推しは幸せにならないとダメなんです!

11 いいね
1000文字以下 30人リレー
3か月前 592回閲覧
  • ハッピーエンド
  • ファンタジー
  • 登場人物が死ぬの無し
  • 性的描写無し
  • 自由に続きを書いて
  • 楽しんだもの勝ち
1人目

私の推しは何かと闇を抱えていたり過去に辛い経験をしている人が多い。

2次元の推しの話。

私にはたくさんの推しがいる。推しは多いだけ心が潤う。癒される。生きる糧である。

そんな推しには幸せに生きて欲しい。なんなら私が幸せにしたいとさえ思う。なぜなら私が推してるキャラクターは過去に辛い経験をしている人ばかりだから。

2人目

それから私は小説の書き方を勉強した。漫画でも良かったけれど私は壊滅的に絵が下手くそだったのだ。ならば画力が関係ない文章で推しを幸せにしてやると意気込んでいた。

「意外と小説って難しいのね……。でも私は推しを幸せにする為に頑張る。」
そして私はおもうのだ。別に趣味で書くのだからルールとか無視しても構わないのではと。
今はライトノベルのように形式にとらわれず好き勝手に書かれている小説だってあるのだ。なら私だって好き勝手に書いてもいいだろう。

3人目

と、思っていたのだが。
「おかしい……」
私は完成した作品を前にして震えていた。歓喜ではない。猜疑である。
「なんで……」
だんっと拳をテーブルに打ち付ける。テーブルの上のカップが揺れ、コーヒーがこぼれかけた。
「なんで、死ぬの!!」
そう、あろうことか、二次創作内でも推しはひどい目にあってしまったのである。しかも公式よりはるかにむごい。
私は困惑していた。
ただ……シナリオや時系列がおかしくならないように辻褄を合わせていただけだった。多少暗い展開になっても、あとで軌道修正できるだろうと思ってそのままにしておいた。
そうしたら推しが死んだ。
私は今日を第二の命日だと思った。第一は勿論公式で推しがいなくなった日である。あろうことか自らの手で推しを殺してしまうとはいかがなものか。今すぐ死んでしまいたい。
「お姉ちゃーん、ご飯だよー」
階下から無邪気な弟の声が聞こえる。あ、そうか、私はまだ生きているのか。
そんな支離滅裂な思考に襲われるほど、私はショックを受けている。
「はぁい……」
尻すぼみな返事を返し、私はノロノロと部屋を出ていった。
だから、気がつけなかったのだ。とても小さく、しかし怪しげな気配が、私の作品の上で笑っていたことに───。

4人目

 夕食後、部屋に戻った時、"それ"は現れた。
「どうせこういう結末になるってのに、何を足掻いてるんだろうねぇ」
「……え?」
 原稿用紙からおぞましい影が現れた。フリー◯様の声で語りかけるそれは、正直いろんな意味で怖い。
「ぎゃあ! 怪異! ポマード! ポマード! ポマード!!!」
「俺は口裂け女じゃないから効かないよ」
 そりゃそうか。じゃなくて!
「あんた何者!? てか、推しが不幸になってるのあんたのせい!? 色々理解が追っ付かないけど」
 不審な影と会話してると、弟が入ってきた。
「お姉ちゃんさっきからうるさい。誰と会話してんの?」
「え? あんた、見えてないの?」
「……お姉ちゃん、疲れてるの?」
 え? これ私以外見えてないやつ……? 振り返る。
「……あー、うん。ごめん。でも、ノックしてね?」
「いやでもお姉ちゃんが」
「わかった、わかったから」
 とりあえず、弟をさっさと部屋から追い出す。
「邪魔者はいなくなったようだな。それじゃ、本題に入るとしよう」
 そして、影が仰々しく語りだした。

5人目

 「物語にはいりこんで、『推しの未来を変える』ことができると言ったら、君はどうする?」

 「推しの未来?」

 「そうさ、君が推してるキャラの未来。それを君自身で変えられるのなら、面白いと思わないかい?」

 「……それは嬉しいけど、二次創作で間に合ってるっていうか。やりすぎると、原作から離れすぎちゃうし、でも推しが死ぬラストには納得できないし、かといって出来事なくしちゃうとストーリー無視することになるし、でも」

 「ああもう、ごちゃごちゃうるさーい!推しの未来を変えたいの変えたくないのどっちなの?」

 その時ちょうど、月明かりが部屋の窓から差し込み、机の上に置いてある原稿用紙を照らしだした。現れたのは世にも可愛い……

6人目

 赤のメッシュを入れた女性だった。ちなみに影は押しのけられて黙りこくっている。もっとも、先ほどのように急に現れて言いたい放題してるあたり、顔立ちはよくとも性格はそうでないらしい。ラ◯・メイカー? 冗談じゃない。
「いや急に現れてヒステリック起こさないでよ! そんなごちゃごちゃしてたかなぁ私!?」
「してたでしょって! 推しの生き死に決めるのになんですぐYESって言えないかなぁ!?」
「一次創作を尊重するのはファンの努めでしょ!? 原作あっての創作なんだし!」
「改変してでも救わないといけない命があるんだよ!!」
「意味わかんないわよ!」
「あのー……俺の話は?」
 そういえばいたな、CV.◯リーザ様。CV.タ◯ニャが出張ってきて蚊帳の外だった。
「「ちょっと黙ってて!!」」
 ガチャリと扉が開き、物凄い剣幕の母親が現れる。
「うるさい美春! 誰と喋ってんの! 近所迷惑!」
 そして嵐のように去っていく。母親にまで叱られた。あの野郎(弟)チクりやがったな。自業自得だけど。まぁ、ちょっと落ち着いた。
「で、赤メッシュのあんたは何者?」
「ボク? 『吾妻と翔』原作者。傀儡原まゆみです」
「ウソォ!?」
 なんで原作者様が?!
「訳あって姿を消してるんだ。ほら、さっきも君のお母さんから視認されてなかったろ? インビジブルっていうんだけどね。認識阻害。これがないとボクは今頃警察のご厄介になってるさ」
「しかも異能力者……?」
 原作者先生、それであのBL本を……いやなんで? 普通に能力活かした方が良くない? 探偵とか。
「まぁ、ボクがここに現れたのは、ここにいるフ◯ーザ様ボイスが関係してるんだよね」
 影はやれやれと肩を竦めて、
「……無駄無駄。結末を変えようったってどうにも」
「なるわぁ!」
 傀儡原先生は影を飛び膝蹴りでノックアウト。影はそのままいずこへと消えていった。
「……とは言え、たしかに、こいつを倒したところでまだまだ終わりじゃないんだよ。わかるでしょ? 翔のキャラ」
「……そりゃあ、はい」
「「超闇深キャラなんだよね……」」
 ……ところでさっき、引っかかることをこの原作者先生は言った。
「……救わないといけない命って言ってましたよね? それって一体?」
 傀儡原先生は思い出して、気まずそうに逡巡した。
「……あぁーそうだね。まずはその話からしようか」