っていた。
やがて爆煙が薄れると同時に、そこには金時の膝の上で横たわる頼光の姿があった。
ゆっくりと瞼を開ける頼光。その様子を見て、思わず涙ぐむ。

「頼光サン……平気か……?」

 そっと声を掛ける。

「私……は……」
「良かった……ホント良かった……!!」

 堪え切れず、涙を零しながら抱き締めた。その腕の中で、頼光は静かに微笑む。

「ふーん……何や、妬けるなァ」
「!!」

 金時達の背後にはいつの間にか、酒呑童子が立っていた。

「あ……!」

 大太刀を高々と振り上げる。もはや、金時に避ける術は残されていなかった。
終わったな……ならばせめて、この背を盾にしてでも頼光を護るのみ……!!
覚悟を決め、頼光の身体を引き寄せた。

「大将、綱の兄ィ……後は、頼まぁ……!!」

 だが、一向に振り降ろされる気配がない。
恐る恐る顔を上げた時、ザクッ!! ……と、酒吞は大太刀を地面に突き刺した。

「ぉわッ……!?」

 気が緩んだところで、背筋が凍るような悪寒に襲われた。

「ぉわッ……!? やて。あはははは、カッコ悪」

 振り返ると、酒呑は腹を抱えながら笑っていた。どうやら、本気だった訳では
なかったらしい。安堵して腰を抜かす一同を見てますます笑い転げるのであった。

「酒吞……お前……」
「あー、おかし。何や酔いも醒めてもうたわ」

「でぇぇぇえいッ!!」
「おおおおおおッ!!」

 依然、戦いを続けている茨木と綱の方に目を遣る。
二人の戦いは激しさを増すばかりで、未だ終わりの兆しが見えない。

「ほい、茨木。終わり、終わり」

 唐突に告げる酒呑。両者の戦いにするりと割り込むと
酒呑はそのまま茨木を羽交い絞めにして瓢箪の酒をぐいぐいと流し込み始める。

「ぐぼっ!? んごご……あぼっ……」

 呼吸困難に陥ったかと思いきや、今度はみるみると青ざめていき
白目を向いて気を失った。

「茨木の奴は悪酔いが過ぎたみたいやなァ。さ、ウチらは引き上げよか。
ほなまたなァ~。拠点で待っとるで」

 金時達にひらひらと手を振りながら、茨木を担いでスタコラサッサと消えてしまった。
まるで嵐が過ぎ去ったかのような錯覚に陥り、呆気に取られてしまうのであった。

「拠点で……って、あいつ、最初から……」

 酒呑が去り際に残した言葉の真意に気付いた時には、既に後の祭りであった。
結局、この場に残ったのは、気絶したままの頼光と金時、カルデアとCROSS HEROES。
そして……

「……よっ、と。戻ってこれたぜ。どうなった!?」

 入れ違いで認知世界から戻ってきたスカルとノワール。

「良かった……ご無事だったんですね。安心してください、
その方の『心』は守られました」
「心……?」

 ノワールの口から出た聞き慣れない単語に金時は困惑する。
だが、彼らのおかげで頼光が正気を取り戻せたのであろう事を瞬時に理解していた。
――ありがとう。感謝の意を込めて、深々とお辞儀をする。
そんな金時の様子に戸惑いながらも、二人は照れくさそうに、互いの顔を見合わせた。

『感動的な場面だが、どうやらまだまだ戦いは終わっていないようだぞ?』

 突然、ナビが口を挟む。
確かに見渡せば、黒い雷雲が立ち込め始めていた。

「ソソソソ、何とも、何とも! 折角の同士討ちが台無しではありませぬか……!!」
「くだらん企みが露見したところで今更だな。貴様もとっととくたばりやがれ!」

 ベジータのボディブローがリンボの身体を貫く。

「おぼぁぁぁッ……」

 その一撃で致命傷を負い力なく膝を付く。やがて、よろめきながら立ち上がるが
足元は覚束ず、息も絶え絶えで見る影も無い。

(!? 今の感触は……)

「御首、頂戴仕る!!」

 ベジータが違和感を察知した直後、飛び込んできた武蔵が、
二刀流を交差させて首を撥ねた。胴体と切り離され、無様に倒れ込む。
だが……

「!?」

 そのリンボは、またしても偽物だった。式神による身代わり術で
あたかも本物であるかのように見せていただけだったのだ。

『ハハハハ、危ない、危ない……拙僧、危うく一巻の終わりを迎えるところでした』

 いやらしいリンボの声だけが響き渡る。
皆、満身創痍。体力も魔力も底を突きかけていた。

「やられた……! ホンット、つくづく性根の腐った……!!」
『さあ、晴明殿! 彼奴らはもはや虫の息ですぞ!!』

 勝ち誇ったように叫ぶ。それを受けた晴明は、黒平安京の最奥で静かに、
ゆっくりと立ち上がり、不敵に微笑んだ。

「ふん、リンボめにしては上出来か」

 ついに、沈黙を貫いていた安倍晴明は、重い腰を上げたのであった。

27人目

「Vengeance Bullet Order:Ⅰ」

 アメリカ 海岸

 一台の小型船が、夜明け前の海岸を走っていた。
 大きいモーターを震わせ、機体を前に前にと進めてゆく。

「此方アルファ。前方に異常はありません。」
「そうですか、では引き続き周囲の監視を続けるように。」

 ただし乗っている者たちは全員、漁師ではない。
 釣り竿や網、銛の代わりにスナイパーライフルとマシンガン、そしてロケットランチャーを持っている兵士ばかり。
 簡易的だが、海上戦ができる構えだ。
 もちろん、そうならない方が圧倒的にいいのだが……。

「ジャバウォック島まで残り3時間程です。魔術により島まで往復できるくらいには船の性能をあげていますが……敵が来たら厄介だ。」
「この船はあくまでも漁船。戦艦じゃないからね。」
「そうです。相手が巡洋艦でも持っててこちらを攻撃し始めたら最悪だ。」

 船の休憩室。
 否、『指令室』として改造された一室にファルデウスと霧切はいた。
 地図とレーダーを頼りに船を少しづつ進めてゆく。

「ファルデウス部長、連絡です。『N』から。」

 モーテルの時と同じ『N』なる人物からの無線連絡。
 未だ謎多き人物と連絡するファルデウス。果たして彼らは何者なのだろうか?
 その謎の断片は、彼の通話で明らかになる。

「こちら『F』。現在船は洋上を走っております。」
『そうですか……では到着次第、そこにある江ノ島盾子および江ノ島家の研究データの回収をお願いします。』
「しかし質問が。なぜ今になって……彼女が?」
『希望ヶ峰学園の爆破テロから続く一連の事件に、メサイア教団が関わっているからです。』
「いやしかし、あの爆破事件はただの機械の故障とガス爆発だと報道では……。」
『ザルディンと名乗る男から頂き、復元した学園監視カメラのデータ。そこに銃を持った黒い男が生徒か救助部隊であろう少年を脅し地下に向かっている映像が見られました。当時の学園内部には教師や清掃員といった大人がいなかった以上、この男は教団メンバー以外にあり得ませんよ。きっと彼が……。』
「その少年を脅して学園を爆破させた、と。しかしそれと江ノ島に何の関係が……。」
『もう一人いるんです。その時に学園に入っていった部外者が。きっと彼が秘密裏に江ノ島盾子だけを避難させ、その間に学園を爆破させたのでしょう。』

 この『N』の言っていたことは、当たっていた。
 事実、エミヤオルタは苗木誠を強迫して学園の地下に爆弾を設置させ、彼ごと希望ヶ峰学園を爆破させた。
 それと同時進行で当時教団メンバーだったデミックスが今後重要になると江ノ島を避難させた。これも合っている。

 間違っているとしたら、その詳細な動機、心境とその後どうなったのかとかだろう。
 証拠だけでは、細やかな心境までは分からないのだ。
 閑話休題。

「それでメサイア教団が一体何を聞き出したかを知る手掛かりとして、ジャバウォック島の研究所に向かう、と。」
『そうです。ジャバウォック島到着の後、即刻資料を回収して帰還するように。』
「分かりました。」

 無線の声は続ける。
 その声はどこか幼く、拙いながらもしかし歴戦の戦士のようにしっかりとした物言いだった。

『我々『SPM(Secret Provision for Messiah)』の目的は、現在活動しているというCROSS HEROESなる組織とは別個で『脱獄した”第三のキラ”改め”メサイア教団メンバー”の魅上照を筆頭とした教団の重要構成人の逮捕』及び『メサイア教団の完全解体』です。それをお忘れなく。』
「分かりました、では。」

 無線を切り、ファルデウスは外に出る。
 夜明けの太陽が、依然寒い海の空気を温めながら空を照らす。

「きれいな空だ……。」

 そう呟きつつ、空を仰ぐ。
 徹夜が続いているせいか、その眼はいかにも眠そうだ。

「敵が来たら知らせてください。私は少し仮眠を取ります。」
「はい。おやすみなさい。」

 ファルデウスとすれ違うように、スナイパーライフルを手に取った霧切が外に出る。
 その眼は穏やかながらも周囲の警戒を怠らないという彼とは異なっていた。
 明確な世界への殺意。温厚さを捨て殲滅するということだけを考えているという決意を感じる鋭い眼光だ。
 およそ高校生が出せるとは思えない目に、百戦錬磨の兵士すら狼狽える。

「き、霧切さん。」
「失礼ね、外の監視をするだけよ。」

 冷酷に突き放すような物言い。
 やがて定位置につくと霧切はスナイパーライフルを構え、外を見始める。

「メサイア教団……許してはいけない絶対悪。見つけ次第殺しつくしてやる。」

 ライフルのスコープ越しから、歯ぎしりしつつ睨む。
 その顔には、薄氷が如き鋭い殺意しかない。

28人目

「忌まわしき記憶の奥底より蘇る魔の者たち」

 ――メメントス。

「刈り取るもの」から逃がれるべく、下の階層に降りると、
あの不気味な鎖を引きずるような音はもう聞こえない。

「ふいー……もう大丈夫そうだね」

 パンサーが息を吐く。

「いや、待て。扉だ」

 目の前には、メメントスのさらなる奥底へ進むための扉がある。
左右のレールを代わる代わる走り去っていく地下鉄電車。ヒトの姿をしたシャドウ達が
続々と乗り込んでは消えていく。

「あいつら、何処に行くんだ?」

 首を傾げる悟空。メメントスに幾度となく潜った経験があるパンサー達にも
詳しいことはわからないと言う。

「おい、あの黒いモヤのようなものは何だ?」

 扉の前に浮かぶ黒いモヤのような何か。
それはまるで生きているかのようにうごめいている。

「あれは……」

 一同の注目の目に気づいたかのように、黒いモヤはゆっくりとホームの床に沈み込む。
黒いモヤの正体を見極めようと近づくと、それが突然、人の形へと変わった!

「うわっ!」

 驚いて飛び退く一同。

「!! あ、あれは……」
「フフフフフ……」

 モヤは分裂し、ガーリックJr、ジャイアントジオング、ラフムへと姿を変える。

「あ、あいつらは……!?」
「ふふふふふふ……」

 悟空やピッコロ、騎士ガンダム、カルデアの面々……
かつて彼らが倒したはずの邪悪な者達が次々と目の前に現れる。

「どういうことなんだ……まさか……!?」

 そう、彼らの記憶の中に封じられていた悪魔達が今まさに解き放たれたのだ!

「貴様らをここで消し去るためにやってきたぞ!!」
「お前達の命運もこれまでだ!!」

「そうか……! メメントスは集合無意識の具現。
ここにいる皆の過去の苦い記憶が形となって現れたのか!」
「私達が知ってるメメントスじゃそんな事ありえなかったけど……」

「忘れないで、パンサー。ここはその「私達が知るメメントス」じゃない……
あらゆる世界の事象を巻き込んで拡大を続ける特異点に存在するメメントス……
何が起ころうと不思議じゃない!」

 クィーンが勇ましく構える。他の面々も、すぐさま戦闘態勢に入った。

「ふん、少しばかりは驚かされたが、ガーリックJrなどが今更出てきて
どうなるというのだ?」
「オラもピッコロも、あん時よりもぶっちぎりに強くなってるんだぜ!」

「く、はははははははは! それはどうかな……? 
ぬううううううううううううッ……!!」

 小柄なガーリックJrの身体が、一気に巨大に変化する。

「な、何ッ……!?」
「嘘だろ……!?」

 タカを括っていたガーリックJrの戦闘力が、
悟空とピッコロの想像を遥かに超えるほどに上昇していた。

「ば、バカなッ……こんな事が……!!」
「はああああああああああっ!!!」

 筋肉隆々の巨人となったガーリックJrが、強力な魔弾を悟空達に放つ。

「くっ!」
「貴様ら!! 散れいッ!!」

 咄嗟にピッコロの声が飛ぶ。全員回避行動に移り、間一髪のところで魔弾を回避する。
激しい爆発が巻き起こり、壁や床が吹き飛んでいく。

「危な……!!」
「違う……! 俺たちが知るガーリックJrとはまるで桁が違う……!!」

「恐らく、あれはあなた達が知るものとはまた別の存在です。
あの怪物に苦しめられた時の記憶が、そのままメメントスの中で具現化された……」

「チッ……!」
「まあ、確かに初めてあいつと戦った時はオラとピッコロの二人がかりでもまるで歯が立たなかったもんなあ……」
「くそったれめ、あれから何年経ったと思っていやがる……」

 ガーリックJrが幼少期の悟飯の潜在能力によって異次元空間「デッドゾーン」に
封印されてからと言うもの、数々の強敵を撃破し、悟空やピッコロは当時とは
比べ物にならないほど強くなった。
しかし、その二人の自信を打ち砕かんばかりの強大な力を持つガーリックJrが
再び目の前に立ちはだかる。

「ヌウウウウウウンッ!!」
「うおっ!?」

 ジャイアントジオングがバーサル騎士ガンダムを踏み潰そうと巨大な足を振り下ろす。

「:::::z!!」

 絶対魔獣戦線バビロニアにて、ウルクの街を蹂躙した新人類・ラフム。
黒光りした爪による切り裂き攻撃が迫り来る。

「あーもう! またこいつらの姿を見る事になるんだなんて!!」

 地上のみならず、エレシュキガルが統治していた冥界にまで侵攻してきたラフム。
その圧倒的な数による暴虐に、エレシュキガル、
そしてカルデアも絶体絶命の窮地に立たされてしまったのは記憶に新しい。

「ハッ!」

ラフムの脳天に鎖付きの杭を打ち込み、息の根を止めたメドゥーサ。

「ギャギャガェェェェェェェッ……」
「はっ……!!」

「キキ……キキキキ……」

「b\r! b\r! jr@f 3d= cg@6sdw i:@o;uhr.!」 
「c;to wk8v@= ez-[yez-[y vgag@zw fo0q= vgr@lq@dw 
d@0d@0s 90opw b\r!」 
「ks@fz2@ru v/et@3:@o;uhu.! /fz2@ru edgt@uhu.d8ytyjw@ 
g942= m4jhi 7gz:\!」

 意味を介さぬ言葉の羅列を垂れ流すラフム達が、地下鉄の暗闇からわらわらと
湧いてくる。

「一匹じゃないとは思ってたけど……!!」
「うええ、気持ち悪ぅ……そんなのさっさと倒しちゃってよ~」

 徐福はエスカレーターの陰に隠れて怯えるばかりで、とても戦えるような状態ではない。
隙あらば別のフロアへ逃げ出そうとさえしているようだ。

「一体何しに来たのですか、貴方は……」

 ただただ呆れるだけのメドゥーサ。

「仕方がない、やるのだわ! マスターがいないから、
宝具の連発は控えるべきだけど……」

 こうして、メメントスの地下深くにて、忌まわしい記憶との戦いが
幕を開けるのであった!

29人目

「竜馬が来る」

「っ!?な、なんだ!?」
「じ、地震…!?」
黒平安京全体が大きく揺れ出すと、地面を突き破って巨大な機械の怪物が次々と出現する。
「ギャオオオオオオオオオン!」
「な、なんだあれは!?」
「まさか…機械獣!?」

「いいえ、あれは鬼獣ですよ」
「っ!」
声がした方を向くと、そこには安倍晴明の姿があった。
「っ!アイツは……」
「誰だアイツ?」
「なんかリンボと雰囲気が似てるような……」
「……奴は安倍晴明……我々の敵です」
「……ほう、初めて会う方や久しぶりに会う方が何人かおりますね……しかし、肝心のゲッターロボがまだ来ていないとは……せっかく決戦の舞台としてやつらと初めて戦ったこの黒平安京をわざわざ再現したというのに……」
「っ!そうか……この平安京を作ったのはお前か!」
「その通り」
「何故こんなことを!?」
「……全ては忌々しいゲッターロボ、そしてお前達CROSS HEROESと決着をつけるため……この黒平安京はその為の舞台に過ぎない……」
「そうか、なら話は早い」
「あぁ、今ここでお前を倒してやる!」
「いいだろう、まだ肝心のゲッターロボが来ておらぬが、やつとの戦いの前哨戦として貴様らを血祭りに……おや?」
すると突如として黒平安京の上空にワームホールが出現した。
「あれは……ワームホール?」
「けどなんで急に……」

「……やって来たか。流竜馬、そして…ゲッターロボよ!」

晴明がそう言うと、ワームホールから竜馬達の乗るゲッターロボが出現した。
「うぉおおお!でっかーい!」
「あれって…ゲッターロボ!?」

「……ってて、なんだ…?急にゲッタービーム撃ってきたと思ったら急に吸い込まれて……」
「お、おい!竜馬、隼人、ここってまさか…!?」
「どうした弁慶?…って、嘘だろ…!?」
「……間違いない、ここは紛れもなく黒平安京だ……」
「それに下の方を見たらCROSS HEROESのメンバーも何人かいやがる……どういうことだ…?」

「待ってたぞ!ゲッターロボよ!」
「っ!テメェは晴明!こんなところにいやがったか!」
「晴明だと!?」
「アイツ、また復活したのか!?」
「あぁ、どういうわけかあの世界でまた復活しやがったんだ」
「一度ならず2度も蘇るとはな……相当恨まれてるようだな竜馬」
「うるせえ!……ん?」
するとゲッターロボに続く形でナースデッセイ号も到着
「またなんかデカいのが来た!?」

「ナースデッセイ号、特異点に到着しました!」
「これは……」
「ゲッターロボの無事を確認、特異点に行った他のCROSS HEROESも何人かいるみたいだ」
「ナースデッセイ号……GUTSセレクトも来てくれたのか!」

「ほう、まさかゲッターロボだけではなく光の巨人も来るとは……もしやこの不思議な鍵に引かれたのか……」
そう言う晴明が取り出したのは、ウルトラマントリガーパワータイプのGUTSハイパーキーであった。
「っ!あれはトリガーの…!」
「特異点に飛んでいったのをアイツが拾ってたのか!?」
「ほう、これが欲しいのですか……でしたら、この我を倒して奪ってみよ…!」
「隊長!」

「……やむを得まい、ゲッターチーム、そしてここにいるCROSS HEROESの皆さん聞こえますか、我々はあの晴明という男が手に持ってる何としてでも取り返したい、どうか力を貸してくれないか?」
「なるほど…大体わかった」
「なんかよくわかんないけど…もちろんいいよ!」
「そんなに大事な物なら、全体に取り返そう!」
「こっちもいいぜ、どうせアイツをぶっ飛ばすことには変わりねえからな!」
「皆さんありがとうございます!」
「流竜馬、そしてゲッターロボとCROSS HEROESよ。貴様らとは今日ここで決着をつけさせてもらうぞ!」
「上等だ!今度こそテメェとの腐れ縁、ぶった切ってやるぜ!」

30人目

「Epilogue:大喧嘩!? 咲夜vs.ナポレオン」

 紅魔館 庭園にて

「はぁ!!」

 数十本のナイフを、巧みな手さばきと手練れでしか出せない速度で放つ。
 全身の関節を駆動させ、その速度によって放たれるそれは徹甲弾のそれにも等しい。
 対するナポレオンは手元の大砲を構え、高火力の砲弾を発射する。

「よ、予想通りと言えばそうかもだけど……大砲の火力じゃ私は止められないわ!」
「来るか、だが!」

 その刹那、ナポレオンが構える。
 自身の持つ巨大な大砲から、無数の小型砲弾を放つ。

「機関銃!?」
「撃ってくるのが砲弾だけだと思うな!」

 間一髪のところで飛び交うナイフを撃ち落とし、撃墜させてゆく。
 その発射速度たるや、まるで戦闘機のミニガンが如き連射。
 当然のことだが、大砲にマシンガンのような連射機能はない。だのに。

 咲夜は、懐中時計を懐から取り出し構える。
 ナポレオンは警戒しつつも、砲口を懐中時計に目がける。

「確かに強いけど、それで勝ったつもり!?―――『幻象「ルナクロック」!!』」
「なっ……!?」

 その刹那。英霊は体感する。
 凍てつく時間。凍り付くが如く動かぬ身体。
 認識こそできるも、己が躰が固まり――――無数のナイフを顔に突きつけられるという恐怖が待つ。

「あなたの力は分かった。でも……私にはあなたが信用ならない。その体格も顔も性格も、私の知るナポレオン・ポナパルトではない。」

 5秒先の死が、英霊ナポレオンを襲う。

「これで終わりよ――――能力、解除。」

 迫りくる死。
 もはや避けようのない宿命。

「おっとあぶねぇ!!」

 しかしすんでのところで、これを回避した。
 ナポレオンは即座に大砲を構えなおし、今度は魔力投射によりビームを発射する。

「何でもありね!その大砲!!」
「まだまだ、俺の『勝利砲』はこんなもんじゃねぇ!」

 掲げるはナポレオンの武勇の象徴「勝利砲」。
 

「もっと味わってみるか!!」
「じゃあやってみたらどう!?最も、効けばの話だけど!!」

 銀色のナイフの群れと、勝利砲の輝きがぶつかり合い炸裂する。

「かくいうお嬢さんも、案外楽しそうじゃあないか?」
「……どこまでもいけ好かない男ね!それでナポレオンのものまねのつもり!?」
「何せ俺は――――人の願いの具現らしいからな!!こういう見た目もあり得るだろう!」

 ―――人の願いの具現。
 人の思い、人が持つ「ナポレオンはきっとこんな見た目だろう」という想像と妄想、そして夢が渾然一体となって具現化した、夢物語が如き存在。
 事実として、カール大帝の幻想の具現たるシャルルマーニュなどがそう言う存在として現界しているため、こういうこともありえるのだ。
 そして、その該当者がアーチャー:ナポレオンである。

「――――――あなた、最悪に出鱈目よ!!」
「ハッハッハッハ!!そうだな!!」

 眼前の理不尽を前に、捨て台詞でも吐き捨てるかのように言う。
 対する快男児、開き直った子供のように笑いながら自身の出鱈目ぶりを『そういう物だ』と言い切った。
 やがて攻撃をやめ、咲夜は今までの無礼を謝罪する。

「もういいわ、私の負けよ。あなたはもう『そう言うこともあり得る』ということにするわ。」
「ウィ、こっちも攻撃して悪かったな。」
「ちょっとあんたら!一体何やってんのよ!?」

 いよいよ我慢できなくなったのか、霊夢が門を通り庭へと向かう。
 戦闘の疲れをもものともせず、清楚なるメイドが迎える。

「あら、霊夢と……その背後にいる方々は?」

 門の前で今までの様子を見ていた彩香たちを指さす。

「あの子たちは、紫に頼まれて悪霊退治をしに来たのよ。ついでにあの赤い角の鬼も知っているようで、そいつも倒しにね。」

 一通りの事情を説明し終えた後、納得した咲夜は背後にいる彩香達を中にいれようとする。

「―――事情は分かりました、お入りください。お嬢様のところまで案内します。」
「おっと、まだお客さんがいるようだぜメイド長!」

 と、ナポレオンが謎のセリフを言う。
 客がまだいるのかと周囲を見渡すも、そうではないようで。

「お客って……まだいるの?」
「そうじゃない。あんたの後ろだ!」

 その瞬間、3人は見た。
 紅魔館の庭園、その一区画から出現する「謎の穴」を。

「出たわね……悪霊!」
「どうする?まだ続けるかい?」
「くっ……今はこいつらの掃除を!」

 這い出るかのように出現する悪霊、総勢20体。
 全員大きさや第三の腕の細かな形状などは違えど、大体の見た目は同一。
 当然、と言わんばかりに門の外にも悪霊が出現する。

「これが、悪霊!?」
「思った以上に気味が悪いな……来るぞ!」

 幻想郷に出現し、初めて邂逅する『悪霊』の群れ。
 果たしてCROSS HEROESと咲夜、そしてナポレオンは勝利できるか!?