プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:4

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1人目

「Prologue」

 CROSS HEROES。
かつて、世界存亡の危機を救うべく、時空を超えて集結した勇者たちの名をそう呼んだ。
そして永き年月を超え、今再びその名を背負いし戦士たちの新たなる物語が始まる。

 特異点(イレギュラー)。
世界の壁を飛び越え、人智を超えた能力を持つ者の総称。
それは必ずしも、善なる者であるとは限らない。

 新興都市・神浜に出現したキャスター・リンボ、安倍晴明、
ドンキホーテ・ドフラミンゴはその悪逆の限りを尽くし、
街を破滅へと導こうとしていた。

 リンボの呪術結界、晴明の使役する鬼、ドフラミンゴの悪魔の実の能力「鳥カゴ」。
これらを突破するには、力が足りない。
ミスリルは「鉄の城」の異名を持つ驚異のスーパーロボット
マジンガーZのパイロット「兜甲児」、
ドフラミンゴと同じ世界からやって来たゴムゴムの実の能力者にして
海賊王を目指す少年、「モンキー・D・ルフィ」を新たに加えた
特異点(イレギュラー)によるドリームチーム「CROSS HEROES」を結成。
神浜市へと向かう。

 一方で、聖杯探索のためにレイシフトを敢行した門矢士とカルデア一行の前に現れたのは
行方不明になっていたミスリルの強襲揚陸艦「トゥアハー・デ・ダナン」のクルー
「相良宗介」と護衛対象の女子高生「千鳥かなめ」であった。
聖杯の力によって異世界の人々や建造物などが無作為に特異点へと
引き寄せられているらしい。お宝を狙うトレジャーハンター
仮面ライダーディエンド/海東大樹よりも先に何としても聖杯を回収しなければならない。

 一致団結したCROSS HEROESの奮闘により、
クォーツァー/アマルガム連合軍を撤退させる事に成功したのも束の間、
吉良吉影、そしてジェナ・エンジェルが廃墟と化した神浜市にて暗躍していた。

 平行世界を渡り歩きながら己の快楽のために殺人衝動を増長させる吉良吉影に
空条承太郎の怒りが爆発する。
そして実験体(サンプル)と称し、魔法少女であるももこの身柄を狙うジェナ・エンジェル。

 謎が謎を呼び、戦いが戦いを呼ぶ。
果てしなく広がり続ける、世界の壁を超越した戦い。最後に生き残る者は誰なのか。

2人目

「最悪の同盟」

その頃、スウォルツはというと……
「はぁ……はぁ……おのれクォーツァーめ……この俺があの場から帰ってきて早々『お前はもう用済みだ、もはや利用する価値すらない』だと?ふざけたこと言い出しおって……!こうなったらもうやつらの力など必要ない!この俺の手で新たな力と軍勢を手にして、ツクヨミもクォーツァーも、そしてオーマジオウさえも超えてみせる…!」

「ならばその野望、我々が叶えてやろう」
「!?」
するとそこに現れたのは晴明と左右で性別が違う謎の人物
「貴様はあの時の!……と、隣にいるのは誰だ?」
「初めまして、私はあしゅら男爵と申します。突然ですがあなたに1つ頼みがあって参りました」
「頼みだと?」
「はい……我々と手を組んでほしいのです」
「なんだと?俺が貴様らと?馬鹿馬鹿しい、突然現れて手を組めと言われて素直に言うことを聞くやつがどこにいる?」
「おやおや、いいのですか?我々に協力すれば神の力が手に入る可能性があるというのに……」
「神の力だと?」
「えぇ、我々はそれぞれの目的を達成するために手を組んでいるのですが、そこにいるあしゅら男爵の目的がミケーネ神と呼ばれる神々を復活させることなのですよ」
「ミケーネ神だと?なんなんだそれは?」
「かつてあやゆる宇宙や並行世界の神々や文明などと戦争を繰り広げた神々のことです。オリュンポスの神とも呼ばれており、後にギリシャ神話として様々な世界で語り継がれております。
しかし……ミケーネ神は何万年も前に裏切り者である光の神ゼウスと太陽の神ニカの手によって滅ぼされました。
ですが、彼らを慕っていたミケーネ人達の遺伝子は形を変えて様々な世界で受け継がれて来ました。
あなたの一族もそのうちの1つ、つまりあなたはミケーネ人の末裔なのです。
……そんなあなたがミケーネ神の復活に協力したとなれば、きっと我らがハーデス様があなたに神の力を授けてくれるでしょう……」
「ほう……なるほどな……いいだろう、貴様らと手を組んでやる!」
「おぉ…!感謝しますぞ…!」
(神の力……それさえ手に入れば……ツクヨミ、今度こそ俺はお前を超えることができる…!)
こうして、キャスター・リンボ、安倍晴明、ドンキホーテ・ドフラミンゴ、そしてあしゅら男爵の同盟に新たにクォーツァーから離反したスウォルツが加わったのであった。

3人目

「地獄の体現者」

 ――バードス島。

「よくぞ集った……異邦よりの使者たちよ」

 狂気の天才科学者、Dr.ヘル。
マジンガーZを建造した兜甲児の祖父、十蔵と双肩を並べる才能を持ちながら
古代ミケーネ帝国の遺産に魂を魅入られた男である。
その類稀なる頭脳により、彼はミケーネ帝国が並行世界にまで影響を及ぼしていたと言う
記録に行き着いた。

 その忠実なる部下、あしゅら男爵はリンボ、安倍晴明、ドフラミンゴと言った
異世界の住人たちをスカウトしスウォルツまでをも仲間に引き入れると言う手腕を見せる。

「クォーツァー、アマルガム、カルデア、ゲッターロボ、仮面ライダー……
これほどまでに我と同じく世界の壁を超越する者たちがいたとはな。
やはりミケーネの遺せし叡智は正しかったと見える。
諸君らの存在こそが何よりの証明である」

 世界はひとつではない。
人の数だけ世界があり、それらを隔てる壁を自在に飛び越える者たち。

「だが、それを阻む者たちもいる。憎き我が宿敵マジンガーZと兜甲児。
そしてそれに協力する異世界の者たち……即ち特異点(イレギュラー)共だ」

「ンンン、カルデア。今でこそ、まだ拙僧らの企みを知る術は無いようですが
いずれ必ずや邪魔立てをするであろう事は明白」
「麦わらの奴もこっちに来てたからなァ。有り得ない話じゃあねェ。
自分にとって起きて欲しくねェ事ほど往々にして起きるもんさ。
だからこそ面白いんだがな。フッフフフ……」
「ゲッターロボはこの世界においては宇宙から降り注ぐゲッター線を十分に取り込めず
機体の性能を完全に引き出すためのパイロットも不在。
言わば手足を失っているのも同然よ。ククク……」

 それぞれが因縁のある相手を想起しながら笑う。
彼らにとっても、それぞれの世界においての激闘は決して忘れようにも
忘れられない記憶。彼らの目的は数多の並行世界を束ねる事によって
この世界に更なる危機を呼び込む事なのだ。
それはかつて、『とある世界』で起きた事件の再現でもある。

「貴殿はどうだ、スウォルツ殿。我々と手を組むか否か?」

 Dr.ヘルがそう尋ねる。

「クォーツァーは俺を切り捨てた。今更戻る気はない。で、あれば……
俺はお前たちと組む他あるまい」
「賢明な判断だ。歓迎しようぞ」

 こうして新たにDr.ヘルの軍勢に新たにスウォルツが加わった。

4人目

「悪魔と因縁と」

一方その頃、神浜市では生き延びた人の捜索を終えたCROSS HEROESの面々が集まっていた。
「とりあえず、これで全員?」
「いや、まだソウゴとゲイツがいない」
「ももこさんと承太郎さんもいません……」
「あと4人か……」
すると
「おーい!みんなー!」
そこにゲイツを背負ったソウゴがやってきた
「ゲイツさん!?大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ……なんとかな……」
「ソウゴ、いったいなにがあったんだ…!?」
「実は、前にクジゴジ堂に来た吉良吉影って人にゲイツが攻撃を受けたんだ……」
「なに!?」
(吉良吉影……やっぱりあの人は……)
「その吉良とかいうやつは今どこにいる?」
「今、承太郎さんが相手をしている。どうやら同じ世界の人間みたい……」
「そうか……」
「皆はゲイツのことをお願い!俺は今から承太郎さんを……」
「その必要はない」
そこへ承太郎も合流する
「あ、承太郎さん!」
「すまない、吉良は逃してしまった」
「気にすんな、次見つけた時に捕まえればいいだけだ」
「これであとはももこだけか……」
「……わたし、ももこさんを探して来ます!」
「あっ、おい!」
いろははももこを探しに行った。
「行っちゃったね……」
「やれやれだぜ……俺はいろはを追いかける。またさっきみたいなことが起こる可能性があるからな」
「なら、私も行くわ」
「……わかった」
承太郎とやちよはいろはを追いかけた。

そんなももこはというと、現在ジェナ・エンジェルとの戦いに苦戦していた。
「う、うぅ……こいつ……強い……」
「……思ってたほど強くないな、魔法少女というのは……さて、そろそろ終わらせるとするか……!」
ジェナ・エンジェルがももこにトドメを刺そうとしたその時!
「っ!?」
二人の間に外套のように身を覆う四枚の羽根と、頭部を縦に割る巨大な口を持つモンスター……いや、悪魔が割り込み、ジェナ・エンジェルの攻撃からももこを守る。
「え……」
「お前は……!」
「久しぶりだな……ジェナ・エンジェル…!」
割り込んだ悪魔の正体、それはゲイルの変身する悪魔ヴァーユであった。

5人目

「Wake up, get up, get out there.」

「全くどうして、お前もしつこい男だな?ゲイルよ。」
ももこの命を刈り取らせまいと遮ってきたゲイルを、ジュナはそう吐き捨てる。
興味は変わらずももこ一人、その障害の一つに過ぎないと認識していた。
「言った筈だ、俺は誇りに賭けてお前たちと戦うと!」
対してゲイルは、ジュナへの憤怒を隠さぬといった有様で、ももこを庇いながらも戦う姿勢を崩さない。
そして、その後ろでももこに歩み寄る者が一人。
「彼女は任せろ。」
「…分かった、頼むぞ。」
黒いレザースーツと外套を纏い、白黒のドミノマスクで目元を隠した青年らしき男。
ゲイルに次いで現れたこの男は、ゲイルと入れ替わる形で彼女を庇うように立つ。
そこで初めて、ジュナの興味はその男へと移った。
「また結束か、お前も飽きない男だ。」
「あんた、誰だい…?」
ジュナ、ももこ、その二人にその存在を問われ、男は答える。
「ジョーカーだ。お前の歪んだ欲望、頂戴する。」
予告状代わりと言わんばかりに、ジュナへ向かって銃弾が放たれた。

_それはわずか数分前の事。
ジュナを追って鳥かごへと辿り着いたゲイルは、困り果てていた。
街を覆うこの糸はどうやら並の力では突破できないらしい。
遠目で見えたアニメの巨大ロボットらしき何かが放った一撃でもって漸く、といった様を見せつけられたのだ。
その穴も、この異常事態を見張る周囲の警察に囲まれ到底辿り着けそうにない。
「中に入りたいか?」
そんな時だった、彼、『ジョーカー』に出会ったのは。
「お前は…いや、それより中に入れると言ったか?なら頼む!」
地獄に垂らされた蜘蛛の糸、偶然、奇跡、幸運、何でも良いと縋るゲイル。
その懇願に、赤い手袋を今一度握りしめて男は告げる。
「ならば契約だ!俺についてこい、必ず中へお前を届ける。代わりにお前の力を、俺に貸せ。」
こうして悪魔と悪魔の契約は樹立した。

6人目

「Devil Dance」

弾丸が大気を貫き捩じり飛ぶ。
斬閃が周囲を巻き込み乱れ舞う。
 
闖入者であるジョーカー、及びゲイルとそれを迎え撃つジェナ・エンジェルの都合三者が交戦を始めてから僅かに数十秒。戦場となった神浜市跡地の一角は、既に何人たりとも立ち入れぬ領域に達し始めていた。
はためく黒衣と白衣が交錯するごとに響き渡る甲高い金属音が耳を劈いたかと思えば、その遠方から瞬く間に近接した緑色の外套が隙を突き切り刻まんと脚を振るう。
それらが生み出す余波はまばらに散らばる瓦礫の介在すら許さずに砕かれ、或いは切り裂かれて露と消えた。
一合毎に崩壊していく周囲とは対照的に、三名の身は全くの健在。即ちそれは、誰もが必殺の一撃を狙い撃ち合いながらも身を守る防御を並行させているということ。掠り傷を一つとして負わずに、絶死の空間を切り抜けて往く様は神業と呼ぶ他あるまい。

「そこ、ッ!」

悪魔ヴァーユがジェナ・エンジェルへと仕掛けた奇襲は、まるで予知をしていたかの如くに身体を逸らすか、脚の進路上へと悪魔と変えた右腕を配置されて攻撃の須らくが防がれる。しかし、それすらもが彼らにとってはブラフである。意識がそちらに向いた一瞬の隙を今度はジョーカーが狙った。
一合の間に、三度の銃声が爆ぜる。
それは寸分の狂いもなくジェナの総身に吸い込まれる......『よりも早く』、ヴァーユの脚を振り払った右腕が弧を描くように旋回して全弾を弾いた。

「どうした、私はまだ能力(ちから)を用いていないぞ」

均衡した戦況に、しかし切り札を未だ抜かないジェナ・エンジェル。
彼女は如何なる局面にてそのカードを切るか、加速していく戦闘と共に頭の片隅では思案の糸を張り巡らせていた。
”陰陽神”ハリ・ハラを模した悪魔の力は絶大だ。そも、彼らチューナーの能力の大元とも言える悪魔化ウィルスを作ったのもまた彼女であるが故に、同じくチューナーたるゲイルのそれとは一線を画したものであると言える。

「ああ、それは俺もだ」

ならばこそ、ジェナは思うのだ。今だと。
挑発のつもりで言葉を投げかけた直後、あのジョーカーなる少年の雰囲気が、変わったことを、彼女は敏感に察知していたのだから。
ぐい、とジェナが胸を開くと同時、刻まれたアートマが光り輝き。

「───、ペルソナ!!」

そして、ジョーカーは己が仮面を言紡ぐのだ。

7人目

「Will Power」

瞬間、仮面諸戸も蒼く燃え上がる黒賊の外套。
自爆か?否、これこそが運命を断ち切る切り札だと言わんばかりに、焔を纏いし鎖が顕現する。
未だ燃え盛る体を余所に、手袋越しに鎖を掴み取るジョーカー。
この場の者に晒したその素顔には、愉悦の表情が浮かんでいた。
「面白い大道芸ね、それが『切り札』かしら?」
挑発するジュナもまた、ジョーカーという人物への警戒を一段階上げていた。
まだだ、ここまで戦える者の切り札と言うからには、もっと上の力があるはずだと。
「ショーは始まったばかりだ…」
そして、ジョーカーはその予想と期待を上回った。
「_こい、アルセーヌ!」
焔から引き抜かれる無数の鎖。
そのうねりは彼の者の体を余すことなく燃やし初め、やがて蒼い火だるまがそこに顕れる。
_フハハハハハハハハハハ…………!!!
直後、青年の物とは思えぬ笑い声がこだまし、彼の顔があった箇所に3対の線が…否、赤い眼光が浮かび上がる。
焔はやがて青年の体を這うように昇り、離れ、そして鎖に引き締められ実態を持ち始める。
_我は汝、汝は我。
何処からともなく響き渡る声と共に、炎の内に秘めた赤いナニかがその姿を顕した。
じゃらじゃらと金属音を掻き鳴らす鎖が裂いた炎の中には、赤いタキシードに黒いシルクハットを着こなした、角の生えた異形の存在。
黒い仮面に走る3対の目と口らしき模様からは、ただただ畏怖の念しか感じ取れない。
だがジョーカーを見れば分かる、あれは叛逆の意思の現れだと。
意思をもった人格の鎧、ペルソナ。
ジョーカーのそれが、アルセーヌが今、顕現したのだった。
「さぁ、ショータイムの続きだ。」
気付けば鎖は崩れた鉄筋コンクリートごと三人を取り囲み、燃え盛るチェーンで出来たプロレスリングを生み出していた。
運命の鎖は、ここを決闘の場に選んだ。
2対1の変則マッチ。
「行くぞ、アルセーヌ!」
その火蓋が、今一度切り落とされた。

8人目

「Interlude - CROSS HEROESを知る女 -」

「………」

 暁美ほむらは自らが構築した世界にて、ダークオーブを通して
かの戦いの様子を眺めていた。
神の力の一部を奪い、悪魔となったほむらは並行宇宙さえ閲覧することが出来る。

 鹿目まどかを残酷な未来から救うため、永遠にも近い時間遡行を繰り返したほむらは
そのすべての記憶を有していた。
魔法少女たちの戦いの日々と、それに関わる人々の苦悩や葛藤の記憶を。
そして、その中には別世界で結成されたCROSS HEROESと共に戦い抜いた記憶も
含まれている。

「CROSS HEROES……因果なものね。貴方たちもまた、繰り返すのかしら」

 そう呟く彼女の顔には、自嘲とも哀愁ともつかぬ笑みが浮かぶ。

「私はただ、見届けるだけよ。それが私にできる唯一のことなのだから」

 彼女は静かに閉じた瞼の裏に浮かぶ光景はもう存在しない。
かつてのCROSS HEROESが辿った顛末を知る者ももう誰もいない。
それを見届ける前に、ほむらは時間遡行をしてしまったからだ。
彼女が求める結末を手に入れるために……

 永き旅路の1ページ。ほんの数瞬にも満たない泡沫の出来事だとしても。
それは確かに存在したのだ。彼女だけが覚えている物語として。

 この世界の中でなら、まどかは魔法少女として戦う事も無く、
円環の理の担い手として永遠の孤独の中に囚われる事も無い。
あの子は、幸せになれるんだ。
ほむらは目を開けて、再び空を見上げた。そこにはいつもと同じ景色が広がっている。
星々が輝く夜空と、月光を受けて輝く見滝原の街並み。
この小高い丘で、自らが魔力生成した椅子で座って眺める見慣れた風景。

 この世界では、誰もが等しく幸せになることが出来る。
誰一人として傷つくことなく、悲しみに暮れること無く生きていくことができる。
例えこの世界の外でどれだけの不幸があったとしても、この場所だけは例外となる。

 もういいじゃないか。やっと手に入れた平穏なんだ。
この結末を得るために一体どれほどの代価を支払わなければならなかった?
今更、手放してたまるものか。
ほむらは再び瞳を閉じた。意識の奥底へと沈み込むように、眠りに落ちるように……

 戦いの日々に、忘却を。悲しみの環に、終止符を。
それを背負うのは、私だけでいいのだ。

 

9人目

「I will./I may mimic.」

 君がいてもいなくても あきれるくらい美しい――/――静けさがしみ込むようで息を止めた。

 午前5時、星を見上げて爪を噛む。



頬を撫でる切り裂くような冷気を浴びて、ムーくん………家永むつをは嘆息を零した。眼前で騒音をまき散らす巨大スクリーンが映す喧騒に、ムーくんは鬱々とした感情がせり上がって来るのを感じて、思わず舌を打つ。
そこは神浜から遠く離れた都心部だった。あるのは液晶の向こうで喚きたてる報道陣と同じようにスクリーンに群がり話す連中の声だけ。三百六十度どこからでも聞こえて来るそれに晒され続けた聴覚はもう、大したストレスに感じなくなった。慣れてしまえばどうということはない。

「やっぱお前、馬鹿だろ。頭におが屑でも詰まってんのかよ」

蚊の鳴くような呟きは、当然の帰結として周りの声にかき消される。別にここにいる人間に聞いてほしい言葉ではないし、聴かれていてもどうでもいい。

───すまない、イエナガ。少し、行く場所が出来てしまった───

万々歳という中華料理店で腹ごしらえを終えたムーくんとゲイルは、情報収集の為に都心へと赴いていた。ムーくんもゲイルも所持金はなかったものの、昼に起きたアナザー龍騎とモンスターの出現の際、助けた住民から金を報酬として貰っていたらしい。
それを使って、人の多い場所へと移動を始めたのだが。ニュース速報で映し出される、さっきまでいた神浜と、ちらりとだけ映った、白衣の女。そいつを見た切り、金を押しつけてまた戻っていってしまった。
あんな、街を火の海にするような連中の場所まで、あいつは迷わず行きやがった。恐怖とかないのか、と思う。イカれてんのか、とさえ思う。

なあ、おい。聞いてるかよバケモノ野郎。
電車で移動してる時にお前の来歴を聞いたっきり、そのことばっか考えちまってんだ、俺は。
なんでだ。命なんか賭けて戦っても、楽園なんか行けなかったんだろう。当たり前だよクソが。そんな、誰も傷つかない世界なんて、ガキでも言わないような夢だってのに。
なんで──────、お前は諦めないんだ。なんで、進み続けられるんだよ。
俺だって、諦めたのに。
考えを打ち切って、星を仰ぎ見る。手を伸ばせば届きそうなほどにちっぽけで、しかしずっとずっと遠い宇宙。

「…………どうしたら、よかったんだよ。俺は」

10人目

「Trick Star」

瓦礫の霰が沸き上がり、辺り一帯の廃墟群に降り注ぐ。
時に火花を鳴らす礫は、人の脅威であることは明らかだった。
人の命を灯火とする風は、互いの力を発現させたジョーカーとジェナの一挙一動から放たれていた。
身体の全てをモノクロームデビルへと変貌させ、腕を振るうジェナ。
ただの一度で吹きすさぶ大気の脈動、たった一撃ですら致命になりかねない威力を持っていることを体現しているそれを、幾度となく繰り返すジェナ。
瓦礫の火花がメトロノームを刻む。
相対するは同じく異形の力を持ちながら、その力を傍に仕えさせ振るわせるトリックスター、ジョーカー。
強大な霹靂を前に、切り札たる有様を示すように、臆する様子を微塵も見せず敢えて自ら飛び込んでいく。
腰を落とし、不規則に、しかし確実に石礫の一つ一つを掠める様に駆け抜け、自滅行為に等しかった突貫は、彼の者自身の技量と判断力によって反転攻勢の兆しとなる。

「穿て、アルセーヌッ!」

ジョーカーの指示を受け、黒い翼で飛び上がる異形の超人アルセーヌが、両腕をジェナの喉元へと振るう。
同時にジョーカーから放たれる数発の銃声。
既に障害無きがら空きのソレは、アルセーヌによって断たれ…る事は無い。
流石悪魔と言うべきか、疾風迅雷とも言える速度で双方からの攻撃はブロックされ、両者の腕が交差する。

「惜しかったわね、大道芸人さん。その威勢を消し去って上げ…っ!」

プツリ、と自らの頬に走る三筋の線に気付いた時、腫れ物を扱うように指先で触り、血の感触を確かめて初めて、傷を負った事にジェナは気付く。
銃口を今一度見れば、向かう先はアルセーヌの切っ先、それは即ち数発の弾丸はブラフ。
本命の弾道はアルセーヌの『置いた』真空の斬撃を経由して放たれる、トリプルショット。

「余所見とは、余裕だな。いや、油断か?」

否、それすらブラフ、真の本命は…

「っよく喰らう!」
「…浅いか!」

気付けば腕を喰らわんと食らいつく、縦割れの口を持つ異形こそが本命。
一瞬遅れれば腕一つ持って行かれていたソレは、天才的な頭脳戦でもって生皮一枚にまでカバーされた。
より加速度を増した戦争とも呼ぶべき連撃の応酬。
そんな何人たりとも立ち入れぬ領域で、ただ一人。

「…これじゃあたし、足手纏いじゃんか」

己が無力に打ちひしがれる少女が、リングの外で呟いた。

11人目

「ペルソナとスタンド/悪魔と魔法少女」

「ももこさん!」
「いろはちゃん……」

 ももこを探しに出ていたいろは。
そしてその後を追いかけていたやちよと承太郎が、彼女を見つけた。

「良かった、無事だったんですね」
「うん……ごめん、心配かけちゃって」

 しおらしく佇んでいたももこに、いろはが寄り添う。

「ももこの件は何よりだったけど……」
「ああ、問題はアレだ」

 やちよと承太郎が見つめる先には、周囲を破壊しながら
切り結ぶジョーカーとジェナの姿があった。

「何者だ、あいつらは。新手の敵か?」
「あたしが白衣の方の女に襲われてた所を、あの黒い仮面の人が
助けてくれたんですけど……」
「スタンド……とは違うようだが、随分とゴツいのを従えているな」

 ジョーカーの傍らに立つアルセーヌをして、承太郎はそう評した。
ペルソナとスタンド。源流こそ違えど、己の内から出ずる超常的な存在という意味では
近しい点がある。それらが世界を超えてこの場に集った。
ある意味で運命的な事であったかもしれない。
しかし、今は悠長に構えていられる状況ではない。
人間離れした戦闘を繰り広げるジェナとジョーカーを見て困惑するいろはや承太郎たち。

「ギャラリーが集まってきたようだな。吉良吉影め、しくじったか」
「!? 今、吉良吉影の名前を……」

 承太郎はジェナの発した名を聞き逃さなかった。

「成程、合点が行ったぜ……あの身のこなし、
そして吉良の野郎と繋がっていやがるって事は、あの女も『ろくでもないヤツ』って事で
まず間違いはないだろう。だが、それと敵対しているあっちの仮面の野郎は何だ?
アイツもただ者じゃあないのは確かだろうが……どうにも分からない事だらけだぜ……」

 即座に状況判断を下し、考察する承太郎。
その隣でやちよも思案していた。

(この異常な魔力量……魔女とは違うみたいだけど……)

 やちよはジェナが放つ禍々しい魔力に違和感を覚える。
魔女ではなく、悪魔の力を宿す者。それがジェナ・エンジェルと言う女だ。

 ペルソナ使いとスタンド使い。悪魔と魔法少女。
本来交わるはずの無かった力が、今こうして一つの戦場でぶつかり合っている。
戦いの中で、やちよは思った。自分がこれまで見てきたものとは比べ物にならない程の
何かが、確かにこの世界に起こり始めていると。

12人目

「コギト・エルゴ・スム」

 予想とは、大概にしてよく外れるものだと、ジェナ・エンジェルは理解している。仮にも一介の研究者であった彼女は、それ故にこそ動揺せずに事態に対処することができた。

「全く、こうも集られてはたまらん。これでは対象の一人も捕まえられないか」

 ああ認めようとも、完全にしてやられたとも。だからこそ、早急な対処が必要だ。
 ジョーカーとゲイル、そして承太郎とももこ、いろはとやちよを一瞥した後──────、

「そら、出番だぞお前たち。精々暴れてみせろよ」

 瞬間、承太郎ら目掛けて襲い来る、不可視の衝撃!道路舗装すらもが塵と変わり、野ざらしになった地面が捲り上がるように爆ぜ、瞬く間に吹き飛んだ瓦礫が、承太郎とももこ、いろはを分断させた。

「お前、何を──────!」

「さて、こちらは続行だ。決着を付けようか………………!!」



 衝撃により吹き飛ばされたやちよの身体が宙を舞う。事前に魔法少女と身を変えたからこそ、死の運命より逃れられた。咄嗟に受け身を取ったやちよの前に立は、赤髮の男。

「女かよ、ついてねえなお前も」

「ぁ、なたは………………」

「『ヒート』。てめえを喰らう者の名さ。覚えなくていいぜ」



「下らん。何もかもが不快であるぞ、ジェナ・エンジェル」

 いろはの前に立つは、女。ぞっとするほどに冷淡な笑みを讃えて、見下すように。

「っ………」

「まだ生きていたのか、哀れなことだな」

 嗤いながら、腕を向ける。その右腕に収束するは、冷気。

「我が名を、『ウラヌス-No.ζ』………………貴様を殺すこの尊き名を、冥府の底へと抱いて逝け、下民」



「やれやれ………………新手の御出ましか」

 乱れた帽子を直した承太郎が、眼前にて笑い転げる男を睨む。 
 間違いない。この大破壊を齎したのはこの男であるのだと、スタンド使いとして培った勘が告げていた。

「ああそうだともよ、ジェナの奴も中々乙なことをしてくれるじゃねえか」

 互いにぶつかり合う、純然たる敵意。

「呵々。風貌の悪さってぇのは損だねぇ。一目で、チンピラとしか思われないでやんの」
 
 承太郎はスタンドを、そして男──────『アスラ・ザ・デッドエンド』は拳を構え。
 次の瞬間、拳と拳が轟音を奏でて交錯するのだった。

13人目

「夜明けの星に憧れて」

結論から言おう、これ以上の時間は、もう掛けられない。

次々と集う敵と味方に、広まっていく戦火。
放置すれば泥沼の試合を繰り広げかねない状況。
時間と共に迫り来る鳥かごを前にして、一瞬の思考の後にジョーカーが下した判断は、短期決戦。
横目でアイコンタクトを取ったゲイルも同じ結論に辿り着いていた頃には、既に行動は始まっていた。
「マハエイガオンッ!」
瓦礫吹きすさぶ一撃の衝突の中、たった一節唱えられた呪法は、遍く呪怨でもって地平を埋め尽くさんとする一撃を巻き起こす。
廃墟の大地は腐る様に呪い溶かされ、色を失ってはドス黒い瘴気を立ち上げていく。
「マハラギダインッ!」
同時に唱えられた一節もまた、大地を焼き尽くしながら迫り来る焦熱の津波を呼び起こし、リングを駆ける。
ジャラリと燃ゆる鎖を張らせる程に風圧を放つ陽炎を纏い、大地を侵した呪怨を喰らい、やがて混ざり合いながらジュナへと迫る波は、明確な殺意という他無かった。
「仕掛けに来たか、良いだろう。」
凡人が飲み込まれれば一瞬の苦悶すら無く滅びるであろう一撃。
それでもジェナの命を刈り取ることは勿論、苦痛の叫びを上げさせることも無い。
「お返しといこうではないか。」
地獄とも言うべき熔解の中、印を結んで放たれる無名の必殺技が、ジェナに向けられたソレ等諸共、逆にジョーカー達へと殺到させる。
竜巻さえ伴う殺意の奔流は、当人たちへと返されんとしていた。
「ジョーカー!」
しかしジョーカーを庇わんと前に出たゲイルによって、呪熱の波と一撃は掻き分けられる。
無論、無傷で済む筈も無く、声無き悲鳴を押し殺しながら。
「助かった、後は任せろ!ランダマイザ!」
ゲイルの一心に報いるべく発動するジョーカーの大仕掛けは、初めてジェナの動揺を誘う事に成功する。
それこそが叛逆の合図だった。
「がっ!」
「頂くっ!」
先の攻撃に乗せられた”ジョーカーの手首から伸びるワイヤー”が今、ジェナの首を絡め取り、互いを引き合わせる。
吊り上げられた魚の如く虚しい抵抗の末、ジェナは二人の前に引き釣り出される。
「「トドメだ!」」
「…調子に、乗るな!」
そして三人の影が重なり、閃光が走り、気付けば互いが武器を振るった姿で止まっていた。
一瞬の間の後、倒れ伏す者が現れる。
「…がはっ。」
それはジョーカーとゲイルであった。

14人目

「XENOVERSE - はじまりの勇者 -」

 アレフガルドの勇者・アレクとラダトーム城の王妃・ローラ姫。
彼らは竜王を打倒した後、悪魔から平和を取り戻した世界を巡る旅に出た。
そしてCROSS HEROESの一員になるまでの間に彼らは
「二度」世界の壁を飛び越えると言う経験をしている。
その中で、アレクとローラは「とある人物」と出会った。

『ありがとな、アレク。おめえのおかげで助かった』
『礼を言うのは私の方だ、孫悟空。私だけではローラ姫を守りきれなかったかも
知れない』

 アレクの記憶に微かに残る、その男。山吹色の道着を身につけた、
筋骨隆々とした偉丈夫だった。地球育ちの戦闘民族サイヤ人、孫悟空。

『また会えるか?』
『残念ですが、俺や悟空さんと出会った事はあなた達の記憶から
消えてしまう事でしょう』

 サイヤ人の王子・ベジータの息子にして過去に犯した
歴史改変の罪を償うべくタイムパトローラーとして戦う使命を帯びた青年、トランクス。

『そっかぁ。じゃあ、これで最後になるかも知れねえんだな。それならよ』

 悟空は静かに身構え、戦闘態勢に入った。

『闘ろうぜ、アレク。オラ、おめえと目一杯闘いてぇって思ってたんだ!』
『やれやれ。変わらぬな、貴殿も』

 苦笑しつつ、アレクは腰を落とし構えを取る。

『まあ、アレク様も悟空様もこれが今生の別れとなるかも知れないと言うのに……』
『ふふ、だからこそ、かも知れませんね。悟空さんはそう言う人なんですよ』

 苦笑しつつ、アレクは腰を落とし構えを取る。

『はああああああッ!』
『おおおおおおおッ!』

 二人の戦士が激突し、周囲に衝撃波が巻き起こる。
悟空とアレクは互いに全力を出し切った。結果は引き分け。
しかし二人は満足していた。最後に最高の相手と戦う事が出来たのだから。
そうして悟空とトランクスの姿は光に包まれ消えていく。

『じゃあな、アレク、ローラ! おめえ達と戦えて楽しかったぞ!』

 最後の言葉を残して。そして時は流れ、現代へ。
トランクスの新たなる使命。再び大規模な歴史改変を企てる者たちの打倒。
それが今一度、勇者たちを一堂に集結させる事となる。

「アレクさんにローラさん……これもまた、運命と言う奴なのだろうか……」

 CROSS HEROES reUNION。これは、その始まりの物語。

15人目

「正義の騎士(ナイト)達」
神浜で激闘が行われてた中、とある異世界でも異変が起きようとしていた。
その世界の名は《スダ・ドアカワールド》。
アレクとローラがいた世界と同じ剣と魔法のファンタジー世界で、違うところがあるとすればこの世界には人間とは別にMS(モビルスーツ)族と呼ばれる種族が存在しており、人間族とは共存関係であることだろう。
しかし、この世界はジオン族による攻撃・侵略を受けていた。
そんな中、一人の戦士が立ち上がった。その名は《騎士(ナイト)ガンダム》。
記憶喪失しラクロアに流れついたガンダム族の彼は、仲間達と共にジオン族と戦っていた。
そして現在、バーサル騎士の称号を得た彼は同じガンダム族であるアルガス騎士団の《剣士ゼータ》《闘士ダブルゼータ》《法術士ニュー》《騎士アレックス》と共にジオン族の本拠地であるムーア界へと乗り込むために、時空転移をしていた。



「この空間を抜ければ、いよいよジオン族の本拠地だ。皆、覚悟はできてるな?」
「はい。奴らを統率する悪の源、ジークジオンもそこにいるはず!」
「必ずや奴を打ち倒し、スダ・ドアカワールドに平和を…!」
「………」
「……騎士(ナイト)殿?
さっきから黙り込んでおりますが、どうなさいましたか?」
「いや……ちょっとな……」
「……もしかしてですが、来られなかったアムロ殿達のことをお考えで?」
「それもあるが……
……何となくだが、わかった気がする。
我々、5人のガンダム族の末裔がここに集った事…
……いや、私がラクロアに流れついたのは、おそらく……」
騎士ガンダムが話をしてるその時

「!?ぐぅっ!こ、これは…!」
「空間が……乱れる……!」
そう、突如として周りの空間が歪みだしたのである。
「皆!私の後ろに…!」
「っ!騎士殿!あれを…!」
法術士ニューが指を指した場所、そこにあったのは巨大なワームホールだった。
そのワームホールは時間が経つにつれて少しずつ肥大化していき、騎士ガンダム達を吸い込み始めたのである。
「クッ、いったいなにが起きて…!?」
「うわぁああああああっ!?」
騎士ガンダム達は突如として起こった空間の歪み、そしてそれによって発生したワームホールに吸い込まれてしまった。
果たして、彼らに待ち受けるものとは…!

16人目

「追想のディスペア」
超高速の拳のせめぎ合いと共に響き渡る衝突音とまともに目も開けていられない豪風が、眼前で戦う都合二人の強者のものである、とももこはその肌で感じ取っていた。
空条承太郎とアスラ・ザ・デッドエンドの闘争は、一刻と時を刻むごとに、その激しさを増している。拳撃という等しい暴威を唯一の武器とする二者の戦いは、力押しの短期決戦へともつれ込んでいる。故に全力で互いの撃破に心血を注ぐ彼らの間に、またも入り込めないというのが現状である。
「あ、そんなっ…………!」
だから、承太郎とスタープラチナがアスラの拳に押し負けももこの付近へと弾き飛ばされても、咄嗟に反応出来ず。
地に投げ出される承太郎を助けられず見ていることしかできない。
だからだろうか。ももこの目と鼻の先に落ちた承太郎に、咄嗟に何かを言おうとして。
「じょ、承太郎、さん。あたし結局、」
何も言えない自分に自己嫌悪を募らせようとし。
「君は、どうしてここにいる」
罵倒でも、𠮟責でもない問いがかけられて、思考が真っ白になってしまった。
「………え」
「戦いたくないなら逃げればいいだろう、そんな風に怯えているのであれば尚更そうすべきだ」
そうだとも。彼は最初から、ももこにそう言っていた。
「しかし、君はここにいる」
「そ、れは」
「往くんだ、君はまだ、大事なものを取りこぼしてはいないのだから。まだ、掴んでいられるのだから」
彼女の住まう神浜は露と消えたけれど。まだ、君は仲間を失っていないだろう。助けられるだろう。……嘗て自らの知らぬ所で死なれてしまった承太郎と違って。
「だから、ここは任せな。──────、『立ち上がる』と心の中で思ったなら、その時そいつは既に『歩き出している』んだぜ」
「……っ!」
それに返すは、頷き一つ。ここから一番近い、ジェナ・エンジェルと見ず知らずの己を助けてくれた二人の下へと、走って行った。

そして、残るは。
「見た目に寄らず律儀だな、わざわざ待っているとは」
「いやなに、ちょっくら昔を思い出して、な」
そう言ったアスラが思い返したのは、嘗て英雄と戦った時のこと。親父と、共に戦った時のこと。
あの時のジン・ヘイゼルの顔と、先ほどの承太郎の顔が、似てもいないのに重なってしまったからもう、隙を突くなんて無粋は出来なかったのだ。
「さあ続きだスタンド使い、せいぜい楽しませろよッ──!」

17人目

「イカロスは蠟の羽で飛ぶ」

力を得た人間はその誇りとも言うべき自我故に、守る側でいたい、せめて共に戦いたいと思うようになる。
魔法少女という人知を超えた力を持ったものであれば尚更だという思いを、ももこは無自覚ながら抱え込んでいた。
守られているのは自分には似合わないという、自らの姉貴肌な性分もあった。
だからこそ、眼下に広がる光景を見た時、ポジティブな思いの裏で押し込めていた不安が爆発するのは必然であった。
「っ!!」
声無き悲鳴、傷無き痛み、その両方が少女の心を支配する。
自らを庇ってくれた二人が、無惨に地面を這いつくばりながら腹を庇いながら倒れ伏す姿。
その傍らで己が勝利を噛み締める様に腕を握り絞め、二人を見下ろす異形のジェナ・エンジェル。
自分をサンプルと呼称し襲い掛かってきた女が勝者となった事実は、少女の心に罅を入れるのには十分だった。
「(何で、いつもタイミング悪いかな…!もっと早く決心していれば…!)」
今一度無力さを噛み締める少女を余所に、ジェナは二人へトドメを刺さんと振り返る。
ジョーカー、ゲイル共に吐血すら伴うその姿から、最早彼女の計画に支障の無い存在となった筈である。
しかし往々にして予想外の事は起きると、今しがた身を以て知ったばかりの身に、余念を残す等という考えは無い。
「散々に暴れてくれたな、全くもって目障りだったぞ。」
自らの胸元に刻まれた『斜め十字の傷』を確かめながら、今度こそ例外は許されないと、イレギュラーめがけて異形の腕を振るわんとする。
「まだ、だ。」
今だ抵抗せんと銃口を向けるジョーカーにやはり、と防御の姿勢を取るジェナ。
だが引き金から鳴るカチッという無機質な音に、遂に勝利を確信した。
「弾切れか、良くここまで粘ったものだ。せめて楽に死なせてやろうか。」
再び振りかぶる腕が、ジョーカー目掛けて振り下ろされんとした瞬間。
「後悔は、後だぁ!!」
ザシュ、と血生臭い音が、少女の、ももこの威勢と共に異形の腕から鳴り響く。
「ぐあぁっ!!?」
油断大敵というべきか、気付けばジェナの腕が縦に斬り裂かれんとしていた。
ももこの独特な武器形状が原因か、手の甲から平までは貫通しきっている。
ここ一番の苦痛の声を上げるジェナを前に、ジョーカーは呟いた。
「ナイス、タイミングだ…」
「っ!へへ…!」
それは、彼女にとって最高の誉め言葉であった。

18人目

「希望と絶望の相転移」

「小娘……」

 低く怒りを滲ませた声でジェナは言う。
対するももこは、眼前の敵を睨みながら応えた。

「もう、お前の好きにはさせないよ」
「そうか……なら、試してみるかね?」

 言い終えると同時、ジェナは自身の胸に手を当てる。
胸元の傷跡が光り輝いたかと思うとまるで逆再生するかのように
修復されていくではないか。
そして光が収まる頃には、先程まであった傷など無かったかのように消え失せた。

「なっ……」
「ふっ、いい表情だ。希望の頂から絶望の奈落へと堕ちていくかのような、な」

「カカカカ! おいおい、やられてンじゃねえのよ、ジェナ!」

 高らかに笑うアスラ・ザ・デッドエンド。

「余所見を!」
「劣等種を相手に目を合わせる必要があるか?」

 トライデントを突き立てようとするやちよの攻撃を、目視する事もなく避わし、
カウンターの中段蹴りを見舞うウラヌス-No.ζ。

「くあッ!?」

 そのまま片足でやちよの体を持ち上げ、アーチを描いて地面に叩きつける。

「やちよさん!?」
「悪いな、お嬢ちゃん」

 ヒートが掌からファイアボールを放ち、いろはの援護を阻む。
いろはのボウガンから放たれる魔力の矢を物ともせずに轟々と燃え盛る火球は、
真っ直ぐに飛んでくる。

「きゃああああッ!!」

 咄嵯の判断でシールドを展開し、何とか防ぎ切ったものの、
衝撃で大きく後ろに吹き飛ばされ、壁に激突してしまった。

「うう……ああッ……!!」

 ウラヌスに踏みつけられたやちよの体が絶対零度の氷結に包まれていく。
悲痛な叫び声を上げながらも、必死に逃れようと試みるが、
その度に足を捻じ込まれてしまう。
そんな彼女の姿を嘲笑いながら、ウラヌスは語り掛ける。

「そうだ。地に這いつくばり、苦しみの呻きを漏らせ。
それだけがお前達劣等種に唯一許された事だ」

 いろは、やちよ、承太郎……連戦に次ぐ連戦に、体力の限界を迎えていたとは言え、
この集団はあまりにも強すぎる。
いや、そもそも何故ジェナ・エンジェルはここまでの力を持っているのか?
今まで倒してきた魔女とは、明らかに一線を画す強さ。

「どうだ、小娘? 私と一緒に来ると言うのなら、あいつらを助けてやってもいい」
「え……!?」

 ジェナから持ちかけられる残酷な提案に、ももこは……!?

19人目

「だからこそ太陽に憧れた」

「そんなの…お断りだ!」
拒絶、それがももこの決断だった。
「…ほう?あれを見てまだ抗うか、小娘(サンプル)が。」
「小娘じゃねぇ!アタシはももこ、十咎ももこだ!」
少女に絶望の表情は既に無い。
括目せよ、今だジェナの片腕に刺さる独特の鉈を握りしめ、闘志滾らせる魔法少女の姿を。
「…カーッカッカッカッカ!よく抗った、小娘!」
そして聞け、幾多の戦場に響き渡る、闘神の高笑いを。
「…テメー、何者だ?」
承太郎とアスラが空を見上げる。
鳥かごの空に空いた一筋の穴から、声の主は降り立って来る。
人ならざる青い肌、6本の腕、そして三つの顔を持つ悪魔超人。
「カカッ、この顔に見覚えが無いとは言わせぬぞ?」
「…まさ、か。」
「如何にも、この俺こそ悪魔六騎士最大の刺客、アシュラマンよ!」
黄金の王冠を被った魔界のプリンス、アシュラマンがそこに居た。

「カカカ、我もそろそろ大暴れしたかった頃だったぞ?」
同時に地より響き渡る地獄からの呼び声と共に、ウラヌスの足場が崩れ落ち、内から現れたる灼熱が氷が溶かし割る。
そして足場そのものが崩れ落ち、下手人がその姿を象っていく。
「…我が身を地に落とす等、如何なる劣等種か。その愚行に相応しき醜怪な姿を現すが良い!」
「顔合わせも無しに随分な挨拶をするか、オレにお似合いの相手だな。」
母なる地球より現るその姿は、星座の如き瞬きを放つ悪魔六騎士の一人。
「貴方は…」
太陽系の星々を体に散りばめた大男。
「プラネットマンだ。この名、冥途の土産に覚えておけ、なぁウラヌスよ?」

その一方で、吹き飛ばされたいろはへと追撃を仕掛けるヒートの首に、鎖が巻かれる。
「ヒートと言ったか、実に悪魔らしい力だな?」
「ガッ…!?」
突如として塞がれた呼吸に喘ぐヒートを投げ飛ばす、肩に星を持つ怒りの形相をした大男。
「ならば私テリーマンも、悪魔には悪魔のファイトで戦うとしよう!」
「あ、ありがとうございます!」
そんなダーティーファイトに救われたいろはが、男へ感謝する。
対して男は振り返って、先程とは違う暖かな笑顔を向けていた。
「ここから先は任せてくれ、お嬢ちゃん。」

「形勢逆転、だな。」
事実を突き付ける様に、二人が立ち上がる。
「(…このサンプルだけでも撤退、か?)」
今度はジェナが、判断を迫られる側となった。

20人目

「永き戦いの幕引きは」

「ふっ、よもや超人が私を追って来ようとはな。光栄だよ」

 突如現れた超人軍団とジェナ・エンジェル。
ジェナ一味と彼らは何かしらの因縁がある様だが……

「ジェナ・エンジェル。今度こそ、お前達を倒す!」
「悪いが、それは無理というものだ」


『コッチヲ見ロォォォォォォォォォォォォォッ!!』


「なっ……!?」

 突如、機械的な音声を発する髑髏をあしらった小型戦車が疾走して来た。
そして超人軍団の眼前まで迫ると、大爆発を起こす。

「うおっ!?」
「良いタイミングだ、吉良吉影」

 吉良吉影、第2の爆弾。その名は『シアー・ハート・アタック』。
熱源を自動追尾し、対象と接触して爆破する能力。

「あっ……!」
「ももこさん!?」

 視界を遮られた隙にジェナはももこを攫い、上空高く舞い上がる。

「フフフ……私はシアー・ハート・アタックの事を何よりも『信頼』している」

 吉良吉影は遠く離れた場所からシアー・ハート・アタックを遠隔操作して放ったのだ。
そして、ももこを小脇に抱えたジェナが飛び出してきたのを確認すると、ニヤリと笑う。

「カカカカッ、俺は超人どもと死ぬまで戦り合っても良かったんだがなァ!!
時間無制限、ルール無用の残虐ファイトってかァ!?」
「まったく、手間をかけさせる。私の手を煩わせるなど、それだけで万死に値するぞ、
ジェナ・エンジェル」
「どいつもこいつも血気盛んです事で」

 ジェナに続き、アスラ、ウラヌス、ヒートも次々と追随する。

「くっそ……! 離せ!!」

 抵抗するももこを、ジェナは軽々と抑え込む。

「不覚……まさか伏兵がいたとは」
「ももこ……!! あの時、俺が吉良を確実に仕留めていれば……!」

 悔しさを滲ませる承太郎。いろはややちよの消耗も、
ジェナ一味との戦いが決定打になったと言えるだろう。

「う、うう……やちよさん……ももこさんまで……」

 特にウラヌスの氷結攻撃によってやちよの身体は凍え切っている。
いろはは残る魔力を以って、回復魔法を発動する。
テリーマンはその姿に感心した様子を見せた。

「……素晴らしい。アシュラマン、プラネットマン。ジェナ一味を取り逃したのは痛いが、
まずは彼らの手当てをするのが先決だ」

 ジョーカーやゲイルも含め、超人軍団は傷ついた戦士たちを保護する事にした。

21人目

「1つの戦いの終わりとクォーツァーの野望」

一方CROSSHEROESの面々は吉良の攻撃により大きなダメージを受けたゲイツの看病をしつつ承太郎達の帰還を待っていた。
「……承太郎さん達……大丈夫かな……」
「今はアイツらのことを信じるしかねえよ……」
「うん……」
するとそこに承太郎、いろは、やちよ、ジョーカー、ゲイル、超人軍団が来た。
「あ、皆!無事で良かった…って、あれ?ももこはいないの?」
「それになんか変なやつらが増えてないか?」
「詳しい話はあとだ。まずはこの鳥カゴの外に出るぞ」
「あっうん、わかった」
一同は鳥カゴの…神浜市の外へ出た。



一方その頃クォーツァーの方はというと
「……別の世界の調査だと?」
『あぁ……こちらの計画を行ううえで最重要人物である千鳥かなめが行方不明でな……世界中どこを探しても発見できず彼女を護衛してるミスリルですら知らないようだからな……別の世界に飛ばされた可能性があると思ってな』
「なるほど……それでそのかなめとやらを探すために別の世界を調査したいと……」
『そうだ。それにあたってしばらくの間こちらの戦力の一部をそちらに預けようと思う。
別の世界の調査をするとなるとそちらに援軍を送るのが難しくなるからね、自由に使ってくれ』
「わかった、そちらの健闘を祈る」
そう言いクォーツァーの王は通信を切った。

「さて……こちらの方は準備はほぼ整った……あとは替え玉の王が持つグランドジオウウォッチさえ手に入れれば、我々の計画を実行に移せる」
「ですが王、1つだけ懸念点がございます」
「……タイムパトロールのことか……」
「はい……前の世界ではやつらの妨害もあり計画は失敗してしまいました……恐らくは今回もやつらが邪魔してくるでしょう……」
「確かにそうだな……なにか対策せねばな……」
「でしたら王、私にいい策がございます」
「ほう……その策とはいったいどのようなものなのだウォズ?」
「はい、目には目を歯には歯を……タイムパトロールの戦士達が元いた世界のいろんな時代から強力な戦士達をスカウトするんです」
「なるほど、確かにそれなら奴らにも対抗できるな……よし、なら早速実行に移せ!」
「はい……お任せください」
「我々の野望である『平成のリセット』の達成は間近に迫っているのだ……どんな手段を使ってでも絶対に果たしてみせるぞ…!」

22人目

「インターミッション」

 ドフラミンゴ、リンボが去った事により鳥カゴと呪術結界の効力も時が経つと共に消失、封じ込められていた神浜市にもようやく青空が取り戻された。
しかし、CROSS HEROESの面々の表情は浮かない。

「何てこった……まだそんなとんでもねえ奴らが街をウロウロしていやがったとは……」
「それにももこちゃんまで攫われてしまったなんて……」

 強敵たちとの度重なる激闘、そして街の人々の救助活動で四方八方に
散り散りになっていた事が仇となった。
CROSS HEROESは拠点であるトゥアハー・デ・ダナンに戻りこれからの方針を
協議していたのだ。

「ジェナ・エンジェル、その女もまた異世界からやって来たと?」
「ああ。俺が追っていた吉良吉影もその女とつるんでいるらしい。
他にも見慣れねえ連中を従えていた。先のクォーツァーの一員かどうかは分からんが
奴らも一枚岩じゃあなさそうだ」
「CROSS HEROESのように異世界の者同士で徒党を組んでいるという事か」

「吉良吉影がクジゴジ堂に現れた時アマルガムの連中は俺たちごと吉良も
巻き添えにしようとしてたよ。とても仲間って言う風には見えなかったな」
「所詮は悪党同士だ。互いに利用し合う関係なんだろうさ」

 その時、光子力研究所から連絡が入る。

『甲児くん、新たな機械獣が出現した! 至急こちらに応援に来て欲しい!
現在ボスくんとさやかが食い止めてくれているが長く持ちそうもない!』
「何ですって、こんな時に……分かりました、すぐに」
「俺も手を貸してやるぜ」

 竜馬が名乗りを上げる。

「ここの設備班にゲッターのメンテをしてもらった。ゲッター炉の出力は
本調子とまではいかねえが、それなりに使えるレベルには回復してるはずだ」

「甲児さん、竜馬さんとゲッターロボの処遇をお任せする事になりますが……」
「構いませんよ、テッサ艦長。彼も異世界からの特異点ですし放っておくわけにも。
竜馬さん、一緒に戦ってくれるんですね?」

 甲児の問い掛けに、竜馬は不敵に笑う。

「ああ。お前たちと一緒にいりゃ、いずれ晴明とも会えるかもしれねえしな」
「そうと決まれば急ぎましょう! みんな、また会おうぜ!」

 こうしてマジンガーZとゲッターロボは息つく間も無く
機械獣討伐のためにトゥアハー・デ・ダナンから発進した。

23人目

「アレク様、ロトの剣が……」
「はい、あの頃のように」

ロトの剣を納めた鞘からは謎の青い光が溢れていた。
それを見たソウゴは好奇心に満ちた顔で訪ねる。
「あの頃?二人で旅をしてた頃の話?」

「はい。旅の最中でラダトームに残っていないアレク様の先祖である勇者ロト一行が所有していたとされる秘宝を見つける事がありました」
「その内の一つがラーの鏡。真実を映す鏡で呪いで姿を変えられたものを元の姿に戻したり、偽りの姿を強制的に暴く事が出来るそうだ」

「それを見つけた時も剣が光っていたと?という事は……」
「この世界にその大昔の勇者ゆかりの物があるかもしれないって事じゃん!」

月美の言葉の途中からソウゴが興奮気味に話を継ぐ。

「勇者様とお姫様がいた世界のお宝がこの世界に?そんな事がありえるのか?」
「世界の壁が曖昧になってる以上、ありえないとは言えないかもな……」
「そのラーの鏡みたいな秘宝や古の勇者様が使っていた強力な武器が手に入るってんなら探してみる価値はあるんじゃない?」

クルツ、承太郎、マオは口々に意見を挟む。
その中でゲイツは怪訝な顔で口を開いた。

「その為だけに俺達全員で動こうとでもいう気か?」

「いえ、私達はルーラ……移動呪文が使えます。行った事がある人里ならすぐに戻れるので私達だけで動く事は難しくありません」
「ならいいが……」
「魔法って便利……」
「いいじゃねぇか。俺も勇者のお宝ってのがあんなら見てみてぇし」

ゲイツは多少ばつが悪そうに口をつぐむ。一方の月美とルフィは魔法と秘宝という言葉にそれぞれの思いがあるようだ。

「では、私とアレク様は一旦別行動を取らせていただきます」
「わかりました。お二人には連絡用の通信端末をお渡ししておきます。何かあれば知らせてください」

テッサは二人の別行動に許可を与えた。
かくして二人にはこの世界で最初のクエストが定まったのだった。

24人目

「始動、超人」

「カーカカカ!手酷くやられた様だな?」
「そう言ってやるな、アシュラマン。彼は最善を尽くした。」
CROSS HEROESへと新たに加わったテリーマンと悪魔超人達、そして謎の二人。
後者のジョーカーはジェナとの戦闘で負った傷を癒す医務室にて、前者のアシュラマンに嗤われていた。
「…いや、彼女を逃がせなかった。結果が全てだ。」
「ジョーカー…」
これは叱咤だと受け入れるジョーカーに、テリーマンは今一度慰めの言葉を投げかける。
「君が一人で全てを背負う必要は無いんだ。キン肉マンが王として地球を後にした様に、一人に出来る事は限られている。だから。」
「それでも、救いたかった。」
そう懺悔するジョーカーの横で、ゲイルもまた心の中で悔やむ。
「(ジェナ、俺はお前を…)」
「辛気臭い顔をしているな、ゲイルとやら。大方あの女の事でも考えてたのだろう?」
そんなゲイルの内心を、プラネットマンが瞑想しながら言い当てる。
「お前達、ジェナについて何か…いや、そもそもこの少年は?」
改めて考えれば、ジョーカーという少年には謎が多い。
18も行かない歳の少年が、世界各国を代表する正義超人や悪魔超人と関係がある等、普通はあり得ない。
「さてな。それよりお前等、このままでいるつもりか?」
ゲイルの追求を躱す様に、プラネットマンが本題へと移る。
このまま、即ちジェナにやられたまま、ももこが攫われたままで良いのか。
「「…いいや。」」
答えは、同じだった。
「カカッ、返事は良い奴だな。だがその様ではここから出るのも叶わんな?おい、BH。」
「ここに。」
アシュラマンの呼び声と共に現れる、顔に赤い穴が開いた黒い悪魔超人。
彼こそは宇宙に空いた重力の穴、ブラックホールである。
「奴等に肩透かしを食らったからな、代わりに機械獣とやらで鬱憤を晴らすとしよう。」
「分かりました、では…吸引!」
BHの顔の穴へと風が流れ込み、景色が映し出される。
その穴から見える出マジンガー達が戦う戦場へと、アシュラマン達は勢いよく飛び込む。
後に残されたのは、BHとゲイル達だけだった。
「…お前は行かないのか?」
「私は出ろとは言われてないからな、何をしても自由だ。そう、誰かを転移させてもな…」
「…そうか、恩に着る。」
「さて、何の事だか。」

数十分後、医務室からジョーカー達は居なくなっていた。

25人目

「伝説の王者と天下一の戦士」

 キン肉マン。本名、キン肉スグル。
48の殺人技と火事場のクソ力を駆使して数々の悪行超人をマットに沈めた正義超人の雄。
キン肉星の王座を継承した後、テリーマンを始めとした仲間たちに地球の平和を託し
宇宙へと去って行った……のだが。

「ガツガツガツガツガツガツガツ」

 深夜の牛丼屋でカウンター席に空の器を山積みにする男が、二人。

「ひゃあ! 美味えな、この牛丼! すんませーん、おかわりー!」
「そうじゃろう、そうじゃろう! 深夜の牛丼、これはまさに悪魔の味よの~!」


「スグル大王様!!」


「どひゃあっ!? んがぐぐ……の、喉に、喉に詰まったァ~~ッ!!」

 スグルは慌ててコップの水を飲み干し、どうにか事なきを得た。
一呼吸置いてから改めて怒号の主を見る。そこには見慣れた顔があった。

 キン肉マンのお目付け役として正義超人時代から共に戦ってきた
アレキサンドリア・ミート。通称ミートくん。

「ミ、ミートやないけ、死ぬかと思ったわい」
「大王としての職務を放棄して何をしておられるんですか!」

 スグルの隣に腰掛けながら、ミートくんは説教モードに入る。
久しぶりにスグルの元を訪れた悟空に連れられ、城から抜け出して
こうして牛丼屋に繰り出していたのだ。

「悟空さんもですよ! 旧知の仲とは言え、大王様を連れ出して何をしているのか……」
「相変わらずだなぁ、ミートは。まるでチチみてえだ……」

 スグルと共に牛丼を平らげていた男こそ、孫悟空その人だった。
キン肉マンと孫悟空。共に地球を幾度も救った英雄である。

「ミートよ、悟空を責めてやってくれるな。良かれと思ってやった事じゃ。
それにのう、たまには息抜きも必要というものではないか」
「大王様はその息抜きが……」

 二人の会話を聞いていた店主が、注文の品を持ってくる。
豚汁の入ったどんぶり二つ、そして特盛りの牛丼。
湯気が立ち昇るそれを目の前にして、スグルと悟空はゴクリと生唾を飲む。
割り箸を手に取り、二人は同時に叫ぶ。

「いただきまああああすっ!!」

 勢いよく牛丼を口に掻き込む二人を見て、ミートくんはため息をつく。
だが、その表情はとても穏やかだった。

「やれやれ、大王様と来たら……」

 彼らはまだ知らない。地球、いや並行宇宙をも揺るがす危機が迫っている事を。

26人目

「聖杯は紡ぐ、認知の世界を」

_何処とも知れぬ大地の下、名も無き宮殿の最奥にただ一つの盃が鎮座していた。
人の丈を軽々と上回る『聖杯』と呼ばれたそれは、遍く大衆の意志を受け入れ、時に奇跡という形で叶える器として、何不自由なく機能していた。
…昨日までは。
「_大聖杯に魔力か。なるほど、僕の知る『聖杯』とは違う存在なんだね。」
人々の願望を叶え得る器は今、白衣を着た男の手に委ねられている。
その存在を確かめる様に撫でる有様は、聖杯を知る物であれば喉から手が出る程の光景であった。
「でもこれもまた器だ、解析できれば『認知世界』と同じ事が出来る。」
そんな万能の盃を、男はただの手段として捉えていた。
即ち、彼の目的は聖杯すら手段にしかなり得ない程の巨大な物である事の証でもあった。
「_グロロ~、人間にしては良く考える男だ、『丸喜』よ。」
「_『武道』か、首尾は順調かい?」
灯り一つ無い暗闇の中で静かに轟く声に、『丸喜拓人』は振り向きもせず問いを投げる。
武道の声には、遠い何処かへ向けた憤怒の毛色が混じっていた。
「正義、悪魔超人共が動き出した。我々も動く時が来た。」
暗闇から姿を見せるのは、3mはあるかという巨体を持つ『ピンク色の剣道服』を纏った大男、『ストロング・ザ・武道』の姿だった。
丸喜拓人も大の大人ではあったが、それでも2倍はあるかという大きさの身長。
それはそうだ、この武道という男もまた超人である。
「『完璧・無量大数軍』のお手並み、拝見させて貰うよ。」
そして正義、悪魔を含めた三大超人の中でも最も強いと言われる一派、完璧超人。
そのリーダー的存在に当たるのが彼だった。
「貴様の認知世界とやらにも、興味は深い。お互いお手並み拝見と行こうか、グロロ~…」
そこに集うは各々の正義心。
一人は遍く人々の救済の為、一人はかつての夢の残骸だる完璧な管理の為。
脅威は、すぐそこまで迫っていた。

27人目

「杜王町のスタンド使い」

一方その頃、カルデアが調査してる特異点。今回の特異点は複数の世界が引き寄せられており、その中にはあの町もあった。その名は《杜王町》

「なんなんだよこりゃ……!?」
彼の名前は東方仗助、杜王町に住んでるスタンド使いのうちの一人である。
彼が家を出た瞬間に目にした光景、それはまるで別の町と混ざりあったような姿に変貌した杜王町であった。
「なにがどうなってんだ…!?」
変わり果てた杜王町の姿を見て困惑する仗助。

「っ!?」
そこに現れたのはスライムやゴーレム、キメラといったモンスター達……無論、これらのモンスターは本来仗助達の世界には存在しないものである。
「な、なんだ!?新手のスタンドか!?」
今まで見たことのないモンスター達を見て警戒する仗助。
次の瞬間、モンスターの内の1体が仗助に飛びかかってきた!
「っ!危ね!?」
ぎりぎりのところでなんとかかわす仗助
「クソ!やるしかねぇ!クレイジーダイヤモンド!」
『ドラァ!』
仗助は自身のスタンドであるクレイジーダイヤモンドを出現させ、先程飛びかかってきたモンスターを殴り飛ばす。
「ウォオオオオオオ!」
『ドララララララララララ!ドラァ!』
続け様に他のモンスターにもこぶしのラッシュを浴びせ、最後に殴り飛ばす。
するとモンスター達はバラバラに吹っ飛び消滅した
(今の感触……間違いねえ、あれはスタンドなんかじゃねぇ……別のなにかだ……!クソ!いったいこの町になにが起こってやがるんだ!?)
「とりあえず、康一達が心配だ。急いで探しに…!」
仗助がその場を動こうとしたその時、仗助の見てない方向からモンスターが襲いかかる。
「っ!しまっ…」
「はぁ!」
そこに突然騎士のような格好をした2頭のなにかが割り込みモンスターを真っ二つに斬り裂いた。
「ふぅ……大丈夫ですか?」
「あ、あぁ……」
(な、なんだコイツ…!?着ぐるみか…?)
「なぁ、アンタはいったい何者なんだ?」
「……私の名は騎士(ナイト)アレックス、アルガス騎士団のものです」
「ナイトアレックス…?アルガス騎士団…?なんだよそれ?」
「詳しいことはあとで話します。それよりも、あなたのお知り合いを探しましょう」
「お、おう……」
仗助は困惑しながらも騎士アレックスと共に康一達を探し始めた。

28人目

「同盟」 

 兜甲児と流竜馬は機械獣討伐任務へ。
アレクとローラは失われた秘宝を求めて。
そして超人軍団は悪魔超人・ブラックホールの力でマジンガーZとゲッターロボが戦う
戦場へと赴いて行った。

 その数十分前、テリーマンは超人軍団を代表してテッサ達との会談に参加していた。

「ジェナ・エンジェル。それがあの女の名か」
「ああ。あの女は自らを悪魔と化しその思想に賛同する者たちを従えて
悪逆の限りを尽くしている。
その勢力は日増しに増強し、我々超人も一筋縄では行かない程になって来ているのだ」

 長らく続いていた正義・悪魔・完璧の各超人勢力の争い。
キン肉マンの王位継承後、相互不可侵条約が結ばれ地球の平和と秩序を守るため
彼らは各地へと散っていた。
その中でテリーマンはジェナ・エンジェルの暗躍を知り、撲滅に乗り出したのだが
巧みにその追っ手を掻い潜り、ジェナは梵天ブラフマン、吉良吉影、ウラヌス-No.ζ、
アスラ・ザ・デッドエンドと言った一騎当千の戦士を並行世界から取り込み続けていた。

「そんな連中にももこは攫われちまったのか……早く助けてやんねえと
何をされるか分かんねえぞ」
「ジェナ・エンジェルはクォーツァーとの結び付きはあるのでしょうか?」

「恐らく、今のところは別勢力と言っていいだろう。だが奴らの動きは
常に注視しておいた方がいい。我々超人軍団も今後は君たちCROSS HEROESと連携し、
戦う事にしよう」
「それは心強いです。よろしくお願いします」

 こうしてテリーマンはテッサたちと手を取り合い、ジェナやクォーツァーと言った
異世界勢力との戦いに備える事となった。
そしてブラックホールの能力で超人軍団、ゲイル、ジョーカーもトゥアハー・デ・ダナンを発ち、現在へと至る。

「超人か。神浜の魔法少女と言い、仮面ライダーと言い、マジンガーZと言い
この世界も元から色々とぶっ飛んでいたんだな」

 承太郎もこれまでの経験上、異世界と言うものが如何なるものなのか
多少なりとも理解していたが、今回の一件はその範疇を大きく超えていた。

(仗助や康一くんたちは今頃どうしているものか。
結果的に吉良吉影が杜王町から去った事で無事にいてくれるといいがな)

 杜王町そのものが特異点に巻き込まれていると言う事を
承太郎はまだ知る由も無かった。

29人目

「異形の衆」

過去、現在、未来。
あらゆる時間や場所が複雑に混ざり組み混沌とした特異点、その一角にある杜王町に蔓延る異形の者達がいた。
「ひ、いぃぃ!!?」
一つは文字通りの人外たる魔物の群れ、秩序無き力を振るう暴虐の化身達。
悪魔とも言うべき所業を繰り返す悪鬼羅刹共は、今もまた無辜の民草を悪戯に刈り取らんとしていた。
「_ペルソナァ!」
そしてもう一つ、異形の力を具現化させ、操る者達。
雨宮蓮とゲイルは、その力を以て悪夢を晴らす秩序の化身だった。
「あ、貴方達は…?」
「この町は危険だ、早く逃げろ。」
「わ、分かりました!おーい皆、ここを出るぞ!」
その正体を聞かんとした老人だったが、蓮が発する言葉の圧に押され、人々を集めてその場を後にする。
暫くして人が居なくなった頃だろうか、ふと一人の少年が息を切らしながら蓮達に駆け寄ってきた。
「君は?」
「あ、あの!僕は広瀬康一って言います!助けて頂いてありが…」
「よっと…蓮、オタカラの匂いはこっちであってそうだ。」
律儀に礼を言いに来たのだろうかと感心していた時、不意に蓮のカバンから一匹の黒猫が…否、猫をデフォルメ化した様なナニかが二足歩行で立っていた。
「うわぁ猫が喋った!?」
「ジョーカー、彼は?」
突然現れた謎の生物に康一は驚き、ゲイルもまた困惑していた。
「おっと、紹介がまだだったな!ワガハイはモルガナ、心の怪盗団の参謀だ!」
そう名乗るのは、コードネーム『モナ』ことモルガナ。
コードネーム『ジョーカー』こと、雨宮蓮がこの特異点へと降り立ったのは彼が要因だった。

世間を恐怖に陥れた『精神廃人化事件』と、その後の『心の怪盗団』の一件から暫くの事。
「ジョーカー、オタカラの匂いだ。」
たった一年だが、数々の出会いと共に住み慣れた東京を後にし、故郷に帰る途中の電車で、モナが呟く。
オタカラ、即ち『歪んだ欲望』があるとモナは告げたのだ。
それは可笑しいと疑問を呈すれば、モナは根拠を以て返す。
「メメントスが消えたから分かる。ワガハイはお前が持ってる『大衆のオタカラ』と同じ匂いを感じ取れた。」
ガタゴトと揺れる電車は、彼の心中を隠す様に暗いトンネルへと入っていく。
「蓮…いやジョーカー、どうする?」
「…決まっている。」
だがすぐにトンネルを抜けた時、彼の表情は覚悟の決まっていた。
「歪んだ欲望は、頂戴する。」

30人目

「嵐、過ぎ去った後で」

 テリーマンの呼びかけにより
荒れ果てた神浜市に若き正義超人たちが到着した。
この世界において正義超人たちの知名度は極めて高く
連日TVなどのメディアでも特集が組まれている。
その活躍は悪の秘密結社や怪人と戦う姿ばかりではなくアイドルとしてステージに立つ彼らの姿も見る事ができる。
そんな彼らが神浜を訪れ、復興作業に汗を流す姿を人々は歓声と共に歓迎した。

 しかしその一方で、暗い影を落としていたのは八雲みたまの調整屋に集まった魔法少女たちだ。

「ふざけんじゃないわよ!!」

 水波レナがテーブルを叩いた音で、店内は静まり返った。

「変な奴らに神浜をメチャメチャにされて、ももこまでさらわれちゃったなんて……!!」

 普段は冷静沈着な彼女だが、今は怒りを抑えきれないようだ。
彼女の言う通り、ここ短期間の間に様々な出来事が起こりすぎた。
リンボとドフラミンゴによる神浜市封鎖からはじまり、晴明が生み出した鬼の大群。
特異点狩りと呼ばれるクォーツァー/アマルガム連合による襲撃事件。
さらには混乱に乗じてももこをさらったジェナ・エンジェル一味……

「ふゆう、レナちゃん落ち着いて。私たちだって
街中に出てきた鬼をやっつけるのに精一杯だったし……」

 秋野かえでがなだめようとするが、レナの怒りは収まらない。

「分かってるわよ、そんな事! 許せないのは、何も出来なかったレナ自身よ!! 
ももこの事も、何もかも……」

 普段強気な態度を取っているものの、内心では親友の身を案じていたのだろう。
レナの目には涙が浮かんでいる。
元々自己肯定力の低い子ではあったが、ここまで取り乱す事は珍しい。
それだけ、大切な存在を失った悲しみが大きいという証でもある。
そんな彼女を慰めるように、いろはは優しく肩に手を置いた。
するとレナは声を押し殺して泣き始める。
普段は強い彼女が見せる弱々しい一面を見て、他の魔法少女たちももらい泣きする者もいた。

 しかし、いつまでも泣いている場合ではない。
晴明やリンボが撒き散らした呪詛の影響で神浜に巣食っていた魔女が
活性化しているとの事で、彼女たちは再び街を守るために戦わなければならない。
先の激闘で消耗した魔法少女の魔力を回復するためには
魔女を倒す事で得られるグリーフシードが必要なのだ。

 環いろはの下す結論は……