プライベート タフ外伝 尼崎のS ②
アイツは正真正銘の怪物だ。
俺は、自分がシマキンのことを未だに人間として見ていたことに気づいた。
しかし、もう違う。家族にも容赦なく手を出し、男女構わずレイプするヤツは、もはや人間ではない。
駆除すべき醜い害虫だ。あの悍ましく肥え太った悪魔をなんとしてでも殺さなければならない
俺は兄貴の決意を汲んで、共に命を懸ける覚悟を決めた。
とはいえまだ幼い子供である僕たち二人ではシマキンに勝つことはおろか、取り巻きにすらヌッされるだろう。かといって仲間を募るのも無しだシマキンの恐ろしさは大人も含めて伝わってるから到底集まるとは思えない上シマキンの寵愛を受けようと密告ラッシュが始まるだろう。そうやって兄貴と頭を悩ますこと500億時間…
「おっ久しぶりやん!元気しとん!?」
「キ、キー坊?」
兄の友人である宮沢熹一、通称キー坊が僕たちに話しかけてきた。
「旅行から帰ってきたのか?」
「それより聞いたで強い奴がいるんやろ?」
「実はかくかくしかじかで…」
俺はキー坊に事情を説明した。
「ふうん…ワシがいない間にそんなことが?」
「…めっちゃオモロイやん!ぜひそいつと手合わせ願いたいやん」
予想以上の食い付きようだった。キー坊はアクションスターを目指していてケンカ大好きとは聞いていたが、まさかこれ程とは…
「…で?そいつはどこにおるんや? ワシはいつでも準備できとるでっ」
「まぁ多分俺たちの家だとは思うんだが…いきなり行くってのもアレだろ?」
「今日はキー坊の家に泊まらせてくれないか?」
「……はっ?」
どうやらキー坊は困惑を隠せていない様子だ。
当然と言えば当然。きっと蛆虫どころかゴリラだって同じ反応をする。
「別に構わんけど…今それと何の関係があるんや?」
「詳しいことは言えない。でも今晩はとにかく危険なんだ!」
返答の代わりに自分に向けられたのは、振り払うように自分の胸を突くキー坊の左手。
「悪いけど、そんな何も言えん奴にワシは従えへんわ」
「ま、待って!」
キー坊が遠ざかる。僕は言い淀んでしまった言葉を後悔した
「今晩来るんだ…染谷兄弟が…君が来ることを聴いて…!」
「……」
キー坊が立ち止まる。その瞬間に空気が張り詰め、空間が重くなったように感じた。
「(けど、断られても…文句は言えないよな)」
だが、俺が思っていた返答とは違っていた。
「……わかったわ。とりあえず今晩ワシの家に来いや。よくわからんがなんか必死なんやろ?」
「…!ありがとう!」
キー坊は何かを決意したような眼をしていた。
「(何も言えない奴…ハハ。ひどい言われようだな)」
「帰ったで!」
俺たちは結局キー坊のお世話になることにした。
「熹一、お友達連れてきたんか?」
スーツ姿のおじさんが言う。キー坊のお父さんだろうか?
「友達を家に泊めるヤンキーなんて前代未聞やのォ」
やたら軽そうなおじいちゃん。絶対に祖父だ。この祖父にしてこの孫ありという感じがする。
「こっちのスーツ着てるのがワシのオトン」
「よろしくお願いします」
「こっちがワシのジイチャン」
「おうっ ゆっくりしてけや」
「ちなみにオカンは…あそこや」
指差した先には仏壇があった。
染谷兄弟はシマキンの家の前にいた。
染谷兄弟は神戸で有名なチンピラだ。染谷兄弟の舎弟が兄を恐喝していたところをキー坊が助けに入り舎弟を病院送りにした。それ以来 キー坊と兄は友人関係となった。染谷兄弟としては舎弟を痛めつけられ面目を潰された形だ。面白くない。
染谷兄弟は兄にキー坊はどこにいるか聞いてきた
兄は嘘をつき自分の家にキー坊が来ると教えた。シマキンに染谷兄弟をぶつけようというのだ。
「おらーっ 出てこいやキー坊!」
ドアを蹴りつける
「あーーーーん?なんじゃおどれら」
当然染谷兄弟が困惑し、警戒した。
何故ならここにいるのがキー坊だという事を聞かされたからここに来たのに、実際にいるのはシマキンだったからだ。
「アンタ、"島木暴走族"のシマキンやろ?なんでここにおるんや!?」
「おうっ おどれらこそなんなんや」
「お前とあろうものが知らんはずないやんけっ"タトゥー連合"の染谷をなあっ」
───
自分たちの世話なんて微塵もしてくれなかった両親が、初めてプレゼントを買ってくれた。
おもちゃかな、それともゲームかな?
期待していた彼らを裏切り、
親から送られたのは2丁のナイフだった。
「殺しあえ。負担を1人分に減らしてくれ」と親が言った。
彼らは怒り狂い、そして悲しんだ。
すぐさまナイフで親を殺し、家を脱走。
"血染めのナイフ"染谷兄弟の誕生である。
…だが、そんな事情はシマキンにはどうでもよかった。
「一人話せればええやろ」
一瞬の出来事だった
染谷狂二の顔面にシマキンの拳がめり込んだ。
仰向けに倒れた狂二の胴を踏みつけると骨が容易く砕けた
兄である狂一が激昂してナイフをシマキンに突き刺すが肉に阻まれ刃が通らない
狂一を薙ぎ倒し馬乗りになってから喉に指を食い込ませる 狂一の両足が一瞬駄々をこねるように激しく動いたがすぐに動かなくなった
「兄ちゃん ちょう話そうや キー坊ってなんじゃい 何しにきた」
狂一を倒した後 狂二に語りかけるシマキン
「ちゃんと話さんと殺すからな?」