ブラコンの秘密
俺は今、とある建物の前にいる。その建物とは大学だ。なぜ高校生になったばかりの俺が大学に来ているのかと言えば、兄貴の忘れ物を届ける為だ。ちなみに高校は今日から中間テストで午前中で終わるから届けに行く事ができた。
「ったく、兄貴め、忘れ物には注意しろと言ったにも関わらずこれかよ、しっかりして欲しいぜ。」
愚痴りながら兄貴を待っていると「祐樹〜、ごめんごめん、わざわざありがとう!」と叫びながら兄貴が走って来た。
「兄貴、朝あれほど忘れ物に注意しろって言ったのに……。」
ジト目で兄貴を見るとシュンとして「ごめんなさい。」と謝っていた。俺の兄貴可愛い………。
ちなみに忘れ物というのが夕方までに出さなきゃいけない課題と弁当だ。本当にしっかりしてほしいが、ポンコツな兄貴も可愛くてたまらない。
「とりあえず渡したから俺は帰るな。」
「あっ祐樹今日の夕飯何にするの?」
「あ〜、今日は暑いから冷やし中華とあとは餃子とか作るつもり。」
「了解、早く帰るね!」
そう言って頭を撫でてくる。
「うわ、頭撫でんな!」
そう抵抗するが心の中では満更でもないのは内緒な話しだ。
そして兄貴と別れ俺は一旦家に帰る。
兄貴が部活ーーサッカー部ーーぽんこつなのにサッカー部なんてかわいい、時々転ぶの見てて超心配だけどそんなとこもかわいいーーを終えて家に帰ってくるまでにはあと7時間ある。今から冷やし中華のタレを作り麺をこね、麺を寝かせている間に餃子の皮を作り、タネを包みーー今晩の夕飯を完成させるには、充分時間があった。
俺は、帰りのスーパーで何を買うか考えながら自転車を走らせる。
この間ピザを作ったから小麦粉が少し残っているーーがあれではきっと足りない、この間兄貴がぷろていん?を飲みたいと言っていたがぷろていんとはなんなのだろうか、何が入っているかわからないものを兄貴に食べさせるわけにはーー
違う。
今日の俺には兄貴に市販の冷やし中華を食べさせてでも、やりたい、いややらなくてはならないことがあった。
昨日、7月27日、午後15時26分。兄貴の棚の後ろから出てきた、女性と兄貴がツーショットをしている写真。あれの真相を、突き止めねばならない。
制服から推察するにこの女性は兄貴の高校に通っている、または通っていたと見て間違い無いだろう。いろいろ調べてみたところ女性の正体は2人に絞られることがわかった。
1人目は佐藤美冬。兄貴と同い年で都内の大学に通っている。
2人目は佐藤真緒。同じく兄貴と同学年で今はアメリカに留学してるらしい。
一人に絞ることが出来なかったのは(名前からも分かると思うが)彼女らが双子だからである。どちらもクラスや部活が同じだったりして接点はあったみたいだ。今の写真を見ても2人とも例の写真の頃と髪型や雰囲気が変わっていてどちらか判別しようもなかった。あれこれ考えているうちに俺の想像はとめどなく悪い方に向かっていく。ツーショットを撮るなんてよっぽど親しかったんだろうな、馬鹿みたいに幸せそうな顔しちゃってさ。まさか彼女?じゃなくても好きな人?高校三年間いるそぶりすら見せなかったのに?
どうであれ、許せない。兄貴にこうやって笑いかけられていいのも見つめられていいのも俺だけだ。