未来

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  • 自由に続きを書いて
  • 暴力描写有り
  • 残酷描写有り
  • 性的描写無し
1人目

大切な友達が、殺された。
突き立った矢、傷口から溢れ出る深紅の血液、苦しそうな彼の表情。
いつも僕をおもちゃにする両親に引きずられる様にしてその場を辞す羽目となったが、脳裏に焼きついたその光景はどうしても離れなかった。
「お前は本当に、生きてる意味もないな。迷惑ばっかりかけやがって!」
殴られ、蹴られ、真っ暗の中に放り出されて。
慣れているからどうということはなかったけれど、冬の風が傷口に染みて、ひさしぶりに、じくじくとした厭な痛みを感じた。
いつも隣にあった友の温もりはもう戻らない。
寒さを凌げる木の洞で蹲っていたら、いつの間にか、綺麗な眠りに落ちていた。

2人目

目が覚めても、冬の風はやまなかった。
いつもなら横にある友の温もり。
友のぬくもりがないことを感じ、本当に僕は一人になってしまったのだと感じる。
父さんはよく「お前は本当に、生きてる意味もないな」というけど、僕だって好きで生まれてきたわけじゃない。
『生きる意味』ってなんだろう。
生きて、ただ頑張って生きて、それでも苦しいのに。
もう死んでやろうかと思ったときなんて数え切れないほどあった。
そういうときに君が助けてくれたから。
「生きてるのって、辛いよね。苦しい!って思っても、自分のことをわかってくれる人なんて誰も居なくて。誰も助けてくれなくて。でもさ、だからじゃない?苦しいことしかないから、すごいことができると嬉しいんじゃない?だからさ。俺はさ、人が生きることが義務じゃないと思う。もし苦しんでいる人が居たらさ、『生きてるだけで偉いよ』って言ってあげなよ。そうしたらすごい落ち着いて、気持ちの整理がつくと思うから。もちろん、自分にでも。」
だから、僕は今生きていられるのに。
僕を一人おいて、逝かないでよ。
僕は弱いから、一人じゃ生きていけないんだよ。
君が居ないと、生きていけないんだよ

3人目

すると夢に彼が現れた。
「お前もこっちに来いよ!」
手を伸ばす彼に「そっちは楽しい?」と僕は聞いていた。
「ああ、楽しい事ばかりだ!毎日が充実している。」
笑う彼の手を取り彼に抱きしめられる。
「大翔もうお前を離さないからな!」
ニコリと笑う彼に「大袈裟だな。でも今度は僕を置いていくなよ!大和。」と言ってやる。

4人目

彼に抱きしめられた途端僕は彼の手が人間的で柔らかいものから木の枝のように固いものへと変化するのを感じた。
そして、彼を突き放して顔を見ると悪魔のような顔へと変化していたのだ。例えたらガーゴイルのような顔。

大和「おいどうしたんだよ、大翔?」
大翔「大和、お前の顔が悪魔というかガーゴイルみたいになっているぞ」
大和「悪魔とかガーゴイルとか何言ってるんだよ?!大和だよ!」

恐怖を感じた僕は大和から逃げ去った。

悪魔の声「大翔、次は逃さないからな!」
目を覚ますタイミングでこの声が聞こえてきた。夢の中なのか部屋の中なのかはわからない。辺りを見回しても何もない。

5人目

白い部屋だった。天井と床があるだけで壁がどこまで行っても存在しない。誰もいない。僕以外に生きてるものの音はしない。

何日が経った頃だろうか、いや本当は数時間なのかもしれない。腹が減ることの無いこの世界で僕が唯一できることは思考だけだ。妄想だ。幻想だ。だけどいつしかそいが意志を持って僕に投げかけてくる。そいつは次第に大きくなりこの部屋を侵食していく。

僕は走った。ひたすらに、そいつが近寄るよりも早く遠くに。

声にならない叫びを幾度も繰り返した。喉が枯れれば声の代わりに血を吐き出した。

力が欲しい。この世界に打ち勝つ力が欲しい。握りしめた拳から血が流れ頭痛と吐き気は以前よりもどんどん酷くなる。何かがぷつんと切れた音がした。

目を開けるとそこに大和が立っていた。
彼の顔がガーゴイルだって?そんなことどうでもいい。例えそれが鬼であろうと化け物であろうと僕にとってはどうでもいいことだ。奴に比べれば赤子と変わらない。

「アハハハハハハ」

心の底から笑う僕に大和はギョッとしていた。彼は僕がどれほど苦しんだのかを知らないみたいに。そこに小さな違和感を感じながらも僕は勝ったのだ。