運び屋ホラスキーの宇宙小冒険

15 いいね
人が閲覧中
500文字以下 30人リレー
  • 688PV
  • SF
  • 自由に続きを書いて
1人目

俺の名前はキャプテン・ホラスキー。
このカタスミ星系では知らない者も多い郵便屋さんだ。
普段は中央から割り当てられた荷物をスピーディかつクールにお届けしているが、今はノルマを終えて一杯やりに行くところだ。
仕事のパートナーでもある真っ赤な愛機を飛ばすと、スペースデブリにしか見えない個人の人工衛星に到着した。
船を止めて消毒機能のないレトロな自動扉を抜ければ、愛想の悪いマスターがその3つの目でこちらをにらんでくる。
ツケもないのにこの態度だが過度に干渉してこないスタンスが性に合って自然と足が向いてしまうのだ。

2人目

「あの!」

 気に入りの一杯をぐびぐびやっていると、この場に似つかわしくない可憐な少女の声が響いた。
 見るとバーの入口にドレスを着た少女が立っていた。
 ドレスといってもバーに似合うようなそれではなく、もっと時代錯誤な、まだ人間が馬を乗り回して地上を這いずっていた頃を想起させるようなお姫様のようなドレスだ。
 どこかの惑星には住民全員がそういう「古き良き時代」の服装をして、古い生活様式の中で生きている惑星もあるのだったか。

 そのお姫様はあろうことか、俺の姿を見つけるとずかずかと近づいてきた。

「あの、あなたホラスキーさんですよね?」
「なぜ俺の名を?」
「あなたにお願いがあるんです」

 少女はこちらの問いに答えず、一方的に話を進める。

「私と"この子"を、配達してもらえませんか?」

 よくよく見ると少女は胸に何かを抱えていた。

「ニャア!」

 それは猫に羽の生えたような不思議な生物だった。

 俺は一体、どう返答すべきだろうか?

3人目

見れば衣装は立派だが背丈は俺の肩ほどもない子供だ。
大人としてここは世間知らずのお姫様に世のルールを教えなければ。
俺はグラスを飲み干すと彼女に向き直って言った。

「レディ、君にはいくつか知っておくことがある。
 まず仕事終わりの俺に話しかけるならまず一杯おごること、
 そしてポストメンに仕事を依頼したければポストに向かうべきということだ。」

「配達はできないということですか?」

「そうだ、そしてそれは俺の気分ではなくルールだからだ。
 そもそも君の相棒はともかく君自身はサイズオーバーで受付拒否だろうがね。
 行きたい場所があるなら乗り合いシャトルの駅が近くにあるからそっちに行きな。」

「わかりました…」

お姫様はそう言うとくるりと踵を返しバーを出て行った。
突然泣きだされたりしたらどうしようかと内心びくびくしていたが分かってもらえたようで何よりだ。

翌日俺のボロアパートに今日の配達物が届いた。
眠い目でそれを見た俺はすぐに覚醒する。
荷物の中には昨日の羽の生えた猫と分割されたお姫様が入っていたのだ。

首と目が合うと彼女は言った。

「これで配達してもらえますね?」

4人目

「お、お前さん……!」

「これで、分かったでしょ?」

「手品師の相方が、胴体切断の手品を失敗して、

 マジでバラバラになっちまったんだな……。

 気の毒に」

「違うわよッ!ロボットよッ!

 ……体を、くっ付けて下さるかしら?」

「ほい、ほいっと……」

カチッ

「左右の足、逆!

 人のボディで、遊ばないでッ!」

「ニャー!」

「え~っと……?」

ああでもない、こうでもない……。

~小一時間後~

どうにか、お姫様のボディを、元通りに組み立てられた。

キャットウィング(仮名)は、彼女の膝の上で、ゴロゴロしている。

「……で、どこへ配達しろってんだよ?

 名前は?

 何で、俺に頼むんだ?」

5人目

「申し遅れました。この子はペガリス。クルル様のご家族です。
我々を彼の方の住まいへと届けるのがあなたのお仕事ですわ」
そういいながら彼女は自身に貼られた伝票を見せてきた。

「げっ!ヒルズ星までだと!?
端っこも端っこじゃねぇか…」
ヒルズ星はこの片田舎の隅にある各界の大物が住まう高級住宅星だ。
財布の大きさ的にも、物理的な距離的にも離れすぎている。

「あなたなら配達できると伺ったのですが?」
誰だそんなことを言うやつは。大体最初からこの子は俺の顔も名前も知っていた。
俺の知り合いが無茶な仕事を押し付けてきたといったところだろうか?
全く見当もつかないが。

「OKしょうがない。お仕事が来たならこなすのがしがない公務員の務めだ。
ひとっとびとは言わないが無事にお届けすることを約束しよう。
世間話でもしながら小旅行としゃれこもうじゃないか」
燃料代もワープゲート代もかさみそうだがまとめて経費として請求してやる。
俺を紹介した奴にも何杯かおごらせないとな。

出発時やたらと荷台に乗りたがるお姫様をハネ猫と一緒に助手席に座らせると
目的地へのナビを頼りに俺たちは飛び立った。

6人目

あれから数時間が経った。
「これからどうすっかなぁ・・・」
状況を説明しよう、俺は愛機の点検の為、どこか文明のありそうな星に着陸していた。ここは森林のはずれにある草原のようでお姫様とハネ猫はどっかに行っちまった。まあ遠くにはいっていないようだし、気長に待つとするか。
「ん・・・?」
すると茶髪のロングヘアで変な民族衣装とサンダルを履いた少女が倒れていた。
流石に俺は放って置けなかったので、起こして話を聞いてみる事にした。
すると、自分は近くの村出身で平和に暮らしていたがある日アメジスト、エメラルド、トパーズ、サファイア、ルビー、ダイヤという6人の男たちによって支配されて美女がくすぐり奴隷にされているというのだ。
6人はそれぞれ違う能力を持っていて、特に背の高いリーダー・ダイヤは恐れられているうえ、6人組にはある秘密があり、それを見た者は処刑されるという。


 

7人目

なんとも物騒な話だがこれをどうにかするのは警察の領分だ。
護身用の熱線銃しか持っていない俺では荷が重すぎる。
この美女を近くの交番に届けてもいいがあいにく迷子の「荷物たち」が帰ってくるまでここを離れられない。

その時美女が言う村の方角から地響きが鳴った。
正直嫌な予感しかしないがお姫様たちの身は心配だ。
俺は美女の案内で恐る恐る森の中を分け入っていった。

やがて木造住宅が並んだ質素な村についたがそこからは木の焦げた臭いと煙が漂っていた。
美女が何かを見て小さな悲鳴を上げる。
そこには5色の大男たちが仲良く丸焦げになって倒れていたのだ。
どうやら奴らが件のならず者らしいがこれはいったいどういうことだ。

「ホラスキーさん、いらっしゃったのですね」
煙の中から現れたのはなんとお姫様だった。
「まさかお前さんがこいつらを?」
「いいえ、これはペガリスさんの仕業ですわ
 あの方たちがむやみにお体を触るものですからお怒りになられたのです」

どうもピンと来ない俺の耳に獣の咆哮となにやら争う男の声が響いてきた。
急いで向かったそこにいたのは白い肌の大男とそれを睨みつける羽の生えた大虎だった。

8人目

色からおそらく、あの白い肌の大男が「ダイヤ」と言われるリーダーなのだろう。
「よくも、仲間たちをやってくれたな!」
大男は大虎に向かって勢いよく飛びかかると、その太い剛腕を振り下ろすが。

「ニャー!」
勝負は一瞬でついた。大虎が口を開いた瞬間、すさまじい衝撃と共に光線が放たれたのだ。
直撃した大男は派手に吹き飛び、倒れ込んだ。5色の大男達と同様、丸焦げになっている。

もう戦意は消失したと判断したのか、羽の生えた大虎はすっかり大人しくなっている。
「ペガリス。もう戻っても大丈夫でしてよ」
お姫様が駆け寄ると、大虎の巨大な羽たちは器用に折りたたまれ、ハネ猫の姿に戻った。

「ちなみに、私でもあのぐらいできましてよ」
あの光線の威力。俺が手に持っている熱線銃の何百、いや何千倍でもかなわないだろう。
「この通り、超危険物に指定されているので、私達は一般ルートでは移動できませんの」

そう言うと、お姫様はニコリと微笑んだ。

9人目

ぶ・・・不気味すぎる
「はぁ。 というかそもそも動物って配達可能なんだっけ。」
お姫様はまた不気味に微笑んだ。
「そのことは禁句ですわ。今回は人目につかないところだったのでまだ良いけれど、公共交通機関などで『その言葉』を発したらただでは済まないわよ。」
「お前の出身国ってどこ?」
今度は、笑ったまま顔を引き攣らせた。
「お前とはなんですか?お前とは。『お嬢様』でしょう?」
このお嬢様は怖い。
敬語の『圧』
根本的に強いこと。
『圧』に逆らったら、ボッコボコに殴られる予感しかしない。
「…すみません。お嬢様。」

10人目

俺たちは森と草原の星をあとにして光速航路料金所を目指していた。
村の人々はぜひお礼をと言っていたが家を壊した後ろめたさもあり逃げるように飛び出したのだった。
なにより今は得体のしれない荷物たちと一刻も早くおさらばしたくてしょうがない。
一体全体何故俺がこんな目にあうのかと考えながら黙々とアクセルを踏み続けていると例の「お嬢様」がぽつりと口を開く。

「…静かすぎますわね」
何てやつだ。誰のせいだと思ってやがる。
「少々脅かしが過ぎましたわ。あなたが紳士的でありさえすれば何も恐れることはなくてよ?」
一転して俺を気遣っているかのように聞こえるが出自と同じようにこいつの真意は何もわからなかった。
ただ、
「正直俺はビビってますがね、仕事は最後までこなします。もし俺が途中で逃げ出すかもと考えているなら余計な心配だ…です」

しばらく間があった。俺はまた言葉を間違えたかと思ったが、
「それならばいいのです。無礼な物言いも許します。
 ではいつものように何か音楽を流しましょう、ペガリスさんも退屈しているので」
お嬢の許可がでたので俺は星間ラジオをつけた。流れてきた渋滞情報に俺はうんざりした。

11人目

「あれが料金所なのですね」
星間ラジオを流しつつアクセルを踏み続けて数時間。やっと光速航路料金所が見えてきた。
しかし案の定、渋滞情報の内容どおり凄い混雑具合だ。星間航行船がずらっと並んでいる。

この様子だと、またもや数時間はかかるだろう。いや、もっとかかるかもしれない。
身体も疲れている。そういえば、出発してから、ろくに休憩もしていない。少し休みたい。
「宿でも探して、ちょっと休みませんか。お嬢様」

そう提案すると「いいですわよ」との返答。「変な事をしたら吹き飛ばしますわよ」とも。
思わず「子供に興味はない」と返すと、ひどくご立腹になられたので、必死になだめる。
「それでは、行きましょう。ペガリスさんもお疲れのようですし」

こうして俺たちは、宿を営んでいる、かつ近場にある人工衛星を探す事にした。

12人目

渋滞を前に一息つこうというドライバーは俺たちの他にもたくさんいるようで近場の宿はほぼ満室だった。
だが渋滞情報があるならそれを聞きつけて宿衛星の方が集まってくるのが世の仕組みである。
ほどなくして質素だがバーと休憩所を兼ねた衛星をつかまえることができた。

「マスター、合成ミルクセーキをたのむ」
部屋を取った俺はバーでお気に入りの一杯を注文する。
「ハイハイよろこんで。お連れさんにはいかがいたしましょう?」
愛想のいいマスターに言われてふと考えてみるとお嬢やハネ猫が何か食事しているシーンを見ていないことに気づいた。
「お前たち…じゃなくてお嬢様たちは何か頼むかい?」
俺は真面目半分興味半分でお伺いを立ててみたが返ってきたのは素っ気ない「要りませんわ」だった。
「要らないったってお前、同僚のアンドロイドだってうまそうに電池を食うぜ?
それにペガリスさんはどう見たって有機動物だろ?何か肉でも食いたがってるんじゃないか?」

「我々には必要ないのです」
きっぱり言ったお嬢の顔はいつものように涼しいものだったが俺にはそれが寂しいものに感じた。
「にゃあ」
ハネ猫は何故か俺を慰めてくれた。