プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:4

117 いいね
完結済
3000文字以下 30人リレー
8か月前 1018回閲覧
  • CROSS HEROES reUNION
  • TwitterタグはCROSS_HEROES_re
  • クロスオーバー
  • 二次創作
  • 参加コード限定
1人目

「Prologue」

【黒平安京・CROSS HEROES編】

 坂田金時の命を賭した行動によって丑御前の支配から脱した源頼光。
藤丸立香の令呪による魔力供給によって復活し、
改めて黒平安京打倒に動き始めたカルデア一行。
そして、さらにお供を従えたドンモモタロウ率いる「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」、
時の運行を乱す偽物を追って現れた時の列車「デンライナー」と
「仮面ライダー電王」も乱入し、黒平安京を舞台にした「鬼退治」が今、始まった。

 一騎当千の仲間たちと共に、次々と魑魅魍魎を斬り伏せていくCROSS HEROES。
黒平安京を閉ざす羅生門を破壊し、安倍晴明が鎮座する最奥部へと進む。

【メメントス編】

 拠点地下に発生したメメントスの調査のため、フォックス、パンサー、クィーンを
メインとし、CROSS HEROESから孫悟空、ピッコロ、バーサル騎士ガンダム、
カルデアからエレシュキガル、メドゥーサ、徐福を伴ってメメントスへの潜入を開始した。
最初のうちはシャドウと遭遇して戦闘になっていたが、徐々に敵の数が減っていき、
ある区画に到着するとシャドウの発生が完全に止んだ。
そして彼らの眼前には巨大な扉が存在した。
そこに立ち塞がったのはガーリックJr、ジャイアントジオング、ラフム……
かつて一同が苦しめられた強敵たちであった。
メメントスとは人々の集合無意識が寄り集まった場所で、一種の異世界。
過去の苦い記憶が形を得て襲い来る事も起こり得るだろう。

 さらなるパワーアップを果たした旧敵達によって大ピンチに追い込まれるが、
戦いの中で絆を育んできた仲間達との信頼が力となり、
悟空とピッコロは徐福の不死殺しの力を借りてガーリックJrを、
メドゥーサの宝具の力を借りたバーサル騎士ガンダムはジャイアントジオングを、
バイクとしても活用できる自身のペルソナ・ヨハンナを駆るクィーンと
冥界の女主人・エレシュキガルの宝具によって
ラフムの大群を冥界送りにし、強敵たちを見事撃破。

 戦いが終わったあと、一行は薄暗い通路を進んでいくと、再び巨大な扉を調査する。
おそらくこの扉の先に何かがある……そう確信した悟空たちは迷わずその扉を調べるも、
固く閉ざされてビクともしなかった。
その代わりに、発見した宝箱から「ポタラ」を入手する。
これ以上先に進むためには、日を改めて再びこの区画を調査する必要があると悟った
一行は、メメントスから脱出し、改めて探索の計画を練り直すのであった。

【黒平安京・心の怪盗団編】 原文:AMIDANTさん

 丑御前を鎮めたスカル達に待っていたのは、地獄だった。
百鬼夜行の群れ、魑魅魍魎、そして鬼獣。 瘴気に塗れた黒平安京の本性が、牙を剥いた。 各々の力を使い、巧みに戦い抜くスカル達。 次々と倒れる鬼。 しかし、巨大な鬼獣相手には流石に分が悪かった。 万事休すかと思われたその時、アビダイオーが現れる。
スカル達はアビィと共に、アビダイオーで戦うのであった。

【幻想郷・DD編】 原文:AMIDANTさん

 霊夢に叩かれ撃沈していたチルノは、怒り心頭だった。 霊夢に一泡吹かせる為に、
追いかけるチルノ。 しかし途中で悪霊の奇襲を受け、危機に陥る。
あわや一乙かと思われたその時、転移してきたスネークとウーロンにより助けられた。
彼等は博麗神社の方角をチルノから聞き出し、無事に辿り着く事に成功。
その後、先遣隊のコンテナを野戦ベースに変形させた。
通信機が外部と上手く通信出来ない問題を解決させる為に「河城にとり」を探す事を
霊夢達に任せ、人里で情報収集にあたるスネーク達。 そこで、リクと出会う事になる。
リクと共に人里で悪霊の迎撃態勢を固めるスネーク。 一方で、ウーロンはトランスボールなるものについて調べていた。
この珠がウーロンを次なるステージへと昇華させる事になるとは、夢にも思わず。

【幻想郷:守矢神社調査編】原文:霧雨さん

 紅魔館に出現した、悪霊の群れ。
これを退けたCROSS HEROESたちは、紅魔館の主レミリアと出会う。

 ソロモンの指輪の譲渡を条件に、幻想郷にあるとされる「守矢神社」に出現した
謎の男への接触と悪霊の根絶を目指すことになった。
人理の英霊「ナポレオン」を仲間にし、まずは間欠泉と妖怪の山へと向かい始める。
初めに向かった間欠泉には謎の大穴が開いていたが、悪霊の気配はないようだった。

 その後、守矢神社に向かう霊夢たちはそこで謎の男の正体でもあるもう一人の
人理の英霊「ディルムッド・オディナ」と接触する。
目的でもあった彼との接触を果たした霊夢たちはそのついでに「悪霊」について
守矢神社の神「八坂神奈子」に聞く。

 予想は当たり、手がかりは知っているようだがその為には
「外の世界から来た人間、その力を証明せよ」という。
悪霊を止め、その裏で暗躍するゼクシオン達を止める為にもCROSS HEROESは
これを受諾した。

 かくして、悪霊の根城の手がかりを賭けた三番勝負が幕を開ける―――!

2人目

「遭逢:因果の縛り/幻想郷調査 四の二:人里要塞化計画」

銃声と金属音。
絶え間無く鳴り響く、戦いの音色。
ジョーカー達の見据える先にある開きかけの扉から、それは流れていた。
自分達の起こした物では無い戦禍の気配に、一同は困惑の色を浮かべるばかりだった。

「何や、先に来とる奴がおるんか?」
「分からん。とにかく、様子を探るぞ」

意を決して、モルガナが扉に手をかける。ゆっくりと開かれていく扉の隙間。
聞こえる戦いの音は大きくなっていき、やがて薄暗いフロアが見えてきた。

「なっ…!?」

そこから覗く光景に、一同は困惑する事になる。
フロアの中央に立っていたのは、クロウとヴァイオレット。
それは良い、問題は二人が相対している相手だった。

「_そこを、どいてくださいっ!でないと、私は!!」
「クソが、面倒くさい事になりやがって!」

それは、お互い同士だった。
クロウとヴァイオレットの両者が、必死の形相でしのぎを削っている。
剣を、銃を、ペルソナを用いて、二人は、本気で殺し合っていたのだ。

「クロウ、ヴァイオレット…!?」

一瞬だけ見えた、二人の表情。
そこにあった感情に、ジョーカーは見覚えがあった。
ひたすらに深い憎悪と嫌悪感だ。
それが彼等の瞳に宿っていた。
ただ、それを互いへ向ける理由にはまるで検討が付かなかったが。

「あれ、止めないとマズくない!?」

キン肉マンの言葉通り、意図はどうあれ止めるべきだろう。
そう思い、踏み出そうとした瞬間、部屋の奥から声が聞こえた。

「_必要無いよ」

声の主は、部屋の奥に立った白衣を着た眼鏡の男性だった。
聞き慣れた、懐かしい声。
男はこちらを見ると、軽く手を挙げて挨拶をした。

「丸喜先生…」
「久しぶり、皆。こんな形で再会したくは無かったけどね。」

それは、嘗て蓮達が通っていた学校の元教師であり、認知訶学の研究者、丸喜拓人だった。
何故、彼がここに居るのか?疑問はあったが、そんな場合ではない。

「一体、どういうつもりだ?二人を止めるなと!?」

ジョーカーが激昂すると、丸喜は困った様に肩をすくめた。

「君達は、勘違いをしているみたいだけど、あれは必要な戦いなんだ。特に彼女、芳澤さんにとって。」

丸喜は、視線だけをヴァイオレットに向ける。

「先、輩…?」

彼女の方もジョーカー達に気が付いた様で、揺れる眼孔を見開いた。
だがそれも束の間、すぐにヴァイオレットは再び鋭い目付きに戻る。
その視線は、クロウへとぶつけられていた。

「くぅ…!どかないのなら!!」

ヴァイオレットが銃口を向け、引き金を引く。
クロウはそれをかわすと、逆にヴァイオレットの懐に飛び込んだ。
そのまま、鳩尾へ膝蹴りを打ち込む。
苦悶の声と共に、ヴァイオレットの身体がくの字に折れ曲がる。
だが、彼女はそれでも諦めなかった。
腰のホルダーから拳銃を引き抜く。
拳銃を、至近距離で撃ちまくる。
さながらマシンガンの如き乱射。

「喰らうかよぉ!!」

だが、その悉くをクロウは剣で弾いた。
火花を散らしながら、銃弾は全て床に落ちる。
ヴァイオレットが、唇を噛んだ。

「邪魔、しないで…!」
「こっちのセリフだ!」

いがみ合い、睨み合う二人。
その二人を前に手出しをするなとはどういう事かという疑問に突き当たるのは、当然の帰結だった。

「何故争わせる?」
「それこそが、彼女を救う唯一の方法だからだよ。」

丸喜は、悲しげな笑みを浮かべた。
そこに自嘲の色が混じっているのを、ジョーカーは見逃さなかった。
それに、救うという言葉が妙に引っ掛かった。

「巫山戯るな。」
「本気だよ。芳澤さんは彼女自身の意思で明智くんを倒そうとしてるのさ。」

冗談みたいな話だが、そうは思えなかった。
何より、丸喜が冗談を得意としない事をジョーカー達は知っていた。

「何の為に?」
「芳澤さんが、かすみである為にさ。」

『かすみである為に』
どういう意味か、まるで分からなかった。
彼女は、ヴァイオレットは元々芳澤かすみではないのか?
丸喜の言わんとしている事が、まるで理解出来なかった。
しかし、この場で戦いを止めなければならないという事に変わりは無かった。

「どうあれ、あの二人は止める。」

そう言うと、ジョーカー達は駆け出す。
そうしてクロウとヴァイオレットの間に割って入ろうとした、その瞬間だった。

「「邪魔だ。」」

二人の声が重なった次の瞬間、クロウ達とジョーカー達の間を別つ様に巨影と子どもが立ち塞がった。

「ゲッ、武道!?」
「如何にも。」

片方は一度立ち塞がった強敵、ストロング・ザ・武道。
もう片方は。

「お前は…」
「初めまして。」

かなりの小柄な体型には、他でも無い彼の面影があった。
黒い服、金色の帽子と眼を除けば、彼と瓜二つ。

「_アビィ?」
「そしてさようなら、過去の英雄様。」

そして彼とはまるで似ない冷めた声と共に、風切り音が鳴った。



氷の翼が、風の尾を引いて降下していく。
ヒュウ、と風を切り、瞬く間に地上へと降り立つ。
そうして翼の主、チルノは人里の一角へと着地し、無精髭を生やした男、スネークに迎えられた。

「撮れたよ!写真?って奴!」
「どれ…ははっ、よく撮れてるじゃないか。良くやったな!」
「当然、サイキョーだからね!」

そう言って胸を張り、してやったりとドヤ顔をするチルノ。
チルノが差し出したカメラには、人里を上空から写した写真が収められていた。
それを満足げに見つめると、スネークは一息付く。
良く見れば、写真に写る人里は各所が崩落していた。

「こりゃ酷いな。男手が大勢やられて被害も続いたと聞いた時から察してはいたが。」
「悪霊の被害を減らす事で精一杯で、修理にまで手が回ってないのが現状だ。」
「だろうな。」

背後から掛けられた声。そちらを向くと、そこには慧音の姿があった。
険しい表情で、彼女は続ける。

「このままでは里の復旧どころでは無い、滅亡だ。そうなれば、幻想郷はお終いだろう。」

それは、決して大袈裟な話では無い。
人は幻想郷においてヒエラルキーの最下層の存在だ。
だが同時に食物連鎖における土台である事も意味する。
人の畏れが、幻想郷を幻想たらしめる。
故に人という土台を失えば、幻想郷は比喩でも無く滅ぶのだ。

「そうだな、今はまだ余裕がある。だが、いずれ限界が来るだろう。」

それは、誰の目から見ても明らかだった。

「一先ず、この写真を元に要所を作る。此処を反撃の要とするぞ。」

3人目

「幻想郷三番勝負 勝負その一:天宮月夜 vs. 東風谷早苗」

「俺も行こうか?」

 ナポレオンが月夜を引き留める。
 無理もない、相手は神にも等しい存在。人間ごときがそう簡単に勝てる代物とは思えないことを彼は肌で感じていたのだ。
 しかし月夜は。

「いやいい。もし俺が駄目だったら任すわ。」
「お、おう。」

 月夜はナポレオンたちを見た後、早苗の前に立つ。
 謎の自信を持って眼前に立った月夜が、早苗には「勝算がある」ように見えたようで。

「そ、相当な自信があるそうですが……人間が、現人神に勝てるとでも?」
「自信?正直あるにはあるが……これは力比べだろ?余計な血を流したくない。どちらかが一撃当てたら勝ちにしてくれるか?」
「……いいでしょう。」

 連射型ボウガンにカートリッジを装填する。
 装填した矢に鏃はなく、代わりにダメージを与える気のないコットンと布でくるまれたクッションが装填されている。

「準備は出来ましたか?さぁかかってきなさい!」

 早苗はその一言と共に、無数の光り輝く弾幕を放つ。
 紅魔館で霊夢や咲夜の弾幕を見たが、それとは別な美しさがある。
 まるで、打ち上げ花火を眼前で炸裂させられたかのような、美しくも苛烈な攻撃。

 ああ、これが弾幕か。これが現人神か!
 これが、幻想郷の本懐か!!

「あんな量の弾幕……兄さんが避けれる訳が!」
「はふぅー。」

 心配する彩香とは別で一息、月夜は迫る死の脅威を冷静に見ている。
 戦場を分析する指揮官が如き目で弾幕の軌道を見ている。

「弾速は遅い……そして通過できる隙間がある、処理できなくもないな。」

 月夜は走る。
 弾幕の網目を抜けるかのような動きをしながら、まるで大地を駆け、攻撃を回避しながら迫る鼠のように駆け抜ける。
 その手には得物であるボウガン。しかし弾幕を張り続ける早苗とは対照的に、月夜は一発も攻撃をしてきていない。

「攻撃してこないのか?」
「こっちは弾幕が撃てねぇんだよ!羨ましいわ!!」

 羨望と嫉妬をぶつけつつ、月夜はひたすら攻撃を回避する。
 早苗は慣れているせいか体力が尽きる気配がないが、月夜には少しずつ疲労が見え始めてきた。

「体力が……これじゃジリ貧だな。仕方ねぇ、うまく行けるかどうかだが練習してたアレやってみるか!」

 自分に言い聞かせ、自分で肯定する。
 コキン、コキン。肩を動かすたびに関節が鳴る。
 そして一言、月夜は挑発する。

「早苗、お前に人間が起こす奇跡ってのを見せてやるよ。」

 挑発。
 奇跡を人間の手で起こす、という早苗に対する宣戦布告にも等しい言葉。

「え……?何を言って……?」

 即座に浮かぶ疑念。
 疑念は次第に傲慢な怒りに変わる。

「そこまで言うなら……秘術『グレイソーマタージ』!」

 詠唱される奇跡。
 月夜の眼前の弾幕が濃くなる。

 星の形に整列された無数の弾の軍隊が迫りくる。
 さっきのように回避行動を取ろうにも、その難易度は人間である月夜にはかなり難しい作業となっている。

「それで勝ったつもりか!」

 精一杯の強がりを言い放つ。しかしその言葉には、妙な重みがある。
 それを証明するように、人/神は、見た。

「ふん!」
「嘘ッ!?」

 月夜の身体をグレイズする弾幕の雨霰。
 事実として月夜には一撃も当たっていない。

 あんな高密度の弾幕花火をすり抜けることが人間にはできるのか?と神奈子の表情に疑念と興味が浮かび始めた。



 ――――迫る弾丸を『何の道具も使わず、己の力のみ』で回避することは、決して不可能ではない。
 その仕組みとしては「肩甲骨の動きをうまく制御し、人間の急所である正中線を弾丸の進行方向からずらす」ことで音速の速度で飛ぶ弾丸を回避することができる。

 当然のことだが、訓練を積んでいない一般人には超高難易度の技術であり「こんなのできるわけがない、ファンタジーの産物だ」という者もいる。
 そう言われるのも仕方がない、道具なしの弾丸回避はそこまでの難易度なのだ。

「すり抜け!?」
「だ、弾幕が……月夜の身体をすり抜けた……だと!?」

 迫る弾幕をすり抜けながら迫る。
 ただの人間が神々ですら驚嘆する力。

「いや違う!あの動きは!!」
「ああ……避けている!」

 霊夢、ペルは見逃さなかった。
 月夜の、特に肩や腰の動きから来る行動を。

「はは……避けれてるかい?」

 結論から言うと天宮月夜は先述の技術を、何の魔術も何の奇跡も使わずに『弾幕を回避している』のである。
 勿論これは力比べで、殺傷の意志は早苗にはない。しかし放っているのは弾幕。いくら速度に差があっても命中すれば大怪我は免れない代物だ。

「イシュメールさん達に頼んで練習してたが……うまく出来てるようだな!」
「練習って……すごっ!」

 早苗も舌を巻く、月夜の技術。

「すげぇだろ……って危なっ!」

 だが、まだ身に染みるほどではないのか危ない一面もうかがえる。
 しかし月夜はあきらめない。
 ボウガンから数本、牽制がてらの矢を放つ。

「少しはできるようだが、戦線は拮抗している……どっちが先に動くかだな……!」

 神奈子の言う通りだ。
 お互いの攻撃は当たらない以上は、どれだけ苛烈でも拮抗状態になるのは必然。

「そろそろ終わらせるか!」
「上等です!奇跡『白昼の客星』!!」

 決着が急激な速度で起動する。
 今度は通常の弾幕だけではなく、まるで輝く星の如き光線が飛んでくる。

「一個だけ持ってきて良かった……!」

 投げつける爆弾――――閃光弾が炸裂する。
 月夜は炸裂する閃光を即座に防御する。

(後は……!)

 早苗も一瞬眩むが、奇跡の力か弾幕を放ち続けているうちにで慣れていたのか即座に立て直す。
 だが、その刹那の油断が、針の穴ほどの隙間を捉えさせてしまった。

「……消えた!?」
「閃光弾が効かねぇのは分かっていたが!お前の、負けだ!」

 捉えられた隙間に銃口を突き付ける。
 弾幕の絨毯に穿たれた針の穴を、一矢という名の針が貫徹する―――!



「あいたっ!」
「どうだ、合格か?」

 月夜は、神奈子の顔を見る。
 彼女は驚嘆をにじませた、渋い顔をしながら早苗に敗北を告げた。

「早苗、あいつの勝ちだ。」
「そんなー。」

4人目

「スーパードクター・A ~ 医神と呼ばれた男 ~」

「ふぃー、やっと戻ってこれたなぁ」

 メメントスから現実世界に戻ってきた悟空たち。目の前にはイリヤ、クロエ、美遊の
プリズマトリオが立っていた。

「オッス! 戻ったぞ」
「わ、ボロボロ。おじさんたち、大丈夫?」

 クロエは心配げに、ボロボロの衣服で現れた彼らに声をかけた。

「問題無い。しかし、激しい戦いだった……」
「ええ。まだまだ我々も鍛錬が足りませんね」

 ピッコロとバーサル騎士ガンダムが答える。

「ところで、ベジータは?」
「それが……」

 クロエやイリヤは顔を見合わせ、バツが悪そうに答える。

「――黒平安京?」
「あれの事です……」

 美遊が指し示す先に立ち昇る、ドス黒い禍々しい霧。

「は?」

 黒平安京は、まるでその名にふさわしい暗黒の都に変貌していた。

「マスターやマシュさん、ベジータさん達はあそこに……」
「何と言う邪悪な気だ……」

「こうしちゃいらんねえ、オラ達も……」
「待て。そんな傷だらけの身体で僕の前を行くつもりか?」

 今にも駆け出さんとしていた悟空の前に、医神・アスクレピオスが飛び出してくる。

「お前たちには診察と治療が必要だ。隅々まできっちりとな」
「うっ……」
「治療が終わるまで何処へたりとも行けると思うな」
「んな事言ってる場合じゃ……」
「ドクターストップだ」

 悟空とアスクレピオスの睨み合いが続いたが、最終的に折れたのは悟空だった。
患者を救うことを至上の使命とする彼を前にしては、何人も逆らうことは出来ない。

「……分かったよ」
「よしよし、聞き分けのいい患者は長生きするぞ」

「メメントスに長時間滞在すると、肉体のみならず精神にも見えない疲労が
蓄積すると聞きました。
悟空さんの気持ちも分かりますが、ここはひとまず休息すべきでしょう」

 クィーンの言葉に、悟空も不承不承ながら同意した。

「そうだな……またやべえシャドウが湧いて出てこねえとも限んねえし」
「とりあえず今は休みましょう。私達も疲れたわ……」

 疲労困憊といった様子のパンサーが溜息を漏らす。

「あー、腹減った……」
「何か作りましょうか?」
「頼む」
「食うのは診察が終わってからにしろよ」

 こうして、メメントスから拠点に戻った一行は小休止する事になった。
黒平安京の戦いは、今まさに最高潮を迎えようとしている……

5人目

「幕間:悪霊メタモルフォーゼ」

 ????? 廃棄孔

 まさに夜の闇よりも昏い深淵。
 深淵よりも暗い大穴から、無数の赫い光が這い上がっていく。

「そろそろかのう。」

 廃棄孔の主、焔坂百姫とゼクシオンは見つめていた。
 研究所たる『管制塔』にて、悪霊の無数の誕生を無垢な子供のように見届ける。

 悪霊どもが抱える赫い光は背筋が慄えるほどの如きおどろおどろしい咆哮をあげ、廃棄孔の上空へと浮かんで行く。
 まるで出撃する無数の戦闘機のように。

 だが、何よりも『異常』だったのが。

『―――――!!』

 赫い光のなかでもひと際大きく、かつ禍々しく輝く怪物がくぐもった声で呻る。
 彼らの心臓にして超小型魔力炉―――通称『赤核』のいびつな輝きは、まるで新たなる命を祝福するように光輝く。

「とりあえずは生まれたが、案外長かったな。」
「いえ、一度こうなれば後は早いですよ。」

 夜の薄雲、その奥で輝く月光のようにくすんでいる赫光を祝福する。
 変質した光、肥大化する悪性。
 それはメサイア教団の崇高なる目的のために蠢く。

「祝うか?是なる悪霊、その第二世代の誕生を。」
「これから進化していく対象。祝うまでもないですが、そこまで言うなら赤飯くらいは炊いておきましょう。」
「むっ、わらわは嬉しいぞ。焦げた赤飯を用意するがよい。」
(赤飯は焦がせる派かぁ……。)

 天へ天へと上りゆく悪霊の軍勢。
 焔坂は満足げに、されど歪んだ愉悦を交えて嗤う。

「奴らも相当に頑張っているようじゃが、たとえここが分かったとしてももう手遅れな状況になっている。悪霊の増産体制はすでに整い、そして。」

 ゼクシオンも同じように赫い光に愉悦を覚える。

「何よりこの悪霊の本質を、彼らは何もわかっていない。」



 迷いの竹林

「スネークさんに『戦闘で負傷した人の為に、薬とか応急処置できるものをいっぱい持ってきてくれ』と頼まれここに来たはいいけど……。」
「なんでお前なんかを案内しないといけないウサ。」
「お前ここによくいるんだろ?お前が適任だからだ。」
「素直に言えばいいのに、『近くにいたから』って。」

 スネークに頼まれたリクは、少し前に出会ったてゐと共に幻想郷の『病院』である『永遠亭』に向かうことになった。
 しかしてリクには、どうにも腑に落ちない。

「しかし……どうしてこんな山奥に『病院』が?」
「主が訳アリなんだウサ。事情は聞かないでほしいウサ。」

 他人には決して話せない、相当な事情。
 触らぬ神に祟りなし。深入りすれば痛い目に遭う異常、沈黙するしかない。

「そっか……で、それじゃ病院として機能しないからお前はよく案内していると?」
「怪我してたりとかの理由があればねウサ。あ、でも最近は人間の里にも行って薬渡していたりしているウサよ?」
「でも今回は量が量だ。頼むぜ、てゐ。」
「はいはい。ちゃんと案内してやるウサ。」

 2人は先へと進む。
 その時、竹林の奥から何かが出現する。

「あれって……最近見かける『悪霊』!?」
「いや違う!なんだ、こいつは!?」

 2人が目撃したのは、悪霊。
 しかしてその姿、今まで2人が見たものではなかった。

 体格は肥大化し、幻影が如く塗りつぶされその形が見づらかった貌が更なる異形のものとして変質、頭部であろう部位から生える角も大きく肥大化している。
 両腕も枯れ枝のような心もとない細さから伸縮性と柔軟性、強靭さを持つ薄刃の獲得に成功。ないにも等しかった左腕もアームが付いたパイルバンカー状に変形している。
 そして、背より生える『第三の腕』は大鎌から針の如き鋭さを持つ槍として変質している。

「例の悪霊が変質……いや『進化』……している?」
「こんな妖怪……見たことない!」
「俺の後ろに隠れろ。」

 てゐを背後に移動させ、リクは謎の悪霊に戦闘を挑もうとする。

「うぉおお!!」

 連続で斬撃を放つ。
 しかしその全ては空を切るばかりで、悪霊はまるで空中を舞う紙切れのように浮かび上がる。

「避けている!?」
『――――!』

 回避した挙動に合わせ、左腕で掴みかかる。
 リクは悪い予感を覚えたのか、キーブレードから氷の魔法を放つ。

「ブリザガ!」
『―――、―――――!』

 後方に下がりつつ、掴みかかろうとする左腕に氷魔法で弾かんと攻撃する。
 しかして悪霊は氷の魔弾を、左腕の根元にある針らしき部位で刺突、逆にはじき返して消失させた。

 ―――もしもあの左腕で首をつかまれ根元の針で喉を刺突されたとしたら、リクともいえど間違いなく即死していただろう。

「危なっ……!」
「―――――!!」

 嘲弄しているのか、或いは威嚇しているのか。
 悪霊は曇った咆哮をあげる。

 そして、まるで蛸が墨を吐くかのようにその躰を覆う油状の何かを放つ。

「あっ……!」

 即座によける2人。
 謎の油はその場に黒々と残っているが、放った主である悪霊はもう、その場からいなくなっていた。

「いなくなった?」
「何だったんだウサ?」
「例の悪霊だ。しかもこちらの攻撃も回避してきたし……本当に、時間経過で強くなってきていくのか……!」

 まるで最新鋭のCPUでも組み込んだのかとでも言わんばかりに、性能が上がった悪霊の『進化系』。
 リクは、二つの意味で狼狽する。
 一つは『さっきの悪霊が人間の里に出現したら、果たして彼らは勝てるのだろうか』と。
 いくら武器を手に入れたとしても、まだまだ彼らは戦闘の素人。相手は悪霊の進化系。勝てる確率はお世辞にも高いとは言えないだろう。

 そしてもう一つは『実は解決を急がないとマズい』という点。
 ここまで進化が早いとは思わなかった。さっきの『進化した』悪霊も今は個体数が少ないのかもしれないが、急いで対策を講じなければそう遠くない未来、幻想郷は進化した悪霊で飽和し、崩壊するだろう。

「先を急ごう。永遠亭はこの先でいいんだな?」
「ああ、まっすぐ進めば着くウサ。」

 しかし、深く考えている時間はない。
 今やるべきことは眼前の目的を達成させること。
 リクは眼前に見える永遠亭目がけて走っていった。

「うーん、主にこれ持ってったら褒めてもらえるかな?」

 てゐは残った油状の何かを木の枝にくっつけて、そのまま持っていた瓶に突っ込み持っていった。

6人目

【星乃 雪のもの拾い癖】

さてと、皆さんはご存知だろうか。
星乃雪のもの拾い癖を・・・
え?知らない・・・?
だって僕も初めて知ったし話は戻すが前回、雪はこう言っていたのだ

半分おふざけ感覚で「おら氷結の街出身」と言っていたがこう見えて、ちゃんとした氷結の街出身者なのだ

少し覗いてみようでは・・・

その頃、再び思念体との戦闘終了していた

《エピメテウスの塔 西塔51F》

「GV君、GV君、コレコレなにコレ?」

「これは、あんぱん・・・だね」

「あんぱん?」

永遠に続く氷の街で生きてきた異端者なのか、物の名前を知らないのだ。
目に見える物全てが新鮮で新しく見えているらしい

「え、雪さんあんぱんをご存知でない?仕方ないな、牛乳と飲むが良い!」

またしても何処からか取り出した牛乳を取り出す、もちろん品質最高クラスというのが謎度を加速させる

「ん。分かった、いただきまーす!」

「おい、こんなところで食べると敵が寄ってくるぞ?」

ムー君の言っている通り、ここはまさに戦闘フィールドである。
しかし雪はお構い無しだった。
何故なら、全部凍らせればOKだからである

「夢美、飴玉を見つけたぞ!」

「エンジェルドロップス?初めて見るメーカーだけどまあ美味しいならいいや・・・」

夢美、時々飴を求めることがあるらしいので正直助かるな。

「なあなあ、むー君これ丼だよね?」

「スタミナ丼?なんでそんなもんあんだよ」

「やる」

「え、寝起きで・・・丼?お腹すいてるから食べるけど」

本当になんでこんなところに、丼があるんだ…

「おお、太陽!これなんだ?」

「シュークリームだ、お前が見つけたんだお前が食べな」

「(もぐもぐもぐ)し、幸せだ・・・」

いや、なんでもあるなエピメテウスの塔は。
「いや、敵が何か落としていくからそれを拾ってるだけだよ」
よく見つけるな!?

「雪さんは、一体誰と話しているんだ」

「ナレーターと」
「今すぐやめなさい」

そもそもなんで、こんなに物を知らないのかというと人がいない氷結の街には"物を教えてくれる大人"の存在を知らない
正確には存在を知ることなく星乃 雪以外全員いなくなってしまったというのが正しいらしい



そんな中あらぬ強敵と戦うことになった

『気をつけて!思念体が一致団結して巨大なナニカになっているわ!』

「一致団結だと・・・?」

「一揆でも起こした?」

モルフォが警鐘を鳴らしたのはすぐに分かった思念体が集まり巨大な敵として現れてたことに

「(はぁ・・・!?こんな敵、居たっけ!?)」

「何コイツ、今までのチョロいヤツらより強くな〜い?」

「うん、そうだね。夢美、気をつけて」

「ならば虎の子よん!第7の武器 剣銃槌士の武器束 を特殊武器召喚!」

「迸れ!蒼き雷霆!偶像(アイドル)に対する愛を拗らせしその想いを我が青雷によって撃ち貫き滅ぼせ!」

ちょいとワクワクし始め二丁拳銃を取りだし構える夢美とその裏でGVは冷静に静かに動き出す

先に攻撃を仕掛けたのは思念体だった。

大きく咆哮すると重量感ある足音を部屋中に響かせ大きく拳を振り上げて力強く地面に突き立てるも2人は二手に分けて避ける
避ける途中で"ギドラ(紫龍)"と弾丸を撃ち込むが針は刺さらず弾丸は弾かれ力なく落ちていく

「案の定だけどダートが効かない」
「案の定だけど弾丸も効かない」

2人は避け続け 巨大な思念体が地面に拳を突き立てるその姿、まるでモグラ叩きのようである。

「よくある話だけど、想いの力か強いと相手も強いよね〜そう…友情、努力、勝利みたいなありがちなやつを・・・ね」

「それとは、かなり程遠そうだね」

武器を槌に持ち替え槌を回し始める
GVは避雷針(ダート)を"ギドラ(紫龍)"から"ナーガ(五頭竜)"に変更しチャージし始める

「でも、王道って最高じゃない?」

銃のトリガーを引きナーガを撃ち更にの後ろ側の側面を撃ち打ち込みダートの速度を上げる、視認するのは恐らく並大抵の者では捉えることは不可能な速さだろう。

「それとは無縁かな」

鈍い音と高い音が辺りに響いた、どうやら針が巨大な思念体の足に刺さったようだ

「ならば共に作ろう」
「そうだね、ここから作っていけばいいんだ」
「行けー!ガンヴォルト!10万ボルトだ!」
「やれやれ・・・さっそくボケに入るよね」
「(そもそも、GVの電圧ってどのぐらいなんだ?)」

容赦ない雷撃が思念体に向けられる、避雷針がめり込んでて抜けなくなってしまっている

「・・・雪!絶対防御の陣!」

その事に着目した太陽、咄嗟に判断を下す

「ガッテン承知之助丸!オールフリーズ・・・!」

太陽の合図でクリスタルノートを取り出すとこの部屋一面を全てを凍らせる。

「滑りやすさ満点!!」

「急に凍るのは、危ないね」

2人は急ブレーキするも勢いよく滑る、その反対で思念体は足を滑らせてしまい床に大きなヒビ割れを作っていく

「はい、滑り止めの魔法。GV、行くよ!」

「ありがとう、やることは分かっているよ。息を合わせて」

「「せーの!」」

息ピッタリなのかってぐらい同時に走っていき空中で一回転するとかかと落としを思念体に対してくらわせると床が壊れてしまう

「よっと」

「ほっんとうにふっざけんなお前らぁぁぁぁぁ!」

床が崩れていくのでなんとかムー君を引っ張り上げるがその勢いで声が上方向に揺れるちょっと面白いことになっていた
床が破壊された影響なのか、金属が軽く転がる音が小さく響き足元に止まる。
それに気が付いた雪はそれを拾う

「何コレ・・・輪っか?」

雪は謎の輪っか(※翻訳:指輪)を手に入れた! ▼

7人目

「幻想郷調査 四の三:完成、氷結の要塞」

崩壊した家屋や長屋が立ち並ぶ人里。
その穴を埋める形で、幾つもの土嚢が積み立てられる。
元々河川の氾濫に備えたそれは、隙間の無い仕上がりを見せつける。
そんな光景が、人里のあちこちで見られていた。

「スネーク殿、これで悪霊対策になるのだろうか?」

土嚢を積む程度の事は、男手が減った現状でも行う事が出来る。
しかし、この程度の事であればとっくに検討し、結果悪霊の手に掛かれば突破される脆い土の壁に過ぎないという結論に辿り着いている。
不安の残る計画に思えて仕方なかった。

「あぁ、今回は秘策があるからな。」
「秘策?」
「紹介する、出番だチルノ!」

だが、スネークの考えはその先を行った。
秘策と称して呼び出したのは、氷の妖精チルノ。
彼女は、如何にも自信に満ち溢れていると言わんばかりに活気付いた顔付きで現れた。

「ふっふっふ、アタイの真の力を解放する瞬間が遂に到来したようね!」
「あぁ、お前さんがこの人里の救世主になるんだ。」
「救世主!カッコいい響きね、サイキョーのアタイにピッタリだわ!」

その自信の表れは、言動にも出ていた。
傲慢な態度、調子屋。
そんないつもと変わらない彼女を見て、慧音は不思議と安心感を得ていた。
ともかく自尊心に満ち溢れた彼女を見て、しかしすぐに引き締め、今度はスネークの方を向き尋ねた。

「それで、チルノが秘策とはどういう事だ?」

彼女が戦力になるらしい事は分かったとして、具体的にどう活躍するかまでは聞かされていない。
当然、聞き出したくなるのが必定という物だった。

「それだがな。チルノ、お前さんが救世主になるゲームをしようと思う。」
「「ゲーム?」」

スネークは、分かりきっていた質問にニヤリと笑って提案を持ち掛けた。



「氷符『アイシクルフォール』!」

掛け声と共に発動する、氷結のスペルカード。
整然と並べられた氷の弾丸が、壁の如くゆっくりと押し出される。
やがて氷の壁とも言うべき弾幕は"濡れた土嚢"へと着弾、一瞬にして土嚢を氷塊へと変貌させた。

『土嚢凍らせゲーム?』
『そうだ。まずお前さんが人里の中を飛ぶ、すると村人が水を使って合図を出すから、そこの土嚢に向かって氷の弾幕を打ち込むんだ。上手く凍らせれば、お前さんは救世主だ。』
『ホント!?じゃあやる!』

この計画は、スネークが練った物だ。
そして、現在チルノは土嚢を凍らせる事に没頭していた。
ただ闇雲に撃っている訳ではなく、土嚢の数に合わせて放っているのだから、弾幕を放つ勘の鋭いは精度の高い物を求められる。

「いいぞーチルノちゃん!良く出来てる!」
「トーゼンよ!アタイ天才だもん!」

また同時にスネークは、村人と連携を取っていた。
彼女がスペルカードを発動する際、人里のあちこちから合図を出し、上手く調節できるように仕向けている。
彼女に花を持たせる為に掛けている褒め言葉も、スネークが提案した物だ。

『彼等の声掛けも、要塞化には不可欠だ。』

現に、村人は人が変わったかのように動き、皆それぞれに協力している。
その様子を見ながら、慧音はポツリと呟いた。

「何という人心掌握術だ、村人が活気付いてる…!」

人里に蔓延った悪霊はその猛威を以て人々を恐怖に陥れた。
その結果、現在人里に住んでいる全員が不安と絶望の中にあった。
だが今は、その負の感情が影を潜めている。
リクを疑い、あまつさえ囲んで叩くなどという側面は、今やかけらも見られない。

『3ヶ月という期間は、人々を不信と恐怖に貶めるのには十分過ぎた。それを今から取り戻す。』
『取り戻す、と言ってもどうやって…?』
『なに、応援はされる側だけじゃない、する側にも良い心的作用を齎す。それが奇跡を起こす。』

思い返すは、スネークの言葉。
人々が以前の様に活気付いた原因が、土嚢越しに聞こえるチルノと村人の声。
そしてそれを誘導したスネークにある現状に、慧音は自分の知る常識が大きく揺すぶられた気分だった。

「応援する事自体が、逆に自身の心理療法になる…思ってもみなかったな。」

人心掌握による信頼とは、力にも武器にもなる。
だが、それを飴と鞭の使い分けで行える人間はそう多くは存在しない。
それが出来る事をカリスマ性と呼び、結果を出せている人間の所以なのだろうと、改めて慧音は考えさせられていたのだった。

「完璧だチルノちゃん!」
「ホント?やったぁ!」

また一つ、見事な氷壁が出来上がった。
土嚢の内外にびっしりと氷が張り付き、最早向こうを視認するのも困難になる程だ。
その上から飛び出す人々の顔には、歓喜の色が宿っている。
上出来過ぎる仕上がりに、慧音は感嘆の声を上げるばかりだった。

「素晴らしい。本当の意味で、人里が団結している。」

誰もが、希望を持ち始めている。
柔らかな顔には、深い感謝の念が溢れていた。
相手の心に寄り添い、自分の思い通りに動かす。
その上で、今ある問題をも解決に導く。
今の慧音には、スネークこそが悪霊異変解決の先導者に思えて仕方が無かった。

「チルノちゃん、最後の土嚢だ!今度は三連だぞ!」
「はぁ、はぁ…やってやる!サイキョーに目覚めたアタイなら、成し遂げられる!」

土嚢凍らせゲーム、完遂に近づく。
チルノは土嚢に向かって飛翔すると、スペカを構えた。

「雹符『ヘイルストーム』、凍符『パーフェクトブリザード』、雪符『ダイヤモンドブリザード』!」

氷結のスペルカード、しかも三連。
難易度としては、並みの人間には到底扱えない程の高難度の物。
しかし氷を司るチルノにとっては造作もない事だった。
氷の弾幕は土壁に向かって一斉に放たれ、瞬く間に壁全体を氷漬けにしてしまう。
そしてものの数秒足らずで、それは立派な防壁へと昇華する。
それと同時に、土嚢凍らせゲームが終了した事を知らせる掛け声が上がった。

「_ウオォーーーーーーーーーッ!!!」

周囲が、歓声に包まれる。
大の大人達が、喜びを分かち合う如く声を上げ、互いを称え合った。
スネークの指揮の下で動いた人々は、僅か半日にして、人里を氷の城へと変化させたのだ。
人々の顔に希望が宿り、また子供達には笑顔が戻った。
その光景を前に、彼女は確信する。

(スネークと言う外来人は、本当に人を救いたいのだな。)

今、人里は絶望に立ち向かおうとしている。
そんな彼らを先導する希望の光。
それがスネークと言う男なのだと、彼女は確信したのだ。

「…所で、君達は何をしているのだ?」
「あぁ、これか?大々的な物資運搬に必要でな。」
「はぁ、はぁ、また重労働かよ…!」

で、肝心の本人達はというと、何やら大掛かりな鉄製の装置を置いていた。
馬に変化したウーロンが、竹を加工して作ったソリに乗せて運搬した何か。
大人一人が丸まったサイズだろうか、太い三脚に2つの太い円柱が連なっている。
マゼンタ色のラインが淡く光るソレは、凡そ凡人の理解を超えた代物だ。

「ワームホール転送装置だ。コイツでいずれはうちの戦力を投入する。」

8人目

「ゲイルと言う男」

「………」

 特異点の荒野を一人歩く男。その名はゲイル。
ジョーカーやキン肉マンらと共に戦っていた彼は、ジョーカーからの依頼を受け、
別行動を取っている。

 この現実と認知世界の境界が曖昧になったこの世界には、
モルガナ、坂本竜司、明智吾郎らに次ぐ、
まだ見ぬ心の怪盗団の仲間たちが訪れているのではないかと言うのが、
ジョーカーの考えだった。
その捜索の途中、彼が目にしたのは歴史の管理者、クォーツァーによる特異点全土に
渡って大々的に宣言された常磐ソウゴ処刑の告知。
CROSS HEROESとその協力者達を炙り出すために……

『CROSS HEROESとその協力者達に告ぐ! 我々は常磐ソウゴの処刑を執り行う!』
「彼らもこちら側に来ていたのか……それに、処刑とは……」

 思えば、神浜市での戦いの後、CROSS HEROESとゲイルが接触したのは
ほんの僅かな間だけだ。
互いの素性をほとんど知り合う事もなく、ジョーカーや悪魔超人軍団と共に
この特異点に渡ってきた。
CROSS HEROESとクォーツァーの戦いはリ・ユニオン・スクエアから場所を移し、
この特異点にまで広がっていたのである。

「放っておくわけにもいくまい」

 ゲイルは誰に言うともなく呟くと、荒野を進む。

「ケキャキャーッ!!」

 しかし、この特異点の至るところに異世界のモンスターが徘徊している。
現実世界には存在しない、魔獣や怪物達だ。

「邪魔をするのなら……容赦はしない」

 ゲイルが腕を振るうと、その風が鋭い刃となって怪物達を襲う。

「グケェーッ!?」

 怪物の断末魔が、風と共に荒野を吹き抜ける。
悪魔化の能力をその身に宿すゲイル、その名は「ヴァーユ」。
インド神話に由来する風神だ。

「力の差を理解する知性が僅かにでも残っているのなら……悪いことは言わん、去れ」
「ギ、ィィ……」

ゲイルから発せられる迫力に圧倒されたのか、 怪物達は散り散りになって逃げてゆく。

「全く……この世界は……理解不能だ」

ゲイルが吐き捨てるように呟く。

「無作為にあらゆる世界から集められた者たち……神浜とか言う街であったあの男……今頃どうしているだろう」

 オブリガードの楽士・ムーくん。神浜の混乱の最中に離れ離れになってしまったが、
そのムーくんがリ・ドゥへと飛ばされ、あらゆる世界を股にかけ飛び回る
不思議な少年少女たちと行動を共にしているとは夢にも思わないだろう。

「今は、やれる事をやるだけか……」

ゲイルは自らを鼓舞するように呟いた。

9人目

「幻想郷三番勝負 勝負その二:ディルムッドvs.日向月美&ナポレオン 前」

 守矢神社

「神奈子、この勝負って二対一でもいいんだよな?」
「ああいい。最も力を証明出来たらの話だが。ディルムッドは流石に分からんが……」
「構いません。2人がかりでも相手になりましょう。そして次は私が。」

 ナポレオンの問いに、神奈子とディルムッドは肯定する。

「行くか?お嬢さん(マドモアゼル)。」
「お嬢さんって……。」

 立ちはだかる相手、ディルムッドを前にナポレオンと日向月美が相対する。
 その瞬間、空気が再び緊迫する。

 たとえ単なる力比べ、誰も傷つかないという誓約の下成り立つ遊戯だとしてもここまでの緊張が走るのは。やはり3人が歴戦の勇士だからか。

「そちらは相当の手練れとみた。故に一撃だけでなく、先に倒れるか降参した方が負けと行こうか。」

 今度は月夜たちのようには行かない。
 お互い一撃だけだなんてものじゃなく、一戦士としての激しい戦闘をディルムッドは望んでいる。

「その名を聞こう。何しろこれは聖杯戦争ではないのだからな。」
「ナポレオンだ。」
「日向月美です。」
「そうか―――!」

 CROSS HEROES 日向月美&凱旋のカリスマ ナポレオン 対 フィオナ騎士団 ディルムッド。
 その戦いの火蓋が、切って落とされた。

「フィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド。参る!」
「来る!」

 最初に動いたのはディルムッド。
 その両手に持つのは、赤い剣と黄色の剣。
 これがいかなる能力を持った代物かは2人は知らないが、相手は神話に名を残す勇者。相当の手練れであることは分かっている。

「一撃が重い!?」

 剣戟の速度を超えるかのような、一撃の重さ。
 いくら力比べといえど、こんなものを喰らえば大怪我では済まない。
 むしろ大怪我で済めばいい方か?と思わせるほどの重みを、攻撃を受け止めた神刀・星羅から感じ取っていた。

「我がモラ・ルタの一撃を受け止めるとは、見事。」

 一撃を受け止め切った月美の胆力、ないしはその実力を称賛する。
 そこにあるのは余裕か、或いは。

「褒めてくれるのは嬉しいけど……こっちは戦いを楽しむつもりはない!」
「ところで、ナポレオンは……?」
「こっちだ!」

 機関砲が如き速度で放たれる、ナポレオンの小型砲弾。
 真横から放たれたそれを即座に察知し、叩き落してゆく。
 釘づけにされたディルムッド目がけ、月美は神刀・星羅の攻撃を放とうとする。

「喰らえ、『星座閃』!」
「!」

 刹那、炸裂する土煙。むせ返るような砂埃が、2人を襲う。
 攻撃が確実に決まったという確信に包まれた月美。しかしそこにいたのは。

「いない!?」

 誰もいない。
 だがそこにあったのは土と煙と埃と。

「空中!?」
「月美!避けろ!!」

 濃くなる影を捉えた2人。
 しかし時すでに遅く。

「気づくのが遅かったな月美!ナポレオン!『海神マナナンの脚』とも呼ばれたこの速度と連撃、捉えられるか!」 
「なっ……!」

 空中から月美目がけ迫るディルムッド。
 即座に防御態勢を整えるが、それを削り切らんばかりの連撃を受ける。

「生死を分かつ境界線、見定めよ!」
「なんて動きだ……!迂闊に手が出せない!」

 ディルムッドの魔力の流れが『跳躍』という行為に注がれる。
 地を蹴り、空を舞い、まるで引き延ばされたゴムから放たれた重い鉄球が如き勢いで移動する。
 最も、その速度はパチンコ玉のソレをはるかに超えた超高速機動。その前にはいくら強固な防御も削られ瑕が出来始める。

 相手が超高速移動をしている以上、もしナポレオンが迂闊に手を出せば放たれた攻撃はディルムッドをすり抜け月美に命中してしまうだろう。
 故に、この攻撃は彼女が凌ぎ切らなければならないのだ。

「見極めないと……やられる!」

 連続で、あらゆる方向から来る攻撃を凌ぐ。
 耐え、凌ぎ、堪え、防ぐ。その果てに生まれるであろう一瞬の『隙』のために。

「うぉおおおッ!!『憤怒の波濤(モラ・ルタ)』!!」
「決まったか!?」

 最後の一撃が放たれる。
 大将である神奈子も勝利を確信する一撃。

 赤き剣モラ・ルタ、黄色の防御剣ベガ・ルタ、そして『海神マナナンの脚』とも言われ畏れられた己の脚も寸断の刃として降下する。
 処刑台の刃が如き速度で、敵に敗北をもたらす一撃が降りてくる。しかして、月美は一瞬の隙を見逃すなんてことはなく。

「ここだ!!」

 一つ、大地を蹴り上げる。
 真上へと跳躍するディルムッドの剣を受けとめ……否、弾く?否、『打ち砕く』ために!

「『星鎖斬(せいさざん)・肆式』!」

 ―――一点への命中を前提とした4連続の斬撃を重ねる斬撃。
 ただでさえ霊力を込め強烈な力を纏った斬撃を、”軸先を寸分狂わさず”に”連続”で”勢いを加速させたまま”放つ事で放った回数分威力を上げて放つ。

 書いていると一見簡単なように見えるが、実際にやってみるとかなり難しい。
 力をそのままぶつける、という都合上刀と身体の軸が1ミリもぶれてはいけないし、前放った物よりも更に勢いをつけた斬撃を放たないといけないのだ。
 軸をずらさないことに執心すると力が入って加速が難しくなるし、勢いをつけると今度は軸先がぶれ始める。

 だが、これが成功すればその威力は___通常の連撃をはるかに超越する威力となる!

「まさか『憤怒の波濤』を、真正面から止めるとは……!」
「うぉおおお!!」

 衝突する力の磁場が歪み軋む。
 お互いの力が拮抗し、魔力と霊力と破壊力を持つ矢として周囲に炸裂する。
 3つの刃に対抗せし重なった4つの斬撃の拮抗。その結末は。

「ふんっ!!」

 圧力に耐え切れぬ力が炸裂する。
 空中の二人は解放された力に押され大地に弾かれる。

「大丈夫か?すまない、手を出せなかった。」
「こっちは大丈夫です。」

 何とか着地し、落下のダメージを最小限に抑える。
 まだ2人はあきらめていない。

「まさか、こちらの宝具を弾ききるとは。」

 それは当然、相手である彼も同じこと。
 依然ディルムッドは立って此方に剣を向けている。
 相手は余裕、こちらは苦戦しているが。まだ終わったわけじゃない。

「今のが、彼の宝具……!」
「そう言うことだ。」

 宝具の発動とそれに対する反撃行動、それによってお互いに消耗した。
 裏を返せば相手に宝具という切り札を切らせ、力を削いだのだ。それだけでも誇るべき事柄だ。
 だがこれは人域を超えた者たちしかいない模擬戦。一撃だけという訳にはいかない。

「さぁ、いざ参られよ!」

 激化する第二戦。その結末は―――?

10人目

「幻想郷調査 四の四:悪霊の群れ見たりって奴だな。」

「ったく、私が子守りだなんてな。」

チルノが称賛を浴びる裏で、その上空から見守りを任された魔理沙が溜息を付く。
チルノが完成させる氷壁の詳細を記録する必要があった為だ。
氷壁を見回っては写真を撮るという動作を繰り返し、得られた情報が記録媒体に書き込まれて行く。
しかしこの作業も案外嫌いでは無かった。

「ま、これ(カメラ)くれるっていうんだから安いもんか。」

現金な魔理沙には何が効果的か、スネークにはあっさり見抜かれていた。
スネークからすれば幾らでも替えが効く物だが、幻想郷では珍品だ。
魔理沙がそういった類に目が無いのは、自他ともに認める周知の事実であった。
そんな、ご機嫌取りを自分で行った魔理沙の視界の隅。

「ん?」

月夜に照らされ僅かながら見えた遠くの影に、魔理沙は気付く。
雲間から悠然と現れた、遠目からでも判る無数のソレは、奇怪な背丈で全身が黒く、しかし各々の一点に、血の様な赤黒い輝きを放っている。
その姿に、魔理沙は見覚えがあった。

「ありゃ、"悪霊"か?今までと何か違う感じがするが…」

無意識に、カメラが向く。
フラッシュライトを得て、ハッキリと写った異形の姿。
明らかに尋常でない様相に、彼女は思わず呟く。

「何だこりゃ…?」

呆然と見つめる様は、魔理沙の心境を表していた。
悪霊は顔の輪郭から腕に至るまで、光を当てても白味を持たない程の黒で彩られた幽鬼であり、人間と同じぐらいの背丈を持っていた。
その両手足には、妙に発達しているものの、やはり白味が無く、鈍い黒色を放っている。
そしてよくよく見れば、幾多の悪霊の内に、姿が少し違う者が写っていた。

「左手が変質してる…?」

目敏い魔理沙には、見て取れる。
枯れ木の如き腕だった部位が、機械的なシルエットを纏っている事が。
魔理沙の記憶に照らし合わせれば、外の世界で言う所の杭打機だろうか。
香霖堂で一度、似たような物を見せて貰った事がある。
最も、あれほどの怨念に塗れた杭打機など外界には存在しないだろうが。
更には背中の腕、通称第三の腕が槍上に変質している。

「まさか、進化しやがったのか…?」

歴戦の勘が告げている、こいつは只事じゃないと。
その感覚を裏付ける様に、悪霊共の隊列は兵隊の様に整っている。
しかも、数もざっと見ただけで五十体以上もいる。

「おいおい、戦争でもおっ始める気か?こりゃ、とんでもない事態だぜ。」

今起きている事が何を意味するのか、そんな考察をしている場合では無かった。
一刻も早く、この事を告げねばならぬと魔理沙の勘が警鐘を鳴らしていた。
下にいるスネーク達の方へ向き直ると、声を上げた。

「おーい!ちょっと不味い事になってる!!」



魔理沙の声を受け、スネークはすぐさま高台へ登り情報提供を受ける。
そして二人が見たのは、やはり無数の悪霊だった。

「湖で出会ったのとは、また違うな…」

首なしの胴体が延々と列を為して行軍する異様な光景。
特に一部の変異個体に関しては、幽鬼の如き黒さを持つ骨ばった作りの体躯は肥大化し、腕は各々が武装化。
肘から先には杭や鎌、或いは槍に変化しており、汚れた油の如き体は月光を鈍く反射する。
隊列を組む悪霊共の頭部の代わりに、壁に染みついた靄の様な顔型に、角が生えている。
何より、赤い核の赤熱した様な鋭い輝きが、写真では一層際立っていた。

「"進化"、か。」

幻想郷という環境が、この悪霊達に何かしらの変異を促しているのかもしれないと、思考が最悪を予期する。

(そもそも、この現象は外部から持ち込まれた物なのか?それとも、何者かによって創造されたのか?或いは_)

考えれば考える程、スネークの中に仮説が生まれて行く。
常に最悪を想定するのが軍人だが、悪霊という概念が齎す異様な不安感。
そこから想起する"最悪の種類"は尋常では無かった。
悪霊、即ち怨霊とは、既に死んでいるはずの者達が恨みを晴らさんとこの世に呼び戻された存在。
つまりは、死した後も尚、現世に在り続ける怨念の集合体だ。

(そんな者共がもし、生者の世界に現れてしまったとしたら?)
「…スネーク?」

それも大量に出現してしまったらどうなるか?
答えは簡単だ。

(地上の生者と死者の比率が"引っ繰り返る"。)

あの無数の悪霊こそが、真の人間となる。
この世に、そんな状態が跋扈する世界を想像して欲しい。
そんな事態だけは、絶対に阻止せねばならないとスネークは考える。
そして同時に、自分がそれ等を相手取っても対処できる力を備えているのかが、彼にとって最大の懸念事項だ。

(銃という習熟に時間を要さない武器を渡したとはいえ、現状人里は戦う術を殆ど持ち合わせていないのと同等の状態だな…)

素人同然、戦闘のいろはも知らない集団。
精々、自分の命を守れるか否かというレベル。
軍事行動等取れる筈も無く、パニック一つで現場は混乱に陥るだろう事は容易に想像が付いた。
眉間に皴が寄り、軽い冷や汗も流れて行く。
そんなスネークの様子をどう受け止めたか、チルノは眉を立てて口を尖らすと、胸を張り仁王立ちになる。

「スネーク!」

突然の行動にスネークの注意を引いた所で、指を突き付けて告げる。

「あくりょーがどうとか分からないけど、あの氷の壁はスネーク達を信じて作ったのよ!」

連なる言葉は彼女なりの声援か。
彼女の、何者にも負けぬという自信と、そして誰かを信じて作ったという事実。

「そこに救世主のアタイがついてるんだから、怖気づくんじゃないの!アタイを信じたあんたを信じろ!」

そう言うだけ言うと、チルノは再び壁へ体ごと向く。
最後に顔だけを少しだけ振り向かせると、小さな体で精一杯、胸を張りながら宣言する。
それは、自身の勇気を示して見せると言う、彼女なりに考えた事であり。
そして本当に助けが必要な時が来たなら、必ず手を伸ばすという姿勢の表れでもあった。
それが彼女なりの、湖での恩返しだと思って。
そんな彼女の意気込みと覚悟を目の当たりにして、スネークに渦巻いていた不安が、不思議と消えて行く。
単純な、しかし強力な激励だった。
心の何処かに根付いた"子供だから"という侮りは、とうに消え失せている。

(自分で言った事を覆すのか?)

己を俯瞰する第三者視点の自分が、自問する。
対し、己の心に従順な自分が答える。

(いや、違うな。最悪を想定しない訳じゃない。だがな。)

否、と。
自らを律し、言い聞かせる様に胸の内で告げると、左手の義手を睨みながら力を籠め、覚悟を決める。
そうして深呼吸した後、チルノへ視線を向け語った。

「心強い救世主がいるんだ、必ず勝つさ。」

それは先程と異なる、闘志を持った双眸。
視線を受けたチルノは一瞬だけ驚きこそ見せたものの、すぐに笑みを浮かべ直すと、自らの小さな拳を突き付けながら叫んだ。

「トーゼン、サイキョーだからね!」

今ばかりは子供扱いせず、対等の相手としての、チルノへの称賛と敬意。
スネークは左手を突き出し、チルノの小さな拳に軽くぶつける。
ゴツリと響く二つの手の音が、確かな手応えと共に耳に届くのであった。

11人目

「回想・時と時の狭間で」

 時の列車、デンライナーが何故特異点・黒平安京へ現れたのか?
それは少し時を遡り──

「待ちやがれこの野郎ォォォォォォ!!」

 時の路線を行くデンライナー。その車内には、慌ただしい叫びが響き渡っていた。
操縦席兼バイクである「デンバード」に跨る赤い鬼のようなイマジン・モモタロスが、
何やら必死に追い縋る相手……それは。

「チッ、しつけえんだよテメエらは!」

 アナザー電王の力とアナザーデンライナーを手に入れたクォーツァーのひとり。
アナザーデンライナーで時を渡り、時間を滅茶苦茶にしようと企む。
彼をここで逃すわけにはいかない、とデンライナー一行は追跡を続けていたのだが──

「んっ……我が王から招集がかかったか。例のCROSS HEROESとか言う連中だな……
へへっ、この俺が奴らを血祭りにあげてやるぜ」

 特異点・クォーツァーパレスにて最終決戦に臨んでいた常磐SOUGOらクォーツァーとCROSS HEROES。
そこに向かって進路を変更させたアナザーデンライナー。

「野郎、逃がすか!!」

 すぐさま後を追うデンライナーだったが。

「あ、あれっ」

 アナザーデンライナーが発生させた時空間の歪みがデンライナーの進行方向を歪ませ、
それと共に車体が傾いた。

「うわあぁ!」

 そのままデンライナーは時の路線を外れ、脱線。

「どわあああああああっ……」
「はっはっは、あばよォ!!」

 車体を激しく回転させながら、黒平安京が出現した時間軸と滑落していく──
その結果、アナザー電王とアナザーデンライナーはクォーツァー・パレス最終決戦に
参戦するも、タイムパトローラー・トランクスとの時を護る者と壊す者とに
分かれた時の戦いの末に、撃破されたのだった。

 そして、現在……

12人目

「吠えろ竜の戦士達よ」

「滅びるがいい!」
晴明は再び何本もの食手を出して攻撃を仕掛ける。
「ガオーンクロー!」
「キジンソード!」
ゼンカイオージュラガオーンとドンオニタイジンはそれぞれの武器で食手を切り落としていく。
「今度はこちらの番です!それ!」
ゼンカイオーブルマジーヌはクロスボウモードのブルーンピッカーからビームを放って攻撃するが
「無駄なことを…」
晴明は先程と同じように結界を貼って攻撃を防いだ。
「お返しです」
晴明はゼンカイオーブルマジーヌに向けて何本もの槍を飛ばして反撃
「ヌヌっ!?」
「危ない!」
ゼンカイオージュラガオーンがジュランシールドでゼンカイオーブルマジーヌを守った。
「マジーヌ、ブルーン、大丈夫?」
「はい、助かりました!しかし…あの結界があるとこちらの攻撃が通りませんね……」
「うーん……あっそうだ!ヌヌヌマジーヌ!」
ゼンカイオーブルマジーヌはマジーヌスティックを取り出し、マジーヌの力で呪文を唱えて魔法を発動、すると…
「っ!?なに!?」
なんと晴明が貼ったのと同じ結界が出現し晴明の結界と衝突、これにより同じ結界同士で相殺され晴明の結界が消滅したのである。
「凄い!やるじゃんマジーヌ!」
「えへへ、前に行った世界のなんとかフィールドを思い出して一か八か試してみたっす!」
「なんとかフィールドって……あ、ひょっとしてエー…」
「ああああああああああああ!?ジュラン!それ以上先は言っちゃ駄目チュン!」
「ちょ、マジで…!?」
「マジチュン!大人の事情的に名前出せないチュン!」

「なにはともあれ、これでこちらの攻撃が通るな」
「クッ…おのれぇ…!」
晴明は今度はドンオニタイジンに向けて無数の槍を放つが
「おいこっちに来たぞ!?」
「えぇ!?え、えっと…そうだ!ええい!」
ギリギリのところでドンオニタイジンの両肩の翼が展開され上空へ勢いよく上昇したことによりなんとか回避することに成功。
「なにぃ!?」
「アーッハッハッハッ!」
「あ、危なかったぁ……」
「クッ…こしゃくな真似を!」
晴明は食手でドンオニタイジンを叩き落とそうとするが、
「っ!?」
突如として地面が崩れ、晴明も沈んでしまう。
「な、なんだ!?」
すると近くの地面からゲッター2に変形したゲッターロボが飛びした。
「悪いがお前がその3体に気を取られてる間に、ゲッター2でお前の下を掘らせてもらった」
「おのれぇ…!」
「よそ見をするな!」
「っ!」
「天空サル連撃!ウホウホウホウキィー!」
晴明のすぐ目の前まで接近したドンオニタイジンは両腕でひたすらに殴りまくる。
「グワァアアアアアアアアア!?」
ドンオニタイジンの連続ラッシュを受けた晴明は横へ倒れてしまう。
「やったか!?」
「いいやまだだ!」

「どうやら貴様らは我が思ってたよりも強いようだが……その程度じゃ我を倒せぬ…!」
「チッ…!相変わらずしぶとい野郎だぜ」
「まったくだ」
一同が晴明のしぶとさに呆れてると
「っ!?」
どこからか晴明に向かってミサイルなどが飛んでくる。
「なにやつ!?」
晴明がミサイルなどが飛んできた方向を向くと、時の列車デンライナーが空を走っていた。
「えぇ!?電車が空を飛んでる!?」
「竜馬、まさかあれもCROSS HEROESのものか?」
「んなわけあるか!いくらCROSS HEROESでも、空飛ぶ電車持ってるやつなんて居ねえよ!」

「俺、参上!ライダーで巨大戦といえば俺みたいなところあるからな、久しぶりのデンライナーに乗っての戦い、いくぜいくぜいくぜぇ!」
電王の乗るデンライナーは晴明に向かって攻撃しまくる。
「うぐっ…!?おのれCROSS HEROESどもめぇ…!」
「おぉー!すっげぇー!」

「よし、我々もあの電車に続くぞ!」
「「「ラジャー!」」」
デンライナーに続く形でナースデッセイ号とガッツファルコンも晴明に攻撃。
「ガハッ!?」

「よし、このまま一気にトドメを指すぞ!」
「わかった!」
「覚悟しやがれ晴明!今度こそ、引導を渡してやるぜ!」

「「「ジュランソード!円月クラッシュ!」」」
「「ブルーンピッカー!アクセルストライク!」」
「一騎桃千…」
「「「「「ドンブラパラダイス!!」」」」」
《必殺奥義!ロボ·タロ·斬!!》
まずは2体のゼンカイオーとドンオニタイジンがそれぞれの必殺技を晴明に叩き込む!
「ゴボァ!?」
「デェアッ!」
「ゼスティウム光線!」
『チェストー!』
続いてZとトリガー、二人のウルトラマンが晴明に向かって光線を放った。
「あがっ!?馬鹿な…こんなはずでは…!?」
「こいつでトドメだぁ!」
するとゲッターロボが緑色に光り出した。
「っ!?あの光……まさかゲッター線を…!?」
「隼人!弁慶!ぶっ倒れんじゃねえぞ!」
「ふっ、そう言うお前も暴走するなよ」
「お前が暴走したら、止めるのが大変だからな」
「うるせえ!ゲッタートマホゥーク!」
ゲッターロボがゲッタートマホークを手に持つと、なんとゲッター線の力により巨大化したのだ。
「おおおりゃああああああああああ!!」
そして巨大化したゲッタートマホークを思いっきり振り下ろし晴明を真っ二つに切断した。
「うおおおおおおおおおっ!?」
多数の巨大戦力による連続攻撃を食らったあげく真っ二つに切断された晴明の身体は大きな爆発と共に崩れ落ちた。

13人目

「新たなる舞台へと」 

 ゲッターロボの渾身の一撃により晴明は跡形もなく消滅した。

「これでようやく奴もくたばったろう……」
「どうだろうな……」
「南無……」

 安倍晴明は本当に死んだのか。それは定かではない。
だが、黒平安京の町並みが黒い灰となって崩れ落ち、消えていく。
空を覆い尽くしていた黒い雲も晴れ、陽の光が照らし始めた。

「はぁーあ、やっと終わった……」
「フン、だらしが無いぞ、お供たち! そのだらけきった性根、鍛え直しだ!」
「えぇー!?」

【ドン! ブラスター!!】

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」

 ドンモモタロウは、突然疲れ切ったドンブラザーズのメンバーたちに発砲する。
反射的に飛び起き、各々一目散に逃げ惑う。

「鬼ー!」
「悪魔ー!!」
「ドンブラザーズなんて辞めてやるー!!」

「ハッハッハッハ! ハッハッハッハ……」

 高笑いと共にメンバーを追いかけ回しながら、風のように現れ、嵐のように暴れ回った
ドンモモタロウ達は何処へともなく消えていく。

「何だったんだ、あいつら……ホントにスーパー戦隊なのか、あれで……」
「でも、すっごい強かった!」

 ジュランとゼンカイザーはそんな彼らを呆然と見ていた。

「――何ィ!? 電王のニセモノはお前らが倒しただとォ!?」
「今更か……」

 モモタロスは、ディケイドからクォーツァーが壊滅したと聞いて驚く。
デンライナー一行は時の運行を乱し暴れ回っていた
アナザー電王とアナザーデンライナーを追跡していたが、途中で振り切られ、
その行方を追ってこの特異点へとやって来た時には黒平安京の戦いに
巻き込まれてしまったのだ。

「それならそうと早く言いやがれってんだ、まったく。骨折り損だぜ」
「まあ、おかげで助かった」

「ほな、俺らも帰るで!」
「んー、僕はもうちょっとカワイ子ちゃんたちとお近づきに……」
「ならてめえだけ残っててもいいんだぞ、スケベ亀!」

「お姉ちゃんとも、お別れかぁ……」
「ありがとうね、リュウタロスくん。また、いつか一緒に遊ぼうね」
「うん! またね、お姉ちゃん!」

 ウラタロスは名残惜しそうにいろはに別れを言い、デンライナーへと乗車する。
汽笛を鳴らし、時空の壁を超える準備をする。

「そんじゃあ! 出発しんこー!!」

 モモタロスの号令と共に、デンライナーは時空の壁を超えていった。

「さて、俺たちも拠点に帰ろうぜ」

 残されたCROSS HEROESも仲間たちが待つ拠点へと帰還していく。

「令呪を切ったのか……随分と力を消耗しているな、マスター」
「あはは、ちょっと張り切っちゃった……」

 疲労困憊で戻ってきた藤丸立香を、カルナやジャンヌ・ダルクらが支える。

「マスター、あなたには治療と安静が必要です」

 どんっ、ナイチンゲールが抱えて運んできたベッドをに強引に寝かしつけられる。
そして藤丸ごとベッドを丁寧にシーツで被い、医務室へと運んでいった。

「あ、ありがと……」
「あなたのマスターとしての判断は正しいですが、無茶はあまり感心しません」

 ナイチンゲールに叱られつつも、立香はベッドに横になって目を閉じる。

「ああ、マスター! 気をしっかり! 母がついていますよ!!」
「あなたのファースト・サーヴァントこと、マシュ・キリエライトもお忘れなく!」

 ナイチンゲールに追随する様に、マシュと頼光がべったりと貼りつく。

「ふふ。おかえり、小僧」
「けっ、何がおかえりだ」

 拠点の屋上で、地上の藤丸達の様子を見下ろしながら酒を煽る酒吞童子。
あの時の言葉通り、茨木と共に拠点へと戻ってきていた。
その背後に立つ金時に、背を反り上げてケラケラと楽しそうに笑う。
黒平安京であれほどの激戦を繰り広げておきながら、悪びれるどころか、
まるでいつも通り。

「ったく……恐ろしい奴らだぜ。茨木の奴は?」
「悪酔いして寝込んどるよ。起きる頃には綺麗サッパリ何もかんも忘れとるやろな」
「かぁー、マジかよ……」

 金時は呆れつつ、呟いた。

「まあ、旦那はんも努々忘れんことやね。鬼を使役するっちゅうんは……
こういうことやってな?」

 酒吞童子は金時に顔を近づけて、耳元で甘く囁く。
気分次第で敵にも、味方にも、容易く転ぶ。すべては気まぐれ、成り行き任せ。
鬼とは己が愉しいこと、気持ちの良いことを最優先するのだ。

「お前も覚えときな。次にやらかしたら……そん時は……」
「ふふ、そん時こそ……お互い本気で殺し合おな? ほほほほほ……」

 金時が凄むのをのらりくらりと躱し、酒吞童子はカラカラと笑いながら
拠点の中へと入っていく。

「まあ、ええわ。とにかく今は疲れを癒すんやねぇ」
「ああ……そうさせて貰うぜ」

 金時もまた拠点の中へと入っていった。一方、スカルを待っていたのは……

「ア、アンタは、確か……」
「久しいな、スカル」

 拠点で待っていたのは、かつてジョーカーやキン肉マンと行動を共にしていた男、
ゲイルであった。

「特異点で幅を利かせていたクォーツァーと戦っている勢力がいると言う噂を聞いて
足を運んでみれば、お前たちの仲間の拠点だったと言うわけだ」
「そんな事より、ジョーカー達と一緒だったんじゃなかったのかよ!? 
あいつらは今……」

「落ち着け、スカル」
「相変わらず騒々しいんだから」
「変わりなさそうなのは安心したけどね」

「フォックス! それに、パンサー、クィーンも……」

 拠点の地下に拡がるメメントスから帰還したパンサー、フォックス、クイーンも
合流する。

「これで心の怪盗団が一気に集まったってワケだな」
「俺はジョーカーに頼まれ、別行動をしていた。
いずれ、お前たち心の怪盗団が一堂に集まり、ミッションを遂行する日が来るとな」
「ジョーカーが、そんな事を……」

「ジョーカーとモナは今、キン肉マンと共にとある場所に潜入しているらしい。
その場所をお前達に伝えよう」

 ゲイルがスカル達に一枚のメモを渡す。

「このメモの場所に、何かがあると言うのか」
「ジョーカーとキン肉マンがそこに向かったなら、多分……」
「善は急げだ! 早速向かうぞ!」
「おおっ!」

「ならば、僕のアビダインの出番だろう。他ならぬ君たち心の怪盗団と
キン肉マンに関わる話だ。僕にも協力させてくれたまえ」
「決まりだな。準備ができ次第、すぐに向かうぞ!」

 こうして心の怪盗団は、再び集結し、次なる目的地に向けて出発した。
友を救うために……

「ねえ。俺も、連れてってくんないかな?」

 心の怪盗団達へ同行を願い出たのは、ソウゴであった。

「まあ、手伝ってくれるのは、ありがてえけど……」
「もしかして、あの『未来視』って奴?」
「また何か見えたの?」

 パンサーたちは、クォーツァー・パレス內部にて
ソウゴが持つ特別な力「未来視」の片鱗を垣間見ていた。

「うん、上手く言えないんだけど……何だか、行かなくっちゃ、って気がするんだ」

 ソウゴから湧き上がる「何か」が、彼を突き動かしている。
果たして、その正体とは……

「うん、一緒に行こう!」
「ありがとう!」

14人目

「幕間:世界を■■する野望」

 存在しなかった世界

「……天宮彩香、早々に殺すべきだったか。港区の段階で『大帝の命令は聞かなくてもいい』と言っておくべきだったか?」

 一人、存在しなかった世界の円卓の間にて思案を広げるのは大司教1位エイダム・マグダネル。
 幻想郷に配置された監視術式を見つめながら、エイダムは頭を抱えていた。
 その関心は、天宮彩香の裡に宿る神霊と彼女自身にあるようだ。

「いや、既に過ぎたことを考えても愚かなだけだ。」

 過去の己を責めることなく、あくまでも前向きに考えている。

「エイダム同志。焔坂じゃ。」

 と、思案を広げる彼の下に焔坂からの連絡が来た。

「悪霊の”学習”も順調に続いている。明日には第二世代が生まれ始めるころだろう。」
「そうか。CROSS HEROESはどうだ?」
「来ているのを悪霊が確認した。討滅されたが、まだ対処は出来よう。そして……我が麗しき天宮兄妹がいるのう。あの端正な顔を苦痛で歪ませてやろうぞ。」

 茨木童子や酒吞童子たち鬼種が持つ宿命である『反転』という衝動を抱えているが故か、歪んだ愉悦のセリフを宣う焔坂。
 しかし、エイダムは逆に警戒しているようだ。

「……焔坂よ。あの女を甘く見ない方がいい。あの女に宿る潜在能力を甘く見ない方がいいぞ。さもなくば手痛い敗北を喫することになる。」
「ほう?あの女……確かに強くなっているが、それでも取るに足らぬじゃろ。」
「その油断こそが危険だと言っているのだよ。」

 エイダムは淡々と続ける。
 かすかな恐れを帯びた声で、されど冷徹さを残したまま。

「いいか、もし俺がCROSS HEROESの連中の一人なら奴を追放しているところだ。にもかかわらず連中は天宮彩香を追放どころか戦闘すらさせている。勇気だけでは何もできんし、何より一般人に戦闘行為は危険だからだ。」
「つまり、あの女にはとんでもない爆弾があるということか?」
「……爆弾と言うよりかは、ひな鳥だな。趣味で育てていたひな鳥が、その実恐るべき戦闘能力を持った人食いの怪鳥だったというパターンだ。奴は恐らくそのパターンなのだよ。気を付けろ。」
「うむ……。」

 エイダムの忠告を聞いた焔坂は、静かに肯定する。

「ゼクシオン同志にも同じように言っておけ。切るぞ。」
「分かった。」

 通信を終え、エイダムは背もたれによりかかる。
 そして深呼吸をしたのち、彼は椅子を飛び降りた。

「ふう……紅茶でも飲むか。」



 存在しなかった城 廊下

「……。」
「分かってんだよエイダム。もう白状したらどうだ?」

 一服をしようとしたエイダムは突如、銃を突きつけられた。
 彼にとっては忌々しく、不愉快な悪意ある声。
 その正体―――銃の化身カルネウスが、銃を己に突きつけ悪い笑みを浮かべている。

「白状?何のことだ。このエイダムは貴様のように下らん嘘はつかないぞ。」
「今ついてんだろうが。例のグランドクロス、だっけか?そこと裏でつながっているんだろオタク。それって……その組織と癒着しているってことだよなァ?それって立派な裏切り行為だよなァ!?」
「そうだが……で、何が目的だ?」
「大帝にバラされるのが嫌なら第一位の座を俺に寄越せ。おめぇだって命が惜しいだろ?大帝のあの力に……「ふ、ふふふ、ふはははは……」……何がおかしい?」

 突如、カルネウスの話を聞いていたはずのエイダムが嗤いだす。

「なんだそんなことか。傑作だな。」
「傑作?」
「貴様は……人の話をよく聞かないとか、書類の細かい点とか見てないやつとかと言われてないか?メサイア教団とグランドクロス、ここは設立当初から”つながって”いるのだよ。だから裏切り者ってのは心外だな。」
「あ?」

 青筋を浮かべながら、カルネウスは銃口をエイダムの脳天に突きつける。
 180はあるエイダムよりも大きい200センチの図体だ、カルネウスはまるで上から睨みつけるように銃口を頭に押し付ける。
 悪辣で怒りをにじませた笑みを浮かべながら、銃口を力ませている。

「にもかかわらず、勘違いで銃を突きつけられるとは……やはり貴様ではなくクレイヴを大司教にすべきだったか……傲慢なやつだったが、才を見出すべきだった。」
「黙れや……おめぇは始めっから教団を裏切りグランドクロスに情報を流してんだろうが。『裏切り者は処刑せよ』、これに従い俺が大帝の代わりに粛清してやるよエイダム!!」

 激昂のあまり判断力を失っているのか、彼の中の矮小なプライドが過ちを認めることが出来ないのか、カルネウスは銃を降ろさない。
 エイダムはそれとは対照的に、依然冷静さを保っている。

「……かくいう貴様の方こそ、そろそろ白状した方がいいんじゃあないか?裏で工作をしながらメサイア教団の支配を狙っていることを。」
「くっ……言うじゃねぇか。いつ気づいた?」
「貴様の小物くさい癖に妙に敵を小ばかにし変に上昇志向を持ったクズが如き性格だ。そのくせ他人の弱みを握ろうとしている。サーバールームのメンバーリストから教団主要メンバーの弱みを握り脅すことで、大司教三位の座を得た。今思うと不審な点があったな。」
「そうだよマヌケ、気づくのがおせぇんだよ!」
「だがもういい。教団の掟『裏切り者は処刑せよ』。果たさせてもらうぞ。」

 その刹那だった。
 カルネウスの左目目がけて、エイダムの中指一本拳が飛ぶ。
 あまりにも唐突で、隙のない一撃はカルネウスの左目を完全に破壊した。

「ぐわぁあああああ!!」
「動くな。これ以上抵抗するというのならば、次は右目をやる。右目だけでも銃撃は可能だろう。」

 血が滴る、氷の針が生えた一本拳。
 忌々し気に殴った右手の血をふき取り、エイダムは冷徹にカルネウスを見つめる。
 完全に左目の視力を失ったカルネウスは、目の激痛に悶える。 

「ぎ……ぎざま゛ぁあああああ!銃の素人かてめぇはよォ!両目の方が圧倒的に打ちやすいだろうがぁああああ!!」
「黙れ。」
「何が黙れだああああ!いでぇよぉおおおおああああああ!」
「……本来、貴様はすでに追放どころか粛清待ったなしだがその性格の悪辣さに免じて最後のチャンスをやろう。ジャバウォック島に向かった連中を殺しに行け。パラガスはあの後逃げたようだしな。結果次第で処遇を考えてやる。失敗したら分かっているな?」

 しかしカルネウスは激痛のあまり半狂乱の叫びをあげ、呪詛の言葉を吐く。

「はぁ……はぁ……詭゛弁野゛郎が……わがっだよ゛、後悔ずんな゛よ……!!」



「バカめエイダムのジジイ……こうなりゃヤケだ……!こちとら最終兵器があんだよ!今頃兵器廠は大騒ぎだろうさ。そこに気づかねぇとは耄碌が過ぎたなァ……あの引きこもりがよぉ……!」

 乾いた笑いを上げながら、カルネウスは右手を見る。
 その右手には、小さな槍の穂先が握られていた。

「この触媒、新世界の神になる為にも最後まで利用させてもらうぜぇ……キハハハハハハ!!」

15人目

「アビィダイバーズ外伝:亜人 脳徒1」

幼い頃から、周りとの"ズレ"を感じていた。

初めは幼稚園の頃だっただろうか。
力が強い、身長が高い、頭脳が発達している。
そういった目に見える肉体的な特徴だけでなく、その人格もどこか違っていた。
思えばただの早熟だったのかもしれないし、或いは未熟と熟成の入り混じった歪な状態だったのだろう。
私のいた環境は、ごく普通の幼稚園であり、故に"普通"の同年代とは友達になる機会も少なかった。
それでも人と関わる事が大事と教わってきたから、自分から進んで人の輪に入ろうとした。
初めは皆、受け入れてくれた。
そうして、おままごとで私は鬼の役をよくやらされた。
鬼ごっこやお人形遊びといった、普遍的な遊び。
私はヒーローごっこをしたがったが、力強いが故に鬼の役以外の遊びを受け入れてもらいにくかった。
鬼の役は嫌いだった、弱い者いじめする役だったから。
普遍的な正義心が、TVを見て私の心に根付いているのもあった。

だから『泣いた赤鬼』を見た時は、胸に心打たれた気分だった。
鬼だって悪ではない、鬼だから悪ではない。
悪は良心を持てなかっただけなのだ、と。
そんな簡単な論理に出会った感動は、今もこの胸の奥底へ焼き付いている。
きっと、初めて感情を揺さぶられた瞬間だったのだろう。
私は、鬼が絶対的な悪では無い事をひたすらに説いた。
鬼が悪ではないおままごとなんかも考え、提唱した。

だけど、私の言う事に、周りの人は首を傾げた。
曰く、お前の言う事は変わっている、と。
曰く、鬼は悪だと相場が決まっているから、だと。
だから、鬼が悪ではない事を『泣いた赤鬼』を元にただひたすら謳った。
反対意見があれば、丁寧に反論を示した。
そのつもりだったが、理屈で示せなくなると皆は揃ってぐずってしまった。
鳴き声に駆け付けた先生は頭ごなしに私を怒りつけたが、尚も理論を呈した。
どうして謝らなければならないのか、どうして理屈が通っている方が怒られるのか?
そう解いた先生は、何も言い返してくれなかった。
それがきっかけだったのだろう、先生達は私を忌避したと理解した。
敢えて話さず、極力無視して相手をしない態度が見て取れたからだ。
他の子も同様の態度を取った。
私は、その幼稚園における鬼になったのだ。
誰も立ち向かえない、理屈の鬼に。

結局、鬼は悪だという認識を変える事は叶わなかった。
ならば私は、皆が思う普通になるしかないと思って普通を演じた。
きっと、皆と同じになる筈だと信じて。
そうして普通である事をずっと意識し続けて仮面を被り続けた結果、普通が分からなくなった。
理屈も無く決められる暗黙のルール、その時々によってまるで違う文言。
その全てが、私が普通の仮面を被る上で、ただただ理解に苦しむ材料に過ぎなかった。
そして、人とのズレを覚え、人と触れ合う事すらまともに出来ない自分に気づいてしまった瞬間、私の仮面は剥がれた瞬間から、何も理解出来なくなった。
ただ平穏な日常を享受する事に、意義を見出せなくなった。
それからは、自分が普通であるかを絶えず意識して、その矛盾に悩まされ続ける様になった。
自らの異常性を延々と自覚し続ける事に疲れ果てて、幼稚園を何とか卒園できる程度の常識しか身に付けられなかった。
同時に、自分でもどうしてここまで普通である事に固執したのか、分からなくなった。
その内、理解する気さえ失せてしまったのかもしれない。
恐らくその時から、心の底から普通がどうでもよくなったのだろう。

小学校に通い始めてからは、私はいよいよ自らの異常性を周囲に隠し通せなかった。
きっと、小学生の時の私なら、この胸の穴を埋める事が出来るかもしれないと楽観視していた時期もあったが、すぐにそんな希望は打ち消されることになった。
精神年齢や知識の未発達な子が多いとは言え、行動や発言の端々に、普通の同じ年頃の子ではしない、出来ない事が当時の私に現れていた。
そんな私を、小学生は異端と見なした。
原因は分かっていたし、覚悟も出来ていたつもりだったが、いざそれを突きつけられると心が抉られる痛みが湧き上がり、何故かとても辛かった。
幼稚園と同じ、誰とも関わりあわない様に努め、義務教育が終わるまでそのスタンスを貫くつもりだった。
実際そうした異常な振る舞いが、クラスメイトを遠ざけた。
皆、私の事を避け続けて、遠目からヒソヒソと陰口を叩くのみだった。
あの日までは。

一人の女が、私に挑んできた。
無論、肉弾戦という意味でだ。
相手は、当時同じクラスだった生徒で、運動も勉強も出来るが、人付き合いは苦手そうな、所謂陰キャという奴だった。
私はそんな相手の及び腰な振る舞いに疑問を覚えずにはいられなかった。
どうしてそんなに怖がりながら尚挑んでくるのだろう?と。
そんな疑問を探る事が、私の異常性を曝け出すキッカケになった。
私は相手の挑発を余所に、小学生らしくない行動を一つ一つ試していった。
そんな腰の抜けた動きでは無理だとか、何故挑んでくるんだとか。
すると相手はその全てに怯えながらも闘争心を滾らせ、私に挑んでくる様になってしまっていた。
昔流行っていた少年漫画の展開に、思わず心躍ったからだろうか。
きっと私もまた、彼女との殴り合いで普通の子供じみた反応を示したり出来るんだと、期待していたのかもしれない。
でもそんな期待は叶わず、残ったのは「女子生徒を殴り倒した鬼」だった。

後から分かった事だが、彼女はイジメを受けていた。
複数人の集団で、直接的な暴力こそ殆ど無いが、悪辣な言葉責めが続いていたそうだ。
クラスのカースト最下位だった彼女は、気付けば私に挑む様強迫されていたのだ。
そして彼女と私との戦いを、誰かが録画していた。
きっと、クラスメイト達は陰でその動画を編集して、それを学校中にバラ撒いたのだ。
鬼が女子生徒を殴り倒す動画として。
一度点いた火種は一気に燃え上がり、すぐさま担任の耳に入った。
担任は私を叱ったが、私に反省は無かった。
何故って、悪いのは私に襲い掛かる選択肢を選んだ相手だから、と。
イジメがあるならば担任や警察に相談するか、或いはイジメを行った者に抗うべきで、間違っても従う事では無い。
何より、教師がイジメを放置しているのが今回の原因。
突き詰めれば、貴方が原因だと。
すると何故か先生は怒りを露わにし、詰め寄る様に胸ぐらを掴んで罵詈雑言を浴びせ掛けて来た。
納得し、反省すべき事柄の筈なのにだ。
その一つ一つに訂正を加えていくと、やがて直接的な暴力に訴えかけた。
だから叩き潰した。
襲われたのだから、正当防衛のつもりで。
そうして膨れ上がった問題が親の耳に入った時。
投げかけられた言葉は「貴方を生むんじゃなかった」という拒絶だった。
どうやら、自他共に認める鬼になってしまったようだ。

16人目

「嗣章:救世mix強制執行」

 時の巣

 ゼルレッチは、まるで美しくカッティングされたアメジストのような結界の内部にいた。
 それは彼の周囲をまるで水晶玉に移された景色のように包み込み、彼の存在を完全に外界と遮断する。

「これで良し。」

 ただの"友人との電話"を聞かれたくないからという理由で張った、この超抜級の結界。
 そこまで秘匿したい電話の相手とは―――――?

「―――――よ、儂だ。」
『これはこれは。ちょっと気になることがあるんだが、聞いてくれるか?』

 結界の中に、声の主であろう旧式の電話があった。
 それこそガラケーどころの騒ぎではない。20世紀初頭のアンティークな電話だ。

「で、何の話だ?」
『大司教。彼らが一体何者かを知っているか?』
「さぁ、考えたこともなかったな。せいぜい種族間を越えた」

『これは余談としての話であり、メサイア教団大司教がどういう連中かの話だ。』



 それは数年前に起きた、ある惨たらしい事件の話だ。
 率直に言ってしまえば、ある小学校が謎の人物達に殲滅されるという事件だった。
 被害者は800人以上、老若男女問わず大勢の人間が凄惨な死に方をした。
 ある者は内臓を炭化させられ、その苦痛に歪んだ顔で。
 ある者は男子生徒数十名にに凌辱され、快楽と絶望に曇った顔で。
 ある者は全身を銃弾の風穴だらけにされ、文字通りの血祭りに上げられて。
 ある者は四肢を引き裂かれ、ある者は実験でもされたかのような判別不能の殺され方をされ。
 結局、その学園に残ったのは凄惨な「死」の山。
 死と死と死が重なり続ける地獄。

 犯人の顔は分からない。姿も分からない。
 性別、年齢、素性、一切不明。
 その正体が何者なのかもわからない。
 分かっているのはせいぜい人数くらいのもので、その数はたった7人。
 そして、その事件があまりにも残酷で、惨たらしく、胸糞悪い話だったというくらい。

 人間凌辱の極みとでも言わんばかりに校庭のグラウンドに生徒や教師の血であろう塗料で『隣人を迫害する罪人に生きる資格なし』と彼らの全てを否定する台詞と罪状文と共に『救世するは我らにあり』という文面を残して、犯人たちはどこかへと消えた。

 余談だが、この凄惨な事件には一人だけ生存者がいた。
 名誉のために名前は伏せるが、それはいじめを受けていたというある女子生徒だった。
 警察は彼女を保護するも、翌日には少女すら忽然と姿を消してしまい、結局、この凄惨な事件は未解決のまま歴史の闇に葬られることになってしまったのだ。



『ひどい話だろう?こう話しているだけで吐きそうになる。』
「しかし、この事件とメサイア教団が一体に何の関係があるんだ?」

 電話の主は、真剣味と楽しさを浮かばせながら話す。

『彼らはこの事件のように悪党は容赦も情けもなく悪だからという理由で抹殺する。例え関わっていなくても「助けなかった」という理由で殺す。だがそんなものは……。』
「少数の善のために多数の悪を鏖殺する。改心の暇も与えず。根本的な在り方はその辺の虐殺者と変わらんな。」
『全く、愚かだ。』

 ため息交じりの電話の主。
 そこに混じっているのは嘲笑か、或いは。

『あーそうそう、CROSS HEROESとは別に行動する"SPM"の5人。彼らも動き出したことも伝えておこう。N、霧切響子、ファルデウス・ディオランド。そして……。』

 友人の楽しそうな声につられ、ゼルレッチもどこか楽しそうに笑う。

「あの2人、か。」



 特異点

「焦げくせぇな。ぜってぇここでなんかあったな。もっと早く来ればよかったか?」
「気にするな、いずれ慣れる。って参加するつもりだったのか?」

 その2人は、特異点の道中を我が物顔で歩いていた。
 一人は黒いジャケットに身を包んだ、顔の傷痕が特徴の好漢。
 もう一人は赤い鎧を纏った、何処か粗暴な雰囲気を纏う騎士然の何者か。
 そんな彼らの下に、一つの連絡が来た。

『……聞こえますか?』
「おう。ファルデウスさんよ、地下に潜ればいいのか?」
 黒いジャケットの男は、何者かに電話をする。その電話相手は、現在海上でジャバウォック島に向かっているはずのファルデウス。
『そうです。この地域の地下に出現した謎のエリアの調査。N曰く『キラの手がかりがあるかどうかまでは分かりませんが可能性は否定できない以上調査を頼みたい。』とのことです。SPMの目的「キラの残党討伐」と今回の"事件"の重要参考人「江ノ島盾子の確保」。その第一歩として頼みますよモードレッド。そしてそのマスター、獅子劫界離。』

 獅子劫界離、そして彼のサーヴァント「モードレッド」。
 ファルデウスともつながっている彼らの目的は――――?

17人目

「アビィダイバーズ外伝:亜人 脳徒2」

今まで両親は、自分が普通ではないと理解してくれた上で、励ましてくれた。
私が必死に普通を努める事を褒めているのだと、子供ながらに理解出来た。
同時に、今まで普通でない事で親を悲しませてしまったんだろうなと思う。
このスタイルなのは誰のせいでもないことも理解して、罪悪感が残っていた。
だから、親がそう言うのも当然だったのかもしれない。
でも、理解は出来ても納得は出来なかった。
私はどうあっても普通には成り切れない。
だのに励ましに答えた結果が、拒絶だ。
そんな理不尽な話に、どう向き合えと言うのか?
この時、私は生まれて初めて、他人に怒りを覚えた。

それからは親も、クラスメイトも先生も、私を腫れ物の様に扱う様になった。
私の事を嫌いながらも、危うくなる事を恐れている連中ばかりだったから、なるがままだった。
学校に行かなくなったのも、これが理由だ。
そんな私は、勉学の穴を埋める様に図書館へ足を運ぶようになった。
図書館には、無数の本があった。
学術書、小説、図鑑、辞書から写真集まで、私の知らない知識が敷き詰められていた。
何より、学問は嘘や詭弁を言わない。
当時の私がのめり込むには、十分過ぎる理由だ。

知識を貪り、蓄積する日々。
その中で、私は一つの物語に触れた。
人類史上最高の天才と呼ばれた男の話だ。
私はその本と著者両方に、酷く興味を抱いた。
一体どんな人生を歩めば、これだけの知を得られたのだろう?と。
また、そんな人間をどのように理解し、本一冊に纏めたのだろうか?と。
それと同時に、人間の本質について知りたくなってしまったのだ。
本を読み進める内、自身の好奇心が芽生えていくのを感じた。
これはきっと知的欲求と呼ばれ、私の求めているものに近い感情なんだと気づいた瞬間だった。
それから、私は図書館で一冊の本を借りると、食い入る様に読み始めた。
そして、共感を覚えた。
彼が過ごした日々に、果ての無い知識への探究心に、自己を磨く姿勢に、己のしたい事を我慢しない生き方に、あらゆる事象と科学を結び付けようとする執念に、文字通り惚れ込んだのだ。

何故そうまでして本を綴ったのか?
私は、その謎を知りたくてたまらなくなった。
今までの私にとって疑問という物は人生の異物でしかなかったが、この好奇心は違った。
初めて、私は疑問という物に対して、一種の恋をするような気持ちで向き合ったのだ。
その日から、私は本を読む傍らで、自らも勉学に勤しむ様になった。
それは紛れもなく、知りたいと欲する欲求の結果だった。
そして自己を見つめ直したいという願望でもあったのだろう。
今までの私は、相手に合わせる事で自らの意思を主張してきた。
私の人生はその繰り返しだった。
だから、私が学びたいと言う意思を持って、行動に出たのはそれが初めてだったのかもしれない。
それでも、疑問を解決するには至らなかった。
否、私は過程そのものを楽しんでいたのだ。
だから、結果自体には大して興味が無かったのかもしれない。
ただ、何でそれを考えたのか?という思考が、今も私を離さないでいる。

私の知的欲求を刺激する物を知りたい。
それを満たす為なら、学校にも顔を出せる様にもなったし、誰とでも会話出来た。
今までよりも優れたパフォーマンスを発揮する事が出来てた自覚もあった。
それはきっと間違い無い事実だと思うし、当時の私にとって、ようやく手に入れた普通の生活と言っても良かったのだろう。
疑問を、知る事を求めるという異常さを除けば。
知識欲は留まる事を知らず、私はいつしかあらゆる書物の文字を貪る様になっていた。
それだけではない、図書館への出入りが常習化してしまい、学校中の大半の時間を読書に費やす様になっていたのだ。
ふと、その殆ど全てを読んでしまった頃、私は気づいたのだ。
歓喜こそすれど、何一つ満足がいってないと。

一つの答えを得た時、満足して手を止める事は無かった。
続きを求め、この一文はどんな出来事を表しているのか、著者は一体どんな思考をしているのか、そればかり考える。
私は終わりの出ない物を求めて彷徨っていたのだ。
そんな時に見つけたのが、一冊の本だった。それは私が初めて借りた本と対をなすものだった。作者は違うが同じ人間を描いたものだと言う事を知り、私はすぐに手を取った。
そこに私の求める答えがあると確信して。
そして私はようやく、私の生き方について向き合える術を与えられた時だった。
だが、私は生まれて初めて他人の生き方を根っこから否定してしまった瞬間でもあった。
その結論は、たった一言で示されていた。
簡潔にして明瞭、疑問を、知りたいという欲求を全て否定する様な形で、記された一文。
_生き続ける限り、我々は同じ問題を共有したい、つまり他人と関わり合いたいのです。
それは、自らを定義する事へ捧げた私の人生を根底から覆す一言だったのだから。

私は信じる事が出来なかった。
知ってしまった、終わりの無い探究の果てを。
知ってしまったから、私は希望を失ってしまった。
いや、自分から捨てたんだろう、あの答え(終わり)を。
次の疑問が眠っているのだから、その果てを知るまで生きようと思うんだ。
それだけの事をしたのだと、思い込まなくてはいけないのだ。
なのにまだ、私の中にはあの本に綴られた言葉が燻っている。
私もいつか、その終わりにたどり着けるのだろうか?
分からない、今でも生き続ける限り問い続けてしまうから。
だからなのか、止める事が出来なかった。
まだ知りたいという欲求を。
その頃には、自分が異端だとかは最早どうでも良くなっていた。
蓄えた知識が、自分を普通たらしめる材料になった。
その代わり、仮面の下にある鬼の面はすくすくと育ち、すっかり膨れ上がっていて。
私の半生の終わりに、それは頭角を現した。

すっかり大人になった私が勤めたのは、粒子学研究員。
粒子加速器を備えた最新鋭の研究所で重要な研究を任せられる様になっていた。
それは、加速器を改造し、より革新的な粒子衝突をさせようという試みだった。
これが成功すれば未知のエネルギー源の開発も可能となる、まさに人類の未来を切り拓く一大プロジェクトと言えた。
大きな機会を任されたのだと重荷を自覚する一方、内心安堵していたのだと思う。
それが、自らの終わり方を探究する為に必要な過程であると信じていたから。
そして研究は順調に進んだ、予定よりも早く進む程に。
やがて最終実験である粒子衝突の場に立ち会う事になった。
研究員達も、私も、皆が胸を高鳴らせていた。
やがて来た衝突による凄まじい衝撃に、誰もが目を奪われていたと思う。
今となっては知る術は無いが。

衝突した粒子から零れる光が、研究所の景色を一変させた。
清潔感のある白い研究室の光景に代わり、曠劫と広がる蒼い色彩だけの世界。
誰もが怯え竦む異常事態の中、一筋の光に問われた。
果てなき知恵を求めるか?と。
そこでただ一人、私は一歩足を踏み出し。
_研究所は、私という成果を残して、跡形も無く消滅した。

18人目

「Vengeance Bullet Order Ⅲ:SPMの謎」

 6年前、ある事件があった。

 1月28日、冬のある貸し切り倉庫での話だ。
 「そうだ、僕がキラだ。そして、新世界の神だ。」
 「いいえ、あなたはただの人殺しです。あなたはノートに力に負けた大量殺人犯、ただそれだけの、何者でもありません。」

 倉庫内部で人知れず行われた、キラ=夜神月と彼を追う組織「SPK」の戦い。
 SPKを指揮していたのは「ニア」と呼ばれる歳当時19歳の少年。世界最高の名探偵「L」を継ぎ、真の後継者としてキラを追い詰め――――勝利した。
 キラ亡き後SPKは解散、皆は元の日常に戻ることになった……はずだった。

「ニア、これを。」
「何ですか……これは!?」

 ネット上で蔓延する「メサイア教団」なる組織の活動。
 活発化している以上、このまま放置するわけにはいかない。

「どうする?」
「手を打ちましょう。国内外問わず、優秀な人材を集めて下さい。特に、戦闘能力に特化した人材が欲しい。」

 キラ、ないしはそれに追随する存在の復活を危惧したニアは、政府組織のコネクションを使い対メサイア教団用の組織「SPM」を結成した。
 「SPM」に集ったのはニアを除いて4人。

 「にわかに信じられないメンバーだ……「”超高校級の探偵”の卵」「政府秘密組織の刺客」「死霊魔術師」「叛逆の騎士の英霊」。」
 「私除くメンバー「霧切響子」「ファルデウス・ディオランド」「獅子劫界離」「モードレッド」、これだけいればある程度の処理は出来そうです。最も、相手勢力の規模次第ですが……。」



 ある日の夜 海上にて

「そろそろ着きますが、待機しますか?」
『では上陸をしたのち、速やかに『情報』の回収を。』
「分かりました。」

 ファルデウスたちを乗せたボートは海上を走り、遠くに映る目的地であろう島を双眼鏡で確認できるまでの距離にまで接近した。
 あと少しボートを走らせれば後は泳ぎや徒歩でも島に上陸できる位置まで到達するのだが。

「来てましたか……もう嗅ぎつけてくるとは連中もなかなかやる。」
「それだけじゃないみたい。」

 周囲には同じように海上を走る、数十艘のボートが。
 それぞれが闇に溶けるかのような墨色に覆われ、ファルデウスたちを乗せたボートを狙っているかのような動きを取る。

「部長、撃ちますか?」
「勿論。ですがまずは援軍として私兵部隊の準備を。あと侵入用のゴムボートは出来ていますか?」
「あ、はい。すぐに……!」

 兵士の一人が、船内に入る。
 その間、ファルデウスと霧切は武装を整え始める。
 潜入用の最低限の武装だけでなく、ロケット砲やショットガンといった攻撃武装を装備し、他の兵士たちが準備したゴムボートに乗り込もうとするが……。

『そこにいることは分かっている!大人しく引き返せ!さもなくば撃つ!』

 その瞬間、ファルデウス達を乗せたボートを探し出すかのようにサーチライトの光が動き出す。
 遠くから聞こえるアナウンスが、ファルデウス達に緊張感を走らせる。

「気づかれたわ、いや最初から気づいていたというか……。」
「仕方ありません、皆さんは迎撃をお願いします。」

 かくしてメサイア教団とSPMの初戦、その火ぶたが切って落とされた。
 気づかれないように発進させたゴムボートの上で、ファルデウスと霧切はある話をし始める。

「ねぇファルデウス、あの『二人』は今何を?」
「ああ、獅子劫とモードレッドの2人ですか?彼らは今……」



 特異点 丸喜パレス内部

「なぁセイバー、何か来い魔力を感じないか?」
「感じるぜ。いったいなんだ……?」

 丸喜パレスを闊歩する獅子劫とモードレッド。
 彼らが奥へと進むたびに、魔力の流れが強くなっていくような……。

「なあ、もしこれの正体が聖杯かそれに追随するものだったら、どうする気だ?」
「決まってらぁ、俺は聖杯の力で選定の剣に挑戦する。いついかなる時でもこの願いは変わらねぇ!」

19人目

「アビィダイバーズ外伝:亜人 脳徒3」

結論から言えば、実験の目的そのものは達成された。
私自身が未知の新エネルギー粒子「アビニウム」となった。
私の全身、細胞の一粒、粒子一つに至るまで。
心身共に異端に成り果てたのだと、今は確信している。
ただし当時の私は、それを把握もしてなければ、制御し扱う術も知らなかった。
私はまだあの時、人間のつもりだったから。
それ故に起きた、散々な結果。
元の研究室に戻った後、何が起こったかも分からないと思えば、気付けば同僚達の頭がぱっくりと消えていた。
私の身体から伸びた粒子によって。
呆然とする私の頭に濁流の如く流し込まれる、同僚達の生涯。
嘗ては求めてやまなかった普通に思考が圧迫され、混ざり合う。
今思えば、何が起こったかを把握しようと取り込み同化したのだろう。
そこで藻掻いたのが良くなかった。
苦悶に苛む身体に呼応して、うねる粒子が研究所を呑み尽くし、そのまま消え去った。
その時の光景を私は憶えている、蒼い光が瞬く破壊の光景を。
今でも時折フラッシュバックする程、鮮明に焼き付いているから。

あの出会いの再現は、未だに叶わない。
同じ条件を整えても蒼い色彩の世界は現れず、問い掛けの兆しも無い。
きっと、あの時出来た未知の粒子は、名前の無い怪物だったのだろう。
人類と、私達と初めて遭遇した、存在が未確定の粒子。
そこに、私が自らの鬼を植えこんだ。
結果、未知の生まれたのが知識を暴食する悪魔の粒子。
私はある種の神になったのだろう。

事実、全能に近いアビニウムは変幻自在のエネルギーとなった。
それこそ熱力学第一法則すらも無視した、無限に増幅する化け物だ。
既知のテクノロジーを思い浮かべれば、体の一部は対応した機械と化する。
MRIにでも、核爆弾にも。
未知の世界を望めば、私は世界を超える事が出来た。
私の世界におけるマルチバースの実証は、こんな副産物で出来上がった。
私が探れば、どんな世界情勢も一網羅に把握出来た。
ジェームズ・ポンドの様な映画のスパイはいなかったが、代わりに間抜けで悪運の強い奴はいた。
私が滅べと願えば、列強諸国すら滅びた。
人間が人類と言う種として私という怪獣に立ち向かったが、手も足も出なかった様だ。
結局、私が生まれた世界は私を最後に滅びた。

人の道からすら外れ、何をやってるのだろうと時折思う。
だが、この選択が間違っていたとも思わない。
外道に成り果てても、まだ知りたかったのだ。
あの本に記された答えの果てを、ただ知りたかった。
一度は否定した探求の先に、何があるのかを。
それが異端の化け物としての生涯であったとしても、後悔はない。
暫く経ち、今に至るわけだが、当時と比べたら随分と落ち着いものだ。
無論、それは見た目の話だけではなく、内面的な話であってではあるが。
あの頃は完全に人類から逸脱した怪物だったなぁ…としみじみ思う。
それだけ、知識という物に獲り付かれていたのだろう。
人間の本質、習性、感性、感情。
絞り出せる物があるなら、あらゆる手を尽くして知ろうとした。
プロセスを理解するまで繰り返し、時には…いや、常日頃から表沙汰には出来ない手段で。
それで幾つ世界が滅んだか、最早数えてはいない。
倫理観さえどうでも良くなりいよいよ以て、人では無くなった様だ。

そんな日々が巡る中、不意に思い立った。
現実世界の知見には限界がある、と。
世界毎に差異はあれど、基本は物理法則に縛られた世界だ。
無限を体現する私の視点からすれば、現実が齎す可能性という物にはどうしても限界があった。
だから私はまず、世界の法則ごと超えてしまおうと試みた。
それには、私すら知らない未知の法則が必要だった。
当時は手探りで探すしか無かったが、長い暇潰しもあって方法を見つけ出すまでに時間は掛からなかった。
まぁ、これも今考えればだが、知識欲故に見つけた手段だったのだと思う。研究の過程に必要として学んだ事が功を奏したとも言えるね。

さて、今その手法が私の目の前にある。
アビニウムに依って作られた、あらゆる世界の法則の数々だ。
中には私の知らない世界も多く含まれており、完全に既知と言えるものは無かった。
そんな情報が、全て私の中に流れ込んで来るのだ。
そこには、まさに果ての見えない知識があった。
これは何だろう?あれは何だろうか?この現象は何だ?
知りたいという気持ちを溢れんばかり満たしてくれるという現実に、この上ない昂揚を覚えた。
それは、私を満たす程の未知。
知らず、私の足は踏み出していた。
未知の世界へと。
そんな考えに至りながら、私は自分がどれだけ壊れてしまったのかを自覚した。
いや、人間ではない時点で、既に壊れていたのだろう。
本当に度し難いのは、そんな物を見て尚、知りたい欲求という物が留まる事を知らずに沸き上がって来た事だった。

だから私は、ある時見つけた仮想世界へと足を踏み出した。
現実に即さない架空の世界。
事象が先で、それを成り立たせる法則が後から立つ世界。
べらぼうに出鱈目で、およそ現実とかけ離れたご都合主義の空間だ。
どうやらここは、トビィと呼ばれるデフォルメキャラが蔓延って自由気ままに過ごす世界の様だ。
彼等の行動の為に、新たな法則さえ生まれる世界。
そんな仮想世界に、私は自ら進んで入り浸っていた。
滅茶苦茶な法則が、現実では起こり得ない理論が、当たり前の様に手に入る世界。
誰が何の目的で作ったかは知らないが、私にとっては、値千金の価値があった。
まるで、本の中に綴られた物語の様に。
現実では得られない知識を、仮想世界で貪る様に得た。
とは言え、最初は戸惑いと懐疑心の連続であった事は言うまでもないのだけれどね。
そんな状態で得られた新たな知見は、私の好奇心を満たし続けてくれていたのだから、皮肉な話ではあるけれど。

だが、やがては仮想世界にも限界がくる。
今までの数多の現実よりも充足させてくれた世界だったが、事象の法則性が曖昧な幸福に偏っている事が惜しいと言わざるを得ない。
どれだけ、未知を追い求めても。結局は、仮想世界ですら同じなのだ。
だが、私はその世界で妥協する事をしなかった。
矛盾する様に、仮想世界では得られる物と得られない物は分かたれる。
ならばこの世界をより深い物にしようと、私は一足掻きした。
仮想世界の法則性を、無理矢理捻じ曲げようと試みたのだ。
如何様に法則を捻じ曲げれば良いか?
そんな事はとうに分かっている。
仮想の存在に現実を混ぜればいい。
事象の為に法則が成り立つ存在が、法則を元に事象を起こさせる。
きっと、私の予知を超える何かを露わにしてくれるに違いないと確信している。
仮想世界の核(サーバ)は抑え、掌握した。
後はハイブリットして、実行するだけだ。
それが、私に残された最後の未知であったから。
アビニウムを介してトビィの一つに、流し込む。
さぁ、私の良き友人となるよう、育ってくれ。

ハッピーバースデー、アビィ・ダイブ。

20人目

【謎の指輪と奇跡は大体信じれば起きるかもしれない】

《エピメテウスの塔 東塔58F》

「着実に進んでるっぽいけど、なんて言うか」

「中身が大体同じだからマップが紛らわしい」

ここ最近、ずっとエピメテウスの塔の中だったせいなのか自然と方向感覚が狂っていくのを感じている夢美と太陽

「慣れたら案外、どうにでもなるけどな」

リドゥに来た時からほぼずっとエピメテウスの塔を拠点とし外部へと活動ているムーくんからしたらめちゃくちゃ得意げだった

「んで、雪は何してるんだ?」

「ん?んー・・・せっかくだから輪っかを磨いている、どう?私、綺麗?」

先程、巨大な思念体と戦った衝撃で転がってきた輪っか(?)を歩く事すら忘れてずっと磨き続けていた
そのおかげなのな、輝きを少しづつ取り戻しているが磨くために使っていた布が少しづつ真っ黒になっている

「雪さんを判定してどうするのやら…それと、それは指輪だよ・・・ほら、磨くならピカ〇ル使いなよ」

「指輪?ピカ〇ル?分かった、使ってみる」



うおおおおお!これはすごい磨き力だぁぁぁぁぁ!!



だろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!よぉぉぉぉし次はこれを使うのじゃあぁぁぁぁ!



はい!博士!うおおおおおおおおおおおお



夢美から援護支援を受け取り雪は指輪を再び磨き始める光景を見て呆れるムーくんだったのだ

「指輪如きでそんな本気になるか?普通」

「磨くなら徹底的に磨く、恐らくあの二人のポリシーなんだろう」

ここで真面目に解説されてもボケのかさましになるだけである。
だんだんこのいつもの光景よりも別の光景な気がして見てると頭が痛くなってくる空間に様変わりして来た気がしてた。

「はあ・・・そんでさぁあんたらはいつまでここ(リドゥ)にいるつもりだよ」

「僕とモルフォはいつでも帰還できるけど…」

「そうかよ。青いお前、よくこんな頭が痛い空間で普通にできるよな」

「色々な人(能力者)を見てきたからね・・・自然となれちゃったのかも?でも、話が通じるだけありがたいと思わないと」

「(コイツもか・・・)」

なにか物騒なこと言っていた気がするが聞かなかったことにする
次に口を開き質問に答えたのは大空太陽だった

「いつまでここに…か。そうだな、とりあえず俺達異端者はブラフマンとリグレットに喧嘩を売られたから買いに来ただけと思ってくれたら助かる」

「まさかここにカチコミに来ただけかよ!?」

さっきまで指輪を磨いていた2人まで駆け寄ってきた

「そうそう、だからリドゥ突撃作戦つまりカチコミだぁ!だって攻撃されたらねぇ・・・?やるしかないよね!」

「うちのやり方は相手をカチコチにしないと気が済まないんでねぇやるしかねぇよなって」

「ここにはバーサーカーなヤンキーしかいないのか?????」

多分そうなんじゃないかな?と思ったGVだったのだ・・・

「もう1つ言うけど今現在、上に現在進行形 下にクリア後のセーブデータが存在しているらしく今使われているのは・・・真ん中のセーブデータだ」

「え、それじゃあつまり、今いるこのリドゥは真ん中でそのセーブデータがある…ってコト?!なんで今になって再構築し始めたの!?」

_人人人人人人_
<ーunknownー>
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

「待て待て待て、そんな都合のいい奇跡あるの?」

「全くだー!」

「話は最後まで聞いてくれ、これを引き起こしたのは恐らく【フィールド変換専用起動端末】だろうと踏んでいる。これには空間属性が付与されている」

「「あっ」」

「「(【フィールド変換専用起動端末】?)」」

「本来存在しない真ん中のデータは空間属性が作り出したやつだから元々存在しているものやムーくん以外は正常扱いだけど部外者である私達はバグ的存在と扱われるから真ん中はunknown扱いなんだよね?」

「そうだ。そしてもう1つ、空間属性のエネルギーは自然消滅して元に戻る習性があるから俺達が居られる時間はかなり限られてきているのではないだろうか?」


話に完全に置いてけぼりにされた星乃雪は他の人にも質問してみることにした

「ねえねえ、太陽と夢美の話分かる?」

「いや、全然分からん」

『なんなんでしょうね?』

「うーん・・・」

実は私も分かってない


「ええー!!じゃあブラフマンとリグレットが現実世界に来た理由はなんすか!?なんなんすか!?」

「何かしらの世界の誤作動で現実とゲームの次元が少し崩れたんじゃないのか?」

「くっそ!もうそこは修復されたな、畜生!」

「え?なんでそんなに悔しがるんだ?」

「もうー夢美は召喚・移動魔法使えるでしょ?」

「雪さん・・・そうじゃないのよ、そうじゃ!!!」

「それよりもお前らは急がなくていいのか?」

「そうだった、それじゃあ・・・目指すか、天上まで・・・とGV、モルフォ、ムーくんお前らはどうするんだ?」

「僕も着いていくよ、ここまで来たからね」

『GVが行くなら何処へでも行くわよ』

「ずっと拘束されているからついて行くことになるだろ?」

拘束を解くとずっしりと重厚感ある音が地面に響いた

「・・・なっ!は!?」

「これでお前は自由だ」

「おい俺が何するか分かったもんじゃないぞ?お前らに・・・復讐するかもしれないんだぞ」

「そうだな・・・敵になったら多分全員お前に対して容赦しないと思うがその時はその時だ」

「カツアゲしてもいい?」
「え、ダメだよ?」
「なぜすぐそういう発想に行き着くんだ」

「でも、着いて行くのは自由だけどどうする?」

「着いて行くかよバァァァァカ!!!」
ムーくんがパーティから抜けました ☆
おや、戻ってきた
「俺はお前らの仲間じゃねぇ!」
そういって、彼はどこかに去っていってしまった・・・

「あっの宇宙服ピンク野郎ォ・・・敵になったら絶対ぶん殴る」

「そ、そうか程々にな」

「それでどうする?」

「とりあえず進もうか」

「ブラフマンとリグレット倒すってことになったな」

(でも、これで本当にいいのか?)

21人目

「かくして思惑は回帰する」

ジオウ一行を引き連れて、アビダインは荒野を進む。
目指すは。何者にも代えがたき友。
舞い散る砂塵を突っ切って、到着の時を待ちわびていた。
そんな折。

「それにしてもよぉアビィ!」
「うん?」

スカル、もとい竜司が辛抱堪らんといった満面の笑みで、突然歓喜の声を上げる。
それもその筈。

「アビダイオー?つぅのか!まさか巨大ロボットに乗れる日が来るとは思わなかったぜ!」
「はっはぁー!だろう!?苦労して作ったんだなぁこれが!」

竜司の歓喜に同調して、アビィが自慢げに語る。
男子として、巨大ロボットに憧れない者がいようか?
いや、居ない。
爛々と輝く竜司とアビィの眼は、無垢な少年のようだった。

「私より先に戦隊ロボを作るなんて、ズルいぞっ、アビィ!!」

対し、双葉(ナビ)は鼻息も荒く悔し気な表情だ。
何せ双葉もまた、自身のハマっている特撮「不死鳥戦隊フェザーマン」の戦隊ロボをいつか作りたいと願っていた者なのだ。
それを仲間とはいえ先を越され、オリジナルの巨大ロボを完成させられた。
少女に募る想いは、わなわなと震える両手に込められていた。

「こういうのは早い者勝ちさ、悔しかったら君も作るんだね。」
「何を!今に見ておれ、アビダイオーよりもっと凄い『フェザーマンロボ』を作ってやるからな!」
「はっはっは!そいつは楽しみに待っているよ!」
「その長っ鼻をへし折れる日を待ちわびておれ!」
「はいはい、二人とも喧嘩しないの。」

やいのやいの言い合うハッカー二人と、適当に仲裁するクイーンこと真。
そんな彼等を見て、ノワールこと春が苦笑した。
竜司も双葉も、何だかんだノリノリで巨大ロボに乗って喜んでいる。
いくつになっても子供なのだなと、微笑ましく思ってしまっているのだ。
だが同時に、改めて彼等の逞しさを感じたのも事実だ。
強大な力を振るう力を持つ訳ではない者達ばかりなのに、よくやってくれていると感嘆する思いだった。
_つい先刻まで、仮初ながらも幸せな夢を見せられ、醒めたばかりだというのに。

(双葉ちゃんは、もう次に進もうとしているんだね。強いよ。)

そんな心境を思い浮かべた理由は、双葉と春の見せられていた夢の共通点にある。
廃人となった、肉親との日々。
双葉も春も、元の現実では廃人化事件において親を廃人にさせられている。
双葉の親に至っては直後に死亡しており、その一件からパレスを築くに至るまでだった。
ふと、双葉の様子を窺う。
双葉はアビィへの文句を言い終えてか、こちらの視線に気付いたらしい。
すると一転して優しい笑みを浮かべ、うん?と首を傾げる。

(強いね、双葉ちゃんは。)

そんな過去の傷を持ちながら、前を向き、未来へと歩き出す強さを持つ双葉に、春は感銘を受けざるを得ない。

(私も、もう感傷に浸るのは終わりにしないと。)

未来の現実を認め、先に進もう。
そう言わんばかりに胸の前で腕を握る。
今は、前を向きたい。
先達として、先輩として。
竜司や双葉達の支えになる位に、強くあらねばならない。
そんな想いが春の心で揺れていた。

(…まだ、完全とは行かないけど。)

前を向くとは言え、すぐには乗り越えられない苦悩。
過去の傷、心の傷。
簡単に消せるものではない、簡単に克服出来るものではない。
特にトラウマを負わされた春にとっては、尚の事だろう。
だから、今はまだ胸の中で疼かせるのみ。
しかし、いつか必ず向き合う時が来る。
来るはずだ。
そんな予感がした。
だから今は、今だけでも、先達の威厳を見せよう。

(_やっぱり、難しいなぁ。)

心中で、苦笑する。
完全無欠にはなれない。
そんな苦悩の連続なのだろうと、春は思わざるを得ない。

(でも、今は私なりに頑張るしかないよね。)

今回の事で知った絶望は大きかったが、だからこそ再び希望の光を取り戻す決意が出来た。
過去の傷を拭い去れない自分が居ても。
不屈の心で立ち上がり、光を信じて前に進もう。
いつかまた、傷を乗り越えられるように。

(いつかきっと、乗り越えてみせる。)

軽く瞑想し、決意する。

「強いんだね、君は。」

そんな折。
ふと、背後から声が掛かる。
驚いてそちらを見る春。
するとそこには、柔らかな表情を浮かべた常盤ソウゴが居た。
突然どうしたのだろうかと訝しむが、すぐに思い当たった。
先の一件で見せた春の心の傷の事。
方法は検討も付かぬが、おそらくは常盤ソウゴも人の心を見透かす術を持つらしい。
だからか、と内心で納得した。
数秒の間、少し思い悩んだ上で春は答えた。

「そうでも、無いですよ。」

春の心にもまだ残っている、絶望感と哀しみが。
あの廃人化事件には終わりがあるが、心の傷はまだ終息していないのだ。

「傷は、消えてません。でも。」

そう言葉を紡いだのだ。
この言葉にソウゴが何と返すのか、予想も付かないし分からないが、受け止めはするだろうと思っていたからだった。

「私は前を向きます。みんなに助けられても、私は強くなってみせます。」

せめて心の傷を乗り越えられるくらいにはと願うから。
そのためにも前を向いて歩んでゆくと宣言する春に、ソウゴは一瞬の間を置いて口を開いた。

「俺が知る中で一番強いかも知れないね。」

思い掛けない称賛に、面食らったような表情を浮かべる春。
二度見たソウゴの顔には、優しげで確かな慈愛が宿っている。

「人は弱みを受け入れて強くなれる。そういう意味で、君はきっとこれから、もっと強くなると思う。」

優しく微笑むソウゴの真意が分からず、少し困惑する春。
そんな春の様子には構わず、ソウゴは続けた。

「その痛みは消えないし、傷も完全に塞がる事だって無いかもしれない。でもね?君の未来への想いに、勇気に答えるくらいの強さにはなってくれると思うんだ。」

春の抱く想いを代弁したらしいソウゴの言葉には、不思議と説得力が籠もっていたのである。

「だから大丈夫。君の覚悟は挫けない。」
「…えぇ、そうだと良いですね。」

そんな励ましを受けると同時、春は再び決心する。

(今は弱くたって、必ず強くなって見せる)

傷跡は、王の後押しによって誇りへと昇華された。
後は時間が解決するだろう。

「…さて、見えてきたぞ。」

そうして決心が固まった折、アビィから宣告が為される。
一同がブリッジから見下ろす先には、お台場。
その先に見据えるのは、未だ姿を見せぬパレスの主。
心を弄んだであろう人物に対する静かな怒りに目付きを鋭く尖らせる中、アビダイオーの右腕が大きく振り上げられる。

「生体反応は?」
『予測被害半径にはありません。』
「よし、右エンジンブロック非常弁全閉鎖。圧力150%まで上げろ!」

口早に告げながらアビダイオーを操作するアビィ。
同時に、アビダイオーの右腕が淡い蒼のエネルギーを纏いだす。
その輝きが臨界まで高まった時。

『圧力150、打てます』
「バスターブレイク!」

轟音と共に、パレスへ振り下ろされる右腕。
蒼い衝撃波を伴って迸る爆裂。
今、パレスに大きな穴(ショートカット)が空いた。

22人目

「取引成立」

黒平安京での激闘が終わり、幻想郷で異変が起きてるその一方で、とある場所では二人の人物による密談が行われてようとしていた。
一人はジェナ・エンジェル。もう一人はレナード・テスタロッサ。
ジェナ一味とアマルガム……クォーツァーに並んでこの物語初期の頃から暗躍していた2大勢力の代表とも言うべき二人。
この二人が直接出会い話し合おうとしていた。

「わざわざこんなところまで来てくれるとは、感謝するよジェナ・エンジェル」
「なに、こちらこそこのような場を用意してくれたことを感謝してる。
……それよりも、この私を呼んで、話とはなんだ?」
「……単刀直入に言おう。
我々と取引をしないか?」
「取引だと?」
「そうだ。聞いた話じゃ君は戦力を増強する為に目的が違う者達とも手を結んでるらしいじゃないか」
「……どこからその話を聞いたか聞きたいところだが…その通りだ。我々のグループには個々人の間での協力関係をこそ結べてはいるが、統率がない……いわばいつ裏切られてもおかしくはない状態だ。
ならば手っ取り早く戦力を増やし、謀反を起こす前にこちらの目的を達成する必要がある。
……で、それがどうした?」
「そこで今回の取引だ。我々からはそちらへ資金や兵器、傭兵の提供をしよう。
その代わりにそちらにいるバーチャドール……リグレットの力を借りたい」
「なるほど(先ほどの話だけではなくリグレットの存在も知ってるとは……どうやって知ったか気になるところではあるが……)……いいだろう。戦力が欲しいのは事実だからな」
「では、取引成立だな」

23人目

「バトルオブパレス」

ジョーカーが攻撃を防げたのは、直感ただひとつだった。

「っ!」

構えたダガーから、火花が散った。
突如として現れた少年の、目にも見えぬ回し蹴りを、ジョーカーは咄嗟に防いで見せたのだ。
アビィに似た姿、動き、そして刺す様に冷たい殺気。
これ等が勘と合わさらなければ、音速をも超えたであろう初撃をいなす事は叶わなかっただろう。

「へぇ、これを防ぐんだ。」

僅かばかりに浮ついた声。
嘗て共に戦ったとアビィと、全く同じ攻撃。
見た目は限りなく似ているが、根幹が全く違う。
矛盾するようだが、そうとしか言い表す事が出来なかった。
平気で人殺しに手を染める様なアビィを、ジョーカーは知らない。

「"僕"の事を知ってるからなのかな?」
「_っ!」

蹴りの反動を利用して、距離を取るアビィに似た少年。
彼は先程までの彫刻じみた無の表情を少しばかり綻ばせ、感心した様に口角を上げる。
まるで旧友に挨拶でもするかの様な自然体な問いかけをしてきた。
周りの環境や状況など知った事では無いと言わんばかりだ。
人並みの表情が露わになったのに、より一層不気味さが増しているのは如何なる妙か?
暗がりの中でほんの僅かな蛍光灯の光に照らされてるから、だけではない。

「_少なくとも"お前"は知らないな。」

こうして対峙して分かるが、少なくとも常人では無い。
常軌を逸した体術、それもあるが何より纏う雰囲気が人のソレでは無い。
一連の動向から読み取れるイメージは、気紛れな猫か、或いは快楽主義の殺人鬼といったところか。
疑問は尽きないが、刃を向けてきた以上、敵である事に相違無かった。

「釣れない事を言うんだね、まぁどうでもいいけどさ。」

この少年が出す表情は、明らかに"アビィの表情(かお)"とは異質な物。
だのに、何処か似通って見えた。

(この違和感、一体なんだ?)

この少年はアビィでは無いのは事実の筈なのに、どうして彼と重なって見える?
振って湧いた疑問に、思案を巡らせるジョーカー。
その隙を、少年は見逃さない。
瞬きより速く懐に潜り込み、肘を撃ち出す構えを取る。
無論、その程度はジョーカーも読んでいる。
即座にバックステップで距離を取り、迎撃する。
針の穴に糸を通すが如き妙技だった。

「あはっ、これも防いじゃうんだ!やるねぇ!」

少年は、心底愉快気に笑った。
ジョーカーの技量を称賛しているかの様な台詞だ。
だがその言葉に反応する暇も無く、少年の拳に力が込められていた。
ジョーカーもダガーを握る両手に力を込める。

「でも、これは防げない。」

しかし次の瞬間、目視出来る速度を越えた打撃がジョーカーの脇腹に差し込まれた。

「ガァッ…!?」

内臓を揺さぶる様な衝撃。
衝撃の余り、肺の空気を全て吐き出さざるを得なくなる。
油断?違う。
この少年は、アビィとは違うバトルスタイルを取っただけだ。
追い撃ちをかける様に回し蹴りが右の首を狙って放たれる。
ならばと、ジョーカーはダガーを握りしめた左腕を振り上げた。
少年の拳が接触する直前に腕を滑り込ませ、軌道を横にずらす。
左腕が砕けんばかりの軋みを上げるが、結果的に被害は最小限に済んだ。
だが、攻撃は終わらない。

「そら、そら、そーれっ!」

軽快な口調と共に、空を穿つ風切り音を鳴らしながら殴打の嵐が押し寄せる。
ダガーで捌くには手数が不足し、回避に徹するも徐々に腕や脚が被弾を始める。
ジョーカーの頬には、早くも冷や汗が滲み始めていた。

(動きのキレが良い、緩急も自在か…!)

対して此方の動きは次第に鈍っていく。
まるで蛇だ、執拗な追尾を繰り出す猛毒の大蛇を思わせた。
アビィの時とは違う。
目の前の少年は明確に殺しに来ているのだから、当然である。
しかし退く術は無い、目の前の敵を倒すしかない。
腹は括った、後は成すだけだ。

「モナッ!」
「おう、待ちわびたぜ!」

ジョーカーの掛け声に呼応して、モナがペルソナを顕現させた。
白銀のレイピアを振るう剣豪ゾロ、その威信が刃先に冴えわたる。
ジョーカーの思惑を読み取っていたモナは、流れる様に詠唱した。

『スクカジャ』

レイピアでZを描くと、燃え盛る力の奔流がジョーカーへと流れ込む。
瞬間、ジョーカーは疾走した。

「うわっ!?」
「そこだっ!」

少年の前から姿を消したジョーカーは、頭上を取っていた。
少年の頭上だ、それも片手で逆立ちの体勢である。
ゾロの力により身体能力を底上げされた体は、ジョーカーの真意を発揮させる。
少年も逃げようとするが、抑え付けられた状態では最早間に合わない。

「せぇえやっ!」

重力に惹かれるがままに体を縮め足を振り下ろし、容赦なく蹴飛ばす。

「いたぁっ!?」

鈍い音が響く。
少年の身体は、軽く5mは高く飛んだだろうか。
錐揉み回転しながら宙を舞う様は、まともな受け身も取れず直撃した証左だった。
しかし、少年の体は空中でふわりと静止した。
そのまま、重力など無いかの様に空中に着地する少年。
彼の脚は、見えない床の上に立っているかの様だった。

「酷いなぁ、僕の顔に傷を付けるなんて。」

頬を手で擦りながら、余裕綽々といった様相で語る少年。
その底知れぬ力が放つ不気味さを前に、ジョーカー達の目付きが一段と険しくなる。
モナとジョーカーの二人を相手に捌ききる実力。
彼は一体何者なのか?
そんな疑問が、自然と視線を奥へと向かわせる。
今の今までずっと黙視していた、丸喜の方に、だ。

「奴は何者だ?」
「アビィの姿をしてやがるが、偽物なのは間違いねぇ。正体を教えろ!」

モナの問いかけに、丸喜は動じない。
そして、暫くの後に小さく笑う。
やがて彼は答えた。

「シャドウさ、アビィ君のね。」
「やっぱりか…!」

今にして思えば、至極単純明快な答えである。
金色の眼、ドス黒いオーラ、いずれもシャドウに当てはまる事柄だ。
ただひとつの例外を除けば。

「何故、アビィのシャドウが俺達の邪魔をする?」

ジョーカーが口を開き、そして思ったままの事を問いかける。
彼がアビィのシャドウならば、尚更敵対する理由が分からない。

「だって、君達が僕等の邪魔をするからさ。」

少年は、当たり前の様に言った。その声色は、何処か無邪気さすら感じる。
それは丸喜と言う男が見せていた純粋さと近しいものだ。

「何を言ってやがる?」

モナが、噛み付く様に吠える。

「だーかーらー!君達が丸喜の邪魔をするからじゃないか!ならこうするしか無いじゃん!」

少年の口調は次第に強まり、声量も急速に増大してゆく。
それは心から溢れ出す怒りや憎悪の表れとも取れた。

「丸喜先生、貴方は一体何を…?」

ジョーカーは、問わずにはいられなかった。
彼が、自分の知る丸喜とは全く別の何かに見えたのだ。
その変貌ぶりは、明らかに異常であったから。
そんなジョーカーに、彼はこう答える。

「救済するのさ、人々を。」

事も無げにそう言った丸喜の表情は、まるで別人の様に冷たいものであったが、笑顔の様相だけは残っていたのだった。

24人目

「幻想に咲く狂花」

 幻想郷 迷いの竹林

「じゃあ、案内を頼む。」
「仕方ない、外まで送っていくウサ。」

 迷いの竹林を歩くリクとてゐ。
 一度通っているためか、或いはてゐという案内人がいるためかその歩みは軽い。

「で、てゐ。なんであの油を?」
「あれの正体とかが分かれば抗体が作れそうだと思って、お師匠様は『どんな薬も作れる程度の能力』を持っているからさ、あれで抗体作って人間たちに配れば……。」
「悪霊の呪いにも対抗できる、と。」

「……で、出来そうか?」
「どうだろうね。『出来なくはないけど完成まで時間かかるかも』って言ってた。」
「そう甘くはないか。」

 その時だった。
 ガサガサ――――草むらを掻き分ける音が竹林内を反響する。
 その音が2人の不安をあおり、臨戦態勢を整えさせる。

「来るか……!」

 その音の正体は、2人の予感通りだった。

「悪霊、それも数が多いぞ!?」

 待ち構えていたと言わんばかりに出現する悪霊。ただしその数が目測だけでも100は超えているのは予想外だった。
 その中には進化した悪霊も数体紛れている。

「突破できそうか!?」
「やってみる!脱兎「フラスターエスケープ」!」

 鎖のような弾幕が渦を描く。
 その一つ一つが悪霊の心臓部たる赤核を抉り、破壊してゆく。

「撃っても撃ってもキリがない!」

 しかし、間に合わない。
 最初は命中していたはずの弾幕はやがて回避を覚えた悪霊によって躱され、防御され、弾かれる。

「――――」「――――――!」「――!」
「こいつら……!」

 油に濡れた骨を馴らし、けたけたと嗤うような動きと唸りを上げる悪霊。
 リクも抵抗するが、しかして数が多すぎる。

「―――――!」
「だが、こんなところで諦められるか!うぉぉおお!!」

 生存への咆哮。
 最後まで抗うという確固たる意志を、空に誓うが如き。
 リクはキーブレードを持って悪霊の群れに特攻を仕掛ける。

「―――苦境を前に諦められない人は嫌いじゃないけど、蛮勇は何か違うわね。」

 その刹那、光が咲いた。
 迫る巨大な影をすべて焼き払わんとばかりの、強烈無比な魔力のうねり。
 閃光、熱、暴威。その全てが悪霊の黒い影を焼き焼失させる。

「強い悪霊と意気込んでやってきたはいいけど、この程度なの?」
「て、敵か!?」

 目くるめく暴威を振るい、リクの前に立った麗人。
 日よけ傘を手にし、宙を舞う花びらが如き可憐さを纏っている。
 しかしてその眼に宿すのは、狂おしいほどの強者に対する狂気的な渇望――――。

「私は―――――風見幽香。あんたが私の事を敵だって言うなら、そうなってあげるわ。」
「こいつ____ッッ!」

25人目

「そして集いし怪盗団」

丸喜の浮かべる柔らかな笑顔が、ジョーカーには真冬に差す太陽の様に冷たく思えた。

「救済…?あの夢がか?」

人々の救済。
このパレスに向かう道のりで、幾度と無く聞かされた言葉。だが、その意味は曖昧なままだった。

「そう、皆が望んだ現実。誰も傷付くことの無い、間違いの無い理想の世界だ。」
「あんなもの、望んだ覚えは…」
「いいや、あるさ。」

語尾を強めたその言葉に、一同は傾注せざるを得ない。

「君達だって、心の奥底で願っているはずだ。誰もが傷付かない、皆が幸せな世界をね。」

彼の言葉は、それ自体が麻薬の様な効果を持つ様に感じられた。
事実、反論しようとする意思は朧気に霞み、消え去りそうだ。彼の言葉がやけに魅惑的に思えて仕方がない。
だが、現実にそんな世界はあるのか?
そんな疑心を見透かしたのか、丸喜がモナへ問う。

「疑っているみたいだね?でも君達も体感した筈だ、幸せな1年を。」

その言葉に、ジョーカー達が俯く。
それは、まさしくジョーカー達自身がつい先日まで体験した事だ。
有り得ざる1年、IFの世界。まさに彼の言う理想の世界そのものだった。
彼の話を聞いていると、妄想とすら感じられなくなってくる。
もはや、誘導尋問の様に思えた。
あの1年間が、自分にとっての紛うこと無い現実だったのではないかとさえ思えた。

「確かに、あの時間は幸せではあった。」

自らを否定するジョーカーの言葉。
だがジョーカーの浮かべる表情は、言葉とは裏腹に険しい物だった。
さながら達観している様にも見え、同時に否定の意を表しているよう。

「だが、誰かに幸福であれと決められた時間でもあった。」

ジョーカーは、この1年ずっと抱いていた違和感を、丸喜にぶつける。
それが自分の中に最初からあったかの如く。
この1年は、周到に用意された幸福な世界そのものだ。皆が笑い、誰もが祝福される理想の世界だ。
それ自体は間違いない。
だが、それは決して自分が掴み取った幸せではない。ただそう在るべきと定められたからに過ぎない。
ならば、最早その者の掴んだ幸せとは言えないであろう。

「幸せだけの世界が、気に食わないのかい?」
「自分が幸せになる為だけに用意された偽の世界に、何の意味がある?」

ジョーカーが睨みつけながら問うと、丸喜は困った様に、そして何処か寂しそうに笑う。
その笑みが、ジョーカーには哀れみの色を含んでいる様に見えた。
それは、次の言葉にも表れた。

「間違いや不幸、悪意が無いだけでも十分だとは思わないかい?」

悪意、その言葉にジョーカーの表情が一瞬曇る。
だが、それもほんの束の間の話だ。
確かに悪意の存在は人を狂わせる事がある。精神廃人化事件がその最たる例だ。
ならば幸せを求める過程で、それが無い事も確かに悪くはないだろう。
だが。

「それだけでは、誰も前に進めない。」

ジョーカーは、自らの矜持を見失っていなかった。
自らが望む事、人々の笑顔の為に為すべき事を見失う訳にはいかなかった。だからこその否定だった。
その言葉を聞き、丸喜の表情が引き締まる。目の光が、ほんの少しだけ曇った気がした。
そうして彼はその口を開く。

「うん、やはり君は僕の期待通りだ。」

予想と違う反応に、ジョーカーは怪訝そうな表情を浮かべる。
だが丸喜は構わず続けた。

「不幸や悪意を糧に、寧ろ前に進める。強いね、雨宮君は。」

そう言いながら、丸喜はジョーカーに笑いかける。それは、悪意の無い純粋な賞賛。
先程までの彼とはまた違う、何処か不安定な様子を感じさせる笑みだった。
同時に、彼の周りに漂う空気も明らかに変化する。冷たく感じるのに、何故か生暖かな奇妙な雰囲気だ。
芯の冷えてない身体と言うべきだろうか。
底冷えする様な空気の中で、それが不気味に際立つ。

「おいジョーカー!コイツはヤバいぞ!?」
「でも、皆が皆そうじゃない。」

モナの訴えに気付く前に、その変化は訪れていた。
一瞬、ほんの刹那の事だったが、丸喜の放つ気配が禍々しい物に変わった。
彼の見せる表情や態度は変わらないのに、気配だけが明らかに変わっている。
思わず身を引くモナ。

「雨宮君みたいに強い人ばかりじゃない。悪意や不幸、怠惰。人はいくらでも落ちぶれる。」

丸喜はジョーカーへ目線を向ける。だが、何故か"視線"が合わない。
目が合っているにもかかわらず、それが本当に自分を見ているのか判然としない不安感を覚える。
その不気味さを打ち払うかのように、モナが吼える。

「いいや違う!人は何時だって、現実を見て進める時が_!」
「煩いなぁ。君達だってそれは見てきたんだし、認めなよ。」

だが、その声は少年…シャドウアビィの言葉に搔き消される。
ホールに響き渡る、怒気の孕んだ静かな声。そして、剥き出しの殺意。
どうしてこう簡単に殺意を醸し出せるのか、ジョーカー達はシャドウアビィを図りかねていた。
だが、シャドウアビィが続けて言う。

「メメントスの最深部で見たでしょ?現実を見て無かったり、不貞腐れてるのが大半だ。前を向く事を諦めて、下だけ見つめて。そのまま一生を送るんだ。」

心底軽蔑する口調で言いながら、ジョーカーへ目を向ける少年の姿を取った悪意。
その声に敵意が籠るのは当然だと言わんばかりだ。
だが、ジョーカーはその言葉を真っ向から否定する。

「いや、違うな。人は前を向ける時が必ず来る。」
「その通りだ、ジョーカー!」

ソレに賛同する様に横合いから口を挟んだのは、今の今まで口を噤んできたキン肉マンだ。
彼は、シャドウアビィを真っ直ぐに見据えながら続ける。

「人でも超人でも、誰かの為を想う超人魂を胸に宿せば、誰もが正義の元に輝けるんじゃい!」

その口調は何時もの様な軽い物ではなく、真剣味を帯びたものだった。
剣幕漂う空気の中、モナが小さく笑う。

「そうだな、そうだった。それが出来たからワガハイは胸を張って人を好きだと言えるんだ!」

それは、心の何処かで忘れかけ、しかし思い出した憧憬。
己が胸を張って、人を好きだと言える。そんな自分でありたいと願っていた気持ちだった。

「確かに人間ってのは何も無しに生きていける程、強い存在じゃねえ!だが逆に想いを背負った人間は、どこまでも強くなれるんだ!」

人の想いは尊い物だ、それは間違いないと信じている。
そうでなければ、あの一年で出会った人々の思いが報われない。だから反論せずにはいられないのだ。

「所詮は綺麗事、現実では無いわ。」
「そうかな?」

不敵に笑うモナに、武道達が僅かな疑問符を浮かべる。
直後だった、パレスが揺れたのは。

「何事だ!?」
「はは、案外早かったな?」

その正体が何か分かり切っていたモナには、動揺の二文字は無かった。

「眼ぇかっぴらいてよーく見やがれ!」

そう言い放った瞬間、天井が瓦礫と化して落盤する。
土煙が立ち上る中、その中から幾人もの人影が姿を現す。
その正体が露わになるにつれ、丸喜は動揺を隠せなくなる。
何故なら。

「君、たちは…!?」
「心の怪盗団、参上だぜっ!」

夢に囚われた筈の者達だったのだから。

26人目

【超越者会議に来た女神と龍】

ー現在地:時の巣よりー
300万ボディが未知の世界より届いた

残念な光景を見ることになるのだが、龍の影から現れたのは3角の上に丸を置いてニコニコマークが書かれた謎の物体がそこには立っていた・・・

もう一度言おう、この体は300万で出来ている

「(うぅ…また変なのが来たぁぁ〜やっぱり厄日だぁ…)」

こんなふざけた物体が降りたってしまったことに時の界王神は静かに、ただ静かに心の中で泣いていたのだった・・・

「なあ、ウイス」

「はい、なんでしょうか?ビルス様」

「ボクは今、バカにされているのか?」

「ふーむ・・・私的にはいいデザインだ思いますよ?」

「ウイス、お前正気か・・・?」

「はぁい!とてもフレンドリーだと思いませんか?」

特異点へ龍に乗ってきたその神秘
その神秘が降り立ったと同時に崩れ去っていく
その事実を知って呆れを通り越して逆に冷静になるビルス、そして何故かウイスはこの謎の物体に対して興味津々という顔をしていた。

少し無言が続いた。
なぜならば、この謎の物体が現れてからというものの超越者達らしからぬなんとも微妙な空気に変貌してしまう
なんなら、ウイスはスケッチし始めるというなんとも奇妙な空間が出来上がってしまった。

「後ろから失礼」

そんなことなんぞ露知らず龍から人間の姿に変身し挨拶をする者が出てきた

「おや、さっきの龍は・・・」

「沈竜狩 龍華御前(ジンリュウガ リュウカゴゼン)と申し上げる、主が身動き取れないゆえ代わりに」

そう言って前にいる者達全員に深々とお辞儀をする

「じんりゅうが・・・うーん、長いね?」

「ホホホホ…儂のことは気楽に龍華とでもお呼びしてもらってよいぞ」

「見た目は人間でも中身は龍、変わらないんだね」

「言われてみればそうじゃな、どうじゃ?興味無くなったであろう?」

「うん、人間のフリだしね」

「ふーむ、なにもかもお見通しというわけか・・・」

「それで、その物体は一体?」

「おお、そうじゃったな。この物体はそうじゃな・・・儂らのところの代表者とでも言った方が良いか?」

「とてもだが代表者には見えないな」

「えーと、これが代表者?虚数空間でもなかなか見かけない謎の物体に見えるね」

「どの道、存在していてもあの空間では生きられなさそうではあるがな」

「あー、えーっとなにかとんでもないことを聞いた気がするけど・・・私の声、聞こえていますでしょうか?あの四季彩世界の管理者です」

「ほお、やっと喋りおったか・・・待ちくたびれたわい」

「喋りますよ?でも宇宙人にずっと見つめられたら喋れませんよ」

「宇宙人・・・!いえいえ、私は天使ですよ?」

「人格見た目によらずとはこの事ですね・・・」

「それで、僕達に何の用だい?」

「単刀直入に言いましょう、私達の世界から厄介者達(異端者)がいなくなってしまったのです。この問題を解決しなければいずれ面倒な存在へと変化していきますよ」

27人目

「双星は別つ/嗣章:異端者の処遇」

瓦礫の中から露わになる、怪盗団の姿。
その光景を当然と言わんばかりの笑顔で迎えるのはジョーカー達。
逆に動揺を隠せないのは、他でもない丸喜だ。

「そんな、まさか…有り得ない!?」

わなわなと腕を振るわせ、驚嘆の表情を浮かべる丸喜。
しかし、現実は非情にも彼等に真実を突き付けた。

「捨てたというのかい…?幸せを、自分達の望んだ幸福を!?」

夢を見ていた彼等は今、ここで覚醒を果たしている。
即ち、ソレは理想の現実を棄て、自らの手で過酷な運命に抗うという意思表示に他ならない。

「つーことは、丸喜先生。アンタなんだな、俺達を夢に誘ったのは。」
「…その通りだ。なら、君達は何で…?」

理解が及ばない、といった様相で静かに汗を垂らす丸喜。
何故こうも簡単に、幸福を捨てられるのか?何故こうも、強くあれるのか?
誰もがその光景に息を吞む中、スカルが心底愉快そうに言う。
それはもう、心底吹っ切れた様に。

「だって、そうだろ?」
「あぁ。」

周りの仲間に軽く視線を向け、彼等もまた同じ意思だと主張する。
だから、彼は迷う事なく胸を張って言ったのだ。

「俺達は、何時だって自分の意志で生きる事を選ぶんだよ。どんな現実とだって戦い抜いてやるってな!」
「_はっ、漸く意見が一致したな。」

ホールの奥底で、クロウが珍しく同調する。
彼もまた、定められた運命に抗う叛逆者だからだ。

「誰かに決められる運命なんざ糞喰らえだ!その点よく戻ってきたなぁ、怪盗団!」
「ちょ、態度がでけぇなクロウ!?」

現実への絶望、抗いようのない運命。それらは確かに彼等を追い詰めた。
時には絶望感に満たされ、溺れる事もあった。
丸喜の見せる夢に浸るだろうと考えるのも、無理は無い。

「…ま、いつまでも後ろを向いてうじうじしてられねぇのは同じか!」

しかし、それがどうした?とスカル達は笑って見せる。
そんなモノで挫けてしまう程、心の怪盗団は弱くない。
否、そもそもそれは"弱さ"ではない。彼等の糧なのだ。
彼等の意志が、想いが、どれだけ強い力を持つのか。
それを示す為には寧ろ現実という荒波こそが必要だと言わんばかりに、彼等は全員、夢から醒めて見せた。

「ああ、そうだな。これが俺達の選択だぜ、丸喜。」

モナがにやりと笑う。そして、怪盗団は丸喜へと向き直る。
彼等の覚醒を前に、丸喜は静かに息を付く。
そう、彼等の答えを見誤っていたと、受け入れる。

「そうか、それが君達の在り方なんだね。」

枷に縛られた絶望の中、それでも抗う意志を力に変えて。
甘い夢には寄り添わない、苦い現実を受け入れるというのならば。
此方もまた、長年に渡り追い求めてきた理想。最早手放そう等とは考えようと思わない。
故に。

「分かった。それならもう、君達とは戦うしかない。」

眼鏡に手を掛け、改めて宣言する。
_全ての苦しみを、夢で濯いで見せよう、と。
刹那、世界が揺れる。丸喜の背後から伸びる黒い触手が、彼等へと迫る。
既に覚悟を決めた怪盗団は、その現象を前に動じない。寧ろ、逆に挑発するかの様に鼻で笑い飛ばす。
そう、これまでもそうだったではないか。

「来るぞ、お前等!」

迫り来る凶手を前に、クロウの叫びを皮切りに一斉に駆け出した。



パチパチパチ、と。
壮絶な戦いの裏で、シャドウアビィがやけに乾いた拍手を贈る。
その表情は何かを見定めようと鋭く、それでいてどこか満足気だった。
そんな彼の元に、前触れもなく撃たれる蒼炎。
それを呆気なく躱したシャドウアビィは、下手人…アビィ・ダイブに酷く冷たい視線を下した。
アビィもまた、無機質な目付きで睨み返した。

「何だよ。丸喜の覚悟を見ていたんだ、邪魔しないでくれるかな、僕?」
「全く、質の悪い冗談だな。僕の影風情が彼等を貶めるなんて、有り得るかい?」

互いの言葉と視線がぶつかり合い、辺りに緊張が走る。
シャドウアビィが何者なのか、その目的も真意も、アビィには分からない。
だが、一つだけ言える事があるとすれば。
これは簡単には終わらない悪夢という事だろう。

「偽物め、正体を暴いてやる。」

そう端的に吐き捨て、アビィは蒼炎を吹かし臨戦態勢へと入る。
対するシャドウアビィは、深く溜息を吐いて肩を竦めた。

「偽物、ね。僕としては本物なんだけどな。」
「黙れよ、影如きが知った口を利くな。」

静かな怒号と共に疾駆するアビィ。速さに任せた右ストレートが襲い掛かる。
対し、シャドウアビィは半身を捩るのみ。それだけで回避した。

「じゃあ、本物ってどういうモノだろうね?」

同時に、カウンターで蹴り上げる。その一撃はアビィの腹部に直撃し、鈍い音を立てて吹き飛ばした。

「うぐっ!?」

コンクリートの壁を突き破り、瓦礫に埋もれるアビィ。
痛みを堪えながらも、再び蒼炎を手にして立ち上がった時には、既に目の前にシャドウアビィが立っていた。

「うん。やっぱり偽物なんて御免だね。」

言いながら、勢い良く拳を振り抜く。
咄嗟に腕をクロスさせて防ぐも、その膂力で大きく跳ね飛ばされる。
空中で回転しながら体勢を立て直し、再度炎を浴びせようとするも、既に視界から消えていた。

「僕は汝、真なる僕ってね?」
「_ハッ。」

声の方へ向けば、先程から様子を一変させたシャドウアビィの姿。
ドス黒いオーラを立ち昇らせ、此方を嘲る様に嗤っている。
同時に、その背後には無数のシャドウが生み出されていた。
それこそ、アビィの見立てでは、まだ増える余地が残っているだろうとすら感じる程に。
明らかな劣勢を前にしながらも、それでも彼は一歩も引かないどころかにやりと微笑む。
そんな姿に満足したのか、シャドウアビィも微笑った。
もう既に勝敗は決しただろうに、態々こうして演出を施して見せる辺り、余裕を見せているのか単に遊んでいたいだけなのか、良く分からない。
どちらにせよ、アビィにとっては最早関係の無い話ではあるのだが。
そんな事は露知らず、シャドウアビィは再び口を開く。
そして、一言呟いたのだ。

「僕は汝、真の僕なれば。」

先程まで静寂を保っていた筈の其処は、一瞬にして邪悪な気配で満ちる。
重苦しい空気が漂い始め、地響きすら起こしそうな予感さえ巻き起こった。
切っ掛けは、先の一言。
既に、双星は別たれた。



「厄介者、ねぇ。個性たっぷりのこの世界で、一々気にする様な問題かな?」

心底どうでも良さそうに、ビルスが語る。あくびも添える様相は、まるで相手にしていないと言った感触だ。
次いで、時の界王神に視線を向けると、界王神は慌てながらも宙に映像を浮かべる。
港区の暴動、特異点の黒平安京における悪鬼羅刹の群れ、幻想郷を襲う悪霊異変。
ビルスは、暗に告げる。
軽く上げるだけでもこれだけの事態が巻き起こっている中で、それ等に最低限並ぶ物なのか、と。
もしつまらない話題ならば…と凄みを滲ませた所で、空気を一変させんと名乗り出る者がいた。

「待て、話ならば私が聞こう。」
「…珍しいね、君から聞こうとするなんて。オーマジオウ。」

それは、世界の半分しか救えなかった時の王者だった。

28人目

「幻想郷三番勝負 勝負その二:ディルムッドvs.日向月美&ナポレオン 後」

 守矢神社

 戦闘は時間を追うごとに激化していった。
 力を見せる、とは言ったものの。

「おおお!」

 燃える焔が如き赤い剣と、星羅を映す霊刃がぶつかり合う。
 霊刃を補助するかのように苛烈な砲撃も、同様に炸裂する。
 ディルムッドは強烈な火力の炸裂を前にしても恐れず、前に前にと進んで行く。

「楽しいな、異界の勇者!」
「確かに、ですが!」

 ナポレオンの放つ弾幕の雨霰を、ディルムッドは双剣と跳躍を駆使して躱し、撃ち落としていく。

「獅子七星!」

 ナポレオンに一撃を与えようとするディルムッドの剣閃に対し、目にも止まらない、重い一撃を7回重ねる月美。

「さて勇者よ、ここいらで決着と行くか!?」
「面白い。では!」

 再び上空に飛び上がる剣士。

「来るぞ!構えろ!!」

 再び迫る、己が身をも刃とした連撃。

「生死を分かつ境界線――――見定めよ!」
「はぁああああああ―――――!!」

 ディルムッドの連撃に合わせ、返す刀の連撃を与え続ける。
 弾き、弾き、炸裂する。
 しかし力ではやはり彼の方に分があるのか、一瞬の隙をつかれた月美がふらつく。

「覚悟!」

 ディルムッドは跳躍し、とどめの一撃を放とうとする。

「―――――ディルムッド、勝負だ!その一撃を撃ち落とす!『凱旋を高らかに告げる虹弓(アルク・ドゥ・トリオンフ・ドゥ・レトワール)』!」
「ならばその攻撃、叩き落とす!『憤怒の波濤・激情の細波(モラ・ルタ/ベガ・ルタ)』!」

 2人の人理の英霊。その宝具がぶつかり合った。
 炸裂する剣閃と砲閃。周囲を崩落させんがばかりの破壊力が、無数の見えない矢となって襲い掛かる。
 虹の砲撃はディルムッドの剣をじりじりと押しているが、それでも決定打にはならない。

「うぉおおおおおああああああ!!」
「行けお嬢!」
「……はいっ!!」

 確実に倒さんとばかりに月美は砲撃の勢いに乗って跳躍、星羅の剣に虹を絡ませる。

「まさか、ここまで跳んでくるとは!」
「『熱星颪・虹光(ねっせいおろし・げいこう)』!!」

 星羅は今、虹を放った。
 可能性の光、それで練り上げられた光の虹を。
 ナポレオンの宝具。その砲弾の構成物質は『人が願う可能性』。ならば、こうも考えられるだろう。
 『我ら2人が、眼前の勇者ディルムッドに勝利できる』とも!

「はぁあああああああ!!」

 斬撃は、虹色の空刃と化して降り注ぐ。
 その刃はさらに分裂と結合を繰り返し、強烈無比なる

「虹が……落ちて!」
「取った!」



「俺達の、勝ちだな。」

 撃ち落とされたディルムッド。
 しかしてその顔に悔いはなく、相手の健闘を賛美している。

「はは、見事でした。悔いはありません。」

 その在り方はまさに、勇者。

「すごい気持ちのいい奴ね。」
「さて、これで俺達の勝ちなんだが……とも言ってられないな。」
「はは、分かっちまうかい?私の気持ちが。」

 神奈子は笑いながら月夜に、自分の想いを話そうとする。
 その眼にはかすかな、されど確かにある闘志をにじませて。

「確かに、戦えるのに自分だけ戦わないってのは、ちと気分が悪いな。」

 その傍らで、自分だけ戦えないからと頬を膨らませる霊夢。
 ペルフェクタリアと彩香は、お互いの闘志と意思を確認する。

「行けるか?彩香。」
「ボクだって……あの時とは違う!戦える!」

 神奈子は挑発的な態勢を取り、かかってこいと言わんばかりに戦闘態勢をとる。
 迫る決着の時。

「ん?」

 その時彩香は、異変に気付く。
 自分の持っていた無線機が、けたたましくコール音を鳴らしていた。

「はい、彩香です。」
『大変だ!今人間の里にいるんだけど、近くに悪霊数千体と……変な黒コートが来てる!』
「え?嘘!?」
「変な黒コート……。」

 魔理沙から告げられた、危惧していた事態。
 謎の男と、彼が引き連れたであろう悪霊の一個旅団。
 100、200の騒ぎではない、最低でも1000は超えているという以上、脅威が確かに迫っていた。

『今はスネークから借りた無線機で連絡してるけど、そろそろ戦闘に入る!来れそうか!?』
「なんだ?問題か?」

 神奈子の問いに、彩香は焦りをにじませて頷く。

「……ごめんなさい神奈子さん、戦っている暇はなさそう!」
「人間の里……まずいわ!行きましょう!」

 急ぎ足で守矢神社を降りようとする5人。
 それを黙って見届ける神奈子たち……なわけはなく。

「ちょっと待ちな、人間の里だろ?私もつれてけ。早苗、40秒で支度しな。」
「ちょ、神奈子様!?それって……つまり……!」

 驚きを隠せない早苗に対し、神奈子は屈託のない笑みを浮かべて言い放った。

「当たり前だろ、せっかく集めた信仰者が殺されるのを黙って見ているのは胸糞が悪い。それに決着なんかいつでもつけれる!今は目の前の問題を片すのが先決さね!行くぞ!」



 人間の里から、大体2キロ離れたエリアに、"それ"はいまくった。

 黒い身体、赤い心臓、異形の貌。
 3本の怪物が如き腕を生やし、奴らは迫りくる。
 人に害をなし、自然を破壊し、生態系を蹂躙する悪霊ども。奴らを従えるは。

「焔坂も早とちりしすぎだ。しかし、新世代型の性能を試すのも一興か。」

 黒コートの奥より、曇るほどの冷淡な目を浮かべる男。
 影歩む策士「ゼクシオン」――――動く。

29人目

「幻想郷調査 四の五:対悪霊戦線」

戦において最も重要な土台とは何か?
突出した個人?陣地の構築? 兵の練度?
それは全て、相手を上回るための手段に過ぎない。
相手のミスを誘うために、相手を欺くために、相手の隙を突くために、そして相手に勝つために。
それら全てが勝利のための土台である。
が、しかしそれ等を支える一番の屋台骨があるとすれば。
かのBIG BOSSはこう答えるだろう。
「優れた人脈」だと。



無数の、数えるのも億劫になる程の影が空を覆いつくす。
黒雲とさえ見間違いかねない、千は超える人影。
それは、遍く悪意を見に纏う悪鬼羅刹。
俗に悪霊と呼ばれる、幻想郷を脅かす脅威だった。
その先頭に立つ、黒いフードの影。

「さて、向こうもお気づきでしょう。」

ⅩⅢ機関の策士「ゼクシオン」の姿。
数多の悪霊を従え、行進する様は地獄の兵隊と呼ぶべきか。
顔の無い悪霊達の戦闘で、ただ一人人並みに無機質な表情を浮かべ、告げる。

「お手並み拝見と行きましょうか。」

誰に告げる事も無く始まった宣戦布告。
同時に、悪霊の山が揺れ動く。
さながら台風、或いは積乱雲と言うべき風景を描く悪霊の移動は、早送りで流される天体観測カメラ映像の雲めいて行軍する。
その先頭に立つゼクシオンが、小さく呟いた。

「精々、足掻いてください。」

それは、軽蔑と侮辱を混ぜ込んだような、怨嗟の籠った呟き。
その言葉は、悪霊達の足音にかき消される事なく、周囲に木霊する。
悪霊達は、各々の目的を果たさんと、行進する。
その目的は、ただ一つ。
幻想郷の壊滅、ただそれだけの為に、何千もの悪霊が人里へ向けて足を進め。

「…おや?」

そこで漸く、異変に気付いた。
行進する悪霊の、先頭。
彼等の見据える先、目指すべき場所に。
人里が、無い事に。
あるのは、ただの荒れた丘ばかりだ。
その荒れ様は、まるで"初めから人里など無かった"かのよう。

_▬▬▬

悪霊達が、一斉に動揺の様そうを表す。
己が怨念をぶつけるべき相手を見失い、その混乱は瞬く間に伝染し、悪霊達が蠢き、騒めく。
途端に統率を失い、放浪者めいて散り散りに辺りを探り始める悪霊達。
本能に赴くまま、人に怨念をぶつける為に。

「待て、勝手に_」

ゼクシオンが、焦りを滲ませる声で叫ぶ。
悪霊達を止めようとするも、しかし手遅れだ。
散り散りになった悪霊達は、各々気の向くまま辺りをただ無計画に彷徨う。
悪霊とて実体は生まれたて赤子。気の赴くままに動く。
そんな姿に手を焼くゼクシオンは、若手の保育士めいて混乱するばかり。
彼は確かに智に長けた学者であり策士だが、軍師ではない。
策士の器と、軍の統率の器は違うのだ。

「…仕方無い、せめて新型のテストだけでも行えれば良いか。」

そう独り言ちて、数十体の次世代型悪霊を引き連れるゼクシオン。
出鼻を挫かれたが、当初の目的は見失ってはいない。
何故なら"生き残り"が見えたからだ。
辿り着いた人里跡地、その中央に。

「数は『3人』…試験には丁度良いでしょう。」

一人は、ガタイの良い大男。
残るは女性が二人とやや不足気味ではあるが、寧ろ悪霊の腕試しには持って来いだとほくそ笑んだ。
その余裕が滲み出る様に、悠々と3人の元へと歩み寄るゼクシオン。
だが、優雅な気分に銃声という横槍が入る。
見れば、男が銃を構えており、銃身の先から煙を散らしていた。
弾は、足元に撃ち込まれていた。それ以上近づけば殺すと言わんばかりに。

「小銃ですか、面倒な物を持ち込んでくれましたね。」
「生憎、コイツが無いと心細くてな。なぁに、貴様らにも味合わせてやる。」

言うが早いか、銃口を足元からゼクシオン本人に向ける男、スネーク。
そのまま、銃弾を撃ち出す。
だが。

「見え見えの攻撃等、私には無意味ですよ。」

二人の間に割って入った悪霊の装甲が、弾を鈍い音と共に弾き飛ばす。
かすり傷程は付いたものの、悪霊は健在と言う他無かった。
その事実が、3人に冷や汗を流させる。

「もしや、これで終わりでは無いでしょう?人里を何処へやりましたか?」

優位を悟ったのか、口角を上げて言い寄るゼクシオン。
彼は後退る3人の傍らに、駆動する円柱状の機械を見た。
確信を得た様に、目付きが鋭くなる。

「成程、それが原因ですか。」

図星だったのか、思わず固まる3人。

「ふふ、ははははっ!」

いよいよ以て確信したゼクシオンは、笑いが堪え切れない様子だ。
堪えた傍から漏れ出る感情に、身を任せて嗤う。
そして一頻り笑い終えた後、腕を広げて冷徹な表情を浮かべ、告げるのだ。

「さっさと終わりにしましょう。この数を、どうにかできると思わないことですね。」

酷く感情の抜け落ちた言葉で、事実上の死刑宣告を。
そのまま、数体の悪霊が前へと躍り出た。

「さぁ、希望が打ち砕かれる様を味わいなさい!」

そうして、悪霊が襲い掛かった。
迎え撃つはスネークと魔理沙。
魔理沙のパワー弾幕を背に、スネークが悪霊を捌く。
慧音は周囲に弾幕を張り、他の悪霊を寄せ付けまいと奮戦する。
とは言え、事実上のワンサイドゲームにゼクシオンは勝機しか見出してない。
ともすれば、数十分と持たないだろう事は誰の目からも見て取れた。
だが鑑賞気分で見下す一方で、冷静な思案もする。

(あれはどう見ても機械、となれば人里が消えたのは現代人と思わしき男がやったと見るべきですね。)

ナイフと義手で悪霊の怨念を捌く彼を見て、思案に耽る。
並外れた格闘技術だ、義手とナイフだけを怨念に触れさせ、他に触れないで尚捌き切っている。
スタミナ管理も抜群だ、最低限の動きだけで上記を成立させている。
加えて、背後の仲間を意識した位置取りを常に心がけている。
大したセンスの持ち主だと、内心舌を巻くゼクシオン。
だが、無数の悪霊の前ではいつまでも続く物では無いとも分かっている。
奴とて、人間なのだから。

(まずは彼は生け捕りにし、人里の行方を吐かせましょう。時間はたっぷりあります。)

そう思考を締めくくると、新たな悪霊をけしかける。
直後、スネークが取りこぼした一体が、魔理沙に襲い掛かった。
隙を突かれて対処できなかったか、咄嗟に箒で防ぐも弾幕を張る為の腕は塞がれてた。
そこに、第三の手が伸びる。

「良いですね、まずは一人_」

呟きかけて、中断するゼクシオン。

気付けば、脳天を慧音の弾幕が撃ち抜いていた。
一瞬の静止の後、スネークのナイフががら空きの頭から覗く赤いコアを貫いた。

(まさか、仕留め損なうとは。)

ゼクスシオンの目付きが、険しくなる。
少しばかり判断を見誤ってたと、認めざるを得ないからだ。
故に。

「_悪霊だけでは力不足、ですか。」

言って、自らの片手に蒼い刃を顕現させる。
ズシリと沈み込む様な重さのソレを腕に纏い、悪霊より一歩先に出る。

「次は貴様が相手か。」
「えぇ、私自らの手に掛かる事を光栄に思いなさい。」

スネークとゼクシオン、二者が対立する。
今ここに、決闘が行われようとしていた。

(相変わらずおっかねぇなぁ…)

それを見守るのは、変化したウーロンただ一人だった。

30人目

「Epilogue 亡失ノ幻想郷 悪霊異変Ⅰ」

 迷いの竹林

「こ、こえぇ……。」

 てゐは、ただ見届けていた。
 爆裂する周囲、炸裂する弾幕と色とりどりの自然現象。
 炎、水、氷、雷、光。
 花、熱、魔力、破壊。
 その一切が竹林の全てを蹂躙せんと破壊し尽くす。

「ぉおおお!」
「遅い!」

 リクの斬撃をすれすれの距離で回避し、その勢いでキーブレードを蹴り飛ばす。
 ふらついたリクに追撃を与えるべく、そのまま自身の踵を落とす。

「重っ……!」

 心の象徴たるキーブレードが軋む。
 ただの踵落としが、ここまでの火力を叩き出すとは思えない。
 深層意識の中の恐怖が呼び起される。

「そのまま砕けなさい!」
「まだだ!」

 鉄槌が如き一撃をいなし、一瞬の隙を狙う。

「ブリザガ!」
「冷気!?」

 キーブレードの先端から放たれる、圧縮された冷気。
 幽香は咄嗟に弾幕を放って蒸発させる。

「あの氷精のよりは冷たかったわ、ほんの少しだけど。」
「強がりを……もしかしなくても戦闘狂とか言われないか!?」
「はッ!そんなのよく言われるわ!」

 満足げに笑いながら攻撃を再開する。
 迫り、一撃を与えようとするリクの前に――――

「花?」

 謎の花が咲いた。
 色とりどりの色の花。
 それはどこか美しく、そして苛烈に。

「かかったわね。」

 攻撃を開始した。

「!?―――リフレク!」

 とっさに反射魔法を撃ったのは賢明だったか。
 突如咲き誇る花と弾幕。

「私の能力は『花を操る程度の能力』。さっきのように花を咲かせて弾幕を放つことだってできる。」
「!?」
「全ての花があなたを狙うのよ……!」

 勝利を確信したのはどっちか。
 嗜虐に満ちた笑みを浮かべる幽香。

「なぁリク、やっぱおっかねぇよ……ほっといて行こうぜ?な?」
「気持ちはわかるが、あいつが逃がしてくれるかどうか……!」
「あら、私がせっかくの強者をみすみす逃がすとても?」

 強者の笑み、その威圧感から来る圧倒的恐怖。
 手の震えが止まらない。
 逃げようとすれば間違いなくぶちのめされる。瀕死で済めばいい方か?
 思考を張り巡らせる。どうすればこの状況を打破できるか、と。

「さて、どうするのかしら?」
「決まってる。立ちはだかるというならば、お前を倒してここを出るまでだ!」
「勇ましいこと、じゃあやって見なさいよね!!」

 周囲の花弁から弾幕を流星群が如き威力で放つ。

「花符『幻想郷の開花』!!」
「ならばその弾幕、切り抜ける!『ダークバラージュ』!!」

 正しき闇を纏った連続攻撃が、空中にすら咲き誇る花の弾幕を弾く。
 是こそは闇と花の戦争。
 もし悪霊がいなければ、この戦いは激化して竹林を破壊し尽くしていただろうとは後のてゐは語った。

「弾幕を弾くなんて、反則じゃない!」
「悪いが、こっちは弾幕ごっこに付き合ってる暇はなくてね!」

 そして、再び周囲が破壊される。
 破砕、破砕、破砕。
 苛烈なまでの破壊力が、竹林をもう一度襲う。

「あんた、随分と楽しそうね?」
「何を!俺は楽しくなんか―――!」
「何言ってんのよ。あんた笑ってるわよ?」
「それは――――あっ!」

 突如、リクが何かを察知する。
 懐かしくもおぞましい、あの誘惑されそうな悪意を。

「どうかした?図星?」
「違う、闇の気配がする……!」
「や、闇ってあんた……!」

 悪なる闇。
 そのワードに呼応されるかのように幽香も反応する。
 迫りくる侵略者、幻想郷を真に穢す悪しきモノ。

「悪霊め、大隊組んで侵攻しまくってるってところかしら?」
「どうする?やめるか?」
「まさか。人間の里に着くまで、どっちが多く悪霊倒せるか勝負しましょ。」
「―――――分かった!」

 かくて竹林内部を飛ぶように走る3人。
 周囲に飛ぶ逸れ悪霊なぞ何するものか。
 此処は幻想郷、悪霊異変の報いにはまだ遠く。



 妖怪の山 中腹部

「急ぐぞ!」

 守矢神社から、妖怪の山を急ぎ足で降りる7人。
 周囲の事情を知らずに攻撃してくる妖怪や妖精を蹴散らしながら人間の里目がけて降りてゆく。

「ちょっと!皆さん!?」
「文か!すまん今忙しくて取材は無理だ!」
「行っちゃった。ってあー。ありゃ取材は無理そうですね……。」

 そんな7人を見送り、かすかな絶望と呆れをにじませた諦めのセリフを吐く文。
 なにせ妖怪の山から見える人間の里で、既に戦端は開いているのだから。