スーパーロボット大戦relayb外伝 scene:2 - リボーンラボ奮闘記 -

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  • 完結済
  • 469PV
  • 二次創作
  • スーパーロボット大戦
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  • オリジナル創作
  • 自由に続きを書いて

「プロローグ」 

 ――これは、始まりの物語。

 10年ほど前、突如出現した謎の機動兵器。
発見者たちはその機体を「レイブ」と命名し、調査に乗り出した。
しかし、名だたる科学者たちを以ってしても
その全容を解き明かすどころか、起動させる事さえ
出来ないまま「プロジェクト・レイブ」は凍結。
管理責任者であった維樹たすきの母は失踪。

 やがて人々から忘れ去られたレイブは
訳ありのオーパーツばかりが回されてくるリボーンラボへと送られる。
そんなある日、突然レイブのコクピット席から発見された謎の少年
比良坂詠次によって、レイブが初めて起動を果たした。

 喜びと驚き。自らの意志を持っているかのような
レイブとリボーンラボの面々の心温まる交流。
だが、そんな安らぎは一瞬にして崩れ去る。

 何者かによって送り込まれた刺客。目的はレイブの破壊。
抵抗を試みる詠次。そんな中、恐怖によって極限状態に追い込まれた
レイブが暴走。未知なる力を行使して刺客を瞬く間に退けると、
恐るべき跳躍力で空の彼方へと飛び去ってしまった…

 母に続き、またしても1人取り残されてしまった
たすきの傷心は深く……

「チェンジリング」

「偉杉さんが輸送機を回してくれるそうだ。 我々も近く拠点をソロモンベースに移すことになる」

あのあと、シャトルの人員は保護された。 えらすぎさんが手を回して中華連邦の勢力圏近く。 運良く逃げられた日本人が多く住む、ソロモン諸島のある島に移送したと聞く。
私たちもこれからそこに拠点を移す予定だ。

これは芝田さんから聞いた話だけど、どうやらレイブは宇宙で彼らを助けたらしい。 小さな女の子に「守ってくれてありがとう」と折り紙を渡されたと言う。 メールにはその折り紙の花の写真が添付されていた。

「ゲンくん、連れてけるよね?」
「芝田が言うにはガルダ級だし大丈夫だと思うよ? なんでも、あのガンダムの輸送にも携わった優秀な2人らしい」
「ガンダムかぁ……ゲンくんも多分同じくらいのスペックはあるはずなんだけどなぁ。 やっぱOSが新規ってのは無謀だったかなぁ」
主任はエンジニアモードになった。

——かくして、プロジェクト・リレイブは正式に発足する前に暗礁に乗り上げた。 だが偉杉の伝手によるスペースナイツの協力により、ひとつの仮説に辿り着く。

「レイブがワームホールを?」

「紛い物の意味」

「とりあえず、シェルター浮上させるねー」
「主任ちゃん、何を言い出した?」

轟音立てて地面から、生まれ出でるシェルター。
ゲンブが親亀ならば、子亀と言った出立ちだ。

「整備するにも稼働するにも研究室いるじゃない? ゲンブと一緒に運んで貰おうかと。
高さはMSと変わらないし、大丈夫大丈夫」

何処からか取り出したヘルメットを被る。

「フェイク改めゲンブ!フォートレスモードに変形。移動ラボ接続」
「主任ちゃん。こんなのいつ仕込んだんだよ」
「教授にたすきちゃんとアタシが置いてかれたあの日からコツコツ組み立てていたのです」
「最初からじゃねーか!」
「紛い物の次元跳躍機でも、調整には時間がかかるからね。タチ博士にも手伝って貰わないと」
「今、何を言った」
「タチ博士も手伝ってね(はーと」
「そっちじゃない!
次元跳躍機、積んでるのかよゲンブ!!!」

アサノは眼鏡を光らせる。

「アタシ、最初から紛い物って言ってたよ」

「無重力の海で」

 ――レイブが黒雲を呼び、天高く跳躍した時。


「――!! ぐっ…ぐぼぇっ…!!」

 強烈なGが支配する。体は指一つも動かせない。
内臓が引っ張り上げられる。
意識が体から離れ、引き剥がされるような感覚。

「レ…! レイ……ブ…!!」

 間もなく詠次の視界はブラックアウトした。

『…ジ…』

 それからどれだけの時間が経っただろう。

『…ミジ…』

 誰かの呼び声がする。

『ヨミジ!!』
「……はっ!?」

 目覚めると、そこは宇宙だった。

「ここは…一体、どうなったんだ、俺…」

 俺はリボーンラボの演習場に…地球にいたはず。
それが、宇宙空間に…

『ヨミジ、起きた?』
「レイブ…ここは何処だ? リボーンラボのみんなは?」

『わかんない。何にも覚えてない』

 語りかけてくるレイブは、いつもの調子を取り戻していた。
あの、機械的な冷たい感じはしない。

 レイブがジャンプして宇宙まで飛んだ?
ロケットブースターの類も無しに? 大気圏を単独で突破して?
それは少し考えづらい。
もしそうだとすれば、今頃俺はコクピットの中で燃え尽きている。

『…みんなどこに行ったの…?』

声色は完全に落ち込んでるとしか思えない。詠次はどうしようもないと感じていた。あの瞬間やらなければラボのみんなはやられていた。

「…レイブ。辛いかもしれないが聞いてくれ。」
「世の中ってのはラボの皆みたいにいい人が沢山いるんだ。でも、それと同じくらいに悪いやつがいるんだ。無闇に戦争を広げ、自分の主義を通すために戦火を増やす。そうした積み重ねが、自分たちの故郷を押しつぶす。昔からそうだったんだ。」
「…でも人間も馬鹿じゃない。そうならないよう、みんながギリギリの平行線を保っていくんだ。その平行線を守るために僕達も自分の身を守らなければならないんだ。」
『…』
「レイブ。君の手で多分…ラボのメンバーは無事だ。そして…君も無事なんだ。」
『…でも、私は…』
「君を狙う奴が存在する以上。もはや…あれだけでは収まらないんだ…」
「…だから…」


どうして私を作った人が戦争を避けていたか…それがわかった気がする。私は…多分戦争に出たら…きっともっと色んなもの壊しちゃった気がする。
それをしたら…接続なんて出来ないよね…
だから私を作った人は私を隠した…

…教授はレイブと一緒に消えた…
…たすきちゃんとアタシの前で…

次元跳躍現象だって思って調べてた。
教授の文献は残ってた。
たすきちゃんは私を追い出さず、
研究を続けさせてくれた。
だったら、次元跳躍機に紛い物ぐらい作らなきゃ、恩返しなんて出来ないじゃない。
レイブの倍のサイズになったけど、しょうがないじゃないの。

ヘルメットをたすきに手渡す研究主任アサノ。

「たすきちゃん、一緒にレイブと記憶喪失くんと教授を探しに行こう」

満面の笑顔で
涙でぐちゃぐちゃになりながら
たすきは大きく頷いた。


ーーー


「タチ。あの主任ちゃんは何者だ」
「うちの教授が拾ってきた眼鏡ッ娘。スリーサイズは知らん」

咥えたタバコを離さずに喋る。

「俺よりも天才だとは思う」
「なんだそりゃ。お前は博士じゃないのかよ」
「俺は、自称博士。いや、たすき曰くの博士なんだよ。教授の嬢ちゃん守ってるだけさ」
「面倒臭い関係だな」

缶コーヒーを開ける。

「まーやれるところまで手伝ってやるよ相棒」

長い旅路になりそうだ。
ゴクリと喉を鳴らしてコーヒーを飲み干した。

「欠けた決め手」

「これはお前だから言うんだが……」

曰く、奴が言うには嬢ちゃんの母親がいなくなったのと坊主が現れたのはレイブとシャトルが入れ替わったのと同じようなことなのではないか?と。
失踪も坊主がコックピットに来たのも、タイミングはてんでバラバラだが本質的に同じ現象だという。

「今回の件で、先生が命を狙われたって可能性も出てきてしまったけどな」

タチは一応そう付け加えた。

「まぁ、生きてる可能性のが高いってこったな」

タチが頷く。 期待を持たせない為に胸にしまっておいたのだろう。 だが、コイツとの付き合いが長い俺にはわかってしまう。

「悪い顔してんなぁ」

ニヤリとタチが薄く笑う。

「俺は人を危険に晒すようなマシンは作らないんだが……現物が目の前にあるならなぁ」

とても嬉しそうに続ける。

「普通は万が一ってのを考えるもんなんだ。 主任はそういう倫理観が無いのが長所だねぇ」

悪魔のような顔で笑う。

「事故……勝手に作ったものを勝手に使った事故ならいいよな? なぁに、次に触ったらゲンブが予定外の動きをするだけさ。 手伝ってくれるんだよな?」

悪魔がいた。

「そうなると、だ。長官に紛い物の話をするのはやめるのか?」
「輸送機に載せられる前に消えた本が自由に動けるよなぁ」
「そりゃそうだ。ガルダ級とは言え軍属だろ? 今までのような自由度は減るよな」
「このラボ自走出来るか?」
「ラボ自体、反重力で浮いてるな。…使うの躊躇うって頭はないんだな主任ちゃん」

ニヤリと笑う。

「みんなで自由になろうよ」

こいつもう少し嬢ちゃんに殴られといたほうが良かったんじゃねーか、そう思うシバタであった。


ーーー


「主任ちゃん、ラボに何積んである?」
「向こう一年分の食糧3人分と、ミノ粉発生装置、ミノフスキークラフト、ミラージュコロイド、たすきちゃんの宿題、教授の研究データと紛い物のテストデータ、、、タチくん秘蔵のエロ本は入れてないよ」

横でクックックッと笑うシバタ。

「エロ本ってガキかよ」
「うるせー。これだけあれば、上等上等。
移動ラボとゲンブの動力源は?」
「紛い物の次元跳躍機がエンジンでふ。
5%稼働でミノフスキークラフトぐらいは動かせる電力は生めたよ」

安全と危険のボーダーずれてるよなアサノちゃん。
天才は天才なんだがな。

「時空を超えた追いかけっこ」

 こうして、リボーンラボの面々は
行方をくらました詠次とレイブの捜索に乗り出した。

 レイブとゲンブ。ウサギとカメ。
ひとっ飛びで時空を突き抜けてしまったウサギに
ノロマなカメは追いつけるのか?

「リレイブ・センチュリーの中にはいないねぇ、ウサギちゃん。
こりゃあ完全に世界を飛び越えちまってるね」
「次元跳躍…単体であれほどの精度を実現させられるとはな」

 観測者たちも、レイブの行方をトレースしていた。

「あ、いたわ」

 そこは、リレイブ・センチュリーではない、隣り合う別世界…
極めて近く、限りなく遠い世界…

「これ以上、奴に並行世界を好き勝手に飛び回らせるわけにはいかん。
放置しておけば、やがては世界の接続が始まる。
すぐに追手を差し向けろ」
「了解。それじゃあ、手頃な駒を見繕ってみますか。
えーと、何があったか…よし、こいつにしようか。
そんじゃ、行ってらっしゃい、っと」

 レイブに差し向けられる、新たな刺客。
詠次とレイブが飛んだ先は、如何なる世界なのか?
そしてリボーンラボの面々は、詠次たちと再会できるのであろうか?

「表面張力」

——謎の空間

『いいのか? 放っておいて。 レイブがいないことであの世界は許容値を越えた状態を維持できなくなるぞ? 俺なら上手いことあっちに戻せるはずだが』

「引率者が優秀だからね。 子供だけで初めてのお使いなら貴方の言う通りにしたでしょうけど」

『ならば俺は奴らを惹きつける為に一度RCに戻る』

「少し待ってて。 場合によってはあの子達の手助けを頼みたい。 直接会うのは危険だけど、貴方がそこにいれば誘導出来るでしょ? どのみち、彼が弄るなら片道切符はあり得ない。 きちんと帰りの算段は立てるはず。 マーカーは必要だし、留守番のつもりかもしれないけど」

『了解した。 コースを外れるようならこちらで引き摺り込む』

「苦労をかけるわね」

『問題ない。 だが、レイブをこちらに留めるとなると、今度はこちらに溢れ始めるぞ』

「認識の齟齬に気付き始めてる者もいる。 多少溢れた方がいいぐらいだけど」

『この世界にとっては迷惑な話だ』

「ゲンブの転移でどれだけ流れ込むかは未知数ね」

——リボーンラボ
「さて、芝田には悪いけど俺が残るしかないからな……」

悪魔が笑う。

こんな出来事がありました。
根本的にアタシは人が良過ぎたのです。
中学飛び越えて大学入って、発明品作って、
アタシの想像を越えるお金が手に入った。
研究するのが面白くて、ただ研究してました。
気付いたら、周りの人もお金も発明品のパテントも無くなってました
適当な契約なんて、するもんじゃないよね。
教授が拾ってくれなかったら、何処かで干からびていたかも知れない。
たすきちゃんが居なかったら、誰も信じられない子になってたかも知れない。
タキくんが居なかったら?
アレ?
いつからタキくんが居たんだっけ?
アレ?
あれれ?


ガルダ級輸送機イカロスに積み込まれるゲンブと簡易リボーンラボ。
落ちそうな名前の輸送機だなー。
輸送機に積まれる前に居なくなったほうが動きやすいんじゃなかったっけ?
ゲンブの整備間に合わなかったんだよね。
整備の芝田さんと頑張ったんだけど。
あれ?
書類にサインするたすきちゃんを見ているアタシ。
なにかおかしくない?
あれ?
あれれ?

「行こう、主任ちゃん。芝田さん。レイブとヨミジくんを探しに!」

これはイカロスが消える、ほんの少し前のお話。
葛藤は言葉にならない

「奇縁」

まだ大きな戦争もない、今と比べりゃ平和な時代に奴と出会った。 アレは『なんでも出来るが、なんでもはやらない』そういう男だった。

そして、人を乗せるのがとにかく上手かった。

その後、俺は軍に入り、奴は進学。
それから数年。 俺はパイロット、奴は技術局顧問の助手として再会を果たす。
俺たちは缶コーヒーを飲みながら他愛もない話をした。

——リボーンラボ上空・イカロス

(じゃ、芝田。 あとよろしく)

こうして、機材諸々を積み込みイカロスは飛び立ちました。

私たちはというと……。

——数分前

「えぇ、芝田はホルストで随行、彼女たちは“この”コンテナの中で積荷を調整しながら移動します」

嘘である。 このおっさんは詐欺師だ。

こうして、後便で回収予定のコンテナと私たちと親亀子亀を詰め込んだ作業場を兼ねたコンテナを見事にすり替えた。

「取り敢えずこのコンテナから出ないように」

そう言ってコンテナを閉める。

——そして現在

ガコンと何かが当たった瞬間、コンテナの内部に明かりが灯る。

「な、なんじゃこりゃー!!!!」

「ドッキング完了。 嬢ちゃんたち、出るぞ!」

「近くて遠い世界」

中型輸送機ストークに私達のコンテナは、輸送されようとしていた。
操縦するのは芝田。
ドッキングの振動と同時に、次元跳躍機が起動。
イカロスが消えた、と私は理解した。
でも、消えたのは、私達だったんだ。

「やりやがったなぁタキぃ!」

ゲンブはコクピット外にも脳波コントロール装置が組み込まれている。
誰かが、次元跳躍機を外部起動させたのだった。
誰かは、ここに居ない誰か、だ。

「状況把握したいんだが、GPS効かねえぞ。
何処だよ、ここ」
「主任ちゃん、レーダーとかなんか調べて」
「ほげー」
「芝田さん、主任ちゃんがポンコツになってる!」
「そりゃ、そうだろうよ。
薬飲まされてるよ、アサノちゃんは。
発明品に関しては、ミーガン・アサノ博士を騙し抜ける方法は限られるさ」
「ミーガン・アサノ? 主任ちゃんが? まさか?」
「失踪した天才発明家だよ、この子は」
「えーーーーーー」
「名前言いたがらないだろ? 主任ちゃんで呼べって言ってだろ? そういうことだよ!」
「私達は、どうなるの?」
「俺は墜落しないように頑張る。
後はアサノちゃんが目覚めてくれるのを待つだけだ」

「タチからタを抜くと舌打ち」

——別の宇宙・ストーク
芝田さんが言うには、次元跳躍をするには行き先のマーカーが必要だったそうで。
そのマーカーというのは念の為にと母がレイブに仕込んでいたそうだ。
タチくんは、それを知っている主任ならそのマーカーを頼りにゲンブとリボラボ(簡易リボーンラボは長い)を使って次元跳躍をするだろうと踏んだ。
が、タチくん的には懸念があった。 ぶっつけ本番でトラブルがあれば帰還不可、とはいえパイロットは私しか出来ない。 調整諸々は主任がやるとして、シャトルの人たちがいたモビルスーツやらメタルアーマーやらというマシン飛び交う戦場に突然ロボットが1機現れたら?
そう。 下手をすれば良くて蜂の巣、最悪蒸発である。

それを避ける為のストーク、そして住めるコンテナドックである。 重力もある。
なんとなく不安な要素を補えるさまざまな策を講じたと聞いているそうだが、何より耳を疑ったのはこれにゲンブを接続するとストークを含め比較的安全な次元跳躍が行える『設計』だそうな。

ホント最低! タチくんのタチはタチが悪いのタチ!!

主機だけ“作らせた”ってことね……あのタヌキ!

「ミノ粉とミラコロの甘い関係」

「嬢ちゃん、とりあえず隠れるぞ。
アサノちゃんが目覚めないと動きが取れん」

ミノフスキー粒子をばら撒き、
ミラージュコロイドを展開する。
リボリボに積んどいてくれた機能はストークから動かせるとは便利だねー。
便利だねーじゃない。
リボリボの配線まで理解してたじゃないかタチくん。
次はスパナで殴ろう、うん。

「スパナの素振りはやめて欲しいかな?」
「あーあははは」
「ほげー」
「まだ戻らないね主任ちゃん」
「主任ちゃん殴るのはやめような?」
「あーうん。殴るのはタチくんだから大丈夫」

殴られても、しょうがないよな、生きろよタチ。
それにしても、意外と適応力高いな、たすき嬢。
初めての異世界、もう少し狼狽えると思った。
俺だってドキドキだったんだが。

「こうして見ると、俺達の宇宙と変わらないよな」
「月が欠けてるけどね」
「三日月か。ん?抉れてるぞ?」
「月に近づいてみる? 今、情報ないし」
「マーカーのことを考えれば、動かないほうがいい」
「そうか。そうよね」

うさぎは月に居ると思ったんだけど、童話の中だけだよね。

「とっても快適コンテナドック」

タチくんはなんで説明してくれなかったんだろう?
とても長いスパナをぶんぶんと振りながら私は考えた。 ぶんぶんと振り続け考えに考えた結果、ぐうと長い音を立ててお腹が鳴った。

幸い、モビルスーツやメタルアーマーの戦場に放り出されるのは避けられたみたいだ。 今はミラージュコロイド? というので透明になっていてレーダーにも引っかからないらしい。
芝田さんも驚いていた。

「こんなもんが実用化されたら戦場は大変だぜ」

確かに、世間一般よりロボットやらなんやらに詳しい私でも、モビルスーツや戦艦が姿を消して隠密行動なんて聞いたことが無かった。

そんなことを、考えながら壁面に目をやると見覚えのあるプレートがかかったドアがあった。
「!!!?」
タチくん、もしかしてだけど……ガチャリとドアを開けた。

「ひ゛っこ゛し゛て゛る゛ぅぅぅぅーーーー!!」

ドアノブを持ったまま私は膝から崩れ落ちた。
保護者的な存在のタチくんがリボーンラボのすぐ近くに土地を買って建てたのが家を兼ねたラボだった。 壁が分厚いなとは思ってたけど、ブロックごとに独立して切り離せるとはね……。

「芝田さん、料理出来る人?」
「何を藪から棒に」
「私も主任ちゃんも料理出来ないのよおおお」

膝から崩れ落ちた。
タチは胃袋掴んでやがったのかよ、と。

「お嬢さん。家庭科の授業とかあったよね?」
「うん」
「料理ってのは科学なんだ。
お手本通りに作れば、普通は出来る」
「うん…」
「わかったわかった。おじさんがなんとかする」

たすき嬢ちゃんは加減が分からない系メシマズで、弱火30分を強火5分でやろうとするタイプ。
主任ちゃんはレシピ通りには作れるタイプだが、食に興味がない、薄い、と。毎日レーションでも食べられれば幸せ、だと。
どうなってるんだ、この娘達。
だからタチに騙されるんだよ、この娘達は!
俺は心配になってきた。

冷凍庫のご飯とミックスベジタブルで、
チャーハンを仕上げた。
乾燥ポテトもあったからお湯で戻してマッシュ。
ポテトサラダも仕上げる。
ベジタブルの色どりで、食卓も明るくなるね。

「「ごちそうさまでした」」

はい、ごちそうさま。
お皿は自分達で洗いに行くのは関心関心。
舌は狂ってないから練習すれば、いいお嫁さんになれそうだ。

「違う!そうじゃない!」

「ホウレンソウ」

「芝田さんはどっからどこまで聞いてるの!?」

「どっからって言われてもなぁ……俺はタチからは

「主任が作ったものだし、仮説段階で巡流先生と俺が検討したものと同等かそれ以上ならまず心配はないと思うけど、万が一はこっちのコンテナで強制的に戻れる様に今1番安全なソロモンベースにマーカーを設置しとくから2人についていってやってくれ」

としか」

「ぜ゛ん゛ぶ゛な゛ん゛じゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーー」
たすきはまた膝から崩れ落ちた。

そっか、母さんはレイブがどんなメカか仮説を立てていたんだ……。

「あと、これを預かった。 アサノの嬢ちゃんの研究やら発明の権利書だ。 全部アイツが買い戻したんだとよ。 そういうのは得意なんだよな」

芝田は続ける。

「人を使えばなんでも出来ると気付いた頃、ちょうど嬢ちゃんのおふくろさんと出会ったんだそうな。 驚いてたよ。 自分をこんなに上手く使える人間がいるとは思わなかったって」

「ホウレンソウが出来ないのは2人とも一緒だけどね」

「あれは絶対自分からは言わないだろうが、あれでも2人の保護者として出来ることをやってるのさ」

チャーハンとポテトサラダ食べた。
皿洗った。
あと、アタシがやることは、

「娘ちゃん、そこにあるヘルメットちょうだい」

様々な機器を脳波コントロールは、アタシの得意とするところ。
キーボード叩かなくても、だいたいのことは出来る。

「レイブの残した残留波動補足した。
レイブと記憶喪失くんは、この世界に居る。
でも、動き出すとミラージュコロイドは、バレる。
コクピット行って、目視で安全確認してから動きましょう」

「たすきお嬢、アサノちゃんはいつもこんな感じ?」
「回路が回ってるとこんな感じ」
「アタシ褒められてる」


ーーー


「ところで、このミラージュコロイド、何処で見つけたんだ?」
「ラボに転がってたよー」
「私は知らない」
「タチくんが隠してたから、勝手に組み込んだ。
アタシなら気付いて使うと思ったんじゃない。
バラバラにしてあったけど、取説的なものはあったしー」
「普通ないだろ、こんな機械の取説…」
「タチくんって大事な取説、エロ本の間に隠すのよ。エロ本恥ずかしがるほど子供じゃないのです。えっへん」

威張る所はそこじゃない、と言う言葉を呑み込んだ芝田であった。

「維ぎ巡る」

万丈がソロモンベースを去り、偉杉とタチの2人が残された。

「それで、巡流くんの行方は掴めたのかね」

「マーカーを手当たり次第別の世界に送ってはみてるんですが……」

「そうか……たすきくん達はどうかね?」

「取り敢えずストークからエマージェンシーは出ていません。 無事にレイブのいる世界へと辿り着いています。 モニター可能な範囲での機体の異常はありませんが、通信までは出来ないのがもどかしいですね」

「レイブは回収出来そうか?」

「レイブに取り付けたマーカーは地球に降下する模様です。 性能上追跡可能ですが、このまま離れる様ならストークを強制的にこちらへ呼び戻したいと思います」

「やはり、心配か?」

「それは! ……先生に頼まれてますからね。 たすきちゃんもアサノも、俺の目の届かないところでもし何かあったらと……それでも、無事に帰還する可能性を少しでも上げる為に残ったんです」

ピピッ

その時、ストークをモニターしていた端末にマーカーが収集した異世界の膨大なネットワーク情報を纏めたものが表示される。

「あの世界にも接続が!?」

「やはりレイブが鍵か……」

「芝田ユージの憂鬱」

――ゲンブ・ブリッジ。

「レイブ…この世界にいるんだ。詠次くんも…」

 目の前に広がる宇宙。
まだ見ぬ新世界へと辿り着いたと言う感慨と、母が残したレイブに
また会えると言う喜びに、たすきは胸を躍らせていた。

「ボーイフレンドに逢えるってんで、はしゃいじゃってんね。嬢ちゃん」
「ボーイフレンド……って! アイツはそんなんじゃないです!
ただ、レイブはあの人にしか動かせないし…
ちょっとだけでも一緒にいたから、情が移ったって言うか…
ほら、雨の日に捨てられてる子犬がいたら放っとけないじゃないですか!
アレです! アレ!」

「うん、分かった。分かったから照れ隠しの正拳の素振りで
音速を超えるのはやめてくれ。一応軍人だけどおじさん流石に死んじゃう」

 とは言え、正体不明のロボットに、自前で時空跳躍器こしらえちゃう幼女に
物理法則無視した女の子って、
どんどん普通の人生から遠ざかってるよなぁ、俺。

「冗談じゃないぜ」

 そして俺をこんな状況に巻き込んだダチは、
バラエティ番組のワイプ芸人みたいに眺めてんのかね。
並行世界から。

「はー、頭痛くなりそ…」

「ストークは大気圏突入出来る?」
「出来る訳ないでしょう。
元々大気圏内飛行用の輸送機よ、これ。
機密性があるのだって、タチの仕業さ」
「…ん…って考えると、ラボとゲンブが入ってないコンテナには、本物の次元跳躍機入れてあるよね、タチくんの性格だと」

ならば、やることは決まってる。
ギブスを外し、小手をはめる。
脳波コントロール義手。
怪我の治りは遅くなるけど、痛いけど、
やるしかないよね。
微妙なコントロールはコクピット入らないと。

「ゲンブでストークを支えて、大気圏突入する。
娘ちゃんじゃ進入角調整出来ないし、
大気圏出た後、アタシじゃストークを操縦出来ない。
ゲンブとラボだけなら大気圏突入出来るけど、
本物の次元転送機を捨てるのは、
もったいない。
もったいないオバケでちゃう」

髪をポニーテールに結わえる。
ヘルメットを被る。

「どうしようもなくなれば、紛い物で逃げるし、
ストークも次元転送で逃げれるから。
聞こえてるよね、タチくん。
任せたよー。
大丈夫、アタシは居なくならないから。
記憶喪失くんに会いに行こう。
ね?
大丈夫、泣かないの、たすき。
強い子でしょ?」

「接続解除と接続と」

「ハァ!?」
突然、タチが頓珍漢な声を出す。

「どうしたのかねタチくん!」

「ストークに接続したコンテナドックはゲンブを接続することで跳躍力をブーストする役割……つまり、ゲンブの次元跳躍機を主機として補助を行う仕組みだったわけです。 それこそ転移する際の次元の波みたいなものを整流する為のバリアとかそういうのをストークの周囲に展開するだけのエネルギーを生み出すブースターといいますか。 言ってしまえば単なる増幅器なわけですよ」

「その話は君がこちらに来る前に説明を受けたが……」

「その主機が外れました……何かのトラブルか? 機体側からのエマージェンシーは出てないし……外敵の対処? このモニターじゃ何もわからない!!」

「確か跳躍機は君のコンテナドックにも取り付けてあると聞いたが?」

「あれはあくまで補機です! 試作も試作、先生の理論を元に情報収集用の観測マーカーを飛ばしはしましたが、マーカーは一度も回収してないんです! いや、ぶっつけ本番はゲンブも一緒か。 ソロモンベースのマーカーを座標にしてストークごとゲンブを強制跳躍……補機だけでやれるのか!?」

「信頼と誤算と」


ストークの操縦室を出る。
ゲンブとリボラボの入ってるコンテナに歩いていくアサノ。
半泣きで後ろをついていくたすき。

アタシだって部の悪いカケはしないって。
でも、だってだって。
言い過ぎだって主任ちゃん。
ストークの操縦席で呟く芝田。

ゲンブの前。
腕ほどの太さのケーブルが刺さってる。
抜くアサノ。
照明が切れ、重力が無くなる。

「あれ?」
「ふええええええええええええええ」
「違う」
「とんでるうううううううううううう」

アタシは計算違いをしていたようだ。
ストークの現在のメイン電源はゲンブだ。
コンテナドッグでもリボラボでもない。
タチくんの性格なら、
コンテナドッグに次元跳躍機があるのなら、
コンテナドッグから電源を引く。

「中止するよー」

ケーブル差し直す。
照明が戻る。
様々な機器が再稼働する音が聞こえる。
落ちてくるたすきちゃんをお姫様抱っこするアサノ主任。
たすきちゃんのパイロットスーツにも、パワードスーツ機能付けよう。
抱っこしながら、次のことを考えていた。

ミラージュコロイドが切れていることを、まだ3人は知らない。

「兎じゃなくて悪かったな!」

アナザー・センチュリー。
宇宙同盟に属する宇宙革命軍。
そして、地球連邦軍より独立し、独自の指揮系統を持つ新連邦。
この2つも誰に気付かれることなく接続された異なる宇宙の軍勢である。
そして、その2大勢力を相手に激戦を繰り広げた艦があった……。

——ストーク・コンテナドック
『嬢ちゃん、どうしたんだ! なんか色々ダウンしたぞ!』

「ごめーん、コンセント抜いちゃったー」

『って、うぉぉぉ! すげぇ速さで突っ込んで来るぞ!!』

「ほへ?」

「あ、ガンダムだ」

——数分前。 月軌道上

残すはフロスト兄弟のみ。 いよいよ最終決戦かと思われたフリーデンⅡ一行。

「おっかしいなー、アイツらどこに行きやがった!」

ガロード・ランの駆るガンダムDXは、ニュータイプの少女、ティファ・アディールを乗せ、先程まで戦闘をしていた2機を捜索していた。

「…………」

「ティファ、何か感じるのか?」

「わからない。 でも、何かが……」

その時、DXの目の前に輸送機が突然現れた。

「うわぁ! なんでこんな近くに!? さっきまでなんの反応も無かったぜ……?」

ぽよんと跳ね返るガンダムDX。

「なんだよ、この輸送機!普通じゃない」

ぽよんと跳ね返るガンダムを見るリボーンラボの面々。

「ぽよん?」
「何をやった、主任ちゃん?」
「何もしてないけど?」
「何もしないでMS跳ね返せる訳ねーでしょ」
「シールドはゲンブにしか積んでないって」
「ぽよんと跳ねるシールド?」
「こっちもあいても怪我しずらいシールドって、
よくない?」
「問題は、そこじゃなくて。
ゲンブの機能はストーク全体に反映されてるって、ことじゃないかい」
「なるほど。ならば!必殺隠れ蓑の術!」

ミラージュコロイドで透明になるストーク。

「ぽよんと跳ねるシールドが有れば、大気圏突入も問題ない!」
「名前に緊張感ないな、おい」
「次元湾曲シールドって呼んでもいいよ」


「あの輸送機なんだったんだ?」
「突然、現れて、突然消えた。幽霊船かよ」
「ううん。彼らは居た。また会える」
「そうか、すごいなティファは」

ガンダムDXの衝突エネルギーを移動エネルギーに替えて、一路地球に、大気圏に向かうストークとリボーンラボの3人。
流星に紛れ、比良坂詠次とライズが居る地球へ降りる。

「ディスコミュニケーション」

「よかった……」
端末がゲンブの再接続を示し、タチは安堵の声を上げる。

「芝田くんに説明したのではなかったのかね?」
「しましたよ! コンテナドック側にもきちんとその辺がわかるようにストークと連動したコンソールがあるんですけど……アサノは隠しておけばそれを見たがる性質もあるけど説明書とかあんまり読まないからなぁ。 芝田もアレの頭の良さを勘違いしてるから聞かれなかったから答えなかったとか平気で言いそうだし、頼みのたすきちゃんはどうしたんだ……」

——大気圏・ストーク
「しゅにーん、ほらあるじゃんマニュアル!」
「ほげー」
「ほげったフリをするな。 しっかり読んでおいて! 私は芝田さんとこ行ってくる」

——ストーク操縦室

嬢ちゃんが駆け込んで来た。

「タチくんは微に入り細に入り気配りはするけど、大概の人が自分より賢くないってのを忘れてる。 私たちを信頼するのはいいけど、意外とテンパってるからねみんな!!」

怒ってるわりに嬉しそうだな嬢ちゃん。 という言葉を飲み込む。

「どうした? こっちはタチが組んだプログラムがあるから大してやることないぞ?」

「ぽんこつ×ぽんこつ」


タチ博士の推理は当たっていた。

「人様が作ったマニュアル読むのって、面白くないーーー。隠してあるマニュアル読んだり、解読するのは面白いのーーー」
「私じゃ難しくて読めないんだから読んでよ」

ああそうか、と芝田は思う。
料理をレシピ通りに作りたくないポンコツと
料理本を読めないポンコツだったな、と。
俺が読むしかないのかよマニュアル。
アサノからマニュアルを取り上げる芝田。
専門用語だらけで1ページも読めずに返す。

「たすきお嬢、これ読んだの?」
「さっき、一通りは。マニュアルの内容ぐらいみんな目を通したほうがいいんだって。芝田さんも、そう思うでしょ」
「お、おう。そうだな」

タチお前博士だったじゃねえか。
この子らもポンコツじゃないじねえかよ。
俺に渡したのはマニュアルじゃなくて、操作案内図だったよ。
娘っ子達信用してるじゃねえか、タチさんよお。

「レーダーに感。前方2時の方向、距離100kmぐらい先の島にレイブの反応がある。
カメラ、メインモニターに映すよ」

マニュアルから顔を上げずに喋る主任ちゃん。

「この字は、オーブって読むのかなー」

「軌道修正」

謎の空間・???
「イェロウ!」

『どうした』

「マズい……アーガマを中心にR.Cの崩壊予測値が跳ね上がった! 2機のガンダムを拾った影響のようね」

『このまま接続すれば最悪そのまま崩壊する。 仕方ない、俺がユニコーンをガランシェールに引き渡す役割を果たそう』

「現地ではティターンズとブリタニアが組んで襲撃している。 この隙にガランシェールと接触して任務を遂行して」

『了解。 跳躍開始……やれるな?』
イェロウがマシンに問いかける。

『……』
???は応えない。 ただ跳躍準備完了を示す表示だけがコンソールに出る。

「イェロウ、その子は……」

『つい昔の癖で……座標を送ってくれ』

「了解」

暗雲を呼び跳躍を開始する。 目指すはR.C。 アーガマである。

——ストーク操縦室
「ッ!? 直上! なんだこりゃ……雲か?」

そこに突然割り込む通信。

『緊急事態だ。 上手く回避してくれ』

芝田は咄嗟に機体を傾け回避する。
窓から擦れ違う機体を見たたすきは驚きを隠せない。

「黒い……レイブ……?」

『ブラックレイブ!?』

主任の声が機内に響いた。

「それでも進む」


『ブラックか。 なるほど……Black-layb。 ならばブレイブと名付けよう』

「ちょっと! 私のレイブの真似をするとかどういう了見? 著作権?とかどうなってるの!!」

謎の声は答えない。
出現と同じく暗雲を纏い消えた。

「ブレイブ……」

たすきは、呆然と空を見ていた。

「あれは、なんだったんだ!」
「アタシも知りたい。
レイブの次元跳躍機を追ってるレーダーには、何も引っ掛からなかったんだよ」
「幽霊?」
「まさか? 次元跳躍機には、機体による固定波動があるんじゃないかな。捕獲したいねブレイブ」
「…でも、名乗る必要あったのかな?」

たすきの疑問が口に出る。

「避けろって言ったし、いい人?」
「何かを知ってるに間違いない人は確か。
次回接触のチャンスには、もう少しコンタクトしてみよう」
「うん。母さんのこと知ってるかも知れないし」

何にしても私達には情報が足りない。
色んな情報が不足しているのだ。
でも、走らなきゃいけない。
進まなきゃいけない。
私達はバトンを、
ううん、たすきを受け取ったのだから。