ゆうたきゅん観察日記
8月1日 中条環奈
「こうふん」するってこういうことなんだって、私は初めて知りました。
ゆうたくんから首輪が取れないように、ナンキンジョウでカギをかけました。私の机の引き出しにつけていたカギです。アニメキャラクターを描いた絵を閉じ込めていたカギが、今はこの子を閉じ込めています。
私が目の前でカギを閉めた時でも、ゆうたくんは不思議そうにこっちを見て、「かんな姉ちゃんどうしたの?」って聞いてきました。昔から、人をうたがわない子でした。
私は笑っていました。ドキドキして、首輪、耳たぶ、柔らかいかみの毛、ほっぺをなでて、大丈夫だよって言いました。ゆうたくんが目をそらして恥ずかしそうに「うん」って言いました。
今日からゆうたくんの観察日記を書き始めます。
家の裏山にずっとほったらかしになっていた古い神社があって、お父さんもお母さんも近寄りません。ゆうたくんのお姉ちゃん、ゆめこちゃんと協力して、ここにゆうたくんを連れてきました。
後でゆめこちゃんが来て、ゆうたくんに「説明」すると言っていました。私の方が2才も年上だけど、4年生のゆめこちゃんはすごく頭がいいから、上手に説明ができると思います。
今は私とゆうたくんの二人だけ、神社にいます。
山の上まで登ってくるのに疲れたのか、ゆうたくんは眠ってしまいました。ひざ枕をして、子守歌を歌っています。
いつもの私なら絶対にこんなことしていません。けれど今日からは、ここにゆうたくんがいて、毎日お世話をするんです。
きっと楽しい夏休みになると思います。
8月3日 中条環奈
きのうは大変だったので、日記を書き忘れてしまいました。
ゆうたくんが友達の家にとまると言ってたという、ゆうこちゃんのウソがばれてしまい。
ゆうたくんたちの両親が、ゆうたくんの事を知らないかと、町を探してまわったそうです。
ゆうたくんの事を、私も聞かれて少しあわてたけど、知らないと言う事ができました。
きのう、見つからなかったので、けいさつにそうさく願いっていうのを出すらしいです。
それでも、裏山の神社には誰も来ないはず。そのぐらい、すごい特別な場所なんだから。
きのうはご飯をあげられなかったので、今日はこむぎちゃんに持ってきてもらいます。