運び屋ホラスキーの宇宙小冒険

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俺の名前はキャプテン・ホラスキー。
このカタスミ星系では知らない者も多い郵便屋さんだ。
普段は中央から割り当てられた荷物をスピーディかつクールにお届けしているが、今はノルマを終えて一杯やりに行くところだ。
仕事のパートナーでもある真っ赤な愛機を飛ばすと、スペースデブリにしか見えない個人の人工衛星に到着した。
船を止めて消毒機能のないレトロな自動扉を抜ければ、愛想の悪いマスターがその3つの目でこちらをにらんでくる。
ツケもないのにこの態度だが過度に干渉してこないスタンスが性に合って自然と足が向いてしまうのだ。

「あの!」

 気に入りの一杯をぐびぐびやっていると、この場に似つかわしくない可憐な少女の声が響いた。
 見るとバーの入口にドレスを着た少女が立っていた。
 ドレスといってもバーに似合うようなそれではなく、もっと時代錯誤な、まだ人間が馬を乗り回して地上を這いずっていた頃を想起させるようなお姫様のようなドレスだ。
 どこかの惑星には住民全員がそういう「古き良き時代」の服装をして、古い生活様式の中で生きている惑星もあるのだったか。

 そのお姫様はあろうことか、俺の姿を見つけるとずかずかと近づいてきた。

「あの、あなたホラスキーさんですよね?」
「なぜ俺の名を?」
「あなたにお願いがあるんです」

 少女はこちらの問いに答えず、一方的に話を進める。

「私と"この子"を、配達してもらえませんか?」

 よくよく見ると少女は胸に何かを抱えていた。

「ニャア!」

 それは猫に羽の生えたような不思議な生物だった。

 俺は一体、どう返答すべきだろうか?

見れば衣装は立派だが背丈は俺の肩ほどもない子供だ。
大人としてここは世間知らずのお姫様に世のルールを教えなければ。
俺はグラスを飲み干すと彼女に向き直って言った。

「レディ、君にはいくつか知っておくことがある。
 まず仕事終わりの俺に話しかけるならまず一杯おごること、
 そしてポストメンに仕事を依頼したければポストに向かうべきということだ。」

「配達はできないということですか?」

「そうだ、そしてそれは俺の気分ではなくルールだからだ。
 そもそも君の相棒はともかく君自身はサイズオーバーで受付拒否だろうがね。
 行きたい場所があるなら乗り合いシャトルの駅が近くにあるからそっちに行きな。」

「わかりました…」

お姫様はそう言うとくるりと踵を返しバーを出て行った。
突然泣きだされたりしたらどうしようかと内心びくびくしていたが分かってもらえたようで何よりだ。

翌日俺のボロアパートに今日の配達物が届いた。
眠い目でそれを見た俺はすぐに覚醒する。
荷物の中には昨日の羽の生えた猫と分割されたお姫様が入っていたのだ。

首と目が合うと彼女は言った。

「これで配達してもらえますね?」

「お、お前さん……!」

「これで、分かったでしょ?」

「手品師の相方が、胴体切断の手品を失敗して、

 マジでバラバラになっちまったんだな……。

 気の毒に」

「違うわよッ!ロボットよッ!

 ……体を、くっ付けて下さるかしら?」

「ほい、ほいっと……」

カチッ

「左右の足、逆!

 人のボディで、遊ばないでッ!」

「ニャー!」

「え~っと……?」

ああでもない、こうでもない……。

~小一時間後~

どうにか、お姫様のボディを、元通りに組み立てられた。

キャットウィング(仮名)は、彼女の膝の上で、ゴロゴロしている。

「……で、どこへ配達しろってんだよ?

 名前は?

 何で、俺に頼むんだ?」

「申し遅れました。この子はペガリス。クルル様のご家族です。
我々を彼の方の住まいへと届けるのがあなたのお仕事ですわ」
そういいながら彼女は自身に貼られた伝票を見せてきた。

「げっ!ヒルズ星までだと!?
端っこも端っこじゃねぇか…」
ヒルズ星はこの片田舎の隅にある各界の大物が住まう高級住宅星だ。
財布の大きさ的にも、物理的な距離的にも離れすぎている。

「あなたなら配達できると伺ったのですが?」
誰だそんなことを言うやつは。大体最初からこの子は俺の顔も名前も知っていた。
俺の知り合いが無茶な仕事を押し付けてきたといったところだろうか?
全く見当もつかないが。

「OKしょうがない。お仕事が来たならこなすのがしがない公務員の務めだ。
ひとっとびとは言わないが無事にお届けすることを約束しよう。
世間話でもしながら小旅行としゃれこもうじゃないか」
燃料代もワープゲート代もかさみそうだがまとめて経費として請求してやる。
俺を紹介した奴にも何杯かおごらせないとな。

出発時やたらと荷台に乗りたがるお姫様をハネ猫と一緒に助手席に座らせると
目的地へのナビを頼りに俺たちは飛び立った。