20日で死ぬセミ

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1人目

【1日目】

狭い地中での生活も今日でおさらばだ。

きっとこれから夢のような素晴らしい日々がやってくる!と想像するとワクワクが止まらない。

一日目は羽根を乾かしながらのんびりすることにしよう。

フライトは明日のお楽しみ。

2人目

【2日目】

昨日は、たっぷりの樹液でお腹を満たした。

サクラの木か、ケヤキの木かと言ったら、僕はケヤキの樹液が好き。

ついに、今日は人生初のフライトに挑戦しようとして、少しビビってしまった。

なにせ7年も土の中にいたんだっけ?


ちょっぴり勇気がほしい。

3人目

【3日目】

今日はあいにくの雨だった。今日もフライトはお預けとしよう。

少しホッとした気持ちと残念な気持ちが交差した。

しばらくすると、蟻に出会った。

「蟻さん、こんにちはー」
「セミさん、こんにちはーみない顔だねー」
「2日前に地面から出てきたばかりなんですよー」
「そうなんだねーそしたら20日後くらいにお世話になるかもだからよろしくねー」

そういうと蟻はせっせせっせと何かを運んでいった。

4人目

【4日目】

昨日の蟻は今日もせっせと何かを運んでいる。

雨上がりの青空のもと、気の早いコスモスがひとつふたつ咲いて、風に吹かれてる。

隣のケヤキの木に気になるかわい子ちゃんを見つけた。

雲ひとつない青空、爽やかな風、かわい子ちゃん!

何も恐れることはない。

勇気を出そう。いちにーのさん!!

5人目

【5日目】

玉砕した。

僕が奏でた愛の……求愛のメロディーは、彼女の心に響く事はなかった。

今日は、自分の心を映したような曇り空。湿った風。ああ……かわい子ちゃん……。

そして、いったい何を運んでいるんだ、あの蟻は……。

昨日に続いて今日も、ヤケ樹液だ。

6人目

【6日目】

あのかわい子ちゃんは、僕のライバルのセミ助と仲良くなったようだ。

今日は熱い。

僕はこれ以上ないくらいの声をあげて鳴いた。…鳴いた。

明日はフライトを存分に楽しもう。

いまは鳴くことしかできない僕だけど、明日は大空を羽ばたこう。

しかし、初フライトはやけにあちこち当たって痛かった。

明日は上手に羽ばたけるのか。

7人目

[7日目]

宣言通り羽ばたいてやった。
すると可愛い子を発見した。

すかさずアピールしてみたら、意外と気を引けたようだった。
「あなたここら辺の蝉?」
「ちょっと遠くから来たんだ。君は?」
「私はここら辺よ!」
と会話が弾む。

そしてしばらく話ていて意気投合した。

「また明日!」
と明日また会う約束をした。

8人目

【8日目】

もうすっかり臆する事なく飛ぶ事ができる。

急上昇も急降下もお手のもの。

この木のてっぺんを見下ろすとなんとも言えぬ優越感が湧いてくる。

隣の林に行ってみた。

大きなハンモックを発見した。

とてもブヨブヨして気持ちいい♪

9人目

【9日目】

昨日は結局あの子に会えなかった。何かあったのだろうか。

ケヤキの木も少しだけ飽きてきたのでたまには他の木を探そうと今度は東の林に行ってみた。

そこにはモミの木が生えていた。少し変わった味がしたけどナカナカ美味しかった。

腹一杯になったせいかすこしだけ寝てしまった。

起きたらスッカリ暗くなっていた。

今日はココに泊まる事にした。

10人目

【10日目】
先日のかわい子ちゃんを探してフライトしていると、いつぞやの蟻が地上で長い列を作っているのを発見した。

「やあ、蟻さん!ここらでかわい子ちゃんを見なかった?この間会う約束をしていたんだけど…」
「やあセミさん!かわい子ちゃんねぇ、特徴とかないのかい?」
「特徴…うーん、つぶらな瞳で…あとは…」

蟻はみんながみんな、茶色い何かを運んでいる。

「そうそう、こんな色してたよ。」
「こんな色のかわい子ちゃんねぇ…見かけたら教えるね!」

それにしても、蟻さんは何を運んでいるんだろう?

11人目

【11日目】

今日もアリさんに出会ったので、アリさんのお仕事を見学してきた。今日こそは、いつも疑問だったことを聞いておこう!

「ねぇねぇ、アリさん。いったい何を運んでいるの?」
「セミさんだって樹液を飲むように、僕らだってごはんがあるんだよ。僕らのごはんを運んでるのさ。」
「アリさんたちは、どんなごはんを食べてるの?」
「そのうちわかることさ。」
と濁されてしまった。

僕も我慢出来なくなって、アリさんのおうちと反対の方向を目指して旅に出た。