プライベート 自由に二次創作ッ!! 第二部

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1人目

「What I`m made of」




 こうして事の推移を見守るだけ、などどいう行いは中々きまりが悪いものだと、喧騒に包まれた一室の中で男は内心そう零した。
 街一つの隅から隅までを余すことなく映し出しているモニターの数々は、真正面にある壁を埋め尽くすようにはめ込まれている。数で言えば数千は下らないであろう画面を潤沢な人材をふんだんにつぎ込んで刻一刻と移り変わる情勢の把握に努めさせていた。

 その結果として、いち早く米花町に起きた騒乱の一端を掴む事に成功しているあたり、如何やらこの采配も間違ってはいないらしいが。
 いやはや全く、此処まで常軌を逸した報告ばかりが舞い込んで来ると、ものを考える事すらも億劫になってしまうものらしいと手に持った資料に視線を落として嘆息する。
 
──────×月×日午前11時■1分21秒、米花町■丁目にて要注意団体にリストアップされている『ショッカー』の構成員が引き起こした爆破事件を確認。その際、監視対象とされる本郷猛、及び一文字隼人との交戦が起きたものと見られる。構成員は現場にて事の詳細の調査に当たっている。

──────×月×日午前11時■4分58秒、特例により津島秀、コードネーム『ギムレット』を監視対象に認定。以後、組織の管理下におくものとする。搬送された病院へ組織の構成員を送り込み、常時護衛体制を整えている。

──────×月×日午後0時18分42秒、米花町5丁目を中心とした半径50メートルに1■度目の超局所的豪雨を確認。またも発生源を確認出来ず。今回の発生地点は毛利探偵事務所の付近であるが、監視対象である江戸川コナンらとの因果関係は不明。こちらも現在調査中である。

 この一時間の間にひっきりなしに巻き起こる異常や異変、錯綜する状況の数々に翻弄されながらも、即時に対応を間に合わせられているのは流石の組織といったところか。
 しかし、それは現状の好転とは等号で結べない。
 現時点で組織を構成する人員の殆どが常人であり、リストアップされた監視対象や要注意団体や危険人物などといった面々と相対するには些か心もとなく、また排除するにしても戦力不足という点で対抗は不可能。未だに彼らをのさばらせる結果となっている。
 
 その戦力不足も、偶然に組織が資金繰りの為に運営している病院に転がり込んできた津島秀を取り込めれば幾分かマシになるのだろうが、よりによってかショッカーにも目を付けられてしまっている。
 護衛として五十余の構成員を駐屯させてはいるものの、彼らの誇る怪人達の圧倒的武力で攻め込まれれば直ぐに瓦解するだろう。数で対抗しようが所詮は只人。ショッカーからしてみれば吹けば飛ぶような紙屑に他ならない。
 病院に滞在している組織が有する数少ない異能力者、スピリタスとて戦闘に関する心得は無いに等しい。もともとあれは後方支援に徹する能力であるからして、前線に放り込むにもいかないわけで。

「…………結局は、神頼みか」

 どの口が言っている、とは思いながらもそう自嘲するのを止められない。
 無辜の市民が持つべき安寧が奪われる事を憂いて身を寄せてから幾星霜、結局は組織の維持のために救える誰かをモニター越しに見殺しにして、次こそはと唸るばかり。
 
 なんて無様。なんて醜い。端的に言って吐き気を催す醜悪さよ。
 己ら組織が奉じるべき正義を語る度に喉から腐臭が漂ってくる気さえした。

 もう何度となく去来した感傷にそっと蓋をして、新たに作成した資料に目を通す。
 これもまた、超局所的豪雨と肩を並べる、米花町を揺るがす怪異である。早急に解決すべき難題であることも、またそうだ。

──────×月×日午後0時39分21秒、米花町■丁目にて新たに殺害現場を確認。犯人は特定済み。危険人物である………………



 地下駐車場。
 薄暗い空間に転々と灯る電飾に照らされて、一つの死体が今日もまた上がった。

「………………」

 巷を騒がせる、食人鬼と同じ手口である。
 曰く、獣が餌を喰らうがごとく。まるで食い荒らされたかのような死体。

「………………………………、」

 その傍で、くちゃくちゃと音を立てる男。
 食人鬼。
 身体から生える五刃で死体を切り刻み、身体から生える五頭で死体を喰らっていく。
 男、或いは寄生生物。
 その名を、『後藤』といった。



           地球上の誰かがふと思った。
      人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか。



     『人間が増えて困るのは、他の生き物でも、ましてや地球でもない』



           地球上の誰かがふと思った。
  人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるだろうか。




        『人間が増えて一番困るのは、人間自身だ』



             誰かがふと思った。



        『人間を滅ぼすのは、人間自身だからだ』




        ――――みんなの未来を守らねば――――









                episode:2

            寄生獣(ディアブロ)は禍を兆す

2人目

グラトニーがダブルライダーを戦闘不能に追いやり、江戸川コナンを気絶させて毛利蘭ことエンヴィーと共に去った日の夜

グチャグチャ・・・バリッ・・・グチャグチャ!

とある路地裏に咀嚼音が辺りに響き渡る。人間に近い化け物がカップルの死体を貪り、体液をすすっていた。

「あ、ああ・・・」  

それを目の辺りにしている少女は鈴木園子。彼女は突如連絡がつかなくなった親友の蘭を探している途中、突如この異様な光景に出くわしてしまったのだ。

「ガルルルルル・・・」

化け物は園子の存在に気づいた。その化け物の外見は人間なのだが全身に血管が浮かび上がって皮膚は真紅に染まり、髪はタテガミのように伸びて牙は鋭くその瞳から理性は感じられず、まるで本能のみに従う獅子のようだった。

「ひぃっ!?いや・・・」

恐怖のあまり逃走しようとする園子。だがそれを見逃す化け物ではなく・・・

「グガアアアア!」

化け物は園子に触手を伸ばし、壁に抑えつけた。

「い、いやあああああ!?」

甲高い悲鳴が辺りに響き渡る。

3人目

「Over the world」

「ここか……」

 トラックに撥ねられそうになった灰原哀と毛利小五郎が手当てを受けた病院を訪れる
コナン、本郷、一文字、ウェス。
ここに、「時を駆ける少年」津島秀も搬送されているかも知れない。
そう推理したコナンは、病院の受付に尋ね、病室を教えてもらおうとした。
しかし、既に秀はコードネーム・スピリタスと共に病院を出て、姿を消していたのだった。

「……どう思う、本郷?」
「妙だな」

「――やはり来たか……了解。先に手を打っておいて正解だったよ」

 コナン達の来訪を見越していた女医スピリタスは病院からの連絡を受け、
早速行動を開始する。

「どうしたんですか?」

 何も知らないのは、秀だ。きょとんと首を傾げている。
そんな彼に、スピリタスは告げた。

「こっちの話さ。それより、さっき言った通り君の能力を試してみよう」

 人気の無い広々とした公園。「組織」が所有する敷地。
そこで、スピリタスは秀の能力を測る。

「全力で走ってみるんだ。その結果、本当に君が時を飛べるかどうかが分かるだろう」

 実感が湧かない、といった顔の秀だったが、取り敢えず言われた通りに
やってみることにした。
大きく息を吸い込み、勢いよく吐き出すと同時に力を入れる。
そして、地面を思い切り蹴った。すると……

「!?」

 景色が変わる。光の瞬きが目の前で起こる。ほんの一瞬だけ、視界が真っ白に染まる。
その瞬間、秀は自分の身に何が起こったのかを察した。

(これは、あの時と同じ……)

 秀は、気付くと別の場所にいた。
それは、先程までいた場所とは違う場所。

「スピリタス!? スピリタス、どこ!?」

 そこには、先程まで目の前にいたスピリタスの姿は無かった。

『成功だ、ギムレット』

 彼女の声がする。彼女に渡された腕時計型通信機からだ。

「僕は……」
『ああ、そうだ。君は『世界を飛び越えた』。私と君がいる世界は違う。
つまり、君が今立っているのは別の世界というわけだ』

 秀は、呆然と立ち尽くす。
まさか、自分がこんなことが出来るなんて思ってもいなかったのだ。
本当に別の世界に来てしまったということなのか? その事実に、秀は愕然とした。

『だが、心配は要らない』

 スピリタスが腕時計型通信機のつまみを回しながら言うと、

「――はっ!?」

 再び周囲の景色が変わる。そこは、見覚えのある場所だった。
目の前にはスピリタスが立っている。

「ぼ、僕は……」
「その腕時計をマーカーとして、君を別の世界から引っ張り戻した、と言う訳さ。
それさえあれば何処の世界にいようとこうして連絡を取ることが可能だし、
私達の元へ戻ってくることも出来る。分かったかい?」

 秀は小さく何度もうなずく。
これで、自分はいつでも元の世界に戻る事が出来るようになったのだ。
それを確認出来ただけで充分だった。

「しかし、凄い技術ですね……組織って、一体……」

 秀の言葉を聞き、スピリタスは口の端を吊り上げる。
その笑みを見て、秀は何とも言えない寒気を覚えた。
何かまずい事を言ってしまっただろうか……。
不安になる秀だったが、彼女は別に気にしていない様子で言う。

「それより、だ。私は君の力を見込んで頼みたい事がある」
頼みごととはなんだろうと疑問を抱く秀だったが、話を聞くことにした。
すると、彼女は言った。
君にしか出来ない仕事があると。

「世界の探索だ」

 秀に与えられる、スピリタスからの指令。
それは、この広い世界で秀しか知り得ない情報を集めろというものだった。
具体的に言えば、どんな些細なことでもいいから、自分の能力で得た情報を逐一報告しろということである。

「わかりました、やってみます……」
「いい子だ」

 一方、肩透かしを食らう羽目になったコナン達は
米花町を騒がせる食人鬼のニュースを耳にし、驚きを隠せなかった。

「またショッカーの怪人だろうか?」
「分からん……だが、これは尋常な事件ではないぞ」

 本郷と一文字が深刻な表情で呟く。

「俺たちと同じく世界を超えてやって来た何か超常的な存在が
関わっているかも知れん……」

 本郷が冷静な口調で言い放つ。
彼の言葉通り、この事件はただの人間が起こした事件ではないだろう。

「時を駆ける少年の事も気にかかるが、放っておくことも出来まい」

 本郷の言う通りだった。

「やれやれ。これで振り出しに逆戻りかよ」

 ウェスが頭を掻いてぼやく。

「そうでもないさ。この事件の犯人を辿れば、また別の方法で
世界を超えられるかも知れないだろう?」
「前向きだな、アンタは」
「ウダウダ悩みっぱなしになるよりはマシだろう」

 一文字隼人とは、そう言う男だった。例え、どんなに困難な状況でも決して諦めず、
前を向いて突き進む。それが彼なのだ。

4人目

その時、爆発音が辺りに鳴り響いた。

「何者だ!?」

突然の襲撃者に本郷が警戒すると、天井を突き破って何者かが落下して来たのだった。

「ここに抹殺対象がいるのだな・・・」

現れたのは新型怪人の1人である細身の男・スロウスだった。

「またショッカーの怪人か!」  
「抹殺対象とはどういう事だ!」

一文字の問いにスロウスは冷淡に答える。

「ショッカーの上層部がラストの報告を聞いてな・・・コナンやその仲間を全員始末せよと。」
「何だって・・・?」
「敵対する者は全て排除する!」

そう言うとスロウスは牛と蟹を掛け合わせたような怪人に変貌した。

「それがお前の怪人としての姿か・・・」
「それだけではない。」

するとスロウスの後ろから猫のような紫色の仮面と同色のアーマーを着けた複数の改造人間が現れた。

「この怪人達は・・・?」
「ラストからの土産。エンヴィーが改造前に所属していた空手部の部員だ・・・」
「また罪のない者を改造したのか!?」
「罪ならある。崇高なる新型怪人に逆らった罪がな。やれ!」

スロウスの命令で改造人間達が臨戦体勢をとる。

「ここは俺がやる。」

ウェスがスロウスの前へ出る。

「同じ新型怪人のラースに敵わなかったやつがほざくな。」

そうするとスロウスは牛の角から電撃を放ち、ウェスはそれを紙一重で避ける。
 
「チッ・・・」

スロウスが合図を送ると改造人間達の両腕が形状を変化させていく。結晶のようなものに覆われ、割れた途端にそれは鋭利なチェーンソーとなった。

ギュイイイイイン・・・

チェーンソーの駆動音が響き渡り、改造人間達は一斉にウェスに襲いかかった。

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