大人気VTuber、『超弩級ヤバ子』の配信

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サブカル系ネットメディアに勤める俺は、『超弩級ヤバ子』という名の大人気VTuberに関する記事を書くことになった。

VTuberにはまぁまぁ関心があるとはいえ、俺は超弩級ヤバ子のことを知らなかった。彼女の人物像を知るため、俺は自宅のPCで今晩行われるというヤバ子の「雑談配信」に、彼女のツイートに貼られていたリンクから飛ぶ。

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すると、まだライブ開始前だと言うのにとてつもない量のスパチャが投げられていた。物理的に。
ヤバ子のライブは独特なスタイルで行われており、視聴者からスパチャが送られてくる度に、ヤバ子の中の人がメッセンジャーから豪速球を投げ込まれるというシステムなのだ。
これによって、視聴者はリアルタイムでヤバ子の反応を伺うことが出来、尚且つ無視される心配もなくなり、心に余裕を持ってヤバ子を支援できるという訳である。

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「ヤバ民のみんなー!今日は来てくれてバシィィィン今日は来てくれてありがとー!」
198cmの巨体から放たれるランディ・メッセンジャーの豪速球はヤバ子のキャッチャーミットに収まる。球速156.5kmを記録したそのフォーシームは見事にアウトロービタビタに決まっていた。

「今日ねースーパー行った時ヤバ子お味噌汁が飲みたくなっちゃって帰りに松茸とるために山に寄ったのねー。そしたらさー…」
ヤバ子は自然な導入から雑談を開始する。コメント欄ではヤバ子そっちのけで昨今の円安を危惧する議論がなされ、ブルペンでは中継ぎピッチャーの福原忍が肩を作り始めていた。

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ライブ開始直後から更に混沌さを増したヤバ子のライブは更にヒートアップしていき、終了予定時刻が迫る頃には軽い暴動にまで発達していた。
これは意外と知られていない事実なのだが、渋谷駅前で行われるデモ活動の2/3はヤバ子の配信を発端として大きくなったものである。
「これは凄いな......」
ヤバ子のライブの終わり際、俺は画面の前でそう呟いた。記憶が鮮明なうちに記事に書き留める必要があると判断した俺は、ライブ視聴中に取っていたメモを参考に記事を書き始めようとした。しかし、その時...

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「おーいっ!そこの記者のアンタ!ヤバ子の配信、見ているなぁ〜?」
背筋が凍った。ヤバ子がこちらの存在に気づいている。この配信は『一方通行』ではなかったのだ。監視カメラを仕掛けられたかと思い自室を見渡すも何も見つからない。しかもヤバ子の発言に他の視聴者からは気持ち悪いくらい何の反応もなく、コメント欄ではウミガメのスープが開催されていた。
「ヤバ子のこと勝手に見てるとー… こうなんだからっ!」
キャッチャーマスクを即座に脱いだヤバ子は自慢の強肩で二塁ベースにバズーカ送球する。
マズい!ヤバ子の送球はPC画面を貫通し飛んでくる。俺は訳も分からず無我夢中に走り出した。

気がつくと俺は二塁ベースにヘッドスライディングしていた。塁審の判定は… セーフ。
「フン!記者のアンタ、なかなかいい根性ね」
ヤバ子は続ける。
「明日の8時、甲子園球場よ。遅れず来なさい」



こうして俺はヤバ子率いる阪神タイガースに入団した。練習初日、人生で一番緊張しながらグラウンドに入る俺の肩を、後ろから誰かが力強く叩いた。
振り向くと、そこには今日から俺の同僚になる巨漢、ランディ・メッセンジャーがいた。