プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:14

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1人目

「Prologue」

【最終戦争(ラグナロク)編】原文:ノヴァ野郎さん

 アマルガムとの最終決戦を終えた一同は幻想郷での戦いを終え暗黒魔界への
先行部隊などと別れ戻ってきたメンバーと合流、
お互いにそれぞれなにがあったかを報告し合った。

 その後特異点へと向かうメンバー、トゥアハー・デ・ダナンで待機するメンバー、
トゥアハー・デ・ダナンを離れて静養や独自行動などをするメンバーに
分かれることになり、幻想郷から戻ってきたGUTSセレクトはトゥアハー・デ・ダナンを
離れてTPU本部へこれまでのことを報告しに行くことになった。
そして特異点へはゲートを開くゼンカイジャーを始め、マジンガーチームや心の怪盗団、
月美にペル、宗介にかなめ、そして新メンバーのにとりが
それぞれの目的のために向かうことになった。

 特異点にあるリビルドベースに到着後、最終戦争(ラグナロク)の調査のために
特異点組に同行したマジンガーチームは特異点の探索と調査を終え帰還した
アレク、ローラ姫、バーサル騎士ガンダム、アルガス騎士団と再会する。
彼らから特異点で謎の遺跡を発見したという情報を知ったマジンガーチームは、
発見者であるアレク、ローラ姫、バーサル騎士ガンダム、アルガス騎士団と
共にその遺跡へ調査に向かう。そこにはお目当てであったラグナロクの中で起こったと
される各世界の出来事や当時の状況などが壁画として描かれており、
その中には甲児達の住むリ・ユニオン・スクエアの超古代文明や
ゼウスとミケーネ帝国による戦い、更にはアレクやローラ姫が元いた世界に伝わる
ロト伝説やバーサル騎士ガンダム達がいたスダ・ドアカワールドに伝わる
古代の伝説さえもがラグナロクの一部として描かれていた。
他にも遺跡の中にはラグナロクの一部として様々な世界の伝説などが描かれていたが、
彼らはその中でも他よりも大きな壁画を発見する。

 そこに描かれていたのはかつてのCROSS HEROESの姿であった。

【運命の交差点編】

 荒野と化した戦場での決戦が終わり、捕虜となったレナード・テスタロッサと
アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニンは、司法取引を受けるため尋問室に送られる。
彼らの証言が事件を大きく動かす可能性があるが、結果はまだ不透明。

 一方、渾沌結社グランドクロスの幹部「殲滅少女」ブーゲンビリアは、
メサイア教団の私兵団を壊滅させ、養分として教団兵士たちの命を吸収する。
彼女は次なる獲物を求め、ペルとの再戦を待ち望んでいた。

 特異点ではシャドウたちが再び地上に出現し、地上に脅威を与え始める。
カーミラ、荊軻、メディアがシャドウの討伐に乗り出し、
巨大なシャドウ「アバドン」との激闘を繰り広げる。
彼女たちは過去の記憶や後悔に直面しつつも、メディアの「ルールブレイカー」で
アバドンの力を無効化。荊軻とカーミラの連携でアバドンを討ち、
シャドウの脅威を一時的に退けた。しかし、やはりメメントスの再調査を行わねば
問題の根本は解決できないと言う結論に至る。

 一方、レジェンドとゾックス(ツーカイザー)の激しい戦いは続いていた。
ツーカイザーの「シンケンフォーム」による猛攻に対し、
レジェンドは仮面ライダー鎧武の力で対抗。侍と戦国武将、一進一退の戦いを展開。
仮面ライダーとスーパー戦隊の力が交錯する中、二人の戦いはますます激化していく。

 ゲイルとヒートは新たな冒険に旅立つ。彼らは敵対するジェナ・エンジェルからの
情報を手に、エンブリオンのメンバーであるセラフィータを探し出すために出発する。
トゥアハー・デ・ダナンの解析班によって端末の安全が確認されたものの、
二人はそれが罠である可能性を捨てきれない。ヒートは不安を抱えながらも、
「進むしかない」という強い意志を持って、ゲイルと共に危険な旅路に出発することを
決意する。

 それぞれの運命が交錯する中、戦いはさらなる激化を予感させる。

【第二次メメントス調査隊編】

 特異点に到着したCROSS HEROES。第2次メメントス調査のメンバーが選定され、
ペルフェクタリア、日向月美、門矢士、カルデアから召喚されたサーヴァントたちが
参戦する。地上で起こる妙な事件の対応を任されるクイーンとヴァイオレットに代わり、
宇津見エリセやイリヤスフィール・フォン・アインツベルンや太公望、
沖田総司・オルタなど、様々なメンバーがメメントスに挑む。
思わぬアクシデントによって深い眠りに入った沖田オルタに代わってその愛刀・煉獄が
姿を現すなど、参加者たちはそれぞれの「オルタ」や「ペルソナ」と向き合いながら、
メメントスでの戦いに備えていた。

 一行がメメントスに到着すると、予想以上の不気味な雰囲気に包まれた迷宮が広がり、
さらなる混沌が待ち受けていることが明らかになる。
次々と出現するニンジャ軍団との戦い。ペルフェクタリアと煉獄は
戦闘において連携し、冷静かつ圧倒的な力を発揮する。混戦の中で協力しながら
次々とニンジャ軍団を撃破していく調査隊。
しかし、エリセの邪霊の力と月美の退魔の力……複雑な心境と共に対照的な二人の間に漂う不協和音、さらにメメントス内部にはまだ解き明かされていない秘密も
未だ隠されているのだ……

2人目

「昏き炎に影が差す その1」

「ゼクシオンか。」
 目の前にいる陰暗な男。
 影歩む策士、ゼクシオン。
 廃棄孔の怪物の覚醒、その直前に幻想郷から脱出したのは知っていたが、まさかここにいたとは思わなんだ。
「知り合いか?」
「ああ。そして俺たちの敵だ。」

「幻想郷のお仲間はもういいんですか?」
「お前こそ、幻想郷から逃げ帰ったと思えばまさかここにいたなんてな。どうだ、廃棄孔の怪物が倒され計画が御破算になった気分は。」
「悔しいですねぇ泣きたい気分だ。なんて言うと思いましたか?生憎と私はノーバディ。感情を感じられないもので。」
「強がりいいやがって。そうほざいてる時点で内心悔しがってんだろうが。」

「まぁ事実悔しいですよ。だから何です?ただ悔しいだけの私とすでに死んだ同志一人の犠牲と、一実験結果が燃え尽きたくらいで勝った気になっているそちら。滑稽さならそちらの方が上だ。」
 ゼクシオンの観点からすれば、同志焔坂の犠牲なぞどうでもいい部類にある、らしい。
 仮にも共に行動していた仲間を、死んだらどうでもいいと吐き捨てる。
 冷酷無比とは、今の彼にこそふさわしい。
「こいつ……腹立つ野郎だぜ。死んだ仲間のことをゴミ扱いしやがる。」
「はいそこうるさい。裏切り者がしゃべるな。」
 そういいながら、ゼクシオンは自身の得物でもある魔術書レキシコンから、強力な魔弾を放つ。
 大気を震わせる一撃。喰らえが重症では済まない。
「させない!」
 その一撃を、リクのキーブレードが上空へと弾き飛ばす。
 空中で炸裂する魔弾。
 だが、ゼクシオンにとっては謎が尽きない結果で。
「なぜ邪魔をするんです?彼はあなた方の敵でしょうに。光の勇士もヤキが回りましたか?」
「信用ならないがこれでも俺たちの仲間だ。こいつには聞きたいことが山ほどあるしな。まだ死なせるわけにはいかない。」
「そいつは慈悲深いことで。」

「とはいえ、私としては穏便にカルネウスの処刑を執り行いたい。今彼の身柄を大人しく引き渡せば、これ以上何もしませんよ。」
 そういって、右手を差し出すゼクシオン。
「カルネウスを引き渡せ」ということだろうか。
 それを裏付けるように、ゼクシオンは舌戦を続ける。

「どうです?あなた方の敵、メサイア教団大司教の一人が『内輪揉めで死亡』させられるんですよ。少なくともあなた方と刃を交えることなく、そちら側に誰の犠牲も残さずにね。私たちは裏切り者の処刑を、あなた方は邪魔な存在の一人が消えてくれる。互いに利がある、win-winの取引でしょう?」
 冷静に考えれば、この取引は受けるべきだ。
 天賦の域を超えた才能や戦闘力を持った大司教の一人を、互いに血を流すことなく消すことができる。これ以上のない取引はない。
 そも、カルネウスがこの先裏切る可能性もあるのなら引き渡す。それが論理的な考え方というもの。

 ―――だが、それでいいのか?
 カルネウスは、どうしても見せたいものがあって仲間になった。
 特異点にいるペルフェクタリアのように、嘘を見抜くことはできないが、それでも言葉に嘘は感じられない。
 もし最後に殺すのならば、ゼクシオンが来たタイミングでリクを彼に売り渡している。それをしなかったところを見ると、本気で裏切ったのは明白だ。

「さっき自分で言っただろ。『仲間一人消えても何の問題もない』って。どうせお前らのことだ、大司教の座なんぞいつでも補充できると思ってんだろ?こちらの仲間を一人消して、仲間は補充するから損失はない。そちら側の裏切り者も消せてさらにハッピーと来た。どこがwin-winだ?」
 即答。
 舌戦でも負けていない。
「それに、ここでカルネウスを売ったら、悔しさのあまり胸糞悪い気持ちになる。なめられた気分になるのは不快だからな。」
「……くっ。これだから心ある人間というものは。心を捨て非情に徹すればいいものを。」
「図星か。まぁいい、ここでお前を倒す。」
「できるのか?」
「ああ。こいつをよく知っているという意味で、現状倒せるのは俺と……あの中のデミックスだけだよ。」
「そいつぁ頼もしいな。俺も援護してやんよ。」
 武器を構える2人。
 ゼクシオンはため息をつく。
 それは諦めか、或いは―――地獄のはじまりか。
「そうですか。ならば仕方ありません。」
 ゼクシオンはおもむろに無線機を取り出し、後方に振り返ったかと思うとどこかへと連絡を始めた。
「こちら大司教ゼクシオン。例の実験を開始しろ。」
「実験。何の話だ。」
「……。」

 黙して答えない。
 むしろ勝ち誇っているまである。
「答えろ、何をした!」
 江ノ島邸の内部で、自分の仲間の身に何かが起きている。
 ゼクシオンは薄気味悪い笑みを浮かべ、リクたちに告げる。
「何って。私の実験をしているんですよ。」
「実験だと!何のことだ!」
「実験……おいおい、まさか。」
 カルネウスの頬に冷や汗が流れる。
「知りたいなら、あなた方も入るとよろしい。まぁ私が思うに今頃、絶望と罪悪感でその顔を曇らせているに違いないでしょうねぇ。」

3人目

「不思議な少年・ジョゼ/あの日メメントスで見た花の名前を僕達はまだ知らない。」

 ――メメントス。

「さてさて、ニンジャ達は一掃出来たようですね。さすが皆さんお強い」

 太公望は軽く笑みを浮かべ、余裕の表情を見せながら周囲を見渡す。
すでに戦場にはニンジャの影は見当たらず、調査隊は一息つけたようだった。

「ふぅ……なんとか片付いたか」

 スカルは拳を緩めながら肩を回し、息を整えていた。彼の体はまだ戦闘の余韻で
熱を帯びていたが、ニンジャ軍団を撃退したことにホッとした表情を見せる。

「けどよ、アンタは随分余裕そうじゃねえか」
「はっはっは。貴方がたのおかげで余力を残せたんですよ。よっ、怪盗団の切り込み隊長」
「隊長……ま、まあ、そう呼ばれて悪い気はしねえかなぁ……なっはははははは!!」

(スカル……あっさり口車に乗せられやがって……あのタイコーボーとか言う男、
随分と頭が回るみてえだ。人の扱いの何たるかに長けてやがる)

 まんまと太公望の話術に乗せられるスカルを見て、モルガナはやれやれと首を振った。

「まだ油断するのは早いと思うけど……」

 スカルたちに背を向けたまま、エリセは眼前に広がる闇を見つめている。

「ニンジャどもを倒したとは言っても、それは本当の目的じゃないでしょう」
「確かに、このメメントスにはまだ何かあるように感じますね……」

 その時、突然遠くからエンジンの轟音が響いてきた。
周囲の暗闇が揺らめき、かすかに光が見える。

「なに、あれ?」
「また新たな敵か……?」

 イリヤが目を凝らし、ペルが身構えると、そこには奇妙な光景が広がっていた。
線路の上を小さなバギーが荷物をいっぱいに詰め込みながら、軽快に走ってきたのだ。

「あいつは……?」

 スカルにはその乱入者に心当たりがあった。

「やぁ!」

 バギーに乗っていたのは、不思議な少年・ジョゼだった。
彼は一同に向かって軽く手を振りながら、笑顔を見せている。
そのまま、線路の上を走行して闇の中へと消えていった。

「あの子は……?」
「あいつの名はジョゼ。メメントスの中を彷徨いてる不思議な少年だ。
ワガハイ達も何度か会ったことがあるが……まさかこの特異点のメメントスの中でまで
会うとは思わなかったぜ」

「あいつもイマイチ良く分かんねえ奴なんだよな……敵じゃねえのは確かだけどよ」
「ジョゼにはいろいろ助けられたことがある。あいつは「人間」や「感情」について
研究してるらしく、ワガハイたちと同じようにああやってメメントスを探索してるんだ」

 モルガナやスカルに向けて説明を続けた。

「だが、あいつがいるってことは、ここにはまだ何か重要なものがあるってことかも
しれねぇな……」

 スカルは思案顔で線路の先を見つめた。闇の中に消えていったジョゼが向かう先には、
まだ見ぬ何かが待ち構えているのだろう。

「ま、何はともあれ俺達も先に進むしかないだろう」
「私たちもあちらへ向かいましょう。ここで得られる情報は、
どんな小さな手がかりでも重要です」
「そうだな。これ以上、手詰まりになるのも嫌だし、追いかけるしかないか」
 
 煉獄や月美の言葉にモルガナも賛成し、同意を示す。

「うん、ジョゼって子が何か知ってるなら、話を聞いてみたいし」

 イリヤもまた、ジョゼと言う少年の存在に興味を抱いている。

『イリヤさん、ああ言う男の子がいいんですねぇ』
「そ、そう言うんじゃないから!」

「よし、決まりだ! みんな、行くぞ!」

 ルビーにからかわれているイリヤを尻目に、スカルが先頭に立って歩き出し、
他のメンバーも彼に続く。
線路の上を駆け抜ける彼らの背中には、次なる戦いへの決意がみなぎっていた。

「やあ、おつかれ」 

 人間が他人を労う時に使う挨拶。ジョゼは少し進んだ先の袋小路にバギーを停め、
キャンプを開いていた。メメントス調査隊ならここを必ず訪れるであろうと言う
確信と共に。展開した荷物の中には、あちこちから集めたアイテムがずらりと
並べられている。調査隊一同は一瞬顔を見合わせた。

「すごい数……」
「回復アイテムに、戦闘に使えそうなものまで……」

 女性陣がショッピング気分でジョゼのコレクション群を眺めている中、
ジョゼが口を開く。

「あのお兄さんは一緒じゃないの?」
「いや、今日は別行動だ。ジョーカーは他の調査をしてる。俺たちがこっちのエリアを
担当してんだよ」
「そうなんだ」

 ジョゼはモルガナとの会話の最中に軽く首を傾げながら、何か考えている様子だ。

「お兄さんがいないと、少し寂しいね。でも、ここにいる人達もすごく頼りに
なりそうだから大丈夫だよね!」
「お前、ジョーカーのこと気にしてんのか?」

 スカルが興味深げに尋ねた。

「うん。あのお兄さんはすごく特別な存在だって感じるんだ」とジョゼは言いながら、
笑顔を浮かべた。

「僕がメメントスで会った人たちの中でも、あんなに強い意志を持った人は珍しいよ。
それに、あのお兄さんはただ強いだけじゃなくて、仲間たちを大事にしているのが
すごくよくわかるんだ」

「まったく、ジョーカーは特別だよ。ワガハイたちもあいつに支えられてるからな」と
モルガナが誇らしげに付け加える。

「わかるよ。あのお兄さんがいれば、きっとどんな困難でも
乗り越えられるって感じるんだ」

 今はここにいないジョーカーに思いを馳せつつ、ジョゼは満足げに頷いた。

「せっかくまた会えたんだ。僕も君たちを手伝うよ!  何か困ってることがあったら、
教えてね。このフロアのあちこちにある「花」を集めてきてくれたら、
その数に応じてアイテムと交換してあげるよ」

 ジョゼが指差すと、一定間隔で闇を照らすように仄かな光が灯る。
よく見れば、それは小さな花だ。

「さっきまでは無かった気がするけど……」
「それも『認知』のひとつだ。「そこにある」と脳が認知出来れば、
見えなかったものも見えてくる。ワガハイの言葉も、一度声を聞いた事で
言葉として『認知』出来るようになった結果って事さ」

「ふーん、難しいんだ……」
「とにかく、あの花を探せばいいのか?」

「ボクのアイテムはきっと役に立つと思うよ。奥のフロアに行く前に、
ここで準備をしていくのも良いんじゃないかな?」
「備えあれば何とやら、と申します。ここはこの少年の助言に耳を傾けるとしましょう」

「よし、とりあえずやるか。何人かチームを組んで、この辺りを探索しよう。
あんまり遠くへは行くなよ。迷ったら終わりだぞ」

 こうして、ジョゼのコレクションと交換するための「花」を求めて、
一同はメメントスの探索を開始した。

4人目

「昏き炎に影が差す その2」

 人の醜悪を見た。
 人の絶望を見た。
 人の悪性を見た。
 人の闇黒を見た。
 そして―――人という種の、救いようのなさを知った。

 神に仕え、神に力を与えられたときは幸福だった。
 これで、人類を救えると本気で思っていた。
 救いようのない人間は削除する。
 凶悪犯罪者、その兆候がある人間も削除する。
 社会に迷惑をかける人間は家族でも削除する。
 社会貢献をしない人間は、例外なく削除する。

 美しいはずの地球に醜い人間などいらない。
 キラに力を与えられていた私ならできる。
 そう、信じていた―――。

 だが蓋を開けてみれば、その神でさえ―――醜悪だった。

「魅上ィィ!!何してる……こいつらを、殺せッッ!」

 私の前で醜く、チョコレートを買ってもらえなかった子供のように嘆くキラだった男。
 ふざけるな。そんな也で何が神だ。
 そこにあるのは救済もクソもない、ただの人間ではないか。
 見るに堪えないぞ、夜神月。

 神たるキラが死んだあと、犯罪者は日に日に増えていた。
 美しく清廉な世界は、元の醜悪に戻っていった。

 現代社会は悪性だらけだ。
 人間同士の差別、いじめ、そこからくる復讐を良しとする人間。
 腐敗した権力者どもの語る平和だの幸福論だのは全て取るに足らぬゴミクズ。その内は私利私欲で越えた太っ腹。
 民衆の心は他人の絶望や曇った顔、苦痛にゆがむ姿に興奮を感じる卑怯者ばかり。創作であれ、そんなものに興奮するのは社会悪のやることだ、根絶すべき病原的思想、悪の癌細胞だ。

 しかしてもう、救世主はいない。
 救済の力を与える者も、この世にもう顕現しないと来た。
「俺も反省した。人間にデスノートはまだ早いおもちゃだった。もう人間界に落とすことはしねぇ。じゃあな魅上。二度と会うことはないだろう。」

 私の信じた正義は、すでに間違いだった。
 それどころか、永遠に繰り返すことのできない間違いとなってしまった。
 その間違いこそが、人類救済の一手となるだろうに。

 ―――もううんざりだ。
 キラでさえ救えなかったこの世界に、何の価値がある?
 どうせ人間に同族は救えない。
 いかな救世主でも、世界から「悪」を根絶することはできなかった。
 人の一生など所詮、憎悪と絶望の物語だ。
 いくら美辞麗句を並べてもこの真理は変えようがない。
 現代社会の人間の醜さが、悪意がそれを裏付けている。
 ならばこそこの世界は、終わらせるしかない。

「我々人間は歩むべき道を間違えた。美しい地球に生きる資格など、とうの昔に無くなっていた。」

 女神メアリー・スーの力を以て、腐りきった世界を終わらせる。
 人類を根絶し、女神の持つ魔力を以て新たなる世界に旅立つ。
 善を貴び、悪などない。完全なる清廉の世界。
 汚濁や泥のない川のような、澄み切った善の世界。

 それこそが、私の―――魅上照の望む新世界だ。



「……。」
「江ノ島ちゃん?」
 部屋の隅でしゃがみ込む江ノ島盾子。
 今の彼女に、
「ごめん、やっぱ怖い。」
「怖いなら、手つなぐか?」
 シャルルマーニュがそういって、江ノ島に手を伸ばす。
 彼女も無下にはできず、その手をつかむ。
「立てるか?」
「何とか……。」
(この先に自分の誕生の秘密が眠っている。超高校級の絶望と言われた自分のことだ、きっとろくでもないものだと決まっている。そんな覚悟はできているのに。)

 なぜか、胸騒ぎがする。
 恐怖?不安?不穏?
 でも。真実を見るって決めたんだ。
 とにかく、行かないと――――。

「目標を発見!攻撃を開始する!」
 目の前に現れた、黄色いヘルメットの、テロリスト風の男。
「雀蜂!?」
「教団の刺客か!気をつけろ!」
 刺客たる雀蜂の人数は一人。
 複数体ならともかく、一人なら取るに足らない。
 一対三。余地で勝てる。
「はぁ!」
 真っ先にとびかかったシャルルマーニュの剣閃。
 受ける刹那、相手の雀蜂が何かを投げた。
「……!」
「あっ。」
 それはよく見ると、閃光手榴弾のような。
 しかし、この行動によって防御をする時間は無くなる。
 これによりシャルルマーニュの一撃をもろに受け、ついには斃れた。
「ぐぅっ……!」
「なんだったんだ?今の。」
「暗殺部隊だったんじゃない?」
 突如現れ、何をするまでもなくただ謎の物体を投げただけの雀蜂。
 だが、周りを警戒していたデミックスは、その違和感に真っ先に気づく。

「ていうかあれ?江ノ島ちゃんは……?」



 意識が―――光に溶けていく。
 そのまま眠りにつくように―――私は。

「ここは……?」
 気が付くと、そこは見慣れた光景だった。
 少しカビのにおいが混ざった木々のにおい、見慣れた曇天。
 そしてよく見える、見覚えのある校章。
「希望ヶ峰学園……。」
 その奥で、黒い陽炎のように揺れる人影。
 私は、その姿を知っている。
 わたしは、彼の名前を識っている。

「お前は……苗木、誠。」

5人目

「それぞれの主従/太陽神の亡霊」

 ――メメントスの冷たい風が、重く沈んだ空気を運んでいた。
士、ペルフェクタリア、そして煉獄が歩くその道には、かすかな光と影が交差し、
不思議な静寂が漂っていた。無限に続くかのような闇の中を、ペルフェクタリアは
無言で進んでいく。周囲には仄かな光を放つ「ジョゼの花」が点在しており、
それを次々と拾い集めていく。彼女の動きは機械的で、一つ一つの花を手に取るたびに
慎重にそれを確保していった。

「……」

 ペルは一言も発さない。ただ、その黒い瞳が花の光を反射して静かに輝いていた。
その姿は、メメントスの不気味な風景の中にあっても異質な美しさを放っている。
後ろをついていく士はペルの行動をしばらく見つめていたが、やがて肩を竦め、
軽口を叩いた。

「花を摘む少女って、どう見てもお前のガラじゃないだろう」

 ペルはその言葉に一瞬だけ反応を見せたが、すぐに冷たい視線で士を睨みつけた。

「黙れ。そしてお前も拾え」
「おいおい、怖いな。そう言う尖った所は未だに残っているんだな」
「必要だからやっているだけだ。花なぞ似合わないのは知っている。そう言うのは
たりあにこそ似合う……」

 ペルフェクタリアはそれ以上何も言わず、再び黙々とジョゼの花を拾い集める作業に
戻った。士の言葉に対して特に反論はしなかったが、やはり彼女の優先事項は
今も昔も変わらず平坂たりあなのだと、士は再認識した。その一方で、煉獄が放つ
独特のオーラは、ただの戦士とは一線を画している。

「ところで、お前は男なのか、女なのか?」

 沈黙の中、士がふと思いついたように突如投げかけられた質問は、
あまりに突拍子もなく、しばし空気が静止する。
煉獄は少しも動じることなく、その目を静かに士に向けた。

「そんな区別は俺にはない。俺は主の刀。それ以上でもそれ以下でもないさ」

 少年とも少女とも取れる中性的な容姿とは裏腹に煉獄の声は低く、確信に満ちていた。
性別という概念が煉獄にとって無意味であることを言い放つその姿には、
強烈な使命感が滲み出ている。士は煉獄の堂々とした態度に少しばかりの驚きを
感じつつも、その答えに軽く笑みを浮かべた。

「主の刀、ね……なるほどな」
「その『たりあ』ってのが、お前さんの主か?」

 煉獄の質問に、今度はペルが応じる番だった。
彼女は長い間沈黙を守っていたが、目を伏せて静かに口を開いた。

「私は、たりあの記憶の番人だった。実体を持たない、疑似人格……
たりあの身体を借りることで存在していた。今でこそ、こうして肉体という名の器を
得てはいるが」

 ペルの声は抑揚がなく、冷静だった。しかし、その冷静さの裏に秘められたものが
士や煉獄には感じ取れた。彼女の存在は単なる生命体ではなく、
他者の意志と深く結びついた「次元の番人」という特別な役割を担っていた。

 士は少しだけ眉をひそめ、ペルフェクタリアの言葉を反芻する。

「平坂たりあは暁美ほむらと共にいるんだったな。その出自を考えれば
暁美ほむらは他の誰にも手出しをさせないだろう。そう言う女だ。とりあえずは
安心すると良い」
「……」

 士の言葉に、ペルは返答せず、ただ前を見据えてジョゼの花を拾っている。
その冷静な態度に、士は再び軽く笑みを浮かべる。

「俺の主も同じだ。俺は主の刀。主を守り、命じられるままに敵を斬る。
それが俺の存在理由だ。主を失えば俺は何もない」

 煉獄の言葉は淡々としているが、「主」という存在こそが煉獄の生きる理由であり、刀としての宿命を全うすることが何よりの使命であるという確固たる意志が込められていた。
煉獄にとって、沖田総司オルタはただの命令者ではなく、彼が存在するための
唯一の理由だった。

「……主を守る。それが私の使命。たりあが存在しなければ、私はここにはいない。
だからこそ、たりあを守るために私は存在している」

 ペルフェクタリアの言葉もまた、静かだが力強かった。
彼女にとって、たりあという存在がすべてでありそのために自らを犠牲にすることさえ
厭わない。

「同じだな。主を守る。俺たちはそれだけのために生まれた存在だ」

 煉獄はペルフェクタリアの言葉に深く共感し、その瞳には揺るぎない信念が宿っていた。彼らの言葉にこそ違いがあるが、二人に共通するのは「主を守る」という揺るぎない使命。それは、何よりも強い彼らの絆であり、戦士としての共通の誇りでもあった。
士はそんな二人を見つめながら、軽く笑みを浮かべる。

「何だか、お前たちは似た者同士だな。まるで鏡みたいだ」

 士の軽い言葉は、決して侮辱ではなかった。彼の目には、二人の戦士としての姿が
一つの共鳴を生み出しているように映っていた。ペルフェクタリアも煉獄も、
主を守ることが全てであり、そのために存在している。

 ペルフェクタリアと煉獄は、士の言葉に反応を示すことはなかったが、
互いの存在に対する尊敬の念が静かに流れていた。二人は、それぞれの「主」を
守護する使命を胸に秘めながら、メメントスの闇の中を進んでいく。
士は後ろを歩きながら、ペルと煉獄のツーショットをマゼンタのトイカメラに収めた。

「まだ持っていたのか、そのカメラ」
「当然だ。すべての世界をこのカメラに収める。それが俺の旅の記録にもなる」

 ペルフェクタリアと出会ったときから使い続けている士のトイカメラ。ある意味では
これも長き旅路を共に往く主と従者の関係の一つであるとも呼べるかもしれない。

「門矢士。先程の戦い、見せてもらった。私の知らない力を手に入れたようだな」
「お前と別れた後も、旅は続いていたと言う事さ。そう言うお前も随分腕を上げたな」

 ネオディケイドの力を手に入れた士と、ピッコロやラーメンマンと言った
歴戦の戦士からの教えを授けられたペルフェクタリア。その成長と進化は未だ
留まることを知らない。

「さて、ここらの花は一通り集まったか?」
「そのようだ」

 話している間に、ジョゼの花の回収を完了させた一行。花はひとつに集まり、
光の玉となってジョゼが待っているであろう方角に向かって飛んで行った。

「頃合だな。あの小僧の所まで戻ろう。他のチームも戻っている頃合かも知れないしな」

 士の言葉を合図に作業を終え、戻ろうとする3人。だが……

「! 気をつけろ、何かいるぞ!」

 その殺気に気づいたのは、煉獄だった。

「マグナムショットッ!!」

 突如浴びせかけられる銃撃。ペルは両腕のブレスレットで弾丸の軌道を逸らし、
煉獄は居合で弾丸を真っ二つにした。

「お前は……!」
「ふふふふふふ……ディケイドにとっては迷惑な存在……
GOD秘密警察第一室長こと、アポロガイストだ!」

 かつて、大ショッカーの大幹部として並行世界の悪の組織同志の同盟を
取り持っていた男……燃え盛る太陽を象った真っ赤な仮面に、攻守兼ね備えたシールド
「ガイストカッター」を携え、黒いレザースーツに真白いマントを靡かせる……
大ショッカー壊滅と共にディケイドらに葬られたはずだったが……

「そう言えば、会いたくない相手が出てくるとか言っていたな。このメメントスには……」

6人目

「幕間:バミューダトライアングルの神秘/0」

 存在しなかった世界 円卓の間

「カルネウスの処刑は?」
「数分前ゼクシオンを派遣しました。すぐにでもとらえられるそうです。」
「全く最後まで刹那主義な男よ。奴は裏切り者だ。ここに連れてきた次第速やかに殺せ。申し開きもなしだ。」

 円卓の間で、大司教エイダムとビショップが話をしていた。
 その内容はカルネウスの処刑と『次』の話。

「了解しました。」
 ジャバウォック島のゼクシオンは、教団の指金。
 彼らはカルネウスを本気で処刑するつもりだ。

「……貴様の装置が召喚したアルキメデスはどうしている?」
「彼は現在、藍神という少年の調査に出向いております。放置していても大丈夫です。」
「ところで、貴様が進めているという計画は……。」
「ええ、順調ですよ。サイヤ人だの超人だのを抱えたCROSS HEROES、彼らは我々の『最終目的』を理解していない。」
「最終目的……『■■及び■■の■■』を考慮すれば、サイヤ人だの超人レスラーだの英霊だのアマツミカボシだのをまともに相手する必要はない、と?」
「そうです。迎撃程度に収めればいいのですよ。」

「だが、それを実行しようにも例の海域は。」
「一度入ってしまえば、なんてこともありません。アンカーさえ打ち込めば、虚数空間経由でこちらから人員を派遣できるのですから。もちろん情報統制は地上の教団員が行っております。我々の最終目的にもつながる極秘事項ゆえ、おいそれと言えるものではない。」
 ビショップは悪い笑みを浮かべて続ける。
 いったい何を始めるのか。答えの断片は間もなく判明する。

「最後に勝つのは我々です。我々は目的のためなら大帝も地球も、キラの歴史すらも踏み台にしますよ。はっはっは。」



 ―――アメリカには「バミューダトライアングル」という海域がある。
 この海域に近づく船や飛行機は、なぜか沈没ないし消失してしまうという。

 理由を突き止めようにも、結局分からずじまい。
 謎に満ちたそこは『魔の海域』と呼ばれ、今も畏怖と共に考察が繰り広げられている。

 ある科学者は『地底のメタンガスが海と溶け合い、浮力を奪っている』と言い。
 ある地理学者は『ここは昔から天候があれやすく、地球の引力もひと際強いエリアだった』と言い。
 ある同人作家は『そこで沈没がよく起きていただけ、ただのプラシーボ効果だ』と言い。
 ある都市伝説マニアは『宇宙人の基地があって、その海域に入った物を破壊しているのではないか』と言い。
 ある超人プロレスファンは『ある悪魔超人の訓練の場で、訓練の過程で船や飛行機が姿を消しているんだ』と言い。
 ある魔術師は『この地に渦巻くマナの奔流が、バミューダ海域を通る機械類を狂わせているのだ』と言った。

 異口同音に並べられる多様な考察はあれど「本当の原因」が何なのかは、現在も分かっていない。

 ―――3週間前、謎の鉱物がこの海域で発見されたという。
 赤褐色の水晶にも見えるそれは、波に流されフロリダの海岸に流れ着いた。
 現場の研究者が持ち帰り、調べてみる。
 すると、驚愕の事実が発覚した。

 分子構造は花崗岩でもない、ルビーでもない、玄武岩でもない。
 ほかのどの鉱石にも当てはまらない。完全新種の鉱物。

 研究者が内部構造を調べるために、鉱物を丁寧に割ってみるとそこからすさまじいエネルギーを持った光線が放たれた。
 粉砕を意識した威力ではない、万全を期した準備の上で割った。
 にもかかわらず、鉱物の割れ目からほとばしる閃光が一条の光線となったのだ。
 太さ5ミリ程度の光線は、鉱物を保管していたドラフトの強化ガラスを破壊し、研究者の頬をかすめ、研究室の壁に外までつながる細い穴を開けた。
 幸い大惨事には至らなかった。だがこの事実はその場にいた研究者たちを震撼させた。

 『謎の鉱物光線事件』の数日後、気象衛星の写真がバミューダ海域の中心部をとらえた。
 赤褐色の、無限大の形をした円環の岩石島。
 その周囲一帯には、波に流されて砕けたであろう鉱物のかけらが浮かんでいた。
 海水に散らされているせいか、放たれるはずのエネルギーが飛び散る様子はない。

 のちにこの島は、未知への期待と希望を兼ねて「ユートピア島」と仮称されることになった。
 ユートピア島の情報は、「危険地域かつ未知のエリアで、調査が必要 追って情報を開示する」という理由で世間には秘匿されている。

 しかし、皮肉なるかな!
 この地に絶望郷(ディストピア)を呼ぶ使者が訪れてしまった!



 現在、バミューダ海域 ユートピア島周辺

 周辺に、浮上艇が次々に現れては消える。
 出てきたばかりの艇からは、武装した兵士と武器を詰めたトレーラー、コンテナが現れ島へと運び込まれてゆく。
「こちらメサイア教団鉄脚部隊、虚数浮上完了。ユートピアに「乗艦」しました。いつでも指示を。」
「こちら管制塔。ビショップ様の到着を待て。到着次第、艦を抜錨せよ。」
 荒れ狂うユートピア島は、数日前よりも変わっていた。
 円環の穴は無機質な大型機械とコンクリートによってふさがり、機会を纏ったその様子はまるで巨大空母だ。

「行先は中国・ロプノール地区。当該地区への攻撃が完了次第、第二回同時布教を開始する。よいな?」
「了解しました。」

 それは罪深き人類に対する宣戦布告。
 神話の戦いへの狼煙、その一幕。

Chase Remnant ACT5          人理定礎値:C
―――――――――――――――――――――――――――

  A.D.20XX 神双空中魔艦 ユートピア・フリート

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           双力の天空島

7人目

「大ショッカー! 大いなる大組織の大逆襲の序曲/裏切り者と蜘蛛の糸」

 ――メメントスの闇が深まる中、士、ペルフェクタリア、煉獄の3人は
アポロガイストの出現に驚きを隠せなかった。そこで士は、ある結論に辿り着く。

「なるほど……ショッカー大首領がここらを彷徨いてるらしい事と言い、
メメントスの活発化と言い、このジメジメとした暗闇の中で再起を狙ってたって事か。
合点が行った。わざわざこんな陰気な場所に付き合って来てやった甲斐があったかもな」

 かのクォーツァー・パレスでの激闘の最中にも、ショッカーの魔の手は密かに
特異点の各地へと及んでいた。その起点こそが、メメントス……

「その通り。このメメントスなる場所は人間どもの潜在無意識が集約する場所。
人間の恐怖、恨み、悲しみ……それは我々にとっての滋養となっているのだ。
私が生き永らえるためにパーフェクターでライフエナジーを奪っていた時のようにな……」

「アビアビアビーッ!!」
「ズーカーッ!!」

 アポロガイストだけではない。大ショッカーに参画していた怪人たちが
不気味な鳴き声を上げ、暗闇の中に蠢いている。やがては完全なる力と実体を取り戻し、
シャドウのようにメメントスから這い出てくる算段だったに違いない。
ショッカーが丸喜拓人に認知訶学研究のための資金援助を申し出たのも、或いは
この時のためだったのかも知れない。

「ふふふ、ディケイド……我々は何度でも甦る。このメメントスの中で力を蓄え、
そしてやがては地上へと本格的な侵攻を開始するのだ!!」

 不気味な笑い声を上げ、アポロガイストは真っ赤な仮面の下から燃え上がるような
視線を士に向ける。それは、復讐。ディケイドに倒された雪辱を晴らすための……

「メメントスの闇が、過去の敵まで引き戻しているってわけか……傍迷惑な話だ。
だが、残念だったな。ここで俺達に見つかったのが、お前らの運の尽きだ」

 ペルフェクタリアはアポロガイストを一瞥し、冷静に言葉を紡ぐ。

「奴らは……お前の過去の宿敵というわけか。ならば、今ここで終わらせるしかない。
私も、魔殺少女の役目を果たす時だ」

 煉獄もまた納刀の姿勢で、構えた。

「斬り刻み甲斐のありそうな連中だ。この煉獄、立ちはだかるもの一切を斬り捨てる」
「そう言うわけだ。再生怪人は弱体化するのが世の常、覚えておけ」

 士はネオディケイドライバーを腰に装着し、ライダーカードを取り出す。

「変身!」

 カードがディケイドライバーに挿入され、士は瞬く間にネオディケイドの姿に変わった。ペルフェクタリアは既に戦闘態勢を整えており、彼女の黒い瞳が
アポロガイストを鋭く見据える。煉獄はその剣を構え、敵を斬る準備を整えた。

「来い、アポロガイスト!」

 士が挑発すると、アポロガイストは巨大なガイストカッターを構えた。

「ふふふ、2度も私を倒せると思うなよ、ディケイド! メメントスの力は無限だ、
我々の存在を消し去ることはできない! ガイスト! カッタァァァァァァッ!!」

 その瞬間、外周に鋭い刃を携えたアポロガイストのシールドが投擲され、
3人に襲いかかる。咄嗟に散開し、煉獄は壁を蹴り上げた反動でアポロガイストに突撃。

「もらったッ!!」
「どうかな?」

 煉獄は力強い声で言い放ち、空中で抜刀しながらアポロガイストに切り込む。
しかし、その背後からガイストカッターが円弧を描いて再び飛来してきた。

「うおっ……」

 身を捩り、ガイストカッターを回避。だが煉獄の体勢が崩れたその隙を
アポロガイストは見逃さなかった。

「アポロフルーレッ!!」

 突きに特化したアポロガイストの剣が煉獄に迫る。

「くそっ!!」
「はああああああああッ!!」

 刀で受け止めるも、ガラ空きとなった煉獄の懐にアポロガイストの中段蹴りが炸裂。

「ぐはっ……!!」
「煉獄!!」

 煉獄の身体が壁に激突し、土埃が巻き起こった。その安否は定かではない。

「おのれッ……!!」

 煉獄のフォローへ向かおうとするペルに浴びせかけられる、粘着性の高い蜘蛛の糸。

「何っ!?」
『邪魔者には死を。それが私の仕事ですので……』

 無機質な電子音めいた声と共に現れるのは、クモオーグ。
人類の幸福を追求すると言う題目を掲げるSHOCKERの上級幹部だった男。
その主な任務は裏切り者の粛清。両腕を背中に回し、悠然と歩いてくる。

『良いですねぇ……鍛え上げられた肢体。光の無き黒い瞳。そして、その細首……』
「うぐっ……!!」

 蜘蛛の糸で雁字搦めになったペルの首に手をかける。
さらに、クモオーグの背中から生えてくる新たな腕。3対6本の腕と両脚を含めれば、
それは文字通り蜘蛛と同じ足の本数となる。

『実に……殺し甲斐がある……他人の命を私のこの手で奪うこと……
それこそが私の幸福……!!』
「く、ああ……!!」

 じわじわとペルの首を締める手に力を込める。まるでペルが苦しむ様を
一秒でも長く味わうかのように。蜘蛛のマスクの複眼が不気味に点滅している。
それは高揚を表しているのか……仮面によってエゴを増幅し、至上の幸福感に入り浸る……
クモオーグにとっては、「殺人」がそれに該当するのだ。

『さあ、貴女も死んで、私の幸福の一部となってください……!!』

「煉獄! 魔殺少女! くそっ……!!」
「ふっはっはっはっはっは……残念だったな、ディケイド。お仲間は苦戦しているぞ」

 仮面ライダーに倒された怪人たちの温床となっていたメメントス……
ここで食い止めなければ、再び地球は悪の手に沈んでしまうだろう。

(……さあ、この窮地をどう切り抜ける。門矢士……)

 孤軍奮闘するディケイドに視線を向けているのは果たして、敵か、味方か……

8人目

「昏き炎に影が差す その3」

「苗木……誠。」
 再現された、平和だったころの希望ヶ峰学園であることは、江ノ島にはすぐに看破できた。
 自分の識る希望ヶ峰学園は、まるで核シェルターのようになっていた。否、”そうさせた”。
 およそ外部からの攻撃なら、かめはめ波やゲッタービームといった予定外の攻撃でもない限り破ることは容易ではない。

「オ前が、みんナを……。」
 だが、事実希望ヶ峰学園は吹き飛んだ。
 教団の洗脳を受けたエミヤオルタに脅迫され、内側からの爆破により解体、木っ端みじんに吹き飛んだ。

「……許さない、許さない。」
「お前が何と言おうとも、私様は学園爆破の件に関しては無罪だぜ?」
 そうだ。
 江ノ島盾子は「希望ヶ峰学園爆破事件」に関しては無干渉。
 メサイア教団のデミックスとシグバールとは邂逅したものの、学園を破壊しようとは考えていない。

「……だめだ、お前だけは……!」
「あー、そういうことか。」
 澄明かつ事情の側面を知る江ノ島は悟った。
 おそらく目の前の苗木誠は”まだ”生きていて、そのうえでメサイア教団の洗脳を受けてこうして立っていると。
「あの連中……絶望的にむかついてきた。」
 真実を知って胸糞が悪い。
 万人が嘔吐する邪悪とはこういうことか。

「でもな、」
「それを証明する者はいない。」
 刹那、どこからか聞こえる声。
 苗木らしき影が話しているわけじゃない。
 だが、それは確かな実感となって江ノ島盾子の鼓膜を震わせる。

「どこだ!」
 背後を見ても、声の聞こえた方角に振り向いても、そこには誰もいない。
 いるのは黒い陽炎のように揺らめく■■■■■・■■■。

「お前は超高校級の絶望。」
「それゆえ、誰もお前を信じない。」
「誰もお前を愛さない、認めない、救わない。」
「お前に救いはない。」
「全て自業自得だ。」

 自分の所業は、許されない。
 自分が大人なら死刑ものだ。
 だが、その謗りは振り切った。

「………そんな謗りを受けて私様が折れるとでもおもうか?」



 江ノ島邸、玄関前

「……精神攻撃、だと?」
 リクに倒され、馬乗りにされたゼクシオンが不敵に笑う。
 先刻、雀蜂が江ノ島に投げつけたものは精神に対して作用するものだ、と。
「はは、そうですよ。もっと言うなら事実陳列による罪の自覚、というべきでしょうか?」
「何のためにそんなことを?」
「彼女もまた、我々の計画に必要だからです。無傷で手に入れるには心を折るしかない。いま彼女に投げた装置は対象一人の心をへし折る「精神攻撃」専用の魔術箱。あの中にいれば5分もいれば腑抜けになるでしょう。それに、もううすうす分かっているでしょう?我々の計画について。」
「!?」
 数分前に巻き戻される記憶。
 ついさっき、仲間の天宮月夜から話されたあの言葉。
 月夜が出会ったという戦神の見せた未来が真実ならば、その名の存在は近い将来自分たちに牙をむく。
 その名は―――。
「女神、メアリー・スー……!」
「そこまで知ってましたか。ですが、あなた方には止められませんよ?」

「ぐわああああぁあ!?」
 突如、苦悶の叫びをあげたカルネウス。それと同時にゼクシオンはリクの拘束を無理やりに突き飛ばして振りほどき、黒コートの土を払いながら立ち上がった。
「カルネウス!」
「ぐっ……油断したぜオイ!」
「無駄な抵抗はよした方がいいですよ?その影は暴れれば暴れるほど苦痛となってあなたを襲う!」
 抵抗するカルネウスの顔が、苦悶に満ちる。
 まるで神経を鑢で削られているような感覚に襲われている。
「あぁああ!!いってぇ!!くそ、てめぇ……!」
「全く、裏切らなかったらこうはならなかったんです。リクも、大人しくカルネウスの身柄を引き渡していれば、彼を苦しめることにはならなかった。自業自得ですよ。」
「お前……!」
「ははは。少し手間ですが、まずはカルネウスを我々の世界に捕えてから、ゆっくりと戦意喪失した江ノ島盾子を連れ去ると……え?」
 悪辣な笑みを浮かべるゼクシオン。
 リクにはあの影をどうすることもできない。無理に引きはがそうとすれば自分も引きずり込まれるか、逆にカルネウスを苦しめることになるからだ。

 だが、この状況で笑みを浮かべていたのは、勝ち誇っていたゼクシオンだけではなかった。
「ばーか、それで勝ったつもりかよ。」
 悪辣な笑みを浮かべるカルネウス。
 その光景を見たとき、ゼクシオンの表情は勝利を確信した笑みから困惑に、困惑は動揺へと変わった。
「!」
 その刹那、ゼクシオンの視界を通り過ぎる四角い何か。
 それは、研究者株である彼には見慣れた物でもあった。
「まさか……ディスク!?」
「リク……拾え!」
「!」
 地面に落ちるディスクを素早く拾い上げる。
 距離的にはリクの方が圧倒的に近く、ゼクシオンにはどうすることもできなかった。
「カルネウス貴様!この期に及んで悪あがきを……!」
「これは?」
「女神のスペックデータだ!ここに来る前にくすねておいたんだよ!これがあれば対策くらいは練れるだろ!それと、地上に戻ったらお前らのお仲間に伝えろ!2週間後にはこの世界はどうあがいても終わると!」
「何!?」
「最後だから教えてやる!現在メサイア教団は……2つの計画を同時に動かしている!女神計画とバミューダ海域で行われる計画だ!どれか一つでも完遂されれば世界は滅びる!」
「どうすれば解決できる!」
 影に引きずり込まれながら、カルネウスは叫ぶ。
「ジャバウォック島を出たら連中に伝えろ!バミューダ海域だ!そこに行ってビショップを倒せ!」
「くっ……カルネウス!まだ話は終わってない!こっちに来るんだ!」
「だめだ、もうこうなったら俺は助からねぇ!」
 カルネウスは高らかに笑う。
 それはゼクシオンに対する嘲笑か。
 リクに対する励ましか。
 或いは、くそったれな世界への狂笑か。
「クソみじけぇ間だったが、そこそこには楽しかったぜ……あばよ……!!」
「待て!まだ話は!!」
 手を伸ばす。
 しかして、彼が掴んだのは虚空。
 この事実が、助けられなかったという現実を突きつけた。

 カルネウスは影に引きずり込まれた。
 きっとあの先はメサイア教団の本拠地、そこで処刑されることだろう。
 時間的にも、もう助けられない。

「くそ……!!」
「……スペックデータを取られたのは痛いですが、あなたをここで殺して奪い返せばいいだけの事。」

 悔しそうに拳を握る。
 失意で体がどうにかなってしまいそうだ。
 リクの心は、彼(ソラ)ほど剛毅ではない。

「どうやらお互い、同じことを考えていたようだな。」
「何?」

 ―――彼の心にも少しずつ、恩讐の昏き炎が宿りつつあった。

「ゼクシオン、決着をつけよう。」
「いいでしょう、幻想郷の続きです。今度こそあなたを闇の世界へと引きずり込むッ!!」

9人目

「魔神セイバー、再起動/ヒトの幸福」

 ――士、ペルフェクタリア、煉獄は、メメントスの奥深くで士のかつての宿敵、
大ショッカーの怪人たちと再び対峙する運命にあった。
特異点と呼ばれる異常空間の一つであるメメントスは、人間の負の感情が集積する場所。
その暗黒のエネルギーを利用し、ショッカーは復活を企んでいた。

 煉獄がアポロガイストの猛攻に倒れた隙を突いて戦場に現れたのは、
SHOCKER幹部のクモオーグ。彼は粘着質の高い蜘蛛の糸を放ち、
ペルフェクタリアを拘束し、動きを封じる。

 仲間たちが次々と窮地に陥る中、士はアポロガイストに対して
何故か不敵な笑みを浮かべ、「ふふ、はっはっはっはっは……」と笑い出した。
アポロガイストは苛立ち、「何がおかしい! 気でも触れたか!?」と声を荒げる。
対する士の表情から笑みが消え、冷たく言い放った。

「勝った気になるのはまだ早いぜ。ようく見てみろ」
「何ぃ……!?」

 大ショッカーの怪人たちが間近に迫る煉獄の体から黒いオーラが立ち昇り、
その内に眠る存在が覚醒する。

「待たせたな……煉獄、これからが本番だ」
『やぁれやれ、ようやくお目覚めか、主よ……毎度毎度、一度眠り込んだら起きるのが
遅いんだから、ホント』

 煉獄の主、魔神セイバーこと沖田総司オルタがついに目を覚ましたのだ。
煉獄は本来の姿、「煉獄剣」に戻っている。

「ア~ブラ~!」
「クワーッ!!」

 目覚めたばかりの沖田オルタが一斉に飛びかかる大ショッカーの怪人たち。

「行けるか、煉獄」
『無論だ。主と俺が揃った今、何者も我らを阻む事など出来ん!』

 沖田オルタのその瞳がそれらを捉えた瞬間……

「我が光芒、無穹へ通ず……」

 メメントスの暗闇を空間ごと切り裂く金色の剣閃が、縦横無尽、変幻自在に繰り出され
怪人たちを次々と斬り捨てていく。沖田オルタが刀を抜くどころか、斬っている姿さえも
まったく視認することが出来ない。人の姿だった煉獄をも上回る神速……

「無量、無碍、無辺、三光束ねて無穹と成す――」

 そして再び沖田オルタが通常空間へと姿を現した時、煉獄剣から繰り出される黒き光、
必殺の魔剣。


「絶剱ッ! 無穹三段ッ!!」

 
 世に災いをもたらすもの、その存在ごと消滅させる。

「ギャアアアアアアアアアアアアアッ……」

 沖田オルタの宝具は細切れになった大ショッカーの怪人たちを丸ごと吹き飛ばし、
さらにはメメントスの壁にすらも大穴を穿った。

「眠れ、永久(とこしえ)に……」
「な、何だと……!?」

 アポロガイスト、そしてペルを追い詰めていたクモオーグも沖田オルタの鮮烈なる登場に
思わず騒然となる。さらに……

「――絶縁刀」
「むうっ!?」

 クモオーグの糸で覆われていたペルの右腕が淡く発光し、魔力による光の刃を纏って
拘束を断ち切った。クモオーグは寸での所で軽やかにその場から飛び退く。

「ほほう、そのような技を……」

 両腕を後ろ手に回したまま、バク宙で着地するクモオーグ。

「聞く所によれば、貴女も組織の裏切り者なのだとか……それに、その赤いマフラー……
忌々しい記憶が呼び起こされて、大変に不快ですねぇ……!!」

 クモオーグの脳裏に想起される、怨敵との戦い……

「ですがそれだけの力を、何故人間などのために使おうとなさるのです? 
あなたのその拳も元を正せば暗殺拳! 破壊と殺戮のための力は、
己の幸福を追求するために! その素晴らしさが何故分からんのです!?」 

 脳内の快楽物質が大量分泌される。紳士然とした態度も、歪められた多幸感で
上書きされる。

「私には人間の何たるかなど、分からない。人間ではないからな。
幸せと言うのにも正直ピンと来ていない。たりあを守れるのなら、それだけで良い。
いつ消えてしまおうが構わないと思っていた。だが……」


『お姉ちゃん、ありがとう!』
『とっても美味しいよ』


 幻想郷でラーメンマンや月美と共に、難民たちに配って回ったラーメン。
皆、温かいラーメンを食べている時の表情は、笑顔に満ちていた。


「彼らのあの顔を、言葉を、守りたいと思った。お前たちがそれを乱そうとするのなら、
私はそれを止めるために力を使う。魔殺少女としての力を!!」
「――速いッ!?」

 ペルフェクタリアの叫びと共に、彼女は低頭姿勢でクモオーグに向かって突進した。
クモオーグは俊敏な動きにもかかわらず、ペルフェクタリアの攻撃は稲妻の如く速く、
彼女の動きを捉えることができなかった。

「こ、この私が回避するのが、やっとだなどと、そのような事があるはずが!!」

 ペルフェクタリアの拳が空を切り裂くように、閃光と共にクモオーグに迫る。
クモオーグはさらに後退しようと試みるが、ペルフェクタリアの動きはそれを許さない。
彼女の拳と絶縁刀が交互に繰り出され、クモオーグを追い詰めていく。

「お前たちのやり方には反吐が出る……自分の快楽のために、他者の命を弄ぶとは!」

 ペルフェクタリアの声には怒りが込められていた。クモオーグは、
その圧倒的なスピードと力に次第に押され始める。

「く……だが貴女が如何に強かろうと、今一度動きを封じてしまえばこちらのもの!
勝った気になるのは早いですよ!」

 クモオーグは口からさらに多くの蜘蛛の糸を放ち、彼女を支配しようとした。
しかし、その瞬間、ペルフェクタリアの絶縁刀が閃光のように輝き、全ての糸を
一閃で断ち切った。

「あの刃は実体を持たぬエネルギー体……! つまり私の糸とは絡み合わず、
溶断される……相性不利!!」
「これで終わりだ……! ぬんッ!!」

 ペルフェクタリアは魔力を込めたマフラーを伸ばし、クモオーグを拘束する。

「うおっ、し、しまりました……!! よもやこの私自身が囚われるなどと……!!」
「はあああああああああああああああああああッ!!」

 マフラーで雁字搦めにしたクモオーグを強引に振り回し、壁に何度もぶつけながら
その勢いそのままに空中に投げ飛ばす。クモオーグは宙を舞い、天井に叩きつけられた。

「ぐはっ……!」

 クモオーグは苦しげな声を上げながらも、最後の言葉を吐いた。

「あ、貴女には分からない……私の幸せとは、他人の命を囚える、その至高の瞬間……!」

 しかし、ペルフェクタリアは冷然と彼を見上げ、ただ一言。

「分かりたくもない。幸せを求めるために他者を犠牲にする者など、いずれ自らが
撒き散らした因果の糸に絡まるだけだ」
「く、くく……やはり、赤いマフラーは、嫌いですね……」

 クモオーグはその言葉と共に崩れ落ち、泡となって消えていった。

「幸せ、か……人を苦しめる事で幸せを感じる者もいる。人間とは分からないものだ……」

 その戦いは、ペルが人間への理解を深めるための新たな一歩となったのかも知れない……

10人目

「衝撃!明かされるラグナロクの真実《後編》」

「CROSSHEROES…!?じゃあこの壁画描かれてるのが…!」

「我々がCROSSHEROESとして結成される以前に存在していたとされるかつてのCROSSHEROES…!」

「……なんか、俺たちに負けないぐらい個性豊かなだな」

ボスの言うとおり、壁画に書かれてたCROSSHEROESのメンバーは今のCROSSHEROESに負けずとも劣らない個性的な者達ばかりだった。

見た目は子供頭脳は大人な名探偵
片目が髪で隠れてて黒と黄色の横縞模様のちゃんちゃんこを着た少年
自分達の知ってる歴史とは少し異なる戦国時代に活躍した戦国武将
身体の片方が赤色もう片方が青色の人造人間
テンガロンハットを被り黒いタキシードを着た復讐者
不思議なステッキを使って戦う閻魔大王の甥
刃が普通の刀とは反対の位置にある不思議な刀を使うサムライ
腕に銃を取り付けたハードボイルドな宇宙海賊
手足と翼と顔のある黄色の球体とピンクの忍者服を着たくのいちのコンビ
いろは達とは異なるタイプの魔法少女
よろずやを営む白髪のサムライ
鬼の力を左手に封印している先生
お腹に不思議なポケットを付けた青たぬき
他にも人工知能を搭載した未来のロボットやファンタジーな異世界の天才美少女魔術師、魔王にサキュバス、更には宇宙の騎士だったり天下の義賊だったり格闘家だったりと……もはやカオスなんてレベルじゃないぐらいにいろいろとおり、まさしく世界の壁を越えたオールスターズと言えるだろう。

そしてそんなかつてのCROSSHEROESの中に甲児達も知るある人物がいた。

「っ!これは……ルパン三世!?」

なんと、甲児達の世界リ・ユニオン・スクエアで有名な世紀の大泥棒ルパン三世が描かれていたのだ!

「ルパン三世というと……確か我々が港区でメサイア教団と戦っている最中にソロモンの指輪を奪ったという……」

「けどなんでこの壁画にルパン三世が…?」

「平行世界の同一人物……でしょうか…?」

「だとは思うが……」

「……CROSSHEROESという言葉の下にも文章が書かれてますね」

「あぁ、それも見た感じかなりの量だ……時間は掛かるが読んでみるとするか」





一同は壁画の下に書かれた長い文章を読んでいった。
そこに書かれた内容は次のようなものであった。

"かつてCROSSHEROESと戦っていたとある組織はある計画を起こそうとした、その計画自体は最終的にCROSSHEROESの手によってなんとか阻止することに成功した。
がしかし、その計画が実行される中であらゆる世界が次々と融合し混ざりあってしまったのだ。
それに目を付けたオリュンポスの神々(ミケーネ帝国)は世界が混ざりあい繋がってしまったことを利用して数多の平行世界に対して侵略活動を開始、
そしてそれに続くように様々な悪しき者達が同じように他の世界へ侵略行為をするようになり、やがて全ての世界で元の世界の住民と別の世界から侵略者による戦いや別の世界の侵略者同士の戦いが勃発するようになってしまった……これが全平行世界を巻き込んだ史上最大規模の戦争、最終戦争(ラグナロクである。)
全ての世界が戦場と化したこの戦争は、もはや勝者以外の全てが滅びるまで永遠に続くと思われていた。
だがしかし、この最悪の戦争を終わらせようと立ち上がった者達がいた。
それこそが先の戦いを終わらせた英雄たち、CROSSHEROESである。
彼らはミケーネを裏切った光の神ゼウスや勇者ロトを始めとした正しき心の持ち主達や自由を求める者達、平和を取り戻そうとする者たちと力を合わせ、全ての発端となったオリュンポスの神々を始めとした平行世界への侵略活動を行う全ての悪しき者達を打ち倒し最終戦争(ラグナロク)を終わらせたのであった。
だがしかし忘れてはならない、多くの悪しき者達が再び現れたとき、そして再び全ての世界が繋がろうとする時、再び最終戦争(ラグナロク)は起こってしまう可能性があることを……"



「……なるほど、これがラグナロクか……」

「かつてのCROSSHEROESが戦っていた敵が起こした計画……それによる世界の融合に目をつけたミケーネが平行世界への侵略活動を始めた事によってラグナロクは引き起こされたのか……」

「……世界の融合か……」

「鉄也さん…?」

「……すまない。一つ聞きたいのだが……確かこの特異点を修復するのに必要とされる聖杯の持ち主……丸喜とやらとは今は停戦状態だったよな?」

「はい、確か暗黒魔界を倒すまでの間限定ですが、彼らとは停戦となり、この特異点に取り込まれた世界の改変は中断してくれると聞きました」

「……特異点による世界の融合の方はどうだ?」

「そちらについては何も聞かされてませんが……恐らく世界の融合自体は現在進行系で行われてるかと……」

「そうか……だとしたら少々まずいかもしれないな……」

「どういうことですか鉄也殿?」

「……ラグナロクは世界の融合とそれに目をつけたミケーネによる侵略活動が原因で起こった……」

「……っ!まさか!」

「そうだ。もしもこのままこの特異点があらゆる世界を取り込み融合し続けていけば……





この特異点がきっかけとなり、新たなラグナロクが起きてしまう可能性がある…!」

11人目

「命ある限り戦う、それが――/宿命の対決!! 仮面ライダーX対アポロガイスト」

 大ショッカーの怪人軍団、クモオーグ……覚醒した抑止力の使者・沖田オルタ、
ヒトの幸福の何たるかを知った魔殺少女ペルフェクタリアの前に倒れていった強敵たち。

「おのれ……!!」

 形勢逆転。士を中心にして、戦士たちがアポロガイストの前に集う。

「残念だったな、アポロガイスト。お前たちの企みもここで潰える」
「ふ、ふふふふふ……」

 その時、戦場の隅から新たな気配が漂ってきた。静寂の中に響く足音が、
次第に大きくなり、おどろおどろしい異形の影が蠢いている。
大ショッカーの新たな怪人たちだ。

「おかわり、ってか……」
「仮面ライダーに倒された怪人達の恨み……これしきの事で潰えるものか!」

 ―――士は新たな脅威に対し、冷静な目を向けながら口を開いた。

 異形の影は、恐ろしい笑みを浮かべながら一歩前に出た。
人間離れした醜悪な姿で、闇のエネルギーを纏っている。

「仮面ライダーに敗れた我らの憤りを、完全に消し去ってやる!」
「ディケイド! お前とて、一度は大ショッカーの大首領に君臨した身!
力こそがすべてを支配する! それは貴様もよく知っているはずだ!!」

 怪人たちから口々に投げかけられる、消せない罪。

「門矢士、お前も……」

 ペルは悟った。ここにいる男もまた、自分と同じ罪業を背負うものであると。
士は過去に世界を救うため、大ショッカーの大首領となり、或いはすべての仮面ライダーと敵対した事もあった。止まらない並行世界の融合……それを食い止めるには
世界を引き寄せ合う力の源であるすべての仮面ライダーを破壊するしか無かった。
ある意味では、世界を存続させるための必要悪となる必要があった。

「かつて、俺は大ショッカーの大首領として、世界を支配しようとしていた。
世界が崩壊の危機に瀕していた時、唯一の救いとして選ばれた存在。
完全なる消滅を回避するための、支配……俺は世界を救うために、
大ショッカーの力を利用しようとしたが、やがてその力がもたらす闇に気づいたんだ」

 これまでペルも知らなかった、士の過去。彼の言葉に耳を傾けながらも、
疑念を抱いていた。

「では何故、その大ショッカー大首領とやらの座を捨てて、今ここにいる」

 士は目を閉じ、過去の記憶に思いを馳せる。

「全ての仮面ライダーとの戦いの中で、俺は自分の選択が間違っていたことに気づいた。
力による支配だけでは、その先の未来は無い。人間の自由と平和を疎かにした世界は、
初めから死んでいるも同じだ」
「人間の自由と、平和……」

 故にこそ、士はペルフェクタリアが所属していたアベレイジと敵対し、
リ・ワールドを救うにまで至った。そしてペルもまた組織を離反し、戦う事を決意した
きっかけをもたらした男でもある。オルタは力強く頷いた。

「……あなたも、永遠に戦い続ける道を選んだのだな。私のように」

 志半ば、若くしてこの世を去った沖田総司の別側面……持てる命を燃やし尽くして
刃を振るい、戦い続ける……その願いの元に抑止力の守護者として導かれた。
そしてペルフェクタリアも微笑みながら言う。

「私も、お前のように過去を乗り越えて共に戦おう」

 士は仲間たちの言葉に感謝し、再び決意を新たにした。

「過去は変えられない、だが、未来は俺たちの手で作り上げることができる。
だからこそ、今ここで力を合わせて、お前ら大ショッカーを……潰す!!」

 その言葉に触発され、士と仲間たちは過去の闇を背負いながらも、
彼らの絆はより一層強く結ばれ、未来への希望が輝き始めたのだった。

「大首領を追われ、すべての世界から拒絶され……貴様は一体何なのだ!?」
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ……変身!!」

【KAMEN RIDE DECADE】

 士がネオディケイドに変身したと同時、足元に光るジョゼの花を拾い上げる。

「ふん、そんなちっぽけな花が何だと言うのだ」
「どんなにちっぽけな存在だろうと、それが集まれば、ちょっとした奇跡も起こせる……
かも知れないぜ?」

 すると、ペルがこれまでの探索で集めていたジョゼの花束と
ディケイドが持つ一輪の花が眩い光を放つ。

「これは……!!」

 それに呼応してライドブッカーから飛び出してくるのは、
ディケイドのライダーカード……ではなく、花探しに向かう前にジョゼから渡された
「ブランクカード」であった。


『何だ、こいつは……何も描かれていないじゃないか』
『役に立つかも知れないから、持っておいて。お守りだよ』


 真っ白な無地のカード。勿論、それだけでは何の力も意味も持たない。
だが、ジョゼの花の光を浴びると、ひとりでに絵が浮き出て来て……

「!?」

 怪人軍団の背後から鳴り響く爆音。

「クルーザァァァァァァッ! アタァァァァァァァァァァァァァァァックッ!!」

 「白い弾丸」クルーザーが怪人たちを次々に轢き斃していく。

「ぐぎゃあああああああああああああああああッ……!!」
「お、おおおっ、や、奴は……!! な、何故奴がここに……!!」

 華麗なターンを決め、振り返るその男は……アポロガイストにとって終生の好敵手……

「仮面ライダー! Xッ!!」

 銀の仮面に、黒マフラー。赤い胸はガードラング。額に輝くVとV……
アポロガイストが属する秘密機関GODを壊滅させた深海探査用カイゾーグ、
仮面ライダーXが現れたのだ。

「Xライダー……もしや、こいつの力か……」

 ディケイドが目をやると、ブランクカードは音もなく崩れ去った。
ヒトの祈りを形にする。力による支配を良しとしない者たちの、反逆の象徴。
ペル、沖田オルタ、ディケイド、命ある限り戦い続ける者たちの心がひとつになった事で
起こった、たった一度きりの奇跡……

「アポロガイスト……!!」
「くくく、はははははは、今日は何と言う日なのだ。よもや、貴様とこんな場所で
相まみえる事になろうなどとは!!」

 フルーレの切っ先を向け、アポロガイストは士気を高めた。

「ライドルホィィィィィィィィィィィィップッ!!」

 対するXライダーも、ベルトに備え付けられた専用武器・ライドルを引き抜き、
Xの字を描く。

「Xライダー! 貴様を倒し、今度こそ地上世界を支配してやるのだ!!」
「俺がここに喚ばれたのも、貴様のその悪巧みを止めるためなのだろう。
決着を着けるぞ、アポロガイスト!!」

『露払いは俺と主に任せな!』
「すべて斬り伏せるぞ、煉獄。え、と……」

「ペルフェクタリアだ」
「ペ、ペル、フェ……?」
「……長ければペルで良い」

「分かった。ペル。うん、呼びやすい」
「まだ寝ぼけているんじゃないのか、お前の主は」
『眠気覚ましにひと暴れするさ!』

 軽口混じりに、煉獄を携えた沖田オルタとペルフェクタリアは残る怪人軍団に
向かっていく。そして……

「ディケイド、アポロガイストは俺が引き受けた」
「頼んだぜ、センパイ」

 アポロガイストとXライダー。因縁の対決が時空を超えて今、再び――!

12人目

「心なき世界に憎悪の花束を その1」

 世界は理不尽でできている。
 いつもどこかで、誰かの顔が曇っている。
 世界のどこかで、誰かが無為に命を落とす。
 どこかで、些細な会話から不和が生まれる。
 世界から罪咎が消えることなく、それゆえの慟哭は止まない。
 そんな理不尽の世界に、我々人類は生きている。

 それでいいのか?
 それが人類の答えなのか?
 人類は、高潔で無垢で、善なる生き物でなければならない。
 なのに―――世界は憎悪に満ちている。
 神への恩讐!運命への憎悪!
 理不尽への嫌悪!そこから沸き出でる、哀しみと怒り!

 ならば燃やせ、復讐の焔を!
 怒れ、憎め、呪え、殺せ!
 世界を焼き尽くし、なおも燃え盛る昏き炎を此処に!



「おかしいですね、連絡が途絶えた?」

 ジャバウォック島 第Ⅳ実験棟 ファルデウスチーム

 難敵マクスウェル・メイガスを下し、一行は第Ⅴ実験棟で合流する予定だった。
 が、一応の確認というのもあって、まずは第Ⅳ実験棟の調査を終えてから合流する事にした。
 そのことを伝えようとするファルデウスだったが、どうも連絡が取れない。
「無事であればいいんですが……。」

「しかし、でけぇなここも。」
 第Ⅳ実験棟にある建物は、どこか博物館のような見た目をしていた。
 往々しくそびえたつ、大理石の柱。
 その奥はどこか薄暗い。この先に恐竜の化石でも待ち構えていそうな雰囲気だ。
「また、魔獣出てこないだろうな?」
「それは、入ってみたらわかる。」
 巨大な建物へと向かう4人。
「ドアは開いてる。見張りや魔獣の類もない。」
「中に教団兵士や魔獣の類もない。行きましょう。」
 周りには待ち伏せている兵士はいない。
 フィオレの魔術探査も青信号を出している。
 安全に内部へ入れそうだ。

 だが一人、遠くの方を見ている者がいた。霧切だ。
「……あっちの方で、何か嫌な予感がする。」
 仲間の霧切が、第Ⅴ実験棟の方を見て悩んでいる顔をしている。
 悩んでいるというには、心配しているという方が正確か。

 やがて我慢できなくなったのか、霧切は突如走り出す。
「……ごめんッ、先行って!」
「ちょ、おい!霧切!」
 燕青の制止も聞かず、霧切は行ってしまった。
 行先は当然第Ⅴ実験棟。
(復讐云々以前に、ものすごく恐ろしい何かを感じる!)
 それは虫の知らせからくる強迫観念。
 友への想い、仇への恩讐、宿敵への感情が、霧切の足を強引に動かし、精神を急かしていた。
 彼女の「超高校級の探偵」としての経験からくる直感が、その思いを確固なものとする。

「行っちまった……。」
「一体何が起きて……いや、何を感じたんだ……?」



 ????

「ぐぅ……なんだ、今の。」
 ゼクシオンが持ち込んだ礼装により、江ノ島は幻視する。
 目の前の苗木誠が、どこか陽炎のように見えてくる。
 陽炎は凶悪な笑みを浮かべ、此方を睨んでくる。
「やめろ苗木、それ以上私の心を縛るな……!!」
 この世全ての悪(アンリマユ)の力を植え付けられた苗木誠。
 彼が一歩近づくたびに、江ノ島の罪悪感が強まる。
 彼が迫るたびに、彼女の心はより重くなる。

「お前のせいでみんな死んだ」
         「絶望の化身が、正義を騙るな」
    「クズめ、どうせ裏切るだろうが」
                   「生きる価値など、お前にはない」
       「己の業と、罪を受け入れて死ね」

 己を責める声が、より強くなる。
 いくら超高校級の絶望として心を開き直らせても、精神は人並み。
 狂った性癖を以てしても、精神攻撃への耐性があるわけじゃない。
 精神と魂に作用する糾弾は、断罪は、非難は、確かに江ノ島の心を破壊しつつあった。

「消えろ消えろ、どこだ……どこにある!!」
 絶望が、罪が、咎が、悪性情報が、江ノ島の体を泥のように覆う。
 精神を軋ませる、悪辣な泥。
「あ、ああ、あ……あああああああああ!!」
 ついには苦悶の叫びをあげる。

 それは断罪の法廷。
 そこにいるだけで対象の罪悪感を掘り起こし、増幅させ、やがては無気力な木偶にしてしまう。
 それがゼクシオン・ビショップの発明した、人間への悪意に満ちた礼装。
 幻想郷の廃棄孔、そこに作った『偽・希望ヶ峰学園』と悪霊の精神汚染のデータをもとに作った悪意の兵器。
 試作・対象無力化礼装『糾弾法廷』である。

13人目

「大変身!! Xライダーの秘密パワー」

 仮面ライダーXとアポロガイストの戦いが本格的に始まると、戦場は緊張感に包まれた。アポロガイストはフルーレを鋭く突き出し、その動きはまるで蛇のように狡猾で素早い。
一方の仮面ライダーXは、ベルトから引き抜いたライドルホイップで
アポロガイストの攻撃を迎え撃つ。

「ふふははは、嬉しいぞ、Xライダー! やはり貴様との戦いは心が躍る!!」

 アポロガイストはその言葉と共に、一気に仮面ライダーXに突撃する。
フルーレが鋭く閃いて襲いかかるが、Xライダーはすばやく反応し
ライドルホイップを自在に操ってその攻撃を受け流す。火花散る連続攻撃。

「貴様の方こそ、相変わらず敵に回すには惜しい腕前だ!! とぉぉぉうッ!!」

 そして、Xライダーはアポロガイストの突きを飛び退いて回避し、

「ライドルスティィィィィックッ!!」

 戦況に応じて自在に形状を変形させる事が出来るライドルを、ライドルスティックに
チェンジさせて反撃に転じた。

「今度はこちらの番だッ! とぉぉぉうッ!!」
「ぬううッ!! なんのぉぉぉぉぉッ!!」

 ホイップが近接による突き、斬撃用形態であるならば、ライドルスティックは
間合いを離した中距離戦闘を得意とする。アポロフルーレの間合いの外から
怒涛の波のように繰り出されるXライダーの棒術に対し、アポロガイストは
ガイストカッターを盾代わりにしてそのすべてを受け止めた。

「やるな……!! かつて戦ったときよりもパワーアップしている……」
「当然だ……メメントスの闇の力……! これさえあれば、貴様にも勝てる!!」

「お前は闇の力を頼りすぎている……それだけでは、俺を倒すことはできないぞ!」
「ほざくなぁッ! 所詮貴様にこの闇の力の真髄を理解するなど到底不可能!
ガイスト! カッタァァァァァッ!!」

 アポロガイストはXライダーを押し退けると同時にガイストカッターを投擲、
空中で回転する刃がXライダーに迫る。一瞬の判断で身を屈め、ガイストカッターを回避。だが、それもアポロガイストには既に計算の上だった。

「マグナムショットッ!!」
「ぐあっ……!!」

 動きを止めた一瞬の隙を見逃さず、正確無比の銃撃がXライダーの胸部に着弾、
さらには軌道を変えて背後から戻って来るガイストカッターの波状攻撃に
見舞われてしまった。

「ぐああああっ!! くっ……!!」

 背中にガイストカッターの凶刃を受け、前のめりに倒れ込んでしまうXライダー。
アポロガイストは高笑いと共にガイストカッターをキャッチした。

「ふはははは、どうだ、Xライダー!!」
「おのれ……!!」

 よろめきながらもXライダーは起き上がる。

「傷は深いはず……それではもはや私の攻撃を避わす事は出来まい!」
「それはどうかな……!?」
「何ィ……!」

「俺にはまだ、貴様が知り得ない力がある……それをお見せしよう!!」
「ハッタリだ、今更何をしようとも……!!」


「マーキュリー回路! 起動ッ!!」


 かつて、GODの強敵怪人・クモナポレオンに敗れ去った際にXライダーに
組み込まれた未知なる力……


「大・変・身ッ!!」


 マーキュリー回路を起動させるためのキーとなる「大変身」のポーズを取ると、
Xライダーの身体機能が完全開放され、自己治癒能力も活性化、ガイストカッターで受けた
背中の傷も見る見る内に回復していく。

「ば、馬鹿なぁっ……!」

 アポロガイストは見た。銀色に光り輝いて仁王立ちするXライダーの背後で、
溢れ出すエネルギーの奔流が爆発しているイメージを。

「え、ええいッ! 虚仮威しだッ! マグナムショットォッ!!」

 再び銃撃を見舞う。すると今度は、Xライダーが飛んでくる銃弾を
紙一重で避わしてみせたではないか!

「……」
「そ、そんなはずはない! 私の銃撃を……!!」

 続く二発、三発……やはり当たらない。狙った獲物は逃さないと言う自負。
それが脆くも崩れ去っていく。まぐれではない、Xライダーは
マグナムショットの弾道と射速を完全に見切った上で回避しているのだ。

「な、何故ッ! 何故当たらないのだ!! ぬあああああああああッ!!」

 狼狽と共に投げつけるガイストカッター。先程と同じ手……Xライダーはきっと
これも避わすはず。回避の後のその一瞬を狙う!
 
「……」
「左ッ! もらった!!」

 Xライダーの動きに狙いを定め、マグナムショットの銃口を向ける。

「とぉぉぉぉぉぉぉうッ!!」
「うおっ……!?」

 地面に落ちていたライドルスティックを足先で拾い上げ、その先端を蹴り上げる。
ライドルスティックは一陣の槍となり、マグナムショットに直撃。
銃身を粉々に撃ち貫いた。

「うわああああああっ!!」

 自らの武器が破壊されるとは予想しておらず、その動きに一瞬の隙が生まれた。
その隙を見逃すことなく、Xライダーは素早く距離を詰め、アポロガイストをガッチリと
拘束する。

「受けろッ! 真空! 地獄車ァァァァァァァァッ!!」
「うおおおおッ……!」

 アポロガイストを捕まえたまま、Xライダーは上空へ飛び上がり、
遥か上空から急降下、アポロガイストの頭蓋を地面に叩きつける。
一度だけでは終わらず、2度、3度と繰り返し、威力と速度を倍々に増して
アポロガイストの意識が混濁するほどのダメージを与え続ける。

「これで終わりだッ!!」

 満身創痍になったアポロガイストを空中へ放り投げ、その脊髄にトドメの一撃を
叩き込む。


「Xッ!! キィィィィィィィィックッ!!」
「ぐぉああああああああああああッ……!!」

 膝を折って着地するXライダーと、地面に激突するアポロガイスト。

「勝負あったな……」
「ぐ、おお……」

 全身から火花を散らしながらも、アポロガイストは執念の一心のみで
立ち上がろうとする。

「信じられん……この俺の真空地獄車を受けて尚立ち上がって来たのは……
貴様だけだぜ、アポロガイスト……見上げたガッツだ……」
「ふ、ふふ……見事だ、見事だな、Xライダー……このメメントスの暗闇の中で
私は負のエネルギーを蓄え、再起の時を待ち続けていた……敗れはしたが、
晴れ晴れとした……良い気分だ……こんな気分はいつ以来か……」

 息も絶え絶えに、言葉を綴る。Xライダーもそれを噛みしめるように聞いている。

「最後に……握手を……」
「……」

 アポロガイストが差し出す手に、Xライダーは迷わずに応じた。

「疑わないのか……握手すると見せかけて、アーム爆弾を仕掛けて貴様を
道連れにしようとしたかも知れんのだぞ……」
「信じたんだ。共に力を出し尽くした者同士として……」

「くっ……くくく……つくづく甘い男だ……だからいつまでも人間などに利用される……
強い力を傘に着た、弱者共にな……」

 手を離し、Xライダーを退がらせる。

「今回は貴様に花を持たせよう。だが忘れるなよ、我々はいずれ再び蘇る……
人間に邪心がある限り……大ショッカー……そしてGOD機関は……不滅だ!!」

 最期の言葉を残し、アポロガイストは大爆発を起こした。

14人目

「モノ探しの得意な鼠/救世問答5_決意」

 幻想郷 人間の里郊外

「確かに、八雲紫の言う通り闇の力が強まっているようだ。」
「言われてみると、懐かしい感覚がする。」

 サイクスとザルディンが、幻想郷に到着する。
 八雲紫のスキマによりこの場所に転送された2人は、とりあえず動かなければ始まらないと考え、転送先の人間の里を出て散策に赴いた。
 幸い、下級妖怪なら問題なく追い払える戦闘力を持っている。
 今は未半刻(14時ごろ)ではあるが、このまま夜になって狂暴化した妖怪に食い殺されるなんてことはない。

「だが、この後はどうする?当てもなく散策するわけにもいくまい。」
「人間の里で聞きこんでおくべきだったか?」
「見たところ魔力を感じられない一般人ばかりだったぞ。彼らに瘴気の位置が分かるとは思えないがな。」
 珍しく考え込むノーバディ2名。
 感情には出さないし出せないが、

「おや、そこの黒い外套のお二人さん。探し物かい?」

 見ると、ネズミの耳をつけた銀髪の少女がそこに立っていた。
 腰にはダウジング道具のようなものを装備している。
「なんだこのネズミ……敵か?」
 風の槍を召喚しようとするザルディンを、サイクスが制止する。
「待て、少なくともキーブレードの王とは関係なさそうだ。」
「そうか、すまんな。」
「いいけどさ、きーぶれーど、ってなんだ?法具か?」
「……俺たちの中での用語だ、気にするな。」
「あ、そう。」

「で……改めて聞くけど、あんたらなんか探しているのか?」
「この瘴気の元を探しているんだが、何か知らないか?俺たちはそれを探してここに来たんだが。」
「あー暗黒魔界ってところかい?そういえばうちのお師匠様がそのことで悩んでたんだよなぁ。」
 ノーバディ2人は顔を見合わせる。
「そのお師匠様って人のところに案内してくれるか?」
「命蓮寺に?いいよ。敵っぽくなさそうだし。ただし武器出すの禁止ね。」
「わかった。今後は気を付けよう。」
「ところで、名前は?」
「私か?ナズーリン。あんたらは?」
「サイクス。」
「ザルディンだ。さっきは攻撃しようとして悪かったな。」
「いいよ別に、誰だって後ろに妖怪がいたら警戒するしさ。」
 2人はもの探しの鼠、ナズーリンに連れられ『命蓮寺』という場所へと向かうのだった。
「まぁいいか。案内するよ。」



 丸喜の救世、それはあまりにも優しく、自分のしようとしている事と同じだった。

「それ、は。」
「動揺したか?」
 それは、決して落胆ではなく。
「余の考えていた救世の方法と酷似していた故な、少々驚いたぞ。」
 過去の己との酷似故の驚愕。
 ストロング・ザ・武道が興味深そうに問い出す。
「では聞かせてもらおうか。元々貴様はどう世界を救済しようと思った?」
「……おぼろげな、昔の記録だ。」

 過去、月の新天地(エクステラ)にて『自分らしく生きる』という願いを抱いた。
 それこそを本懐とし、『異星鍵(モノリス)』の力を以て、己の意思に理不尽なく、かつ洗脳や精神を壊すことなく従わせる異能『天声同化(オラクル)』の力を得た。
 この力による世界の救済を掲げたカール大帝は、月の王/女王についた己が影と激闘を繰り広げた。
 だがそれはついに果たされず、ついには影たる己、シャルルマーニュに膝を屈した。
 激闘の果て、意思と意地のぶつかり合いの果ての敗北だ。悔いはない。
 その胸には熱はなくなった――――はずだった。

『―――ああ、願うならば。今一度。世界を救った後の幸福な世界を見てみたかった。』

 そう願ってしまったのが間違いだったか。
 今のこの身を見ろ。醜くも救世を諦めきれなかった『慙愧』の側面が、こうして醜態をさらしている。
 宿敵シャルルマーニュとの戦いの折、英霊の座に帰るはずだったこの身が零した無念という名のひとしずく。
 自分が情けなくなってくる。
 付く陣営を間違えたと言い訳する気はないが、その後悔がその思いを増幅させる。

「余は『誰もが自分らしく生きられる、争いのない幸福な世界』が見たかったのだ。だのに今となってはこのざまだ。」
「つくづく道化になり下がった己が情けないか。」
「否定はせんよ。」
 煽る武道、ため息交じりの大帝。

 人類が等しく、理不尽なく、自分らしく幸福を謳う。
 それは何よりも優しい救済の形。
 少なくとも絶望の果てに、世界を滅ぼさんとする魅上のそれよりは明らかに慈悲深い。
「で、貴様はこの後どうする?道化のままというのも癪であろう?」
「そうだな……。」

 大帝が、次の言葉を言おうとしたその瞬間だった。

「対話中失礼いたします。」
「何かあったのか?」
「ああ、我が兵士が来たようだ、ちょっと失礼する。……どうした?」
「報告いたします――――。」

15人目

「絶望と希望のその先へ」

 Xライダーとアポロガイストの一対一の決闘が激しく繰り広げられる中、
ディケイドたちは迫る大ショッカーの怪人軍団を相手に戦いを続けていた。

「Xライダーがアポロガイストとやりあっている間に、俺たちも片付けるぞ!」

 緊迫する状況の中、ディケイドは激しい戦場でライダーカードを取り出した。

【KAMEN RIDE WIZARD】

 ディケイドはウィザードの力を借りるべく、そのカードをディケイドライバーに装填。
瞬時に仮面ライダーウィザードの姿へと変身した。
ウィザードの黒い外套が翻り、ディケイドの体に魔法の力が宿る。

「その姿は……」
「ふっ、懐かしいか?」

 ペルには覚えがあった。リ・ワールドを巡る戦いの中で共にアベレイジと戦った
指輪の魔法使いの事を。

「あいつはいつ如何なる時も絶望しなかった。例え世界が滅びの現象に
見舞われたとしてもな……」

 彼は人間の絶望から生み出される怪物「ファントム」を大量に呼び起こす儀式・サバトに
巻き込まれ、魔法使いとして戦う宿命を背負いながらも
心折れそうになる自分自身を奮い立たせ、幾度となく襲ってくる絶望を仮面の奥底に隠し、
「最後の希望」として在り続ける道を選んだ。

 リ・ワールドが封印され、その生死も定かでなくなった今も、
ウィザードの力と意志を受け継ぐ者たち。
たりあに救われ、滅びの現象を免れてCROSS HEROESと出会う事となったペル。
もしも仮面ライダーウィザード/操真晴人がここにいたとすれば……

「想いを受け継ぐ……それが今の私に出来る事か……」
「さあ、ショータイムだ!」

 ウィザードの力を得たディケイドは、空中で軽やかに舞い、華麗な足技で
怪人たちを次々に蹴散らし、

【Explosion】

 すかさず魔法のウィザードリングを通して戦場全体に燃え上がる炎で
連鎖爆発を巻き起こし、周囲の怪人を吹き飛ばす。

「ギャアアアアアアアッ!!」

【Big】

「まとめてぶん殴るッ! でぇええあああーッ!!」
「ぐわああああああッ……」

 DCDウィザードの右腕が魔法で巨大化し、怪人たちを一度に殴り飛ばした。
オリジナルのウィザードは指輪を着けた拳で敵を殴ることを封じていたはずだが……

「悪いな、ニセモノなんでね。オリジナルより行儀が悪いぜ」
「こ、この悪魔が……」

 ディケイドがウィザードの力を借りて大ショッカーの怪人たちを蹴散らす一方、
ペルフェクタリアもまた、過去の戦いを思い返しながら戦場に立ち向かっていた。

(私の知る操真晴人は指輪の魔法使いとして、絶望に打ち勝つ最後の希望だった……
あの男がいなければ、私もアベレイジからたりあを救い出せなかったかも知れない。
グランドクロスに敗れた絶望からもう一度立ち上がる事も出来なかったかも知れない)

 ペルはその想いを胸に、次々と現れる怪人たちに冷静に目を向ける。

(私もなれるだろうか……あの男のように……)

「ケキャキャキャーッ!!」
「――疾ッ!!」

 奇声と共に襲いかかってくる怪人の懐に崩拳を打ち込む。

「ぐぼぇあッ……」
「見ていてくれ……私も最後まで絶望しない……」

 彼女の手には黒いエネルギーが渦巻き、そのエネルギーはまるで生き物のように
形を変えていく。彼女が次に繰り出そうとしている技は、かつてのウィザードの精神を
受け継ぎながらも、ペル自身の力を最大限に活かしたものだった。

 陰と陽、闇と光、黒と白、絶望と希望……相反するエネルギーが
巨大な龍と虎の像となってペルの背後に立ち昇る。

「絶望と希望の力を以って……私も己を超えてみせる」

 ペルの目は冷静だが、その拳に込められた力は燃え上がるように強烈だった。

「輪廻極光・龍虎鳳麟・陰陽無尽……」

 戦場に響くのは、敵の叫び声と混乱した足音。ペルは静かに目を閉じ、
かつての仲間たちの姿を思い浮かべた。ピッコロ、ラーメンマン、
そして仮面ライダーウィザード……それだけではない、これまでの出会いのすべてが
彼女に力と知恵を授け、戦いの本質を教えてくれた。

 ペルは闇に染まった大地を見据えながら、拳を構えた。彼女の体から影が広がり、
次々と分身が出現する。影は生きているかのように動き出し、敵を包囲していく。

「影が覆う……逃げ場はない!」

 怪人たちは驚愕し、分身の包囲に焦りの色を浮かべるが、すでに遅い。
ペルの影分身は、四方八方から同時に攻撃を仕掛け、怪人たちを翻弄する。
分身たちが鋭い打撃で急所を穿ち、関節技で敵の体を締め上げ、敵は動けなくなる。

「な、何だこれはあッ」
「これで終わりだ……!!」

 DCDウィザードや沖田オルタもまた、その動きを読んでいたかのように
準備体制に入っていた。

「彼らに合わせるぞ、煉獄」
『あいよ、任せな!』

 無数の怪人が押し寄せる中、DCDウィザードとペルが闇と光の力を融合させたその時、
その狭間に立つ者、沖田オルタも静かに姿を現した。

「人の祈りよ、我が手に! 日月を超える光よ……塵刹を照らし、蒼き狭間を征け!」

 この世の一切を両断し、無穹の彼方へと消し去る魔剣。

「絶剱・無窮一閃ッ!!」」

 それは物質のみならず、あらゆる負の念と言った形なき概念すらも例外ではない。

「虎の尾を踏んだな……」
「終わらせるぞ、魔殺少女!」

【FINAL ATTACK RIDE WI-WI-WI-WIZARD】【Kick Strike, Now!】

 DCDウィザードの足元に魔法陣が出現し、足先に炎のエネルギーを纏う。
側転、バク転、宙返りを高速で繰り出しながら敵陣に突っ込んでいく。

「てぇああああああああーッ!!」

 DCDウィザードは勢いそのままに高くジャンプし、飛び蹴りを繰り出す。
同時にペルも両腕に破壊エネルギーを集中させ、突撃。

「虎落笛・牙噛ッ!!」

 虎が獲物を鋭い牙で噛み千切るが如くペルが突き出した双拳と
竜に由来するDCDウィザードの炎を纏ったキックを受け、破壊的な風と炎のエネルギーに
包まれる。

「ぐぉああああああああああああーッ!!」

 怪人たちは一瞬のうちに崩れ去り、爆発音が辺りに響き渡る。
その余韻が消えるころには、すでに全ての敵は消滅していた。
戦いが終わり、ディケイド、ペル、そして沖田オルタは静かにその場に立っていた。

「終わったようだな……」

 アポロガイストを制したXライダーも現れる。

「ディケイド。またもや大変な戦いに巻き込まれていたらしいな」
「まぁな。今に始まった事じゃないが、助かったぜ。Xライダー」

「アポロガイストは倒れた。だが、人間に邪心がある限り、いつか必ず蘇る……とも
言っていた」
「やれやれ、つくづく迷惑な奴だぜ」

 すると、Xライダーの身体が光に包まれ始める。

「どうやら、俺の出番はここまでのようだ……後は任せたぞ。クルーザーッ!!」

 主の呼び声に応じ、クルーザーが自動運転で駆けつけた。

「まるで私とお前のようだな、煉獄」
『へっ、照れくせぇや』

「またいつか、何処かで会おう。さらばだ」
「ああ」

16人目

「ミケーネ帝国、特異点に降り立つ」

「な、なんだってー!?」

「この特異点が、新たなラグナロクが起こるきっかけに…!?」

「だが、ありえなくてはない……事実この特異点は既に様々な勢力に利用されているのだからな」

「あぁ、それに加えてこの特異点が他の世界を取り込み続ければ、やがてこの特異点を中心として全ての平行世界が繋がってしまうだろう。そうなればこのラグナロクが起きた原因の1つであるあらゆる世界が融合し混ざりあってる状態になってしまう…」

「そうなる前に、早く特異点による世界の融合を止めなければ…!」

「あぁ、そのためにも急いでリ・ビルドベースに戻ってこのことを皆さんに伝えましょう!」

「そうですね」

一同はすぐさま遺跡の外へと出た。





「っ!?これは…!?」

遺跡の外へと出た一同が目にしたもの、それは禍々しい赤に染まった特異点の空であった。

「特異点の空が……赤色に…!?」

「……まさか…!?」

一同はこの空に見覚えがあった。
そう、港区であしゅら男爵が血の儀式を行い、ミケーネの神々を蘇らせた時に発生したのと同じ空である。

「間違いない…!ミケーネがこの特異点に来る…!」





一方その頃、竜王城ではジークジオンと竜王が話をしていた。

「ネオブラックドラゴンめ……せっかくのチャンスをみすみす逃がしおって……」

「まぁ良いではないか、確かに奴らも我々にとっては大きな脅威ではあるが、焦らずとも奴らを殺せるチャンスなどいくらでもある……それよりも、我々が奴ら以上に警戒しなければいけない」

「超越者共か……」

「そうだ。特にあの破壊神ビルス……やつは復活したばかりだったとはいえあのミケーネ帝国が警戒し撤退を選択するほどの実力者だ……そしてビルス以外にも超越者共は多く存在している……奴らをなんとかせねば我々の野望など絵に描いた餅だ」

「なに心配する必要はない……そのために奴らのスポンサーになったのだ」

「……なるほど、グランドクロスか」

「そうだ。数多の世界を滅びの現象で滅ぼしてきた奴らの力ならば超越者共を一人残らず消し去ることもできよう……」

「それで貴様やショッカーの大首領は奴らのスポンサーになったわけか。
スポンサーとしての特権を使い、奴らを超越者共への対抗手段としてこき使うために…」

「そのとおりだ。ついでにメサイア教団とやらもな。奴らめ、自分達がグランドクロスの手によって裏から支配され無意識のうちに奴らの操り人形にされているとも知らずにまるで自分達が神であるかのごとく全てを見下して調子に乗りおって、滑稽だわい!」

「だがそれでも油断はできん。今だに勇者アレクやガンダム族を始めとしたこの時代のCROSSHEROESもミケーネ帝国も健在、他にも暗黒魔界などが新たに動き出しグランドクロスとの関係もいつまで続くか分からぬ以上、戦力の強化は必須だろう」

「わかっている。そのためにも手に入れれば超越者すらも超えられる可能性のある超エネルギー、『エタニティコア』をどうにかして手に入れたいところだな」

ジークジオンと竜王が話をしていると、ジオン族の騎士ゼノンマーサがやって来た。

「ジークジオン様!竜王様!お話中のところすみません」

「騎士ゼノンマーサか、どうした?」

「ミケーネ帝国がこの特異点に接近しているとの情報が……」

「っ!ほう…奴らめ、この特異点の存在に気づいたか……いいだろう。騎士ゼノンマーサよ、呪術士ビグザムと共にモンスター共を引き連れて奴らを迎え撃て!この特異点の…そしてこれから全ての世界の支配者として君臨するのがどちらか、奴らに思い知らせてやるのだ!」

「ハッ!!」






一方その頃、リビルドベースでは

「ん?なんだ?」

「どうしたの皆?」

「なんか……空が赤くなってるような…?」

「空が…?うわっ!?本当だ!真っ赤になってる!」

空が突然赤くなったことに驚くゼンカイジャーのところににとりがやって来た。

「おーい!ちょっとあんたらの持ってる銃の中を解剖したいんだけど……ん?どうしたの皆揃って空なんか見ちゃって?」

「実は突然空が真っ赤になりまして……」

「ふーん、空が真っ赤にねぇ……紅霧異変を思い出すなぁ」

「紅霧異変?」

「あぁ、あたしが住んでる幻想郷でも空が真っ赤に染まる異変が起きたことがあってね。その時は首謀者である紅魔館とこの吸血鬼を博麗の巫女が倒して解決したんだ」

「へー」

話をしていると今度は宗介とかなめもやって来た。

「皆そんなところに集まってどうしたの?」

「あ、宗介にかなめちゃん。実は空が突然赤くなって……」

「……待て?今空が赤くなったと言ったか?」

「え?そうだけど……」

「……すまない、ちょっと見せてくれ」

そう言い宗介はゼンカイジャーの面々の中に割り込むように窓の近くまで行き、外を見る。

「っ!これは…!」

「ど、どうしたの宗介…?」

「……間違いない……この空はあの時と……ミケーネが現れた時と同じ空だ…!」

「え!?それって……」

「今ここに待機してるメンバーで戦える奴らを今すぐ全員かき集めろ!俺の予想が正しければこの特異点に奴らが…!」

宗介が話をしていた次の瞬間…!

「な、なにあれ!?」

「どうした!?」

「今度は空にでっかい穴みたいなのが…!」

「っ!?」

特異点の上空に突如して巨大なワームホールが出現

そして……





「ギャオオオオオオン!!」

そこから無数の戦闘獣やミケーネ神、更にはミケーネのものと思わしき移動要塞などが次々と出現し、特異点の各地に降り立っていく。

「ちょ!?なんっすかあれ!?」

「なんかいろいろと出てきましたよ!?」

「宗介、もしかしてあれが……」

「あぁ、間違いない…!奴らがミケーネだ…!!」

最終戦争(ラグナロク)の元凶の1つにして、機械の身体を持つ神々の軍団ミケーネ帝国。
リ・ユニオン・スクエアを襲った脅威が今度は特異点を襲おうとしていた。

17人目

「策謀の月/Lonely Chaser」

戦いの余韻が漂う戦場に静寂が訪れた。
アポロガイストを倒したXライダーがクルーザーに跨って去った後、
ペルはメメントスの闇の中にその背中を見つめながら、自分自身の想いに耽っていた。

「私も……いつかはあのように、使命を全うできるだろうか」

 ペルの言葉に、煉獄が軽く笑うように答える。

『おいおい、もう十分やれてるぜ。そんなに自分を追い詰めるなよ』

 沖田オルタも微笑みながら続けた。

「ペルはもうすでに希望の光を見つけている。あとは、その光を信じて進むだけだ」
『おっ、良い事言うじゃないの、主』 

「さて、一旦あの妙な小僧の所に戻るか。奴にもらっといたカードが役に立ったぜ……」

 大ショッカーの襲来と言う思わぬアクシデントがあったものの、
今回の戦いでしばらくは大ショッカーの怪人達の大規模な地上侵攻を防ぐことが
出来たであろう。一方、別ルートを探索中の月美、エリセ、太公望、坂本竜司たちは……

「結構お花集まったね……」

 別ルートを探索していた月美、エリセ、太公望、そして坂本竜司は、
ディケイドたちの状況を知らぬまま、メメントス内で花を集めていた。
ジョゼという不思議な少年から依頼されたこの作業は、表面的には単純なものだったが、
メメントスは相変わらず不穏な気配を漂わせていた。

「他の場所を探しに行った連中は無事かな?」

 スカルがふと呟き、月美に視線を向けた。月美は頷きながらも、考え込むように答える。

「大丈夫だと思う。ペルちゃんたちなら、きっと乗り越えているはずよ。
私たちも、無駄な時間は過ごさないようにしないとね」

 一方で、エリセはその言葉に反応するも、目を伏せたままだった。
彼女の体質――悪霊を引き寄せてしまう体質が原因で、周囲との関係に
ぎこちなさを感じていたのだ。特に月美との関係は、退魔師の家系である彼女にとって、
常に相反するものだった。

「……ごめんなさい。私が一緒にいるせいで、また何か悪いことが起きるかもしれない」

 エリセが弱々しく呟くと、スカルが軽く笑いながら彼女の肩を叩いた。

「気にすんなよ、エリセ。何か起こったら、その時にまた一緒に乗り越えればいいだけさ。そうだろ?」

 その言葉に少し気が楽になったのか、エリセはかすかに微笑んだが、
まだどこか自信がなさそうだ。

 月美は二人のやり取りに優しい視線を送りながらも、心の中で葛藤を抱えていた。
退魔師として、エリセの持つ「悪霊を引き寄せる力」に対して距離を置かざるを
得ない自分。しかし、それ以上に仲間として彼女を守りたいという気持ちもあり、
心の中ではその狭間で揺れ動いていた。

「大丈夫よ、エリセちゃん。何かあっても、私たちが一緒にいるから。
絶対に守ってみせる」

 月美のその言葉に、エリセはわずかに驚いた表情を見せたが、すぐに静かに頷いた。

「ありがとう……月美さん」
(そうだよ。力とか、生まれとか……そんな事で人を助けない理由にはならない。
そうだよね、お父さん……)

 父・月光へ問いかけるように思いを馳せる月美。
その時、スカルは道具袋から、食べ物を取り出した。

「ほれ、これ食えよ」

 月美とエリセに手渡されたのは大手チェーン店、ビッグバン・バーガーの
テイクアウトセットだった。ちなみに、ノワールこと奥村春は
ビッグバン・バーガーを経営する大企業オクムラフーズの社長令嬢である。

「こん中に入れとくと食い物も傷まねえんだ。醒めたりもしねえしな」
「そうなのね……」
「じゃあ、いただこうかな……」

「ああ、結構美味いんだぜ。次の戦いの前にしっかりエネルギーを貯めとかねぇと!」

 その陽気な声に場の空気が少し和らいだ。

「あの~……僕のは?」
「あ、悪い。今ので最後だ。じゃ●りこでも食うか?」

 太公望にはコンビニで購入したポテト菓子じゃが●こが渡された。

「……ま、まあ、いいですけどね?(ぽりぽり) 
サーヴァントは本来食事や睡眠を必要としませんし?(ぽりぽり) 
全然何とも思いませんけどね?(ぽりぽり)
……なかなか美味いなこれ?」 

「美味しいね、エリセちゃん」
「う、うん、私も一応サーヴァントだから、必要ない事と言えばそうなんだけど……」

「さてさて、少し休んだら、ジョゼ少年の所に戻りましょう。どうにも
このメメントスなる場所は空気が悪い。じっと留まっていると何が起こるやら……」
「ん……」

 太公望の助言の中、月美がふと顔を上げると、暗闇の向こうに誰かが
立っているような気がした。

「あれは……」
「……」

「……お父さん!?」
「えっ?」

 月美は思わず立ち上がった。彼女の瞳に映ったのは、いるはずのない父。
日向家当主の退魔師、月美の父・日向月光であった。

「お父さん! どうして、どうしてここに……」

 禍津星穢によって滅びの現象に見舞われた月美の世界。
娘に最後の希望を託し、日向家代々に伝わる奥義……時空を飛び越える秘術によって
月美を異次元へと送り届けたきり、生死不明であった父が、目の前に……

「あ、あれが月美の親父さんだって……!?」
「妙だ……月美さん、ちょっとお待ちなさい。その御仁は……」

 太公望の呼び止める声も届かず、月美は駆け出していた。

「もしかして、もしかしてお父さんも無事だったの!? それで……」
「……」

 言葉はなく、月光はただ微笑んでいるだけだった。あと少し、もう少しで
もう二度と会えないかと思っていた父に手が届く……そう思った瞬間……

「えっ……」

 ずぶり。月美の足元が突然泥濘んだ泥のようになって月美の足首を呑み込む。

「や、やべえ! トラップだ!!」

 スカルには覚えがある。メメントスでは時折、こうして目に見えぬ罠が潜んでいる。
その上を通るものを下のフロアへ強制的に引き込んでしまう。これもその内の一種だ。

「きゃ、ああ!!」
「月美さん!!」

 すぐさま月美を助けようとするエリセ。そこに何者かの銃撃が放たれる。

「なっ……」

 その弾丸は日向月光の胸部を撃ち貫いたが、月光は大穴を空けられたにも
微動だにせず、平然としている。

「今度は何だ!?」
「……! ……!!」

 そうこうしている内に、月美の姿は完全に地の底に沈み、月光の姿も掻き消えた。

「やはりか……あのまま近づいていたら、お前も餌食になっていたぞ」

 右腕をアタッチメント式の大型銃器「ブラスターアーム」と化し、
サングラスで目元を覆った長身痩躯の謎の人物……大ショッカーの怪人軍団と戦う
ディケイド達の様子を陰ながら窺っていた男だ。
エリセは数瞬呆けながらもすぐに我に返り、男に言及する。

「で、でも……助けられたかも知れなかった! 
月美さんは私なんかにも優しくしてくれた! それをみすみす目の前で……」
「優しさを履き違えるな。そう言う奴から先に死んでいく」

「おい! さっきから聞いてりゃあ、誰なんだよてめえはよ!!」

 ずかずかとサングラスの男に食って掛かるスカルに、彼は低く響く声で答えた。

「……結城丈二」

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