プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:8

86 いいね
完結済
3000文字以下 30人リレー
1年前 1430回閲覧
  • CROSS HEROES reUNION
  • TwitterタグはCROSS_HEROES_re
  • 参加コード限定
  • 二次創作
1人目

「Prologue」

 CROSS HEROES対クォーツァー・アマルガム連合軍の戦いは熾烈を極めた。
そんな中に一石を投じたのは、遥か遠い未来の世界に君臨していた筈の魔王、
やがて常磐ソウゴが至る存在……オーマジオウだった。

 GUTSセレクトに出向していた兜甲児と流竜馬は、2年前にウルトラマントリガーこと、マナカ・ケンゴがその身を捧げて安定化させたエタニティコアが
再び活性化し始めている事を知る。
超古代の遺跡に侵入していたライター達の仕業によって怪獣たちが目覚め、
頻繁に出現するようになった原因が、これだ。
GUTSセレクト、マジンガーZ、ゲッターロボはエタニティコアの防衛へと向かう。

 CROSS HEROES本隊と別行動を取り、試作型神精樹の破壊任務に向かった
孫悟空、テリーマン、モンキー・D・ルフィ、
そして助っ人の天津飯らの前に立ち塞がるターレス。
本来、神々しか食す事が許されないと言われる神精樹の実を悪用するターレスに対し、
激しい怒りを伴って乱入する完璧超人、ストロング・ザ・武道。テリーマンは
武道からキン肉マンが地球に帰還し、今は遥けき認知世界で戦っている事を聞かされる。

 正義超人たちの友情パワー根絶を掲げるストロング・ザ・武道と
テリーマンの壮絶な戦い。
歴戦の勇者であるテリーマンであったが、武道の強さは想像を遥かに超えており、
まるで歯が立たない。先んじて武道に挑んでいった悪魔超人たち……
アシュラマン、プラネットマン、ブラックホールを一度に相手取って
今なお健在である事からも、その実力の高さは疑いようもなかった。

 その一方でターレスと戦う悟空も苦戦を余儀なくされていた。神精樹の実を食べ続け、
驚異的な力を得たターレスの戦闘力は、既に以前のそれを大きく上回っていた。
一気に勝負を着けようとするターレスに対し、悟空は伝説の超サイヤ人に変身して
形勢を逆転。トドメを刺そうとするが、そこへスラッグが乱入するなり、
ターレスを助け出して撤退していく。
神精樹の恩恵に頼らず、破壊すると宣言した悟空の姿勢に免じて、
ストロング・ザ・武道も身を引いていった。

 日向月美の世界を破壊したと言う男・禍津星穢を追って現れたのは、
魔殺少女ペルフェクタリア。彼女もまた、自分の世界を穢によって滅ぼされた
復讐者だったのだ。穢の能力を見破り、追い詰めていくペルフェクタリアだったが、
あと一歩と言うところで取り逃がしてしまう。

 さらに、クォーツァーの幹部らを蹴散らすオーマジオウを地に沈めた謎の戦士。
混沌とした戦場の中、ついに宿命の戦い……相良宗介とガウルンの因縁にも
決着の時が訪れる……。
ガウルンのコダールi、宗介のレーバテイン、2機のASが織り成す最後の決闘を制したのは、
ラムダ・ドライバの性能を解放した宗介であった。

 数々の波乱に満ちながらも、激闘を勝ち抜いたCROSS HEROES。
休む間も無く、エタニティコア防衛に向かった甲児たちの応援へと向かう。

 ターレスが植えた神精樹はひとつではなかった。竜王の所有する聖杯から溢れ出る魔力。
そして次々に特異点へと引き寄せられる並行世界からの物質などを取り込み、
試作型神精樹とは比べ物にならない急成長を遂げていた。
それは月の裏側・ムーンセルにまで枝葉を伸ばそうとしている程であり、
事態を重く見たBBは、藤丸立香や門矢士らをカルデアへと送り届け、
神精樹を伐採するべく行動を開始した。

 密やかにジェナ・エンジェルと接触する、キャスター改めアルターエゴ・リンボ。
未だ囚われの身の魔法少女、十咎ももこ。
特異点の中心、聖なる完璧の山にて大聖杯と共に神精樹の成長を注視する丸喜拓人。
それぞれの思惑を持って、次なる一手を打とうとする者たち。

 世界を隔てる壁の向こうでそのような事が起きているなど知る由もなく、
リ・ユニオン・スクエアではエタニティコアの防衛任務についていたマジンガーZたちは、迫り来る敵を迎え撃つ。
現れたのは、安倍晴明とあしゅら男爵……CROSS HEROESと同じく、
並行世界からの来訪者を味方につけたDr.ヘルの軍勢であった。

 機械獣や鬼たちがマジンガーZたちに襲い掛かる中、安倍晴明の呪術によって
遺跡の周囲を覆い隠す黒い瘴気の霧にて、マジンガーZやゲッターロボ達を
孤立させようと言う作戦に出る。
しかし、闇を打ち払う太陽の光が如く天より降臨する男、その名は闘将・ラーメンマン。
否、彼だけではない。
ブロッケンJr、ウルフマン、ウォーズマン、ジェロニモ、ロビンマスク……
度重なる戦いで長い療養期間に入っていたはずの正義超人軍団が一挙集結したのだ。

 加えて、CROSS HEROESからの援軍……
テリーマン、ルフィ、騎士ガンダム、騎士アレックスも加わり、
圧倒的な戦力差となった事で、Dr.ヘルの策は水泡に帰し、逆に追い詰められていく。
そんな中、突如として現れた新たなる刺客、
完璧・無量大数軍「完裂」マックス・ラジアル、あしゅら男爵と双璧を成す
Dr.ヘルの腹心・ブロッケン伯爵が現れ、さらには謎の軍勢・髑髏部隊(スカルズ)までもが
介入してくる。

 ブロッケンJrとウォーズマンのコンビによってブロッケン伯爵が指揮する
飛行要塞グールは航行不能に追い込まれ、
完璧超人マックス・ラジアルの何者をも粉砕・蹂躙する突破力の前にテリーマンは
重傷を負いながらも、ウルフマン、ルフィとの共闘により辛うじて退けたものの、
テリーマンはついに力尽きて倒れてしまう。

 ラーメンマンの蹴撃を受け止め、ウォーズマンのベアクローを腐食させ、
倒れた鬼達の死骸に寄生して傀儡兵として使役する髑髏部隊に大苦戦を強いられていた
その時、第三勢力――1000万パワーを誇る悪魔超人、
「荒れ狂う猛牛」バッファローマンと先の大戦にて「シャラシャーシカ」の異名を以って
恐れられたリボルバー・オセロットがその姿を現す。

 そして、いつ終わるとも知れないエタニティコア防衛戦の終幕を告げたのは、
光の中より蘇りし巨人――ウルトラマントリガーの復活であった……

2人目

「Ready to pull the Trigger/二人の魔王」

「スッゲー!」
「テリーマン殿、もしやあの巨人が?」
「あぁ、ウルトラマントリガー……俺たちの仲間だ!」

「………」
トリガーは両腕を前に突き出し、交差させてから大きく横に広げてエネルギーを溜める。
「デヤッ!」
そして両手をL字に構えて、溜めたエネルギーを光線にして放つ必殺技『ゼペリオン光線』を放ち、機械獣軍団と鬼の軍団をまとめて殲滅する。
「うぉ!?ば、馬鹿な…!?」
(この力……なるほど、あの光の巨人も…!)
「あしゅら殿、作戦が失敗した以上、ここは一旦引いたほうがよろしいかと」
「クッ…!」
あしゅら男爵と晴明はどこかへ消えていった。

「竜馬さん、追いかけなくていいんですか?」
「なに、ヤツがヘルとかいうやつと手を組んでいることがわかったからな。それにヤツのことだ、また現れるだろうぜ」
(その時が来るまでに、ゲッターの調子を少しでも良くしておかねえとな……)

「………」
ウルトラマントリガーは光の粒子に包まれていき、マナカ・ケンゴの姿へと戻るとそのままバタリと倒れてしまった。
「ケンゴ!?」



話は変わって、特異点の固定化が行われる数時間も前まで遡る。
ここはムーア界、バーサル騎士ガンダム達が向かっていた世界であり、ジオンの本拠地である。

「ジークジオン様、あなたに会いたいと申される方が来られました」
「ほう……いいだろう。連れてこい」
「ハッ!」
彼は闇の皇帝ジークジオン、ジオン族の皇帝でありバーサル騎士ガンダム達が倒さないといけない最大の敵である。
「ジークジオン様、お連れしました」
「初めましてジークジオン、我が名は竜王。
このムーア界ともスダドアカワールドとも違う別の世界における、王の中の王だ」
「ほう、別の世界の魔王か……ん?」
ジークジオンは竜王が後ろに連れてるモンスター達を見て何かに気づく。
「そのモンスター共……そうか。貴様、ゾーマの世界の…!」
「ほう、ゾーマのことを知っておったか……」
「……そういう貴様も、知っておったからこそ我のところへ来たのだろう?」
「そうだ、ゾーマはかつて、別の世界の魔王である貴様と手を組み、オリュンポスを始めとした神々や今で言う超古代文明などを相手に全ての並行世界もとい並行宇宙の覇権をかけた戦いをしていたらしいじゃないか」
「そのとおりだ。しかし、ゾーマはたった一人の人間、『ロト』によって滅ぼされ、我もガンダム族の手によって長い間封印された」
「なるほど、スダ・ドアカワールドを支配しようとしてるのはそのガンダム族を警戒してのことか」
「あぁ、やつらがまた我を封印しに来てもおかしくはないからな。
……さて、わざわざここに来たのはこんな話を聞くためではないだろう?さっさと用件を言え」
「そうだな……ジークジオンよ。我と手を組まないか?」
「ほう……この我と手を組みたいか……目的はなんだ?」
「無論、かつての貴様やゾーマと同じ、全ての並行世界、もとい並行宇宙の支配だ。
その為に同じような目的を持つショッカー、丸喜、完璧超人などとも既に手を組んでおり、更には聖杯までもを手に入れておる。
だがそれでも足りぬ。私の野望の邪魔になる障害がまだまだ多すぎる……そこで、我々と同じ目的を持ち、かつてゾーマと手を組み神々を相手に戦うほどの力を持つ貴様にも協力してほしいのだよ」
「ふん……いいだろう、どうせスダ・ドアカワールドを支配したあとは再び全ての世界を支配するつもりでいたからな。貴様の考えに乗ってやろう竜王よ」
「感謝するぞ、闇の皇帝ジークジオンよ」

3人目

「無限侵食領域・神精樹」 

 特異点の大地に植え付けられた神精樹は瞬く間に急成長を遂げ、
月のムーンセルにまでその根を伸ばした。

「皆、集まったね」

カルデアの司令室に一同が集合する。ダ・ヴィンチは一瞥すると口を開いた。

「今回の一件は、カルデア始まって以来の大事件だ。
一刻も早くあの大樹を切除しなければこの地球は……いや、人類史は終わるだろう」

「……」
「……」

 誰もが押し黙る中、ダ・ヴィンチは続ける。

「カルデアの総力を結集し、あの大樹を破壊する。
それに当たり、いくつかのチームを編成して行動する事になる」

 作戦はこうだ。今なお成長を続ける枝葉の侵攻を食い止めるため、
まずはサーヴァント達で編成された部隊が動く。
さらに、神精樹周辺の地表への調査部隊の派遣、
聖杯回収にはディケイドや藤丸立香を中心としたチームで当たる。
そもそも、神精樹は藤丸たちが攻略するはずであった特異点から伸びたものだ。
一度は攻略に失敗した特異点に再び挑むのである。

 恐らく、あの時よりもさらに状況は混沌としたものになっているであろう事は
容易に想像がつく。しかし、それでも彼らは行くしかないのだ。

「サーヴァントは宇宙空間でも活動できるのか?」

 士が尋ねる。神精樹は宙に存在するあらゆる物質を吸収しながら
現在も際限なく枝葉を伸ばし、急速に成長しているのだ。
そのため、あの大樹を攻略するには宇宙空間での戦闘も考慮しなければならない。

「サーヴァントは霊核さえ無事ならある程度の環境には耐えられるよ。
万一の時にはすぐにカルデアへ帰還できるよう準備をしておくさ」

 神精樹の侵攻阻止を担うチームはコフィンにて直接宇宙空間へと射出される。
マスターからの魔力供給が無いため、本来の力を発揮することはできないものの、
物量による圧倒は不可能ではないはずだ。

「みんな、無理はしないで」

 立香は祈るように言った。

「そいつはこっちのセリフだぜ、マスターよ。
お前さん達の方だって楽な仕事じゃねえんだ」

 ランサー、クー・フーリンが言う。彼の言葉通り、今回の作戦ではマスターである
藤丸立香たちも前線に立つことになる。
神精樹本体への攻撃はディケイド達が担うとはいえ、
彼らの援護や戦況の確認などサポートに回らなければならない。
何より、特異点の修復という目的を果たすためには神精樹の殲滅も
重要なミッションとなる。

「よし、早速だが作戦開始だ! 各自、持ち場につくように!」

 ダ・ヴィンチの言葉を受け、各々が行動を開始する。

「まずは先発隊、コフィン射出! 続いて後発隊の転送準備に取り掛かれ!!」



『―――以上が現時点で判明している情報です』

 管制室のメインモニターには大樹の周辺状況が表示されていた。
現地の調査部隊から送られてきた映像だ。

「うわあ、これはまた随分と……」
「ああ、もはや一種の生態系と言ってもいいだろう」

 大樹の周りはまるで植物のジャングルのように生い茂っていた。
あらゆる世界から特異点に呼び寄せられた建造物などが神精樹の根に飲み込まれ、
隙間から見え隠れしていた。
藤丸達が以前に訪れた時とはまるで別世界のように変わり果てた風景……

「この様子だと、もうすでに地上部にもかなり侵食が進んでいるみたいですね」

 マシュが呟く。彼女の見立てによると大樹の幹はすでに特異点全土を覆っているらしい。

「特異点には、私達が立ち寄った宿屋などもありました……
まだ人が住んでいる場所も残っているのでしょうか……」
「うん、そうだね。可能性はある。その人達のためにも早く何とかしないと」
「兎にも角にも情報が必要だ。そのために、
神精樹周辺にもサーヴァントたちを調査隊として派遣する」

『――こちらB班。異常無し。引き続き探索を続ける』
『C班、異常なし。周辺の安全を確保しつつ、他の班と合流を目指す』

「どうだい? 何か新しい発見はあるかい?」

『それが、奇妙なものが一つだけ見つかりまして……』

 通信相手の声の主は、少し言い淀んでいるようだった。

「奇妙ってどういう事かな?」
『えっと……見たところ、ただの木の実みたいなんですけど、
なんか変なものが生えてるんですよ。
多分、この木が成長したものだと思うんですが……あれ?』

「どうした?」

『おやおや、何者かは知らんが、神精樹の実を掠め取ろうとはいい度胸じゃないか』
『!?』

 C班のサーヴァントが何者かと接触するなり、通信モニターがノイズまみれになった。

『なんだこいつは!』
「おい、大丈夫か!」

「……通信途絶。どうやら、大樹の周辺には敵対勢力と思われる者たちも
蠢いているようだ」
「特異点にはクォーツァーも一枚噛んでいた。奴らが未だに特異点の内部に
陣取っているとすれば、そいつらがこの騒ぎを引き起こしたと見て間違いないだろう。
急ぐべきだ」

「そうだね。大樹の中心部に直接乗り込むのはリスクが伴う。
比較的安全と思われるポイントに君たちをレイシフトさせよう。
先駆けて現地に向かっているサーヴァント達と連携を取って、事に当たってくれ」

「了解です、ダ・ヴィンチちゃん!」
「行こう、マシュ、士さん!」
「宗介とかなめともはぐれたっきりだしな……上手く生き延びていればいいが」

 かくして、藤丸立香、マシュ・キリエライト、門矢士は今、
再びのレイシフトを敢行するのであった……一方、その頃……

「はあー……間近で見るとでっかいわねぇ……何なのかしらこの樹……」
「さあな。ぶった斬り甲斐は申し分無ェだろうが……」

「ね、どっちが先にアレを切り倒せるか勝負しない?
負けた方が今夜のお酒奢りってのはどう?」
「面白ェ。一丁、派手にやるとするか……」

 無頼の剣豪たちの刃の煌めきが、冴え渡る。

4人目

「ありえざる復讐者」

 特異点、神精樹の樹があるエリア、その少し遠い場所にて。
 その周囲には村……だった廃墟が連なっている。それもつい最近破壊されていたようで、まだ硝煙や火薬の匂いが立ち込めている。

 その中を、顔が見えない2人の男女が神精樹の方向へと歩いていく。

「ったく、こんなところに目的の『ブツ』はあんのか?嘘ついたら内臓抉るからな。」
「……少しは静かにしろアヴェンジャー、言わずともモノはある。それより、ここは敵に気づかれたら我らでも死にかねない領域だ。」
「はいはい、わかったよサイクス。」

 一方はサイクス、と名乗る青い髪にX字状の傷が特徴の冷静な男。黒いコートを着ている上に頭までフードをかぶっているため素顔は見えない。
 その正体は心なき者、ノーバディ。死者の強い心が肉体を得たものにして、虚無なる者。ⅩⅢ機関のNo.7「月に舞う魔人」の肩書を持つ男。

 もう一方は緑のパーカーのフードで頭を隠している、粗暴な口調の女。その名はアヴェンジャーと呼ばれているが、本当の名前かは不明。

 どちらも、一目で「強い奴」というのが伺える。

 パチッ パチッ

「んぁ?ライターの火が切れたな。チクショー、マッチでも買ってくればよかったかなぁ。あーあ。あいつらからかすめ取ればよかった。」
「奴らがライターを持っているわけないだろう。それより、戦場の真っただ中にタバコなんか持ってくるな。」

 ちぇっ。と女の方は舌打ちをする。その時

「なんだ貴様ら?」「何の用だ?」「すぐに立ち去れ!」

 クォーツァー・アマルガム連合軍の兵士3名が、2人の前に立ちはだかる。
 しかし、当の2人は何食わぬ顔で言い放つ。

「どけ。あたしらはこの先に用があるんだ。そのなんだ、シンセシスの実ってやつに用があるんだよ。」
「神精樹の実な。」

 兵士は冷たく返す。

「ダメだ、すぐに立ち退け。そうすれば今ならば見逃してやる。」

 そうしていると、兵士のうちの1人が退屈だったのかタバコにライターで火をつけ始めた。そうして、タバコをふかし始める。

「できると思うか?我らはこの先に用があるんだ。大体、この周辺の村を破壊しつくしたのは、お前らか?」

 周囲の村の凄惨な破壊は、どうやら連合軍の兵士によるものだった。大半は今はいないようだが、どうやら見張り番として数名残っていたようだ。

「ああそうだ。それがどうした?」

 村の破壊と村人の死をあざける兵士3人。
 緑衣の女は、その嘲笑を聞いて、言い返す。

「……ほーん、この村を破壊し村人を鏖殺したのはあんたらという解釈でいいんだな?よくわかったよ。……サイクス?殺ってもいいか?」

 殺意を抱いた声でサイクスに問う。

「……好きにしろ。俺は先に行く。」
「お、おい貴様!待て!止まれ!」

 兵士3人はサイクスを追おうとするも。

「どこへ行くんだい?あ゛?」

 ブチッ!

~3分後~
「……ちっ、ライター壊れちまった。こりゃあ帰るまでタバコはお預けか。」
「仕方ないだろう。攻撃の余波でライターを破壊したのは、お前だ。……それで、全員やったのか?」
「ああ、殺った。」

 そのパーカーの袖は血に濡れ、その背後には連合軍兵士だった何かが転がっていた。

「……全く、どこが『抑止の復讐者』なんだ?罪木蜜柑。いや、『罪木蜜柑・オルタ』というべきか?」

 サイクスの嫌味に対し、ふんと鼻でつまんなさそうに笑い、おもむろに彼女は緑色のフードを外す。
 燃え尽きた灰のように白いざんばらな髪、充血したかのような赤い両眼が、そこにはあった。

 ___罪木蜜柑、正史では「超高校級の保健委員」の肩書を持つ、「抑止力の復讐者」を自称する女。それがアヴェンジャーの正体だった。

「るせぇ。反転した復讐者も辛いんだよノーバディ。」

 ぐちぐち言いつつ、先へと進んでいく。

「ん?あそこに誰かいるな。……敵かどうかは、話さないとわからないか。今度は穏便に頼むぞ罪木蜜柑。」
「へいへい。」

 サイクスと罪木は、剣豪2名の元へと向かう。
 ___月に舞う魔人とありえざる復讐者。彼らの目的は依然不明だ。

5人目

「海賊狩りと二天一流」 

 特異点全土にその勢力を広げつつある神精樹を巡り、各地に集結しつつある戦士たち。
その中の一勢。

「ふッ!!」

 見目麗しい銀髪慧眼。雅なる着物姿の女剣士。抜刀するは二刀流。

「切り返せるかッ!!」

 十字に重ねた刃を、大上段から振り下ろす。

「グギャアアアッ!!」

 一刀繚乱。鮮やかなり、その太刀筋。
斬撃は一撃で巨獣の体を両断し、返す刃がもう一体を切り伏せる。

「お見事」
「なあに、これしき」

 賞賛の声を受け流し、女剣士は笑う。

「三刀流……!!」

 その男は、両腕のみならず、口元に三振り目の剣を咥えていた。

「鬼! 斬りいいいいいいいいいいッ!!」

 両腕の二刀流を振り抜きながら突進、さらに口に咥えた三刀目を突き出して
モンスターの群れをひとまとめに吹き飛ばす。

「グアアアアアアアアアアアアッ……!!」
「む……」

 そこへ、別のモンスターの群れが飛び込んでくる。

「シャアアアアッ!!」
「むん!」

 しかし男はこれを難なく捌き切る。

「三刀流――刀狼流し!!」

 敵の攻撃を流麗なる動きで受け流すと同時に、両手両足の三カ所へ同時に
斬撃を叩き込む。まるで舞のような戦いぶりであった。

「ギャアアアアッ……!!」

 数瞬遅れて、攻撃したはずの巨獣の身体のあちこちから血煙が上がる。

「なんとまあ……」

 その華麗なる戦いぶりに感嘆の声を上げつつも、女剣士もまた負けてはいなかった。

「せやあっ!!」

 舞い踊るように振るわれる二本の刃。それが縦横無尽に駆け巡り、敵を刻んでいく。

「ガアアアアッ……」

 まるで天然の橋のように垂れ下がった神精樹の根から、次々と巨獣達が落下していく。

「ふう、すっかり化け物達の棲み家になっちゃってるわね、ここも」

 神精樹の中枢は、常人が足を踏み入れる事の出来ない魔境となっていた。
周囲に敵の気配が消えた所で、一息ついて呟く女剣士。
その名は武蔵。真名を新免武蔵守藤原玄信と言うが、本人は「長いので」
普段は宮本武蔵の名で通っている。

 宮本武蔵と言えば、日本史上最も有名な人物の一人だ。
剣豪・佐々木小次郎との決闘において巌流島の大巌流島にて繰り広げた死闘が有名だが、 それ以外にも数多くの逸話を持つ。
例えば彼の代名詞とも言える『五輪の書』などは、剣術指南書としてだけでなく、
兵法指南書としても名高い。

 また、彼自身は武芸者としてだけではなく、優れた文人でもあり、
和歌・連歌なども得意としたという。
が、ここにいる「彼女」は、紛れもなく女性である。それでありながらも、
彼女の実力は本物であり、その武勇はまさに天下無双と言えるものであった。

「それにしても、妙な事になってきたものよね」

 そう言って、彼女は空を見上げる。

「まさかこんな事になろうとは……」

 空を覆い尽くさんばかりに広がった枝葉を見て、ため息をつく。

「奥に行けば行くほど、バケモノ共の数も増えてくるみてえだな」

 そんな武蔵と行動を共にするのは、「海賊狩り」ロロノア・ゾロ。
あのモンキー・D・ルフィの右腕として麦わら海賊団に加わっている剣士だ。
彼もまた、ルフィと同じく元いた世界からこの特異点に迷い込んでしまった
人間の一人である。極度の方向音痴である彼は、
右も左も分からぬまま彷徨っている所に武蔵と出くわし、意気投合して行動を
共にするようになったのだ。
 
 何の因果か、本人の意志に関わらず様々な世界を飛び越え、
流浪の旅を続ける宿業を背負った武蔵であったが、これほどに混沌とした世界は
今までにも類を見ないものだった。
ゾロと共にモンスターを倒しながら路銀を稼ぎ、酒をかっ食らう
その日暮らしを続けてきたが数日前に突如出現したこの神精樹のために、
特異点はいよいよ以って終末の様相を呈してきた。

「私も色んな剣士と手合わせしてきたけど……三刀流なんて初めて見たわよ」
「お前さんだって、俺が会って来た中じゃ上から数えた方が早い腕前だろうが」
「あら、一番じゃないんだ?」
「そりゃあそうだろ。こちとら伊達に「世界一の大剣豪」を目指してねえぜ」

 自慢げに語るゾロであったが、その言葉にはある種の説得力があった。
実際、彼が今まで出会ってきた剣士達の中には、
確かに凄まじい技量を持った者が多かった。
中でも特に印象に残っているのが、王下七武海が一人、
「鷹の目のミホーク」という男だった。

 かの男は、修行中の身であったゾロを短刀一本で打ち負かした程の使い手で、
巨大なガレオン船を愛刀の一振りにて真っ二つにしたという逸話がある。
そして何より、ゾロがこれまで出会った中で最強の剣士でもあった。

「さあて、先に進みましょっか。次は鬼が出るやら、蛇が出るやら」
「立ち塞がるモンは、何であれ片っ端からぶった斬るまでの事よ」

 たったふたりの剣豪が、百鬼夜行を駆け抜ける。

6人目

「均衡の守護者」

 ___抑止力、集合意識、星の悲鳴、因果応報、自業自得。
 世界、或いはそこに住む生物が絶滅の危機に陥った時に発動する、見えない防衛機構。あらゆる世界が平等に持つ、世界の安全装置。

 それは、今回のような複数の世界を巻き込んだ破滅が起こりうる事象下でも起動する。

 「均衡の修正力」によって召喚される、その根源たり得る存在の完全破壊、及び殺害を目的とした存在。
 世界間の破壊を防ぎ、そのひずみを正す者。

 それらは「均衡の守護者(ニュートラル・ガーディアン)」と呼ばれる。今回の連合軍の侵略によって複数の世界が攻め込まれ、このままでは完全に崩壊する状況に陥ってしまう。崩壊を恐れた世界の数々は修正力を使い守護者を召喚した。

 ___それこそが「罪木蜜柑・オルタ」と「サイクス」の両名である。

~特異点~

「ん?あそこに誰かいるな。……敵かどうかは、話さないとわからないか。今度は穏便に頼むぞ罪木。」
「へいへい。わーったよサイクス。」

 2人は、現在進行形で戦闘を行っている剣豪2名___宮本武蔵とゾロの元へ向かう。その時、罪木オルタが持つ端末から連絡のアラームが鳴る。

「ほい。おう、今なぁ人2名見つけたから協力を仰いでみる。無理そうだったらごめんな。え?わーったよ。ついでに買ってくるからな。んじゃ。……全く、状況考えろってんだあの毒舌舞踊家!!」

 電話を切り、歯ぎしりしながら戦線へと向かう。

 電話から2分後、戦線を駆け抜ける2名の元に2人は到着した。

「おーい、お宅ら何してんだ?……というよりなんだ、敵?味方?どっちだ?味方だと言ってほしーなー。味方だったら手伝うからさー。にししっ。」
 白髪赤目の復讐者、罪木オルタがぶっきらぼうに話しかける。

「まぁ、敵だというなら容赦はしないが。」
 サイクスは、2人と戦うことを想定してか、右手に青色の大剣「クレイモア」を装備する。

 ___最も、傍から見れば臨戦態勢にしか見えない風貌なのだが。

7人目

「父との追憶の日々・悟空対月美!」

 ところ変わってリ・ユニオン・スクエアのCROSS HEROES本隊。
無人島でのピッコロとの組み手によって己が目指すべき道に気づけた魔殺少女、
ペルフェクタリア。
一方で孫悟空と退魔師・日向月美もまた、実戦さながらの修行を行っていた。

(相手はあの悟空さん……油断はできない)

「うっし、いっちょかかって来い、月美!」
「行きます!!」

 構えたままの悟空に対して、月美も神刀「星羅」を構えて突進する。

「たああああああッ!!」
「おぉっと!?」

 振り下ろした斬撃を、悟空は体をひねって回避すると、回し蹴りを放つ。
その一撃を回避した直後、今度は月美の方から仕掛ける。

「せぇいッ!!」
「よっと! へへっ、なかなかやるじゃねぇか!」

 攻撃後の隙を狙って放った横薙ぎの一閃も、悟空はバックステップで回避して見せる。
その後も、二人は息をつく暇もなく激しい攻防を繰り広げていく。

「彦星! 織姫!!」

 2対の神器を召喚し、さらに自身の霊力を上乗せさせた彦星と織姫を射出する。
飛翔する彦星、織姫、さらに星羅を振るう月美自身による立体的な連携攻撃。

「ほう……左、右、正面からの同時攻撃か……」

 2人の戦いを見学するピッコロとペル。

「これなら……! ふっ!! やああああッ!!」
「ははっ、やるじゃねえか、月美! オラも負けちゃいられねぇな!!」

 そう言うなり、悟空は両手に気弾を作り出し、飛び交う織姫、彦星に向けて放つ。
放たれた2発の気弾は、まっすぐに彦星と織姫に向かって飛んでいく。

「させません! はぁああああっ!!」

 しかし、それを阻むべく月美が動く。
呪符を取り出し、霊力を込めて宙へと投げつける。

「結界術式―――急如律令!!」

 呪符が発動し、鋭い矢の如き光を宿して2つの気弾を撃ち落とす。

「へえ、すげぇ技だな!」
「まだまだです!!」

 感心しているような声を上げる悟空に対し、月美はさらに攻勢に出る。

「射手の弓、百鬼夜行を打ち払う一矢となりて敵を討たん――急如律令!!」

 再び呪符を発動させる。
月美の周囲で12の呪符が輪を描いて回転を始め、次々に光の矢となってを放たれていく。

「いいぜ! どんどんこい!!」

 無数の光の矢を拳や蹴りで弾き飛ばしつつ、月美の攻撃を全て捌いてみせる悟空。

「はあっ……はあっ……!」
「あの娘もなかなかいいセンスをしているが、あれだけの大技を
休みなく連発しているのだ、スタミナ切れを起こすだろうな」

 肩で息をする月美を見ながら、ピッコロは冷静に分析する。
一方の悟空は、まだ余裕を残しているのか、呼吸一つ乱さずに笑みを浮かべていた。

「無理すんな、月美。今のでおめえが克服するべき弱点が分かったろ。そいつは体力だ。
確かにおめえの術はすげえ。けど、肝心のおめえ自身がバテちまってたら意味ねぇぞ?」
「そうか……今までも私はそうだった……神浜の時も、
街を覆っている結界を破るために力を使い果たして、皆さんに迷惑を……」

 悟空の言葉を聞いて、月美は己の欠点を理解することができた。
禍津星穢にたった一撃で致命傷を与えられてしまった理由……父の仇を前に冷静さを失い、穢に食って掛かった。
霊力の守りも無く、自分自身に直接的な攻撃を喰らってしまったため、
すぐに意識を失ってしまったのだ。

「自分の身を守ることもできないんじゃあ、話にならないからな」

 いつの間にか、承太郎がピッコロとペルの隣に立っていた。

「いつの間に……」
(ほう……俺に気配を悟られずに現れるとは、ただ者ではないようだ)

「俺のスタンドも同様だ。スタンドとは、使い手の精神力によって強度が変わる。
精神力が強ければ強いほど、その力はより強力になる。相手に決して負けないと言う
『確固たる意志』を持って戦うことで、初めて真価を発揮するんだ。
当然、自分自身が戦いについていけないようじゃあ、本領発揮なんてできるはずもない」
「承太郎さん……」

 最強ランクのスタンド、スタープラチナを有する承太郎とて、
本人は至って普通の人間だ。しかし、持ち前の精神力、
そして常軌を逸する強靭なタフネスさを以って果てなしのミラーズに巣食う怪物や
アナザーディケイドと言った数々の強敵達と互角以上に戦い抜いてきた。
そこに彼の本当の強さと言うものが裏打ちされている。

「おめえの霊力っちゅう奴は、てぇしたもんだ。そいつを生かすも殺すも、
使い方次第だと思うぜ。まずは、そいつを常に自分の周りに張り巡らせておけるように
意識を集中することだな。そんでもって、それが出来るように
自分自身も鍛えておかなきゃなんねえ。
それができりゃ、もう一歩先に進むことができるはずだぜ」
「はい!!」

 悟空との組み手で、月美はかつて父・月光から厳しい訓練を課されていた頃の事を
思い出していた。
そして、その厳しさこそが自分の霊力を鍛え上げるために必要なものだったことを。

(お父さん、あの頃は厳しい修行がただただ辛いばかりだったけれど、
今なら分かる気がします)

「悟空さーん! 皆さーん!」

 いろはとソウゴがトゥアハー・デ・ダナンから駆けてくる。

「ん? どうしたんだ、あいつら」
「ウルトラマントリガーが……復活したんだそうです!」
「そっかぁ……テリーマンたち、上手くやったみてぇだな」

 CROSS HEROES分隊が向かった、エタニティコア防衛戦。
数々の波乱を巻き起こしながらも、最後は主な目的であるウルトラマントリガー復活と言う
ミッションを成功させたのである。

「はい! それと、もう一つ……」
「もう一つ?」
「ブルマさんが、騎士ガンダムさんが現れたワームホールの研究をしてて……
まだ小規模のものだそうだけど、別の世界への扉が開けたらしいんだ!」

「ホントかぁ!? はっはぁ、さっすがブルマだ!」
「でも、そしたらワームホールの中から変な人達が現れたみたいで……」

「何ッ!? そいつはまずいんじゃないのか……孫!」
「ああ、瞬間移動でひとっ走り行ってくるか! ええと、ブルマの気、ブルマの気……
いた! 何とかまだ無事みてえだ……」
「俺も行く! ちょっと試してみたいって気がしてたんだ、瞬間移動って奴!」

 すぐさま、瞬間移動しようとする悟空に、ソウゴが咄嗟に飛びついた。
2人は西の都にいるであろうブルマの元へと向かう。

「大丈夫でしょうか、悟空さんとソウゴさん……」
「ワームホールから現れた……悪人じゃなければいいが……
とにかく、孫と常磐ソウゴとやらが上手くやってくれるのを祈るしかあるまい……」

 ワームホールから現れた者たちとは、果たして何者なのだろうか?

8人目

「Hello, world!───SAGA───」


 どうせならば思い切り愉しく、踊り痴れよう時獄篇。
 そう、我こそは辺獄なる世の大日如来なれば!!


 濁った虹彩が左右に蠢く。
 毒色の爪が上下に震える。

 思考。思案。 
 蛆湧く瘴気を漂わせながら、にたにたと。
 喜悦だった。愉悦だった。快楽だった。悦楽だった。
 同盟締結、戦力増強、人員増加。嗚呼、何たる魅力的な囁きか。
 贄はいくらあってもいい。何せ此れより執り行うのは地獄の顕現で、世界の破滅で、塵殺の限りを尽くす大虐殺に他ならないから。
 安部清明では物足りない。あれは憎悪に傾倒している。彼の生み出す地獄は己の因縁を焼き滅ぼすための布石でしかない。
 ドンキホーテ・ドフラミンゴでは物足りない。あれは支配に傾倒している。彼の生み出す地獄はあくまで打算と効率に基づくものだから。あくまで計略の一つでしかないから。
 スウォルツでは物足りない。あれは欲望に傾倒している。彼の生み出す地獄も手段でしかないから。万物が王などという立ち位置へと自らを押し上げる踏み台にしか見えていない。
 Dr.ヘルでは物足りない。あしゅら男爵では物足りない。あれは征服に傾倒している。彼らの生み出す地獄も手段でしかないから。己の兵器を恐怖の伝播にしか用いないから。

 何と、つまらぬ。
 皆々様の司る異能とは何のためにある。精密極まりない古代兵器は?悪魔を宿す糸の苦瓜は?歪み果てた仮面は?鬼を繰る陰陽術は?
 総ては殺戮を愉しむ為にあろうが。何を有頂天になっておられるか。
 と、思いつつも。認める所は確かにある。
 彼らはみな、人心の壊し方を心得てる。如何様すれば諸人は膝を折り、心胆を絶望に染め上げられるのかを理解してる。
 言うなれば、捕食者。防衛策など持たぬ衆生を喰いものとする、力を持った上位者であり侵略者に他ならない。

 ──────だからこそ、見たい。彼ら、悪辣なるものの絶望を。

 アルターエゴ・リンボという悪僧の脳髄を駆け巡る思考はその全てが負のベクトルを向いている。
 如何に生あるものを凌辱出来るか。如何に尊きものを貶められるか。如何に己が愉しくいられるか。
 遍く世を遊戯台として見据える様は稚児の如し。単調な悪意を老獪ですら及ばぬ妄執で振るう。彼こそは快楽主義の極みに他ならない。

 そんな彼にとって、少々反りの合わない同盟者をどの様に扱うかは決まり切っている。己が奸悪なりし同盟者を”英霊剣豪”、それに準じる化生へと転じさせる。これこそがアルターエゴ・リンボがただ一人、描いていた絵図である。
 特異点。下総国。英霊剣豪。嘗て、彼が引き起こした屍山血河の死合舞台を今一度、と企んでいた。
 かの妖術師殿こそおらぬものの、同盟を結んだ彼等へ宿業を埋め込むことなど、リンボにしてみれば赤子の手をひねるようなもの。

 いざ、いざ、──────いざ!英霊剣豪七番勝負、再び!!
 神浜の騒動はそれの前振り、デモンストレーションの一環でしかない。
 ルチフェロなりしサタン様の名の下に、連なる平行世界を文字通りの地獄へと染め上げんと、思案に思案を重ねていた。
 故に。

「さて、返答は如何するつもりだ。アルターエゴ・リンボ」

「お話については承知致しました、女怪殿。拙僧にしても貴殿の語る話は渡りに船。ンン、実に甘美な誘いでしょうとも。元より同じ魂胆(はら)を持つ同士足りうる人物であると拙僧、既に見抜いておりまする」

 喉を鳴らす。放った言葉に偽りはない。
 実際、当初からリンボはジェナ・エンジェルが彼と等しく畜生の類であるのは見破ってる。同盟を組むに足る者であることも、また。
 そうでなければ。

「でなくば、こうして拙僧らの隠れ家へ招き入れる真似はいたすまい。えぇ、ええ!拙僧”は”元からその手を取る腹積もりで御座いますとも」

 そうでなければ。このジェナ・エンジェルをバードス島へと招いてはいない。
 意識を失った娘を引っ提げての奇怪極まりない来訪はリンボの印象にも色濃く残ってる。
 これがかのカルデアに連なる英霊、或いは異界よりの勇士であれば警戒の一つ、いいや即時の迎撃にすら移るところである。
 けれども、ああも辛酸極まる血肉の臭いを漂わせた物の怪もかくやの女怪などそうはお目にかかれまい。
 彼女もまた、胸の裡に良からぬことを抱いていることはリンボとて見抜いている。
 その上で。内部(はら)から食い破られるかもしれない、という危険性を理解した上で、独断にてジェナ・エンジェルを招き入れたのだ。

 何せ、面白そうだったから。丁度、彼女で七騎目でもある。
 己の手駒として英霊剣豪の列に加えるにあたって不足はない。
 もしもこの場で宿業を埋め込み実験体としても。他の同盟者諸氏には『侵入者に襲われたから返り討ちにし、ついでに宿業を埋め込めるかの実験に使った』などと言い訳も立つ。
 
 だから、まあ。

(さて、さて、この来訪者殿は、果たして如何なる手を取るものか………………)

 リンボは、この女を始末することを決めた。
 手を組む、確かにそう思っていた。先程までは。
 誤差修正。方針転換。
 
(ンン、それにしても、あの様は滑稽極まりないもの。”解脱”?笑止極まりない。あれは、どちらかと言えば清明殿と同じ──────)

 思わず、眦が下がってしまう。
 心の裡から漏れ出た笑みは格好の獲物を見定める狩人の眼差しと相違ない。
 眼前に飄々と立つ彼女は、果たしてどのようにしてこうも歪んでしまったのかリンボには推し量れない。
 だが、同じく地獄を夢見る者として、血の臭いと業(カルマ)から読み取れた絶望は、正に極上。
 力なき一人間から堕落したドンキホーテ・ドフラミンゴとはまた違う。彼女こそは正なるもの。真に救済へと身を捧げた清廉潔白さ、推して測るべし。

 故に、第一の英霊剣豪にもってこいの人材であると、決定した。
 
「ええ、ええ。同盟締結、いいでしょう。拙僧に断る理由などありますまい」

 恭しく頭を下げる。
 之にて二者の同盟は相成った。
 されど用心せよ、陰陽の神を宿す喰奴よ。
 決裂の時は既に近い。この男こそは悪性にのみ塗り固められた存在。
 彼女らが勝利に上向き、希望に辿り着く安堵と歓喜に心を委ねる、その寸前の刹那。
 最高のタイミングで横合いから殴りつける、その瞬間に差し込んでくる───そう予測する何某かですら欺いた最悪の瞬間にこそ、悪の華は毒々しく開くのだ。

9人目

「叛逆の種火」

各々の策謀が張り巡らされ、陰謀が、思惑が錯綜する特異点の中心地、聖なる完璧の山。
その最奥地にて鎮座する大聖杯の力により、遍く世界が招来され押し寄せるこの地は、丸喜の計画によって文明世界の万博会場と言っても過言ではない聖地と化する筈であった。
最もそれは本来であれば、というIFの話であり、今やその計画はたった一つの苗木によって破綻しかけている。
苗木と言えど、それは神のみが食する事を許されるという実の成る、神精樹と呼ばれるもの。
星を、世界を糧に成長するという、シンプルながら何よりも強力な特性を持つ、神の種。
その種が持つ力の大きさは、それそのものが天災と変わらない。
星一つを結果的に滅ぼせる力を持つそれは、丸喜の計画における「あらゆる世界をかき集める」という段階と見事なブッキングを果たしてしまい、この世界を苗床に無限に、かつ急速に育っていくという最悪な展開を迎えてしまっていた。
そして今や世界樹は巨大な枝葉を月にまで伸ばし始めており、既に手の施しようがない状況にまでなっている。
最もイレギュラー中のイレギュラーだからこそ起こり得た不幸な事故なのだが、事態の大小はどうでも良かった。
丸喜は語る。
はっきり言おう、甘く見ていたと。
世界を相手取るという行為が引き起こす、その意味を。
最早当初の計画は形骸化しており、特異点に集まった世界を覆いつくす神精樹の根と同様に跡形もない。
であるならば、やる事はただ一つ。
「…何をしている、丸喜。」
特異点中枢に潜む、かつて丸喜パレスであった研究所に戻ってきた武道の言葉に、くたびれた様子の丸喜はやぁ、と一言返すのみ。
その手に握られている物は、他でもない神精樹の実。
武道は今にも怒りが爆発しそうな眼差しを仮面の奥から丸喜へと向け、拳を握りしめている。
当然であろう、先も申した通り、それは神のみが食するの許される果実。
人の手には勿論、超人といった人を超え得る存在にすら手に余るそれは、一端の科学者が口にして良い物では無い。
ましてや同盟仲間がその禁忌に手を出そうとしているのならば、憤りを通り越して失望すらするというものだろう。
それを理解しての行為かと問えば、いやぁ食べるつもりじゃないさという拍子抜けする返答が返ってきた。
その言葉に、武道の中でふつふつと湧き上がっていた失望の感情が、困惑と疑問の二色へと塗り替わっていく。
己を高める為では無いとするならばどう使うというのか、その問答に行きつくのは当然の帰結だった。
「ならば、何故その実を手にしている?」
「武道、これはただ食べればパワーアップするなんていうだけの物ではないんだ。」
丸喜の説に、ほう、と興味を持つ武道が、握り締めた拳を緩め、席に付く。
武道自身、その実に関しては自分の方が詳しいと鷹を括っていただけに、丸喜拓人という科学者の言葉には内心意表を突かれた気持ちだった。
そんな武道の思考を読んだかのように、これは科学者としての見解だけどね、と前置きをして丸喜は続ける。
「世界を糧に成長する神精樹から取れるという事は、内包している物はただのエネルギーじゃない。」
「如何にも、膨大な生命エネルギーの塊だ。」
そこまでは知っているという武道に、そうだねと丸喜は肯定し、更に説明を付け加える。
「僕はこれを、聖杯にくべる魔力とする。」
「_貴様、それは。」
それは即ち、神精樹そのものは放置するという事に他ならない。
ともすれば、神精樹を植えた下手人の目論見通りになりかねないプランだ。
いや、寧ろそうなる確率の方が高いと見積もるのが妥当とさえ言える。
よもやかの下手人の側に付いたのか、と勘ぐっても不思議ではない。
故に問いたださねばならないと武道は立ち上がり、竹刀を丸喜の喉元へ向けて構える。
「丸喜、今一度問う。その力、何に使うつもりだ?」
答えによっては今ここで斬って捨てると言外に含ませる武道の眼には、一切の虚言や妄言を許さぬという意思があった。
だが対して丸喜は静かに、しかし確固とした態度で答える。
「僕の目的は変わらないよ。不甲斐無い『現実』を変えて、誰もが笑って暮らせるような理想の『現実』を作る。その為なら手段は選ばない。この身にどれだけの罪業を背負おうとも。」
その目に一点の曇りはなく、その言葉に一切の嘘はない。
己が掲げた正義を叶えるために、それ以外の己の全てを切り捨て、どの様な過程を経ても、最後には救済を実現させる。
武道が嘗て憧れ焦がれ、目標としていた姿。
人を人としていられずにする禁断の果実(ちから)を手にして尚、彼の眼には変わらぬ正義が。
力に溺れ振り回される事の無い、名代の救世主の姿が、そこにはあった。
そう確信した瞬間、武道の心中に渦巻いていた疑念は消え去り、残ったのはただ純粋な敬意だけ。
武道は姿勢を正すと、深々と頭を下げた。
「え、ぶっ武道…?」
それは最も高潔な者への最上の礼儀であり、その心中を疑った己への罪科の現れ。
「すまなかった、丸喜。先の非礼を詫びよう。」
武道の謝罪に丸喜は面食らっていたが、やがて嬉し気に微笑むと、 いいんだよ、と武道に席に着くように促す。
それを受けて席に着いた武道は丸喜に向き直り、その目を見据える。
_もっと前に、斯様な者と出会えていれば、超人という種に絶望せずに…
ふと胸中に湧いた雑念を振り払って、武道は再び立ち上がる。
「では、私がやる事は一つだな?」
「うん、特異点中にある実を集めてくれ。僕はそれを聖杯に使って、世界を作り直す。」
「相分かった、貴様の理想が叶う日を待ちわびているぞ。グロロ~…」
かくしてここに絶対の締結が決まる。
互いの腹の内を探り合う仲のショッカーや、得体の知れない竜王、ジークジオンでもない。
武道と丸喜、二人の同盟は不可逆の物と相成ったのだ。

10人目

「怒りの王子の全力全開! どーなってるのこのセカイ!?」

 悟空とソウゴが瞬間移動してくるおよそ数分前……
ブルマはカプセルコーポレーションのラボにて、
小規模のワームホールを発生させる装置を組み立てていた。

「よし、できたわ!」

 ブルマは両手で抱えられるくらいの小さな機械を持って、研究室から出てきた。

「さっすがあたしね。天才だわぁ~♪」

 自画自賛するブルマは早速新発明の性能を試そうと、実験場へ向かう。

「さあて、どんなもんかしら? ふふん……」

 そして、ブルマは装置に指を入れ、スイッチを入れた。

「やった! ワームホール発生成功よ!」

 ブルマは歓喜の声を上げながら、小躍りする。すると、数秒後……
突然、目の前の空間がグニャリと歪み始め、その先に人影らしきものが見えた。

「え? だ、誰かがこっちに来た!?」

 しかも、ひとりではない。2人、3人……およそ人間とは思えないシルエットをした者が次々と現れる。ブルマはその光景を見て驚愕した。

「ぎょえええええ~~~っ………!!」
「!?」

 突然の叫び声を聞き、現れた者達も驚く。

「わっ、ビックリした……って、ここは何トピアなんだろ……」

 センターに立っていた少年は辺りを見回しながら呟く。
どうやら、彼だけは他の者と違い、地球人の姿形に近いようだ。

「おっ、人間ちゅわんじゃ~ん。はじめまして、僕は……」
「ぎゃああああ~~~っ!! ば、バケモノォ~ッ!!」

「ぬ!? バケモノとは失礼しちゃうっす~っ!!」
「まあ、ぶっちゃけ俺らの姿を初めて見たらこうなるのが普通じゃね? 
単に向こうの人間界の連中が異常に適応力が高すぎたっつうか……」
「それにしても興味深い機械が溢れていますね、ここは! 
んん~っ、実に好奇心がブルンブルンしてきましたよぉ~っ!!」

「おい、騒々しいぞ、ブルマ。一体何を……」

 トレーニングルームからブルマの夫であり、
悟空の宿命のライバル、ベジータが現れる。そこで彼が見たものは……

「あ、あわ、わ……」

 腰を抜かしているブルマと、そこに手を伸ばそうとしている黄色い獣人型の
機械生命体だった。他にも魔法使い、恐竜、メガネとカラフルな面々がいるが、
彼らも同様に驚いている様子である。

「き、貴様ら……! 俺のブルマに何をするつもりだァーッ!!」

 ベジータは超サイヤ人となり、怒号を上げる。

「おわっ!? な、何かめっちゃ怒ってる人がいますけど~?」
「むむーっ!? 黒髪が突然金色に!? 瞳の色もエメラルドに!? 
一体どう言う原理なんでしょうか!? わたくし、興味津々です! 
是非教えていただきたい! 詳しく!」
「黙れェッ!!」

 ベジータは食い気味に駆け寄ってきた青い機械生命体を蹴り飛ばす。
ドゴオオッ! と轟音を立てながら、マシンの上半身が吹っ飛んだ。

「ほげええええーッ!?」

 残された下半身が、ガシャンと地面に倒れる。
それを見ていた他の者達は唖然としていた。特に黄色い獣人は目を丸くする。
彼は、ベジータが一瞬で自分の仲間を破壊したことに驚いたのだ。
そして、その戦闘力の高さにも……。

「いやはや、わたくし、寿命が縮みましたよ。
いきなり攻撃してくるなんて酷いじゃないですか!」

 仲間たちに上半身と下半身をくっつけてもらって復活した青い機械生命体が
抗議の声を上げた。
どうやら彼は元々強い衝撃を受けるとパーツが外れてしまう体質らしい。

「キカイノイドに寿命とかあんのかな?」
「自分に聞かれても知らないっすよ。占ってみます?」
「まあ、今日の運勢が最悪っぽいのは占わなくても分かるけどよ……」

「何か誤解があるみたいだ……ちょっと待って! 俺たち、別に悪い奴じゃなくて……!」
「問答無用だ!」

 ベジータが叫ぶと同時に、彼の掌に紫色のエネルギー弾がチャージされていく。

「なっ!?」
「ちょっ……!」
「うわっ!?」
「仕方ない……チェンジ全開ッ!!」

【ババン! ババン! ババババーン!!】

 悟空がソウゴと共に瞬間移動でカプセルコーポレーションに到着したと同時、
ベジータの放ったエネルギー波がラボの壁を粉砕した。

「おいおい、どうなってんだ……?」
「やっぱり、敵が来てたのかな!?」

「とにかく、行ってみっぞ!」

 悟空とソウゴは、急いで爆発が起きた場所へ向かった。

「おい、ブルマ! 何があったんだ!?」

 そこには……

「秘密のパワー! ゼンカイザー!」
「恐竜パワー! ゼンカイジュラン!」
「百獣パワー! ゼンカイガオーン!」
「魔法パワー! ゼンカイマジーヌ!」
「轟轟パワー! ゼンカイブルーン!」

「5人揃って! 機界戦隊ゼンカイジャー!!」


「……え?」

 彼らは変身によって姿を変え、決めポーズと共に名乗りを上げていた。
変身シークエンスによってベジータの攻撃を防いでいたようだ。

「…………」

 それを見た悟空とソウゴは呆気に取られ、言葉を失う。

「ギニュー特戦隊みてえな奴らだな……おい、ベジータ。
そいつらがワームホールから出てきたんか?」
「知るか! こいつらがブルマに襲いかかろうとしていたから、攻撃しただけだ!」

「だから、それは誤解なんですってば……」

 彼らこそ、機界戦隊ゼンカイジャー。すべてのスーパー戦隊の世界を封印し、
全並行世界を我が物にしようと企んだトジテンド王朝の野望を打ち砕いた
正義のヒーロー達である。平和を取り戻した後は、いくつもの世界を巡る
冒険の旅へ出たはずだったのだが、なぜかこのリ・ユニオン・スクエアに
やってきてしまったのだ。

「あっ、またワームホールが……!」

 ブルマの指差す方向を見ると、空間が歪み、そこから無数の怪人達が
這い出てくるところだった。

「クダック!」
「クダッ、クダック!!」

 銀色のボディスーツに、黒いカメラアイとキーボードのような形状で
不揃いに並ぶ口。

「クダック!?」
「トジテンドの残党か!? こんな所まで追ってきやがって!」

 一時休戦も束の間、再びブルマのラボは乱闘騒ぎの様相を呈する。

「おい、そいつらも貴様らの仲間か?」
「こいつらは、正真正銘、僕たちの敵っ!!」

 ゼンカイガオーンの鋭い爪が、クダックを切り裂く。

「何がどうなってるんだ……!」
「とりあえず、銀色の奴らをぶっ倒すぞ!」
「分かった! 味方が来たんだか、敵が来たんだか、よく分かんないけど……!」

【RIDER TIME!】

「変身ッ!!」

【KAMEN RIDER Zi-O!】

 ソウゴはジオウに変身し、ゼンカイザーを援護する。

「そぉうりゃッ!!」

 ゼンカイザーに襲い来るクダックに飛び蹴りを決め、背中合わせになる。
黒のジオウと、白のゼンカイザー。時空を超えた仮面ライダーとスーパー戦隊の共闘だ。

「信じてくれるのか……?」
「うん! 君たちは悪い奴じゃない……って気がする」

「何がどうなってやがる……説明しろ、カカロット!」
「ああ! こいつらを片付けたら……なっ!!」

 悟空とベジータもまた、クダックを次々に殴り倒していく。

11人目

「雨夜の暗躍、月夜の邂逅」

世界を守ろうとする「正義の味方」。
世界破壊を企む「邪悪なる者」。
己が嗜虐心を満たそうと動く「絶対悪」。
「神精樹」による世界のエネルギー吸収。
世界の根本的変革を目論む「救世主」たち。
世界を守護する為顕現した「守護者」たち。
あらゆる策謀が蜘蛛の巣の如く張り巡る「特異点」。
そして、ここでも。

~特異点 夜~
「……どうか剣を収めてくれ。我々は敵ではない。」
サイクスは今にも攻撃をしそうな2名に対して剣を収めるように言う。

「敵ではない、だぁ?剣を構えておいてか!?」
ゾロが憤るのも無理はない。サイクスは依然、警戒して剣を構えている。

「いやゾロ、どうやら敵ではないことは確かなようね。もし敵ならばどちらか一方はすでに攻撃している。特に___。」
武蔵の意見ももっともである。もし2人が最初から敵対するために立っているのならば、サイクスが攻撃しているか、もしくは罪木オルタが背後から攻撃している。

「……あたしも警戒してたのか。……まあ無理ないか。ほら、もう構えなくてもいいみたいだよ。」
罪木オルタがため息交じりにぼやきつつ、サイクスに警戒を解除するように言う。

「確かに、これから取引する人間に対して剣を構えていれば、相手が警戒するのも無理はないな。」
そういって、サイクスは大剣を虚空へとしまい込む。

「改めて、単刀直入に言おう。協力しないか?」

「協力……?」
剣豪の一人、武蔵が二人に問う。
その問いに罪木オルタが返した。

「こちらで受け持っている案件を手伝ってくれ。その代わりあたしらもお前たちに力を貸す。」

~午後16時52分~
「なぁ■■■■■、本当にここにいるの~?」
黒コートの男が、電話をしながら雨の降る通学路を歩く。
その顔は完全に見えない。

『奴はそこにいるのは間違いない、とっととこっちまで案内させろってハナシだ。』

「はいはい。しかし、絶賛コロシアイ中なのに突入するって無理あるって。」

『なに、俺たちは死んでも器があるだろ。それに……『あいつ』をここに連れてこれば、あとは俺たちのもんだ。何しろ、『■■■』の適性があるしな。』

ぐちぐちと言いつつ黒コートの男は目的地の高校へと向かう。
校門を通り、まるで「自分も生徒ですよ」と言わんばかりに堂々と校舎前を歩く。

「わかりましたよ。……まぁ戦闘しないで誘拐するだけってのは俺向きなんだけど。」

そういいつつ、男は闇の穴へと消える。

その高校の名は「希望ヶ峰学園」。
現在絶賛「コロシアイ学園生活」中の領域だ。

何かを企む「虚なる者」は、亂世混沌へと足を踏み入れた___。

12人目

「英霊、宇宙に駆ける ~ FATAL BATTLE ~」

 カルデアから射出されたコフィンに格納されたサーヴァント達が、
宇宙空間を漂っていた。

「なるほど、想像以上に侵食が早い」

 彼らが見たのは、地球……特異点から伸びた完成型神精樹が月面にまでその枝葉を
伸ばそうとしている光景だった。

「……」

 しかし彼らは、特に動揺した様子も見せない。
それどころか、この程度なら想定内だと言わんばかりに落ち着き払っている。
宇宙空間では会話すらままならないため、念話で状況を確認し合う。

『まずはあの大樹へ攻撃を仕掛ける。カルデアはあれに関するデータを求めている。
こちらからの攻撃への耐久度、再生に要する時間、侵食スピードなどだ。
さらに、俺たちはマスターからの魔力供給を受けられない。
カルデアが工面した電力を回してもらっている。恐らく普段よりも戦闘力は落ちるだろう』

 先発隊を指揮するのは、ランサー:カルナ。
インドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場する不死身の英雄。
「施しの英雄」とも称される。

(カルナさん、念話だとめっちゃ流暢なんだよなぁ……
普段は単語で喋ってるような印象なのに)

 一言多い、もとい、一言足りないと指摘されるほどに言葉数の少ない彼が、
今は実に饒舌である。
それだけ、今回の任務の重要性を理解しているということだろう。

『けど、月にまでちょっかい出そうなんて、いい度胸じゃない? 
私たち相手に喧嘩売ろうなんてさ! 月に代わってなんとやら、ってね』

 ムーンキャンサー:アルクェイド・ブリュンスタッド。吸血鬼の真祖にして月の化身。
彼女は好戦的な笑みを浮かべながら、迫りくる神精樹を見据えた。

 太陽神の子と、月姫。対極に位置するはずの二人が今、肩を並べて戦う。

『まったく、女神使いが荒いわよね。報酬は高くつくわよ?』

 アーチャー:イシュタル。メソポタミア神話に登場する美と豊穣、
そして戦を司る金星を象徴する女神。
神の舟「マアンナ」に腰かけながら、不敵な笑みを浮かべていた。

『まあでも、私の力が必要っていうなら仕方がないわねぇ。
私ってば超絶人気の女神だしぃ?』

『ソロモンの魔神柱を思い出すよなぁ、あのバカデカい樹。
ウネウネ動きやがって気持ち悪いったらないぜ』

 セイバー:モードレッド。円卓の騎士の一人であり、「叛逆の騎士」と呼ばれた英雄。
父・アーサー王に対する鬱憤が爆発して反逆の道を選び、
最期にはカムランの丘にてアーサー王と相打ちになったとされる。

『だがまあ、俺のクラレントで一瞬で炭クズにしてやりゃ問題ねえか!』
『うー』

 バーサーカー:フラン。フランケンシュタインの怪物の娘。
狂化の影響によって無口ではあるが、戦闘時には非常に頼れる存在となる。
目元が前髪で隠れていて、表情は窺い知れない。

『ンだよ、フラン?』

 モードレッドの裾を引っ張り、フランは首を横に振った。
その表情はどこか悲しげで、何かを訴えかけているようだった。

『念を押しておくが、今の俺達の魔力量は十全ではない。
恐らく、宝具を使えばたちまち力を使い果たし、
その時点でカルデアに強制帰還させられることだろう。だからこそ、使い所が試される』

 カルナの言葉に全員が首肯する。
ひとり、モードレッドは納得行かないと言った様子で頭を掻いた。

『チッ…じれってぇな。もっとこう、ガーッ! とやってバァーッ! ってやる方が
俺には合ってるんだがな』
『野蛮……』
『ああん!? やんのかコラ!!』

 アサシン:静謐のハサン。暗殺教団に所属する女性で、全身に毒を宿す。
食って掛かるモードレッドにそっぽを向いて、目の前の神精樹を憂いた目で見つめる。

(私の毒で、あの大樹を枯らし切れるでしょうか?)

 不安げな眼差しを向ける彼女に、カルナは言う。

『あの木は既に月面へと根を伸ばしているのだ。月面はすでに奴の領域と言っていい。
俺たちがすべきは、これ以上の侵食を止めることだ』

 カルナの言葉に、全員が納得して気を引き締め直す。
既に彼らは、神精樹の攻撃射程圏内にいるのだから。

『―――来るぞ!!』

 瞬間、神精樹から無数 の枝が伸びてくる。
まるで獲物を捕食する蛇のように、それらは宇宙を泳ぎ回るサーヴァントたちを
捕らえんとする。

『はっはぁ!! 遅えんだよタコ助どもぉ!!』

 しかし、そんなことはお構いなしに、モードレッドが真っ先に突っ込んでいく。

『どるぁぁぁぁぁッ!!』

 魔力で強化され、赤い稲妻を帯びた剣閃が、迫りくる神精樹の枝葉を切り払う。

『オラオラどうした! こんなもんかよ!』
『油断しないでください。この程度では済まないはずです』

 静謐のハサンはそう言って、自らの武器である短刀を構える。

『来ます……!』

 彼女の言葉通り、切り払われたはずの枝葉はすぐさま再生し、再び襲い掛かってくる。
それどころか、さらに数を増やして猛威を振るい始めた。

『これは骨が折れそうね……!!』

 マアンナに跨がり、高速移動しながら光の矢を雨のごとく降らせるイシュタル。
しかしその悉くが、即座に修復されてしまう。
神精樹はその巨大な幹から、膨大な量のエネルギーを放出していた。
それはまさに、無尽蔵とも言えるほどの回復能力である。
これが地球全土を覆うほどに成長した場合、どれほどの脅威となるだろうか。

『やはり、この大樹のエネルギーの根源はマスター達が向かった特異点にあるようだ。
このままでは、こちらが先に力尽きてしまう』

 カルデアからの電力の供給を受けてもなお、彼らの魔力量は万全ではなかった。
現状は神精樹を迎撃できてこそいるが、それも時間の問題だ。
いずれ魔力が底を尽き、撤退を余儀なくされる時が来る。

『もうー! サーヴァントって意外と不便なのね! 
もっと全力で暴れ回れると思ったのにー!』

 アルクェイドは不機嫌そうに、頬を大きく膨らませていた。
彼女としては、もっと派手に戦いたいのだが、それを許してくれる状況でもない。

『俺たちの役目は第二陣が来るまでに少しでも負担を減らしておく事だ。
そして先も言った通り、出来るだけこの大樹に関するデータを少しでも多く取る事。
それを忘れるな』

「しょう、え、ね。だい、じ。うー!!」

 巨大なメイスを枝の根元に打ち付けるフラン。高圧電流を内部へと流し込む。
持久戦。長く苦しい戦いが始まる……

13人目

「絶望の邂稿」

___必要なのは、頭脳である。
この計画を完成させるには、悪魔的な知恵と悪辣な精神を持った人間の、両方をつかさどる部位。
即ち、頭脳が必要である。
かの者は計画に必要な条件すべてに合致しているが故、今回の被検体に選ばれた。
かの者がいる位置は日本、希望ヶ峰学園4階。
出向くは虚ろより生まれし心無き者、ノーバディ。

征くがいい、亂世混沌の地獄へ。

~希望ヶ峰学園 死体安置室~
「うわぁ……。」

黒コートの男は学園内に侵入したようだ。
学園内、特に男のいる部屋は人の気配がなく、代わりにあるのは銀色の縦に長い袋が7つ横並びに配置されている。
現在学園内で何かが行われているのは学園内の物々しい雰囲気でわかってはいたが、袋から否応なしに出る血肉の匂いを嗅ぐと吐き気を催すものがある。
これは……死体だ。

「おぇ。ワープ先間違えた。……早く行こう。」

さすがに濃い血の匂いには生理的に参るところがあったのか、男は素早く部屋を飛び出る。
そうして誰にも気づかれないように、階段を上る。

散策していると、否応なしに気づくことがある。
学園内の窓という窓、外へ通じる扉という扉がすべて鉄板、それもかなり分厚いもので封鎖されている。まるで学園を核シェルターにでもしたかのようだ。
自分は内部へとワープすることで侵入できたが、これでは中の生徒たちはみな、自分の力で出ることはできないだろう。
と、男は鼻歌交じりに考えながら目的地へと向かう。

「ここだ、『モノクマ操作室』。確かここにいるんだよな。」

操作室、という名前だけで「黒幕がいる」と予想できる部屋。
すさまじい緊張が走っている、はずなのだが、男はまるで友人の家にお邪魔するかのように入っていく。
扉は鍵がかかっているようなので、彼は玄関から侵入した時と同じ「闇」を利用したワープを行う。

「おじゃましま~す!早速だけど「不法侵入とはびっくりだな、ⅩⅢ機関のデミックスさん?」……へ?」

侵入したはいいが、この部屋の主、そして___デスゲームの黒幕に存在を悟られ、出鼻をくじかれる。
次の瞬間だった。

ビュン!

天井から突如、太い槍が1本射出される。とっさに回避する男だったが、穿たれた地面にはかなり大きい穴が開いている。
相当の威力で人間ならば即死、よくて重症は免れられないだろう。

そんな威力の槍を次から次へと射出していく。

「なぁ、俺は味方だって!協力してほしいことがあって来たんだって!終わったら何もしないから!」

必死の説得を試みる、デミックスという男。
すでに彼が着ている黒コートのフードは回避行動の途中で外れており、明るい茶髪で逆立った特徴的な髪型が見える。

「頼むから攻撃をやめて~!」

冷徹無比なはずのノーバディとは思えないほど情けない声を上げるデミックス。
次の瞬間、苛烈だったはずの攻撃が止む。

「あーもうちょこまか逃げんな!話は聞くから!」

攻撃が止み、この部屋の主である黒幕が出てくる。

「んで、この江ノ島様に何の用だァ?デミックス"くん"?」

ドヤ顔をしながら、奥にあるモニターだらけの机を背後に姿を現す、美しい体形の女。
巨大なオレンジ色のツインテールにギャルそのものの服装、水色の瞳。
真名「江ノ島盾子」。超高校級の絶望たる「美しき必要悪」である。

「まじ?俺の事お見通しって、あれが……。」

デミックスは、江ノ島が持つ『ある能力』によって正体がばれてしまった。
それを今感じていたのだ。
と考えつつ、デミックスは気を取り直して江ノ島に要求をする。

「ちょっと、俺らについてきてくれる?簡単な実験に付き合ってもらうだけだからさ。」

訝しむのも無理はない。
ズカズカとやってきた見ず知らずの男に頼み事をされる。
こんなの小学生でも普通怪しむ。

「はぁ?お前何言ってんの?私様暇なんですけどー?」

当然こう返すのが自然だ。それに対してデミックスは。

「ちょっとしたアンケートに答えてもらうだけだって。それに、もしこれに逆らったら、君が黒幕であることをばらすことになるけど……いいの?」

___今目の前にいる彼、デミックスに敵対や攻撃の意志はない。
かといってその内容はアンケートに答えてもらうだけというもの。危害を加えるわけじゃない。
というより、断ったらバラされる可能性があるし、たとえハッタリでも1%でもバレる可能性があるなら今後のためにも絶対避けたい。
そう考えた江ノ島は口を開く。

「わかった、従う。」

これを聞いて、デミックスはあるものを取り出す。
今自分が着ている黒コート、これと全く同じものだ。

「このコートを着てね。そうじゃないと案内できないから。」

おとなしく従う江ノ島。着ている途中つぶやく。

「あんたが逃げ惑う顔、最高に絶望的だったよ。」

あくどいことを言いつつ、その表情は屈託がない。
人にはとても耐えられない絶望も、ここまでくると清々しい。
きっと彼女は、そういう人間なのだろう。

「趣味悪いなー、そういうの嫌われるよ~?」

純粋な笑顔を向ける江ノ島に対し、ふてくされた顔をするデミックス。
こんなやり取りの後、黒コートを着た江ノ島はデミックスとともに、展開された闇の中へと消えていった……。

その目的は、未だわからず。しかしその実はきっと……。

14人目

「ゼンカイメンバー、自己紹カイ!/戦う警察官、その名はクリリン!」

【FINISH-TIME!!】

「おりゃああああああああああああああーッ!!」

 ジオウがジュウモードにチェンジしたジカンギレードで「ジュウ」の文字型
エネルギー弾を連射、

【ヒーロー(キカーイ)! スーパーゼンカイタイム! 
ゴッゴー! バンバン! ダイゼンカイ!】

「全力全かああああああああああああいッ!!」

 ゼンカイザーの武器・ギアトリンガーのハンドルを回し、
エネルギーを銃口と頭上にチャージ。
トリガーを引く事で強力なビームを発射してクダックの群れを一直線に薙ぎ払った。

「クダァ~~~~~ッ……」

 断末魔と共に光の奔流に溶けゆくクダック達。
ヒーロー達の圧倒的なパワーの前に、クダック達は敢え無く全滅した。

「ふう、これで全部かな?」
「ふいい、お疲れ~」

 ゼンカイジャーの面々とジオウはお互いに変身を解き、元の姿に戻る。
ゼンカイザーの正体は、五色田介人。ゼンカイジャーのメンバーで唯一の人間の青年だ。
残るメンバーであるジュラン、マジーヌ、ブルーン、ガオーンはキカイノイドという
機械生命体で、かつてはトジテンド王朝の圧政に苦しめられていた。

「おめえら、すんげえ強ええな」

 悟空も、クダックを難なく撃破してみせたゼンカイジャーたちに感心する。

「いやお宅らもすげえって、実際。スーパー戦隊でもないのによ」

 ゼンカイメンバー最年長、赤いティラノサウルス型のキカイノイド、ジュランは
悟空たちの戦闘力の高さに驚いていた。

「改めて、よろしくね人間ちゅわん達~」

 ドレッドヘアのようなコードが後頭部から伸びる、
陽気で黄色いライオン型のキカイノイド、ガオーン。
人間を始めとした動物をこよなく愛する彼は、気さくに握手を求める。

「ど、どうも……」
「フン、俺はせんぞ」

 苦笑しながらも握手に応じる悟空やソウゴ、ブルマとは対象的に、
ベジータは腕組みをしてそっぽを向いてしまう。

「……ま、あいつは普段からあんな調子だから気にしねえでくれ」
「カカロット! 余計なことを言うんじゃない!」

 小声でガオーンに耳打ちする悟空に、ベジータは怒鳴りつける。

「うへっ、聞こえてたんか」

 そんな二人を見て、他の面々も微笑む。

「ぬぬぬ、何だか気難しいそうな人っす……ちょっと苦手かも……」

 メンバーの紅一点、ピンク色のキカイノイド・マジーヌ。
占いやファンタジーが好きな彼女は引っ込み思案なところがあり、
少しだけ怖がりだったりする。

「ややっ、暴れまわったせいで随分とラボの中が散らかってしまっていますね! 
綺麗に片付けなくては!」

 真面目な委員長タイプの青いキカイノイド・ブルーンは、整理整頓や掃除が得意であり、
ラボの惨状を見かねたのか、 慌ててモップを取り出してきた。

「お~、見る見る内に片付いていく……感心ね、あの子。ベジータにも見習ってほしいわ」

 そんなブルーンの働きぶりを見て感嘆の声を上げるブルマだったが、
ベジータは露骨に顔をしかめる。

「くだらん……俺は部屋に戻る」

 そう言い残して、さっさとラボから出て行ってしまった。

「行っちまった……」
「ところで、ここは何トピアなの?」

 興味深そうに室内を観察しながら尋ねる介人に、

「トピア?」と首を傾げるブルマ。

「あ~、要するに世界の名前だよ」

 介人の両親、功と美都子は科学者であり、
その過程で「並行世界存在説」を提唱するに至る。
そして、二人は研究の末についに異世界への扉を開くことに成功したのだ。
しかし、それは同時にトジテンド王朝による侵攻を招く結果となり、
両親は囚われの身となってしまう。
そのことを知った介人は仲間たちと共にトジテンド王朝に乗り込み両親の救出を
試みたのであった。

45のスーパー戦隊が個別に存在する世界もあれば、およそ一般常識とかけ離れた世界観を持つ異質の世界もある。
介人たちがこれまでに巡った世界は、概ねその世界を象徴する単語を冠する
「○○トピア」と呼称されていた。

『データ照合完了! ここは、『リ・ユニオン・スクエア』と呼ばれる
世界のようだッチュン!!』

 人語を話すオウム型サポートメカ・セっちゃんが部屋の中を飛び回る。
五色田夫妻がトジテンド王朝の侵攻に備え、
かねてより開発していたマシンである。トジテンドが滅亡した後は夫妻によって
新たなる力、並行世界間ゲートを発生させる機能を追加された。

「リ・ユニオン? 聞き慣れねえ名前だな。トピアじゃねえのか……」
『この世界は、スーパー戦隊が存在しない代わりに仮面ライダー、超人、
スーパーロボットなど、色んなヒーローたちが活躍する世界らしいッチュン!』
「そうなんだ……それじゃあ、俺たちこの世界初のスーパー戦隊って事じゃない!?」

 興奮気味に語る介人。
彼の言う通り、スーパー戦隊の存在しない世界に、ゼンカイジャーが
初めて足を踏み入れた瞬間でもあった。

「とりあえず、ゆっくり話を聞かせてくれない? 
あなたたちゼンカイジャーのこととか、 色々と」

 こうして、リ・ユニオン・スクエアにやって来たゼンカイジャーたちは、
この世界の住人たちと情報交換を行うことになった。

「……ああ、騒ぎの元はカプセルコーポレーションか……
いいぜ、そっちは俺が行ってくる。お前らはこの銀行強盗達を移送してくれ」
「分かりました、お願いします、クリリンさん」

 カプセルコーポレーションで爆発騒ぎがあったと通報を受けてやって来た警察官。
その名はクリリン。悟空の親友であり、現在では武道家を引退して警察に勤務している。

「……で、来てみればやっぱり悟空達が絡んでたか」
「おう。久しぶりだな、クリリン!」

 カフェテラスで呑気に食事をしている悟空。あっけらかんとした態度に
クリリンは溜め息をついた。
悟空やブルマと共に少年時代から数々の大冒険を繰り広げた仲だ。
トラブルのある所には必ず彼らの姿もある事を、クリリンは身をもって知っている。

「ヤムチャさんや天津飯から聞いたよ。またヤバい事に首突っ込んでるらしいってな」
「おう、まあな。ターレスやらスラッグまで出てきてよ。
こっちも味方が欲しい所なんだ。クリリンもどうだ?」

「俺は遠慮しとくよ……武道家を辞めて随分になるし、とても役に立てそうに無いからな。
それにしても悟空はホント変わんないよな、昔っから。羨ましくなっちまう」
「そっかぁ?」

「ま、一般市民の避難とかそう言うのは任せとけ。及ばずながら、サポート出来る事は
させてもらうよ。今回の一件も丸く収めとくさ」
「ああ、頼むな!」

15人目

「或る絶望と■望が■す■」

~????????~
デミックスに連れていかれた、否、彼と共にどこかへとついていった絶望少女は今。
「よーしお嬢ちゃん、俺たちの質問に答えてくれ。何、変な質問じゃないぜ。」

白い無機質な部屋で椅子に座らされ、眼帯の男に診断を受けていた。
そいつは白と黒が入り混じった結髪が特徴の、右目の眼帯と頬の傷が歴戦の戦士風を思わせる伊達男。
「シグバール」。ⅩⅢ機関の序列2『魔弾の射手』の名を冠する男にして、その真名は■■■という。

「なんで?こんなおっさんよりさっきのあいつがいいし。」

愚痴を言う江ノ島。どうやらシグバールの顔はそんなに好みではないようだ。

「おいおい、ひどいこと言うなぁ。デミックスは今別の任務についていてな、とてもここへは来れないってハナシ。」

「そんな絶望的なことある?あんなにやる気なさそーな?あいつが?」

はっ、とデミックスを笑うシグバール。

「あいつにやる気がないのは認めるが。関係ない話は終わりにしようか。んじゃあ。まずは……。」

質問は15分にわたって続いた。
内容は主に、彼女の趣味嗜好から精神構造、言える範囲で過去の思い出やどうしても倒したい仇、トロッコ問題的なものまで。
幸いにも、シグバールが殺されることも、江ノ島が殺されることもなく無事に質問は終わった。

最も、キーブレードを持っていない江ノ島がシグバールを殺せるわけがないのだが。

「それじゃあ、質問は終わりだ。帰る準備してくれ。そうそう、このことは他言無用で頼むぜ。」

そう言われて、また黒コートを着始める江ノ島。
その時、江ノ島は口を開く。

「……ねぇシグバール、さん?質問こっちもしていい?」

「なんだ?」
突然改まったように江ノ島は質問をする。

「なぜ、私様なの?狂ったやつならもっと別のがいるのに。」

シグバールは少し驚いていた。
少しの沈黙の後、シグバールは江ノ島に顔を近づけて答える。

「能力的にあんたが適任だからってハナシだ。俺たちの計画には、な。」

その後大げさな身振り手振りをしながら、シグバールは続ける。

「ああ、もちろん約束は守る。俺たちノーバディはお前ら希望ヶ峰の連中にこれ以上の干渉はしない。デミックスあたりは「暇だー」とか言って会いに行くかもだが、それは別だ。」



「そっか。それともう一つ、質問して良いか?」

「あと1つだけな。」

「……私様の情報使って、何しでかす気?」

当然、帰結する問い。
自分の精神や思考に関する情報を事細かに聞き出したのだ、何か目的があって聞いたに違いない。

シグバールは、にひひと笑いながら言う。

「お前にもわかるように言うと、人だs『プルルルル……』ん?」

真意を聞く前に、タイミング悪く連絡がかかってきてしまった。
ちっ、と舌打ちをしつつ、シグバールは部屋の電話に出る。

「もしもし?デミックスか。どうした?」

『大…だ……が…手に!』

「どうした?あぁ?……おいおいちょっと待て!アレはまだ早いって聞いたぞ!?」



~そのころ リ・ユニオン・スクエアにて~

この町の中心にある、大型モニターには或るニュースが流れていた。
それだけではなく、そのニュースは今放送しているテレビ番組を中断して放送されるほどのものだ。
___内容は、あまりにも衝撃的なものだった。
このニュースを見た人々には、もれなく衝撃が走っていた。
ニュースキャスターですら、あまりに衝撃と凄惨さに声が震えていた。

___何しろ。

「緊急ニュースをお伝えします。今日未明、希望ヶ峰学園にて謎の爆発事故が発生。学園は全焼、死者100人越えの大事故が発生しました。
警察及び救助隊は、原因は整備不良による機械の連鎖的爆発と暖房用のガス管の爆発によるものだと判断しているとのことです。」

_____「ダンガンロンパ」という一つの物語を破壊するレベルのものだからだ。

16人目

「燻り、燃える者達」

混迷を極めた争いの末、復活を遂げた光の巨人、ウルトラマントリガー、マナカケンゴ。
その光明があしゅら男爵、安倍晴明の両者撃退という大金星を挙げ、戦いの幕を下ろす。
そんな栄光の活躍の裏、正義超人一派には、バッファローマンの離反とオセロットの存在、そして霧の部隊という得体の知れない謎の影が落ちていた。

「……」
言葉を失ったとはこの事か。
正義超人の間に流れる静寂な空気、それは声の無い悲痛な叫び。
失望、憎悪、困惑…否、各々の思考ベクトルこそ違えども、その根幹はそのいずれでもない。
あぁそうだとも、彼の離反という事実が正義超人達に齎した感情はただ一つ、悲嘆だった。
彼等がその胸中に陥るのも無理はない、かつてバッファローマンは悪魔超人、即ち敵であった事に起因する。
1000万パワーという強大な暴威を振るう事を善しとする悪であり、得てして意志ある者は猛威に溺れ狂うものだと体現した存在だった。
だが、戦いの果てで己の全てであるロングホーンを投げ打って、ミートを救った。
その時から彼は、友情という正義の為に戦える戦士となったのだ。
そうして紆余曲折を経て正式に正義超人入りした彼は、同時に斯様な暴虐の主でも友情の為に戦える事が出来るという象徴でもあった。
元悪魔超人だったからこそ、その印象は他の正義超人よりも秀でて強かった。
そんな彼だからこそ、今再び悪魔超人へと、完璧超人の粛清を宣言した者へとなった事実は、彼等には重く受け止め難い現実であった。
仲間思いであるテリーマン達にとっては、殊更に心苦しかった。
「…悪夢に魘されている気分だ。彼が寝返った事が、今だに信じられん。」
だからこそ、ロビンは互いの心中を察して徐ろに語り出す。
帰ってくるのは無言の肯定、今だに受け止め切れていないという事実。
分かり切っていた反応を前に、ロビンは俯きながら続ける。
「だが、ここにいる誰もが間違いなく聞いた言葉だ。残念だが、現実なんだ。」
言葉の端々に苦悩が滲み出していた。
「だからこそ、その言葉の意味を、悪魔超人に戻るきっかけになった理由を、何より彼の意志を、私達は確かめなければならない。」
テリーマンとラーメンマンが同意を示すように静かに首肯する。
「その為にも、先ずは奴等の足取りを追わねばならんな。」
奴等とは、果たしてどちらの事か。
その答えはロビンの視線が示す先、バッファローマンの超人十字架落としが放たれた地が物語っていた。
「奴等の襲撃とバッファローマン達が現れた事、私はどうも無関係とは思えんのだ。だが…」
「…あっ、あいつ等が居なくなってやがる!?」
気付けば、あの一撃で地に伏していたと思われていた正体不明の髑髏達は跡形も無く姿を消していた。
彼等の来訪を告げたあの霧さえも、今は地平の彼方か。
唯一掴めた筈の尻尾を取り逃がしたと嘆くブロッケンJr.。
「畜生、折角の手掛かりが…!」
「いや、足取りは掴めた。」
だが、ロビンの口から出た言葉は逆だった。
「足取り?」
「思い返してみるんだ、奴等が最初に現れた時の事を。」
その指摘に皆が一考し、同じ結論に辿り着く。
「…そうか、影しか見せなかった巨人!」
「ってことは、足取りっていうのは…!」
そして彼等が一様に向いた地には、機械獣や鬼とは明らかに違う『無機物的』な『巨人の足跡』が、地平の先へと伸びていた。

「そうか、Dr.ゲロは既に…」
「俺も詳しくは知らねぇけど、自分で作った人造人間にやられちまったんだとよ。」
病院の地下にて、ウーロンの言葉にそうかと溜息を付きながら葉巻に火を付けるイシュメール。
仕草の節々からは落胆の念が籠っているが、面倒事の気配を感じ取ったウーロンは敢えて触れる様な真似はしなかった。
「それで、こっからどう逃げるんだよ?」
代わりにあのセルからどうやって逃げおおせるか、という問題を話題にして、結局人造人間という面倒事に触れ得ざるを得ない事を悟った。
「それなんだがな…実は一人、逃がさんとならん奴がいる。」
そんなウーロンの憂鬱を知ってか知らずか、イシュメールは更なる課題を課してきた。
おいおいと眉を顰めるのも当然だ、今いる二人だけでさえ逃げる事が難しい状況で、これ以上誰かを連れて逃げれる余裕など有る筈も無い。
だが、イシュメールの口振りにはまだ余裕があるようだった。
「何、そいつは俺が連れていく。お前は、俺のバイクで逃げてくれればいい。」
そう言いながら投げ渡してきたのはバイクのキー、どうやら彼の中ではやる事は確定らしい。
しかし、そう言われてもウーロンとしては気が乗らない話である。
「ちょっと待てよ、バイクなら俺よりお前のが上手いだろ? 何でわざわざ…」
「任せたぞ!」
手元のそれからイシュメールへと視線を向ける頃には、既に彼は地下から出ようとしている所だった。
「おいちょっと待てって!」
言うが早いか、イシュメールはさっさと地上、つまり病院へと行ってしまった。
その場にポツンと残され呆然とするウーロンだったが、それも一瞬。
命の恩人がわざわざバイクを渡してまで逃げていいと言ったのだ、素直にその言葉に乗っかろう。
そう決めていざ地上へ、と思った所で、先の『俺が連れていく』と『任せた』の言葉を不意に思い出す。
当たり前だが、バイクは地上を走る物だ。
何ならそこいらの自動車よりも騒音が鳴る代物だ。
詰まる所。
「…囮って事かよ!?」
彼の真意に気付いた時、先程までの敬意はとうに消え去っていた。
うがぁ!と頭を抱えて、しかしこのまま彼が倒され次は自分、という構図もまた頭に思い浮かんでいた。
そう考えれば自分が囮になるというのは実に合理的で、彼がそれを実行に移した今、最早従う他無かった。
「ちくしょう、やってやる!」
そう決意を固めるなり、ウーロンは颯爽と駆け出した。

「ほう?」
先の不意打ちに不覚を取り、獲物を取り逃したセル。
その耳に、自らの手で静寂にした街から響き渡るバイクのエンジン音が届く。
気の探知で探そうにも"異様な程"気の薄い者達の為か探知できず、おまけに”急な霧”が出ていて目視による捜索も困難。
今はまだ心許無いエネルギーを振り絞ってでもいぶり出そうとしていたセルにとって、この知らせは僥倖であった。
「馬鹿め、焦って尻尾を出しおったな?」
不気味な笑みを浮かべて舌なめずり。
本来であれば三流以下の仕草であるそれは、しかし絶対強者たる事実がより一層の不気味さを際立てていた。
ケラケラと肺を往復させた後、羽根を広げて獲物の鳴る方へと迫る。
「それ、まずは一発くれてやろう!」
まずは脅しの気弾を、音の鳴る方へ。
めくら撃ちにも近いそれは、セルの天才的な戦闘センスによって精密な狙撃へと昇華され、音源たるバイク音目掛けて駆けていく。
『うっひゃあぁぁ!!?』
直撃したか、至近弾か、いずれにせよ霧の中に響き渡る悲鳴に、クツクツと湧き上がる愉悦を隠し切れない。
そうして新たに上がった音を頼りに、セルは躊躇いなく突撃を慣行する。
次第に浮かび上がる、獲物のシルエット。
捉えた、そう思った時。
_ウ”ア”ァ”ァ”ァ”!!!
横合いから、灼熱の拳が撃ち込まれる。
その男は、文字通り燃えていた。

17人目

「守護者と天敵」

 特異点・神精樹の樹海の中で武蔵とゾロが遭遇した
謎の組織「ニュートラル・ガーディアン」の一員、サイクスと罪木オルタ。
ゾロはサイクスが持つ大剣・クレイモアに目を止めた。

「……お前、剣士か」

 そう言うとゾロは刀を抜き、構えた。一方、サイクスもそれに応じて大剣を構える。

「勝負と言うならば応じるが……我々の目的はこの大樹、
いや、この空間そのものの消去だ」
「何……?」

 2人の成り行きを見守っていた武蔵だったが、サイクスのその言葉に反応した。

「ちょっと待ったゾロ。この人達の話、もう少し聞いてみようよ」
「チッ……」

 ゾロは眉間にしわを寄せたが、すぐに構えを解く。
そして武蔵は2人を見据えて言った。

「私とゾロは、この世界の人間じゃないんだ。
この世界について知ってるんなら色々と教えて欲しいんだけど……」

 武蔵がそう言うと、サイクスは大剣を下げ、口を開いた。

「我々は……」
「ニュートラル・ガーディアンか……はは、そんなものまで介入してきているとは
これはいよいよもってじいさま達も焦り始めるかもねぇ」
「!?」

 生い茂る枝の上に、黒尽くめの男――禍津星穢が腰掛けて居た。
その男はニヤリと笑うと、一同を嘲笑するように見下ろしながら呟く。

「何者!?」

 サイクスが叫ぶと同時に、男はその身を宙に投げ出した。
そして空中で一回転すると、音もなく着地する。

「天敵さ。君たちのね」

 穢が放つ邪悪な気配に、武蔵たちは思わず後ずさりする。

「なるほどねぇ……隠そうともしない殺気だこと。
疑いようもなくヤバそうな奴が来たなぁ」

 軽口を叩くも穢の危険性を本能で察してすぐさま戦闘態勢に移行する武蔵。
穢はそんな彼女たちを嘲笑うかのように、余裕たっぷりの様子で言う。

「特異点の様子を見に来たんだけど、こっちもこっちで邪魔者がいるみたいだね。
まあ、いいけどさ。その方が楽しめるってものだ」

 穢はそう言って肩を竦める。

「出ておいで」

 彼の影が伸び、その中から魔獣が這い出してくる。

「グルルルルシャアアアアアッ……」
「……おい、サイクス。あたしらまだ素性を名乗ってないよな?」

 罪木オルタがサイクスに問いかけると、彼は首を縦に振った。
それを見た穢はニタリと笑みを浮かべる。

「うむ。あの男には色々と問い質す必要がある。君たちも手を貸してほしい」

 サイクスの言葉を聞き、武蔵とゾロは顔を見合わせた。

「どうしようか? あいつ、かなり強そうだよ。あのペットちゃんも」
「戦うしかねェだろ。どの道、この世界について知りたいなら戦って勝つしかねェんだ。
そっちのが分かりやすくて性に合ってる」

 ゾロはそう言いつつ、刀を構えた。

「なるほど、正論だわ」
「お喋りは終わったかい? 均衡の守護者の力、存分に見せて貰おうじゃないか!」

 ゾロ、武蔵、サイクス、罪木オルタ……禍津星穢とその使い魔の魔獣の登場により
思わぬ共闘が始まる事となる。

「行くぞォ!!」

18人目

「双獣、月下に舞う」

___月夜。
剣豪2人と守護者が2人、その前には邪悪なる侵略者「禍津星穢」。
そして、禍津星穢が召喚した魔獣。その姿はまるで巨大な蒼狼。
ライオンの如き体躯、チーターの如き攻撃速度、そして飢えたハイエナの如き獰猛さと執念を持つ。
その在り方はまさに、魔獣。

「GRRRRRRRRR......!」

「行くぞォ!!」

魔獣は禍津の号令で4人に向けて狩猟を開始する。
餌となるわけにはいかぬ4人は、持ちうる武器を使い抗戦を開始する。

ゾロは三振りの刀を駆使して魔獣を攻撃する。
武蔵も、魔獣の爪や噛み付きに対して返す刀を放ち抗戦。
サイクスも、巨大なクレイモアを逆手に持ち、魔獣の肉体に傷をつけていく。

「GUUUUUrrrrrrrrr......!」

ある程度追い詰めてはいるが、それでも魔獣は硬い筋肉と皮膚で斬撃を防ぎ、ひるまず爪や牙で攻撃を開始する。

では、残る罪木オルタはというと。

「……ふぁあ。」

あくびをしながら、眠そうな目で魔獣、ではなく禍津を指で挑発する。
当然この行為にも意味はある。

___罪木オルタは、この中で自分は戦闘力的に一番格下であると自認している。
そして、そもそも集団の戦闘において、よほどの自信家か策略家、もしくは武器や兵士の性能や実力に差でもない限り「強い場所からつぶしていく」なんてことはしない。
基本的に敵の弱点を集中して攻めていくのが定石であるから。

「徒手空拳か、にしても案外弱そうなのもいるじゃねぇかよ……!」

そうなれば、自動的に罪木オルタを攻撃するのは当然なのだ。
禍津は邪悪な笑みを浮かべて、まるで金属の如く硬質化させたその拳を彼女の脳天めがけて放とうとする。

「だろうな。」

刹那、目にもとまらぬ回し蹴りが、硬質化させていない首めがけて放たれる。
当然格闘技を習っているわけではない、形がなっていない素人丸出しの蹴りだ。しかし。

「うぁああ!?」

なぜか自分の肉体が吹き飛ばされる威力の蹴り。
受け身を取るのが間に合わない威力。

後方の樹木に激突する。

「……てめぇなんだ?……ただの女が、それも『いかにもいじめられてそーな女』がこんな攻撃力を出せるわけねぇ……ッ!」

思考を広げる。
いかにも"弱そうだ"と判断しての攻撃。
なのに実際は硬質化させた自分の拳に対して、逆に自分を吹っ飛ばすほどの蹴りで返してきた。
なぜだ?
もし、考えられるならばその答えはただ1つ。

「『均衡の守護者様』としてのバフ(性能向上)か?その火力は?」

ニュートラル・ガーディアン、世界の守護者という立場ならば、抑止の守護者と同様「世界からのバックアップ」を受けているのだろう。
そう考えた彼は邪悪な笑みを浮かべつつ、罪木オルタを凝視する。

「正解だよゲスヤロー。んでこれ以上ヒントを言うつもりはねぇ。」

そういって、罪木オルタは拳に力を籠め敵側に向かう。

「じゃあ力づくでも……!!」

態勢を整え、攻撃の構えを取る。
___その時だった。

「うぅぅうううう……Uu……!」

空中の月に照らされ、唸り声をあげるサイクス。

「おっと、あいつやる気だな。」

罪木オルタは、何かを予感して悪い笑みを浮かべる。

「やる気?」「あいつに何が起きるって?」

魔獣に攻撃しつつも問う剣豪2人。
罪木オルタは、警告する。

「いや、逃げた方がいいよ二人とも。縊り殺されたくなきゃな!」

その間にもサイクスの背後で、月光に照らされたクレイモアが輝きだす。
_____そして、万全に輝く大剣は。

『月 よ 照 ら せ !』

その一言が放たれた瞬間に刃が大きくなり、さらに輝きを増す。
サイクスもそれと同じくして、髪が逆立ち目が月夜に照らされた狼の眼の如く耀く。

その姿はまさに、人より変化した魔獣、否、人狼。

「うぉぉおおおおおお!!」

先ほどのとは異なり、かなり激化する斬撃。
斬撃、というよりもはや爆撃とでも形容すべきものだ。
それは一挙手一投足に衝撃波と深い斬撃痕が残る破壊力。

「KUUUUUAAAAAAA!?」

ただでさえ硬い魔獣の肉体的防御が、一切通用しない。
それだけではない。逃避を開始する魔獣に対しても、まるで獲物を追い詰めていくかの如く執拗に獰猛に攻めこむ。

「GHHHHUUULLLLLLLLLLLLLLL!!」

たまらず魔獣も反撃する、しかしすべて。

「「GAAAAAAAAAA!!」」

苦悶と狂乱の慟哭。
嗜虐よりも残酷な声。

「VVUU「UUUGGGUUUUUUUAAAAAAAAAAA!!!」AAaaa……。」

魔獣はサイクスの攻撃で遥か彼方へと吹き飛び、そして断末魔と共に粉々に消滅した。

「ちっ、あっけねーなーオイ。そしてだ。」

その様子を見て舌打ち交じりにほざく禍津は、遠目で神精樹が攻撃されているのを目撃する。

「連中もおっぱじめてやがる。仕方ねぇ逃げるか。」

このままだと最悪袋たたきにされてやられかねないと考えた禍津星穢。
___そういって彼は、闇の中へと消えていく。

「……また会おうぜ。」

悪辣な笑みを浮かべて、彼はこの世界からいなくなった。




___先ほどの喧騒が嘘のように、周囲には静寂が残っていた。
この場に残るは剣豪と守護者。
彼らは、神精樹の方角へと向かっていった。

「けっ、逃げられちまった。」
罪木オルタはぐちぐち言いつつ、空を見上げる。

「だが我々の敵、その一人が「禍津星穢」という名前、そして一部だが能力はわかった。それだけでも十分だろう。」
サイクスも狂気が取れたかのように、また冷静に話す。

「ねぇ質問してもいいか?その『ニュートラル・ガーディアン』って何だ?」

戦闘を終えたゾロの問い。
この問いにサイクスと罪木オルタは、顔を見合わせた。

「……わかりやすく説明すると『このままだと複数の世界が滅ぶと判断されたら召喚される、数多くある世界の守護者』。それが我々だ。」

「抑止の守護者と、何が違うの?」

「大体同じだよ。外宇宙(フォーリナー)にも対応している分、あたしらの方が強いけど。」

人類を守護する為に召喚される生物の総意___抑止の守護者。
惑星を守護する為に顕現する星の息吹___真祖、ガイアの守護者。

そして、多くの世界を守護する為に現界する■■の存在___ニュートラル・ガーディアン。

「我らはお前たちに協力する。元々そのために接触したのだからな。」

「とか言ってたら、着いたみたいだよ。というか、もう始まってんのか。」

罪木オルタの一言で現状を確認する。
すでに周囲にはサーヴァントが複数体いるようだ。

剣豪2名、そしてニュートラル・ガーディアン2名。
___神精樹周辺、到着。

19人目

「時の守り手」

 タイムパトローラー・トランクスは暁美ほむらとの接触の後、
クォーツァーの足取りを追っていた。
そして――――

「な、何だ……!? タイムマシンの計器が異常に乱れている!」

 悟空のいるリ・ユニオン・スクエアへと向かっている途中、
トランクスの乗ったタイムマシンは突然謎の不調を起こしていた。
計器が狂い、操作不能に陥り、コントロールが全く効かなくなっていたのだ。

「くそっ! どうなってるんだ一体……!?」

 トランクスが焦りながら計器を弄っていると、不意にタイムマシンが
通常空間へ帰還した。しかしそれは彼が望んでいた帰還ではない。
タイムマシンの窓の外に広がる光景にトランクスは思わず声を上げた。

「何処なんだ、ここは……!?」

 そこにあるのは天へと突き抜ける程に成長した神精樹。
そしてその生い茂る木の根が大地を覆い尽くし、空を覆うように枝を伸ばしていた。
その異様過ぎる光景にトランクスは唖然とする他なかった。

 リ・ユニオン・スクエアと隣り合っているこの特異点。
かつてキン肉星のワープ船を使って地球へと向かっていたキン肉マンのように。
千鳥かなめの護衛任務の最中であった相良宗介のように。
ムーア界で待つ皇帝ジークジオン討伐に臨もうとしていた騎士ガンダムたちのように。
杜王町で暮らしていた東方仗助たちのように。
無作為に選び出された時間軸に生きる人々が、同じくしてこの『特異点』に導かれて
集結しようとしていた――。

「あちこちの方角からとてつもなく強い気を感じる……ひとつ、ふたつ……
いや、それどころじゃない。数え切れないくらい沢山の……」

 トランクスは計器から目を離すと、辺りを見渡した。
そこには見たこともないような異様な景色が広がっていた。
巨大な樹木に呑み込まれた建造物が林立しており、中には城のような形をした建物もある。
また、建築物だけではなく、何かしらの機械のようなものも至る所に乱雑に点在していた。
時折、爆発のような音が聞こえることから察するに、
戦闘が行われている場所も少なくはないようだ。

「みんな……一体何と戦っているんだ……!?」

 トランクスがそう呟いていると、突如としてタイムマシンに向かって飛んでくる
エネルギー弾があった。

「うわっ!?」

 タイムマシンのエンジン部分に命中したエネルギー弾。
トランクスは咄嗟にマシンから飛び降りると難を逃れることができた。
だが同時にマシンは高度を徐々に落としていき、やがて地面へと激突してしまう。

「くそっ! 誰だ!!」

 トランクスは怒りに任せて叫ぶと、エネルギー弾が飛んできた方角を振り向いた。
するとそこに立っていた人物を見てトランクスは目を大きく見開いた。

「あ……あなたは……!? ご、悟空さん……!?」
「ゴクウ? ああ、カカロットの事か……貴様も奴の知り合いか?」

(いや、ち、違う……悟空さんに顔はそっくりだが、奴の気は邪悪そのものだ……
それに、カカロットと言う呼び名……)
「俺の名はターレス。サイヤ人さ」

「や、やはり……!」

 神精樹の実をその手に握り締めた黒い戦闘服の男――ターレスの姿を見た
トランクスは身構えた。

「小僧、何者だ?」
「俺はトランクス……タイムパトローラーだ!」

「ほぉう。大方、クォーツァーの連中を追って来たってクチか。
奴らも随分と好き勝手して来たみたいだからなぁ。タイムパトローラーに
目をつけられもするだろうよ。しかし、この特異点って奴はまるで蜘蛛の巣のように
次から次に他所から獲物を絡め取っているようだぜ」
「クォーツァーを知っているのか……!」

「まぁな。お互いに利用し合っているだけの関係だ。用が済み次第、始末するつもりさ」
「何だと……!? それに、ここが特異点、とは……」

「お喋りの時間はそろそろ終わりだ。あれから神精樹の実を随分と喰らった……
ちょうどいい。貴様で試させてもらうぜ」
「何を言って……ぐぅあっ!!?」

 ターレスの言葉の意味を問いただそうとした瞬間、
トランクスは凄まじい力によって殴り飛ばされてしまう。パワーもスピードも、
以前悟空と戦った時とは桁違いに上がっていた。
あれ以来、特異点で急激な成長を遂げた神精樹の実を狩っては喰らい、
ターレスはさらなる力を得続けていたのだ。

「うわあああああああーっ……」

 トランクスはそのまま地表に生い茂った神精樹の樹海へと墜落していった。

「おやおや、力が有り余っちまってるようだな。だが、素晴らしい……! 
この力さえあれば、カカロットだろうが超サイヤ人だろうが敵じゃねぇ。
ははは、ふはははははははははははは……」

 高笑いを上げながらターレスもまた神精樹の力に酔っていた。

「さて、熟した神精樹の実を探しに行くか……十分に育ちきった奴でないと
食っても大したパワーアップにはならないからな……」

 ターレスは次なる目当ての神精樹の実を求め、飛び去って行った。

「おい、空から人が降ってきたぞ……」
「あら、ちょっといい男……じゃなかった、大丈夫!?」

「う、うう……」

 トランクスが落下した先。そこは奇しくもゾロや武蔵、
サイクスや罪木オルタが居合わせた場所であった。

20人目

「波乱の混戦」

ウーロンの頭はここ一番で混乱の極地に至っていた。
目の前で襲い掛かろうとしてきたセルと、それを殴りつけた燃える男。
急激な事態の変化に、脳が理解を拒んでいたとも言う。
病院から逃げ出し、バイクの場所に在り付く所までは良かった。
おあつらえ向きに”急な霧”まで出てきて、セルの視界から逃れられていたからだ。
天にも恵まれたかと思い、後はセルを音で適当に引き付けてから撒いてしまえばそれで終わり、そう考えていた。
乗り慣れないバイクに体を合わせるために『イシュメール』に変化して、いざ走らせた所その時までは。
「…ん、火花?」
道路を走ってすぐの進路上で、虚空に走る閃光、もとい火の粉。
それが猛烈な業火へと変異して、中から燃え盛る大男が顕現した時から、事態は急変していった。
直後にバイクを止めたのは正解だった。
男が現れてすぐに飛んできたセルの気弾が、バイクを進めていたら当たっていたであろう場所、即ち燃える男に直撃したのだから。
「うっひゃあぁぁ!!?」
情けない声を上げるのも仕方の無い事だろう、一歩間違えればあれを食らっていたのは自分なのだ。
男は大丈夫なのだろうとか、そんな事を考えている余裕は無かった。
セルは此方の位置を正確に掴んでいる、そう思った時にはセルは上空から真っ直ぐ此方に迫って来ていた。
やられる、その4文字が頭に浮かんだ時、燃える男は再起した。
そうして冒頭に至ったのだ。
炎の大男が振るう拳は、まるでハエでも払うかのように容易くセルの体を弾き飛ばし、近くの岩壁に叩き付ける。
ガコンと岩のめり込む音と共に、土砂がセルへと降り注ぐ。
たった一撃で、男の持つ力が底知れぬ事に気付いたウーロンは震えあがった。
ついでに男の視線と殺意が此方に向いている事にも気付き若干ちびった。
理由は分からないが、この男はウーロンを狙っている。
もし先の一撃を食らえばどうなるかなど、考えるまでもない。
「こいつヤバすぎるだろ!?」
早く逃げよう、そうしようと急いでバイクを再始動させ、ウーロンはその場を逃げ出す。
唸るエンジンに身を任せ、地を駆けるバイク。
すれ違いざまに此方へと手を伸ばす男の手を躱し、一気に加速していく。
「ヤベェヤベェ、危なかったぜ…」
一瞬の内に男達を遥か後方へと置き去りにし、霧で見えなくなった事実に安堵する。
_ボオォッ!
「へっ?」
だが、それもほんの一時の事だと分からされるのには、時間は掛からなかった。
僅か後方で再び舞い上がる業火と、そのまた更に後方から響く飛翔音。
「オイオイオイ。」
ウーロンの呟きなど知った事かと起きる超常現象。
そして業火の中から現れる、馬に乗った燃える男。
「待て待て待て。」
焼き爛れた一角獣の如き馬が、ウーロン目掛けて駆ける。
そして残り火を引き裂いて、セルが迫る。
_ウ”ア”ァ”ァ”ァ”!!!!
「逃がすかぁ!!」
「なんでこうなるんだよぉ!!?」
ウーロンの叫びが、霧に虚しく木霊した。

『_という訳でしてねぇ。禍津星穢とやらとニュートラルガーディアンなるもの、他にも放浪者が手を組んでるようでして、多勢に無勢故に一旦戻ってきた訳ですよ、ニャガニャガ…』
グリムリパーの報告を思い出した武道。
神精樹の実の有用性を提唱された今にして思えば、破壊せずに撤退という判断は正しかった。
そして事態を把握した武道は速やかに指令を下す。
「全ての神精樹の身を持ち帰るのだ、グロローッ!」

認知世界の崩壊した特異点にて、ジョーカー達が遭遇した男もまた、その指令を受けた一人。
ジョーカーの警戒を余所に、不敵な笑い声を上げる男。
そしてそのマントを翻し、正体を現す。
「な…!?」
「あの姿は!?」
それは超人特有の筋肉を持ち合わせた屈強な肉体。
更には特徴的な角の付いた、額に『完』と書かれたマスク。
その姿は、キン肉マンにそっくりであった。
「私はネメシス、『完肉』のネメシスだ!」
思わぬ邂逅が、事態を加速させていく…

21人目

「幕間:闇夜の二人」

特異点での混沌は、さらに熾烈を極めていた。
亂世駆ける英雄、CROSS HEROESとカルデア。
策謀を張る悪党、クォーツァー・アマルガム連合軍。
救世を謳う善人、武道と丸喜。
力を喰う狂戦士、ターレス。
混沌揺蕩う剣豪、ゾロと武蔵。
世を護る守護者、サイクスと罪木オルタ。

多くの役者が特異点という演台へと上がり、宵闇の戦争が始まろうとしていた……。

そのころ、カルデアにも「リ・ユニオン・スクエアの一報」、希望ヶ峰学園爆破・全壊の一報が知らされた。
リ・ユニオン・スクエアにある超大型の学園の大爆破だ。カルデア職員は神精樹への対応もしないといけないのに、状況はさらにひっ迫する。

「……。」

そんな中、一人だけ冷静さを保っていた男がいた。
カルデアの参謀にして、世界最高の名探偵。シャーロック・ホームズだ。

「……。」

___学園を内部から爆発させるとしたら、どれくらいの力が必要だろうか?

爆破するのは超大型の建物だ。
そのうえ過去にこの学園は生徒たちによって、対災害・テロ用にシェルターのようにに改造されている。
仮にこれを周囲にある物で爆破させるとしたら、学園内設備やガスボンベ複数本の爆発では威力が足りなさすぎる。
出来て学園の1フロアを吹き飛ばせるくらいだ。

___となると、考えられる理由は事故ではなく、「外部から持ち込まれた爆弾」によってのもの。
そして自分たちの正体を極限まで隠ぺいするために、ガスボンベのある機械室を爆破し事故に見せかけたのだろう。

だが、まだ証明はできない。何しろ。

「……証拠がない。」

爆弾の破片や火薬の成分、爆破の威力を高める術式の痕などが分かれば、調べようはあるが……。
考えに考えた探偵は、静かにつぶやく

「今は、語るべきではないな。」

~深夜0:19 希望ヶ峰学園跡地~

あらゆる才能を蒐集した地獄の学園も、今となってはがれきの荒野。
調査隊や救助隊はいったん引き上げたのか、その場には人はほとんどもいない。あるのは見張りと医療班数人、そして静寂のみ。
そんな焼け野原とがれきの山に、また、黒コートの男が現れた。
しかし今回のはデミックスのように小さく体躯ではないし、シグバールのように細身ではない。
むしろ戦士、いや歴戦の将軍のようにがっしりとした肉体が黒コートの上からもうかがえる。

「……ここか。」

男は、瓦礫の山から何かを探しているようだ。

「全く。あの男も人使いが荒いな……あった。」

何かを拾い、帰路に就こうとする男。その時だ。

「…す…て……たすけて……。」
「ん?誰かいるな。」

瓦礫の奥から、声が聞こえる。かすかだが、女の子の声だ。
幸い、すぐ近くにいる。

瓦礫を持ち上げ、男は女の子を救出する。
爆破に巻き込まれたのか相当ボロボロな和服が特徴の、金髪の女の子だ。

「だれ……?」

虚ろな瞳で、彼女は男を見る。

「今はそんなことはいい。……近くに医療用のテントがあったはずだ。そこへ連れていく。」

その一言で安堵したのか、その女の子は気を失った。
男はそのまま、テントのある方へと足を進める。

「動くな。」
そんな彼を、背後から誰かが声をかける。明確な敵意と共に。

「……話はせめてこの女をテントに送ってからにしてくれ。」
「ダメだ。フードを外してこっちを向け。さもなくばその女を殺す。何、既に虫の息だ。放っておいても死ぬがね。」

皮肉にしては悪辣すぎる。
「何が目的だ。吐いたら見逃してやる。」
背後の男は淡々と問う。

黒い肌、白い短髪、その手に握られた2丁拳銃。
名は「エミヤ」。しかし今の彼が持つその名はすでに朽ち果て、心は錆びた。
嗤う鉄心を持つ男。形容するならば「エミヤ・オルタ」というべきか。

その問いに対し黒いフードの男は、ゆっくりと男の方を向き、フードを外す。
長い髪を数本に結んだ、武人の顔を持つ男がそこにいた。

その名は___ⅩⅢ機関の1人"旋風の六槍"の名を冠する男「ザルディン」。

「……これか?」

ザルディンの手には「黒い破片」が握られていた。

「……魔術強化型・C4爆弾の破片か。マスコミ連中は事故だと認識していたが、実際は"ここの生徒"がこの爆弾で吹っ飛ばしたという証拠か。」
「そうだ。これが見つかったら少なからず『学園内部にいた誰かがやった』という線から脚が付く可能性があるだろう。そして、もしこの女を殺すというならこの破片は渡さない。」

男は不機嫌そうな顔でザルディンをにらむ。

「……取引か、いいだろう。」

ザルディンは振り返り、少女をテントの中へ入れた。
その後に破片を持って男へと近づく。

「この破片は好きにするがいい。」
「……了解した。会うことはないだろうさ。」

そういって、2人は背を向けてどこかへと消えた。
その後の話だが、救助された女の子は一命をとりとめたとか……。


~中央街路~
「……ふっ。案外うまくだませたな。爆弾の破片よりももう一つ、拾ったこっちの方が重要だというのに。」
リ・ユニオン・スクエアの街路にて、ザルディンはほくそ笑む。
その手には「ブラックボックス」が握られていた。

「この学園内の音声データがあれば、爆破の謎は解けるだろう。」

そういったザルディンの目の前。その看板には「カプセルコーポレーション・ラボ」と書かれていた。

22人目

「次なる戦いへの準備」

一方その頃
遺跡での激闘の後、ライラーはTPUの監視のもと、牢屋の中に入れられることになり、GUTSセレクトと甲児達は倒れてしまったマナカ・ケンゴをナースデッセイ号の中へ運んだ。

「トキオカさん。ケンゴさんは…」
「ベッドで休ませている。どうやらかなり疲れが溜まってたようだ」
「ケンゴは2年間もずっとエタニティコアの制御をしてたからな。その分の疲労が一気に来たんだろうな……」
「なら、起きるまでゆっくり休ませてやるか」
「そうですね」

「あれ?正義超人の皆さん、さっきよりも人数減ってませんか?」
「あぁ、ロビンマスク、ウォーズマン、ブロッケンJrの3人はさっきの戦いのあと俺たちとは別行動を取ることになった」
「別行動?」
「あぁ、さっきの戦いでゾンビみたいなやつらが現れただろ?そのことで少しな」
「そうなんですか」

「………」
「どうなさいましたかバーサルナイト殿」
「……さっきの魔物達のことで少しな……」
「ジオン族と私が特異点で戦った魔物達のことですね」
「あぁ……騎士アレックス殿が特異点で戦った方の魔物達はCROSS HEROESの一員である別の世界の勇者アレク殿が居た世界の魔物なのだが……どうやらジオン族の魔物と一緒に現れたのは今回が初ではないらしい」
「というと?」
「テリーマン殿とルフィ殿、そして悟空殿が神聖樹なる巨木の調査に向かった際に、クォーツァーの機械兵(カッシーン)と一緒にジオン族とアレク殿の世界の魔物も現れたようだ。
更に甲児殿達から聞いた話では世界各地に怪獣と異世界の魔物達が次々と出現していたようだが、ジオン族とアレク殿の世界の魔物は同時に出現することが多かったそうだ」
「……偶然、と言うには出来すぎてますね……」
「そうだ……考えられる可能性は2つ。
1つはジークジオンがジオン族だけではなく別の世界……つまりはアレク殿の世界の魔物を手駒として利用している。
もう一つはアレク殿の世界の魔物を支配している存在……いわば魔王がジークジオンと手を組んでる……恐らくはこの2つのうちのどちらかだろう」
「なるほど……どちらだとしても、奴らの戦力は本来よりも増大してるでしょうね」
「あぁ……特に後者の場合は、ジークジオンだけではなくその魔王も倒さないといけない。その為にも我々とは別行動しているアレク殿にこのことを伝えねば……」


「それで、これからどうするんだ?」
「実は先程テッサ艦長から連絡があってな」
「テッサ艦長から?」
「あぁ、なんでも別の世界からやって来た『ゼンカイジャー』なる者達を保護したようだ」
「ゼンカイジャー?」
「あぁ、別の世界で戦ってた戦士らしい。
……で、ここからが本題なんだがそのゼンカイジャーはどうやら別の世界へ移動する手段を持っているようでな。
今回、彼らの協力のもと、特異点と呼ばれる場所にCROSS HEROESの内の何人かを選抜隊を選抜隊として向かわせるそうだ」
「特異点……私や宗介殿が飛ばされた世界ですね」
「キン肉マン達がいるところか!」
「そうだ。それでこちらからその選抜隊に加わりたいメンバーがいるかどうか聞いて欲しいと連絡が来たんだが……」
「なら我々正義超人を行かせてくれないか?」
「特異点には俺たちの仲間であるキン肉マン達がいる。彼らを助けるためにも行かせてくれ」
「わかった。ではこちらからはテリーマンさん、ラーメンマンさん、ウルフマンさん、ジェロニモさんを選抜隊のメンバーとして加えてもらうようにテッサ艦長には伝えておきます」
「ありがとう」
「つってもどうやってテッサ達のところへ行くんだ?」
「今のところはこっちへ来るときに使ったあの宇宙船を使うつもりだが……」
「……テリーマン殿、皆さんをトゥアハー・デ・ダナンへ送るのは私に任せてくれませんか?」
「騎士ガンダム?」
「私には『ターン』という魔法がある、それを使えばトゥアハー・デ・ダナンとこのナースデッセイ号を自由に行き来することができる」
「アレクのやつと似たような力使えんのか!」
「それに私もトゥアハー・デ・ダナンでやらねばならない用事がある」
(トゥアハー・デ・ダナンからなら、別行動中のアレク殿と連絡を取ることができる……なんとしてでもこのことをアレク殿に伝えなければ……)
「……わかった、頼んだぜ騎士ガンダム!」
「はっ!」
こうしてテリーマン達正義超人はバーサル騎士ガンダムと一緒に魔法『ターン』でトゥアハー・デ・ダナンへと向かった。

「さて、テリーマンさん達が特異点へ行ってる間、我々も準備しないとですね」
「準備?なんの?」
「……バードス島へ攻め込む準備だ」
「バードス島?」
「前にDr.ヘルがアジトして利用してた島だ」
「今回の戦いでDr.ヘルが生き残っていることが判明した以上、恐らくはあそこを再び利用してる可能性が高い……」
「なるほどな、他の敵違ってアジトの場所が大体わかってるから、早い段階でぶっ潰しに行くってわけか」
「そういうことだ。クォーツァーとアマルガムによる同盟やジェナ・エンジェル達、更には完璧超人に悪魔超人、そして異世界のモンスター達……我々が戦わなければいけない敵がここまで多い以上、それらの敵との戦いに集中する為にも居場所がある程度特定できてるDr.ヘルとその協力者は早い段階で決着をつけておきたい。
その為の準備としてまずはこちらへ向かっているというクルーゾー大尉達と合流、その後は光子力研究所へ向かう予定です」
「今回は前回と違って、Dr.ヘルに力を貸している奴らがいる以上、あの時以上に厳しい戦いになるかもしれないからな……」
「晴明にドフラミンゴ、それにリンボとかいうよく分からねえやつか……」
※この時点ではスウォルツもDr.ヘルのところにいることを彼らはまだ知りません。
「リンボ以外は確か皆さんと因縁のある者達ですね」
「あぁ、アイツらがなに企んでるか知らねえが、今度こそケリをつけてやる!」
こうして特異点への突入、そしてDr.ヘル一派との決戦に向けた準備が行われることとなったのである。

23人目

「CROSS HEROES、特異点突入す!」

――カプセル・コーポレーション。

 悟空達からリ・ユニオン・スクエアについての話を聞かされた
ゼンカイジャーの面々。

「ほーん、あちこちの並行世界から飛ばされてきた連中を保護してる連中もいれば、
世界をぶっ壊そうと企んでる連中もいるってわけか。
随分とカオスだねぇ、この世界の状況は」

 ジュランは腕組みしながら言う。

「なあ介人。このまんまじゃ、トジテンドの奴らみたいに
あちこちの世界がメチャクチャにされちまうんじゃねえのか?」
「うん。放ってはおけない!」

 ジュランの言葉に介人は強く同意する。

「だったら、ゼンカイジャーとしてこの人たちを助けてあげないとね! 
俺たちならきっとできるよ!!」
「そうだな介人。俺たちゼンカイジャーならどんな困難でも乗り越えられるぜ!!」

「それじゃあ……」
「っつーわけで、俺たちもアンタらに同行させてくれや。よろしこ!」

 かくして、機界戦隊ゼンカイジャーがCROSS HEROESの新たな仲間となったので
あった。

「ふ~ん、凄いわね。このセッちゃんって鳥……
並行世界を自由に行き来出来る機能だなんて……
これを造った介人くんのお父さんとお母さん、間違いなく超がつく天才よ」

 ブルマはセッちゃんを持ち上げ、色んな角度からその構造を眺めつつ
感心したように呟く。

「これなら、私のワームホール発生装置ももっと精度が高いものを造って
ルフィくんや騎士ガンダム達も元の世界に帰してあげられるかも……」
「ホントかぁ!? ブルマ!」

『むむむむむむ……このリ・ユニオン・スクエアに強い影響を与えている並行世界の反応を検知したッチュン!』

 セッちゃんは忙しなく飛び回りながらそう報告する。

「それって……?」
『本来、並行世界同士はお互いに干渉し合わないよう、次元の壁に隔たれているもの……
だけど、グイグイこっちに迫ってきて今にも融合しそうな程に
激しくぶつかり合ってるッチュン!』

「よく分かんねぇんだけんど……そうすっと、どうなるんだ?」
『最悪の場合、この世界そのものが壊れちゃうかも……』
「なんですってぇ!!?」

 ブルマの絶叫が響き渡る。
セッちゃんの言う世界……それは神精樹によって今まさに崩壊の危機を迎えていた
特異点世界のことであった。特異点の存在が確定に近づきつつあることで、
リ・ユニオン・スクエアにも徐々に歪みが生じ始めていたのだ。

「そんなことになれば、私たちもただでは済まないわ!」

「どうにかならないの? ブルマさん!」
「……一つだけ方法が無いこともないけど……」
「本当ですか!?」

「悟空!!」

 一度訪れた場所に飛ぶ事が出来るバーサル騎士ガンダムの「ターン」の魔法で
カプセルコーポレーションに現れたテリーマンら正義超人の面々。

「彼らがゼンカイジャーと言うチームだな?」
「ああ。オラ達に力を貸してくれるってよ」
「それはありがたい。並行世界を行き来出来ると言う彼らの力で、
是非俺たちをキン肉マンがいる特異点と言う場所へ連れていってくれないか?」
「もしかして、さっき言ってたこの世界とぶつかり合ってるって言う並行世界の事かな?」

 ソウゴの言葉にテリーマンは首肯する。

「騎士アレックスから聞いた。その特異点って場所には俺の甥……
東方仗助も迷い込んでいる可能性が有るらしい。
だとすれば、放っておくわけにはいかない」

 承太郎もテリーマン達に同行していた。

「トゥアハー・デ・ダナンはバードス島のDr.ヘル一味に強襲をかけるそうだ。
いよいよ、最終決戦が始まるようだぜ」
「そっか……んじゃ、オラ達はその特異点とか言う場所に行ってみっか!」

『これだけ反応が近しいと、チャンネルを合わせる必要も無いッチュン! 
早速、時空転移するッチュン!!』
「ご武運を。私は、この事をテスタロッサ大佐殿へお伝えして参ります」
「すまねえ。頼むな、騎士ガンダム!」

 セッちゃんが翼を広げると同時に、
ゼンカイジャー/悟空/ソウゴ/正義超人軍団/承太郎たちは光に包まれる。
そして次の瞬間、彼らは特異点の世界へと跳んでいた。

「な……!?」

 悟空は唖然とした。以前、ルフィやテリーマン、ピッコロや天津飯と共に
破壊したはずの神精樹……それを遥かに上回る規模の大樹が天高く聳え立っていたからだ。

「悟空……! これは確か……!!」
「ああ、こいつは思ってた以上にヤバい場所みてえだぞ……
これがあるっちゅう事は、ターレスの奴がまた悪さしに来たんか?」

「ぬぬぬ……まるで……この世の終わりみたいな光景なんだが???」
「……こんな世界がリ・ユニオン・スクエアと融合しようとしてるだなんて……
そんな事になったら人間ちゅわんや動物ちゅわん達はどうなっちゃうのさ!?」
「おおおおお、どうしてこのような事になってしまったのでしょう!? 
何故!? わたくし、とても気になってしまいます! 是非とも知りたい!!」
「どう考えても放置してたら不味いだろ、こりゃあ……」

 ついに、長らくの間多くの謎と混沌を含んだ特異点へと足を踏み入れる事になった
CROSS HEROESの面々。
果たして彼らを待ち受けるものは希望か? 絶望か?

24人目

「守護者と復讐者/今と未来」

~悟空たちが来る少し前の特異点 神精樹の森~
神精樹の前に到着していたとはいえ、依然それは成長を続けている。
周囲の森はさらにさらに欝蒼としはじめ、その密度と範囲はジャングル、樹海と呼べる領域へと入る。

「本当に、ここ通るの?」
「ああ、通るしかあるまい。最短距離だ。」

前方には、鬱蒼としている上に夜であることを加味しても暗すぎる森。
しかし、後ろに戻る時間はない。
成長をし続けているのだ、早く伐採しないとこの世界は終わる。

その時、サイクスは見た。
「あれは……人か?落ちてくるな。」

空中から、煙と共に人型の何かが堕ちてくる。

ズシャ!
近くの茂みに、何かが落ちた音だ。

「おい、空から人が降ってきたぞ……」
「あら、ちょっといい男……じゃなかった、大丈夫!?」

「う、うう……」

男は先ほど何かがあって負傷したのだろう。苦しそうだ。

パチパチ……

「う……ここ、は……?」
小さく燃える焚火の音で目を覚ました男。トランクス。
彼の周囲には、焚火を囲うように4人の男女が座っていた。

3本の刀を持つ緑髪の男剣士。
2本の刀を持つ美しい女剣士。
青い髪と鋭い眼の狼の如き男。
白髪で赤い眼のやさぐれた女。

どうやら彼らは、共通の目的で行動してる。もちろん彼もそう判断した。

「お目覚めか。」

サイクスが目を覚ましたトランクスに声をかける。

「あの……ここは……?」
「神精樹特異点。ほら、あのクソでかい樹のせいで大変なことになってる空間だ。」
罪木オルタがぶっきらぼうに答える。

トランクスは、今以て成長をやめぬ大樹を見上げる。
もはや月を超えて極限の成長をし続ける神精樹は、星にとっての絶望の象徴ともとれる。

「あれが……、そうだ。悟空さんに会わないと……!」

その場から離れようとするトランクス。
しかし、墜落したすでにタイムマシンは燃え尽き修理でもしない限り使い物にはならない。

「……どうしよう。」
「我らについてこい。そうしたら道中で出会えるかもしれんぞ。」
サイクスは無表情に、しかし信頼した声で誘いを持ちかける。

トランクスは、この誘いに乗った。
「わかりました。一人だと、心もとない。」

道中、トランクスはふと思い出したかのように聞いてみる。
「そういえば、皆さんの名前を聞いていませんでしたね。」

「ゾロ。」
「武蔵、宮本武蔵よ。」
「……サイクス。」
「罪木蜜柑……オルタ?って言えばいいかい?」

あれ?とトランクスの首がかしげる。
「え?」
そして、腑に落ちない声で、罪木オルタに問う。

「いや、罪木…ってあなた、……別人……ですよね?僕の知ってる罪木蜜柑とは……全然……雰囲気が違う。」

そういえば、とでも言わんばかりにトランクスは語り始める。

「確か……あなたは希望ヶ峰学園77期生であの事件の後、その類稀な医術の才能で多くの人を救ったと聞いていましたが……。」

電脳世界でのコロシアイの後、脳死状態にあった彼女は「未来機関」の手によって救われ、後に77期生全員、無事に学園から脱出。
その後は過去の贖罪のために人助けに奔走したと、トランクスの口から語られた。
タイムパトロールであり、本来なら未来の世界で生きている彼のことだ、こういう情報も知っているのだろう。

「へぇ~、あっちの世界のあたしはそんな感じだったのか。」
「はい。でも、今のあなたは白髪で赤い眼で、雰囲気もまるで別人だ……。」

「一体、どういうことなんでしょうか?」

本来の彼女は黒いざんばらな髪が特徴の、あまりにも陰気くさい少女だ。
それ故に凄惨ないじめにあっていたのだが、今目の前にいる彼女は別人のようで本人。

「あんたが知ってるのが正史のあたしさ。んで今のあたしは……その……『並行世界』のあたしだ。」
「並行世界の……?」

罪木オルタの口から、自分の生まれた訳が語られる。
「あたしの脳に刻まれているのは、中学3年のころまでの記憶さね。それも、3月27日に首吊り自殺をした時の記憶まで。
今際のあたしは、あたしをいじめた連中に対する復讐心を抱いた。その時『世界』と契約したんだよ。『胸糞悪い、せめて復讐させてくれ』ってな。
んで、生まれたのがあたしってわけだ。要するに「世界に復讐を誓う代わりに世界を守るための道具になる」契約をした世界のあたしだと思えばいい。」

「へぇ~、本当に抑止の守護者みたいな感じで生まれたのね。」

「正史(ほんとう)のあたしは誰かを救い尽くすことで過去の贖罪をし、外典(いま)のあたしは悪党を殺しつくすことで世界を救済する。
結局あたしは、誰かに尽くすことしか能がないんだろうな。」

表情こそは笑っていたが、その声はどこか不満そうだった。
やはり、自分の夢がかなわなかった時点で満足はしていないのだろう。

と言っていると。

「悟空……! これは確か……!!」
「ああ、こいつは思ってた以上にヤバい場所みてえだぞ……
これがあるっちゅう事は、ターレスの奴がまた悪さしに来たんか?」

空に、地上に、大勢の戦士が集った。
当然、その中にも。

「おっ!トランクス!おめぇもここにいたんか!!」
オレンジ色の戦闘着。特徴的な髪型。
そして背中の「悟」の字。
____間違いない。彼だ。

今と未来が、また出会った瞬間だ。

25人目

「巨人と超人」

「助けてくれぇーーー!!」
燃え盛る騎兵と山吹色の人造人間に追われ、ウーロンは悲鳴を上げながら霧の中をバイクで駆ける。
無論、無事に生き残る為にである。
こんな所で死んでたまるか。
右に炎が走れば左に傾き、左に閃光が走れば右に戻る。
そうしてすぐ後ろで騎兵と人造人間がぶつかり合い、馬の蹄の音や羽音が響き渡る中、ウーロンは必死になって走り続ける。
そして少し距離が開けば、近くより業火と共に燃える男が現れ、セルも追従してくる。
「ホント何なんだよこいつ等ぁ!しつけぇよぉ!?」
彼の言うように、この応酬は先程から何度も繰り返されてきたものである。
一度燃える男とセルがぶつかり合って距離が離れた時は安堵したものだったが、轟音と共に再び背後へ現れてからは安堵の文字は二度と浮かばなくなっていった。
ついでにウーロンの眼から段々とハイライトが消えていったものだ。
もっとも霧の中なので差し込む光も無いのだが。
そして逃げ続けている内に、ふと沸き立つ疑問。
あの燃える男は一体何者なのか。
何故自分を追ってくるのか、いやそもそもあれは何だ?
そんな考えが脳裏に浮かんだのは、セルも同じだった。
何故私の餌を執拗に狙うのか、超能力の様に炎を生み出しそこから現れるのか?
行動原理も現象も、セルにさえ解き明かせない謎であった。
ちなみに燃える男は餌にはカウントされていない。
生体エキスは愚か、実体すらあるか怪しいものである。
閑話休題。
「んん…?今度は何だ!?」
そうこうしている内に、ふと霧の中に一際濃い闇が見えてくる。
その正体を探るべく目を凝らす。
「…子ども?」
霧の中から浮かび上がってくる影の正体は、宙に浮く子ども。
真っ黒な大人用の服を着た、ガスマスクで顔を覆いつくした茶髪の少年。
見えたのは一瞬ではあったが、それだけでも事細かく脳裏に刻まれる程に印象的だった。
そして子どもとすれ違った直後、視線を子どもから前に戻した時。
視界いっぱいに、巨人の影が浮かび上がっていた。
「っ!?」
ヤバい、そう感じた瞬間にはもう遅かった。
巨人の影は両腕を振り上げ、勢いよく振り下ろす。
それはまるで隕石の如き威力を以て、ウーロンへと襲い掛かる。
「うわぁっ!!?」
間一髪で直撃は免れたものの、衝撃波によってバイク諸共吹き飛ばされてしまう。
走馬灯の如く遅くなる視界の中、バイクの鏡面が宙を舞う己の体を映し出す。
そこには変化の解けた、自分本来の姿。
その後ろに、あの子どもも映っていた。
まただ、あの子どもだ。
呆然と地面に叩きつけられ、斜面をゴロゴロと転がり落ちていくウーロン。
幾多の打撲を全身に受け、明滅する意識。
「チキ、ショー…死んで、たまるかよ…!」
それでもウーロンは諦めない、こんな所で死に急いでたまるかと、必死に起き上がる。
まだ生きているならば足掻いてやると、全身を襲う激痛に顔を歪め、ふらつきながらもバイクの元へと辿り着く。
だがそんな彼を覆いつくす巨人の影と、蹄の音を立てて立ち塞がる燃え盛る男。
まさに絶望の象徴たる怪物達であり、ウーロンの顔が恐怖に染まっていく。
「あぁ…こりゃダメかもしんねぇ…」
身の竦んだ身体は動かず、迫り来る巨体を前に、ウーロンが死を覚悟する。
「…無駄足だったか。」
セルもまた、霧と共に謎に包まれた巨人を前に、ウーロンの死を確信していた。
折角の生体エキスをふいにする事になるが、今の力であの巨人と燃える男を相手取って無傷でウーロンを襲えると思う程、うぬぼれてはいない。
特にあの巨人さえいなければ。
二人の思惑は、そこに帰結していた。
当然だがウーロンを助けようという気は欠片も無いセルは、踵を返しその場から去る。
そして残されたウーロンを狙うは、今だ全貌の見えぬ巨人と燃える男。
逃がす気が無いと言わんばかりに燃える男がその腕を振るい、炎の壁がウーロンを囲う。
逃げ道を塞がれた、そう理解した時には、視界には巨人の足が振り上げられる光景が映っていた。
次に何が来るかなど、明白だ。
「ちくしょぉおおおお!!」
そう叫びながら、それでもと。
無我夢中で地面を転がった。
直後、凄まじい衝撃波と共に響き渡る無機質な轟音。
_ギイィィ・・・!
「……はへ?」
それが、巨人の足が何かと拮抗する音だという事に気付いた時、自分が生きている事実を認識できた。
次いで湧いた九死に一生への疑問は、見上げた空で巨人の足を支える三人の男の存在によって解消された。
「よう!ウーロン、だったか!?」
「何やら狙われているようだな!」
その者達は正義超人と謳われる友情の使徒。
ドイツ代表ブロッケンJr.と、ロシア代表ウォーズマン、そしてその師匠でありイギリス代表たるロビンマスクであった。
「ああ、助かったぜ…って、あんたら何で?」
助けられたウーロンは、何故ここにいるか聞きたい気持ちがあった。
「何、『巨人』を追っていたの、さ!」
「どうやらこの巨人、少なくとも足は機械らしいな。」
そんなウーロンの疑問に、機械で出来た巨人の足を抑えるブロッケンJr.が答える。
ウォーズマンの指摘通り、その足は幾多の装甲板とフレームから成る、アンカーの付いた一種の機械アームだ。
正体が割れ、機械と分かった今、ウーロンの中に巣くっていた畏怖は身を潜め、体の竦みも自然と無くなっていた。
「おっかねぇ…けど、ともかくありがとよ!」
「礼はいい、早く逃げな!」
動くようになった体に叱咤を掛け、再びバイクの元へ駆けよるウーロン。
だが、もう一つの脅威が、忘れてもらっては困ると立ちはだかる。
_ウ”ア”ァ”ァ”ァ”!!!
燃える男だ。
「げぇー!?しまった、コイツが居やがった!」
気付くのが遅いとでも言うのか、男が一気に詰め寄ってくる。
「あぶねぇ、ウーロン!」
その警告さえも遅く、燃え盛る両手がウーロンを捉える。
…かに思えた。
「…あ、あれ?」
ピタリ、と。
時が止まったかの如く、燃える男はウーロンの眼前で静止していた。
まるで興味を失ったかのように、その炎も消えかけていた。
「と、とにかくラッキー!」
静止した男の脇をすり抜け、今一度バイクに跨るウーロン。
そういえば『変化』が解けていたな、とバイクの鏡面に映る自分を見つめ、再度変化しようとした時だった。
『ザザ・・・無事か?』
バイクに備え付けられていた『通信機』から、イシュメールの声が響く。
突然の事に驚きながらも、通信機を手に取り返事をする。
「その声…おう、こっちはギリギリ生きてるぜ!」
『良かった、此方も無事に『用事』は済んだ、今『回収』するぞ。』
「おう!…今なんて?」
勢いのままに返事を返し、次いで『回収』という言葉に疑問を持った時。
バイクの両端から、バルーンが噴出する。
「へ?」
「ん?」
ウーロンの間の抜けた声に反応したウォーズマンが見たのは、バルーンによって宙に浮かぶバイクとウーロンの姿だった。
「うわぁははぁぁ……!?」
それも一瞬の事で、次の瞬間にはバイク諸共ウーロンは空高く飛翔していった。
「なんじゃありぁ…」
口をあんぐりと開けて見上げたブロッケンJr.に、ロビンマスクはこう言った。
「あれは、フルトン回収と呼ばれる装置だ。」

26人目

「燃え散る希望」

~希望ヶ峰学園爆破の30分前~
「早くここから出ないといけないし……。」

封鎖された絶望の牢獄。
内部で仕組まれた惨劇が生徒を襲う。
死体の山はだんだんと増えていく。

ここ、コロシアイの場で燦然と輝く「超高校級の希望=苗木誠」は、学園に閉じ込められ眠らされた「希望ヶ峰学園77期生」の救出に向かっていた。
しかし、ここでもまた凄惨なデスゲームに巻き込まれてしまったようで、時間を急いでいる。

「禁止行動で廊下を走ることはできないし、でも急がないと……。」

禁止行動=廊下を走る、これをすれば自分は間違いなく死ぬ。
それは彼の手に黒幕の手によって付けられた腕輪のせいだ。

焦りによって生じた汗が、彼の頬を伝う。
しかし、救済の希望は。もう打ち砕かれていた。

「振り向くな苗木誠。助けを呼んだら撃ち殺す。」

突如握られる生殺与奪。
背後に誰かがいる。
ガチャ、という音から察するにこの音の主は、銃だ。
自分___苗木誠の背後に男がいて、拳銃を突き付けている。

そしてこの男は、明らかにここの人間ではない。しかし、その声からにじみ出る殺意は本物だ。

「何の用ですか……?」

男は無感情に言い放つ。

「俺の指示通りに動け。指示とは違う行動を取れば、貴様を殺す。」

機械のような行動。
無駄のない発言。
無機質な感覚さえ覚えさせる。

それゆえに、とても恐ろしい。
まるで暴走したAI兵器に、生殺与奪を奪われているようだ。

「わかった。どうすればいいんだ……?」

「ふっ、素直な奴だな。惨めな希望らしくもう少し抗うかと思ったが。まぁいい、これを持って指示通りに動け。余計なことをしゃべらずにな。」

皮肉を言いつつも、その男は苗木に、黒い手のひらサイズの箱を渡してある場所へと歩かせる。
その位置は地下。換気用、暖房用の機械が連なる部屋だ。
そんな部屋の奥にある、まるで物置のような小部屋に連れていかれる。

「この部屋のどこでもいい、その箱を置け。」

苗木は言われるがままに、黒い箱を床に置く。
その意図はわからない。なんだ?何が目的だ?

「あの、何が目的なんですか……?この箱って……?」

当然帰結する問いをする。
何が目的なのか、気になって仕方がない。

「おしゃべりな奴だ。そんなに知りたいのなら教えてやる。」

カチッ。
謎のクリック音の瞬間、黒い箱から電子音が鳴る。
『起爆装置作動、爆発まで、残り60秒。』

時限爆弾だ。苗木がそう気づいた瞬間、背後の男は銃弾を彼の脚に撃ち込む。
当然、脚に撃ってもそうそう致命傷にはならないが、移動する為の脚を怪我されては満足には動けない。
つまりは、この状況では爆破までには地下から逃げ切れない。

「ぐああああ……ぁあ……お前……は……。」

苦しみ悶える。それでも苗木は、敵の顔を睨む。
___黒い肌、白い短髪、白黒の二丁拳銃。
背後にいた男は、あまりにも冷酷な瞳で少年を見る。

「地下、それも最奥の位置だ。叫んで助けを呼んでもいいが、この距離だ。助けなんか期待しないほうがいい。」
エミヤ・オルタ。抑止の守護者の果て。嗤う鉄心。
それが男の正体だった。

「待て……くっ……。」

這いずり、エミヤ・オルタに追いつこうとするも、距離は次第に遠ざかっていく。

「さよなら、苗木誠。」
希望をへし折る一言。まるで決めセリフのように吐いた後鉄心はその場を去る。

「あ……。」
心が砕け散り、遂にその場で伏してしまった苗木。
そして、非情にも______秒の経過を告げる電子音は60回鳴ってしまった。

~その5分後 リ・ユニオン・スクエアのニュース番組にて~
「臨時ニュースです。きょう未明希望ヶ峰学園で謎の爆発事故が発生、死者は数十名、負傷者は……。」
モニター越しにも、その惨劇は映っていた。

「ひどい……。」「なんてことだ……。」「燃えている……。」

轟々と燃える炎、黒煙も空中に舞い上がり、惨劇の重大さを演出している。
愕然、落胆、絶望。
あらゆる才を蒐集、管理した未来を導く若者が。
今は炎に飲まれ灰と化した。
救助に勤しむ者たちもいるけれども、それでも生還は絶望的なようでその表情は浮かない。

それは巨大モニター、全てのテレビ、ラジオ、果ては動画サイトまでそのニュースが伝えられた。
やじ馬から専門家まで、多くの人間が考察と思考を広げた。

しかし悲しいかな、犯人も真犯人もついにわからず。
ただ彼らにできることは、希望たちの生存を信じることくらいだった。

「え?まだ早いって聞いたけど……。」
その様子を遠目から見た男、デミックスは何かをいぶかしんでいた。
まだ早い。シグバールたちがかかわる計画のうちにもこれは入っていたのだが、まるで時期早々だと言わんばかりに。

~学園爆破より19時間と42分経過後 ザルディンは~
「ここか。カプセルコーポレーション・ラボは。」
ドーム状の建物。その中心に大きく書かれた「CAPSULE Co.」の文字。

インターホンを押し、マイク越しに声をかける。
「もしもし、希望ヶ峰学園爆破の一件について、お話をしたいのですがいいですか?」

27人目

「国境なき軍隊」

「ダイヤモンド・ドッグズについて、一部判明した。」
トゥアハー・デ・ダナンのCICにて、シズマ会長の言葉を聞き入る艦長、テスタロッサ大佐。
報告会の始まりである。
先ずは現状の確認からという事で、各部署からの報告を簡潔に纏まったものとして話し始めたのだ。
『まず創設者だが、名はカズヒラ・ミラー。』
それを聞き、艦長席を立つテスタロッサ大佐。
創設者の名前には聞き覚えがあったからだ。
「カズヒラさん…もしかして、あの『MSF(国境なき軍隊)』に所属していたカズヒラ・ミラーさんですか?」
『如何にも、その人物だ。』
テスタロッサ大佐の疑問に、応と答えるシズマ会長。
テスタロッサ大佐が驚くのも無理はない。
何故なら彼女の言うとおり、カズヒラ・ミラーが所属していた私設武装組織、MSFはミスリルと浅からぬ関係を持つ、強大な組織であった。
嘗て、ソ連崩壊に伴う冷戦終結という情勢において、中東でテロリストやゲリラを鎮圧し始めた事で名を馳せ始めたMSF。
その中で、対テロを始めとする作戦行動をするミスリルがMSFと同調し、一種の同盟関係を築くのはある意味当然の事であった。
しかし国という背景を一切持たない彼等は、組織を拡大する中でその活動の幅を次第に全世界へと広がっていった。
同時にその武力もまた強大なものとなっていき、彼等の活動に伴う資金調達やインフラといった経済効果、言わば『戦争経済』とも言える武力介入の影響力は、アメリカや中国といった大国を凌駕する程にまでなっていたと言われている。
だがその活動は、ある時を境に突然、何の前触れもなく終焉を迎えた。
ある日、MSFの本拠地であった洋上プラントが跡形も無く沈んだのだ。
原因は不明、その前兆として国連の査察団が入った事が上げられたが、真相は闇に葬られていた。
元より、彼等の存在は裏社会のみで通じるものであった故に、情報は無いに等しかった。
「そうですか…あのカズヒラさんが。消息が掴めず仕舞いでしたから…」
彼等の消滅は、戦争という需要に対する供給の急激な過疎化を招いた。
そもそも、ソ連崩壊という戦争需要があったからこそ、彼等の組織拡大は成せたもの。
即ち、それだけの戦乱が全世界には渦巻いていたのだ。
Dr.ヘルやレッドリボン軍といった脅威もまた、そのひとつであった。
そこからMSFとミスリルが一手に担っていた私設武装組織という供給に火が着いたのは、当然の結末であった。
MSFの損失という大きな穴を抱えた各国からの要求に答え、戦乱を収める日々。
さらには彼等の穴埋めをするように各地に乱立する新規の私設武装組織の数々。
それ等の活動が引き起こす新たな戦乱、私設武装組織同士の争い…脳殺の種は尽きない。
そんな中でMSFの真相を探る事等、到底不可能であった。
何しろ、ミスリルもまたその活動範囲が余りにも広すぎた。
それこそ地球の裏側で起きている紛争にまで関与する勢いである。
結果、MSFという相方の行方は知れず仕舞いに終わっていたのだが…
『…あの件については、この場では後回しにする。』
シズマ会長の言う通り、今更詮索しても仕方のない話だった。
『問題は今、彼等が何を目標としているのかという事だ。』
「はい、今になって再び活動を開始した理由もまだ分かっていません。」
シズマ会長の言葉に相槌を打つテスタロッサ大佐。
『バッファローマンが彼等と共に活動している事もまた気になっている、それも悪魔超人として。』
嘗て、悪魔超人から裏返った正義超人として名を上げていたバッファローマン。
今ではダイヤモンド・ドッグズに所属する悪魔の戦士として、世界中にその名を轟かせている。
彼も含めて、行動原理を正しく理解している者は皆無だ。
しかし。
「それでも、彼等が悪事にだけは加担しないと考えています。」
『うむ、私も同意見だ。恐らくはミラー氏もそうだろう。だからこそ我々は彼の救出と合流を急ぐべきだと考えている。』
「救出、ですか?」
シズマ会長の提案を聞き、彼女は疑問を口に出す。
救出とは一体どういうことなのか?
その疑問に答える様に、艦長席のスクリーンにある映像が映し出された。
それは、先日の戦闘の記録映像。
その中央に立つ男の姿をテスタロッサ大佐は見知っていた。
紛れもない、カズヒラ・ミラーだ。
だが、映像を見る限り彼等の戦況は芳しくないように思えた。
"深い霧"に包まれ詳しくは見えないが、ミラー側の兵士が次々に倒れる光景が映る。
対するは、エタニティコア防衛戦にて現れたあの『髑髏部隊』である。
その時の映像を巻き戻し、一時停止させるシズマ会長。
そこに映るのは、やはり髑髏部隊の異様な姿。
灰色を基調とした、死人の如き肌の兵士。
それ等がカズヒラ・ミラーを誘拐する瞬間であった。
「これは…!?」
『そうだ。カズヒラ氏は今、囚われの身だ。故に救出しなければならない。』

「うっひぃ~、全く落ちるかと思ったぜ…」
イシュメールによってフルトン回収されたウーロンは、バイク諸共ヘリに収容されていた。
急上昇するフルトンに振り落とされない様にしたり、ドラゴンワールド出身故のその姿で一騒動があったりしたが、今はヘリにて落ち着いている。
「ああいうのがあるのなら最初から言えよな、イシュメール。」
「…ヴェノム、いやスネークで良い。」
「何だよ結局スネークに戻るのか。ていうかヴェノムって…?」
「俺達がこれから行うのは、報復だ。」

28人目

「悪なる教授と舞踊家/善なる教団と絶対悪」

~リ・ユニオン・スクエア中央病院~
「先生!また急患です!爆破の被害者です!」
「なんだと!もう終わったと思ったのに……!」
「死者はもう100人を超えたとのことだ。」
「重傷者も、生徒及び教師や周辺にいた人物含めて250人を超えている。」
「ここだけじゃもう患者は入りきらないぞ!?」
「一体どれだけの被害者を叩き出したんだ!クソッタレ!」

___希望ヶ峰学園の爆破で、多くの被害者が出た。
それゆえに病院内の熱狂や不穏な空気は最高潮を迎えていた。
そこにいるだけで分かる惨劇の痕。
今以て残る、血と爆薬の焦げ付いた匂い。

希望なんてないのかもしれないけれども、
生還は絶望的だけれども。
それでも、未来の希望をつなぎとめるために。
あらゆる人間が手を尽くしている。

~中央病院 402号室~
ここにもまた、昨日の段階で運び込まれたものがいた。
幸運だった。彼女が重傷であれど意識が戻るのは、すぐだった。

「う……痛ぃ……ここは……?」
少女は、目を覚ました。
周囲には点滴の袋が複数と、自分と同じ生徒や助けに来た者たちが今も眠りの海から上がれずにいる。

「そうだ、私は……。」
包帯巻きの身体を虚ろな目とおぼつかない神経を駆動させて起き上がる。
彼女の美しかった金髪もまた、焦げ付いている。

「お目覚めかネ?」
「えーと、あんた誰?」

少女の横に、椅子に座った男がいる。
銀色の髪。海外の大学生のような服装。年齢にして19~20代前半ほど。
若さと胡散臭さの中にある、どことなく感じる拙さと知的さ。
そして悪辣さを感じる双眸。
目の前の若い男は答える。

「私は……ジェームズ・モリアーティ。そういう君は……廊下の立て札を見る限り、西園寺日寄子君かね?」
「え……なんで、ここにいるの……?」

西園寺日寄子。悪辣なる舞踊家は目覚めたばかりか、頭の中がまだ混乱している。
モリアーティ。悪のカリスマにしてホームズ最大の敵の名を名乗る男は、いたって冷徹に答える。

「決まっている。柄ではないが君を助けるためだ。」

~????????~
「つまり、希望ヶ峰ぶっ飛んだ?」
「ああ、そうみたいだぜ。」

電話を終えたシグバール。
江ノ島は何ともなさそうな顔である。

それもそうだ。
絶望の象徴たる彼女は___才能を封鎖することが目的ではなく誰かが絶望する顔が見たいだけなのだから。

まさに、絶対悪。

「それで、この後どうする気?まさか……。」
「殺さねぇよ。お前さんは安全なところへ送るぜ。」

シグバールは笑いながら答えた。

~その後~
「あの女はどうした?」
廊下より現れた黒コートの男は、江ノ島の行方を問う。
その横には、女の子が黒いコートを着て立っている。
「帰した。殺さずとも問題はないだろ。」

女の子はその一言で憤慨したのか、壁を思い切り叩く。
「シグバール貴様なぜあいつを殺さなかった!!あのクズ女を……!」

「落ち着け■■■■■。気持ちはわかるが、奴にとどめを刺すといったのはお前だろう。その時まで殺意は抑えろ。」
「くっ。それもそうか……。」

女の子は、その怒りを渋々と沈めた。

男はその様子を見て安堵した後、あることを言う。
「しかし、奴のような悪意の化身を生かしたのはどういう意図だ?情報をばらす可能性もあるというのに。」

はん、とシグバールは笑いながら答える。
「あそこは特異点のごたごたで今人手が少ないはずだ。それに、江ノ島盾子と言えば絶対悪の象徴。俺が与えた情報は少ないうえに、いくらカリスマ性が強くとも絶対悪の言うことはだれも信用できないってハナシ。」

「なるほど。そういえばそうだったな。いいだろう。」
「いいのか?」

「特異点がある以上誰もここを抑えることは、いや気づくことすらできない。我々『メサイア教団』も、この___『存在しなかった世界』も。」

29人目

「欠けた者達」

ウーロンがフルトン回収によってヘリに収容され、なし崩しにダイヤモンド・ドッグズへ加入している頃。
それを見届けていたロビン達は、今だ全貌の見えぬ霧の巨人と相対していた。
「さて、こいつはどうしたものか…」
彼等の目の前でゆっくりと起き上がる霧の巨人に対し、ロビン達三人は警戒を強める。
そのシルエットは人型をしているものの、先の一件で機械の足が見えた事から、人間や生物の類いではない事は明らかだ。
しかし、だからといって無力な怪物でもない事もまた確かである。
「まあ、どう見ても友好的じゃなさそうだな。」
「ああ。奴は俺達にも用があるみたいだ。」
ブロッケンJr.の言葉に、ウォーズマンが肯定する。
頭部辺りから霧越しにこちらを見つめる、一筋の紅い閃光。
神話上における一つ目の巨人、サイクロプスを思わせるような、しかし極めて先進的で機械的な光は、見る者に畏怖の念を抱かせる。
それは同時に、対峙した者に底知れぬ不気味さと、巨大な存在感を感じさせるものだ。
だが、それでもなお三人には余裕があった。
これまで幾多の修羅場を潜り抜けてきた者達であるからこその、強者の余裕。
そして互いを信じる友情の力を持っている故に。
「さっきの攻撃といい、奴さんかなり本気らしいぜ?」
「ああ、あの威力なら恐らく戦車の装甲でもぶち抜けるだろう。」
「ああ、直撃すれば、な…みすみす食らってやるつもりは無い!」
そう言いながら身構える三人の心は、既に闘争へと向けられていた。
そんな時だった、霧の中から声が聞こえてきたのは。
「誰か、誰かいませんか!?」
霧の中に響き渡る、女性の声と思わしきもの。
声の方向を見れば、そこには紅蒼のモノクロタイツに白衣を羽織った女性が、困ったような顔でこの場に居た。
「誰だ、民間人か!?」
「その声は…正義超人の皆さんですか?」
女性は此方に気付くと、警戒心も無しに向かってくる。
霧に浮かぶ巨人の影には気付いていない素振りだった。
「不味い、保護するぞ!」
その瞬間、三人は瞬時に女性を庇う形で陣形を取る。
「え、何…きゃあっ!?」
「ぐぅ…抑え込むぞぉ!」
彼等の予想通り、直後に巨人の足が女性目掛けて振り下ろされていた。
三人掛かりで巨人の足を支えなければ、今頃女性は潰れたトマトの如き惨状になっていたであろう。
漸く事態を把握した様に目を見開く女性に、ブロッケンJr.は叱咤を掛ける。
「速く逃げろ!」
そう言われ、女性はよろめきながらも何とか立ち上がり、口を開く。
「ありがとうございます!」
「礼は良い、それよりここは危険だ!早く…!」
しかしその時の女性の顔を見て、ブロッケンJr.は怪訝な表情に染まる。
まるで、悪戯が上手くいった子どものような顔をしていたのだから。
「本当に…ありがたいわねぇ。」
直後、超人達の身体に異変が訪れる。
「うぅ、何だ…この、感覚は…!?」
「いし、きが……」
「ぐっ…ブロッケン、ロビン!どうしたんだ!?」
急激な脱力感と眩暈、立ち眩みといった意識障害。
そのままブロッケンJr.とロビンマスクは倒れてしまう。
その二人が倒れたのを見届け、女性はくるりとウォーズマンの方へ向く。
巨人の足は、超人の支えも無しに宙で止まっていた。
「あら、貴方はまだ意識があるのね?そういえば半分機械だったのを忘れていたわ。」
「貴様…民間人のフリを、していたか。何者、だ…?」
二人ほどでは無いが、意識混濁を引き起こしているウォーズマンが女性に問いかける。
ウォーズマンの予想通りなら、巨人は女性を踏みつけるフリをしてわざと庇わせ、その時に女性が『何か』を仕込んだのだろう。
そして女性の言葉から察するに、半分機械の自分だけはその『何か』の影響を半分に済ませられた、という事だろう。
「…人造人間の癖に、芝居が上手くなったな?21号。」
二人が話している横から、男の声が聞こえる。
それは、エタニティコア防衛戦で髑髏部隊が現れる直前に聞こえた声と同じだった。
「あら、これ位は乙女の嗜みよ?スカルフェイス。」
スカルフェイス、と呼ばれるその男と話す、21号と呼ばれた女性。
どうやら、霧の部隊の関係者で間違いないようであった。
「まあ、そんな事は今はいいわ。暴れられたら面倒だし、お仲間さんも一緒に眠って貰うわ。」
そう言うと、女性の目が赤く輝きだす。
「ぐぅ、う…」
一体何をされたのか、その途端に意識を保つことすら難しくなり、ウォーズマンはその場に崩れ落ちる。
混濁する意識の中で、最後に聞こえたのは、21号と呼ばれた女性の声だった。
「そうね、こいつ等には餌になって貰おうかしら?」



「ウォーズマン達との通信が途絶えた、だって?」
ラーメンマンの言葉に、テリーマンは眉をひそめる。
現在、正義超人はロビンマスクを筆頭とした巨人調査チームと、テリーマンを筆頭としたCROSS HEROES在留チームの二手に分かれていた。
その片割れが完全に音信不通になった事実は、少なからず彼らを大きく動揺させるには十分だった。
「あぁ、どうやら霧の巨人との戦闘中に、突如として通信が途絶えてしまったようだ。」
「あの霧の巨人と、一体何があったんだ…」
「分からない。だが、最後にウォーズマンの通信機からSOSの信号を受け取った。」
そこまで聞くと、二人は目を見合わせる。
二人の胸中には、ある一つの可能性が思い浮かんでいた。
「…罠の可能性もある、か。」
「あぁ、だが助けない訳にはいかない。」



「そんでスネーク、これからどこに行くんだよ?」
「あぁ、コイツを見ろ。」
ヘリの中で端末を見せるスネーク。
端末から立体映像として浮かび上がった写真には、サングラスをかけた金髪の男が映っていた。
「コイツはダイヤモンド・ドッグズのリーダー、カズヒラ・ミラーだ。俺達はこれからコイツを…」



『救出する。』

30人目

「混沌の極地」 

 ついに神精樹特異点に進出したCROSS HEROES分隊。
これまで、リ・ユニオン・スクエアに数々の影響を及ぼしてきた元凶の地。

「こんだけデカくなってっと、流石にぶっ壊すにも一苦労だな」
「だが、やるしかあるまい!」

 悟空、正義超人軍団たちが、この巨大な大樹を破壊せんと気を高める。
その瞬間だった――

「うおおっ!?」

 突如として、CROSS HEROESに向かって飛んでくる攻撃。

「おめえは……!!」
「グロロ~~~……よもや、この領域にまで足を踏み入れて来るとはな……
評価を改めなくてはなるまい……」

 そこに現れたのは、かつて試作型神精樹を舞台にテリーマンと激闘を繰り広げた、
あのストロング・ザ・武道であった。

「武道!! そうか……ここが貴様の根城だったという事か!?」
「奴が噂に聞くストロング・ザ・武道……
なるほど、完璧・無量大数軍のリーダーと聞いて納得できるほどの凄まじい闘気だ!!」

 ラーメンマンをはじめ、正義超人たちも、ストロング・ザ・武道から放たれる
強者のオーラを感じ取り、警戒する。

「そうだ、私こそが最強にして最高の完璧超人……そして、この神精樹の番人である!!」
「何でだ!? おめえ、こないだは神精樹をぶっ壊すのに協力的だったじゃねえか!」

 悟空が言う通り、ストロング・ザ・武道も一度は神精樹を破壊する事を良しとしていた。
神精樹の実を悪用するターレスに対し、
実の力による外的要因で強くなる事を不要と宣言した悟空の心意気に感服したからである。

「確かに私は己の力のみで自分自身を研鑽する事に邁進する孫悟空、
貴様の志には心底感銘を覚えた! だが、事情が変わった。
神精樹の力は、我が同志の悲願を叶える為に必要不可欠なものとなったのだ」
「おめえの仲間の為だと?」

「詭弁を! 神精樹はこうしている間にもどんどん成長を続けている。
このままでは、世界中を飲み込んでしまうかもしれん!
それだけではない、既に俺たちの世界にも影響を及ぼし始めている!」

 テリーマンの言葉に、他の戦士たちも同意するように声を上げる。

「新参者で話がまーったく分かんないんだが、つまりあいつは敵って事でOK?」

 ジュランが確認を取るように尋ねると、「そういう事だ」とテリーマンは答える。

「だが、我らにとっては好都合とも言える。
いずれ奴とも決着を着ける事になるだろうと思っていたところだからな」
「ああ。完璧超人の一員、マックス・ラジアルはエタニティ・コア防衛戦で倒した。
その俺たちを相手にして勝てるつもりならやってみるでごわす!!」
「ウララーッ!!」

(確かにマックス・ラジアルも強敵であった……だが、実際に拳を交えた私には分かる。
ストロング・ザ・武道はそれさえ凌駕する存在であると……!) 

 ラーメンマン、ウルフマン、ジェロニモ、テリーマン……正義超人たちは
一斉に構えを取り、ストロング・ザ・武道に向かっていく。

「愚か者どもが!! この私が、貴様らごときに後れをとると思うたか!!
まして恥晒しにも敗北を喫したマックス・ラジアルなどと同列に考えている時点で
貴様らに勝ち目などあるはずも無い~~~ッ!! グロロ~~~ッ!!」

 ストロング・ザ・武道もまた構えを取り、迎え撃つ姿勢を見せる。

「好都合……確かにそうだ。おかげで手間が省けた。
いずれは貴様の身柄を拘束するためにCROSS HEROESに直接乗り込んでやろうとも
考えていたからな」
「!? 誰だ!?」

 ソウゴの声と共に、CROSS HEROESの前に一人の男が姿を現す。

「ウォズ……それに……」

 かつて、ソウゴを我が魔王と称して付き従っていた黒ずくめの男、ウォズ、
そしてウォズと同じ装束を纏う7人の男たち――

「よく来たな。偽りの王」

 その中にあって、ひとり真紅の外套を纏う、クォーツァーの王。

「アンタは……!?」
「俺の名はSOUGO。常磐SOUGO。そして俺たちはクォーツァー。歴史の管理者だ」
「ソウゴ……だって……!? 俺と同じ名前……」

「現れたな、クォーツァー!! この惨状も、やはり貴様らの仕業か!!」

 トランクスが怒りの形相を浮かべながら叫ぶ。

「おやおや、いつぞやのタイムパトローラーまでいるのか。
これはまた随分と手厚い歓迎じゃないか。あの時はよくも邪魔立てをしてくれたものだ。
おかげで計画が随分と狂ってしまったよ。
それに、あれはトジテンド王朝を潰したと言う機界戦隊ゼンカイジャーじゃないか?
よくも次から次にうじゃうじゃと増えてくる」
「俺達の事を……!?」

「当然だ。スーパー戦隊もまた、平成ライダーと双璧を成す邪魔な存在だからな。
特にお前たちゼンカイジャーは、我々にとって最も目障りな存在だ」
「言ってくれんじゃねえの。だが、その言葉そっくりそのまま返させて貰おうか?
このメチャクチャな状況を生み出したのがてめえらだってんなら、
ぶっ倒す理由が増えたぜ!!」
「面白い。出来るものならばやってみるがいい!!」
「望むところっす!!」

「みんな、行くよ! チェンジ全開!!」

『45バーン!』
『16バーン!』
『25バーン!』
『29バーン!』
『30バーン!』

 介人、ジュラン、ガオーン、マジーヌ、ブルーン……
それぞれに一番相性の良いセンタイギアが存在する。

「やれやれだぜ……クォーツァー……神浜の戦い以来、奴らにも随分と借りがある。
あのアナザーディケイドとか言う奴はどうした? 随分としぶとい奴だったが……」

 帽子の鍔に指をかけ、承太郎はクォーツァーの王……常磐SOUGOを
鋭い視線で睨み付ける。

「スウォルツは既にクォーツァーにはいない。用済みとなったからな。
あくまで奴が持つアナザーディケイドの力のみが必要だっただけだ」

「なるほど……奴も大概だったが、その裏で踏ん反り返っていた貴様は
さらにどうしようもないクズだったという訳だぜ……スタープラチナッ!!」

 承太郎がスタンドを発現する。

「文字通り、吐き気を催す邪悪ってわけだな……」
「時を操るスタンド、か……気に入らんな。歴史の管理者である我々に対して」

「気に入らねえのはお互い様だぜ。覚悟しな、親玉……仗助を探す前にまずは貴様を裁く。この俺の『スタンド』がッ!!」

「俺の目的はジオウだ。お前たち、相手をしてやれ」
「イエス! マイロード!!」

 SOUGOの号令で、クォーツァーたちは一斉にアナザーライドウォッチを取り出す。

「変身!」

 次々とアナザーライダーに変貌を遂げていくクォーツァーたち。

「さて……決着と行こうか、ジオウ」

【BARLCKX】「変身」

 最後にSOUGOが仮面ライダーバールクスへと変身した。

「見たことのないライダーだ……!?」
「ふふふ……世界の破壊者を謳う門矢士ですら、この俺には手も足も出ず敗れ去ったのだ。
貴様はどうかな? ジオウ……」

「ディケイドが……!? くっ!」

【RIDER TIME】「許さない……変身!!」【KAMEN RIDER Zi-O!】

 混沌、ここに極まる。