工藤新一の弟はブラコンである。

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  • ミステリー
  • 二次創作
1人目

俺は知っている。ここが漫画の世界だと言う事を。なんせ「新一、蒼真早くしないと遅刻するわよ!」と幼なじみの毛利蘭が声をかけてきたからな。
俺の名前は工藤蒼真、工藤新一の2歳年下の弟として転生したようだ。
前世の記憶は物心ついた時からあった。
そしてこの世界が前世で大好きだった漫画『名探偵コナン』だと知った時の衝撃といったら……。
だが主人公の弟になってしまったからこれから事件に巻き込まれる事に……!? とか思っていたのだが、意外にも平穏に暮らしている。
あれ?トロピカルランドにデート行くのいつだっけ?? …………まぁいいか!平和が一番!! そんな事を思いながら今日も学校へ向かい、授業を受けるのだった。

そして放課後になり、部活をしていない俺は真っ直ぐ家に帰る訳ではなく、帝丹高校に来ていた。目的はただ一つ、兄貴と一緒に帰るためだ。
校門の前で待っているとすぐに見慣れた後ろ姿を見つけて駆け寄る。
「兄ちゃん!!」
そう呼べば兄ちゃんは振り返り、「おー、蒼真」と笑顔を見せてくれた。
やっぱりイケメンだな~と思いつつ隣に並ぶ。

2人目

「兄ちゃん今日もいっしょに帰ろうぜ!」
「ああいいぜ!」
女子が振り返る中を2人で歩き出す。
それにしてもガチで学ランの兄ちゃんは最高にカッコイイ!許されるなら腕を組んで歩きたいくらいだ。
そんな事を考えたら興奮で顔が真っ赤になった・・・。
「何だよもぞもぞして?」
「何でもないってば・・・。」
兄ちゃんはくすっと笑った。・・・うん、いつも通り何の変哲もない最高の帰宅風景である。
そうそうこの学ランは学ランフェチの俺が無理やり着てもらっているものだ。男と言えば学ラン!ブレザーなんて邪道だ!つうことでブレザーは俺が隠してやったのだ!!

でも家の近くの河原に差し掛かった時、突然兄ちゃんが立ち止まった。
どうしたのかと思って顔を見ると、なんだか険しい表情をしている。
「兄ちゃん?」
「・・・蒼真、お前なんか隠してる事あるだろ?」
・・・ギクッとした。
「隠してることってなんだよ?変だぜ兄ちゃん?」
「しらばっくれるな!兄ちゃんをだませるなんて思うなよ!」
真っすぐに見つめてくる兄ちゃんの顔は真剣そのものだった。
俺の秘密がまさかバレるなんて思わなかったし、今までこんな風に問い詰められたことなかったのに・・・さすが工藤新一・・・鋭い。
どうしようかと俺は一瞬迷った。なにかに気づいたんだとは思うけど全てを知っているわけじゃないことはなんとなくわかる。俺も工藤新一の弟だし。でもここは素直に白状した方がいいだろう。だって大好きな兄ちゃんを怒らせたくないし。
「実は・・・。」
俺は転生者で前世の記憶がある事を話した。
すると案の定、兄ちゃんは驚いていたけど、どこか納得しているような様子でもあった。
「だから時々変なこと言ってたんだな。」
「ごめん、気持ち悪いよね。」
「いや、別に気にすんなって。」
そう言って優しく頭を撫でてくれる兄ちゃん。
うぅ・・・優しい。本当にイケメン過ぎて自慢の兄ちゃんだよ・・・。
「それにしてもお前が外の人間だったなんてな。てっきり漫画世界のスピンオフ用キャラかと思ってたのにな。」
しみじみと呟く兄ちゃんの言葉に俺は首を傾げた。
「え?漫画世界ってこと兄ちゃんも知ってたの?」
「当たり前だろ。俺もここへ来る前に小さい頃からずっと読んでたんだし」
ガチで?俺が転生者って事は気付いてなかったみたいだけど、まさか兄ちゃんまで転生者で原作知識を持ってるとは。
流石兄ちゃんだな!と思っていたその時、突然何かを思い出したように兄ちゃんが目を見開いた。
「そうだ、ちょっと寄り道しようぜ。」
「え、どこに?」
「いいから来いって。」
言われるままに着いて行けばそこはポアロという喫茶店の前だった。
「ここって確か毛利探偵事務所の近くじゃ・・・。」
「正解。よく覚えてるな」
そりゃまぁ、ここで毛利小五郎が出てくるんだよな?とか思ってましたからね。
そんな事を考えていれば中に入っていく兄ちゃん。慌てて後を追う。
店内には客の姿はなく、マスターらしき人が1人いるだけだった。
そしてその人は俺たちを見て微笑むと口を開いた。
「こんにちは、新一くんに蒼真くん。」
「安室さん!」
そう、この人こそ『名探偵コナン』に登場する人物であり、組織の一員でもあるバーボンこと降谷零なのだ。
正直、初めて見た時は驚いた。見た目は完全にアニメと同じだし。しかも名前も同じなんだもん。
まぁそんな事より、なんでここにいるのかの方が驚きなんだけど!
「どうしてここに?」
そう訊ねると、安室さんは少し困ったような笑みを浮かべた。
「実はバイトを始めたんだ。」
「そうなんですか!?」
「ああ。と言ってもまだ始めたばかりだけどね。」
そう言いながらカウンターの方へ歩いて行き、「今のうちに休憩を貰ってくるよ。」と奥へと消えていった。
「兄ちゃん、もしかして最初から知ってたんじゃ・・・。」
「さぁ、どうだろうな。」
はぐらかすように笑う兄ちゃんを軽く睨んでおいた。
「お待たせ。はいこれ、良かったら食べて。」
戻ってきた安室さんから手渡されたのはショートケーキだった。
「ありがとうございます!いただきます。」
フォークを使って口に運べば濃厚な味が広がる。美味しい!
夢中で食べ進めていると、ふと視線を感じて顔を上げた。
すると兄ちゃんと目が合う。そして何故かニヤリと笑って言った。
「蒼真、ついてるぞ。」
そう言って自分の唇の端をトントンと指差す兄ちゃん。
「え、嘘!?」
慌てて手で拭おうとすると、それより先に兄ちゃんの手が伸びてきて親指で優しく擦られる。
「ほら、取れた。」
そう言って見せてきた兄ちゃんの親指にはクリームがついていた。
それをそのままパクっと食べた兄ちゃんは満足そうに微笑んでいる。・・・・・・いや待て。これは完全にからかわれただけだ。恥ずかしすぎる!
「あ、兄ちゃんのバカー!!」
真っ赤になった顔を見られないよう俯きながら叫ぶと、兄ちゃんは楽しそうに笑い声をあげた。
ちくしょう・・・兄ちゃんめ・・・興奮しちまったじゃないか!