プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:2「ヒーローズ・コンフリクト」

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1人目

「Prologue」

 CROSS HEROES。
時空を超えて交錯する戦士たちの戦いを記憶している者は少ない。

 地球と宇宙。未来と過去の世界。剣と魔法の世界。
ついには生と死をも超越した者たちの果てしなき戦いはいつしか終局を迎え、
戦士たちはそれぞれの在るべき世界へと帰っていった。

 そして、現在。物語は再び動き始める。新たなる戦場を舞台として……


 それは、いつ始まったのか誰も知らない。
突如、幾多の並行世界が謎の消失を遂げていくと言う事件が発生した。
「カオス・ジ・アビス」と呼ばれる並行世界を繋ぐ時空の門を介して負の想念が拡散し、
滅びの現象を引き起こしていたのだ。

 滅びの現象に見舞われた世界は腐り落ちていく果実のように
色を失い、形を失い、殆どの人々は自らの世界が滅びていく事を知覚する間も無く、
消えて行った。
その中にあって僅かながら滅びの現象の兆候に気づき、それを阻止するべく旅立った者。
時空を隔てる壁が曖昧となり、異世界へと迷い込んだ者。
そのような特殊能力者たちを「特異点」と称し、自らの掌中に入れようとする者。
様々な思惑が飛び交い、物語は動き出す。

 「最高最善の魔王」になる事を目指す常磐ソウゴこと、仮面ライダージオウ。
「竜王」を倒し、アレフガルドに平和をもたらした勇者、アレクとローラ姫。
「滅びの現象」を止めるため、父の意志を受け継ぎ旅立った退魔師、日向月美。

 それぞれ生まれた世界を違える者たちが運命の導きによって巡り逢った時、
物語は動き始める。
そんな彼らを狙い、現れた殺人鬼「吉良吉影」。
吉良を差し向けた科学者ジェナ・エンジェル、謎の存在・梵天ブラフマン。

 オブリガードの楽士・ムーくんと謎の男、ゲイル。
叛逆の魔法少女、暁美ほむらの力を奪わんとしたタイムジャッカー・スウォルツ。

 時を超え、世界を超え、出遭いと衝突を繰り返す者たち。
いつか、どこかで、紡がれた物語。その再演の幕が上がろうとしている。

 CROSS HEROES reUNION。
今再び語ろう。交錯する英雄たちの戦いの記錄を……

2人目

「新たな介入者」

「……なるほどな……どうやら今回はイレギュラーが多く存在するようだな……」
「スタンド使い、魔法少女、勇者に退魔師……他にも様々なイレギュラーの存在が確認されているようだ」
彼らは歴史の管理者クォーツァー、そのリーダーと幹部のジョウゲンである。
彼らはある計画の為に活動しており、その為に計画の障害となる可能性のある者たちの様子を監視していた。

「それと……さっきほど長野県にある浅間山でゲッター線と思わしき反応を確認したらしい」
「ゲッター線……神々さえもが恐れたとされる危険なエネルギーか……わかった、そのゲッター線と思わしき反応があった場所にはカゲンを向かわせろ、あれを放置すれば最悪の場合オーマジオウや他のイレギュラー共に匹敵する障害となる。ジョウゲン、お前は最近我々と手を組んだアマルガムのやつらと一緒に他のイレギュラー共の始末をしろ。
…それとウォズに伝えろ、『例の計画を実行する』とな」
「わかった」
そう言いジョウゲンはどこかへ消えた。

「……前の世界では達成できなかった醜い歴史『平成』をリセットし美しく舗装するという我々の目的……今回こそは達成させてもらうぞ…!」

一方その頃、長野県にて
「……ここは……地球か?」
彼の名前は流竜馬、ゲッターロボのパイロットだ。
「どういうことだ……俺は確かゲッターに乗って神どもと戦ってたはずだ……なのになんで俺は地球にいるんだ?」
竜馬は困惑していた、仲間達を置いてたった一人ゲッターロボにのり神々と戦い続けていたはずの自分が、どういうわけか地球にいるのだ。

「……とりあえずここは浅間山の近くみたいだな……久しぶりにアイツらに会いに行くとするか」
竜馬はそう言い継ぎ接ぎだらけのゲッターロボを降りようとしたが

「見つけたぞゲッターロボ」
「!?」
声のした方を向くと、そこにはアフロのような髪型をした中年の男がいた。

「テメェなにもんだ!?」
「俺はクォーツァーのカゲン」
「クォーツァー?」
「ゲッター線を使うロボ……俺が潰す!」
そう言いカゲンと名乗った男は突如として現れた謎の巨大兵器「タイムマジーン」へと乗り込んだ。

「なんだありゃ!?よくわからねぇが、やるしかねぇようだな…いくぜ!」

3人目

「旅の続き ~ The Next Decade ~」

 動き出す歴史の管理者、そしてゲッター線の申し子。
一方……

『終わる……俺の旅も……』

 旅人は荷を下ろした。次代の戦士に託し、長き旅にピリオドを打った。
金色の粒子に身を包まれて、消えて行く。
彼もまた、歴史の中の『過去』になっていくのだ。

「久しぶりね、ディケイド」
「お前は……」

 旅人の名は、門矢士。幾つもの並行世界を巡り、己の世界を探し求めた
「通りすがりの仮面ライダー」。
そして、そんな士の前に現れたのは「叛逆の魔法少女」暁美ほむらだった。
広大な宇宙の上に漂う2人。

「ディケイドに成り代わったと言う男から聞いたわ。貴方が『死んだ』と」
「そうか……スウォルツ……奴か……」

 ほむらと士。様々な並行世界を永遠に彷徨う宿命を持った2人は
奇妙な宿縁の中で出逢い、そして共に戦った。

「貴方の旅も、これで終わりなのかしら」
「ああ……やる事はやった。お前こそ調子はどうなんだ」
「ええ。私もずっと求め続けたものを手に入れた。けれど……」

 ほむらの視線の向こう。複数の地球が次々と消滅していく光景。

「これは……?」
「覚えがあるようね。滅びの現象。それが連鎖的に発生している」

 旅の始まりを思い出す。引き合う世界がぶつかり、消えて行く。
しかし、今回はその規模を上回る勢いだ。

「私は私自身の世界を守れれば、それでいい。貴方はどうするの?」
「どうする……たってな……」

「……」

 ほむらが手を翳すと、士の腰にベルトが巻かれる。
力の象徴。ディケイドライバー。

「これは……」
「ここから先は貴方が決める事よ、ディケイド。
再び終わりなき旅人になるか、ここで永遠の眠りに就くか……」

「だったら……」

 士は立ち上がる。答えは決まっていた。

「やれやれ。どうやら世界は、まだこの俺を求めているようだな」
「その根拠の無い尊大さ。相変わらずね」
「お前のその可愛げの無さもな」

 憎まれ口を叩き合いながら2人は小さく笑った。
或いは刃を交え、或いは共に戦った間柄。お互いの苦楽を知る者。
その存在は旅の道先を仄かに照らす灯火のようであったのかも知れない。

「また、会えるか?」
「どうかしらね。その時は敵同士じゃない事を祈るわ」

 黒い羽を舞い散らして、ほむらは消えて行った。

4人目

「この異常が日常の街で」

 騒々しい人々の喧騒。耳を引っ搔き回すような、クラクション。回想が終わり、それらの音に出迎えられながら、門矢士はぱちり、と目を開ける。いつも通りの、街の風景が広がっていた。時刻は、夕方だろうか、鮮やかなオレンジ色と半分隠れた太陽が空に描かれている。

 「……失礼。君が、門矢士で間違いないね?」
 
 声が、響いた。多くの人々が行き交い猥雑で、混雑しているというのに、それらの雑音を跳ね飛ばすような、良く通る声。
 
 「どうやら、この世界での俺は名の通った有名人らしい」  

 平素よりの大胆不敵な態度を隠そうともせず、声の方向に向き直る。男だった。

 「まあ、確かにそうかもしれないね。何せ今の君は──────」

 目を細め、三日月と見紛う吊り上げられた口元。何処までも底の見えない、不敵な笑みだった。空気が、張り詰めたそれへと辺り一帯を浸食し始める。いつしか、彼らの周囲を過ぎ行く往来の人々は彼ら二人を避け始めた。
仕事帰りの死んだ顔をした会社員が、突如として目を見開き。親子を連れた集団が子供を庇うように道を迂回し、挙句の果てには周囲には誰もいなくなってしまった。
それほどまでに彼ら二人の放つ空気に、耐えられないのだ。この、肌の孔という孔を針で突き刺すような空気に。

 で、あるならば、この二人とは?この空気を、道行く人々よりも濃厚に受けて尚平然と言葉を連ねる、男とは?この空気の中で飄々とした普段の態度を崩さない、士とは?

 「我らが求める『イレギュラー』だ」

 瞬間、男の、そして士の腕が跳ね上がる。互いの腕が腰に到達するのは、寸分違わず同時であった。

 ≪ビヨンドライバー!≫

 「名乗り遅れてすまないね。私はウォズ、クォーツァーの……」

 「もういい。大体わかった」

 張り詰めた空気が、爆ぜた。之より行われるのは戦いだ。鎬を、時には命を削り、たったの一瞬、針の穴よりも小さい、その間隙を突き、勝利をもぎ取る。これからこの場で行われるのは、そういう類のものだ。

 「変身」
 「変身ッ!」

 ≪投影! フューチャータイム!≫

 <KAMEN RIDE──────DECADE>

 二人が、声を張り上げ、姿を変え始めた。ウォズと名乗った男が、そして士が。これぞ正しく変身、と呼ぶに相応しいそれに。

 闘争が、始まる。

5人目

「クォーツァーの王」

「ここは……」

 暁美ほむらによって時空の狭間に追放されたスウォルツは、
気がつけば通常空間に戻ってきていた。

「ご苦労だったな」

 目の前には虎縞の玉座に不遜な姿勢で腰掛けた男が頬杖をついていた。
この男こそがクォーツァーの王。そしてスウォルツを
暁美ほむらへの刺客として差し向けた張本人。

「暁美ほむら。なかなかどうして侮り難い存在だ」
「……」

 スウォルツは無言のままその王を見つめた。

「そう怖い顔をするな。
お前を虚無の空間から引っ張り上げてやったのだからな」
「貴様が俺を助けたというのか……!」
「今のところ、あの女はこちらから手出しできない相手だからな」

 王は含み笑いを浮かべてみせた。

「それに、お前にもまだ利用価値がある。故に助けたというわけさ」
「利用価値?」
「ああ。俺の計画のためにも、お前の力が必要だ」
「計画とはなんだ?」

 スウォルツは眉根を寄せる。

「いずれ分かるさ」
(この男、暁美ほむらの力を測るために俺を当て馬にしたということか)

 王の余裕ぶった態度を見て、スウォルツは唇を噛み締めた。
だが一方で、王の真意が分からずとも利用できるものは
利用するという合理的な思考もまた持ち合わせていた。

「王よ、ご報告致します……」

 玉座の間に現れたのは、カゲンであった。

「ゲッターロボとの交戦により、タイムマジーンは大破……
面目次第もございません……」


『ゲッタアアアアアアアッ! 
トマホォォォォォォォォォォォォォォォゥクッ!!』


 猛き深紅の機体が巨大な戦斧を頭上から振り下ろす。
タイムマジーンの右肩口へ直撃したそれは装甲を貫き、内部のフレームを破壊した。
コックピット内でパイロットであるカゲンは苦痛の声を上げる。


『ぐわああっ!! こ、これほどまでの力を持っているとは……!
遺憾ながら撤退せざるを得んか……!』


「ーーなるほど。量産型のタイムマジーンでゲッターロボを
相手にするのは荷が重過ぎたようだな。
良い。概ねの戦闘データは取れた」
「ははっ……」

 王の言葉を受けて、カゲンは恭しく頭を垂れた。

「それにしてもアナザーライダーか。面白いな。
俺もひとつ、『王』に相応しき力を手元に置きたいものだ」

 虚空に伸ばすその手は、太陽さえも掴まんとする野望に満ちていた。

6人目

「協力者」

一方その頃、クォーツァーのジョウゲンはというと
「・・・やっと来たか、アマルガムのガウルン」
「おいおい、ここではコードネームの方で呼んでくれ」
「おっと、それはすまなかったなミスタ・Fe(アイアン)」
アマルガム、それは世界各国の様々な大企業、組織や国家、テロ集団、マフィアなどに実行部隊の派遣による援助や兵器提供をしている巨大な組織
現在はどういうわけかクォーツァーと手を組んでいる。

「まぁいい、頼まれてたとおりAS部隊を用意しておいたぜ、それとイレギュラーどもの居場所の特定もな。現在は特に神浜市とクジゴジ堂に多く集まってるようだ」
「クジゴジ堂……我らの王の替え玉がいるところか……そういえばそちらにはもう1人、金髪でモミアゲが特徴的な男がいたはずだが」
「あぁ、ゲイツのことか……アイツは今は別行動中だ」
「例のウィスパードとやらを捕まえるのに忙しいのか?」
ウィスパード、それは知っているはずの無い、この世の誰にも知りえないはずのことを知っている特殊な人間のことである。全世界でこれに覚醒している人間は数人、潜在的には数十人しか存在しないとされており、「存在しない技術」ブラックテクノロジーの宝庫と言われ、条件が揃えば現代の水準を遥かに越えた科学理論や技術を提供することができるため、アマルガムを始め多くの組織や国家、科学者などが血眼になって探している存在である。
「まぁ大体それで合ってるぜ。
さて、そういうわけだから俺もそろそろあっちの方に行かせてもらうぜ。
……おっと、言い忘れるところだった。俺たちの兵器を使うってことはアイツらが邪魔しにくる可能性がある、気をつけな」
「君たちと現在敵対関係にある組織、ミスリルの連中か……わかった、一応頭の片隅にでも入れておこう」
「へっ、それがいい」
そう言いガウルンはこの場を去った。



「……しかし何故王はあのような醜いやつらと手を組もうとなんて考えたのか……王はあの二人以外の幹部に会ったことがあるらしいが……まぁいい、さっさと始めるとするか。
……AS……アーム・スレイブ……その力がいったいどれほどのものか、見させてもらおうか」

7人目

「吉良吉影は静かに暮らしたい」

――クジゴジ堂。

 アレクとローラのペースに乗せられ、吉良吉影は一行を始末する頃合を
逸してしまった。ソウゴ、アレク、ローラ、月美、そして吉良吉影。
テーブルを円で囲む五人の男女。彼らは今、各々に緊張の色を浮かべながら
沈黙を保っていた。

(こいつらを一度に相手取るとなると……厳しいな)

 吉良はそう考える。彼らのいずれかを奇襲にて始末する事は可能だろう。
しかし次の瞬間、残った連中が一斉に襲い掛かって来る事は想像に難くない。
手の内を明かすリスクと、同時に複数を相手にしなければならないデメリットを考えれば
この状況で全員を倒すという選択は現実的ではないように思えた。
その均衡を崩したのは……

「!! ローラ、伏せて!!」

 アレクが叫んだ。反射的に身を屈めるローラ。
刹那の後、クジゴジ堂の窓ガラスを突き破り無数の銃弾が撃ち込まれる。
それは店内の商品を次々と破壊していく。

「突入!!」
「やれやれ」

 呟いた吉良は椅子から立ち上がりつつ、襲撃者達に向かってゆらりと歩き出した。
銃弾が吉良を避けるように軌道を変えていく。
まるで見えない『何か』に守られているかのように。銃を構えたまま、襲撃者の一人が
口を開いた。

「動くな。妙な動きをすれば即座に撃つ」

 しかし吉良はその言葉を無視し、歩みを止めようとしない。

「激しい『喜び』はいらない……そのかわり深い『絶望』もない……
『植物の心』のような人生を……そんな『平穏な生活』こそ私の目標だったのに……
この世界に来てからずっとだ。ここは騒がしい……とても……
私が嫌う『闘争』に溢れている……」

 硝煙のベールに包まれた店内で、吉良はついに敵の目の前まで辿り着く。

「なぜ私ばかりこんな目に遭わなくっちゃあならないんだ?」
「!?」

「キラークイーンッ!!」

 吉良の言葉に呼応し、彼の傍らに現れた猫型の筋肉質な獣人。
身体の随所に髑髏のデザインをあしらっている。これこそが吉良のスタンド能力。
パワーを持った像(ヴィジョン)。

「点火ッ!!」

 掛け声と共に放たれた轟音と共に巻き起こる爆風と熱風。

「ぐぎゃあああああああッ!!」

 襲撃者――アマルガムの傭兵の一人が悲鳴を上げる。
キラークイーン第1の能力。それは触れた者を爆弾に変え、爆発させる事である。

8人目

「開戦の時」

「ひぃ!?」
「ひ、人が爆発しやがった!?」
吉良吉影のスタンド、キラークイーンの能力を間近で見たアマルガムの傭兵達は怯え始めた。

「……なるほど、それが君のスタンド能力か……」
するとそこへクォーツァーのジョウゲンが現れる。
「……君はいったい誰かね?」
「俺はクォーツァーのジョウゲン……今日はここに用があってね」
「……彼らの抹殺か?」
「そういうこと、その様子だとどうやら君も彼らのことを始末するつもりだったんだろ?」
「……そうだと言ったら?」
「なら話は早い、もし良ければ俺たちと一緒に…」
「断る」
「即答か」
「私としては君たちみたいな無駄に荒々しく派手で騒がしいやり方は好きじゃない……それに、どうせ私も君たちの殺しのターゲットだったんだろ?」
「あー、お見通しだったか……なら話は早い」

すると吉影の周りを囲むようにカッシーンの軍団、そしてクジゴジ堂を囲むようにASの部隊が現れた。
「機械の兵士に巨大ロボか……」
「いくら君でもこの軍勢を相手するのは厳しいんじゃないか?」
そんなこんな話していると
「伏せておじさん!」
「ッ!」
《ギリギリスラッシュ!》
「だりゃああああああ!」
ソウゴはジオウに変身し、ジカンギレードでカッシーンのうちの何体かを撃破する。
「大丈夫!?」
「あ、あぁ……(まさか殺しのターゲットに助けられるとはな……)」
「ジオウか……お前の相手は俺がしてやる」
するとジョウゲンはライドウォッチとジクウドライバーを取り出した。
「っ!ライドウォッチにドライバー!?
……まさか!?」
「あぁ、そのまさかさ」
ジョウゲンはジクウドライバーを巻き、ライドウォッチを起動する。

《ZAMONASU!》
そして起動したライドウォッチをジクウドライバーにセットする。
「変身!」
そう言いジョウゲンはジクウドライバーを回した。
《RIDER TIME!
KAMEN RIDER ZAMONASU!》
ジョウゲンは仮面ライダーザモナスへと変身した。
「仮面ライダー…!?」
「ジオウは俺が相手をする、君たちはイレギュラー四人を頼むよ」
「はっ!」
「さて……どれほどの実力なのか、確かめさせてもらうよ…!」

9人目

「乱戦」

「アレク様……!」
「相手は傭兵……人間か……!」

 ザモナスの号令で散開するアマルガムの傭兵達は再び戦闘態勢に入る。
アレクはローラ姫を庇うようにしてマントを翻しながら矢面に立った。
明確な殺意を向けて来ているとは言え、相手はモンスターではなく、人間。

「どうにかして無力化しないと……!」

 月美は霊符を構える。

「撃て!!」

 アマルガムの傭兵達による一斉射撃が開始された。

「くっ……! 霊符結界!!」

 月美はぐるりと円を描いた霊符で自身の周囲に結界を展開し、
なんとか攻撃を防ごうとする。しかし、あまりの数の多さにより、徐々に押されていく。

「ローラを頼む! 俺が突破口を開く! はぁあああああッ!!」

 アレクは結界を抜け、迫りくる銃弾やレーザーを弾きながら傭兵達の中へ突撃していく。

「ぐあっ!」
「ぎゃあああ!!」
「ぬぅおおおおおッ!!」

 アレクは傭兵たちのマシンガンの銃口を「ロトのつるぎ」で切り落としていく。

「こいつッ……銃を相手に突っ込んでくるだと!?」
「飛び道具を使う手合いには慣れている……!」

「まだまだ!! 霊符……『射手の焔』!」

 月美も炎を纏った札を飛ばし、アレクを援護する。

「うわっ!?」
「私も参ります! メラ!!」

 ローラ姫も杖を掲げ、呪文を唱えると巨大な火の玉が現れ
アマルガムの傭兵達に直撃する。

「今です! アレク様!」
「あぁ!  でやあああッ!」

 アレクは剣を振り回し、周囲の敵を一掃して行った。防弾装備の上から
ピンポイントに急所への攻撃を打ち込み、アマルガム兵を無力化していく。

「すまないみんな!」
「いえ、それよりも早く逃げましょう!」

「そうだ、あの吉良吉影って人は……?」

 月美は乱戦の中を見渡す。
するとそこには、路地裏に消えようとする吉良吉影の姿があった。

「待って!」
(この機に乗じて退かせてもらう……だが、次こそは君と『手と手を繋いで』……
フフ……」

 吉良を追おうとする月美であったが、即座にアマルガム兵たちに行く手を
阻まれてしまう。

「月美さん! 今は身を守る行動を……!」
「くっ、分かりました……」

(しかしジェナ・エンジェルめ。あんな奴らがいるなどとは聞いていないぞ。
問い質してやらなければ……!)

 怒りを湛える、吉良の瞳。

10人目

「再開」

「ハァアアア!」
「ふっ、はぁ!」
「うぐっ!?こいつ……強い…!」
ジオウはザモナスを相手に苦戦していた
「どうした?その程度か?所詮は替え玉の王ってことか?」
「替え玉の王…?どういうことだ!?」
「今の君が知る必要はない…!」
「うぉっ!?」
ジオウはザモナスの攻撃を回避しつつ距離をとる。
「これなら!」
《ジカンギレード!ジュウ!》
「ハッ!」
ジオウはジカンギレードをジュウモードにして射撃で攻撃するが、全然効いてる様子がない。
「そろそろ終わらせるか」
そう言いザモナスはゆっくりと近づいていき、ジオウにトドメを刺そうとしたその時!
「そうはさせるか!」
「っ!?」
「その声、もしかして!」
《TIME BURST!》
「ハァアアアアアア!」
「うぐっ!?」
突然現れた赤い仮面ライダー、「仮面ライダーゲイツ」が放ったライダーキックがザモナスに直撃した。
「大丈夫かソウゴ?」
「うん、ありがとうゲイツ!……けど、今までいったいどこに…?」
「いろいろあってな……それよりも、まずはこいつを先になんとかするぞ」
「うん!わかった!」
「クッ……おのれ…!」
すると今度はアマルガムの傭兵達に向かってどこからか大量の弾丸が飛んでくる。
「ごふっ!?」
「ごはっ!?」
「な、なに!?」
一同が弾丸の飛んできた方を見ると、そこにはアマルガムのとは異なる4機のASがいた。
「あれはいったい…?」
「味方なのか…?」
「チッ、ミスリルも来たか……流石にこれでは分が悪い……ここは一旦引くぞ!」
そう言いザモナスとアマルガムのAS部隊はどこかへ去っていった。



「……どうやらなんとかなったようだな……」
「そうね……あ、そこのあんた達!ちょっと話があるからついてきな!」
ソウゴ達は4機のASのうちの1機のパイロットからそう声をかけられた。
「え?なんかよくわからないけど……わかった!」
「おいソウゴ!勝手に了承するな!」
「いいじゃん、それにこの人達、悪い人じゃなさそうだし。
……あ、皆はどう?」
「私は大丈夫です」
「私とアレク様も問題ありません」
「そうか……わかった、じゃあ俺も行こう」
「よし、じゃあ早速……あ、ごめん先におじさんに窓や商品を壊しちゃったこと謝らないと!ちょっと待ってて!」
そう言いソウゴはクジゴジ堂の中に戻っていった。

11人目

「その名はミスリル」

「おじさん、大丈夫!?」
「げほっ、ごほっ……何なの何なの、突然……」

 廃墟と化したクジゴジ堂の中から助け出される順一郎。
幸いにも怪我はなく、事の一部始終を全く知らないようだ。

「良かったぁ……おじさんが無事で……」
「一応、大事を取ってホイミをかけておきましょう」
「ああ~効くう~……何これすんごい気持ちいい」

 ソウゴはホッとしたのかその場でへたり込む。
その表情には安堵の色がありありと浮かんでいた。

「うんうん、無事で良かった良かった」
「え? あの……」

 しれっと月美の肩を抱く金髪碧眼ナンパ男、
クルツ・ウェーバー軍曹に困惑するも、彼は構わず続ける。

「いやー、君たちが無事で本当に良かったよ! 
どう? この後親睦を兼ねて食事でも……」
「クルツ、ドタマに風穴空けられたくなかったらその手を離しな」

 ゴリッ、と拳銃の銃口がクルツの後頭部に押し付けられる。

 「わ、分かったよ姐さん! 冗談だって!」
「ったく、油断も隙もないんだからさ。
悪かったね、ウチの恥さらしが迷惑かけて」
「あ、いえいえそんな……」

 クルツの尻を裏で蹴たぐりながら、マオと呼ばれた女が謝罪の言葉を口にした。
黒髪ベリーショートに吊り目の中国系アメリカ人の女性、
メリッサ・マオ。クルツの上官だ。

「こいつらの組織の名はミスリル。さっきの連中と戦ってるらしい」
「え? じゃあゲイツは……」

「元々レジスタンスなんてやってた身だ。のんびりとした学生より、
傭兵の方が性に合う」

 明光院ゲイツは西暦2068年の未来から来た戦士であり
オーマジオウとなる前のソウゴを倒すべくこの時代にやって来た。
しかしソウゴ達と出会い共に戦う内に仲間と認め合う関係になった。
タイムジャッカーとの最終決戦で命を落としてしまったが
ソウゴがオーマジオウとしての力と引き換えに
現代の学生として転生、生き返る事ができたが
仮面ライダーとして戦っていた前世の記憶が戻った事により
ソウゴ達の前から姿を消していた。

(ウォズ……やはりあいつは……!)

「俺たちのボスからアンタらに話があるんだとさ」

 クルツが地に着けたアタッシュケースを開くと
映像端末に銀髪三つ編みの少女が映し出される。

『はじめまして。私の名はテレサ・テスタロッサ大佐。
ミスリルの総司令です』

12人目

「協力関係」

「総司令?お偉いさんってこと?」
「まぁ、大体そういう認識で合ってるぜ」
「それで、その総司令が私達に話って?」
『はい……まず最初に、先程あなた達を襲ったのは私たちミスリルとは敵対関係にある組織「アマルガム」、そして最近彼らと同盟関係にある謎の存在「クォーツァー」です』
「アマルガムにクォーツァー?」
『はい、アマルガムは世界中の国家やテロリストなどに兵士や兵器の提供をしている巨大組織です』
「そしてクォーツァーに関してだけど……こっちはアマルガム以上に謎が多くてね。
いまだにどういう奴らなのか私たちにもわからないの」
「少なくとも、前に俺やお前、ツクヨミを襲ったカッシーンはそのクォーツァーが作ったものだということだけはわかってるがな」
「あ、だからさっき襲ってきたやつらの中にカッシーンがいたんだ」
「そういうことだ、恐らくだがさっき戦ったライダーはアマルガムではなくクォーツァーの人間だと俺は思っている」
『そしてこの2つの組織は、最近同盟を結びなにかとんでもないことを行おうとしているようです』
「とんでもないことって?」
『詳しいことはまだわかりませんが、彼らは計画の邪魔になる可能性のある存在……特に異世界から来た存在をイレギュラーとして扱い、抹殺しようとしてるようです』
「それで私達のことを襲ったのね」
『はい、恐らくは今後も皆さんのことを殺そうとしてくる可能性があります。そこで皆さんの身を守るため、そして彼らの計画を阻止するためにも我々にご協力していただきたいのですが……』
「なるほど……わかりました、私で良ければ力を貸します!」
「俺とローラも力を貸そう、あのような輩を放っておくわけにはいかない」
「もちろん俺とゲイツも力を貸すよ!」
『皆さん、ありがとうございます!』
こうしてミスリルと協力することになったソウゴ達

一方その頃
「……ここにも居ねぇか」
竜馬はカゲンとの戦いのあと、自分の知ってる者たちを……かつての仲間達がいないかどうか探していた。
「やっぱりここは俺のいた地球とは違うのか……いや、だとしたらなんでさっき戦ったアイツはゲッターを知ってたんだ?
……まぁいい、とりあえずこれからどうするか……腹減ったし飯屋でも探すか」
そう言い竜馬はゲッターロボでどこかへ飛んで行った。

13人目

「相克」

 がきん、という音が最早二人だけの空間となった大通りに響いた。
門矢士と、ウォズ。仮面ライダーディケイドと、仮面ライダーウォズ。全てを踏み均し、過去へと帰す破壊者と、全てを見通し、臨む未来へ世界を創造する管理者(クォーツァー)。
破壊と創造。過去と未来。相容れない二つの力、相克する二極の敵意が絡み、火花を散らし衝突する。互いの色を要らぬと排除せんと、刃を振るう。力を振るう。

 消えかけの陽光に照らされる、ライドブッカーの刃。銀色に瞬いたそれは、次の瞬間にはウォズの肩口にまで動いていた。

≪投影!フューチャータイム!≫

 それを甘んじて受けるほど相手も柔くはない。即座にベルト───ビヨンドライバーに右腕を遣り、スロットを起こし。ウォズのバイザー、顔面に位置する部分の文字が、飛んだ。
新たにミライドウォッチが、装填されたのだ。カタカナの「ライダー」を模した複眼部分がディケイド目掛けて飛来する。
これを、ディケイドはライドブッカーで対応、すかさず一歩下がり、自身の方へ戻した刀身を構え、一度の横薙ぎで襲い来る四文字を弾いた。あくまで、最低限の動きのみの対処だ。

≪誰じゃ?俺じゃ?忍者!フューチャーリングシノビ!シノビ!≫
 
 ウォズに向き直る、ディケイド。しかし、当のウォズが消えていた。

────逃げたか?いや、これは─────

 即座に、ライドブッカーを自身の後方に向けて振るう。同時に、ボフン、と煙と共に中空より現れたのは、ウォズだ。その姿は紫色のカラーリングに代わっていて、鎌に形が変わっている、ジカンデスピアを振り下ろす体勢。どうやら奇襲を狙ったらしい。

「なっ.....」

 しかし上空で姿を現したのが、いや、門矢士を相手に搦め手を狙ったのが失策だった。身動きの取れないウォズに、ライドブッカーの一撃が叩き込まれる。予めウォズの行動を予測した咄嗟の判断力。恐るべき、その武練よ。
体勢を崩し、地を掃うウォズ目掛けて、銃声が響いた。ライドブッカーをガンモードに変更したディケイドの、追い打ち。銃口を見るなり、ウォズはフューチャーリング・シノビの忍術を再び使用、丸太と自身を交代、再び姿を消してしまった。

「どうやら今度は……逃げたようだな」

 いつの間にか、辺りに充満していた闘気が消えている。戦いは、士のワンサイドゲームで幕を閉じた。

14人目

「月姫と世界の破壊者」

「クォーツァー……とか言ってたな。調べてみるか」

 士の意志に呼応して空間が捻じ曲がり、時空のオーロラが開く。
その先は過去か、未来か。ここではない、何処かへとつながっている。

「ん……」

 オーロラを潜った先には、戦闘が繰り広げられていた。

「えっ? シミュレータの中に人が? こんなエネミーいたっけ? 
まあいいや、ぶっとばーす!」
「うおっ……!?」

 突然士に襲いかかってきたのは、金髪のボブカット、紅い瞳を持つ少女だった。
素手で地面を軽々と抉り取る。

「何だ、この女……? バケモノか?」
「ちょっと! 誰が化け物よ! 失礼しちゃうわね! モブエネミーの癖に生意気!」

 間一髪で避けた士だったが、少女から放たれたのは殺気であった。
あまりに異質。この女は危険だと、士の中の何かが告げている。

「あーもう、めんどくさいなぁ。さっさと素材落として消えなさいよ! 倍速で!」
「何を言ってるのかさっぱりだが、黙ってやられるわけには行かないな。変身!!」

【KAMEN RIDE DECADE】

 虚空から飛来する無数のライドプレートが少女を弾き飛ばし、反射して
ディケイドの仮面に装着される。

「わっ……」
「アルクェイドさん!」

 仲間と思われる黒い甲冑の少女が駆け寄ってくる。背丈を超える大型の盾を携えていた。

「新手か……」
「あんなエネミーは設定した覚えがないのですが……どうなっているんでしょう、先輩?」
「カルデアのシミュレータ、まあまあの頻度でバグが出るからね」

 マゼンタのボディに十字のラインを走らせた、何者にも属しない
異形たるディケイドの姿に、彼女らも困惑していた。

「何だっていいわ! こいつ、わたしの事『バケモノ』呼ばわりしたんだから! 
絶対に許さない!」

 新しい世界に着くなり、特異なる少女に命を狙われる。
士にはそんな体験に大いに心当たりがあった。

「種火よこせえええええええッ!」
「だから何の話だ!」

 飛びかかってくるアルクェイドとディケイドのパンチとが交差する。
両者の拳がぶつかり合い、衝撃波によって周囲の木々が大きく揺れ動いた。

「おぉっと!? ここでまさかの大乱闘勃発! 一体どうなるのかぁ!? 
スマッシュでブラザーズなのかァ!?
実況はわたくし、ジャガ村がお送りしますぅ~」

15人目

「超越してしまった彼らと其を生み落した理由」

 激突する。拳と拳、その衝撃一つで彼ら二人を取り巻く世界が、揺れていた。木々の入り組んだ森林地帯での戦闘を想定して設計された、バーチャル・リアリティー上の空間そのものが、大地震の震源地もかくやという勢いでぐわん、と揺れを計測する。
そも、このシュミレーションルームで行う事と言えば、木々に覆われ、視界の不十分な戦場にて、如何に敵の猛攻を凌ぐか、というものだったはずだ。
入り組んだ森林という地の利を存分に利用した奇襲にどう対応するか、そんな訓練であったはずだ。
この不利極まりない状況下で、鬼札足りうる原初の一たるムーンキャンサーを如何に温存するか?そういう内容であったはずだ。

 で、あるならば。今この瞬間にてアルクェイドと拳を交える、あのエネミーとは?

 単純に、強すぎる。もしも二人の戦闘に生半可な英霊を送り込んでも、攻撃の余波だけで五体が弾け飛ぶ。このエネミーを存在させるには、この仮想世界は余りにも脆弱に過ぎる。訓練に臨んでいた、マシュ・キリエライトも、マスターである藤丸立夏も、考える事は同じだった。この異常極まりない状況下でノリノリで実況をかましているジャガーマンは……そもそもそんな疑問にすら至っていないみたいである。実におめでたい頭であった。

 交じり合い衝突する二つの意志。
破壊を以って物語を紡ぐ、無から生まれし世界の意志/世界の破壊者(ディケイド)。
星の生存本能、地を統べる霊長への恐怖を以って顕現した、世界の意志/抑止力(カウンター・ガーディアン)。
どちらも、根源は同じだ。誰かの、大いなる意志の下でこうあるべきと定められた、生み出された世界の意志の体現者。
右拳、左拳、右拳、左拳、右拳────。
疾風怒濤、獅子奮迅。そういった類の言葉でさえ、彼ら二人の戦いを表現するには安く感じてしまう。互いに、一歩も引かない、拮抗した状況。

───このままだと、押し負けるな───

 そう、思考したのは士だ。このバケモノじみた女は、仮面ライダーと姿を変えて尚、手の余る存在である、と認めざるを得なかった。振りかぶられる、アルクェイドの左拳を敬遠。後ろ飛びで距離を取った、ディケイド。

「何のつもり?今更、私に許しを請っても無駄だからね」

「その言葉、そのまま返す」

 その手には、ケータッチが握られていた。
 

16人目

「運命の探索者」

「ちょ、ちょっと待ったーー!!」

 ディケイドとアルクの間に割って入り、両腕を左右に広げた影があった。
藤丸立香だ。

「先輩、危険です!」

 慌てて駆け寄るマシュ。大型の盾を構えながら、彼女の前に立つ。

「ダ・ヴィンチちゃん、シミュレータを切って! これじゃあ、カルデアが壊れちゃう」
『う~ん、そうだねぇ……了解だ』

 ブツリ、という音と共に、シミュレーションルーム内の景色が一変。
森林地帯から一転して、真っ白な壁に覆われた空間へと変わっていく。

「……シミュレータがOFFされたのに、アンノウンが消えない……?」

 その場に残されたのは立香、マシュ、アルクェイド、ジャガーマン。
そして……ディケイド。
仮想空間に作られた虚像ではなく、実体を伴うものだと言う証左。

「そいつ、エネミーじゃないの?」
「どうやらそのようです……あなたは、一体……」

「通りすがりの仮面ライダーだ」
「ライダー? ライダーのサーヴァントだったの?」

「その金髪女と喋ってると、どうにも要領を得んな……」
「あー! またバカにした! 自分でライダーって言ったのに!」
「まあまあ、アルクェイドさん……」

 困惑する一同だったが、一人だけ、違う反応を見せた者がいた。

「へぇ、面白いお客さんが来たようだね」

 声の主は、杖を持った白い髪の男だった。彼が歩を進める度、足元に美しい花が咲く。

「誰だ、お前は。見るからに胡散臭そうな奴だが……」
「はっはっは、ご挨拶だなぁ。私はマーリン。花の魔術師なんて呼ばれてるけど、
まぁ好きに呼んでくれたまえ。話を戻すが、君はこの世界の住人ではないようだね?」

「あぁ、俺はこの世界とは別の世界から来た人間だ」
「別の世界!?」

 思わず素っ頓狂な声で叫ぶ立香。マシュも驚きを隠せない様子だった。

「レイシフトも無しに、ですか?」
「まぁ、そういう事になるな。そのレイ何とか言うのは知らんが」

「……」

 絶句する立香達を前に、しかし当の本人は涼しい顔である。
ここは、人理継続保障機関フィニス・カルデア。
歴史に名を刻んだ英霊――サーヴァント――を召喚し、使役するマスター、
藤丸立香が所属する組織である。

「クォーツァーの手がかりを探して世界を渡ったつもりだが……
どうにもさっきまで居た世界とはまるで別物らしいな」

17人目

「君の知らない物語」
 
突如としてシュミレーションルームに現れた自称異世界人、門矢士の話を一通り聞いた藤丸立夏は、また現実離れした話だな、だと率直に思う。今の自分達の置かれている状況も大概であるがそこは棚に上げておく。まあ、今更ちょっとやそっとの異常事態には動じなくなってしまったのも、長らくマスターをやってきた弊害であった。もう慣れてしまう程に、想像を超えた事態に何度も直面してしまったと考えると、ほんの少し物悲しくなる。至って普通、一般人として過ごしていた日常が懐かしく思えてくるのだった。

「ええっと……いろいろと話を聞いてて頭痛くなってくるなあ……」

今までに経験してきた特異点での出来事と比較してみても彼の話は飛躍した内容がほとんどで、理解するのに時間を要した。更には士自身の、ざっくりしすぎた煩雑極まりない説明もこれに起因する。……こう考えるのは失礼ではあるものの、彼の尊大な性分に身近な人間は大変困らされているんじゃなかろうか。

「取り敢えず、大体、ほんとにざっくりと纏めると、変な人に襲われて、それを追ってたらここに偶然たどり着いただけで、敵ではないと」
「当たり前だろ」
 
我ながらめちゃくちゃざっくりと端折りすぎたなあ、と思う。彼の言う仮面ライダー、世界を巡る旅云々の話しは一旦無視した。今、この状況で優先すべきは、”門矢士が何の目的で、ここに来たのか”それをはっきりさせる事が大事だった。……なんかアルクェイドと険悪なのも含めて、敵か味方かをここで明確にしておかないと、いろいろと、こう、危ない。グルルルル、と猫が威嚇するみたいな顔をしているアルクェイドが、渋々拳を降ろした。もしも士の返答がコンマ一秒遅ければ思いっきりぶん殴っていただろう。危なかった……と胸を撫で下ろす。

「それにしても、だ。何だ、この世界は?」
「何だ、と言われましても……」
 
話を振られたマシュが要領を得ない質問を唐突に飛ばされて、困惑を露わにし始める。助けてください先輩、と言わんばかりにこちらに目線を送ってくるのが見えた。正直どう対応すればいいか分からないから、マーリンに目線を送ってみる。
咲き盛った花のような凛々しい笑顔でそっぽを向かれた。この野郎。ちなみに、ジャガーマンは寝ていた。
「カルデアに異常が無いか調べて来る」と言ったダ・ヴィンチを待つ、ひと時の閑話であった。

18人目

「辺獄よりの使者」

 安倍晴明。日本の歴史に燦然と輝く、陰陽道の開祖。
しかし、その実体は人を喰らう「鬼」を使役し、ゲッター線に関わる者を
抹殺しようとしたという、謎多き人物である。
彼は、なぜそのような行動に出たのか? 彼の目的は何だったのか?
それは、この世界における『神』のみが知る……

『行け、竜馬!』
『これで終いだ! 南無阿弥陀仏!』
『今度こそくたばりやがれ、晴明!! 
ゲッタァァァァァァッ! ビィィィィィィィィィィィィムゥ!!』

 彼の根城である黒平安京、そして現代の市街地を舞台にした戦い。
流竜馬、神隼人、武蔵坊弁慶らゲッターチームが乗り込む、
変幻自在、三体合体のスーパーロボット「ゲッターロボ」と晴明の最終決戦の末、
ついに必殺のゲッタービームが晴明の身体を貫き、決着は着いた。

『ぬあああッ!! 何故だ、何故、奴らに勝てぬ……ぐあああああッ……』

 断末魔の声とともに、晴明の肉体は光に包まれて消滅した。

『あばよ、晴明。こいつで最後だ……』

 しかし、陰陽道の秘術により無限の死と再生を繰り返してきた晴明は
肉体が滅びても尚、ドス黒い怨念となって現世に残り続けることになる。

『……ふふふ、はははは……ゲッターロボ……流竜馬……この恨み、忘れるものか……
必ず、貴様らに報いを受けさせてやるぞ……!』
「ンンンンンン……感じます、感じますぞ。貴方様のその憎悪。その怨恨。その無念。
えぇ、えぇ、いいでしょうとも。拙僧が、引き受けましょうぞ」

 突如として空間に現れ出た一人の僧侶の姿があった。身の丈2mにも迫る怪人。
道化師を思わせる奇妙奇天烈な和装束の男。

『何者だ、貴様……』
「拙僧の名はリンボ。キャスター・リンボと申す者にござりまする。
以後お見知りおきを……」

 リンボ。天国にも地獄にも行き着かぬ者の魂が漂う「辺獄」の意味を持つ。
この空間は、まさにそれに当たるのだろう。

「安倍晴明殿。貴方様に是非ともお願いしたいことがございまする。
拙僧と共に、再び現世にて戦っていただきたい」
『ほう……私を再びあの世界に呼び戻すと?』

「左様で。拙僧には貴方様のお力が必要なのです。どうか、拙僧にお力を!
拙僧にも貴方様同様、地獄の責め苦を味わわせたい者たちがいるのです。
そう、忌々しき人理の守り手! ンンンンンンン! カルデア!!」

19人目

「パ・ド・ドゥは独りで踊れ」

 両手を広げ、恍惚なる笑みを浮かべ。『それ』は、笑う。嗤う。その目をひとたび、ほんの一目見ただけで、清明は之なる魔性の性根を暴くに至る。この、煮詰めた汚泥のような、正道から外れた外道を、真性の魔を、直視する。

 まるで、自身の鏡写しだ。これは。

 思う侭に他者を呪う、その所作は負を招く布石であり。有り余る才を振るえば、人を救うことなど容易く、人を導く事など容易く。だが、あれは万に一つも、天地がひっくり返ろうとも救いなど齎しはしない。何処までも人の世を呪詛で膿ませる、悪辣なる肉食獣。

「フフフ……ハハハハハハハハハハ!!」

 ああ、そうか。彼奴は、それを望むとな。辺獄たる陰陽師よ。彼の、蘆屋道満よ。
清明は笑った。リンボの悪辣なる笑みと、寸分違わず、その邪気を孕ませた笑みである。

「貴方の貌を拝見すれば分かりますとも、何とも、フフフ、ンンンンン──────憎いのでしょう、あの、機械仕掛けの絡繰りが」

 嗤う、嗤う、嗤う、嗤う。何処までも狂へる笑み。

『ハハハハハ……ああ、良い、実に良い!我も貴様の貌を一目見て理解したぞ、魔なる者よ。忌々しいのだろう、憎らしいのだろう!存分に思い知らせて見せようぞ、我らが抱くこの憎悪を!』

「は、は、は、は、は、は───やはり、貴殿を選んだ拙僧の目に狂いは無かったようです。異界の陰陽師、混沌の魔性よ」

 法師なる男の艶やかなる声が、この怨念渦巻く辺獄たる地へ響き渡る。之こそが、彼ら二人の宣戦布告だ。

 御覚悟召されよ、カルデアよ。
 
 御覚悟召されよ、ゲッターよ。

 御覚悟召されよ、諸人よ。

 これらは外道、邪道を地で行く魔性である。

 これらは正道を外れた、魔なるものである。

 果てには人の世を喰らい尽くす、森羅万象全てに唾吐く純然たる悪意である。

 互いに望むは、一切鏖殺。故に、英雄足る者よ、お前に問う。

 この宿業を断ち切れるか?
 
 さもなくば世界は最果てまで、絶望という大海に呑まれ、あらゆる人が溺れ死ぬまで。

20人目

「カルデアの食堂にて」

 西暦2016年。魔術王ソロモンによる人理焼却の野望を食い止めたカルデア。
その後、藤丸立香とマシュは聖杯探索「グランドオーダー」の旅によって
発生した余波「微小特異点群」を修復する任務に就いていた。

「……なるほど、大体分かった」

 カルデアの食堂で食事をしながら、士は藤丸たちの話に耳を傾ける。

「ホントに分かったの?」
「大体だと言った。そもそも専門用語が多すぎる。
魔術だの特異点だのサーヴァントだの。だから大体で良い」
「なーんかテキトーな人」

 アルクェイドはジト目で士を見つめながら口を尖らせる。
士はふん、と鼻息を鳴らしてオムライスを口に運んだ。
オムライスにはケチャップがかけられているのだが、
その色合いが普通の物より赤く見えるのは気のせいではない。
なぜなら、このオムライスにかけられたケチャップにはトマトピューレが
使われているからだ。士はそれをスプーンで掬う。

「……にしても、なかなかイケるな。カルデアの食堂とやらは」

 口の中に広がる酸味を感じつつ、士は感心したように言う。
その言葉を聞いて、マシュが嬉しそうに笑った。

「エミヤさんという方が料理担当なのですが、とても腕が良いんです!」
「お褒めに預かり光栄だね」

 マシュの言葉に応えるかのように厨房から現れたのは褐色肌に白髪の男だった。
彼の名はエミヤ。アーチャークラスのサーヴァントであるが
非戦闘時にはカルデアの厨房に立ち、エプロン姿に身を包んでいる。

「アーチャー、お代わりをお願いします」

 士たちから少し離れた席に座っていた金髪をシニヨンに結った
男装の麗人──アルトリアが空になった皿を差し出す。
頭頂部のアホ毛が催促するように跳ねている。それを見て、エミヤは苦笑いを浮かべた。
彼女の目の前に置かれた皿の上には山盛りのスパゲッティがあったのだ。
しかもそれが既に三皿目である。
だが、それを見ている周りの人間たちは誰一人として驚いた様子を見せていない。
寧ろ「またか」という感じで生暖かい視線を送っている。
そんな周りの様子を意にも介さず、アルトリアは四皿目のスパゲッティを食べ始める。
あの小さな身体のどこにあれだけの量が収まるのか、不思議でしょうがない光景だ。

「ダ・ヴィンチちゃんとホームズさんの呼び出しがかかるまで、どうぞごゆるりと」

21人目

「動き出す者たち」

一方その頃
王座の間では、クォーツァーの王とウォズ、ジョウゲンが話をしていた。
「申し訳ございません……イレギュラーの抹殺に失敗、更にはやつらをミスリルと合流させてしまいました……」
「そうか……なに、気にするな。やつらのデータを取れただけでも上々だ……ウォズ、お前はどうだ?」
「はっ、私も独自でイレギュラーの1人、仮面ライダーディケイド、門矢士と対面し、彼を抹殺しようとしましたが、結果は失敗に終わってしまいました」
「そうか……ん?門矢士だと?
どういうことだ……やつは既に死んでいるはずだが?」
「それが、原因は不明ですが、どうやら生き返ったようです……」

「それに関しては心当たりがある……」
「っ!君は……」
「久しぶりだな……ウォズ、前の世界以来か?」
「スウォルツか……で、心当たりとはいったい?」
「……暁美ほむらだ。やつはどうやら門矢士とは既に関わりがあるようだ……恐らくはやつがなにかしたのだろう……」
「暁美ほむらめ…面倒なことを……まぁいい……ウォズ、ジョウゲン、お前達はカゲンと一緒に例の計画のことを最優先で進めろ、今替え玉の王と一緒にいるイレギュラー共は、ミスリルもろともアマルガムのやつらに始末させるつもりだ。
どうやらやつらのターゲットであるウィスパードのうちの1人が現在ミスリルと一緒にいるらしいからな、やつらも強力な幹部や主戦力を送り込んでくれるはずだ」
「はっ!」
「……わかりました」
そう言いウォズとジョウゲンはどこかへ消えた。

「……で、俺はどうすればいい?」
「なに、お前には2つ任務を用意してある。1つは現在神浜市にいるイレギュラー達、空条承太郎、ムーとゲイル、そして魔法少女共……やつらを始末すること。
そしてもう1つは我々の計画にとって最大の障害になる恐れのある3つの存在、ゲッター、ディケイド、そして暁美ほむらに対抗できる戦力の用意だ。
どちらもタイムジャッカーの能力とアナザーディケイドの能力を持つ貴様にしかできないことだ……」
「そうか……ふん、まぁいいだろう……(クォーツァー、そしてアマルガムよ……貴様らが俺利用するように、俺も貴様らを利用してやる…!)」
そう言いスウォルツもどこかへ消えてった。

「……さて、そういうことだ。貴様らには期待させてもらうぞ……アマルガムのミスタ・Ag(シルバー)よ……」

22人目

「世界の融合」

「……駄目だな」

カルデアの食堂で食事を終えた後、
士はひとり、壁に向かって佇んでいた。

「何やってるの?」

 アルクェイドはひょこり、と不思議そうに顔を覗かせる。
士は時空のオーロラを開こうと試みていたが、どうにも上手く行かない。
彼は任意でオーロラを開き、並行世界を渡り歩く事が出来る。
幼い頃に突如として発現した力だ。
並行世界を隔てる壁は時折脆くなるものの、基本的には万物の往来を阻むようになっている。

「……ならば、俺にはこの世界でやるべき事があると言う事か」

 それは、何者かの意志によるものなのかは分からない。
けれど士がひとつの世界に留まる事になった時と言うのは
何かしらの試練を課せられた時。

「門矢さん!」

 士の元に現れた立香とマシュ。二人とも神妙な面持ちをしていた。

「どうした?」
「一緒に司令室へ。ダ・ヴィンチ……いえ、カルデア所長代理がお呼びです」

「こらー! 無視しないでよ!」
「悪いな、金髪女。今はお前と遊んでる場合じゃなさそうだ」

 アルクェイドをその場に残し、士はマシュたちの案内で司令室へと向かう。

「ムカー! 何なのよ、あいつ! 
感じ悪い! 感じ悪い! 感じわーるーいー!!」

 アルクェイドが地団駄を踏むコンクリートの床が薄氷を踏み割るように砕けていた。

「来たか……」

 司令室には聡明な絶世の美女ーーに自らの肉体を改造したーーと、
パイプを咥えた紳士然とした男が待っていた。
ソロモンでの最終決戦以降、先代所長代理から
その任を受け継いだレオナルド・ダ・ヴィンチ。
そしてカルデアの経営顧問にして名探偵、シャーロック・ホームズ。

「ミスター・門矢。そして藤丸くんとマシュも、この映像を観て欲しい」

 大型のモニターに映し出されたのは、世界地図。
その上に重なり合おうとしているもうひとつの世界。

「こ、これは……!」
「世界の融合、か」

「やはり覚えがあるようだね」
「ああ。これと同じ現象があちらこちらで起きている。
俺はこいつの真相を突き止めるためにここへ来た」

「つまり……」
「この世界と別の世界が引き合い、衝突しようとしている。
放っておけば、諸共に消滅してしまうだろうな」

「そして、ここからは我々の専門分野だが、
世界が重なり合っているポイントに
聖杯の反応が検知された」

23人目

「聖杯の力、そしてそれを狙う者」



「聖杯……さっきお前らが言ってたやつか」
「はい、そうです……聖杯は私達の世界に存在するどんな願いでも叶えられるほどの力が宿ったものです。
そしてこの聖杯の力は凄まじく、その力を悪用して特異点を発生させている者達もいたりします」
「なるほど、大体わかった。
……で、その聖杯とやらが世界の融合の原因か?」
「その辺はまだ不明だが、恐らくは何者かが聖杯の力を悪用して今回の騒動を引き起こしてる可能性がある」
「何者かって、いったい誰が……?」
「……俺に少しだけ心当たりがある」
「心当たり…ですか?」
「あぁ、クォーツァーだ」
「クォーツァーって、先話してたあなたのことを襲った変な人のこと?」
「あぁ、先の話で言ったとおり、俺はそのクォーツァーの手がかりを探すために世界を渡ろうとして、この世界に来てしまった。そしてこの世界では別の世界との融合が起きようとしていてさらにその聖杯とやらの反応があった。
……偶然にしては出来すぎてる気がしないか?」
「……確かにそのクォーツァーとやらが関係している可能性もなくはないな……
……とりあえず一度、その聖杯の反応があった地点へ調査しに行ったほうがいいかもしれない」
「そうだな、俺もそう思う。
このままわからないまま話を続けても何も解決しないからな」
「そうですね、では早速調査しに行く準備をしましょう」
こうして士はカルデアの面々と共に世界の融合、もといその原因と思われる聖杯の調査をすることになったのであった。



そしてこの話を裏でこっそり聞いていた男がいた。
「なるほど……聖杯……それがこの世界のお宝か……」
彼の名は海東大樹、またの名を仮面ライダーディエンド。お宝を集めるために様々な異世界を旅している青年、そして士とは旅の中で何度も出会い、時には対立し時には共闘した関係である。
「どんな願いでも叶えられるお宝か……素晴らしいじゃないか。
……士には悪いけど、今回のお宝は僕が先にいただくよ…!」
そう言い彼はその場を立ち去った。
彼は向かったのだ。誰よりも先にこの世界のお宝を、聖杯を手に入れるために……

24人目

「星の白金」

 融合する世界。聖杯の影。そしてそれを争奪する者たち……
物語は2つの世界を隔てて展開し始めていた。
一方、神浜に滞在していた空条承太郎は「万々歳」のTVに映った吉良吉影らしき男の
行方を追うために行動を開始していた。

「あのニュースの場所? 神浜から少し離れた所にある街だよ」

 食事を終え、万々歳を出た承太郎とももこ。

「その街には、どんな奴が住んでいる?」
「そうだなあ……あの辺は光ヶ森高校とか陣代高校の近くだったかな。
最近やけにあの辺爆発騒ぎが起きたりしてるんだよね……」
「む……?」

 2人が向かう先に、男が立ち塞がる。スウォルツだ。

「空条承太郎だな……?」
「俺の事を知っている……何者だ、貴様……」

 この世界にとっては異世界からの来訪者である承太郎を知っている。
で、あれば敵である可能性が高いと踏んだのだ。

「貴様の意見は求めん――むんッ!!」

 スウォルツが右手をかざすと、承太郎とももこの時が止まった。

(これは……!)
(な、何これ……!?)

 時を止める能力。スウォルツが一歩、一歩と歩み寄りながらその姿を
アナザーディケイドへと変えていく。

「くっくっくっ……そちらの女もろとも消し去ってくれる」

 そして承太郎の心の臓目掛けて手刀を突き出したその時―――

『オラァァァァァァァァッ!』

 承太郎の背中から飛び出た拳闘士の像――ヴィジョン――が怒号と共に
アナザーディケイドの顔面を殴り飛ばした。

「ぐおぉっ!?」

 数mほど後退るアナザーディケイド。

「……はっ!?」

 アナザーディケイドがダメージを受けた事により、時の流れが正常に戻る。

「承太郎さん! それ、何……?」
「ももこ……『視える』のか、俺の『スタンド』が……」

「き、貴様……! 何故、俺の『時止め』が……」
「俺が時を止め返した……この『力』を使ったのは『あの野郎』をぶっ倒した時以来か……感謝するぜ……鈍っていた勘って奴を取り戻せた事に……」
「と、時を……貴様も時を操れると……!?」

 空条承太郎のスタンドの名は「スタープラチナ」。
有数のパワーと精密さを誇り、承太郎の成長と共に時間干渉能力をも習得した。
彼も吉良吉影同様、スタンドを操る者であった。

「貴様には聞きたい事がある……覚悟しな。裁くのは俺のスタンドだッ!!」

25人目

 大気を切り裂く、承太郎の一喝と共にスタープラチナが動いた。
音の壁を容易く超えた殴打。それは一直線にスウォルツ、アナザーディケイドに向けて放たれる。
これを、スウォルツは真正面から迎え撃った。スタープラチナに負けず劣らずの速度と重さを伴った後ろ回し蹴りを放つ。さも当然のように、音速を超えている一撃だった。

 耳を劈く轟音と共に、互いの一撃が衝突する。その余波で、風が周囲へ強く吹きすさび、承太郎の後方に位置する十咎ももこの髪を巻き上げた。
咄嗟に、両腕で顔面を覆うももこ。この衝撃波に流されぬよう足を踏ん張りながらも、腕の隙間から二人の戦いからは目を離すことはない。魔女との戦闘を幾度となく繰り返してきた経験によるものだった。

(なん.....っだ、これ.....何が起きてるか分かんないけど、どっちも、強いなんてもんじゃ.....!)

 その上で、更に加速を果たす戦闘にももこの心中を占めるものは驚愕。
魔法少女の力すら有していないというのに、二人の実力は並みの魔法少女では歯が立たないレベルに達していて、ももこでさえも立ち入る事は難しい。
そも、何故この二人が戦っているのか、何処から異形、スウォルツが現れたかすら知らぬ彼女はどうすべきか決めかねていて。

(承太郎さんを手助けしたいけど、立ってるだけで手一杯……)

 彼女の持つ『強さ』の尺度を、それも未知の力を以っていとも簡単に飛び越えてのけた彼ら二人の戦いでできることがあるか、と模索して、断念。
彼女の力では、スウォルツに対して手も足も出ないだろう。承太郎に手を貸すどころか、足手纏いである、と思い知らされたようで、気づかぬ内に下唇を噛みしめていた。
 
 その間に一度目の交錯を終えた二人は体勢を立て直し、再び攻防を繰り広げている。
アナザーディケイドが、拳を突き出した。マゼンタに煌めく前腕が、砲弾さながらに射出される。スタープラチナはこの拳打を身体を逸らす事で回避。
腕が伸び切り隙だらけになった腹部に、鋭い一撃を撃ち込んだ。

「く.....オォッ!」

 苦し気に呻く、スウォルツ。
そこから更に追い打ちをかけんと、「オラァ!」という威勢の良い声と共にもう片方の拳が、アナザーディケイドの顔面を殴り抜ける。

「どうした?俺を消すんじゃあなかったのか……?」

 端的に言えば。スウォルツは……追い詰められていた。

26人目

「アナザーディケイド対スタープラチナ」

「何故だ……!? 何故だ何故だ何故だ! 暁美ほむらと言い、
この空条承太郎と言う男と言い、何故こうも俺の思い通りにならない者ばかりが
次々と湧いて出る! これが『特異点』だとでも言うのか……そうなのか!?」

 アナザーディケイドの苦し紛れに繰り出したパンチがスタープラチナを殴りつける。

「ぬっ……!?」

 スタンドへのダメージは、即ち能力者自身へのダメージに繋がる。

「承太郎さん!」
「舐めるなァァァァァァァッ!!」

 攻守交代。アナザーディケイドが怒涛の攻めを繰り出し、
スタープラチナを防御に徹しさせる。

「うおおおおおおおおおッ!!」
「野郎……!!」

「俺が負けるはずが無い! 俺は最強のライダーの力を手に入れたのだ!
世界の破壊者としての力を! 俺は王になる男だ!
全ての者を平伏す資格を持つ男なのだァァァァァァァァァァッ!!」

「やれやれ……貴様のような男をようく知っているぜ。
そいつは他人の肉体を乗っ取り……言葉巧みに他人を操り……
そして最後まで他人を見下し続けた……」
「うっ……!?」

 屈強な両腕を十字に組み、守りを固めるスタープラチナ。
その奥にある眼光は些かも曇る事無く、夜の深い闇の中においても尚も瞬く
星々の輝きのようであった。

「このッ……!!」
『オラァァァァァァッ!!』

 振り上げたアナザーディケイドの右拳が届くよりも先に、
スタープラチナの鉄拳が押し返す。

「があああああッ……!? な、何ぃぃぃぃぃっ……!?」
「もはや貴様をブチのめすのに、何の躊躇いも無いぜ……」

『オォォォォォッ……オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラ……』

 アナザーディケイドの全身に隈無く打ち込まれるスタープラチナの猛攻。

『オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!』

 そして繰り出される渾身の力を込めたトドメの一撃。

「ば……馬鹿な……!! このスウォルツが……時の王者となるべき男が……!!
何故だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ……!!」

 アスファルトに顔面から激突するアナザーディケイド。そして変身も強制解除される。

「貴様の敗因は、たったひとつ。たったひとつのシンプルな答えだ。
『貴様は俺を怒らせた』。さあ、洗いざらい話してもらうぜ……」

27人目

「暗雲の中へ」

 月が、月だけが彼らを照らしていた。電灯に照明といったものから隠れるように位置する路地は建物の陰にあって、先行きが不明瞭な夜では些か心細い。
 そんな中を、ほんの少し冷たい夜風がしかし緩やかに路地を吹き抜ける。痛いくらいの沈黙が一帯を包んでいることもあって、ひゅうう、という風切り音が少女────十咎ももこの耳に強く残った。
 彼女の視線は、ただ一点。荒い息を吐きながら倒れ付した男の貌に注がれていた。まるで、何か信じられないものを見たような驚愕と恐怖に歪んでいて、ももことしても見ていて気持ちのいいものではなかったけれど。だからといって、彼女としても無視できるものではなかった。

「だんまりか……やれやれ、こいつは骨が折れそうだな」

 横から、渋みがかった承太郎の声が響いた。ももこの預かり知らぬタイミングで始まった戦闘から既に十五分。
 名前も知らない、この襲撃者は一言も発する事なく蹲り、或いは呻き、言葉ですらない発声を細々と繰り返していた。

「承太郎さん……この人が……その」

「君は今すぐにこの場から離れた方が良い」

 え、という言葉が喉から出かかって、押し込んだ。ももこの知らぬ間に起こった出来事、及びそこからの推察も含めて全部聞いている。

───くっくっくっ……そちらの女もろとも消し去ってくれる───

 承太郎の名前を知る男、それは明らかに彼を狙っての襲撃であり。あくまで襲撃の対象にはももこは含まれてはいないのではないか、という内容まで。
 つまりは、承太郎と一緒にいたことにより、この騒動にももこが巻き込まれたのかもしれない、ということ。
 つくづく、アタシってタイミングが悪いなあ、なんて。心の中で一人ごちる。

「……承太郎さんの言いたいことはわかるけどさ」

 ももこは、未だに無言を貫く襲撃者から目線を逸らし承太郎に向ける。射抜くような、冷たい視線。目を合わせるだけで、氷でできた蛭が背筋を這うような悪寒が襲った。
 けれど。それを、きっ、と見返して。

「アタシだって引く気はないよ。最初は道案内のつもりだったけどさ、流石にこんなことは普通じゃない」

 そう、普通じゃない。只事じゃない。だから、放っておけない。

「だから、アタシは────」

 ここに残る、そう言おうとして。
 真っ赤な花が夜闇に咲いた。
 轟音が、鳴り響いた。

28人目

「遙かなる時空の中で」

 ――カルデア。

 世界と世界が聖杯の力によって引き合い、重なり合ったポイントが特異点へ
変異しようとしている事を知った藤丸たちはレイシフトによってその場所へと向かう。

「ダ・ヴィンチちゃん、門矢さんはレイシフトに適応出来るのですか?」
「うん。例外中の例外だが調べてみた結果、適応可能な事が分かったよ」
「時空のオーロラが開ければ、楽なんだがな。随分と手間のかかる話だ」

 レイシフトとは人間の肉体を疑似霊子化させて異なる時間軸・位相に送り込み
これを証明する空間航法である。
カルデアのサポートが加わる事により、ある程度任意の座標へ飛ぶことが可能だ。
立香、マシュ、そして門矢士がコフィンへと入る。

「藤丸くん、現地へ到着したらこちらから応援に出せるサーヴァントは
君への負担も考慮して最大3騎までにしておく。現地では何が起きるか分からないしね。
それじゃ、気を付けて行ってくるんだよ」
「はい! 行ってきます」

 レイシフトの起動シークエンスが開始され、光に包まれた3人は時空の渦の中を
潜り抜けるようなイメージの中で意識を失った。

「ん……」

 瞼を開いた時、視界に飛び込んできた光景は見慣れぬものであった。
遠くに見える町には中世を思わせる石造りの建物が並び、
明らかに現代のものではない。

「ここが、特異点……オルレアンやセプテムのような風景にも見えるけど……」
「明らかに異世界が引き寄せられて混ざったような感じだな」
「どうやら私たちはレイシフトに成功したようです」

『こちらダ・ヴィンチ。聞こえるかい?』

 通信機越しにダ・ヴィンチの声が聞こえてくる。

「はい、聞こえています」

『よし。まずは周囲を探索しよう』
「了解しました」

 3人が歩き出したその時だった。

「グルルルル……!」

 狼の獣人リカント、ハゲワシの上半身と蛇の下半身を併せ持つキメラ、
ローブに素顔を包んだ魔道士……魔物の群れが現れたのだ。

「敵性体、出現!」

 マシュは一瞬で甲冑を纏うと大型のラウンドシールドを握りしめ、
立香を護衛する。

「やれやれ、どう見ても話し合いが通じるような相手じゃないみたいだな」

 士もディケイドライバーを取り出し、腰に当てると自動でベルトが伸び装着される。

「変身」

【KAMEN RIDE DECADE】

29人目

「地獄とは神の不在なり」

 それは、唐突に起こった。前触れ、前兆、或いは虫の知らせ、そう言ったものを感じさせない、鮮やかな手際と言う他無い。
 何時の間にか、後手に回ってしまっている。それを、空条承太郎は即座に理解した。
 後方、数百メートル。今の今まで、それこそ、スウォルツに襲撃されるまでに辿った道のりを、思わずももこは振り向いて。

「く、くくく、はは、はははは──────」

 蒼白となる彼女の表情とは裏腹に、面白くて堪らないとばかりに笑い声を上げるのは、スウォルツ。頽れた数瞬前の態度とは似ても似つかぬ程の笑みを浮かべて笑っている。

「万々歳が……燃えてる……?」

「貴様、何を──────!」

 承太郎が、堅い表情、しかしその額に幾重もの青筋を浮かび上がらせてスウォルツに詰め寄ろうと、一歩を踏み出した。
 しかし、それは叶わない。そして、”今はそれどころではない”!
 
 獣のような、がなり声を彷彿とさせる雄叫びと共に、悲鳴が散る。絶叫が降り注ぐ。

『光の時、是迄! 疑似神核、並列接続! 暗黒太陽、臨界!ンンンンン!絶景!』

 周囲で、爆発音も鳴り始めた。承太郎も、ももこも、スウォルツすらもがこの状況を理解していなかった。
 火の手に包まれる街、そして、ああ、あれは。

「なに、あれ」

 ≪鬼≫が。街を闊歩する。

「こいつは……!」

 ≪黒き暗黒の太陽≫が、天より俯瞰し。

「はは、はははは、ははははははははははははは──────!」

 ≪安倍晴明≫が、その更に上から見下ろしている。

『狂乱怒濤・悪霊左府!!!』

 誰もが、上を見上げていた。
 戦闘、無理だ、無駄だ。格が違う。
 逃走、不可能。そもそも逃げ場がない。
 生存、絶望的。一切の望みを棄てて平伏せよ。
 
 動けなかった。承太郎も、ももこも、スウォルツも。
 黒き獣に身を転じる人々、至る所に蔓延る悪鬼、そして、安倍晴明。
 
 さあ死ね。死んでしまえ死に晒せ死に絶えろ。貴様らの末路は死あるのみ──────








 「ゲッタアアアアアアアッ! トマホォォォォォォォォォォォォォォォゥクッ!!」

 





 ──────声が。
 それは雄叫びだった。獣のがなり声を彷彿とさせる、その者こそは──────!

30人目

「epilogue」

「ゲ、ゲッター!? 何故、何故奴がこの世界に……!!」
「そいつはこっちの台詞だぜ、晴明! やっと知った顔に出会したかと思えば、
よりにもよっててめえとはな! 
くたばりぞこなったか!」

 流竜馬と安倍晴明。異世界にて、互いの運命が再び交錯する。

「ンンンンン、これはまた何とも奇遇でござりますな」

 晴明を黄泉路より呼び戻した外法の者、蘆屋道満は
拮抗する両者の間に割って入りつつ言った。

「何だ、あのイカれた野郎は。宙に浮いてやがる……」
「成る程、成る程。
音に聞きし、其れなるがゲッターロボ。拙僧の術も及ばぬ異界の鬼神なれば、
然もありなんといったところですかな」
「何をゴチャゴチャ言ってやがる! てめえは何モンなんだ?!」

「おぉ、そうであった。失敬失敬。
拙僧は晴明殿の無念を晴らしたく思い、
こうして彼岸より馳せ参じた次第にござりまする。
されば、その怨敵たる貴公もまた、この場にて誅戮させて頂きましょうかな?」
「ハッ! 俺を始末しようたぁいい度胸じゃねえか。やってみろよ!」

「では遠慮なく……!」
『オラァァァッ!!』

 術式を組もうとする道満だったが、突如として出現した承太郎の
スタープラチナによって阻まれてしまう。

「うむぅっ!!?」
「いきなり現れて、勝手に話を進めてるんじゃあねえぜ……!」

「これはこれは。まさかこの世界で最強のスタンド使いと出くわすとは……!
これもまた一興。空条承太郎殿とお見受けいたす。いざ尋常に勝負!!」
「やれやれ。貴様もさっきの奴と同じ口か」

「何なんだよ、これ……! 何なんだよおッ!!」

 ももこは魔法少女に変身し、
燃え盛る神浜の街を闊歩する鬼たちを蹴散らしていた。
だがいくら倒してもキリがない。次から次へと湧いてくる。
そればかりか、街のあちこちで火災まで起きていた。

(どうすればいいんだ……アタシひとりの力だけじゃ限界がある)
「ももこさん!」

 光の矢が飛んできた方向を見ると、そこにはいろはの姿があった。

「いろはちゃん! 無事だったのか! 良かった……!」
「はい。私は何とか」
「でも街の方は酷い有様だ」

「やちよさん達も手分けして戦っています。まずはこの状況を何とかしましょう!」

神浜市、炎上。
世はまさに、地獄変ーー