プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:1

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1人目

「Prologue」

 CROSS HEROES結成当時から幾度となく戦ってきた
歴史の管理者「クォーツァー」。
いよいよ彼らとの最終決戦の時がやって来た。

【VSバールクス分身体編】

 フォームチェンジの応酬で、一進一退の攻防を繰り広げるRXとバールクス分身体。
しかし、所詮はRXの力を模倣しただけの紛い物。
力とは、それを操る者の心によって輝きを増す。力に溺れた者に勝ち目は無い。
戦いの中、RXは必殺のリボルクラッシュでバールクス分身体の心ごと
その凶刃を砕き折り、そして見事な勝利を飾ったのだった。

 マシュの盾による守りと攻めを物ともしない戦い方でカルデア陣営を苦しめる
バールクス分身体。ソロモンの力を悪用する者に、決して負ける事は許されない! 
と奮闘する立香とマシュ。そこにダ・ヴィンチから、
カルデアと特異点を繋ぐパスの準備が完了したとの知らせが入った。
ライダー金時のアシストを受け、立香はカルデアから助っ人の英霊たちを召喚!

 第六天魔王、織田信長。
直死の魔眼使い、両儀式。
千年城の月姫、アルクェイド・ブリュンスタッド。
そして騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。

 周囲を取り囲むカッシーン軍団を万夫不当のサーヴァントたちが蹴散らしていく。
最後に残されたバールクス分身体も、アルトリアの宝具「約束された勝利の剣」にて
消滅させられて行った。
王とは、民を導き守る者なり。王とは、誰よりも強く気高いものなり――

 仮面ノリダー。「平成」と言うまとまりのない醜き時代を象徴する存在であると
バールクス分身体は弾劾した。
文明も違う。思想も違う。生きる時代も世界も違う。
何一つ共通点のない者達が手を組み、力を合わせる姿など異様。
そして、その歪みこそがこの世界の秩序を破壊し始めた原因だと説くバールクス。
やがて世界はラグナロクによって滅亡する事になるであろう……と。

 自分たちの存在そのものが、世界崩壊の危機を生んでいるのだという事実を
ノリダーは真っ向から対峙する。
己の存在を否定されようとも揺るがぬ決意をもって正義を成す。
それは人の意志が織り成す輝きであるからだ。
たとえ何度敗れようが諦める事はない。そして愛する者を守るために戦い続ける。
そのためにノリダーは再び戦士として蘇ったのだ。
バールクス分身体の時間操作攻撃をも打ち破り、ノリダーが最後の分身体を撃破する。
残るは、バールクスの本体。分身体を全滅させた一行は
急ぎ仮面ライダージオウ/常磐ソウゴを援護すべく現場へ急行するのであった……

【ルパン三世編】原文:AMIDANTさん

 メサイア教団が裏で糸を引く中、ルパン捜索を行う銭形警部。
だが彼等の予想を裏切って、銭形は東京の惨状に疑問を抱き、
嘗ての悪徳刑事からメサイア教団の存在と、警視庁の腐敗に辿り着く。
誰であろうと悪党にはワッパを掛ける、その信条を胸に銭形警部は警視庁制圧に乗り出した。

 怒涛の電撃戦の末、遂には警視庁総監まで手錠を掛けた。
だが、最後に残っていたメサイア教団員が存在しなかった世界へと逃亡する際に巻き込まれてしまう。
果たして、銭形警部の行方は如何に?
 一方、東京から姿を消していたルパンと次元は、何とアビダインに紛れ特異点入りを果たしていた。
彼等の思惑は、一体?

【芥志木決戦編】原文:霧雨さん

 ドクター・ボンベの治療を受け、
その命を引き換えにとでも言わんばかりに
メサイア教団大司教芥志木に最後の突撃を行った
『超高校級の剣術家』辺古山ペコ。
腹部に得物たる高周波ブレードを突き刺すも、彼の能力『魂線斗霊』の力によりとどめを刺すには至らない。
芥も最後の力を振り絞り、彼女の血液を逆流させて抹殺しようとする。

 お互いの意志と意思がぶつかり合うも、
最後には芥を撫で斬りにして遂に抹殺に成功した。
しかしその代償も高く、芥志木を殺すことに全てに使った彼女は
そのまま斃れ伏すのだった。

 戦いに燃やした命はもう風前の灯。ルクソードによって運搬されるが、
果たして彼女は助かるのだろうか_____?

【ゼクシオンの奇襲編】原文:霧雨さん

 常磐SOUGO、即ち仮面ライダーバールクスとの決戦。
彼はグランドライドウォッチとソロモンの指輪を使い
自身の巨大化と液状化に成功し、CROSS HEROESを一気に窮地に追い詰める。

 絶体絶命の危機に追い討ちをかけるように、カッシーンもやってきてしまう。
しかし。そのカッシーンは何故かバールクスの指示に従おうともしない。
そればかりか、彼からソロモンの指輪を奪ってしまったのだった。
謎のカッシーンの正体は、メサイア教団の大司教「影の化身」ゼクシオン。
彼はメサイア教団のために指輪を彼から奪ったのだ。
怒りに身を任せ、バールクスはゼクシオンを抹殺しようとするも遂に失敗するのだった。

その事実を知らぬ、ニュートラル・ガーディアンを束ねる者
モリアーティと幻想郷からの訪問者八雲紫。
彼らが事実を知ったのは、全てが終わった後からだった。

【断章:イマジナリー・ウィル 完結編】

 存在しなかった世界の円卓の間。
そこでは、芥志木の死によりその空気が重くなっていた。しかしいつまでも気に病む理由はない。

彼らは、第5位キング・Qの新たなる後継者として新しい大司教を迎え入れることになったのだ。
何の異論もなく、話は進む。

会議が終わった後、カルネウスはエイダムに怒りをぶつけていた。
その理由は無断での司教ラスターズの派遣。
エイダム曰く「援護として送った」というが、その結果は彩香に憑依したアマツミカボシの攻撃による
全員再起不能という悲惨な結果だった。
遠回しに「逆ギレはよせ」というエイダム。
不服だが納得するカルネウス。

 去り際に捨て台詞を吐くカルネウスは、
エイダムしか知らない『弱み』を握っているようだが______果たして。

【エーテル・クラウディア編】原文:渡蝶幻夜さん

たくさんの協力(?)をへて秘境へと向かう大天使、使命は異端者の帰り道塞ぐこと
しかし、帰り道を塞ぐにはどうすればいいのか全く分かっていなかった。

もしかしたら、魔法のエキスパートが集うという秘境にならヒントを貰えるかもしれない
そんなこんなで頑張るエーテルであった

【異端者組とカリギュラ2編】原文:渡蝶幻夜さん

エピメテウスの搭・終点で休憩中であったのだ!

「仕方ないね、特になにも行動してないから」
「(久しぶりに戦闘描写でも書けばいいのに)」

【決着・瞬間瞬間を必死に生きる者たち編】

 ディケイドがバイオライダーウォッチを破壊する事でゲル化状態が解除され、
ルフィが、シャルルマーニュが、超人軍団が次々と大技を繰り出して行き
バールクスを攻め立てる。残されたアナザーライダー軍団も自らの王を守るべく
戦いに加わるも、ロロノア・ゾロ、トランクスらがそれを撃破して行く。

 どれだけ強大な敵であろうと、決して屈する事無く立ち向かう者たちがここにいる!
瞬間瞬間を必死に生きるすべての者たちの想いを込めたソウゴたちの渾身の一撃が、
ついに強敵・バールクスを粉砕し、見事勝利を収めたのだった。

2人目

「Hey,Say,Let's P.A.R.T.Y. ~ ユニバース・フェスティバル ~」

 ――クォーツァー・パレス。

「……」

 常磐SOUGO以下、クォーツァーの面々とスウォルツはトランクスによって
タイムパトロールに連行されてゆく。

「……」

 ウォズは、そんな光景を黙って見ていた。

「貴様はもはやクォーツァーではない。何処へなりと行くがいい」

 SOUGOは最後に、ウォズに自由を授ける。
CROSS HEROES預かりとなる事で、保護観察の身となったのだ。

「クォーツァーは、僕が責任を持って預かります。
ありがとうございました、悟空さんたち」
「ああ、頼むな」

 そしてトランクスは一礼し、タイムマシンに乗り込んだ。

「タイムパトロールと言う立場上、CROSS HEROESの皆さんには
必要以上に干渉することは許されませんが……
上層部に掛け合って、出来る限りのサポートが出来るように善処します。それでは……」

 そう言い残して、タイムマシンは飛び立って行った。

「行っちまったか……」

 一方、木梨猛とRXは互いの健闘をたたえる握手を交わしていた。

「ありがとう、RX。君と共に戦えてよかったよ」
「俺もだよ」

 程無く、RXの体が光に包まれていく。ディエンドライバーによるカメンライドの効力が切れたのだ。

「またアンタに助けられたな。RX」

 士もまた、消えゆくRXに笑顔を見せる。

「いつか言ったな。例え遠く離れていても、仲間だと。
再び世界に危機が迫ったなら……その時が来たら、共に戦おう。
俺もきっと駆けつける」

 RXの言葉に、士はフッと笑みを浮かべてこう返した。

「じゃあな」

 そして、太陽の子・仮面ライダーBLACK RXは今度こそ完全に
この世界から去って行った。

「おっと……」

 木梨猛の身体も同じく、光に包まれ始める。クォーツァーが壊滅した事で
どうやら、彼もまた元の時間軸へと戻されるらしい。そんな彼にソウゴたちが駆け寄る。

「木梨さん……」
「ソウゴ。俺がジョッカーを倒した後の、ずっと、ずーっと先の未来で、
君のような若者が育っていると知って安心したよ。
俺の戦いも……無駄なんかじゃなかったって事だ」

 するとソウゴは、ふいに泣き出しそうな顔になってこんな言葉を紡いだ。

「ありがとう。木梨さんがいなかったら、俺はきっと……いや、間違いなく死んでた。
木梨さんだけじゃない。他のみんながいたから、俺たちはここまで来れたんだと思う。
だから……絶対に忘れない。たとえ離れても、仮面ノリダーの事を」

 木梨猛は一瞬驚いた表情を見せた後、優しく微笑んでこう言うのだった。

「歯ぁ磨けよ。風呂入れよ。宿題やれよ。ニッ☆」
「うん!」

「ソウゴ。後のことは君に任せたぞ。立派な王様になれよ。Bye,Thank you……」

 木梨猛もまた、元いた時間軸へと戻って行った。

「やれやれ、クォーツァーとの戦いも思えば随分と長く感じたが……
これでひとまず一件落着だな」
「戦いはこれからも続く。だが、今は束の間の平穏を楽しもうじゃないか」
「つまり……?」


「宴だァーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


 ルフィが両腕を空に掲げながら叫ぶと、それに呼応するかのように
CROSS HEROESのメンバーたちも歓喜の声を上げるのであった。

「おう、いいな。オラ腹減っちまったぞ!」

 悟空もまた腹を空かせているようだ。

「それじゃあ、今日の勝利と懇親会を兼ねて、レッツ・パーティーといきましょうか~♪」

 パンサーも上機嫌である。さぁ皆、騒ごう! 今夜は無礼講だ!!

「打ち上げゼンカーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」
「いいねェ、俺もハッスルしちゃうかァ!」
「人間ちゅわんたちもいっぱい! お友達になりたいなぁ」
「ぬぬぬ、今日ばかりは自分も羽目外しちゃうっす!」
「皆さんの世界のお話、わたくしも大変に興味があります! ハイ!」

「お祭り騒ぎだッチュン!!」

 介人らゼンカイメンバーも大はしゃぎしている。

「ダ・ヴィンチちゃん……」
『うん、藤丸くんもマシュも良く頑張ったとも。
今夜くらいはハメを外しても問題無いと思うよ』

「先輩……! お疲れ様です!」

 ダ・ヴィンチの後押しもあり、立香とマシュも嬉しそうにはしゃいでいた。

「はっはっはっは! 宴とな! 食い物ならば拙者にお任せあれ!!
対宴宝具! 美味いお米が、どーん、どーん!」

 アーチャー:俵藤太が担ぐ米俵。かつて大百足を討ち果たした功績によって
三上山に住まう龍神たちから授かったとされる巨大な米俵。
村一つの飢えを軽々と満たしてしまうと言うほどの山の幸、海の幸が
ざくざくと出てくる様子は圧巻の一言に尽きる。

「うひょーっ、すっげえーッ!!」
「さあさあ、たらふく食うが良い、皆の衆! 万国共通、美味い飯は正義なりィ!!」

「んがんぐんごんむ……!!」
「むしゃもしゃがつがつ……!!」

  悟空とルフィは目の前のご馳走に夢中になっている。

「おかわりをお願いします」

 その傍らで正座しながら茶碗に米粒ひとつ残さず綺麗に食べ尽くしていくアルトリア。

「あの2人にも負けない食欲とは……」

 ピッコロは呆れた表情で、遠巻きからアルトリアと悟空たちを見つめている。

「ウェーイ☆ もっと盛り上がって行こうぜぇーーーーッ!!」

 根っからのパリピ気質のなぎこが、乾杯の音頭を取っている。
そんな彼女に付き合うように、仗助や金時も一緒になって、この場を盛り上げるのだった。

「グレートですよ、こいつァ……!!」
「ゴールデンな夜じゃねェのヨ。楽しまなきゃ損って奴だぜ!」

「――なんと……! ヴァン・ゴッホに葛飾北斎……! 
あの著名な芸術家たちまでもがカルデアにはいるのか!?」

 芸術家志望のフォックス/喜多川祐介も興奮を隠しきれない。

「えへへ……恐悦至極……」
「だが、いずれも女性の姿だとは……」

「正確に言やぁ、おれは北斎の娘の応為さ。
んで、こっちの黒いタコがモノホンの葛飾北斎……ととさまってわけ」
「まぁ、ゴッホも未だにどうしてこうなったやらわかってませんけどねぇ……
えへへへ……」

 各々に複雑な理由を抱えているようだが、
今日ばかりはそれも忘れて楽しむことにしたのだった。

「是非、俺にご教授願いたい。北斎先生やゴッホ先生の描く芸術は、
俺の目指す絵描きの理想そのものなのですから……!」
「線の細い優男かと思やぁ、随分と暑っ苦しい性格してんなァ」
「ゴッホ先生……悪くない響き……えへへ……」

 そして、宴は夜通し続いていくのだった。その頃……


 ――西暦1997年。仮面ノリダーの世界。

「――猛さん! ……おかえりなさい」
「ただいま、マリナさん」

 木梨猛は無事、元の世界へと帰還し、喫茶店アミーゴにて
帰りを待っていた想い人との再会を果たしたのであった……
振り返れば、CROSS HEROES結成当時より始まった戦いにも
ようやく終止符が打たれようとしている。
だが、物語はまだ果てしなく続いていくのであった……

3人目

「リビルド・ベース①拠点を再建せよ」 

 ――チュン、チュン。一晩中盛大な宴が続いたクォーツァー・パレスの中庭……

「Zzzzzz……」

 CROSS HEROESとカルデアの面々は、まだ夢の中……
夜明け前の気温は、やや肌寒い。

「うぅ……寒っ……」

 信長のマントをタオルケット代わりにしてくるまる沖田。

「わしは……剣の……天才じゃああああああああああッハハハハァーーーーーーッ……」
「うーん……ダーオカ、うるさい……」

 沖田は大音量の寝言をほざく岡田以蔵を寝返りの勢いを乗せた裏拳で黙らせた。

「おぼふっ……」

 その拍子に鼻血が噴き出したが、以蔵はそのまま死んだように眠った……

「さっさっさー……」

 宴会騒ぎで散乱した皿やコップを掃除して回るブルーン。

「おまえ様は働き者でちね。閻魔亭で住み込みのお手伝いをしないでちか?」

 箒を片手に持ちながら、お掃除中のブルーンに声をかけたのは、紅閻魔。
舌切り雀の童話で知られる、割烹着姿の幼女である。舌足らずな話し方とは裏腹に、
料理の腕は一流料亭にも引けを取らないほどだ。
その正体は地獄の閻魔大王を後見人とする、悪しき魂を最短・最小・最速の閻雀抜刀術にて裁く獄卒……神霊や幻想種と言った人非ざる存在をおもてなしする旅館、
閻魔亭の女将にして最強の剣士なのだ。

「わたくし、掃除がとても好きなのです。綺麗になると心も清々しくなりますからなぁ」
「ふふ。ますます気に入ったでち」

 しかし、ブルーンはそんな彼女の素性を知らないので、ふたり仲良く宴会の後片付けを
している。

「……」

 勇者アレクは一睡もせず、周囲の警戒を続けていた。

「寝ずの番とは、見上げた心掛けだな」

 スカサハ。影の国の女王にして、槍術とルーン魔術においては
比類無き無双の強さを誇る女傑。ケルトの大英雄クー・フーリンの師匠でもあるという、
その美貌の裏に秘められた実力は計り知れない……

「皆が安心して眠れるようにするのが私の役目ですから。
夜の闇は魔物を活性化させるものですからね」

 アレクがそう言うと、スカサハは微笑を浮かべて言った。

「フッ、うちの馬鹿弟子にも見習わせたいものだな」

 やがて夜は明け……CROSS HEROESを代表してピッコロ、テリーマン、承太郎。
カルデアからは藤丸、マシュ、ダ・ヴィンチを交えて今後の作戦会議を行った。

『なるほど、君たちもこの特異点に色々と目的が有るわけか』

 完璧・無量大数軍、丸喜拓人、竜王、ジオン族と言った敵対勢力……
そして現在も特異点の何処かで戦っているであろう仲間たちを救い出すために。

『クォーツァーが陣取っていたこの城。あちこちの世界から集めた技術を転用することで
創り上げられた巨大な要塞。今回の戦いでかなりボロボロにしてしまったけれど、
修理すればまだまだ使えそうだね。
ここを我々の拠点とし、特異点攻略の足掛かりとしてみるというのはどうだろう?』

 ダ・ヴィンチの提案に反対する者は誰もいなかった。

「まずはこの城を修理するための資材が要るな」
「近辺を探索して調達してこようぜ」

「わーい! 探検だぁ!」
「お供します!」
「やれやれ……」

 こうしてCROSS HEROSとカルデア一行は、拠点となる城の修理に必要な資材を求めて
広大な大地へと繰り出したのだ。

「主よ、話がある」
「アルケイデス……あ、そうか……」

 立香は突然思い出した。昨日、クォーツァー・パレスへの突入前に
アルケイデスが言った言葉……

「ねぇ、フォックス。この城の地下にはメメントスが広がっているんだよね」

 パンサーに問われて、フォックスは静かにうなずく。

「あぁ。あの杜王町とか言う町の地下とも繋がっているようだな」
「放っておいたら何が起きるかわからないでしょ? 
だから私達で調べに行こうと思うんだけど、どうかな?」

 クイーンの提案を聞いて、周囲で話を聞いていた他の面々も納得したように賛同する。

「よし、決まりだな」
「えぇ、行きましょう」
「地下ですか……怖いですね……」
「どんな敵がいるのかしら?」
「面白そーじゃん♪」

「メメントスに行くには、俺たちが持つイセカイナビが必要になる。
俺、クィーン、パンサー……の誰かが同行していれば、
CROSS HEROESやカルデアの人間でも安全に行けるはずだ」
「じゃあ、メンバーを決めましょう」

 こうして、拠点再建の資材集めとメメントス探索班とに分かれ、
それぞれに行動を開始した。

4人目

「さらばオーマジオウ/ドクターボンベの簡単!蘇生教室~まず一度死なせるぞ~」

ソウゴ達の絶対的勝利の裏側。
クォーツァーパレスの入口にて。
高尚な衣服を赤く染め、オーマジオウは冷や汗を流していた。
肩から袈裟斬りされた傷口は、皴枯れた手にはとても負える物では無く、抑えた手の縁から止めどなく血が流れている。
足元には、既に血溜りが出来ていた。

「貴様自らが出るとは、な。」
「他の者に任せるには、貴様は些か荷が重いのでな。」

対するは、純白の装甲に金の装飾を施した赤面のライダー。
かつて、オーマジオウを追い詰めたライダーだ。
背後の時空は歪み、宇宙の外側が垣間見える、異質な存在。
その手には、オーマジオウの血に濡れた、一振りの巨大な剣が収められていた。

「だが、クォーツァーは失敗したようだ。ついでに部下もやられ仕舞い、骨折り損だったな。」

付いた血を薙いで払い、虚空に出来た穴へと剣を収める。
あらゆる所作に、余裕を醸し出していた。
しかし、間違っても油断は見当たらない。

「まぁ良い、クォーツァーは上手く行けばの儲け話に過ぎん。」

さして残念そうでもない口調でそう語ると、視線をオーマジオウに戻す。
そうして一歩ずつ、歩み寄っていく。

「結局は、私自らが仮面ライダーを手に掛ければ良い事なのだ。」

ライダーの視線が、殺意の色に染まる。
それを感じ取ったのか、オーマジオウも顔を上げて、不敵に笑った。
同時に、オーマジオウの身体自体が薄れ始めた。

「何が可笑しい?」
「ふっ、はははは。これが笑わずに居られるか?」

だが、消え行く肉体を気にする素振りも無く、ただ笑う。

「"50年前の私"が、とうとう"この私"を超えたのだぞ?これが愉快で無くて何だと言う!」

寧ろ、体が消える事を勝ち誇る様に見せつけるまでの仕草だ。
その態度に苛立ちを覚えたのか、ライダーは無言のまま近づき、大きく拳を振り上げた。
しかし、その手刀がオーマジオウを捉える事は遂に無かった。

『無駄だ、若き日の私は今を以て"私に到達する事"は無くなった。私という存在を今に確立する歴史が断たれたのだからな。』

腕はオーマジオウの身体をすり抜け、触れた箇所からカラーノイズとなって消えていく。
口惜しそうに握り締めると、その拳圧に揺られオーマジオウの身体は消え去った。
だが、代わりに声だけが何処からともなく響く。

『50年の歳月さえ、"私"は超えて見せたのだ。貴様も用心するのだな、はっはっは…!』

その言葉を最後に、オーマジオウの気配は消え去った。
後に残ったのは、ライダーのみ。
ライダーは無言のまま背後の虚空に穴を開き、その場を立ち去る。

「ならば、それさえも葬ってやろう。このショッカー頭領の手でな。」

去り際に、一言零して。



ルイーダの酒場の一室、スタッフルームはシートが壁や床一面を覆う様に敷かれ、簡易的な手術室と化していた。
中央に安置された患者、即ちペコは土色の肌付きになっており、最早生きているかすら疑わしい。
そんな彼女を治療する医者は勿論、ドクターボンベであった。

「儂は手術に際し、一つの賭けに出た。」

そう言いながら、ボンベはペコの身体を切開していく。
既に付けられた手術痕を紐解き、生々しい内臓が露わになる。
神秘も何もない生の人体解剖に、思わず目を背けたくなるルイーダ。
だがボンベは構わず続ける。
医師とは毎度こんな物を見続けるのかと、ある種の畏怖さえ覚えていた。

「ほう、賭けとな?」
「うむ、ソレがこの、生命の石じゃ。」
「ふむ?」

ズタボロに見える内臓を丁寧に掻き分け、遂に心臓が見えた。
意を決して目を向ければ、他の臓器に比べ心臓だけがやけに鮮やかに見えた。
よく見れば、右心房の当たりに手術痕が見える。
うっすらと、何か手のひらサイズの物体が埋め込まれている様にも見えた。

「この跡か?」
「如何にも、儂はここに生命の石を埋め込んだ。」
「その生命の石と言うのは?」
「詳しく話すと長くなるから省略するがの、超人墓場で取れる数少ない生命の源じゃ。」

要は、死者の世界で取れる特殊な石らしい。
しかし、肝心なのはどう使われたかである。
ルクソードが続きを促す様に目線を寄越すと、ボンベは静かに頷いて続けた。

「その石はな、今や彼女の生命維持装置そのものと言っても過言では無い。」
「そんな、石ころが?」
「具体的には心臓に流れてくる血流に、生命力を吹き込んで全身へと巡らせているのじゃ。」

血液は心臓を介して人の身体を循環し、全身へ栄養を運んでくれる。
つまり、生命を司る石を心臓に埋め込めば、延命に繋がるのではないか?
そう考え、実行したと言う。
結果は見事成功、ペコの命を繋ぎ止めたという経緯だ。

「激しい戦闘が血の巡りを良くした、というのもある。」

そう付け足すボンベ。
生命の石の効果は絶大で、それを取り込んだ心臓の細胞はかつてない程に活性化している。
死人の身体と相まって、際立って新鮮に見えた。

「そしてこのドクターボンベが最後に送る術式が、これじゃ!」

そう言うと、心臓の石が埋め込まれた辺りへと手を添え、震わせる。
瞬間、甲高い音と共に石が割れ、石の影が心臓から無くなる。
同時に、さらさらと砂状の物が擦れる音が心臓から聞こえた。

「なっ…壊したのか!?」
「これで良い。DNAから本来の身体を取り込んだ石の粉が、血流と共に生命力と共に体を治療する。」

言うや否や、血液中の生命力が一気に全身の細胞に吹き込まれる。
常人ならざる再生速度で、治癒を開始をする。
腐敗さえ思わせる土色だった肌が、見る見る内に生気を取り戻していく。
奇跡、いやドクターボンベの繋いだ必然が、今ここで光を放っていた。

「凄い…!最初からこれで良かったのでは…?」
「馬鹿者、この術式は例えるなら全身をミキサーに掛けてから再構築する様な物じゃ。」

その言葉に、ひぃ!と全身を震わせて顔を青くするルイーダ。
想像を絶する痛みだろうという事は、容易に思い至った。

「じゃあもし意識があったら…?」
「うむ、ショック死じゃな。」
「恐ろしい事をしますね、ボンベさん…」

彼の言うように、全身が一瞬にして変質するのだ。
もしその際、生半可にでも意識が残っていれば、そのショックで死亡していたであろう。
それこそ、仮死でもしていなければ、きっと。
可笑しな事だが、死を経る事で、生を得る結果となった。

「だから、痛みを与えぬこの瞬間を待ち望んでいたのよ。」

そして、それさえも織り込み済みだとボンベは言ってのけた。

「後は、心臓の機能が低下せんようこっちの生命の石で心臓を包めば良い。」
「は、ははは、本当に、私の想像の遥か上を行くとはな。」

乾いた笑いしか出てこない、だが現実に奇跡は紡がれた。
目の前の男は、命を救う為にあらゆる手を使った。
だからこそ、こうしてペコは助かったのだ。
胸を張って誇るべき偉業なのではないのかとさえ思う。
畏怖さえ孕んだ眼差しでボンベを見ると、ボンベは当たり前の様に答えた。

「儂を誰だと思っておる?超人医師、ドクターボンベじゃ。」

5人目

「偉大な勇者と集いし3つの心」

クォーツァーパレスで行われたクォーツァーとCROSS HEROESによる最終決戦はCROSS HEROESの勝利で終わった、一方その頃リ・ユニオン・スクエアではギリシャを始め世界各地でCROSS HEROESや各国の軍隊、更には平行世界からやって来たスパイダーマン達など多くの者たちがミケーネ神と戦闘獣軍団を相手に戦っていた。

「ロケットパーンチ!」
「トマホーク!ブーメラン!」
「気円斬!」
「デスシウムクロー!」

「ギャオオオオオオオオオン!?」

「ぜぇ……ぜぇ……」
「ほう、人間でありながらここまで抗えるとはな、奴らと同じ名を名乗ってるだけのことはある……だが、その様子じゃもう限界が近いようだな…?」
そう、ここまで何十体、下手すれば何百体もの戦闘獣やミケーネ神と連戦を行っていたのもあり、彼らのエネルギーや体力は限界が近づいていたのである。
「クッ…!」
「チィッ…!まだ終わりじゃねえ!」
CROSS HEROESの1人、流竜馬が乗るゲッターロボは空から降り注ぐゲッター線を動力とするスーパーロボット、元々いた世界よりも降り注ぐ量が少ないうえに空が赤く染まったことにより更に少なくなったとはいえそれでもゲッター線は降り注いでいるため他のスーパーロボットと比べてエネルギーには余裕があった。
「ほう、まだ動くか……流石はゲッター線を力にするだけことはある……」
「ウォオオオオオオオオオ!!」
ゲッターロボはゲッタートマホークを右手に持ち、ミケーネ神に向かって接近する。
「だが、無駄だ!ハァ!」
「っ!?」
ミケーネ神の1人が鎌を住む振り下ろし近づいて来たゲッターロボの右腕を切り落とした。
「チッ…!」
「竜馬さん!?」
甲児の乗るマジンガーZは竜馬を助けに行こうとするが……
「そうは行かんぞ!」
「っ!」
マジンガーZを囲むように4体の戦闘獣が現れる。
「しまっ…!?」
「死ぬがいい!」
「ギャオオオオオオン!」
4体の戦闘獣はマジンガーZに向かって集中攻撃をする。
「グワァアアアアアア!?」

「甲児くん!」
「甲児!」
他のCROSS HEROESメンバーがマジンガーZやゲッターロボを助けようとするが、他の戦闘獣に邪魔をされて近づくことすらできない。

「こ、このままじゃ……」
「これでトドメだ、憎きゼウスの形見、マジンガーZよぉ!!」
そう言いマジンガーZを攻撃してた4体の戦闘獣のうちの1体がマジンガーZにトドメを刺そうとした……



その時…!

「っ!?う、ウワァアアアアアア!?」
「なにぃ!?」
突如として上空から落雷が落ち、マジンガーZを攻撃していた4体の戦闘獣のうちの2体を破壊したのである。
「落雷だと!?」
「ええい!誰だ!我らに落雷などを落とした愚か者は!」
そう言いながらミケーネ神や戦闘獣が空を見上げるとそこには…
「あれは……マジンガー…!?」
なんと甲児が乗るマジンガーZとは異なる、もう一体のマジンガーがいたのだ!
「・・・」
「か、感じる…!感じるぞ!」
「間違いない、奴からも憎きゼウスの意思を感じるぞ!」
「・・・」
戦闘獣がそう言う中、突如として現れたもう一体のマジンガーは足から剣のようなものを取り出すと、
「っ!」
「なっ…!?」
一瞬にしてマジンガーZを攻撃していた戦闘獣のうち、残りの2体の弱点である人面部分を真っ二つに斬り裂いたのだ。
「馬鹿な…!?戦闘獣が一瞬で2体も…!?」
「……大丈夫か甲児?」
「っ!?アンタなんで俺の名前を…!?それにそのマジンガーはいったい……」
「グレートマジンガー」
「グレートマジンガー…」
「マジンガーZの兄弟だ」
「兄弟…」
「そうだ。この機体はマジンガーZと共に戦うために造られた、偉大な勇者だ。
俺の名前はブレード……またの名を、剣鉄也」
「剣…鉄也だって…!?」
マジンガーZとは異なるもう一体のマジンガー『グレートマジンガー』。そのパイロットはなんとかつて死んだはずの甲児の叔父、剣鉄也だったのである。

更に…!
「っ!?な、なんだ!?」
グレートマジンガーに続くようにどこからともかく赤、白、黄色の3機の戦闘機が現れて、ゲッターロボと戦っていたミケーネ神に攻撃をする。
「っ!あれはゲットマシンじゃねえか!?なんでこんなところに…!?」
すると竜馬の乗るゲッターロボに3機のゲットマシンのうちの2機、ジャガー号とベアー号から通信が入った。
『久しぶりだな、竜馬』
『相変わらず元気にしてるようだな』
「隼人!それに弁慶!なんでテメェらがこの世界にいる!?」
『それについては後で話す。それよりもそんなボロボロのゲッターロボで戦うのは危険だ、さっさとイーグル号に乗り換えろ』
「へっ、上等だ!」
竜馬はゲッターロボのハッチを開け外に出ると、オート操縦で動いてるイーグル号に飛び乗り、中のコックピットに座った。
「お前ら!久しぶりにいくぜ!」
「「おう!」」
「チェーンジゲッタァーワァンッ!!」
竜馬のその叫びと共に、3機のゲットマシンがイーグル号、ジャガー号、ベアー号の順に合体しゲッターロボの3つある形態のうちの1つ、ゲッター1になった。
「3機の戦闘機が合体してゲッターロボになった…!?」
「あれがゲッターロボの本来の姿だ」
「本来の姿…?」
「そうだ、マジンガーが人間の心が加わることによって真の力を発揮するように、ゲッターロボも3つの心が1つに合わさることで真の力を発揮するんだ」
「真の力…!」

「覚悟しやがれミケーネ!テメェらにもたっぷり味あわせてやる、俺たちとゲッターの恐ろしさをな!!」

6人目

「アルケイデスの讐撃」

 その数分前、クォーツァー・パレスでは。

「我が主よ、約定通りだ。そろそろ我が敵を討ちに行く。」
「分かった、気を付けてね。アルケイデス。」

 藤丸の元を離れ、アルケイデスはそのまま走っていった。
 その様子を、マシュたちはただ黙って見守っていた。

 クォーツァー・パレス 外

「黒き外套の者よ。貴様は……。」
「ああ、特異点の外への運搬は可能だ。いつでもできるぞ。」

 ギリシャに向かおうとするアルケイデスを今か今かと待っていたかのように、元ⅩⅢ機関の一人にしてニュートラル・ガーディアンのザルディンが外で待っていた。
 その周囲にはカッシーンの残骸が転がっている。
 恐らく、バールクス戦の時ここで足止めをしていたのだろう。

「分かった、すぐに。行先は私が指定する。運べるか?」
「ノーバディを嘗めてもらっては困るな。すぐに始めよう。私も戦うか?」
「いや、お前はお前のすべきことをするがいい。あの邪神を挫くのは私の役目だ。」

 ザルディンはその返答に満足しながら、アルケイデスと共に黒い靄の中へと飲まれていった。



 そして、ギリシャにて

「ついたぞ、思いっきり暴れてくるがいい。」

 黒い靄から地上目がけて降下するアルケイデス。
 ザルディンは、出撃するアルケイデスを見送った。
 上空から、地上の戦闘獣とミケーネ神を睨む。

『___俺たちとゲッターの恐ろしさをな!!』
「なるほど。ゲッターというのか。神に抗いし戦士が使う武器は。」

 ゲッターロボを操る戦士たちの声を聞いたアルケイデスは、何処か満足げだった。
 自分のほかにも、邪悪なる神どもに対抗する者たちが存在するのかと。

「であるのならば、私も負けられん!」

 そうして、アルケイデスは一気に宝具を展開した。
 己が伝承の具現たる『十二の栄光(キングス・オーダー)』。そのうちの3つを招来する。
 先の戦いでバールクスを攻撃せし、金属の怪鳥を呼ぶ一矢を弓に番え。
 ディオメテスの人喰い妖馬、その1頭にまたがって。
 人理を否定せし獅子の毛皮を顔につけ、アルケイデスは戦に挑む。

『な、なんだあいつは!?』

 地上に着陸し、妖馬にまたがったアルケイデス。
 周囲が混乱する中、弓をつがえし復讐者は今。声高らかにミケーネの神々に宣戦布告する。

「我が名は____アルケイデス!ヘラの栄光(ヘラクレス)の名と、貴様ら邪神どもを駆逐するものなり!!」

 弓兵にして復讐者、アルケイデス。
 その戦いは今、始まる。

7人目

「産めよ育てよ魔の同胞(はらから)/来訪!破壊神ビルス」

天井知らずの暗雲が地の果てまで満ち、肺をも濁らせんばかりの陰鬱な、ここは暗黒魔界。
俗世から追いやられ、身を潜め合う魔の物の安住の地だった。
_今は禍々しい巨大な樹が生え、本来あるべき秩序を無くした、無法地帯と化しているが。

「ホント、アシュラマンがやられてくれたのは好都合だったわ。」

大樹がうねり、根を伸ばし、大地を吸い尽くす。
荒廃した地は軋み、生気を無くしていく。
無秩序に崩壊していく大地に、魔界の住民は慌てふためき、或いは樹に生えた幾多の天然プロレスリングで茨デスマッチが繰り広げられ、周囲に集まった野次の間で勝負の賭けが行われる始末だ。
世の終わりを想起させる光景を一瞥ながら、トワは満足そうに呟いた。

「へへっ、こりゃ今までに無い神精樹の実が喰えそうだ…!」
「あそこで遣り合ってるのは何なんだ…?」
「超人プロレスでしょ、魔界じゃ日常よ。」
「雑魚でも戦いたくなる時ぐらいあるだろうよ。」
「そうじゃない、そうじゃないんだが。」

スラッグが困惑する横で、ターレスもまたクツクツと笑いを堪えながら怪しく微笑む。
さて、この状況について説明する必要がある。
ターレスの持つ神精樹の種、それをトワは魔界に植えたのだ。
トワの言う様に、アシュラマンという支配者が不在な事で、神精樹は易々と空を覆いつくすまで育った。
完璧超人と悪魔超人の衝突が、彼等に思わぬ幸運を齎したという訳だ。
序でに樹から植物性のプロレスリングが生え、刺激を求めていた魔界の住民がお零れに預かっているのが現状だ。
魔界ではこれ位強かで無いとやっていけない。

「しかし、この暗黒魔界も貴様の故郷だろうに。わざわざ、神精樹の土俵にするとはな。」
「ウフフ、これは言わば貴方達への投資よ。賭けと言っても良いわ、勝てば地上が第二の魔界になるもの。」
「フン、全く言葉選びの上手い奴だな。逆に不気味に感じるわ。」
「誉め言葉として受け取っておくわ。」

言葉を通じて会話したつもりだが、どうにも話が通じた気にはなれない。
故郷を生贄にする行為は、自他ともに悪人と認めるターレスですら、一歩気が引ける様な思いがこみ上げる。
だのに、故郷の滅ぶ様を見て寧ろ笑って見せるこのトワなる悪女に、スラッグは底知れぬ邪気を覚えていた。
自分達とは別方向の邪悪さを、スラッグはトワから学んでいる気分になった。
事が済めばとっとと始末するか、或いは一切の関わりを無くす算段さえ自然と立つ程に。

「代わりと言っては何だけど、貴方達に是非頼みたい事があってね。」
「頼み事か、この俺を顎で使おうとはな。」
「そんなんじゃないわ。神精樹が育つまでの、簡単な暇つぶしみたいな物よ。」
「よく言うわ。」

命を救われた手前、一応は協力するつもりだ。
余程癪に障る様な内容でなければ、受けないでやらんことも無い。
そう考えて、そんな思考に至っている自分が居る事に気付き、内心でため息をついた。
大宇宙の王になる男が良い様に使われ、受け入れているなど、笑い話にもならない。
気を紛らわす為に、スラッグは続きを促す。

「それで、一体何をしろと言うのだ?」
「簡単よ、ちょっとした集め物をして欲しいの。貴方の良く知っている物を、ね。」
「…ほう?」
「貴方達は死人、そう風に思われているからこそ、適任なのよ。」

意味深長な言い回し、ターレスが興味を示したらしく、耳を傾け始めた。
何を求めているかも、必然的に分かった。

「そう、ドラゴンボールよ。」

二人は示し合わせた様に、ほくそ笑んだ。

「あ、私が賭けた超人が勝ったわね。」
「クソッタレ、もっと根性見せろってんだ。」
「ターレス、貴様いやに順応が早いな?」



魔界とは打って変わって、何処までも晴れ渡る荘厳な空が無限に続く世界。
近未来的な建築物や、巨大な砂時計に幾つもの歯車が飾られた特徴的なオブジェ。
ここは時の巣、またの名をトキトキ都。
タイムパトロールの拠点にして、神さえも住まう一種の異空間だ。

「_んー、今日はこれ位にしようかしらね?」

そんな時の巣のとある一室にて、1人の少女がデスクワークをこなしていた。
鮮やかな藍色をした長髪をポニーテールにし、機能重視の身軽な衣服に身を包んでいる。
その外見は、一見するとブルマ博士そのものに見えるが、よく見ると数段若い印象を受ける。

「ブルマさん、お疲れ様です!」
「はーい、お疲れ~。」

他の席にいた如何にもといった研究者が、彼女の事をブルマと呼んだ。
そう、彼女もまたブルマなのだ。
彼女はある一件からタイムパトロールによって保護された、過去の人間だ。
若年期から既に発揮されていた多元宇宙でも有数な才能を買われ、今はタイムパトロールの一員となって働いているという訳だ。

「しっかし、トランクスが出たっていうのに今日も暇ねぇ。」

そんな彼女だが、今は軽い倦怠期に陥っていた。
タイムパトロールでの事務仕事にも慣れ、才能を発揮する機会にも恵まれない。
トランクスが出動したからと何か変化を期待したが、此方は俄然変わり無しという期待外れっぷり。
無論、彼女も悪戯に世界を乱す発明等をするつもりは無いが、それはそれとして根っからの研究者体質なのだ。
こうも同じ日々が繰り返されるのでは、勘が鈍るという物である。
言わば一種のスランプ状態で、ブルマはそこからの脱却を待ち望んでいた。

「なーにか、面白い事でも起これば良いんだけどね~…」
「なーにが、面白い事よ?」

そんな憂鬱とした内心が零れたのを、見逃さなかった者が居た。

「げっ!?」
「げっ、じゃないわよ!この前あんたがやらかした案件、やっと終わったんだから!」

憤る声の主は、ブルマよりも幼小に見える少女だった。
セミショートの淡い赤髪に、胴着に似た衣服。
何より特徴的なのは、桃色の肌をしている点だろうか。
およそ人間とは思えない外見を持つ彼女は、実際人間ではない。

「か、界王神様!?」
「また何か作ったら承知しないわよ!?変な機械の後処理はもうたくさんよ!」

彼女こそは時の界王神。
歴史の流れを守り、時を司る神だ。
タイムパトロールの創設者でもある。
これでもこの宇宙で指折りの権力者なのだ。
それ故に数多くの事柄に関わる身である為、ブルマが何かの発明で混乱を齎さない様に釘を刺すのも仕事の内だ。
世知辛いものである。

「い、いやぁトランクスがどうなったか気になって…」
「よく言うわ、どうせ何か起きないか機会を伺ってたんでしょ…あら、噂をすれば。」

影が差す、と言うべきか。
丁度、トランクスが担当していた案件の重要参考人、常盤SOUGOが時の巣へと連行されてきた。
しきりに目の色を変えたブルマだが、当然界王神は静止を掛ける。

「アンタまた何か企む気?」
「い、いやぁ~ちょっと気になって…」
「またそんな事言って…待って。」

再び釘を刺そうとした時、界王神が上を向き顔色を変える。
何かを察知し驚愕した表情に釣られ、ブルマも視線を辿る。
そこには、異形が居た。

「_オーマジオウの気配が無くなったと思って来てみたら、何やら大事みたいだね?」
「ビ、ビルス様!?」

8人目

「嗣章:オブザーバーズ・ハイ」

 ビルス到着の約1分前 トキトキ都某所

 一言で言うと、その老人は誰もが一目見ただけで『ただ者ではない』と思わせていた。
 見た目の年齢は50代はあって、深く刻まれた顔の皺は年季を感じさせる。
 にもかかわらずその双眸はまだまだ若々しく、そのせいか年齢よりも10歳は若く見えてしまう。
 文字通り「若い者にはまだまだ負けん」と言わんばかりだ。

 もちろん、そんな見た目だけでは『ただ者ではない』と思わせるには不十分すぎるのだが、老人から放たれる覇気と得体のしれないオーラがそうさせているのだ。

「…………こういう都も、世の中にはあるのか。」

 かくして、そのゲルマン風な顔つきの老人はブルマたちがいる時の巣に到着する。
 そして、今に至るのだが……。



 そして今、時の巣にて。

「ビ、ビルス様!?」

 その存在は突如出現、否、顕現したというべきか。
 痩せた猫のような、されど神々しさと脅威を感じる獣人がその場に顕現したのだ。
 その様子を見て『ビルス様』と皆がかしずくところを見ると、この者もただ者ではない。

「……。」

 先の老人はそんな様子を一目見た後。何事もなかったかのように近くの椅子に座り本を読んでいる。
 否、読んでいるというよりかは逐一内容を記しているというべきか。
 彼が持ってきたであろう一冊の本。本屋で売っている百科事典ほどはあるそれは、中の頁が無色で何一つ文章や絵といったものが書かれていない。
 しかし、その本の頁を彼がめくるたびに内容と情報が自動的に記されては消えてゆくのだ。
 まるで神の視点から物語を。或いは歴史を執筆する小説家のように。

「ところで、背後のお前。」
「む?」
「誰だ?ただものではないように思えるが……。」

 そんな老人の特異性、超常性に真っ先に気づいたのは破壊神ビルスだった。
 ビルスだけじゃない。その場にいた誰もが背後の老人に気づく。
 老人は、皆に存在を気づかれるも飄々とした顔で挨拶する。

「儂か?そうだな……外より来た魔法使い、ゼルレッチとでも言っておくか。」

 魔法使いゼルレッチ。本名「キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ」。
 魔術世界において、たった5人しか存在が確認されてない「魔法使い」の内の一人。

 扱う魔法は「並行世界の運営」。
 人類にとってより良い世界を見つめ、選定し、そして記す者___それがゼルレッチという男だ。

「来たる世界破滅の危機、流石に儂も看過できなくてな。ここにお邪魔させていただく。のう?もう一人の来訪者よ。」

 と、ゼルレッチはすぐそばにいる何かを看破する。

「ぷかぷか~。」
「「「!?」」」

 甘くとろけるような声。
 緊迫する空間にはあまりにも不釣り合いな、柔和で優しい声が響く。

「も~、あたしの存在に気づいていたなら言ってよ~!抱きしめちゃうぞ!」

 藍色の宇宙を象った円形の”穴”から、それは出現した。

 水色の長い髪を、太いポニーテールのように結んだ高校生程の年齢の女性。
 和服を着て、掌の3倍はあるだろうドーナツを食べているその少女は、自身が出現した穴と同じ色味の小さい兎を従えている。
 しかしてそれは彩香や月夜と同い年とは思えないほど妖艶な体格をしており、その身から放たれる風格はゼルレッチの覇気とは異なりあまりにも優しく甘く、純真無垢で極限なまでの人類愛で満ち満ちている。

「貴様は誰だ?」
「あたしは『虚数姫カグヤ』!よろしくね!」

 カグヤ、と名乗る甘ったるい風貌の少女。
 舌を可愛らしく出し、快晴時の太陽のような笑顔をまき散らして挨拶する。

「で……虚数姫よ。何の用事かね?」

 ゼルレッチが、カグヤに話しかける。
 カグヤは、少し悩みを帯びた顔で要件を話す。

「最近あたしの虚数空間に異物が入ってきて、それで処理に困っているからその話の共有をしておこうかなって。」
「ほう?」
「ゼアノート事件解決後、あたしと元・ⅩⅢ機関のノーバディ数人とキーブレード使いのみんなで虚数空間の深淵に封印したはずの『存在しなかった世界』が、地上が何故か繋がってからそこを経由していっぱい行き来が発生しててね……。」
「その程度ならなんも問題ないだろ。」

 ビルスが、カグヤを一瞥する。
 しかしカグヤはそうも言えないようで、ため息交じりに話す。

「その存在しなかった世界と、地上のつながりがどんどん強くなっているの。このまま放置してたら2つの世界がこんがらがって崩壊するし、かといってあたし一人じゃどうしようもなくて……。」

 メサイア教団の本拠地たる『存在しなかった世界』。そして地上。
 この2つの世界は現在、虚数空間を挟んで均衡がとれている。
 しかし、希望ヶ峰学園爆破とトラオムの生成をきっかけとしてそのつながりが強くなっており、放置しておけば存在しなかった世界が地上を浸食し瞬く間に地上は崩壊するという。

「……いずれにせよ、ここにいる我々だけでも対策を話す必要があるな。」

9人目

「嗣章:超常会議」

ここ時の巣は、未だかつて類を見ない程に緊迫感に包まれていた。
この宇宙の破壊を司る破壊神ビルス、地上において指折りの実力者ゼルレッチ、謎に包まれてはいるが只者ならぬ乱入者カグヤ。
何れもがそこいらの生命を凌駕した超常の存在だ。
それが、一堂に会している。
例えるなら、いつ起爆しても可笑しくない水爆を抱えている様な物だった。

「ど、どうしてこんな事に…!?」

時の界王神も、頭を抱えて心労を吐露する。
気を抜けば骨髄まで呑まれる様な、覇気を纏った空気に当てられ、冷や汗を浮かべるばかりだ。
それもそうだろう。
各々が発する、オーラとでも言うべき他を許さない我がぶつかり合い、奇跡的な均衡を保っている状況だ。
中には耐えきれず、泡を吹いて気絶する者まで現れる始末だ。
まるで荒れ狂う台風の様に。
だが、これでもまだ誰も殺意や敵意と言った圧を掛けている訳では無い。
自然体でこれなのだ。

「ウィス、お代わり。」
「はい、只今。」

事実、悠然と椅子に腰掛けながら、ビルスは付き人のウィスから貰ったとジュースをゆったり口に含んでいる。
お気に入りのソファで寛ぐ老人の様な穏やかさ。
だのに戦場の如く緊迫した空間。
ハッキリ言って、時の界王神は逃げ出したかった。

(こ、こっそり逃げようかしら…)
「オイ、そこの。」
「ひぃ!?ハイ!!」
「これから話し合いといこうじゃないか。」

だが、その目論見もビルスによって断たれた。
彼は視線だけを、チラリと向けただけ。
それだけで、時の界王神の身体は恐怖に震え、従わざるを得なくなった。
万一にも機嫌を損ねれば、何が起きても可笑しくはない。

(えぇい、どうにでもなれだわ!)
「わ、分かりました!」

彼女は、腹を括った。



「先ず目に見えた驚異としては、ミケーネの神々かの。」

真っ先に話題に上がったのは、世界を超えた神々からの挑戦、ミケーネの大騒動。
外の宇宙から来訪した神々の襲来という、既に表面化している問題だ。
規模として分かりやすく、しかし最も厄介な議題と言えるだろう。
ミケーネの勢力は、全世界に渡りつつあるのだから。

「アイツ等、我が物顔で調子に乗ってるみたいだからね、破壊しちゃおうか?」

愉快げに、しかし何処か不穏さを滲ませて語るビルス。
何か因縁めいたものでもあるのか、或いは同族嫌悪だろうか?
いずれにせよ、ビルスにとって不快極まりない内容である事は間違い無かった。

「まぁ、純粋な力攻めですからそれが最適解でしょう。ビルス様、地球には余り手を出さないでくださいね?」
「なるべく努力するよ。」
「なるべく、では無くキッチリ守って頂かないと…」
「あぁーもう煩いなぁ。」

ウィスの指摘に対し、ビルスは面倒臭そうな態度を見せる。
恐らく、守るつもりなど欠片も無いのだろう。
かと言って、ビルスに強く出て『破壊』でもされたら溜まった物では無い。
地上の平和がなぁなぁで流されるという状況に、時の界王神は静かに頭を抱えるばかりだ。

(これもう、どうしたら…!)
『_あまり、暴れてくれるのは困るぞ。』

そんな時だった、救いの声が聞こえたのは。
それは、彼女にとっても、地球にとっても同じ物だった。

「_消えたんじゃなかったのかい?」

突如現れた、威厳に満ちた男の声。
その存在を知る者は、声の主をこう呼ぶ。
魔王、と。
ビルスも、カグヤも、ゼルレッチも、そして時の界王神も。
気付けば、この場に一人、増えている事に気付く。
そしてこの場にいる全員が、大なり小なり、彼の存在に驚愕する。
消された筈の魔王、存在し得なくなった時の王者。

「オ、オーマジオウ…!?」

畏怖の色に染まった声で、その名は呼ばれた。
最低最悪の魔王、オーマジオウ。
一体何時の間に現れたのか、高尚な衣服に身を包み、王座に腰掛け、当たり前の様に佇んでいる。
まるで、何事も無かったかの如く。
その表情からは確かな自信と、強者の覇気が溢れている。

「あ、貴方は確か、あのライダーに…!?」
「ライダー?おいお前、何か知ってるな?」
「あっ、はい!彼は、オーマジオウは謎のライダーと戦って、破れた筈なんです!」
「あ~?じゃあ何でここに居るのさ?」

不意に向けられた意識に体を震わせながら、返答だけでも全うする界王神。
そんな彼女の動揺も知らず、ビルスは質問攻めをする。
正直、緊張で気が動転しそうな思いだった。

「確かに、決着が付けば私はここに居なかっただろうな。"過去の私"が"この私"を超えたお零れに預かったという訳だ。」

そこに待ったを掛けたのは、他ならぬオーマジオウだ。
含みのある言い分に、首を傾げる時の界王神。
だが、ビルスには絡繰りが分かった様だ。

「成程、そのライダーとやらにやられる前に、過去改変で世界から追い出されて逃げれたという事か。」
「その通りだ。トドメからは逃れられた結果ここに居る。」

自嘲気味に語るオーマジオウ。
その口調は、何処か穏やかさを感じさせる。
余程の死闘だったのだろう。
何時もとは違う態度を見せるオーマジオウに、ビルスが初めて興味を持った。

「で、そのライダーって言うのは?破壊し甲斐がありそうだし一応聞いておくよ。」
「うむ、それは仮面ライダーの原点にして最古の悪。」

両手を広げ、大仰な口ぶりで語る。
そうして皆の注目を集めた後、彼は告げる。

「世界を跨ぐ組織、その名は…ショッカーだ。」



「ふぅん、ライダーねぇ。」

何人たりとも踏み入る事の許されぬ超常会議に、一人聞き耳を立てる者がいた。

「確か連行されてきたっていう奴も、ライダーって奴だったわよね。」

そう言って振り返るのは、他ならぬブルマだった。
あの威圧と覇気の入り交ざる空間を、遠巻きながらに見る図太い精神には、呆れを通り越して感心せざるを得ないだろう。
それもそうだ、科学者としてのセンスがビンビンに反応し、会話内容も大当たりの代物だったのだ。
今、彼女は燃えていた。

「押収された物から、そのライダーってのが分かれば良いんだけど…さぁて、やってみるわ!」

そう言って、ブルマは何処ぞへと消えていった。
ビルスの予期せぬ来訪にあちこちが麻痺し、時の界王神が会議に巻き込まれている今、彼女を止められる者は誰も居ない。
彼女が歴史を変えてしまう事は最早、確定した事実であった。

10人目

「リビルド・ベース②Magia Record×kaleid liner」

「カルデアにも魔法少女がいるんだ……」

 拠点を再建するための資材を探しに出かけたいろは達。
同行するのは悟空とカルデアのサーヴァント達と共に森の中を探索する。

『ん~! やはり、魔法少女とはかくあるべきですねぇ!』

 人語を話すステッキが飛び回り、いろは達を撮影機能で連写する。

「もう、やめてよルビー! 恥ずかしいじゃない!」

 ルビーと呼ばれたステッキに抗議の声を上げたのは、
キャスター:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
日本人とドイツ人の両親を持つ、小学5年生にしてカレイドステッキ・ルビーと
主従関係を結んだ、「有り得たかも知れない可能性の少女」。

『むふふ、ご安心ください!
魔法少女の日常を切り取り、写真集として出版する予定ですからっ』
「全然安心できないわよっ!」

「どぅふふwwww拙者、保存用・観賞用・使用用に
三冊ずつ購入予定でござるぞwwwww」
「出ないから! てか最後の何!? 何に使うの!?」

 2mを超す大柄のオタクサーヴァントは、ライダー:エドワード・ティーチ。
「黒髭」の異名をとるほど有名な海賊だが、イリヤ達の前ではいつもこんな調子。

「はは、おめぇら賑やかだなぁ」

 そんなイリヤと黒髭のやり取りを見て笑う悟空。その顔をじーっと見つめる、
イリヤに瓜二つな褐色の肌の少女。

「どうかしたんか?」
「おじさん……何処かで会わなかった?」

「へ? いや会ったことはねえと思うけどなぁ」
「そっか……まあいっか」

 クロエ・フォン・アインツベルン。イリヤから分離したもうひとりの人格で、
当初はイリヤと成り代わるために命を奪おうとしていたが、
今では実の姉妹のように仲良くしている。クロエの悟空に対する既視感。
それはここではない、「拡大する宇宙」のほんの小さな片隅で起きた出来事……

「それにしても……カルデアの外の世界から来た魔法少女の魔力って、
どんな味がするのかしら……」

 そう言ってうっとりとした表情を浮かべながら、黒江を見つめてくるクロエ。
奇しくも同じ名だ。

「えっと……あの……?」
「ね、お姉さん。ちょっとだけ、いいかな?」
「ダメーッ!」

「イタッ! 何すんのよイリヤ!」

 イリヤが顔を真っ赤にしながら黒江の前に立ちふさがり、クロエを押し退ける。

「初対面の相手に魔力供給させろなんて失礼でしょうが!」
「魔力供給……? グリーフシードならあるけど……」

「わーっ! 何でも無いです、気にしないでくださーいっ!」
「むー、じゃあ美遊ので我慢するかー」
「えぇっ、わたし!?」

 美遊・エーデルフェルト。凛々しく真面目な少女でイリヤの親友。
カレイドステッキ・サファイアと主従関係を結ぶ、イリヤと同じ運命を背負った子。

「美遊のもダメーッ!!」
「もう、だったらイリヤのでいいわ!」
「ちょっ、ここじゃダメ、こ、こっち来てっ!」

 そう言ってクロエの手を引きながら森の奥へと消えていく2人を見送ったいろは達。

「あいつら、何しに行ったんだ?」
「さ、さあ……」

 皆目見当がつかない様子の悟空は残された美遊に問いかけるが、
返答には困る様子で言葉を濁していた。

「ふう~♪ 堪能しましたっ♪」

 それからしばらくして。
満足げな表情を浮かべたクロエと、げっそりと疲れ果てた顔のイリヤが森の木陰から
姿を現した。

「ご馳走様♪」
「はあ……はあ……」

「なーんだ、メシ食ってたんか?」
「ま、似たようなものね」

 クロエはクラスカードを媒介に現界しているため、何もしなくても魔力を消費し続ける。
魔力が尽きる事は即ちクロエの消滅と同義であるため
定期的に魔力を補給する必要があるのだ。

『それでは皆さん、資材探しの続きをしましょうか!』
「おー!」

 ルビーの声掛けに応じて森の中へ入っていく一行。
テンテン、テケテンテン♪

「おほっ、いつものBGMが鳴り始ましたぞwwwww」
「いつものってことは、敵が現れたんじゃねぇか?」


「キエエエエエエーッ!!」


 突如、髑髏の亡霊が襲いかかってくる。

「出たぁあああっ!!!」
「下がってろ! 波ッ!!」

 イリヤ達の前に立ちはだかり、エネルギー波を右手から放つ悟空。

「ギャエエエエッ……」

 断末魔の声と共に亡霊は瞬く間に霧散した。

「凄い……一瞬で……」
「いやあ、まだまだだ。オラ、もっともっと強くなんなきゃいけねえからよ」

「うーん、やっぱりこのおじさん何処かで見たような気がするんだけどなぁ」

 記憶に靄がかかっていて思い出せない。

「それより、敵がぞろぞろと集まってきたみたい」
「おっしゃ! やるぞぉ!」

「はい!」
「うん」
「いくわよ」

 戦闘態勢に入ったイリヤといろは達は一斉に変身を完了させる。

「ktkrーーーーーーーーーーーーッ!! 見える! 拙者には見えますぞ! 
魔法少女達の変身バンクが!! 網膜に焼き付く程にィィィィーッ!!
これがひとつなぎの……」
「先にあの黒髭を仕留めた方がいいんじゃない?」

 両手の双剣を具現化させ、殺意に満ちた眼差しでティーチに迫るクロエ。

「うぇ!? 何、お嬢ちゃん! 目が怖い! 怖すぎるよ! 
やめて、殺さないでェーーーッ!!」
「マスターには資材探しの途中でエネミーにやられたって事にしとくから
安心して死んでね♪ 山を抜き、水を割り、なお墜ちる事無きその両翼――」


「アバーーーーーーーーーーーーーッ……宝具使う相手間違ってんよーーーッ……」


 ナムアミダブツ! 哀れ、黒髭は爆発四散! かに思われたが、
スキル「紳士的な愛」で何とかギリギリ一命を取り留めたのだ!

「……で、バッチリ録れてた?」
『2億QPになります☆』
「星5スキルマ程の値段じゃねーか!!!!!!!!」

11人目

「嗣章:相続者会戦」

 この場に集いし超越者、総勢4人。
 破壊神ビルス、魔法使いゼルレッチ、虚数姫カグヤ、魔王オーマジオウ。

「ショッカー?何それ駄菓子みたいでおいしそうな名前だけど……。」
「否、決して食事などではない。彼らを一言で形容するのならば……世界という太陽の、巨大な黒点。この世の悪性そのものだよ。」

 悪の組織であるショッカーを知らないカグヤ。
 オーマジオウは、そんな様子を見ながら続ける。

「遥か昔よりこの世界の暗部に巣食い、多くの怪人を生み出し世界征服を目論む組織。それが、ショッカーの実情だ。」
「ぽへぇ~。」

 気の抜けた台詞とは裏腹に、カグヤの顔は義憤に満ち始める。
 少し考えた後、虚数の姫君は呟く。

「あたしは、人間が抱きしめたいくらい大好きだからああいう悪い人たちは許せない。」

 冷静に、しかし強く憤るカグヤ。
 世界の裏側たる虚数空間に生まれ、そこから多くの人間の在り方を見つめ、その悪性を受け入れながらも善性を信じ極限まで愛する虚数の姫。
 虚数姫カグヤの在り方は、究極なまでに純粋で曇ることのない人類愛に満ちているのだ。



「しかして、勢力を強めているメサイア教団。アレも放置してはならぬ危険だ。」

 そこにゼルレッチが、メサイア教団の存在を危惧する。
 ビルスはそんな彼を見て言う。

「あ?それはそこのよくわからん水色が言ってた放置しておくと、あの……『存在しなかった世界』?それが地上を浸食し全ての文明を破壊するという意味か?」
「水色っていうな~!ぷく~!!」

 カグヤを指さすビルス。
 彼女は先ほどの義憤に満ちた顔から再びほんわか味を取り戻しつつ、しかして頬をぷくっと膨らませピョンピョン跳ねながらぷんすこ怒る。
 そんなカグヤを諫めつつゼルレッチは続ける。
 どうやら彼が気にしている問題は、カグヤの言う『虚数空間を経由した存在しなかった世界の浸食』ではないようで。

「それもあるが、一番畏れるべきは『女神』だ。」

 ―――女神。
 それは現在進行形でメサイア教団の副官魅上が鋳造しているという謎の生命体。

「女神?随分と穏やかな名前だが知っているのか、おっさん?」
「色々と”見ている”間にその名を知っただけで、詳細は分からん。だが『女神』が覚醒した日には、多分儂にも御せぬ。」
「そんな危険物、すぐにでも破壊しちゃえばよくないか?」

 ビルスの言うことももっともである。
 彼が直接存在しなかった世界に行って、全てをなぎ倒して『女神』を叩けば解決しそうなものだ。
 しかして、ゼルレッチの言うにはそうもいかないようで。

「それが出来れば今頃儂がやっている。ああいうものほど、むやみに破壊したり抹殺したりすれば最悪の結末になりえるものだ。」
「要するに……噴火寸前の火山みたいなものですか?あんまり手を付けると爆発するみたいな。」
「そう言うことだ。アレを御するにはソロモンの指輪による弱化が必要だ。さもなくば全て滅ぶ。」

 その神々しい名前とは裏腹に、あまりにも危険な『女神』という存在。
 ビルスは、ただただ教団の在り方に呆れるばかりだった。

「面倒なもん作りやがったな、その教団は。」



「ところで、一度聞きたかったんだが……カグヤよ。」
「どしたの?」

 今度はゼルレッチがカグヤに質問を投げかける。

「確か1年前、冠位時間神殿ソロモン跡地で発生した……所謂『相続者会戦』について。あの神殿は虚数空間にあるはずだ。貴様も見ていたのだろう?」
「見てたよ。知りたいの?」

 冠位時間神殿ソロモンで発生した『相続者会戦』という戦争。
 その言葉を聞いた瞬間、今までほんわかしていたカグヤの顔が真剣さを帯び始める。

「もうそれはひどかった。レーザーもミサイルも魔力砲も飛び交って、熱量的には周囲の虚数空間全てが吹っ飛び地上にも影響が出るかもしれなかった。特に金ぴか大帝の宝具によるレーザー攻撃を跳ね返した人がいて……まぁ後始末が大変だった。」
「はは、儂の若いころを思い出すな。」

 ゼルレッチは、遥か過去に”とある脅威”を相手に大立ち回りを繰り広げた。
 気に食わないという理由でその脅威に喧嘩を売り、脅威が放つ迫る鏡像の月を彼は無尽のエーテルを込めた超魔力砲で対抗し、遂には打倒したのだ。
 閑話休題。

「で、最終的には全員の必殺技がぶつかり合ってその余波で指輪が離散しちゃったの。ありとあらゆる方向に飛んでいったから皆が回収した分以外はあたしも知らない場所に飛んでっちゃった。それがどうかしたの?」

 一通り、相続者会戦の話を聞いたゼルレッチは何かに気づいたのか眼を見開く。
 そして、虚空を見つめながら勇者―――CROSS HEROES達に忠告を呟く。

「だとすれば、尚の事メサイア教団に残りの指輪をあまり渡してはならない。とにかく彼らは教団の持つ『女神』を覚醒させてはならない……!」

12人目

「リビルド・ベース③王覧試合・円卓の騎士VS異世界の騎士」 

「ここにチェイテ城を建てましょう!」
「余の黄金劇場を打ち建てて、豪華絢爛たる歌劇(オペラ)を!」

 エリザベート・バートリーに、ネロ・クラウディウス。
拠点の建て直しに加え、皆好き好きに施設を増設しようとしていた。

「ゲームセンター!」
「プール!」
「コミケ会場!」

 便乗して欲望を口々に叫ぶサーヴァント達。
森での資材探索を終えて戻ってきた悟空たちは、その光景に目を丸くした。

「みんな何やってんだ? 楽しそうだな!」

 いくつかのチームに分かれ、資材を回収して回っていた他の面々も帰還し、
拠点修復に必要なリソースを有に上回る勢いに達したため、
その余剰分を利用してさらに施設を増やそうと言う話になったらしい。

「まあ、この特異点にはあちこちの世界からオーパーツにも近い物資が集ってくるし
大抵のものは作り出せるだろうな」
「特異点攻略のための拠点を建て直す話だったはずが、なんでこんなことに……」

 やれやれと肩を落とす藤丸の横で、マシュが瞳を輝かせる。

「でもなんだか、楽しいですね」
「……まあ、それはそうなんだけど……」

「クォーツァーを倒したとは言え、少しばかり浮かれすぎじゃないのか?」

 ゲイツは苦い表情を浮かべるが、それを笑い飛ばしながらソウゴが言う。

「いいんじゃない? これくらいの役得はあったってさ!」
「……はぁ」

 やたらと上機嫌なソウゴに溜息一つ、ゲイツは諦めたように首を振る。

「元の世界に残して来た連中は、今もミケーネ帝国やメサイア教団と戦ってる最中なんだ。
俺たちばかり楽しんでいるわけにはいかない」
「それを言われると……うん、俺もちょっと調子に乗りすぎたかも」
「まあまあ、そんな暗い顔すんなって! ゲイツは責任感が強いんだから」

 気まずげにするソウゴたちを、介人は笑顔で宥める。

「俺たちだって、いつまでもこの世界にいるつもりはないよ。セッちゃんも戻ってきたし
今までよりはずっと楽に時空間ゲートで行き来できるようになるはず」
「……そうか、そうだよね!」

『まあ、時空間ゲートを開くには結構なエネルギーが要るから、
あんまり無駄遣いは出来ないッチュン!』

 介人の肩に、翼を羽撃かせながらセッちゃんが降り立つ。

「セッちゃんと離れ離れになってたから、この特異点に閉じ込められたまま
結構な時間滞在することになっちゃったもんね」

 元はと言えば、特異点の調査のためにやって来たCROSS HEROES。
メサイア教団とクォーツァーの襲撃によって戦力は分断され
ソウゴに至っては投獄された上にあわや処刑されるまでに追い込まれたのだ。

「一段落ついたら、特異点に残るメンバーと元の世界に戻るメンバーについても
話し合った方がいいかもしれないな」
「そうですね。皆さんそれぞれの目的もあるでしょうし……」

 ゲイツの言葉に、マシュも同意する。

「それじゃ、ひとまずは修復作業に専念しようか!」
「修復ゼンカーイ!!」

 盛り上がる皆の輪の中で、介人も高らかに宣言した。

「円卓の名に恥じぬ戦いを期待します」
「ハッ……無論ですとも」

 拠点再建作業が進む傍ら、カルデアの円卓の騎士、CROSS HEROESのアルガス騎士団、そして勇者アレクがお互いの力比べを目的とした模擬戦を行うことになった。
アルトリア、そしてローラ姫がその戦いを見届ける。

「へっ、父上が見てる前で無様は晒せねえぜ」

 モードレッドは邪剣クラレントを肩に担ぎながら不敵に笑う。

「ご照覧あれ、我が王。このガウェイン、太陽の騎士の誉れを汚さぬ戦いを
お見せいたします」

 ガウェインは聖剣ガラティーンを構えながら静かに闘志を燃やしている。

「腕が鳴りますね……」

 トリスタンが竪琴を爪弾けば、響き渡る美しい旋律が戦士たちを鼓舞する。

「ひゃあ、皆、強そう……私などが混じっていて大丈夫なんでしょうか?」

 重々しい甲冑と槍を携えた少女騎士、ガレスは緊張に身体を震わせる。

「そんなに気負うことはないさ。我々の力を過不足なく発揮すれば良いのだ」
「ランスロット卿……!」

 憧れの湖の貴公子、ランスロットに声をかけられて、思わず顔を赤らめる。

「異世界の勇猛な騎士たちと手合わせ出来る機会など、滅多にあることではない。
共に全力を出し切ろうじゃないか」
「はい!」

「あの騎士……もしや、いつぞやの……」

 アレクは港区で剣を交えたシャドウサーヴァントの事をふと思い出す。

「成る程……彼こそがあの時戦ったシャドウサーヴァントの真なる姿か」

 ならば今度こそ彼の力、余すこと無く引き出してみせるとアレクは決意を新たにした。

「それでは、両者、位置に着いて……」

 審判を務めるベディヴィエールの合図で、両者は睨み合う。

「……始め!」

「おおおおおおおッ……」
「はああああああッ……」

 凄まじい轟音と共に繰り出される斬撃。

「素晴らしい! まさしく無双の一振りだ!」
「俺もパワーには自信があるが、そなたは格が違うな」

 ガウェインと闘士ダブルゼータはお互いに認め合った様子を見せる。

「バスターゴリラ同士、気が合うみてえだな。ガウェインに真っ向から向かって行くとは
なかなか剛毅な奴じゃねえか」

 その様子を横目で見ながら、モードレッドは笑みを浮かべる。

「ハッ!」

 弓の弦を弾いて真空の刃を発生させるトリスタン。剣士ゼータはそれを上回る脚力で
走り抜け、衝撃波を掻い潜り反撃を試みる。

「なんと……まさに疾風の如き速さ。だが……これならどうですか?」

 弦をさらに素早く弾き、天空へ向けて真空の矢を複数放つトリスタン。
放たれし光の矢は上空で分散し、降り注ぐ無数の光雨となってゼータを襲う。

「くっ……」

 さしものゼータも、これには堪らず動きを止める。
咄嗟に竜の盾をかざし、矢をやり過ごした。

「おぉ、あのトリスタン卿の矢を受け止めるとは……!」

 ガレスやベディヴィエールも、その華麗な攻防に感嘆の声を上げる。

「あいつが指揮官だな!」

 モードレッドは騎士アレックスに狙いを定め、果敢に斬り込んでいく。

「ぅおぅぅるァッ!!」

 飛び蹴りを叩き込むべく、大地を蹴って跳躍するモードレッド。

「その意気や良し! 受けて立とう!」

 アレックスも闘気を纏いながら剣を構える。

「はぁッ!」
「ぬんッ!」

 激突する二人の騎士。

「やるな……!」
「貴方こそ……!」

 互角の勝負を繰り広げながらも、お互いの実力を認め合う二人。

「……」
「浮かない表情ですね」

 そんな中、ローラは一人、暗い顔で黙り込んでいた。
アルトリアはその肩に手を置きながら語りかける。

「……先のクォーツァーとの戦いでは、私が至らないばかりにアレク様を
危険に晒してしまいました。私は……」
「過ぎたことを悔やんでも仕方ありません」

 ローラは自責の念に駆られるアルトリアに微笑んで見せた。

「皆、今よりもさらに強くなるべく、己の弱さと向き合い、
それを超えようとしているのですから」

13人目

「嗣章:脅威の掛け算」

女神を覚醒させてはいけない。
そう警告するゼルレッチの声色は、圧を伴った威厳ある物だった。
少なくとも、あのビルスでさえ傾注する程に。
彼の言葉には、そんな真実味があった。

「メサイア教団…女神の覚醒…」

そんな中、目まぐるしく回る思考を何とか保たせて時の界王神が、何か思い当たる節でもあったのかブツブツと呟く。
記憶を巡る様に、何度も何度も繰り返し。
耳障りだったのか、ビルスが苛立って声を上げる。

「オイ、煩いぞさっきから!」
「ヒィ!?ごめんなさい、何か引っ掛かる部分があって…!」
「…ほう?それなら、遠慮なく言ってみろ。」

ビルスに睨まれながら、呼吸を整えて暫し思考する。
やがて結論が出たのか、彼女は口を開いた。

「…嘗て、メサイア教団は全世界に向けて声明を流していたのよ。」

そう言うと、片手を開いて立体映像を空中に映し出す。
そこには白背景にSOUND ONLYの文字が書かれただけの簡素な映像。
だが、重要なのは音声の方だった。

『本日は我らが神の意志を代弁するために参上しました。』

実在の神が存在する世での、不遜な声明文。
これだけならば、滑稽なカルトごっこだっただろう。
だが、続く言葉が神達の琴線に触れた。

『神は今、あらゆる悪の根絶と人類の『進化』を望んでおります。そして今後、我らが神の声及び意思は、全世界の法となります。全世界の人民は神の法と声の下に、何一つ欠点のない完全なる存在として進化させます。そして全能や犯罪といった悪のない永続の平和を保障いたします。
神は過ちを犯す人類を裁き、完全にして全能なる存在へと昇華させるおつもりです。それこそが人類の持つ悪性の根絶へと通じるのです。』

酷く冷めた目付きのビルスが、下らなさそうに呟く。

「…へぇ?神を騙って、随分と調子に乗った事を言ってくれるね?」

その眼光は既に、人を見据えているものではなかった。
それこそ、まるで害獣を見るかの様な。
興味無さげな態度を取っていたウィスも、これには口元を隠す始末。
彼等は、知らぬ間に神に、破壊神に喧嘩を売ったのだ。
末路は、碌な物では無いのだろう
そんな様子を一頻り眺めた後、時の界王神が言葉を続ける。

「アイツ等のいう事を鵜呑みにするのなら、これが女神の覚醒なのかもしれないわ。」
「確かに、御せる代物では無いな。絶対善止まりの人類なぞ、進化の終着だ。」

ゼルレッチが納得し、ビルスは大きく息を吐いて肩を落とす。
彼等なりに、事態の大きさを理解したのだろう。
一方のウイスは、珍しく困った表情を浮かべ、こう語った。

「もしもその話が本当だとしたら、とーんでもない事になるかもしれませんねぇ?」
「人間が全員善人になるだけだろ?」
「それだけじゃ済まないんですよ、これが。」
「うん?」

要領を得ず、ビルスが怪しげに問う。
対するウイスは、苦笑しながら答えた。

「全人類の善人化、ここに暗黒魔界の存在が合わさると、それはそれは面倒な事になりますよ?」
「暗黒魔界?あー、確か界王達が覗けない裏の掃き溜めみたいな世界だっけか?」
「えぇ、大体合ってます。」

ビルスが、顎に手を当てて答える。
その通り、と言わんばかりに、時の界王神は首を縦に振った。
この宇宙とは異なる法則に支配され、そこに異なる進化を遂げた魔族の住まう地。
曰く、悪魔が統べる邪悪なる世界。
それ故に彼等の価値観は、人間とは全く異なるのである。
それは極端に言えば、悪と言っても過言では無い物だ。

「風の噂で小耳に挟んだんですがね。彼等の活動が、最近になって活発になっているんですよ。」
「はぁー、成程。とすると…合わさったら面倒だな?」
「はい、そこに存在しなかった世界とやらも合わさると…」

仮に、人間の悪意を全て浄化されたとして、そこにもし暗黒魔界という悪意が進出したらどうなるのか。
結果は火を見るよりも明らかだ。

「地上と魔界の終わりなき絶滅戦争、更に世界の侵食、即ち終末ですね!」
「嘗ての正義超人と悪魔超人のぶつかり合い、その全人類バージョンって訳。」
「…地獄絵図になるだろうな。」
「最悪~!」

全員が顔をしかめ、溜息をつく。
どれか一つでも厄介極まりない案件が、一気に巨大な地雷原へと膨れ上がったのだ。
一つでも逃せば連鎖爆発する、言わば核の地雷だ。
ビルスも、これには面倒臭そうに頭を掻くばかりだ。
いっそ、地球を消して問題を見なかった事にしたい気分でもあった。
だが、オーマジオウがそれを許さないだろう…そう思い至った所で、その彼から宣言が下された。

「皆、案ずるな。」

普段の覇気の籠っていない、何処か自信の無い声色。
それでも、確固たる意志と決意を感じさせる、力強い声だった。

「この地上には、CROSS HEROESが居る。我等は彼等の後詰めとなり、未来の全てを委ねるとしよう。」

彼の声は、まるで自分に言い聞かせるかの様にも聞こえた。
それが何を意味しているのか、誰もが理解した。
彼は、CROSS HEROESを信用しているのだ。
数多の仲間が紡ぐ奇跡を。
確信に満ちた眼差しに、珍しくビルスが眼を見開いて、こう呟いた。

「何だが、面白そうな展開になってきたね。」



「ふぅん、ポイポイカプセルみたいに装甲を内蔵してて、それを展開して装着するアイテムなのね、それにこれなら直せそう…」

一方でブルマは、界王神の監視が無い事を良い事に、ライドウォッチを分析し、あまつさえ修復しようとしていた。
最先端の機械技術を持ち合わせる彼女にとって、画一化された機構の解析など造作も無い事であり、難なく修理に成功する。
最も、ジクウドライバーが無ければまともに扱えた代物では無い為に、使用する事は叶わなかったが。

「装甲を内蔵して纏う…これ、うちの技術で真似すれば、アレが出来るかもしれないわね。」

代わりに、ライダーシステムという代物からコンセプトを得た様だ。
彼女は、あるアイデアを思い付くと、意気揚々とその場を後にする。
向かう先は、彼女の職場。
つまりは研究室だ。

「久しぶりに良い物が出来そうね、やるわよ~!」

中に入って、直ぐにパソコンを立ち上げる。
パスワードを入力すると、画面は直ぐにデスクトップに切り替わった。
その画面に、指を滑らせてキーボード入力していく。
同時に、研究室の機材がけたたましく動き始める。
彼女の天才的頭脳は、今日もまた、新たな発明を生み出す。
それが、彼女の生きる意味。
故に、止まることなど有り得ない。

14人目

【ー閑話ー 女神と呼ばれているらしい】

「・・・どうやらなんとかなったようで良かった」


何処にも存在しない場所にいる女神はエーテルが別世界へ行ったことを確認した


「深淵にさえも打ち勝てるようになったなら異端者達との戦いも任せてよさそうですね」


この女神の本名はプリズム・オブ・エレメント
この四季彩世界の全ての属性を司っているとかなんとかまあ、噂の女神とか
だが、本人が言うからに正体不明とかなんとかそうに違いない。

それはそれとして、置いといて、エーテルに指示を出したのは実体が存在しないからである
だから、見ているだけしか出来ないのだ
見てるだけしか出来ないのである・・・見事な暇人である


「ここから動けないのも悩ましいものですがしっかりと役目を果たしてくれてそうでよかったよかった・・・」


ついでにあの異端者も倒してこの世界の守りも強固なものにしてもらえる一石二鳥とはまさにこのことである


「異端者を倒す、そうこの世界の安全策である」


私には見える・・・
全時間軸、全て異端者共に邪魔される未来が!
だからこそ、倒さなければならないのです。
世界に仇なす者は全て、消え去ればいい。
そうすれば忌まわしいものなど見なくて済むのだから

15人目

「リビルド・ベース④メメントスを探索せよ」 

「よし、ではメメントスの探索にいくぞ」

 フォックス、クィーン、パンサーは拠点の地下に広がる
メメントスに向かう。

「地底世界……まるで冥界下りのようね。いいでしょう、この冥界の女主人、
エレシュキガルが導いてあげるわ」
「ご命令とあらば……」
「かったるいなー……そんなことより虞っさま召喚はよ」

「な、何だかやる気に欠けるメンバーなのだわ……」

 カルデアからはランサー:エレシュキガル、ライダー:メドゥーサ、
アルターエゴ:徐福が同行する事となる。

「修行に丁度良さそうだな。ピッコロ、一丁オラたちも行くか?」
「いいだろう。地下から化け物がワラワラ出て来られては迷惑だからな」

「ベジータはどうする?」
「貴様らだけで行け。俺は勝手にやらせてもらう」

「では、私が代わりに行きましょう。ネオブラックドラゴンとの再戦に向けて、
今よりも腕を磨く必要もありますし」

 CROSS HEROESからは悟空、ピッコロ、バーサル騎士ガンダムが参加する事になった。

「では、行きましょう。皆さん、私達の近くに」
『イセカイナビを起動します。メメントスへの移動を開始します』

 クィーンがスマホ内のナビに従い操作を行うと、空間が歪み始め一同の姿は
何処にも見えなくなった。

「行っちゃった……」
「これでシャドウが出て来なくなると助かるんだが……」

 メメントスに向かった面々を見送るCROSS HEROESとカルデアメンバー達。

「さ、俺たちは拠点の再建作業を急ぐぞ!」
「応ッ!!」

 彼らは自分たちの成すべき事を成す為、再び動き始めた。

『メメントスに到着しました』

「ほえー…ここが……」
「なんだか陰気臭い場所なのだわ……」
「確かに、この世の負が渦巻いているような気配を感じる」

 メメントスとは、人々の集合無意識が生み出すもう一つの世界。
抑圧された負の感情が具現化したものたちが跋扈している。
そしてこの場所には、人を襲い糧とするシャドウという存在がいる。

「メメントスは、常にその內部構造を変化させるんです。
どんな罠やシャドウが待ち受けているのか、それは誰も知り得ない」
「モルガナやナビがいれば、色々と教えてくれるんだけどね……」

「へへっ、そうでなくっちゃあな。強ええ奴が相手の方が修行になるぜ!」
「ある程度調査が進んだら、ひとまず拠点に帰りましょう」

 一行は警戒しながら、地下へと続くエスカレーターを下っていく。
その先で彼らを待ち受けるものとは……

16人目

「Track 序:楽園の素敵な払魔奇譚」

 ―――幻想郷。
 そこは忘れ去られたものが集う場所。
 駆ける時間に、流れる人々に、荒ぶる世界の荒波に飲まれ、沈んでいった数多もの神秘が一堂に集う、神秘の見本市。

 その幻想郷は、今―――!!

「くそ、撃っても撃っても倒れねぇ!日に日に強くなってねぇか!?」
「ええほんと!この悪霊は特にしぶとすぎる!」

 札を手にする、紅い巫女服に身を包んだ少女。
 箒にまたがる、黒い帽子を付けた金髪の少女。

 相対するは、2人が目視できる限り300はあろう黒い幽霊『悪霊』。
 ここまで来るともはや悪霊の一個大隊だ。

「ここ3か月、ずっとこんな調子なんだろ!?霊夢が『骨折れる』っていう気持ちが分かってきたぜ……!」
「今はまだまだ余裕だけどこのままだとジリ貧ね。紫の言う援軍も早く呼んできてもらいたいわ……。」

 数多もの悪霊を前に戦闘を行う、楽園の素敵な巫女『博麗霊夢』。
 悪霊を相手に高火力のレーザーを放つ、普通の魔法使い『霧雨魔理沙』。
 彼女たちは、勇者たちの到来を静かに待っている――――――。



 そのころ、建て直し中のクォーツァー・パレスにて

「木材おまちどお!」
「助かる!」

 シャルル遊撃隊の4人は、CROSS HEROESの皆と共にクォーツァー・パレスの建て直しをしていた。
 今までの戦いに明け暮れた日々とは打って変わった、どこかのどかでどこか平和な光景に4人の表情が笑顔で満ちる。

「絶望的に平和だな。」
「そうだね。今までの闘いの日々が嘘みたいだ。」
「全くだ、こんな日々が続く……訳はないだろうけども。」
「いやはや、皆揃いも揃って精の出ることだ。」
「ああほんとそうだな……って、ルクソード!?」

 音も出さないで、その場にルクソードが立っていた。
 その登場に、みんな驚く。

「何しに来たんだよ!?てか、あの女の子はどうした?」

 口調とは裏腹に、江ノ島がペコの安否を心配する。

「彼女は無事だ。現在は安静にしている。しかし戦闘行動は当分無理だし、教団の情報は……今は聞けそうにないな。」
「そっか。良かった……。」

 江ノ島は、深い息とともに安堵した。
 その顔は安心に満ちている。

「それはそうと、物資を持ってきたぞ。」
「物資って、手ぶらじゃないか。」

 そう言われたルクソードが、1枚のカードを手元に出す。
 いつ現れたかもわからないカード。それに魔力を込める。
 すると、そこから木材の山が出現した。それだけではなく釘だの何だのと資材の山が現れる。

「この木材は奥にいる森くんたちが調達したものだ。私のカードは物の出し入れができるのでな。物質運搬は任せたまえ。」
「すげぇな、カード。」

 奇しくも江ノ島は、港区にいる西園寺や同じようにパレス建て直しをしている罪木オルタと同じ反応をした。
 当然、当人はそんな事は知る由もないのだが。

「……てか、それって他の人も使えるのか?」
「使えなくはないが、神秘的な力が必要だ。」

 ははは、と茶化しまがいに話すルクソード。

「あらあら、元気がよいことで。」

 八雲紫が現れた。
 どうやら少し話があるようで、4人を集めて話を始める。

「つまり、幻想郷ってところに行く人を決めてくれってことか?」
「そういうこと。」

 紫から聞かされたのは、先にモリアーティに話した内容とほぼ変わりのない内容だった。
 しかし、彼らにとってはこの先に待つ敵を初めて聞く事になる。

「でも、あんたが言うには今、大勢は入れないんでしょ?」
「そうね、だからあなた方の中から1~2人来てほしいわね。」

 4人は顔を見合わせる。
 そのうち来る沈黙の後、リクは手を上げる。

「あそこにはゼクシオンがいるんだろ?じゃあ俺が行くよ。」
「リクか。シグバールの件もあるとはいえ、大丈夫か?」
「奴とは一度戦ったことがある。指輪の件もあるから100%とはいかないが、大丈夫だ。」

 3年前、リクは一度ゼクシオンと戦闘を行ったことがある。
 彼との戦いは、己が闇に向き合う機会を与え自身が成長するきっかけとなった。

「まぁノーバディ相手なら、俺よりもリクが一番適任だからね。任せたよ。」
「ノーバディってのがよくわからないから、あたしも託すよ。」
「うし!カッコいい活躍を期待してるぜ!リク!」

「でももし行くとしたら……その建物の改装が終わってからの方がいいわよね。仕事は今のを終わらせてから新しい仕事を始めた方がいいってよくいうし。」
「あっちの人は大丈夫なのか?」

 紫は、空を見上げた。
 まるで、誰かの無事を祈るかのように。

「信じてるもの。あの2人は簡単に負けはしないわよ。」

17人目

「大泥棒ルパン三世、特異点を行く」

 超時空戦艦・アビダインに便乗し、特異点入りを果たした
世紀の大泥棒・ルパン三世とその相棒の凄腕ガンマン・次元大介。

「妙な戦艦にくっついて来たはいいが、一体ここは何処なんだィ、ルパンよぉ」

 次元がタバコに火をつけながら尋ねると、ルパンは自慢げにこう答えた。

「ネズミーランドじゃねぇ事ぁ確かだわな。空飛ぶ戦艦、妙な化け物、文明体系も
て~んでバ~ラバラときちゃあよォ」
「それにしちゃずいぶん楽しそうに見えるぜ」

「ぬふふふふ、そりゃあそうよ。ってこたぁよ? 
今まで見たこともねえお宝だって山ほど転がってるかも知れねェぞ!」
「それが狙いか……相変わらず酔狂なこって……」
「付いて来てるお前さんも大概だと思うけどなァ」
「へへ、違いねえや」

 二人はいつものように軽口を叩き合いながら、特異点の荒野を行く。

「見ろよ、コンビニと牛丼屋だってあらぁな」
「どう言う原理なんだかねぇ……ん?」

「ぐへへ……」

 野盗たちが二人を取り囲み、刃を向ける。

「あーらら、また随分とお約束の展開で……」
「何処の世界でもこう言う奴らは居るんだろうさ。まあ仕方ねぇか」

「なーにごちゃごちゃ言ってやがる! この人数相手に勝てるつもりか!?
金目のモンと置いてきゃ命だけは助けてやるぜぇ!」

 男たちは下卑た笑いを浮かべながらじりじりと距離を詰めてゆく。
だが、次元とルパンに恐れの色はなかった。

「だってよ。どうする相棒」
「ヘッ、決まってらァ。蹴散らしてやんぜ」

 二人が背中合わせに立つ。

「やっちまえー!!」

 男たちが一斉に斬りかかってきた。

「きぇああーッ!!」

 ナイフを閃かせて、ルパンに襲い掛かる男。

「よっ、ほっ、ほっ。鬼さんこちら~」
「ちくしょう、ちょこまかと逃げ回りやがって……」

 巧みに攻撃をかわし続けるルパンに焦り始める男。
その刹那。

「そーらよっと」
「ぐわっ」

 男の顔面にハイキックが炸裂した。
顎を革靴でカチ上げられ、地面に転がった男は目を回しながら気絶していた。
人体の急所を熟知した、少ない動きで最大限の効果を得られる攻撃だ。

「ぐがが……」
「一発でおねんねたァ、情けねぇ野郎だぜ」

「うおおッ!!」

 もう一人の男が果敢にも次元に向かっていく。
振りかぶられた円月刀が次元の身体を引き裂かんとしたその時。

「そらあああああッ!」

 鋭い一太刀が空を切った。
次元の手にはいつの間に抜かれたのか、マグナムが握られている。

「無駄に吠えてる暇があんならさっさと勝負を着けるこったな」
「――ぎゃあああっ!!」

 男の肩から鮮血が噴き出す。
肩を押さえながら悶絶する男の額に次元のマグナムの銃口が突き付けられた。
銃爪を引く指の動きさえ追えないほどの早業だった。

「ひっ、ひぃいいい~っ!!」
「チッ、弾ァ使うのも勿体ねぇ。五ェ門の斬鉄剣の居合に比べりゃあよ、
遅過ぎてあくびが出るぜ」

「バ、バケモノだァ!!」

 男たちはすっかり戦意を喪失してしまったようで、一目散に逃げて行く。

「こ~んな良い男捕まえて"バケモノ"たァ聞き捨てなんねえなァ? なあ次元?」
「確かに俺らはちょっとばかし普通じゃねぇかもなァ」

 野盗が落としていった小銭袋を拾い上げながら
ルパンと次元は顔を見合わせて笑っていた。

「これからどうする?」
「ま、メシでも食いながら考えるさ」

 二人は近くの街へと向かっていった。
この特異点にて、どの勢力にも属さぬ彼らがどのような立ち回りを見せるのか……
それはまだ誰も知らない……

18人目

「出現、黒平安京/光の神、その名はゼウス」

一方その頃特異点では、
「……この気配……なるほど、どうやらようやっとゲッターロボが完全なものになったか……」
安倍晴明、彼はハーデスに門前払いを食らった後、スウォルツと共にこの特異点へと移動、その後彼と別れた後たった一人この特異点で力を蓄えていたのだ。
「……ならば、こちらも準備をするとしよう」
そう言い晴明が呪文のようなものを唱え始めると、大きな結界のようなものが出現し、そこからまるで平安京を彷彿とさせるような都が生えてきた。
「黒平安京……ゲッターとの因縁に終止符を討つのならやはりここが一番ふさわしい…!」
彼の望みはただ二つ、憎きゲッターロボへの復讐、そしてCROSS HEROESとの決着だった。
(CROSS HEROES……我が記憶の片隅に残ってるこの名前……これが何なのか知るためにも、憎きゲッターだけではなくやつらともケリをつけねばならぬ……)
彼が取り出したのはマナカケンゴ/ウルトラマントリガーが変身に使うハイパーキーのうちの1つだった。
「この不思議な形状の鍵からはあのトリガーなる光の巨人と同じ力を感じる……奴らをおびき寄せる餌として使えるかもしれん……」



一方その頃、ギリシャでは
「なんだアイツは…!?」
「アルケイデス…そう名乗っていたな」

「……む?あれは……」
アルケイデスはマジンガーZやグレートマジンガー、ビューナスAを見つめた。
「……感じるぞ、その鋼の巨人共から忌まわしきヤツに似た意思を……!」
「え…?ヤツって…ッ!?」
なんとアルケイデスは甲児の乗るマジンガーZ襲いかかって来たのだ!
「ガハッ!?」
「甲児くん!」
「甲児!」
「うぅ…何をするんだいきなり!?」
「その鋼の巨人から感じるのだ、私が憎む者の一人……ゼウスに似た意思を…!」
「ゼウスだって…!?」
「何故その鋼の巨人からヤツに近い意思を感じるかは知らんが……貴様らがヤツの関係者だというのなら……ここで滅ぼす!」
そう言いアルケイデスはマジンガーZを破壊しようとしたその時…!
「っ!?な、なんだ!?」
突如としてマジンガーZの全身が光り出したのだ。
「これは…マジンガーZから光子力が溢れている…!?」
マジンガーZから放たれた光はどんどん強まっていき、アルケイデスの身体を包みこんだ。



「……ここは……どこだ?」
気がつくとアルケイデスはどこかもわからぬ不思議な空間にいた。
「私は何故こんなところにいる…?あの時鋼の巨人から放たれた光が原因か?」

「……私が呼んだのだよ」
「っ!?誰だ!?」
アルケイデスが声のした方を振り向くと、そこには黄金の巨人がいた。
「我が名はゼウス……またの名をZマジンガー」

19人目

「鬼が来たりて」

『藤丸くん! 特異点に新たな反応だ! かなり大規模な時空の歪みが発生してる!』
「なんですって……!?」

 騒然となる一同。

『映像を送る!』

 そこに映し出されたのは、平安時代の都を思わせる巨大な都市の姿であった……

「平安京……!?」
「これだけのものが一瞬にして出現したと言うのか……?」

「こりゃあ……映像で見てるだけでもやべえ代物だってのがよくわかるぜ……!」
「禍々しい気配をひしひしと感じます……我ら頼光四天王の出番ですね」
「御意に」

 神秘殺し、源頼光率いる平安時代最強の武士団。
そこに名を連ねる坂田金時、渡辺綱も戦闘態勢に入る。

「久々に若い頃を思い出して血が滾って来たなぁ。
一丁、あん時の装束でも引っ張り出してくっかァ……」

 金時はそう言って何処かへと走って行った。

「おや? 酒呑さんや茨木さんの姿が見当たりませんが……?」

 マシュの言う通り、本来であればここにいるはずの鬼二人の姿がない。

「再建作業をサボって酒盛りに明け暮れていた羽虫たちなどどうでもよろしい。
あのような者たちがおらずとも我らの力を持ってすれば問題はないでしょう。
さて……参りましょうか。マスター」

「メメントスに向かった人たちの帰りを待ってる余裕もないね……」
「とにかく今はこの緊急事態への対応が最優先です。マスターの指示に従いつつ
臨機応変に対応していきましょう」
「了解、みんな気をつけて行こう!」

「拠点修復班の皆さんはそのまま作業を続けていてください。
調査班を組んで、あの黒い平安京の様子を探りに行きたいと思います」
「おう、気をつけてな」
「CROSS HEROESからも何人か手伝いに向かわせるよ」
「ありがとうございます、助かります」

 こうして彼らは特異点の調査のため、黒平安京へと足を踏み入れたのだった。
一方、黒平安京では……

「さあ、来るがいい、CROSS HEROES……」
「ンンンンン……懐かしい光景ですなァ。
あの栄華を極めた京に勝るとも劣らない美しさ、そしてこの禍々しい魔力の流れ……
まさしくここはあまねく怪異が跳梁跋扈していた平安京そのものと呼ぶに
ふさわしい……!」

 晴明が鎮座する都の中枢、大内裏。その最奥部の間に現れたのは……

「リンボ……貴様、どの面を下げて来た!」

 バードス島の決戦の最中、ひとりジェナ・エンジェル一味に取り入って姿を消した
キャスター改めアルターエゴ・リンボだ。

「これはこれは、晴明殿。拙僧はただ、貴殿との再会を喜んでいるだけなのですぞ」
「抜かせ! 貴様の戯言に付き合う暇などない!」

 そう言って晴明はすぐさま式神を放ち攻撃を仕掛けるが……

「ふふ……」

 ある者は式神を切り払い、またある者は炎にて焼き尽くす。
その小柄な人影からは2本の角が生えており、その姿はまるで鬼のようでもあった。

「このように、協力者も得られましたゆえ……拙僧もお力添えをして差し上げましょうぞ。
何せ、貴方の魂を現世に呼び戻したのは他ならぬ拙僧でありますし……
相手はあのカルデア! であれば、こちらも本気で迎え撃たねばなりませぬ故……!
待ちました……ええ、待ちましたとも、この時を! 今こそ積年の恨み晴らすとき!
ふふふ……はーっははははははははははは!!!!!」

「協力者? ふふ……何や勘違いしはっとるみたいやけど、
ウチらは別にあんたらの味方とちゃうで。
ただ、こっちのが『面白そう』っちゅうだけの事」
「クハハ……この都に漂う瘴気……実に心地良いなぁ、酒呑よ。
こちらの方が吾らの性に合っておる」

「そう言う事。好きに奪い、喰らい、殺す。それがウチら鬼の流儀なんやから、
邪魔せんといてな?」

 大江山を拠点とし、かつて平安の地で暴虐の限りを尽くした茨木童子、酒呑童子……
カルデアの一員であったはずの彼女らであったが、
黒平安京の邪悪な魔力に感化されたのか、その目には狂気の色が宿っていた……

「……フン、好きにするがいい。だがリンボ。妙な真似をするなら即刻叩き切るぞ」
「もちろん心得ておりますとも。嗚呼、愉しみですなァ。カルデアの者どもを屠り、
彼らの絶望に満ちた表情を拝むことができるかと思うと……! クフ、クハハッ……!」

 晴明、リンボ、そして酒呑と茨木は本当にカルデアを潰すつもりなのか?
それともまた別の思惑があるというのか?
いずれにせよ、彼らは黒平安京で密かに暗躍しようとしていた。
新たなる戦いが始まろうとしている……

「ふふ、そうそう。全ては洒落。面白可笑しくやらんとなァ。
酒に浮かれてふーらふら、夢見心地で鬼踊る。早ぅ思いっきり闘り合いたいなァ。
小僧……それに……」

 酒瓶を一気に飲み干すその視線の先には、ひとりの英霊の姿があった。
源頼光……源氏の棟梁。切っても切れぬ因縁。
カルデアにおいては同じマスターに仕えるサーヴァントとして協力体制を敷いていたが、
その実、全力で戦いたいと言う本能は消える事なく沸々と燃え続けていた。
黒平安京の出現はあくまできっかけに過ぎない。即ち「理由付け」だ。
己の欲に素直な彼女たちは黒平安京の瘴気による後押しも手伝って
ついにその欲望を抑えきれなくなり……遂に行動を開始するのであった。

「くろすひーろーず言うんも強いお人がわんさかおって、ええもんやなぁ。
あんたはんらもウチを楽しませてくれるん? あは、あははは!」

 黒平安京を舞台に、再び始まる鬼たちの宴。
果たして、カルデアとCROSS HEROESは晴明やリンボたちを打倒し、
この事態を解決する事が出来るのであろうか?

20人目

「追憶:蒼い帽子を拾った日」

雨宮 蓮は、ある冤罪から保護観察を受けている身だった。
己の正義に準じた結果ではあったが、歪んだ正義の前には報われる兆しすら無く。
警察は国家の犬で、身内からは厄介払いをされ。
その末に四軒茶屋のルブランへと引き取られた。
そこの主からも、転校先でも厄介者扱いを受ける。
周囲の大人は、少なくとも味方では無かった。

『全ては、彼の責任だ。』

孤立とはこの事か。
唯一、惣治郎の恩情から衣食住と学業を保障された事が救いだった。
そうして一年という保護観察期間が、彼に課せられた。
世間が下した評価だった。
服役と言っても良い。
無念が無いと言えば、嘘になる。
それでも、己の正義に嘘はつきたくなかった。
嘗て見た『あの超人』に憧れたから。

『へのつっぱりは要らんですよ!』

だから、たかが一年なぞ乗り越えて見せると最初は一念発起してみせた。
ただ、次第にその先の未来が何も見えない事実が頭を過ぎった。
自分は前科者で、ただの一市民で、学生なのだ。
あの日の間違いを正す術は、無い。
だから、心の片隅で不安に苛まれ、何時か押し潰されるのでは無いか。
そんな恐怖が、僅か半日で根付いていた。
初めてのルブランでの夜は、ただひたすらに夜明けを待ち望むばかり。
意識が落ちるまでが、酷く長く感じた瞬間だった。



思えば出会いは突然だった。
保護観察を受けてから、初めて登校した朝。
にわか雨に打たれ、路地裏を駆けた時に、彼と顔を合わせた。
初めは、ただすれ違うだけ。

(子ども…?)
「ぁ…」

それだけで、脳裏に焼き付く様な印象を覚えた。
特徴的な蒼白の衣服は勿論だけれども。
無機質なコンクリートの壁から、わずかに飛び出た室外機の影。
そこで体育座りで雨宿りをする彼の姿は、まるで捨て猫だった。
チラリと見えた目の奥底は、底なしの闇を抱えていて。
他人を拒絶し、心を閉ざし、何もかもを諦めている。
救いを求める事すらままならぬ様は、絶望を体現しているかのようで。

「_オイ、遅れちまうぞ!?」
「君、風邪を引くぞ?」

有り体に言って、見捨てられなかった。
連れの竜司の声も余所に、俺は制服の上着を彼に掛けた。
そこでピクリと震えて、困惑した目付きで此方を見上げたんだ。

「…何で?」
「って制服!学校に行くんだぞ!?てかお前がびしょ濡れになんぞ!!」

竜司には色々問い詰められたが、正直後先考えてはいなかった。
そんな物よりも、目の前にいる今にも途切れそうなか細い命が。
ひどく気になって、仕方なかったから。
ただ、その一心だった。

「…ありがとう。」

これが、彼との最初の邂逅だった。



学校と言われ連れられた場所に着いてからは、怒涛の展開だった。
そこは学校とは似ても似つかない、現代社会とはそぐわない明らかに異質な建造物、即ち城だった。
初めは間違ってラブホテルにでも来てしまったのかと身構えた。
だが看板が書かれている上に、何より自分も一度そこに足を運んだ身である。
間違える筈が無い。
何かの催しか、あるいはドッキリ企画なのかとも考えたが、それにしては大掛かり過ぎると、当時は呑気に思ったものだ。
立ち止まっても埒が明かないと中に入れば、出迎えたのは鎧に身を包んだ兵士達。
コスプレの類いでは無い。
本物の兵士に襲われる体験には、流石に肝を冷やした。
そのまま流れる様に牢獄に閉じ込められて、ようやく実感が湧いてきた。
これは現実だと。
そして、今までの流れからから導き出される一つの問答。
ここは何処で、一体、誰に何をされるのか。
それに辿り着いたした途端、猛烈な焦燥感に襲われた。
そして、それは現実になった。

『貴様等を処刑する。』

鎧の兵士が、淡々とした表情で告げた。
それからは、まさに地獄絵図だった。
痛め付けられ、血反吐を撒き散らして、それでも終わらない。
殴られ、蹴られ、何度も何度も。
肉が裂け、血塗れになっても、終わる気配が無かった。
気が付けば、目の前が真っ暗になっていた。

(俺は、死ぬのか。)

そう思うと、次第にやるせない気持ちが込み上げてきたものだ。
己の正義は間違っていたのか?
人を助けようとした事は間違いだったのか?
そもそも、自分の正義とは?
己の命を投げ出してまで貫くべき価値があったものなのか?
思考がグルグルと巡って、息が詰まりそうになった。
…それでも、己の心に嘘は付きたくなかった。
それが、決定打だった。



「_蓮、蓮!どうしたんだ?急にぼーっとして。」
「…あぁ、悪い。少し、考え事をしてた。」

キン肉マンに揺さぶられ、漸く彼は思案に耽っている己を自覚した。

「全く、敵陣のど真ん中だぞ?へのつっぱり要らんぜよ。」
「意味は分からないが、忠告として受け取っておく。」

久方ぶりのパレス攻略故か、懐かしい話を思い出してしまった様だ。
そう、初めてのパレスに遭遇したあの日の事だ。
右も左も分からぬまま、待ち受けた理不尽に命を奪われる寸前だった瞬間。
それは、今の自分を確立した運命の分岐点でもあった。
叛逆の力、ペルソナ。
そしてアビィとの出会い。
…やはり、今も尚気になって仕方ない。
彼は今、どうしているだろうか?
この歪んだ世界で、どうか無事でいてくれと願う。
ただその反面、今の彼ならば大丈夫だろうという信頼もあった。
何なら、きっとこの窮地に駆け付けてくれると信じてさえいた。



「全く、アビダイオーを土木工事に使わせるなんて人使いが荒いもんだね?」

一方のアビィは、クォーツァーパレスの修繕作業に勤しんでいた。
巨大な人型兵器であるという利点は拠点設営には持って来いであり、超人達と共に大雑把な修理を手伝っている。
言葉の上では不満を訴えてはいるが、その表情は明るい。

「ま、これが終わったら僕の役割が漸く果たせるし、少しぐらい良いか。」

かつての友との再会が、すぐそこに迫っていると確約されているからだ。
元よりそれが目的で、この特異点に来訪したのだ。
彼にとって、クォーツァーはおまけ、前菜に過ぎない。
これが片付けばメインディッシュへとありつけると考えれば、苦では無かった。
それ程までに、雨宮 蓮の存在が彼の胸中を占める割合は大きい。
だからこそ、早く会いたいと思う。

「今度は、僕が君に返す番だ。」

21人目

「Track 破:スリーサイド・ファンタジア」

 悪霊。
 この言葉を聞いて、人は何を想起するだろうか?

 白い死に装束を身に纏った、髪が長く此方を恨めし気に見る亡霊?
 炎だかオーラだかを放つ、動く骸骨?
 空中を気ままな妖精の如く飛び交う、色とりどりの火の玉?

 なるほど、その解答は一通り正しい。
 しかし、今霊夢と魔理沙が相対している悪霊は残念ながらその全てとは全く異なる。

「あんなの白玉楼にいる『あいつ』でも匙を投げる案件ね。」
「全くだ、幽霊にしても今まで見たことのない形だぜ……。」

 後に博麗神社の巫女、博麗霊夢はその『悪霊』の特徴をこう記録した。

『石炭のように黒い身体をベースにして、頭蓋に当たる部位からはひと際ドス黒い角が生えていて、鋭い3本の爪を生やして発達した右腕とは対照的なのは左腕の部位。まるで攻撃を受けて吹き飛び、ちぎれたのかと言わんばかりに退化。いや、アレはもう『消滅』ね。』

 幻想郷は魔法の森に住まう魔法使い、霧雨魔理沙も同じく記録していた。

『ない左腕の代わりとでも言わんばかりに、あいつらの背面からは巨大な黒い大鎌のような、それこそ『第三の腕』とでもいうべき部位が生えているんだ。形は微妙に違うが、アレは鎌としか形容できなかったぜ。』

 非対称に発達した腕。武器を搭載した第三の腕。ドス黒い身体、謎の角。これだけでも既存の幽霊とは明らかに何かが違うと言える。
 その在り方は、幽霊の域を超えて『異形の化け物』というべきだろう。
 そして、この悪霊最大の特徴は。

『悪霊の体からはまるで黒く固まった油のようにドロドロした黒い『何か』が垂れ落ちていたわ。その何かのせいで顔は認識できないどころか『溶けた』ように見えて、気味悪さを演出していた。』
『弱点であろう胴体の赤い核も、黒い泥のようなもので出来た肋骨みたいな部位で守られているし、何しろ……少しずつだが、私たちの攻撃を学習して段々と強くなる特徴も持っている。』

 黒い泥、或いは重油のような何かを垂らして進撃する悪霊の群れ。
 挙句の果てには攻撃の学習能力という無法を装備して立ちはだかるというのだ。

 ならばありえる。手練れの戦士である霊夢たちが3か月もの間苦戦するのも事実と言えるだろう。



 ある日の夜の事だった。

「お嬢様、お茶の用意が出来ました。」
「ありがとう咲夜。テーブルに置いておいて。」

 異形というのならば。彼女もまたそうといえるだろう。
 幻想郷の奥地、霧の湖の岸に存在する真紅の魔城。

 名を『紅魔館』館の主の名は『レミリア・スカーレット』。
 彼女は今、悩んでいた。

「ところで、あの男の様子は?」

 その眼は、悩みというよりかは呆れがあった。
 まるで下らないジョークを聞いた時の、どう反応すればいいのかが分からない眼と顔。

 咲夜という従者も、その呆れは主と同じようで。

「あの『”自称”ナポレオン』ですか?今は大人しく本を読んでいますが……。」

 わざとらしく、胡散臭い噂話をする声で話す。
 槍玉に上がった男の名―――――ナポレオン。本名『ナポレオン・ポナパルト』。
 その名前と彼が作り上げた多くの逸話は、フランスの歴史と伝説の中で最も有名で偉大な人物と言える。
 そんな男が幻想郷にいるのも不思議だが。

「普通、ナポレオンって言ったらもっと小柄で細身だと伺います。ですが現在紅魔館に”停泊”しているあの男は、服装や顔つきからその特徴はあるものの、身長も体格も史実上のナポレオンとは思えません。不一致です。」
「体格で決めるのもアレだしナポレオンってことにはしているけど……疑わしいし、今度色々話でも聞いて見ようかしら。」

 かくして従者を下がらせ、レミリアは独り紅茶を飲む。
 その眼はナポレオンを名乗る男にではなく、左手にある異物に向けられる。

「庭でこの指輪を拾ってからあの男に会ったんだけど……ほんと何なのかしらね。コレ。」

 レミリアの左手につけられた、金色の指輪。
 その輝きはまさに『ソロモンの指輪』のソレと全く一緒だった。



 夜明けを待つ、幻想郷内で最も高い山。
 人間はこれを「妖怪の山」と呼び、妖怪がいるという危険度からつい最近まで滅多に近づかなかった。

 つい最近までの理由はただ一つ。ここにもう一つの神社ができて参拝客が増えたから。

 なんでも、『外の世界』からやってきた神社と神様がここに来てひと悶着あったものの、妖怪の山の参拝道を脆弱な人間でも通れるように手入れし、信仰を増やすたゆまぬ努力をした結果こうなったという。
 まだまだ人数は少ないけれど、その名は間違いなく通っている。

 そして、『彼』もまた参拝に―――――。

「腹が減った……。」

 彼は一人、石の階段を上っていた。
 赤色と黄色の剣を背に、息も絶え絶えの顔で上ってゆく。

 ―――彼の特徴を一言で言うと異邦人、美顔、美男子としか言えない顔。とにかくその顔だけでも賞賛の声が絶たない。
 しかしてその実、幻想郷とは明らかに異なる『異界からの来訪者』。

「抑止力の英霊として召喚されて数日、何も食べてない……この地の魔力だけじゃ足りなくなってきた……。」

 彼を襲う、未曽有の空腹。
 人間たちがいる集落はその周辺にはおらず、悪霊との戦闘による魔力の消耗。
 マスターもいない英霊である彼は、ただ腹が減っていた。

 当然、英霊は食事をせずとも現界は可能だが、それにも限度がある。
 最後の意地で階段を上り切り、鳥居をくぐって彼は安堵する。

「……人だ、助かった……。」

 人影を見て、彼は倒れ伏す。
 安堵の顔を浮かべて倒れているのだ、その人影は別の解釈をしたようで。

「人が……倒れてる!?■■■様ーー!ああ、人が!人が!!」

22人目

「守護神 - the Guardian -」

「Z……マジンガー……」

 光子力エネルギーの異常増大によってアルケイデスが引き込まれた空間。
そこに聳え立つ謎の黄金の巨神。

「違う……私が知るゼウスとは……」
「なるほど……そなたはミケーネとは異なる世界線の神話の住人なのだな」

 ギリシャ神話において、アルケイデスは父であるゼウスを始めとした神々によって
様々な厳しい試練を課せられる事となった。
それが故に神々に深い復讐心を抱いていた。
今目の前にいるのは、同じ神の名を持ちながら異なる運命を辿った存在……

「私も元はミケーネを率いる者であった。しかし、ミケーネは人類を抹殺し、
この地上の全てを手中に収めようとするあまりに破滅の道を歩むこととなった。
だから私は人間たちと共に生きていく事を決めたのだ」

 ゼウス神は人類抹殺の名に背き、たったひとりミケーネに反旗を翻す事を決意した。
その戦いの際に落とされた右腕が後に兜甲児の祖父・十蔵によって発見され、
超合金Zを生成するジャパニウム鉱石として加工された。
そして生まれたのが「鉄の城」マジンガーZなのだ。
即ち、マジンガーZとは古代の神より生み出された人類の守護神の化身なのである。

「合点が行った。あの黒い巨人から伝わってきたのは間違いなく神の気配……
つまり貴方の分身とも呼べるものだったのだな」
「然り。だが、ミケーネは再び永き眠りより目覚め、
世界全土を混乱に陥れようとしている……」

「そうとは知らず、あの少年には辛い思いをさせてしまった……償いをせねばなるまい」
「私の身体は既に実体は持たない。だから世界の命運をあの少年……
兜甲児らに託す事しかできない。
そなたとこうして出逢えた事もまた、何かの導きであろう。だからこそ、頼む。
彼らにそなたの力を貸してやってはくれないだろうか」

「……」

 アルケイデスは思い返していた。仮初めの契約だったとは言え、
人の身でありながら過酷な運命に抗い続けた人類最後のマスター・藤丸立香の事を。

「因果なものだ。同じくゼウスの名を持つ者から、
人類を守護する役目を託されるなど……」

 アルケイデスは拳を強く握りしめ、強い意志を込めた声で言った。

「分かった、お受けしよう、その役目」
「感謝する」

「私が殺すべき神々はミケーネ……黒く、歪んでしまったオリュンポスの神々は……
この私が殺す」
「よくぞ言ってくれた。では、さらばだ……」

「――はっ……」

 アルケイデスが目を覚ますと、元の通常空間に立っていた。

「あれは……夢、だったのか……?」
「一瞬、ゼウスの姿が……」

 甲児もまた、精神空間でアルケイデスと同じ光景を見ていたようだ。

「兜甲児……だったか。我が名はアルケイデス。此度は、済まぬ事をした。
私が間違っていた。オリュンポスの神々を殺し尽くす……
そのために私は現世に再び身を宿した。しかし、メサイア教団なる者達に
在り方を歪められ、己が成すべき事を見失っていたらしい」
「メサイア教団だって……!?」

「特異点、この言葉に聞き覚えがあろう」
「確か、CROSS HEROESのみんなが向かったって言う……」

「やはりな。彼らのおかげで私は本来の使命を思い出すことができた。
感謝せねばならない。彼らは大敵を討ち滅ぼした後に私の頼みを聞き届け、
ここに向かう事を許してくれた。
どうやら、この世界においても神々は人類を害さんとしている。
故に、私もお前たちと共にミケーネと戦う事にする。
そして自らが新世界の神となろうとしているメサイア教団ともな……」

「どうやら、誤解が解けたみたいだな。なら改めて、よろしくな!」
「……うむ!」

 こうして、ゼウス神との思わぬ邂逅を果たしたアルケイデスは
新たなる戦いの舞台へと進むのであった。

23人目

「間章:希望の残滓、復讐者の愛、そして」



 自分は、何者か。
 私は私だ。
 十神財閥の御曹司だ。それのどこに問題がある?



「ギリシャの流星旅団にも支援物資を運ばないとな……トゥアハー・デ・ダナンにも食糧と一般兵装を……。」

 港区の某ホテル。
 トラオム、港区でCROSS HEROESに協力した十神白夜は現在そこにいた。
 ルクソードに頼まれ、CROSS HEROES達への後方支援や物資提供を行っているのだ。

「もしもし、ルクソードさん。」
『十神くん喜びたまえ。彼らはクォーツァーを打倒したよ。』
「そうか。それは……良かった。当然とはいえ、な……。」

 目の疲れからか目頭を抑えつつ、十神は特異点にいる彼らの健闘を称えた。
 言葉とは裏腹に、その声は暗い。

『何かあったのかね?』
「希望ヶ峰学園爆破事件について調べていたんです。何かメサイア教団の手がかりでも追えるかなって。それで……コロシアイ関係者の生存者が5人という事実にすごく愕然としていて……。」
『5人、か……。クラスメイトの突然死だ、心が痛むな。』

 ルクソードはノーバディであるが故、心が分からない。
 しかし、人の気持ちは察することができる。
 落ち込む十神の心境を察し、同情と憐憫の念を向ける。

『しかし生きている者か……。十神、江ノ島、西園寺、あと2人は誰だ?』
「さぁ、実名まではまだわかりません……。」

「待って、実は……その、江ノ島盾子に一言言伝をしてくれますか?」
『ほう?』
「『お前の出生の秘密、知りたくないか』って。」

 出生の秘密、という言葉にルクソードは笑う。

『はっはっはっはっは。彼女も己の業(カルマ)と向き合う時が来たか。』

 己の業と向き合うという試練。
 自身の生まれた意味を知ることで、彼女はどうなるというのか。
 それはまた少し先の、誰も知らない物語―――。



 自分は、何者か。
 そんなもの決まってる。

 真正の、ろくでなしだ。
 報復心でしかモノを語れぬ、ただの復讐者(アヴェンジャー)だ。



「他になんか必要なものあるか?」
「えーっとね!」「チョコレートちょうだい!!」「それと……。」

 白髪赤眼の復讐者にして抑止の英霊、罪木蜜柑・オルタナティヴ。
 彼女は今、子供サーヴァントのためにお菓子を買って来ようとしているのだ。

「分かった、行ってくる。」

 屈託のない笑顔を見せ、彼女は買い出しに行く。
 その姿と笑顔は、血に濡れた復讐鬼ではなくまるで年頃の女の子のような。

「チョコレートにポテトチップス、あとオレンジジュースか。……あとあたしのタバコ。」

 罪木オルタは、鼻歌交じりで杜王町の方角へと向かう。
 その道中、彼女は人の気配を感じたようで。

「さっきから誰かに見られてんな……誰かいんのか?」
「汝か、例の復讐者の英霊は。」

「お前か、誰だあんた。」

 そこにいたのは翠緑の衣装を身に纏った獣人の英霊。
 名をアタランテ。ギリシャ神話における俊足の弓兵である。
 カルデアの英霊として召喚された翡翠色のアーチャーが、均衡のアヴェンジャーと邂逅する。

「で、アタランテ……さん。あたしに何の用?」
「買い出しに行くのだろう?私も途中まで同行するのでな。話でもしないか?」
「いいけど……、近いからすぐ終わるぞ。」

 かくして、罪木オルタとアタランテは町の方向へと向かい、歩みを進めるのだった。



「実はな、青い狼のような男から聞いたのだ。均衡の英霊として召喚された復讐者がいると。それで……汝の事を気にかけてくれないかと。」
「サイクスの奴……。」

 彼女の同胞、サイクスの提案で精神が不安定な罪木オルタの動向を見てほしいと頼まれたアタランテ。
 彼女の経歴も、その過程で聞いているようで。

「汝は生前、惨たらしい迫害を受けたと聞く。……悔しくはなかったのか?」
「あ?悔しいよそりゃあ。苛められて悔しくならない奴なんかいない。だから復讐なんてのを選んだんだろうな。」

 投げかけられた“悔しくないのか”という質問。
 その問いへの答えは肯定だった。

「安心しな、あたしは子供には優しいんだ。無垢な子供たちに手を上げたことはこの罪木蜜柑オルタ、一度だってねぇよ。どれだけこの手が血で汚れようとも、罪のないあの子たちの笑顔だけは、せめて守ってやりたいんだよ。」

 にししっ、と歯を出して笑う罪木オルタ。
 その様子を見たアタランテは、同じようにほほ笑む。

「そうか、……安心した。」



 自分は、何者か。
 そんな意義などとっくに固定された。

 始めに、光があった。
 閃光が炸裂し、全てが炎に燃えた。
 友人も仲間もライバルも、好きだった■■くんも。

 全部全部、全部燃えてしまった。

 目覚めた時、私の心を支配していたのはただただドス黒い感情だった。
 すべてが、許せなかった。

 燃えるような復讐心とは異なり、まるで氷のように冷たいなにか。

 私の目的はただ一つ。
『メサイア教団の解体と江ノ島盾子の抹殺』。
 今の目的は、ただそれだけである。



 アメリカ 某所

 雨の降る小さな港町。
 町の規模は小さく、重い曇天も相まってか暗い印象を持たせてくる。
 その町で、黒いコートを着た男が何かから逃げるように走っていた。

「殺される……!!」

 その40代程の男は、言ってしまえばメサイア教団の使徒だった。
 メサイア教団への資金提供者、即ちスポンサーだった男が教団構成員として加入したのである。
 そして、彼の最大の罪は。

「報酬と引き換えに彼の釈放とメサイア教団への加入の幇助……過去の話とはいえ、こんなのバレたら殺されてしまう……!」

 過去話とはいえ、脱獄には時効がない。
 それは幇助も同じことであり、捕まれば確実に殺される。

「どこでもいい、どこか遠くへ逃げなければ!」
「それは困りますねぇ。」

 刹那、背後から聞こえる男の声。
 声色から察するに、年齢にして20代程だろう。
 物腰柔らかな台詞とは裏腹に、背後の彼は冷徹にサバイバルナイフの一閃を放つ。
 ヒュゥ、と空気を裂く音が聞こえ、男の喉笛が撫で斬りにされる。

「あああ―――――あ……ぁああああ!!」

 厭な音を響かせながら、男は悶え苦しむ。

「元・Xキラ、いえ『魅上照』と言いましょうか。彼の脱獄幇助。その協力者の確保ないしは処刑。これが『我々』の命令です。」
「ひぃッ!!」

 切り裂かれた喉元を抑えながら、男は怯える。

「お、脅されてたんだ!仕方なかったんだ!お前なら分かるだろファルデウス・ディオランド!」

 その瞬間、一発の銃弾が男の脳天を貫徹する。
 その様子を、ファルデウスはまるでゴミを見るような目で見下ろす。

「あっけないものです、小物の最期というのは。」
「死んだ?そりゃよかった。」

「死体回収は部下に任せます、行きましょう霧切響子さん。」
「そうね、メサイア教団を潰すために。」

 謎の男ファルデウスと元・超高校級の探偵『霧切響子』。
 メサイア教団破壊を目論む彼らはCROSS HEROESの味方か、或いは―――。

24人目

「鬼哭酔夢魔京 羅生門」

 突如特異点に出現した黒平安京。
邪悪な気配を漂わせる妖の跋扈する、この世のものとは思えぬ奇怪な景色が広がる。

 藤丸立香はマシュを含めたカルデアのサーヴァント、CROSS HEROESのメンバーを
伴って暗雲渦巻く黒平安京へと向かう。

「金時さん、その格好……」
「あ? イカすだろ、これ。平安京で四天王やってた頃のヤツなんだぜ」

 平安武者装束に身を固めた金時。
トレードマークだったサングラスや現代チックな服装はナリを潜め、左半身を覆う鎧に、
黒地に緑の稲妻模様が入ったヘッドバンドで髪を束ねている。

「ええ、とてもよくお似合いですよ」
「あんがとよ、マシュの嬢ちゃん!」

「それにしても、凄い瘴気です……」
「近づくだけでソウルジェムが濁りそう……」

 いろはや黒江は顔をしかめる。

「確かに……これは危険ですね。さすがに結界内に長時間いると危険かもしれません」

 マシュも口元を押さえて険しい顔で言った。

「今回は偵察が目的よ。無理はしないで、危ないと思ったらすぐに撤退しましょう」

 やちよの言葉にメンバーはうなずいた。

「おっ、見えてきたぜ……」

 金時が指をさす先を見ると、そこに広がっていたのは異次元としか
形容できないような光景であった。
黒い空に覆われた地平線の向こうからは異形の怪物たちが現れ、通りを徘徊している。
そしてその先には、黒平安京への入り口である巨大な門が聳え立っていた。

「おうおう、いるいる。めちゃくちゃ妖怪がたくさんいるじゃねえか! 面白ぇ……!」

 好戦的な笑みを浮かべる金時。
いろはたちも臨戦態勢に入り、戦闘が始まった。

「キエエエエーッ!!」

 子鬼達が群れをなして襲いかかってくる。
しかしそれをやすやすと切り捨てたのは、頼光の四人衆の一角を担う、渡辺綱である。
綱が刀を一振りすると、まるで紙を切るかのようにあっけなく子鬼たちの首は飛び、
地面へと転がった。

「ヒュウ、流石綱の兄ィ! 鬼殺しの腕は健在ってか!」
「鬼は斬る。それが俺の役目だからな」

「ほほう? ならば吾の腕を今一度斬って捨てるか!?」
「何……」

 綱に向かって飛んでくる豪火球。綱はそれを難なく避ける。
するとそれは地面に着弾し、辺り一面を焼き払ってしまった。

「これは……」
「くははははは、よく避けた! そうでなければつまらん!!」

 黒い瘴気の霧の中にあって、掌に燻る炎がその貌を照らし出す。
燃え盛るように輝く金色の髪と瞳を持った、見るからに凶暴そうな風貌の少女。
その手に握られている骨刀は、鬼種の骨を地獄の業火で鍛え上げた末に造られたとされる
妖刀だと言う。

「茨木……!?」

 かつて大江山にて渡辺綱によって討たれた鬼。それが茨木童子だ。

「おいおい、茨木。悪戯にしちゃやりすぎだぜ。
拠点で姿が見えなくなったと思ったら……」
「黙れェッ!!」

 金時に怒鳴り返す茨木。飛びかかり、骨刀を思いっきり振り下ろす。
斧でそれを受け止める金時の眼前で刃同士がぶつかりあい、激しい金属音が響いた。
一進一退の攻防を繰り広げる2人の戦いを見守るいろはたちは呆気にとられていた。

「お前ッ……本気か……!?」

 苦々しい表情で金時は言う。彼の言葉に対し、茨木は不敵な笑みで答えた。

「……っ、仕方ねぇ!」

 金時が渾身の力を込めて、茨木を振り払う。軽々と宙を舞う小柄な茨木。
そのまま軽やかな身のこなしで木っ端のように空中を回転しながら跳ね回り、着地した。

「茨木さん! どうしてしまわれたのですか!?」

 マシュが叫ぶと、茨木はにべもなく言い放った。

「どうもこうもない。吾ら鬼の本分を果たしておるだけだ。
鬼が人の血肉を喰らうことこそ、至上の喜び。
貴様ら人間が我らにしてきた仕打ちを忘れたか?」
「ふふ……茨木は真面目やねぇ。ウチはそないに堅苦しゅうは考えとらんけどな。
まあ、ひとつ言うなら……面白可笑しくやれれば、それでええんやないかなぁ? 
なぁ、小僧?」

「酒吞……お前もかよ……!!」

 酒を呑みながら余裕そうに語る少女―――酒呑童子に、歯ぎしりする金時。
金時にとって彼女は大江山の鬼たちを束ねていた頭領格。因縁ある相手である。

「どうして、2人とも……今までカルデアで一緒に戦ってきたじゃない!」

 立香が必死に呼びかける。
しかし酒呑と茨木の反応は冷たいものだった。

「堪忍なぁ、旦那はん。せやけど、この京から漂う瘴気……分かるやろ? 
これがウチら鬼には随分と居心地ええんよ。茨木もそう思うよねぇ?」
「応ともさ! 身体の内から燃え盛るような、この力が湧き上がる感覚……たまらぬわ! まして貴様らと思う存分殺り合うことができるのだぞ? 愉快な宴ではないか!」

「ダメです……お二人共、正気を失っています!」
「ンンンンン……如何ですかな、カルデア! かつての同胞との殺し合いは!」

 門の屋根の上。そこに立っていた道化師のような風体の怪人、
アルターエゴ・リンボが嘲笑う。

「リンボ……!!」
「ンンン、お久しぶりですなァ、カルデアのマスター。直接顔を合わせるのは
下総国以来ですかな?」

 立香が迷い込んだ亜種特異点・下総国。そこで出会った宮本武蔵と共に
英霊剣豪七番勝負を仕組んだリンボを最終的に打破したのは、他でもない。
カルデアの藤丸立香とサーヴァントたちであった。

 しかしその時に対峙した怨敵の顔をこの黒平安京で見ることになるとは、
誰もが思ってはいなかっただろう。

「CROSS HEROESから話は聞いていたけど……またあなたの仕業なのね、リンボ!」

 立香は怒りの声を上げる。
それに対し、ニヤついたままのリンボはこう答えた。

「――左様。我が同志、安倍晴明殿の作り上げしこの黒平安京! 
そして拙僧が結界の核となり、此度の催しを盛り上げさせて頂いている次第で
ございます!」
「神浜の時と同じってわけね……何度も何度も!」

 リンボや晴明に苦しめられたのはカルデアだけではない、
神浜やバードス島で彼と戦ったCROSS HEROESの面々も同じことだ。
そしてそれは、いろはたちの心に火を灯す燃料となる。
彼女たちは改めて戦闘態勢に入り、リンボへの敵意を示した。
それを見たアルターエゴは満足げにほくそ笑む。

「ンンンンン、その目、その表情。何とも! 何とも! 昂りますな!
では、まずは小手調べと参りましょう! おいでませ、羅刹どもの群れよ!!」

 地響きとともに地中から這い出るように続々と姿を現したのは、
巨大な骸骨武者の大群だ。

「さあ、思う存分殺し合おうぞ! 綱ァ!!」
「俺がやるべき事はどうであれ変わらん……人に仇なす鬼は……斬る!」

「ああ、昂るわァ。ほんなら、ウチらもやろか。綺麗に落としてな? ウチの首」
「ったく、笑えねぇ冗談だ。けど、手加減してやり過ごせる相手でもねぇか……
とっとと目ェ醒ましやがれ、酔っぱらい!!」

25人目

「嗣章:特異点への議論」

「さて、正直ミケーネの奴等を今すぐ破壊しに行きたいんだけど、後何か残っている気がするんだよねぇ?」

カラン、と氷のみのコップを鳴らすビルス。
喉に何かつっかえた様な違和感を解消しようと、四角い氷を凝視する。
コップを傾け、右へ左へゆらりゆらり。

「何だったかなぁ…?」

しかしどうにも後一歩が出てこない。
そうして熱気を帯びた視線を受けてか、次第に氷解が起きた頃。
ウィスがそっと、小耳に情報を入れた。

「特異点、でございます。」
「あーそうそう特異点!」

目を見開いて、大声で納得の声をあげるビルス。
喉の突っかかりが取れた様な大声は、直後一瞬の静寂をもたらした。
沈黙に耐えかねてか、ビルスが咳払いして続けた。

「確か、あそこで世界の融合が起きてるとかって話を聞いたけど?」
「えぇ、その通りです。更には時空の改変も起きているみたいで…あぁもう、私の宇宙なのに管轄外問題が勝手に発生するなんて…!」

余所から来た世界が融合、改変されている問題を思い出してか、胃の辺りを抑えて顔を顰める時の界王神。
きっと、この事件が終われば他の宇宙から苦情が殺到する事間違い無しだろう。
人間が勝手にやった事なので時の界王神には何の責も無い筈だが、それでも責め立てられる立場なのだ。
世知辛い。
そんな界王神を余所に、ウィスが杖に映るビジョンを見つめ、告げる。

「特異点、あそこは他世界を巻き込んでいるとはいえ、あくまで下界の出来事の範疇ですからねぇ。迂闊に手は出せません。」
「んじゃぁ、やっぱりCROSS HEROESとやらに任せるしかないね。はい、議題終わり。」

手を打って話を締めくくるビルス。そして、椅子を揺らしながら机上に両足を乗せて寝転んだ。
実際、この議題に対しては彼等が出来る事は無い。
正確には彼等の問題では無い、と言った所か。
これは下界の因縁だ。

「しかし、人間の科学も進化したものですねぇ。こんな形の現実改変を引き起こすなんて。」

だが、それはそれとしてウィスにも感嘆とする思いがあった。
現実世界を侵食し、更には次元を超えて介入しているこの現象。
果たして、この事態を引き起こした者は何処まで行き着くつもりなのだろうか?
神の観点としても、深い興味を抱く所業だった。

「見た所、人の集合無意識に直接メスを入れて認識を変化させ、最終的に現実に昇華させる…と。何とまぁ、斬新な。」
「人間を操って、創世の神にでもなろうって腹積もりなのかな?」
「どうでしょうねぇ、やってる事を見るに救世主といったところでしょうか?」

ウィスとビルスは、お互い意見を出し合う。
ただ、ビルスは話題に興味が無いのか、眠そうな目を擦りながら欠伸をする始末である。
そんな二人を余所に、界王神は少し考え込む。
確かに、人間の進化は凄まじいものだ。
その発展度合いに関しては、神々さえも追い越してしまう程だろう。
しかし、それだけでは説明出来ない事もある。
例えば、今回の様に。

「何かを媒体に、認識を現実へ投影させている筈。それは一体、いや何処から…?」

特異点、その存在そのものが理解の範疇を越えている。
現実を改変する等、それ自体が既に神の領域だ。
しかも見た所、その人その人の都合に合わせた、まるで夢の様な改変。
ここまでの力を行使する事が出来るのは、余程強大な存在か、或いは。

「オイ、また何か変化して無いか?」
「え?」

不意に、ビルスが口を開いた。
界王神が顔を上げると、ビルスが眉間にシワを寄せて、特異点の様子を見つめていた。
釣られて、界王神もそちらに目を向ける。
ビルスが言うように、特異点の一部分が光に包まれていた。
眩いばかりの輝きが幾ばくか続いた後、ゆっくりと光が収まっていく。

「これは!?」

光が収束した後には、一つの巨大な街があった。
一目見ただけで特異な街だと断言できる代物だ。
春夏秋冬と言い表せば良いのか、各季節のパブリックイメージが顕著に現れた街が円状の島に四つ並んでいる。
それも中央を境目に、見事な四等分に別れて配置されている。
猛暑地を思わせる作りの街の向かいには凍結した町が、桜に彩られた街の向かいには秋の木の葉に彩られた街が。
それぞれの特徴を表すかのように、色とりどりの街並みがそこにあった。

「四季の島、ですか。」

ウィスが呟く。
そう、そこにあったのは正に、四季を表した島だったのだ。

「…あぁぁ!!また仕事がぁ!!?トランクス、トランクスゥー!!!」

新たな胃痛の種に、界王神は叫びを上げるのであった。



「…よし、これで一応完成ね!」

せわしない音を奏でていた研究室に、静寂が訪れる。
同時に、ブルマの感嘆とした声が響いた。
達成感に満ちた笑顔を浮かべながら、早速成果を確認するべく機械の蓋を開けた。
中には、橙色をした一見普通のガラス玉の様な物が置いてある。
だが、この物体こそが、彼女の研究の成果なのだ。

「名付けて『トランスボール』よ!変身する玉、うーんピッタリなネーミングね!」

余りに安直だが、彼女は満足らしい。
更には、自身の天才的な閃きに自画自賛の念を抱いている。
我が子を抱きしめる様にトランスボールを抱き、その場でぐるりぐるぐると踊る始末だ。
仕舞いには頬擦りする始末だが、幾分か時間を置いて、ブルマは気が付いた様に眼を見開く。

「こうしちゃいられないわ、早くトランクスに渡さなきゃ!」

本来の目的を忘れる所であったと思いつつ、しかしルンルン気分を抑えきれずスキップしながら部屋を出ていく。
周りの視線も気にせず、そのまま建物を出て、道に沿って数分歩いた。
そこで漸く、トランクスを見つけた様だ。

「いたいた、トランクス!」
「あれ、かあ…ブルマさん、どうしたんです?僕はこれから任務ですが。」

つい自分の母だという事を言い欠け、慌てて言い直すトランクス。
ここのブルマには、トランクスが息子だという事は内緒なのだ。
そんな彼の葛藤も気にせず、ブルマは続ける。

「任務ね、丁度良かったわ!これ、持ってて!後で説明書読んでね~!」

言うが早いか、トランスボールと紙切れをトランクスに押し付ける。
言われるがままに受け取ったトランクスは困惑したままだが、ブルマは気にする素振りも見せずに足早に去ってしまった。
残ったトランクスは暫し呆然としたが、任務の事を思い出して界王神の元に向かうのだった。



にししっ、と歯を出して笑う罪木オルタ。
その様子を見たアタランテは、同じようにほほ笑む。

「そうか、……安心した。」
「うんうん、あの頃とはすっかり変わっているみたいだね。」

ホッと胸をなでおろすアタランテに同調して、アビィも肩の力を抜く。

「当ったり前…ん?」

そこで初めて、アビィの存在に二人は気付いた。

「おわっ、お前何時の間に!?」
「何時だと思う?ヒントは僕の色と動物さ。」
「…青い狼の所からかよ!言えよ!」
「いやぁ僕小柄だからさ、気付かれない事多いんだよねぇ。大きかったらファンが付いて回って大変だから良いけど。」
「…何なのだ、この者は。」

突然の乱入者に、二人は困惑するばかりだった。

26人目

【ダルマ落とし 魔女ルート】

《現在地…エピメテウスの塔 終着駅・停留所》

休憩を終えていた人達がいたのだった。
そこで1番に声を出す奴がいた、そうコイツ(夢美)である。

「私にいい考えがある!」

「「そのセリフ、嫌な予感しかない」」

なんだか連鎖の末に爆発しそうで。

「まず、人を感知します」

『でも・・・精度が悪すぎるわよ?』

「感知して人がいる場所を確認します、そこで!そこの塔を心眼で横に斬ります」

心眼で横に斬ります、と言って二刀流 ラグナロクを持ってゆっくりと構え目を閉じ集中し始める

「塔を斬るってどういう・・・」

勢いよく目を開き剣を横に振ると音を立てずに塔の部分を何分割かに分けて斬ったのだった

「ええ・・・」

「ダルマ落とし しようぜ あの塔が、ダルマな」

ハンマーを持って堂々とするは、月影夢美である。その隣にはスタミナ回復係の星乃雪がスタンバっていた

「なんだよこれ・・・」

なあ、これ・・・ファンタジー(?)を通り越したホラーだ
やっぱ、この女・・・おかしすぎるだろ

「あっ、それ それ それ それっ!!」

ハンマーを構え横振りすると1段また1段と塔が崩れていく・・・いや、落としていくのはまるでソロプレイかつポイントが付かないダルマ落としが如く

「・・・ありなの?」

「わ、分かんないっピ」

おい冗談だろこの光景一体なんなんだよ?
楽士達の拠点でもあるエピメテウスの塔が・・・

一瞬で半分に以下いやもう1段だけになっちまったぞ

「これが、才能の世界・・・なのか?」

「待て、違うからな、才能ってもっと別だろ。あれはどう頑張って見直しても異常な行動だからな」

「冷静に見ればそうじゃんか、あーよかった」


《現在地…エピデウスの塔 謁見の間》


立っている場所が突然大きく揺れ始める

「な、何が起きた・・・!?」

急いで隠し部屋へと向かいモニターを見てみると誰も映っていなかったが塔の部分だけがどんどん無くなっていく光景を目の当たりにする

「とりあえず戻す…なっ!塔を切った…だと。ならば」

猛スピードでキーボードをカタカタ言わせる

「破壊不可能オブジェクトとして変更・・・ふむ、止まったか」


《現在地…エピメテウスの塔 終着駅・停留所》

「くっ、変更されたかっ!地道に登ってこいってことね」

「(斬っても多分入口無いと思うから最初からそうしようよ)」と内心でツッコむGVだった

全員、塔を登り始めるのだった。

「スパークカリバー シュート!」

「凍れ・・・!」

「爆発しな!」

何階目か分からないが何回か戦闘をしていた。

「案の定、まだまだ敵がいるね」

「そうだね、でもどうしてだろう。あの人達から意思が感じられない・・・」

「まあ、思念体だし?見つけたら各個撃破かな!」

本当にそれでいいのかな?って思ったGV
そんな中、周りをぐるぐると見始めるムーくん

「・・・しかし、エピメテウスの塔にまた来ることになるとは…まあ、ブラフマンが生きているし俺がここにいることもしかしたら意味があったんだなって」

懐かしいような、忌まわしいような、そんな出来事が入り交じり過ぎてよく分からない感情になっている

「縛ってるところ申し訳ないんだが、夢美がアンタの顔面を殴ったこと本当に申し訳ない」

「あーあれか、まだ顔面が痛い。つか、なんでお前が謝るんだよ、関係ないだろ?本人が謝っても俺は許さないからな、つか許さないからな」

「アイツの性格上謝らないのは目に見えているからな・・・そうか、それでいいと思う」

「お前って案外常識人だよな・・・助かった。あの女、無駄に力あるせいなのか厄介過ぎるし、男か女か分からない奴はよく分からないし」

「夢美と雪、それに関しては俺もそう思う。長年の付き合いなのにな・・・後すまないが俺ってアンタが思っている以上に常識人ってわけじゃないし、なんでアイツらと一緒にいるのか自分でもよく分かっていないんだ」

「ふーん・・・」

「な、意外とどうでもいいだろ?」

「確かに結構どうでもいいな・・・」

「だろ」

「ところでずっと気になっていたんだけど、さっきっから内部を破壊してるんだが」

「内部はガバかったんだろ。いい加減慣れてくれると助かる」

「え、普通に嫌すぎる」

そう、この話割といい感じにズレてると思いますが3人が階を上がる度に思念体と激しい戦いをしていており内部破壊を行っていたのだ。

「ふむ、この程度なら帰宅部で無双出来るな ついでにダンジョン視察をしなければ」

『あら、もう攻略の話してるのね・・・熱心なことなのはいいことなのだけど』

「うん、Caligula2の本編楽しみだからね」

その顔は嘘偽りなく満面の笑みだった

「だから早くSwitchを取り戻して続きをやりたいなってだから頑張って登りきってブラフマンとリグレットを倒さなきゃね」

「張り切りすぎて色々壊しちゃってるけどそんなにゲームがやりたいんだね・・・凄い情熱だ」

「・・・大好きなあの方にはもう会えないけどゲームソフトならあるからね」

塔を戦闘しながら登っていく5人(1人浮いてる)
ついでに言うと、ブラフマンの胃に対しての攻撃は果たして続いてしまうのだろうか・・・
そして、リグレットを倒せるのだろうか!それは神のみぞ知る

27人目

「Track:急Ⅰ 勇者リク、出陣!」

「ふう、とりあえずはこっちが頼まれた分は出来たな。」
「なかなかにいい感じじゃね?」

 シャルル遊撃隊の4人は依然、パレスの建て直しをしていた。
 頼まれた分は終わった。

「簡単なものとはいえ、余った資材で訓練施設も作ったしな。」

 リク達の目の前にあるのは、簡易的な木剣や何処かで買ってきたであろう筋トレ道具。
 本当に簡単な訓練施設がそこに展開されている。

「にしてもさー、そんなに強くなってどうすんの?」

 江ノ島がリクに、ふとした疑問を投げかける。
 彼が強さを求める理由。

「―――――この戦いが終わった後も、俺は友人を探さないといけないんだ。これは、あいつと交わした約束なんだよ。」

 戦いの果てに世界を追放され、行方不明になった友人―――ソラ。
 リクは彼を探すためにも、強くならなければならないのだ。
 でなければ、ソラに再会する前に自分が斃れてしまうから。

「強くなって生き残らないと、ソラに会えないしな。」
「ソラ、それは友達の名前?」
「ああ。」

 ふーん、と江ノ島は考えた後、屈託のない微笑みを浮かべる。
 それは絶望の化身であったはずの彼女を知る者からすれば想像もつかない、純真無垢な笑みであった。

「いい名前だね。」
「あ……。」

 リクは、一瞬たじろいだ。
 自分の知る江ノ島盾子はハイテンションで粗野で、でもどこか暗い印象があった。
 そんな彼女が、まさかここまで純粋な笑顔を見せるだなんて思わなくて、つい驚きを見せてしまったのだ。

「―――そんな笑顔が、できるんだなって思って。」
「失礼な奴だな!人に対してぇ!」
「そうよ。レディに対してそんな反応はだめよ、リク君?」
「ははは、すみま……紫さん!?」

 目玉だらけのスキマから、八雲紫が出現した。
 どうやら特異点の外で何かをしてきたようで、彼女はリクに話しかける。

「あちらの方にも事情は話して、もう準備OKよ。後はあなたのタイミング次第よ。」

 彼女が言うには、既に幻想郷へと出陣する準備は整ったという。
 それを聞いたリクは、固まった決意告白する。

「――――すぐにでも、頼みます。」



 数分前、ギリシャのDDベースキャンプにて

「つかれた……弾避けの練習が、まさかここまできついとは!」
「最初のうちは無理をするな。逆に疲弊する。」

 ギリシャにて、月夜はDDの兵士の一人から弾避けの技術を学んでいた。
 弾避けの技術は実在こそすれ、訓練をそこまでしていない一般人には難しく月夜が疲弊するのも無理はない。
 防護服をつけているからか、外傷こそはないがそれでも痛いものは痛い。

「彩香よ、おぬし港区の時よりも強くなってないか?少しずつだが成長していると見た。」
「そう?アマツミカボシの力あってこそだし、まだまだだよ。」

 その傍らで、彩香はペルフェクタリアと前と同じように訓練を受けていた。
 少しずつだが、港区の時よりも確実に強くなっている彩香にどこか喜びを隠し切れない。

「そう謙虚になりすぎるのは良くない、おぬしは間違いなく強くなってきている。」
「ええ。その太刀筋、友人の従者に見せてあげたいくらいね。」

 その瞬間、空中から聞こえる声。
 どこか不思議な感覚に、周囲は一瞬混乱する。

「む?おぬしは確か……。」
「お久しぶりね、流星旅団の皆さま。みんなのゆかりんよ~。」

 傘を広げ、空中からふわふわと落ちてくるゆかりん。
 その在り方は、まるでどこかの映画のようだ。

「映画かよ……。」
「ゆかりん、って……。」
「なんとかポピンズかよ……。」

 あまりにも突出した登場に、周囲の兵士も困惑するのだった。
 しかしてこの後、紫は流星旅団一行と月美、そしてペルフェクタリアに現在の幻想郷の状況の話をするのだった……。

28人目

「百鬼夜行」

「ずえぇぇぇぇえいッ!!」

 茨木童子 対 渡辺綱。 
炎を宿した骨刀を豪快に振り回しながら斬りかかる茨木。
それを受け止める綱の足は地面をしっかりと踏みしめている。
綱の得物である刀の銘は鬼切安綱。頼光より賜った護り刀であり、
一条戻橋にて茨木童子の腕を斬り落としたとされる刀である。

しかし茨木はそれに怯むことなく、さらに力を込めて刀を振り下ろす。

「今更そのような刀ァ!! 何するものぞォォォォッ!!」

 鬼の血を色濃く受け継いでいる茨木の力は凄まじい。
腕力、耐久力、俊敏性……いずれも、普通の人間の比ではないのだ。
茨木の攻撃を受け止め続ける綱だが、次第に追い込まれていく。
まして、今は黒平安京の瘴気を一身に浴びる事によってさらにその力を増している。
並の鬼であればその刀身を見ただけで弱体化してしまうと言う鬼切安綱も効果を成さない。

(強い……これがあの茨木童子か……! かつて相対した時とは比べ物にならぬ……)

 このままでは押し負けてしまうと感じた綱は一旦距離を取り、呼吸を整えた。
しかしそこへ茨木の猛攻が続く。休む暇もなく繰り出される斬撃に、
綱は防戦一方に追いやられてしまった。

(どうする……どうすればいい……!?)

 考えを巡らせ、一瞬の判断を間違えば即座に命を落としかねないこの状況。
それでも尚、綱は思考を止めない。決して諦めはしない事こそが、
綱が尊敬する御方の教えだったから。

「くはははは、どうした、どうした渡辺綱!! そんなものか!! 
吾の知る綱は、もっと強かった筈だがなぁ!?」
「…………!」

 綱は思い出していた。初めて茨木と刃を交えた時を。

『くああああああーッ……吾の、吾の腕がァァァァァァ……』
『……』

 一条戻橋の一戦。綱は茨木に何一つ反応させる事なく、
茨木の右腕を切り飛ばした。

『貴、様ァァァァ……!! 人間、貴様、名は何と言う……!!』
『俺は渡辺綱……貴様ら鬼を屠るために鍛えられた剣……!』

 鬼の血を引き、生まれながらにして強大な力を持つ鬼。
対して人間は、それに対抗するために血の滲むような鍛錬を重ね、磨き続けてきた。

『綱……!! 覚えた、覚えたぞ、貴様の名!! 忘れるものか、絶対にィ……! 
貴様こそ、我が宿敵に相応しい……!!』

 そして、2人の決着はつかずにお預けのままとなる。
後日、茨木は斬り落とされた腕を取り戻すために再び綱の前に現れ、
見事それを成し遂げた。

「疼くのだ……怪異となって戻りしこの右腕が……貴様を殺せと疼き続けているのだ!!」
「奇遇だな。俺もまた同じだ。お前を倒さねば、この剣は鞘には収まらぬだろう!!」

 綱と茨木。互いに譲れぬものを賭けてぶつかり合う。
己の命。そして――互いの誇り。

「ええなぁ、茨木。あないにも熱うなって……」
「酒呑、てめえは……」

 酒呑童子 対 坂田金時。
妖艶な笑みを浮かべた少女――酒呑童子が手にするのは杯。
そこに注がれていたのは透明な液体……そう、日本酒だ。

「ぷはぁ、ほな、ウチらも遊ぼか? なあ、小僧?」
「っ……上等だぜ……!」

「ふふ……ええなぁ、ええなぁ、ええ顔や……!」

 金時の怒りの炎は静かに、そして確実に燃え上がっていく。
そして、盃で酒を呑みながら笑う彼女もまた――

「その表情、鬼を前にしても一歩たりとも引かず、牙を剥いて抗ってくるその態度!
滾るわぁ、たまらんなァ……」
「っ……!!」

 彼女の視線の先に映るのは、紛れもない鬼の顔。
それは、今にも噛み付いてくるかのような、鋭い眼差しをしていた。

「おぉぉぉぉうりゃッ!!」

 金時がマサカリを豪快に振り下ろし、それをひらりとかわす酒呑。

「鬼さん、こちら♪ って、鬼はウチの方やったなぁ。あはは」
「……チッ!」

 舌打ちをして苛立ちを露わにする金時。しかし、次の瞬間には冷静さを取り戻し、
酒呑に狙いを定め直す。

「ほな、ウチからも行くで? そら」
「なに……ぐッ……!!」

 小柄な体躯に似合わぬ強烈な前蹴り。
まともに受けてしまった金時は思わず後退りをしてしまった。
しかしすぐに体勢を立て直すと、酒呑童子に突っ込んでいき、
再度、マサカリを振り下ろす。だが、またもやあっさりと避けられてしまう。

「おぉう、頑張る頑張る。並の人間なら
臓腑が潰れとるくらいの衝撃やったはずなんやけどなァ」
「こちとら鍛え方が違えんだよ!」
「ええよ。そうこうへんと、つまらんもんなァ」

「金時さんも綱さんも苦戦されているようです……!」
「本気の茨木と酒呑……敵に回せばこれ程厄介な相手はいないからね」

 黒平安京に巣食う怨霊・悪鬼たちと応戦していたマシュや立香たちも、
今目の前にいる敵の強大さに改めて戦慄を覚えていた。

「そぉーれっ!!」
「!?」

 リンボが呪符を羅生門の上から気を逸していたマシュや立香へと向けてばら撒く。

「させないッ!!」
「ありがとう、いろはちゃん! 私だって!!」

 それに気がついたいろはは、光のボウガンでそれを撃ち落として破壊した。
続けて、立香もガンドで援護射撃する。呪符は燃え落ち、地面に青い炎を灯した。

「ほほう、何かとご縁がありますなァ。こうして相対する度に力を蓄えているご様子。
はて、あの退魔師の娘はご一緒ではないようですが……日向月美殿…でしたか?」

「あなたに話すことなんて何ひとつ無い……! 
早くそこをどいて……でないと撃つ……!!」
「ンフフ……健気な。良いでしょう。では、お手並み拝見と参りましょうか!」

(不味いわね……)

 膠着状態となった戦場。いや、若干CROSS HEREOSが押されているか。
戦いながら旗色が悪くなってきた事を察知したやちよは、撤退すべきか否かを
模索する。しかし、決定的なきっかけが足りない。
下手に背を向ければ、それこそ集中攻撃を受けてしまうだろう。

(何か……ほんの少しでいい、敵の気を引き付けられる何かがあれば……)

 その時である。

「ハッハッハッハッハッハ……ハァーッハッハッハッハッハ……」
「!?」

 混沌とした戦場に響き渡る、高笑いの正体は……?

29人目

「幕間:Starting Case_Bullet Order/Phantasia」

 アメリカ 港町のモーテルにて。

「この男は……魔術協会の魔術師ですか。それも相当に高名で政府ともつながりがあるとは……すぐそばに教団の刺客がいると考えると、油断なりませんね。」

 薄暗いモーテルの一室に、先ほど殺した男がテーブルの上に寝かされていた。
 路地裏から回収した男を囲うように、複数の人間が囲っている。
 その中心にて、彼を殺した者の一人であるファルデウス・ディオランドは魔術師の一人であった彼の死体を解剖し、そこから魔術刻印を見ている。
 その顔は険しく、忌むべき邪悪でも見ているかのようだ。
 しかし、その手に握られたサバイバルナイフの振るう速度は依然落ちずに、険しい顔をしつつも解剖を進めるのはファルデウスがこういったことに慣れている事を思わせる。
 やがて彼は血管の動脈の一部を引き抜き、血を搾り取る。

「うっ……すみません、少し外に出ます……。」

 彼の部下の一人が、血肉の臭いに耐え切れず部屋を出る。
 ファルデウスは構うことなく、絞った血から何かを搾り取る。

 黒く、とても小さな塊。
 砂粒が寄り集まった形状で、太いはずの動脈血管の幅より二回りほど小さい。

「とても細かい複数の術式が、このナノマシンの集合体を素体にして入っている。連中はきっとこれを使って動きを監視しているのでしょう。」
「部下にも首輪をつけているってこと?きっと作ったやつは最悪な性格をしていそうね。」

 霧切は、小さな血液のプールに浮かぶ黒い塊を見つめる。
 その眼は冷めきっており、同志すら道具としか考えていないメサイア教団上層部の在り方に対する軽蔑と侮辱の感情がこもっている。

「それに……。」

 ファルデウスはシャーレの中のナノマシンの一部をピンセットでつまみ、手持ちのライターの火を近づける。
 ライターの赤く燃える火の玉を受けたナノマシンは、何故かその色とは反発するように青い炎で燃えだす。

「致命的危害が加わると粛清術式が起動。対象の体を自動的に燃やして情報抹消するとは。情報管理も徹底している。」

 キング・Qや芥が致命傷を負った時に発動した術式。
 対象から情報を聞き出せないようにするための処置だろう。

「霧切さんも、あんまりきつそうだったら外に出て休んでもいいですよ。」
「いえ、こういうのには慣れている。」

 と、その時モーテルに備え付けられた固定電話が鳴り響く。
 霧切は、受話器を手に取り通話を開始する。

「はいもしもし、『N』。はい。移動ですか。すぐにですか?そこまで大事な……。」



「……。」

 ファルデウス達がいる一室の少し隣。
 そこに、港区から逃げてきた男がいた。

「ブロリーは負けた。かくなる上は俺だけでもベジータを葬るしかないか……。」

 褐色の肌、潰れ、傷ついた右目。
 どこか憂いと狂気をにじませた顔。

「もしもし。ビショップか。どうした?」
『パラガス。お前に命令を下す。』

 港区での”戦争”の後、パラガスはモーテルにて待機をしていた。
 息子ブロリーの敗北故か、どこかやつれ気味である。

『即刻『ジャバウォック島』に行きあるものを回収、ないしはのこのこと来たCROSS HEROESを潰せ。ここを出たのを確認した後、量産型オモヒカネを送る。』
「分かった、ありがとう。」
『戦況次第ではカルネウスも派遣しておく。連中が来たら、先行隊として配置した雀蜂を指揮せよ。いいな?』
「分かった、すぐにでも行こう。」
『副官曰く、この任務の失敗は許さないとのことだ。気を引き締めるように。通話を切るぞ。』

 パラガスは、大司教ビショップの命を受けてジャバウォック島なる場所に向かおうとする。
 憂いをにじませた顔を浮かべながらも、その歩みは止まらない。

「……血の匂い、か?」

 パラガスは、唐突にモーテルから香る血の匂いを感じ取った。
 しかしどこから香るかまではわからなかったようで、彼はモーテルを出たのだった。

『次のニュースです。今日未明、○△町にて男性一人が死亡しました。警察によると、死亡したのは○△警察の――――で、死因は自殺であるとのことです。』

 その真相は闇の中。
 事実すら明るみにならぬ闇の中、悪と悪がぶつかろうとしていた。



 そのころ、ギリシャにて。

「あー、つまり……幻想郷ってところに行く準備が整ったと?」
「ええ、ソロモンの指輪を渡したいし……何より、ちょっと助けてほしいって前に言ったし。」

 流星旅団と月美、ペルフェクタリアたちは突如出現した八雲紫から話を聞いていた。
 内容を把握した月夜は、

「その協力報酬として、指輪を渡すってことか。いいだろう。メサイア教団の手がかりもつかめたら更に最高だ。」
「ボクも行くよ。兄さんの事、心配だしね。」

 天宮兄妹は幻想郷に向かうつもりだ。
 その言葉を聞いたペルフェクタリアは、同じように続ける。

「私達も行こう。彩香の身に宿る神霊の事もあるからな。強くなったとはいえ、暴走でもしたら……目も当てられない。」
「ああ、ありがとうペル。兄として感謝する。」
「ボクも、ペルたちには一緒にいてほしい。」

 かくして4人は結託する。

「燕青とフィオレはどうする?」
「そうさな……。」
「日本に戻って、後方支援をしようかと思ってました。」
「分かった。気をつけてな。」

 と、幻想郷に出陣するメンバーが決まった。
 しかし、そばにいたDDの兵士たちは、少し思ったことがあったようで。

「待て、いろいろ言いたいことはあるんだが。どうやって移動するんだ?」
「そうね……。」

「これほどの大人数だ、物品も運ばないといけない以上はそのスキマとやらだけだと手間だろう。」

 と、口を開いたのはイシュメールだった。
 何かを思いついた彼は、ある提案をする。

「安全な位置の座標を教えてくれ。ここのワームホールを使って彼らを……転送したい。」
「ワームホールって……分解されて死んだりとかは、しませんよね?」
「安心しろ、死にやしない。」

 ワームホールという現実離れした技術に、その場にいた殆どが困惑する。
 それは、あの八雲紫ですら混乱するほど。

「座標くらいならいいですけど……転送って言うすごい技術を、まさか人間たちがもう到達していたとは……。」

30人目

「Epilogue」

「どうやら話はついたようだな」
「あぁ」
「なら後は…」
「ミケーネをぶっ潰すだけだ!」

「ええい!いい気になるなよ人間ども!」
「貴様らがどれだけ抗おうと、我々ミケーネの勝利は揺るがないのだ!」
「黙るがいい邪神よ!」
『例えお前達が神様だろうと、僕達は負けはしない!』
「覚悟しやがれ!テメェらが見下してる人間の力、思い知りやがれ!」
「ほざけ!我々に挑んだことを後悔するがいい!」
「行くぞ皆!」
今ここに、CROSS HEROESによる反撃が始まった!



「まさかまたテメェらと一緒の戦うことになるとはな」
「フン、それはこっちのセリフだ」
「お前にまた会うことができるなんて夢にも思わなかったぞ」
「へっ、んじゃ久しぶりにいくぜ!ダブルトマホゥークッ!ブゥーメランッ!」
ゲッターロボの両肩から二本のゲッタートマホークを取り出し連携させ投げると、まるでブーメランのように飛んでいき、ミケーネ神や戦闘獣を次々と切り裂いていく。
「グギャアアアアアア!?」
「チッ!こしゃくなぁ!」
ミケーネ神は戦闘獣軍団と共にゲッターロボに向かって攻撃するが……
「オープン!ゲェットッ!」
「っ!?なに!?」
なんとゲッターロボは3機のゲットマシンに分離し攻撃をかわしたのだ。
「竜馬、次は俺が行く」
「別にいいが、腕は落ちてねえだろうな?」
「フッ、笑わせるな。チェンジ!ゲッター2!!」
3機のゲットマシンは先程とは異なりジャガー号、ベアー号、イーグル号の順に合体しゲッター2になった。
「ゲッタァァァドリル!」
ゲッター2になったゲッターロボは、目にも止まらぬ速さで動き回りながら、右腕に装備されたドリルで戦闘獣を次々と貫いていく。
「ドリルアタック!」
そしてドリルをミサイルのように飛ばしてミケーネ神を攻撃。
「グワァアアアアアア!?」
ドリルがミケーネ神に直撃すると、爆発を起こしミケーネ神の身体を木っ端微塵に吹き飛ばした。
「隼人、次は俺が行く」
「頼むぞ弁慶。オープン!ゲット!」
ゲッターロボは再びオープンゲットで3機のゲットマシンに分離した。
「チェンジ!ゲッター3!」
今後はベアー号、イーグル号、ジャガー号の順に合体しゲッター3になる。
「うりゃあ!」
ゲッター3になったゲッターロボはルフィやボスボロットのように両腕を伸ばし、ミケーネ神を捕まえる。
「っ!は、離せ!?」
「うぉりゃああああああっ!!」
ゲッターロボはミケーネ神を掴んだまま回転、その勢いで竜巻が起こる。
「大雪山!おろぉぉぉぉぉしっ!!」
そしてその勢いそのままにミケーネ神を上空に向かって投げ飛ばした。
「ミサイルストォォォォムッ!!」
更に脚部から大量の小型ミサイルを発射し、先程投げ飛ばしたミケーネ神を空にいる戦闘獣軍団ごと撃破する。



「ほう、やるではないか。流石は彼らの仲間だけのことはある。
……さて、私も使命を果たすとしよう…!」
そう言うアルケイデスの目の前には、無数の戦闘獣とミケーネ神がいた。