心の声、本音。この声誰のもの?

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1人目

いつから人を信じることをしなくなったのだろう。物心ついたときから目があった人の心の声が聞こえてしまう私_|春花《はるばな》こころはいつも通りの節操の中でふと考える。
思えば小学性の頃だろうか、意図せずとも聞こえる口に出している言葉とは違う声、つまり本心が聞こえることに気がついた。
思ったことを何でも口に出してしまうような子だった私は度々クラスメートと衝突した。みんな上辺では私と仲良くしてくれているけど心では嫌われていたのだ。

ああ、その頃からだ、と思い出に浸っているうちに今日付けで転校する鳳凰学園中等部に到着する。
登校時間にかぶり流れる人々と目を合わせないように気をつけながら職員室へと向かう。
普通こういう転校などの手続きの日には親がついてくるのだろうがあいにく私に両親は居ない。
無駄に広い廊下を歩き目当ての職員室が見えたとき、教師に追いかけられている金髪の男の子にぶつかる。

パーカーにパンツという完全な私服の彼と目が会う。やってしまった、そう思うのと同時に甘い柔軟剤の香りと音が落ちてきた。
《可愛い》「かわい…」《あ、やっちゃった。》「あごめんっ」《転校生かな、自己紹介しないとっ》「俺|夏鳥太陽《なつどりたいよう》。転校生?」
ぱっと目をそらし考える。心の音と言葉が一致する人間。多少正直な人も居たけど本心をすべて話す人はいない。

ここまで思ったことがすべて口に出て人がいるのは珍しい。私の無言を動揺と受け取ったのか一方的に謝ると追いついた教師にあっかんべーをして笑いながら駆け出していく。夏鳥くん…か覚えておこう。
職員室の隣応接室に入り先生を待つ。しばらくして栗色の長めの髪をたなびかせる教師だと思われる男性とダークブラウン色の癖毛の小さめの男の子が入ってくる。

「こんにちは、こころさん。こころさんの転入する一年B組担任桐澤です。」
「|冬月雪斗《ふゆつきゆきと》、学級委員」
冬月、と名乗るブレザータイプのスラックスをキッチリと着こなした男の子あまり喋らない。では、と一礼して教室に戻ってゆく。一連の話を聞くと制服と学年カラーなのだろう緑ラインが入った上履き、そして青いBと書かれたクラスバッチが渡される。