殺したい感情と止めようとする理性
0 いいね
500文字以下
30人リレー
3年前
576回閲覧
リグ
1人目
手に強く握りしめたフォークが小刻みにブルブルと震えている。
今の話を聞いて目の前のこいつを許せるだろうか。テーブル越しに座る男はうつむいたまま黙ってしまっている。
こいつは、わたしの友達を殺したのは自分だと言った。許せるだろうか?許せるわけがない。
都合がいいことに手にはフォークを握っているし、テーブルの上には切れ味の良さそうなナイフもある。周りに他の客もいるがそんなものは知ったことではないだろう。
「ねえ」
わたしはそう声をかけてナイフに手を伸ばす。
野良猫のらん
2人目
ナイフを握り込み、血管が浮くほどに力を入れる。
ナイフを振り上げ、そして下ろす。
それだけで目の前のコイツを殺せる――――。
「……っ」
いやいやいや何を考えているんだわたしは。
落ち着け、深呼吸深呼吸。
人を殺すだなんて。
そんなこと、まともじゃない。
いくら目の前の相手が憎いからって。
手から力がふっと抜ける。
「わたしの友達を殺したってどういう意味……? わたしの友達は……桃恵は、自殺のはずでしょ?」
わたしの親友、桃恵。
彼女は若くして自ら命を絶ってしまった。
今日までそう信じていた。
だが目の前の男が言ったのだ。
『あなたの友達は、自分が殺したんだ』と。
一体この男と桃恵との間に何があったというのか。
「それは……うん、事の始まりから話そう」
俯いていた男はゆるゆると顔を上げ、そして話し出した。