春・夏・秋・冬・花・鳥・風・月
――心愛ちゃん怖い…そうやって私の心読んで、なんでも知ったような顔して。気持ち悪い――
――あのときも、あのときも全部知ってたんだね。知ってて…最低――
――海美ちゃんかわいそう。心愛ちゃんひどい――
あのときから私はこの力を人に言わないことに決めた。人は自分と違う人を嫌う。この力なんていらなかった。
ざわざわざわざわ。頭が痛くなるほどの騒音。今日は私立鳳凰《ほうおう》学園高等部の入学式。中学校に行ってなかった私は単位さえあれば登校しなくても卒業できる鳳凰を選んだ。必死の勉強で見事合格しここに通うことになった。ここの冬制服は、白いワイシャツに、グレーに近いくすんだ青のブレザーか、同色のセーター、同色のチェックのスカート、それに今年の一年は紫の上履きと細いリボンという全体的に灰青色で構成されている。私はセーターを選んだ。すこしセーターを選んだ人が多いかな?セーターは袖がふわっとなっていてかわいい。私のクラスはえーとB組か。
「ねー。ねーってば!」
教室へと向かう廊下を歩いてるとき、肩を叩かれる感触と共に香る花の匂いに顔をあげるとそこには身長170センチ位のダークブラウン色の髪の男の子。その男子が私を見下ろして声をかけてきていた。
「えっと…私ですか?」
「そう君、名前なんて言うの?あ、オレは夏鳥太陽《なつどりひなた》!1年B組だよー」
〔この子みたことある。名前知りたい。あ、自己紹介しないとか〕
「…夏鳥くん?えっと私は春花心愛《はるばなここあ》です。私もB組」
〔心愛…?きいたこともあるなあ〕
「オレと一緒だ!緒に教室いこー!」
嵐のような彼は珍しく心と言葉が一致する人間だった。私には人の心の声が聞こえる。いつからか、人は本心で話していないことに気がついた。普通の人間の心には少しは悪意が混じっている。表面上は仲良くしているのに心ではうざいと思っていることなど日常茶飯事。だから、人と関わるとこなんて中学でやめたのに。夏鳥太陽くんか。珍しく学校が楽しみになりそうだ。