下田隆也の不運
「今日はここまで。皆気をつけて帰るように。」
監督がそう言って今日の部活は終了した。
ちなみに野球部だ。野球ユニフォームが着たいが為とかじゃないからな。決して違うからな。
「隆也帰ろうぜ。」
と裕隆が俺に声をかけてきた。
「着替えて帰るか!」
俺たちは部室に戻り制服に着替えて一緒に帰る事にした。
裕隆とは幼稚園に入る前からの付き合いで一緒にいるのが当たり前になっている。高校も同じ所にするくらいに。
「今日もお疲れ様。」
と言われ裕隆にハグされキスされる。これは毎日のルーティンだ。何となく中学1年生の時から始めた事だ。特に理由は無いが最近はこれが無いと落ち着かない。そして学校から出て駅まで歩いていく。
すると後ろから声をかけられた。
「君たちって緑丘高校の生徒?」
振り返るとそこにはスーツを着た男性がいた。年齢は20代後半と言ったところだろうか?「はい、そうですけど……」
と裕隆が答えた。すると男性はこう言った。
「ならちょうどよかった、君たちには少し実験台にでもなって貰おうかな……!」
と言いながら何かを取り出し俺たちに向けて投げつけてきた! その瞬間俺達は意識を失った……
気がつくと俺は見知らぬ場所にいた。
周りを見渡すと裕隆の姿もある。
「おい裕隆大丈夫か!?」
「あぁ何とかな。ここはどこなんだ?」
「分からない。だが誘拐されたんだろうな。」
と言うと部屋の扉が開きそこからスーツ姿の男性が入ってきた。
「ようやく目が覚めたようだな!」
と言いながらこちらに向かってきた。俺たちは縄で手足を縛られていたため抵抗出来なかった。
「今からとある実験の被験者になってもらうよ。まぁすぐに終わるさ。」
と言い男は注射器のようなものを取りだしそれを俺たちの腕に刺してきた。
「うっ……!!」
と思わず声が出てしまった。その後体が熱くなり始めるがすぐに収まった。「準備は完了したな!それじゃ早速始めよう!」
と言って今度はスイッチのような物を取り出した。そしてそれを起動させると床の一部が開いた。
どうやらエレベーターになっているらしい。そしてそのまま俺たちはその中に入れられどこかへと運ばれていった。
どれくらい時間が経ったのか分からないが恐らく10分程だろう。エレベーターが到着し扉が開かれた。そこは広い空間になっており真ん中には手術台のようなものが設置されていた。
「さてこれから君達には改造手術を受けてもらうよ!」
と言い男が近づいてくる。
「お前は何者だ!!何のためにこんなことをする!?」
と裕隆が問いただすと男は笑みを浮かべながらこう言った。
「俺はな、人の体を作り変える研究をしているんだよ!だから人体実験をしてるわけさ!」
と平然と答えた。
「そんなこと許されると思ってんのか!!」
と裕隆が怒鳴るが男は全く気にしていない様子だった。
「大丈夫大丈夫、姿形は変えないから安心して?」
と言いながら再び注射器を取り出す。
「それじゃ麻酔を打つねー」
と言って針を刺してくる。痛みはあまり感じなかった。そして眠気が襲ってくると同時に意識を失った……