嫌な呼ばれ方
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10人リレー
3週間前
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1人目
「おーい、宇宙人! 課長がお呼びだぞ!」
オフィスに響き渡る、先輩社員の遠慮のない声。デスクで営業資料を作成していた黒髪の青年は、カチャリとキーボードから手を離し、心の中で深いため息をついた。
彼の本名は「空野 宙(そらの ひろし)」。その名前を縮め、いつしか社内の人間は彼を宇宙人と呼ぶようになった。入社当時、「君の瞳は宇宙のように澄んでいるね」と飲み会の席で社長に言われたのがトドメだった。
ホームズ
2人目
宙は、嫌な気分になりながらも、課長の元へと向かうと、そこには、総務課から来た人間が立っていた。
「彼が、総務課から移って来た……えっと、名前はなんだったけな……」
「今日から、お世話になる天海宇宙(てんかいそら)です。よろしくお願いします。」
見た目、爽やかな青年だった。名前を聞いた途端、嫌な予感が頭をよぎっていたのである。彼の名前を聞いた課長がどんな反応をするのか、心配であったのである。
*
3人目
案の定、課長の顔がパッと輝いた。それは、新しいおもちゃを見つけた子供のような、無邪気で残酷な輝きだった。
「……天海、そら? おお、また『宙』か!」
課長は膝を叩いて爆笑し、近くにいた社員たちを呼び寄せた。
「おい、聞けよ! うちの課に二人目の宇宙人が来たぞ! こっちは空野宙で、新入りは天海宇宙だ。おいおい、これじゃあ『銀河系営業二課』になっちまうなぁ!」
ドッと沸き上がるフロア。宙は、作り笑いすら浮かべる余裕がなく、ただ天海と名乗った青年を直視した。