プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:17

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1人目

「Prologue」

 死滅復元界域トラオムを巡る戦いは最高潮に達していた。

 シャルルマーニュとリクのタッグにより、ついに強敵・シグバールは倒れた。
シグバールが所持していたのは、魔術王・ソロモンの「十の指輪」のひとつ。
その用途が何なのかを解せぬまま、リクは指輪と、
トラオムを脱出するための朱い宝玉を手に入れる。

 絶望界域・ダークシティでは人造人間21号とCROSS HEROESによる死闘が
続いていた。兵士たちを軒並みお菓子にして喰らう事で、
戦闘力を飛躍的に高めた21号は、CROSS HEROESの総攻撃を難なく跳ね除けていた。
そんな中で、シグバールの気配が消えた事を察知した21号は突如として戦いを止め、
絶望界域の指揮権を放棄する。

 狙撃塔跡地で繰り広げられるスネークとスカルフェイスの一騎討ち。
燃え尽きる事の無い復讐心を掲げ、核兵器による終末を以って世界を統一すると言う
スカルフェイスの恐るべき野望を打ち砕くため、戦いを挑むスネーク、
リボルバー・オセロット、そしてスカルフェイスの復讐の根源である地・ドイツ出身の
超人、ブロッケンJr……男たちの信念を賭けた闘いは、
今まさに最終局面を迎えようとしていた。
スカルフェイスの念動力、燃える男……それらの超常現象の力の源が
『第三の子ども』にある事を看破したオセロット。
核によって重傷を負った友・バッファローマンの仇を討たんとする
ブロッケンJrであったが、歴戦の軍人にしてパラサイトセラピーによる肉体強化を施した
スカルフェイスは、ブロッケンに圧倒的な力の差を見せつける。
そんなブロッケンに喝を入れたのは、己の肉体を身代わりにしてまで彼の命を救った
カナディアンマンであった。

 己の正義に、殉じる……覚醒したブロッケンJr。そしてそれに呼応するように
重傷の身体を押して再び戦場に舞い戻ったバッファローマン。
サヘラントロプスを鎮圧するスペシャルマン。超人たちによって『第3の子ども』の力も
打ち消され、スネークはついにスカルフェイスとの因縁に終止符を打った。

 ついに絶望界域も陥落し、後は各地で集めた3つの宝玉を使い、
トラオムから脱出するのみ……と思われた矢先、最後の刺客・メサイア教団の使徒
「クレイヴ」が姿を現す。
1000万体のホムンクルスたちを人質にし、CROSS HEROESをこのトラオムに
永久に封じ込めんとするクレイヴ。
特殊能力「機巧憑依」によってAI兵器・ピューパと一体化し、暴虐の限りを尽くす
クレイヴを前に、 絶体絶命の危機に陥るCROSS HEROESは残る力のすべてを結集させ、
立ち向かう。

 そんな中、かつてピューパと戦った経験を持つスネークが、 その弱点を見抜き、
それを皆に伝える。AIポッドの記憶板を引き抜けばピューパを無力化できる事に
気付いたCROSS HEROESは、スネークを援護すべく一斉攻撃を開始した。
地上から流入してきたジオン族のモンスター達を追って合流したアルガス騎士団も加わり、激しい戦闘の末に正気を失って暴走する
クレイヴ・ピューパの前にベジータが立ち塞がる。
トラオムを舞台とした戦いの始まり……クレイヴに妻・ブルマを誘拐された借りを
返すべく、単身ベジータが突撃する。

 ベジータによる怒涛のラッシュで追い詰められると、
今度はハルのサヘラントロプスへの機巧憑依を敢行しようとするクレイヴ。
しかし、寸でのところで月美の呪符によって拘束・阻止され、
クレイヴはついにベジータの手によって撃破されるのであった。

 数々の試練を経て、トラオムは消滅、CROSS HEROESも無事に元の世界へと帰還する。
だが、戦いはまだ終わらない。

 メサイア教団に占領された東京都・港区周辺。
アマルガムの襲撃で大損害を受けたトゥアハー・デ・ダナン。
特異点ではクォーツァーに囚えられた常磐ソウゴの処刑宣告。
ウルトラマントリガー、Zと共に火山怪獣バードンを撃破した
超弩級戦艦アビダインの艦長、アビィ・ダイブ。
この世全ての人類を滅ぼしこの世全ての悪になる事を宣言した苗木誠。
ルクソードがもたらした秘薬・エリクサーによってついに完全復活を遂げた孫悟空と、
勇者アレクの邂逅。
トラオムから帰還して休む間もなく、ロンドンの街を襲撃する銀河戦士ボージャックとの
因縁の対決に臨む孫悟飯。

 次なる戦いの舞台は、港区。
CROSS HEROESとメサイア教団の直接対決がついに勃発しようとしていた……


【シン・仮面ライダー対仮面ライダーBLACK SUN】

 何処とも分からない世界で、彼らは出遭う――
秘密結社SHOCKERによってバッタオーグへと改造されてしまった青年
本郷猛と一文字隼人、そして緑川ルリ子の3人はSHOCKERが存在しない世界へと
迷い込んでしまった事に気づく。そこに現れる蜘蛛怪人。
SHOCKERの技術とは異なる怪物を前に、本郷と一文字はバッタオーグの名を捨て、
人間の自由と平和のために戦う戦士、「仮面ライダー」へと変身。
その様子を影から見つめる、謎の男の正体は……?

2人目

「港区攻略作戦会議」

GUTSセレクトやシャルル遊撃隊なども合流したトゥアハー・デ・ダナンでは、メサイア教団に支配された港区奪還の為に作戦会議を行うことにした。
「あれ?ケンゴさんその人はいったい…?」
「あ、この人はウルトラマンZ変身者ナツカワ・ハルキさんです」
「皆さん初めまして!ナツカワ・ハルキです!別の宇宙からやって来ました!
よろしくお願いします!」
「ウルトラマンZの変身者…!?」
「ウルトラマンZって、2年前に現れたあの…?」
「なんだ?そのウルトラマンZってのは」
「2年前にこの世界にやって来た別の宇宙のウルトラマンです。
けど、なんでまたこっちの世界に?」
「実は俺の居た地球からセレブロが逃げ出したんです」
「セレブロ?」
「宇宙の寄生生物です。いろんな星の人類に寄生して、恐怖を植え付け次々と兵器を作らせて自滅させる『文明自滅ゲーム』ていう嫌なゲームをするやつなんです」
「とんでもなく悪趣味なやつだな」
「俺とゼットさん達はそのセレブロを探しにこの宇宙に来たんですが。
まさかこっちの宇宙がこんなに大変なことになってたなんて……」
「確かに今のこの世界には、そのセレブロが利用したり手を組みそうな悪党どもが大勢いるな」
「今回相手するメサイア教団とかな」

「お話中のところすいませんが、そろそろ会議を始めてもよろしいですか?」
「あっ押忍!じゃなかった…はい!もちろんです!」
「わかりました。
それではこれより、メサイア教団から港区を奪還するための作戦会議を始めます」
「まず最初に現在の港区の状況についてまとめましょう」
「それについては私に任せてくれ」
「ルクソードさん!」
「ルクソードって、悟飯にあの薬を渡してくれたやつか?ありがとな。おめえのおかげでオラ助かったぞ」
「気にするな。
それよりも現状の港区についてだが、現時点で完全にメサイア教団の支配下に置かれているのは主に7ヶ所、新橋、麻生、赤坂、芝、六本木、青山、白金だ。
このうち青山は既に壊滅しており、メサイア教団民間人ともに残ってる人数0人だと思ったほうがいい」
「となると我々が向かうべき場所は6ヶ所か」
「また虎ノ門ヒルズと東京ミッドタウンエリアには我々の協力者である流星旅団や彼らに味方する者達がいる。東京タワーにあるソロモンの指輪を回収する為にも彼らの援護をしに行く必要がある」
「なら、その流星旅団と合流する部隊も必要か」
「あとは戦う意思のない民間人の救助、保護、避難を行ったりもしも他の部隊になにかあった時に援護しに行ったりする部隊も用意したほうがいいかも知れません」
「となると部隊の数は大体8つ前後か……
振り分けはどうする?」
「それなら六本木、新橋、白金は比較的多めにしたほうがいいかも知れんな。
六本木と新橋はそれぞれメサイア教団の大司教がいるからな」
「白金は?」
「メサイア教団に隷属した者たちが集う人間の地獄だ。現在は平然と人身売買や賭け試合が行われている闇マーケットと化しており最近新しく支配者にあたる人物が配属されたらしい」
「人身売買に賭け試合って…!」
「日本でそんなことが行われてるなんて……」
「それと六本木に行かせるメンバーは女だけで構成するのがいいかも知れない」
「何故なんですか?」
「あそこを統治してる大司教の女はどんな異性でも魅了し洗脳することができるほどの美貌を持つようだからな。君たちが簡単にあちら側につくとは思ってないが、それでももしものことを考えるとやつと同じ性別である女だけで構成した部隊を行かせた方がいいだろう……」
「よしわかった。なら以上のことを踏まえて、部隊を決めるとしよう」



10分後
「では、ここまでの話をまとめると、
まず六本木に行かせる第一部隊はいろはさん、黒江さん、月美さん、ペルフェクタリアさんの4人ですね。
この部隊には六本木に行く前に既に港区にいる魔法少女の皆さんと合流してもらいます」
「次に新橋に行く第二部隊はシャルル遊撃隊の皆さんとスネークさん達と正義超人の皆さんで。白金に向かう第三部隊は悟空さんとピッコロさんとベジータさんとウーロンさんとバッファローマンさんとルフィさんです」
「流星旅団と合流しに行く第四部隊はこの私、ルクソードと森長可と十神白夜と燕青で構成する」
「残りの3か所のうち、麻生にはアレクさんとローラ姫とバーサル騎士ガンダムさん、赤坂にはゲイツさんとツクヨミさんと騎士アレックスさん、芝にはアルガス騎士団の皆さんに行ってもらいます」
「最後に残ったメンバー……ミスリルとスーパーロボットのパイロットの皆さんとGUTSセレクト、そしてハルキさんですね。
皆さんには各エリアを周って戦う意思のない民間人の救助や保護、避難活動を行ってもらいます」
「またこれらの活動は被害を最小限に抑える為にASやスーパーロボットに乗らずに可能な限り生身で行ってもらう。
ただし、もしもことを考えていつでも乗りに行けるように機体はすぐ近くで待機させておくように」
「わかりました」
「それでは早速、港区へ向かい作戦を開始する!」
こうしてCROSS HEROESは港区へ向かった。

3人目

「カール大帝、立つ!」

存在しなかった世界

「何、セレブロ?何だその間抜けな名前の物体は。」
「ええ、何でも文明を自滅させることに特化した寄生生物とのことで。」

 魅上がカール大帝に何処かから聞いたであろう、邪悪なる寄生生物セレブロのことについて話をしていた。
 確かにこれらを用いればCROSS HEROESをも内部から制圧できるかもしれない。

「これを扱えば、我らに立ち向かってこようCROSS HEROESも……。」
「魅上よ。その話は論外だ。」
「論外?」

 渋い顔をしたカール大帝が、魅上を諭す。

「思い出せ、我らの目的は人類の救済と進化だ。恐怖による救済の先にあるのは破滅しかない。そして破滅は我らの本懐ではない。よく覚えておくがいい。夜神月は殺戮という恐怖を救済に使用したことで破滅したのだろう?その二の舞にはなるな。」

 殺戮の恐怖による平和は、本当の平和なんかじゃない。
 かつて夜神月はデスノートによる犯罪者裁きという恐怖でかりそめの平和を作った。しかしその果てに待っていたのは敗北と同じデスノートによる死であった。
 それを傍らで見ていた魅上が忘れないわけもなく。

「はっ、申し訳ありませんでした。」
「分かればよい。」

 頭を下げる魅上を、大帝はまるで親のように諭す。
 そして話は、港区へと移ってゆく。

「ところで指輪回収部隊及び東京支配部隊を送り込んだ港区の件だが、あの3人と例の司教候補では足りぬであろう。絶対兵士は特異点にゼクシオンと共に送り込ませている状況下だ。」
「増援部隊のパラガスだけではダメ、と?」

 パラガス。
 トラオムでベジータ達が出会った、復讐を誓う狂気の男。
 その男は今港区で待っている。
 今度こそ、ベジータを嬲り殺しにするために。

「ああ、それゆえにな。余も遅れて出陣するとしよう。」
「おお……しかしなぜ?」

 カール大帝が動く。
 その一言だけでも、教団メンバーにとっては希望であった。

「どうやら、懐かしい顔がいるようでな。再会するのも悪くはなかろう。それに連戦で疲弊したCROSS HEROESも一挙に叩けるかもしれぬ。」

 カール大帝とシャルルマーニュは同一の存在。
 シャルルマーニュがいるところ、カール大帝も同じようにいるのだ。

「余は出陣の準備をする。魅上よ、下がれ。」
「はっ。」

 魅上はおずおずと謁見の間を後にした。
 残されたのは、大帝が一人。

「シャルルよ。私は救世を諦めきれぬ……赦せ………。」

 虚空につぶやく、哀しげな声。
 あの月の闘いの後も彼は救世を捨てることはできなかった。
 例え異星の力がなくとも、彼は大帝であるがゆえに。



 魅上の研究室にて

「くそ、あのジジイ偉そうに……ッ!寄生生物を利用した方が明らかに効率的であろうが……!」

 魅上は、カリカリとしていた。
 まるで説教を受けた悪ガキのように。

「だが大帝よ、私にはこの女神がいるのです……!この女神を押さえない限り、あなたの敗北は必至……!」

 魅上は、狂った目で培養槽に浮かぶ”女神”を見る。
 ぷかぷかと浮かび、完成を待つ女神を前に狂笑が止まらない。

『エネルギー装填完了まで、残り27日』
「ハハハハ!!指輪が此方に集まった瞬間があなたの最期だ……!最後に勝つのは、夜神月、即ち”神”に仕えしこの私だァーーーー!!!」

4人目

「ナルシストな蒼い奴」

_CH合流前。

黒煙が立ち昇り焔火に照らされる夜空の雲を掻っ切って、幾つものヘリが駆ける。
それらはDDの紋章、ダイヤモンドの犬のシンボルマークを掲げて、己の行進を阻ませはすまいと目を光らせている。
実際、豊富な銃火器に恵まれたヘリはその存在自体が周囲への威嚇であり、防護であった。
何人たりとも、彼等の行く手を遮る事は叶わないだろう。
前代未聞の地獄と化した東京の空を、ヘリは悠々と飛行していた。
そんなヘリの中、静かに響くローター音に混じって彼等はぼやく。

「しかし今回の作戦は骨が折れたな…」
「スネーク、聞いたぞ。訳の分からんピューパと戦ったらしいじゃないか。」
「あぁ、機体改良と敵の憑依術とやらが合わさったらしい。お陰で奴のタックルを食らって…」

次第に声のトーンが低くなっていく。
表情が深刻な物になっていくスネークを見て、カズが表情を一変させる。
最初は比喩かと聞き流した言葉が、現実味を帯びたが故に。
カズの額に冷や汗が湧き、場の空気が張り詰める。

「おい、まさか本当に骨が折れてるのか!?」
「ははっ、冗談だ。この通りくっ付いてるよ!」

が、しかし今度はスネークが表情を明るい物へと一変させ、緊張感は四散した。
服のすそから覗く腕は打撲痕こそあれど、折れている形跡はない。
今のはスネークなりのジョークらしい。
はぁ、とカズは一息ついて汗を拭きとり、苦言を呈する。

「…全く、日本のことわざと掛けてのジョークなんて止してくれ!あんたじゃ洒落にならん!」
「いやぁ、すまんすまん。ずっと心配掛けてたみたいだからな、ここらで発散させようと…」
「ボス!」
「いや悪かった。」

副官たるオセロットの制止も入り、スネークも頭を掻きながら二人に謝りだす。
流石に風向きが悪くなったと感じたのか、スネークは珍しくたじたじと焦っている。
そんな様子を見てか、カズも漸く、笑みを浮かべた。
浮かべてすぐに、此方を見てにやりとするオセロット。
説教が即興の演技だと気付くのには数秒と掛からなかった。
どうやら二人に一杯食わされた様だ。
今度の笑みは、苦笑い混じりだった。

(しかしわざわざ日本のことわざを使うとはな、そこまで俺の顔付きは悪かったか?)

一方で、ここまで親身になる二人を見て、ふとカズは思う。
確かに、スネークがトラオムに踏み入れてから今まで、心のどこかに緊張が残っていただろう。
壁の中とは一切通信は取れず、帰る時を今か今かと待ちわびていた。
結局はすぐに帰ってきた形になったのだが、それでも緊張が解れ切った訳では無かったのだろう。
そんなワーカーホリッカー気味な気質を持つ日本人、和平(カズヒラ)の為に、敢えて日本のことわざを使ったのだろうか。
_はて、スネークはそこまで日本語が得意だっただろうか?

「ん?おい、あそこに見える奴…」

ふと湧いた小骨の如き引っ掛かりは、スネークの呟きに掻き消された。
先程まで談笑していた彼からは笑みが消え、代わりと言わんばかりに驚愕と疑問に塗れていた。
釣られて視線の先を辿れば、他の皆もまた、一様に同じ顔をする事になった。
何故か?
どうもこうもない。

「船?」

彼等の見つめる先には、伝説上の白鯨が空を泳ぐかの光景。
より精彩に言えば、宙に浮かびあがる双胴のシルエット。
立ち昇る火に照らされ風貌を晒す、超常の存在。
間違いない。

「ボス、もしかすると…」
「あぁ、アビィの言っていた『アレ』だな。」

ヘリで立つ前に聞いた、噂の存在。
つい先ほど港区を騒がせ過ぎ去ったばかりの嵐が、時を置かずして再来したのだ。
ミラーボールの如く光を浴びて輝く存在に、人々の罵声と喧騒は再び悲鳴へと変わる。
フロアどころか、エリア諸共発狂の嵐だ。
熱狂ではない、誰もこんな温度の熱気は望んでいない。
だが、嵐の元凶はそうでは無いらしい。

『やぁ皆、随分な大騒ぎじゃないか。僕も混ぜて貰いたいね?』

突如として船から響く、陽気な声。
正体不明の存在から聞こえる聞き慣れた日本語に、誰もが耳を傾け、表面上はざわめきを落ち着かせる。
けれど、禍根の存在が放つ言葉には、心の奥底をざわつかせる何かがあった。
スネーク達もまた同様に、底知れぬざわつきを覚えていた。

「…カズ、アイツと通信を取れ。」
「やってみる…『聞こえるかアビィ?』」

ヘリに備え付けられた通信機から、音声通信を試みるカズ。
様々な周波数を試しては声を掛け、返答を祈る。
"彼の気質"を考えた上での行動だ。
このままで放って置けば、大なり小なり何かしらの行動を起こし、結果大混乱に陥る事は目に見えていたからだ。

『自由参加みたいだし良いよね?…っとちょっと失礼。』

果たして、祈りは届いた。
自らに呼びかけられた通信に気付いたアビィは、会話を切り上げる。

『秘匿回線確立っと…やぁ久しぶりだね、カズ!違う回線で来たから気付くのが遅れたよ!』

そして間髪入れずに通信機から返ってきたのは、歓喜にも似た声であった。
先の声とは打って変わって裏表のない、純粋な笑い声。
あまりの声量に思わず顔をしかめるカズであったが、アビィの喜びに満ちた言葉に一息付き、表情を緩めた。
暴徒を一方的に鎮圧する虐殺めいた地獄は、何とか入口で止められた様だ。

「『色々あって組織が変わったからな、一先ず無差別攻撃は止めてくれ。このまま目立てば流石に庇いきれん。』」
『仕方ないね、君達からの進言だ。素直に受け取るとするよ。』

今はまだ与太話や雷等で誤魔化せるが、本格的に動けばその存在が完全に露呈するのは明らかだろう。
その意図を読み取ったアビィは渋々と言った様子でスポットライトを収めていく。

「『全く、お前は危なっかしいからな。この件にどう関わるか分かったもんじゃない。』」
『そういう君達も、このダンスパーティに参加する気マンマンじゃないか。』
「『その件で、俺達DDは今CHに召集が掛かっている。目的が同じなら、お前も来ないか?』」
『…誘いは嬉しいけど、気持ちだけ受け取らせておくよ。』

あわよくば行動を共にしたいと考えていたが、返答は芳しい物では無かった。
カズは一瞬だけ眉をひそめ、次の言葉を繋げようとした。
が、それを遮る様に、アビィは続ける。

『僕はまだ、CHを信用しきっている訳じゃない。何より誰かの下に付くのは御免だからね。』
「『昔から変わらないな、他人と壁を作る所は。』」
『ま、出会ったら挨拶ぐらいはしておくよ。それじゃあ僕はコッソリ行くとしよう、性に合わないけどね。』

アビィの言葉を最後に、通信機は沈黙する。
同時にアビダインから、一筋の光を放つ何かが街に向かって射出され代わりにアビダインの方は空の彼方へと飛び立っていった。
どうやら本当にどこかへ消えてしまったらしい、相変わらずの奔放さに、カズは溜め息をつく。
だがいずれまた会うだろう、そんな予感と共に彼等はその場を後にした。



先の光が落ちた先、衝撃で出来たクレーターの中心に、ソレは居た。
地上に降り立った一人の少年、アビィ・ダイブ。

「それじゃ、行こうか。」

混沌に満ちた世界に秩序を取り戻す為、今彼が立ち上がった。

5人目

「地下ファイト王者は魔法少女!? 悟空VSフェリシア!」

 CROSS HEROESは部隊を八分割し、メサイア教団の支配下に置かれた東京都・港区への潜入工作を開始する。
その第1部隊、ペルフェクタリア、月美、いろは、黒江のガールズチームは六本木へと
足を踏み入れた。

「やちよさん達は何処にいるんだろう……」

 相変わらず、やちよ達とは連絡が取れない。
退魔師である月美の隠形の術によって、4人は六本木の住民たちには
気づかれていないようだ。

「うへへ……」

 六本木を支配していると言うメサイア教団の大司教「キング・Q」の術により
特に男性たちは、魅了の術にかかっていた。

「皆、正気を失っているようだな……」

 ペルフェクタリアと黒江は住民の様子を観察していた。

「まるで、魔女の口づけを受けたみたいだね……」

 魅了の術をかけられた住民は皆、目が虚ろで生気が感じられない。
それは魔法少女が戦うべき敵、魔女が人々を操っている様にも類似している。

「この街全体を覆う瘴気……魔女の結界の中に居るような気分だよ……」
「これこそがメサイア教団の手口なのだろう……」

 トラオムでの戦いを生き抜いた彼女たちにとってみれば、このような光景が
現実世界に広がっていく事を想像すると背筋が凍る思いだった。


 ――白金エリア。

 こちらは第3部隊。孫悟空、ベジータ、ピッコロ、バッファローマン……
そしてウーロンが配置されていた。

「変化!」

 ウーロンはコウモリに化け、街の様子を偵察して回っていた。

「ひでえ荒れっぷりだなぁ。そこらで揉め事が起きてるぜ」
「はは、ピッコロ達に聞いたぞウーロン。おめぇ大活躍だったらしいじゃねぇか?」

 ジンジャータウンを襲撃したセルから命からがら逃げ延びたあの日から
ウーロンの人生は変わった。スネークとの出会いを契機とし
ダイヤモンドドッグスの一員に加わってサヘラントロプスの操縦者となり
ついにはピッコロと共にセルを撃破する大金星を上げた。
トラオムでも囚われの身から脱出するため、ウーロンは様々な手を打った。
その結果、仲間達の助けもあって見事脱出に成功し、
トラオムでの死闘を乗り越える事ができたのだ。それらの件を経て、
ウーロンは少し自信がついたのか、以前のように卑屈になる事は無くなっていた。

「ふふん、まあな。いつまでも悟空にばっかりいい格好させちゃいられねえぜ。
とは言え、俺自身まだ夢でも見てるみたいな気分だけどよ」

 いつも第一線で戦っている悟空たちの背中を見守るばかりの日々を送っていた
ウーロンにとってはこの状況はまさに夢のようでもあった。
悟空、ピッコロ、ベジータ、バッファローマン……そんな錚々たるメンツの中に自分が
加わっているのだから。
その彼らのために自分のできる事は何かと考え、こうして偵察任務を買って出たのだ。

 ウーロンの偵察の結果、この白金エリアでは人身売買や地下ファイトに代表される
違法賭博が行われている事が分かった。

「試合かぁ。強ええ奴がいれば良いんだけどな~」

 悟空は目を輝かせながら言った。彼は強い相手と戦いたいと言う欲求が強い。
その為ならどんな危険な目に遭う事も厭わないほどだ。

「こんな状況でも戦いを楽しもうってんだから、ホントやべーバトルマニアだよな、
お前はよ。昔っからてんで変わりゃしない」

 ウーロンが呆れた顔で呟く。

「悪魔超人としては、こんな殺伐とした空気は肌に心地良いがな……」

 バッファローマンは不敵に笑った。

「まったく、トラオムでエラい大怪我負った奴の台詞とは思えないね。
もうケロッと治ってるしよぉ」

 ウーロンの言葉通り、バッファローマンはトラオムの戦いで重傷を負ったものの、
今はすっかり回復し、ピンピンしている。
傷跡こそ残っているが、それすらも彼の魅力を引き立てていると言っても良いくらいだ。

「ごちゃごちゃやっている場合か。とっととメサイア教団とやらをぶっ潰すんだろう。
奴らには大きな借りがあるんだ」

 ベジータが苛立った様子で言う。ブルマを誘拐したメサイア教団は
彼にとって許せない存在なのだ。

「だが、メサイア教団の関係者は不思議な術を使う。
兵器に取り憑いていたあのクレイヴと言い、バードス島で俺やウーロン達を捕らえた
シグバールとか言う輩に関してもそうだ。迂闊に手を出せば返り討ちになるぞ」

 ピッコロが冷静に分析する。彼もまた、メサイア教団には大きな借りがあった。

「そうだぞ、ベジータ。オラも特異点で危うく死にかけたかんなぁ」

「おい、アンタら。地下ファイトにエントリーしてみねぇか? 
金さえありゃあ、何でもアリの無法地帯だぜ!」

 悟空たちの前に、筋骨隆々の男が現れた。男は地下格闘場への案内役らしい。

「おっ、いいな! 金には別に興味ねえけど、面白そうじゃねえか」

 悟空が真っ先に食いつく。

「おい、カカロット……チッ、聞いちゃいない……」
「あの馬鹿め……ここに何しに来たのか忘れたんじゃないだろうな?」

 ベジータとピッコロは溜め息を吐いた。
しかし、悟空を止める事は不可能だと分かっていたため、諦めて後に続くしかなかった。
白金エリアの地下闘技場。ここはアンダーグラウンドの中でも
最も白熱すると言われている場所だ。
ルールは単純明快で、相手を戦闘不能にするか、ギブアップさせた方の勝ちだ。


「どっかーーーーーーーーーーーーーーん!!」


 大槌を持った金髪の少女が対戦相手を吹き飛ばす。

『勝者……深月フェリシア!! これで脅威の10連勝だァ!』

 実況のアナウンスが響き渡る。
会場は沸いているが、一方的な試合展開に観客はやや退屈していた。

「あのガキ、強ええなぁ。おかげで賭けのレートが下がりまくりじゃねぇか」
「にゃっはっはっは、弱えー弱えー! オラオラ、もっと強い奴はいねえのか!?」

 鎚を地面に叩きつけ、不敵な笑い声を上げる少女こそは……
やちよ達と共に港区へ向かったはずのフェリシアだった。
メサイア教団の動向を探るためにこの地下闘技場に潜入したのだが、
すっかり目的を履き違えて暴れ回っていた。
その上賞金まで貰えるという事ですっかりノリノリだった。
元々、チームみかづき荘の一員になる前のフェリシアは傭兵稼業で生計を立てると言う
荒れ果てた生活を送っていたのだ。

「へえ、あのガキンチョ、結構強ええみてえだな」
「あァ? ガキンチョ? オレの事か?」

 フェリシアは悟空の方に向き直る。
彼女にとってみれば、自分の事を子ども扱いするのは侮辱に等しい行為だった。

「おい、おっさん! オレをガキ呼ばわりするとは、随分ナメられたもんだぜ」

 彼女はハンマーを引きずりながら悟空に詰め寄る。
しかし、悟空は微動だにせず余裕の表情を浮かべていた。この程度の威圧感など、
これまで幾度となく経験してきたからだ。

「いっちょオラとやってみっか?」

 挑発するような口調で言うと、観客が一斉に歓声を上げた。
たった今、この地下闘技場で10連勝した猛者に挑むのが
無名の挑戦者だというのだから無理もない。

「おもしれぇ。上等だよ!」

6人目

「集いし港区の守護者」

 朝の10時12分。
 CROSS HEROESたちが港区へと潜入し始めたころ、流星旅団のねぐらにて。

「騙されているって……。」
「警察上層部の腐敗が激しくなっているのは、あんたも知ってんだろ?」

 思えば、警察の潜入捜査なんて現行法では特殊な事例でもない限りありえないことである。今回の件も、その特殊事例だとすれば納得は行くのかもしれないが……。

「すみません、少し確認してきます……!」
「その方がいい。」

 かくして、松田はいったん外へと帰っていった。



「よし、俺はもう一人の同胞を迎えに行ってくる。」
「同胞?まだ仲間がいるってんのか?」
「おう、フィオレ・フォルヴェッジってんだが……あいつ今は戦えない状況なんだってよ。教団にぶちのめされて以来リハビリをだな。」

 フィオレ・フォルヴェッジ。
 流星旅団の同胞の一人にして、魔術を捨てたはずの薄幸の美少女。

「そろそろあいつも治ってる頃だからな。迎えに行ってくる。」
「あたしらは、何をすればいい?」
「そうだな、誰か来たら教えてくれ。」

 月夜はそういって、外へと向かっていった。
 外の様子を見つつ、月夜が歩いていると。

「うわあああ!?何だ君たち!?」
「へへ、見つけたぜ流星旅団の基地を!」

 帰ったはずの松田を嘲笑する雀蜂軍団、総勢50体が松田を囲っていた。
 それを指揮するのは、松田に潜入捜査を命じたはずの男。

「やっぱり、騙してたんだな!」
「はっ、そういうことだ、お前みたいな騙しやすい単細胞は利用しやすいってこった!さァ死ね!」

 あざけるように、銃口を突き付ける男。
 松田は、恐怖で目をつむることしかできない。

 松田が覚悟を決めた、その時___。

「おっさん危ねぇ、右によけろ!」

 小さい爆弾のついた矢が放たれる。
 言われた通り、松田が右へと攻撃を回避する。

「な……ぎゃあああああ!?」

 爆発。
 圧倒的爆風を前に、雀蜂の数体が吹き飛んでいった。

「やっぱり騙してたか。」
「あなたは……月夜さん!って、何でボウガンを?」

 松田を助けたのは、フィオレを迎えに行ったはずの天宮月夜。
 その手には、小型のボウガンを握っている。

「銃刀法違反ですよ!?」
「るせぇ、それを言うなら連中もアサルトライフルを持ってんだろうが。……戦えるか?」
「……ええい!こうなったらヤケだ!」

 松田はヤケになったのか、持っていた拳銃で応戦を開始する。
 月夜も、自身の武器である連射型ボウガンで応戦する。

 ボウガンの矢は多種多様で、先の爆弾のついた矢だけではない。

「ぐわっ!これは……麻酔……か……。」
「致死性の猛毒じゃないだけありがたいと思っとけ。」

 眠る雀蜂を相手に、冷酷な目をする月夜。
 松田も、卓越した拳銃の技術で雀蜂部隊を無力化してゆく。

「麻酔、猛毒、焼夷弾、こっちはなんでもござれだ。」

 連射型ボウガンと、多種多様の矢。
 それが天宮月夜が扱う兵装である。

「くそ、流石に分が悪い!!」
「全くだ!もう一人くらいいれば助かんだがな!これなら彩香も連れてくれば……!」

 しかし相手は特殊部隊の一個小隊。
 圧倒的な人数の差を前に、たった2人が押し切れるわけもなく、次第に守りが破られようとしている。

「全く、迎えが遅いと思ったらこんなことになっていたなんて。」

 刹那、降り注がれる無数の光弾。
 鳴り響く機械音と共に、雀蜂が殲滅されてゆく。

「こっちから来ちゃいました。」
「身体は大丈夫なようだな、フィオレ。」

 接続強化型魔術礼装(ブロンズリンク・マニピュレーター)を引っ提げ、ねぐらという帰路に到着したフィオレ。
 彼女は、足元にいる雀蜂を見下ろし、冷淡に告げる。

「――立ち去りなさい、教団の使徒たち。此処は我ら流星旅団の戦線。踏み入った無礼は不問に処します。この警告を看過するようであれば、死という等価を以て、愚行の代償を支払っていただきます。」
「くそ、なめんじゃねぇ!!」

 アサルトライフルを構える雀蜂を前にフィオレは可愛げのある表情で告げた。

「だって、こうでも言わないとやる気が出ないもので。」

 舌を出し、可愛げのある表情で挑発する彼女。
 もう、かつての疵の痕はない。

7人目

「シン・仮面ライダー対仮面ライダーBLACK SUN②黒を統べる男」

「はっ!!」

 蜘蛛怪人の背中から生えた腕から繰り出される鋭い爪攻撃をかわすと、
本郷はすかさず拳を叩き込む。

「ぐぅおっ!?」

「効いてるぜ! 本郷、一気に決めるぞ!!」
「……」

 一文字の呼びかけに本郷は無言で応えると、再び拳を構える。
素顔を覆うマスクが生存本能を増幅させ、彼の戦闘能力を飛躍的に向上させる。
暴力への忌避感を拭い去り、敵を殲滅する事だけを考える戦闘マシーンへと
変化を遂げるのだ。しかし、それではSHOCKERの連中と同じになってしまう。

「はぁあっ!!」

 本郷の繰り出した正拳突きが、蜘蛛怪人の顔面を捉える。

「ぐえっ、うぐうううう……」
「もう、良いだろう。これ以上はただ痛みが長引くだけだ」
「そうだぜ。さっさと終わらせて休ませてくれよ」

 本郷の問いかけに一文字も同意する。たとえ敵であっても、命を奪う事を良しとしない。
それは、本郷が今までの戦いの中で培ってきた信念でもあった。
しかし、その時――

「ギィイイッ!!」

 うずくまっていた蜘蛛怪人は口から糸を吐き出して、本郷と一文字に絡みつかせた。

「くそ、何だこいつ!?」
「動けない……なんて粘着性なんだ……」

 身動きが取れなくなった2人。

「本郷……どうやらこいつは……お前の流儀には合わなかったようだな……」
「本郷! 一文字!」

 ルリ子の声に、蜘蛛怪人は彼女の方に向き直った。

「あっ……」

「しまった、あいつ……ルリ子さんを……」
「まずいな……このままじゃ、お嬢さんが……」

 標的をルリ子に定めた蜘蛛怪人。じりじりと距離を詰めていく。

「くっ……!」

 後退りしながら、彼女は手にした拳銃を構えた。

「それ以上近づかないで!」

 だが、その銃口は震えている。

「ギィイイッ!」

 蜘蛛怪人は構わず突進してくる。

「来るなぁっ!!」

 恐怖に耐えきれず、引き金を引いた。乾いた音が響き弾丸は命中したが、
それは蜘蛛怪人の腹部を貫かなかった。

「あ……あぁ……」

 絶望がルリ子を襲う。そして、次の瞬間――

「シャアアアアッ」

 一気に間合いを詰めた蜘蛛怪人の鋭い爪が、彼女の瞳に映っていた。
真っ直ぐにルリ子目掛けて伸びゆく。

「――っ!」

 思わず目を瞑ってしまった。
もう駄目だと諦めかけた瞬間、蜘蛛怪人の右腕を掴む者が居た。

「グアッ……!?」

 蜘蛛怪人の口から苦痛に満ちた声が漏れた。その腕を掴んだのは……

「…………」

 黒い革のロングコートに、指貫きグローブ。
この世の地獄を見てきたと言わんばかりの昏き瞳を湛える男。
凄まじき握力で蜘蛛怪人の腕を力任せに捻り上げ、そのまま肘先を引き千切る。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアァッ!?」

 激痛にのたうち回る蜘蛛怪人。噴水のように噴き出す大量の血煙。
男は引き千切った腕を無造作に放り捨てると、ずかずかと蜘蛛怪人の元へ歩み寄った。

「イギッ、イギィッ!」

 蜘蛛怪人は残った左腕を突き出しつつ後ずさる。

「……」

 男は無言のまま蜘蛛怪人に覆い被さるように飛びかかる。

「ガハウッ!?」

 一瞬の出来事だった。まるで巨大な肉食獣に捕食されるかのような光景。
馬乗りにされた蜘蛛怪人は、為す術も無く殴打され続ける。

「グギャッ、ヒィイッ、グェエエッ!!」

 悲鳴を上げるたびに口から血液が溢れ出る。やがて抵抗すら出来なくなると、
今度は喉元を鷲掴みにされて持ち上げられた。

「ウゲッ、ゲフゥッ!!」
「おいおい、やり過ぎじゃないのか?」

 あまりに一方的な展開に一文字が呟く。
本郷も、目の前で繰り広げられる殺戮劇を前にして、言葉を失っていた。

「ウググッ……!」

 そして、鈍い音と共に蜘蛛怪人の首はへし折られ、事切れた。

「グブッ……グブグブッ……」

 白眼を剥いて痙攣する蜘蛛怪人の身体を蹴り飛ばし、男は本郷と一文字をじっと睨んだ。

「さっさとトドメを刺さないから、こうなる。怪人なんかに情けをかけるなんてな」
「カイジン……? やっぱりオーグじゃないのか……」

 それだけ言うと、踵を返して立ち去ろうとした。

「待ってください。僕は本郷猛。あなたは?」

 本郷が呼び止める。

「俺の名前など、聞いてどうする? お前らとは所詮、縁の無い存在だ」
「そんな事は関係ない」

 蜘蛛怪人の糸を解く本郷と一文字。

「一応、助けてもらったわけだしな。俺は一文字隼人。さあ、俺たちは名乗ったぜ。
アンタの名も聞かせてくれよ」
「……」

 男は少しの間考え込む素振りを見せたが、すぐに口を開いた。


「……南光太郎」

8人目

「因縁の対決、ゲイツVSウォズ前編」

CROSS HEROESが港区に突入した頃、とある山奥では……
「クッ……まさか地獄王ゴードンが海に落ちてその衝撃で津波が起きるとは……」
「おかげでバードス島が沈み、せっかく準備していたミケーネ神復活の儀式ができなくなってしまった……」
「だがまぁいい。儀式に必要な物は全て用意し直すことができた……あとは……儀式を行う場所を確保できれば……」
今会話のとおり、Dr.ヘルとの最終決戦にて、地獄王ゴードンが落ちたことにより発生した津波によりバードス島は消失。
これにより本来Dr.ヘル死亡後すぐに行うはずだった儀式が行なえなくなったあしゅら男爵、ゴーゴン大公、スウォルツは新たに儀式を行う場所を探して彷徨っていたのだ。
「……ん?おいちょっと待て」
「どうした?スウォルツ」
「……晴明とドフラミンゴがいないぞ…?」
「なに!?」
「ほ、ホントだ…!さっきまでは居たはずのあの二人がいない!?」
「まさか、リンボだけではなくあの二人までもが裏切りを…!?」

『そうではありませんよ。少なくとも私は』
突然3人の脳内に流れてくる安倍晴明
「こ、この声は…晴明か!?」
『ええ、私の妖術にかかれば、この程度のこと容易いものです』
「貴様、どこで何をしている?」
『……ドフラミンゴ殿の追跡ですよ』
「なに!?」
「どういうことだ、説明しろ」
『今言ったとおりですぞ。先程ドフラミンゴ殿が我々から離れていくのを見かけましてね……こっそり後を追ってるんですよ』
「なるほどな。それでそのドフラミンゴは今どこにいる?」
『東京都の港区……現在メサイア教団なる者達が支配しているエリアに入って行きました』
「メサイア教団……神を自称する愚かな人間夜神月を崇拝する馬鹿なやつらの集まり、『キラ教団』が元になってできたテロ組織か……」
「ドフラミンゴめ。我々を裏切って奴らにつくつもりか?」
『その辺はまだわかりませんが……私の方でもう少し追跡しておきましょう。
ついでにメサイア教団の始末と儀式に使えそうな土地の調査も……』
「そうか。なら頼むぞ」
『お任せを…』



一方その頃。
ゲイツ、ツクヨミ、騎士アレックスは赤坂へ向かっていた。
「もうすぐで目的地の赤坂に着くぞ!」
「ええ!」
「しかし、この世界出身のゲイツ殿やツクヨミ殿が居る私とは違って、バーサル騎士ガンダム殿やアルガス騎士団の皆は大丈夫なのか…」
「一応この世界の地図を渡したとはいえ、少し心配ね……急いでこっちを終わらせて合流しましょう」
「……残念だが、そう簡単に行かせてくれないようだな……」
ゲイツがそう言うと、3人を囲むようにメサイア教団の信徒達が現れた。
「囲まれた!?」
「……どうやら、このルートで赤坂へ向かおうとしてたことは想定済みのようだな……」

「メサイア教団に反抗する愚かな者共め!」
「神に代わって、我々が裁きを下す!」
「かかれー!」
「ウォオオオオオオオオオッ!」
メサイア教団の信徒達がゲイツ達に襲いかかろうとしたその時!

《ファイナリー・ビヨンド・ザ・タイム!
水金地火木土天海エクスプロージョン!!》
「っ!?な、なんだ!?」
「ぐわぁああああああああああ!?」
突如惑星ような形状のエネルギー弾が雨のごとく降り注ぎ、メサイア教団の信徒達を殲滅する。
「っ!今の攻撃って…!」
「大丈夫かい?」
「お前は…!」
メサイア教団を殲滅した今の攻撃、それは『仮面ライダーウォズギンガワクセイフォーム』に変身したウォズによるものだった。
「お二人のお知り合いでしょうか?」
「えぇ、彼の名前はウォズ。前の世界の頃からの私達の仲間よ」
「前の世界…?」
「なにか勘違いしてないかい?」
「え?」
「私はクォーツァーの一員……君たちの仲間ではなく、むしろ敵だ」
「なんだと!?」
「ウォズが……クォーツァーの一員…!?」
「嘘ではない……その証拠に、このような物もある」
ウォズがそう言うと、カッシーンが数体出てくる。
「こいつらは……」
「クォーツァーの機械兵か!」
「これでわかっただろ?私が君たちの敵であるクォーツァーの一員だと……」
「……そのクォーツァーの貴様が何故ここに来た?」
「決まってるだろ?クォーツァーにとっての邪魔ものである君たちを排除しに来た……ただそれだけだ」
「……本当にそうか?」
「ゲイツ殿?」
「俺たちを殺し来た割には、今まで戦ったやつらと比べて兵士の数が少ないうえに、タイムマジーンが1台も見当たらないぞ?」
「……今現在、クォーツァーは戦力のほとんどを特異点で行う予定の常磐ソウゴの公開処刑の為の防衛に充てていてね……こっちの方に回せるのはたったこれだけなんだよ」
「なっ!?」
「ソウゴの公開処刑…!?」
「あぁ、こっちの世界で計画を実行する前に、特異点にいるCROSS HEROESをおびき寄せて、まとめて始末するためにね」
「ソウゴ殿が、処刑されるだと…!?」
「そういうことだから、私もあっちの手伝いする為にもさっさと君たちを始末させてもらうよ」

「……ツクヨミ、騎士アレックス……周りのやつらを頼めるか?」
「ゲイツ…?」
「アイツは……俺がぶっ倒す!」
「……わかりました」
「気をつけてね……」
「あぁ……」

「……結局、お前は敵だったというわけか」
「そう言ってるだろ?……決着をつけようじゃないか、ゲイツ君」
「……いいだろう」

《タイヨウ!》《ゲイツリバイブ剛烈!》

「「…変身!!」」
《灼熱バーニング!激熱ファイティング!ヘイヨー!タイヨウ! ギンガタイヨウ!》
《リバイブ!剛烈!剛烈!!》
ウォズは『ウォズギンガタイヨウフォーム』にゲイツは『ゲイツリバイブ剛烈』に変身。
ゲイツとウォズ……前の世界から因縁のあった二人が今ここに激突しようとしていた。

9人目

「犬が嗅ぎ取るは腐敗臭」

トゥアハー・デ・ダナンの停泊する港にて、ローターの音がけたたましく鳴り響く。
東京都港区の鎮圧作戦に召集された、DDのヘリだ。
ダナンでの作戦会議を終え、選抜されたメンバーを乗せていくヘリは、離陸の時を今か今かと待ち望んでいる様だった。

「まさかトラオムだけじゃなく、東京でも肩を並べて戦えるとはな。」
「あんた達の活躍はスネークから聞いている、宜しく頼む。」

ヘリの機内に乗り込むシャルル遊撃隊を見て、スネークとカズが頷く。
対して江ノ島が返す言葉は、一種の呆れに近い物だった。

「絶望的に変わらねぇー面子…」
「言うな、俺達が駆り出される程に相手が強大という事だ。」

溜息さえ出そうな雰囲気を放つ江ノ島に、リクが堪えるよう戒める。
緊張感と言うものを誰もが忘れ去った様は、一周回って寧ろ頼もし気だった。
勿論だが、オセロットは苦言を呈する側に立つ。

「リクの言う通りだ、新橋は今や要塞と言っても過言じゃない。」

事実、メサイア教団は新橋の戦力増強に余念がない。
既に多くの兵員が配備されており、その中には戦闘慣れした軍人も多く在籍している。
恐らく、今までで一番と言って良い程の厳戒態勢が敷かれている事は確かだ。
更には大司教なるリーダー的存在の示唆もされている。
加えて、連戦に次ぐ連戦で超人の力にも陰りが見えている。
今回もまた、一筋縄では行かなさそうだというのは目に見えていた。

「今回はお前達のサポートを頼りにする。」
「ま、後ろは俺達に任せとけって!」

シタールの音色を響かせて、デミックスは微笑みかける。
何とも頼り甲斐のある笑みに釣られて、カズも思わず口元を緩めた。
一方で、上昇するヘリから覗く景色にスネークは眉を顰める。

「しかし、日本でこれ程の紛争が起きるとはな…とても信じられん。」

日本と言えば、治安の良さを第一に押し出した様な民主主義国家だ。
『世界で最も成功した社会主義国』と呼ばれる程に、国民のモラルは基本、異様に高い。
治安維持の仕組みも、軽犯罪の一つも逃さない程の精度を誇っていた。
そんな国の中枢都市で内戦とも言える様な戦乱が巻き起こっているのは、到底信じられるものでは無かった。

「ボス、その件で諜報班から報告がある。」

それにはオセロットも同感であり、故に行動も早かった。
幾つかの資料をスネークに手渡しながら、彼は語る。

「日本の警察が今回の事態に動きを見せないのが気になって探りを入れてみたが、様子がおかしい。」
「どういう事だ?」
「恐らくメサイア教団だ、今警察が動かなくて得をするのは奴等だからな。」

オセロットの言葉を聞き、カズの表情に僅かな曇りが見えた。

「東京が燃えているのに、動かないだと…?」

それはつまり、日本の警察機関が敵の手中に収められているという事に他ならないからだ。
最早この国に秩序は存在しない、あるのは混沌のみだ。
それを裏付けるように、オセロットの話には続きがあった。

「やっと動き出したかと思えば、奴等治安維持とは別方向に部隊が使われているのも分かった。」

彼の語りに合わせてスネークが資料を捲ると、ペンで書かれた矢印マークの入った地図が目に映った。
線は、警視庁本部から虎ノ門ヒルズへと伸びていた。

「コイツは…!」
「会議で出た『流星旅団』とやらが狙いだろうな。そしてその裏には…」
「メサイア教団か、狙いはお前たちの言う『指輪』とやらだろうな。」
「うっへぇ~、めんどくせっ。」

点と点が線で繋がり、この国の退廃ぶりがいよいよもって現実味を増す。
日本という国に影を降ろすメサイア教団の強大さに、改めて冷や汗を浮かべるのだった。
だが、スネークはその脅威に隠れた奇妙な違和感を見逃さなかった。

「…少し引っ掛かるな、幾ら何でも動きが全く無いのは妙だ。」

スネークの言う通りだった。
普通であれば、いやそうでなくとも眼前の秩序を守れない警察機関なぞ、責任追及の末に総辞職が待ち受けているのは想像に難くない。
幾ら賄賂や弱みを握られていようともだ、リスクが大きすぎる。
だというのに、警察は沈黙を保っている。
言われて見れば、ただの腐敗だとは思い無い異常事態だった。

「ボス、思ったより事は根深いかもしれん。諜報活動は続けるが、突貫仕事だ。正直これ以上成果が上がるとは言い難い、どうする?」
「アビィだ、奴に頼るとしよう。」

オセロットの口から語られる、事実上のお手上げ宣言。
だからこそ、スネークの決断に迷いは無かった。

「暇さえあればそこいらのシステムにクラッキングしている奴の事だ、警察の内部情報を探らせるには打って付けだろう。」
「おい、場合によってはアイツが大人しくする玉じゃないのは知ってるだろう!?」
「だが時間が惜しい、賭けでもやるしかない。」

スネークの判断に異を唱えるカズだったが、それも一理あった。
今の彼等には他に頼れる存在がいない。
故に、カズは諦めた様に溜息を吐き、オセロットと視線を交わした。
互いに覚悟を決めた瞳を見つめ合い、静かに二人は首を縦に振った。

「なぁ、さっきから言われてるその『アビィ』って誰だよ?」

一方で、アビィの存在を今しがた知らされた江ノ島達にとっては、疑問符しか浮かばなかった。
彼等からすれば、スネークが語る人物は全て初耳の物ばかりだ。
此方を置いてけぼりの会話には流石に気分が良くないのか、詰め寄る様に問い詰める。

「そうだな、言い忘れていた。奴は…」

対しスネークは、彼等にこう言った。
人類には無い知識と、常人ならざる技術を持つ天才少年なのだと。

10人目

「唸るハンマー! フェリシアのDOKKANバトル!」

「よっ、ほっ……」

 身体をリラックスさせ、軽く跳ねて柔軟体操をする悟空。

「病院暮らしで体ァ鈍っちまってたんだ。リハビリ代わりにゃ丁度良いだろ」

 そう言ってニヤリと笑う。

「リハビリだァ!? 舐めた口利いてんじゃねえよ、おっさん!」

 試合開始と同時に、フェリシアが大槌を振りかざし、勢い良く振り下ろす。

「ずっがーーーーーーーーーーーーーーーんッ!!」

 その威力は凄まじく、地面が大きく陥没した。

「ひょお、こいつぁすげえパワーだ!」
「どうだ! 痛い目に遭いたくなかったらさっさと降参しな!」
「ははっ、そいつぁ出来ねぇ相談だな……波ッ!!」

 悟空が気功弾を掌から撃ち出す。

「おわっ、何か出た!? 打ち返ぇぇぇすッ!! ホォォォォォォォォムランッ!!」

 対するフェリシアは大きく振りかぶって、大槌を横薙ぎに振るった。

「何ィッ!?」

 悟空の放った気功波を打ち返すフェリシア。

「おわっと!」

 咄嵯に避わし、悟空は直撃を避ける。観客席近くに着弾した気功波は爆発を起こして、
周囲に煙を撒き散らした。

「おわあああっ!」
「ば、爆発したぞ!?」

 パニックに陥る会場。そんな中、フェリシアと悟空は何処吹く風と言った様子で
平然と立っていた。

「へへ、やるじゃねーか」
「アンタもな、おっさん。なかなかおもしれーじゃん」

 2人は笑みを交わし合う。

『10連勝の深月フェリシアに挑戦する無名のチャレンジャー! 
これは伝説のスーパーバトルの予感がします!』

「いいぞ、もっとやれ!」
「どっちも頑張れ~!」

 会場は一気に興奮に包まれた。ピッコロは両腕を組みながら、ある疑問を抱く。

(だが、気のせいか? 孫と戦っている小娘……心なしか環や黒江の気の波動に
似たものを感じる……)

「お前ら、何やってんだ?」

 戦いを観戦するピッコロ達の元に、出店で購入したのであろう食べ物を大量に抱えた
ルフィが現れた。彼もまた、第3部隊の一員だ。

「ルフィ……姿が見えないと思えば、そんな物を買い込んでいたのか?」

 呆れた顔のピッコロ。

「お前らも食え! このホットドッグとか言う食い物は美味いぞ」

 そう言いながら、ホットドッグを差し出してくる。

「俺は水があれば別に食い物なぞ摂らずとも……」
「いらねぇなら俺が全部喰うぞ?」
「好きにしろ……」

「CROSS HEROESとやらは案外と自由気ままな連中が揃っているようだな」

 バッファローマンは差し出されたホットドッグに齧り付いた。

「まあ、退屈はしねえけどな。振り回される方は堪んないぜ」

 ウーロンは苦笑いしながら呟いた。

「んあ? 悟空と戦ってるガキンチョ……どっかで見た事あるような……
誰だったっけか……」

 ふと、ルフィは首を傾げた。しかし、思い出せないものは仕方ないと割り切り、
再びホットドッグを口に運ぶ。

「おい、あの連中……」
「パラガスが言っていた奴らか?」
「すぐに包囲する準備に取りかかれ!」

「……」

 ベジータは焼きそばを頬張りながら、観客席で怪しげな動きを見せる集団に
視線を向けた。

「おい、ピッコロ」
「うむ……」

「そんじゃ、第2ラウンド開始といくか! はああああああッ!!」

 フェリシアは大槌を持ち上げ、悟空は構えを取る。

「行くぞ、おっさん! 今度こそぶっ潰してやっかんなァ!」
「望むところだ!」

 地下闘技場に渦巻く不穏な空気。
それはまるで、嵐の前触れのように感じられた。それを知ってか知らずか、
悟空とフェリシアはまだまだ戦いを楽しもうとしていた。

「どりゃあああああああああああああッ!!」
「てぇありゃあああああああああああッ!!」

11人目

「機動せよ、ブロンズリンク・マニピュレーター」

「――立ち去りなさい、教団の使徒たち。此処は遍く全て我ら流星旅団の大地。踏み入った無礼は不問に処します。
この警告を看過するようであれば、死という等価を以て、愚行の代償を支払っていただきます。」
「くそ、なめんじゃねぇ!!」

 アサルトライフルを構える雀蜂を前に、フィオレは。

「だって、こうでも言わないとやる気が出ないもので。」

 舌を出し、可愛げのある表情で挑発する彼女。
 挑発に対抗するように、雀蜂部隊も機銃を掃射し始める。

「守護者の錫腕(ユーピター)、防御開始!」

 彼女の装備『ブロンズリンク・マニピュレーター』が持つ4本の腕。
 そのうちの一つが掃射される機銃の弾丸全てを摘み取ってしまった。
 それだけではない。

「戦火の鉄槌(マルス)、掃射!」

 無数の光弾が、雀蜂たちを襲う。
 その在り方は、まるで火炎放射器でハチの巣を焼き払うかの如く。

「なんて武装だ、あの子本当に人間!?まるでロボットじゃないか!?」
「いや、あの子は人間だぜ!」

 月夜と松田も抵抗する。
 前方からは6連装の連射型ボウガンから放たれる多様な矢と拳銃によるピンポイントショット。
 後方には無数の光弾と質量攻撃。

「くそ殺せ!相手はたった3人だ!」
「手榴弾だ!手榴弾を!」 
「させない!轟然の鉛腕(ザトゥルン)、圧壊!」

 投げつけられた手榴弾を、フィオレの礼装が踏みつぶす。
 その様子を見ていたのは、松田をだまして抹殺しようとした警部だった。

「くそ、俺だけでもあいつらを倒せば……俺は助かるんだ!!」

 彼は隠し持っていた拳銃で、月夜の抹殺をしようと試みる。

「へー、或いはボクに切り刻まれる、とか?」

 帰りが遅い3人を心配したのか、彩香が迎えに来た。
 そこに今回の騒動の首謀者であろう警部がいる。
 彩香は、彼から聞き出せるだけ情報を聞こうと思っているのだ。

「ボクらはただ、おじさんに聞きたいことがいっぱいあるだけでさ。話してくれたら」
「だ、誰が言うかッ!俺だってな、俺だって……ッ!」

 その時、彩香だけが何かに気づいた。
 この男は妙に動揺していることに。
 何かがおかしい。異常だ。

「おじさん、本当は何か隠していること、あるんじゃないの?例えば……」

 何かを彩香が指摘しようとしたが、その時。

「くっ!お前らに俺の何が分かるってんだよッ!」

 話を遮りつつ警部が取り出したのは、白煙手榴弾。
 きっと雀蜂から緊急時用にもらったものだろう。
 炸裂する白い煙と共に、警部はその場から逃げてしまった。

「あーあ、行っちゃった。」

 曇天の中、風に吹かれる白煙を見届ける。

「おーい、ルクソードとかいうジジイがきてらぁ!」
「ジジイって……今行く。松田さん、行こう。」

 虚空に響く罪木オルタの声。
 その声を聴いた3人はねぐらへと一時帰投する。
 松田も月夜たちに連れられ、ねぐらへと戻っていった。



 ねぐらには、ルクソードのほかにも燕青、十神、そして森長可がいた。
 罪木オルタの顔をまじまじと見つめる十神の心境は、何処か複雑だった。

「君が……罪木蜜柑、オルタナティブか。」
「あ゛?ご生憎だけどあんたみたいな奴あたしは知らないよ?」
「いや、君にそっくりな子を見た気がするんだ。」

 白髪の罪木は知らない。
 正史に生きる、保健委員としての自分を。
 絶望の果てに希望を掴んだ、本来の自分のことを。
 だって正史の罪木蜜柑は、眼前にいる白髪赤眼の罪木蜜柑(アヴェンジャー)にとっては知る由もない存在なのだから。

 憂いのこもった目と口調で、十神に告げた。

「そいつは……多分あたしとは違う存在だろうさ。」
「そうか……そうだな。」

 十神も、これ以上は何も言わなかった。



「おかえりなさい、燕青。」
「ただいま帰還した、我が主よ。」
「お前らそういう関係かよ!ちょっとうらやましいな。」
「なんだ恋人関係かよお前ら!はははっ!」

 自身のマスター、フィオレを前に跪く燕青を見て、ちょっとうらやましそうにするデュマと森。
 彼らは互いに世界の叫びによって召喚された者たち。信頼できるマスターがいるということにちょっと嫉妬心を覚えてしまっている。
 デュマが恋人関係だと言ったのは、松田に余計な思案をさせないための方便か。

「はぁ……。」
「しかし困ったよ兄さん。位置がばれたし。」

 その通りだ。
 自分がここへ来なければ、彼らがここを逃げることはなかったのに。
 松田が自分を責め始める。

「すみません……私がここにきて彼らを誘導したせいで……。」
「いや、いずれこうなる運命だった。連中もここまで手を伸ばし始めたと思えるだけで、十分だ。」

 月夜が、浮かない顔の松田を慰める。
 そして、月夜が彩香に質問をする。

「彩香。さっきの警部、どんな様子だった?」
「うん、なんか後ろめたいというか……なんか秘密がありそうだった。」
「そうか……それは重畳。もしかしたら、利用できるかもな。」

 月夜は、何かを考えている。
 もしかしたら?警察の腐敗をどうにかしつつ、教団打破の手がかりをつかめるのではないか、と。

「……よし、ここがもうバレた以上は、移動するか。」
「移動?ここ以外にも基地があるんですか?」

 月夜は、笑いながら言う。
 その笑いは、まだ奥の手があると言わんばかりの余裕の笑みだ。 

「ある。現在俺達の同胞がたくさんいるところへと案内するよ。俺たちの要塞、東京ミッドタウンにな。」

12人目

「巨悪、再び」

 白熱する悟空とフェリシアのバトル。両者一歩も譲らず、なかなか決着が着かない。

「くっそー! こいつ強ええな!?」
「おめえも大概だけどな! でも、オラの方がもっと強えぇ!!」
「言ったな!?」

 高速で移動し、舞台のあちこちで空気が破裂する程の激しい打撃音が響く。

「み、見えるか……?」
「全然見えねえよ……」
「あんなの人間業じゃないだろ!?」

 観客達は息を飲む。彼らの目には、悟空とフェリシアの影すら映らない。

(よく狙え……)
(ああ……)

 観客席から、狙撃手が銃を構えている。

「もらった……!」
「!! 危ねぇっ!!」

 悟空が咄嗟にフェリシアを突き飛ばす。その直後、弾丸は地面に着弾した。

「ァ痛ッ!? ……って、ええ!?」
「チッ、外した……もう一発だ!」

 尻餅をついているフェリシアに向かって、再度発砲しようとする狙撃手。

「やばっ……」
「フェリシアさん!」

 ガキンッ、と金属がぶつかり合う音。
フェリシアの前に現れたのは魔法少女に変身した二葉さなだった。

「うおっ!? 急に出てきた!?」

 透明化の魔法を発動したさなの気配は、悟空たちにさえも察知出来なかった。

「フェリシアさん、大丈夫ですか? 探したんですよ?」
「お、おう……助かったぜ」

「あーーーーー! 思い出した! あいつら、カミハマにいたいろはの仲間だ!」

 ルフィが叫ぶ。
以前、ルフィを含むCROSS HEROESが訪れた神浜市での戦い。
炎上する街の中で奮闘していた数多くの魔法少女の中に、フェリシアとさなの姿もあった。

「馬鹿! そんな事はもっと早く思い出せ!」

 ピッコロがルフィに怒鳴った。

「しかし、これで合点が行った。環と黒江と同じ魔法少女だったと言う事か。
少し考えれば気付けたはずだが、迂闊だったな……孫! その小娘どもは味方だ! 
戦いを中止させろ!」

 ピッコロが声を荒げる。だが、当の本人であるフェリシアは、
怒り心頭と言った様子で歯軋りをしていた。

「何だよ、これ! 何でオレを狙ってくんだ!?」
「フフ……お前は彼奴らを呼び寄せるための撒き餌だからだ……深月フェリシア……
もうお前なんぞに用は無い」

 暗がりから現れたのは、パラガスであった。

「あ! オレをスカウトしたおっさんじゃねーか!!」
「パラガス……トラオムで姿を眩ましたかと思えば、こんな所に居やがったのか……」

 ベジータは舌打ちをした。トラオム/復讐界域を支配する立場にいながら、
バイオブロリー、カナディアンマン・オルタが立て続けに撃破されたと見るや
一人乗り用のポッドで脱出を図り、行方知れずとなっていたパラガス。
その後、彼がどうなったのかを知る者は誰もいなかった。

「久しいな、カカロット……」
「パラガス!? おめぇ生きてたんか!」

 パラガスはニヤリと笑みを浮かべた。

「その通りだ。俺は生き延び、こうして晴れてメサイア教団の一員と相成ったのだ」
「フッフッフ……」

 さらに、パラガスの傍らに現れたのは……

「お前! ドフラミンゴ!!」

 バードス島での決戦でルフィを圧倒するも、島を呑み込む大津波に呑まれ、
消息不明となった筈の王下・七武海の一角。
同盟を結んでいたはずのあしゅら男爵・スウォルツ・安倍晴明らから離れ、
独自の行動を取っている。

「フッフッフ……しぶとく生き残っていたようだな、麦わら。
そうでなくっちゃあ面白くねぇ。ちったぁ良い面構えになったようだな。
多少は修羅場を潜ってきたと見える」

 ドフラミンゴはサングラス越しに不敵に笑う。

「トーキョー……ここは実に面白え街だ。Dr.ヘルの辛気臭ェ根城より、
よっぽど性に合ってるぜ。汚職! 賭博! 暴力! 殺人! 強盗! 
あらゆる犯罪が許される! この街に秩序や道徳など必要無い!
この俺が全てを支配してやる!」

 そう言って、ドフラミンゴは指をパチンと鳴らした。
すると、舞台を取り囲むように、 武装した男たちが現れた。
彼らは皆、メサイア教団の構成員たちであった。
武器を手にした男達はジワリと包囲の輪を縮めていく。

「上がって来いよ? 俺がいる高みまでなぁ……!」

 ドフラミンゴは観客席の最上段にある非常口の扉を開き、外へ出た。

「待て! ドフラミンゴ!!」

「今に見ておれ、ベジータ! 間もなく、メサイア教団の力によって俺の望みが叶う……
そう、ブロリーの完全復活だァ!!」
「何!?」

 パラガスはそのまま空中に浮遊し、ドフラミンゴに追随するように撤退していった。

「チッ!」

 ピッコロやバッファローマンも一斉に舞台に飛び出した。
客席に座す観客達もパニック状態に陥り、我先にと出口に向かって殺到する。

「とっとと雑魚を蹴散らしてここから脱出するぞ!」

 背中合わせに円陣を組む悟空たち。

「アンタら……もしかしてクロスなんちゃらって奴?」
「CROSS HEROESな」

「そう、それそれ! なーんだよ、いろはのお仲間かよ! 先に言えよな!?」
「おめえもいきなりハンマーぶん回してきたんだからおあいこって事で良いだろ?」

「ごちゃごちゃ喋っている場合か、カカロット!」

13人目

「傲岸不遜な美の化身」

 美、という言葉を聞いて、どんなイメージが湧くだろうか?

 均整の整っているもの?
 きらめくネオンのように輝いているもの?
 アフロディーテに代表されるような、美の女神と呼べるような存在?
 宝石とかのような価値のあるもの?
 極限まで精巧な芸術や技術、或いは黄金比に代表されるような数式?
 ___美の価値観が人それぞれという前提ならば、全て正解と言える。

 だが質問を変え、『究極の美』というものを追求するならば何をすればその領域へとたどり着けるのだろうか?
 自分以外の全員を殺せばそれは究極の美と呼べるか?
 否、最強の美とはいえるだろうが、主観の美は究極とははるかに程通い。何しろ美の判断は他人の判断でなければ何の意味もないものだから。

 では究極の美の体現とは。
 それは___あらゆる手を尽くし、極限まで美しいものを追い求めた者の結果のことであると思っていた。

 ある週刊誌の記者、最期の更新



六本木ヒルズ
「本日の民たちからの装飾品は以下の通りです。」
「……。」

 六本木ヒルズの最上階、暗がりの中。
 帳の奥にいる一つの影。ライトの光に照らされたその影すら、美しい。
 六本木の女王「キング・Q」の臣下であろう男が、民たちから簒奪したであろう宝石や時計が布に包まれている。それもかなりの高級品だ。

「美しきキング・Q様。どうかお納めください。」
「要らないわ。捨てなさい。」

 即答。
 高級品の数々を、紙屑当然のように捨てる傲岸。
 しかして、その美しさは依然見えず。

「はっ、ではそのように。」

 黒いゴミ袋の中に宝石群を投げ捨て、本当に紙屑を捨てるかのように扱っている。

「CROSS HEROESの連中が来たようね。愚かしくて愚かしくて、本当に忌々しいわ。」
「そんなことはありません。あなた様の美の力があれば、誰であれ倒せますとも。」
「そう……嬉しいわ。でも足りない。」
「足りない?と言いますと。」
「私の美は永遠でなければならない。永久に輝く美を持たなければ私の力は発揮されない。要するに、アンチエイジング、と言えばいいかしら?」
「いえいえ、滅相もございません。あなた様はいつだって美しい。」

 お世辞を述べる男。
 それを、帳の奥より見たキング・Qは愉快そうに笑った後。
    ・・・・・・・・・・・・
「では、あなたの血を戴けるかしら?私の美のために。」
「もちろん悦んで。」

 そういって、男はあろうことか彼女の帳の前で大きい壺を置き、その前で自らの腹を切ってしまった。
 切腹による大量出血。
 壺の中に大量の鮮血が流れ込んで行く。

「こんな方便に騙されるなんて。本当に人間って、愚かしい。」

 くつくつと、嗜虐心に満ちた無邪気な笑みを帳の奥で浮かべる。

 金色の太ももまで届くかのような長い髪。
 黄金比に則っているかのような、均整の整った天性の風貌。
 グラビアアイドルも顔負けの妖艶な肉体。
 その動きたるや全てが、一つの芸術。
 しかしてその実、人を貶める悪魔リリスが如き悪辣さ。

 ___美しき邪悪が、ここにいる。

「早く来なさいな、新たなる召使。」
「はっ、ここに。」

 スーツを身に纏った、セレブリティ感あふれる新しい召使の男がやってきた。
 



 東京ミッドタウンに移動している道中の車内
 教団員の動きをかく乱させるため、流星旅団とルクソードたちは複数台に分かれて移動していた。

 1号車、月夜、松田、デュマ、森長可が乗った車は。

「Zzzzzz……。」
「……森のやつは寝てるな。」
「あの。」
「なんだ?」

 疲れからか車内でうつむいていた松田が我慢できなくなったのか、月夜にある質問をした。

「どうして、彩香さんをこんな危険なことに巻き込むんですか?あなたの大切な妹でしょう?」
「ああそれか。」

 なぜ妹まで巻き込むのか。という至極真っ当な質問。
 質問を前にして、月夜はどこか誇らしげに、されどどこか悲しそうに事情を話し始めた。

「あいつは自分の意志で戦うことを選んだんだ。自分の意志で、教団に立ち向かうことを選んだ。そこに関しては誇らしいと思う。」
「……。」
「でもな、ときどき昔のあいつが段々離れていくような感覚がするんだ。優しかったころのあいつが、遠くに行ってしまいそうな。そんな感覚が。」
「……はぁ。」

 その感情は兄としての悲しみか。或いは妹への憐憫か。
 松田には、同情でしか理解できない感情であった。
 重苦しい空気が、車内を包む。



 そのころ、彩香、罪木オルタ、ルクソードを乗せた車はというと。

「こちら第2号車ルクソード、前方に異常なし、どうぞ。」
「あいよ、こちら3号車燕青と黒服。こちらも異常はなし、どうぞー。」

 外の様子を伺う彩香。
 外は曇天。頭痛を招くような黒い曇り空が、気分を鬱屈させる。

「なぁ彩香、あんたは何で戦っているんだ?」

 罪木オルタが、そっけなく質問をする。

「ボクは兄さんと、あの日の復讐のために動いている。兄さんの手助けの一助になれば、ボクはそれでいいんだ。」
「そうか、それは……いいことだな。誰かを助けたい、誰かのために戦いたいという気持ちは尊い。それならせめて自分が信頼出来る、助けるに値すると思った人にだけは、せめて優しくしな。でなきゃ誰かを助けるだなんてことは出来ないんだよ。」
「……うん、分かった。」

 優しく微笑む彩香。
 その心意や、いかに。

「そろそろ着くぞお嬢さん方。東京ミッドタウンにな。」 天高くそびえる、巨大な都市の塔。
 そこは流星旅団の最終防衛拠点。
 ___悪徳が満ちてしまった港区に燦然と輝く、最後の善たちが集う場所。 

14人目

「根は首を絞める程に深く」

『という訳で今日僕は、警視庁のイケない秘密を暴露する為に本部庁舎に居るよ。イエーイ。』
「迷惑系y○utuberかお前は?」

高度な暗号化の施された秘匿回線を無駄遣いして送られてくる陳腐な自撮り映像に、思わずカズはツッコんだ。
屋上で自撮り棒を持って夜空と自分を映す様は、おおよそ施設に潜入する人物のソレでは無い。
実際、そのふざけた通信を受け取った端末には、年端もいかぬ青髪の少年が此方に笑い顔を向けてピースする光景が出ているのだから、言葉には説得力の欠片も感じ取れないだろう。
まるでやらされているかの様な棒読みのセリフも相まって、いよいよもって馬鹿さ加減に拍車が掛かっていた。
そんな物を見せられれば、当然視聴している他の者も不安を覚える訳で。

「ふぅん、コイツがアビィって奴か?なんか頼り無さそー。」
『おぉいおいおい、今僕を頼り無いとか言ったね君?』
「頼っておいてなんだが、正直今の状態で擁護出来る点は無いぞ?」

妥当な言葉を送った江ノ島、フォロー等も有る筈も無く。
映像の中の少年、アビィは不満そうに唇を尖らせた。
だが直ぐに気を取り直したのか、咳払いと共に姿勢を正し、改めて撮影を進める。
さてこの状況、結論から言えばカズの警視庁に対する内部調査依頼をアビィが快諾して出来た物である。
なのだが。

『言われた通り直接探りを入れる訳だけども。』
「頼むから情報を抜き出すだけにしてくれ、本当に。」
『前向きに検討するよ。』

出来るだけ穏便にというカズの要望はまぁ恐らく叶いそうに無く、がぁっと頭を抱えるばかりだ。
スネークもまた後悔とまでは行かないが自分の決断に迷いを抱いていた。
だが、何度考えてみてもあの時はあれ以上の良い方法は無かった気がするのだ。
結果、こうして不審人物が都内某所に現れてしまう事になってしまったのだが。

『それじゃあ待たせるのも悪いし、早速潜入だ。高評価とチャンネル登録宜しく!』
「炎上してしまえそんなチャンネル。」
『この動画が流れたら警視庁の方が燃えるけどね。』
「そりゃそうだ…待て待て流すな!?」

慌てるカズを余所に、彼は何処からか出したフックを屋上の際に引っ掛け、ロープを伝い建物の側面を降りていく。

『フゥ!意外と良い眺め…でも無いね。いや寧ろ半端な高さな分返って有難みが無い。』
「勝手に入り込んでおいてボロクソだな、マジで一回炎上しろよ。」
『よぅし、リスナーの要望にお応えしよう。』

意気揚々と全身から青白い炎を噴出させるアビィに、違う化学的にじゃないとツッコミが入る。
そも化学的な燃焼とは別の何かなのだが、それを言うのは野暮だろう。

「おい、潜入なのに目立ってどうする!?」
『これから窓を溶かすのさ、割って音立てたら気付かれるだろ?』
「コイツさっきまで配信感覚で喋ってただろうに…!」

そうこうしている内に、設置した足から吹き出る炎が、ガラス面を溶かしていく。
数秒と立たずドロドロに溶けたガラスは、子ども一人通れるくらいのサイズの穴を作る。
かくして、彼の犯罪行為はスタートした。
ちなみに火は未だ燃え盛っている。



早速だが侵入がバレた様だ。

『誰だ!』
『やぁどうもこんばんわ、毎分毎秒地球上の誰かに見られている皆のアイドル、アビィだよ。』
『誰だ!?』

月明りと見間違う様な青白い炎と言えど、暗闇ならば目立つ。
案の定警官にバッタリ見つかり、その場で尋問されていた。
返す刀で出たアビィの返答に、当然ながら警官は困惑した。

「おい早速見つかってるじゃねーか!大丈夫か?」
『全く、良い子は寝てる時間なのにね。』

心配半分呆れ半分で見ているのを他所に、やれやれといった調子で肩を竦めている。
無論、本来なら不法侵入しているこちら側が悪態を付かれる側だ。
そんな事をしている間に、映像に映る警官は胸元の無線機へと手を伸ばし。

「おい、後ろ…!」
『Good night.(おやすみ)』

無線連絡しようとした警官の元へ、画面端から幾多の蒼い線が伸びた。
否、正確には送られてきた映像の1フレーム以内に警官の後ろへとアビィが回り込んだのだ。
距離は、数メートルはあった筈だ。

『なっ』

何を、と続ける間も無く捻られる警官の頭。
コキンッ、と心地よい響きが静かに響き、警官は意識を失ったのか倒れ込む。
直後に重力を思い出した様に落下を開始した自撮り棒が地面に付く直前、またも蒼い線が伸び、アビィは再び画面端を占拠した。

『良い子だったみたいだ、眠ってくれたよ。』
「おい、今首を…」
『大丈夫だよ、ほら整体師資格。』
「誰が整体の話したぁ!?」

画面に映される資格証らしき物に、カズは叫ばずにはいられなかった。
ゼーハー、と若干の息切れ感も出てきたカズに、アビィも悪かった悪かったと落ち着きを促す。
当人が原因なのは言うまでもない。

『ちゃんと生きてるよ、ほら首をゴッてやる奴、あれだよ。』
「じゃあ気絶序でに首の整体やったのか…」

死んでないなら、と納得しかけた所でいや何で整体したんだよと喉元まで出かかったが、これ以上は付き合いきれんとカズは天を仰ぐ。
そんな彼の様子に満足したのか、アビィは再び歩き出す。

「しかしいきなり警備員に出くわすとは幸先悪いな、大丈夫か?」
『まぁここサーバ室付近だから警備が厳重だし、遅かれ早かれだね。』
「何だ、見取りは把握してるのか。」

どの道あの警官は犠牲になる運命だったらしい。
何だかなぁ、と思いつつ視聴を続ける。
倒れ伏した警官を跨ぎ、部屋の入口に向かうアビィ。
が、途中で何か思い出した様に立ち止まり、振り返る。

「ん?どうしたアビィ、外にもいるのか?」
『いや、反対向きに捻ってなかったなって。』
「整体はもういいだろぉ!!」

カズの泣け無しの体力をつぎ込んだツッコミは、心地よい骨の音で掻き消された。



潜入捜査をする上で、下調べを既に済ませているのだろう。
実際、アビィは迷う事無く目的地であるサーバ室の前まで来ていた。

『さて、お待ちかねの目的地だよ。』
「あぁ、やっと終わる…」

カズは疲れ果てていた。
それはさておき、ノブを回しても鍵が掛かっているらしく、開かない。
さてどうするのかと思えば、カメラに映る少年は拳でドアノブごと貫いた。

「おい。」
『いや、何かもう面倒になって…』
「お前…!」
「絶望的に飽きっぽいなコイツ。」

ここに来て急に蛮族と化したアビィに、疲れ切ったカズは鬱蒼とした気分を露わにした。
当の本人は反省の欠片も見せることは無く、腕を引き抜くと同時に空いた穴から手を突っ込み、扉を開けると意気揚々と部屋に入る。
そこから映る、如何にもサーバですと言わんばかりの機械が立ち並んでいる光景。
適当なサーバのプラグ穴を見回した後、彼は帽子からコードをプラグに刺す。

『それじゃあJ.A.S.T.I.S.、何か今回の件に関わってそうな汚職の内容見つけて。』
「アバウト。」
『検索中…』

曖昧な指示に、彼の帽子に宿るAI『J.A.S.T.I.S.』は真面目に答える。
数秒と立たないうちに、端末に情報が送られてきた。
その内容とは_

15人目

「因縁の対決、ゲイツVSウォズ中編」

一方その頃、あしゅら達は
「東京都港区か……悪くないな」
「どういうことだ?」
「貴様も知ってると思うが、東京はこの国日本の首都……いわば中心に当たる地域だ」
「……なるほどな。そこで儀式を行って日本全国に……そしてあわよくば世界中にミケーネの恐ろしさを思い知らせるというわけか……」
「その通り、そして何よりもあそこは現在メサイア教団が支配している……夜神月を崇拝している奴らに真の神が誰かを思い知らせる為にもあそこはうってつけだ…!」
「なるほどな。そうと決まれば早速我々も向かうとしよう」



一方その頃、
「ハァアアア!」
ツクヨミと騎士アレックスはウォズが連れてきたカッシーンを相手に戦っていた。
「……ツクヨミ殿、戦い途中で聞いて悪いのですが」
「なに?」
「先程言ってた前の世界とはいったい……」
「……CROSS HEROESの皆には言ってなかったけど、実はこの世界は作り直された後の世界なのよ……」
「なっ…!?」
「信じられないでしょうけど事実よ……そしてこの世界の人達は皆前の世界での記憶を忘れていて、覚えているのは私とゲイツとソウゴ、そして……」
「……あのウォズという人物とスウォルツですか……」
「えぇ、けど後から力と共に記憶が戻った私やゲイツ、ソウゴと違って何故かウォズは私達とこの世界で再開した時点で既に前の世界の記憶を持っていた……理由は今までわからなかったけど、彼が最初からクォーツァーだったというのが本当ならちょっと納得するわね……」



ツクヨミと騎士アレックスがカッシーンと戦闘している中、ゲイツとウォズの一騎打ちも激しさを増していた。
「ウォズ!お前は何故クォーツァーの一員になった!?」
「なった?違うね、私は最初からクォーツァーの一員なんだよ!」
「なに!?」
「はぁ!」
「ガハッ!?」
ウォズはゲイツを張り手で突き飛ばす。
「我々クォーツァーは前の世界の頃からずっと、平成という醜い歴史を美しいものに作り変える為に活動してきた。常磐ソウゴ……彼にジオウへ変身する力を与え、バラバラな平成仮面ライダーの歴史を全て継承させたのも、その為のことだ!」
「お前達は、最初からソウゴのことを利用していたのか…!」
「そういうことだ。平成という歴史で最も大きくそして一番醜い歴史である平成ライダー……それを1つの存在に集約すればスッキリとした物になる。後はその歴史と力を我々の物にすれば他の平成の歴史も我々の思うがままになり美しいものへ整える事ができるはずだった……しかし、そこに時の界王神率いるタイムパトロールが現れて我々の計画を邪魔し始めた。
それの対応に労力を当てた結果、計画の為に利用していたスウォルツに好き勝手やられてしまい最終的にオーマジオウに覚醒した常磐ソウゴにより世界そのものが作り変えられた……その結果がこの醜い世界だ」
「この世界が醜いだと…?」
「そうじゃないか。この世界はただでさえ醜い平成ライダーの歴史に加えて、夜神月によるデスノートを使った大量殺人の発生と彼を崇拝する者たちによるテロ活動。
ウィスパードがもたらしたブラックテクノロジーとそれにより生まれた数多の兵器と幾多の争いの数々。
インキュベーターが自分達の目的の為に生み出した魔法少女と魔女。
次々と地球にやってくる宇宙からの侵略者達。
更には怪獣災害や古代の遺産を悪用する者たちの存在など……この世界では前の世界以上に混沌としており、平成という歴史も更に醜いものになってる……
だから、我々クォーツァーは前の世界で達成することのできなかったこの計画を再び実行することにした!
この世界の醜い歴史を!平成という凸凹過ぎる時代を!我々が求める美しいものにするために!」
「俺やソウゴ達の力や記憶を戻したのは、その計画をやる為に前の世界でソウゴが受け継いだ平成ライダーの歴史を手に入れる為か…!」
「そういうことだ。と言ってもあの時は他にも想定外のトラブルがあったからというのも理由の1つだがね……」
「………」
「さて、そろそろ決着をつけるとしよう…!」
「……あぁ、望むところだ…!」

16人目

「次なる戦場(エリア)へ」

「ズガーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!」

 残るメサイア教団の信徒、最後の一人をフェリシアがハンマーでかち上げ、
場外へと吹き飛ばす。

「ふいー、片付いたー」
(ハンマーによる破壊力に対し、高いステルス能力とシールドによる守備力。
この2人、環たちとはまるで戦闘スタイルが異なるようだ)

 ピッコロはフェリシアとさなの戦闘能力を分析していた。

「ふふふ、天下のCROSS HEROESに敵うわけねーだろっての!」

 戦いが終わったのを確認すると、ウーロンはのこのこと舞台へ上がってきた。
つんつん、と倒れたメサイア教団信徒の一人を突っつく。
ピクリとも動かない。

「お前隠れてただけだろ」

 ルフィに指摘され、ギクッとする。図星だった。
だが、そんな事はおくびにも出さず、 ウーロンは胸を張ってこう言った。

「お、俺はCROSS HEROESの最終兵器だからな! 出番はまだ先だから
温存していたんだ! それに、いざという時のための備えはしておくのが常識だろ! 
お前だってそう思うよな!?  悟空!」
「ん? 何か言ったか?」

 CROSS HEROESがメサイア教団の信徒たちを蹴散らしている間に、
パラガスとドフラミンゴの姿はすっかり消え失せていた。

「こいつらは所詮、時間稼ぎに過ぎなかったようだな……歯応えの無い奴らだ」

 ベジータが呟くと、倒れた信徒達は泡になって消滅した。

「げ、溶けた!?」

 驚愕するフェリシア。どうやら、彼らの正体は人の姿を模しただけの操り人形にしか
過ぎなかったようだ。その役目を終えると、エネルギー源である魔力の供給が途絶え、
肉体を維持できずに崩壊してしまったのだ。

「しかし、ブロリーとはな……奴が復活すれば、この辺り一帯は容易に焦土と化すだろう」

ピッコロは険しい表情を浮かべた。

「パラガスの奴はトラオムでもブロリーの出来損ないの泥人形を
けしかけてきやがったからな……」

 不完全なクローン体でありながらも、ブロリー特有の打たれ強さとパワー、
そして執念深さを宿していた怪物、バイオブロリー。
ベジータや悟飯、森長可、アルガス騎士団に追い詰められながらも、
なお執拗に襲い掛かってきたあの悪夢のような存在。

「お前たちがそう言うくらいだ、よほどヤバい相手なんだな」
「まあな」

 バッファローマンの問いに、悟空は短く答えた。

「パラガスの奴にブロリーを復活させられては厄介だ、早く奴を捕まえて
阻止しなければならんぞ」

 ピッコロは舞台の上に散らばったメサイア教団の構成員たちの亡骸を見渡した。

「ドフラミンゴの奴も一緒だったしな。今度こそぶっ飛ばしてやる!」

 ルフィは拳を打ち鳴らす。

 「私達も皆さんにご協力します」

 さながCROSS HEROESの面々に申し出る。

「オレもオレも! パラガスとか言うおっさんからまだ賞金貰ってないし!」

 フェリシアも名乗りを上げた。

「奴がそんなものを渡すつもりがあったとは思えんがな」

 ピッコロは呆れたように首を振ったが、 CROSS HEROESはさなとフェリシアの共闘を
受け入れた。

「あの……いろはさん達は……」
「ああ、あいつらも俺たちと共にこの街へ来ている。今は別行動中だがな……
お前たちがここに来ていると聞くなり、今回の作戦への参加を申し出ていたぞ」
「そ、そうですか……」

「おい、さな。やちよと鶴乃はどうしたんだよ?」
「フェリシアちゃんを探しに行くのを頼まれてから、それっきり……
あの2人の事だから大丈夫だと思うけど……」

「ここで油を売っていても始まるまい。別のエリアの連中と合流を図った方が
いいんじゃないか?」
「そうだな。さっきからみんなの気を探ろうとしてんだけど
見えねぇ何かに邪魔されてるみてえなんだ。これじゃ瞬間移動も出来やしねえ」

「メサイア教団の仕業だろう。トラオムでも似たような現象に陥っていた。
通信連絡もままならんとなれば、直接動くしかなかろう」

 バッファローマンの提案により、CROSS HEROESは白金エリアからの
移動を開始するのであった。
メサイア教団の結界により、別チームとの連携が遮断されている状況に陥りながらも
戦士たちは先へと進む……

17人目

「トラオムの遺産」

 白金エリア 地下駐車場

「パラガスの奴は……逃げたか。まぁいいか。あいつはあいつでやるべきことがある。」

 無人の地下駐車場に、一人の男がやってきた。
 不自然な白衣を纏った、黒い髪にメガネをつけた理性感漂う男。
 しかしてその白衣には無数の血の跡が染みついている。

「誰も気づいていないようだな、このビショップが仕掛けておいた”アレ”に。」

 大型トラックから、巨大な装置が出てくる。
 中心にある円筒状の培養槽の内部には高純度のホムンクルスが一体、浮かび上がっている。

『自動英霊召喚AI オモヒカネ 起動』
「よし、奴を召喚しろ。」
『理解しました。これより召喚システムを起動します。』

 装置が淡い光を放つ。
 あらかじめ設置した魔法陣の中心に置かれた「レンズ」から、眩いばかりの閃光が走る。
 そして光の奥より具現する、白衣の男。
 その周囲に橙色に燃える歯車を複数個浮かばせ、あふれ出る理性と共に

「サーヴァント・キャスター、真名『アルキメデス』。召喚に応じ参上し……なるほど。実に愚かしくも頭のいい召喚だ。」
「お褒めにあずかり恐悦。貴様は人間の召喚には決して応じないが人工知能による召喚には応じるかと思ってな。そして貴様に下す命令は一つだ。」

 機械の内部に入ったホムンクルスが、腕の赤い模様を相手に見せる。
 マスターの証にして、サーヴァントへの絶対命令権、令呪だ。

『令呪を以て命ずる、我らに歯向かう愚者(にんげん)を滅ぼしなさい。』
「ふ……理解した。」



 東京ミッドタウンに到着した流星旅団一行。
 内部で待っていたのは、無数のケガ人と怪我から復帰した彼らの同胞であった。

「月夜さん、おかえりなさい。」
「話は聞きました、第4拠点も潰されたって。」
「ああ、原因は不幸なトラブルにも近いがな。」

 仲間である男2人に囲まれ、先のトラブルについての話をしている。
 松田は、その様子を見て月夜に話しかける。

「ここにいる全員、旅団の同胞ですか?」
「ここにいる人たちはざっと2000人くらいか。うち戦える者は1200人くらい。周囲を悪党どもが囲っている以上、ここは何としても死守しなければならない最後の要塞なんだよ。」
「は、はぁ……。」

 松田が、月夜が集めた仲間の多さに圧倒される。
 対する月夜は。

「よし、CROSS HEROESも集まっている今集合場所を提示した方がよさそうだ。信号弾はあるか?」
「あります。セットアップすればいつでも撃てます!」
「よし、撃ちに行ってくれ。」

 仲間の男は、信号弾を放ちに屋上へと行った。
 信号弾を見た者は、きっとこっちへと向かうだろう。

「にしても、彩香のやつ遅いな。」
「彩香さんって、あなたの妹さん……確かに、他の人も遅いような……。」

 彩香のことを心配している。



 時はちょっとさかのぼる。
 月夜たちを乗せた車が東京ミッドタウンに到着した頃、彩香たちを乗せた車はというと。

「そろそろ着くと思ったが。連中がいる。」
「雀蜂か……え?何だあの雀蜂。ルクソード、双眼鏡ある?」

 双眼鏡越しから彩香は見た。奇妙なヘッドギアをつけている雀蜂の姿を。

「なぁ、何がおかしいんだ?」
「普通雀蜂ってのは黒い個体と黄色い個体がいるんだ。でも、今ボクたちの前にいるのはそのどれでもない。赤いヘッドギアをつけている個体が見える?」
「ああ、あいつか!」

 罪木オルタも、赤い雀蜂を目撃した。
 とその時、こちらを向いた赤い雀蜂が何かを投げつけた。

「手榴弾!?」

 炸裂する手榴弾。
 殺傷能力こそないが、その黄土色の煙が何処か妙に思える。

「何だ?何のいやがらせかは知らんが……あれ?なぜ止まる?」

 突如、車が走らなくなってしまった。
 その上、周囲を雀蜂部隊に囲まれてしまった。

「貴様ら投降しろ!この車は既に包囲されている!」
「今この車から降りれば手荒な真似はしない!諦めろ!」

 アサルトライフルを突き付け、投降を促す赤雀蜂。

「くそ、やるしかない!」

 刀を構える彩香。
 しかし、その刀を見てみると、次第に腐食が始まっているようだ。

「嘘!?錆び始めてる!?」
「チッ、さっきの手榴弾のせいか!ここはあたしに任せな。」
「では、私も出陣しよう。」
「刀がないとこっちは本領出せないからな、悔しいけど任せた。」

 罪木オルタとルクソードが外に出て、雀蜂に対する抗戦を開始した。
 外には、数体の雀蜂が待ち構えていた。

「投降する気になったようだな!」
「誰がするかよ、ええ?」

 飛び出した罪木オルタの鉄拳が炸裂する。
 世界からのバックアップと復讐者としての力が、雀蜂のヘッドギアを粉砕するほどの威力を放たせている。

「さて、ゲームスタートだ。」

 ルクソードの手には数枚のカードが握られている。
 雀蜂は、この2人を激しく警戒しているようだ。

「無駄なあがきだ。」

 唯一、この赤雀蜂だけは。

「この絶対兵士、AW-G01:Hornet-Sの力を受けるがいい。」

18人目

「シン・仮面ライダー対仮面ライダーBLACK SUN③Did you see the sunrise?」

「ふふふ……はははは、人間とバッタの合成生物ねぇ……まったく、ヒトと言うモノは
ほとほと業が深い生き物だな」

 蜘蛛怪人を撃退したのも束の間、謎の声が森の奥から響いてくる。

「誰だ!?」

 周囲を警戒する本郷たち。すると、奥の茂みの中から1人の男が現れた。

「ふふ、お前たちをここへ呼んだのは私だよ。「彼奴ら」と合流されては
何かと面倒だからね」
「彼奴ら? 一体何の話をしている……!?」

 本郷が問う。

「おっと、そういえばまだ自己紹介がまだだったな。私はオルデ・スロイア。
会ったばかりで悪いが、死んでもらうぞ」 

 オルデの背後にズラリと並んだのは、黒いスーツに身を包んだ男たちだった。

「おやおや、これはまた……ずいぶんと大層なお出迎えじゃないか」

 一文字の軽口にも動じることなく、黒服たちは拳銃を構える。

「お喋りはここまでだ。貴様らのオーグメンテーションシステム、
キングストーン……そしてそこのお嬢さん。それらは我々の計画に役立たせて貰おう」

 オルデの言葉を聞いて、光太郎がゆらりと前に出る。

「なるほど、お前らもキングストーン目当てでやって来たという訳か」

 その視線は、射抜くように鋭い。だが、対するオルデは涼しげな表情で答えた。

「もうひとつのキングストーンも、直に我々が手にすることになるだろう」

 それを聞いた途端、光太郎は激昂した。拳を握り締めて叫ぶ。

「その様子だと、キングストーンがひとつに揃えばどうなるかも
知っているようだな……!」

 光太郎の怒りを鼻で笑うオルデ。

「ああ、そうだとも。我々の尖兵を効率よく増やすには打ってつけの道具だよ。
怪人の量産。そして、人類を超越する力。まさに理想的だと思わないかね?」

 オルデの言葉に、本郷と一文字も戦慄する。
この男の言うところは、とどのつまりSHOCKERにも通じる思想であるからだ。

「ヒトの生き方を捻じ曲げ、己の喰い物にする……貴様も「奴ら」と同じだ……!!
許、さん……ッ!!」

 光太郎が上半身を振りかぶり、両腕をL字に構える。
ギリギリギリギリ……筋肉が軋む音が響き、許せぬ悪――オルデを真っ直ぐに睨みつけた。
そして腕を素早く交錯させると、右腕を腰に据えたまま左腕で半円を描き、
全身全霊の力を込めて叫んだ。

「変……身ッ!!」
「何っ……!?」

 驚く本郷と一文字。特別な意味を持つその言葉と共に目の前で、眩い光が弾けていた。
光の奔流が消え去った時、そこには全身、漆黒の強化外骨格で覆われた異形の姿があった。
すべての色を呑み込む、純粋なる「黒」。

「バッタ……!?」
「風も浴びずに……あの男も、本郷や一文字と同じバッタオーグ……
いいえ、改造人間だと言うの……!?」

 変身による余剰エネルギーによる熱が、蒸気となって身体の各関節部から噴き出す。
憤怒を表すかのように真っ赤に光る複眼。黒殿様飛蝗怪人を経ての二段変身した姿。
またの名を、世紀王BLACK SUN。幼少時に親友である秋月信彦共々改造手術を受け、
怪人として生きる事を宿命付けられた男……

「……」

 ゆっくりと、2本指を突き出して、ファイティングポーズを取る。
己の運命を呪い、絶望しながらも、その力を持ってして
抗わねばならないものと戦うために。

「ふっ……ははははは、バッタ人間がまた増えたか。
バッタらしく群生でもするつもりかね?」

 オルデは嘲笑を浮かべると、右手を高く掲げた。
それを合図に、一斉に引き金を引く黒服たち。パン、パパァン!! 乾いた銃声が響く。
弾丸は確実に命中しているはずなのだが、 黒殿様飛蝗怪人……
否、BLACK SUNは平然と立っている。そして、銃弾の雨の中を悠々と歩き始めた。
まるで意とも介せぬ足取りで近づき、次々と黒服たちの頭を鷲掴みにして、
そのまま地面に叩きつける。

「グェェェッ」
「ギャッ」

 鈍い音と共に血肉が飛び散った。黒服たちもまた、ただの人間ではないようだ。
何かしらの強化を受けた生体兵器……

「では、君たちの性能を見せてもらうとしよう」

「ふざけやがって……お前が何処の誰だか分からんが、
好き勝手にさせちゃあならん輩だって事だけは分かる。やるぞ、本郷!」
「ああ、やろう……一文字!!」

 BLACK SUNに続き、本郷と一文字も同時に構えた。対する黒服達は鋭い鉤爪を
生やした戦闘員「ディフェンダー」へと姿を変貌させる。

「キィィィエアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「それが正体かい。だったら遠慮は要らないな!」

 両の拳を勢いよく打ち付ける一文字の戦意も最高潮に達していた。

19人目

「因縁の対決、ゲイツVSウォズ後編」

《ファイナリー!ビヨンド・ザ・タイム!》
《フィニッシュタイム!》
《バーニングサンエクスプロージョン!》
「ハァアアアッ!」
《一撃タイムバースト!》
「ダァアアアッ!」
ウォズの放った灼熱の火焔とゲイツの放った円形の巨大な刃が激突する。
「ふっ、君の力はその程度かい?」
「クッ…!」
ウォズの火焔にゲイツの攻撃はどんどんと押されていきそして…
「ガァアアアアアアッ!?」
最終的に自身が放った攻撃ごとウォズの攻撃を食らってしまい、ゲイツは変身解除してしまう
「……これでわかっただろ?結局私は、君とは根本が違うのだ…」
そう言いウォズはその場を立ち去ろうとするが…
「待て…!」
「…なんだい」
「……お前……俺たちの頃を殺しに来たんだろ?何故トドメを刺そうとしない?」
「……今ここで殺してもしなくても、今の君たち程度の実力じゃ、我々の計画を止めることができない……そう判断しただけさ」
「……違うな」
「なに…?」
「お前……最初から殺すつもりじゃなかっただろ……だからあの時俺たちをメサイア教団から助け、連れてきた戦力も少なかった……違うか?」
「………」
「お前がここに来た本当の目的は、俺たちを襲撃するふりをしてソウゴのピンチを俺たちに伝えること……だろ……」
「……何故私がそのようなことをする必要がある?」
「迷ってるんだろ……今のままでいいかどうかで……」
「迷ってる?この私が?」
「あぁそうだ。あの頃の…前の世界の頃の俺と同じだ……
あの時、ソウゴを倒しに未来から現れた俺を……アイツはいつしか認めさせ……仲間とした……」
「………」
「貴様も前の世界の頃から気づいてるんだろ?アイツは……ソウゴはお前達の枠に収まる男じゃないとな…!」
「………」
「俺とお前は似たもの同士だ……前の世界で…ソウゴと出会い、共に戦い暮らす中で……いつの間にかアイツに惹かれたんだ!」
「……うるさい!」
「っ!」
「私は私だ!君たち過去の異物とは違う!
……世界を新たな時代へ導く側の人間だ!」
そう言い残しウォズはどこかへ消えた



「ゲイツ!」
「ゲイツ殿!」
するとそこへカッシーンを全部倒したツクヨミと騎士アレックスがやって来る。
「ゲイツ、大丈夫?」
「あぁ…なんとかな……」
「酷い怪我だ……治療の為にも、一度撤退するべきかと」
「いや……このまま赤坂へ突入する」
「なっ!?」
「無茶よ!そんなにボロボロの状態じゃ…」
「アイツが…ソウゴが殺されるかもしれないんだ……少しでも早くこの港区での戦いを終わらせて……助けに行く必要がある……」
「けど……」
「っ!お二人とも、あれはいったい…?」
「え?」
騎士アレックスが見かけたもの、それは東京ミッドタウンにいる流星旅団一行が発射した信号弾だった。

20人目

「赤い蜂」

 AW-G01:Hornet-S。
 その型番の意味は「別次元戦闘兵器-汎用型絶対兵士雀蜂」。
 彼の装備から、通常の雀蜂とは異なっていた。

「奴の武器は……マシンピストル?」
「気をつけろよ均衡の守護者、こいつはどうやら、タダ者ではなさそうだ。」

 無言で赤雀蜂がその手に握ったマシンピストルを構える。

「……。」

 遠距離から放たれる、マシンピストルの弾幕。
 それは的確に罪木オルタたちの身体を貫かんと突撃してゆく。

「おっと。」

 ルクソードがカードを展開する。
 カードは空中で巨大化し、マシンピストルの弾丸をすべて封印してしまった。

「うわぁ!?」

 罪木オルタが驚愕する。
 弾幕がカードに吸収され、ルクソードの手元に戻る。

「お返しさせてもらうよ。」
「!」

 再びカードが放たれる。
 しかもそれは、先ほどマシンピストルの弾幕を封印したカード。
 投げられたカードが輝き、そこから弾幕が撃ち返される!

「……小癪。」

 放たれる弾幕を、まるで人間とは思えない機動で回避する。
 大地を思いっきり蹴り、右方向に回避する。

「おっと、そこにはあたしがいるってことを忘れたのか!?」

 右に飛び出た赤雀蜂を、罪木オルタが待ち構える。
 その右脚が唸りを上げて襲い掛かる。

「そぉれッ!」

 まるで白い鞭のような回し蹴り。
 ただでさえ復讐者としての力が、例えホムンクルスとはいえ人への憎悪が、雀蜂を吹き飛ばす威力を叩き出す。
「_____!」

 罪木オルタの蹴りにより、赤雀蜂が後方へと吹っ飛ばされ、気絶する。
 しかし、相手は絶対兵士。そう簡単に死ぬとは思えない。何とか赤雀蜂から目を離さずに逃げようとする。
 その時、車のエンジン音が鳴り響く。

「2人とも、霧が晴れた!エンジンもかかったから車を走らせられる!今のうちに!」
「応!」
「すぐに行く!」

 ルクソードと罪木オルタが車に飛び乗り、その車輪を走らせる。
 その時、赤雀蜂が跳び起きた。

「逃がすか。」

 まるで人間とは思えない機動性と、風神が如き速度で車を追跡し始める。
 ビルの壁を蹴り、電信柱をまるで八艘跳びが如き勢いで飛び移ってゆき車に攻撃を開始する。
 今度は、いつの間にか装備していた対物スナイパーライフルを構えている。

「ところで罪木オルタよ、車の運転はできるかな?私がカードであいつの弾丸を防ごうと思うのだが。」
「あ?出来ねぇよ、あたしに騎乗スキルはない。」

 復讐者の英霊にデフォルトでは騎乗スキルはない。
 しかも中学3年の時に自ら命を落とした彼女に、車の運転ができるわけもなく。

「そうか、では車の上に後部座席にある銃を持って外のあいつを撃つことはできるか?」
「銃?そいつならできる。」
「それは重畳。」

 外から赤雀蜂の銃口が狙っているのを見た彩香は、

「あいつ、ボクらを狙っている!時間がない、早く撃たないとこの車はお釈迦になる!」

 赤雀蜂の持つ狙撃銃が、車の燃料タンク部を狙っている。
 急がなければ、燃料タンクを撃たれ車ごと吹き飛ばされてしまう。

「死ね。」

 ぎりぎりと引鉄を引く。
 その時。

「悪いな、くたばれ。」

 後部座席から延びる、一丁の拳銃。
 罪木オルタの、そして彼女の同胞アレクサンドル・デュマによって造られた弾丸が放たれる___!


 そのころ、港区のある廃墟ビルにて。

「俺にだって……事情はあるんだよ……。」

 おもむろにスマートフォンの画面を開き、涙ぐむ警部。
 そこには、家族の写真が写っていた。
 晴れ渡る青空の下、笑顔の警部とその妻であろう女性、そして愛する息子が一人。

「うぅ……俺は……お前たちを救うために……ここまで……。」

 メサイア教団に人質にされているのは、この警部の家族だけではない。
 警察の腐敗には確かに、上層部の救い難い腐敗もあるだろう。
 しかし、世の中にはこういった、哀しい腐敗も、存在するのだ。

 祈りは既に、CROSS HEROESという希望に届いているのだ……!



 そのころ、警視庁にて

「そういうことか。」

 アビィ・ダイブは理解した。
 汚職刑事の一部が、メサイア教団によって家族を人質にされ仕方なく従っているということが。

21人目

「時空を超えた再戦! 悟飯VSボージャック!!」

 ーーロンドン。

「ふはははは、脆い、脆いぞ。地球人ども!!」

 東京都港区を舞台にCROSS HEROESとメサイア教団を中心とした
戦いが繰り広げられる中、ロンドンの街を破壊する銀河戦士ボージャックの前に
立ちはだかる人影。

「待てぇッ!! これ以上お前の好きなようにはさせないぞ、ボージャック!!」

 現地に駆けつけた孫悟飯が声を張り上げる。
ボージャックは訝しげにゆらりと振り向いた。

「んん……? なんだ貴様は? いや……その面、何処かで……
そうか、俺が『殺してやった』あのガキか。
くっくっく、随分とデカくなったじゃないか」

 悟空がこの世を去り、地球の平和を守る使命を託された悟飯たちを
全滅させたIFの世界線からやって来たボージャック。
つまりは、正しい歴史においては青年へと成長した悟飯とボージャックが
こうして合間見える事は無かった筈だった。

「お前の相手は、僕がする!」
「ふん、ならば『この世界』でもまた貴様を殺してやるぞ! 小僧ォッ!!!」

 悟飯とボージャック。
時空を超え、再びの邂逅を果たした二人の戦いが始まった……。

「行くぞ! はああああっ!!」

 超サイヤ人と化した悟飯が先制攻撃を仕掛ける。

「くく、覚えているぞ、その変化……だがなぁっ!!」

 悟飯の拳を右肘で受け止めたボージャックは左ストレートを放つ。
それを右手で払い除けた悟飯に更に追撃を仕掛けようとするも、
咄嵯に身を翻した悟飯によって空振りに終わる。

「だああありゃッ!!」

 回避行動と共に繰り出した右回し蹴りをボージャックの脇腹に叩き込む悟飯。
だが次の瞬間には逆に悟飯の脚が掴まれてしまう。

「おわっ!?」
「ふぅんぬっ!!」

 力任せに放り投げられた悟飯は煉瓦造りの時計塔に激突し、
崩れ落ちる瓦礫の中に埋もれてしまった。

「うわあああああああッ…………」

「どうした小僧!! そんなものなのかァ!?」
「くそぉッ……!」

 挑発するボージャックの声を聞きながら瓦礫の中から這い出した悟飯は
ゆっくりと身構える。

(強い……!)

 目の前の敵の強さを実感した悟飯だったが、
しかし同時に自分が如何に修行を怠り、実力が衰えているのかを
痛感させられることとなった。

「……だけど、負けられない。
こうしている間にも父さんやピッコロさんはメサイア教団と戦っているんだ……
絶対に負けてたまるか!!」

 気合いを入れ直した悟飯が再び突っ込んでいく。

「無駄だ! 貴様に俺は倒せん!」
「うおおおおおおーッ!!」

 空中で激しいラッシュの応酬を繰り広げる二人。
しかし、やはりというべきかボージャックの方が僅かに優勢であった。

「くっ……なんてパワーなんだ……やはり、僕が戦ったボージャックよりも……」

 息つく暇もない攻防の中、徐々に追い詰められていく悟飯。

「オラアアッ!!」

 遂には強烈なボディブローを受けて丸め込んだ背中に目掛けて
追い打ちのダブルスレッジハンマーを叩きつけられてしまう。

「ぐあああっ!!」

 地面に落下し、激しく転がっていく悟飯。

「フハハハッ! 所詮はその程度よ! 諦めろ、小僧!」

 勝ち誇ったように高笑いをするボージャック。

(駄目なのか……今の僕では奴を倒すどころか、足止めすら出来ないのか……?)

 孫悟飯、絶体絶命の危機……!

22人目

「根付く腐敗は多種多様」

「警視庁、いやコイツ等は日本を捨てる覚悟らしいな。」
『ホントたまげたね、そうでも無きゃ説明が付かないから質が悪い。』

結論から言えば、警視庁のサーバからは数多の腐敗が判明した。
調べれば調べる程、出てくるのはメサイア教団との癒着の証拠ばかり。
様々な形で繋がり合った彼等は、最早運命共同体と言っても過言では無いだろう。
日本の治安維持機構そのものが敵に下ったという事実に、大小あれど少なからず衝撃が走る。
だがその中で最も動揺したのは、言うまでも無かった

「日本の、警察が…?」

カズの内に膨れ上がる憤怒が、奥歯を噛み締めて尚湧き出ようとしてくる。
平和の守り手であり、秩序の象徴であるべき組織。
それがどうだ、まるで逆だ。
民を陥れ、治安を脅かし、日本という国に牙を剥く。

「これじゃまるで、クーデターじゃないかっ!」

あふれ出る憤りを必死に抑え込む様にして拳を握るカズ。
その肩へ、そっと手が伸ばされる。
それは、戒める様な視線を向けるスネークのものだった。

「落ち着け、カズ。お前さんの怒りは解るが、此処で爆発させても何も始まらんぞ。」
「だが…!」
「いいか、確かに怒りを感じる気持ちは良く解る。俺だってそうだ。だが、今は堪えろ。」

諭すように、語り掛ける様に告げられた言葉。
それを噛み砕き飲み込んだ時、カズは自分が何をすべきかを思い出せた気がした。
大きく深呼吸を繰り返し、何とか心を鎮める。
その様子を見て、スネークもまた小さく息を吐きだした。
スネークとて、警察のこのザマに何一つ納得している訳ではないのだ。
だが今はまだ、その時ではない。
感情に任せて暴れても、何も良い事などありはしない。
そう自身に言い聞かせ、スネークもまた冷静さを保つ。

「だが、どうする?流石に放置って訳にもいかないだろ?」
『ああ、そりゃそうだ。この際一気に殺菌したい気分だね。』
「悪戯に破壊しても、後に残るのは混乱だけだ。」
『だから余計に質が悪いんだよねぇ。』

一方で警察というものを最初から信用してなかったアビィは、口調こそいつも通りであれど怒りを隠そうともしない。
そして同時に、苛立ちを募らせる事実に悪態を付いた。

『全部が全部、悪徳って訳じゃないみたいだしね?』

警視庁に潜り込むきっかけとなった例の襲撃の首謀者や、その他一部の警察関係者は、ある種の例外であった。
家族、友人、親戚等を人質にされ、否応無しに従わされている。
その事実が。
メサイア教団という悪に与する者が得をして、立ち向かおうとした志を持つ者が馬鹿を見る現状が。

『…だから、はっきり言って気に食わないね。』
「やけに素直だな。」
『そんな日もある。』

そう返したアビィの口元には、薄ら寒い笑みが浮かんでいた。
それは彼が今抱いているであろう、確かな憤りが感じ取れるもの。
普段のふざけた態度が消え露わになった本心に、スネークは思わず苦笑いを浮かべた。

「その為にだ、今優先すべきことが他にある。」

スネークはそこで一度言葉を区切り、険しい顔付きになる。
無線を介して、彼の威厳ある声が皆に届く。

「現地治安維持機構が敵だと分かった今、新橋に乗り込むのは危険だ。」

カズ達第二部隊にとって現状の目的である、新橋での事件解決。
しかしそれが叶わぬものだと知った以上、迂闊に飛び込んでいくことは自殺行為に等しい。
だが、代わりに彼等は一つの選択肢を得る事が出来た。
それはスネークの視線の先に浮かぶ、信号弾の輝きだった。

「一度、流星旅団と合流をする。その上で対策を練るぞ。アビィ、お前も来い。」
『んー…分かったよ、流石にここまで入れ込んだんだ。とことん協力するとしようか。』

その返事を聞き、スネークは大きく息を吐き出す。
敵の全貌が分かり、癖はあるが頼もしい仲間も得た。
これで漸くスタートラインに立ったと言えるだろう。
その先に待つ戦いに向けて、スネークを乗せたヘリ達は信号弾の元へと向かっていく。
夜闇に紛れて空を駆けていくソレ等は、まるで彼等の行く末を示す道標の様でもあった。



「警察だ、抵抗せず出てこい!」

サーバ室に入り込んできた巡回の警備兵が、拳銃を構えて侵入者へとがなり立てる。
鼠一匹逃さぬクリアリングが、サーバ室全体を網羅していく。

「…どこだ?」

だが、そこにアビィの姿は居ない。
ただただ静寂が返ってくるのみだ。

「隊長、あれを!」

困惑する中で、部下の一人が天井を指差す。
そこには人一人が通れそうな穴がこじ開けられていた。

「そこから逃げたか、穴の深さは…」

覗き込む様に、穴の奥底へと視線を向かわせる。
だが、どこまで見れども穴は途切れていない。
すなわち。

「まさか、もう屋上から…?」

穴の先には、夜空が覗いていた。

23人目

「美の化身と悪の王」

 六本木ヒルズ

「え?ビショップが英霊を?」
「はい。アルキメデスを召喚し、現在行動中とのことで。」

 六本木ヒルズの屋上、キング・Qが報告を聞いていた。
 内容はビショップのアルキメデス召喚と、パラガスの一時撤退。

「情けないわ。ほんとに。」
「しかし、流星旅団も動き出したとのことでCROSS HEROESと本格的に接触する前にこちらも対策を練りましょう。」
「そうね。手始めにビショップに200体の雀蜂をこちらに送って貰うように言ってくださる?」
「はっ、ではそのように。……それとこちらの斥候からの情報ですが、例のAW雀蜂の試験体が活躍したそうで。連中も存外に苦戦したそうですよ。」

 AWの力を得た最新の雀蜂。その試作品。
 メタリックアーキアの力と絶対兵士の力を得た、赤色の雀蜂。

「では、流星旅団の主戦力である天宮兄妹の片割れ、或いはどちらかを戦闘不能にできたのではなくて?」
「まぁ、天宮の妹の方を戦闘不能には出来たそうですが、逃げられたようです。そのAW雀蜂も謎の白髪の女に倒されたようです。」
「白髪の女?私の美意識に全くそぐわなさそうね。まぁいいわ、この美の化身たる私の前には全てが紙屑以下。こちらはどっしりと構えましょう。」

 あくまでも威風堂々、防衛を貫く構えだ。
 美の化身であり淫蕩悪徳のパーティーを開いている彼女のことだ。その真意は今の安寧を守りたいが為だけであろう。





「そっちは防衛戦を挑み、流星旅団の連中は動くか。こいつは使えるぜ……フフフフ……」

 会合の様子を一人、ドフラミンゴは盗み聞いていた。


 そのころ、東京ミッドタウンにて

「信号弾を見てくれている人がいれば……何人かは来てくれるとは思うがそれでもあまり期待は出来なさそうだな。」

 月夜が舌打ち交じりに思案する。
 不安そうな表情を浮かべつつも誰かが来るのを待っている。
 その時。

「月夜さん、車が来ました。彩香たちを乗せた車です!」
「よし、帰ってきたか。」

 同胞が伝える、妹の帰還。
 月夜のそっけない態度とは裏腹に、その声はどこか嬉しそうだ。
 しかし、帰ってきた当の本人たちの表情は浮かない。

「ただいま……。」
「ん?何かあったのか彩香。」
「刀が……錆びちゃった。気に入ってたのに……兄さんのおさがりなのに。」

 哀しそうな表情の彩香。

「それはいいんだ、また買えばいいんだから。」
「うん、それよりも兄さんと戦えないから悔しくてさ。」

「……本当に仲がいいんだな。」

 どこか羨ましそうに、罪木オルタがつぶやく。
 そこに、さらなる吉報が。

「月夜さん!外からヘリが来てます!恐らく信号弾を見たんでしょうが、少なくとも敵の戦闘ヘリではないです!味方です!」

 外から聞こえる、アビィたちを乗せたヘリ。
 信号弾の輝きは、ちゃんと届いていたのだ。

「よし、じゃあ今後の計画を練る準備をしよう。」

24人目

「華麗なる悪鬼、キング・Q」

 白金エリアで深月フェリシア、二葉さなを仲間に加えたCROSS HEROES第3部隊。
一方、六本木エリアに向かった第1部隊……
環いろは、黒江、ペルフェクタリア、日向月美の4人はメサイア教団大司教、
キング・Qが座する六本木ヒルズに辿り着く。

「――ぐっ……」
「悪いな……眠っていろ」

 ペルフェクタリアが背後から見張りの黒服の首にマフラーを回し、締め上げた。
頸動脈を圧迫された黒服は、そのまま力なく崩れ落ちる。
元・暗殺者故の技術だ。

「こんな事ばかり身体に染み付いてしまっているな……」

 ペルは自嘲気味に呟きながら、倒れた黒服に目を向ける。
昔なら命までも奪っていただろうが、もうあの頃の自分とは違う。

「この人達も、メサイア教団に無理やり従わされてるだけなんだよね……」

 黒江も複雑な心境だった。
此度の相手は、今までのような怪物や怪獣などとは違い、
メサイア教団によって扇動されたごくごく普通の人間なのだから。

「この建物の屋上にいる首魁を抑えれば、この戦いも終わるはずだよ」

 いろはの言葉に、皆が静かに頷く。
最短、最速、最善の手を打つ。それが作戦の基本だ。
一行は人目につかない死角から死角へと移動し、六本木ヒルズの中に侵入する。

「あれか……」

 屋上に辿り着くと、薄暗い廊下の向こうに一際大きな扉が見える。
恐らく、そこがキング・Qが宴を催している場所に違いない。
ペルたちは物音を立てないよう注意しながら、扉の前に移動し、
耳を当てて中の様子を窺う。すると、微かにだが話し声が聞こえてきた。
内容は聞き取れないものの、どうやら複数人の人間の気配がある。

「よし、行くぞ……準備はいいな?」
「いつでも……!」

 ペルはゆっくりとドアノブに手をかけ、一気に開け放つ。
バンッ!! という勢いの良い音が響き渡り、室内にいた者達の視線が一斉に集まる。
中には宴に興じ、目元を仮面で覆ったセレブ民や武装した兵士と思われる男たちが
数十人程いるが、彼らは一様に困惑していた。
その中で、涼し気な表情でグラスを片手に佇む女怪がいた。
彼女は突然の来訪者に動じる様子もなく、まるで来客を待っていたかのように語りかける。

「いらっしゃい、CROSS HEROES」
「あなたが、メサイア教団の……」

 月美は一歩前に歩み出て、問い詰める。

「そう。キング・Qよ。よろしくね」

 彼女の言葉に、その場にいた全員が動揺する。
まさか彼女が敵の首魁だとは思わなかったからだ。
しかし、すぐに冷静さを取り戻し、月美は問いかけを続ける。

「メサイア教団! すぐに市民を解放して降伏しなさい!」
「解放? ふふふ、ここにいるみんなは、自分の意志で私に従ってくれているのよ?
ねぇ、皆さん」

 キングは周りの男達に同意を求めるように話しかけると、彼らは一様に肯定する。
洗脳されているという訳ではなさそうだ。
どうやら、彼らの心まで完全に掌握してしまっているらしい。厄介な相手だ。

「嘘よ! あなたが魔法か何かで……そうでしょう、ペルちゃん!?」
「……嘘の匂いが……しない」
「え!?」

 ペルフェクタリアは他人の嘘を嗅ぎ分けることが出来る。
故に、黒江の言葉を即座に否定する。
キング・Qはペルフェクタリアの言葉を聞くと、不敵に笑い、こう告げた。

「貴方達が来ることは分かってた。だから……既に手は打ってあるの」

 ぱん、と手を叩くと、部屋の奥から武装した兵士がゾロゾロと現れた。
そしてその兵士達の胸元には、見覚えのある紋章が刻まれていた。
メサイア教団の一団である事を表す紋章。いろは達は驚き、咄嵯に飛び退いて身構える。

「待って! ここにいる人達は……」

 いろはが言い切るよりも早く、兵士の一人が銃を構え、発砲してきた。
月美は咄嵯に結界を展開し、銃弾を防ぐ。
しかし、それを皮切りに次々と兵士たちが襲いかかってきた。
いろはたちも応戦するが、数が多い上に一人一人の戦闘能力も高い。
加えて、戦い慣れた動きをしている。
このまま戦闘を続けていれば、こちら側が不利になるのは目に見えていた。
その時……

「うっ……!」

 セレブの一人に流れ弾が当たり、倒れてしまう。

「ああっ……!」

 血だまりの中で苦しんでいるセレブを見て、いろはは思わず悲鳴を上げる。

「あら、勿体ない。若い女の血液は美容に良いのに……このままじゃ死んじゃうわね。
鮮度が落ちる前には回収しちゃわないと」

 悪びれた様子も無く、キングは言う。やはり、この女だけは許せない。
いろはの中に怒りが湧き上がる。

「その人は戦闘員じゃない……一般人なのに……それを!!」
「まさか……こいつ……!」

「大変、大変。CROSS HEROESがせっかくのパーティーに乱入するから、
一般人を巻き込んだ殺し合いが始まってしまったわぁ」

 CROSS HEROESが一般人への被害を考慮している事までをも見越した布陣。
キング・Qは明らかにそれを狙っていた。人の心の弱みに付け込む卑劣な作戦……

「今ならまだ助けられる……!!」

 回復魔法を使えるいろはが駆け寄ろうとするが、兵士が立ちふさがる。
これでは、治療できない。

「どけ」

 ペルが静かな口調で、しかし殺気を込めて呟くと、発剄を繰り出して兵士を吹き飛ばす。

「ぐぉわあああああッ!!」

 吹き飛ばされた兵士はそのまま壁に激突し、気絶してしまう。
だが、そんなことを気にしている余裕はない。

「急げ」
「う、うん!」

 いろははすぐにセレブの元に駆けつけ、回復魔法で傷を癒す。
これでひとまず安心だ。

「貴様……この女も貴様らの信者だろう。環いろはが治療しなければ、死んでいたぞ……」

 ペルは冷たく言い放つ。
しかしキング・Qは臆することなく答える。

「けど、私の役に立てるなら、その子も本望でしょう?」

 その言葉を聞いた瞬間、ペルは激昂し、キング・Qに襲い掛かる。
だが、キング・Qの前に立ち塞がる複数のセレブ客たち。

「――チッ!!」

 空中で軌道を変え、何とか蹴りを振り抜く前に着地するペル。
その様子を見て、キング・Qはクスリと笑う。

「キング・Q様をお守りしろ……」
「メサイア教団、万歳……」

 譫言のようにぶつぶつと言いながら、セレブたちはキング・Qの人壁になっていく。
これでは、近寄ることが出来ない。
まるで、女王蜂を守護する働き蜂のように……

「ほらね? この人達は自ら望んで私達の糧に……
いえ、私の為に命を捧げてくれているのよ。その心の拠り所を壊そうとする
あなた達こそ……『悪』なのではなくって?」

「!! 悪……私達が……!?」

25人目

「彼女の命題は復讐と共に」

 ___抑止の守護者になったときのことを、鮮明に覚えている。
 まるで冷凍庫のように薄ら寒い、自分の部屋で倒れた状態で目が覚めたんだっけ。

「う……ここ……は……どこ………。」

 意識もおぼつかず、心の中で黒く燃える炎だけがあたしの身体を突き動かしていた。
 ふらつきながら、何とか立ち上がり、その後は燃える復讐心にすべてを委ねた。



 多くの悲鳴を聞き、多くの命乞いを聞いた。

「……。」

 されど、その心は何一つ感じなかった。

 _____少女は大人になれず、裸足のままで駆け抜ける。
 _____彼女は大人になることなく、抑止の歯車となる。

 されど、彼女の心には常に______があった。


 六本木ヒルズ

「悪……私たちが……!?」

 CROSS HEROESの根底にある正義。
 魔法少女の命題たる正義。
 しかしこの悪徳の満ち、混沌が支配する地獄においてそれは無意味。
 1円の価値もないと突き付けられることが、彼女たちを曇らせるには十分すぎた。

「はははは!あなた方の正義など所詮その程度!より強い思想が、より美しい正義が弱者を喰らうのは自然の摂理なのよ。さぁ、あなたたちが語るしみったれた正義と共に、滅んでしまいなさい!」
「くっ!」

 嘲笑交じりの罵声が響く。
 さぁ曇れクズ共、苦悩し絶望しながら死んで逝け。
 歪み軋みひずみ狂える愛が炸裂する。

 だが。

「…………だアアアアアアア!!」

 ドアを蹴り破る。
 ぶっ飛ばされたドアが、更にセレブたちを吹き飛ばす。

「死なせる……もんかァアァァアァアア!!!」

 大広間に響く、女の咆哮。
 咆哮と共に繰り出される怒りの一撃が、キング・Qの顔を抉りぶっ飛ばした。

「ケッ。黙って話聞いてりゃ胸糞悪いな!てめぇが美しいからって殺人が曲がり通ると思ってんじゃねぇぞこの屁理屈女!」

 怒れる復讐者(アヴェンジャー)が立つ。
 悪の裁定者を打ち砕くために、この地に立つ。
 それは燃え尽きた灰のように、或いは解けゆく定めの雪のように白い髪。
 それはやさぐれた、されど今以て燃える炎のように赤い瞳。

 ありえざる復讐者、罪木蜜柑・オルタナティブ。
 恩讐と矜持、混沌と悪を背負い、立ち上がる必要悪。

「あなたは……あの時の。」
「危機一髪だったようだが間に合ってよかったぜ……。」

 日向たちの前に立ちその背を預ける。
 罪木オルタは、彼女たちの側に立つつもりだ。

「お前ら、悩むことねぇよ。こいつは悪い奴だ、敵だよ。」
「敵……。」
「どうしようもなく救えねぇ悪党だ、何しろ美しさにかまけて大勢の人間を犠牲にしてきたんだからな。自分の手を汚しているかどうかはわからねぇが、他人を利用している時点で卑劣なクソッタレだからな!」

 罪木オルタは既に覚悟を決めている。
 たとえこの手を汚すことになったとしても、彼女は振り返らないつもりだ。
 後退の2文字を消去するほどの覚悟。

 しかし、その敵は依然生きている。
 彼女の攻撃により頬に傷のついたキング・Qの心境は、もはや怒りの2文字で塗りつぶされていた。

「よくも……よくもこの……この私の顔に傷をつけたなァァァアアアアッ!!このビチグソがァァァァァァァアアアアアアアアアッ!!」

26人目

「復讐者、天より舞い降りる」

 罪木オルタ。流星旅団と共に行動していた彼女が何故この六本木ヒルズに現れたのか……
時は遡り……

「空から観るこの街も、中々いい景色じゃねぇか」

 スネーク、アビィ・ダイブらが用意したヘリに乗って、罪木オルタは流星旅団共々
東京の街を見下ろしていた。

「だが、この街の至る所で戦いが起きている……」

 このヘリは上空にいるため、地上の喧騒は聞こえない。
ヘリは高度を上げ、街の様子を俯瞰する。
その中で、一際目を引く六本木ヒルズの全長200m超の高層ビル。

「ん……」

 そのビルを見るなり、罪木オルタは何やら邪悪な気配を察した。

「おい、危ないぞ」

 身を乗り出す罪木オルタを慌てて止めるスネーク。
しかし、罪木オルタは止まらなかった。

「悪い、先行っててくれ。すぐに追い着く」

 彼女はそのままヘリから飛び降りると、落下しながらそのビルの屋上へと着地する。

「あ、おい!」

 その光景を見て驚く面々だったが、罪木オルタはそのまま歩き出した。

「まったく、肝が冷える……」
『ははは、退屈しないね。君たち』

 脱力するスネークと裏腹に、アビィは愉快そうに笑っていた。
この東京と言う街の中でも有数の高度を誇る六本木ヒルズの屋上部。
であるが故に、メサイア教団が街全体に張り巡らせた遮断結界にも綻びが生じており、
その隙を突く形で罪木オルタは侵入に成功したのだ。

「臭う、臭う。腐った臭いがプンプンしやがるぜ」

 鼻をひくつかせながら、周囲を警戒する。それはかつて生前の彼女が味わった悪意。
唾棄すべき悪徳の匂い。燃やし尽くすべき罪の残り香。
その感覚が、彼女に告げる。

「…………だアアアアアアア!!」

 扉ごと、蹴り砕けと。そして、現在。

「よくも……よくもこの……この私の顔に傷をつけたなァァァアアアアッ!! 
このビチグソがァァァァァァァアアアアアアアアアッ!!」

 キング・Qの美しい顔に傷を付けられた怒りが、彼女を駆り立てる。

「てめえらもてめえらだ!! ボーっと突っ立ってるだけのカカシか、
この無能どもが!! 今すぐ挽き肉にしてやろうか!?」
「ひ、ひいい……!!」

 さらにはキング・Qを守っていた周囲のセレブ客たちを怒鳴りつける。
その姿には、先ほどまでの余裕など一切見られない。
そんな彼女の変貌ぶりを見て、月美たちは困惑していた。

「な? 一皮剥けばあんなもんだ。まさに化けの皮剥がしたりってところか」

 罪木オルタは振り返らず、ただ前だけを見据えて呟いた。

「あたしは罪木蜜柑・オルタナティヴ。クラス:アヴェンジャーのサーヴァント」
「サーヴァント……シャルルマーニュさんや燕青さんと同じ……?」
「知ってるなら話は早い」

 罪木オルタは懐から取り出した煙草を口にくわえ、火をつける。
白い煙がふわりと宙を舞う。

「寄り道ついでに大物を1匹片付けるとするか。あいつは生かしておけない」
「――殺す!! 私の顔に傷をつけた罪! 全身の血を搾り尽くすだけでは
済まさんぞォォォォォォォッ!!」

 キング・Qの怒りはもはや頂点に達していた。
彼女は自分の美貌に絶対の自信を持っている。
その美貌を傷つけられたことが何よりも許せなかった。

「汚れ仕事は得意でな。アンタらはアンタらの信じる正義とやらを貫くがいいさ」

 罪木オルタとCROSS HEROES。因果が巡り巡りて、共闘の時を今迎えた。

27人目

「悪徳という社会性を成す膿/己を超えよ、悟飯!」

「全く、脱帽ものだね。」

東京ミッドタウンに陣取る流星旅団へコンタクトを取るべく、東京の空を周回していたDDのヘリ。
そこへ飛び乗って来た旅団の一員、罪木オルタは六本木ヒルズを見ると、何を思ったのか突如その屋上へと飛び映った。
その行く末を双眼鏡で見届けたアビィは大層愉快な表情を浮かべ、感嘆とした声色を隠そうともしなかった。

「あれが噂に聞く娘か、ヘリから紐無しバンジーなんて中々肝が据わってるねぇ。」
「世間一般では飛び降りっつーんだよ普通。」
「僕が初めて死のうとした時を思い出すよ!失敗したけど。」
「ニッコニコの笑顔でいうことじゃねぇ!?」

江ノ島やシャルルマーニュのツッコミも耳に入らない様子で、過ぎ去った彼女の背中に拍手を贈り続けるアビィ。
かと思えばせわしなく動かしていた手を打ち止め、何処か遠い景色を見る様な、憧憬の情を醸し出しては微笑む。
急な態度の変化に、思わずデミックスは心境を尋ねた。

「なぁ、何がそんなにツボにハマった訳?」
「そうだね、一言で言うなら彼女が面白いからだ。」
「面白い…って何が?」
「ある意味で、僕に似てる所がかな。」

酷く曖昧で抽象的な表現を取るアビィ。
当然ながら言葉の本質に検討は付かず、デミックスはただ首を傾げるしかない。

「ふふ、でも彼女は、罪木ちゃんは"根っこの部分"が、僕とは大違いだ。」

そう言って何処か後ろめたさを醸し出すアビィの本心は、分からない。
一つ、確かな事を言えるとすれば。
彼の脳裏を染めるのは好奇の一色だった。
発端は単なる興味心の類いである。
元より人間観察を興味の一環とするアビィにとって、彼女は存在そのものが興味を引くのに十分な逸材だった。
それがどうだ、興味対象の一つでしかなかった彼女の行動は『アビィの興味』を良い意味で裏切り、夢中にさせた。
厄介な事にアビィのそれは常人よりも遥かに強いものであり、同時に一度炊き付けられれば業火の如く膨れ上がる質の物だ。
一度気に入った人間にはどこまでも興味を持ち続け、果てしなく追い求めてしまう。
故に。

「さーて。」
「おっとお前は会議があるぞ。」

その事をよーく分かってらっしゃるスネーク達が、僕もと立ち上がりかけたアビィを止めるのは必然だった。
他者に興味を持つのは結構だが、それはそれとして彼にはやって貰わねばならぬ事が有るのだ。
特に彼の持ち帰った警視庁の内部データは、今回の会議において欠かせない物だ。
彼女に続いて第二陣、という訳には行かない。
当の本人はと言うと駄々っ子の様に口をへの字にして抗議をするが、やがて理性が勝ったのか落ち着きを見せた。

「…はぁ、まぁ次の機会を待つとするよ。」

こういった所でも、彼は切り替えが早い。
自分が握っている膨大なデータを、客観的に見て取捨選択し必要な事を語るのが役目と分かっているからだ。
そうこうしている内に、ヘリは要塞と化した東京ミッドタウンへと降り立って行く。
搭乗していた者達もまた、同様に、次々と。
名の知れた者達(ネームド)に続いて、黒のフルフェイスマスクを纏った歴戦の兵士達が軍靴を鳴らす。
何れもテロ、内紛、革命等様々な戦場を総舐めし生還した無名の化け物揃いだ。

「いよいよか。」

誰かが放った言葉を皮切りに、一同の空気は張り詰めていく。
この会議を経て、彼等による武力介入が始まる。
警視庁が溜め込んだ暗部、深く根付いた悪性の膿を刈り取るのだ。
そしてその先にあるのは、打倒メサイア教団。
此度の事件は一筋縄ではいかないだろう。
まず間違いなく多くの血が流れる。
それでも彼等は、立ち止まる事は許されない。
これはまだ、ほんの始まりに過ぎないのだから。

「_クックック、今夜はたっぷり楽しめそうだな。」

そんな彼等を見下ろす影。
月明りを背に受けて、宙に佇む男と思わしき者達。
争いの臭いを嗅ぎつけた凶戦士達が静かに、しかし着々と狂気を露わにしてた。



「そろそろ体が温まってきたな。」

ロンドンで悟飯との熾烈な争いを繰り広げ、終始優勢を貫いたボージャック。
武人としての腕の高まりをその身に感じながら、拳を握り締め、気を高めていた。
奴を殺す瞬間を思うだけで、自然と笑みがこぼれてしまう。
生粋の悪党らしい殺戮衝動が、彼をそうさせていた。
そして、機は熟したと言わんばかりに口角を上げ、高らかに宣言する。

「頃合いだ、貴様をあの世に送ってやろう!」

その言葉を聞き取った刹那、悟飯はなけなしの力を振り絞って、反射的にその場から飛び退く。
直後、悟飯がいた場所に打ち込まれるボージャックの拳。
一瞬遅れて、攻撃の余波が周囲へ轟音と共に拡散される。
拳圧で周囲の建物が軒並み崩壊していく中、辛うじて原型を残したビルの屋上に着地する悟飯。
だが逃がすまいと追撃してきたボージャックの連撃が、確実にダメージを蓄積させていく。
骨身に染みる痛打と共に思い知らされる彼我の差に、悟飯は冷や汗を浮かべる。

(やっぱりだ、確かに奴も強くなっている…)

極限まで追い込まれた悟飯の思考が冴えわたる。
だからこそ、今の状況を俯瞰出来る。

(けど、それ以上に僕が鈍っているんだ!)

故に、今はただ己を恥じるばかりだった。
初めて戦いに身を投じてから、どれ程の時が流れただろうか。
幾度の戦いを経験し、死力を振り絞って幾度も強敵を屠って来た。
しかし、セルとの戦いから幾多の時を経たからだろうか。
命を懸けた死線に身を置く感覚を忘れてしまって様だ。
今もほら、ボージャックの拳が一つ、腹部の奥深くへと突き刺さる事を許してしまった。

「がぁ、あっ…!」
(修行が足りなかったばっかりに…!)

否、時間は言い訳に過ぎない。
結局の所、己の力不足が招いたものだ。
その甘さが彼に隙を与えてしまった。
21号との闘いもそうだ。
己がもっと強くあれば、或いは奴に届いたかもしれない。
彼は気付く、これこそが今の彼が感じる絶望の正体だと。
かつて正義を貫き通すと決めた自分や父親が今の姿を見たら、何と言うだろうか。
答えはきっと決まっている。
何時までも未熟な自分を叱咤し、奮い立たせてくれるに違いない。
そう思い浮かべただけで、自分はまだ立ち向かえる。
故に。

「これでトドメ…ぬぅ!?」

突如として乱入してきた黒い影が、ボージャックを弾き飛ばす。
だがむざむざ叩き付けられるボージャックでは無い。
すぐさま姿勢を立て直し、距離を取る。
そして両者の視線の先には、黒い衣服を纏った悟飯。
味方では無い、彼の醸し出す殺意は、自分にも向けられていた。

「これが、クローン…!」

何の巡り合わせか、21号の放ったクローンの悟飯が、そこに居た。

(これは、試練だ!)

同時に悟飯は悟った。
これは未熟な自分を打ち破れとの、世界の因果が与えた試練なのだと。

28人目

「幕間:罪木蜜柑・オルタナティヴへの考察」

 港区の動きが活発化している頃。
 西の都のビルで教団の調査をしていたモリアーティと西園寺は。

「なんであんたみたいなむさいおっさんと……。」
「手が空いていたのがお前くらいだからな……というか、おっさんはやめたまえ!普通に傷つく!」

 と言いつつ、パソコンで教団の調査をしていた。

「ほう、これはメサイア教団の大司教についての情報か。」

 パソコンに映し出される情報。
 そこに書かれていたのは、メサイア教団が抱える最大戦闘力「大司教」のメンバーのリストだ。

「なるほど、メンバーは把握している限りでも7人か。名前は2人しかわからず、分かっているのはキング・Qとビショップ。残る3人は肩書くらいで後の2人は完全に不明、と。」
「なになに、美、戦、焔、鉄、傲の化身……そのうち傲の化身は番外位で、名前は……クレイヴ。」
「まさかそのうちの一人がトラオムで出会ったあいつとは。しかし番外位だ、他の6人と比べると格は下なのだろう。」

 残る教団の大司教。
 美の化身、戦の化身、焔の化身、鉄の化身、■の化身、■の化身。
 彼らを倒さなければ教団は打倒できないという。



 そのうち調査を終えたモリアーティは、西園寺に質問をした。

「ところでだ___この世界における罪木蜜柑についての所感はどうだ?」
「はぁ?あのゲロブタがどうしたってんだよ。」
「悪辣な回答ありがとう。だが君は答えなくてはならない。……で、どうなのかね。彼女はそちらの世界でどう感じられた?」

 モリアーティが知りたいのは、正史存在の罪木蜜柑の精神構造がこちらの把握している罪木蜜柑・オルタナティヴと同じかどうかである。
 ただでさえ精神構造が不安定な彼女が、復讐という更に精神構造を不安定にさせる行動に身を窶す復讐者と化したのだ。もし何か精神が不安定になることが発生しようものならば、何が起きるのかは決して分からない。

「あいつは……なんていうか、激烈に優しいんだよ。私がちょっかいかけても泣いてばかりで、怒ったり悔しさを滲みださせようともしない。」
「そうか、では傾向として『誰かに構われてたり、愛されてたりしないとダメになる』みたいな、『人に依存している』という傾向はそっちの罪木にもあったか?」

 その質問を前に、西園寺は思い起こす。
 確かに、ジャバウォック島でのコロシアイでも彼女の、そんな傾向を見たことがある。
 誰かと一緒にいないと、心の中にある歪んだ愛が暴走してしまうという一面を。

「……思い起こせばあったな。」
「やはりそうか。」
「それがどうしたの?」

 ため息交じりに、モリアーティは結論を述べる。

「結論を言う前に、我々の知る罪木蜜柑という人物の姿を見せよう。」

 そういって、モリアーティは一枚の写真を見せる。

「…………同姓同名の別人?」
「いや、正真正銘の本人。正確には並行世界の罪木蜜柑本人だ。」

 写真に写っていたのは、白髪で不機嫌そうな罪木蜜柑の姿だ。
 どこか非行少女味を感じるのは何故か。

「これはデュマからもらった写真だ。ちょっと前に彼からいろいろ聞いてね。デュマは彼女のこと、とくに精神構造を懸念していた。彼、このままいくとどこかそう遠くない未来に必ず破滅(やらか)すぞと言っていた。」
「あいつがやらかしそうな性格のはわかるけどさ、それとこいつが同一人物だったとしても……ちょっと待って、こいつ今何してんの?」

 表情をこわばらせつつ、モリアーティに質問をぶつけた。

「何って言われてもね……正義の味方の真似事だとも。ただ、あの調子ではたぶん彼女はそう遠くない未来破滅するだろうが。」

 そういって、モリアーティは西園寺に写真を渡す。

「彼女の精神状態は君もわかっている通り、今まさに爆発しそうなニトロ燃料と同じだ。少しの精神のブレで爆発しかねない。気になるというのなら、行ってみたらどうかね。」

 そう遠くない未来の破滅。
 学友の破滅をまざまざと見せつけられてはこちらも寝ざめが悪くなるというもの。
 そう思い少し考えて、西園寺は決意した。

「___行ってみるか、こいつの下へ。」

29人目

「シン・仮面ライダー対仮面ライダーBLACK SUN④仮面ノ世界」

 謎の男、オルデ・スロイアから差し向けられた黒尽くめの暗殺用兵士、ディフェンダー。
群れを成し、素早い動きと鉤爪による集団攻撃を得意とした連中だ。

「シャアアアッ!!」

 ディフェンダーの鉤爪が一文字目掛けて振り下ろされる。
だが、一文字は冷静にそれを見据えた。

「……!!」

 鼻先でディフェンダーの鉤爪をひとつ、ふたつとすり抜け、
一文字は一気に距離を詰める。

「!?」

 予想外の動きに、ディフェンダーの動きが一瞬止まる。
その隙を一文字は見逃さなかった。

「うおおおっ!!」

 ディフェンダーに渾身のライダーパンチを喰らわせると、
頭蓋もろとも顔面が砕け散った。そのまま崩れ落ちるように倒れるディフェンダー。
空手と柔道の有段者であった一文字がオーグメンテーション手術を施されたとなれば
腕力も常人の数十倍に増幅されている。
そのパワーで以って繰り出されるパンチをまともに受ければ、並大抵の人間では
ひとたまりもない。さながら一撃一撃の攻撃が戦車の砲撃のような威力なのだ。

「さて、まだやるかい?」

 撃破した個体の背後に並ぶディフェンダー軍団を前に、一文字は言った。
一方の本郷はと言うと、ディフェンダーの編隊に周囲をぐるりと取り囲まれていた。

「……」

 しかし、本郷は怯む事なく、静かに右腕を胸の前に構えると、静かに拳を握った。

「シャァッ!!」

 すると、それに呼応するかのように、背後に控えるディフェンダー達が
一斉に襲いかかってきた。

「……!」

 ディフェンダーの鉤爪が全方位から本郷を襲う。
規則正しく円陣を描き、寸分のブレ無く同時に鉤爪を繰り出す様は
一輪の花を表しているようにも見えた。
だが、本郷はジャンプしてそれを避けると空中で一回転し、ベルトの風車に風力を集めて
胸部コンバーターラングから全身へとエネルギーを行き届かせる事により
身体能力を強化させる。

「むんッ!!」

 着地と同時にディフェンダーの顔面に炸裂させた急降下ダブルパンチ。
頭部を粉々に打ち砕かれ、その場に倒れ込むディフェンダー。
しかし、本郷はまだ止まらない。

「おぉおっ!!」

 今度は両腕を交差させ、左右の敵を同時に殴り飛ばし、さらに身体を回転させた
飛び後ろ回し蹴りで残りの敵を薙ぎ払う。

「シャアッ!!」

 間髪入れずに別のディフェンダーが背後から襲いかかるが、本郷はそれをかわすと
背中を向けたまま、その首筋に高速の手刀を叩き込んだ。

「!!」

 首筋から血飛沫を上げながら地面に転がるディフェンダー。

「――!!」

 ルリ子もただ本郷や一文字に守られているだけではなかった。
的確な照準で銃弾を撃ち込み、次々と敵の数を減じていく。

「対オーグ用の特殊強化弾よ。あなた達の装甲程度なら簡単に貫通できるわ」

 自慢げに言うルリ子の横顔を見て、一文字は思わず笑みを浮かべた。

「お嬢さんも、やるねェ」

 そう言って一文字が親指を立てると、ルリ子は少し照れ臭そうな表情を見せた。

「……戦闘中よ。油断しないで」

 そう言いながらも、やはりルリ子の声には嬉しさのようなものが滲んでいた。

「……ふっ」

 そんな二人のやり取りを見ていた本郷が仮面の下で微笑んだその時だった。

「なかなかしぶとい連中め…だが、それもここまでだ」
「とっとと降参した方が良いと思うがね?」

 一文字を筆頭に、本郷、ルリ子、そしてBLACK SUNが一同に並び立つ。
見据えるは、若干数残されたディフェンダーの背後にいるオルデ・スロイア。
力の差は歴然だった。

「この戦闘員たちと違い、あなたとは話をする事が出来る。だから……」
「相変わらず甘いわね、本郷猛。この連中は私達を殺し、そして所有するテクノロジーを
奪おうとしている。そうなれば、きっとろくでもない事に利用するに決まっているのよ」

「くくく……お前たちの力の片鱗。見せてもらった。確かに魅力的ではある。
我々の計画に大いに役立つことであろう」
「本音が出たな。やはりこいつはここで叩いておくに限る……!!」

 BLACK SUNがギュッ、と拳を強く握り、臨戦態勢に入った。

30人目

「因縁の三つ巴、二人の悟飯とボージャック!」

今は夜に包まれた日本の裏側に位置する、日の灯りが差すロンドンの市街地。
古き良き威厳に満ちたこの街を破壊せんとするボージャックと、それを止めんとする悟飯。
熾烈を極めた両者の戦いは、悟飯を圧倒したボージャックの勝利に終わるかと思われた。
だがその時、突如として乱入したのは、もう一人の悟飯。
まるで鏡写しの様に全く同じ容姿を持ちながら、しかし黒い装束に身を包んだその姿からは、どこか相容れぬ異質な雰囲気を感じ取れる。
それは、人造人間21号が放ったクローンの一体だった。
先程までの戦闘を経て尚余力を持つボージャックが、訝しむ様に問う。

「加勢か。それにしては顔が瓜二つだな、まさか双子か?」
「フッ…ある意味ではそうだね。」
「ほう?ならば不運だったな。」

一種の同一人物という観点から見た曲解とも呼べる回答を、クローンの悟飯は語る。
それに対してボージャックは、余裕ぶった口調でクツクツと嗤う。
不遜な態度をまるで隠さず見下すような様は、自身が放つ気迫も相まってより強大な邪悪さを生み出している。

(見かけこそ黒いが所詮は奴と同じ、この俺の相手としては物足りん。)

内心もまた、見た目相応の醜悪さな思考回路を持ち合わせている。
そして同時に、黒い悟飯を過小評価していた。
自らの障害になり得る存在ではないと。

「身内の死をその目で見る事になるからなっ!」

だからこそボージャックが取った行動は単純明快、己が破壊衝動を満たす事。
即ち、孫悟飯を奴の前で殺す事だった。
それは、自らに根付く原初の欲求。
彼にとって、美しいモノを自らの手で壊す快感に勝る物は無い。
家族愛、親愛、友情、それ等を打ち砕かれた時を見るのもまた、同義だった。
嘗て美しい地球に目を付けた時もそうだったように。

(まさか二度も奴を手に掛けられる機会が訪れようとはなぁ!)

そして並列世界に来た今再び、彼の欲望を叶える機会が巡って来たのだ。
ならば止まろう筈も無い。
一切の躊躇も無く、瀕死の悟飯の息の根を止めようと、猛ラッシュを仕掛けた。

「死ね、孫悟飯!」

死刑宣告と共に繰り出される、殴打の数々。
拳撃、蹴撃、ありとあらゆる武闘術を彼は繰り出してくる。
一撃でもまともに喰らえば致命傷は避けられない威力と速度を誇る連撃。
それ等を前に、消耗した悟飯には防御に徹するしか選択肢はない。

「ぐぅっ…!」

手足を前に構え、身を屈める悟飯。
そこにボージャックの四肢が振るわれる度に、鈍い音が骨身に響き、体の節々に打撃が加えられる。

(攻撃が完全に読み切れない…!)

攻撃を眼で追っても、その切っ先が霞みの如く消え失せる。
即ち、捉える事すら困難な速度で攻撃が撃ち込まれているのだ。
直前に感じる肌のヒリつく感覚、それ一つを頼りにただ身の守りに徹するしか出来ない。

「どうしたどうした?死ぬのが少し遅くなるだけだぞ!」
(悔しいけど、その通りだ。このままじゃ、やられるだけっ…!)

反撃に転じる隙さえ与えられない程の怒涛の攻撃に、悟飯は苦悶の声を上げる。
文字通り、手も足も出ない状況。
八方塞がりと言っても良い。
だが、そんな絶望的な状況で彼が感じたのは、不思議な事に恐怖ではなかった。

(何だ、この気持ちは一体…?)

奇妙だった、不可解だった。
怒りでもない、憎しみでもない。
ただ胸中に渦巻く不思議な高揚感に、困惑を隠せないでいた。
それは決して、目の前の男に対する恐怖などではない事は確かだ。

(修行を付けて貰っていた頃の、僕を思い出す…どうして?)

諦めの悪い子供のような、心の奥底に根付いた感情。
それが何なのか掴もうとして、思案してしまった。

「隙が出来たな?」
「なっ」

その気の緩みを、眼前の虐殺者が見逃そう筈も無い。
思考の隙間を縫うようにして放たれた回し蹴りが脇腹を捉え、悟飯の体をくの字に折り曲げる。
内臓が破裂しそうな程の衝撃に、視界が眩む。

「あがっ…!」
「フフフッ、今楽にしてやる…奴の前でな!」

身動ぎ一つ満足に出来ぬ苦痛の中、後ろから聞こえるボージャックの声。
同時に、背中を焦がすような気の高まりを感じ取る。
否、焦がす所では無い。
この身体を焼き払うつもりの気弾を今、背部から押し付けられているのだ。

(不味いっ…!)

何とか回避しようと試みるが、最早体は言う事を聞かない。
まさに断頭台への階段を登り切った処刑を待つ死刑囚だ。
反対に処刑執行人たるボージャックの交感神経は、昂る所を知らない。
ボロキレの如き悟飯を人質に取り、黒い仲間の動きも封じた。
そう確信し笑みを浮かべ、悟飯の最期を迎えさせようとして。

「くたばりな_」
「ふんっ。」

その刹那。
黒衣の悟飯は嘲笑うかの様な笑みを浮かべ、極大の気弾を躊躇無く打ち出した。
狙いは当然、悟飯とボージャックの二人。
彼からすれば、二人とも敵。
故に一度に両者を葬るチャンスを見逃そう筈も無かった。

「何ぃー!?」
「今だっ!!」

咄嗟にボージャックは悟飯を離し大きく後退、それを待っていた悟飯もまた気弾を回避した。
お互いに、スレスレの回避劇だった。

「躊躇いなく打つとは…もしや、仲間では無いのか?」

ボージャックはまだ知らない、眼前の黒い悟飯がクローンという事を。
それ所か彼の様なクローン戦士が世界中で戦火を上げよう等という事もまた、知り様が無い。
これはまだ、序の口に過ぎないのだ。
日本、イギリス、その他世界中に散らばる21号の新生レッドリボン軍の脅威。
その争いの火種が芽吹く時は、すぐそこに迫っていた。



一方、唯一その火種が撒かれていない特異点の中心では。

『朝は4本、昼は2本、夜は3本。これは何だ?』
「有名な問い掛けだな、答えは人間だ!」
『不正解。』
「何でだよ!?」
「答えは超人だ。」
『正解。』
「嘘だろオイ?」

パレスの謎解きに苦戦する一行の姿が見受けられた。