極東にある謎の國
――極東
その言葉を耳にした人はだれしもアノ国を思い浮かべる。
――その名はカミの国
これは正式な名前ではないものの、それ以外の呼び名を見つけることは誰一人としてできなかった。
なにせ、この国にはバリアが張られているのだから……
――彼らは口をそろえて鬼が住む国と答える。
そしてこの国を治めているのはカミだと信じられている。
――確かにこの国は美しい……
仮令、バリアがなかったとしてだれしももそう答えるだろう。
――だけども何かがオカシイとすら思ってしまう
なぜだろう
昔むかしこの国は鬼が人間を支配・管理していた。理由は人間が鬼を恐れそして自分達人間が神になれば自由になれると信じたからだ。だが人間が産まれるまでからこの国と共に生きてきた鬼からしたら大変不敬で迷惑極まりないので、罪深き人間がどこにも行けない様にバリアが張られ人間は鬼に逆らえない様に人間の心臓に楔がありそして絶対服従を誓うかわりに鬼が楔の中に入り、本来業すらも焼きつくし祝福に変える契約をしたのだ。だからこそこの国はカミの国と呼ばれていて鬼が住んでいる。そして今も鬼は人間を支配し管理している。
日本国の外にある国々は皆、非干渉を貫いていた。
その鎖国という体制に文句を言おうものなら
今度は自分たちが鬼どもの餌食になってしまうかもしれないからだ。
バリアの内の人間たちは皆、鬼の奴隷として暮らしている。
生殺与奪の権は鬼にあり逆らうことは許されない。
反抗さえしなければ最後には祝福と共に生を全うすることができる。
諦めにも似た、安らかな死。それこそがこの国の民にとっての幸福なのだ。
しかし、一部の者達はそれを受け入れられず鬼の支配からの解放を求め
この国からの脱出を試みる……
――遠く遠い昔のおはなし……
アノ国にバリアなどといったものは存在しなかった。
それでも、誰一人として敵を寄せ付けなかった…………
――そのため、その存在は、少しばかりかは疑われ始めている……
だけどもバリアは確かにある……
ただしその地で生まれたヒトだけが出入り自由なものとして…………
――この世界ではまことしやかに人ならざる鬼の存在を信じられている。
カミはいるが、鬼というものが本当に存在するかはわからず……
彼らの心を支配し続けた鬼は……彼ら自身なのかもしれない…………
そんな世界の在り方に疑問を抱く鬼がいた。
人間を支配などせず、鬼と人間が共に生きていくための方法を模索していた……
「悪いことは言わん。そんな考えは今すぐに捨てろ。
でなければ、お前は鬼でありながら同じ鬼に殺されることになるだろう。
今のは聞かなかった事にしておいてやる」
身内の鬼に忠告もされた。けれども、日に日に疑問は大きく膨らんでいくばかり。
鬼に鎖で繋がれ、強制労働施設に連れて行かれる死んだ目をした人間たちの列……
それをただただ見つめているだけの自分自身に嫌気がさしていた……
そんな状況を楽しんでる存在がいた。そう新人神だ。新人神が他の誰でもないこの国を歪ませ人と鬼を引き離しお互いに理解できない様に仕向けた張本人である。何故そんな事をしたのか至って単純で昔から人と鬼が仲良く共存してるのが見ていて面白くなかったからだ。だからこそ人と鬼の中を引き裂く様に仕向けてみればあっという間だった。勿論直ぐに気づいた鬼や人間はいたがすぐに排除された本などは全て回収され燃やされてしまい誰も真実に気づかないまま今の関係が続いている。