プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:7

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1人目

「Prologue」

 リ・ユニオン・スクエア。

 仮面ライダージオウ、マジンガーZ、ミスリル、正義超人、魔法少女らによって
守られてきた世界の総称。
だが、「混沌次元」の彼方からこの世界に侵食してきた者たちにより、
世界の均衡は崩れ、人類滅亡の危機が迫っていた。

 自らが作り出した鳥籠の世界にて、依然として傍観者の立場を貫く暁美ほむらの側に
寄り添う少女・平坂たりあ。
滅びの現象によって己の世界を失い、精神体として彷徨っていた彼女は、
ほむらの力によってこの世との繋がりを辛うじて維持していた。
ほむらとたりあの前に現れるタイムパトローラーの青年、トランクスは
歴史の管理者・クォーツァーが良からぬことを企んでいることに気づき、
それを阻止しようと奔走する。

 そしてジェナ・エンジェルの一味に参画する吉良吉影の前に現れた男、
「英雄」クリストファー・ヴァルゼライド。 彼の目的は果たして何か?

 混沌極まる特異点にて、竜王の所持する聖杯が励起した影響によって
散り散りになってしまったヒーローたち。
キン肉マンやジョーカー、ゲイル達は認知世界に飛ばされ、
そこにかつてキン肉マンが倒したはずの悪魔将軍が再びその姿を現す。
さらに完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)を名乗るミラージュマンは、
完璧超人の成り立ちを語り、ストロング・ザ・武道の暴走を止めてくれるよう
キン肉マン達に懇願した。

 一方でリ・ユニオン・スクエアのCROSS HEROES本隊はさらに激しさを増すであろう
戦いに備え、ドラゴンワールドに暮らす地球育ちのサイヤ人、孫悟空を訪ねる。
ルフィとの力比べを通して、悟空はCROSS HEROESへの参加を快諾し、
新たな仲間として迎え入れられた。
そこへ、悟空の仲間・ヤムチャからの救援を求める電話が入る。
スダ・ドアカ・ワールドの住人、バーサル騎士ガンダムと同様に転移してきたと思われる
ジオン族のモンスターから襲撃を喰らい、危機に陥っているというのだ。
悟空の瞬間移動ですぐさま助けに向かった一行はモンスター達を一掃し、
バーサル騎士ガンダムを救出した。
しかし、戦闘の最中、スダ・ドアカ・ワールドと通じていたと思わしきワームホールは
消滅してしまう。
バーサル騎士ガンダムはCROSS HEROESの面々の勇気と実力を称賛し、
共に戦うことを決意した。
 
 アマルガムの幹部、レナード・テスタロッサの前に敗れ、
行動を共にしていたカルデアやディケイド達ともはぐれてしまった相良宗介。
レナードに千鳥かなめを奪われ、ボン太くんスーツも大破と言う完全敗北を喫した彼を
救ったのは同じく特異点で戦っていた東方仗助、広瀬康一、騎士アレックス達だった。

 対して藤丸立香は、月の裏側にある「ムーンセル」の管理AI・BBによって
竜王の聖杯による影響が及ぶ直前にサルベージされ、マシュや門矢士たちと合流を果たす。
BBから特異点攻略失敗の事実を聞かされた彼らは、聖杯の回収を急ぐため、
再び聖杯探索の旅へと赴こうとするが、それを阻むかのようにBBが戦闘を挑んでくる。

 クォーツァーがかつて同盟関係にあったスウォルツの持つ
アナザーディケイドの力を利用して兼ねてより進められていた「アナザーワールド」計画。
有り得たかも知れない可能性の世界を生み出し、そこから強力な悪の戦士を
スカウトすると言うものだ。

 純粋悪のナメック星人・スラッグ。
神精樹の実を喰らい、無限に強さを増すサイヤ人・ターレス。
いずれも正しい歴史においては孫悟空に倒されたはずの悪人達がアナザーワールドから
続々と召喚され、クォーツァーの客将として迎え入れられていく。

 CROSS HEROES本隊と別行動を取り、リ・ユニオン・スクエアの何処かに眠る秘宝を
求めて冒険の旅を続けるアレクとローラ姫。
全世界の融合を目論む認知訶学者・丸喜拓人の背後に見え隠れする
悪の秘密結社、ショッカーの影。
その影響により出現した、人間の生体エキスを奪う人造人間セルに対抗する
伝説のサバイバー、ソリッド・スネークの勇姿。
ドクター・ボンベの治療により復活し、決意も新たにリ・ユニオン・スクエアへの復帰を
果たした宗介の前に出現する生まれ変わった愛機「ARX-8 レーバテイン」。

 敵味方に分かれ、目まぐるしく展開していく物語。
ピッコロを強襲するスラッグ。
神精樹を巡り、再び時空を超えて激突する孫悟空とターレス。
そしてCROSS HEROESとアマルガム・クォーツァー連合軍が正面からぶつかり合う
その最中、日向月美の世界を崩壊させたと言う謎の男「禍津星穢」が乱入。
空条承太郎のスタンド、スタープラチナによる攻撃をも受け付けない禍津星穢が持つ
謎の能力、そして穢によって戦場に投入された怪物たちは敵味方の区別もなく襲い掛かる。
父の仇を前に激昂して挑みかかるも、成す術もなく穢に昏倒させられる月美。
だが、そんな穢の行方を追って、新たなる来訪者が現れる。
その名は――!?

2人目

「崩壊の序曲:魔王」

『変身っ!』
敵味方入り乱れた掛け声と共に、ソウゴを多重に包み込むバンドが展開され、その姿を瞬く間に変えていく。
《仮面ライダー!ジオウ!》《仮面ライダー!ゲイツ!》
そして現れる仮面の魔王と、その好敵手たる救世主。
その眼へとはめ込まれる『ライダー』の文字と共に、今魔王は顕現した
その光景に息を飲むザモナス、一方でゾンジスは冷静に状況を眺めていた。
「まずは奴から片付けるか。」
そう判断し、ゲイツへと迫るゾンジスを見たザモナスは、瞬時に己の意識を切り替え、己が拳を武器にジオウへと迫る。
「ハァッ!」
交差する拳と剣が火花と共に金属質の鈍い重低音をかき鳴らす。
更に一歩踏み込み、渾身の一撃を振り抜く。
重い音が響き、ジオウの放った必殺の斬撃は、ザモナスの拳により受け止められる。
激しく飛び散る火花の中、ジオウの攻撃はまだ終わらない。
「ぐっ…がぁ!?」
二撃、三撃と撃ち込まれる剣撃を前に、ザモナスはいなしながらも後退を迫られる。
「何が目的か知らないけど…!」
息を呑む間も付かせぬ攻防の中で、一瞬の隙に差し込まれる一撃に、ザモナスの装甲が悲鳴を上げる。
「アァ!!?」
「俺はこんな所で立ち止まっていられない!」
覚悟の違い、背負う物の重さ、格の違いを見せつける様に、痛恨の一撃がザモナスをひれ伏せさせる。
《フィニッシュタイム!》
瞬間、ジオウがライドオンリューザーを叩くのを合図に、必殺の一撃がジクウマトリクスを介して展開される。
「ハァ!!!」
《タイムブレーク!》
地を蹴り、飛翔、そしてザモナスを取り囲む『キック』の文字。
四方八方を取り囲んだソレはやがてジオウの足一点へと収束。
ソレを纏った跳び蹴りが、ザモナスを爆炎に包み吹き飛ばす。
「ぐあぁ!!?」
着地と同時に剣を構え直し、ステップ。
一気に距離を詰めるジオウによる剣の追撃は、ジクウドライバーからの音声入力を受けて強化されていた。
《フィニッシュタイム!》
「何っ!?」
続けざまに流れる音声と共に刀身を覆う光を見た時、既にザモナスの命運は決まっていた。
《ギリギリスラッシュ!》
迸る一閃が、一瞬の間を置いて襲い掛かる。
まるで空間を断つような鋭い斬撃が、容赦なくザモナスの鎧を切り裂き、その身に致命的なダメージを与える。
そのままザモナスは後方へ大きく弾き飛ばされ、壁に激突、地面へと崩れ落ちる。
「ジョウゲンッ!」
ジオウの必殺技を受けたその姿を見て、ゾンジスは思わず意識が逸れ、叫ぶ。
それが致命的な隙だった。
刹那の間に距離を詰めたゲイツは、ゾンジスの腕を掴むと、己の方へと引き寄せる。
《フィニッシュタイム!》
すれ違う勢いを利用して、ゾンジスを投げ飛ばし、ジクウサーキュラーを回転。
《タイムバースト!》
無防備な状態で投げられたゾンジスの腹に叩き込まれた強烈な一撃が、強固な装甲を紙屑の如く吹き飛ばす。
「アァッ…!」
そのままゾンジスもまた、地に倒れ伏した。
それを見ていたジオウもまた、よろめきながらも何とか立ち上がったジョウゲンへと詰め寄る。
「ねぇ、そろそろ目的を教えてくれないかな?」
質問の体を取った言葉だが、否応無しに答えさせるという圧があった。
しかしそれに気圧される事なく、ジョウゲンはソウゴを見据える。
二人の視線が交差し、互いに譲らぬ緊張感の中、ジョウゲンを見下ろすソウゴ。
しかし次の瞬間、ソウゴは何かに気付いたように、その場を離れる。
直後に襲い掛かったのは、翼竜の姿をしたジョウゲン専用のタイムマジーン。
「まだ手を隠していたか!」
攻撃を回避しながら、ジオウは反撃を試みるが、空から放たれた無数の光線が、それを許さない。
回避しきれないソレに被弾しながらも、どうにか凌ぎ切るジオウだったが、ジョウゲンの姿はそこには無い。
ジオウが体勢を立て直す間もなく、タイムマジーンに乗り込んだジョウゲンが、その本領を発揮する。
「来るぞジオウ!!」
先ほどまでの攻防とは打って変わり、一方的に攻撃を受け続けるジオウとゲイツ。
「おのれ…!」
そんな様子を見ながら、タイムマジーンの操縦室にて、ジョウゲンが忌々しげに吐き捨てる。
ジョウゲンからすれば、こんな所で躓いている場合ではない。
にも拘らず、この有様は何だ?。
「…行け、カッシーン!」
最早なりふり構ってはいられないと、量産型タイムマジーンとカッシーンの軍勢を殺到させる。
さすがにジオウ一人だけでは捌き切れないと判断したのか、ゲイツはタイムマジーンの攻撃を受けながら、介入していく。
「ジオウ、多勢に無勢だ!一旦下がるぞ!」
返答代わりに頷くジオウに、そうはさせまいと捨身の覚悟でカッシーン達が殺到する。
「お前達の相手はこの俺だ!」
そんな状況にゲイツが怒声を上げて、ジオウに群がるカッシーン達を捌いていく。
その間に二人はその場から離脱しようと試みるが、そう易々と逃がす程タイムマジーンは甘くない。
即座に追撃に移ったタイムマジーンの砲撃が、ジオウとゲイツに迫る。
「クソッ、敵味方関係無しか!?」
周囲のカッシーンすらも巻き込むソレに悪態を付きながらも、ゲイツが防戦一方を強いられる。
その隙を突く者が、一人。
《タイムブレーク!》
「ガッ…!?」
突如として背中に撃ち込まれる必殺の蹴り、それは先程倒れたゾンジスのものだった。
「油断大敵、だ…!」
「ゲイツ!?」
膝を付くゲイツの元へとなだれ込む、カッシーン達の攻撃。
何度も火花を舞い散らし、装甲を削られ切ったゲイツが変身を解除させられる。
「まっず!」
カッシーンの次の矛先が、ジオウへと向く。
ゲイツの脱落をきっかけに、徐々に不利になっていく。
迫り来る攻撃をどうにか凌ぎ切り、ジオウは態勢を立て直す為に一度距離を取ろうとする。
しかし執念とも言うべき気迫と共に、ザモナスが一気に仕掛けてくる。
「あぁ!うぅ…」
不意打ちとも言えるソレは想定を上回る猛攻で、ジオウは遂に直撃を受けてしまう。
そこから皮切りに叩き込まれるカッシーンとタイムマジーンの連撃を受け、ジオウはとうとう追い詰められた。
「漸くだ…ジオウ!」
地面に這いつくばるジオウの姿に、満足げに笑みを浮かべたザモナスが、トドメを刺さんとする。
「ジ、オウ…」
意識が朦朧とする中で手を伸ばすゲイツ。
だが、ゲイツの手は遥か遠くのジオウには届かない。
「落ちろ、ジオウ!」
そして今、迫り来るタイムマジーンの腕。
それを目に前にしたジオウの、ソウゴの感覚が、ゆっくりと研ぎ澄まされていく。
所謂走馬灯と呼ばれるそれは、自らを砕かんとする存在を、ソウゴに嫌というほど主張してくる。
次第にソウゴへと近づいてくるその一撃が、視界いっぱいに広がらんとした時、ソウゴの耳に届いたのは、自らの断末魔では無かった。
《オーマジーン!》
自らを庇うように現れた、黄昏色のタイムマジーン。
「な、あれは…!?」
その顔に描かれた存在は、ジオウもゲイツも忘れよう筈の無い存在。
「オーマ、ジオウ…!?」
逢魔が時の王者の玉座ともいうべきタイムマジーン、オーマジーン。
「間に合ったか…」
その胸の内にいる民無き王が、変身も出来ぬ程傷付いている事は、今は誰も知らなかった。

3人目

「異変」

オーマジオウの出現というとんでもない出来事が起こった一方その頃、甲児達はGUTSセレクトと一緒に各地に出現した怪獣やモンスターを討伐して回っていた。

「ふぅ……」
「お疲れ甲児くん」
「あぁ、ありがとなさやか」
「悪いな、怪獣災害の方は俺たちの専門だってのに」
「気にしないでくださいテッシンさん」
「しっかし、こんなにあっちこっちでいろいろ出てくるなんてな……」
「あぁ、モンスターの方は竜馬さん達みたいに別の世界から飛ばされて来たんだろうが……」
「怪獣の方はわからないわね……」
「確か2年前まではエタニティコアとかいうのが原因だったんだよな?」
「はい、エタニティコアが活性化されたせいで眠っていた怪獣達が目覚めてしまったんです。
ケンゴさんがエタニティコアを安定化させたおかげでここ2年間は怪獣達は出現してなかったんですが……」
「それが最近になって急にあっちこっちで怪獣が出てくるようになったってわけか……」
「アキトさん、エタニティコアは安定してるんですよね?なのになんで怪獣が再び出てくるようになったんですか?」
「わからない、原因はエタニティコアではなく別のなにかであることだけは判明しているが……」

「そのことについて、シズマ会長から連絡があった」
「トキオカさん」
「なんかわかったのか?」
「あぁ、最近怪獣達が再び出現しているのには、ライラーと名乗る者たちが原因のようだ」
「ライラー…?」
「最近世界各国の超古代文明の遺跡に侵入していた者たちだ。数日前にその内の一人をタツミ隊長が捕まえて事情聴取をしているが……まだ詳しいことは聞き出せていないようだ」
「そのライラーが怪獣を?」
「あぁ、怪獣が出現した際、ある信号がキャッチされたようだが、その信号が遺跡から発掘された怪獣を誘導する装置によく似たものとなっている」
「つまり、最近怪獣がよく出現してたのは、ライラーがその装置を使ってたから…?」
「あぁ」
「なんでライラーはそんなことを?」
「わからない…が、タツミ隊長が捕まえたライラーの1人に事情聴取を行った際に『光が…呼んでいる』と言っていたそうだ」
「光……まさかトリガー…ケンゴのことか!?」
「恐らくはそうだ……この発言や遺跡に侵入していたことから『超古代文明を崇拝し、その力を利用して世界を、自分達の理想郷に作り変えようとしている』のではないかと考えられているそうだ」
「そんなことの為に怪獣を……」
「とにかく、ライラーについてはまた新しいことが判明し次第、連絡をつけるとのことだ」
「わかりました」
「これからどうすんだ?」
「一度光子力研究所へ向かう予定だ。その後は何もなければトゥアハー・デ・ダナンと合流して情報交換と今後どうするかの作戦会議を行うつもりだ」
「そうか…」
(清明の野郎は神浜市での戦い以降、姿を見せてねえ……鬼も全然出てこねえし、いったいなんのつもりだ…?)
そんなこんなでナースデッセイ号は光子力研究所へと向かった。



「……ケンゴ……」
「……やっぱり心配か?」
「うん……」
ユナは心配してた……エタニティコアがライラーや他の悪に利用されるかもしれないと、そしてそのエタニティコアの中にいるケンゴがいつになったら帰ってきてくれるのかと。
「……ねぇアキト……エタニティコアは安定してるんでしょ?なのに、どうしてケンゴは帰って来ないんだろう……」
「……ケンゴのことだから、寝坊でもしてるんじゃないか?
……ユナの方は?」
「……最近、ユザレの記憶が、薄れてきてるような気がする……」
「……巫女としての役目を終えようとしてるのかもな。ケンゴもユナも、普通に暮らせるようになる日が近いのか……」
ユザレ、それは3000万年前、トリガーと共に闇の軍勢と戦った「地球星警護団」を統べる超古代人の巫女。ユナの身体にはそのユザレの思念体が憑依しており、彼女が付けてる指輪はその形見である。
(……ケンゴ……)
『……あぁ……』
「っ!」
突然ユナの脳内に声が聞こえ始めた。
「この声って…!」
『あぁ……うわぁああああああ!?』
「ケンゴ!?」
「どうしたんだユナ!?」
「今間違いなく聞こえた…ケンゴの声が!」
「なんだって!?」
すると次の瞬間、ナースデッセイ号内全体に警告音が響きわたる。
「これは……まさか!?」
アキトは急いでエタニティコアの様子を確認する。
「っ!この数値は……どういうことだ!?」

「アキトさん!いったいなにがあったんですか!?」
他の部屋にいた甲児達が慌てた様子でやって来た。
「大変だ!エタニティコアが急に不安定になり始めたんだ!」
「なんだって!?」
「ケンゴ……」

4人目

「オーマジオウ…!?」
驚愕、畏怖、呆然。
何の前兆も無く訪れた絶対強者を前に、この場の誰もが胸中に抱いた思いを、ジョウゲンが一括に代弁する。
敵であるジョウゲン達は勿論、味方とも言えるソウゴ達もまた、彼を前に混乱を強いられる。
「何故この時代に…目的は何だ?」
ゲイツが零した疑問は当然のものだった。
50年後の未来より動かぬ筈の王が、玉座とも言える魔人をも従えてまでこの時代に現れたのだ。
ソウゴですら予測出来なかった事態を、果たして誰が予期出来た?
その答えは、彼等の反応がとうに物語っていた。
『驚いている暇は無いぞ、若き日の私よ。』
「…っ!」
響き渡る囁きの如き声色が、混沌に満ちていた戦場を沈黙一色へと支配する。
魔王と畏怖され恐れられる理由が、そこにあった。
誰もが冷や汗を流し言葉を失う中、唯一人ジョウゲンだけが口を開く。
「…こうして相見える日が来るとは思わなかったよ。」
敵対者としての威勢か、或いは意地から来るものなのか。
どちらにせよ、彼の態度からは僅かだが余裕が感じられる程であった。
「どんな理由でこの時代に現れたのか知らないけど、これはこれで好都合かもしれないね、カゲン。」
「あぁ、いずれ付けねばならぬ決着だ。ここで終わらせる!」
そう言って不敵に笑うジョウゲンに対し、カゲンもまた己のタイムマジーンを呼び出し、乗り込む。
そんな二人を前に、オーマジオウは静かに告げる。
『お前達が知る必要は無い……消えろ。』
それは死刑宣告にも等しい一言だった。
しかし、それでも尚ジョウゲン達は不遜な態度で言い返す。
「僕達には僕達の事情があるんだ、ここで消える訳にはいかないんだよ!」
『ならば抗え、力無き者は死ぬだけだ。』
「上等だ、やってやるよ!」
怒り心頭といった様子のジョウゲンは、自らの従える軍勢でもって魔王へと歯向かわんと腕を振り上げ、カッシーンへと号令を下す。
直後に一糸乱れぬ動きで陣形を形成し、各々の武器を構えるジョウゲン軍。
「掛かれ!」
そしてオーマジーン目掛けて一斉に押し寄せてくる、カッシーンの軍勢。
『ふん。』
それらに対するオーマジオウの反応は、一笑。
たった一度だけ、オーマジーンの腕が振り払われた。
直後、ただ一つの例外も無く、カッシーンの軍勢が無雑作に薙ぎ払われる。
まさに魔王の名に恥じぬその所作には、味方である筈のソウゴ達も思わず息を呑む程だった。
一瞬にして配下の全てを屠られたジョウゲンは、しかしまだ戦意を失ってはいない。
「そうこなくっちゃ、面白くない…カゲン!」
「おう!」
強敵への渇望を求むがごとく、彼等は高らかに宣言し、魔人を従え共に先陣を切る。
「あんたを倒して、全部を終わらせてやるよ!」
オーマジーンへと押し寄せる機械仕掛けの魔人達。
それを迎え撃つは、圧倒的な暴力の化身たる王者の御業。
魔王は、ただ一度、腕の一振りで以て全てを打ち砕いていく。
蹂躙、無双、否、言葉で言い表せない程のソレは、最早戦いとは呼べなかった。
そんな虐殺とも呼べる所業の中で、ソウゴが、若き魔王が問い掛ける。
「ねぇ、もしかしてなんだけど。」
『何だ?』
「俺達を助けに来たって訳じゃないんだよね?」
オーマジオウは答えず、ただ迫りくる軍勢を殲滅し続ける。
轟音をかき鳴らし、量産された魔人が最後の一体まで打ち倒されたところで、ジョウゲンが苦々しい顔を浮かべながら口を開いた。
「お喋りする位に余裕って事かい?ムカつくね…!」
どうやら、彼が率いていた軍勢は全て潰えたらしい。
それでも尚、オーマジオウへ挑む気概を失わないジョウゲンとカゲンが、捨身の覚悟で以て決めに掛からんとする。
だが、一矢報わんとするその意志を止めたのは、誰あろうソウゴの駆るタイムマジーンであった。
「そこまで。」
タイムマジーンの中でゲイツを抱え、二人の間に割って入るソウゴ。
「邪魔、だ…!?」
ジョウゲン達からすれば共々に討っても構わぬと、再度動こうとするも、オーマジーンから放たれる覇気がその意志を機体諸共朽ちさせていく。
この勝負の行く末は端から決まっていたのだと言わんばかりの事態に、流石のジョウゲン達も二の句が継げずにいた。
一方のオーマジオウはというと、自身の介入に対して特に何かしらのアクションを起こすでもなく、静かに佇んでいる。
その姿を前に、再度ソウゴが問い掛ける。
「多分だけど、それどころじゃない、でしょ?」
『…その通りだ、若き日の私よ。』
オーマジオウの言葉を聞き、ソウゴは己の腕に抱いていたゲイツを解放し、再び彼の手を取って立ち上がらせる。
そして、未だ膝を着くジョウゲン達に視線を送り、改めて語り掛ける。
「ここは引いてくれないかな?」
ソウゴからの提言に、ジョウゲン達は怪しげに目を細める。
彼が口にした言葉のニュアンスが、今一つ理解出来なかったからだ。
自分達に撤退しろ、という意味なのは間違い無いだろうが、そう簡単に退く事は出来ない事情がある。
それを敢えて無視した発言に対し、ソウゴの真意を探るようにジョウゲンは問いを返す。
「素直に聞くとでも?」
「そうだね。でも、このままだとどうなるかは分かるよね?」
対するソウゴもまた、淡々と応じる。
ジョウゲン達がオーマジオウの力を目の当たりにし、戦慄を覚えた事は疑いようも無い事実である。
それを踏まえた上での提案であり、ジョウゲン自身もオーマジオウに歯向かう事が如何に無謀であるかは承知している。
だからこそ、彼はあくまで交渉を持ち掛けたのだ。
最も、彼等に与えられた選択肢は事実上ただ一つだが。
それでもジョウゲン達は、引く様子を見せない。
ここで無闇に逆らえば、悪戯に命を落とす危険性があると悟ってはいる。
撤退こそ賢明だとは分かっていた筈だ。
「…仕方無い、か。」
ソウゴもまた渋々といった様子で、自らのタイムマジーンを構える。
一機残らず蹂躙された機械の兵だった屍の上で。
「それで、どうしてこの時代に…」
『…ぐっ、うぅ。』
「えっ…?」
そうして最初の問いを改めて聞こうとしたソウゴの前へと現れたのは、傷付いた金色のベルトを携え、玉座より崩れ落ちる老いた魔王の姿だった。

「グロロ~…貴様、その種を、神精樹の種をどこで手に入れた?」
武道の怒りに満ちた、しかし何処か焦燥も感じる視線が、ターレスただ1人を射抜く。
それは悟空も同じ様に思っていた様で、一様に険しい表情を浮かべている。
一方で問われた当人はと言えば、そんな事は知った事ではないと言いたげな顔をしており、それがまた余計に彼等の感情を逆撫でする結果となる。
そんな中でターレスが取った行動といえば、実にシンプルであった。
その手に取った果実をシャクリと齧るだけ。
それだけで神精樹の実の力が、更なる力を与えてくれる事を、彼は知っていた。
その行為だけで充分だった。
神精樹の果実を食すという、たったそれだけの動作で以て、武道への宣戦布告としたのだった。

5人目

「デスマッチ! テリーマン対ストロング・ザ・武道!/超サイヤ人だ孫悟空」

 CROSS HEROES本隊と別行動を取り、試作型神精樹の破壊任務にあたっていた
孫悟空、ルフィ、テリーマン、そして助っ人の天津飯……
それを阻むターレスの前に現れたのは、ストロング・ザ・武道だった。

「ストロング・ザ・武道! 何故お前がここに!?」

 テリーマンと武道が最後に遭遇したのは、光子力研究所の攻防にて
超人不可侵条約の破棄を宣言された時である。
その後の武道は丸喜拓人と共に行方をくらましていたのだが……

「久しぶりだな、テリーマンよ……」
「武道! あの時、アシュラマン達悪魔超人軍団がお前に挑んでいったはずだ!」

 テリーマンをブラックホールの能力によってCROSS HEROESの元へ送り込んだ
プラネットマン、そしてアシュラマン。その後の彼らの動向をテリーマンは知らない。
だが、武道が今こうして生きているという事は、彼らがその後どうなったかを
知っている事を意味する。

「グロロ~~~……その通りだ。奴らもなかなかの使い手だったが、
この私を倒すにはまるで足りなかったぞ」

 そう言って笑う武道。

「まさか……あの3人を相手取って無事にいられるとは……ネプチューンマンから
完璧超人代表の座を奪い取ったのは伊達ではないと言う事なのか……!」

 武道に敗れたアシュラマン達の生死は今以て不明であり、消息も掴めていない。
しかし、そんな事実など歯牙にもかけないといった態度で武道は続ける。

「しかし、テリーマン。お前の方こそ、正義超人であるキン肉マンを
私に差し向けておったではないか」
「!? 何ィィーーーーッ!? キン肉マンだってぇーッ!?」

 テリーマンはさらに驚愕する。
キン肉マンはキン肉星の大王として地球から遠く離れた母星で暮らしているはずなのだ。
それがなぜ地球にいて、しかも武道と戦っているのか?

「貴様ぁ!! キン肉マンとはどういうことだ!!」
「その様子だと、本当に何も知らぬようだな」

 CROSS HEROESがいる世界とは別次元の特異点、そして現在では認知世界にて
発生している事件。それらの情報を知る由もなくこれまで戦っていたテリーマンにとっては
寝耳に水の話であった。

「くそっ!! ならば今すぐ教えろ! 貴様は一体何を企んでいるのだ!?
そしてキン肉マンは今一体何処に……」
「それは出来ぬ相談だ。ここで死ぬ貴様に話す必要もあるまい」
「ぐぅ……!!」

 武道の言葉に怒り心頭のテリーマンであったが、冷静さを失うわけにはいかない。
相手はアシュラマン達の追撃をも振り切ったストロング・ザ・武道なのだ。
今の自分の実力では到底敵う相手ではない事を、彼は理解している。

「ククク……どうした、来んのか?」

 挑発的な言葉を投げかける武道に対し、テリーマンは構えを取るだけで
仕掛けようとしない。

(くっ……迂闊に攻め込む事は出来ない。ここは相手の出方を見るしか……)
「あいつ……すげえ気だ……それにあのテリーマンが攻め込めねえなんて……」

 悟空はテリーマンと対峙する武道の凄まじい闘気に気圧されていた。
テリーマンはストロング・ザ・武道が放つプレッシャーに押し潰されそうな感覚を覚える。

「負けるのが怖いわけではない……それよりも、この世に生を受けながら
貴様のような奴に舐められっぱなしじゃ、生きてる甲斐がねえんだよーーーーーーッ!! ハァアアアアーーッ!!!」

 先に動いたのはテリーマンだった。
彼の右腕が光り輝き、超絶パワーを誇る必殺の一撃を放つべく力を溜める。

「ぬうううううううううううううんッ!!」

 行った! 行った! テリーが行った!!
嵐のような鉄拳連打、ナックルパートの応酬。
その破壊力はまさに天災級! その拳で、あらゆる敵を粉砕してきた!

「うおおおおおおおおおーッ!!」

 怒濤の連続攻撃の前にはいかなる防御も無意味。
左腕を大きく振り回してのテリーマンのトドメの一撃、
「テキサス・ブロンコ」が炸裂すると同時に、武道の肉体は大きく吹き飛ばされた。

「やったか!?」
「グロロ~~ッ、まずまずと言ったところか」

 天津飯の声に応えたのは、ストロング・ザ・武道本人だった。

「なんだとぉ!?」
「フゥン!!」

 驚くテリーマンへ、武道は瞬時に間合いを詰めて強烈な右ストレートを叩き込んだ。
先程のテリーの猛攻に対する意趣返しと言わんばかりに。

「ぐわあああーーーーーーーーッ!!」
「テリーマン!?」

 吹っ飛ぶテリーマンを見て、ルフィが咄嗟に腕を伸ばし、彼を受け止める。

「大丈夫か、テリーマン!」
「あ、ああ……すまねぇ、助かったぜ……」

 テリーマンはルフィの腕の中で体勢を立て直す。
しかし、屈強なタフネスを誇るテリーマンにたった一撃でこれほどのダメージを与える。
ストロング・ザ・武道の実力をまざまざと見せつけるには十分すぎるほどであった。

「あいつ……何て野郎だ!」
「奴め……やはり只者ではないと言う事か……!」

「余所見をしている場合か、カカロット!!」

 ターレスが悟空に迫り、その手刀を振り下ろす。

「くっ!」

 それをギリギリのところで回避する悟空。

「俺を相手に随分余裕だな、
ええ?」
「だありゃああああッ!!」

反撃に転じた悟空の攻撃が、ターレスの胸板にヒットするが……。

「無駄だ……お前の攻撃など、俺には効かん」

 ダメージを負ったようには見えない。
だが、それは当然の事である。
ターレスは神精樹の実を食べ続けた事で、かつて悟空が戦った時とは
比べ物にならないほどの戦闘力を手に入れていた。
さらに言えば、彼が身に着けているのはサイヤ人の戦闘服であり、耐久力も桁外れの域に
達している。
いかに孫悟空と言えど、そう簡単に勝てる相手ではない。

「どりゃあああああああああああッ!!」
「ぐあああああああああああああッ!!」

 悟空を殴りつけるターレスの強烈なパンチ。地面を二度三度と跳ねながら
吹き飛ばれていく悟空にターレスの容赦のない追撃が迫る。

「終わりだな、カカロット!!」
「……」

 ターレスの言葉に対して、無言のまま起き上がり、身構える悟空。
その時であった。

「いいや、まだ終わらねえぞ」
「何ッ!?」

 悟空の髪が金色に逆立つ。瞳もエメラルド色に輝いている。

「ちぃッ!」

 それを見た瞬間、ターレスはその場から飛び退いた。

「な、何だ、その変化は……」

 ターレスは知らない。神々しきオーラを放つ、孫悟空という男に秘められた
その力の存在を。

「こいつが……伝説の超サイヤ人だ!!」
「超サイヤ人……馬鹿な、そんなものはただの御伽噺にしか過ぎんはず……
デタラメをほざくな!!」

 1000年に1人現れると言う伝説の戦士。サイヤ人の間でまことしやかに
伝承され続けた存在。
あの宇宙の帝王フリーザが唯一恐れ、サイヤ人を滅亡させた理由ともされた。
それが、目の前にいる。

「貴様のような下級戦士が、超サイヤ人になどなれるはずが……!!」
「じゃあ、試してみろよ。それで全て分かる……」

6人目

「崩壊の円舞曲:武道」

「下等超人としては、良く出来た方だ。」
テリーマンを殴り飛ばした腕の感触を確かめながら、武道は語る。
「そこ等の下等超人ならば、この一撃で沈んでいただろう。」
事実、武道に殴られたテリーマンは今や体勢を立て直すまでに復帰している。
この男は間違いなく超人としてなら強い部類に入るだろうと、武道は評価する。
それも武道の言葉通り、その辺の下等超人に比べれば、だが。
「だが、今は貴様に構っている暇は無いのだ!」
武道はその言葉通り、テリーマンを一蹴しに掛かる。
それは先程の拳とは比較にならない程の威力。
「がっ…はぁ!?」
武道の正拳突きが鳩尾を直撃し、テリーマンはその場に崩れ落ちる。
だがテリーマンが膝を付くよりも早く、武道がその胸元を掴み上げ、倒れる事を許さない。
「グロローーー!!」
「ガァーッ!!?」
そのまま武道は軽く飛び上がり、強烈な踵落としを首元へと撃ち込んだ。
断末魔にも等しい悲鳴を上げながら、今度こそ叩きのめされるテリーマン。
その威力は大地が大きく揺れる程で、神精樹に亀裂を走らせる。
「テリーマン!?」
余りにも強大なそれは、天津飯を驚愕させるには十分だった。
「へっ…まだまだ、だぜ…!」
そんな一撃を受けたテリーマンは、しかしそれでもなお立ち上がる。
対する武道もまた、その振る舞いに感心した様に目を細める。
「…評価を改めねばならぬな、グロロ~。」
テリーマンの肉体は既にボロボロであり、まともに動けない事は誰の目から見ても明らかであったからだ。
にも拘わらず、まるで不死身の如く立ち上がる姿は、見る者を圧巻させる。
「相も変わらず上から目線か、気に入らねぇぜーーーっ!!」
そう吠えて、再び立ち向かってくるテリーマン。
武道もそれに応え、正面から迎撃せんと拳を握り、迎え撃つ。
互いの全体重を掛けた右ストレートが衝突し、大気が震える。
だが両者のパワーは互角では無く、テリーマンが僅かに押し負けていた。
当然だ、武道とテリーマンとでは、練度は勿論、純粋に1m近い身長差が作る質量の差がある。
そして武道が繰り出す攻撃はそれ一つではない。
テリーマンが繰り出した右ストレートを弾き飛ばす、体勢を崩したところにすかさず組み付く武道。
そこからテリーマンの顔面に向けて頭突きを叩き込む。
「当然の差だ!」
息を付かせる間もなく足払いを掛け、テリーマンを背負い投げして壁面へと叩き付ける。
そして今度は両腕を掴み取り、関節を極めながら地面に押し倒す。
「貴様と私とでは、格が違うっ!」
テリーマンは抵抗するも虚しく、ただ為すがままに地面へと縫い付けられた。
そして仕上げとばかりに両肩を踏み付け、テリーマンの動きを完全に封じる。
ここまで来ると、最早テリーマンの敗北は決まった様なものだ。
これが試合ならば、既に決着と言って良いだろう。
だがここは戦場、ルール無用のデスマッチだ。
「新気功砲ーーーっ!」
だからこそ、天津飯が横合いから奥義を撃ち込む事に躊躇いは無かった。
「ぐぬぅ!?」
全身全霊を込めて放たれた気の奔流が、武道を吹き飛ばす。
突然の不意打ちにも何とか両足で着地する武道。
「まだまだ!」
「小賢しいわーーーーーーッ!!!!!!!」
立て続けに打ち込もうとする天津飯だったが、一瞬にして距離を詰めた武道によって、逆に腕を掴まれてしまう。
「何、ぃ…!?」
その勢いそのままに繰り出される肘打ちが、天津飯を昏倒させる。
「やはり、貴様等下等超人は根絶やしにせねばならん!」
血走った眼を見開き、再度粛清を宣言する武道が、振り上げた拳に怒りを乗せて、天津飯へと叩き付ける。
「がっ!?」
瓦割りとも呼ばれるその一撃一撃が、天津飯の体力を奪っていく。
もはや回避すらままならない天津飯に出来るのは、ガードを固めて耐える事だけだ。
それが無駄な抵抗だと知りつつも、本能的に行ってしまう行為だった。
そしてそれは天津飯の命運を分ける行為でもあった。
「トドメだ!!」
ガードしていた両腕を強引に崩され、その隙へ向けて正拳突きが構えられる。
それを見た瞬間、天津飯の脳裏に浮かんだのは敗北の二文字だった。
(不味い!)
そう思った時、武神の如き剛拳が、その顎を撃ち抜く…事は無かった。
「なっ!?」
驚愕の声を上げたのは、武道の方であった。
今にも振り抜かれんとしていた拳は、先程まで這いつくばっていた筈のテリーマンによって抑え込まれていた。
「貴様、どこにその様な力が…!?」
「分かるまい!友情を軽んじるお前には、精神を通して湧き出るこの力が!」
武道の言う通り、テリーマンはボロボロであり、立つ事さえやっとの状態だ。
そんな男に不意を突かれ、武道は成すがままに持ち上げられてしまう。
「これが、友情の力だーっ!!!『ブレーンバスター』---ッ!」
そしてそのまま地面へと叩き付ける。
テリーマンの必殺技、ブレーンバスターである。
「ぬぅ…!」
神精樹へと走る亀裂が大きく広がっていく。
流石の武道も焦りの色が強く出ており、表情には明らかな動揺が見られた。
このままでは神精樹自体が倒壊してしまうのではないか?
そんな疑問に耳を傾ける暇は無いと、テリーマンが足をホールドし、全身全霊で捻じ曲げる。
「『スピニング・トゥ・ホールド』-ッ!」
「グロローッ!?」
テリーマンの十八番、スピニング・トゥーホールドが完璧に決まり、武道をその場に釘付けにする。
「調子に、乗るなーっ!!」
しかし武道もまた即座に行動へと移す。
テリーマンへの追撃よりも早く、ハンドスプリングを伴った頭突きを撃ち込む。
見た目に似合わぬ変則的な動きに、思わずたたらを踏んで後退を許してしまう。
そうして改めて対峙したとき、ふと武道が語りだす。
「やはりか…」
テリーマンはとっくに満身創痍の筈だ。
そんな男が、自分の必殺を防いだ力の正体。
「…この力だ。」
武道にはそれが理解出来た。
そして同時に、彼が放つ気迫が憎悪の混じった物に変わっていく。
「貴様の持つ、友情パワーとやらが、秩序を乱すのだーーーっ!」
「何ぃ!?」
先程までのテクニカルファイトを投げ捨て、力任せにテリーマン叩き付ける武道。
息を荒げ、肩で呼吸しながら、怒り心頭と言った様相で武道は宣言する。
「その力こそ、粛清せねばならん!」
「何だと!?」
それは友情パワーの抹殺、即ちキン肉マン達への死刑宣告だった。

7人目

「Revenge of Demon Slayer」

 超サイヤ人へと変身した孫悟空。ターレスはわなわなと震え、激昂する。

「貴様が超サイヤ人などと言う事があってたまるかーッ!!」

 怒り狂ったターレスの全身から、凄まじいまでの気が溢れ出す。
その気だけで大気を震わせながら、ターレスは超スピードで飛びかかった。

「――ッ!!」

 悟空もその場で静かに構える。

「ずあああッ!!」

 ターレスの拳が繰り出されると同時に、悟空も動いた。
凄まじいターレスの猛攻をいとも簡単に受け流していく。

「何故だ……! さっきまでとは動きが違う!」

 焦りを見せるターレスに、悟空は落ち着いた声で言った。

「おめえの攻撃は今のオラには通用しねえ」

 そして、ターレスの腕を掴み、そのまま投げ飛ばした。

「うおっ!?」

 ターレスは地面に叩きつけられる直前、空中で体勢を立て直すと、
着地して間合いを取った。だが、ターレスの顔には余裕がない。
視線を上げると、悟空は既に目の前にいた。
一瞬で懐に飛び込まれたのだ。
ターレスは咄嵯に蹴りを放つが、それもあっさり受け止められてしまう。

「――ふッ!!」

 悟空のアッパーがターレスの腹に突き刺さる。

「ごああッ!?」

 ターレスは吐瀉物を撒き散らしながら背中を丸めた。その頭上から、
悟空がさらに稲妻のようなエルボーを喰らわせる。衝撃に耐えきれず、
ターレスは再び地面に沈んだ。しかし、今度はすぐに立ち上がってくる。
ダメージは確実に蓄積しているはずだが、それでもターレスは諦めなかった。
再び悟空に向かっていく。

「はあ、はあ……! ぬああああッ……」

 だが、先ほどまでの動きと比べると明らかに精彩を欠いていた。
まるで力を振り絞るように攻撃を繰り返すターレスだったが、次第に追い詰められていく。
そして遂に、渾身の一撃を受けた瞬間、膝を折ってしまった。
倒れ込むターレスを見て、悟空は言う。

「分かったろ。おめえはオラに勝てねえ」
「馬鹿な……! 俺は、俺は貴様を倒したのだ……この手で……!」

 アナザーワールドにてターレスが倒した悟空は、ナメック星に向かう事の無かった
世界線の悟空だった。故にフリーザとも戦っておらず、超サイヤ人にも至っていない。
つまりはここにいる孫悟空とは、強さの次元そのものが違っていた。

「神精樹の実がまだ足りないとでもいうのか……」

 ターレスは呟くようにそう言った。そして、空を見上げる。
そこには、神精樹の大樹があった。
天を貫くような巨大な木であり、その身を喰らうターレスは、
確かに強い力を身に着けていた。だが、それだけでは足りぬ。

「やはり特異点でより完璧な神精樹を育てる必要があるか……!」

 ターレスがそう言って笑みを浮かべると、突如として上空から何者かが現れる。
それはスラッグだった。

「!? スラッグ……あいつも化けて出やがったのか……!!」
「だらしが無いぞ、ターレス!」
「うるさい……!」

 現れたスラッグに対し、ターレスは鋭い視線を向けた。
そんなターレスを無視して、スラッグは悟空の方を見る。

「孫悟空、この場はひとまず退かせてもらうぞ。だが、必ず貴様の息の根を止めてくれる! ピッコロのようにな!!」
「!? ピッコロ……おめえ、ピッコロに何したんだ!!」

 驚く悟空に、スラッグは不敵に笑う。

「ふははは、さあな! かあああああッ!!」

 空中から強力なエネルギー弾を悟空に向けて放った。
その威力は凄まじく、辺り一面を吹き飛ばすほどだったが、
直撃しても悟空には傷一つ付いていない。土煙が止むと、
既にターレスとスラッグの二人は消え去っていた。

(あの野郎、まさか本当にピッコロを殺しちまったんじゃないだろうな……)
「俺がどうかしたのか? 孫」

 背後から声をかけられ振り向くと、そこにピッコロがいた。
相変わらずの仏頂面である。

「どひゃあーッ!! ピッコロ! おめえ、無事だったんか?」

 安堵する悟空に、ピッコロは鼻を鳴らす。

「やられたように見せかけてスラッグの奴の後を追ってみれば、
案の定、貴様がいる所に行き着いたって訳だ。
奴らは相手の気を探る技術に関しては未熟なようなのが好都合だったぜ」

 しかし、問題はまだ残っている。ストロング・ザ・武道だ。

「おい、おめえ! まだやるか!? それでもいいけど、この樹を今からブッ壊すから、
ちょっと待っててくれ! な!?」
「…………」

 武道は悟空からの意外な言葉に目を丸くした。

「貴様は神精樹の実の力を欲さぬと言うのか?」
「ああ。そんなんで強くなったって、オラちっとも嬉しくねえかんな!」
「…………」

 しばらく考え込んでいた武道だったが、やがて小さく微笑んだ。

「フッ、お前のような男は初めて見た。名は何と言うのだ」
「孫悟空だ」

「そうか……人間にも少しは見応えの有る奴が居たようだな。
神精樹を破壊してくれるのならば、私としても都合が良い。貴様に免じて、
ここは引いてやる。だが、テリーマン! 私が言った言葉に偽りは無い。
努々忘れるでないぞ!」

 それだけ言い残すと、武道はその場を後にした。

「行ったか……正直、助かったとしか言えないな……」

 テリーマンはストロング・ザ・武道の実力をまざまざと見せつけられていた。
友情パワーの粛清。その言葉を体現するような戦いぶりは
まさに武神と呼ぶに相応しいものだった。
もし、あれ以上長引くようなことになれば、負けるのは自分だっただろう。

「スラッグに続きターレス……どうやら偶然ではなさそうだ。
スラッグにも妙な取り巻きが付いていたようだったからな」
「そうなんか……とにかく、この樹をブッ壊すぞ。ルフィ、テリーマン、天津飯。
手を貸してくれ!」

「ああ!」
「任せておけ!」
「よし……行くぞ!」

「はあああああああーッ!!」 

 悟空たちの一斉攻撃が、遂に神精樹を破壊した。
大樹は根元から折れ、バラバラになって地上へと落下していく。

 同じ頃、CROSS HEROES本隊とアマルガム・クォーツァー連合の戦いに
突如として乱入したオーマジオウによって戦況は大きく覆された。
そんな中、謎の男・禍津星穢を追ってきた者。それは……

「へェ……そうか。まだ死にぞこないが残ってたんだっけな。魔殺少女」

 腰まで届く長い黒髪。口元を覆う赤いマフラー。黒曜の如き瞳を持つ
美しい顔立ちの少女。

「じいさま達も言ってたよ? 『我らの傀儡として生涯を捧げていれば、
安寧な日々を過ごせたものを』ってね」
「黙れ……!」

 穢の挑発的な態度に、忌々し気に睨みつける。
そしてその小さな身体から迸るのは――魔力。

「この魔力反応……まるで、魔法少女……!?」
「でも、少し違う……あの子は、一体……」

 いろはや黒江が驚愕しているのも無理はない。彼女の放つ魔力量は
尋常なものではなかった。

「返してもらうぞ……お前たちが私から奪ったもの、すべてを……!!」

 魔殺少女・ペルフェクタリア。
かつて世界を救い、そして穢の属する一団によってそのすべてを略奪されし者。

8人目

「崩壊の円舞曲:逢魔」

_けたたましい轟音と共に、山吹色の空が堕ちてきた。
空を埋め尽くさんばかりの巨木、神精樹の崩壊を、誰かがそう言い表した。
月まで届かんとしていたそれは、表層から中枢に至るまでを剥離させられ、意志を持った様に悲鳴を上げ、遍く枝葉を大地に降り注がせる。
世界の終焉とも言える光景だったが、しかし実際は星が救われる瞬間でもあった。
そんな事が起きるのだ、この世界に何が起きても可笑しくは無いだろう。
_例えば、歴史上最も恐れられた魔王の崩御。
「オーマジオウ!?」
神精樹の崩壊と共にオーマジーンが崩れ落ちた時、中から現れた老王もまた、地に伏していた。
白髪は輝きを失い灰色に萎れ、肌には張りが無く、四肢は枯れ木の様。
そして何よりその身からは覇気が感じられず、ただ呼吸を繰り返すだけの老人であった。
「何だ、何が起きている…?」
その様相は、かつてゲイツが渇望し、しかし今は微塵も求めてなかった光景。
輝きを失ったベルトは、オーマジオウの力を使い切った証拠だった。
ゲイツは悟った、ただならぬ異常事態が水面下で進行していると。
魔王ですら、オーマジオウですら対処しきれぬ程の、恐ろしい事態。
その事実を理解すると同時に、彼の心中に渦巻いた感情は凍える程の恐怖と激しい焦燥だ。
一刻も早く現状を突き止め打破しなければ、取り返しのつかない事になる。
そう囁いたゲイツの直感は、寸分の狂いも無く当たっていた。
ただし、既に手遅れという形で。
『_ほう、確実に仕留めたと思っていたのだがな。』
崩落する神精樹が降り注ぐ中で、確かに響き渡る初老の声。
一体いつから現れたのか、気付けばそこに異形の存在が佇んでいた。
「何、あれ…?」
人型の体躯、しかし顔のあるべき部分に目や口などは何処にも無い。
ただあるのは、赤く脈動するのっぺらぼうに仮面のみ。
全身を覆う純白の鎧は黄金の鷹の意匠があしらわれ、まさしく王者といった風格を放っている。
背中から伸びる翼の如きマントがまた、その威厳を確固たるものとする。
手にした両刃の剣はシンプルながらも覇気を纏っており、それを扱う者の腕力を物語っていた。
そして何よりも異質なのは、その存在の在り方。
まるで神話の世界から抜け出してきたかの様に、"宇宙"を纏っていた。
比喩でも暗喩でも無く、文字通り、彼の周囲の空間はブラックホールの如く歪み、そこから天に輝く筈の星々が垣間見えるのだ。
世界を侵食しているとでもいうのか、足元まで及ぶそれは、彼が地に足付けず地上に存在出来る証でもあった。
何もかもが異質であり異常、脳が理解を拒む程のソレは、ただそこに佇んでいた。
『流石は仮面ライダーの王を名乗る者、そうでなくてはな。』
全てが些末事の様に嗤う目の前の存在は、上位者の如く振舞う。
そう確信させるだけの圧倒感を、その異形の存在は放っていた。
そんな存在を目の当たりにして尚、ゲイツは自身の直感が正しかった事を今一度理解した。
オーマジオウが倒れた理由。魔王すら凌駕し得る脅威の正体。
それはこの世の理から外れた現象であり、同時に世界の法則すら超越した存在である証明。
その存在を認知した途端、脈動のリズムが崩れ、早まっていくのをゲイツは感じ取る。
それほどまでの存在だと本能的に察知したからこそ、彼は震える声で呟く。
「ジオウ、逃げるぞ。」
彼らしくない、弱々しい声色だった。
それも仕方が無い事だろう、最早、彼はその存在を生理的に受け付けられなかったのだ。
ソウゴも何かを感じ取ったのか、表情を強張らせながら肯定すると、オーマジオウに肩を貸して走り出す。
当然、オーマジオウの力を失い傷付いた魔王の体は、年相応の身体能力にまで落ちていた。
そんな状態で走る事は酷く困難な行為であったが、それでも必死に駆け抜ける。
しかし、それを易々と見逃すようなジョウゲン達では無い。
「逃がさないよぉ!そこのお前も仮面ライダーなら、一緒に倒すとしようか!」
だが、ここに来て彼はたった一つの致命的なミスを犯した。
『_私が、仮面ライダーだと?』
彼の者の異質さを感じ取れず、諸共に滅ぼそうとしたこと。
即ち、彼と相対したことだった。
否、これから行われる事象を鑑みれば、それは相対と呼べる様なものでは無かった。
ジョウゲンの操るタイムマジーンが、オーマジオウ達を踏み潰さんとして。
『_ふんっ。』
それよりも早く、無雑作に繰り出された剛拳。
不可視にして高速の衝撃が、タイムマジーンの腹部の装甲を瓦の様に突き破り、中のジョウゲンへとめり込む。
「ガァァ!?」
激しい火花と共に爆炎を上げ、きりもみ回転をしながら荒れ果てた荒野を耕す様に転がるタイムマジーン。
その最中に中から打ち出されたジョウゲンは変身を解除させられ、血と共に苦悶の声を漏らしてうずくまっている。
やがてタイムマジーンは自身に打ち付けられた圧倒的な暴力によってバラバラとパーツを崩していき、四肢が砕け爆散した。
「うそ…?」
ソウゴ達は己の眼が信じられなかった。
あれほどまでに苦戦し、追い込まれた敵が一瞬で戦闘不能に追い込まれた事が、ではない。
そんな敵を容易く屠った存在に驚愕したのだ。
『貴様等では、私に勝てない。』
オーマジオウでさえ手玉に取り、一方的に蹂躙する怪物がそこに居た。
その異形を前にしてなお、恐怖をねじ伏せ、ジョウゲンは叫ぶ。
「まだ、だ…!」
だが、既に勝敗は決していた。
誰の眼からも明らかだった。
「いや、ここまでだジョウゲン。」
再び立ち向かわんとしたジョウゲンを、カゲンが制する。
今の力ではアレには勝てないと、冷静に判断を下していたのだ。
「カ、ゲン…!」
「イレギュラーが多すぎた、一先ずは立て直すぞ。」
そう言うと、カゲンは自分専用のタイムマジーンを呼び寄せ、ジョウゲンを押し込む様に中へ入る。
そうして一足先に、怪物から逃れるようにその場を後にした。
そんな様子を横目で見ていた当の怪物本人は、つまらなさそうに鼻を鳴らし、振り向き、呟く。
『…ふむ、奴等に気を取られていたわ。』
そこにはすでにソウゴ達の姿は無く、ただ神精樹が降り注ぐ光景が広がるのみだった。
『逃げ足の速い奴だ、侮れんな。』
そう独りごちると、怪物もまた立ち上る土砂流の中へと消えていく。
『まぁ良い、いずれ私の世界へ来ることになる。そして決着をつけるとしよう、仮面ライダーよ。』
響き渡る声が消えた時、怪物もまたその場を後にしていた。

9人目

「決着」

一方その頃クォーツァーはというと、
「……オーマジオウがこの時代に来ただと?」
「はい……」
撤退したカゲンとジョウゲンは先程あったことを王に報告していた。
「それに加え、見たことのない謎の戦士に、更には前に王が話してた滅びの現象を起こした者もこの世界に来たようです」
「そうか……面倒なことになったな……」
「……これからどうします?」
「どうするもなにも、今までと変わりはせん。
グランドジオウウォッチには全ての平成ライダーの歴史が閉じ込められている。
それを手に入れなければ平成を完全にリセットすることができん……が、特異点の侵食や滅びの現象がある以上、時間はない……次失敗した場合はグランドジオウウォッチなしで計画を遂行するとしよう」
「わかりました」
するとそこにターレスとスラッグが帰還してきた。
「戻ってきたかターレス。
……神聖樹の方はどうだったんだ?」
「残念だが地上のの方に生やした分は破壊された」
「そうか……まぁいい。特異点に生やした分はまだ残ってるからね」
「……そういやあの時よくわからないやつがいたな」
「よくわからないやつ?」
「あぁ、今回はカカロット共の方に攻撃してたから助かったが、そいつは俺にも敵対心剥き出しだった。そしてやつは神聖樹のことを知ってて俺がその種を持ってることや食らってることに対して怒ってたな。
確かストロング・武道とかいう名前だったぞ」
「なるほど、ストロング・武道……確か完璧超人の1人だったな……」
(もしかするとやつが特異点の……後で調べておくとしよう)
「ターレス、そしてスラッグよ。次にやつらを攻撃する時には貴様ら二人ともう一人にも協力してもらうぞ」
「ふん、いいだろう」



そして場面はCROSSHEROESとアマルガムとの戦い戻る。
禍津星穢やオーマジオウ、ペルフェクタリアの乱入により戦場が混沌に包まれる中、
宗介クルツマオの3人とガウルンの戦いも激しさを増していた。
「ガウルン!貴様らの協力者であるクォーツァーはもう撤退した。貴様ももう終わりだ!」
「おいおい、その程度のことで俺が撤退するような人間じゃないことはわかってるだろ?カシム」
「カシムカシムと、いい加減に……っ!」
すると、左右から玉芳と玉蘭が乗る二機のコダールmが宗介の乗るレーバテインに奇襲を仕掛ける。
「させるかよ!」
がしかし、クルツとマオが攻撃を防いだ。
「ソースケ!アンタはそいつの相手をしてな!」
「……了解した」
宗介は2機のコダールmの相手を二人に任せ、ガウルンとの戦いに集中することに。

「さてと、神浜市での借りを返すとしますか!」
「と言っても、相手はラムダ・ドライバ搭載機……一筋縄じゃいかないよ…!」
「先生の邪魔はさせない」
「行くよお姉ちゃん」
クルツとマオは宗介の邪魔をさせないために、玉芳と玉蘭はガウルンの邪魔をさせないために、今再びぶつかり会おうとしていた。




そしてそんな中……宗介とガウルンの最後戦いが始まった。
「アル!ラムダ・ドライバを使うぞ!」
『了解(ラージャ)』
宗介はレーバテインのラムダ・ドライバを起動する。
「そうこなくちゃなカシムゥウウウ!」
ガウルンもコダールiのラムダ・ドライバを起動。
二機のASは目にも止まらぬ攻防を繰り広げる。
「ハァ!」
「なに!?」
しかし戦況は先程とは違い宗介の方が押しているようだ。
「チッ…!新しいオモチャを手に入れたからって、いい気になるなよ!」
「俺の相棒を玩具扱いするとは戦術眼も落ちたようだな、ガウルン!」
そう言い宗介は量子カッターでコダールiの片足を切り落とす。
「っ!しまっ…!」
「アル!デモリッション・ガンを使うぞ!」
『了解(ラージャ)』
デモリッション・ガン……正式名称『 セワード・アーセナル 165mm多目的破砕・榴弾砲』はレーバテインに搭載された武装の中でも最大の威力と飛距離を持つ、必殺技と言っても過言ではない武装なのである。
『ロックオン完了』
「いけぇええええええ!」
デモリッション・ガンから放たれた弾丸はまるで一種のエネルギー弾のごとく飛び、ガウルンが乗るコダールiの装甲を貫き大きな風穴を開けた。
「……ハハハ!楽しかったぜぇ、カシム〜!このクソみたいな世界でお前と会えた事は最高の幸せだったぜ、カシム〜!順序が逆になっちまったな、先に地獄で待ってるぜ!カァアアアシィイイイムゥウウウウウウ!!」
最後に狂ったように笑い叫びながらガウルンと彼の乗るコダールiは爆散した。
『ヴェノムの撃破を確認』
「………」
『いかがしました、軍曹殿?』
「いや…何でもない」
(ガウルン…もう二度と思い出すことはないだろうから、ここで言っておく……
お前と一緒にカシムの名は死んだ。俺は…相良宗介だ)
宗介とガウルン、二人の男の長い因縁は宗介の勝利とガウルンの死という結末で幕を閉じたのであった。

10人目

「滅びをもたらす者、終わりを望まぬ者」

「ふいー、これで大丈夫だろ」

 試作型神精樹の破壊に成功した悟空たち。

「ところでおっさん、顔色悪ィな? 何か変なもんでも食ったのか?」
「放っておけ、元々こう言う顔だ」

 ルフィの問いに無愛想に応えるピッコロ。

「よし、それじゃあCROSS HEROESの所に戻るか。天津飯はどうする?」
「俺は餃子の所に戻って、修行のやり直しだな。役に立つとは思えんが、雲行きが
怪しくなってきたら、駆けつけるつもりだ。
俺の代わりにピッコロが同行してくれた方が頼りになるだろう」
「スラッグの奴は、俺が片付ける。ナメック星人としてのけじめをつけてやらねばな」

「ストロング・ザ・武道の戦いの最中、お前のアシストが無ければ危なかった。
礼を言うよ、天津飯」
「己の未熟さを痛感する限りだが、アンタにそう言ってもらえるなら少しは気も楽になる。健闘を祈るぜ、テリーマン」

 テリーマンと天津飯は固い握手を交わす。

「よし、行くぞ!」

 クォーツァーを撤退に追い込んだ謎の戦士。
宿敵・ガウルンとの永き因縁に終止符を打った相良宗介。
CROSS HEROESとクォーツァー・アマルガム連合軍の戦いも最高潮に達していた。
そして、禍津星穢を追って現れた魔殺少女、ペルフェクタリアは……

「うーん、どうやら旗色が悪そうだねぇ」

 穢は苦笑いを浮かべながら、そう呟いた。

「僕もそろそろ退散するとしようかなぁ……」
「逃がすと思うか……!!」

 一瞬で穢の顔面の位置まで飛び上がったペルフェクタリアが、身体を捻り、
遠心力を加えた飛び回し蹴りを繰り出した。

「夜舞蛇ッ!!」

 夜闇に紛れて獲物に食らいつく蛇が如く撓りを見せるペルの足技が
穢の首を刈り取るかのように襲い掛かる。
その一撃により、穢の頭部は粉々に飛び散る―――はずだった。
だが、次の瞬間。

「危ない危ない……やっぱり、君にはこいつのカラクリがバレちゃってたか」

 片腕を盾にして、穢はペルの攻撃を防いだのだ。それも、ただ腕で防いだだけではない。
その腕は、まるで鎧のように硬質化していた。

「この世界では『異能』だか『魔法』だかって呼ばれてるんだっけ? 
僕のこれは、ちょっとした応用だよ」
「……」

 ペルは穢の腕を蹴った反動で後ろに跳び退き、着地すると同時に
腰を落として構えを取った。

「直撃じゃあない……が、あの男に攻撃が届いている……」

 先程の承太郎のスタープラチナによる攻撃はまるで空を切るかのように
穢を捉えることはなかった。
しかし、今のペルの攻撃は穢の身体に確かに命中している。

「奴は自分の実体を位相空間に隠している……目には見えていても、実体が無い。
だから攻撃をしても当たらない……『あの男』が得意としていた手だ」
「ふっ、はははは! 流石は魔殺少女、『天秤の男』の最高傑作と
謳われているだけのことはあるね! タネがバレちゃあ、もう通用しないなぁ!」

 穢は不敵に笑うと、両腕を広げた。
すると、彼の足元から突如として漆黒の泥のようなものが出現し、
瞬く間に全身を覆い尽くしていった。

「逃げるか、卑怯者め……!!」

 ペルが忌々しげに叫ぶ中、穢の姿は泥に飲み込まれ、
地面に溶けゆくように消えていった。

『魔殺少女! そこで寝ている日向家の女と同様、死にぞこないの負け犬共!
お前たちの存在は許されない! 滅びを受け入れぬというのなら
この世界もろとも今度こそ完全に滅ぼしてやる!
まあ、僕が手をくださなくても勝手に滅びちゃいそうだけどね? 
あはははははははははは……』

 何処からともなく響き渡る穢の叫び声を最後に、戦いの場は完全に静まり返った。

「先生が……そんな……!」

 師であるガウルンが倒された事は、アマルガム実行部隊である双子の兵士
夏玉蘭と夏玉芳にとっても大きな衝撃であった。
戦災孤児となった幼少期の2人を拾ってくれた恩人でもあるガウルンの死。
それは2人の心に深い傷を残していた。

「殺す……殺す、殺す、殺す、殺してやる、絶対に殺してやる……!!
私達の手で、必ず殺してやるわ……!!」

 憎悪に染まった瞳で怨敵を見据えながら、夏玉蘭は呪言のような言葉を吐き続けた。

「玉蘭、ここは一旦退くべきよ。先生の仇は、私達で必ず討つ」
「ふざけないで、姉さん! ここで逃げたら、
今まで何のために戦ってきたのか分からないじゃない……!」

 冷静さを欠いた妹を宥めるように語り掛ける玉芳だったが、
彼女の言葉にもまた激しい怒りが込められていた。

「そうよ。けど、私達がここで死ねば、それこそ全てが水の泡になる」
「くううっ……ああああああッ!!」

 姉の言う事も理解できたが、それでもなお、
夏玉蘭の心の中には煮えたぎるような感情が渦巻いていた。

「ガウルンの仇を討ちたいのなら、いつでも来い。受けて立つ」

 宗介のレーバテインが、夕陽を背に受けて紅く輝く。

「くっ……! あんたさえ居なければ……!!」
「やめなさい、玉蘭」

 憎しみを込めた目で睨みつける夏玉蘭の前に、玉芳が立ち塞がる。

「今は、退きましょう」
「……分かったわ」

 悔しそうに歯噛みしながらも、玉蘭はゆっくりと後ろへ下がった。

「いいのか? ソースケ」
「背を向けた者に銃口を向ける気は無い」

『軍曹殿。初出撃としては随分と荒い操縦でした』

 レーバテインに搭載されたAI「アル」が、宗介に声を掛ける。

「機体の動きは想定内だ。それに、実戦での経験も積めた」
『それは重畳です』
「だが、まだ甘いところはあった。そこは反省点として次に活かす」
『次、ですか?』

「そうだ。次は、あの男……レナード・テスタロッサだ。
奴とは、いずれ決着をつけなければならない」
『了解。その時は、是非サポートさせていただきます』
「頼んだぞ」

 こうして、相良宗介によるレーバテインの初陣は終わった。
穢を取り逃がし、マフラーを靡かせながら佇むペルに、いろはが声をかける。

「あなたは、誰? あの男の人は、一体……」
「私の名は、ペルフェクタリア……ここではない世界から来た」

「じゃあ、あなたもイレギュラーなのね?」
「あの男の名は禍津星穢……私の世界を滅ぼし、その後も数々の世界を滅ぼしてきた、
災厄そのものだ」

 ペルの言葉に、いろはは目を見開く。
そんな彼女にペルは続ける。

「私は奴を……禍津星を止めようとした。
しかし、私では奴を止めることはできなかった……」

 悔しげに唇を噛み締めるペル。

「全ては私の責任だ。あの時……カオス・ジ・アビスで
奴らの本体を消滅させることができていれば……」
「良かったら、詳しく話を聞かせてくれないかな? ここにも、あなたと同じく
別の世界から来たって人もいるから」

 そう言っていろはが指し示した先には、バーサル騎士ガンダムや承太郎、
そして気を失っている月美の姿があった。

「………」

 ペルは月美の顔をじっと見つめて、何かを考え込むように黙り込んだ後、
ゆっくりと口を開いた。
 
「……どうやら私は、何処に行ってもこう言う因果に巻き込まれるようだ」

11人目

「マナカ・ケンゴ消滅の危機」

CROSSHEROESとクォーツァー・アマルガム連合の戦いが終わった頃、GUTSセレクトにいるメンバーは突然エタニティコアが不安定になったことについてシズマ会長達から話があると聞いて急遽TPU本部へと向かった。

「お久しぶりです。タツミさん、シズマ会長」
「それで、話とは?」
「あぁ、ライラーのことだ。彼らは自分達のことを『超古代文明人の末裔』だと言っている」
「超古代文明人の!?」
「それがエタニティコアが不安定になってることとなにか関係があるんですか?」
「そうだ。どうやら彼らは以前から今回の事態を予期し、対応策もあるそうだ……」
「本当ですか!?」
「あぁ…だが、話すには条件があるそうだ」
「条件?」
「ユナ…お前に、ユザレに会わせろと」



数分後、TPUの人達に連れられてライラーの1人『イブラ』がやって来た。
「……ユザレよ…」
「私は…ユザレじゃ…」
「光は…ウルトラマントリガーは今、消えようとしている……急がねばエタニティコアと同化し……永遠に失われる…」
「ケンゴが……消える…!?」
「どういうことだ!?」
「現在……いくつもの世界が消滅、または融合する現象が相次いでいる。その影響をもろに受けてしまったエタニティコアは、それから逃れるために、現在自身を制御している存在を……ウルトラマントリガーを取り込もうとしているのです」
「そんな……」
「我らの光を救う方法は一つ……神器を使うのです」
「超古代のスパークレンスか」
「あれは星々の光を集め増幅させる神器……その光をコアの内部に送り、ウルトラマントリガーに力を与えるのです」
「あのスパークレンスにそんな機能はないはずだ!」
「神器を起動させるには我々の儀式が必要だ。
………急がねば、光は永遠に戻ってこない」
「……儀式は、遺跡の祭壇で行うのですね?」
トキオカがそう聞くと、イブラは無言でうなずいた。
「そうか!あの祭壇でなにかの儀式が行われてたという記述が、石板にあるんだ。
詳しい内容までは判明してなかったけど……」
「神器に光を集め、力とする儀式だったってわけか」
「……でも、ケンゴに力をやれるほどの強い光なんて……」
「それだったら、俺たちには任せてください」
「……甲児君、なにか考えが?」
「……マジンガーZの光子力ビームです。弓教授に頼んで大量の光子力エネルギーを用意してもらって、それをマジンガーZに送って最大出力の光子力ビームを発射して、神器に送るんです」
「そうか。それを神器で更に増幅させることができれば…!」
「なるほどな。だったら俺も力を貸すぜ。
ゲッター炉心が万全じゃねえから、最大出力は出せねえが…それでも少しは足しになると思うぜ?」
「竜馬さん…!ありがとうございます!」
「ユナさんにはユザレの巫女として…また、力を使ってもらうことになる」
「やります!ケンゴを助けなくっちゃ!」
「あとはその儀式の防衛をどうするかが問題だな」
「儀式に使う以上、マジンガーZやゲッターロボは戦わせられないからな」
「別の世界のモンスターが近くに現れる可能性があるわね」
「機械獣もまた出てくるかもしれないな」
「ゲッターが戦えねえとなると、清明共がやって来てもおかしくはねえな」
「それにクォーツァーとアマルガムの同盟に、和平条約を破棄した悪魔超人達や完璧超人達もだ。クォーツァーの方はどうなのか分からないが、アマルガムはこの世界の組織だからトリガーの存在を知っている。悪魔超人、完璧超人も同様だ。2年前に闇の巨人や怪獣達と戦ったウルトラマントリガーの力を知ってる以上、やつらも邪魔してくるだろうな」
「結構敵多いな…」
「現状ある戦力で儀式中も戦わせられるのは、ビューナスA、ボスボロット、ガッツファルコン、そしてナースデッセイ号だけか……」
「たったこれだけの戦力でそれらの敵と戦えるかどうか……」
「それなら、私からトゥアハー・デ・ダナンにいる他のCROSS HEROESに協力してもらうように頼んどこう」
「シズマ会長、ありがとうございます!」
(待っててケンゴ……必ず助けるから…!)

12人目

「インターミッション - 日と月のめぐり -」

 宗介と騎士アレックスとの合流に端を発したクォーツァー・アマルガム連合軍との戦い、
そして試作型神精樹の破壊……2つのミッションを勝ち抜いたCROSS HEROES。
拠点であるトゥアハー・デ・ダナンに帰還した戦士たち。

「そうか……ガウルンを倒したのか」

 アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニン少佐。ミスリルのコマンド指揮官にして、
戦争孤児であった宗介を引き取り、育ててくれた人物だ。

「はい。奴はもうこの世にいません」
「…………」

 彼は無言で目を伏せる。その表情からは何も読み取れない。

「だが、戦いは終わっていない。むしろこれからが本番だ」
「はい。承知しています」

 今回の戦いで新たに騎士アレックス、ピッコロ、そして魔殺少女ペルフェクタリアがCROSS HEROESの仲間に加わった。
特筆すべきはクォーツァーの前に現れた謎の戦士、そして日向月美や
ペルフェクタリアの暮らしていた世界を滅ぼしたと言う禍津星穢の存在だろう。
いずれも未だ正体不明であり、今後も大きな脅威となる可能性は高い。

「キン肉マンたちがいると言う特異点とやらにはどうやって行けば良いのだろうか」
「残念ながら、俺と騎士アレックス殿は海東大樹と言う男の力を借りて、
この世界に復帰する事が出来た。
あの男が姿を眩ませた今となってはどうすることもできない」
「そうか……」

 テリーマンはため息をつく。宗介と騎士アレックスを時空のオーロラにて
リ・ユニオン・スクエアへ送り届けた海東は
大聖杯と言う名の新たなるお宝を求めて、気まぐれに姿を消したのだ。

(キン肉マン……お前がまさか地球に来て、人知れずストロング・ザ・武道と
戦り合っていたとはな……。
ジョーカーやゲイルがあれ以来行方知れずなのも、もしや……)

 その推測は当たっている。現在の彼らがいるのは認識世界。
リ・ユニオン・スクエアとは違う位相に存在する場所だ。

『そう……頑張っているようね』

 神浜にいる七海やちよと連絡を取るいろは。これまでの経緯を報告していた。

「はい。黒江さんも元気にやっていますよ」
「ど、どうも……」

『いろはー! オレも元気にやってるぞ!』
『バカ、やめなさい!』

 スマホの向こうから聞こえるフェリシアの声を聞いて微笑むいろは。

『それで……魔殺少女、ペルフェクタリアと言ったかしら?
彼女について何かわかった?』
「彼女の話を聞く限り、禍津星穢と言う人はあちこちの並行世界を破壊して
回っている人で、ペルちゃんは難を逃れて生き残ったんだとか……」
『日向さんと似た境遇ってことかしら……』

「う……」

 穢の攻撃で気を失っていた月美は、ダナンの医務室のベッドにて目を覚ました。
その枕元には、ペルフェクタリアがじっと立っていた。

「あなたは?」
「私はペルフェクタリアだ。お前は禍津星にやられたのだと聞いた」

 月美は自分がどうしてここにいるのかを思い出した。

「そうだった……私の世界を滅ぼしたって人に挑んでいって、負けたんだったわ……」
「……」

 ペルフェクタリアは無言のまま、月美を見つめる。

「お前の世界も奴に滅ぼされてしまったようだな」
「えぇ……お前も、と言う事はまさか、あなたもあの人に……」

 月美はふと思ったことを訊ねる。

「ねぇ……どうしてあなただけ助かったの?」
「それは……」

 ペルフェクタリアは少し言い淀んでいたが、やがて口を開く。

「私はとある組織に所属していた。世界の平和を乱す悪を倒すために」
「それがどうして世界を滅ぼそうとするような人と戦うことになったの?」

「私は任務のため、異変が観測された並行世界に調査に赴いた。
それこそが奴の狙いとも知らずに」

 彼女は淡々と語り始める。禍津星穢が仕組んだ罠によって、
並行世界へ飛ばされてしまったペルが不在となった隙を突いて禍津星穢は行動を開始した。
その世界で出会った仲間と共にペルは禍津星穢の野望を打ち砕くべく戦いを挑んだ。
だが、ペルたちは敗れてしまい、その結果、世界は滅びを迎えたのだ。
大切な者の死を受け入れることができず、ペルはただひとり、
禍津星穢の動向を追い続けていたと言う。そして今に至る。

「……」

 話を聞いていた月美は静かに涙を流していた。

「泣いて、いるのか……」

 自分の世界だけでなく、他の世界まで滅ぼそうとした禍津星穢に対して
怒りを覚えたからだ。

「お父さん……分かったよ。私が戦うべき相手」
「奴はこの世界に次なる狙いを定めた。私やお前はさながら奴の滅びから逃れた、
汚点のようなものだ。必ず仕留めに来るだろう」

 月美は改めて、自分が為すべき事を再確認し、誓う。
もう二度と同じ過ちは繰り返さない……そして、今よりももっと強くなってみせると。

「ペルフェクタリア、ちゃん」
「ペルでいい。皆、私をそう呼んでいた」
「お願い、私は強くならなくちゃいけない。協力してくれないかな」
「良いだろう。その点においては私も同様だ」

「テスタロッサ艦長、GUTSセレクトのシズマ会長から支援要請の連絡が来ています」

 マデューカス副長がテッサに呼びかける。

「ウルトラマントリガーを復活させる儀式を妨害する敵勢力を迎撃するための戦力を
CROSS HEROESから派遣して欲しいとのことです」

 テッサは少し考えた後、答える。

「分かりました。CROSS HEROESの皆さんを招集して下さい。
派遣メンバーの選定を急ぎましょう」

 同じ頃、トゥアハー・デ・ダナンの格納庫では、出撃の準備が進められていた。
今回のミッションは、新たな戦いへの幕開けとなるであろう事は間違いない。
ウルトラマントリガー/マナカ・ケンゴはエタニティコアからの復活は成るのか?
そして、日向月美とペルフェクタリアの運命は如何に?

13人目

「円舞曲の終わり」

「今の時代、斯様な者もいるのだな。」
そう呟く武道の言葉には、特異点を作り上げてから今までで一番の驚嘆が込められていた。
神の実が手に取る事を許された、食えば比類なき力を得られる果実。
それを前にして要らぬと断言し、挙句破壊してみせた男。
「孫悟空、か。」
どこまでも真っ直ぐな純粋なその眼には、武の道を歩む者としての敬意を払わずにはいられなかった。
そして同時に、あの男と戦ってみたいという武人としての闘争心もあった。
久しく感じていなかった、武人としての思いだった。
一体何時ぶりだろうか、こんな思いを、純粋な闘争心を失ったのは…
そう、思い出せば随分と昔の話。
秩序無き力を持つ者が、暴漢が世界を圧巻せんとして、超人という種に失望したあの日からだったか。
それからだ、闘争というものを尊く感じなくなっていったのは。
粛清と管理、その手段としての側面でしか、力を見なくなっていた。
故に一番弟子に見限られたのも、当然の帰結だったのだろう。
_もしも、私を破る者がいるのだとしたら…
「_ニャガニャガ、随分とお悩みのようですね?」
憧憬に身を落とさんとした時、水を差す様に背後から掛けられた声。
一体いつから居たのか、武道が振り返れば、白い肌をした黒い道化服が一人、そこに佇んでいた。
「…貴様か、グリムリパー。」
「らしくないですねぇ~、今更迷いを抱える等…」
クツクツと嘲笑うように武道を見つめ、ピエロの化粧を三日月状に歪める男。
それに眉間にシワを寄せながら睨む武道だったが、道化師はそれを気にする様子もない。
そも初めから分かっていた反応だと言わんばかりに、二の次の言葉を紡ぐ。
「貴方だからこそ、管理という役目を任せられるというものなのに。」
ニタリと笑う道化師だが、その眼だけはまるでガラス玉の様に無表情で、それが尚の事不気味さを際立たせていた。
まるで、失望させてくれるなという警告をしているかの如く。
だがそんな不気味さを前にして、いつもの事だと武道は臆する事なく口を開く。
「…グロロ~、そうであったな。我が使命を果たす為にも、この様な迷いは抱くべきでは無かったわ。」
武道の口から発せられた言葉は、先程までの迷っていた男とは思えない程、覚悟を決めた力強い物だった。
そこにはもう、武人としての闘争心は無く、ただ目的を果たさんとする為だけの機械的な思考のみがあった。
それを聞いて満足したのか、道化師は大仰に手を広げて語り出す。
「えぇ、えぇ!それでこそ貴方ですよ!」
その声音は先程の嘲笑とは打って変わり、まるで演劇のように感情豊かに。
しかしそれを見つめる瞳はやはり無機質で、何も映していないような空虚なもの。
そんな矛盾した存在に思う所があったが、それでも自身のやるべき事をやるだけだと割り切り、道化師の戯言を聞き流した。
「それよりも、特異点に生えたあの樹はどうなっている?破壊を命じた筈だが。」
武道が空を見上げれば、悟空達が破壊した神精樹よりも遥かに強大な樹が、空を埋め尽くさんと犇いている。
今もなお成長し続ける姿からは、崩壊の兆しはまるで見えない。
その事を指摘すると、男は一転して困った様子で肩を竦める。
「ニャガニャガ、それを言われると痛い。ククク…実を言うとイレギュラーが発生しましてねぇ?」
何が可笑しいのか、グリムリパーは微笑を繰り返す。
その様子に呆れた武道を見て、グリムリパーは漸く事の顛末を語りだした。

_……
暗い。
どこまでも深い闇の中を、俺は漂っている。
底無しの暗闇の海に沈む中で、俺の呼吸だけが静かに響いている。
何処までも心地良い感覚が、俺の意識を深みへと手招く。
_……ィ!
このまま眠ってしまおうかと思ったその時、ふと何かを感じた。
それはとても懐かしくて、温かくて、優しくて…
_……オィ!
微かに聞こえた気がした誰かの声が、俺の意識を覚醒させていく。
あぁ、そうだ、俺は…
「起きろ、ジョーカー!」
ハッキリと耳に届いたその声で、俺は一気に現実に引き戻された。
_ゴツッ
目を見開き、視界いっぱいに広がる黒と衝突を以てして、だが。
「「アーーッ!!?」」
脳髄を突き抜ける痛覚が、同時に二つの悲鳴を奏で上げる。
「馬鹿!いきなり頭突きしやがって…!」
「すまない、寝ぼけてた…!」
目覚めの一声にしては少々刺激的過ぎる悲鳴をモナと共に上げ、額を抑えながら謝罪する。
チカチカと明滅し終えた目の前には、俺と同じように額の痛みに耐えているモナの姿があった。
「ったく、それどころじゃねぇぞジョーカー!周りを見てみろ!」
「周り…?」
痛みに悶えるのも束の間、モナの言うように周囲を見渡せば、先程までとは比べ物にならない異様な光景が広がっていた。
今まで特異点全体を彩っていたハイカラな風景に加え、そこ等中に巨大な根の様な物が張り巡らされていた。
その根の袂を辿れば、そこにあるのは世界を埋め尽くさんばかりに点滅を繰り返し存在を主張する巨大樹。
それは、特異点に激震が走ったあの時に微かだが見えた巨大樹の光景と類似していた。
「あれは…」
「あぁ、俺達が最後に見たでけぇ樹だ。信じられねぇが、どうやら現実のもんだったみてぇだぜ。」
それが今や認知世界と混ざりあい、一つの異常空間を形成している一因となっている。
見上げるだけでめまいを起こしそうなそれは、もはや樹と呼べるかも怪しい代物だった
「何なんだ、あの樹は。」
「分からねぇ…だがロクなもんじゃなさそうだ。根の先を見ろ。」
モナの言う通り注視してみれば、あの樹を中心として荒廃が進んでいる。
「草も木も枯れ始めてる。多分、あらゆる養分を吸い取って…」
直後、衝撃と共に走る根が周囲を取り囲むように生えてくる。
「お…っと、こうやって無限に成長している訳だ。お陰で皆バラバラにされちまった。」
言われれば、モナ以外の仲間の姿が居ない。
意図してか偶然か、とにかく分断されたと見て間違いないだろう。
「とりあえず合流しないと。他の仲間も心配だが、別れてる所を襲われたらひとたまりもねぇ。」
この根が俺達を狙ったものなのか、それとも無差別なのかは分からないが、どちらにせよ危険である事に違いはない。
早急に合流して、一刻も早く合流するべきだ。
そう思い、走り出そうとした時、不意にモナが声を上げた。
「何だ、アイツ…?」
その視線は、ある方向を凝視したまま動かない。
つられて同じ方向に目を向ければ、そこに佇むはマントを被った何者か。
だが、マント越しに分かるその実力は、並の完璧超人を遥かに上回るものだった。

同時刻、各所で同じ様にマントを被った完璧超人が何者かと遭遇を果たす事態が起きる。
「ニャガニャガ、貴方は何者なのでしょうかね…?」
グリムリパーもまた、その一人だった。

14人目

「星見の子の帰還」

 BBチャンネルのスタジオ内にて、激しい戦闘が行われていた。

「うーん、なかなかしぶといアリさんたちですねぇ。そろそろBBちゃんのHPゲージが
ブレイクされちゃいそう~」
「また訳の分からん事を……」

 ディケイドやネロを相手にしながら、BBは余裕綽々の様子だ。

「……あら?」

 BBはスタジオの壁にあるモニターのひとつに視線を向ける。そこには地球から伸びゆく巨大な大樹の姿があった。

「空想樹……ではないようですね? これは……もしかして、センパイの仕業ですかぁ?」
「違う違う! って言うか、何なのよアレ!? 一体どうなってるわけ!?」
「そんな事言われましてもぉ……BBちゃんにもさっぱりでしてぇ……」

 それは特異点の大地に根を張り、聖杯の力によってあちこちの並行世界から
引き寄せられた物質から魔力を吸い上げて急成長を遂げた神精樹だった。
ターレスがリ・ユニオン・スクエアに植えた試作型とは比べ物にならない規模にまで
成長している。
それは地球を飛び出し、月にまで達すると枝葉を広げ、まるで月そのものを
飲み込もうとしているかのように成長していく。

 カルデアが存在する世界と、リ・ユニオン・スクエアとはそれぞれ別の世界だ。
その2つの世界を繋げるトンネルのような役割を果たしているのが、特異点である。

「ダ・ヴィンチちゃん! あの大きな樹はもしかして……」
『ああ、間違いない! あれは君たちが向かった特異点の座標から伸びているものだ!』
「そんな……!」

「どうやら俺たちが特異点から追い出された後に、何かが起こったようだな」
「じゃあ、今すぐ戻らないと!」
「でも、どうやって!? こんな状態でどうやって戻れば……」

「んー、仕方ありませんねぇ。もう少しセンパイと遊びたかったんですけど……」

 BBは指をパチンッと鳴らす。すると、地面が大きく揺れ始めた。
そしてスタジオ全体がグニャリと歪み始める光景を見て、立香たちは確信した。
この場にいる全員が、空間ごと別の場所へ転送されるのだ。

「ん?」

 BBスタジオのセットが壁や天井が一斉にパカッ、と展開する。


「ぎゃあああああああああああああああああああああ!?」


 外から悲鳴が聞こえてきた。見ると、織田信長や沖田総司たちが倒れてきた
BBスタジオのセットの山に押し潰されていた。

「ノッブ!? それに沖田さん……」

 見覚えのある風景。間違いない。ここはカルデアの敷地内。
そして信長たちが陣取って縄張りにしているボイラー室の隣にあるデッドスペースだ。
悪趣味な金屏風や、何故かカラオケマシンなどが置かれていることからも明らかである。
どうやら、全員揃ってカルデアに戻されたらしい。

「う、うう……初登場シーンがこんなぐだぐだな感じとは……
ギャグ要員のノッブならいざ知らず……こふっ!?」

 起き上がった沖田は吐血し、そのまま崩れ落ちた。
幕末の動乱を戦い抜いた新選組三番隊隊長、沖田総司。
生前に患った結核による病弱体質はサーヴァントになった現在においても
彼女を悩ませる種となっている。

「何じゃと、沖田!? わしだって気がついたらカルデアに強制送還されて
それっきりだったんじゃからね!? 
格好良く竜王とやらと『いざ、勝負!』って所で話が終わっておったわ!!
途中で上限文字数が3000になったゴタゴタとかで!」

 セットの下敷きになってもがいている信長たちを無視して、
立香たちは徐々に自分たちに何事が起きたのかを理解し始めていた。

「戻ってこれた……? カルデアに……」
「ええ、そうみたいです……先輩……」

 マシュは涙ぐみながら、隣に立つ藤丸の手を握る。

「よかった……本当に……」
「うん……」

「感謝してくださいね、センパイ? BBちゃんがわざわざカルデアに戻れるように
手を回してあげたんですから」
「BBちゃん……」
「ふん、つくづく食えん奴よ。今度こそ引導を渡してやるつもりであったが、
あの状況を見てはそうも言っておられぬか」

 BBを睨みつけつつも、一呼吸置いてネロは原初の火を収めた。

「おい! いい加減にどけ! 重いんじゃ!」
「まあ……BBちゃん、ちょっとこの場でトランポリンエクササイズでもしたい
気分ですねぇ~」

 BBはニコニコしながら、地面に転がっている信長たちの上で飛び跳ねる。

「やめろ! 余計なことをするでないわ!!」
「はいはい」

 BBが教鞭を振るうと、スタジオの瓦礫が一瞬で消え去った。

「はい、これでもう大丈夫ですよぉ♪」
「…………むぅ……」

 信長は渋い顔をしながら立ち上がる。

「沖田さん、もうちょっとカッコいいシーンで颯爽と初登場したかったです……」
「弱小人斬りサークルの姫ならそんなもんじゃね?」
「再登場したと同時に死にたいんですか?」

「それより、急いでダ・ヴィンチちゃんたちの所に行かないと!
またあの樹が伸びてるかもしれない!」
「はい! すぐに向かいましょう!」

 立香とマシュは、一目散に司令室へ駆け出した。

「ふん、マスターは相変わらず忙しないのう……」
「どうやら、お前らはまだあの状況を把握できていないようだな」

 士は変身を解除し、信長や沖田たちに視線を向ける。

「どういうことじゃ?」
「お前らが特異点から退去させられた後、何が起こったか説明してやる。ついてこい」
「ぬ……」
「分かりました。ご教授願います、門矢さん」

 沖田は神妙な面持ちで頭を下げた。

「おお、藤丸くん、マシュ! 無事だったかい!?」

 ダ・ヴィンチとホームズは司令室に現れた立香とマシュを笑顔で迎えた。

「ダ・ヴィンチちゃん! ホームズさん!」
「良かった……皆無事だったんだ……」

「私達の方でも、あの大樹の事は観測していた。特異点を突き抜けて出現したあの樹は
質量を伴う魔力の塊であり、今もなお成長を続けている」
「このままではいずれ、地球全土を覆うほどの大きさにまで成長するだろう」
「そ、そんな……」

「ぬおおおおおおおお!? ぬぁんじゃ、あのトンデモバケモノじみた樹は!?」

 遅れて現れた信長が悲鳴を上げる。
モニターには、まるで天まで届くかのような巨大な樹木が映し出されていた。

「あれこそが、今回の異変の原因だよ。あれは君たちが特異点に向かった後に、
突如として現れた。あれは恐らく聖杯の力によって生み出されたもの」
「ふむ、なるほどのう」

 信長は腕を組み、納得したように頷く。

「つまり、アレをどうにかすれば良いんじゃな」
「いや、それはそうでしょ……」

 沖田が突っ込みを入れる。

「BBちゃんとしてもあれを放置してもらうと困ります。
あんなのが宇宙に伸びていったりしたら大変ですしね」

 しれっと話題に入ってきたBBが、当然のように言う。

「なに? 貴様、まだおったのか」
「もちろんです。センパイのピンチに颯爽登場するのがこのBBちゃんなのですから!」

「話をややこしくしてくれたのもキミなんだがね。
まあ良い、とにもかくにも藤丸くん達が生還してくれたのは不幸中の幸いだ。
まだ希望は残っている」

15人目

「Hello, world!───ALIVE───」


 私が信じた御伽噺は、どうやらいなくなってしまったらしい。



『先ず、我々の集団、その全体に於ける当面の目的を語ろうか』

「──────、ぇ」

 黒い地面。
 暗い視界。
 閉じた部屋。
 広がる黒一色に染められた暗室は、自他との境界すらも曖昧にさせる。まるで、己の自我そのものがこの無窮の暗闇に揉み消され、取り込まれ、喰らわれるような、錯覚。
 長時間の監禁の末、実に無我の境地へと片足を踏み込んでいた十咎ももこの朦朧とした意識は急激に現実へと引き上げられた。
 
『我々、といっても個々の抱く目的は全く以て合致はしないのだがな、場合によっては此方に牙を剥かんとする輩すらもが存在する…………組織の運営というのは成程、あの婆さんが苦心していたのも頷ける難易度だよ』

 冷たい。鋭く、けれども濁ってしまった声色。
 光の一切が途絶えた空間を満たす、心胆が凍えるような声色。
 くすんだ使命は殺意を帯びて白から灰へと染まり、仄暗く濁り悪魔へ堕ちてしまった。

『ああ、あの氷河姫(ピリオド)を引き入れる際は特に苦労したとも。何せあれは人の話を聞き入れない。私が憎んでやまない、無知蒙昧な凡愚共が手に余る力を持てばどうなるかなど理解していように。”壱型”は果たしてその点を理解してあんなものを選んだとでも?傑作にも程がある』

 身体の末端から身体の芯までが止めどなく悪寒を流し込んでくる。
 負けるな、あたしはどう在ると決心したの。怯えるな、あたしはきっと一人じゃない、きっとみんなが助けてくれるはず。
 淡々と言紡ぐ冷気を湛えた声の与える、訳の分からない恐怖を堪えながらも聞き逃さんと耳をそばだてる。一言一句を脳裏に叩き込もうと心の裡で発破をかける。

 思えば今まで色々あった。色々ありすぎた。
 果てなしのミラーズからの来訪者。何処とも知れない悍ましき異形にして冷徹なる襲撃者。天上より立つ法師と燃える都市。廃されて、灰と化した神浜での一戦。
 そこから、さらに。

(ほむらが悪魔?ってのになって、しかも裏で別のキュゥべえが関わってて、そしてほむらを狙ってて………………ああもう、一度に話す内容が多すぎなんだよ!)

 何時だったか、とにかく前に交わされた一度の会話で詰め込まれた情報が多すぎた。
 誰ならん、顔見知りの魔法少女に何やら物騒な二つ名がついていて。
 時折放たれるわけのわからない単語を聞き流した上で、ほむらが狙われてしまっているらしいということは理解した。この、極大の危険を孕んだ集団に。

 良くて拘束、悪ければ……………考えるだけで嫌になる。
 それだけは、させたくない。こんな、誰も彼も感じられない暗闇の中で、何をされてしまうのかと怯えながら、寂しい思いをするのなんてあたし一人で十分だと思うから。

 ならば、そう──────”まだだ”。
 胸に在る決意が燃え滾っているならば、何時だって『立ち上がって』いけるのだと、そう教わった者として。

(とにかく、今はあたしの出来ることを探さないと。そもそもほむらがどうこう以前にあたしもこれからどうなるかわかんないんだから………!!)

 パンクしそうな思考を無理くり回転させる。
 落ち着いて、冷静になって。今は何をすべきなの。
 優先順位の確認と現状の把握、次に明確な行動を。
 想起される過去が、組み立てられる思考を後押しする。
 そうだ、イメージはあの時の仲裁と同じ。レナと初めて会った時みたいに、すぐにやるべき事を見つけなければいけない。
 魔法少女として戦うみたいに、取るべき行動の取捨選択をしなければいけない。
 承太郎さんみたいに、冷静に。レナみたいに、思い立ったら真っ直ぐに。
 
『さて、話は逸れたが。つまるところ我々のグループには統率がない。個々人の間での協力関係をこそ結べてはいるが、いつ瓦解するとも知れない、まさに薄氷の上に立っている気分だよ。何時寝首を搔かれるか気が気でない』

 また、何処からともなく響く声。
 其方にもまた、思考を回す。くぐもった音響からして、何処か壁を隔てて話をしているのか。
 声の主についての予想は既に立っている。ついこの間までももこへとひっきりなしに恐怖を与え続けた存在は、一辺たりとも記憶から剝がれない。

(ジェナ・エンジェル、だよな。この声……………誰と、話してるんだ?)

 瓦礫の山。熱された大気。
 悪辣なる法師との一幕を終え、人の営みが途絶えた神浜で聞いた女のそれだった。
 陰陽併せたモノクローム・デビル。愛も、平穏も、肉体の一辺も喰らい尽くす慟哭の本能。狂気と憎悪をその身に宿したアバタール・チューナー。
 
『そんな我らに必要なことは何か?言うまでもない、戦力増強に他ならない。手っ取り早く戦力を増やし、謀反を起こす前にこちらの目的を達成することだ。私も、此処に招かれる前は組織を”裏切る”側だったからな。機は十分に測れる。裏切るタイミングの予想くらいはつけられるものだ』

 黙して、ジェナの言葉を聞き入れる。
 思いがけず、付け入る隙を知ることができた。
 各々が対等に近いが故の不和。条件次第では、此方の陣営に引き入れられる可能性すら担保に入れられる。

『その上でお前たちに提言しようか、”アルターエゴ・リンボ”よ』

 そして考察の対象は話し相手へ移行する。彼女と縁を持つ者などそれだけである程度の仮説は立つ。言葉を交わす者もまた脛に傷持つ身。
 恐らくは、神浜の一件と関わり深い──────。

『テクノシャーマン、及び特異点の確保。彼らから得られるエネルギーを用いて、”創生”を起こす。これで我々の目的は”同時に”達成される事となるのさ』

 故にこそ、と前置きをした上で。
 悪魔はこの状況を大きく転がす”爆弾”をここで投下した。

『故にこそ、我々の集団は、おまえたちへの同盟を提言したい』

 此れより上がるは最終戦争(ラグナロク)の第一幕(プレリュード)。
 曼荼羅が回り、銀の運命は邂逅し、歌姫の独壇を輪唱が包み、そうして世界は新生する。
 これは、新たなる理を生むための創生神話。ジャンルは当然、英雄譚(サーガ)以外に有り得ない。

16人目

「マナカ・ケンゴ救出作戦、開始」

トゥアハー・デ・ダナンの医務室にて、
「………」
「どうだ?」
「うん、まだ眠ってるよ」
「そうか…」
ソウゴとゲイツ、二人の目の前にはボロボロになった1人の老人が…オーマジオウの変身者であった未来のソウゴがベッドで眠っていた。
「しかし、まさかのあのオーマジオウがここまでボロボロになるなんてな……」
「うん……」
二人は未だに信じられなかった。オーマジオウをここまで圧倒できるほどの力を持つ者がいることを。
「恐らくはあの謎の仮面ライダーが……いや、アイツは仮面ライダーなのか…?」
「わからない……けど、アイツはとんでもなく強い……それだけはわかる……」
「……俺たちは勝てるのか?オーマジオウですら勝てなかったほどの敵に……」
「………」

「あの……お二人ともよろしいですか?」
「いろはちゃん?どうしたの?」
「テッサ艦長から話があるそうです」
「……わかった、すぐに行く」



「皆さん、来てくださりありがとうございます」
「それで、話とは?」
「実は先程、GUTSセレクトから連絡がありまして……」
「GUTSセレクトから…?」
「はい…」
テッサはシズマ会長から連絡の内容を皆に伝えた

「……というわけですので、こちらから何人か派遣することになったのです」
「なるほどな。
……で、メンバーは決まってるのか?」
「はい、テリーマンさんとルフィさん、騎士ガンダムさんと騎士アレックスさんの4人にしようかなと考えておりますが。
……よろしいですか?」
「俺はもちろんOKだ。ケンゴとは…トリガーとは2年前に何度も共闘した仲だからな。アイツがピンチってならいくらでも力を貸すぜ!」
「俺もいいぜ!」
「私たちもです。別の世界とはいえ困ってる人はほっとけませんから」
「ありがとうございます」

「なぁピッコロ、オラ達もケンゴとは一緒に戦っただろ?行かなくてもいいのか?」
「そうしたいのは山々なんだが……」
「……クォーツァーのことか」
「あぁ、スラッグと一緒に俺を襲ったやつらがそのクォーツァーだとしたら、やつらは確実に手を組んでいる」
「そしてそのクォーツァーはソウゴのことを狙っていた……恐らくはまたソウゴを狙いに現れるだろうな」
「あぁ、その時にスラッグやターレスが一緒に来る可能性がある以上、俺たちはここに残っておいたほうがいい」

「俺たちも同様の理由だ。クォーツァーと手を組んでいる以上、アマルガムもやつらと一緒に現れるだろう」
「と言っても、アマルガムはトリガーのことを知ってるから、あっちの方に出てくる可能性もあるけどね」
「それなら問題ありません。あちらにはテリーマンさん達だけではなく、クルーゾー大尉やツクヨミさんも向かわせる予定ですから」
「え!?ツクヨミ!?」
「そういえばソウゴにはまだ言ってなかったな……」
「実はツクヨミさんにはクルーゾー大尉と一緒に我々とは別行動で別の世界から来た人達の保護をお願いしてたんです」
「そうだったんだ……ゲイツ〜、なんで言ってくれなかったんだよ〜」
「すまない、言う機会が全然なかったんだ……」

「けど、悟空さんの瞬間移動なしでどうやってGUTSセレクトの皆さんと合流するんですか?」
「それなら問題ない」
そう言いピッコロはポイポイカプセルを一つ取り出しテリーマンに渡した。
「それは?」
「そのカプセルの中には小型の宇宙船がある。そいつを使えば少人数での遠出も可能だ」
「ありがとな」
「それでは、テリーマンさん達を降ろすために一旦近くの島に停めますね」
「あぁ、頼む」



一方その頃
エタニティコアへと続く遺跡、その近くにある祭壇にてケンゴを復活させるための儀式の準備が行われていた。
その場にはGUTSセレクトや甲児達以外にもイブラを始めとしたライラーの面々もTPUの監視付きでおり、儀式はもうすぐで開始できる段階にまで来ていた。

「いよいよだな…」
「そうね…」
「お前ら、俺たちが動けねえ分頑張れよ」
「おうよ!」
「と言ってもボス、俺らの仕事は儀式の邪魔をする敵を足止めすることですよ」
「だから俺らが頑張らないといけないことになったら駄目なんじゃ……」
「うるせえ!こんだけあっちこっちでいろいろ起きてる中、敵が出てこない可能性の方が低いだろうが!」

「………」
準備を終え、最後にトキオカがエンシェントスパークレンスを祭壇にセットした。
「っ!」
その時ユナの頭の中にライラーの面々と同じ格好の者達が祭壇を囲みエンシェントスパークレンスをセットする光景が流れる。
(今のは……ユザレの記憶…!?)
一瞬とはいえ頭の中に現れたユザレの記憶に戸惑い不安になると、タツミがユナの肩をポンと叩いた。
「大丈夫かユナ?」
「タツミ隊長……」
「……マナカ隊員なら、『スマイル、スマイル』って言うんじゃないか?」
「そうですよ。
君なら大丈夫、笑顔で迎えてあげよう、ケンゴ君のことを」
「……はい!」

『大変だ!ケンゴの波形がまた乱れだした!』

「急がないと、ケンゴが危ない!」
「作戦開始だ!」
「ラジャー!」

「待って!なにか来てる!」
「あれは…!」
作戦を開始しようとした直後、遺跡の近くに大量の機械獣と鬼の軍団が現れた。
「機械獣!」
「それに晴明のとこの鬼どもまでいやがる!」
「けどなんで鬼と機械獣が同時に!?」
「……前に清明は協力者が他にもいるって言ってたが……」
「もしかして……その協力者って…!」

「そう!そのとおりだ!」
「この声は…!」

そこに現れたのはあしゅら男爵と安倍晴明であった。

17人目

「大聖杯の影」

世界を文字通り激震させる渦中そのものである、特異点の中心、聖なる完璧の山。
今や神精樹の根に覆われ、荒野の如く退廃したその奥地にて、丸喜の意識は呼び戻される。
「_ぁ…何、が?」
ピントが曖昧に揺れる視界の中で、確かに己を自覚しながら、覚束ない足取りながらもゆっくりと立ち上がる。
そして自身に降りかかった事態を把握する為に、一度視界を閉じ、軽く頭を振って息を吐く。
「…ふぅ。とんでもない事になったね、これは。」
結果、丸喜の視界に広がったのは、研究施設だったとは思えない程に荒れ果てた大聖杯の間だった。
さながらジャングルと化した室内は、神精樹の根が壁材の一部すらも栄養として呑み込んでいるのか、各所が出来損ないの菌の様にボロボロに枯れている。
何より目を引くのは、中央に位置する大聖杯の中へと伸びた神精樹の根と、その輝きだ。
血流の如く脈動する根は、大聖杯から光を、エネルギーと思わしき何かを取り出し、その動作に比例して、大聖杯の輝きは鈍くなっている。
「聖杯の力を、世界を吸っている、というのかい?驚いたね…」
今だ朧げで危うい意識から搾りだされた嗚咽にも似た言葉は、まるで病人の嘆き声の様にか細く掠れている。
だがそれでもその言葉は事実を射抜いていた。
あの大聖杯に満ちる力は、この世界の根幹を成すものであり、故にあれは遍く世界を吸収する事で更に肥大化する代物なのだ。
その大聖杯を吸収する、という事は即ち…
_瞬間、凄まじい衝撃が丸喜を襲い、彼の身体は再び大地に転がった。
その身体には既に痛みは無い。ただ漠然とした喪失感だけが残るのみ。
しかし丸喜にとってそれはどうでも良かった、重要なのは特異点の生命線たる魔力源が風前の灯火となっている事である。
丸喜は自身の身体の事など忘れ、即座に立ち上がって状況対処を始める。
「…刈り取れ。」
先程までとは声色の違ったワンフレーズが響き渡ると同時に、丸喜の眼下に汚泥の如き飛沫が舞い上がる。
_ジャラララ…
そこから鎖鳴らし現れたるは、血塗られた黒衣に身を包む顔の無い狩人、『刈り取る者』。
狩人は丸喜の意のままに行動を初め、その手に余る長身のリボルバー銃を構え、即座に撃つ。
轟音と共に放たれた銃弾は、照準を向けられた先にある聖杯を食らう根へと着弾し、大規模な破砕を起こして見せる。
そして間髪入れず二発目が放たれ、今度こそ大聖杯と大樹との繋がりを穿たれた根は、息絶える動物の如く、力無く垂れ下がり、そのまま枯れて崩れ去る様に朽ちていった。
『_▬▬』
「…お疲れ様。」
その言葉を皮切りに、丸喜の視界を喧しく彩っていた景色全てが砂塵となって消える。
そうして丸喜の前には朽ちた研究所と大聖杯しかない、静寂が戻って来た。
無論、一歩外を出れば今だ成長を続ける神精樹のうねりが耳に届くだろうが。
「…あぁ、もう。何なんだろうね、この状況は…」
呆れる様な声で、思わず溜息が出るのも無理はない。
余りにも突然に、事態が想定外の方向に動き過ぎた。
特にあの神精樹なる物の持つ『世界を吸収し成長する性質』は、不幸にも丸喜の計画に大きな誤算を招く物だった。
今の丸喜は、普段とは打って変わって疲弊しきっており、先程まで感じていた脱力感に抗えない程の状態だ。
「ふぅ、仕方ない。今は少し、休んでおこう…」
今にも気絶しそうな意識を綱渡りの様に保たせながら、唯一無事なソファーへと横になる。
研究室より運び出した椅子と机をそのまま転用したものだが、この際贅沢は言ってられない。
丸喜は何とか自身の意識を繋ぎ止めようと必死に抗いながら、目を瞑って休息を試みる。
そうして漸く落ち着いた所で、それにしても、と。
「一体、何なんだろうね。聖杯というものは。」
ふと思い立った、計画の根本となる聖杯そのものへの疑問が、静かに丸喜の好奇心を刺激する。
なし崩しに手に入った物とは言え、そもそもいつから存在していた物なのかすら不明な産物だ。
何故大衆の無意識をくみ取って認知世界を生み出す事が出来るのか、その仕組みも不明瞭なまま。
そう考えると、自身の計画がいつ崩れるかも分からない薄氷の上に成り立っている気さえしてきた。
「あー、ダメだ。眠気で頭が回らない…」
そんなブラックボックスの事に気を使ったからか、残り僅かな意識も朧げになっていく。
暫しの時間が流れた頃、丸喜の意識は深い暗闇へといざなわれていく。
そうして漸く瞼を閉じ、世界から意識を隔離した。
_コツン、コツン。
遠くから、しかし確実に忍び寄る『髑髏』に気が付かぬまま。
「_せっかくの機会だ。お邪魔させてもらうよ、Mr.丸喜。」

18人目

「闘将!! 拉麺男 - 再次 -」

 ウルトラマントリガー復活を賭けた、エタニティコア防衛戦の幕が上がる。
それを妨害しようと現れたのは、安倍晴明とあしゅら男爵。

「CROSS HEROESの連中とつるんでりゃ、いずれてめえとぶつかると思ってたぜ、
晴明!」

 ゲッター1に乗り込んだ竜馬が吠える。

「あいつ……あしゅら男爵と一緒にいるって事はDr.ヘルと手を結んでやがるのか……」

 甲児の宿敵である狂気の科学者、Dr.ヘル――ここしばらくは表舞台に
姿を見せていなかったのだが、その静けさが逆に不気味だった。
それが神浜を襲った晴明たちを取り込んで密かに戦力を増強していたとなれば、
いよいよもって放ってはおけない。
いずれ竜馬と晴明のように、甲児もDr.ヘルと直接対峙する時が来るだろう。
だが今は、目の前で起きている事態に対処するためにも、
まずはこの場を切り抜けなければならない。

「ククク……CROSS HEROESと申したか。その名……どうにも我の脳裏に
引っかかるものがあるのだがな」

 晴明は生と死の輪廻を繰り返し、今世に蘇った。
その魂には転生前の記憶が微かに残っているのだ。リンボの反魂の術により、
こうしてこの世界に現出した瞬間から、彼は自分の出自を知っていた。
その記憶の片隅に残る、CROSS HEROESと言う名。

「まあ良い。大方、我とその名を冠する者たちは浅からぬ因縁があるのであろうよ。
なればこそ、ここで全て断ち切ってくれようぞ! 行くぞ、ゲッターロボ!」

 言うなり、晴明は懐より取り出した符を投げつける。それは瞬時に鬼へと変じ、
ゲッター1へと襲いかかった。

「へっ! こないだのように行くとは思わねえ事だな!」

 しかしゲッター1もまた、CROSS HEROESの一員となってからの数々の戦いを経て
進化を遂げている。あの時のような無様は晒さない。
竜馬の操縦の下、ゲッター1は襲い来る鬼たちを次々と打ち払っていく。

「トマホォォォォォォォォォォゥクッ!! ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥメランッ!!」

 ゲッター1の両肩から分離した二つのトマホークブーメランは回転しながら宙を飛び、
四方八方に散開した鬼たちを切り裂きながら舞い戻る。
その勢いのまま、手元に戻ったトマホークを繋ぎ合わせ、
巨大な斧刃となったそれを力任せに振り下ろした。

「うおおおおおおおおおおおおおおおぅりゃああああああああああああッ!!」

 凄まじい衝撃波と共に地面が裂け、土煙を巻き上げる。

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ……」
「ほぉう、口先だけではなかったようだな」

 晴れていく土埃の向こう、禍々しいまでに爛々と輝く眼光にて晴明を射抜くかのように
睨みつけているゲッター1に対して不敵な笑みを浮かべながら呟く。
だが、それも一瞬の事。晴明はすぐに次なる攻撃へと移る。
懐から新たな呪符を取り出し、印を結ぶように指先に挟んで構えると、呪文を唱え始めた。
すると、晴明を中心にして黒い霧のようなものが広がり始め、
徐々にその範囲を広げてゆくではないか。
霧はあっという間に視界を埋め尽くし、周囲一帯を完全に包み込んでしまった。
これは陰陽道において使われる呪術の一種――〈黒洞〉と呼ばれるものだ。

「さあ、貴様らの守ろうとするものを粉々に砕いてやろうぞ!」

 霧に包まれた世界の中で、晴明の声だけが響き渡る。

「キシャアアアアアアアッ!!」

 晴明が作り出した黒い霧の中から新たな鬼が飛び出してきた。

「くっ、神浜の時と同じだ! 俺たちを孤立無援に追い込んで、
エタニティコアを破壊するつもりか!?」

 鬼の繰り出す鋭い爪を避けつつ、甲児は叫ぶ。

「させるかよ! こいつらは俺に任せろ! お前たちはエタニティ何たらを守れ! 
ぅおらあああああああああああああああああああッ!!」

 竜馬はゲッター1の出力を上げ、一気に加速する。
そして目にも留まらぬ速さで縦横無尽に飛び回り、次々に鬼を打ち倒していった。
だが、それでもキリがない。倒した端から新しい鬼が現れては襲ってくるため、
なかなか突破口を開く事ができなかった。

「CROSS HEROESからの応援はまだ来ないのか? このままじゃジリ貧になるぜ」

 甲児が焦りの表情を見せる。だがその時だった。
突如として空から飛来した一筋の光が、鬼の群れの中へと突き刺さったのだ。


「烈火! 太陽脚ううううううううううううううううううううううううううううッ!!」
「ぬううっ!?」


 その光は瞬く間に広がってゆき、鬼どもを蒸発させてゆく。
あまりの眩しさに、思わず目を覆ってしまうほどの強烈な閃光。
それが収まった時、そこに残っていたのは……

「闇が迫る時、太陽の光が天より降り注ぐ……」

 凛とした声が響く。その主は――

「ラ、ラーメンマン!? 正義超人のラーメンマンがどうしてここに?」

 甲児の言葉通り、そこには中華服に身を包む辮髪の超人が立っていた。
額に輝く「中」の刻印。中国拳法の達人にして、キン肉マンが厚い信頼を置く
正義超人のひとり、ラーメンマンである。彼を含む正義超人たちは
これまでの度重なる死闘に次ぐ死闘で肉体の中枢にまで及んだダメージにより
絶対安静の長期療養を余儀なくされていたはずだ。
その彼がなぜこんな場所にいるのか。

「CROSS HEROES。我らが永き眠りについている間、
諸君らが懸命に戦ってくれていた事は聞いている。ならば、私も黙って見ているわけには
いかない。共に戦うぞ!」

 そう言って、ラーメンマンは腰を落として身構える。その構えには微塵の隙もない。
どうやら完全に回復しているらしい。

「ええい、たかがひとり増えたところでどうなるものか! 鉄仮面軍団! 行けぃ!」
「はっ! あしゅら様!」

「かかれええええええええ!!」
「うおおおおおおおおおお!!」

 あしゅら男爵が配下の鉄仮面たちに命令を下す。彼らは一斉に動き出し、
四方八方からラーメンマンへと襲いかかった。

「ホアチャアアアアアアアアアアアーッ!!」

 気合いと共に放たれたのは、連続蹴り。
目にも止まらぬスピードで繰り出される技の数々は、的確に相手の急所を捉えている。

「ぐあああああああーッ!!」

 さらに、それだけではない。
その一撃を受けるたびに、まるで木の葉のように鉄仮面たちが吹き飛ばされていった。
圧倒的なまでのパワーとスピード。まさに中国拳法の真髄を極めた者のそれであった。

「つ、強い、強すぎる……ぐはっ」
「な、なんと……! 馬鹿な!」

 あまりにも呆気なく倒された部下たちの姿に、あしゅら男爵の顔が驚愕に染まる。

「調べが足りなかったようだな。我が名はラーメンマン! 
私が蘇ったからには、もう二度と貴様ら悪の好きになどさせないぞ!」

 そう叫び、再び構えを取るラーメンマン。
彼の登場に、甲児たちも希望を取り戻しつつあった。

「凄い人が来てくれたぜ! これで何とかなるかも知れねえ……!」

 ラーメンマン、そしてCROSS HEROESはこのままエタニティコアを守りきれるか?

19人目

「集結、正義超人」

呆然、余りにも突然に現れた驚異的な存在を前に、あしゅら男爵はその時、戦場の中で戦いを忘れていた。
中国拳法3000年の歴史、その真髄を前にして圧倒された者の、ある意味では当たり前の反応だろう。
機械獣の司令塔としての責務を持ったあしゅら男爵も、それは例外では無かった。
頭の髄から血の気が引いていき、底知れぬ悪寒が体中の毛細血管を駆け巡り、強張らせる。
体内に直接氷水でも注ぎ込まれたかの様な、或いは沸騰した血液が体を巡る様な、矛盾した感覚。
それら全てが中枢神経を締め上げるが如き鈍い幻痛と共に、視界を、あしゅら男爵という意識を真っ白に染めていく。
(こ…これは一体何なのだ?!)
己の身に起きている感覚を、事態を把握しきれない。
それでもあしゅら男爵は懸命に思考回路だけでも再起動させ、報復せんとする。
あの者を消せ、視界から消し去れと、殺意を着こんだ恐怖で以て一矢報いらんと。
「ガルダC3!奴を、奴の喉元を掻き切れっ!!」
恐慌の中で確かに下された指示を受け、深緑色の機械獣がロケットの轟音と共に唸りを上げ、一瞬の間の後、空を駆ける。
そして目標を正確に捉え、そこに向けて構えられた鉤爪は音速を超える。
並みの相手ならば、事象の認識もままならぬ葬り去れる一撃。
だが、刹那に生まれた隙をも許さぬ程に、彼の者は圧倒的な強者であった。
「飛翔、竜尾脚っ!」
ラーメンマンは、更にその上を舞った。
機械獣の切っ先には既に彼の者はおらず、その頭上へと飛翔し、さながら東洋の龍が如く弧を描く。
すれ違い、回り込み、流れる様に後ろを取ったラーメンマンが繰り出す緩急を付けた両脚が、機械獣の装甲、スーパー鋼鉄を打ち抜き、込められた力を体全体へと、罅割れと共に波及させていく。
そうして漸く鉤爪が空を切った時、自ら繰り出した音速の中にサラサラと溶ける様に、機械獣の思考は途切れた。
たった一撃、それに気付いた時には、機械獣は文字通り粉砕されていたのだ。
「な、ぁ…!!?」
絶句とは正にこの事であろうか、余りにも非常識極まりない光景を前にして、あしゅら男爵は出すべき言葉を完全に見失っていた。
Dr.ヘルから授かった無敵を謳う機械獣の、何たる有様か。
超重量級の鉄塊である筈の機械獣が、まるで紙屑の如く吹き飛ばされているではないか。
最早戦いとすら呼べないそれは、ただ一方的に蹂躙されているだけに過ぎない。
「えぇい、何者でも良い!掛かれ、掛かれぇ!!」
ぐるりぐるりと脳裏を駆け巡るのは混乱ばかり、理解出来ない状況の中にあって、しかしそれでも彼は己の責務を全うすべく、声高々に叫ぶ。
そうすれば我先にと眼前に躍り出る、多種多様の機械獣達。
少なくとも、機械獣達に命令を下す事で、己の意思で奴に抵抗する事が出来る。
_カラン、ゴトン。
そう自らに言い聞かせて足掻こうとした彼の眼下に、鈍く乾いた音が木霊する。
「…はっ?」
見れば、足元に転がるは幾多にも上る首、首、首。
そのどれもが、切り刻まれ、細切れにされた機械獣の首だと理解した時、それ等が向ける力無き目によって、彼の理性は今度こそ恐怖に飲み込まれた。
「ひっ…!?」
先程の音の正体はこれだったのかと、気付いた所で後の祭りだ。
つい先ほどまで殺気溢れんばかりだった機械獣達は、既に首無きガラクタとなり、力無く倒れ伏す。
そして、そんな残骸を踏み潰しながら歩み寄る人影が二つ。
「俺のベアクローの味はどうだ?」
片や黒い装甲と仮面に身を包み、赤い眼だけが顔を出す殺戮マシーン。
「へっ、前より切れ味が上がったんじゃねぇか?」
片や髑髏の意匠をあしらった軍服の殺人鬼。
そのどちらにも共通するのが、一瞬の内に繰り出される手刀。
誰あろう、正義超人のウォーズマンとブロッケンJr.の二人だ。
二人は、あしゅら男爵の繰り出した機械獣を、一振りで以て屠っていく。
鋼鉄の巨体が一瞬の内に刻まれる様は、まるで悪夢の如し。
そして、それら全てが瞬きの間に行われている。
あしゅら男爵は、超人という存在に今一度戦慄を覚えていた。
如何なる敵をも打ち倒す最強の矛、機械獣。
それを以てして尚敵わない事実を前に、あしゅら男爵は本能的に敗北の二文字を悟っていた。
_あしゅら男爵よ。
だが、止まりかけた脳裏に響くDr.ヘルの言葉が、絶望の中に叩き落された意識を現世へと引き戻す。
そうだ、自分は何をしているのだ。
ここで全てを手放し諦めてしまえば、今まで自分が行ってきた事は一体何の為なのか。
Dr.ヘル様の為に、野望を果たす為に。
「_ダムダムL2、掛かれ!」
己の使命を再確認する様に、あしゅら男爵は今一度覚醒を果たす。
戦え、戦えと、己の全てに言い聞かせ、体を縛る恐怖全てをねじ伏せる。
何を諦める事があるか、まだ十分過ぎる程に脅威足り得る戦力が、機械獣が残されている。
いや、最早数の話ではない。
例え一人となろうとも戦うという意志を以て掛けた号令が、機械獣達を再度立ち上がらせる。
円柱状の巨体を転がし超人を薙ぎ払わんとする機械獣の前に、しかし二人の超人が立ち塞がる。
「うりゃあぁ!!」
「うららぁ!!」
己が筋肉をそのまま見せつけ、その怪力を奮い立てて機械獣を受け止めるは、ウルフマンとジェロニモ。
彼らの肉体は、鋼鉄製の機械獣など物ともせず、寧ろ剛力で以って機械獣を弾き飛ばす。
一瞬の内に止められ、空回りする車輪の音を余所に、ウルフマンの張り手が甲高い音をかき鳴らし、機械獣を浮き上がらせる。
その刹那に機械獣の顔を両手で挟み込み、捉える。
「食らいな、合掌捻りぃ!!」
右、左、右と揺さぶられ、天高く打ち上げられる機械獣。
「霧の中なら音が良く響くだ、アパッチの雄たけびーーーっ!!!」
直後、轟音という言葉ではとても言い表せない超音波の爆発が、機械獣を直撃し、その身を残さず砕いていった。
その衝撃の余波が、あしゅら男爵にも襲い掛かる。
耳を押さえ、必死に耐えようとするが、それでも余りある衝撃波に吹き飛ばされるあしゅら男爵。
そして錐揉み回転をする視界の中で、ある男が目に映った。
「_久しぶりだな、あしゅら男爵。」
「貴様、は…!」
その男は、英国を代表する正義超人。
女王陛下の元に輝く貴公子。
「ロビン、マスク…!」
ロビン一族のエリート超人、ロビンマスクが佇んでいた。

20人目

「激戦!エタニティコア防衛戦!」

「正義超人の皆さん…!来てくれたのか…!」
「久しぶりだな甲児!それにGUTSセレクト!」
『けど、お前ら皆療養中じゃなかったのかよ!?』
「なに、そこにいるラーメンマンと同じで、完全に回復したんだ」
「それに、マナカ・ケンゴが消滅するかも知れないんだろう?そんなときに呑気に寝てられっかよ!」
「おのれ正義超人共め…!」

「苦戦しているようだなあしゅら」
「っ!」
すると突如、上空に飛行要塞グールを始めとした、空飛ぶ機械獣軍団が出現。
「飛行要塞グール!?まさか!?」
「久しぶりだな兜甲児、それに正義超人共…!」
「その声は…!ブロッケン伯爵!お前まで生きてたのか!」
「あしゅらが生きて、Dr.ヘル様も生きておられるのだ。
この我が輩が生きていてもおかしくはないだろう?」
「だが、例え貴様が来たところで、我々は負けるつもりはないぞ!」
「バカめ、ここに向かって来てるのが我々だけだと思っているのか?」
「なに!?」
すると完璧超人のマックス・ラジアルが現れ、更に竜王軍やジオン族のモンスターが次々と出現する。
「見つけたぞ、正義超人共」
「っ!お前はまさか……完璧超人か!?」
「そうだ。俺は完璧・無量大数軍。完裂のマックス・ラジアルだ!」
「完裂の……マックス・ラジアル…!」
「元々今回は我々完璧・無量大数軍の邪魔になる可能性がある、ウルトラマントリガーの復活を阻止するために来たはずが、まさかお前達正義超人が6人も揃っているとはな…」
「チッ、こんなタイミングで出てきやがって!」
「それに異世界のモンスターまでいやがる…!」

『大変だ!エタニティコアがどんどん不安定になってる!このままじゃ本当にケンゴが消滅するぞ!?』
「なに!?」
「クッ……やむを得ない、危険だがこのまま作戦を開始するぞ!」
「けど、こんなに敵が多いとビームを撃つためのエネルギーを溜めることが…!」
そう、今回の作戦はマジンガーZが放つ最大出力の光子力ビームとゲッターロボが放つゲッタービームをエンシェントスパークレンスに送り、それを儀式で増幅させてエタニティコアの中にいるウルトラマントリガーに送るというもの、しかし最大出力ともなれば必要なエネルギーは相当なものになり、それを溜める時間も必要なのである。
無論、それを溜めてる間、マジンガーZは動かすことができない為無防備になってしまうのである。
「クソ!どうすればいいんだ…!」
次々と現れる敵と迫りくるタイムリミット……もう作戦の実行自体が絶望的だった



……次の瞬間までは
『皆気をつけろ!空からなにか落ちてくるぞ!』
「え?」
ナースデッセイ号の中にいるアキトから警告どおり、遺跡のすぐ近くに小型の宇宙船が落下した。
「あれって…!」
「確か…ドラゴンワールドの…!」

「どうやら間に合ったようだな…!」
小型の宇宙船の中から、テリーマン、ルフィ、バーサル騎士ガンダム、騎士アレックスが出てくる。
「テリーマンさん!それにルフィさんも!来てくれたんですね!」
「あぁ!」

「久しぶりだなテリーマン」
「正義超人の皆!?治ったのか!?」
「あぁ!当然だ!」

「知らない顔のやつもいるが、別の世界のやつらか?」
「はい。私はバーサル騎士ガンダム」
「私は騎士アレックスです。兜甲児殿、流竜馬殿、ここは我々に任せて早く儀式の方を!」
「あぁ!わかった!」

マジンガーZとゲッターロボは予定の位置へ移動し、エネルギーを溜め始める。
「皆!光子力ビームを最大出力で撃つためには時間が掛かる。少し時間を稼いでくれ!」
「こっちだ。ゲッター炉心が万全じゃねえから少しでも出力をあげようとすると時間が掛かっちまう」
「わかったわ!」
「最初からそういう作戦で行く予定だったんだ!もちろんいいぜ!」
「へっ、任せろ!」
「この世界の英雄、その復活が掛かった戦い……負けるわけにはいかん!」
「皆!いくぞ!」

21人目

「その名に栄光を! ブロッケンJr.対ブロッケン伯爵!!」

「あれなるはブロッケンJr……ドイツの鬼と呼ばれた残虐超人ブロッケンマンの遺子か。
ふん、正義超人などに傾倒しおって」

 ブロッケンJr.とブロッケン伯爵……同じ名を持ちながら
正義と悪とに分かたれたこの二人が今、エタニティコア争奪戦の渦中に激突しようと
していた! 

「Dr.ヘルに媚びへつらう輩が、
軽々しくブロッケンの名を騙るんじゃねえぜーッ!!」

 飛行要塞グール目掛けて、ブロッケンJr.が飛び上がる。

「加勢するぞ、ブロッケンJr! とぉああーッ!!」

 ブロッケンJr.に続き、ウォーズマンも跳躍した。

「ぬう……! こいつら……!? 機械獣軍団よ!!」

 ブロッケン伯爵の号令で2人の行く手を阻む機械獣たち。

(機械獣……こいつらはかつての俺と同じだ。
戦いの兵器として生み出され、善悪の区別もなく与えられた命令を
忠実にこなすだけの道具)

 かつて自分の身に起きた出来事を思い返しながら、
ウォーズマンは機械獣たちの攻撃をかわす。

「だが俺は生まれ変わった! 冷たい鉄の塊から血肉を持つ存在へと!!
そして今は仲間がいる! お前たちに決して屈する事の無い
強い絆で結ばれた仲間たちがな!!」

「何をごちゃごちゃ言っている! 正義超人どもめ!!」
「ガオオオオオオオン!!」

 再び襲いかかってくる機械獣たち。しかし2人は怯まない。

「ブロッケンJr.! 活路は俺が切り拓く! ベアクロー!!」

 ウォーズマンの両の手甲から飛び出す鉤爪状の刃。
それが左右同時に、襲いかかってきた機械獣たちを切り裂いた。
さらに金属同士がぶつかり合う音と共に、機械獣たちが弾き飛ばされた。
その背後には、鋼鉄の腕を振り抜いたウォーズマンが立っている。

「行くぞ!! スクリュー・ドライバアアアアアアアアアアーッ!!」

 ベアクローを突き出した体勢のまま、ウォーズマンは突進した。
そのままの勢いで全身を高速回転させ、次々と敵を切り刻んでいく。
その姿はまるで、触れるものを抉り穿つ破壊力抜群の大型ドリルさながらであった。

「ようし……! 行くぜ!!」

 ウォーズマンのスクリュードライバーによって開いた道を、ブロッケンJr.が駆け抜ける。

「爆雷を投下せよ!!」

 飛行要塞グールからの指令に従い、ミサイルや爆弾が次々と発射された。
激しい爆発の中を、ブロッケンJr.が突き進む。

「ふん、復帰早々派手な花火じゃねえか。
だがなぁ……そんなもんでは俺は止められんぜ!!」

 爆炎の中から飛び出してきたブロッケンJr.を見て、機械獣たちは一斉に動き出す。
だがブロッケンJr.のスピードは、彼らの想像を遥かに上回っていた。

「な、何をしている、奴を取り押さえろ!!」

 ブロッケン伯爵はグールのコントロールルームから焦ったように叫ぶが、もう遅い。
すでにブロッケンJr.は、グールの真上にまで迫っているのだ。
そして、 ブロッケンJr.が空中で身を捻り、必殺の一撃を叩き込んだ。
その技の名はーー

「復帰祝いにド派手に行くぜ……!! 
ベルリンの! 赤い雨ええええええーッ!!」

 ブロッケンJr.の右手が赤熱化するエネルギーで炎の如く燃え上がり、
急降下しながら繰り出される強烈な手刀が
飛行要塞グールの右主翼部分を真っ二つに叩き割った! 

「ぐおおおおっ!?」

 主翼部分の片側を失いバランスを失った飛行要塞グールは、地上へと落下していく。

「これぞ、ブロッケン家に代々伝わる伝家の宝刀……へへ、本物の格の差って奴を
思い知ったかよ」

 地面に降り立ったブロッケンJr.は、不敵に笑みを浮かべた。

「ブロッケン伯爵! 飛行要塞グール、高度が下がっていきます!」

 オペレーターの鉄仮面が叫んだ。
鉄仮面の報告通り、飛行要塞グールは高度を下げ続けている。
このままでは墜落は免れない。

「ぬうう、おのれ、ブロッケンJr.! 吾輩の飛行要塞グールをここまで
追い詰めるとは……! 遺憾ながら一時撤退だ!! この屈辱、忘れぬぞ!!」 

「ふふふ、ブロッケン伯爵め、何とも不甲斐ない有り様よ」

 あしゅら男爵がよろよろと逃げ去っていく
ブロッケン伯爵の姿を見ながら呟いた。

「だが、これで私の手柄は総取りというわけだ。
各員、奮起せよ! ブロッケン伯爵めを出し抜き、Dr.ヘルの寵愛を賜るの
この私なのだからな!!」

 そう言って、あしゅら男爵は部下たちに指示を出す。
あしゅらとブロッケン伯爵は常日頃から互いに反目し合っており、
隙あらば蹴落としてやろうと虎視耽々と機会を狙っている間柄であった。
それが災いしてあと一歩と言う所で事をし損じる事も度々ある。

「マジンガーZとゲッターロボは動けぬ! 奴らさえ片付けてしまえば
ウルトラマントリガーも復活することはできまい! 今こそ好機である! 
全軍、総攻撃を開始せよ!!」

 あしゅらの号令を受け、機械獣たちが進撃を開始した。
鬼、機械獣、異世界のモンスター、そして完璧超人マックス・ラジアル。
エタニティコアを巡る戦いは、ますます激しさを増していく。
迫るタイムリミット……総力戦を制する者は果たして誰だ!?

22人目

「霧の悪魔」

風雲立ち込める濃霧の中を、幾つかの機械の獣が、傷を庇い這うように進む。
異様な百鬼夜行のの先陣には、片翼無き巨体が、力任せに空を切って駆ける光景。
「おのれ、正義超人共め…!」
その正体たる飛行要塞グールの艦橋にて、首の外れた異形の軍人ブロッケン伯爵が、その手に持った顔を憤怒に染める。
彼にとって正義超人の復活は大きな誤算であり、直接の敗因であった。
故に、その怒りの矛先はグールの右主翼、それを葬ったブロッケンJr.へと向けられていた。
「このグールの翼を叩き斬るとはな。」
朦々と黒煙を上げる翼の先は、鋭利な刃物で斬り取られたかの如く消失している。
だが、翼が落とされた瞬間は今も脳裏に焼き付き、離れない。
次第に下がる高度と反比例して、彼の怒りは有頂天に達しようとしていた。
「…えぇい、まだ霧を抜けられんのか!?」
苛立ちを募らせた彼は手近にいた部下の一人を掴み上げ、八つ当たりに揺さぶった。
霧のカーテンは未だ濃く、味方はおろか、己の位置すらまともに把握出来ていない。
「これではいつ落ちるか、分かったものでは無いわ…!」
主翼の大部分を失った今、彼等は遺憾ながらに不時着を試みなければならない。
にも拘わらず、肝心の地平を見定める事が出来ない事実を前にして、彼は最早苛立ちを隠さなかった。
下手な着地をすれば大破を伴う事態、即ち墜落を意味するのだから、彼等の部下も同感ではあった。
霧の大元である戦場から遠ざかっているのだから、墜落までには抜けられるだろうと言う思いはあった。
「…妙です!霧を抜ける所か、濃度が濃くなっています!?」
「…何だと?」
だからこそ、部下のその言葉を耳にして、彼の憤怒は冷や水を差し込まれた様な感覚と共に困惑へと塗り替えられた。
我に返って辺りを見渡せば、青白い濃霧が艦橋から覗ける視界全てを飲み込まんとしている。
(…青?いや、違う!)
安倍晴明が使う霧は、こんな"ガスの様な物"ではない。
そう気付いた時、彼は己を取り巻く感情全てを捨て去り、指揮官としての任務に努めた。
「_第一種警戒体制!後続の機械獣達を直ちに周囲へ展開し、警戒を厳とせよ!」
彼の鶴の一声によって、軍団全体に緊張感が走る。
同時に、負傷も構わず霧の中へと駆ける機械獣軍団。
一気に慌ただしくなった艦内でただ1人、ブロッケン伯爵は冷静に異常事態を見定めんとしていた。
明らかな違和感を覚えていたのだ。
「如何なる異常も_」
見落とすな、そう言いかけた彼の視界を、艦橋のすぐ横を、錐揉み回転する機械獣が過ぎ去る。
直後、何か巨大な物体との衝撃音と共に、グールが激しく揺さぶられる。
それが先程の機械獣である事など、既に理解していた。
「ぐぅ、う…!!?」
目まぐるしく変わる重力感覚の中、何とか手すりにしがみつき踏ん張る。
そして間もなく訪れた着底の衝撃によって、艦橋は激しく揺れに襲われた。
轟音と共に大地を抉りながら、地を這いずる要塞グール。
そうして暫く大地に一の字を刻んだ後、漸くその巨体は動きを止めた。
次第に静かになっていく様から、大破轟沈という最悪の事態だけは避けられたようだった。
「くっ…状況を報告せよ!」
だが、それで安堵する暇も無い。
ブロッケン伯爵の言葉に、艦橋内は一瞬にして騒然となる。
機械獣、グール、人員の被害状況を把握せんとして。
「あ、ぁ…!?」
そんな中、一人の部下が怯えた声を上げる。
「ま、窓に…!?」
彼の視線の先。
艦橋の窓に張り付く何かが、そこにいた。
それは人間の様にも見えたが、実体は常軌を逸している。
死人の如き青冷めた肌、どの国の物とも合致しない特殊部隊らしきスーツ。
何よりも、グールと衝突しているにも関わらず、出血の一つも無いという異様な形相。
そんな異形の怪物が何体も、身動ぎ一つ立てず、艦橋にピタリと張り付いていた。
「な…!?」
絶句、ただただそうする事しか出来なかった。
言葉で表現するには余りにも常軌を逸した異常事態を前に。
_アァァァ…!
直後、ソレは小さな唸りと共に奇怪な動きで剥がれ落ちていく。
ビデオを早送りした様なソレは、窓から飛び降り、瞬く間に霧の奥へと姿を消す。
代わりに、巨人の様な黒い影が、地響きを立てて横を通り過ぎる。
彼等はその後ろ姿を呆然と眺めたまま、暫く動く事が出来ずにいた。
「…なん、だ、あれは?」
やがて正気を取り戻した頃には、霧は既に遥か後方。
霧を伴ったナニかは、戦場へと赴いていた。

「ソリッドスネーク…いや、違うな。イシュメールで良い。」
人造人間セルの襲撃からウーロンを救った、筋骨隆々の初老の男。
彼は一度名乗りかけたその名を撤回し、イシュメールと名乗った。
「スネークの方が呼びやすいんじゃねぇの?」
「良いからイシュメールと呼べ。」
咄嗟に訂正する姿に、まぁ命の恩人だしなと受け入れる事にしたウーロン。
彼等は今、セルから逃れんと病院の奥底で息を潜めている。
あの時ひたすらに離れた事から、セルは未だこの辺りまで来ていないらしい。
「それで、これからどうするよ?」
「奴はまだ暴れ回ってるらしい、まだ暫く身を潜めておこう。」
時々静かに響くコンクリートの破砕音から、セルは辺りを虱潰しに破壊して回っているらしい。
幸いこちらへ来る気配は無いが、それでもいつ何時やって来るのかは解らない。
警戒しつつ隠れていよう、そう結論付けた所で、話題が尽きる。
おっさんと豚二人、そんな気不味い空気を誤魔化す様に、ウーロンが咳払いして語り掛ける。
「さっきは本当にありがとな、危うくセルに殺されちまうところだったぜ。」
「あぁ…待て、お前あの化け物を知っているのか?」
そう言って疑問を呈するイシュメールに、訝し気な声を上げるウーロン。
「何だ、知らないのか?前にテレビで出てただろ?」
あの化け物、もとい人造人間セルは、世間では有名な存在なのだ。
テレビを見てないのかと思ったウーロンに、イシュメールは苦笑する。
「すまない、つい最近まで昏睡状態だったものでな。」
「あぁ、通りで患者の服を着てる訳だ…いや、どっからあの閃光玉持ってきたんだよ?」
「…差し入れだ。」
「おっかねぇな。」
ジョークなのか判断に困る言葉に、頬を引き攣らせる。
しかし次の瞬間に彼の頭にあったのは、どうやってここから逃げ出すかという算段であった。
出入り口は当然奴が見張ってるだろうし、何処かに抜け道があるとは思えなかった。
仕方無く、この男の話に乗ることにした。
幸い、奴の話題についてウーロンは世間よりも深く詳しかった。
「あいつは人造人間でよ、昔世間を賑わせたレッドリボン軍って奴等の科学者が作ったんだとよ。」
「…レッドリボン軍?それは本当か!?」
聞き覚えのある名前だったのか、思わず身を乗り出して問い詰めるイシュメール。
その剣幕に若干気圧されながらも、ウーロンは答える。
「お、おう。間違いねぇよ、何だよ急に?」
レッドリボン軍の悪行の数々についてはよく知っていたが、ここまで食い付くものなのか。
「その科学者の名前は?」
「名前?確か、Dr.ゲロって名前だった様な…」
「…その男は、俺が追っている男で間違いない。」
包帯の男、イシュメールはそう告げた。

23人目

「その名は完裂! マックス・ラジアルを食い止めろ! の巻」

「バルル~~~~ッ!! この完璧・無量大数軍の「完裂」こと
マックス・ラジアル様が、正義超人などあっと言う間に蹂躙してくれるわーッ!!」

 中世の騎士を思わせる甲冑、そして両肩には超巨大なタイヤを装着している。

「凄い馬力だ……! まるで何者をも踏み潰す戦車のようだ!」

 タイヤを回転させ、大地を削りながらその道先に転がる機械獣の残骸を物ともせず
突き進んでくるマックス・ラジアル。

「不味い! あの野郎、全てを薙ぎ払ってエタニティコアに直接突っ込む気か!?」
「く、させはせんぞ!」

 すかさずテリーマンが前に出て、両腕を構えて受けの姿勢に入る。

「危ない、テリーマン! それをまともに喰らったら一溜まりもないぞ!!」

 だがテリーマンはその場から一歩たりとも動かない。
迫り来るマックスに対し、真正面から受け止めるつもりなのだ。

「愚かなり! そんなことをすれば貴様の腕どころか全身が砕け散ってしまうぞ!!」
「うおおおおおおっ!!!」

 テリーマンは雄叫びと共に両腕を広げ、マックスの突進を受け止めたのだ!

「うぐっ……ぐわああああああーッ!!」

 しかし非情にも、マックス・ラジアルのタイヤはその勢いを緩めることなく、
テリーマンの身体をズタズタにしていく。それでも尚、マックス・ラジアルの侵攻は
止まらない。

「どぉぉおすこぉぉぉぉーーーーいッ!!」

 正義超人一のパワーの持ち主、超人相撲界の横綱・ウルフマンが
テリーマンの危機を見かねて加勢する。

「ウ、ウルフマン……!!」
「ぬおおーッ……こ、こいつは相撲部屋のぶつかり稽古よりも
強烈でごわすなーッ……!!」

 だが、二人の力を合わせても、マックス・ラジアルを止めることはできない。

(あのストロング・ザ・武道と言い……完璧・無量大数軍にはこんな奴らが
まだまだ蠢いていると言うのか……!! 奴らが本腰を入れて攻めてきたら、
もう地球は終わりだ……!!)

「フハハハハッ!! 無駄な足掻きだったな、テリーマンよ!!」
「クッ……!!」

 このままでは二人揃って轢き殺されてしまうだろう。

「ゴムゴムのォォォォーーーーッ……!!」

 その時、テリーマンとウルフマンの背後で聞き覚えのある声が上がった。

「……!!」
「風船ーーーーーッ!!」

 ルフィだ。空気を思いっきり吸い込み、限界まで膨張させた体を
前から突っ込んでくるテリーマンとウルフマンのクッション代わりにしたのだ。

「な、何だこいつは……こいつも超人なのか……!?」
「自分の体張ってまで仲間を守ろうとしてる奴らをよ、黙って見捨てるわけには
いかねェだろうがァ!!」

「フフフ、随分と威勢の良い小僧っ子でごわすなぁ」
「ああ、ルフィには何度も助けられたからな……!」

 ルフィの行動と啖呵に、テリーマンとウルフマンの闘志に再び火が付いた。
そして二人は、同時に両手を突き出す。

「ふんぬああああああーッ……」

 すると僅かに、だが確実に、マックス・ラジアルの勢いが弱まっていく。

「ば、馬鹿な……!? 完璧超人たるこのマックス・ラジアルの突進を……
と、止めるだとォォォォーッ……!?」
「お前のそのタイヤによる突進力は確かに相当のものだ……!」
「だが、ご自慢のタイヤ……側面からの攻撃には耐えられるでごわすかな?」

「ゴムゴムのォォッ……!! バズーカァァァァァァッ!!」

 マックス・ラジアルの突進を受け止めている間に溜め込んだ反動をバネに、
ルフィが両の掌底を右のタイヤめがけて叩き込む。

「どぉぉおすこぉぉぉぉぉぉーーーーいッ!!」

 それとまったくの同時、ウルフマンの渾身の張り手によって
マックス・ラジアルの左のタイヤは完全に砕け散った。

「ごはあああああッ……!!」
「マックス・ラジアル……敵ながら見事なパワーだった。思わず気圧される程にな……!!
お前のような強者がまだまだゴマンといると考えただけでゾッとするぜ……!!」

 テリーマンはマックス・ラジアルの巨体を持ち上げる。
その度に全身から噴き出す血飛沫が辺り一面に飛び散った。

「あ、ああーッ!! あの体勢は……!!」
「だが、俺たちは負けるわけにはいかない! 例えこの身が砕け散ろうとも…
必ずや地球を救ってみせる!! うおおおおおりゃああああああああああああーッ!!」

 テリーマンはマックス・ラジアルを抱え上げ、そのまま頭から地面に叩きつけた。
大地が揺れ動き、轟音が響き渡る。

「ぐわあああああああああああーッ!!」

 テリーマンの必殺技(フィニッシュ・ホールド)のひとつ、ブレーンバスターが
見事に炸裂し、マックス・ラジアルは今度こそ完全にダウン。
しかし、喜ぶ間もなく、テリーマンは糸が切れた人形のように
その場に倒れ伏してしまった。
当然だ。あれほどの大ダメージを負った上であんな大技を使ったのだ、無事な筈がない。
ルフィとウルフマンが慌てて駆け寄る。

「見事な、見事な戦いぶりだったぞ、テリーマン……!!」

 ウルフマンがテリーマンの肩を抱き、涙を流す。

「テリーマン……CROSS HEROESに来てからずっと戦いっぱなしだったんだ。
みんなをまとめてくれてよ……」

 キン肉マンが地球から去り、ラーメンマンやロビンマスクたちが
療養に入ってからと言うもの、正義超人代表として皆をまとめていたのはテリーマンだ。
彼がいなければ、今のCROSS HEROESもなかったかもしれない。
テリーマンは力なく笑みを浮かべると、こう言った。

「ば、馬鹿野郎……戦いはまだ終わっちゃあ……いない……」

 そう言うと、テリーマンは静かに目を閉じた。

「そ、その通り……だ……!」

 マックス・ラジアルがフラフラと起き上がってくる。

「なんと……あれだけの攻撃を喰らってもまだ動けるというのか……!?」

 ウルフマンとルフィがテリーマンを守るように立ち塞がる。

「か、完璧超人は……その名の如く、常に完璧であらねばならない……! 
故に、一度の敗北も許されないのだ……」
「!? そ、そうかーッ!! 奴もネプチューンマンと同じ完璧超人……
で、あるならば……!!」

 ウルフマンは思い出していた。超人タッグトーナメントに乱入し
そして決勝戦でキン肉マンとテリーマンに敗れ去った完璧超人ネプチューンマンが
口にした言葉を。

「離れろーッ!!」

 ウルフマンは咄嗟にルフィとテリーマンを抱え、その場から離れた。

「完璧・無量大数軍……万歳ーーーーーッ!!」

 マックス・ラジアルが叫ぶと同時に、彼の体が爆発を起こした。
辺り一帯が吹き飛ばされるほどの威力。そして、爆煙が晴れた後……
マックス・ラジアルは跡形もなく消し飛んでしまった。
完璧超人の鉄の掟。それは、敗北を喫したと悟った瞬間、自ら命を絶つことであった。

「むうう、や、やはりか……危ない所でごわした……!!」

 己の鍛え抜かれた肉体を盾にして、テリーマンとルフィを爆風から守ったウルフマン。
彼らは改めて、完璧・無量大数軍の恐ろしさを痛感するのであった。

24人目

「怒涛の復活、ロビンマスク!の巻/髑髏部隊(スカルズ)」

「マッスル・ラジアル。彼もまた、ネプチューンマンの様にか…!」
朦々と立ち上っていった人狼煙を見上げ、鬱蒼とした思いを静かに吐き出すロビンマスク。
彼の胸中にあるのは、武道が宣戦布告を告げたあの時、中継に映し出されたネプチューンマンの事だ。
ネプチューンマンもまた、嘗てキン肉マン達に敗れた時、掟に従い爆薬を以て自害した者だ。
だが縛り上げられたあの姿から、今は自害すら出来ない様にされた事は明白であった。
故に。
(その実力、殊勝な心掛けは戦士としては尊敬できる。だがしかし…)
ギシリッ、と力を込めた拳を鳴らして、彼は叫ぶ。
「ネプチューンマンを、喧嘩男の誇りを、あの様に辱めた完璧・無量大数軍はやはり許せんっ!」
この憤りも、友として当然のものであった。
そうして彼は今一度決意を新たにすると、再び戦場へと走り出す。
彼は、こんな所で燻っていはいられない。
「今はまだ待っていてくれネプチューンマン。いずれ必ず、救い出す!」
そんな彼を迎え撃たんと蠢く影。
それは霧に身を潜める太古からの妖、安倍晴明が使役する鬼の群れだ。
比喩や暗喩ではない、正真正銘の鬼。
本能のままに人を食らい、脅かす悪鬼羅刹共が、今その牙を剥かんと襲い掛かる。
奇襲、真上。
だが。
「貴様等に構っている暇は無い!」
このロビンマスクに死角無し。
「ロビン戦法その6。」
飛び掛かった鬼の牙は空を切り、直後その頭を後ろに回り込んだロビンマスクによって鷲掴みにされる。
「相手のパワーは最大限に利用せよ!」
落下する勢いそのままに地面へと叩きつけられ、血飛沫を上げる鬼。
次いで二撃、三撃と続けざまに放たれた裏拳が、正確無比に顔面を打ち砕いた。
確かな手ごたえと共に無残な有様になった鬼は、即死。
最早確認するまでも無かった。
「さぁ、次にやられたい者から掛かってこい!」
明確な挑発に、続々と鬼共が群がり、襲い掛かる。
一見すれば圧倒的不利な状況で、だがしかしロビンの顔には余裕があった。
所詮は本能のままに暴れる鬼畜の集まり、戦術も何もあったものではない。
ただ闇雲に飛び掛かり、ただひたすらに暴れ回るのみだ。
「とぉーっ!!」
そんなものは、最早ロビンの敵では無かった。
飛び掛かった一匹目をライナータックルで薙ぎ倒し、踏みつけて更にもう一匹。
「その3、円は直線を包む!」
上空で弧を描いた踵落としで首を刎ね、返す足でまた一匹。
着地と同時に腰を沈め、次の相手へと向き直った時には既に間合いの内。
瞬く間に四匹の鬼の頭部を握り潰し、また別の一匹へ。
まるで流れ作業の様な一連の動作の中、それでも彼は隙を見せず動き続ける。
そうして一分と経たぬ内に、残る鬼の数は僅か五匹となった。
「さて…そろそろ終わりにするぞ。」
宣言するロビンマスクは、構えを解くとゆっくりと右手を持ち上げる。
拳を固めず、緩めたままのそれは、一見すると隙だらけに見えるだろう。
事実、彼の背後から鬼達が一斉に飛びかかった。
「ふんっ!」
だが、その瞬間から既に勝敗は決していたのだ。
振り返り様に振るわれた裏拳が、まずは一匹目の顔面を打ち砕く。
その弾みで二匹目の角を掴み上げ、一瞬の内に担ぎ上げ、全身を振り回す。
他の三匹を薙ぎ払った所で勢いよく上方へ投げ、無防備な体をロビンが捉える。
_ガァーーー!?ガアァ!!
そしてそのフィニッシュホールド、間違いない。
「タワーブリッジ!」
ロビンマスクの伝家の宝刀、タワーブリッジだ。
ノストラダムスの跳ね橋の如く、鬼の体が折れ曲がった。
真っ二つだ。
滝の様な血の雨が舞い上がり、ロビンを赤く染める。
「次!」
しかし彼は止まらない。
よろめきながら立ち上がった三匹目の元へ、迷い無く飛び掛かる。
「ユニコーンヘッド!」
そして貫いた、彼の兜が、鬼の顔を。
水音を立てて彼の顔から力無く倒れる鬼を見て、残った二匹は漸く彼我の差を思い知らされた。
勝てない。
その事実に気付くには、彼等は余りにも遅すぎた。
だからこそ、一刻も早く逃げようとした彼等の眼前に、死んだ鬼が投げ込まれたのも当然であった。
「…ロビン戦法、その1。」
獲物は逃がすな。
それは、残った二匹への死刑宣告と同義だった。
「ファイヤータービン!」
ロビンの兜から生えたアロノアの杖が、炎を噴いて燃え盛る。
火炎が生み出す突風が、血化粧と共に闇の霧を払いのける。
そうして生まれた灼熱のドームにはもう、ただただ怯え切った人擬きと、英国一のエリート超人の姿があるのみだった。
「これで終わりだ!」
息を付く間もなく距離を詰め、二匹を上空へ掬い上げ、深く腰を沈め、跳躍。
そして一匹を足で四の字に締め上げ、もう一匹を下敷きに、逆立ちの姿勢で急降下。
それはロビンマスク最大のフィニッシュホールド。
「ロビン・スペシャルーーーッ!!!」
決まった。
ロビン最大の必殺技。
岩盤を砕く音と共に、下敷きになった鬼はひしゃげ、技を掛けられた鬼の首は、抉り取れた。
完全勝利だった。
その名に相応しく、その体に一切の傷は無かった。
「やったな、ロビン!」
「いいや、まだ勘が鈍ってるようだ。」
その戦果を称賛するラーメンマンに、しかしロビンは驕らない。
_ガ、アァ…
「生き残りが居たようだ、私もまだまだだな。」
己の力を過信していた訳ではない。
しかし息も絶え絶えとは言え、生き残りが居たという事実が彼の心に叱咤を掛ける。
ロビン家の力はこんなものでは無い筈だ、獲物は逃がすなと宣告した筈だと。
そうして自らに反省を促し、振り向く。
「…無為に苦しませるものでもない、今楽にしてやる。」
ロビンの足が、生き残りへと向く。
最早這う事すらままならぬ鬼は、天に向かって命乞いをするのみか。
せめて楽に死なせんと、トドメを刺そうとした時だった。
「…まてロビン、何か妙だ?」
直感で違和感を感じ取ったラーメンマンが、制止の声を上げる。
「む、これは…?」
気付けば、周囲に再び霧が立ち込めていた。
それも安倍晴明が使った黒洞ではない、青白いガスの様なもの。
ソレに気付いた時、異変は起こった。
「なっ…!?」
比較的損傷の少ない鬼の遺体を、無数の塵が取り込んでいく。
直後、ソレ等はゾンビの如く呻き、動き出す。
更には独特の音を立てて瞬時に現れる、死人の肌を持った集団。
何処の国の物とも一致しない、特殊なスーツ。
_ガ、ァ…!?
「_お前も死に損なったか。」
そして、生き残った鬼を掴み上げた巨大な影と、そこに佇む髑髏の男。
「何者だ!?」
ロビンの怒声を余所に、髑髏は黒いシルクハットを深く被り、霧の中へと消えていく。
代わりに現れるは、死んだはずの鬼共と、死人の集団。
それはブロッケン伯爵が去り際に見た、異形の集団だった。

25人目

「今よりも、強くなるために」

 ――トゥアハー・デ・ダナン。

「孫、貴様も感じたか……」
「ああ、テリーマン達が向かった方角にでけえ気がひとつ、ふたつ……
間違いねえ、こいつはラーメンマン達だ。あいつら、復活しやがったんだな!」

 悟空とピッコロは気を探り、正義超人達が復活を果たした事を知る。

「かつての奴らとは比べ物にならん程の気の高まりを感じる……」
「あいつら、また強くなってやがんな! はっはぁ、オラもついていきゃあ
良かったかなぁ!」
「俺たちには俺たちで、やらねばならん事がある。我慢するんだな」
「わかってっさ。こっちにも敵が来るかもしんねえもんな」

「すごいなあ。悟空さんたち、遠く離れてるのにそんな事まで分かっちゃうんだ」
「魔法少女のテレパシーみたいなもんかな……どんな修行したら
あんな風になれるんだろう……」

 いろはと黒江は、感嘆と共に悟空とピッコロのやり取りを眺めていた。

「修行……修行か。私も頑張って強くならなくっちゃ。ペルちゃん、お手合わせ願える?」
「望む所だ」

「お? おめえら、修行するんか? だったら、オラ達が相手してやっぞ」
「え!? 本当ですか……」
「戦力は多い方がいいからな……良かろう、俺も付き合ってやる。
ただし、やるからには生半可な真似はせんぞ。それは覚悟しておくんだな」
「お、お願いします……」

 こうして、トゥアハー・デ・ダナンでは月美やペルが悟空とピッコロによる特訓を
受ける事になった。一方……

 

 ――髑髏部隊(スカルズ)、それは死を呼ぶ強化兵士。
その肉体に宿した寄生虫が他者に侵食する事により、操り人形のように内側から支配し、「傀儡兵」として自らの手足とする。
正義超人に倒された鬼の亡骸などを取り込み、次々と宿主を増やしていく。

「な、なんだ、こいつらはーッ!! ウラララララーーーーーッ!!」

 ジェロニモの得意技「アパッチの雄叫び」。
超音波のように空気を震わせる叫びが、スカルズの強化兵たちに浴びせられかける。
しかし彼等は、その程度の攻撃では怯まない。

「オ、オラの技が効かないなんて……」
「いや、充分だ! 次は私が行くぞ!」

 そう言って前に出たのは、ラーメンマンだった。

「この者達からは邪悪な気配を感じる……!」

 その言葉通り、彼は傀儡兵から漏れ出る邪悪な気を感じていた。

「とぉああーッ!! フライング・レッグラリアートーーーーーーーーーーーッ!!」

 ラーメンマンの必殺の蹴りが、傀儡兵の体をバラバラに引き裂く。

「よし、次だ!」

 しかし、4人1組で陣形を組む髑髏部隊が、彼を取り囲む。

「速い……! だが、まだ私の方が上だ!」

 素早く移動し、四方からの攻撃をかわすラーメンマン。

「フッ! ハァッ!! ホワタァアアアアッ!!」

 そのまま、敵の攻撃範囲外へと逃れる。

「とぉぉぉぉーッ!」

 そして、一瞬にして背後へ回り込み、再び蹴撃を繰り出した。

「回転龍尾脚うううううううううううううううううッ!!」

 前方宙返りしつつ、回転を加えた跳び蹴りを髑髏部隊の胸部に喰らわせる。

「ぬううっ……!?」

 確実に急所に直撃したはずだった。しかし、髑髏部隊が身に纏う特殊装甲が
ラーメンマンの必殺の蹴りを弾いた。

「……」
「私の蹴りを受け止めるとは……! ええい!!」

 反動を利用し、一旦相手との距離を離すラーメンマン。
無言のまま、髑髏部隊は反撃に転じようとする。

「このぉぉぉーッ!!」

 ジェロニモがトマホークを投擲するが、それも特殊装甲に弾き返され、
根元から折れてしまう。

「何て硬さだべ!!」
「あのスピード、装甲、そしてまるで生気を感じられない……痛覚さえもあるのかどうか。気をつけろジェロニモ、この者たち、只者ではなさそうだ。
恐らく、非人道的な肉体改造を施されているぞ」

 ジェロニモとラーメンマンが警戒を強める中、ブロッケンJr.とウォーズマンが
飛行要塞グールとの戦いから戦線に戻ってきた。

「何だぁ? 戻ってきてみりゃ、また新しい団体御一行様のご登場かよ!」
「ウォーズマン、ブロッケンJr.! 無事だったのか!」
「飛行要塞グールは追い払った。だが、まだまだ安心は出来んようだな……」

「ああ、奴らは強いぞ。それに、テリーマンが完璧超人マックス・ラジアルを
撃退してくれたが、かなりの重傷を負わされたらしい。急いだ方がいいだろう」
「テリーマンが……!?」
「完璧超人をぶっ倒してくれた辺りは流石テリーマンと言いたい所だが、
これ以上長引くとこっちも不味いぜ」

「ミディア!!」

 騎士アレックスが傷ついたテリーマンに回復魔法を施す。
意識を失ってはいるが、痛々しい傷口が塞がり、血色も良くなっていく。

「すっげーな、お前!」

ルフィが感心したように言うと、アレックスは小さく頷く。

「私の方こそ、貴公らの戦いぶりには驚かされた。
この世界にも、これほど多くの勇ましき戦士たちがいるのだな」

ウルフマンが照れくさそうに頭を掻いた。

「ごっつぁんです! へへ、そんな大層なものじゃありやせんぜ。
俺達ゃただ、仲間の為に戦っているだけでさあ」
「それが素晴らしいと言うのではないか。私は感動したぞ。
戦士としての誇り高き戦いぶり、そして命懸けの友情! 
私もアルガスの騎士として生きてきたが、ここまでの勇気ある行動を見たことがない」

「同じ騎士として、テリーマンを救ってくれた礼を言わせてもらおう。異世界の勇者よ」

 ロビンマスクは頭を下げて感謝の意を示す。

「それに、あの白銀の騎士にも……」
「でぇぇぇああああああああああああああああーッ!!」

 テリーマンを治療する騎士アレックス達に近寄らせまいと、
バーサル騎士ガンダムは単身でジオン族のモンスターたちを薙ぎ倒していく。

「ここから先は一歩たりとも通さんぞ! 通りたくば、このバーサル騎士ガンダムを
倒してから行くが良い!!」

 その雄姿を見つめながら、ロビンは呟く。

「あの男、強いな……まさに騎士の中の騎士と称されるべき威風堂々たる背中だ」

26人目

「第三勢力」

_ア”ァァ!!
「来るぞ!」
その警告は誰が言いだしたか。
皆が身構えると同時に、髑髏部隊は動き出した。
空を引き裂く独特な音を立て、窪地を駆ける異質な兵士。
つい先程までまともに首の座ってなかった死人の如き者達が、一心に此方を見据え音速を超えるその異様さは、見る者に生理的嫌悪感を抱かせる。
その矛先が向けられるは、ラーメンマン。
「掛かってこい、悪霊共!」
対するラーメンマンは勇ましく挑発し、雄々しく拳を向けるも、しかし髑髏部隊の動きは乱れない。
彼我の距離を一瞬の内に詰め、それぞれが一直線状の残像を描いて互いの間合いに入り込む。
一手、先ずはラーメンマンの空手殺法が繰り出され、先頭にいた1体を吹き飛ばす。
「レッグラリアートッ!」
勢いは止まらず、返す刀にて右端の一体に蹴りを繰り出す。
鋭い一撃の元、髑髏の上下半身を分かつ。
…否。
「っ!手ごたえが…!?」
足先から伝わる空を切る感触、即ち髑髏の残影しか掻っ切れなかった。
穿つべき本体を捉えきれなかった事実が、残影の先、上空で光迸るマチェットと共にラーメンマンへと突き付けられる。
虚を突かれた形となった髑髏の一撃が、そのままラーメンマンへと振り下ろされ…
「ボサッとしてるなっ!!」
「ぬぉ!?」
横合いから割り込んだブロッケンJr.のタックルが、ラーメンマンをマチェットの矛先から突き放した。
代わりにブロッケンJr.の胴へと斜め一直線に刻まれる、刃筋の通った裂傷。
肉体から鳴る血肉の削れる生っぽい音と、立ち上る出血。
「ぐぅ…まだまだぁ!」
だが、浅い。
なればこそ、ブロッケンJr.は怯まず即座に反撃へと転ずる。
「食らいなぁ!」
髑髏の顔を襲う手、ブレーンクロー。
その凄まじき掌力により、もがき苦しむ髑髏の体が掴み上げられる。
_ア”ァァ…
そこから勢いを付けて真後ろへ片手投げをされた髑髏は、他の髑髏を巻き込みながら転がされ、地を這う。
「こいつは効いたか!」
確かな手応えを感じ取ったブロッケンJr.が、ニヤリと口角を上げる。
だが彼の期待とは裏腹に、髑髏部隊は苦しむ様子も無く、緩慢とした動きでふわりと起き上がる。
「何!?」
まるでダメージなど感じていない有様には、流石に驚きを隠せない。
そんな彼の驚愕を余所に、髑髏部隊の攻勢は更に激しさを増す。
「来るぞ、ブロッケンJr.!」
ウォーズマンの警告と共に、各々が持つマチェットを手に突進を仕掛けてくる。
さながら津波の如く押し寄せる怒涛の波状攻撃を前に、しかしブロッケンJr.はジリッと一歩引くのみ。
否、寧ろ攻勢の構えを取って迎え撃たんとしている。
「お前達は俺一人で充分だ!」
迫りくる敵勢に対し、彼はそう豪語してみせた。
実際、髑髏部隊の介入によって、バーサル騎士ガンダム等が倒したモンスターが傀儡兵として再起している。
それ等の対処の為に、ラーメンマンを初め、有力なメンバーが次々と駆り出される事態だ。
数の多い其方に人手を割き、元凶たる髑髏部隊を叩くと言うのは理には適っていた。
髑髏部隊こそが最も手練れという事実を除けば、だが。
「無茶だ!」
そんな彼の強気を諌めるのは、傍観に徹していた筈のウォーズマンだ。
ブロッケンJr.を包囲する髑髏部隊を飛び越え、背中合わせになってベアクローを構える彼に余裕は感じられない。
(ブロッケンJr.も、こいつ等の戦闘力のついては既に重々承知している筈だ!なのになぜ…?)
一方のブロッケンJr.もまた、ここまで強気に出られる自分に対して違和感を覚えていた。
(何だ?こいつ等を見ていると、何故か懐かしい感じがしてきやがる…!)
まるで一度戦った事のある様な感触が、彼の感覚を研ぎ澄ましていく。
そうこうする内に、遂に両者の距離が目前にまで迫った。
先陣を切って突っ込んで来た髑髏部隊が、一斉に得物を握り締める。
明滅する様に瞬間移動を繰り返し、上空から一閃。
「見切ったっ!」
だがブロッケンJr.はその一閃を潜り抜け、逆に獲物を奪い取り、髑髏のどてっぱらにめり込ませた。
流石の髑髏もこれにはたたらを踏み、獲物を引き抜かんと2、3歩下がっていく。
だがそれも束の間、今度は二列目、横一文字に並んだ髑髏達が間髪入れずに襲いかかる。
今度は左右からの挟撃、それでも。
「俺が居る事を忘れるな!」
「あたぼうよ!」
ウォーズマンのベアクローが、ブロッケンJr.の赤熱した手刀が。
それぞれの髑髏の喉元へと突き刺さり、掻っ切ってみせた。
だが。
「な、ベアクローが…!?」
たった一撃、突き刺さったベアクローが、一瞬の内に腐食し、枯れていく。
まるで何千年の月日を垣間見たような事象に、ウォーズマンは驚きを隠せない。
その元凶たる髑髏の喉元からは、錆の様な煙が吹き出ていた。
「下がれウォーズマン!機械の体じゃやられちまう!」
「だが…!」
「もう一つのベアクローまでやられたら取り返しが付かねぇ!良いから他の加勢に行くんだ!」
焦燥感に苛まれるウォーズマンだったが、ブロッケンJr.の冷静な判断により、対髑髏戦線を離れる。
だが、それを好機と見た髑髏部隊が殺到してくる。
次々と繰り出されるマチェットの斬撃、そして刺突。
最初の内は裁けていた攻撃も、やがて手数が追いつかなくなる。
(不味いな、格好つけすぎたかっ…!?)
彼の額に冷や汗が流れ、その表情に後悔の色が見え隠れし始める。
だが、そう思った時には既に遅過ぎた。
裁き損ねた一瞬の隙に、容赦無く凶刃が振り下ろされる。
(しまっ…!?)
やられる、そう思った時だった。
空を裂く銃声と共に、その刃が撃ち落とされ。
「ハリケーンミキサーッ!」
聞き慣れた声と共に現れた巨体が、髑髏を空の彼方へと突き飛ばしたのは。
「お、お前…!?」
「よう、余計な手出しだったか?」
気付けば近くに降りていたヘリから、赤いバンダナを首に巻いた白髪の男と、角を生やした巨漢が現れていた。
バンダナの男はともかく、巨漢についてブロッケンJr.はこれ以上無く知っていた。
一度は悪魔に魂を売り、それでも友情を重んじた超人界の巨星、その名を。
「バッファローマン…来てくれたのか!」
「へっ、少し見ない内に随分鈍っちまったんじゃねぇか?」
人一人分はあろうかという程の剛腕を振るい、悪態を付くバッファローマン。
「こいつ、言わせておけば…へへっ!」
だが彼はそんなやりとりにすら頼もしさを感じていた。
一方で、一つの疑問も生じていた。
「そういうお前も随分物騒な仲間が出来たみてぇじゃねぇか?」
視線の先には、バンダナの男と、彼が引き連れたであろう特殊部隊。
男は、髑髏部隊の方に向き直ると静かに口を開く。
「全員、構え!頭部を狙え、無駄弾は使うなよ?」
彼の指示一つで、ガスマスクとサーマルゴーグルを付けた特殊部隊が展開していく。
そして男が合図を送る。
「撃て。」
その一言で、戦況は一変する。
傀儡兵となったモンスターを初め、様々な敵が、一射毎に頭部を吹き飛ばされていく。
銃声と共に飛び散るモンスター達。
漸く起き上がった髑髏部隊が反撃に転じた時、既に白兵戦の大局は決していた。
「あいつか?アイツは…リボルバー・オセロットだ。」

27人目

「神と魔の狭間で・ピッコロ対ペルフェクタリア」

 トゥアハー・デ・ダナンは無人島へ接舷し、悟空、ピッコロ、月美、ペルらも
島に上がった。

「よーし、ここなら思いっきり修行できっぞ。おいっちに、さんっしっ……」と、
柔軟体操を施しつつ悟空が言った。

(相手は悟空さん……それにあのピッコロさんって方もすごい闘気だわ)

 月美は以前、西の都にて悟空とルフィが力比べをする現場を目の当たりにしていた。
故に、孫悟空と言う人物が途方も無い実力の持ち主である事は承知している。
その悟空の仲間となれば、ピッコロも相当の達人であろうことは自ずと導き出されよう。

(でも、負けない!)

 月美はそう心に決めていた。

「ピッコロ、おめえとこうして組んでやんのも久しぶりだなあ。
まだ悟飯が小っちゃかった時以来かもな」
「ふん、随分とまた懐かしい話を持ち出してきたな。あの小娘2人、貴様はどう見る?」

「そうだなぁ……片方のペルって奴は確かにすげぇ気だが、
月美はまだまだって所かな。強くなりてえって気持ちは買うけどよ。
まあいずれにせよ、まずはあいつらの実力を見てみようぜ」
「良かろう」

 ピッコロはマントとターバンを脱ぎ捨てた。
ズシン、と重い音がして、地面に沈み込む。

「なるほど、超重量の衣服を着て今まで過ごしていたのか……」
「一体何キロぐらいあるんだろう……あんなのを着て
今まで涼しい顔をしていたなんて……」

 ペルと月美は驚きを隠せないでいた。

「さて、軽くなったな」

 首周りをパキポキ鳴らしながら、ピッコロは臨戦態勢に入る。

「よし、いつでもいいぞ、おめえら!」

 悟空の声に呼応するかのように、2人は構える。

(あのペルフェクタリアとか言う小娘の構え……)

 ピッコロが思ったその時だった。突如として、ペルが動く。風よりも疾く。

「疾ッッ!!」

 その動きたるや、まさに電光石火の如く。
一瞬にして間合いを詰めると、そのまま回し蹴りを放った。

「ほう……」

 しかし、ピッコロはその攻撃を難なくかわすと、
ペルの背後に回り込み、肘鉄を叩き込んだ。

「ぬんッ!!」
「ふッ!!」

 空中で体を捻り、ピッコロの腕に絡み付いたペルは大車輪から逆立ちの姿勢を取る。
そして腕を軸に回転し、遠心力を利用した強烈な踵落としを浴びせかけた。

「くっ……!」

 この攻撃もギリギリの所で避けたものの、ペルの攻撃は止まらない。

「絶縁刀ッ!!」

 魔力を右腕に集中させ、雷を帯びた手刀を放つ。

「なんとぉッ!!!」

 これに対し、ピッコロは振り下ろされた絶縁刀を白刃取りで受け止める。

「ぐ……く……!」
「やはりか。貴様のその型……暗殺拳と見た」

「その通りだ。忌式暗殺拳……それが私のベースとなる流派だ」
「なるほど……ならば、こちらも少しばかり本気を出すとしよう」

 ピッコロはペルの手を掴むと、そのまま投げ飛ばした。

「うっ……」
「でぇあだだだだだだッ!!」

 空中に放り投げられたペルが体勢を整える前に、
ピッコロは追い打ちをかけるべくエネルギー弾を連射した。

「ぐっ……!! くそぉっ!!」

 ペルは無理矢理に姿勢制御を行うと、飛んでくるエネルギー弾を
右肘、左手刀、垂直上段蹴りで次々と弾き飛ばしていく。

「はああああああああッ……!!」

すべてのエネルギー弾を撃ち落とすと、ペルは首に巻いていた赤いマフラーを掴んで、
魔力を注ぎ込んでいく。すると、マフラーは強度を飛躍的に高めていき、
やがてそれは鉄の鞭さながらと化した。

「ずあああああああッ!!」

 ペルの魔力で強化されたマフラーを振るうと地面が抉れ、砕け散った。

「魔力による身体強化の応用……それにより小柄な体格をカバーすると言う訳か」
「まだまだァッ!!」

 ペルは再び、マフラーを伸ばして攻撃を仕掛けた。
二度、三度と振るわれるそれをピッコロは全て紙一重で回避していく。

「すばしっこい奴め……」
「ふん、遅いな」

 ペルの背後から声が聞こえたかと思うと、既にピッコロはそこに立っていた。

「なにぃ!?」

 ペルが振り返るより先に、首筋にピッコロの手刀がギリギリの所で止められていた。

「これが実戦であれば、貴様は今頃死んでいるぞ」
「……降参だ」

 ペルは魔力を鎮めると、そう言って両手を挙げた。

「筋は良い。発想も良い。相当仕込まれたようだが……
その力、貴様自身が望んで得たものではないだろう?」
「…………」

 ピッコロの言葉に、ペルは黙って俯いた。

「私は、とある人間の一部から作られた存在だ。その者を守護するために生まれた。
この力も、すべてはあの子を守るために与えられたものだ」

 ペルフェクタリア。平坂たりあから分かたれたもうひとつの人格。
ペルは、万能の存在たる『神子』としてたりあが覚醒するまで、彼女自身を守る為に
組織の科学者によって人工的に造られたものであった。

 普段はたりあの記憶の番人として深層意識の中で眠りに就いているが戦闘時には
『アンチェイン』の合言葉で封印の鎖から解き放たれ、たりあと入れ代わるようにして
顕現する。並行世界の至るところから収集された戦闘データをフィードバックし、
その精度は研鑽され続けて行った。

 たりあを守るため。ただ、その一心のみで与えられた任務を忠実にこなしていく。
心の無い操り人形。

 やがて、組織と敵対する者たちとの交錯によって己の存在意義と組織の在り方に
疑問を持ち始めたペルは組織の幹部を脱退。
彼女を生み出した組織の頂点『天秤の男』との最終決戦の後、
ペルは「たりあと共に生きたい」と言う初めて
心の底から願った祈りがもたらした奇跡により自らの肉体を得るに至った。

「だが、今は違う。今の私には、自分の意思がある」
「ふむ」

 ピッコロは、ペルフェクタリアに自分の半生を重ねていた。
自分が元々、魔族である事。
神と分かたれた悪の化身、ピッコロ大魔王と呼ばれていた事。
かつて世界征服を目指した事。
そして、ピッコロ大魔王が死の間際に自分を生み出し、
悪の根を絶やすなかれと言う宿命を背負わせて死んでいった事……

 望まぬ力と宿命を生まれながらに課せられてきたペルフェクタリアと、
自らの手で道を切り開いてきたピッコロ。その境遇はどこか似ていた。

「ありがとう。あなたとの組み手はとても参考になった」
「礼には及ばん。俺も、貴様がこれから何処まで伸びるものやら、興味が湧いたんでな。
さて、もうひとりの方と孫の奴はどうなっているか……」

28人目

「悪に落ちる」

「ダイヤモンド・ドッグス、ですか?」
孫悟空達が修練場として選んだ無人島。
そこに接岸しているトゥアハー・デ・ダナンのCIAにて、テッサ艦長はモニターに映るシズマ会長からの言葉に困惑していた。
彼が言うには、今回の作戦においてPMC、即ち民間軍事会社が協力を申し出てきたそうだ。
それは良い、手が足りない現状では戦力増強は純粋に喜べる事ではあった。
だがしかし。
「この作戦の事をどうやって知ったのでしょう?」
本来なら秘匿されている筈の情報が、こうも簡単に漏れている事実をテッサは憂慮する。
エタニティコアの一件は、最重要機密に分類される情報だ。
ウルトラマンと明確に敵対するDr.ヘル等ならまだしも、軍事力を持つとはいえ一概の企業に知れ渡る等は普通ならあり得ない。
ましてや裏社会でも名も知られていない無名の企業ともあれば、その不気味さは増すばかりである。
そんな彼女の憂いも分かっているのか、シズマ会長はそのPMCに所属しているというある写真を転送する。
「この人は…!確かに無視できませんが、何故PMCに?」
それは先の不気味さを覆して余りある、名の知れた男。
一度は悪魔超人として名を馳せ、しかし後に正義超人となった、バッファローマン。
彼が、ダイヤモンド・ドッグスと名乗るメンバーと並んでいる姿だった。

「リボルバー・オセロットだと!?」
ウォーズマン達が狼狽えるのも無理はない、その名に彼は聞き覚えがあった。
「何者だ、彼は?」
「聞いたことがある。嘗てのソ連・アフガン戦争にて、尋問・拷問や戦闘の腕から『シャラシャーシカ』の異名を轟かせた男だ。」
ラーメンマンの疑問に答えるのは、何やら訳有り顔のロビンマスクだ。
「戦争だと?」
「あぁ、彼が拷問を行っていた施設が『シャラシュカ』と呼ばれていた。」
彼の経歴を聞く限り、どう考えてもその手口は残虐極まりないものだ。
そして恐らくは、それ故に彼はソ連、アフガンゲリラ両側から恐れられた存在なのだ。
「そして彼の戦いぶりを見た戦士が『シャシュカ』と呼ばれる刀剣に例えた事が合わさって、『シャラシャーシカ』と呼ばれる様になったそうだ。」
その異名が持ちうるイメージは、畏怖か、恐怖か…いずれにしても、良い物ではない。
「そんな男が…しかし何故、ここに駆け付けてくれたのだ?」
ラーメンマンの問い掛けに対して、ウォーズマンは首を傾げるしかない。
そもそも彼に関しては、名前しか知らない様な間柄であったからだ。
「分からん…だが、味方とあれば頼もしい事この上無いぞ。」
見ろ、と言うロビンマスクの視線の先では、オセロットが戦場を支配する様が繰り広げられていた。
「全隊、構え!頭を狙え、無駄弾は出すなよ?」
特殊部隊と思わしき者達が、彼の指示一つで陣形を組む。
その動きに一切の乱れや無駄は無く、彼等の練度の高さが伺える。
「…撃て!」
そして一斉射を放つ度に、傀儡兵を始めとしたモンスター達が、一撃の元に倒れていく。
その光景を見て、ウォーズマンが思わず呟く。
「これが、本物の軍隊か…!」
そう戦慄している間にも、次々と敵は倒されていく。
彼の指示から繰り出される射撃が、ジオン族、モンスター、鬼等の頭部を正確無比に撃ち抜く。
倒れ伏すモンスターが後続の足を否応無しに止めさせられ、それがまた次の犠牲を生む。
白兵戦という戦場は、最早彼等の支配下にあった。
だが、例外はある。
「不味い、奴等だ!」
誰あろう、最初に戦場へと乱入した霧の悪魔、髑髏部隊(スカルズ)だ。
奴等の全身を覆いつくす強靭な装甲は、生半可な攻撃では傷付ける事も出来ない。
故に彼等は銃撃を恐れず、残像すら掻き消す程の速さでオセロットへと迫り来る。
その事に気付いて加勢に向かおうとした時には、既に髑髏はオセロットの懐に迫っていた。
やられる。
そう思った一同だったが、現実は寧ろその逆だった。
「せぇいっ!」
強襲する髑髏の腕を掴み取ったオセロットが、そのままマチェットを奪い取り、片足を回転、横っ腹へとお返しする。
_パパパァ…ァン!
次いで腰のホルダーからリボルバー銃を取り出すと、息を付く間も無く髑髏の頭へと3連射を叩き込む。
一発の銃声にも聞こえる程の速射を叩き込まれ、流石に装甲が砕け散った髑髏。
「でやぁっ!」
その一瞬の動揺を付いて、オセロットが髑髏を後続へと背負い投げ、無力化してみせた。
「今のは、CQCか!?」
今度はブロッケンJr.が驚愕する番だった。
CQC、Close Quarters Combat(至近距離における格闘戦闘術)は軍隊や警察が必ずと言って良いほど習う戦闘術、或いは戦闘状態のことだ。
彼が指すのは前者の戦闘術、それをあの髑髏部隊に『シャラシャーシカ』と呼ばれた男は涼しい顔でやってみせた。
まさに神業。
迫り来る異形の脅威を、一切臆すること無く払いのけてみせたその戦いぶりは、成程、刀剣に例えられるのも当然だろう。
そして、その隙を見逃す彼等ではない。
「撃てっ!」
言うが早いか、オセロットの指示で一瞬の内に浴びせられる集中砲火。
体中から血飛沫の代わりに砕け散った装甲を噴き出し、地を這って身動き一つまともに取れない髑髏部隊。
「撃ち方やめ!トドメは任せた。」
そして、締めを飾るはこの男。
「おう、連続…!」
一歩駆ける度に地を鳴らし、頭の双角を怪しく光らせる1000万パワーのド迫力。
「ハリケーンミキサー!」
バッファローマンのロングホーンが、髑髏部隊を立て続けに宙へと舞わせ。
そして、重力に従い落下した髑髏部隊は纏めて彼のロングホーンへと突き刺さり…
「超人!」
飛び上がった。
上下半身をロックしてそのまま180度回転!
「十字架落としーーーっ!」
決まった、纏めて決まった!
バッファローマンのロングホーンと地面に挟まれた髑髏部隊は、最早これまでと、力無く倒れ伏した!
オセロットとバッファローマンの、完勝であった。

その様子を見ていた竜王軍の幹部、あくまのきし。
彼は斥候としてこの地に赴いていたが、元よりあしゅら男爵等とは敵対の関係。
故にこれ以上の損耗は不要であると、正義超人復活の情報と共に撤退を開始した。

「バッファローマン!」
復活早々大戦果を挙げたバッファローマンへと、ブロッケンJr.達が駆け寄る。
彼等の表情は明るく、皆一様に喜色満面と言った様子だ。
しかしそんな状況下において、バッファローマンは無口だった。
奇妙な違和感を覚えたが、しかし再開の喜びが勝っていた。
「戻ってきてくれたんだな、バッファローマン!」
再開の握手を求めるブロッケンJr.だったが、しかしその違和感は現実のものとなった。
「……」
「お、おい!どこに行くんだ?」
差し出された手を払いのけるかの様にヘリへと向かうバッファローマン。
「サンプルは取れたか?」
「あぁ、角に収まってる。」
オセロットとの短いやり取りをした後、ヘリに乗り込む際に一言、正義超人へと向けて、告げる。
「俺は再び、悪魔超人として戦う事にした。正義超人には戻らん。」
それは正義超人との決別という、衝撃の告白であった。

29人目

「蘇りし、超古代の光」

「なんだと!?」
「どういうことだ!?」
「……そのままの意味だ」
そう言い残しバッファローマンが乗ったヘリはどこかへ飛んでいった
「バッファローマン……」

「チッ……余計な邪魔が入ったがまぁいい……正義超人共が疲弊している今がチャンスだ!いけ!」
あしゅら男爵は残っている機械獣に指示を与える。
『そうはさせないよ!』
「!?」
その声と共にGUTSセレクトのヒマリ隊員が遠隔操縦するガッツファルコンが機械獣を攻撃する。
『お前らの相手は超人達だけじゃねえんだ!』
『そういうことだ!マキシマナースキャノン!発射!』
更にバトルモードに変形したナースデッセイ号がマキシマナースキャノンを放ち、残りの機械獣軍団を一気に殲滅する。
「そ、そんな馬鹿な…!?」

そして、ついに…!
「よし!エネルギーが溜まったぞ!」
「時間がねえ!さっさといくぞ甲児!」
「はい!竜馬さん!
出力最大!光子力…!」
「ゲッター…!」
「「ビィィィィィィィィィ厶ッ!!」」
マジンガーZとゲッターロボ、2体のスーパーロボットが放ったビームが祭壇にセットされたエンシェントスパークレンスへと送られる。
「んんん!はぁああああああ!」
エンシェントスパークレンスへと送られた光子力とゲッター線がライラーの儀式で増幅され遺跡の中、エタニティコアのある場所へと送られる。



遺跡内部
ここではユナが既に待機していた。
(ケンゴ、待ってて……絶対に助けるから…!)
「……っ!来た!」
儀式により増幅されたエネルギーがエタニティコアの中にいるウルトラマントリガーへと注入されていく。
(外に皆がケンゴの為に頑張ってるんだ……私だって…!)
「目覚めて!ケンゴ!」
『………』
「いい加減…目を覚ましなさいよ!マナカケンゴォォォォォォ!!」
『……ウォオオオオオオオオオオオオ!!』
次の瞬間、エタニティコアの中から赤と紫の2つ光と共にマナカ・ケンゴが飛び出してきた。
「っ!ケンゴ!」
ユナはエタニティコアの中から出てきたケンゴを抱える。
「大丈夫!?ケンゴ!」
「ユナ……久しぶり……」
「良かった……ケンゴが消えちゃうんじゃないかと思って……私……」
「……ユナ……スマイル…スマイル…」
「……うん。
おかえり、ケンゴ…!」
「ただいま……ユナ…!」

2年もの時を得て、再開した二人。
そんな二人の邪魔をするように大きな爆発音と共に揺れが起きる。
「っ!ユナ、これはいったい…?」
「……実は、今外で皆が戦っているの。
ケンゴを守るために……」
「皆が僕を守るために……
……わかった。皆が僕を守るために戦ってるのなら、僕も皆を守るために一緒に戦うよ!」
「ケンゴ……わかった。気をつけてね、ケンゴ!」
「うん!」
ケンゴはGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを取り出し、GUTSハイパーキーを起動する。
《ウルトラマントリガー!マルチタイプ!》
次に起動したGUTSハイパーキーをGUTSスパークレンスへとセット
《ブーストアップ!ゼペリオン!》
そしてGUTSスパークレンスをハイパーガンモードからスパークレンスモードへとモードチェンジさせる。
「未来を築く、希望の光!!ウルトラマン!トリガァアアアアアアアアア!!」
ケンゴは叫びと共に、GUTSスパークレンスのトリガーを引いくとケンゴの身体が光に包まれた。
《ウルトラマントリガー!マルチタイプ!》
「デェアッ!」



一方その頃、遺跡の外では
「上手くいったのか…?」
「わからねえ……だが、信じるしかねえな……」

「クッ…おのれ…!こうなれば…!晴明!」
「言われずともわかっておる…!」
晴明はさらなる鬼の軍団を召喚し、あしゅら男爵は追加の機械獣軍団を投入した。
「っ!まだこんなに残ってたのかよ!?」
「あの遺跡はこことエタニティコアのある場所を繋げるゲート……それを破壊さえすれば、やつはエタニティコアのある場所から出ることができなくなる…さぁやれ機械獣軍団!」
あしゅら男爵の命令と共に機械獣軍団が遺跡への一斉攻撃を始めた。
『まずい!あそこを破壊されたら、ケンゴとユナが!』



「デヤッ!」
次の瞬間、遺跡の中から巨人が現れ、
機械獣軍団の攻撃から遺跡を守ったのである。
そして、その巨人とは……
「なに!?」
「あれって…まさか…!」
『……やっと帰ってきたか……ケンゴ!』
そう!2年前、闇の巨人と戦った光の巨人

ウルトラマントリガーである!

30人目

「Epilogue - 老人たちは嗤う -」

――???

 そこは、暗闇だった。
何も見えない。
ただただ深い闇がそこにあるだけ。
音もない。
気配もしない。

『日向家の娘に続き、魔殺少女までもが逃げ果せていたとは……』

 ただ、声だけが聞こえてくる。話しているのは日向月美、
そして新たにCROSS HEROESに加入した魔殺少女・ペルフェクタリアの事だ。

『許せぬ……許せぬ……彼奴らのために我らはこうして
身を潜めねばならなくなったのだ……』

 怨嗟の籠ったような声。
彼らは魔殺少女、ペルフェクタリアが所属していた組織を影で操っていた者たちだ。
ペルを並行世界に攻め込む尖兵として利用し、最後には組織もろとも葬り去られた存在。
それがこの者達の正体である。

「はは、未練タラタラって感じだねぇ、じいさま達」

 その声に対して反応したのは、暗闇の中から現れた青年だった。
黒髪に黒い瞳、黒い外套に身を包んだ少年。そう、禍津星穢である。

『穢よ……我らに仇なした魔殺少女が生きていたとなれば、早急に手を打つ必要がある。
今度こそ確実に息の根を止めておかなければならぬ』

「ふふ……」

 禍津星の言葉を聞いた禍津星は口元を歪める。
それはまるで新しい玩具を見つけた子どものような表情であった。

「ふふ……ふははははは、そいつは楽しいなぁ。
またあの娘と戦うことができるなんてさ! あぁ、楽しみだよ! 
次はどうやって苦しめてやろうか!! 壊してやろうか!!」

 興奮を抑えきれない様子の禍津星。
離反したペルフェクタリアに代わり、老人たちが新たなる手駒として選んだのは
禍津星だった。
彼には世界を滅ぼす事に対する罪悪感など微塵もなく、
むしろ世界を破滅させることが彼の生き甲斐となっているほどだ。

 ペルのように与えられた任務をこなすのではなく、自ら率先して破壊を行う。
そこに躊躇はなく、まして疑問を抱くことなどあり得ない。
だからこそ彼は誰よりも残酷であり、冷酷になれる。

『良いな。必ず魔殺少女を仕留めてくるのだ』
「ああ、任せときなよ」

 老人の声に応えた禍津星は再び闇の中へと消えていく。

『だが、穢のみでは難しいだろう……』
『問題ない。既に『駒』はいくつか集めている……いずれこちらに到着するであろう』

『それに、あの世界は互いに敵対する者同士で今も滅ぼし合っている。
我らは最後のひと押しを加えてやれば良いのだ』

 闇の中で交わされるのは密談。
そして、最後に残るのは静寂のみ。