ボクは「遺伝子組み換え人間」

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1人目

「大成功だ!」

Dr.田中は手を叩いて喜んだ。

ときは西暦2030年。
海沿いの小さな村のはずれに、その研究所はあった。
研究所はさびれていて、廃墟同然の建物だったため、村人たちは誰も近寄ることはなかった。

「遺伝子組み換え人間の誕生である。この研究が世に出れば、私は世界を支配できるであろう。ヒャーヒャッヒャッ!」

ピカッ ゴロゴロ

Dr.田中の高笑いとともに、稲妻が光り、雷が落ちた。

「さぁ!我が息子よ、目覚めよ。いま10年の眠りから目覚めよ。」




そうして、ボクは10年ぶりに眠りから目を覚ました。

2人目

博士は次の日の夜、捕まった。法律に違反するとされ、博士の論文は警察に取り上げられた。ボクはそーっと身を隠し、警察から逃げ続けた。

ボクの遺伝子にはいろんな遺伝子が組み込まれているらしい。老化と若返りを繰り返し、病気にならないようにしたと、あの日、博士は言った。10年前にボクは死んだが、博士は、死んだボクを遺伝子操作により命を甦らせることに成功したようだ。

ボクはいま普通の人間として生きようとしている。ボクの遺伝子組み換えが行われたということは、いまや誰も知らない。

「ボクは誰なの?」
頭の中はそればかり…
同じような毎日を飽きもせず、考え、暮らしていた。

ある日、ボクに話しかける人がいた。

3人目

「命を10万円で売らないか?」
「お前の命を10万円で買ってやる。まぁ、そういうキャンペーン中なんだ」
黒づくめの男はそう言った。

「命を売ったら、ボクはどうなるんだい?」
ボクがたずねると、黒づくめの男はこう答えた。

「なーに、死ぬだけさ。」

ボクはそういえば昔死んでいたんだったとふと思い出した。

「ボクが死ぬ目的は?」
いろんな疑問が頭に浮かんだが、ひとまずひとつだけ聞いてみた。

「死んだ誰かを甦らせるための命になる」

その途端、ボクは誰かがボクの頭の中でつんざくような叫び声をあげたのを聞いた。
ボクの中の誰かが苦しんでるんだ、助けてあげなくちゃとボクは考えた。

「ボクは命を売らない」と黒づくめの男にそう言った。
「つまんね〜ガキ」と言って黒づくめの男は去っていった。

その日から、ボクとボクの中の誰かの会話がはじまった。