妖怪男

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1人目

退社後、期間限定のポップアップストアを見て帰ろうと思い、職場の駅のコンコースを歩いていると知らない男が右手から近付いてきて、私は脊髄反射で避ける。
早足で歩く私を追いかけて男が何やら声を掛けてくる。

『妖怪なんだけど、良かったら飲みに行かない?』

やれやれ不愉快なナンパ男か、と思い5.6歩足を進めた所で足を止めた。

……今なんて?
…………妖怪?

まさか。聞き間違いだろう。

しばらくその場で棒立ちになって固まっていたが、どうしても真実を確かめなければと思い、妖怪男に向き直る。

急にこちらを向いた私に面食らったのか、男は急にオドオドと視線を巡らせる。

2人目

 口元に手を当てたり、頭を搔いたりとにかく落ち着きがなかったが、すぐに気を取り直し、
『飲みにいかなぁい〜?おれ、いい店知ってんだよね。最近、流行りのやつ!なんなら、ちょっと高めの所でもオッケー!オッケーー!おけ丸水産!!寿司でもなんでも奢るからさ〜♡』
 と矢継ぎ早に喋り始めた。

 男は、ピッタリとしたワイン色のジャケットを羽織、足元はビットローファーだ…