転生魔法少女

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1人目

世界を救う魔法少女?
そんな声がどこからか聞こえた。
なんで私が?

2人目

いや、私は知っているはず。魔法少女に選ばれた理由を。
でも思い出せない、自分の事がまるで思い出せない事に気づいてしまった。

3人目

ゆっくりと目を開ける。
黒い三角帽子にローブ。そして片手には木の杖があった。
「世界を救うって、魔王でも居るのかしら」
辺りを見渡してみる。けれど、格好以外は普段と変わらない私の家。
魔法の魔の字もない。
頭がぼんやりとしてはっきりしない、でも何か大事なことがあったはず。
すると枕元に置いてあったスマホが鳴り出した。
「あんた今どこ」
聞き覚えのある声。誰だっけ?
そこでハッと気が付いた。
「ごめん、今すぐ行くね」
慌てて家を飛び出す。
そう言えば今日は、学校のハロウィンパーティーの日だった。

4人目

学校へ到着すると、校門を入った所から仮装をした人であふれていた。ドラキュラにゾンビ、体中に包帯を巻いたミイラ男も何体もいる。みんな楽しそうにダンスを踊っていた。
なんかいいなぁ、この緩い感じ。ニコニコしながら昇降口に入ると、電話をくれた由紀が立っていた。
「あんたねえ、転生魔法少女って言っといたのに、なんでそんなクラッシックな魔女の格好してくんの」
いきなりどやされた。
「ごめん。居眠りしちゃってこれしか揃えられなくって」
「まあいいわ。行きましょ」
そう言うと由紀は、私の腕をつかんで歩き出す。

5人目

一方、別場所では魔法使いの王であるダルクファクトが鏡に映し出された転生魔法少女の姿を見ていた。あの自動車事故で少女は死亡し三途の川へ辿り着いた。
この少女を偶然目にしたダルクファクトは魔法の力で魔界へ転生させた。

そして、今少女がいるのは魔界と過去の思い出とを混ぜ合わせた世界だ。学校も楽しそうに踊っている人たちも由紀も彼が魔力で作り上げた幻想。

「あの子が学校のハロウィンイベントで警戒心を解いたら次のステップへ移そう」
ダルクファクトはモニターとしての鏡を見ながらこのように呟いた。

6人目

その時、目の前の鏡をぶち破り、勇者カイが現れた。
「呑気だな、魔王ダルクよ。お前の部下は全て始末した。大人しく白旗を上げろ」
「なん、だと」
カイは頭上へと飛び上がり、はためくマントを閉じ、そして何事か呪文を唱えた後、再び開いた。マントからはおびただしい数の有翼聖騎士が飛び出してきた。
必死に応戦したが、こう数が多くてはそのうち押し込まれてしまう。じくじたる思いを抱えつつ、ダルクは脱兎のごとく逃げ出した。もう頼みの綱は転生魔法少女しか残ってはいなかった。
「成長を見守る猶予は無し、か。仕方ない」