ケフィアの秘宝、ifルート

0 いいね
3000文字以下 30人リレー
1週間前 115回閲覧
  • 性的描写有り
  • ミステリー
1人目

次の日の朝、ハリスは旧鉱山へ戻る道を選んだ。昨日の銀塊発見で資金面の心配はなくなったものの、彼の心は図書館で聞いた「海につながっている」という道と、女海賊ケフィアの財宝へと向かっていた。一本道が二つに分かれる場所に来た彼は、迷うことなく右手の道、海へと続く方へ進んだ。

奥へ進むにつれて湿気が増し、潮の香りが強くなってきた。やがて、わずかな光が差し込む広い空間に出た。そこは、鉱山の坑道が崩れてできたかのような、小さなドーム状の空間だった。天井の隙間から細く光の柱が降り注ぎ、その光を受けて、底に澄んだ水を湛えた地下水脈がキラキラと輝いている。

ハリスは「なんてことだ…」と感嘆の声を漏らした。財宝探しは一時忘れ、この静かで神秘的な光景に心を奪われた。彼はバックパックを岩の上に置き、服を脱いだ。ひんやりとした空気が肌に心地よい。ゆっくりと水に足を踏み入れる。水は思いのほか冷たく、彼の鍛えられた身体の筋肉がわずかに引き締まるのを感じた。冒険で日焼けした肌が、差し込む光を反射して仄かに光る。彼は全身を水に沈め、心身の疲れを癒した。

水浴びを終え、水面から顔を出したその時、奥の岩場から複数の足音が聞こえてきた。ハリスは慌てて岩陰に身を隠した。彼の身体は水に浸かったままだ。やがて、三人の男が暗闇から姿を現した。彼らはハリスと同じようなトレジャーハンターの装備を身につけており、その顔には疲労と警戒の色が浮かんでいた。

男たちは、ハリスが脱いだままの服とバックパックに気づくと、すぐに表情を変えた。リーダー格の男が、無言で服を脱ぎ始めた。ハリスは息を潜めたまま、彼らの様子を見守る。男たちの身体はハリスよりも無骨で、幾つもの傷跡が冒険の過酷さを物語っていた。

三人はゆっくりと水に入ってきた。彼らはハリスから数メートル離れた場所で、水面を凝視しながら、小声で話し始めた。その声は水に反響し、ハリスの耳に不気味に響く。
「あの荷物は新しい。まだ近くに居るかも知れない」
リーダー格の男が言った。
ハリスは恐怖で全身が硬直するのを感じた。彼らの視線が、時折彼の隠れた場所へと向けられる。偶然か、それともすでに気づかれているのか?彼の心臓は激しく高鳴り、全身の血が逆流するような感覚に襲われた。男たちの言葉は、彼らがハリスの存在を確信していることを雄弁に物語っていた。

三人は水から出ることもなく、ハリスの目の前で向き合い、相談を始めた。
ハリスは、もはや逃げられないと悟り、音を立てないようにゆっくりと水中に身を沈めた。
澄んだ水のおかげで、彼は水中から男たちの様子をはっきりと見ることができた。
冷たい水の中、三人の逞しい男性器が、まるで太いウミヘビのように揺れているのが見えた。ハリスは、息をこらえながら彼らの無防備な姿と、その裏にある不穏な気配を感じ取っていた。
もし彼等が友好的なら、こちらに声をかけるはずだ。だが彼らはただ目を光らせ、何かを探るように周囲を見回すばかり。
その緊張した雰囲気が、ハリスに危険を告げていた。
(どうする…)
ハリスは息が苦しくなるのを感じながら考えた。
三人の目的は?やはり財宝か?それとも…。
ハリスは水中でじっと三人の行動を観察し続けた。

2人目

水中で息を潜めるハリスの耳に、奇妙な音が届いた。水の奥底から、かすかな振動のようなものが広がってくる。男たちも気づいたのか、会話を止めて水面を見つめた。

「……今の、聞こえたか?」

「何かが、近づいてる」

次の瞬間、地下水脈の底から泡が立ち上り、光の柱の中に、ゆらりと影が浮かび上がった。それは巨大な半透明の塊――水母のような形状をしていたが、触手のようなものが何本も揺れており、中心部には脈打つような赤い核が見えた。

「なんだ、あれは……!」

男たちが一斉に後ずさる。ハリスも岩陰から身を引いたが、怪物は彼らに向かってゆっくりと接近してくる。水が震え、空間全体が不気味な圧力に包まれた。
怪物の触手が水面を叩くたび、波紋が広がり、光が歪む。だが、その動きはどこか緩慢で、攻撃的というよりは探索するような様子だった。男の一人が岩を手に取り、怪物に向かって投げつけた。

「やめろ!」

ハリスが思わず声を上げる。だが、岩は怪物の体をすり抜け、何の反応も示さなかった。
すると、怪物の触手の一本が男の足元に触れた。男は叫び声を上げて倒れ込むが、怪我はない。ただ、彼の身体は一瞬、青白い光に包まれた。

「……記憶が、見られた……?」

男が震える声で言った。怪物は、攻撃ではなく、何かを“読もう”としているようだった。
ハリスはゆっくりと水から出て、怪物の前に立った。

「君は、ケフィアの財宝を守っているのか?」

怪物は答えない。ただ、触手の一本がハリスの胸元に触れ、彼の心に何かが流れ込んでくる感覚がした。過去の記憶、冒険の断片、そして――ケフィアの名を冠した古代の航海図が、脳裏に浮かんだ。
怪物はしばらくその場に留まり、やがて静かに水中へと沈んでいった。水面は再び静けさを取り戻し、男たちは呆然と立ち尽くしていた。

「……あれは、門番だったのかもしれない」

ハリスがつぶやく。

「財宝の場所を知る者だけが、通れるように」

男たちは黙って頷いた。恐怖と驚きの中に、どこか敬意のようなものが漂っていた。
そして、地下水脈の奥――潮の香りが濃くなる方向に、微かな光が揺れていた。

3人目

リーダー格の男がゆっくりと口を開いた。
「おい、あんた。俺たちを助けてくれたようだが…」
ハリスは黙って男を見つめた。
「その礼はする。だが、財宝は別だ。俺たちはこの財宝のために、何年も探し続けてきた。あんたが一人で独占するつもりなら、ここで手を引いてもらうぞ」
男の目は真剣だった。ハリスは冷静に答える。
「この先に何があるのか、まだわからない。一人で進むのは危険すぎる。あの怪物が教えてくれたのは、協力することの重要性じゃないのか?」
ハリスの言葉は、男たちの耳には届かなかった。リーダー格の男は、ハリスの言葉を最後まで聞かずに、一歩前へ踏み出した。
「お前が何を言おうと、この先へ進むのは俺たちだけだ」
男はそう言うと、ハリスの前に立ち、そのたくましい胸板を突き出した。ハリスもまた、一歩も引かずに男と向き合った。
二人とも素っ裸の、ただ身体一つで相手の威圧感を受け止めていた。