夏の出来事

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「しめじがあったら良かったな。」
出来たてのビーフシチューの味見をしながら、
シゲルは独り言を言った。
でもまあ、上出来。
ご飯は炊けたし、サラダは出来合いのものが冷蔵庫に入っている。
あとは何だ?

時計を見ると7時を過ぎたところだ。
休日の朝は、妻のヒカルはゆっくり起きてくる。
まだ時間がありそうだ。

テーブルの上にはすでにケーキの箱と皿・フォークを置いておいた。

飲み会で夜中に帰ってきた筈の夫が、
豪華な朝食の用意をして待っている、という
サプライズバースデープレゼント。

シゲルは妻・ヒカルの反応をシュミレーションしながら、1つ1つチェックをしていった。

「あ、プレゼントのひまわりの花束は隠しておかなきゃだな。」
そう言ったあと、シゲルは固まった。
「花束・・・どこだっけ?」
昨夜はかなり酔っていたから記憶がおぼろげだ。
どこかに隠した記憶がないから、
その辺に堂々と置きっぱなしにしておいたのだろう。

玄関から昨日の足取りを辿って寝室まで行く。
寝室はヒカルが寝ているから、花束を持ち込むことはありえない。

シゲルはイヤな汗がかいて来た。
そう思いたくはないが、家に着くまでに落としてきてしまったに違いなかった。