クロスオーバー物語

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1人目

「とーしゃん。いってらーちゃい!」
「あなた、行ってらっしゃい。」

玄関で見送る妻と娘。
行ってきます。と元気よく手を振りながら駅に向かって歩く。
小鳥はさえずり、空は元気がでるほどの快晴。

「お!円川か。今日も一日頑張るぞ」
駅へ向かう道で出会ったのは江谷、会社の同僚だ。
江谷と共に会社の最寄りの駅への電車に乗る。

電車では
ベビーカーを連れた女性。2,3人で喋っている学生達。頭ハゲ散らかしてるデブ。
新聞をひたすらに読むサラリーマン。
等が乗っていた。特にうるさすぎることも、静かすぎることも。
いつもの、日常。
こんな朝はとても心地が良い。

平和だなぁ 








と思っていたほんの数十分前が嘘のようだ。

俺は駅へ雪崩れ込む群衆に押され、江谷から戻るよう言われながらも、なんとか駅の外に出て
見上げる。

さっきまで堂々と立っていたビルは崩れ、

車の破片があたりに散らばる。

町は炎で赤く染まっていた。

逃げ惑う人々、悲鳴がそこかしこ聞こえる。

その激しい混沌の中で、煙と炎の中を淡々と、堂々と、進み、まるで自らが主役の如く逃げ惑う人々を見下ろす者がいた。

いや、正確には獣というべきか、悪魔というべきか、神というべきか。

だが、現実に現れた。何故だろう。
現れてしまったのだ。

その姿は、日本のポップカルチャーについて少しでも詳しいものなら誰でも知っている。


そう、

「ゴ ジ ラ」だ。

2人目

 まるで、夢を見ているようだ。いや、もしかしたら本当に俺は夢を見てるんじゃないか、夢であってくれと、立ち尽くしながら呆然と、そんなことを考えていた。街を照らす、さんさんとした朝焼けと、ごうごうと音を立てて燃える街が同居している光景。平和な、いつも通りの日常と阿鼻叫喚の地獄絵図がワンフレームに収まっている。この、アンビバレンツさが、何とも時折見る悪夢に似ていて、現実味を薄れさせる原因の一つになっていた。

 けれど、何よりもこの光景が夢であると思わせる原因はやはり、あれだ。遠目からでも分かる、破壊の権化。ゴジラ。……やはり、何処からどう見ても、TVで見たそれである。特撮番組の見過ぎで、夢にでも出て来たのかと言っても、疑う余地もないくらい酷似していた。

 いや、それでも、今見ているこの景色は現実だ。逃げ惑う人々に押された時の感触、耳を劈く悲鳴、そして絶叫。これらが、俺に現実逃避を許さない。これは夢である、という結論には至らない。

 ならば、今この瞬間、俺は何をしたら良いのだろうか。上に、ゴジラの方向を向いたまま、しかし動くことが出来なかった。

3人目

その時であった……

 「 タァーァァッ ! ! !!」

ゴジラの…向こう側から、赤い何か掛け声が飛んできているのに気づいた。
あの掛け声、…そしてあの姿!
もしかして…と思う暇もなく

その“赤い飛行物体”は空中で止まり…
1回、2回、3回転…とやったあと、

ゴジラへと勢いよくキックをし、降り立った。

あのキック…あの二本の角…あのブレスレット…あの赤い体は間違いなく…
「ウルトラマン…タロウ!?」

『タァ!!!』 

これが現実なのか…それともやはり夢なのか…
まず俺がやるべきことは避難だろう…だが、避難なんかよりも…
この戦いを見届けたかった。

4人目

 地球上に生息する全ての生物を、種別ごとに順列をつけるとして、その一位から十位を独占するのは鯨とされている。これには、彼らの暮らす海洋の性質が関係している、という説が有力だ。
水の中に住んでいると、陸で暮らしているよりも掛かる力、即ち浮力が掛かる事で大きくなる、というのが選りすぐりの天才、科学者達が出した結論である。
陸と海、という環境が生物の身体に与える影響の差は、地上に於いて最も大きいと言われるブラキオサウルスと、重量を100トンも差を付けたシロナガスクジラが証明している。
そのシロナガスクジラでさえ、体長は30メートル。観測された中で最も大きい個体といえど33メートルであった。

 だとすれば、浮力のない地上の、街の一角に聳え立つ、この二対の巨体とは?優に40メートルは下らないビルを上から睥睨している、ゴジラとは?そのゴジラと負けず劣らずの巨躯を誇る、タロウとは?

 前にインタビューした動物学者さんでもこいつは難題だろうな、と怒号ひしめく街角で
週刊誌記者の『小沢 蒼志郎』は見上げんばかりの巨体二つをカメラに収めていた。

(とんでもねえことになってきやがったな……)

 極小のフラッシュと共に、保存されるウルトラマンタロウと、ゴジラの写真。
どちらも、特撮番組の特集記事で一回調べた経験はあった。原稿を仕上げたのも、つい先日であったから、良く記憶に残っている。

 ウルトラマンタロウ。身長、53メートル。体重、5万5000トン。

 ゴジラ。身長、50~300メートル。体重、500~100000トン。

 ゴジラがウルトラマンタロウと並んでいる事から、身長はシリーズ最低クラスの50メートル前後と思われた。どちらにせよ、地球上における最大生物の座はひっくり返ったな、と吞気にもそう思う、小沢。

(こいつを写真に載せりゃあ、スクープは確実……もしかしたら昇給、いや、昇進すらもあり得るッ!なんて運がいいんだ僕はッ!!!) 
 
 あくどい笑みを浮かべながら、シャッターを切る。これから送るであろう充実した日々に思いを馳せた事で零れ出た、会心の笑みだ。

「おーい新人!お前も撮ってるかー?こいつはいい記事に……っていない!?」

 思い出したように、振り返る小沢は、ここでようやく、先週入社した新入社員がいないことに気が付いたのであった。