テラフォーミング・プロジェクト
『本部との接続が確立しました。コールド・スリープモードを停止してください』
ピーピーと煩い機械音が、俺に命令を下す。
それに対し、俺はせめてもの反抗として『否認』を選ぶ。
『否認は、――棄却されました』
『否認は、――棄却されました』
『否認は、――棄却されました』
分かったよ。受理すればいいんだろ!? クソ、ずっと眠ってたい気分だったのに!
『受理されました。起動――承認します』
「……久しぶりに空気に触れたな。くそったれ、なんで俺がこんなことをしなくちゃならないんだ……?」
そんな独り言の最中、近くに浮かんでいるスマートフォンがピカピカと光り、音声が流れる。
『テラフォーミング・プロジェクト13th『ユダ』を開始いたします。本プロジェクトにおける任務は2つ――『過去プロジェクトの行方不明者の発見』と『テラフォーミングの遂行』です』
「分かってるさ、何度も説明してくんじゃねえ」
『あなたは3歩歩けばモノを忘れる、と聞いています』
「んなわけあるか! 俺のこと嫌いな刑務官だろ! それ言ってるの!」
機械にあたったって仕方がない。
「……ああ、くそったれがっ」
怒りの勢いのままに、まだ眠い目をこすり起き上がる。
だが立ち上がってみると、わずかなめまいに襲われた。
「あれ、なんか変だぞ」
分かっているとは叫んでみたものの、よくよく思い返してみると、自分の置かれている状況がおぼろげにしか分からない。これは、長時間コールドスリープで冬眠状態になっていたせいだろうか。
頭を軽く左右に振ってみる。すると頭部に鈍い痛みが走った。やはりそうだ。この痛みは宇宙酔いに違いない。
「くそ! いかれた任務に就かせやがって、あの刑務官の連中め。今度会ったらただじゃおかねえからな」
叫びながら目の前のスクリーンに目を移すと、遠くに青く輝く星が映っていた。
ここは一体いつの時代のどこで、母星を離れてからどれくらいの時間が経っているんだろうか。そして俺はどこの誰だっただろう。それになぜこんなところに来ているんだっけ? スマートフォンを片手にもう一度ベッドに腰を下ろし、状況を整理するために記憶をさかのぼってみる。
すると、スマホの履歴の中に、テラフォーミングに関する指示らしきタイトルを見つけた。
急いで開いてみる。
ああ、思い出したぞ。確か俺は……