軟骨魚類戦隊シャークレンジャー 

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  • 戦隊
  • 暴力描写有り
  • 二次創作
  • オリジナル創作
1人目

「「「軟骨魚類戦隊シャークレンジャー!!」」」

………なぜ僕がこんな状況になっているのか。
それから話そう。


俺の名前は牙堂克己、ただの大学生だ。
趣味はダイビング。
小さい頃から海が好きだった。

…21歳の夏休み、大学で遠い親戚でもある友の関田と共に母方の親族がいる小さな漁村に赴いた。
最寄りの駅からバスで2時間かかる。
ここに行った理由は正直なことを言うと特にない。
今思えば明らかにこの血のせいだろう。 

そうして俺たちはバスに乗った。
客は俺たちの他に一人いた。

ぱっと見20代後半だろうか…メガネをかけ、聡明そうな雰囲気だった。
どことなく神経質そうなので話しかけようとはおもわなかったが、

2時間も寂れた物悲しいバスに
乗るのだからなんだかんだで結局話しかけた。

2人目

「あの、良かったら話し相手になってくれませんか?」
「えっ、あ、その別に構いませんが。藪から棒にどうしたんです?」
 いきなり話しかけるもんだからメガネの女性は持っていたスマホを落としそうになる。
「いやぁ、実はツレと2人でこの先の漁村まで親戚に挨拶がてら、ダイビングでもやろうと思ってのこのバスに乗ったんですが、ツレのほうが寝ちまいましてね」
 気持ち良さそうに眠る関田の方に視線を移し、察してくれと言わんばかりに瞳で訴えかける。
「それで私に?」
「えぇ、何やら困った様な顔をしてたもんで、俺の手も空いてるしなんかの助けになればと思いまして」
 女性は余りに俺がグイグイ踏み込んで来るので少し困難しているらしく冷静そうな第一印象とは打って変わりしどろもどろになっていた。
 そしてしばらく沈黙が続いた後、女性は深呼吸した後決意に満ちた瞳で俺の方を見てこう行った。
「貴方、漁村のヒーローになって来れませんか?」
 俺は目を丸くして耳を疑い、言葉を失いバスの車内は再び静寂を取り戻す。
 聞こえるのは、我関せずと呑気に眠る関田のいびきくらいだ。

3人目

「今なんてい……」
聞き返そうとしたとき、不意にバスが揺れた。
「うお、あぶね」
危うく転げそうになり、慌ててひじ掛けに掴まる。
女性と身を乗り出して話していたせいで、危ない所だった。
彼女も顔を引きつらせながら懸命にひじ掛けを掴んでいる。
「ったく、何やってんだよ」
焦りながらも体制を戻して運転席の方を見た。すると、運転手の体がぐらぐらと揺れていた。顔は明らかに下に向いていて、どう考えても居眠りしているように見える。
「本気かよ、狂ってんな」
何とかしなきゃ、と思ったのと同時に、バスが緩やかに蛇行を始めた。
バスは一年前に整備された湾岸道路にちょうど入った所で、ここから右手に海岸線を見ながらしばらくは一直線に進んでいく。一般の道路と比べると道幅も広く、二車線になっている分、蛇行しても多少は問題なさそうだ。けれどそれを過ぎると、つづら折りの峠道に差し掛かる。そこまで行ってしまえば本格的にやばい。それまでに何としても運転手を起こさないと。
俺は席から立ち上がり、つり革の上の支柱の部分をしっかりと握った。
流石に眠っていた関田も目を覚まし何事かと辺りを見回している。
その時バスが大きく揺れ、座席に掴まって必死に耐えていた女性が床に投げ出された。
一度制御を失うと、バスの揺れに振り回され女性はごろごろと床を転がった。
そのたびに悲鳴が上がる。
「おい関田、その人を頼む」
「ああ、わかった」
体の大きい関田は女性に覆いかぶさるように飛びつき、その勢いのままに座席の足を掴んだ。
「おー、やるじゃん」
「あったりまえだろ。だてにラグビーをやってねえっての」
関田は女性を抱えたまま座席と座席の間に潜り込み、しっかりと体を固定した。
俺はそれを見届けてから、
「おい、起きろオッサン!」
運転手に声をかけながら前へと進む。こんなとこで居眠りなんざするなんていい根性してるぜ。
前へと進んでいくと、運転手が完全にハンドルに身を預けてぐったりしているのが分かった。そのおかげで緩やかにしか蛇行していないのだろうが、何かの拍子に体勢が崩れでもしたら、一気にハンドルが切れて大事故になる可能性が高い。
「オッサン、どっか具合でも悪いのかよ!」
叫んでも反応はない。
ようやく最前列までたどり着いたが、蛇行の幅は確実に大きくなってきていた。
手を伸ばしてハンドルを掴もうとしたが、揺れのせいで上手くいかない。
すると、ヒューという風切り音のようなものが聞こえた。音のする方を見ると、目の前のフロントガラスの端の方に穴が開いている。
「穴? どういうことだよ」
不思議に思い運転手をよく見ると、肩口には血がにじんでいた。目を凝らすと、衣服に銃創のような穴まで空いている。
「おいおい、居眠り事故じゃなくてこれじゃ狙撃事件じゃねえかよ」
言ってからその言葉に寒気がした。
つまり最初からこのバスは狙われてたってことだ。
誰かが車外から、俺達が話していたあの瞬間に運転手を撃ったんだ。
でも何の目的で?
こんな路線バスひとつ転がしたって、何のメリットもないじゃないか。
もしかして、あの女性が目的か?
漁村のヒーローがなんとかって言ってたが、まさかマジモンのヒーロー関係者のスカウトだったってことか?
答えのようなものが見えた時、ひときわ大きくバスが揺れた。
俺の体は一度大きく外へと振られ、揺り返しでハンドルへ向けて吹っ飛ばされた。
「おっしゃああ」
運転手ごとだが、俺は何とかハンドルを掴んだ。
まあ揺れの助けもあったが、俺のテンションは上がった。
あとは運転手をどかして、ブレーキを踏んでバスを止めないとだ。とりあえず狙撃の件は後から考えよう。
落ち着いて運転手の体をハンドルからはがし、席の右端の方に寄せていく。思い切って左に放り出すように入れ替わればよかったが、何だか悪い気がしてそれは出来なかった。
だが、それがあだになった。
最初は、端に空いていた穴の周りのガラスが白く濁ってへこんだ。それが合図だったかのように、フロントガラスのヒビはあっという間に全面にクモの巣を描くかのように広がっていった。
風圧でひび割れたガラスが一気に車内へばらまかれる。
フロントガラスの素材は割れても鋭利にならないような構造になっているが、バスの大きなフロントガラスが粉々になって強風と共にばらまかれたらたまったものではない。
俺は強烈な風圧とガラスの当たる衝撃に耐えきれず、顔をかばいながら目を瞑るしかなかった。もちろんハンドルはがら空きだった。
次の瞬間、体が浮いたかと思うと、一気に後ろへ持っていかれた。
咄嗟に手を伸ばして転倒防止用のバーに掴まった。何とかこれ以上後ろへ飛ばされないように踏ん張る。
突然ハンドルが右に切れ車体が大きく揺らぐ。フロントガラスが割れたことで、完全にバランスを失ったのだろう。
「おい関田、しっかり掴まれ!」
後部座席の関田に叫んで、風圧で飛ばされた俺も最前列の座席にしがみついて衝撃に備える。
刹那、バスは大きな音とともに横転し、車体を削りながら結構な距離を滑ってからとまった。
少し幅のある道でなければ、おそらくガードレールを越えて外へとはじき出されていただろう。
ガードの向こうは海岸線の崖。それを思うとゾッとした。