BLゲームのモブ、頑張らない!

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1人目

ここはBLゲームの世界だと思う。なぜ俺がそんな事を思うのかと言うと、何度も高校生をやり直している事に気がついたからだ。
ふとさっきまで卒業式で別れを惜しんでいたのに次の日には時間が舞い戻って入学式前日になっているのだ。それに気がついてからは卒業式より先に進めないか色々と確かめてみたが結局入学式の前日に戻ってしまう。そして俺はこの世界がBLゲームだと双子の兄貴である綾斗が彼氏を連れてきた事で知るのだった。
そう。そいつに選択肢が表示されているのを見てしまったのだ。しかも選択肢が
『こんにちは
さすが双子、瓜二つだ!
弟もタイプだな。』
の三つだった。もしかして俺も攻略対象?それは勘弁してください。
そんなこんなで何周目か分からない高校一年生の入学式前日に戻ってまいりました。

2人目

 目覚ましが鳴る前に、パッと起き上がる。
 俺の部屋目掛けて、ドドドと駆けてくる足音がした。
 優斗! 優斗! とうるさく叫ぶから、こいつ自身が目覚ましみたいなものだ。
 綾斗――俺の双子の兄が扉を開けるより先に、俺が取っ手を引いた。勢いあまった兄貴が俺に突っ込んでくる。

「うわ。ごめ」
「いいよ」
「優斗! おは」
「おはよう」
「なんで今日ぜんぶ先回りしてしゃべんの?」
「そんなことないよ」

 俺はしれっと答える。兄貴は能天気な顔をしていた。到底、俺がこのやり取りを何回も繰り返してきたとは思っていない。俺は、いつの日からか、高校入学前日から卒業式までの三年間をループしていた。兄貴に俺の気持ちが分かるわけない。昔から分かってくれたことがないのだ。
 同じ家と同じ日に生まれたのに、兄貴は明るすぎて、俺にはうざったい。

「優斗、今日変だね。いつもぼーっとして、なに考えてるか分かんないのに。今日はよくしゃべるし、俺が起こさなくても起きてたし」

 えらーいと兄貴は頭を撫でようとするけど、俺は子どもじゃないし、同い年だし、そもそも起こしてなんて頼んでないし。
 兄貴と俺は正反対で、俺は毎日無気力でぼーっと生きていた。自分が巻き戻っているのも、最近になって知ったくらいで、あれ······俺ループしてるな? とか、なんか、ゲームのテロップみたいなのが見えるな、とか、どうやらこのループを引き起こしてるのが、生徒会メンバーのひとりみたいだって気が付いた。
 そう、前回のループで兄貴を弄び、俺にまでちょっかいをかけてきたあいつである。

『弟もタイプだな』

 タイプだな、じゃないし!
 兄貴が家に連れ込んだ同級生。彼氏だとかなんとか紹介されて、俺は無表情を保つのに必死だった。

『佐伯······』

 兄貴と付き合っていたなんて知らなかった。
 佐伯蓮は、一年のころから生徒会書記としていっしょに活動してきたメンバーだった。
 その佐伯の前には、ゲームで見るようなテロップがあり、三つの選択肢が並んでいた。『弟もタイプだな』という発言はその選択肢の中のひとつだ。なんでよりによってそれを選んだんだ! 俺の中の佐伯の好感度は急降下した。
 ここはBLゲームの世界で、佐伯はその主人公。――俺と兄貴は攻略対象者のひとり。そう考えるだけ考えたけど、全容はさっぱり分からない。
 多分、俺がループを知覚できるようになったのは、世界のバグかなにかに過ぎなくて、俺は本来ただのNPCなんだと思う。本来知り得ないことについて知ろうとするからか、佐伯にメタ的な質問をしたり、生徒会を辞めようとすると頭がぼーっとする。ときどき俺は操られている気がする。ゲームの強制力が俺に働いているのかもしれなかった。
 バグが増え、自由に動けるようになったら、このループから脱出することもできるかもしれない。
 ほかにもバグで自我を取り戻した奴がいるかもだし、まだ未来は捨てたもんじゃない。俺は拳を握ってみる。
 握ってみてから無気力でなにもしたくなくなった。俺が努力するより、佐伯がゲームクリアしてくれるほうが百倍、楽なんだよね······。
 あいつ、本当どんだけループすれば気が済むんだよ。前回もなにが兄貴の逆鱗に触れたのか、佐伯は兄貴に振られてゲームオーバーになっていた。
 俺が知ってるだけでも、佐伯は片手の数以上この三年をループしている。入学式前日から卒業式までを、五回以上、だれかに振られつづけているのだ。それでもめげない。ちょっと怖い。隠しキャラルートでも探してるのか? 執着めいて怖いから、いい加減どこかで妥協して、卒業式の先に世界の時間を進めてほしい。
 じゃないと、俺はいつまでも兄貴の影のままだし。

「······ねぇ優斗。俺、いいこと思いついてさ」

 兄貴が息をひそめて言う。
 なにもかも半分こな双子。見た目はそっくりだけど、俺たちの中身は正反対だ。
 俺には、俺の人生のいいところを全部兄貴が持ってって、兄貴の悪いところは俺が肩代わりしているような気がする。

「明日の入学式、優斗さ、あの······あれ」
「新入生代表挨拶」
「そう新入生代表挨拶! するんだよね? それでさ俺、面白いこと思いついたんだ」
「······」
「あそこで······」
「俺たちが入れ替わったら」
「そう! 俺たちが入れ替わったら」
「きっと楽しい?」
「それに、だれにも」
「気付かれないかもしれない?」
「そう! そうそう! 優斗、分かってるじゃん」
「······」

 兄貴がばしばしと俺の背を叩く。

「それでさ優斗、代表挨拶の原稿、できてるんでしょ? 俺にちょうだい。大丈夫。俺が優斗のかわりに読んであげるから。優斗、みんなの前で挨拶とか、苦手でしょ? 俺がやってあげる。人前に立つとか、無理だもんね。人見知りだし、コミュ障だし、いつも俺の友達と遊んでるし。大丈夫、大丈夫だよ。俺が全部やってあげるから。優斗は、ぼーっとしてていいよ。あ、でも、俺がステージ立ってるときに、居眠りしたら怒るからな? まあ優斗は、真面目だからそんなことしないか」

「そんなことないよ」と、催眠術にかけられているかのように俺は答えた。
 原稿用紙を兄貴に渡す。きっとこれもゲームのシナリオに組み込まれているんだろうな、と思いながら。
 双子の兄貴にはいくつかの計画がある。俺たちがそっくりなのを利用して、うまく授業をサボる方法だとか、人にいたずらしてそれがバレないトリックだとか、日々考えて試している。
 生徒会選挙に立候補するのも、その一貫だ。

「優斗がいるなら、俺は完璧だよ。······秋が待ち遠しいね。早くあの学園の生徒に、俺たちの恐ろしさを教えてやらなくっちゃ!」

 俺と手をつなぎ、兄貴はどたどたと足音を立てて回りだす。
 兄貴がこんなに自信過剰なのには理由がある。これまで兄貴の仕組んだいたずらが、露見したことは一度もないからだ。

「あ〜高校楽しみ。彼氏できるかな♪」

 彼氏とか言ったって、俺たちの見分けがつく奴、ひとりも見たことないでしょ。



「あれ? 君も生徒会立候補者? ······俺は二木優斗だよ! 今年の新入生代表で挨拶をした、二木優斗。よろしく。それでこっちは俺の推薦人――」
「双子の兄の綾斗」
「······っていうのは、嘘で〜」
「俺が本当の優斗」
「で俺が本当の綾斗! ······っていうのも嘘! っていうのも、やっぱり嘘!」

 兄貴がケラケラと笑って、俺と立ち位置を入れ替えて遊ぶ。

「どっちがどっちでしょう?」

 これは兄貴が初対面の人によくやるクイズで、言い当てられないことが前提の、兄貴だけが楽しい遊びだ。
 今日もよくやるな、と思いながら、俺は兄貴そっくりの笑顔を作った。
 佐伯は俺と兄貴を見比べた。
 季節は早くも一年秋、生徒会選挙前。
 佐伯は俺より背が頭半個分高く、顔立ちはあっさりとして整っていた。目の色が色素の薄い、綺麗なヘーゼル色で······。
 そこで俺は、佐伯と自分が目が合っていることに気がついた。

3人目

何故か、佐伯が俺の方をずっと見ている。まるで生命が無い目線を俺に送ってくる。
佐伯は時より機械みたいな人になる。佐伯が主人公である関係があるだろう。

しかも満員電車でどんどんと俺に近付いて来た、気まずいどうすればいいんだ。
てか来んな、マジでお願いだから、満員電車に俺に近づくな


「優斗おはよう!」


凄い勢いで手を振ってニコニコしながら(てか、ちか!近い近い!)顔が当たるぐらいに近くに寄って来た。
俺は後退りして目を逸らした。なんでよりによって居るんだ!?
今回は格段にグイグイ来てね?もしかして俺を攻略する気か!?絶対無い!俺は女が好きです!


「あはは、お、俺双子の兄の綾斗」俺は震えながらそう答える


「そっか!ごめんな!君達って双子で瓜二つから勘違いしたよ!」と俺の様子も気に求めないで明るく元気で肩をトントンした。


佐伯をこう見ると人に好かれて隣に居れば楽しい気分になれる、確かに人気が絶えないはずだ。
(攻略は全部失敗しているけどな)
俺が攻略対象で佐伯がBL主人公だという事を、知らなかったら仲良くなっていたな。きっと


「それで双子の弟の優斗どこなんだい?」佐伯が周りを見渡す。


「ああぁそれは優斗は先に登校したよ」俺は苦笑いしか出来なかった。


この時兄貴は居ないのだ。いつもなら早起きした兄貴と一緒に登校するのが日常だが今回は少し寝坊してしまったのだ。それでも他の学生より早い登校時間帯だ。


「そっか、ふぅ、、、綾斗はいつもなら学校に着いて居る時間なのにな、、、ま、珍しい事もあるってことか!」と言いながらニンマリして俺をまるで恐ろしい目で獲物を見るかなような目線を送った。


入学初日になんでこんな目に遭うだよ、、、悪いやっぱ、つれぇわ
佐伯は絶対に俺って分かっているような発言で、俺の顔はきっと蒼白以上に真っ青になっているだろう、人には見せられない絶望感顔ってヤツだよ


そして、とても後悔した兄貴と一緒に登校すれば良かったって事に、、、少し涙目した


「凄く人が多いな、そうだ、バック上に置いて上げよっか?」佐伯は気遣うように言った


「俺は良いよ、置いたら忘れそうだし、、、それに」と言った瞬間で

いきなり電車がブレーキをかかり、車内がガタガタと人の波が押された「うわ!」「何!?」佐伯が一気に俺の顔に近づいてキスしそうな所で間一髪でドッン!と音立てて壁ドンで止めた。

だが人だかりの重みで押される佐伯ので今も俺とはキスしそうな状況になってしまった。
息遣いと目線、佐伯は困惑と酷く驚いた様子だった。佐伯が力尽きたらいつ、キスしてもおかしく無い状況、、、もはや生き地獄とも言える所業だ。