生意気な後輩ラブコメ

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  • 暴力描写有り
1人目

「うおおっ!?」その日、俺は人生で初めて宙を舞った。
「どうですか、私の背負い投げは。まだやりますか先輩?」
俺よりも二回りほど小さな後輩の女子に投げ飛ばされたのだ。
「うう……何が…」だが、俺は現実を受け止めきれなかった。気付いたら地面に寝ていた。
理解が全く追い付かない。
「アスファルトでの投げ技は致命傷ですし、素人を投げるのは可哀想とも思いましたが。先輩が先に手を出そうとしたんですよ」え、、、え?
「は?手なんて出そうとしてねーよ!ただ少し腕を掴んだだけで…」「正当防衛です」「過剰防衛だろ!マジで痛いし…」少し口喧嘩をしていただけだ。それもかなりしょうもない口喧嘩。
だが、手を出したといえば出した俺が悪い…のか?だが過剰防衛な気がするぞ。
「ていうかお前柔道やってたのか?いてて…」「やってませんよ。こういう時のためにYouTubeで学びました」「なんだそれ…俺に素人がどうとか言ってた癖に」
こいつは運動神経がかなり良い。バスケ部では女子なのに男子部員と練習しているくらいだ。
どうにか立とうとするが、痛過ぎて立てない。骨が折れてるんじゃなかろうか。
「しょうがないですね。肩を貸してあげますよ」そう言いながら、投げ飛ばしてくれた本人が肩を貸す。
妹の様に思ってたこいつに投げられたのはショックだ。
ほぼ不意打ちみたいな物だったとはいえ敗北感を感じてしまう。
「もう、ちゃっちゃと歩いて下さいよ。日が暮れます」「お前が悪いんだろ!というかもうあれは誰にもするなよ。被害者は俺だけで充分…」これは訴えられたら負けるぞ。「もう何人か投げてみましたよ。仮にも一番仲の良い先輩ですし、未完成の必殺をぶっつけ本番ではやりませんよ」ああ、一番仲の良い先輩ってワードで浮かれて他のワードは気にも止まらないなー。
というか、もう口喧嘩の内容も忘れ普通にいつも通り帰っている。
いや、大ダメージを喰らったわけだし普通じゃないのだが。
「というかやっぱ遅いです。もうおぶってあげるので乗って下さい」
そう言いながら一度俺から離れ地面にしゃがみ込む。
そして背中を向ける後輩。
「おい、それは流石に恥ずかしいんだけど」
「あー、そういうの良いですって。早く乗って下さい」
「悪いな…いやお前のせいで怪我してんだけど…重いぞ?」渋々彼女の背中に乗る。
「よいしょっと。うん、普通に軽いですよ。背は高いのにモヤシじゃないですか。もっと体重かけても良いですよ」
「はいはい」そう言われ遠慮なく寄りかかる。すると首元からいい匂いが漂ってくる。シャンプーだろうか。
そんな事を考えている内に歩き出す後輩ちゃん。
こうして俺は後輩におんぶされて帰宅することになった。
しばらく歩いていたのだが…。
「なあ、マジで恥ずかしいんだけど。もう放置してくれて良いから降ろしてくんね?クラスの奴に見られたら俺は間違いなく不登校になるぞ」
この道を通る生徒は少ないもののゼロではない。もしこんなところを目撃されたら俺は……。
「嫌です。私が先輩を置いて帰る訳ないじゃないですか!」こいつ、楽しんでやがる。
「もう10分以上歩いてるだろー。そろそろお前でも疲れてきたんじゃないかー?」
「全然余裕ですよモヤシ先輩」
「うっせえ!元はと言えばお前が……」「なんですか?文句あるんですか?」「あるだろ!」
くそ、こいつには先輩としての威厳を見せないと…。
というか何故こいつは俺にだけこうも生意気な態度を…。