殺したい感情と止めようとする理性

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  • 現代ドラマ
  • 登場人物が死ぬの有り
  • 自由に続きを書いて
  • 話の流れを無視OK
1人目

手に強く握りしめたフォークが小刻みにブルブルと震えている。

今の話を聞いて目の前のこいつを許せるだろうか。テーブル越しに座る男はうつむいたまま黙ってしまっている。

こいつは、わたしの友達を殺したのは自分だと言った。許せるだろうか?許せるわけがない。
都合がいいことに手にはフォークを握っているし、テーブルの上には切れ味の良さそうなナイフもある。周りに他の客もいるがそんなものは知ったことではないだろう。

「ねえ」

わたしはそう声をかけてナイフに手を伸ばす。

2人目

 ナイフを握り込み、血管が浮くほどに力を入れる。
 ナイフを振り上げ、そして下ろす。
 それだけで目の前のコイツを殺せる――――。

「……っ」

 いやいやいや何を考えているんだわたしは。
 落ち着け、深呼吸深呼吸。
 人を殺すだなんて。
 そんなこと、まともじゃない。
 いくら目の前の相手が憎いからって。

 手から力がふっと抜ける。

「わたしの友達を殺したってどういう意味……? わたしの友達は……桃恵は、自殺のはずでしょ?」

 わたしの親友、桃恵。
 彼女は若くして自ら命を絶ってしまった。
 今日までそう信じていた。

 だが目の前の男が言ったのだ。
『あなたの友達は、自分が殺したんだ』と。
 一体この男と桃恵との間に何があったというのか。

「それは……うん、事の始まりから話そう」

 俯いていた男はゆるゆると顔を上げ、そして話し出した。