W Summer
「ここが愛夏さんの部屋です。一人部屋ですが隣は寝ている子もいるのであまり騒がないように」
看護師は、そう言うと去っていく。私が病院にいる理由はただ一つ。交通事故で骨折したからだ。昨日までは集中治療室に居たが、車椅子でなら移動できる状態まで回復したので普通の部屋に移動してきたのだ。あの日、夏休みに入り私達陸上部員は8月の大会に向けてラストスパートをかけていた。特に私達3年にとって中学校最後の大会だ。あの日も練習が終わり、家に帰ろうとしていた。交差点を曲がり、家が見えたその時、大きな音と光が見え車に轢かれたのだ。っと、身の上話はこのくらいにして、ベッドへと移る。すると、部屋の外から声をかけられた。「こんにちは!ウチは、中学2年の高梨由香里!隣に中学生の女の子が来るって言うから来ちゃった!」元気な子だった。そして、その隣には大人しそうな女の子がいた。「同じく2年の佐藤詩織です」2人は同じ学校らしい。
「えーと、3年生の朝海愛夏です。よろしくお願いします?」
私の挨拶に2人は笑顔で返してくれた。
「こちらこそよろしくね!」
「よろしくお願いします」
その後、しばらく他愛のない話をして時間が過ぎていった。
2人の話を聞いている限り仲の良い友達同士みたいだ。
「あ、もうこんな時間なんだ」
由香里ちゃんが時計を見て言った。
どうやら夕食の時間が迫っているようだ。
「じゃあご飯食べたらまた、話そうね!」
由香里ちゃんはそう言うとドアを閉める。
一人になり、色々考える。大会が控えているのに、どうして、とやるせない気持ちで一杯になり、涙がこぼれそうになる。
「こんなことで泣いちゃダメだ」そう自分に言い聞かせても涙が出てくるのを抑えられない。「夕食の時間です。」
そう言うと看護師さんがご飯を持って入ってくる。涙を拭き、受け取る。きっと涙の跡には気づいただろうだ何も聞かれることはなかった。夕食後、由香里ちゃんと詩織ちゃんは約束通り病室にきた。なぜか男の子二人と一緒に。
「由香里ちゃん?どうしたの?その子達」
「ウチの友達!夏樹と隼也!」
二カッと効果音が付きそうな笑顔で紹介する。
「どーもー!俺は、松木隼也よろしくな!」
「東海夏樹。よろしく」
松木くんはチャラい感じがする、東海くんはクール。偏見だけどね