プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:3「神浜市動乱」
「Prologue」
CROSS HEROES。
時空を超えて交錯する戦士たちの戦いを記憶している者は少ない。
地球と宇宙。未来と過去の世界。剣と魔法の世界。
ついには生と死をも超越した者たちの果てしなき戦いはいつしか終局を迎え、
戦士たちはそれぞれの在るべき世界へと帰っていった。
そして、現在。物語は再び動き始める。新たなる戦場を舞台として……
滅びの現象と共に暗躍する組織。その名は歴史の管理者、クォーツァー。
彼らは時空を渡り歩き、「特異点」とされる存在の排除を企んでいた。
暁美ほむらの力を借り、復活を果たした仮面ライダーディケイド/門矢士。
宇宙から降り注ぐ未知のエネルギー・ゲッター線の申し子、流竜馬。
竜馬率いるゲッターチームに倒された悪の陰陽師、安倍晴明。
その魂を現世へと蘇らせたキャスター・リンボこと、蘆屋道満。
彼が復讐を企てるは、魔術王ソロモンの人理焼却の企みを阻止した人理保障機関
「フィニス・カルデア」。
並行世界のオーバーテクノロジーにアクセス出来る能力者「ウィスパード」を狙う
犯罪組織、アマルガムに対抗する特殊部隊「ミスリル」など……
相反する者たちが世界の壁を超えて続々と集結し始める。
ミスリルを統率するテレサ・テスタロッサ大佐は、
特異点である常磐ソウゴ、アレク、ローラ姫、日向月美を保護し、
アマルガムと結託しているクォーツァーに対抗すべく、一致団結する事を提案した。
別行動にてクォーツァーの行方を追い、時空のオーロラを飛び越えた門矢士は
カルデアの面々と協力し、聖杯の力によって異世界同士が引き寄せ合う事で発生した
特異点修復へと向かう。
殺人鬼・吉良吉影を追っていたスタンド使い・空条承太郎は
吉良吉影の行方を追い、神浜市を発とうとしていたが
そこにクォーツァーに与する男、タイムジャッカー・スウォルツが現れ、戦闘となる。
アナザーディケイドと承太郎のスタンド「スタープラチナ」の一騎打ち。
戦いは承太郎の有利に傾くかと思われたが、蘆屋道満と安倍晴明の乱入、
さらには竜馬のゲッターロボが現れ、神浜の街は道満が召喚した鬼たちが溢れ返り
この世の地獄と化した。
街を守るため、各地で奮闘する環いろはを始めとした魔法少女たち……
ますます激しさを増していく戦い。
その果てに待ち受けているものとは、果たして……?
「天より来るもの」
神浜市上空、火の手の届かぬ天上にて。
大口を開け、喜悦を滲ませ笑みを零す男が一人。
のたうつ蛇の如く、地表を赤く染め上げる業火。大気を震わせ引き裂くように轟き渡る、悲鳴絶叫、或いは神や仏に救いを求める懇願。
地獄、ここに極まれり。地に這いつくばる人間にお似合いの世界。
遥か下から引き伸ばすように立ち昇る炎も、天高くまでは届かない。人間共の求める救済も、この天にまします神は差し伸べることもない。
神が居るべき天と、人間(ゴミ)共が這うべき地上には、絶対的な断絶があった。
ただ、嗤うだけだ。
彼らが如何に頭を垂れ祈ろうが、それを良い娯楽であると、良い演奏であると、届くでもない喝采と共に愉悦を深めるだけ。
所詮お前ら人間は、神にも等しい己を楽しませる悲鳴の楽器でしかない、と。
「──────フ、フフフ、フフフッ!連中も面白れェ事を考えやがるじゃねェか、えぇ?」
上空に無限と広がる、広大な空間。建造物も自然も、見渡す限りの黒色が占める夜空を裂くように、『ドンキホーテ・ドフラミンゴ』は滑空していた。
「なァ、キャスター・リンボ……!てめェの絵図はハナからこれか!『特異点』を皆殺しにする為に都市を丸焼きにするたァ、奴も相当なイカレっぷりだなこりゃ……フッフッフッフッ!!」
地獄絵図となった街を、やはりよく出来た劇を見るものと同じような感情を込めたそれは、関心である。
まさか、此処までの執念が秘められていたのか、と。
「こうなると『特異点』とやらにも俄然興味が湧いて来るってもんだ……!此処まで非道ェ事をしでかす程の連中か?あんな青臭ェガキ共が?」
ドフラミンゴは、一貫して笑みを崩さない。楽しくて仕方ない、という内心がこれでもかと見え透いている、露悪的な笑みだった。
「まァいい……狼煙は上がった。漸く、おれが動くことになった訳だ」
ここで、掌を上向きにする。視線も、上空へと移動させ──────
糸が。天を二分するかのように一本の白線が、伸びていく。それが、ドフラミンゴの更に上へと登っていく。それはまるで、空を舞う天竜のように。
「”鳥カゴ”」
何十にも別れた糸が、地上へと堕ちていく。そうして出来上がる、円状のドーム。
ここに、神浜市は隔離された。
もう、地獄からは逃げることすら許されない。
「魔王と海賊王、水底で相対す」
キャスター・リンボの呪術結界、そして新たに出現した男、
ドンキホーテ・ドフラミンゴの力によって
神浜市はさながら陸の孤島と化してしまった。一方…
――クジゴジ堂。
「いやあ、前より立派になったかもなぁ」
アマルガムの傭兵部隊の襲撃によって倒壊したクジゴジ堂であったが、
ミスリルの支援によって建物は修繕され、すっかり元通りになっていた。
「ソウゴ君、お友達と一緒にしばらく出かけてくるって言ってたけど
大丈夫かねぇ……」
未だ蚊帳の外である常盤順一郎は、これからソウゴ達が挑む運命など知る由も無かった。
――強襲揚陸潜水艦「トゥアハー・デ・ダナン」。
ミスリルが拠点とする潜水艦へと招待されたソウゴ、月美、アレク、ローラ姫。
皆、世界は異なれどこれほどの大型潜水艦に乗り込んだのは生まれて初めての事。
一様に驚きの声を上げる。
「海の中を行く艦……か。このような技術があるのだな……」
「見てくださいまし、アレク様。海の中が見えますよ。お魚が群れを成して泳いでいます」
「……」
物珍しがるアレクとローラとは対象的に、月美は浮かない表情をしていた。
「どうしたの、月美ちゃん? 船酔い?」
ソウゴが声をかけると月美は小さく首を横に振り、
「少し……寒気が」
退魔師の家系である月美には感じるのだろう、殆どの人間には知覚出来ていない
遠く離れた神浜で起きている「怪異」を……
「皆さんお揃いのようですね」
そこへ、テレサ・テスタロッサ大佐が一同の前に現れる。
(か、かわいい……俺とそんなに年も違わなそうなのに、この子が
ミスリルの一番偉い人なんだ)
「おい、ソウゴ。何をだらしない表情をしてるんだ」
呆けたソウゴの胸板をゲイツが肘で小突いた。
「い、いや、ちょっと驚いちゃってさ……」
「おっ、こいつらが新しい仲間か?」
「そうですよ、ルフィさん。仲良くしてあげてくださいね」
「よう、俺の名はモンキー・D・ルフィ。海賊王になる男だ!!」
出会い頭に突拍子も無い自己紹介を始める麦わら帽子の少年。
彼もまた、特異点。
「海賊王? 凄いね! 俺は最高最善の魔王を目指してるんだ!」
「魔王!? 何だそれ、カッコいいな!」
大きな夢を抱く者同士、出会って早々にソウゴとルフィは意気投合していた。
「世界の壁」
「そういえば、この潜水艦は今どこへ向かってるんだ?」
「神浜市です」
「神浜市?」
「はい……実は先程、神浜市で鬼と思わしき化け物の大群が出現したと報告がありまして……」
「なるほどな、それでその鬼を対処するために俺たちが向かってるってことか」
「はい……と言っても今回の目的はそれだけではありません」
「というと?」
「それは……」
すると
「艦長!大変です!」
「どうしなさいました?」
「こ、これを…!」
「っ!?」
モニターに映し出された映像……そこに写ってたのは、まるで鳥カゴのような円状のドームに包まれた神浜市の姿であった。
「こ、これはいったい…!?」
「わかりません……ですが、あれが出現した途端、神浜市との通信が途絶えました……」
「ん?……あぁー!?これ、あん時のやつじゃねえか!?」
「え!?ルフィあれを知ってるの!?」
「あ、あぁ……」
ルフィいろいろ説明中
「……ドフラミンゴ……なんかヤバそうな気がする……」
「あぁ、実際やべえヤツだぞアイツ……」
「しかし、これは相当まずいことになったな……」
「はい……ルフィさんの話のとおりなら、あの鳥カゴは時間が経つごとにどんどんと縮んでいき、最終的に中にいる人達は全員死んでしまう……」
「おまけとばかりに今回はあの中にさっき言ってた鬼とやらがうじゃうじゃといる……
……で、どうする?」
「……少なくとも、まずはあの鳥カゴをなんとかしないといけないわね。あれがある限り、神浜市に干渉することができず、中にいる人達を助けることも、鬼共を殺すこともできないからね」
「となるとまずはあの鳥カゴを無理矢理にでも壊すか、そのドフラミンゴとやらを倒して鳥カゴを解除させないといけないが……」
「……そのドフラミンゴが今どこにいるのか、手がかりが全くないからな……」
「となると、やっぱり直接壊すしかないってこと?」
「ですが、それだけ硬いと私達全員の力を合わせても壊せるかどうか……」
「……進路を変更、熱海へ向かいます」
「アイ・マム、進路を熱海へ変更します」
「熱海?」
「はい、あそこには私達と協力関係にある人達が居ます。
彼らの……光子力研究所の皆さんが所持してるスーパーロボット……『マジンガーZ』と、皆さんの力を合わせれば、あの鳥カゴを破壊できるかもしれません…!」
「炎上汚染都市・神浜」
「はああああああッ!」
七海やちよの三又槍が鬼の胴体を刺し穿つ。
「グァァァァッ……」
呻き声と共に鬼の身体は霧散し、道満の式神と化す。
やがて黒い炎に包まれて灰となった。
「一体何なの、こいつらは……それに、この空……」
光の届かぬ、暗黒に閉ざされた空を忌々しく見上げるやちよ。
みかづき荘の住人たちは皆、宇宙生物インキュベーターと契約を交わした
魔法少女であった。
「まるで魔女の結界の中にでもいるようなこの瘴気の濃さ……
神浜市全体を丸ごと包み込んでいるとでも言うの……!?」
「グオオオオッ!!」
巨大な金棒を振り下ろす鬼の攻撃を鉄壁の盾で防ぐ魔法少女。
二葉さな。彼女もまた、チームみかづき荘の一員だ。
「ひゃああああっ……!!」
甲高い音を立ててぶつかり合うも、さなの盾は鬼の攻撃を防ぎきった。
「よっしゃ! よくやったぞ、さな!!」
さなの盾を踏み台にして、鬼の頭上高くまで飛翔するのはフェリシア。
背中を反り上げて巨大ハンマーを振りかざす。
「オレのハンマーの方がでっかくて痛ってえぞ!!
どっかーーーーーーーーーーんッ!!」
鬼の脳天目掛けてフェリシアのハンマーが炸裂。
やちよが倒した個体と同様、戦闘不能になったと同時に鬼は式神の姿となり、
勢い余ったフェリシアのハンマーがアスファルトを砕き割った。
「まったく、何なんだ、こいつら! 次から次から湧いて出てきやがって!」
「いろはさんややちよさんと合流した方がいいかも知れません……!」
「だな、そうすっか! スマホで連絡も取れねーしな!」
神浜には実に数多くの魔法少女たちがその素性を隠して暮らしている。
街の各地に大量発生した鬼たちを迎撃すべく、それぞれが各個撃破に当たっていた。
しかし、呪術結界の影響からか電波も届かず、孤立無援の状態に陥っている。
「チッ……ゲッターの動きが鈍くなって来やがった……!!」
宇宙から降り注ぐゲッター線を機体内部のゲッター炉で増幅して動力とする
ゲッターロボもまた例外ではなく、遮断された結界の中では徒にエネルギーを
浪費していく。
「どうした、流竜馬!? あの時のような勢いが感じられんがァ!?!?」
「野郎……晴明!!」
劣勢を強いられる戦士たち……
トゥアハー・デ・ダナンの面々は間に合うか?
「鉄の城」
一方その頃
「ギャー!化け物だー!」
「変な石像が暴れてるぞ!?」
熱海では複数体のタロス像が暴れていた。
「怯むな!我々練馬レッドドラゴンの力を見せるのだ!」
自衛隊がASを使って抵抗しているが
「駄目です!攻撃が全然効きません!?」
「そんな馬鹿な!?」
全然歯が立たず押されていた。
「クッ…ここまでか…」
すると
「ロケットパーンチ!」
突如として腕のようなモノが飛んできてタロス像のうちの一体を破壊する。
「っ!今の攻撃は…まさか!?」
そうそこに現れたのは、空にそびえる鉄の城
マジンガーZである!
「タロス像か……まさかDr.ヘルが復活したのか?」
タロス像はマジンガーZに襲いかかる。
「この!」
マジンガーZはタロス像を掴み持ち上げて別のタロス像に向かってぶん投げてぶつける。
「ルストハリケーン!」
次にマジンガーZの口の部分から酸の風を放ち、ぶつけあった2体のタロス像をボロボロに錆びさせる。
「燃えつきろ!ブレストファイヤー!」
最後に胸の放射版から熱線を放ち、残りのタロス像を撃墜する。
「よし、これで全部だな。
……ん?弓教授からの通信?」
『甲児君、熱海に出現したタロス像の撃墜ご苦労だった。急で悪いのだが先程ミスリルのテッサ大佐から緊急の連絡があった』
「ミスリルから?」
『うむ、どうやら君とマジンガーZの力が必要らしい。現在トゥアハー・デ・ダナンがそちらに向かってる、すぐに合流してくれ』
「わかりました、すぐに行きます!」
トゥアハー・デ・ダナンとの合流に向かった兜甲児とマジンガーZ
そしてその様子を陰ながら見ていた者が一人。
「……やはりタロス像ではやつを倒すのには力不足だったか……」
彼もとい彼女の名はあしゅら男爵。Dr.ヘルの部下のうちの一人で、身体の右側は男性のトリスタンで左側は女性のイゾルデ、ミケーネの夫婦の身体をDr.ヘルが一つにした半男半女の人物。
Dr.ヘルがマジンガーZとミスリルに敗れたあと、行方不明になってたのだが……
「だが、やつが他のところへ行ったのは丁度いい……今のうちに儀式の準備を終わらせるとしよう……ミケーネの神々の復活の儀式のな!フハハハ!」
「結成、CROSS HEROES」
ルフィは海賊王ゴールド・ロジャーが遺した「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を
巡る大海賊時代の世界からやって来たと言う。
仲間と共に大海原を駆け巡る冒険の最中に離れ離れとなり
この世界へと飛ばされてしまった。
神浜を支配しているドフラミンゴもまた、ルフィと世界を同じくする者同士。
「そっか、仲間が……」
「まあ大丈夫だ。きっとあいつらも無事でいるさ。俺はそう信じてる。
テッサも良い奴だしな。それに今はお前らが一緒だ」
「逢えるといいね、ルフィの仲間に」
「ししししっ、おう!」
屈託の無い笑顔でルフィは笑った。
その顔を見てソウゴも釣られて微笑むのだった。
「艦長、マジンガーZが本艦へ接近中です」
「分かりました。マデューカスさん、マジンガーZをこちらへ誘導して下さい」
「アイ・アイ・マム。マジンガーZ、本艦へ接舷します」
『おおーい!』
艦内アナウンスが流れると同時、スピーカー越しでも分かるほど元気な声が響く。
その直後、船体が大きく揺れた。
どうやら、マジンガーZが勢いよく接舷したようだ。
「ご苦労様です、甲児さん」
「出迎えありがとうございます」
パイロットスーツを着た少年――兜甲児が姿を現す。
彼はマジンガーZのパイロットであり、地球を守るためにDr.ヘルの機械獣軍団と
戦い続けた正義感の強い男である。
「――あれ? 知らない顔がまた随分と増えているんだな」
甲児はブリッジを見渡しながら言った。
だが、そんな彼に対し、ソウゴは臆することなく握手を求めるように右手を差し出す。
「ああ、こりゃどうも」
「早速ですが、甲児さん。あなたとマジンガーZの力を是非とも貸して欲しいんです」
テッサの言葉に、ブリッジにいる全員が耳を傾けていた。
神浜で起きた異変を解決するにはマジンガーZの力が必要だと判断したからだ。
「そう言う事なら、喜んで協力しますよ!」
甲児は快く了承してくれた。
「ではこれより、この部隊名を「CROSS HEROES」と命名いたします」
「クロスヒーローズ……それは?」
「私の頭の中に幾度となく響いて来ていた名前です。それがいつ、何処で
名付けられたのかは分かりません。ですが、この短期間に特異点と目される人たちが
一同に集まった。私はその事に運命を感じています」
「激闘の予感」
「クロスヒーローズですか……いい名前だと思います!」
「俺もそう思う。
ヒーローって、なんかかっこいいし!」
「ヒーローか……うーん……」
「どうしたのルフィ?」
「いや……いい名前だと思うんだけどよ……俺海賊だかんなぁ……」
「あー……海賊がヒーローをやっていいかってこと?」
「それもあるけどよ……俺ヒーローは好きだけど、なるのは嫌なんだよな……」
「え?どうして?」
「ほらよ、肉があったとして、俺みたいな海賊はその肉で宴するけど、ヒーローはその肉を人にわけ与えるんだろ?俺は肉を食いてんだ!」
「いや、なにその基準……」
「……では、今回の神浜市での異変を解決したあとに皆でパーティーでもしませんか?もちろんごちそうも出しますよ」
「マジで?わかった!」
「いや即答!?」
一方その頃
クォーツァーの王とアマルガムのミスタ・Ag(シルバー)が鳥カゴに包み込まれた神浜市を見ながら話をしていた
『どうやらあの檻のようなものは時間が経つごとにの徐々に縮んでいくようだ……このまま放置すれば中にいる者は全員圧死……いや、その前に中にいる鬼どもに食われて全滅するか……』
「だがこれは丁度いい……スウォルツはアナザーディケイドの能力で脱出することが可能だが他のやつらは脱出する方法はない……このままいけば邪魔なイレギュラー……いや、特異点どもをある程度始末することができる…!」
『……だけど、そう上手くいかないようだ』
「なに…?」
『……どうやら、ミスリルが他の特異点達を連れて神浜市に向かってるようだ……恐らくはあの檻を破壊するつもりだろう』
「なんだと…!?クッ……このままでは神浜市にいる特異点どもがミスリルによって救出されてそのまま合流してしまう可能性がある……それだけはなんとしても阻止しなければならん…!」
『そのとおりだ、僕たちアマルガムはガウルンやゲイツなどを向かわせるつもりだ。
……ミスリルにいるはずのウィスパード……千鳥かなめも確保しておきたいからね』
「なるほど……ならこちらもジョウゲンとカゲン、そしてカッシーンの軍勢と量産型タイムマジーンを送るとしよう……こちら側の計画は既に準備を終わらせているのでな」
『わかった……ではまた後で』
「あぁ……我々の目的、醜い歴史と世界を作り変えるという目的の邪魔になる存在は……徹底的に排除する…!」
「Break the walls」
神浜市へとやって来たCROSS HEROESのメンバーたち。
「なるほど、こいつは確かに厄介そうだな……」
街全体がドフラミンゴの鳥カゴに覆われていた。
「それだけじゃない……トゥアハー・デ・ダナンで感じた悪寒は
これが原因だったのね……」
月美が感じ取っていたものの正体が、これだ。
ドフラミンゴの鳥カゴと道満の呪術結界。
それが二重構造となって神浜市の外敵を完全に遮断していた。
「鳥カゴを物理的に破壊し、さらにこの呪術結界を霊的な力で
打ち破るしかないでしょう……」
「出来る? 月美ちゃん」
ソウゴの言葉に、月美は静かにうなずいた。
月美の霊力ならばできるかもしれないとソウゴ達は思っていた。
まずはドフラミンゴの鳥カゴをどうにかしなければならない。
「それなら俺とマジンガーZに任せな! その後はあんたらの仕事だぜ!!」
甲児はマジンガーZに乗り込み、光子力エネルギーをチャージし始めた。
「行くぞ、マジンガーZ!
光子力……! ビィイイイイイイイイムッ!!」
マジンガーの両目から放たれた必殺光線がドフラミンゴの鳥カゴに直撃した。
その瞬間、鳥カゴにヒビが入り始めたのだ。
「よし、いいぞ ……!」
「月美ちゃん、頼んだ!」
「はい!」
その隙に、月美が印を結び、真言を唱える。
「ナウマクサンマンダバザラダンカン、オンキリウンキャクウンハッタ……」
日向家に伝わる、あらゆる魔を打ち祓う退魔術。
その奥義、父・月光が極めし時空を超える扉を開く術式を発動させた。
(お父さん、私に力を貸して!!)
月美の脳裏に、父の姿が浮かぶ。
己の生命を懸け、世界を救う使命を月美に託した父親の姿。
その姿が、月美に力をくれた。
「……今です!」
月美が叫ぶと同時に、マジンガーが破壊した鳥カゴの向こうに張り巡らされた
道満の呪術結界に孔を穿つ。
「……くっ……!」
力を使い果たした月美は、その場に倒れてしまった。
「月美ちゃん!」
(お父さんの奥義に比べれば不完全……
なのにこれほどの消耗をするなんて)
未熟な自分を恥じながら月美は荒い息を整える。
「あの孔は一時的なものです……時間が経てばまた塞がってしまいます」
「そうか……ならば、あの先にいる元凶を叩くしかないと言う事だな」
「Into the evil city」
「えぇ……行きましょう」
月美達が孔を通り抜けようとしたその時、
銃声が響き渡った。
「危ねえッ!!」
ルフィは咄嗟に動けない月美の盾となり、銃弾を受けた。
「ルフィ!?」
「撃てえッ!! 一斉射撃だ!」
「了解!」
間髪入れずに、ルフィに向けて大量の弾丸が撃ち込まれた。
「ーー……!!」
「ルフィさん!」
月美を庇いながら、ルフィは仁王立ちの姿勢で耐える。
「撃ち方、止め!」
「死んだな。一丁上がりだぜ」
銃撃の嵐の主は、アマルガムの傭兵部隊だった。
硝煙が晴れ、月美と月美を守るように立つルフィの後ろ姿が見える。
「そんな、ルフィ……!」
「……へっ」
「!?」
蜂の巣にされ、即死してもおかしくなかったはずのルフィが笑みを浮かべる。
その身体には傷一つ付いていなかった。
「……あれは!?」
ルフィが全身に受けた銃弾が、貫通する事なく身体にめり込んでいた。
「……防弾チョッキ……?」
「違う。俺はゴム人間だからな、撃たれても死なねェ」
「なんだと……!」
「ーーふんッ!!」
反動ですべての銃弾を傭兵たちに向けて弾き返した。
「ぎゃあああっ!!」
「な、なんだよアレ……!!」
「化け物だ……!!」
幼い頃、誤って悪魔の実を食べてしまった事でゴム人間の能力を得たルフィ。
その能力は伸縮自在の超人的な身体能力であり、
並大抵の物理攻撃ではダメージすら与えられない。
「あいつら、クジコジ堂を襲った連中か!」
「アマルガムにクォーツァー、余程俺たちを神浜市に近寄らせたくないらしいな……」
「あいつらはマジンガーZで相手してやる!」
「二手に分かれた方が良さそうだな」
「じゃ、そっちは任せたわよ」
【RIDER TIME】
「変身ッ!!」
甲児、マオ、クルツのロボット部隊、そしてライダーに変身したゲイツは
アマルガムの傭兵・カッシーン軍団と戦闘を開始した。
そしてソウゴ、ルフィ、アレク、ローラ姫のホイミで回復した月美は
神浜市内へと突入する。
「ゲイツ! 気をつけて!」
「分かっている!! そっちこそ抜かるな!!」
ソウゴもジオウに変身し、ライドストライカーに乗って神浜市へと走り出した。
かくして、神浜市の内と外を巡る二元バトルの火蓋が切って落とされたのだ。
「撤退」
「むう……?」
道満は孔の向こうから感じる強大な力に眉を寄せた。
自身の呪術結界に干渉できる程の力を持つ存在。
その事に驚愕し、警戒しているのだろう。
「フッフッフッフ! 俺の鳥カゴを壊す奴がいるとはな。面白ェ。
まったくこの世界は面白ェぜ」
道満と同じく、マジンガーZによって自らが生み出した鳥カゴを破壊された事を
感知するドフラミンゴ。
だが、当の本人である大して驚いてはいなかった。
むしろ楽しげですらある。
「何を呆けていやがる!」
『オラァァァァァァッ!』
隙を見せた2人にスタープラチナを繰り出す承太郎であったが、
大ダメージを与えたはずのアナザーディケイド……スウォルツがそれを阻む。
「貴様……不死身か?」
「ふははははは……貴様にはアナザーライダーを完全に倒す事は出来ない」
「何だと……!?」
「やあああああああああッ!!」
ももこが大剣を振りかざし、承太郎とスウォルツの間に割って入った。
「承太郎さん! 一旦退こう! 何だか流れが変わったみたい!」
ももこの言う通り、状況は変わった。
CROSS HEROESの神浜市突入。不利な状況を好転させ得る要素が現れた。
2人はそれを無意識の内に感じ取っている。
「……ジョースター家には、伝統的な戦いの発想法があってな…………
ひとつだけ残された戦法があったぜ……それは! 『逃げる』だッ!!」
承太郎とももこは、一度体勢を立て直す為に撤退した。
「逃げられるとでも……」
「えいッ!!」
追撃しようとする道満に放たれる光の矢。いろはだ。
道満はバックステップで距離を取る。
「ンンン……!?」
「いろはちゃん!」
「ももこさん、こっちです!」
「ちゃらぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
さらに、炎を纏った扇子が投げつけられた。
魔法少女の姿に変身した鶴乃によるものである。
「あいつらが街をメチャクチャにしたんだね……ウチのお店も……!」
鶴乃は怒りに燃えていた。普段明るい性格の少女が見せた、激しい感情。
その激情に呼応するように、その身に宿る魔力が高まろうとしていた。
それはまるで、燃える炎のごとく。
「あれは確か万々歳とか言う店の……やれやれ、魔法少女ってのは何人いるんだか……
おい、そこに赤いデカブツに乗っている奴! 協力する気があるならついて来い」
「強敵襲来」
「チッ、仕方ねぇ!」
竜馬の乗るゲッターロボは承太郎や魔法少女達と一緒にその場を離れた。
一方神浜市の外では
「いくぞ!ルストハリケーン!」
マジンガーZの口から放たれた酸の風がカッシーンとアマルガムのASを錆びさせボロボロにする。
「こういうのはどうだ?」
クルツの乗るAS『M9ガーンズバック』は遠くからのスナイプで敵を一体ずつ撃破していく。
《ジカンザックス!》
「はぁ!」
ゲイツはジカンザックスでカッシーンを次々と斬り裂いていく。
「いい調子!」
「よし、このまま残りの奴らも倒して早く合流しに…!」
「っ!待って!なにか来るわ!」
するとそこに量産型のタイムマジーンの軍団とカゲン、ショウゲンそして赤い2体のAS『フラン1058 コダールi』と髪のようなものが生えた銀色の2体のAS『フラン1059 コダールm』が現れる。
「なんだあのロボットは!?」
「タイムマジーンだと…!?何故お前達がそれを持ってる!?」
「何故かって?それはもちろん、俺たちが歴史の管理者だからだ」
「……あのAS、確か前に香港で戦った…!」
「よう、久しぶりだなミスリル…ん?カシムはどうした?」
「残念だけど、宗介は今別行動中よ……もちろんかなめもここにはいないわよ」
「そうか……だったら話は早いな…!」
「あぁ……そうだな」
クォーツァーのカゲンとショウゲンはジクウドライバーを巻き、ライドウォッチを取り出す。
《ZAMONAS!ZONJIS!》
「「変身!」」
《RIDER TIME!
KAMEN RIDER!ZAMONAS!ZONJIS!》
カゲンは仮面ライダーゾンジスに、ジョウゲンは仮面ライダーザモナスに変身した。
「もう一人の方も仮面ライダーだったか…!」
「そういうことだ…!はぁ!」
ザモナスとゾンジスはゲイツに向かって攻撃をしかける。
「クォーツァーも張り切ってるみたいだし、僕たちも行こうか!玉芳ちゃんと玉蘭ちゃん!」
「・・・」
「・・・」
「ノリが悪いな〜。もしかして、香港での事…怒ってる?」
「俺の可愛い生徒にあんまりちょっかいを出さないでもらおうかゲイツ」
「はいはい、じゃあモミアゲの調子がいいうちに…!」
「っ!気をつけて!来るよ!」
量産型タイムマジーンと4機のASはマジンガーZとミスリルに向かって攻撃を始めた。
「一点突破」
「ゥオオオオオオ……」
神浜市に突入したソウゴたち。その行く手に道満が生み出した鬼たちが立ちはだかる。
「凄い数だ!」
「俺に任せろ!!」
ジオウのライドストライカーの後部座席に跨っていたルフィが飛び降り、
鬼たちの頭上高くに飛翔する。
「ゴムゴムのォォォォォッ……!」
背中を大きく反り上げ、ルフィが両の鉄拳を一度に繰り出す。
「”銃乱打(ガトリング)”ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
ゴム人間の特性を応用し、何mも伸びるルフィの腕。
鉄拳が鬼にヒットした反動と、跳ね返ってきたそれを力任せに押し返す
ルフィの腕力が合わさって次々と鬼たちを殴り倒していく。
鍛え抜いたルフィの拳が銃並みの威力を持つとすれば、その光景はまさに
一秒間に数百発の銃弾を撃ち出すと言われるガトリング砲の名に相応しいだろう。
瞬く間にジオウたちの進路は開かれた。
「グアァァァァッ……」
「――よっ、と!」
そしてルフィが落下してくる位置を計算したジオウがライドストライカーで乗り付ける。
「流石、海賊王!」
「しししっ、おうよ!」
「むんッ! ずあああああッ!!」
剣撃一閃の元に鬼たちを屠るアレク。
「ひょー、やるなあ、あいつ。ゾロみてえだ」
「ゾロとは、君の仲間か?」
アレクの剣捌きに感嘆の声を上げるルフィ。露払いをして向き直り、尋ねた。
「ああ、剣士だ。すんげえ強えェんだ」
「なるほど。機会があれば是非とも手合わせ願いたいな」
「ギラ!」
ローラ姫の指先から発せられる閃熱呪文が横薙ぎに鬼たちを薙ぎ払う。
「臨兵闘者皆陣列在前……外縛の陣!!」
月美が九字を切ると、鬼たちの足元に魔を封じる円陣が浮かび上がる。
「グオオオオオッ……」
「今です!」
「任せて!!」
【FINISH TIME!】
ライドストライカーで突撃しながら、片手でライドウォッチを装填し、
ジカンギレ―ドの力を解放する。
「だりゃあああああああああああああッ!!」
【Zi-O! GIRI-GIRI-SLASH!!】
赤い閃光を宿したジカンギレ―ドが、鬼たちを一直線に切り払っていく。
「グガァァァァァァッ……」
ハラハラと舞い散る式神。
「ん? おい、何だアレ」
ルフィが指差す先には、神浜上空を飛行するゲッターロボの姿があった。
「集いし特異点達」
「赤いロボット…?」
「けど、マジンガーとかとは結構違うような…?」
「とりあえず、こっちに気づいてもらわないと、おーい!」
一方、竜馬達もソウゴ達を発見していた。
「ん?なんだあの変な格好のやつら?」
「あの人たち……もしかしてテレビに写ってた…!」
「例のモンスターと戦ってたやつらか、あっちもこっちを認識してるようだな」
「なら、こちらも合流しましょう。もしかすると力を貸してくれるかもしれません」
「わかった」
竜馬達はソウゴ達と合流した。
「大丈夫ですか!?」
「は、はいなんとか……あの、あなた達はいったい…?」
「私達は『CLOSE HEROES』です」
「クロスヒーローズだと?」
「うん、簡単に言えばいろんな世界から集まった人たちによるドリームチーム……てことかな」
「え、いろんな世界って……」
「……お前達も別の世界から来たってことか?」
「え、もしかして君たちも?」
「はい、と言っても別の世界から来たのは承太郎さんと……そこの赤いロボットだけですけどね」
「なんだ?お前らもこの赤いのの名前知らねえのか?」
「はい、あの鬼が出現したところで出会いましたから、自己紹介とかもまだ出来てないんです」
「そうなんだ」
「見つけたぞ!」
「っ!」
そこに現れたのはアナザーディケイドだった。
「あれって……スウォルツ!?」
「久しぶりだな常磐ソウゴ…!」
「アイツ、お前の知り合いか?」
「あ、うん。けどなんでここに……」
「ちょっといろいろあってな、今はクォーツァーの元で活動している」
「クォーツァーだって!?」
「まぁそんなことはどうでもいい。常磐ソウゴそして特異点共、この俺が直々に始末してくれる…!」
「特異点?どういうことだ?」
「貴様らに言うことはない…!ん?」
すると鬼の軍勢が出現し、更にその反対側にアレク達の世界のモンスター達が出現する。
「っ!俺たちの世界のモンスター!?」
「そんな!どうしてこのタイミングで!?」
「ほう……どうやらそいつらも鬼どもも俺に味方してくれるようだな…!」
「やれやれ、面倒なことになりやがった…!」
「晴明共が来てないだけまだマシだ!アイツらが来る前にさっさとぶっ殺すぞ!」
「あぁ、いくぞ!」
一同は鬼の軍勢、モンスター達、そしてアナザーディケイドと戦闘を開始した。
「時を超えるボーイ・ミーツ・ガール」
白熱の激戦が繰り広げられる神浜。
一方で、聖杯の反応を追ってレイシフトを敢行したカルデア一行と門矢士たちは……
【ATTACKRIDE SLASH】
「せやあああッ!」
ディケイドのブッカーソードの斬撃が分裂し
一撃、二撃、そして三撃目と怒涛の勢いで繰り出され、次々とモンスターを撃破していく。
「マシュ・キリエライト、突貫します!」
重さ10t以上もあるラウンドシールドを構え、体当たりを繰り出すマシュ。
堅牢なる盾は、それ即ち強力な矛でもある。
突進によってモンスターたちを一斉に巻き込んで吹き飛ばした。
「グォォォォン!」
「!?」
上空からマシュ目掛けて急降下してくるのは、ワイバーン。
立香やマシュがこれまでの冒険で遭遇してきたものと同一の個体である。
双翼を広げる巨体による翼竜の突撃。
当たればひとたまりもない威力の攻撃がマシュへと迫る。
「マシュ、危ない!」
が。
「ふもっふ!」
何者かの銃撃がワイバーンを撃ち抜く。それは、ネズミとも犬ともつかない、
なんとも愛らしい動物の着ぐるみのような姿であった。
「な、何あれ……」
「ふんももも!」
謎の動物は手に持っていた銃を乱射してモンスターを蹴散らしていく。
その姿に、思わず呆然とする立香とマシュ。
気づけばモンスターたちは恐れをなして逃げ出していた。
「ふう……」
着ぐるみの頭を取り外すと、高校生くらいの少年が顔を覗かせる。
左頬には小さな十字傷の痕があった。
「状況終了」
「えっと……助けてくれたのですか?」
マシュがそう問いかけると少年は小さく首肯する。
「肯定だ。俺の名は相良宗介」
「で、そのおかしな着ぐるみは何だ?」
士は変身を解いて少年に声をかけた。
「着ぐるみではない。ボン太くんだ」
「えぇ……」
「ところで、相良……さんはこの特異点について何か知っていますか?」
「否定だ。残念ながら何も知らない。こちらが聞きたいくらいだ」
「ソースケーッ!!」
草原の向こうから、青髪を束ねたセーラー服の少女が駆け寄ってくる。
「あの子は?」
「俺の護衛対象だ。千鳥、安心しろ。怪物たちは駆除した」
「よかったぁ……あ、ごめんなさい、お騒がせしました」
少女――千鳥かなめは、士たちにぺこりと頭を下げる。
「もう一人の通りすがり」
「い、いえ気にしないでください!助けてもらったのはこちらのほうですから。あ、自己紹介がまだでしたね。私はマシュです」
「私は藤丸立香」
「俺は門矢士、通りすがりの仮面ライダー……てとこだ」
「っ!仮面ライダーだと…!?」
「嘘…!?仮面ライダーって……もしかして、光ヶ森高校にいる常磐ソウゴって人と知り合い?」
「常磐ソウゴだと?何故お前達があいつの名前を?」
「やはりそうか……実はな……」
宗介は事情を説明した。
「なるほどな……大体わかった。要するに俺が追ってるクォーツァーはそのアマルガムとやらと手を組んでいて、それに対抗するためにお前の所属するミスリルはやつらが命を狙ってるイレギュラーと呼ばれるやつらを保護してるってことか」
「そういうことだ」
「なるほど……もしかして、かなめさんもそのアマルガムとやらに命を狙われてるってことですか?」
「うん、と言っても私がアマルガムに狙われてるのには別の理由があるんだけどね」
「別の理由?」
「それは……」
かなめが話そうとしたその時
「っ!伏せろ!」
「え…」
するとどこから銃撃が飛んできて、一同はなんとかそれを回避する。
「え!?こ、今度はなんですか!?」
「……嫌な予感はしてたが……やっぱりお前も来てたか……海東」
「……流石士、よくわかってるじゃないか」
「お前とは長い腐れ縁だからな……」
「士さん、あの人を知ってるんですか?」
「あいつは海東大樹……俺のストーカーでこそ泥だ」
「ちょっと言い方悪くないか士?」
「事実だろ?」
「……まぁいいや。士達には悪いけど、この世界のお宝……聖杯は僕がいただくよ!」
「っ!聖杯を狙ってる…!?」
「聖杯?」
「簡単に言えば、どんな願いでも叶えられるアイテムだ。この特異点の原因でもある」
「どんな願いでも叶えられるって、そんなのが存在してるの!?」
「誰か知らないけど、アンタなんかに聖杯は渡さないよ!」
「いや、絶対に僕が手に入れる…!」
すると海東はディエンドライバーを取り出し1枚のライダーカードをセットする。
《KAMEN RIDE》
「変身!」
《DIEND!》
そしてディエンドライバーのトリガーを引き、仮面ライダーディエンドへと変身した。
「嘘!?アイツも仮面ライダーなの!?」
「あぁそうさ。それも士よりも前からね」
「天魔轟臨、嵐吹く特異点」
「門矢さん、あの方はお仲間ではないのですか?」
マシュは心配そうな表情で士を見る。
「仲間、とは口が裂けても言えないな。
ただひとつ言えるのは、あいつはやると言えば必ずやる男だってことだ。
例えどんなに大それた目的だろうとな」
士も険しい顔つきになる。
【ATTACK RIDE BLAST】
ディエンドがネオディエンドライバーから放つ蒼白い光弾が空中で拡散して降り注いだ。
「先輩、千鳥さん! 私の後ろに隠れて下さい!」
盾を構え二人を守るマシュ。
【KAMEN RIDE DECADE】
士はディケイドに瞬間変身、宗介もボン太くんスーツを纏う。
ディエンドの攻撃を受けてもボン太くんはさしたるダメージを負わなかった。
「ほう、単なる着ぐるみじゃなさそうだね」
(この男、俺たちはおろか千鳥や藤丸女史のような非武装の人間に対しても
容赦ない攻撃をしてきた。
どうやら話し合いでは解決できそうもないな)
海東は再びカードを取り出す。
【KAMEN RIDE】
ネオディエンドライバーにカードを装填する事により
並行世界の仮面ライダーを疑似再現、召喚できる。
これにより彼は武神鎧武、デューク、ゲンムを呼び出した。
「増えた!?」
「落ち着け、奴らは中身の無いハリボテのようなものだ」
「だが時間稼ぎには充分さ」
海東は更にカードを取り出しネオディエンドライバーに挿入する。
【ATTACK RIDE INVISIBLE】
「じゃあね、士」
すると彼の姿が消えてしまう。
「海東! 待て!」
士が叫ぶも手遅れであった。
「チッ、やるしかないか。行くぞ、ふもすけ!」
「ふも!(ふもすけではない、ボン太くんだ)」
「私もカルデアから応援を呼ぶ。マシュ、ちょっとの間お願い!」
「はい、お任せを!」
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に
聖杯の寄るべに従い、人理の轍より応えよ
汝、星見の言霊を纏う七天
降し、降し、裁きたまえ、天秤の守り手よ―――!」
詠唱の後、彼女の足元に魔法陣が現れ、光の柱が立ち昇る。
光が収まると、そこにはドイツの軍服に赤いマントを翻す黒髪の少女が立っていた。
「うははは、SSR級の引きじゃぞマスター!
そう! わしこそが、第六天魔王・織田信長じゃ!」
「出陣!織田信長!」
「うそ!?織田信長って、あの信長なの!?」
「ふも、ふもふもももももふもふも、ふもっふ?(だが、織田信長は俺たちが生きてる時代よりも昔の人間、それも男のはずだが?)」
「言いたいことなんとなくわかるけど、せめてそれ外した状態で喋りなさいよ!」
「……!」
武神鎧武は織田信長に接近し、無双セイバーとブラッド大橙丸で斬りかかる。
が……
「どうした?その程度か?」
信長は日本刀一本で攻撃を受け止める。
「その程度の実力で、このワシを倒せるとは思わぬことだ!」
そう言い信長は日本刀で武神鎧武を斬り裂く。
「っ!」
「まだまだじゃ!」
信長は火縄銃を取り出し、武神鎧武を攻撃する。
「つ、強い…!」
「ふもっふ……ふも……ふもっふるふも?(あれが信長の実力か……しかし彼……いや彼女は本当に俺たちが知ってる信長なのか?)」
二人が信長の戦いを見て関心していると
《LOCK ON!》
「ふもっ!(っ!)」
《LEMON ENERGY!》
ボン太くんはデュークが放ったソニックアローの矢をかわす。
「ふもも…もっふ(今の攻撃……どうやらあれはただの弓じゃないようだな……)」
「……」
デュークは再びソニックアローでボン太くんを攻撃し始める。
「っ!もふ!」
ボン太くんは攻撃を何発かかわし、手榴弾をデュークに向かって投げた。
「っ!」
デュークは手榴弾の爆発に巻き込まれないように距離を取ろうとするが、
「ふもっふ!」
「っ!?」
ボン太くんが放ったバズーカに直撃してしまい、怯んでしまう。
そしてそのまま手榴弾の爆発に巻き込まれて大ダメージを受けて消滅した。
「やるじゃないかあのふもすけ……っ!」
ゲンムがディケイドに不意打ちで攻撃を仕掛けて来るが、ディケイドはすぐに対応し攻撃を防いだ。
「俺も、負けてられないな」
そう言いエグゼイドのライダーカードを取り出しネオディケイドライバーにセットする。
《KAMEN RIDE EX-AID!
マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!X!》
ディケイドはディケイドエグゼイドに姿を変えた。
「……」
《ガシャコンバグヴァイザー!》
ゲンムはガシャコンバグヴァイザーを右腕に装備する
《ガシャコンブレイカー!》
ディケイドエグゼイドもガシャコンブレイカーを取り出した。
「……こい…!」
「聖杯を巡るAdventure!」
DCDエグゼイドと酷似した外見をしつつも全身真っ黒に染まったカラーリングのゲンム。
「ヴェェアアアッ!!」
ゲンムが奇声を漏らしながら突進してくる。
二人は互いの武器をぶつけ合う。鍔迫り合いになりながら、互いに力比べをするが
所詮はディエンドのカメンライド召喚によって誕生した偽物。
実体を持つディケイドには敵わない。次第に押し返されていき、ゲンムは弾き飛ばされる。
すぐに立ち上がり構え直すもDCDエグゼイドはすかさずゲンムへの追撃に入った。
「はぁあっ!」
ゲンムを槌型武器であるガシャコンブレイカーで殴りつける。
さらに蹴りを放ち、ゲンムを吹き飛ばした。
「ウウウ……!」
さながらゾンビのように呻きながら立ち上がるも、既にフラフラの状態だ。
「ノーコンティニューでクリア……って奴だ」
【FINAL ATTACK RIDE E E E EX-AID!
キメワザ! マイティクリティカルフィニィィィッシュ!!】
ガシャコンブレイカーが眩い光を纏う。DCDエグゼイドは飛び上がり、
ゲンム目掛けて急降下し必殺技を放つ。
ゲンムも対抗してビームガンモードで切り替えたガシャコンブレイカーから
紫色のエネルギー弾を放ったが、その尽くを打ち払いながら突き進む。
「てぇぇぇあああああッ!!」
ゲンムの脳天に文字通りガシャコンブレイカーの鉄槌を叩きつけた。
「グゥ……ヴェァァァァァ!!」
そしてゲンムが消滅していく中、 【GAME CLEAR!】の文字が浮かび上がる。
こうしてディエンドの召喚ライダー軍団は
ディケイド、ボン太くん、信長の3人によって全滅したのであった。
「なーんじゃ、歯応えが無いのう。わしが出るまでもなく病弱沖田の奴でも事足りたわ」
「さて、雑魚は片付いたが……海東にはまんまと逃げられたな……」
そう言い変身を解除した士は、宗介とかなめがいる方へ振り返る。
「元の世界に戻りたければ、俺たちについて来い」
かなめは少しだけ考えた後、ボン太くんに語りかけた。
「ソースケ……あたしも行くよ」
「ふもっふ!」
「えーと……何て?」
「了解した、ですって」
何故か、かなめにだけはボン太くんの言葉がわかるらしい。
新たな仲間を加え、今だ謎多き特異点を巡る一行の冒険がこれから始まる。
「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」
世界の時間そのものが動きを止めたような静謐さが、荘厳なる城の辺りに漂っていた。
豪奢な装飾と余りに合わない竜頭が、城の頂上から無人となった街を見下ろす様は、嘲笑しているようにも見える。音は絶え、生きとし生けるものたちの営みだけがごっそりと欠けていた。
いや。
音は、ある。
かたかたと、軽さを感じる音が地を踏みしめる毎に鳴り響く。城の中から街中の各所からひっきりなしに搔き鳴らされる足音は踊るように、国を闊歩し蹂躙する。
人間め、脆弱なりやと嗤いながら。
人間め、愚かなりやと嗤いながら。
剣で、爪で、魔法で、或いは己の膂力のみで。
切り裂き、引き裂き、焼き、凍らせ、押し潰し、そうして積み上がった骸の山を壮観なりとまた嗤う。
悪辣なりし復讐という宿業が、英雄譚を塗り潰して喪失譚へと貶める。
嘗ての国の名をラダトーム、只今を以て新たに名を呼ぶならば特異点。
あるはずのない過去、剪定されたありえざる世界。
この世界の分岐点、それこそは──────
◇
もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを ■■■に やろう。
◇
大気を震わす銃声と共に、粉砕される敵手の五体が木造の家内へと散らばった。蹴撃と共に撃ち出された蒼色の魔弾が、肉の失せた骸骨の胴体に吸い込まれるように着弾。次の瞬間には全身が弾け飛んだ。
ばらばらになったモンスター、がいこつの身体を見下ろす銃士こそは、誰ならん、仮面ライダーディエンド──────海東大樹である。
「やれやれ、これじゃあ一息つくどころの話じゃないね。特異点ってやつもなかなかどうして、一筋縄じゃいかないらしい」
嘆息一つを吐き出しながら、持ち主の素朴な質がにじみ出た木のテーブル上に腰を降ろした。先の接敵、門矢士との邂逅から直ぐにこのラダトームなる町へと到着した海東が目にしたのは跋扈する魑魅魍魎、魔物の群れ。
数千を容易く超える数を目にして、正面からの侵入を断念し、内部の魔物を一掃し、仮の拠点として空き家を拝借したのだ。
「あれを相手にするのは流石の僕でも厳しいけどまあ、面白くなってきた。そうは思わないかい、士」
常人であれば狂いかねない状況に於いても、健在である海東の欲望は、未だにぎらついた熱を帯びているのだった。
「幕間の物語」
――カルデア・司令室。
「ふむ、相良宗介と千鳥かなめ……それに聖杯を狙うディエンドと言う名の仮面ライダー。
いずれもミスター・門矢と同じく異世界の住人か……」
カルデアから状況をモニタリングしていたダ・ヴィンチとホームズは
立香からの報告を受けていた。
「未確認のモンスターが現れたかと思えば、ワイバーンのような
既存の敵性体も現れるとは……どうにも混沌としているね、この特異点は」
「ミスター・門矢が言っていたように、特異点に存在する聖杯が複数の異世界を
引き寄せているとすれば、この状況にも説明がつく」
「別世界を巻き込むような大規模な特異点が発生するなんて……キャメロットの一件を
思い出すね」
「危険な状況だな。一刻も早く聖杯を回収せねばならない」
「――ダ・ヴィンチちゃん達の見解は、以上のようです」
報告を終えたマシュに、藤丸は小さく微笑む。マシュが読み上げたのは、
現在進行形で通信越しに交わされる会話の内容であった。
特異点における情報共有の為にカルデアとの間でやり取りされるものである。
一行は先のモンスターを撃退した事で手に入れた金貨を資金として
旅の宿屋を訪れていた。
「こうしている間にもあのディエンドと言うライダーが聖杯を……」
「いや、恐らくまだ大丈夫だろう。奴自身は聖杯を探り当てる術を持っていないはずだ」
「私達はダ・ヴィンチちゃんが聖杯の反応をトレースしてくれていますからね」
「だが、それは諸刃の剣でもある。俺たちの行動を監視し、聖杯を手に入れる寸前で
横から掠め取るつもりかもしれない」
「そうですね……。その可能性も考慮しつつ行動すべきでしょう」
「ぷはー。やはり風呂上がりはコーラじゃのう」
タオルを首にかけた信長はご満悦に喉を鳴らした。
「え? ノッブ、そのコーラどこで買ったの?」
「コンビニじゃ」
「コンビニ!? コンビニがあるのこの特異点!?」
「ほれ」
宿屋2Fの窓の向こう。その先には確かに夜闇を一際明るく照らす光があった。
現代のコンビニエンスストアが営業をしている。
「本当でした……!」
「やっぱりあちこちの異世界がごちゃ混ぜになっちゃってるんだ……」
まずはこの辺りの地理を把握するところから始めよう」
「了解しました。先輩、明日に備えて今日はもう休みましょう」
「そうだね」
「見捨てられた男、スウォルツ」
一方、神浜市の様子を見ていたクォーツァーの王はというと……
「……どうやら、この男は我々が想像してた以上に愚かだったらしい……」
スウォルツに対して呆れていた、そう呆れていたのである。
承太郎一人にすら勝てなかったのにも関わらず、スウォルツと同じディケイドの力を……ディケイドのライドウォッチを所持しており、ディケイドのアナザーウォッチを破壊することが可能な常磐ソウゴを始め、他の特異点達も一緒にいる中、スウォルツは彼ら全員に戦いを挑んでいたからである。
いくら鬼やモンスターの軍団が一緒にいるとはいえ、流石に無謀である。
『普通なら騒ぎに便乗して脱出するところだが、まさか先程戦って負けた相手にすぐ挑みに行くとは……それも先程よりもあちら側の戦力が増えてる状態で……どうする?外で交戦してる戦力を急いで彼のところへ向かわせるか?』
「……いや、もういい……やつの力には利用価値があると思って生かしてやったが、あそこまで愚かだともう用済みだ……それに、今回は元々ミスリルにいる特異点と神浜市内にいる特異点が合流するのを妨害することが目的だ、それが失敗してしまった以上、もうこれ以上の交戦は無意味だ。」
『では、現在交戦中の全戦力を撤退させるとしよう』
「そうだな……」
一方その頃、神浜市の外では
「……そうか、わかった。
……今日のところはここまでにしてやる」
「命拾いしたな」
そう言いジョウゲンとカゲンはどこかへ消えた。
「撤退命名か……仕方ねえ、おいお前ら帰るぞ!」
「はいはい……じゃ、ミスリルちゅわん、またね〜」
カシム達も撤退し始めた。
「……どうやら助かったみたいだな」
「みたいね……けど、急にどうして?」
「わからんが、とにかく今のうちにソウゴ達と合流しに行くぞ」
「わかった」
突然撤退したクォーツァーとアマルガムに疑問を抱いたものの、それでも今は神浜市の中にいる人達の救助と先に突入した仲間達との合流の方が先だと考え、ゲイツ達は神浜市の中に突入した。
そして、そんな神浜市内では、
仲間であるはずのクォーツァーに見捨てられたことを知らないスウォルツが鬼やモンスターの集団と共にCROSS HEROESと……特異点達との激しい激闘を繰り広げていた。
「両軍、相撃つ」
「ゴムゴムのォォォォォォォォッ……!!」
ルフィが右腕をぐん、と後ろに伸ばし、
「オォォォォォォォォォォッ……!!」
承太郎のスタープラチナが拳を振りかぶり、パワーを一点に集中させる。
「”銃弾(ブレット)”ォォォォォォォォォォォォッ!!」
「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
アナザーディケイドを挟み込むように二人のパンチが炸裂した。
「ぐぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!」
さしもの堅牢なアナザーディケイドの装甲にも亀裂が入る。
「よし! 効いてる!」
「このまま一気に畳み掛けるぞ!」
【FINISH TIME!!】
「スウォルツ……これで終わらせる!」
そしてジオウがトドメの一撃を放とうとしたその時だった。
「ンンンンン、残念。そう易々とは行かせませぬぞ」
飛び上がったジオウの周囲を呪符が飛び回り、電撃を放ってくる。
「うわああああああっ!?」
「ソウゴ!!」
ジオウはそのまま地面に落下してしまった。
「フフフフフッ、久しぶりだな麦わらァ!」
「お前……ドフラミンゴ!!」
ドフラミンゴ、安倍晴明、そしてキャスター・リンボが合流したのだ。
「やれやれ、面倒なのが揃っちまったか……」
「やろうってんなら、ぶっ飛ばす!!」
承太郎が帽子の鍔の向きを差し替え、ルフィが拳を打ち付ける。
未だ尽きぬ闘志を滾らせていたが……
「ンンン、それは拙僧も望む所ではありましたが……『やめました』。」
「何!?」
「どうにも拙僧らの同盟者殿は実に気まぐれな方でして……全軍撤退せよとのことです」
そう言ってリンボは笑った。その言葉を聞いて、晴明も鼻で笑う。
「命拾いをしたな、流竜馬。十全に戦えぬゲッターロボなど、もはや脅威ではない」
「ンだと、晴明!!」
「ところで、拙僧の呪術結界を解除なされたのはそちらの御婦人ですかな?」
リンボが、身構える月美に問いかける。
月美が黙って首を縦に振ると、 リンボは再びニヤリと笑い、 舌なめずりをしてみせる。
「……!!」
怖気を感じる月美。美しき肉食獣を前に捕食される寸前の小動物の気分を味わっていた。
「ンンン、良い……実に美味そうな魂をしておりますなぁ。
次にお会いする時が楽しみですぞ」
「次は俺が直々に相手してやるよ、麦わら! あばよ!」
「激闘を終えて」
どこかへ消えていく晴明、ドラフラミンゴ、キャスター・リンボ。
それに続くように残っていた鬼達やモンスター達も消えていく。
「チッ……逃げられたか……」
「しかし、同盟者か……どうやらアイツらには他にも手を組んでるやつがいるってことか……」
「みたいだね……あっ!そういえばスウォルツは!?」
一同は辺りを見渡すが、スウォルツもといアナザーディケイドの姿は見つからない。
「……どうやらこっそり逃げられたみたいね」
「けど、なんでアイツらはスウォルツを助けたんだろう?」
「わかりません……ですが、一つ可能性があるとしたら……」
「……やつらの言う同盟者がクォーツァーやアマルガムかもしれないということですか……」
「はい……」
するとそこにゲイツ達がやってくる。
「大丈夫かソウゴ?」
「あっゲイツ!こっちは大丈夫。そっちは?」
「まぁな。どういうわけか知らんが、やつら突然撤退しだしてな……」
「え!?そっちも!?」
「なに?お前らの方もなのか?」
「うん、なんか同盟者がどうのこうのって言って急に……」
「……しっかし、この世界にもロボットはいるんだな」
竜馬はマジンガーやASを見ながらそう呟いた。
「っ!その赤い機体は……!」
「なんだ?知ってんのか?」
「ええ、実は少し前に浅間山で同じロボットが出現したの」
「浅間山って、長野県の?」
「あぁ、そこでタイムマジーンと思わしき機動兵器と戦ってたという目撃情報があってな」
「で、今回この神浜市に同じのが出現したって聞いてな、同じ時間帯に出現した鬼の駆除と一緒にそのロボットの調査も行う予定だったんだよ」
「そうだったんだ……」
「……とりあえず、そこの赤いロボットのパイロット含めて、アンタ達には聞きたいことがいろいろあるわ。少し協力してくれないかしら?」
「俺は別に構わないぜ?この世界のことよくわかってねえし、なによりも住む場所も飯もなくて困ってたところだしな」
「わ、私達で良ければもちろん!」
「(こいつらは吉良と一緒にテレビに写ってた……もしかするとやつのことをしってる可能性がある……)……わかった、俺も協力しよう。その代わりいろいろと聞かせてもらうぞ」
「ありがとうございます!」
「その前に、まずは他に生き残ってるやつがいるかどうか、探すぞ」
「わかった」
「まがつぼしフラグメンツ」
都市の炎上に伴った鉄製家屋の変形や木造建築の炭化は、完膚無きまでに神浜という街が文字通り”崩壊”してしまったのだとむざむざと見せつけられるようで、明光院ゲイツにとっては良い気分は当然しなかった。
悪辣なる陰陽師、蘆屋道満が率いる一派が撤退を終えてから数刻後。ゲイツを含む、『CROSS HEROES』の面々はそれぞれ散開し、残る生存者の救助に当たっている。
ゲイツら仮面ライダーや、スタンド使い、ゲッターロボのパイロット、ミスリルにこの神浜に住まう魔法少女ら、個々人が強力な異能を有していることにより単身若しくは少人数で分かれての行動を決定したのだ。
2068年の日本にて絶対的な力を持った支配者であるオーマジオウとの抗争及び過去の時代でのアナザーライダーとの戦闘経験から、ゲイツは味方を連れず一人での捜索に当たっていたのだが。
「………………生存者は、無しか」
燃えカスとなった神浜を歩くこと三十分、ゲイツは、未だに生き延びている人間を見つけ出すことができずにいた。
嘗ての2068年、魔王が支配する世界の惨状と重なるこの景色を見て、下手人たるリンボらへの怒りを胸の裡に秘めながらも、一縷の希望をなんとか絶やさずに進むも、これは流石に堪えるものがある。
一人でもいい、頼む生きていてくれという十八年の短い生涯の中で幾度となく抱いたであろうゲイツの祈りは、未だに実らない。
だから、だろうか。
「あれは、人か?生き延びていたのか………………?」
遠目に見えるスーツ姿の人物──男性だろうか──を見て、思わず驚愕とほんの少しの歓喜が声に出してしまったゲイツを笑うことはできまい。
漸く生存者を見つけることができたゲイツは、咄嗟に駆け寄り声を掛ける。
「おい、無事か!?」
少しばかり、らしくもなく声が跳ね上がってしまったがそんなことには頓着しない。もしやとは思うがリンボが再びこの地に来ないとは言い切れない。故に、早急に保護をとスーツの男に近づくゲイツ。
「ああ、私は大丈夫さ、だが──────」
走るゲイツに、男もまた近寄る。その声に在るのは冷淡極まりないない無機質さと。
「君は、無事じゃあ済まないね」
渦を巻くように大気を締め付ける、悍ましき敵意。
「『キラークイーン』」
風雲急は告げられた。
「殺人鬼、吉良吉影の恐怖」
「っ!?」
瞬間、ゲイツのすぐ目の前で爆発が起き、ゲイツはそれに巻き込まれて吹き飛ばされてしまった。
「ぐぁああああ!?ガハッ!?」
ゲイツは爆発により大きなダメージを受けてしまい、変身が解除される。
「なんだ……今の爆発は…!?」
「ほう……今のを喰らってまだ生きられるとは……」
「っ!まさか……今の爆発は、お前が起こしたのか…!?」
「……君には恨みはないんだけど、私はあの女に君みたいな人間を殺すように頼まれてるんだ。
……悪く思わないでくれ」
そう言い吉良はゆっくりとゲイツに近づいていく。
「くっ……」
ゲイツは変身するために立ち上がろうとするがどういうわけか手も足も震えて動かせない。
(この感覚……あのときと同じ…!?)
そう、ゲイツは感じていた。ボロボロで周りに自分と彼以外の人間がいない殺風景な景色……あの男が起こしたとされる突然の爆発……そして、なによりもゲイツのよく知る人物に似た彼の声……まるであの時を……最低最悪の魔王と戦い多くの仲間を失った時を彷彿とさせるこの状況に彼は心の底から恐怖していた。
「さようならだ……」
吉良は再びキラークイーンの能力を発動し、ゲイツを爆破しようとする……
が、しかし
「スタープラチナ!」
「っ!?」
『オラァ!』
そこに承太郎のスタンド、スタープラチナが割り込み、キラークイーンを思いっきり殴り飛ばす。
「今のは……スタンドか…?」
「見つけたぞ……吉良吉影…!」
ゲイツと吉良が声のした方を向くと、そこには承太郎とソウゴの姿があった。
「ソウゴ…!」
「ゲイツ!大丈夫!?」
「あ、あぁ……なんとかな……」
「おやおや、また会ったねソウゴ君……」
「あんたは……あの時の…!?」
「ソウゴ……アイツを知ってるのか…?」
「うん、前にクジゴジ堂に来たんだ。と言ってもクォーツァーとアマルガムが来たときにいつの間にかいなくなってたけど……」
「……ソウゴと言ったか、お前はそいつを連れて他のやつらのところへ行け」
「え、でも……」
「こいつは俺の世界の人間だ、こいつのことは俺に任せてくれ」
「……わかった。俺はアンタを信じるよ!」
そう言いソウゴはゲイツを抱えて他の仲間達のところへ向かった。
「夜は眠れるかい?」
偶然、運命の悪戯、不運不幸。そして、タイミングの悪さ。
そんなどうしようもないものに、十咎ももこは振り回されてばかりだった。それも今となっては仕方ない、と割り切っているし、折り合いもつけているけれど。
その上でやはり、タイミングが悪い。それも致命的に。
周りには誰もいない。他ならぬももこ自身がそうしたから。
承太郎さんに啖呵を切った以上は、自分でも出来る限りはやりたいという健気さによる志願によるもの。
つまりは、一人で生存者を捜索していたということ。
「ひ、っ………………ぁ」
身体が寒い。鎮火されたとはいえ未だに神浜を覆った業火の残滓が辺りを漂っていて、数分前までは熱くて熱くて仕方が無かったというのに。
別に場所を変えたわけではない。炎天下もかくやといった高温の環境に未だももこは身を置いている。けれど、ももこの能條が絶叫するように訴えかける寒気は頭から冷水を被ったよう。
この感覚には覚えがある。そう、神浜が炎と悪鬼と死に塗れた退廃の都市になる前の話。
承太郎さんに睨まれた時と同じような──────。
「如何した、そう怯えるな。私といえども、少しばかり傷つくぞ?」
くすり、と目の前の彼女が笑う。嗤う。
上から下までが真っ白の衣装を身に纏ったその様は、穢れ無き清廉さを感じさせて、どこか神秘的ですらあるというのに、ああこれは駄目だと本能が告げている。
ももこを一瞥する灰色にくすんだ瞳と目が合う。魔法少女として戦ってきたどんな魔女よりもその醒めたような目が恐ろしくて、逃げ出したくなったけど。
「………………っ!!」
思い切り、大剣を振り下ろす。魔法少女と化したももこの膂力は人並みを大幅に超えていて、女の頭を柘榴のように叩き割る力を持っている。と、いうのに。
「実験体(サンプル)が、なかなかどうして足掻くじゃないか」
女性が致命の一撃に対して返したのは、腕一本。頭を上段から狙った一振りを、異形と化した右腕が傷一つなく抑えていた。
「なに、これ」
絶句するももこに構うことなく、女は口を歪めて。
「言い忘れていたな。私の名は『ジェナ・エンジェル』。人類に微睡み破る鐘を鳴らしてやる者さ」
冷酷なまでのその笑みは、獰猛な肉食獣のそれに似ていた。
「第3勢力」
「……っ!」
ももこは咄嵯に距離を取る。
「アンタもあのクォーツァーとか言う連中の仲間なのか!」
「さあ、どうだろうな……?」
クォーツァー/アマルガム連合軍はこの神浜から撤退した。
それは確かだ。だから、今ここにいる女は残党か、あるいは別の勢力か。
どちらにせよ敵であることに変わりはない。
「別の世界に渡ってまで人殺しがしたいのか、吉良吉影」
同刻、承太郎と吉良吉影も同様の問答を展開していた。
スタープラチナとキラークイーン。互いのスタンドが拳と拳で殴り合いながら、
その使い手たちは言葉を紡ぐ。
「よもや君が私を追ってくるとは思わなかったな……空条承太郎。
こちら側に来てからと言うもの、どうにも星の巡り合わせがよろしくないと感じていたが
これはその極みだよ。私はもう二度と君と会うことは無いと思っていたんだがね」
「……そうか」
「争いと言うのは不毛だ。お互いにとって何の意味も無い。
そんなことは分かり切っている筈だろう?」
「そうだな。それも貴様を今すぐにぶちのめせば済むことだ」
「……やれやれだ」
互いに譲らぬ意思の応酬。言葉を交わす度、両者の表情は険しさを増していく。
承太郎は、自らの信念の為に。吉良は、自らの快楽の為に。
どこまでも平行線。それは決して和解できるものではない。
「くたばれ、吉良吉影!」
『オラァァァァァァァッ!!!』
承太郎の叫びと共に放たれるスタープラチナ渾身の右ストレートが
キラークイーンを捉えたかに見えた……が。
「!?」
スタープラチナの拳が撃ち込まれたのは、戦闘で砕けたアスファルトの破片。
そしてその破片は、キラークイーンの能力によって既に起爆可能な爆弾へと姿を
変えられている。
「点火ッ!!」
吉良の掛け声と同時に爆発が巻き起こる。
爆炎はスタープラチナを呑み込み、辺り一面に爆風と瓦礫が飛び散っていく。
「野郎ッ……!!」
してやられた。承太郎はすぐに体勢を整えようとするが、視界が悪い。
スタープラチナがその剛腕で爆発の炎を掻き分ける。
『ふふふふ……私は必ず君の追っ手から逃げ果せてみせるぞ、空条承太郎……
私の穏やかな生活を邪魔する者は誰であろうと許さない……!』
声の方角へ目を凝らす。
爆風を利用して3階建てのビルの屋上まで避難していた吉良の姿があった。
「いつかあなたが果てるまで」
勝ち誇った、という内心がありありと透けて見える啖呵に、承太郎は未だにその鉄表皮を微動だにせず黙している。しかし吉良の総身を見上げる眼光は、鳥を射落とす弓矢のように鋭く、みすみす逃がしてやるつもりはないと言外に告げていた。
彼我の高低差、10m弱。当然ながらスタンド、スタープラチナの射程圏をオーバーしていて、それ故に吉良吉影は己の”勝利”を疑っていない。
彼にとってのこの場における勝ちとは、即ち五体満足での撤退。協力者であるジェナ・エンジェルより承った特異点の抹殺こそ果たせてはいないが、しかし己の任は十分に果たしたと言えよう。
これ以上無い狙い目を晒してくれた明光院ゲイツを始末しようとした矢先に天敵である空条承太郎との交戦を余儀なくされた、という不幸の中で『時間を稼ぐことができた』のだから。
(そろそろ、ジェナ・エンジェルが実験体とやらを捕縛している頃合いか………………漸く、私も一息つけそうだ)
数刻前のクジゴジ堂での一幕と先程の戦闘、二つの出来事によって汚れに汚れた己のスーツ(ブランド品である)を一瞥して、嘆息を零す。
役目を終えたこともあってさっさとこの薄汚れた廃都から去ってしまいたかった吉良は、そのまま下の承太郎から踵を返そうとし──────、
「ご、っ……あ……?な、何が」
突如として、焼けるような激痛が吉良を襲った。発生源である右肩を見れば、蛇口の様に血が溢れ出している。
その足元には、小さな小さな瓦礫片。
「こいつは宣言布告だぜ、吉良吉影」
嘗て、承太郎は杜王町にてとあるスタンド使いと戦ったことがある。名を、虫食い。
遠距離にて狙撃するスタンド、『ラット』を打ち破った際の決め手こそが、近距離パワー型の膂力を用いたペアリング弾。
東方仗助に教えたその要領で、吉良の右肩を狙撃したのだ。
どちらにせよ吉良の逃走は防げない。しかし、せめてもの落とし前として、手傷を負わせることはできる。
「さっきの返答だ。お前が逃げるというのなら、オレたちは必ず貴様らを地の果てまでも追ってやるぜ、吉良吉影………………お前が欲しがる平穏とやらは、二度とやらねえ。理由はたったひとつだぜ」
眼力だけで射殺すかの如くに一際強く睨み、帽子の鍔を指でなぞり。
「『てめーは俺を怒らせた』」
「Epilogue」
かくして、神浜市を舞台としたCROSS HEROESの初陣は
クォーツァー/アマルガム連合軍の全軍撤退と言う形で幕を閉じた。
だが、これは始まりに過ぎない。敵の戦力は強大だ。
そしてジェナ・エンジェル、そして吉良吉影。クォーツァーらとは一線を画す
異世界からの来訪者。その最終目的とは?
さらに、カルデア一行と門矢士/仮面ライダーディケイドの聖杯探索の旅も
まだ始まったばかりだ。
藤丸立香たちは海東大樹/仮面ライダーディエンドよりも早く、
聖杯を見つけなければならない。
あらゆる異世界が聖杯の力によって引き寄せられつつあるこの特異点で
これから先一体何が待ち受けているのか?
物語は、続く……