番狂わせ~other side

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1人目

ブランデーグラスを回し、盾野はほくそ笑んでいた。
「矛田のやつ、まんまとハマりやがったぜ」
矛田ほどハイスペックな男はそうそう居ないが、盾野は常々疑問に思っていたのだ。
「なぜ、アイツには女の影がないのか? もしかしたら…」
エーロイ氏が男色家であると、信頼できる筋から情報は得ていた。そして矛田がそっち系であることをこっそりリークしておいた。勿論、その時は確証はなかったが…まさか本当にそうだったとは…

″Подождите″

スージーがタオルで髪を拭きながら、妖艶な姿で盾野の横に座った。

2人目

「私を抱いたのは確かだし、少なくともバイじゃないかしら? ねえ?こう言う場合も親子丼って言うのかしら?」

スージーが馬鹿らしい話をしながら盾野にしな垂れかかる。矛田が好きだった女と調べて、NTRにかかったのだが、盾野は、どうもスージーのことが信用出来なかった。

まぁ、矛田の事はどうでもいい。奴は、マラガスキーのオンナにでもなるんだろう。コレでビジネスのライバルが減った。

「私も彼が好きだし、パパともイイ関係ならあなたのリークで矛田は凄いコネを作ったのね」

彼女は何でもない様にそう言った

3人目

盾野は、矛田を上手く出し抜き、スージーを手駒として利用できるとの目論見だったが、どうもことはそう簡単ではないようだった。盾野がスージーと同衾している間、矛田はエーロイを骨抜きにし、ロシアの闇を金と情報を武器に暗躍する男の口から、秘密を引きずり出そうと躍起になっていた。「子猫ちゃんХочешь, чтобы я ткнул сильнее сзади?」まさか、この大男がネコだとは計算外だったが、自慢の矛先のテクを磨いた甲斐があるってもんだ。思った通り、スージーはエーロイの本当の娘ではなかった。

4人目

頭脳明晰な矛田がスージーがエーロイの本当の娘ではないと見抜いたまではよかった。そもそもエーロイにあんな美貌のスージーなんてできすぎている。あまりにも完璧すぎるのだ。
スージーは何者なんだ?何のためにエーロイの娘を装っているんだ?
「ゲイルート!!」
思わず矛田は叫んだ。ゲイルート。それは闇の知能集団。あのアノニマスに匹敵する集団。俺はゲイルートに対峙しようとしているのか?!おいおい、さすがに俺でもオードリー・タンにはなれない。
本意ではないが盾野に打ち明けるしかないのか?ここまで調べ上げたのに。

5人目

盾野は矛田に呼び出された。
「今から大事な話をするから驚かないで聞いてくれ。」
ははっ、俺が何でも知ってることをコイツは知らないんだな。エーロイが男色家のことか?それを言うとなると矛田は自分の身も危ういか。じゃあ、スージーが本当の娘ではないってことか?うん、後者だな。眉間に皺を寄せてなんとまぁ滑稽だ。完璧主義者である矛田のこんな表情を見るなんて。今日は眉間記念日だな。
「盾野…俺たちの任務はな、ゲイル-トなんだ…」
『は?』矛田の顔を三度見した。

6人目

「お前…スージーと寝たんだよな? 気づかなかったのか?」 矛田は真剣な眼差しで問いかける。
「あいつは…スージーは元々オトコなんだよ」
青天の霹靂という言葉は、こういう時に使うのだろう。盾野は言葉を失っていた。
「いずれにせよ時間がないんだ。早くエーロイとスージーをこっちの味方につけておかないと…」
「味方につけて…どうする?」
盾野の問いかけに矛田は呆れ顔で答えた。
「お前、まだ分からないのか? 止めるんだよ、独裁者を」
盾野は事情が呑み込めないらしい。
「暗殺させるんだよ、エーロイに。」

7人目

(暗殺…随分と物騒な言葉が出てきたものだ…ってスージーが男!?)

盾野は現代医学の進歩に驚きつつスージーとの夜を思い出す。そして避妊をしなくて良かった事を悔やみ、ムスコを叱責する。

「スージーはともかく、エーロイは、お前のオトコだろ? もうお前の味方なんじゃないのか?」

「まぁな。お前が新しい扉を開けてくれたよ。最近は俺がタチだがな…そんなことはどうでもいい! 今は暗殺の話だ。全て話そうこの国の闇を」

「まて! うちの会社は普通の商社じゃなかったのか!?」

「それも含めて、全て話そう」

8人目

「お前入社して何年になる」矛田は少し疲れた様に腰掛けたソファーから、盾野を見上げて言った。「お前の1年後だ。年は1つ上だがな」
「日本に於ける商社の役割は、国内外の売買取引の仲介調整及びビジネスに繋がる、あらゆる政治経済の情報を世界中から集め、分析し知識と経験を活かして事業を育て成功させる。
今更言うまでもないが、この情報収集時に一般国民が知り得ない極秘情報に触れる場面に出くわす」「У него серьезная болезнь」(彼は、深刻な病にかかっている)エーロイは間違いなくそう言った。

9人目

アナトリー・チュバイス。深刻な病にかかっている男。悪性リンパ腫。そう長くはない。彼はオリガルヒの中でもきわめて高い位置に君臨するキーマンだ。
矛田は、ひと勝負かけようと思っている。いったんエーロイがアナトリーの命を救うのだ。「遺伝子修復薬」。幻と言われている薬を使って。さすがにエーロイでも入手困難だが手に入れられないことはない。アナトリーが今、喉から手が出るほど欲しいものは命のはず。
エーロイは命を救う条件として提示するのはそう、オリガルヒの莫大な財産を思うがままにできる権限。それを頂くのだ。

10人目

エーロイが群を抜く情報・運び屋と聞きつけ、こちらの思惑通り、アナトリーがコンタクトを取ってきた。
「俺にはもう残された時間が少ない。最後にこれだけはどうか…延命よりも大切な…最後の砦としてお前に話す。金庫の番号は事が済んだら渡すよ。単刀直入に言う。俺の…

俺の寝小便をどうか治してくれ。

お前にしかできないんだ。」
同衾した男の顔を思い浮かべながらエーロイは金庫へ吸い寄せられていった。

あの日からエーロイの消息は不明である。