眠すぐりゅ異世界転生

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1人目

眠りについた。静かな草原で目を閉じて横になる。木々の下で小鳥たちが鼻歌を歌っている。

「眠れるわけないだろ」

目を開くと空は赤と黒で覆われ、悪魔たちが互いに罵倒しあい殺しあっている。小さな針が無数に突き出したカーペット。毒煙が空気に乗って辺りに充満している。酷い匂いだ。

見てわかる通り俺は悪魔として転生した。本来悪魔は環境なんて無頓着で汚れていればいい程度のはずが中にはダークでカオスな雰囲気を好むものがいてこの赤と黒の世界はそいつが作ったらしい。いまいましいことだ。

2人目

ゆっくり眠れる場所を探すため、俺は旅に出ることにした。
とにかくここはうるさ過ぎる。

幸い俺には背中に大きな羽が生えている。
これを使えば魔界のどこへでも行けるはずだ。

赤と黒の空に飛び上がると、罵倒し合っていた悪魔達が俺に向かって突っ込んできた。
こいつらは誰にでもちょっかいを出したいらしい。

何か攻撃できるいい物は無いかと考えると、手に大きな鎌が現れた。
俺は向かって来る馬鹿悪魔に視線を定め、大きく振りかぶって鎌を凪いだ。

翼を失った悪魔たちは落ちて行った。
これでやっと旅が出来る。

3人目

幾つもの雷が走る黒い雲を悠々と切り抜けながら、俺は血より赤い空を滑空する。

空に出れば腐り果てた大気も薄いし、なにより悪意しか感じない針の大地も気にせず移動できる。

排泄音よりも聞くに堪えない悪魔共の鳴き声も、ここじゃ針が落ちる音より小さい。 最高だ。
魔界にも山脈ぐらいあるだろうし、そこを目的地にしてみよう。

山脈までは快適な空の旅でも楽しむか———そう思っていた矢先だった。

「ああ……オイオイマジかよ」

眼前に現れた異質な翼は、その持ち主が堕天使であると示していた。