プライベート CROSS HEROES reUNION Episode:23「蘇りし宿敵」

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1人目

「Prologue」 

 歴史の管理者、クォーツァー。CROSS HEROES結成当時から幾度となく
死闘を繰り広げ、そして現在では特異点に本拠地を置く彼らとの決着の時がついに
訪れようとしていた……

【華麗なる峰不二子編】

 ある時はルパン三世の恋人、またある時は商売敵でもある女怪盗、峰不二子は
セレブ界にその存在感を示していたキング・Qの不審死の報を知る。
そんな折、かねてよりキング・Qと懇意であった大富豪、
ハワード・ロックウッドからの電話。そして港区近辺で暗躍するルパンの影……
これらの一連の事件には何か関連性があるのではないか……そう睨んだ峰不二子は
ハワード・ロックウッドこと、マモーの誘いに乗る。
今宵の香水は、危険な香り……

【シン・仮面ライダー対仮面ライダーBLACK SUN編】

 謎の男、オルデ・スロイアの正体……
それは、全身を完全機械化(オートメーション)させた人型兵器
オール・デストロイヤーであった。
ライダー達の攻撃を物ともしない頑強な装甲、全身至る所に搭載された強力無比な武装、
ディフェンダー軍団と戦ったデータを解析し行動パターンを先読みする演算機能……
この強敵を倒す方法とは……?

【ロンドン編】原文:霧雨さん

 流星旅団一行とデュマ、月美とペルフェクタリアは
メサイア教団の計画「聖戦」の正体が何かを突き止めるべく、
ギリシャにいるミケーネ神たちの目を盗んでイギリスに向かった。
イギリスに移動するその道中、一行はメサイア教団の大司教
「銃の化身」カルネウスの襲撃に遭ってしまう。
港区の時とは異なり、黒魔術と死霊魔術を用いた銃さばきに圧倒され、
ペルフェクタリアと離れ離れになるも何とか一時的に退けることに成功する。
到着したイギリス・ロンドンにて、彼らは現地協力者である
フラット・エスカルドスと出会う。
彼らはペルフェクタリアを捜索する組とウィンチェスターにあるワイミーズハウスに向かい
手がかりを探す組に分かれて行動を開始した。

 ワイミーズハウスに向かう月夜、フィオレ、燕青、そしてフラットの4人。
その道中でカルネウスの奇襲を受ける。
量産体制の整ったオモヒカネが召喚する影の英霊を何とか退けるが、
それを見たカルネウスが攻撃を開始する。 このままでは全滅してしまうと考えた
フィオレは一人でカルネウスに立ち向かう。 その時間稼ぎが成功したのか、
月夜たちはワイミーズハウスにて情報を入手することに成功。
フィオレも無事生還した。

 情報も隠滅できず、フィオレを逃してしまったことに
一人号泣するカルネウス。 悔しさと激情に駆られる彼は、
秘密兵器たる『クリサリス』をけしかけようと試みるのだった……。
一方のペルフェクタリア捜索組は、その途中でメサイア教団の司教3人組たる
「ラスターズ」の襲撃に遭う。 身動きが取れなくなる攻撃に苦戦し、
絶体絶命の危機に。 その時、彩香の身に宿りし神霊「アマツミカボシ」が覚醒。
その圧倒的な暴威を振るってラスターズの面々を次々と再起不能にしてしまった。
人に試練を与え、人を成長させる悪神アマツミカボシ。
しかしそこには慈悲がない。 暴走状態に陥った彩香=アマツミカボシを止めるべく
月美は応戦するも次第に追い詰められてゆく。
だが、その危機にペルフェクタリアと悟飯、そして五ェ門が到着し加勢、
アマツミカボシはその力を前に屈し一時的な休眠状態に入るのだった。
依然彩香は目覚めず、秘密兵器クリサリスも迫っている。
一難去ってまた一難、彼らは無事ロンドンから帰還できるのだろうか……?

【夢の世界編】

 カルネウスに敗れ、上空600mから海へと転落したペルフェクタリア。
志半ばで死を迎える無念を懐きながら無念の内に水底へと沈みゆく時……ペルは見た。
ここではない何処かでグランドクロスの尖兵たる怨霊達と戦う
暁美ほむら、巌窟王、藤丸立香……そして、自らの半身にして護るべき対象
平坂たりあの姿を。まだ死ねない。果たすべき使命を再び見出した魔殺少女は
死の淵より復活を果たすのであった。

【月影夢美一行/カリギュラ2編】原文:渡蝶幻夜さん

 ただゲームしただけなのに! と思うアース、
帰宅部とは…? と思う大空太陽、
早く帰ってゲームやりてぇと思う月影夢美、
丁度4人パーティだねと思う星乃雪、
世界を護る者達とリドゥ再構築の願い、その戦いの火蓋が切って落とされようとしていた!

歪で噛み合わない世界を作り替えて君と僕だけのエデンを作り上げよう。
その黄金のマスクの下に何を思うのだろうか?────

【VSミケーネ編】原文:ノヴァ野郎さん

 ギリシャで遂に始まったミケーネの戦闘獣との戦い、
人面部分が弱点だと判明しなんとか撃破していくが、
それでも敵の数は未だに多くこのままではジリ貧になってしまう。

 そこへカリブでMSF最後の遺産『メタルギアZEKE』を回収したDDが合流した。
そしてミケーネと戦っているのはCROSS HEROESだけではなかった。
アメリカのワシントンD.C.ではスパイダーマンことピーター・パーカーが
戦闘獣と戦っており、またそこから離れた孤島で
彼とは異なるもう一人のスパイダーマンが人造人間17号と
共にミケーネ神と戦っていた。

 もしかすると彼ら以外の平行世界のスパイダーマン達も
この世界のどこかでミケーネと戦っているのかもしれない。

【DD編】 原文:AMIDANTさん

 MSF時代の遺産、メタルギアZEKEの回収の為に旧マザーベース跡地へと訪れたDD。
回収作業は順調に行われていたが、終わり際に正体不明の武装集団による襲撃を受ける。 襲撃犯の目的がZEKEと推測したカズは、
スネークをZEKE格納庫へと向かわせる為の囮となり、消息を絶ってしまう。
格納庫に辿り着いたスネークの活躍もあり、ZEKEは無事にDDの手により回収された。 数々の犠牲を出し、カズを失いながらも、DDは次へと進んでいく。

【特異点突入編】 原文:AMIDANTさん

 スラッグ達をベジータ達に任せ、特異点深部へと向かうアビダイン。
その最中、クォーツァーパレスから襲来した機械兵団によって攻撃を受ける。
数々の戦士が戦場を駆ける中、アビダインは機械兵団の内の一種、
ダイマジーンに対応するために、アビダイオーへと変形。
その猛威を振るう事となる。

【クォーツァー・パレス突入/合流編】

 カッシーンの不意打ちであわや、と言う窮地に陥った二葉さなを救ったのは
海賊狩りの三刀流、ロロノア・ゾロ。
さらに宮本武蔵、トランクス、ブルーン、マジーヌも加わり、いよいよ役者は揃った。
 
 クォーツァーがアビダイン隊に機械兵団を大量投入していた頃、
拠点内に潜入するクイーン、フォックス、パンサーら心の怪盗団と空条承太郎。
見張りの手薄な部分から忍び込み、手慣れた潜入スキルで先へと進んでいく。
セーフルームで一息ついていると、何者かの気配……それはかつて、
承太郎とも拳を交え、幾度となくCROSS HEROESの前に立ち塞がってきた強敵、
スウォルツであった。その目的とは一体……?

2人目

「地下迷宮からの脅威」

 ーー特異点/クォーツァー・パレス。

「……」

セーフルームで突然の遭遇を果たしたスウォルツ。
心の怪盗団や承太郎の背後に控えて、常にニヤついた笑みを貼り付けているその男に
警戒心を抱く面々。

「ねぇ、承太郎さん……あのスウォルツって人……」

 パンサーは小声で何かを言いかけたが、承太郎は首を横に振った。
今はまだ話す時ではないと言わんばかりに。

「信用したわけじゃない。だが、ここで無闇に疑っている余裕もない」

 スウォルツをここで邪険に扱えば、クォーツァーの連中に
自分たちの所在を知られてしまうかも知れない。
そう考えて、ひとまず同行させることにしたのだ。
目を離すよりも近くにいた方が監視しやすい。
互いに駆け引きをしながら、一行は奥へと進んでいく。
すると、通路の奥から複数の足音が聞こえてきた。
敵か? 咄嵯に身構える一同の前に姿を現したのは、シャドウだった。

(えっ!? あれ、シャドウだよね?)
(ああ、間違いない)

 パンサーの言葉通り、それは紛れもなくシャドウだった。

(どうしてこの城の中に……)

 驚くクイーンだったが、すぐに冷静さを取り戻して戦闘態勢に入る。
だが、シャドウがこちらに気付いた様子はない。
カバーで物陰に身を隠した一行の横を通り過ぎていくだけだった。

(ほう、シャドウと言うのか、アレは。この城の地下には謎の迷宮が広がり、
そこからあのような怪物たちが時折迷い込んでくるようだ)
(何だと……?)

 まるで他人事のように語るスウォルツに、フォックスが聞き返す。

(地下迷宮……もしや、メメントスか……)

 人々の潜在無意識が生み出した異世界の空間、それがメメントスである。
現実では有り得ない異形の化け物が徘徊する世界であり、
未だ数多くの謎に包まれた場所でもある。
そんな場所にシャドウたちは生息しているらしい。

(この特異点なる場所には津々浦々の世界から人間が流れ着いてくる。
お前たちのようにな。
しかし、あのシャドウという存在もまた例外ではない。
現実世界とはまた別の次元に存在する異界より訪れた来訪者なのだ。
故に、この城に迷い込んだところで不思議はあるまい)

(なるほど……今の俺達は現実世界と認知世界の境界が曖昧になっている。
メメントスがこの世界と地続きになっていても不思議ではない。
それに、文明や社会常識も異なる人間達まで迷い込んでいるとなれば
メメントスが如何なる変化を遂げ始めるか想像もつかんな)

 ソウゴの救出もさる事ながら、メメントスの動向を
放置しておく訳にもいかない。
いずれはメメントスの異変も調査し、怪盗団の使命を果たす必要があるだろう。

(杜王町でやり合った化け物が地下から際限なく湧いて出てくるって事か……厄介だな。
俺が以前迷い込んだ果てなしのミラーズのようなものか。
それにあの町とこの城では随分と距離がある。
メメントスとやらは一体どれだけの規模になっているんだ……)
(大丈夫だよ! あんな奴らなんか、わたしたちの敵じゃないんだから!)

 承太郎の言葉にパンサーが元気よく答えたその時だった。

「チッ、またあの化け物か」
「さっさと駆除するぞ」

 見張りのアマルガム傭兵やカッシーンが現れ、
シャドウの姿を見つけるなり銃を構えて発砲し始める。

「グギェェェッ」

(敵同士で争っている……?)

 銃弾を浴びて断末魔を上げるシャドウたちを尻目に、承太郎が呟く。

(ラッキー…これなら楽勝じゃん!)
「なっ、貴様ら……ぐわっ」

 すかさずパンサーが飛び出してカッシーンを殴り倒し、
それを見たクイーンも続いてアマルガム兵を蹴り飛ばした。

「漁夫の利、って奴ね」

 パンパン、と手を払うようにしながら、クイーンが不敵に笑う。

「シャドウまで出てくるとなると、時間をかければそれだけ騒ぎが大きくなる。
先に進もう」

 フォックスの指示で一同は再び移動を開始した。
クォーツァー、同盟を結ぶアマルガム、
そして地下のメメントスから這い出てくるシャドウ。
三つの勢力が入り乱れる混沌とした状況になってきた。
さらには未だ目的も掴めないスウォルツまで加わり、事態は混迷を極めていく。

 そんな中でも、ただ一つだけハッキリしている事がある。
それは、このまま放っておけば取り返しがつかない事になるであろうという予感。
一刻も早くソウゴを助け出さなければならない。

3人目

「断章:イマジナリー・ウィル Ⅶ」

 或る男の過去話

 カルネウス家は黒魔術と死霊魔術を修め、死霊どもを使役することで冥府や異界と繋がることで根源へと至ることを目的とした魔術師の一族であった。
 実に勤勉で熱意はあった。努力も誰よりもしていた。
 しかし努力だけで飯は食えないとはよく言ったもの。不幸にも魔術協会内の派閥争いに負けたことで周囲から見放され、没落の一途を辿り続けていた。

 一族は、考えた。
 このままでは、自分たちはいずれ根源へと到達する前に破滅すると。
 故に彼らは足掻いた。
 あらゆる策謀を張り巡らせ、利用し、自分たちの生存のために足掻いた。

 ___当時の当主『ルシフェル・オッド・カルネウス』だけを除いて。

「もうこの一族はダメだ。魔術師としての矜持を捨て、自分たちの生存のためのみに動くとは!これでは根源に至る気のないクズ魔術師と何一つ変わらないではないか!」

 生きるために必死だった彼らを責めることはできない。
 しかし、目的のためにその身を燃やし尽くすという生き方を否定するわけにもいかない。
 だからとて、そこに他人を蹴落としたり陥れたりしてしまってはいけない。
 それではかつて、自分たちが忌避した者たちと何一つ変わらないのだから。

『自分の意志は、言葉には最後の最後まで責任を持ってふるまう。』

 それが、カルネウス家の家訓であり矜持だった。
 それを忘れてしまった彼らを、ルシフェルは許すことができなかった。

「魔術師は全員、クソの寄せ集めのような人種だ!利己的なクズだ!そんな奴らと共に生きるというならば、俺がこの手で葬ってくれる!」

 ルシフェルはその日の夜、一晩で家族と同胞を鏖にした。
 そしてただ一人、事情を知りながらも自分についていってくれた息子を連れて何処かへと去っていった。

 その後ルシフェルはただ一人の息子と共に傭兵稼業に勤しんだ。
 息子は、そんな父親の背を追い、魔術を学び、ひたすら自らの意志を貫き続けた。
 負傷で父親が死んだ後も、彼は懸命に生き続けた。
 形見の銃を手に、戦いに身を窶すその息子の名は___アザゼル・オッド・カルネウス。

 父の形見の銃を引継ぎ、改造し、ただ己の意志(ウィル)を貫く男である。
『救世のためにその身を窶す』という意志を。

「メサイア教団、俺はあんたらにこの身を窶す。その代わり、お前らの救世の果てにある世界が何なのかを見せてくれ。」

 救済の果てにあるのは何か、それを見てみたい。
 ただそれだけが、彼がメサイア教団にいる理由だ。



「エイダムさんよ、聞いておくれ。クリサリスをだな……」
『だめだ。アレはまだ調整中だ。』

 ロンドンの路地裏。
 体内通信術式で、カルネウスはエイダムと連絡を取っていた。
 彼の涙はもう枯れ、冷静さを取り戻している。

「嘘つくなよ、調整は終わってんのは知ってんだ。意地でも送れねぇ理由があるとでもいいてぇのか?まさか例のグランドクソマーリンと戦争でもおっぱじめるために?」
『(わざとやっているのか?)……そんなわけなかろう。特異点に追加要請として送るつもりだ。芥に聞けばわかるが、貴様の一存で予定を変えるわけにはいくまい?』
「芥は『あの件だが増援は別にいい、漁夫の利を得るのならば俺一人でもやれる』って言ってたぜ?てなわけで、とっとと送れ。」

 しばらくの無言。
 そののち、電話口のエイダムが口を開いた。

『分かった。送るには送るが、一体何の目的で使う気だ?』
「奇襲攻撃だ、漁夫の利をかっさらう。叩くタイミングはロンドンにいる連中がヘリか飛行機による移動を開始したら。情報は燃え尽き爆裂、最低限の武装しかもってねぇ奴らは二度と日本の地を踏めねぇってわけよ。」
『貴様はどうする?』

 カルネウスは悪い笑みを歯茎ごと浮かべて、にちゃりと。

「俺は俺で、適当に妨害させてもらうよ。残飯処理は得意なんで。」

4人目

「特異点を揺るがす戦い! ベジータVSターレス!」

 ――特異点。

 クォーツァー・パレスを目指すアビダイン隊は、ダイマジーンやカッシーン、
AS部隊の妨害に遭ったものの、
ロロノア・ゾロ、宮本武蔵、トランクス、マジーヌ、ブルーンの5人を仲間に加え、
これを突破。アビダインは上空を航行し、先を急ぐ。

「ナミやサンジたちは一緒じゃなかったのか?」

 気にかかるのは、ルフィやゾロ以外の仲間たちの動向だ。

「ああ……まず最初にお前が消えて、みんなパニックになってた。
そうこうしてる内に俺も気づいたらこの世界に来てたんだがな」

 どうやらゾロも何故自分がこの特異点に飛ばされたか分からないらしい。
無作為にあらゆる世界から人や建造物を取り込み、カオス化が進行するこの特異点。
その元凶である竜王が持つ聖杯を手に入れない限り、特異点の修正は果たせないのだ。

「それにしても、あのドフラミンゴの野郎まで来ていやがったとはな……」
「そうなんだ。あの野郎、なかなかブッ倒せなくてよぉ!」

 ルフィ、ゾロ、ドフラミンゴ……彼らが異世界からやって来た後、
元の世界では一体どんな戦いが繰り広げられているのだろうか?
とにもかくにも、今は一刻も早くソウゴを救い出すしかない。

「え!? 父さんも特異点に!?」

 トランクスは悟空からの話を聞き、驚く。

「ああ。オラ達を先に行かせるためにな……ピッコロと一緒に
スラッグやターレスと戦っているはずだ」
「そ、そうだったんですか……父さんが……」

「なあに、ベジータもピッコロもおめぇが知ってる頃以上に強くなってんだぜ? 
心配すんなって! きっとすぐに追いついてくるさ!」

 悟空はトランクスの肩を叩き元気づけるが、それでも不安げな表情を浮かべていた。

(父さん……)

 トランクスがいた未来世界では、ベジータは人造人間との戦いで命を落としている。
故に、幼少時は父親の顔すら知らずに過ごしてきたのだ。
タイムマシンで過去に行き、初めて生きている父との対面を果たしたトランクスは
多少の蟠りを抱えながらも、最後にはベジータとの心の距離を縮める事が出来た。
だからこそ、父を二度も失うと言う思いだけは味わいたくないと
強く願わずにはいられない。

「ずあああああああああッ!!」

 その頃、ベジータはターレスと激戦を繰り広げていた。

「どうした? まったく当たっていないぞ?」

 ターレスの攻撃をかわし続けるベジータ。

(こいつっ……!! カカロットと互角……いや、或いは……)
「どうやら、貴様も大したことはないようだな……」

 ベジータの挑発に、ターレスの顔色が変わる。

「舐めるなぁッ!!」

 大振りの右フックを放つが、ベジータは体勢を低くしてターレスの懐に潜り込み、
ぐっ、と引き絞った両足でターレスの腹部に蹴りを放った。

「ぐふぉッ……!?」

 たまらず吹き飛ばされるターレスを軽々と追い越し、
ベジータが強烈なエルボーで地上に叩きつける。

「むんッ!!」
「ぐあああああああああッ……!!」

 激しく地面に激突するターレス。

「ぐ……ぎぎ……!!」

 起き上がろうとするターレスの眼前に、腕組みをしながら立ちふさがるベジータ。
その全身からは凄まじい闘気が溢れ出していた。
それを見たターレスは悟る。
目の前にいる男は自分より遥かに強いということを……

「ピッコロの方もそろそろカタが着きそうなようだし……貴様も終わりだな」
「ふっ……ふふふふふ……まさかここまでやるとはな……」

「何を笑っていやがる……負け惜しみか?」

 ベジータの言葉を無視し、ターレスはニヤリと笑う。

「こんな事もあろうかと、見つけておいてよかったぜ……」

 ターレスが取り出したのは、完成型神精樹の実であった。

「ぐふふふふふ……」

 ピッコロと交戦中だったスラッグもまた、不敵な笑みを浮かべていた。
ターレス同様、完成型神精樹の実を持っている。

「貴様ら……まだそれを隠し持っていやがったのか……!!」

「苦労したぜ……せっかく今まで見たことも無いほどの急成長を遂げた神精樹が
枯れちまった上にあれほど実っていた果実もごっそりと無くなっていやがった……
まるで誰かが狩っていったようにな……」

 神精樹が枯れ果てたのはその途方もないエネルギーを
自分たちの野望のために利用しようとしたメサイア教団の仕業であり、
その実を独占したのは完璧・無量大数軍の面々であった。
スラッグとターレスは特異点中を探し回り、奇跡的にもこの2つを手に入れていたのだ。
食べた者の潜在能力を引き出し、戦闘力も飛躍的に向上する。
2人はこの力をフル活用すべく、まずはターレスが、次にスラッグがそれぞれ食した。
そして今、この2人には更なる変化が起きようとしている。

「!?」

 先程までとは比べ物にならないスピードでベジータを殴り飛ばす。
あまりの威力に、ベジータの身体は一瞬にして遥か彼方に吹き飛ばされてしまった。

「や、野郎……!! 急に強くなりやがった……!?」

 驚愕しながらも、ベジータは何とか空中で体勢を整え着地。

「ベジータ! 奴らが食べた実のせいだ! あれを食うと戦闘力が
爆発的に上がるらしい!」

 ピッコロが叫ぶ。

「人の心配をする前に自分の心配をした方がいいんじゃないか? ピッコロよ!!」
「ぬぅおっ……!?」

 スラッグが放った衝撃波を喰らい、ピッコロは大きく吹き飛ぶ。

「ぐわあっ!!」

 岩壁に叩きつけられるピッコロ。
そんなピッコロに対し、スラッグは右手から連続エネルギー弾を発射する。
回避する暇もなく、ピッコロはその攻撃をまともに受けてしまう。

「はははははは! 相変わらず素晴らしいな、この神精樹の実の力は! 
樹さえ健在ならばさらなるパワーが得られたであろうに、実に残念だ!!」

 スラッグは笑いながら、己の力に酔っているようだった。

「お、おのれ……!! かあああああああああああああああああああああああッ!!」

 ピッコロが気合を入れると、スラッグの攻撃を弾き返す。
ドーム状に気を爆発させ、周囲の地形を大きく変えた。

「いい気になるなよ、スラッグ……!! これしきで俺を倒したつもりか?」
「ぐふふふふふふ……そうこなければ面白くない……!」

 さらに戦闘が激しくなる一方、ターレスとベジータの戦いも激化していく。

「はあああああああああああ……!!」

 ベジータは超サイヤ人に変身、ターレスと対峙していた。

「そうか……貴様もなれるのか……その形態に……」
「これが伝説の超サイヤ人だ。貴様のような下級戦士には辿り着けん境地だがな!」
「だったら、この俺がその伝説をぶち壊してやる! うおりゃああああああッ!!」

 超サイヤ人となったベジータと神精樹の実でパワーアップしたターレス……
果たしてこの戦いの行方は……?

5人目

【君と最期を遂げるのはまだ早い】

「立ちはだかって来るのか・・・!あの時の忌々しい帰宅部のように!」

「理由はどうあれ、俺達の地元(世界)を利用させる訳にはいかない」

「う〜ん、ってことはテレビを絶対死守?ってことでいいんだね?」

「はい、そうですね。あの、太陽さんと雪さんが来てくれてよかったです!」

「アイツの召喚魔法だ」「召喚魔法だよ」

「召喚魔法だったかぁ・・・」

光から現れた太陽と雪に喜ぶアース
現状説明と情報提示した後に全員戦闘態勢へと入る

「ほう…カタルシスエフェクトを使わなくても戦えるのか」

「そうだな、なんたって旅人(アース) 謎の一般人(俺) 月の魔女(夢美) 氷の整備士(雪)だからな」

「(太陽、アンタ一般人ではなく、正確的には彷徨い人だろ)」

「(よくよく考えると…イロモノばっかりだな)」

「ねえ、確か君って強かったわよね?」

「私が強いかどうかは貴様自身で確かめて見るがいい」

ブラフマンは再び刀を構え、護身剣を呼び出し戦闘態勢を取る

「そうか、なら 精々楽しめよ」

夢美が一気に距離を詰めジャンプすると空中で一回転し全体重を剣に預けた一振をブラフマンに向けて振り落とすも火花を散らしながら刀心同士を滑らせ受け流していく

「ぐぅっ!何たる"重い"一撃・・・」

「重いって言わないで!」

「ッ!」

重いと言ったその刹那、蹴りをモロにくらって中に浮いてしまったその矢先まるでその瞬間を狙っていたかのような狙撃が入る

「(なぬ……狙撃だと?一体何処から・・・見つけた、そこかっ!)」

急いで回りを見渡すと一瞬だけキラリと光った
その方向を確認すると偉く透き通った水色の弓を構えた雪だった
そのことを確認し空中に浮いていた護身剣を呼び寄せそのまま足を乗っけて体制を立て直し雪の元へと向かう

「合わせろ!」

「誰に言っている?(そういえばあの少年が見当たらぬ…まさか!)」

「分かりました!」

あの弓はブラフでありあの少年の為の目眩しだったそれにしても狙撃者だったとは、とそれに気がついた時にはもう遅かった
凶弾は放たれていた、それを避けるために再び体制が崩れる

「久しぶりに使おうかな」

フィールド変化《『凍てつく星々』》
周囲一帯が急に暗くなり星々が現れ始めた

「フィールド………変化……だと?」

その言葉が 身体が 頭が追いつく前に春の陽気が激変し凍てつくほどの寒気を感じる…一体この瞬間に何が起こったのだ…?

「ウワー サムイヨー サムイヨー」

「この空間が貴方の"氷葬"となる」

「!?」

夢美は堪えられないのかわざとなのか分からないが何故かオウムになっていた尻目に雪はクリスタルノートを見ながら一面氷景色の上で氷を自在に操り空中で体型を崩したブラフマンを氷の中へと閉じ込めると同時に護身剣が消えていた

「さ、寒い・・・」

「これ、使ってくれ」

「前にも使いましたね、この絶対零度下でも燃え続ける特注の弾薬」

「俺は"コイツ"でフルバーストするからもし生きていたらそのスナイパーライフルでガンガン撃ってくれ」

特注の銃弾をアースに渡した後、真っ白なリボルバーっぽい銃をを取り出し見せびらかす

「俺の銃は不殺ですよ」

「ああ、そうだったな」

赤い帽子のつばを下に下ろす、無表情だが一瞬だけ太陽が笑ったように見えた・・・そんな、気がする

「こういうのは・・・俺の役目だ」

「相変わらず変な銃だよね」

「だが、威力は折り紙付きだ」

両手の銃を持ちチャージし始め、その両手に手を当て魔力を注ぎ始める

《『ー 目標確認 相手との距離を計算中 距離の計算完了 狙撃補助完了 魔力支援を検知 魔法回路安全装置解除 魔力の最適化完了 魔力に対応中
魔力対応完了ー』》

フルチャージ完了と聞いたと同時に引き金を弾き極大レーザーを真っ直ぐ発射させる
その風圧で赤い帽子も逆方向へと吹き飛んでいってしまった


「(こんなところで…こんなところで僕は・・・やられるのか・・・?)」


黄金のマスクに覆われていても体は人間そのもの寒すぎて睡魔が襲ってくる。

意識を集中させないと瞼と重たくなっていく・・・

思えば、帰宅部に負けてから私は再び不幸(現実)のどん底へと落ちてしまったような感覚が消えないほど残ってしまっている

「睡魔に負ける前に・・・ここを脱出を・・・考えねば・・・」

氷の中に閉じ込められたが辛うじて思考を巡らせることができたが行き着いたのはやはり敗北だけだった。



「…………………リグレット様」



僕の大切な─────────────



「・・・ん?なにか来た!?」

「あの極大レーザーが一瞬で消えた・・・?」

極大レーザーが一瞬で消え去ると大量の煙がたち始めた

「え、何あれ?ちょっと聞いてないんだけど!?」

「銀色の光…?待って、人影が見える!」

「…なんだ?何が起きているんだ?」

「うわー、いやな予感」

煙の中から人のような 天使のような影が浮かび上がっていく

「間に合ったようですね」

その手にはさっき消えた膨大な熱のエネルギーを球体にしたような物を持っておりおりその力で氷を全て溶かされてしまう

「・・・?」

こんなに暖かさを感じるがいつ以来だろうか?
まさか、リグレット様が僕の為なんかに助けに来てくれたとでもいうのだろうか?

「ブラフマン」

「リグレット様…?」

「今回だけですよ」

天から現れたのは、そうバーチャドール リグレットだった。
彼女はゆっくりと地面に降り立ちブラフマンの氷状態を解除その重たそうな口から声を出し「今回だけですよ」それだけでも僕にとっては嬉しすぎて涙が溢れ出そうだった

「な、何たる幸せか!!」

「り、理解できない・・・!」

何が起こったのか理解するのは・・・正直出来なかったがこれはいけない気がした

「ふむ…お前の心を私が理解する必要はない 故に、お前に私の心を理解する必要もないのだ」

「総攻撃を仕掛ける!」

「了解!」「任せて」「分かりました!」

だが…全員の総攻撃をいとも容易く防がれてしまった。

「…………っ」

「お前は似ているな、リドゥを破壊した忌まわしき帰宅部のバーチャドールのように」

「え?違うよ?」

「気にしなくていいってそういうのは」

「そうそう、別にバーチャドールじゃないしね!」

夢美は向けられた言葉を全て否定したが顔は笑ってはいなかった

「さあ、リグレット様!!リドゥをもう一度!!再びっ!!リドゥを最構築しようじゃあありませんかっ!」

しかし、リグレットはその応えには頷くことはなかったことをブラフマンは知ることは無かった

「なんだか、急に調子を取り戻した感がしますね…」

「なんだろう…まるで、推しに応援された時のオタクのようだ!」

「なんたる的確さ!?」

「いいや!悪いが、止める!」

「待て、夢美!」

「…あっ!」

止めようとしが既に時遅し


「いや、お前達の負けだ!」


リグレットによる火力支援を受け取ったブラフマンは《神剣サヨコ》と確かにそう聞いた瞬間
俺達は・・・ブラフマンに敗れていた。

6人目

「呑んだくれ狂想曲、アルケイデスの決意」

――カルデア・司令室。

「……そうか、藤丸くんが」

 ダ・ヴィンチは立香が夢の世界から復帰したことをマシュから聞き、
安堵の息を漏らした。

『はい。先ほど目覚められました。
私達は現在、先行したCROSS HEROESの皆さんに追いつくべく、移動中です』
「了解だ。こちらでも確認しているよ……ただ、妙な点もあるんだ」
『妙な点?』

「ああ。君たちがいる位置の真逆……クォーツァーの一団と交戦している航空戦艦が
一隻ある。特異点に突如として現れたものだ」


『波あああああああああああああああああああーッ!!』
『せいッ!!』


「手からビームを出すわ、敵のミサイルを剣一本で斬り落とすわ……
しかもどうやら生体反応から察するにサーヴァントではなさそうだ」

 マシュはダ・ヴィンチの説明を聞いて、困惑する。
英霊でもない人間が、クォーツァーと対等に渡り合っているのだから。
しかしその一方で、立香はどこか納得していた。
「彼ら」ならあり得るかもしれないと。

「もしかしたら……CROSS HEROESの人たちかも」

 立香の予想は当たっていた。
超時空戦艦・アビダイン。そして孫悟空や勇者アレクと言ったCROSS HEROESの面々。
彼らもまた、クォーツァー・パレスを目指して突き進んでいたのだ。
そして立香はまだ知らない。その一団の中に、かつて共に亜種特異点・下総国での死闘を
潜り抜けたもう一人の仲間がいるということを。その名は──。

「――ぷはーっ! いいお酒~!」
「いい飲みっぷりじゃない、武蔵ちゃん♪」

 アビダイン内では、アビィの秘蔵酒を開けて宴が催されていた。
すっかり祝賀パーティー気分だ。その中心にいるのは武蔵。
彼女は今しがた開けたばかりの瓶を掴み上げ、ラッパ呑みで飲んでいた。
まるで水のように、ゴキュゴキュと喉を鳴らしながら。

「飲んだくれがまた増えた……絶対空けた分のボトル、後で請求してやる……」
「あ、そ~れ、一気、一気♪」

 肩を落とすアビィをよそに、八雲紫が囃し立てるように声を上げると、
それに釣られるようにして武蔵はさらにペースを上げた。
もはや顔色一つ変えずにグビグビと、どんどん飲んでいく。

「戦いに勝った後の一杯は最高だなァ」

 武蔵に負けず劣らずの酒豪であるゾロもまた、上機嫌に笑みを浮かべていた。

「ゾロさんも武蔵さんもここに来る前、ルイーダの酒場であれだけ
呑んでおいてまだ足りなかったんですか!?」

 そんな二人を見て、呆れたような表情を見せるトランクス。

「がっはっはっはっは! 思い出すよなァ、ゾロ! 
メリー号じゃ毎日毎晩こうやって宴をやってたもんだァ!!」

 ルフィはゾロと再会できた事が殊の外嬉しかったらしく、
彼に肩を組みながら豪快に笑っていた。

「戦いは寧ろこれからなのに、大丈夫なのかな、あの人たち……」

 未成年であるいろはや黒江、さなたちはデッキの端でジュースを飲みながら
その様子を見ていた。

「お、お酒臭い……うぅ……」

 一方で酔っぱらい特有の酒臭さに辟易とするさな。

「あなたたちはああ言う大人にならないよう注意してね?」

 やちよは心配そうな眼差しでいろはたちに釘を刺す。

「やちよちゃ~ん、お酌してくれませんの~?」
「ちょっ、武蔵さん……!」

 ふらついた足取りでやちよに近づくと、彼女はそのまま抱き着き、頬擦りを始めた。
その行動に、他の魔法少女たちも思わず顔を赤らめる。

「その、子どもたちも見てますから……」
「う~ん、かわいい女の子たち~♪ お姉さんとイイコトしましょ~♪」

 そう言いながら、今度はいろはたちの方へと近づいてくる。

「あ、あわわ……」
「腕が立つのは先の戦いで理解したが、もう少し規律ある行動を心掛けて欲しいものだな」

 するとそこへ、アレクが割って入る。

「……ひっく」

 勇者の風格から発せられる威圧感に一瞬にして酔いが覚めたのか、 武蔵は姿勢を正す。

(……すんごい睨まれてる)

 しかし、それでもなお鋭い視線を向けてくるアレク。
そのあまりの迫力に、流石の武蔵も冷や汗を流した。

「まあまあ、アレク様。時には息抜きも必要でしょう。気を張り詰めてばかりでは
いざと言う時に動けませんわ」
「ローラ……ですが……」

「すっ、すみませんでしたぁっ! あと、諸々終わったら剣の仕合など
如何でしょうか!? 相当に腕の立つ御仁とお見受けしましたが!?」

 そう言って深々と頭を下げる武蔵。だが、アレクは眉間にシワを寄せたまま
何も言わない。怒らせてしまったかと思い、恐る恐る顔を上げると、そこには──。
ニヤリと笑みを浮かべた、アレクの姿があった。

「ああ。すべてが終わったら、それも悪くはないな」

 アレクの言葉に、武蔵は目を輝かせる。

「ふふふ、ごめんなさいね。アレク様も貴女の刀捌きには一目置かれているのよ」
「は、ははあっ! 身に余る光栄にこざいまする、お姫様!」

 妙な言葉遣いでローラに応対する武蔵だったが、その心中では既に……

(やりぃっ、この人も滅茶苦茶剣の腕が立つみたいだし……これは楽しみが増えたわ!!)
「……」

 マジーヌは部屋の隅で、ひっそりとタロット占いをしていた。

「ぬぬぬ……占いの未来が見えない……不安になってきたっす~……」

 陰キャな性格故か、人見知りの気質がある彼女はメンタル的に弱っていた。

「ササササーッ、わたくし、整理整頓せねば気がすまない性分ですので!」

 武蔵たちが飲み散らかした酒瓶やツマミのゴミなどを片付け始めるブルーン。

「おう、ご苦労!」
「騒がしいったらありゃしない……」

 一方でアビィは、そんな仲間達の様子にやれやれとばかりに頭を抱えている。

「こんなんで本当に勝てるのかね」

 しかし、それは彼らなりのコミュニケーションの取り方でもあるのだと
彼は理解していた。

「はは、まあ心配すんな。あいつらみんな強ええからよ」

 悟空がアビィの肩を叩きながらフォローする。
彼の言う通り、CROSS HEROESのメンバー達は皆が一騎当千の力を持っている。
それはダイマジーンやカッシーン、AS部隊を瞬く間に殲滅した事からも明らかだった。

「気楽でいいねぇ、君たちは」

 頬杖を突き、再び深いため息を吐く。一方で、立香を背負って走るアルケイデスは
胸の内に秘めたある決意を吐露し始めた。

「マスターよ。仮契約の身で勝手な事を言うかも知れないが……
この戦いが終わったら、私は決着を着けるべきもの達が蔓延る世界へと発とうと思う。
それまではこの力、貴公のために振るおう」
「……うん。分かった。それがあなたのやらなきゃいけない事だと言うのなら」

「……感謝する」

7人目

「新米戦士の休息」

「……これが、ワイミーズハウスの情報だ。」

 ロンドンの某所、とあるカフェにて皆は話をしていた。

「大帝の能力が起動してしまったら、皆洗脳されてゲームオーバーだ。その前に何としてもメサイア教団を止めなければならない。」
「これが……奴らの目的か。」
「天声同化、皆を洗脳しての戦争なんて、間違ってる!」

 憤る月美たち。
 しかし、月夜はそれとは別に何か考えていることがあるようで。

「月夜よ、今何を考えている?」
「何って……これを見て気づいたことがあるんだが、聞いてくれるか?」

「これはあくまでも俺の考察を越えないんだが、まぁ聞いてくれ。おかしいと思わないか?」
「というと?」
「前提として、シャルルマーニュから聞いた話だ。港区で出会ったカール大帝についてな。結論から言うとメサイア教団首魁カール大帝とシャルルマーニュ、あの2人は”同一存在”だ。」
「「「!?」」」

 3人は驚愕する。
 自分たちの味方であるはずのシャルルマーニュと、敵であるはずのカール大帝。その2人が同一人物であるということに。

「あの2人は元は1つの英霊だったんだが、どういう訳か別側面同士が分かれて召喚されてしまっている。幻想の側面を持ったシャルルマーニュ、史実の側面をもったカール大帝の2つにな。そして、もし同一人物だというならば大帝の方にもちょっとはシャルルマーニュのような善性があるはず。」
「待て、つまり何が言いたい?」

 空を見上げた後、月夜は皆に自身の導き出した結論を言った。

「カール大帝はメサイア教団の誰かに利用されていると俺は考える。それこそ、黒幕が彼の持つ天声同化を悪用するためにな。確証はないが、こう考えられてしまえる。」
「!……では、黒幕の正体は?」
「分からん、だが……見当はついている。夜神月の関係者、或いは狂信者だ。誰までは特定できないが、その中のうちの一人だろう。でなけりゃキラに抗ったものが育った施設に俺達を送り込まねぇよ。」

 一通り考察を述べ終える月夜。
 奇しくも、月夜の考えは当たっていた。
 カール大帝は魅上に利用されており、そのためにソロモンの指輪を集めているのだから。

「ところで、彩香はどうした?」
「それが……。」

 月夜は、ペルフェクタリアから彩香の暴走を聞いた。
 試練与えし神霊『アマツミカボシ』の覚醒、そして暴走。その一連の話を聞いて、月夜は悩みこむ。

「そんなことがあったのか……んで、彩香はどうした?」
「今はヘリで寝ているが……。」

「ボクならここにいるよ、兄さん。」

 そこに立っていたのは、意識を取り戻した彩香。
 その表情は失意に塗れていた。

「動きを抑えられていた間、ボクは必死に抗っていた。でも、勝てなかったよ。そしてボクは祈った、『助けて』って。そしたら、意識が切れて……きっとその間に暴走していたんだと思う。」

 彩香は、抗っていた。
 チナツに動きを固定されている間も、ずっと。
 しかし勝てなかった自分がいた。故に彼女は_____助けを乞いた。

「でも……神の力を操り切れなかったんだよ……。」
「「「……」」」

 皆の表情が陰鬱なものになる。
 失意。そこには呆れかえるほどの失意があった。

「……陰鬱な話しててもアレだ、今は休もう。教団の連中がここにいるとは今は思えない。ギリシャの一件が落ち着き次第ロンドンを出る。彩香は俺が慰めておくよ。」

 切り出すように、月夜が休息を提案する。
 4人はカフェを出て、各々DDが停泊しているヘリへと向かう。

「何目を曇らせてんだ。ボクらしくもない。」

 その道中、彩香は意識を整える。
 己が目を依然、輝かせるために。

(一瞬流れ込んできた力の流れ、アレを長時間制御できればボクはもっと強くなれる。神の力を己が意思で制御する方法を……。)

 失意の中、立ち上がる。
 その胸の内、闘志の焔は消えず。



『そうだ、それでよい。戦士たる貴様に曇った表情は似合わぬ。今は休むがよい。そして、強くなれ。』

 心のどこかで、神の声が聞こえたような。

8人目

「ターレスの下剋上! 危うしベジータ!!」

「ぐおおッ!?」

 神精樹の実を食べてパワーアップしたターレスのパンチが直撃し、
ベジータは激しく地面を転げ回る。

(こいつっ……さっきまでの雑魚とは比較にならん……!!)
「どうした? もう終わりなのか?」

 ターレスは余裕の表情を浮かべ、ゆっくりとベジータに近づく。

「くっ……舐めるな!!」

 起き上がったベジータは両手にエネルギーを集中させる。

「波ああああああああああああああッ!!」
 
 ベジータの掌底から凄まじい破壊力を持つ衝撃波が放たれ、ターレスを襲う。
しかし、ターレスは物ともせずに爆発の中から歩いてきた。
ダメージを負っている様子は見られない。

(あの妙な果実を食らっただけで、これほどのパワーアップをしたというのか!?)

 信じられん、と言わんばかりの表情を浮かべるベジータ。
ターレスはニヤリと笑う。全身からは、先程よりも遥かに強大な闘気が溢れ出していた。
それを見たベジータの額に冷や汗が流れる。

(ふざけやがって……!!)

 これまで、打倒・カカロットを志して血の滲むような修行を続けてきた。
その努力が、ただ神精樹の実を食べただけのターレスに粉々に打ち砕かれたと言う事実が、
ベジータの怒りをより大きく燃え上がらせる。

「何が超サイヤ人だ……!」

 怒りに満ちた目つきでベジータを見つめるターレス。
下級戦士と揶揄されて生きてきたターレスにとって、 悟空とベジータが自分より
遥かに強いという事実が、彼のプライドを踏み躙ってきたのだ。
先の戦いで超サイヤ人となった悟空に手も足も出なかったターレスは、
自分の限界を知り絶望しかけていた。そこに現れたのが、この完成型神精樹の実だ。
これを食えば、自分も強くなれるとターレスは直感的に理解した。
ターレスは迷わずに実を口に運び、完成型神精樹の実を貪るように食べた結果、
かつてないほどの力を手に入れた。
これで自分は、もはや下級戦士などではない。自分こそが、真のエリート戦士なのだ。
その思いが、ターレスの心を満たしていく。

 惜しむらくは、神精樹が枯れ果てて実を手に入れることができなくなった事だ。
これほどの実を育て上げるには、また途方もない時間と養分をかけて
栽培するしかないだろう。その前に、目の前にいるこの男を倒す必要があるが……

「ご自慢の金髪も、ただのお飾りというわけか……」

 ターレスは蔑んだ笑みを浮かべながら言う。その言葉に激昂するベジータ。

「――でぇやああああああああああああッ!!」

 瞬間移動にも似たスピードでターレスに接近し、拳を放つ。
しかし、ターレスは片手でその攻撃を受け止めた。

「ぐっ、くく……!!」
「どうした? 王子様よ。そんなものか?」

 ターレスはベジータの腕を掴んで投げ飛ばす。
ベジータは地面に激突する寸前に受け身を取って体勢を立て直した。

「ぬんッ!!」

 だが、その間にターレスは一気に間合いを詰め、強烈な蹴りを放った。

「ぐおおッ……!! あ、が……!!」

 まともに喰らい、吹き飛ぶベジータ。それでも何とか空中で急制止し、
両足で着地した。口から僅かに吐血しながらも、ベジータは構えを取る。

「ちいいッ……!!」

 グローブで口元の血を拭うと、ベジータは再び気を高め始めた。

「超サイヤ人でもない下級戦士に……! こ、このベジータ様が……!!」
「くくく……ショックだろうなぁ。まさにお山の大将、って奴だ。
今までゴミのように見下していた下級戦士に手も足も出ない気分はどうだい?
サイヤ人の王子、ベジータ様? くっくっく……ははははははははは!!」

9人目

【これからの事】

「いや、お前達の負けだ!」


リグレットによる火力支援を受け取ったブラフマンは《神剣サヨコ》と確かにそう聞いた瞬間
俺達は・・・ブラフマンに敗れていた。


「さあ、リグレット様 いくら現実で実体を得られていても時間の問題のはずです。すぐにリドゥへと戻りましょう」

「そうですね」

「もう一度、リ・リドゥを……」


全員ダウンしてるのを無視して2人はどこかへと消えてしまった・・・


「あぶなっ………かった……」

「雪……!」「雪やるぅ〜」

この場にいる全員を守るために造られた大きな氷が粉々に砕け散り大きく体勢を崩すがアースが身体を支えると同時にフィールド変化が解除される

「もしここがフィールド変化状態じゃなかったら雪の最大防御は不可能だった、すまない…」

「もぅ〜、トドメを刺されなかっただけマシだってば」

「…ん?」

声が聞こえてきたので後ろを振り向くとペールピンクの髪に巫女服の少女が走って来て
その後ろには荷物を持っていた浮世離れした黄金の髪にヘンテコな服装の青年が歩いて来た

「おーい!アースくーん!凄まじいフィールド変化が展開されていたから急いで帰ってきたよー!うわっ、辺りが真っ白・・・!」

「桜花…エクス…買い物はいいのか?」

アースは2人の名前を呼ぶ、どうやら買い物をしてきた後だったらしい

「うむ、して異端者の3人がここにいるってことは何かが起こったのだろう?説明してもらおうか」

「それに関しては俺が説明するけど、その前に雪を回復させてほしいんだ…頼めるか?」

「回復するのはいいけど・・・あれ、ダメージを受けてないみたいだね?それよりも体力の消耗の方が激しかったみたいだよ」

「え!そうなの!?」

「(しかし、あの《神剣サヨコ》という技…絶対受けたらダメだよな。それを防ぎった雪には感謝しなければ)」

よいしょっと、とゆっくり地面に雪を置く桜花
体力の消耗のほうがデカいと言われて驚くアースとその場でホッとする太陽だけど心の中ではどうしても不安を拭えることは出来なかった

「あ、それで…お家にはちゃんと入れるの?」

アース「ぐっ…!むっ…!あ、あれ…玄関のドアが開かない…カギなんてかけてないのに!」

ドアノブを掴んで力強く引っ張るが何故かどうしてか全く開かない

「む、なに?鍵は無いのか?」

「しまったな、中に置いてきてしまった!」

「なぬぅー!?このままでは我とアースは家無しであるぞ!?」

「ちょっといい?」

「俺の家ですから嫌です」

拒否したけどダメだった、俺の目の前でバキッと音がしたその後ドアノブを破壊されてしまったので更に駄目でした

「おかしくな・・・!?」

取れてしまったドアノブに驚きを隠せてい夢美、壊してしまった先を見ると家の中が存在していなかったのことを知った影響で固まる

「む?どうしたのだ?夢美」

「中身が…ない…」

「え!?」

アースは再起不能だったので代わりに続いて桜花とエクスは壊れたドアノブの先を見てみる
やっぱり家の中が存在していなかった

「えぇぇ!嘘ぉぉぉ!?」

「なんたる奇っ怪な….」

「太陽さぁん…俺の代わりに…見てください…」

「え!あ!わ、分かった」

泣きつかれたのか全然断れなかった太陽も恐る恐るドアノブの先を観てみる中身ははり、無かった。その後ろで夢美が物凄く怖い顔をしていた

「私のSwitch…」

「ん?」

「思い返せば原因って私のSwitchだ…あーははっ 盗られたぁ しばらくゲーム出来ないや あーあ」

夢美の乾いた笑いだけが響く、思い返せばそう、戦いに夢中だったが元々はCaligula2のソフトが入ったSwitchをブラフマンがが狙い始めたのが原因だったのだ

「それなら取り戻しに行きましょう」

「へぇ、どうやって?いくら君でも容赦しないよ」

「うっ…」

アースが夢美を鼓舞するもことごとく跳ね返されてしまう、腕を組んで考え事をするエクスとただ見てるだけしか出来ない桜花、一気に混乱に陥ってしまうもそれを止めたのは太陽だった

「夢美、この3人は本当に関係ない。八つ当たりをするだけならやめろ、そしてこの件に関わることを禁止することだって出来るんだぞ」

「…分かったよ、でも私を止めることは出来るのかしら?」

「ああ、止めてやるよ」

2人はお互いに武器を取り出すもここで遮る声と身体を張るアースだった

「アースくぅん?今ガチで怒っているんだけど?」

「2人ともやめてくださいよ!」

「・・・止めるな!」

「そうだよ!やめて、味方同士で戦うなんて…そんなのやっぱりダメだよ!」

「そうだ!それでは敵の思う壷であるぞ!」

考えしたのか太陽と夢美はゆっくりと武器を下ろす。

「ごめん、みっともなかったね」

「すまない、敵の思う壷になる訳にはいかないな」

「まっっったく…太陽と夢美ってすぐに喧嘩するよね」

騒ぎを聞きつけた雪がゆっくりと起きる

「あ、雪さん起きた!」

「む、もう良いのか?」

「うん、まあなんとか…それよりもあの2人を止めてくれてありがとう」

「うむ、いつまでも進まぬしな。して、これからどうするのだ?」

雪の言葉に頷きエクスは太陽と夢美に対して問いを出すように仕向ける、その間アースと桜花は荷物の整理をし始める

「そうだね、まずは…リグレットを倒そう?」

「どうやって?相手は強大っぽいぞ」

「歌に関しては大丈夫、手はあるから」

太陽はブラフマンのこと、リグレットのことをどうやって倒すのかをずっと考えてるらしいが先が見えなかったらしいそんな彼に対して夢美は自信満々に言ったのだった。

「で、リドゥとやらにはどうやって行くんだ?」

「確か、物凄く過去に後悔しているかつリグレットの歌に魅了されないとダメっぽいんだよね」

「俺達、音楽に関しては疎いけどいいのか?」

こんな調子でリドゥに行けるのだろうか・・・?

一方その頃、リドゥのどこかにあるエピメテウスの塔ではブラフマンとリグレットが定位置におり状態を確認していたのだった。

「やはり、楽士は全員、消えているみたいですね」

「はい、ですが…私はまだここにいます。不思議なことに」

オブリガードの楽士達全てあのバーチャルが率いる帰宅部によって倒されているだと…?
どういうことだ、ここはクリア前の世界だと言われているはずならばまだなにも起こってはいないはずだ

「まさか・・・」


   すでにデータが存在します
     上書きしますか?


「───────(なんだと?あぁなるほど、私の介入によって発生しているということか)」

すぐさま理解した、私自体がクリア後の私
それによって発生することそれは・・・

「データの上書きか………」

「ブラフマン?どうかしましたか?」

「いえ、なんでもありません、そのままで居てくださって問題ありません」

「分かりました」

「(なるほど、私に選択肢は無いということか…)」

本当に選択肢がなかった、そのままデータの流れが上書きされてその後のことは分からないがきっと私が今度こそ勝てた世界なのだろうと願うばかりだった

10人目

「魂喰らい」

「にしてもでっけぇキッチンだなぁ!」
「色々と入り用でね、あるに越した事は無いのさ。」

悟空とアビィが居るのは、皆が晩餐を食している広間に隣接した厨房だ。
それも大型排気ダクトや排水溝等の付いた、所謂業務用と呼べる物だ。
アビィはここで、鹿を捌いている。
新鮮な鹿肉がここで調理されて、彼等が食する晩餐へと化すのだ。

「うっひぁあ!あっちゅぅ間に料理が出来てんぞ、やるなオメェ!」
「どうも。」

皮を剥がれ血抜きされ、胡椒を付けた鹿肉。
それが強火にかけた巨大なフライパンの上で、瞬く間に火を通される。
ある程度色が付いてきたところでフライ返し、芸当めいて巨大な肉が裏返る。
軽い焦げの付いた肉質から、肉汁がじわりと溢れていく。
同時にむわっと立ち昇る肉の香りに、悟空の腹が音を掻き鳴らす。

「たまんねぇな…」
「おっとつまみ食いは厳禁だぞ?食うなら向こうで食べてくれ。」

今にも食らいつかんと涎を垂らす悟空を片手で制し、アビィは調理を続ける。
徐に取り出したワインを遠慮なく降り掛け、立ちどころに火柱が昇る。
少しすれば、ワインの風味付けが完了だ。
タンパク質と肉汁の焼き付く独特の音を上げながら、鹿肉が瞬く間に焼き上っていく。
出来上がったソレを皿に盛り付け、仕上げに塩を一つまみ、ソースを少々かければ、巨大ソテーの出来上がりだ。
焼き加減はミディアム、お好みで中濃ソースを小皿に分けて入れておく。
そもそも80cmの体躯とマスコット染みた丸い手で、どうやって調理器具を扱ってるのかというツッコミ所はさておき。

「そういやオメェ、さっきから食ってねぇなぁ。そんなんで大丈夫か?」

ふと思い立った疑問をぶつける。
思えばアビィは宴が始まってから、ずっと調理に掛かりっきりだ。
つまみ食い感覚で酒やワインを口にこそすれど、食事を殆どしていない。

「食事なら取ってるさ、僕なりにね。」
「お?そりゃいってぇどういう…?」

悟空の心配を他所に、アビィは調理を続ける。
完成した料理が広間へ運ばれるのと入れ替わりに、台車型の無人キャリアによって運ばれてくる、麻酔で眠らされた鹿。
まだ生きてはいるソレの首に、アビィは躊躇なく手に掛ける。

「せいっ。」

ゴキリッ。
鈍い音を立てて、静かに絶命する鹿。
次いでナイフを刺したアビィの手によって、血抜きがされていく。

「…うん?」

その最中、悟空の目には確かに見えた。
鹿から気の様な物がアビィへと流れ込む光景が。

「気付いたかい?これが『食事』さ。」
「なるほどなぁ、気を食ってるっちゅう訳か。」

これがアビィの特異性、魂を食う性質。
生まれつき欠けた魂の器が生み出した異能の一つ、肉体無き魂の吸収。
理屈は分からぬ存ぜぬが、アビィはこうして生命力と言える物を自在に操るのだ。
とはいえ動物の持つ生命力は微々たる物、吸収量はたかが知れている。
故に数をこなさなければならず、一分一秒が惜しい。
血抜きを終えたアビィは、今度は解体を始める。
手慣れた様子で包丁を入れ、毛皮を剥ぎ、部位毎に切り分けていく。
骨、背脂、筋膜、赤身、脂肪、内臓、角、蹄、尾、腸、腱、心臓、肺、膵臓、肝臓、舌、眼球、腎臓、その他諸々。
鹿の体内を余す事無く活用して、アビィは料理を完成させていく。
そして出来上がったソレ等を、流れ作業で広間へと運んでいく。

「すんげぇーーー!!どんどん料理がくるぞ!?」

向こうで歓声が上がったが、気にする事も無くアビィは調理を続ける。
その最中、何体目かの鹿に手を掛けた時だろうか。
アビィの身体が煙を上げて、急激な変化を遂げる。

「おっ、人間みてぇになったな?」
「漸く溜まったか、宴でも無いと使った分が取り戻せないからある意味助かったよ。」

120cmの少年姿となったアビィが、体の調子を確かめる様に調理を続けた。



「ミケーネの神とやらも、盛大にやってくれたわねぇ。」

誰も居なくなった廃ビルの上で、他人事の様に呟く21号。
赤く染まった空の下で、今にも退廃しそうな様を見せつける東京を見下ろし、頬を付く。
気だるげに、極めて無気力そうな彼女の姿には、もはや先程の様な覇気は無い。
誰に見せるでもない本心を丸出しにした、ある種の本来の情緒だった。

「でもまぁ、お陰で例の計画が出来そうで助かったわ。棚から牡丹餅って言うのかしら?」

先程とは打って変わって、不敵に21号は笑う。
それは自身が今、最も欲していたものを手に入れられる機会が訪れた事への賛歌か。
或いは、これから起きるであろう悲劇に対する嘲笑なのか。
どちらにせよ、その表情は狂喜に満ちていた。

「私を形成する一つ、魔人の力。この出所を探っておいて正解だったわ。」

人造人間である彼女を形作った力の一つ、魔人ブウ。
彼が起こした動乱の中で度々出てきた魔術の類いについて、前々から21号は目を付けていた。
もっと正確に言えば、魔界の存在についてだ。

「ダーブラ、悪魔超人、ちょっと出てきた分だけで、これだけの戦士が居たのよね。」

彼女の言うように、何かしらの理由で魔界から出てきた一角だけで、喰らうに値する強さなのだ。
ならばきっと、魔界を完全に解放すれば。

「_堪らないわね。」

彼女が、21号が、初めて明確な意思を露にする。
その眼に宿るのは、純粋でいて狂気に塗れた、欲望の顕現。
自身の計画に必要な駒が、偶然にも揃ったのだ。
それは言わば、魔界を生んだ悪魔将軍の誤算とも言えた。
_魔界は『超人墓場を模して』造られた。
超人墓場を作った武道、もといザ・マンの弟子であった悪魔将軍が作ったが故の必然だったが、それが今回は裏目に出た。
悪魔将軍が超人墓場を破壊した際に、共鳴という形で魔界と現世にある種の『繋がり』が出来てしまった。
それだけならば良かったが、そこに今回のミケーネ神の降臨が合わさったのが不味かった。
世界の外からの超常的な存在の介入は、世界の境界を曖昧にさせた。
どこまでが彼女の計算通りで、どこからが偶然の帰結なのか、ソレは最早どうでもいい。
重要なのは、魔界が開かれるそれ一つだ。

「待ってて頂戴ね、一つ残らず平らげてあげるわ。」

妖美な笑みが、今は只恐ろしく見えた。

11人目

「悪魔に捧ぐ天使の歌」

――???

「……妙な連中?」

 ジェナ・エンジェルとブラフマンはモニター越しに会話をしていた。
月影夢美一行を倒したと言う話題だ。

『まあ、リグレットの力を賜った僕にかかれば、彼ら如き取るに足らない相手ですよ』

 その言葉に、ジェナ・エンジェルは眉一つ動かさないままで答える。

「それで、死体は回収したのか?」

 ジェナの質問には少しだけ間を開けてから答えが返ってきた。

『必要ないでしょう。予想外の介入ではありましたが、所詮は一般人ですしね』

 ブラフマンの回答を聞いてから、ジェナ・エンジェルは呟いた。

「その驕り、命取りになるかも知れんぞ?」

 それだけ言って彼女は通話を切る。
ジェナの言う通り、雪のフィールド変化によってブラフマンの攻撃を辛うじて耐え切り、
夢美たちが今も生き延びている事をブラフマンは知らずにいたのだ。

 「カリギュラ2」の世界に突如として現れた月影夢美一行。
やがてその存在が、数多の世界を巻き込んだ事件の鍵を握る事になる……

「呵呵、あの野郎、いつ見ても悪趣味な金仮面だな、おい」

 ジェナの背後に立っていたのは、アスラ・ザ・デッドエンド。
経絡秘孔を突くことで人体を内部から破壊することを得意とする暗殺拳の使い手である。

「で、何の話よ?」

 アスラは興味なさげに問いかける。それに対してジェナは振り返らずにこう告げた。

「些細な事だ。それよりも、吉良が予想以上に梃子摺っているらしい。
我々も神浜とやらに向かう」
「ほう? 異世界の連中がどれほどのモンなのか、試してみるのも悪くねえな。
退屈し過ぎてどうにかなりそうだったからよォ」

 ジェナの言葉に、アスラは嬉々として反応を示す。

「ウラヌス、ヒート。お前たちにも同行してもらう。構わないな?」

 ジェナが言うと、2つの人影が音もなく現れる。

「この私に命令をするな」

 仮面に素顔を隠した絶対零度を行使する甲冑の騎士……ウラヌス-No.ζが毒づくが、
ジェナはそれを意にも介さない。

「ラクシャーサの反応も消失している。恐らくは、特異点(イレギュラー)にでも
殺されたんだろう。奴が殺られるほどだ、神浜とやらの戦力が我々の想定よりも
上回っている可能性も否定できん」

 ジェナの言葉に、ヒートは思案する。

(セラフィータ……まさか、あいつなのか……)
「どうした、ヒート? 何やら考え込んでいるようだが……」

 ジェナに言われて、ヒートは慌てて思考を打ち切る。
まるで心を読み取られそうな錯覚に陥ったからだ。
そして、先程まで考えていたことをおくびも出さずに返事をした。

「……いや、何でもない。それより、何とかって街に行くって話だったろう?」

 ヒートは話題を変える。
ジェナとヒート、そしてアスラとウラヌス……彼らが何故行動を共にしているのか……
それは未だ明かされていない謎の一つでもある。
ただひとつ言える事は、彼らがとてつもない一騎当千の力を持った存在であり、
世界を揺るがす程の事件を引き起こす者たちであるという事だけだった。

 この直後、あの神浜市で発生したCROSS HEROESとクォーツァー/アマルガム同盟、
キャスター・リンボ/安倍晴明/ドンキホーテ・ドフラミンゴ、ジェナ陣営と言った
異世界からの侵略者たちとの壮絶な戦いが幕を開ける事となったのである。

「うっ……あっ……あがぎぎぎぎ……!!」
「~♪」

 ジェナによって悪魔化ウィルスを投与されたラクシャーサは、
既に人間としての機能を失っていた。
全身を駆け巡る激痛に耐えきれず、悲鳴を上げるラクシャーサに
少女……セラフィータは透き通るような声で歌い続ける。
セラの持つ力……それは、「歌」。彼女の歌によって悪魔化して理性を失った人間を
制御する事が出来るのだ。

「ここは私達の世界じゃない……こんな所まで来て殺し合う必要なんてない……
だから……ね?」
「う、うう……うう……」

 セラフィータの歌を聴く度に、痛みは引いて行き、ラクシャーサは
次第に落ち着きを取り戻していく。
悪魔の因子は今も彼女の身体を蝕み続けているものの、少なくとも、
リ・ユニオン・スクエアの人間たちをラクシャーサに無差別に襲わせると言う
ジェナの企みは未然に防がれたのだ。

「ジャンクヤードじゃない……世界。何て美しい世界なんだろう」

 セラフィータはジェナ・エンジェルの精子と卵子を掛け合わせて生み出された……
つまりは、事実上のジェナの実子である。
彼女がいた世界「ジャンクヤード」は理想郷「ニルヴァーナ」へ至るべく
各地に点在するトライブ達が生き残りをかけて戦うという、
言わばバトルロイヤルのような荒廃世界であった。
そんな世界に、彼女は生まれ落ちた。
争いのない、平和な世界。誰もが幸せに暮らせる優しい世界。
このリ・ユニオン・スクエアと言う世界はセラにとってはまさに夢の国そのものだった。

「もしかしてここが、私にとってのニルヴァーナなのかも知れない……
エンブリオンのみんなもいてくれたら、どんなに良かった事か」

 何故この世界に自分が来てしまったのか、セラは理解していない。
しかし、それでもいいと彼女は思った。
ここにいる皆は優しくて、温かい人たちばかりだ。
だから、きっと大丈夫。そう信じて、セラは今日も歌い続けた。

「サーフ、ゲイル……エンブリオンのみんなに、会いたいな……」

12人目

【作戦名、リドゥ突撃大暴れ作戦】

「櫻木家の巫女ちゃん」

「どうしたの?夢美ちゃん」

「アース君とエクスさんに櫻木家をしばらく使わせてあげてくれる?うちの家庭は面倒だから」

「うん、大丈夫だよ!パパもママもOKしてくれると思うし来客用の部屋を使わせてくれると思うよ」

「桜花〜!」

「ありがたや!」

「困った時はお互い様だよ!」

「家の中のものは多分あるはず…ちょっと待っててね」

夢美は魔法陣を地面に描き始め魔力を送ると室内にある日用品やら着替えの服が出てき始める

「あ、そんな魔法も使えたんだ?」

「おお…彼奴の魔法も凄かったがこちらも中々…」

「最初から空間転移の魔法使えば良かったね…でも」

確かに日用品やら着替えやら出てくるが決定的な物がない、それは…Switchだったのだ。

「Switchは対象外ってことか」

「チックショーーーーー(高音)」

「不思議だな、まるで"鍵"みたいな役割」

「鍵…」

あらかたのことは出来た。
でもSwitchが鍵だなんて初めて聞いた、そんなことあるはずかない あってはいけないのだ
それなら今すぐ召喚魔法を使ってあの方を・・・

「それでは、俺の家…頼みます!」

アース達は深深とお辞儀をしてこの場を去る

「あ、うん、任せて。後ドアノブ直しておくね」

ちょっとビックリするもアース達を見送るとついでにドアノブの裏側を接着剤で着け始めようとするとアースが急いで戻ってくる

「お願いです、そっとしてください」

「え、でも」

「やめてください」

「わ、分かった」

猛烈に説得されキョトンとする夢美と再びこの場を去るアースだったのだ

「あー・・・それでどうやってこの扉をぶち破るんだ?」

「えーとその扉、正確には家の中は恐らくブラフマンがゲームの世界に入った影響で空間属性によるエネルギー発生地帯となっていると思うんだ」

「やってくれたな、ブラフマンめ」

「それで結論としてはどうなんだ?」

夢美はそっと頷くと懐から箱を取り出す

「【フィールド変換専用起動端末】を魔導具にするけどいい?」

「フィールド変換のアレを?別に構わないがそれは完全に自己責任だ。あ、父さんに許可を取ったのか?」

「んー…保証とか出る…?」

フィールド変換専用起動端末はフィールド変化システムを発動するためには必須のアイテムなためなのか彼女は完全に苦笑いしていた

「分からん・・・が聞いてみる」

ポケットから携帯電話を取り出し連絡を取り始め交渉し始める

「ケータイだ!」

「ポケベルよりマシだよ!?」


太陽『父さん、夢美がフィールド変換のアレを魔導具にしたいと言ってるんだが大丈夫か?』

『あー、完全に自己責任だね〜。でも分かった、いいよ!あ、後でもその魔導具になったフィールド変換専用起動端末のサンプルとしてくれるなら次のを造っておくけど、どうかな?』

「(保証が出来ないけど)OK!」

『"OK"だってさ』

『あっはは!月影家の魔力だからバラッバラになっちゃいそう…ごめんね、不甲斐な製作者で・・・でも僕諦めないからね!いつか魔法を科学d』《ピッ》


「なんか、いつもより一層危険分子だったな・・・」

親の通話を途中で切ったのは自分自身の判断として、いや、なんか危ない気がした

「自分の親なのにそんな言い方していいのかーい?」

「雪・・・アンタな、他人の家庭事情に片っ端から突っ込んでいるといつか痛い目に見るぞ」

「・・・うるさいな」

「なっ!」

「許可も出たので…今ここで限界突破するわ」

「「えっ」」

「あー、限界突破するその前になんか作戦名ちょーだい?」

夢美は両手を差し出して首を少し傾げる、アンタは子供かっ!!

「俺か…分かった、作戦名は"リドゥ突撃作戦"でどうだ?」

「うおー!安直だー!その中に大暴れも付け加えよう!」

「雪、グッドアイディア賞受賞でーす!」

正直、アンタら2人といると頭痛が痛いのだがそれでも俺にとってかけがえのない存在だってこを忘れてはいけないな。

「クックックッ…ブラフマンくぅんリグレットォォ…異端者三人衆にトドメを刺せなかったこと後悔させてあげるよぉ…ついでに負けイベはテンポが悪いからあんま好きじゃないが燃えるよなぁ!!!」

「うおー!これは燃える展開だぁー!」

「コラッ2人ともあんまそういうこと言うんじゃない」

「それじゃあ、行くよ!」

時刻は夜8時 今宵、月影家の魔力の高まりが最高潮になる〖満月〗の日である。
それが意味すること、それは全てを司れるかもしれない程の魔力量になるらしい

本当なのだろうか?と疑問を持ちながら詠唱を始める。

フィールド変換専用起動端末を魔導具へと変更
《魔導具化変化完了》
空間エネルギーを魔力に変換、移動魔法を安定化 移動ルート確定を付与

起動端末をドアノブに取り付け扉を開ける


ー転移開始ー

13人目

「仮想世界の歌姫と妖精國の女王」 

 一方、エピメテウスの塔に帰還していたリグレットとブラフマン。

「このブラフマン、リグレット様にお救い頂いた命。
この身尽きるまで貴方様のために尽くします」
「励んでください」

「ところで……貴方様が垣間見たと言う世界……リ・ユニオン・スクエア、でしたか」
「いずれあの世界にも、グランドクロスの手の者が侵攻してくるでしょう」

 リグレットもまた、渾沌結社グランドクロスの存在を認知しており、
その言葉通り、禍津星穢の出現を皮切りにしてグランドクロスとCROSS HEROESの戦いは激化の一途を辿ることになった。

「数多の世界を「やり直す」彼らの行いを私は『肯定』します。
そして後悔のない人生を……」

 それはクォーツァーであり、アマルガムであり、カルデアであり、暁美ほむらであり、CROSS HEROESでもあった。誰もが自らの望む未来の為に戦い続けた、
例えその先に待つものが破滅であったとしても……リグレットは目を瞑り、
かつて自分が歩んだ道を想起していた。

「私が望むもの……それは悍ましき汎人類史の滅亡」
「!? 何者!」

 突如と現れた謎の気配に気づき、ブラフマンが警戒態勢に入る。
すると何もない空間に玉座が現れ、そこに座する高貴なる人物が姿を現す。

「失礼。私の名はモルガン。妖精國アヴァロン・ル・フェの管理者にして女王である」

 モルガンの周囲には3騎の妖精騎士が護衛につく。
体格も容姿も統一感も無く皆バラバラだ。

「モルガン……検索。該当あり。アーサー王伝説に登場するブリテンの妖精の女王……」

 リグレットが即座にデータベースを閲覧し、目の前の人物の正体を探ろうとする。

「おい、てめえ。お母様を勝手に調べるんじゃねえ。全身串刺しにすんぞ」

 モルガンの護衛役、妖精騎士トリスタンはリグレットの態度が気に食わなかったのか、
敵意を剥き出しにして威嚇する。燃えるような赤い髪を振り乱し、
今にもリグレットの喉元に喰らいつかんとする獰猛さ……
しかし、それをブラフマンがリグレットの前に立ち塞がって制止した。

「リグレット様にそのような物言い、看過しかねるな」
「へえ? やるかい、金ピカ頭。中身はどんなツラをしてるんだか……」

「ブラフマン/トリスタン、退がりなさい」

 リグレットとモルガンが各々の従者を黙らせ、視線が交差する。
まるで互いが互いに睨み合うように……

「リ、リグレット様/お、お母様がそう仰るなら……」

 ブラフマンとトリスタンは素直に従い、一歩後退する。

「貴公ら……どうやってこの世界に来た」

 改めてのブラフマンの問いかけにモルガンは口角を上げ、愉快そうに笑う。

「魔女ですので……凡そ私に不可能など無いのです。
ここを訪れたのも単なる戯れに過ぎません。
ただ、間もなく、あなたたちに仇なす存在が現れる。それを予言しましょう」

 モルガンの口から放たれた衝撃的な発言にブラフマンは目を見開く。

「何、それはどう言う……」
「獲物は迅速に、かつ確実に仕留めておく……と言う事さ」

 3騎士の中で一番小柄な妖精騎士ランスロットがぼそりと呟く。
その声色には一切の感情が籠っておらず、ただ淡々と事実を述べているだけに
過ぎなかった。絹糸のような麗しい銀髪が光を浴びて瞬く。
目元を覆う仮面のせいで表情が読み取れないが、明らかに異様な雰囲気を放つその様子に
ブラフマンは警戒心を高める。何か……得体の知れないモノと対峙している感覚だった。

「陛下、そろそろ……」
「ええ、分かりました」

 ランスロットとは対象的に身の丈2mを優に超える巨躯を誇る妖精騎士ガウェイン。
全身を覆い隠すような白銀の甲冑に身を包み、右手には大剣を携えていた。
鎧越しからでも分かるほど筋骨隆々で、武骨さを感じさせる反面、
手入れされたウェーブがかった金髪や態度からは麗人としての気品も併せ持っている。

「獲物は確実に……もしや、あの妙な連中のことか……
馬鹿な、奴らはリグレット様のお力を賜った神剣サヨコにて間違いなく……」

 ブラフマンは夢美たちのことを思い出していた。

「では、ごきげんよう」
「最後にひとつ。モルガン女王。あなたには、「後悔」はありますか?」

 リグレットの問いかけに、モルガンは一言だけ。

「――忘れました。そのような感情は、今の私には無い」

 モルガンは黒い十字架型の槍をカツン、と床に突き立てると足元に魔法陣が展開される。
そしてモルガンと妖精騎士の姿は消え去った。残された2人は沈黙のまま佇む。

「一体何だったのだ、あの者たちは……」

 ブラフマンはモルガンが残した言葉が引っかかっていた。

「あの女の言う通り、本当にあの時の奴らが生きているとなれば……
我々が取るべき行動は一つ。今度こそ完膚なきまでに叩き潰すのみだ。
リグレット様、どうか私に御命令を」

14人目

【スワップアウト Remind Edition Remix】

「あ、あれ?ここは、プラネタリアOKITAMA・・・?」

ここは プラネタリアOKITAMA
ピンクの髪に宇宙服のコスプレをしたのが僕、ムー君 オブリガードの楽士なんだ〜
ちなみにここプラネタリアOKITAMAである場所は僕の担当区域☆なんだ!

「う〜ん、こすもいね!」

じゃねぇんだよ

急に冷静になって素に戻る。
周りを見てみたがやっぱりプラネタリアOKITAMAだった
確か神浜から遠く離れた都心にいたはず・・・なんだ、ここへと戻ったってことは恐らくリグレットの力だろう、アイツならやりかねない

「アイツ・・・アイツ!生きていやがったのかっ!」

ふと呟いたアイツ…そうブラフマンのことである。
本来なら尊敬してるある人物として従っていたがもはや従う意味は無いと分かってしまった。分かってしまったのだと思うと怒りが込み上げてくる。

「あー、なんでのうのうと生きてるんだよ!そんなの許せねぇよなぁ・・・!」

そしてブラフマンが生きてるということはバーチャドール リグレットが生きていているってことである。
俺が楽士と、いうことも続いているらしい

「(考えていても仕方ない、移動しよう)」

ムーくんは扉を開けて移動を開始するのだった
一方その裏で、異端者一行はリドゥ 輿玉駅へと到着したのだった

「はぁ〜い到着〜おーつかれ様でした!」

現れたドアから夢美 太陽 雪という順番で出てきた。
ドアノブを外したが端末は案の定ぶっ壊れていたのだった
これで暫く月影夢美のフィールド変化は使えなくなったというわけであるが承知の上だった。

「やはり、魔導科学の結晶 機械銃が1番私の魔力に耐えれるんだなぁって」

「ああー…やっぱり壊れたのか。それともしかしてこのリボルバーのことか?」

リボルバーとは言ったが原型がなくなってただただ真っ白な銃を見つめる
父さんが作って俺にくれた代物だがはっきり言って自分でも機能を充分に分かっていない…しかも、得体の知れないナニカがいるのは分かっているがずっと眠っているのだ

「ところで・・・ずっと音楽が流れているけどコレ大丈夫なの?」

「分からん・・・が、何かおかしいんだよな」

最初に気がついたのは雪、その後に気がついたのが太陽だった
このエリアはずっと音楽が流れているということに

「いくら、異端者だからと言っても全てを等しくされているんだろう」

異端者、それは全ての種族の枠から外れた常識外の存在であるがリドゥ内では全て等しく人間として扱われるため曲による浸食は免れない

「そこでなんだけど、ここで召喚魔法を使う」

「・・・誰を呼び出すんだ?」

「幸い私達はゲーム内にいるからね。それは、お楽しみ!」

誰を呼び出すのか、と聞くが彼女にハブらかされてしまったが懐からイタズラ羽根ペンと特殊なインクを取り出し魔法陣を描き始める

「《召喚》!」

そこから現れたのは、長い金髪の三つ編みに青い服装の少年が立っておりその後ろにはサイバーな和服を来た少女が浮いていた

「あれ?ここは・・・どこ?」

『GV、気をつけて。なんだかこの曲からイヤな気配がするの・・・まあアナタにはアタシがいるから大丈夫でしょうけど』

「茶番世界以来だよね。久しぶり、GV!モルフォ!」

「まさか、この2人を呼んだというのか!?」

「検索したら出てきたぞ。蒼き雷霆(アームドブルー)の能力者 ガンヴォルトと電子の謡精(サイバーヴァ)の能力者 モルフォということが!」

どうやら、GVとモルフォと夢美は知り合い・・・とうことなんだがやけに会話が弾んでいるという事実と茶番世界とはなんだ?と言う疑問に太陽は耐えつついつの間にか検索していた雪に困惑していた

「積もる話もあるけどまずはモルフォの力を借りてもいいかな?」

「ええ・・・いいけど、アナタなら大丈夫そうね?」

「戦友だからという理由で信じてあげたいけど、モルフォは彼女は道具じゃないよ」

「まあ確かに、出会って久しいのにいきなり力を貸してくれというのは失礼よね」

「即ち、納得出来る答えを用意しろってことだね?」

親しき戦友にも礼儀ありと言わんばかりのGVと邪悪な感情を持ってないと分かっていても不安なモルフォ
となると、時間の問題が出てくるということは浸食率との戦いでもあるため短時間で納得が出来る答えを用意するのは素人同然の夢美には難しい

「頼む!」

「土下座した!?」

「リグレットっていうヤベェやつをぶん殴りに行かないと気がすまないんだ!あれは……のIFだから!!」

いきなり夢美が土下座して地面を割った事に驚くGV
コイツ、絶対戦いたいだけだろの感情を受け取った太陽
若干1曲ループだけに飽きてきた雪

「・・・分かった、いいわ!協力してあげる」

「おっしゃ!ラッキー!あ、違った違ったありがとう、勝利の女神 モルフォ!」

「勝ったな、カツ丼食ってくる」

「この勝負、勝ったな」

「(ジーノがいたらそういうのフラグ・・・って言うんろうか)」

かつて戦友だった頃を思い出すがちょっとだけ3人に不安を感じたGVだった・・・

ーリドゥ、それは後悔だらけの過去を忘れて人生のやり直しが出来る世界ー

「夢美 太陽 GVとモルフォ 力を貸してくれよ?」

「雪が珍しく仕切ってる、明日は猛吹雪が降るな」

「そういうのはいいから早く移動しましょうよ」

「そうだね、そろそろ1ループ聞くのも飽きてきたし」

「夢美は相変わらず大胆なことを言うね」

やっぱりこの不安は過ぎた考えだったかもしれないとそう感じるGV
その裏でムーくんも移動していることを知っているのはリグレットだけだった

15人目

「出てこいとびきりZENKAIパワー」

――特異点。

 ターレスの急激なパワーアップに苦戦を強いられるベジータ。
一方、同様に完成型神精樹の実を食べたスラッグも、ピッコロに対して
猛攻を仕掛けていた。

「ちいいッ……!」
「ふははははははは、どうした、ピッコロ!?」
「調子に乗るなよ……!!」

 苛烈極まりない攻撃の連続に対し、流石のピッコロも防戦一方で反撃の隙を
見つけられない。しかも、徐々に追い込まれつつある事に焦りを感じていた。

(まずい……このままでは押し切られる……!!)
「かああああああッ!!」

 渾身の一撃を繰り出し、強引に距離を離す。
オーラを纏い、全速力で飛び去ろうとするが、それよりも早くスラッグは
高速飛行して追いかけてくる。

(速い!?)
「おっと、残念だったなぁ!」

 ニヤリと笑い、更に加速する。ピッコロとスラッグのドッグファイトが始まった。
両者共に、音速を遥かに超える速度で飛翔しながら。交互に八の字を刻むように
ジグザグに飛び回りながら、両者は凄まじい空中戦を繰り広げる。

「はっはァーッ!! どうしたぁ!? 逃げ回るだけでは勝てんぞぉ!!」
「言われるまでもない……!!」

 挑発してくるスラッグに言い返しながらも、内心で舌打ちをする。

「どぉぉうりゃあああああああああああああッ!!」
「!!」

 一瞬の隙を突いて急降下するスラッグ。慌てて回避しようとするが間に合わず、
スラッグのパンチが直撃してしまう。

「うおおおおおおおおおおッ……」

 大きく吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。

「くそ……! うおっ!?」

 すぐに起き上がろうとしたが、既に眼前にはスラッグが放り投げた巨大な岩が
迫ってきていた。

「潰れてしまえェッ!!」
「ぬおおおおおっ……!」

 避ける間もなく、大質量の岩石の下敷きにされてしまう。
ピッコロの姿は確認できない。

「ふふっ、何とも呆気ないものだな……おい、ターレス! こっちは終わったぞ!」

 勝ち誇った表情を浮かべながらターレスの方を振り向く。

「お仲間はやられちまったようだぞ、ベジータ。さあ、次はお前の番だぜ……?」
「ふっ……ふふふふふ……はっはっはっはっはっはっは……」

 ベジータは俯いたまま、不気味な笑みを浮かべている。
ターレスはその様子に眉をひそめた。

「何を笑っていやがる……気でも触れたか?」

 すると、ベジータはゆっくりと顔を上げた。
その目はギラつき、まるで獲物を見つけた肉食獣のような目をしている。
ターレスは思わず後ずさりした。ベジータから感じる圧倒的な威圧感に
気圧されてしまったのだ。

「おめでたい連中だ。ようく見てみやがれ」

 ベジータの言葉の意味がわからずに、怪しげなものを見るような目つきで
辺りを見回すターレス。しかし、次の瞬間――

「ぬおおおおおおおおおおおお……!!」

 地の底から響くかのような雄叫びと共に、ピッコロを押し潰した巨大岩石に亀裂が
走り始める。

「ま、まさかっ……!?」

 スラッグの顔に驚愕の色が広がる。
やがて、岩石は粉々に砕け散り、その中からピッコロが現れた。
全身からは先程とは比べ物にならないほどの気が溢れ出している。

「ふう……」

 首を鳴らし、軽くストレッチを行う。

「く、くたばり損ないが……!!」

 怒りの形相を浮かべながら、再び戦闘態勢に入るスラッグ。
だが、ピッコロは全く意に介していないかのように平然と構えを取り、静かに言った。

「さて、そろそろ本気で行くか」

 瞬間、ピッコロの身体が閃光に包まれる。

「つあああッ!!」
「ぐぼぉあッ……!?」

 目にも見えない速さで、ピッコロの飛び膝蹴りがスラッグの顔面に炸裂した。

「こ、こやつっ……!!」
「はああッ!!」

 ナメック星人特有の伸縮自在の腕で、吹き飛んでいくスラッグの足首をガッチリと掴み、
そのまま地面に叩き付ける。
二度、三度とアーチを画くように地面をバウンドするスラッグ。

「ぐごっ……!? あがが……!! 一体、何事が起こったと言うのだ……!?」

 突然の事に理解が追いつかないのか、スラッグは訳も分からぬまま
地面に這いつくばっていた。

「超サイヤ人であるこの俺に追随して来たのは褒めてやるぜ。
だが、これで貴様もおしまいだ……!!」

 ベジータもまた、身を屈め、力を溜めるように拳を握る。

「見せてやろう……! 超サイヤ人を……さらに超えた力を……!!」
「何っ……!?」

「はああああああああああああああああああああッ……!!」

 ベジータを中心にして、激しいスパークが巻き起こる。
髪の毛の逆立ちがさらに鋭くなり、戦闘力も爆発的に上昇していく。

「超サイヤ人を……さ、さらに超えた……!?」
「そう言う事だ。喜ぶが良い。今の俺の全力をその身で受けられる事をな……!!」

 ターレスは戦慄していた。超サイヤ人を上回るパワーを手に入れたと自負していたのに、
それを遥かに上回る力を持った者が目の前にいる事に。
しかも、それが二人も。

(冗談じゃねえ……!!)

 ターレスの額を冷や汗が流れ落ちる。

「うぉああああああああああああああああああッ……」
「――むんッ!!」

 電光石火、ベジータのボディブローがターレスの戦闘服を貫通し、
背中にまでその衝撃が突き抜けた。
ターレスは血反吐を撒き散らしながら、遥か上空へと打ち上げられていく。

「ごほおおおおおおッ……!?」

 ベジータはターレスを追い、自身も超スピードで空高く舞い上がっていった。
そして、空中でターレスに追いつくと、更に追撃としてパンチを連続で叩き込む。

「でぇやららららららららららららッ……!!」

 まるでナイアガラの滝の流れのように、怒涛の勢いで地上へと落下していくターレス。
そのまま地面に激突し、凄まじい土煙を巻き上げた。

「ぐわああああああああああああああああああッ……」

 何と、ベジータとピッコロはまだ真の力を隠したままこれまで戦っていたのだ。

「おのれぇ……おのれええええええええええーッ!!」
「ふざけやがって貴様らああああああああああッ!!」

「貴様らはよくやった……神精樹の実ひとつでまさかこれほどのパワーアップを
してみせるとは正直想定外だった……だからこそ、もはや出し惜しみはせん。
終わらせるぞ、スラッグ……!!」
「超ベジータの圧倒的なパワーを思い知るが良い……ターレス!!」

16人目

「拓かれるは廃棄孔」

 幻想の中

 暗い。
 ただ暗い暗い闇の底。

 宇宙の闇よりも暗い、■■■の地底。
 漆黒の絵に、更に暗黒の墨を垂らしたかのような巨大な孔。
 そこに、灯された篝火の如く赤い炎が揺蕩っていた。

「待っておったか、我が怪物(へいき)よ。」

 そこにあったのは、二百メートルはありそうな闇の液体だった。
 まるで煮え立つ魔女のスープのように、時に瘴気を纏わせ放ったかと思えば。
 まるで爛れてゆく熔鉄のように、赤黒い光を放っては消えたかと思わせる。

「廃棄孔の力は日に強くなる。だが足りない。圧倒的に足りんぞ!」

 闇を深め、黒を深める坩堝。
 それを見た焔坂の顔が愉悦でほころぶ。

「さて、戦場の概念よ、斉唱の時だ!」

 指揮棒代わりに指を振るう。
 闇の坩堝を見下ろしながら、悪性の音色を奏でる。

 鬼にしては不釣り合いな行動。されど一種のコース料理のような美しさすら感じるのは。

『覗覚星よ、悪を観よ』
『生命院よ、命を喰え』
『兵装舎よ、剣を呑め』
『情報室よ、識を灼け』

『廃棄孔、第二万四千九百六十八次崩落 開始』

 無機質な、管制塔のアナウンスが闇の中に響く。
 それと同時に、闇がさらに深まっていく。
 もはや一条の光も差し込む余地がない、むしろ一種の美しさすら感じる闇が深まっている。

「素晴らしい、素晴らしいぞ!!これを形容せし詩吟がないほどに!」

 鬼とは思えないほどの甘美。
 詩を謳いながら、歓喜の歌を悦びと共に奏でてゆく。
 詩吟では形容できない、といわんばかりの恍惚と共に炎の舞いを踊る。

「人間種の悪意を呑み、喰らい、命じ、破り、灼き、観る!やがて廃棄孔の怪物は、幻想郷の全てを喰らいつくす。そして更なる得物を求め我らの兵器として動き、反逆者共を喰らいながら救世を謳うのだ!!」

 救世とは程遠い、暗黒の魔物。
 目覚めの時を待ちながら、ゆっくりとその闇を深めるために鎮圧していく。

 一連の恍惚と愉悦の絶頂と同時に、ゆっくりと膝をつき幸せの顔を浮かべる。

「最後に必要なのは、贄だ。我らメサイア教団にふさわしき、その上質な生贄だ!」

 高笑いと共に背後を振り返る。
 机代わりの岩石の上に置かれた、一枚の写真。

 銀色の髪。赤い瞳。紺色のパーカー。
 間違いなくその一枚は、天宮月夜の顔写真だった。

「我が積年の宿敵!その血を引きし彼を否定(けが)し、凌辱(けが)し、穢し、汚し、侮蔑(けが)し、全てに絶望させその贄としようぞ!」

 闇の中、邪悪な焔は更に猛る。
 愛は燃え、邪気は昂る。

「その瞳を曇らせ待っておれ、天宮月夜!我が夫よ!世界の救世(はかい)を、共に謳おうぞ!」

 吐気を催す、邪悪なる愛。
 憎むべきは、歪んだ恋慕。
 救い難きは、鬼種の反転。

 それこそが、焔坂百姫の愛の形だ。



 ロンドン。
 何も知らない月夜は、何かを感じていた。

「……妙な胸騒ぎがする。」

 ふと、外を見るもそこにあったのは。何もなく。
 ただ広がっている、この先の凶兆を知らせるかのような___赤い空だった。

17人目

「決着!! そして、新たなる脅威」

 スラッグとターレス。ピッコロとベジータ。
最強タッグの決戦の火蓋が切って落とされた。

「ピッコロォ! 貴様はァ! 貴様だけはァ!!」

 スラッグの身体がみるみる膨れ上がっていく。
ピッコロをギロリと睨みつけ、雄叫びを上げる。ナメック星人特有の能力「巨大化」だ。
しかし、対するピッコロは全く臆する事無く構えを取り、スラッグを待ち受けている。

「ぬあああああああああああああああああああああああああッ!!」

 スラッグは右腕を振り上げ、ピッコロに向かって振り下ろしたが
その一撃はピッコロに当たることなく、地面にクレーターを作るだけに終わる。
スラッグが気付いた時には、既にピッコロはスラッグの懐に飛び込んでいた。

「ちえぇぇぇえいあッ!!」

 ピッコロのハイキックがスラッグの顎に炸裂した。
脳を激しく揺さぶられ、一瞬意識が飛びかける。

「あぼっ……!? くあああっ……!!」
「貴様もナメック星人の端くれなら分かっているはずだ。
その巨大化自体にはさして意味は無いと。相当焦っているようだな」

 ピッコロが挑発するように言い放つ。
確かに巨大化する事でパワーや攻撃範囲は増大したが、その反面動きは格段に鈍くなる。
つまりは、デメリットの方が多いのだ。
しかしスラッグは尚も雄叫びを上げながら、ピッコロに襲い掛かった。

「くああああああああああああああああッ!!」

 大口を開けてエネルギー波を吐き出すが、ピッコロはそれを難なく回避し、
額に2本指をそっと当てた。さらに、ピッコロの姿が2人、3人と増えていく。

「ぬっ、ぬうううううッ……!!」

 身振り手振り、がむしゃらにピッコロを攻撃し続けるスラッグ。
攻撃が当たった瞬間、霧のように掻き消えてしまうピッコロの分身だったが、
その度に数を増やしていき、ついにスラッグの周囲をピッコロが完全に包囲した。

「ど、どれだ!? どれが本物なのだ!?」

 スラッグは目を凝らして、四方八方から攻撃を仕掛けてくるピッコロを見据える。

「生憎だな。もう遅い!!」

 多重残像拳によって増殖したピッコロたちが一斉に腕をスラッグに向ける。

「喰らええええええええええええええッ!!
魔貫光殺砲おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 ピッコロの代名詞、必殺技「魔貫光殺砲」。
それは、全身のエネルギーを一点に集中し、光線として撃ち出す大技だ。
威力、射程、速度においても他の追随を許さない。
だが、この「魔貫光殺砲」には欠点がある。
使用時のチャージに時間がかかり過ぎるという事。その隙をカバーする為に、
ピッコロは多重残像拳によってスラッグの目を欺き魔貫光殺砲を発動させるまでの間に、
スラッグの周囲を完全に包囲したのだ。

「ぐほおおおおおおおおッ……!?」

 スラッグの腹部を「魔貫光殺砲」の閃光が一直線に貫いた。

「おのれぇぇッ……!!」

 勝負あり、スラッグは爆発の炎の中に沈んでいった。

「ふう……」

 残像が一点に集まり、元通りの1人のピッコロに戻る。

「スラッグの気が消えた……これで終わりだな」

 ピッコロは小さく息を吐き、ベジータとターレスが戦っているであろう方向を見る。

「死ねえええええええええええええええええええええッ!!」

 ターレスは全身全霊を込めたエネルギー波をベジータ目掛けて放った。

「そのまま押し潰れてしまええええええええええッ!!」

 しかし、ベジータをそれを見上げたまま動かない。

「フン……」

 するとベジータは上半身を振りかぶり、両手に溜めていたエネルギーを一気に解放する。

「ギャリック砲おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 奇しくも、悟空の「かめはめ波」にそっくりだと言わしめたベジータの必殺技、
ギャリック砲がターレスの攻撃を正面から迎え撃った。二つは拮抗し、爆発を起こす。

「ば、馬鹿な……ッ……」

 ターレスのエネルギー波を撃ち貫き、ギャリック砲がターレスに迫る。
そして――

「う、うおおあああああああああああああああああああああああああッ……」

 ターレスの身体は爆発の渦の中へと飲み込まれていった。
爆風が収まり、静寂が訪れる。
そこに立っていたのは、たった一人。ベジータだけだった。

「やったか……」

 ピッコロがベジータの元にやって来る。
ベジータはただ、空の彼方を見つめたまま立ち尽くしていた。

「ふん、随分と時間とパワーを浪費してしまったな」
「よし……悟空たちと合流するぞ」

 ピッコロとベジータは休む間もなく、先行した超次元戦艦アビダイン隊と
悟空たちの後を追った。
ついに、ターレスとスラッグも最後の時を迎えた……かに思われたが。

「お、俺は……生きているのか……!?」
「ぐ、ぐおおおお……」

「危ないところだったわね。感謝してね? 私が助けなければ貴方達は
あのまま死んでいたわよ」

 ターレスとスラッグの身体は、何者かが作り出した異空間の中で保護されていた。

「だ、誰だ、貴様は……」
「ふふふ……」

 新たなる影の気配を感じ、身構えるスラッグとターレス。
二人を救ったのは、一体何者なのか……?

18人目

「死へと秒を読む心臓」

 ふと、身体を診る。
 まるで幽鬼のような腕。
 鏡に映る、まるですりガラスが如く曇った双眸。
 息も絶え絶えで、今にも死にそうだ。
 腕が自由に動かない。関節が致命的に錆びている。

 そして、何より。

「私は……誰なの?」

 か細い意識/意志で、自身の脳の煙を晴らそうとする。
 振り払っても振り払っても、燻煙されてゆく煙は永遠に晴れない。

「殺す……殺さなきゃ……誰かを……!」

 周囲を見る。
 でも、周りには得物がない。
 正確には、獲物が認識できていない。

「何しているの?」

 優しい声が、部屋の中に響く。
 そこにいたのは、酒場の主、ルイーダだった。

「あ……たすけて……くれたの?」
「そうよ。倒れていたところを助けてくれた人がいたの。今はいないけど……で、あなたのお名前は?」

 女性は、優しく声をかける。しかし。

「わたしは……だれ……?」

 哀しきかな。
 もはや彼女に、記憶はない。 



「ゼクシオン、そっちの様子は?」
『だめです、クォーツァーの連中尻尾を出しませんね。』

 杜王町の一角。
 芥は郊外の木の下で食事をとりつつ、同志たるゼクシオンと話をしていた。
 その表情はほんの少し焦っているようにも見える。

『焦っていますね。お急ぎの用事でも?』
「いや、俺は早く事を済ましたい主義でね。あんまり遅いと、キレそうになる。」
『仕方ないでしょう、連中が動かないと此方も動けないのだから。』

『そういや、なんかそちらに戦艦が近づいていません?』
「おっ、あれか?」

 芥は双眼鏡で、遠くから接近する戦艦___アビダインを目撃する。

「アレはいい。渡りに船とはこういうことか。」
『どうするつもりです?』
「___連中の船に引っ付かせてもらう。雀蜂にはAW-S06の捜索を任せるとしよう。」
『なるほど。まだあの絶対兵士には戦ってもらおうと。』
「いや、アレはもうだめだ。あのまま戦っても死ぬだけだ。介錯してやる。」
『分かりました。では座標登録は任せましたよ。転移する為のね。』
「分かった。切るぞ。」

 通話を終える。
 雀蜂の一体が、芥に話しかける。

「いいんですか?あなた一人で。」

 アビダインに乗っている者は、歴戦の勇者たち。
 それに対してたった一人で立ち向かうのは自殺行為だ。

 であるのならば。

「何、戦闘行動は行わん。潜入は一人じゃないとできないことがあるんでな。AW-S06の捜索は任せた。見つけ次第殺せ。」
「「「はっ!」」」

 雀蜂はまるで、巣から離れて外敵を攻撃する働きバチのように散っていった。
 残されたのは、芥ただ一人。

 雀蜂たちを見送った芥は、懐からタバコを吸う。
 そして、彼は告げる。

「____『魂線斗霊(コンセント・レイ):反発(リリース)』。」

 刹那、芥は空中に浮かぶ。
 まるで重力に反発して空に堕ちるかのように、空中へと加速しながら飛行する。

 やがてアビダインの航行軌道、その後方につくと芥は飛行するアビダインの後方目がけて飛行する。

「____『魂線斗霊:接続(コネクト)』。」

 迫る、芥志木という名の磁石。
 加速度的に、アビダインの後方へと加速しながら迫っていく。

『この世に遍く、ありとあらゆるエネルギーを操作する』。

 是こそ、芥志木に与えられた異能力だった。

「俺達にはクォーツァーの位置は分からんのでな。あの船にくっつき、クォーツァーのところまで連れてってもらおう。」

19人目

「アビダイン墜落!? 芥志木の罠」

 ――クォーツァー・パレス。

「う、うう……」

 アビダイン隊に壊滅させられたAS部隊の傭兵が、命からがらクォーツァーの王の
玉座の間へと辿り着く。

「……で? 貴様はむざむざと逃げ帰って来たと言うのか?」
「……言い訳次第もありません」

 玉座の男……常磐SOUGOは、冷ややかな目で見つめる。
その視線に耐えきれず、傭兵は頭を下げることしか出来なかった。

(ゲイツくん、ツクヨミくん……やはり来たか。この特異点に……)

 玉座の傍らで頭を垂れるウォズは、心の中で呟いた。

「いよいよ本腰を入れて迎え撃つ準備をしなくてはならないか……」

 そう言うと、SOUGOは立ち上がり、整然と並び立つクォーツァーのメンバー達に対して命ずる。

「これより我らは、CROSS HEROES殲滅の為の戦いを始める!
総員、準備に取り掛かれ!」
「はっ!」

 クォーツァー達は一斉に、アナザーライドウォッチを取り出す。

「この戦いに勝利すれば、平成ライダーとそれに紐づく醜き歴史は全て抹消され、
お前たちが新しい次代の主役となる」

「我らの偉大なる王よ、あなたこそ歴史の管理者にふさわしい!」
「その通りです。王の御名において、世界を作り替えるのです」

「ふっ……いいだろう。その手始めとして、まずはこの世界の征服から始めるとしよう。
我が手には既にグランドライドウォッチがある。
これさえあれば奴らを一掃するも容易いことだ」

「イエス・マイ・ロード!」
「ユア・マイ・キング!」

『うう……大変な事になったッチュン……』

 王座の間の壁に引っ掛けられた鳥籠の中に囚われているのは、セッちゃん。
為朝の宝具によってもたされた大混乱の最中、逃げ遅れてしまったのだ。

 アビダイン隊を真っ向から迎え撃つ準備を着々と進めていくクォーツァー。
一方、クォーツァー・パレスを目指すアビダインは……

「おっ? あれじゃないか?」

 ついに、クォーツァー・パレスが肉眼で確認できる距離まで到達していた。

「いよいよか……みんな、気合い入れていこうぜ!」
「はい!」
「おうよ!」

 士気は高まる。しかし、彼らはまだ気づいていなかった。
見えざる刺客が既に迫っていることを……

「あれがクォーツァーの拠点か……」

 魂線斗霊:接続(コネクト)によってアビダインの艦底にしがみついていた芥は、
生い茂った樹海の中心にある小高い丘の上にそびえるクォーツァー・パレスを眺めていた。

「ご苦労だったな、CROSS HEROES。おかげで奴らの拠点を探し回る手間が省けたぞ。
そして、お前たちにはここで死んでもらう。魂線斗霊:逆流(リバース)!!」
「!? な、何だ……」

 突然、アビダインの動力エネルギーが、芥の特異能力によって流出する。
アビダインの飛行速度はみるみるうちに低下していった。

「この艦はまもなく墜落する……さあ、どうする?」

 芥は魂線斗霊・接続(コネクト)を解除し、アビダインから飛び降りた。

「お、おい! アビィ! どうなってんだ!?」
「わ、分からない……エネルギーゲインが下がってるみたいだ……」

「ちょっと、アビィちゃん、車検はしっかりしておきなさいよね!」
「僕のアビダインは常に完璧だ! あと、君たちが空にしてくれた僕の秘蔵酒は
絶対に請求するからな!!」
「あ~ら、藪蛇」

「――オラが行く!!」

 悟空がアビダインから飛び出し、艦の前面に回り込んだ。

「悟空さん! 俺も行きます!!」

 トランクスも続いて飛び出す。

「受け止めてやるーッ!!」
「はあああああッ!!」

 悟空とトランクスは超サイヤ人に変身し、アビダインを受け止めようとする。

「おわああああっ……!!」
「ぐあああああっ……!!」

「まったく無茶をしてくれる……今の内に制御を安定させるぞ!」

 アビィは高速でメインブリッジの計器をチェックし、
アビダインの航行システムの復旧を試みる。

「ここか……! 急激に航行エネルギーの流れが乱れている……
さっきまで何事も無かったのに……何者かの攻撃を受けたのか……!?」

「う、うぎぎぎぎぎぎぎ……!!」
「2人とも、助かった! アビダインは無事に着陸できる! 離れてくれ!」

「悟空さん!」
「おうよ!」

 悟空、トランクス、そしてアビィの活躍により、アビダインは無事着地。

「くうう~っ、身の危険も顧みず仲間のために飛び出すなんて、カッコいいじゃねえか。
流石CROSS HEROESだぜ!」

 「カッコ良い振る舞い」をモットーとするシャルルマーニュは感動の涙を流しながら
ガッツポーズをする。 しかし、クォーツァー・パレスを前にして、
樹海のど真ん中で不時着することになってしまった。

「チッ、流石に一筋縄では行かんか……」
「!? 誰だ!?」

 悟空が芥の気配を感じ取り、周囲を警戒する。

(おっと、気配を探れるのか)

 芥はエネルギーを操る特異能力の応用で、自身の気配をゼロにまで希薄化する事で、
悟空の探知能力をすり抜け、樹海の中へと身を潜めた。

「気が消えた……」
「クォーツァーの拠点までもうちょっとって所で立ち往生とは……」

「仕方ない、不調を放置したままで戦いに臨むのは自殺行為だ。
臨時メンテナンスが必要だろう。済まないが、周囲の警戒を頼む」
「確かに、こんな所を狙われたらひとたまりもないしな」

 決戦を前に、思わぬアクシデントに見舞われたアビダイン隊……
時は誰に味方するのか……

20人目

「魔界からの使徒」

ターレスとスラッグの窮地に、突如として現れた謎の存在。
ベジータ達に気付かれる事も無く動いてみせた手並みに、自然と二人に警戒心が掛かる。
だがそんな心構えも何処吹く風と言わんばかりと、ソレは言葉を続ける。

「ターレスにスラッグで間違いないわね?」
「_貴様、俺達を知っているのか。」
「勿論、貴方達には前々から眼を付けていたもの。」

さも当然と言わんばかりの台詞に、ターレス達の疑心がより一層強まる。
得体の知れない者程、畏怖するものは無い。

「ほう、わざわざ恩を売ってまで、何が狙いだ?」

故にターレスは一歩踏み込んだ。
この者はその腹の内に何を含み接触してきたのか。
その一端だけでも知ろうと。

「ふふ、言葉にするのは難しいけれど。」

ソレは一拍の間を置いて、答える。

「貴方達と同じ、と言えば良いかしら?」

だが酷く抽象的な内容に、より一層不気味さが増すばかりだ。
苛立ちを隠さず、ターレスは返す。

「貴様と俺とがか?一体どこがだ、冗談も休み休み言え。」
「あら、本心のつもりよ。」

ところが心外だと言わんばかりの言葉を紡いだ。
そして、ターレスを指差して指摘する。

「貴方は下級戦士の身に甘んじず、上を目指した。」
「ふん、世辞なら要らんな。」
「えぇ、結果は見ての通り。そうよね?」

癪に障る言葉を吐かれ、ターレスの視線に殺意が乗る。
だが同時に事実でもある事は、身体中の痛みが証明していた。
図星を突かれ、言い淀んでしまう。
その動揺を突く様に、ソレは続けた。

「私も同じ。生まれが足を引っ張って、狭い世界に圧し留められている。でも私と貴方達が組めば、より強い高みへと辿り着けるわ。」
「…ほぅ?」

今度はソレが一歩踏み出し、影の中からその姿を露わにする。
蒼い肌に赤と黒のツートンカラーの装束を纏った白髪の女性。
彼女は、片手を差し出して提案する。

「このままクォーツァーの手駒としてここで使い潰されるか、それとも私と共に次のステージに進むか。どうする?」

魅惑的な言葉に、ターレス達の心が揺れ動く。
一瞬の間を置いて、ターレスが口を開いた。

「…名前を聞いてなかったな。」
「そうだったわね。私はトワ、魔界から貴方達を迎えに来た者よ。」

彼女は、トワは甘美な笑みでターレス達を迎えた。



時間は少しばかり巻き戻る



曇天を煮詰めた様なくすんだ灰色の景色。
コンクリートが剥げ落ち、鉄骨が剥き出し、無機質な部屋がさらけ出された廃ビル群。
退廃的な光景が幾多も広がる、いかにも寂れたという言葉が似合う廃墟の中。
一本通りの罅割れた道路を行く二人の人影がある。
先行するのは、鋼色の鈍い光沢を放つ鎧を纏った、筋骨隆々の大男。

「_そこにいるのだろう、出てこい。」

ふと足を止めて空を見上げ、男が静かに、しかし重圧の掛かった声を上げる。
フルフェイスのバイキングメットから表情は伺えないが、隙間から覗く眼付きと声色には殺意が漂っている。
筋骨隆々の鍛え抜かれた身体と相まって、さながら狩りを行う猛獣の如き威圧感を醸し出していた。
何もいない筈の虚空を睨み、空気が張り詰める。
しかし、声は只木霊するのみ。
暫しの静寂に、男が痺れを切らす。

「隠れたつもりだろうが、とっくに気付いている。」
「ゴールドマン、私が照らし出してやろう。」

怒気を一層震わせた声で強迫する男、ゴールドマン_悪魔将軍の前に、もう一人の男が前に出る。
多角形で構成されたの楕円状のリング。
それを束ねて纏った左腕が、宙に突き出される。

「頼む。」
「あぁ。」

先程までの憤りを抑え、悪魔将軍は彼に、ミラージュマンに任せ一歩下がる。
振り返るまでも無く確認したミラージュマンは、リングを回転させ始める。
刹那の後、目にも止まらぬ回転速度を叩き出すと共に、螺旋状の突風が虚空目掛けて吹き荒れる。
その流れを視覚化する様に、景色が捻じれ歪む。

「『カレイドスコープドリル』-ッ!」

瞬間、眼前の空間に黒い亀裂が生まれ、瞬く間にピキピキと音を立てて広がっていく。
およそ直径3m程にまで達した頃だろうか、その空間は一気に割れて崩れ落ちる。
宙に出来た、巨大な黒い孔。

「あら、見た目以上に乱暴なのね。」

そこから、女性の声が聞こえる。
同時に、罅割れた景色が霞の如く溶けていく。
黒い虚空から露わになった者の正体はトワ、そしてもう一人の男。
二人は道路を挟んで、ふわりと降り立つ。

「見逃してくれないかしら?これも魔界の為なのよ。」
「若僧め、我欲だろう。」
「そうかしら?魔界を代表していると言っても過言じゃないと思うわよ。」
「いいや、魔界の秩序を決めるのは貴様ではない。私だ。」

互いに一歩も引かぬ口論が続く。
中央に引かれた白線が、両者の主張を両断している様だった。

「一度はサタンに乗っ取られた身で、よく言うわ。」
「あぁ、故にこそ過ちを二度と出さない事が、私の責務でもある。例えば貴様の様な者をな。」
「…何処まで行っても水平線ね。」

呆れた様に呟き、一瞬の沈黙が訪れる。
そして溜息を付くと、トワが静かに口を開く。

「良いわ、初めからこうなる事は分かっていたもの。」
「ほう、観念したか?」
「まさか。ただの時間稼ぎよ。」

そう言うとトワは微笑を浮かべ、ゆっくりと右腕を上げた。
何をしようというのかと身構える悪魔将軍。
だが、突如として周囲の景色が眩い光が放ち、将軍達を包み込み始める。

「ぬぅ!これは…」
「始まったわね、救世が。」

想定を超える事態に、流石の悪魔将軍も面食らってしまう。
そんな彼を嘲笑うトワの姿を最後に、視界が白く染まる。
そして、次の瞬間。

「_なっ。」
「これ、は!?」

世界は、一変していた。
朽ち果てたコンクリートも、くすんだ空気も、無機質な廃ビル群も消え失せ。
代わりに漂う、草木を揺らすそよ風、微かに香る潮の匂い。
一面に広がる青い空、澄み切った白い雲、燦々と輝く太陽に照らされた並木道、新築同然のビル群。
そんな自然豊かな緑と青のコントラストに彩られた都会を行き交う人々。
あり得る筈もない平和が広がる異様な光景に、二人は思わず言葉を失った。

「ふふっ、世界そのものの改変…相当の『キリ』だわ。」

一方で、トワはいつの間にか現れた妖しげな白い瓶を男に向け、紫色の光の様な物を注いでいた。
異様な行動を前に、悪魔将軍が問い掛ける。

「貴様、何をした?」
「私"ではない"のだけれど、これが目的の一つよ。」
「碌な物では無さそうだな。」

返答とは言い難い内容に、目付きが険しくなる。
同時に、戦いの構えを取る。

「やはり貴様は、今ここで仕留める。」
「それは困るわね。ミラ、ここは任せるわ。」
「あぁ。」

一触即発の空気の中、トワはそそくさとその場を後にし、代わりに男_ミラが前に出る。
先程までは無かった異質な気を纏いながら。

「逃がすか_」
「気を付けろゴールドマン!奴は_」

トワを逃がすまいと一歩踏み出そうとして。

「追わせはせん。」

気付けば、ミラが悪魔将軍の眼前に居た。

「なっ…!」
「_先程のアレで、急に強大な力を得ている!」

21人目

「仮面ライダーに認められなかった男」

 クォーツァー・パレスを巡り、各勢力が戦いを繰り広げている最中、
ソウゴが囚われた牢獄では……

「改造人間……それじゃあアンタも、仮面ライダー……!?」
「……いいや、俺は仮面ライダーに認められなかった……」

 ソウゴが牢獄にて出会った、平成の時代、悪と戦った改造人間……
赤いマフラー、白いパンタロンに黒いジャンパーを羽織った
癖っ毛の黒髪の男。

「俺の名は、木梨猛。昭和から平成に時代が移り変わろうとしていた頃だ。
日本では仮面ライダーたちがクライシス帝国と戦い、そして勝利した。
彼らはその後、世界に散らばる悪を退治するため、日本を発っていった……」

 木梨猛は、かつて存在したという悪の帝国の名を口にした。
クライシス帝国。異次元世界からやってきた彼らは
地球を第2の故郷とすべく侵略してきたのだという。
だがその野望は仮面ライダーBLACK RXを始めとした
11人の仮面ライダーたちによって打ち砕かれたのだ。

「ライダー達が不在であるのを良いことに日本に攻撃をしかけてきたのが、
秘密結社ジョッカーだ。俺はジョッカーに改造されたものの脱走し、
ライダー無き日本を守るために戦ってきた」

 ソウゴが生まれるよりも遥か昔に起きた出来事。

「そうだったんだ……」

 仮面ライダー以外にも、悪と戦う存在がいたのか……
ソウゴは自分が知らない歴史に触れ、
驚きを隠せないでいた。
しかし、木梨猛の言葉には続きがあった。
彼は語り出す……

「ジョッカーを倒し、平和な世界が戻ったはずだった。
だが、それは仮初めのものに過ぎなかった……」

 ジョッカーが壊滅して数年後……
喫茶店のマスターとなり、穏やかな
日常を送っていた彼の元に、「彼ら」は現れた。

「……クォーツァー……!」

 そう、仮面ライダーBLACK RXの力を奪い、
さらにはシン、ZO、J、アマゾンズらの力までをも次々と手中に収めていった謎の組織・クォーツァー。
彼らは世界の歴史を自分たちの都合の良いように書き換えるつもりなのだ。
突如として現れ、街を破壊し始める彼らの目的を阻止するため、
木梨猛は再び立ち上がる。
しかし、改造人間として改造された肉体はとうに限界を迎えていた。

『さらばだ、紛い物の出来損ないッ!!』
『うわああああああーッ……』

 常磐SOUGOが変身した仮面ライダーバールクスによって、
木梨猛は倒されてしまった。
ジョッカーの改造人間である木梨猛。
そのジョッカーが壊滅すると言う事は彼の身体をメンテナンスする術も
失われてしまう事を意味する。
平和な生活を送る一方で、彼の身体機能は日に日に衰えていた。
そんな状態でバールクスと戦えばどうなるかなど目に見えて分かることだろう。

 かくして、木梨猛はこの牢獄へと投獄されたのであった。
仮面ライダーに認められなかった男と言う烙印を押されて……

「やっぱり……クォーツァーには勝てなかったんだね……」

 ソウゴは木梨猛の話を聞き終えると、彼に対して同情した。
改造人間となっても人類の自由と平和のために戦い続けたにも関わらず、
それでもクォーツァーを倒すことはできなかった。

「俺も、もう駄目だ……クォーツァーの王には手も足も出なかった……」

 ソウゴもまた、バールクスの前に敗北を喫してしまった身。
平成ライダーの力が一切通用しない相手に歯が立たず、絶望していた。

「俺もクォーツァーに利用されてただけだったんだ。
王様になるとか、ライダーになるとか、全部あいつらの計画の駒になる為だけに用意されたものだったんだ……」

 すべての平成ライダーの力を手にすると言う常磐SOUGOの企ての片棒を担ぐ形で利用されていただけに過ぎない。
王になるという夢さえも、本当はただの偽りだったのか……
常磐ソウゴと木梨猛。彼らの存在自体がイミテーション……つまりは偽物で意味の無いものなのか?
ならばなぜ自分はこの時代に生まれてきたんだろう。

「……諦めるのか?」
「えっ……!?」
「こんな所で終わりにする気かって聞いてんだぃよォウ!?」

 木梨猛の怒りに満ちた声が牢獄内に響き渡る。

「選ばれなかった者はごちゃまんといる! だがお前は選ばれたんだろう!?
仮面ライダーに! だったら最後までやり通せよ!」
「それだって、たまたまベルトを手に
してただけで……」
「偶然だろうと何だろうと、お前はライダーになったんだろ!?」

「……」
「だったらやれよ、王様なんだろ! 仮面ライダーになって世界を救うんだろ!?」
「でも、俺なんかじゃ無理だよ……俺はただの高校生だ……
改造人間でも、何でもない……普通の人間なんだ……」

「いいか、よく聞け。
俺は改造人間として戦う中で気づいた事がある」

木梨猛はソウゴに向かって言う。

「仮面ライダーとは、人々の希望の光だ」
どんなに強大な悪にも立ち向かう正義のヒーロー。それがライダーだ!」
俺は、仮面ライダーに憧れていた。
俺が幼い頃から、彼らは人知れず世界を守ってくれていたんだ。
俺も彼らのようになれたらと、必死こいて戦ってきた。
けど、結局俺は仮面ライダーにはなれずに、こうして牢屋の中で朽ち果てようとしている……
だけど、ソウゴ。お前ならできるはずだ。
今の仮面ライダーを背負っているのは……紛れもなく、お前だ」

「俺……が……?」
「そうだ、ソウゴ。お前がやるしかないんだ。
この腐った世界を、救えるのは……お前だけだ……ッ!!!」

「木梨さんの言う通りです」
「!! き、君は……生きて、生きていてくれたのか……!?」

 牢獄に現れたのは木梨猛に命を救われ、
彼の意志を継ぎ悪と戦った次世代の男……
志半ばで生死不明となっていたはずの青年であった。

「木梨さんに救われたこの命、ようやく恩を返せる時が来ましたね。あ、とォーウッ!!」

ソウゴと木梨猛の牢屋の扉を破壊し、
囚われの身となった彼らを救い出したのは、
木梨猛と同じく平成の時代を駆け抜けた戦士であった。

「さあ、今の内に脱出しましょう!」

 彼はソウゴと木梨猛を逃がすために脱獄の手助けをしてくれるようだ。
ソウゴは心強い味方を得た事に安堵した。
しかし、まだピンチは終わってはいなかった。

「脱獄者だーッ!!」

 見張りをしていた兵士が二人を見つけて叫びだす。

「どぉうえぇーいッ!!」

 木梨猛の飛び蹴りが兵士に炸裂し、彼を気絶させた。

「ぐわーッ!!」
「まだまだ打点高いすね、木梨さん!」

「ふふ、これぐらい朝飯前さ……さあ行くぞォウ! 
びぃいいいやぉおおおおーゥッ!!」

 木梨猛の掛け声と共に3人は走り出す。
クォーツァー・パレス全体に警報音が鳴り響く中、彼らは脱出を決行した。

「!? な、何!? 見つかった!?」

 パレス内に潜入していた心の怪盗団と承太郎たちは突然の異変に驚き戸惑っていた。

「貴様、もしや……!」

 フォックスは真っ先にスウォルツを
睨みつける。
しかし当の本人は焦るどころか余裕の表情を浮かべている。

「恐らく、脱獄者が逃げ出したのだろう」
「脱獄者……もしやソウゴか!?」

22人目

【君の為だけに隕石が堕ちてくる】

「では、改めておさらいするがブラフマンとリグレットあの二人が協力すると本当に強いということが分かった」

「おっかしいな、本来ならそんな訳ねぇのにそうはならんやろ」

「なっとるやろうがい!!」

ブラフマンとリグレットの情報を洗い直す3人
そんな中GVは地面に手を当てて少し電気を流す

「どう?GV」

「・・・この世界は電脳なんだよね?感情・・・みたいな何かで再構築をされているみたい?」

「1度破壊されたらしい世界だ、何が起こっても不思議じゃないな」

「んー・・・あ、ならば!ここは1発ドカンとやるしかないよねぇ?」

何故か先程から夢美がずっとニコニコと笑っているのだ、よく分からんがこれがコイツのテンションということらしい。

「おい待て何やろうとしているんだ」

「え?もちろんドカンと1発・・・」

「まさか・・・」

「そのまさかさ!」

既に発火させた大量の爆弾を抱えた夢美と雪がリドゥの興玉駅を爆発させていく

「あ」

「ヒャッハー!サーバー強度チェックだぁ!!」

「いええええええええええええええい!」

2人は次々と周りを爆破させて街を破壊させていく

「夢美と雪って・・・」

「すまないな…おい!夢美!雪!ここゲームの世界だろ!データが壊れたらどうするんだよ!!」


「おい、なにやってんだよ」


突然のことにピタッと止まる2人、しかし1度起爆した爆弾が止まることは無いため最後の爆弾を投げる

「あれ?ムーくんじゃーん、猫被りやめたんだね」

「うるせぇよ、てかお前初対面だろ」

「そうね、でも君は楽士でしょ?」

「ああそうだよ、それがどうしたんだよ」

絶妙な間が少し続いた後気がついた

「なんで、楽士だって知って」

その後の記憶が俺には無かった

「おいいいいいいいい何してんだバカァァァァァ!?」

「だって、やるしかないと思った・・・拳で」

「なんだか変じゃないか?モルフォ分かるかい?」

「平常運転….みたい?」

さっきっから妙な行動しかとっていない夢美に対して戸惑っていた太陽とGV
モルフォ的に夢美は平常運転らしい

「ん。アース君は絶対やらない手だよ、今やらなきゃね」

目覚めていたら、俺は電柱に縛られていた。
え、なにこれ、縛り方がキツい
何が起こったのか分からないがここに来てからと言うもの酷い目にあってないか?

「・・・それで、アンタえーと大丈夫か?それとどっから来た?あ、意識とか戻ったか?」

「え、あ、縛りなキツイのと・・・普通に移動してただけで・・・そしたら爆発音が聞こえてきてここに来たってわけで」

赤い男がいきなりの質問攻めし続けてきて困惑しているが頭と視界を取り戻しつつこの男が言ってることの要点だけを順番にに答えていく
そして、次に口を開いたのは女だった

「へぇー、まあ好都合よね。ねぇ、ムー君?私達をエピメテウスの塔に連れて行ってくれたら私達でブラフマンの対処とついでにリグレットの首を門にさらs」

「夢美、そこまでだ!何があったのかは知らないがそれ以上はダメだ!」

「(この女・・・やべーやつじゃねぇか…)」

恐怖はしなかったってよりむしろガチでドン引きしていたムーくん、過激思想の女の発言を青い男が止めてくれなかったら危なかった気がする…
それと、なんで捕まったのかさっぱり分からないが

「(コイツらがブラフマンとリグレットを対処してくれるなら願ってもいない気がする)」

「・・・ん"ん"どうかな?最高の条件とは言わないけど」

「でもな、オブリガードの楽士ぐらいしか」

「ああ〜そこは大丈夫。魔法(物理)があるから」

「え?」

はぁ?魔法?何言ってやがるんだ、コイツ

「危ないところだった、ひょっとしたら最悪の条件になるところだったよ」

「夢美…我々はあくまで殺すことではなくブラフマンとリグレットとやらを止めることが目的なのだよ」

ずっと黙っていた雪がやっとこさ口を開く、静かだがどこか貫禄をある声でゆっくりと言葉を紡ぐ

「うーん、でもな、雪さんや。新鮮な破壊と殺戮と絶望をお届けするのが月影家なんですよ」

「初めて聞いたんだが?」

それを聞いてすぐさまキョトンとする雪

「とりあえずこのピンクの髪の人どうするの?」

「あーなんか、ウザイから燃やすか」

「ちょちょ!!!ダメに決まってるだろ!?」

おい待て、赤い人までおかしくなってないか!?てか、誰と話したんだ?つーかここに、マトモな人はいないのか!?

「冗談だ」

「こんな時に限って嘘だろ・・・」

「あ、いや・・・気が紛れるといいかなって」

「不器用だね・・・」

ひょっとして他の楽士達よりも変人なのでは?なんて言葉が過ぎったが言わないでおく、めんどくさいから

「んーと!それでどうする?エピメテウスの塔に連れて行ってくれるの?」

「・・・断ったら?」

《ドォォォォォォォォン!》

「えっへへ。失敗失敗〜…次、ちゃんと顔に当てるね」

「はい・・・わかりました・・・(嘘だろ、拒否権とか無いのか?)」

"もし断ったら"という質問に大して隕石が1つ猛スピードで降ってきたしかも結構ギリギリスレスレのライン
それってもう脅迫…と実行した夢美以外全員がシンクロした
ムーくんはもう諦めたらしい

「諦めちゃったみたいね・・・」

「許されるわけじゃないが本当に本当に、申し訳ない」

青髪の男か女か分からないヤツが何故か代わりに謝っているが絶対許さないからな。

「すまないが、縛ったまま連行させてもらうぞ」

「わーったよ」

「拒否権無い理由はさ、見てみたくない?なんで、ブラフマンとリグレットがいるのかを…さ」

なぜ、拒否権がないのか
それは僕が楽士だからじゃないか?と思っていたけどそうじゃなかった。

「おいお前らブラフマンとリグレット・・・見たのかよ」

「私達がボコボコにしました(ピース)」※嘘です

「嘘つけ、雪が居なかったら危なかっただろ」

「嘘だ。リグレットはどうでもいいけどブラフマンが生きているだと」

「リグレットの扱い雑ぅ。まあどうよ、見に行ってみない?」

「・・・行くか、エピメテウスの塔」

「イトグチ・ミッケ!」

「・・・なんでも応用できるんだね、それ」

23人目

「蘇りし宿敵」

一方その頃、クォーツァーパレスの入口付近では、
「ん?なんだあれは?こっちに向かってくるぞ」
「え?」
一同の目に写ったもの……それはクォーツァーパレスに向かって移動しているアビダインだった。
「あれは……空飛ぶ船…?」
「もしかしてゾックス達?けどなんか見た目が違うよな…?」
「あの船は……アビダインか!」
「知ってるのか?」
「あぁ、あれの持ち主は俺たちの仲間だ!」
「てことは…あの船もソウゴを助けに来てくれたの?」
「わからない…だが、やつが来てくれたのは心強い…!」
「…ん?」
「どうした仗助?」
「いや、俺の見間違いかもしれないっすけど……あの船落ちてね?」
「「「……え?」」」
一同が再びアビダインを見ると、仗助の言うとおりアビダインは落下していってるのだ。
まるで燃料が尽きたシャトルのように。
「えぇ!?」
「ちょ待てよ!?あれ墜落してるじゃねえか!?」
「けど見た感じキズとかは付いてないよね?……もしかして燃料切れ?」
「そんな馬鹿な!?あいつがそんなミスするはずがない!第一、あの船に使われてる動力源のことを考えたらそんなことは起こるはずもねえ!」
そう、アビダインの動力源は高濃度プルトニウムブラックホール…もはや恒星と言っても過言ではない代物であり、そう簡単に燃料切れなんてことにはならない。
がしかし、今回はメサイア教団の芥志木の能力により動力エネルギーが逆流し流失してしまったのだ。
「っ!待て!船から誰か出てくるぞ!」
「あれは…!」
アビダインから飛び出した二人、それは孫悟空とトランクスだった。
「悟空だ!」
「あいつあの後全く見かけないと思ったら、アビィのやつと合流してたのか!」
スーパーサイヤ人になった悟空とトランクスが受け止めたのもあり、アビダインは近くの樹海に無事着陸した。

「……こうしちゃいられねえ!アビィと悟空を助けに行くぞ!」
「待てテリーマン!今我々が最優先でしないといけないのはソウゴの救出だ!」
「けどよ…!」
すると突然、クォーツァーパレスから警報音が鳴り響いた。
「な、なに!?」
「まさか……承太郎さん達の身になにかが…!?」



一方その頃、クォーツァーの拠点が間近のところで芥志木の手によって樹海に落ちてしまったアビダイン、CROSSHEROESはアビィがアビダインの緊急メンテナンスを行っている間、周囲の警戒を行っていた。
「クソ!あと少しでクォーツァーの拠点に着くところで…!」
「まずいわね……ソウゴの処刑が行われる時間がどんどん近づいているわ…!」
「そんな…!?早くしないと……」
「アビィ殿、あとどのぐらい時間掛かりますか?」
「そうだね……30分あれば終わると思うよ」
「30分か……」
「それまでになにも起こらないといいけど……」
「……そうはいかないようですね……」
「え?」
すると突然、樹海の草木の中から竜王軍のモンスター達とジオン族のモンスター達が現れた。
「っ!モンスター!?」
「このタイミングで出て来るなんて…!」
「この特異点は竜王が支配している……モンスターがいつどこから出てきてもおかしくはない…!」
そう、モンスター達『だけ』が出てくることはまだ彼らの想定内であった。
……しかし、今回はモンスター達『だけ』ではなかった……

「フハハハハハハッ!!」
「っ!?な、なんだ!?」
「この声……まさか!?」
そこへ現れたのは、バーサル騎士ガンダム達ガンダム族のような顔つきでありながら全身が黒く目が赤く、頭部には角が背中には翼が両肩からは触手が生え、更に触手の先端には炎の剣を備えている謎の存在だった。
「久しぶりだな、騎士ガンダム…!」
「馬鹿な…!?何故お前がここにいる!?サタンガンダム!」
「フッ、そう呼ばれた事もあったな…」
CROSSHEROESの前に現れた謎の存在、それはかつて騎士ガンダム達が倒した強敵、サタンガンダムことブラックドラゴンが進化し復活したネオブラックドラゴンだった。

24人目

「ミラvs悪魔将軍、ルール無用デスマッチ」

ミラの奇襲に驚愕する悪魔将軍へと、ミラージュマンが叫ぶ。
しかし、既にミラの拳が悪魔将軍の胸元を捉えていた。
円状に突風が吹き荒れ、凄まじい衝撃と共に身体が宙に浮く。
一拍の後、後方へ打ち出された。

「ぬぅ!?」

ガードレールを突き破り、勢いそのままにビルの側面へと叩きつけられる。
大きく抉られたビル、ガラガラと崩れ落ちるコンクリート片。
崩れた瓦礫が砂埃を上げ、辺りに立ち込める。

「何だ、何だ!?」
「人が暴れているぞ!?」

突然の騒動に、周囲の人々が蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑う。
暫くの後、残ったのは彼等だけだった。

「次は貴様だ。」

ミラは二度拳を構え、ミラージュマンへと向く。
それは、奴と同じ末路を辿らせてやろうという意思の表れ。
一撃必殺の姿勢。
全身を一度脱力させ切り、瞬間、膨張する筋肉。
弾かれる様に動いたミラの拳が、ミラージュマンへと伸び。

「次だと?」
「なっ!?」

直前で、土煙より伸びた鋼色の手がミラの拳を捉える。
驚愕し目を見開くミラに対し、姿を現した悪魔将軍は不愉快そうに眼を細め。

「私との戦いが、まだ続いている!」
「がぁっ!?」

全身を振るって、ミラを豪快に地面へと叩き付ける。
道路に蜘蛛の巣状の罅が走り、アスファルト片が舞い散った。
肺内の空気を残らず吐き出させられ、呼吸が止まるミラ。
勢いは止まらず、2度、3度と跳ねた後、体を捩って着地する。
姿勢を立て直したミラの顔には、軽い憤りの感情が浮かんでいた。

「貴様、生きていたか!」
「侮るな。奇襲には面を食らったが、あの程度でどうにかなる様な鍛え方はしていない。」

悪魔将軍の身体を見れば、傷一つ付いていない。
その頑強さに、ミラは驚きを通り越して呆れすら覚えていた。
両者が再び、向かい合う。

「今度は此方から行かせて貰おう。」
「抜かせ、今度こそ引導を渡してやる。」

同時に地を蹴り、正面衝突。
鈍い音が響き、互いの拳がぶつかり合う。
両者一歩も退かず。

「ぬぅうううううう!!」

ミラの瞳孔が見開かれる。
全身の筋肉が隆起し、膨れ上がる血管がミシミシと音を立てた。
しかし。

「お、圧されている…!」
「その程度では、この私には勝てんぞ?」

ミラの両手、いや全身諸共押し返される。
パワー勝負では、悪魔将軍に分があった。
明確な力の差に、汗が流れる。

「でぇやっ!」

ならばと機転を変えたミラは、片足を軸にして渾身の右足蹴りを顔面へと叩き込む。
肉を打つ鈍い音が甲高く鳴り響き。

「…ふっ。」
「なっ…!」

首を傾けるだけで受け切る悪魔将軍を見て、思わず冷や汗が浮かぶ。
だが既に遅い。
片足立ちでバランスを崩した隙は、悪魔将軍にとっては格好の的だった。

「地獄の急所封じ、その1。」

一切の踏ん張りが出来ないミラを、悪魔将軍は軽々と持ち上げ、首と片足をロック。
そして体勢を崩し無防備な腹へと、片膝立ち。

「大雪山落としっ!」
「がぁっ!!?」

豪打。
力を加えられた一点、ミラの背骨がアスファルトへと強烈に叩き付けられた。
骨が軋み、乾いた音が鳴る。
ミラの生涯で最大級を軽く上回る衝撃に、堪らず悲鳴を上げて吐血してしまう。
だが、ある種の衝撃を受けたのはミラだけでは無い。

「_ほう、まだ背中が生きているのか。」

悪魔将軍もまた、驚嘆の声を上げて一歩引く。
超人墓場にてアビスマンをも破った、大雪山落とし。
人体の急所を一つずつ確実に潰す筈のソレを受けて、尚健在な事実に面食らったのだ。

「ぐ、うぅっ!」
「只者では無い、か。」

ミラの口からは、今も苦悶の声が漏れている。
ダメージが無い訳では無い、ただ致命傷には遠い。
それどころか、再び立ち上がって見せている。
そんなミラの頑強さ、或いは異常なまでの生命力を前に、悪魔将軍は攻めあぐねていた。
いや、もっと言えば一種の興味すら湧いていたのだ。

「改めて問おう、貴様は何者だ?」

悪魔将軍の問い掛けに、ミラは答えない。
代わりに、口元の血を拭って構え直すのみ。
両者の視線が交差する。

「成程、ならば拳で語らおう。」
「はぁっ!」

先に動いたのはミラだった。
地面を蹴り、弾丸の如く迫る拳の嵐を前に、悪魔将軍は真っ向から迎え撃つ。
ミラの連打、悪魔将軍の迎撃。
腕が振られ、拳がぶつかり、蹴りが交わされる。
ミラの攻勢は止まらない。

「ぬぅっ!?」

悪魔将軍を、僅かにだが圧倒し始めている。
凄まじい速度のラッシュが、悪魔将軍のガードをすり抜け、彼の肉体を少しずつ傷付けていく。
ミラの攻撃速度は衰えない、加速していく。
じわじわと相手を削る戦法を得意とする悪魔将軍が、逆に少しずつ圧されている。
その事実に、ミラージュマンは震えた。

「何者なのだ、奴は、一体。」

更にミラの拳が重く、速くなっていく。
悪魔将軍もまた、拳を交えながらミラの強さを感じ取る。

(よもや、これ程とは。)

先刻までとは違う、油断の無いミラの動き。
悪魔将軍も、内心で彼を評価し始めていた。
ミラは強い、間違いなく。
だからこそ。

「むぅ…」
「っそこだ!」

悪魔将軍が後退り、膝を付く。
すかさず深く踏み込み、拳を振り上げる。
隙を逃す程、ミラは甘くなく。

「掛かったな。」
「なっ」

悪魔はもっと甘くない。
一瞬にしてミラの視界から悪魔将軍が消え、同時に腹部から背中へと衝撃が走る。
膝を付いた様に見えて、実の内タックルの予備動作だった。

「がぁっあっ…!?」
「急所封じ、効いておらん訳ではないようだな。」

突き抜ける衝撃によって、先の大雪山落としを受けた背中から血飛沫が舞う。
全身から力が失われ、地面に倒れ伏すミラの頭上より、影が差す。
激痛に喘ぎながらも、ミラは顔を上げんとして、腕を掴まれる。
他でもない、悪魔将軍にだ。

「貴様は、実に強かった。」

ミラの目が見開かれる。
悪魔将軍の言葉にか、或いは称える様な腕使いからか。
だが、次の瞬間に一気に持ち上げられる。

「出来れば別の形で戦いたかったが、ここで躓く訳にはいかんのだ。」

抵抗しようとするミラであったが、上手く力が入らない。
そんな彼に悪魔将軍は淡々と告げ、そのままジャイアントスイングに移る。
勢いを付けた所で上へと放り投げ、そして高らかに叫ぶ。

「私の奥義を以てこの戦いを終わらせよう_」

同時に自身も跳躍。
無防備なミラの首へ、足を掛ける_

「_ちょっとミラ!?しっかりなさい!」

寸前、横合いからミラが攫われ、足は空を切る。
振り向けば、そこにはミラを抱えるトワの姿。
どうやら、トワの用事が済んだらしい。

「全く。悪魔将軍、キン肉マンに敗れたと聞いたけど、侮れないものね。」
「此方の台詞だな、よもやこれ程の戦士を用意してるとは。」
「当然よ、ミラは私の最高傑作だもの。」

張り詰めた空気の中、トワは杖を振るう。
何をする気かと身構えるも、次の瞬間、トワ達の姿が消える。
最初の様な気配は、もう感じない。

「…逃げられたか。」

そう悟った悪魔将軍が、静かに息を吐いた。

「ミラージュマン、急ぐ必要が出てきた。」

25人目

「悪夢再来!! バーサル騎士ガンダムVSネオブラックドラゴン」

 緊急メンテナンスを強いられたアビダイン隊の前に現れた、
バーサル騎士ガンダムの宿敵、ネオブラックドラゴン。
その威容と威圧感が、CROSS HEROESの面々に脅威をもたらす。

「な、何だあいつは……物凄い魔力を漂わせている……! ガンダムにも見えるが……」
「奴はスタ・ドアカ・ワールドを支配していた魔王……あの時の決戦で
確かに死んだはず……」

 騎士ガンダムがCROSS HEROESと出会う前……
スダ・ドアカ・ワールドを恐怖の底に叩き落としたサタンガンダム討伐の使命を帯びた
騎士ガンダムは霞の鎧、力の盾、炎の剣……伝説の三種の神器を纏った
「フルアーマー騎士ガンダム」となり、
仲間たちと力を合わせた末にブラックドラゴンを完全に滅したはずだった。

『これで終わりだァーッ!!』
『ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおッ……!!』

 炎の剣をブラックドラゴンに突き立てたまま、諸共にマグマの火口の中へと
落ちていったフルアーマー騎士ガンダム……

『我は滅びぬ……必ずや蘇り、世界を……貴様らを絶望の底に叩き落としてやる!』

 呪いの言葉と共に、マグマに飲み込まれたブラックドラゴン……
騎士ガンダムは何とか生還したものの、その代償として炎の剣は失われたのだった。

「ぬううううううううんッ!!」

 ネオブラックドラゴンが赤熱化した尻尾を鞭のように振り回すと、
強烈な衝撃波と熱風が発生し樹海が吹き飛んだ。

「っ……!」
「なんて威力の技なんだ……!」
「あれは……炎の剣……!!」

 バーサル騎士ガンダムはネオブラックドラゴンの尻尾の先端に埋め込まれた、
かつての炎の剣を見て驚愕していた。

「炎の剣を自らの身に取り込んだと言うのか……」
「フハハハハハ、皮肉なものよな。我を一度は滅ぼせし炎の剣が、
今やこの身に溢れんばかりの力を与えておるのだ!」

 そう、ネオブラックドラゴンは炎の剣を取り込む事により、
不死身の身体と驚異的な戦闘力を手に入れたのだ。

「どうする? クォーツァーの拠点はもう目の前だぜ!」
「今から引き返すとしても、タイムリミットまでにソウゴ君を助けられるか
どうかわからない!」

「皆の者、ネオブラックドラゴンとモンスター達は私に任せ、
貴公らはクォーツァーの拠点に急げ! もはや一刻の猶予も無い」
「ですが……!」
「騎士ガンダムさん! 一人であの数のモンスター達と戦うのは
いくらなんでも無茶ですよ!」
「一人ではないさ」

 バーサル騎士ガンダムに続き、アルガス騎士団の面々も口を開く。

「俺たちもいるぜ」
「ソウゴ殿の事は、貴方達に託します」
「みんな……」

「……わかった! 行くぞお前ら!」
「おう!」

 CROSS HEROESは一斉にクォーツァーの拠点へ駆け出した。

「させるものか! 貴様ら全員ここで始末してくれるわぁ!」
「キシャアアアアッ……」

 ネオブラックドラゴンの号令で一斉に襲いかかってくるモンスター達。

「どけええええええッ!! ゴムゴムのォォォォォォッ……!! 
JET銃乱打(ガトリング)ゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 ギア2状態のルフィがモンスター達を殴り飛ばしながら突破していく。

「グギャアアアアアアアッ……」

「よし、行くぞ!」

 ライドストライカーに跨ったゲイツが先陣を切って走り出し、
モンスターたちを蹴散らして道を作る。

「ずああああああああああありゃッ!!」

 界王拳を発動させた悟空が、さらに超スピードで敵をなぎ倒していく。

「ええい、小癪な! 好きにさせると……」
「せえええええええええいやあああああああああああああああああッ!!」

 CROSS HEROESを追撃しようとするネオブラックドラゴンに、
バーサル騎士ガンダムの兜割りが炸裂した。
咄嗟に尻尾の先端に埋め込まれた炎の剣で防いだものの、そのままネオブラックドラゴンは大きく後退させられる。

「ぬううっ、貴様ァ……!!」
「ネオブラックドラゴン! 邪魔はさせない! お前が蘇ったと言うのなら、
私はもう一度お前を倒すまでだ!!」
「騎士ガンダム……やはり貴様だけは……!」

 バーサル騎士ガンダムとネオブラックドラゴンは互いに睨み合い、再び激突を開始した。

「消えろ騎士ガンダム!! 我の目の前からあああああああああああああああッ!!」
「それはこちらの台詞だ! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

26人目

「生を賛歌する者達」

特異点に位置するルイーダの酒場、その一角。

「ハーッハッハッハッハ!ラーメンが美味いわ!」
「お主は生前から相変わらずよな、全く。」

三人の大男が、何でもないテーブル席にて、何事かと思わせる豪勢な笑いを上げていた。
その一人、蒼い肌にビスの打ち込まれた鉄を纏った男は、ドクターボンベだ。

「一度は死のうとも、やはりラーメンは醤油じゃの!」
「せっかく蘇ったんじゃ、たまには味噌も食わんか、味噌を。」
「いいや、ラーメンは醤油に限るわい!醤油の風味が一番じゃ!」

豪快にラーメンを啜る男にボンベは苦言を呈しながらも、眉を顰めて笑うだけでそれ以上は追求しない。
幾年積もっても変わらぬ男を前に、ただただ安堵するのみだ。

「蘇ってもその頑固さは変わらん様じゃの、ある意味安心したわい。」
「ズラァ、何だかおいらもラーメンを食いたくなってきたズラ。」

その対面では、全身を包帯で覆うミイラの様な大男が、粥を飲んでいた。
火傷の跡があちこちに見えるこの男は、誰あろうジェロニモである。

「貴様はまだ要安静じゃわい!全く、全身火傷なぞしおって!」
「ズラァ…」
「酒場に粥とミルクがあったから良かったものの、無ければどうなっていたものか…」

テリーマン達が先行した後の事だ。
全身に火傷を負ったジェロニモの容態を安定させる為、ドクターボンベは周囲の散策に出ていた。
何か消化に良く、かつ栄養になる物を食べさせなければならないからだ。
そこで見つけたのがルイーダの酒場である。
訪れてみたところ、中々に品揃えが良い上、料理も美味い。
これ幸いとばかりに準備を整え、ジェロニモの元へ戻る最中、彼は懐かしい気配を感じた。
ソレが今、目の前でラーメンを啜っている男である。

「しっかし久しぶりよのう、ボンベよ。」
「何が久しぶりじゃわい、超人墓場で散々顔を合わせたろうに。」
「現世で、という事じゃわい!」
「ふん、ここが現世と言えるかは怪しいがな。」

そう言ってボンベは、周囲を見渡す。
ここは特異点、現世とは隔絶された異次元にある場所である。
この場所は、あらゆる世界との接点でもある。
例えば関わりの無い筈の世界が交わったり、また別の世界に飛ばされたりなど、可能性は無数に存在する。
そんな場所だからこそ、様々な者が迷い込むのだ。

「私にとっては超人墓場以外は現世も同じよ、あそこはチェス位しか娯楽が無いからの。何より楽しくないわい。」
「そこは同意見じゃな、死んでから無為に働くなぞ御免被るわい。」

思い浮かべるのは、墓守鬼の目を盗んでチェス盤をする日々。
回想するチョイスとしては中々にシュールな光景だが、娯楽の一つもまともに無い超人墓場においては、本人達は真剣だ。
閑話休題

「しかし、酒場なんぞでお前さんの顔を見る事になるとは思わなかったぞ。」
「言うな、事情があっての事じゃ。」

ドクターボンベは、その性格故、あまり周囲に馴染まない男だ。
それは本人も重々承知している。
そんな男が酒場という人との憩いの場に顔を出している事実は、この男にとってからかい甲斐のある事らしい。
愉快気味に笑う男を前に、ボンベは苦笑するしかない。

「超人墓場が崩壊した序でに散歩に出たらこやつ等を見つけて、そこから流れで来たに過ぎん。」

実際、この酒場にはボンベもジェロニモの治療の為、やむなく訪れたに過ぎない。
そこで初めて、男の興味がジェロニモへと移る。

「しかしジェロニモよ、何があってこの世界に来たのじゃ?」
「ズラァ、実は完璧超人と事を構える事態になったんだズラ。一言では言い難いけんども、訳合って超人墓場を目指してたズラ。」
「その様子じゃと、完璧超人と超人墓場の関係について知っている様じゃな。」
「という事は、貴方も…?」

彼もまた、完璧超人と超人墓場、及び超人閻魔とストロング・ザ・武道の関係に勘付いていたのだ。
うむ、と肯定した所に、ボンベが口を挟む。

「その件じゃがな、つい先程他の正義超人達に会ってきたわ。」
「何?ジェロニモの他にもいるのか?」
「あぁ、テリーマン達だ。キン肉マンも居るらしい。」
「なんと…!」

寝耳に水とはこの事かと、ボンベの言葉に思わず身を乗り出す男。
この男が驚くのも無理はないと、その勢いに気圧されながらもボンベは言葉を続ける。

「聞けば、悪魔超人が完璧超人粛清に動いていると聞いての。正義超人は止めに入る立場になるが、恐らくただ事では済まんだろう。」
「こやつの様に、か。ハーッハッハッハッハ!」
「笑い事じゃないですたい!」

豪快に笑う男に対し、ジェロニモは涙目で抗議の声を上げる。
混ざり合って喧騒の声となったソレは、酒場中に木霊し。

「_すみません、余り騒ぎを起こされては…」
「む、済まぬ。」
「あっ、ごめんズラ…」

当然ながら、酒場の主であるルイーダから注意を受ける事になる。
いい年をした大人が年頃の女性に起こられる様は、ガタイの良い大男達が彼女よりも小さく見える錯覚を見せた。

「済まないな、こやつ等が迷惑をかけた。」
「いえ、分かってくれれば…」

説教も程々に切り上げようとするルイーダに、ボンベが言葉を続ける。

「代わりと言うのも何だが、お主が抱えている患者を見るとしよう。」
「えっ?何故それを…」

彼女が抱える患者。
その存在を初対面の相手に見抜かれた事に、驚きを隠せない。

「簡単な事よ、儂は医者じゃ。」

ボンベは杖で床の一点を差す。
木目に紛れて見えにくいが、よく見ればうっすらと赤い染みの様な物が見える。

「すぐ拭いただろうから見えにくいが、血の跡じゃろう?儂の目は誤魔化せんよ。」
「…はい、その通りです。先程、少女が店先に倒れてて…」
「成る程の、診させて貰おうか。」

そう言って、ボンベは席を後にし、カウンターの奥へと姿を消した。

「ズラァ、これからどうなるやら…」
「何、悪い様にはならん。奴の医者の腕はピカイチじゃ、それだけは保証する。」

27人目

「幕間:影の化身 ゼクシオン」

 そのころ、クォーツァー拠点前にて

「おうおう、激しくやってらぁ。渡りに船の次は何だ、二兎を追うものが二兎を得た、だったか?いずれにせよついてる。」

 芥志木が、己の幸運を歓喜していた。
 鼻歌交じりに、遠目に映る戦闘光景を見る。

「思い出した一石二鳥だ。あのデカいの、連中も始末させてくれるとはな。さて、ゼクシオンを迎えに行くとしよう。」

 そうして、芥は一つ深呼吸をする。
 そして足に己の力を籠め、目をつむる。

『我が同胞よ、来たれ____俺は此処にいるぞ、ゼクシオン。』

 そうして、彼は特異点のどこかにいるゼクシオンをここに呼ぼうと試みる。
 正確には、自身の位置を伝えることで瞬間移動能力を持つゼクシオンを此処に要望としているのだ。

「来ましたよ。」
「おっ、なかなか早いな。」

 芥は多少驚きつつも、同志を迎えた。

 銀か紺色かもわからぬ色の、右目の隠れた髪型。
 どこか憂いを持った瞳には、妙な侮蔑を感じる。

 メサイア教団大司教7位「影の化身」 ゼクシオン。
 かつてはⅩⅢ機関の一員であった研究員。
「影歩む策士」の名を戴き、その策謀でソラたちを苦しめた存在でもある。

「で、お前にはどんな策が?」

 そういう芥の問いに対して、ゼクシオンはそっけなく返す。

「策を練る必要もないです。連中がクォーツァーの王を完全破壊した後に漁夫の利を悠々と取るだけで完結します。」
「それはそうだが、具体的には?まさかこのまま、あのSOUGOが倒されたところで俺達二人が出て戦闘、という訳にはいくまい。確実に袋たたきに遭うぞ。」

「それなんですが……時に芥同志、変装とか変身とか、コスプレとかの趣味は?」
「ないが。……だが、お前がやりたいことはよくわかった。そういやお前そういう能力持ってたな。」

 ゼクシオンは、他人に変身できる能力を持つ。
 かつて、それでソラに変身してリクを誅殺しようと試みたこともあった。

「大体やろうとしたことは分かった、変装は俺は無理だ。では予定通り指輪回収はお前に、周辺の警戒及び殲滅は俺がやっておこう。」
「変身するのは、周辺の見張り兵で十分でしょうか。」
「結構だ、その方がいい。むやみに将兵クラスに変身して怪しまれたらあとが面倒だしな。」

 計画を練り、2人は門の方角をむく。

「では行きますか。」

 そうして2人は、クォーツァーの拠点へと歩みを進めた。

28人目

「アナザーワールドよりの刺客!! 孫悟空VSボージャック!」

 バーサル騎士ガンダムとアルガス騎士団を残し、
CROSS HEROESは樹海の中を疾走する。

「おおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「!?」

 突如、上空から巨大なエネルギー弾が降り注ぐ。
悟空は飛び上がり、それを蹴り飛ばした。

「だあああああああああありゃッ!!」

 エネルギー弾が着弾した地点から、巨大な土煙が上がる。

「今のは……!!」
「ふっふっふ……」

「!? ボージャック……」

 ロンドンで悟飯と戦っていたと思われていたボージャックが、
この特異点に姿を現したのだ。彼もまた、ターレスやスラッグと同じく
アナザーワールドから呼び込まれた存在……

「おめえ! 悟飯はどうした!?」

 ボージャックがここにいると言う事は……
ロンドンに向かった悟飯の安否を危惧する悟空。

「あのガキの事か……お前、どことなくあいつに雰囲気が似ているな……
もしや、身内か?」
「そんなこたぁ聞いてねえ! 悟飯は無事なのかって聞いてんだ!!」

「心配するな、死んではいまい。あいつは磨けば光る原石だ……生かしておけば
もう少しは楽しめそうだったのでな、見逃してやった」
「本当だろうな!?」

「嘘は言ってないぜ? 俺の言う事が信じられないか?」
「くっ……!」
「だったら確かめればいいさ。生きてここから戻れれば、の話だがな……」

「みんな! あいつはオラが引き受けた! 早く先に行け!」
「しかし、悟空さん……!」

「いいから行ってくれ!! ソウゴを頼んだぞ!!」
「……わかりました!」
「よし、行くぞ!」

 ボージャックの相手を悟空に任せ、CROSS HEROESは更に速度を上げて
クォーツァーの拠点を目指す。
舞空術でボージャックと同じ高度にまで上昇する悟空……

「ボージャック……おめぇたぁ、直接やり合うんは初めてだったな……」
「ふふ、分かるぞ。真の力を眠らせたあの小僧よりは、今のお前と闘った方が面白そうだ」

「へへ、そうかい……!」
「ゆくぞッ!」

「はあああああああああっ!」

 二人は同時に跳び上がり、空中で何度もぶつかり合った。

「ずぁりゃあッ!」
「ふん、甘いわ!」

 悟空の回し蹴りを、軽くいなすボージャック。

「どぉうりゃッ!!」

 右腕で悟空の蹴りをガードし、それを押し退けると
同時に左の拳でカウンターパンチを叩き込む。

「ふッ……!!」

 紙一重でボージャックの拳をかわす悟空。一進一退の攻防……

「ほう、やるな」
「そっちこそな」

「ならば……これはどうする!」
「!?」

「だああああッ!!」

 次の瞬間、ボージャックがエネルギー弾を悟空目掛けて撃ち出した。

「ちぃッ!」

 咄嵯に身を翻し、何とかそれをかわす悟空。
しかし、エネルギー弾はカーブを描いて再度悟空に向かって飛んで来た。

「何ッ!?」

 気を解放し、超スピードで回避しようとするが、
エネルギー弾は尚も執拗に追跡してくる。

「しつっけえ!」
「ふはは、何処までも追い続けるぞ!」
「……だったら!」

 悟空は咄嵯にエネルギー弾の射線上に回り込んだ。

「受け止めてみせるさ!」
「バカが、避けなければ死ぬぞ!」
「へっ……!」

 悟空がニヤリと笑った直後、エネルギー弾が悟空の掌に直撃した。

「むううううんッ……!!」

 両手を使い、全身の力を使ってそのエネルギー弾を受け止める悟空。

「ぐぎぎ……」

 額に血管が浮き出るほどの力を込めて、何とか押し返そうとするが……

「ははは! 無駄だ、このまま吹き飛ばされるがいい!」

 ボージャックが更なる出力でエネルギー弾に気を込めると、
悟空の体がどんどん後方に押されていく。

「ぐぐぐ……!」
「ふはは! さらばだ!」

 ボージャックが勝利を確信した、その時だった。

「はああああああああああああ……!!」

 悟空の髪が金色に染まり、体中も同じく黄金色のオーラに包まれた。

「むう……!?」

 ボージャックの放ったエネルギー弾を悟空が両の拳で握り潰し、一瞬で霧散する。

「貴様もそれか……あの小僧も同じような事をやっていたな……」

 超サイヤ人に変身した悟空。
構え直し、鋭くなった視線でボージャックを真っ直ぐに睨みつける。

「さぁ……本番はここからだぜ」
「面白い……!! 全力で来い!」
「おおッ!」

 ボージャックとの第二ラウンドが開始され、激しい空中戦が巻き起こる。

「ひょう、派手にやってんな」
「急ぐぞ! クォーツァーの拠点はすぐそこだ!」
「はい!」

 樹海の中を行くCROSS HEROES。上空で繰り広げられている激闘の光景は、
彼らの視界にも当然入ってきていた。

 騎士ガンダム、アルガス騎士団、悟空……次々と強敵を引き受け、
仲間を先へと向かわせていく歴戦の戦士たち……果たしてソウゴ救出は間に合うか!?

29人目

《現在地…エピメテウスの塔》

「え?は、はい?ば・・・爆弾?ですか?」

「はい、爆弾です」

実はリドゥ内ならどこでも見られるリグレットは終始見ていた
何故か爆破される興玉駅、顔面を殴られるムーくん、どっからが降ってきた隕石、もはや説明しても疑われるのぐらい意味不明な光景を。
やっぱり困惑された

「しかし、ムーくんですか・・・楽士と見破られている以上人質にされることはないでしょうところでですね。ソイツらは一体何者なのですか?」

そっと振り向く

「あれ・・・いなくなってしまったか女神は気まぐれですね」

まあ、無理だろう。仮に生きていたとしてもこのリドゥには侵入不可能だ
なぜならヤツらには深い後悔などあるわけないのだから

一方、その頃・・・興玉駅では

ブラフマンの思惑通りには行かずシレッと生きていた異端者組と呼ばれた能力者組はここ"リドゥ"にいたのだった。

「とりあえず情報整理と作戦会議ぐらいはしとくか」

「それは それと して、夢美よ!ムーくんファンに怒られそうな勢いでヘイトを荒稼ぎするのは流石だぞ!」

「ふふふ、それ程でもありませんよ、雪さんや。つか、言い合いすると文字数制限的に尺的にも後、時間的にめちゃくちゃ困るから脅した方が早い気がした」

「おど……おい…おい!」

たったそれだけの為だけに全ての過程をぶち壊したというのかとめちゃくちゃ納得いかない顔をしているムーくんだったのだ・・・

「敵側の関係者らしいから人質作戦は無理そうだな、やはり守りながらか?」

「でも、このチーム絶対守りながら戦うなんて芸当出来ないわよ?」

「いや、雪は守りに長けているから出来るが・・・あーあれはやめた方がいいかもな」

「じゃあ、全員実質フルアタッカーってことでいいのかな・・・?」

"実質フルアタッカー"実は、そうである。
大体の考えがデバフを盛って殴ろうという感じなのである
このパーティー、ロルがアタッカー アタッカー アタッカー アタッカーしかいない
すなわち、他のロルが大変貴重である

「なあ、夢美」

「なにかな?」

「お前、クリアしてないがどこまで行った?そして、なぜ"エピメテウスの塔"を知っているんだ?」

「第4章までクリアしてるよ。知ってるとは言っても名前だけ多分ラスダンだよね?1部分からないクエストがあってちょっと見ちゃった」

「なるほどな・・・正直助かった」

彼女の証言からしてSwitchのセーブデータ内では進行速度的に第4章で止まっている。
つまり、あのブラフマンは"どこの時間軸"なのかであるが聞き取れた発言を思い出せるところまで思い返してみる

《回想中》

『立ちはだかって来るのか・・・!あの時の忌々しい帰宅部のように!』

『さあ、リグレット様!!リドゥをもう一度!!再びっ!!最構築しようじゃあありませんかっ!』

「思い返せば原因って私のSwitchだ…あーははっ 盗られたぁ しばらくゲーム出来ないや あーあ」

《回想終了》

多分ここら辺が1番分かりやすいかもしれない。
帰宅部とは一体どんなヤツらだったのかは今となっては分からないがこのリドゥは恐らくSwitchのセーブデータを利用して再構築されている可能性がある。
もし、データの上書きをされているならブラフマンとリグレットを倒せばこのセーブデータは破損する可能性があるのでは・・・?

「ゲームキャラをゲーム内以外で倒すことは、そのデータを破損させる行為になる….ということか」

「それでも、やるしかないよ」

「いいんだな?」

「もちろんだとも」

真っ直ぐ太陽の目を見る夢美は覚悟していた。

「・・・分かった。雪 GV モルフォ ムーくん 準備はいいか?」

「OK!!(突然のテリー・ボガードボイス)」

「うん、大丈夫だよ」

「ええ!いつでもいいわ!」

「(モルフォって誰だよ)」

「それじゃあ、ムーくん エピメテウスの塔を想像してくれるかな?」

「え、あ、分かった?」

よく分からないが言われた通りに思い浮かべ、夢美が地面に魔法陣を描き始めると同時に空から何か箱が降ってくる

「お、父さん、間に合ったようだな」

「フィールド変換専用起動端末、しかも1回使えるようにしてくれてるじゃん!」

「流石、必殺仕事人!」

「よし!GV、力を!」

GVは頷き魔法陣に雷撃を送った途端、青色に輝き始めその光に全員包まれた後、人影すら残っていなかった


《現在地…エピメテウスの塔 終着駅・停留所》


「ダメぽ」

転送直後、ぶっ倒れる夢美だった

「そりゃ、あんな魔力の消費の仕方をしたらそうなるわな。夢美の魔力回復待ちになりそうだ」

「馬鹿の一つ覚えな感覚で隕石とか呼ぶからだろ」

案の定、このチームで守りながら戦うことは不可能なので待機することになる。
別に切り込み隊長を行かせることも出来るっちゃできるが未知の場所なので無茶をさせる訳にはいかない

「ここが限界地点なんだね、しかし塔・・・」

「嫌な…思い出ね」

GVとモルフォは天に届くはど高い塔を見てあの戦いを思い出していた。
「あーと、そこは原作やれ!」
と、天の声の最後の抵抗が聞こえた気がする

「あのさ…我々一応帰宅部みたいな構成なんだよね、4人パーティだけど1人歌姫いるしさ」

「どこにいるんだよ、その歌姫とやらはさ」

「ムーくん見えてねぇの草」

「最初から見えてねぇよ」

喋るぐらいの体力は残してるのか・・・苦笑いするが本当に見えていないのだ、5人目の存在を

「・・・さて、この塔どうやって登るかな」

「僕は壁キック使えるからいいけど他のみんながそうとは言えないよね」

「GV、アンタの体力どうなってんだ・・・しかし、壁抜けとかあればよかったんだけどな」

「私にいい考えがある!」

「「そのセリフ、嫌な予感しかない」」

満場一致(約2名)で爆発すると想定したのだ。
GVとモルフォとムーくんは?マークを浮かべていた
そのセリフを言ったせいなのかなんだかヤケケソ感オーラを放った夢美の案とは・・・!?
(あれ、魔力スッカラカンなはずなのでは)

「ところでさ…お前ら3人にも後悔ってあるのか?」

ムーくんから突然の質問が届いたのだ。

「後悔…うーん、あ、大大大好きな人をもう一度殺しました!」
「俺の後悔は、もう振りきった」
「うっ……後悔……あっうっうっ…」

「聞いた俺がバカだったか」

「みんな、苦悩してるんだね・・・」

30人目

「Epilogue」

一方その頃、バーサル騎士ガンダム達はというと……

「ハァアアアッ!」
「グワァー!?」

「グルル…!」
「・・・」
「クッ…!まだこんなにいるのか…!」
アルガス騎士団は竜王軍とジオン族のモンスター達を次々と撃破しているが、敵が一向に減らない。
「これだけの数のモンスターを用意してくるとは……」
「恐らくだが、竜王とジークジオンは今回我々とアレク殿達CROSS HEROESをここで潰すつもりなのかもしれん…!」
「なに!?」
「しかし何故このタイミングで…?」
「わからない…だが彼らがソウゴ殿を助けにクォーツァーのところへ向かってる以上、ここで負けるわけにはいかない!」



「死ね!騎士ガンダム!」
ネオブラックドラゴンは頭部の両端から突き出た黄金の角『サタンホーン』の先端から電撃を放ちバーサル騎士ガンダムを攻撃する。
「ガハッ…!?つ、強い…!あの頃よりも確実に…!」
「どうした?その程度か?」
「クッ…だが!」
バーサル騎士ガンダムは電磁スピアーでネオブラックドラゴンを攻撃する。
「ほう…!中々やるではないか…!」
「あの頃よりも強くなったのは貴様だけではない!」
「クク…ハハハハハハ!いいぞ!それでこそ我が宿敵にふさわしい…!わざわざジークジオンの命令に従った甲斐があったわい…!」
「ジークジオンの命令だと!?」
「あぁそうだ!やつは復活したばかりのこの我をムーア界に召喚して命令して来たのだ!なんでも最終戦争(ラグナロク)とやらが始まる前に貴様らガンダム族と勇者アレク、そしてCROSS HEROES共を皆殺しにしてこいとな…!」
「ラグナロク…!?いったいなんなのだそれは!?」
「さぁな、だがもはやそんなことはどうでもいい!我のやることはただ1つ……騎士ガンダム!貴様をこの手で殺すことのみ!」



一方その頃、クォーツァーパレスの入口付近で待機している界人達はというと、
「アビィと悟空達、大丈夫か…?」
「まぁきっと大丈夫だろう……それよりも……」
「……やっぱりそろそろ突入した方がいいんじゃないっすか?承太郎さん達の身になにかあったかもしれませんし…」
「そうしたいのは山々だが……まだカルデアが来てない以上、俺たちだけでクォーツァーと戦うのは危険だぞ?」
「けどこのままずっと待ってるわけには…」
そんなこんな話していると……
「おーい!界人ー!ジュランー!ガオーン!大丈夫っすかー!?」
「ん?おい界人!ガオーン!あれマジーヌ達じゃね?」
「え?あ、本当だ!おーい!」
そこへアビダインからやってきたゲイツ達が合流した。
「皆さん、無事で本当に良かったです!」
「うん!……あれ?セッちゃんはいないの?」
「え、てっきり界人達と一緒にいるものだと思ってたんすけど……」
「まさか……セッちゃんだけまだどこかで迷子になってるんじゃ……!?」
「えぇ!?どどどどうしよう!?」
「落ち着いてください!きっとセッちゃんも無事なはずです!そう信じましょう!」
「う、うん……」

「カナディマン!それにお前は……バッファローマン!?何故ここに!?」
「いろいろあってな、少なくとも今は味方だ」

「……久しぶりだな、門矢士」
「あぁ、お前達もソウゴを助けに来たのか」
「当たり前だ、ソウゴは必ず助け出す…!そしてクォーツァーの野望も止めてみせる…!」
「ふっ……なら話は早いな……よし、俺たちも中に突入するぞ」
「っ!?いいのか!?」
「あぁ、カルデアを待とうにもソウゴが処刑される時間が迫ってる以上、これ以上待つのは逆に危険だ。
むしろカルデアが合流するまでの時間を稼ぐという意味でもさっさと中に入って承太郎達と合流しつつソウゴの救出を行った方がいい」
「なるほど……確かにそうかもしれねえな……」
「よーし…じゃあ早速行こうよ!」
「あぁ!」
(待ってろよソウゴ……必ず助け出してやるからな…!)
(クォーツァー…!お前達の野望は、俺たちが止めてみせる!)
こうして合流した一同はクォーツァーパレスに突入した。