プライベート CROSS HEROES reUNION 外伝

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1人目

「Prologue」

 CROSS HEROES。

世界を超え、次元を超え、集結した英雄たちによって結成されたチームの名だ。
しかし、その詳細なる顛末は記録には残されていない。
そして永き年月が流れ……誰しもがその名を忘れかけていた頃、
新たなる物語が幕を開けた。
かつての激戦を戦い抜き、あるべき世界へと帰っていった戦士たち……
そして新たに生まれ来る若き戦士たちの物語が。

 そう、これはリ・ユニオン・スクエアを舞台に戦う新生CROSS HEROESとは、
別の物語である。

2人目

「Hero Girls,Sky High!」

 ――ソラシド市。この町には、ヒーローがいる。

「ランボォォォォォォグ!!」
「う、うわあーっ!!」

 巨大な怪物が繰り出す攻撃に、市警の男性は為す術もなく吹き飛ばされる。

「はっはー! 人間がランボーグに勝てるわけないのねん!」

 アンダーグ帝国からやってきた悪の幹部、カバトン。
物質に闇の力、アンダーグエナジーを注ぎ込む事で凶暴な怪物・ランボーグを生成し、
この世界を蹂躙しようと企む怪人だ。

「さあて、今日こそプリンセス・エルを捕まえちゃうのねん」

 ランボーグの頭上に乗っかり、高らかに宣言するカバトン。
しかし、不意に彼は背後に気配を感じる。

「そこまでです!!」

 颯爽と吹き抜ける蒼き風を身に纏い、サイドテールの髪をなびかせながら、
その少女は威風堂々とカバトンの前に立ち塞がった。

「おぉっと、またおまえなのねん!?」
「ヒーローの出番ですッ!!」

 異世界・スカイランドからやって来た、ヒーローを目指す少女
ソラ・ハレワタ―ル。
スカイランドの王女、プリンセス・エルを狙うカバトンを阻む為に、今日も彼女は戦う。

「スカイミラージュ、トーンコネクト!!」

 その掛け声と共に、ソラの手の平に光の粒子が収束。
スカイランドの王女、プリンセス・エルから授かった魔法の力により生み出された
変身アイテム・スカイミラージュ。

「きらめきホップ! さわやかステップ! はればれジャンプ!!」

 三段階のプロセスを経て、ソラは眩い光に包まれ変身する。

「無限にひろがる、青い空! キュアスカイ!!」

 蒼いマントを身に纏い、突き抜ける蒼穹が如きヒーロー……
伝説の戦士プリキュアの名を受け継いだ、キュアスカイがここに誕生した。

「またまた出たのねん、お邪魔虫ィ! ランボーグ、やっちゃうのねん!」
「ランボォォグ!!」

 カバトンの合図と共に、ランボーグは拳を振り上げ襲い掛かる。
対するキュアスカイは素早く攻撃をかわす。

「はああああああッ!!」

 スカイランド神拳を修めしソラの一撃は、ランボーグをいとも容易く地に伏せさせた。

「おのれぇ、よくもやってくれたのねん! 行けー! ランボーグ!!」
「ランボー!!」

 怒りのままに指示を飛ばすカバトン。それに応える様に、
ランボーグは巨大な足を振り上げキュアスカイを踏み潰さんとする。

「ぬぅぅぅんっ!」

 しかし、キュアスカイは一歩も引く事無く構えを取り、ランボーグの一撃を受け止めた。

 「覚悟です、カバトン! ソラシド市の平和は、私が守ります!! 
ぬううううううっ……」

 キュアスカイの力強い宣言と共に、彼女はランボーグの足を押し返していく。

「ぐぬぬぬ、このままじゃまーた負けちゃうのねん……おっ!?」

 その時である。

「えっ……」

 突如、ランボーグとは別の怪人がキュアスカイの前に現れる。

「……」

 新たなる敵の参入に、スカイは訝しげに視線を向ける。
しかし、それはカバトンにとっても想定外の事態だった様で……。

「何なのねん!?」

 新たなる怪物は無言で触手を繰り出す。街灯に巻き付くと、
たちまち炭化して崩れ落ちた。

「なんと……! カバトン! あの怪物もあなたの差し金ですか!?」
「お、俺様は知らないのねん!」
「ならば、あれは……」

 怪物の名は、ノイズ。触れたものをたちまち朽ち果てさせる、滅びの呪詛。

「相手がランボーグであろうと、そうでなかろうと……
人々を傷付ける者は、私が相手です!! えいッ!!」
「ランボッ!?」

 ランボーグの足を一気に押し返し、ノイズたちへと向き直るキュアスカイ。だが……

「!?」

 今度は空から無数の群体――星屑が降り注ぎ、キュアスカイに襲い掛かる。

「今度は何なのねん!?」

 カバトンにとっても想定外の事態であったらしく、狼狽の声を上げた。

「はっ! せいッ!」

 しかし、キュアスカイは迫りくる群体を次々と撃退していく。

「数が多い……!! はっ……!」

 星屑に気を取られていた為、ノイズの奇襲への対応が遅れるキュアスカイ。
ノイズの触手が彼女の身体を抉らんとしたその瞬間である。

【Balwisyall Nescell gungnir tron――】

 不意に、ノイズとキュアスカイの間に割り込む様に黄金色の影が現れた。

「歌……?」
「はあああああっ!」

 ノイズの触手を、黄金に輝く拳が迎撃する。

「大丈夫?」

 ノイズと相対する様に現れた、その人影の正体は――。

「プリ……キュア?」
「私、立花響。趣味は人助け、好きなものはごはん&ごはん。よろしくね」

 どこか間の抜けた自己紹介をする少女――立花響。
彼女はノイズからキュアスカイを庇う様に立ち塞がった。

「あ、ありがとう……ございます」
「お安い御用だよ!」

 戸惑いながらも礼を言うキュアスカイに、響はサムズアップと
共に溌剌とした笑顔を向ける。さらに……

「勇者あああああああああッ! 
パアアアアアアアアアアアアアアアアンチッ!!」

 空中の星屑たちを、桜色の閃光が貫いた。

「今度は何なのねん!?」
「友奈ちゃん!」

 降り立つ桜色の戦士を目の当たりにし、響が歓喜の声を上げる。

「よかったー、間に合って」

 そう言って笑う彼女の名は結城友奈。神樹の加護を受けた勇者の一人である。
響、そして友奈……プリキュアとは違う、しかして強力な力を持った戦士の登場。

「ぬぬぬぬぬ……次から次になんなのねん!?
まとめてやっつけてやるのねん!」
「ランボォォォォォォォグ!!」

「!!」

 ランボーグの咆哮と共に、3人の戦士は散開し戦闘態勢を取る。

「いっくぞーッ!」
「OK、友奈ちゃん!」

響と友奈は、互いに声を掛け合うとランボーグへと突撃する。
響を援護する様に、友奈が閃光の如く拳を振りかざす。

「やああああッ!!」

 強烈な拳の一撃がランボーグに打ち込まれ、

「ふんッ!!」

 震脚から繰り出される響の鮮やかな鉄山靠が、友奈の反対側からランボーグに直撃する。

「ラ、ランボォ……」

 二人の攻撃を同時に食らい、よろめくランボーグ。

「今ですッ!! ヒーローガールゥゥゥゥッ……」

 上昇気流が雲海を払い、キュアスカイは蒼穹の拳を天へと掲げた。

「スカイパァァァァァァァァァンチ!
はああああああああああああああああッ!!」

 蒼き穿孔の渦と化したキュアスカイの拳は、一直線にランボーグの胴体を打ち貫く。

「ラ、ランボオォォォォ……」

 その一撃が致命傷となり、断末魔と共に浄化され、消滅するランボーグ。

「プリキュアだけでも厄介なのに、妙な奴らまで現れて……訳が分からないのねん!
ひとまずここは……カバトントン!」

 カバトンはたまらず瞬間移動で撤退していく。

「ソラちゃ~ん!」
「えるぅ~」

 エルを抱きかかえたソラの親友、虹々丘ましろが駆け寄ってくる。

「ましろさん!」
「その方たちは……?」

 ソラシド市に突然現れたヒーローガールたち。その理由、目的は……?

3人目

「不殺の剣、鬼滅の刃」

――明治・東京。

「キヒヒ……」
「チッ……何なんでぇ、あの化け物はよ」

 背負うは悪一文字。トサカ頭に赤い鉢巻を巻いた長身の偉丈夫。
界隈では負け知らずの喧嘩屋、相楽左之助。

「分からぬ。だが油断するな、左之」

 並び立つは単身痩躯、赤毛の剣客。左頬には十字傷。
幕末の時代、「人斬り抜刀斎」と恐れられた伝説の剣客、緋村剣心。
その手に握るは、逆刃刀。とても人を斬るものとしては成り立たない代物。
数多の人の命を奪った罪を償うべく今は不殺の流浪人として、
東京の町で力弱き者たちの為に剣を振るっている。そんな彼らが相手取るのは……

「男2人か……けひひ、喰らうなら女子供が良かったが……」
「喰らうだァ? どうやら見た目通りの化け物みてぇだなァ、おい!」

 左之助が眉を吊り上げ、ドスを効かせた声で言い放つ。

「お主でござるか。ここ最近、夜な夜な街に現れては人を襲うと言う物の怪とは」
「そうと知っててノコノコ出向いてきたのかよ、めでたい奴らだな」

「罪なき人々を喰らうというのならば、捨て置けぬでござるよ」

 異形が牙の生え揃った口を開くと、不気味に光る眼球が露わとなる。

「お前らなんぞは俺たち「鬼」の餌なんだよ、餌ッ!」

 まるで血に飢えた獣のように叫ぶ。

「どうやらまともに会話が出来る相手では無さそうでござるな。それに……「鬼」とは」

 剣心は逆刃刀を正眼に構える。

「左之、気をつけろ」
「へっ、上等じゃねえか。鬼退治たぁ、薫の嬢ちゃん達に良い土産話にならァな!」

 左之助が高く跳び上がり、異形に向かって挑みかかる。

「オラァァァァァッ!!」

 異形の頭を狙って、左足による回し蹴りを繰り出した。

「!?」

 だがその攻撃は空を切る。着地する左之助の背後で、異形が嘲笑うかのように
ケタケタと牙を鳴らす。

「何ッ!?」
「遅えよ、ケケケ!」

 大きく振りかぶって、異形が突き出す右手で殴りつけた。

「ぐおっ……!!」

 両腕を交差させて防御の姿勢を取った左之助であったが、勢いを殺しきれず
長屋に積み上げられていた桶の山に突っ込んでいく。

「左之! 大丈夫か!」

 剣心が叫ぶと、土煙の中から声が返ってくる。

「クソッ……! 野郎……!」
「ケケ……どうしたよ、もう終わりか?
次はもう少し粘ってくれねぇとつまらねえぜ……」

 そこに剣心が進み出た。逆刃刀の切っ先を異形に向け、

「拙者がお相手仕る」

 異形はケタケタと笑い、牙を剝き出しにする。

「けひひ……面白れぇ、俺を止めてみなァ!」

 両者はどちらからともなく距離を詰めた。流れるような連撃が鬼を打つも、
剣心は異形の素早さに瞠目する。それだけではない。

(この身のこなし、左之助を吹き飛ばす腕力、そして拙者の打撃を受けても
物ともせぬ頑強さ……)

 逆刃刀とて、鉄の塊。凄腕の剣客である剣心が振るうそれで身を打たれれば、
普通の人間ならたちまち昏倒する。だが、この異形は違う。

「キェェェェアアアアッ!!」
「――!!」

 鬼が鋭い爪を剥き出しにし、剣心目掛けて突き出す。

「させっかよ!!」

 左之助が投げつけた桶が、鬼の顔面に命中。

「ぐおっ!? てめえ!!」
「今だぜ、剣心!」
「承知!!」

 一瞬怯んだ隙をついて、剣心が天高く逆刃刀を振り上げる。

「飛天御剣流――龍槌閃ッ!!」

 月光を背にして振り下ろされた一刀が、異形の右肩に振り下ろされる。

「ぐおおッ……!!」

 剣心の一撃を受けて、異形はぐらりとよろめく。

「決まったッ!!」
「……」

 手応えはあった。並の相手ならこの一撃を以って肉を穿ち、筋を断ち、再起は不能……
決着はつくだろう。だが異形は倒れない。

「キヒヒ……」

 牙を剝き出しにして、異形が剣心を睨み据える。
メキメキ、と鬼の右腕が盛り上がり、元に戻った。

「おいおい、強ええ上に殴る先から治りやがるのかよ! 冗談じゃねえぞ!」

 左之助が目を剝いて叫ぶ。

「けひひ……どうやらお遊びはここまでのようだなァ。
じゃあ、そろそろ本気で喰らうとするか」

 だが、そこに――

「水の呼吸、壱ノ型――水面斬りッ!!」
「ぬうッ!?」

 横合いから伸びた新たな一撃が、鬼の左腕を斬り落とした。
 
「ぐええッ、お、俺の腕がァッ!!」

 黒と緑の市松模様の羽織をまとい、額に痣を持つ少年……
刀身が真っ黒な刀――日輪刀――を携えた少年が、異形の前に立ちはだかる。

「誰だてめえ!」

 左之助が尋ねる。

「俺は鬼殺隊、竈門炭治郎と言います!」
「鬼殺隊……?」

「安心してください、お2人とも! 鬼は……俺が斬ります!」
「テメェ、何言ってやがる!  あいつは人間じゃねえんだ、ガキの出る幕じゃ……」

 左之助の言葉を遮り、異形が叫んだ。

「おお俺の腕をよくも斬り落としやがったなァ!!」

 先程斬ったばかりの左腕の断面を右手で押さえて喚き散らす異形に、炭治郎は告げた。

「黙れ。これ以上の凶行を重ねる前に、俺がお前を斬る!」

「少年、拙者らも加勢しよう」
「お力をお借りします。鬼は、首を刎ねなければ死なない。
腕や脚を斬っても首を斬らねばすぐに再生するんです」

 炭治郎の言葉を受けて、異形が叫ぶ。

「キケケケェーッ!!」

 片腕を喪った異形は、体幹を傾けた奇抜な体勢で、四足獣のように
地を蹴って向かってきた。

「どぉぉうりゃッ!!」

 左之助が鬼の顔面に拳を叩き込み、さらにその刹那に指を折ってもう一撃喰らわせる。

「二重の極みッ!!」
「ぎゃっ!」

 打撃による衝撃が物理的抵抗によって拡散してしまう前に
さらにもう一撃を加える事で、相手の防御を無視して攻撃する事が出来る破壊の極意。
それは鬼の頑強な肉体に対しても通用する。

「へへ、どうでぇ。こいつをまともに喰らって即死しねぇのは
大したもんだがよ……!」

 鬼の脳が揺れ、眼球があらぬ方向を向き、平衡感覚も失われた様子でふらついている。

「これで終わりでござる」

 異形との距離を詰めた剣心が逆刃刀を振りかぶった。

「飛天御剣流――」

 秒にも満たない刹那の時間、剣心の意識が研ぎ澄まされる。

「九頭龍閃ッ!!」

 目にも止まらぬ九つの斬撃が一斉に異形を襲う。

「グオオオオォォ!!」

(凄い……この人たち、鬼と互角、それ以上に戦っている……!!)

 炭治郎は、異形と相対する剣心、左之助の姿に感嘆していた。

「今でござるッ!!」
「はいッ!!」

 剣心の号令で、炭治郎が日輪刀を構える。

「水の呼吸、弐ノ型――水車ッ!!」

 炭治郎の放った横薙ぎの一刀は、剣心が放った九つの斬撃の隙間を縫うように走り
異形の首を刎ねた。ぼとり、と地面に落ちる。

「へ、へへ……冗談じゃねえよ。俺より強い人間なんざいる筈が……」

 異形はそう言い残して、灰になって消えていった。

「倒した……」

 炭治郎がホッと息をついて刀を収める。そこへ剣心が駆け寄る。

「少年、かたじけない。お主が来てくれねば危うかったでござる」
「い、いえ! そんな!」

4人目

「地獄先生と特級呪術師」

 プリキュア、シンフォギア、勇者。
明治に生きる不殺の剣客と、大正を駆け抜ける鬼殺隊の少年。
本来ならば決して交わる事の無かったはずの戦士たちが、出会い、交錯する。
それは、まるで……


――現代・東京。

「白衣霊縛呪ッ!!」

 白衣観音経を広げ、邪悪な怨霊の動きを封じる。

「ギィエエエエッ」
「よっしゃあ!!」

 数珠を腕に巻き付け、霊力を籠めた拳を怨霊に叩きつける腰まで届く長い黒髪に
セーラー服姿の女子高生。断末魔の叫びが響き、やがてその怨霊は消えていく。

「へへーん、どうよ、ぬ~べ~先生! あたしも強くなったもんでしょ!?」

 女子高生霊媒師、葉月いずな。かつてはお金儲けに霊能力を利用し、
向こう見ずで未熟であったが故に様々な事件や事故に巻き込まれ、
トラブルを引き起こす事もしばしば。しかし、霊能力を自分の為ではなく人の為に
使いたいと考えを改め、
修行の末に霊能力のコントロールが出来るようになったのである。

「ま、及第点だな」

 Yシャツに黒いネクタイ、左手にはグローブを嵌め、太い眉毛を蓄えた男。
その名は鵺野鳴介。人呼んで、「地獄先生ぬ~べ~」。
いずなにとっては師とも仰ぐべき霊能力教師である。

「に、しても……また渋谷が物騒になってきたよね……」

 閉鎖都市、渋谷。ここはかつて、世界の根幹を揺るがす大事件の舞台となった、
いわくつきの場所。戦いが終わり、平和が訪れたはずの現在においても
一般人は足を踏み入れる事を許されず、 霊的な監視の対象とされている。
しかし今、この街はまた新たな危機に見舞われようとしていた。
闇の世界から現れた謎の異形たちが、街の奥底で蠢き
時折街の外へと抜け出ようとしている。ぬ~べ~といずなは、街で起きた事件を
担当する特別調査員として活動を続けているのだ。

(今回のこの騒動……もしやあの事件の再来なのか……)

 そんな事を考えていると、二人は背後に気配を感じた。
いずなは咄嗟に身構え、ぬ~べ~も険しい表情を向ける。
そこには、一人の人物がいた。黒ずくめの衣装に目隠し、そして天を衝く銀髪……
190cmを超す長身。

「どーもー」

 緊張感の無い声で、その男はぬ~べ~達に話しかけた。

(これだけ接近されるまで気配を感じなかっただと……?)

 ぬ~べ~は警戒を強めた。男はそんな様子を見て、自己紹介を始める。

「ご苦労さんです。僕は五条悟。こんなナリをしてますが、一応教師です。
ま、怪しいもんじゃないって事で」

 その言葉と風貌は胡散臭い事この上なかったが、教師であるという事は事実であった。
その証拠に、彼は呪術高専という学校の教師を務めているという。

「五条……? まさか、あの呪術界御三家の……!?」

 ぬ~べ~は霊能力に通ずる者として、その名には聞き覚えがあった。
呪術界御三家とは、日本の呪術界の伝統的な三家の一つであり、
それぞれ相伝の術式を受け継いでいるという。
例えばぬ~べ~が属する霊能力者の世界でも、有名な霊能力者として名を馳せる者たちは、 その殆どが呪術界御三家に縁を持つ者たちだ。
その中に置いても、五条はさらに特殊な立場にある。

「おや、お詳しいようで」

 ニマリ、と唇を歪ませた五条に、ぬ~べ~は身構えた。

(……この男、強いな……)

 その身に纏うオーラも、外見とは裏腹の重みを感じさせる。
五条に対して警戒心を強める一方で、いずなは呑気な様子で五条に話しかける。
彼女は呪術界の知識に乏しいため、その事情には疎いのだ。

「おじさん、目隠しなんてしちゃってそれで前見えてんの?」

 五条を訝しむぬ~べ~とは対照的に、
いずなは五条に対し警戒心を抱いていないようである。

「おじさん……まぁ、現役の女子高生からしたら、僕も立派なおじさんか……」

 ガクリと肩を落とす五条。その反応にぬ~べ~は困惑する。
自分はもっと胡散臭い男を想像していたのだが……
困惑する2人に対し、五条は改めて自己紹介する。
彼は呪術高専東京校の教師であり、特級呪術師の一人なのだという。
呪術界における階級の一つで、最も優れた者のみが辿りつく事が出来る領域である。
強力な呪力を備え、強力な術式を扱うとされる者たち。
しかもこのご時世に、教師という立場でその任に就いているという事は、
この男は相当の実力者であるという事を示している。
呪術界の上層部からも一目置かれており、貴重な戦力の一人でもあるらしい。
だが五条本人は気さくな様子で、呪術界上層部に対してすら
物怖じしない性格なのだという。

「鵺野先生、ですよね? お噂は上の連中からかねがね聞いてますよ」

 特級呪術師である五条。その彼が何故一般人が立ち入り禁止とされている
封鎖区域の近くまで来ているのか?

「かつて、この渋谷で起きたと言う事件。そしてそれを契機に、
この場所で引き起こされる厄介事を調査する役割を僕達は与えられてましてね。
要は、あなた方と近しい位置で動いてるって訳です」
「五条……先生のような特級呪術師が動いていると言う事は
この渋谷で起こっている事、やはりあの事件のような……?」

 ぬ~べ~の問いかけに、五条は否定も肯定もしなかった。
だがその沈黙こそが、何よりも雄弁な答えであった。

(あの事件……もしまたあの地獄のような出来事が繰り返されるのだとしたら
一刻も早く止めねばならない)

 かつてこの街で起きた大事件を思い出しながら、ぬ~べ~は決意を新たにする。
しかしその時、周囲に強力な呪いが充満し始める。

「グボェェアアアアッ!!」
「なっ……」

 突如、奇声を上げて姿を現した異形の怪物、呪霊。

「ほう、こんなのまで呼び寄せちゃうって事は、こりゃ結構キてるねぇ」

 呑気な様子で呟きながら、五条はその異形の怪物を見る。
一般人なら発狂していてもおかしくない禍々しい姿だったが、
五条にはまるで臆する様子がない。
それどころか、この事態をどこか楽しんでいるかのようにすら見える。

「ねぇ、アンタ! 危ないって! あんなデカブツ……」
「大丈夫。僕、最強だから」

 いずなの警告に、五条は自信満々の様子で返す。
そして、彼が術式を発動すると、周囲に強い呪力の波動が広がる。
すると、その直後に異形の怪物が吹き飛ばされた。

「ギャガアアアアアアッ!!」

 断末魔の悲鳴を上げ、吹き飛ばされる怪物。
いずなはその様子を唖然として見ていた。ぬ~べ~は、この隙に拳を構える。

「宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光……我が左手に封じられし鬼よ!
今こそその力を……示せぇッ!!」
(ほう……あれが……!)

 ぬ~べ~の左手のグローブに覆われた中から出現したのは……人ならぬ「鬼の手」。
その昔、ぬ~べ~が亡き恩師と力を合わせる事でようやく封印することが出来た地獄の鬼。
余りに強力過ぎるその力は、邪悪な悪霊をも瞬く間に打ち払う事が出来る。
鬼の手を出現させたぬ~べ~を見て、五条もまた感心したように声を上げる。

(人でありながら「鬼」をその身に御する……
なるほど、上層部のクソジジイ共が目をつけるだけの事はある、か)

5人目

「BEYOND THE TIME」 

 人類が、宇宙に生活圏を伸ばした世界……人々は地球と宇宙とに分かれ、
戦争を繰り返していた。
そして、後の歴史に長く刻まれるであろう瞬間が訪れる。

 第2次ネオ・ジオン抗争。

 地球連邦軍からの脱却、独立を提唱するネオ・ジオン総帥、シャア・アズナブルは
小惑星アクシズを地球に向けて落下させると言う「地球寒冷化作戦」を発動する。
この作戦に対抗すべく、地球連邦軍「ロンド・ベル隊」を始めとした有志によって
結成された特殊部隊「UX」はアクシズ破壊作戦に乗り出すも、これに失敗。
分断された大質量のアクシズは地球の重力に引かれ、落下を開始する。

 その落下阻止のために、アムロ・レイは愛機νガンダムと共にアクシズを押し留めようと奮戦するも、 その強大な質量はあまりにも大きく、ただ押し留めるだけでは
埒が明かない。アムロに続けとばかりにUXの所属メンバーたちが
次々にアクシズに取り付き、 押し留めるべく力を合わせていく。

 敵味方に関わらず殺到する者たちが必死の抵抗を続けている間にも、
アクシズは刻一刻と地球へ迫りくる。その落下阻止に打つ手はなしか……と思われた
その時、νガンダムの外部装甲に使用されていたサイコフレームが
アクシズに集中する人々の想いに感応し、サイコフレームの発する共振波が、
アムロたちの身体を通して、アクシズ全体へ広がっていった。
その共振波は、落下を続けるアクシズを押し留める「力」となり、
かくてアクシズの地球衝突は回避される……しかし、事件はその時に起こった。

 アクシズ、そしてその周辺に展開していた人型機動兵器達が突如として消失したのだ。
まるで、そこに元から存在しなかったかのように忽然と消えたのである。
人々はこの一連の戦いを終結に導いたこの現象を「アクシズ・ショック」と呼び、
謎多き事件の結末として永く語り継いでいくこととなる。
たったひとつの大きな謎を残して……。

 UX、ネオ・ジオンの者たちは何処へ行ったのか。彼らは死んだのではなく、
異世界へと飛ばされていた。
それも、乗り込んでいた機体が人間サイズとなり、パイロットと機体が融合すると言う
不可思議な現象と共に。
さらには、超人、魔法少女、ロボット、宇宙人、歌に力を宿すアイドルなどが
当たり前のように闊歩していた。
皆、それぞれの理由で元の世界から弾き出された者たちだった。
見知らぬ異世界にて、新たなる戦いが始まる。
彼らはこの世界で生き抜き、元の世界に帰ることができるのか?
そして、事件の真相は……?  UX隊員達は、それぞれの元いた世界へ帰ることが
できるのか? それとも……。

 この物語は、UXの隊員たちが「アクシズ・ショック」から生還した後の物語である。
それから、幾許かの時が流れ……

「こ、こちら、オメガ1! 何なんだコイツら……化け物、化け物が追いかけてくる!」

 アクシズ・ショックの後、宇宙では正体不明の怪物や現象が報告されるようになり、
連邦軍やネオ・ジオンのMSが迎撃に出て行くのが日常茶飯事となっていた。
ところが、突如として出現した「化け物」たちは余りにも強大であり、
MS小隊隊は壊滅寸前に追い込まれてしまう。

「また、現れたのか……倒しても倒してもどっかから湧いて出てきやがる……
まるで害虫みたいだぜ」

 迫り来る怪物たち相手に奮戦するも、全く歯が立たない。
為す術なく怪物たちに追い詰められていく。

「!! レ、レンジ外から高熱源反応!?」
「馬鹿な、この距離はビームライフルの有効射程距離を越えてるぞ……
敵MSが、熱源を射出しているとでも言うのか!?」

 怪物たちの攻撃を辛うじてしのぎながら、オメガ1は叫んだ。

「じゃあ、何だって言うんだよ!!」

 その瞬間だった。凄まじいエネルギー弾が彼らの頭上を飛び去り、怪物たちへ直撃する。
激しい爆発が化け物たちを包み込み、断末魔と共に怪物たちは吹き飛ばされていった。

「ギャオオオオッ……」

「せ、戦艦のビーム砲か!?」
「いや、違う、あれは……」

 宇宙に煌めく、白き流星……

「ガ、ガンダム……! アムロ・レイ大尉だ!!」

 異世界より帰還を果たし、現職に復帰したアムロ・レイの新たなる機体……
RX-93ff νガンダムによる攻撃であった。

「新兵器のテストとしてはこんなものか……それにしても、またあのアンノウン……
俺たちがこちらに戻ってくるなり、出現するようになった……一体なんなんだ」

 アムロは、元の世界に帰還するなり遭遇した出来事を思い出す。
それは、アクシズ・ショックによる異世界転移から帰還した直後のことであった。
仲間たちと共に突然、謎の光に取り込まれ、気づけば元の世界へと戻ってきていた。
そこに待ち受けていたのは、以前にはいなかったはずの怪物たち……
意思疎通も不可能な「バケモノ」であった。
群れを成して宇宙空間を飛び回り、人間を敵視する異形の存在。

「各機、下がれ! あとはガンダムがやる!!」
「りょ、了解!!」

「キエエエエエエエッ!!」

 アンノウン達が一斉にνガンダムに襲いかかる。

「来るか……!!」

 νガンダムがビームライフルを連射し、怪物達を蹴散らしていく。

「ギッ!」
「ギャアア!!」

 一撃一撃を確実に怪物達に叩き込み、徐々に追い込んでいく。

「は、速い……なんて反応速度だ」
「長期行方不明だったブランクをまったく感じさせないな……」

 νガンダムの機動力に目を見張るオメガ小隊の面々。その圧倒的すぎる性能に
怪物達はなす術もなく撃ち落とされていく。

「キシャアアアアアッ!!」

 アンノウンの一体がνガンダムの狙撃を掻い潜って急接近し、
クローで襲いかかってくる。

「させるかッ!!」

 が、アムロは即座に反応し、背部に背負った大型の新兵器
「ロングレンジ・フィンファンネル」を分離すると同時にビームサーベルを引き抜いて
カウンターの斬撃を浴びせる。

「ギッ!? ギャアアア!」

 クローを振り下ろそうとしたアンノウンは胴体を切り裂かれ、爆散していく。

「行けッ!!」

 アムロの脳波に感応したロングレンジ・フィンファンネルは独立して動き出し、
本体であるνガンダムと二手に分かれて周囲の怪物たちを駆逐していった。
バルカンによる牽制でアンノウン達と一箇所に誘導し、
ロングレンジ・フィンファンネルによる大出力のビーム砲で焼き払う。
初手の超々遠距離からの砲撃はこれによるものだ。

「グキャエエエエエエエッ……」
「シャギャアア……」

 次々と撃破されていくアンノウンたち。
アムロはロングレンジ・フィンファンネルを回収しつつ、アンノウンの殲滅に成功した。

「やったぞ、怪物どもをやっつけた!」
「大尉、流石です! 我々が手も足も出なかった化け物を見事に……」
「ふう……だが、未だ連中の正体は分からないままか……」

 アムロは機体を翻し、僚機達を従えて母艦であるラー・カイラムへと帰還した。

「俺たちは、元の世界に帰還することはできた……だが、あのアンノウン達はなんだ? 
連中は一体何処から現れたんだ……」

6人目

「SUPER ROBOT WARS」

 正体不明の敵……「アンノウン」。彼らはその後も散発的に現れ、
連邦軍やネオ・ジオンのMS部隊を苦しめていた。そんな中……

「ターボスマッシャー! 
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンチッ!!」

 宇宙に轟く掛け声とともに怒りの鉄拳を射出し、怪物たちに叩き込む鋼鉄の魔神皇帝。

「ギャオオオオオオオッ……」

 下腕部にマウントされた刃を超高速回転させながら、怪物を一直線に砕いていく拳。

「化け物どもめ! この兜甲児とマジンカイザーが相手だ!」

 UXに所属するパイロット達もまた、アムロと同様に怪物退治に駆り出されていた。

「ゲッタァァァァァァァァァァッ!!
ㇳマホォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォゥクッ!!」

 物理法則を無視した軌道で怪物を轢き潰しながら飛び回る、
悪魔の翼を翻す究極のゲッターロボが、身の丈を上回る戦斧を振り下ろし、
怪物たちを容赦なく薙ぎ倒していく。

「流石だな、ゲッターチーム!!」

 甲児のマジンカイザー、そして真ゲッターロボ……2体のスーパーロボットは、
ネオ・ジオンや連邦軍のMS部隊と共闘し、群がるアンノウン達を次々に駆逐していった。

「倒しても倒しても湧いて出てきやがる……インベーダーなのか、こいつらは?」
「分からん……生態系から分析する限りは、かつて俺たちが戦った相手とも違うようだ……一体、何なんだ」
「おしゃべりしてる場合じゃなさそうだぜ、竜馬! 隼人!」

「キェェェェェェッ!!」
「グキャァァァァッ!!」

「オープン・ゲェェェェットッ!!」

 真ゲッター1が3機のゲットマシンに緊急分離し、怪物たちの突撃から離脱する。

「チェェンジッ! 真・ゲッター2!!」

 分離して再合体。白き流線型のフォルム。最速のスピードを誇る形態だ。

「ノロマめ、それで俺たちに当てようなんざ笑わせる。攻撃ってのはこうするんだ!
ドリル!! アァァァァァ―ムッ!!」

 右腕のドリルを突き出しながら、音速を遥かに超えた速度で移動し、
次々と怪物たちを粉砕していく。

「ギャアアアアアッ……」
「お次は俺だ! チェンジ、真ゲッター! 3!!」

 再び分離したゲットマシンが変形合体。

「まとめてぶっ飛びな! ミサイル・ストォォォォォォォォォォォォムッ!!」

 重装甲・パワータイプの真・ゲッター3となり、
脚部に内蔵された無数のミサイルを発射して怪物たちを掃討していく。

「ギャエエエエエエッ……」
「隼人が撹乱して敵を密集させてくれたおかげで、狙いをつけるまでも無かったぜ」
「フッ……」

 流竜馬、神隼人、車弁慶……世界を隔てても、ゲッターロボに乗り込み、
滅びをもたらす災厄に抗う宿命を背負う戦士たち。
彼らの活躍により、アンノウンとの戦いは一進一退の様相を呈していた。

「甲児! 一気に決めるぞ!」
「任せてくれよ、竜馬さん!」

「オープン・ゲットッ!!」

 真ゲッター1が分離・変形・合体しながらマジンカイザーと背中合わせとなり、
腹部の孔にエネルギーを充填。
対するマジンカイザーも、胸の放熱板に光子力エネルギーを集中させていく。

「竜馬さん!!」
「甲児! 俺達で決めるぞ! ゲッタァァァァァァァァァ!!
ビィィィィィィィィィィィィィィィィムゥッ!!
「焼き尽くせ、カイザー!! ファイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ! 
ブラスタァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 2体のスーパーロボットから放たれる絶大なエネルギーが混ざり合い、
巨大な破壊の光となってアンノウンたち目掛けて飛翔する。

「グギャアアアアアアアアアアッ……」
「アギィィィィィィィッ……」

 怪物たちの断末魔と共に、この宙域に存在する全ての存在を覆い尽くすような
閃光の帯が走る。一瞬の沈黙の後、後には何一つ残されてはいない。

「やったぜ!」
「これで暫くは大丈夫そうだな」

「相変わらず見事だな、甲児、ゲッターチーム」
「アムロさん!」

 別の戦線を援護していたνガンダムが、この宙域に帰還してきた。

「そっちも片付いたようだな」
「ああ。だが、奴らはまたすぐに湧いてくる。油断は出来ないだろう」
「奴らが何処から来ているのか、何者なのか、それが分かればな……」
「突然ワープしてくるように現れるのも厄介だ。何処かに巣みたいなものがあって、
そこから送り込まれてきているんだろうか」

「今はまだ何とかなってるが、このままあの連中が際限なく現れ続ければ、
先にこっちがエネルギー切れを起こしちまう……何か打開策を見出さなきゃならんぜ」

 竜馬の言う通り、アンノウン達の出現が何処から来ているのかが不明である以上、
根本的な解決策にはなっていない。
だが、そのことはアムロも承知の上でのことだった。

(ネオ・ジオンや連邦軍のMSとも共闘はしているものの、やはり彼らでは
あの怪物たちには対抗できないか……)

 アムロ達が異世界に転移している間には、出現報告は皆無であったアンノウン。
UXの帰還を契機とするように、現れ始めた怪物たち。

(俺や甲児、ゲッターチームと言ったUXの戦力、そして……)

 そして、アンノウンと戦っているのは、UXだけではなかった。

「大佐! アンノウン掃討を完了しました!」
「うむ。ご苦労だったな、ギュネイ」
「あたしが一番撃墜数を稼いだんだから! 大佐、もっと褒めてよー」
「ああ、良い子だ。それでこそだな、クェス」

 UXと共にアクシズ・ショックに巻き込まれ、部下であるギュネイ・ガスや
クェス・パラヤらと共に異世界に転移したシャア・アズナブル。
元の世界に戻るため、宿敵であるアムロらと共に共闘する道を選んだシャアも復帰後、
ネオ・ジオン総帥として人類共通の敵であるアンノウンと戦っていた。

「皮肉なものだな……人類粛清を謳った私が、今はその人類を守るために
アンノウンと戦うなど……」

 シャアは、自嘲気味に呟いた。

「大佐……?」
「いや、何でもない……引き続きアンノウンが現れる可能性がある。警戒を怠らぬよう。
だが、ここ最近休み無く戦い続けている。休息は必要だ、全員いったん帰投せよ」
「了解しました」

(敵の正体も目的も分からずじまいではな……)

 ギュネイやクェスらを帰した後、シャアは一人考え込む。

「アムロ……奴なら、この状況をどう打開する?」

 シャアは、かつて地球圏を揺るがした大戦で幾度となく対峙したライバルであり
戦友でもある男……アムロ・レイに思いを馳せた。

「アクシズの落下を阻止し、異世界での戦いを勝ち抜いた……
その果てに待ち受けていたのが地球外生命体による侵略とはな……
御伽噺にしても出来すぎだな」

 一度は人類に絶望したシャアであったが、自らと共に戦い抜いた者たちによって
立ち直る切っ掛けを得た。

「私はまだ、人類の可能性を信じているぞ……アムロ。
この苦難を乗り越えた先にこそ、或いは……」

 シャアは誰に聞かせるでもなく呟いた。

7人目

「最上にして究極」

 ――それは、いつ、何処で生まれたのか誰も知らない……

「これで終わりだ」

 敗者には当然の鉄槌を下す。死と消滅。強くなければ生き残ることは出来ない。
許されない。それは自然の摂理だ。

「また勝ってしまった……どいつもこいつも、弱すぎる」

 無限に尽きることのない、すべてを破壊し、創造する力。
広大にひろがる宇宙を自由気ままに飛び回り、飽きたら滅ぼす。
群れ成す事を必要としない、唯一絶対の「個」。
何処かにいないものか。この力を余すこと無く出し尽くす価値のあるような相手が。

「この世界も飽きた……もう別の世界に行くか」

 悠久の時を、ただ破壊と殺戮に費やしてきた。
いつしか目的さえ忘れてしまった。ただ暴れまわるだけの日々だった。
強い者を倒し、そしてさらなる力を欲する。何のために? 理由は無い。 
自分にはただ、それだけしか無かった。
あるとき、自分は最強であることに飽きてしまった。
だから、その世界で手に入れたすべてを破壊する。
そこに理由は無い。ただ……壊すだけ。
そのときは最高だった。最強の力を振るい、全てを破壊していくのは。
だが、しばらくするとまた飽きてくる。そしてまた別の世界へ転移する。
退屈だ……
自分でも分からないうちに、ただ破壊を繰り返す日々が続く……そんな時だった。

「伝説の戦士……?」

 何巡目かも分からない世界に行き着いた時の事。風の噂に耳にした。
なんでも、自分にも匹敵しかねない、底知れぬ力を持った戦士が遥か辺境の星に
現れたらしい。
興味がわいた。自分に匹敵する相手など、今まで存在しなかったからだ。

「プリキュア……か」

 早速伝説の戦士が住まうと言う星……地球へと転移する。
そこは、平和で美しい星だった。距離が近づくにつれ、ひとつ、ふたつと、
色とりどりの人影が目に入ってくる。

「あれか……!」

 地球の盾になるように、ズラリと立ち並ぶ少女たち。
きっと地球に近づいてくる自分の存在を察知して、迎撃に現れたのだろう。
何れもが、自分と対等に戦えそうなほどの、強き力を感じる。
こんな事は今まで無かった。

「止まりなさい!」

 少女の内のひとりが自分に叫ぶ。

「あなたは一体何? この地球に何の用?」

 そんな事はどうでもいい。自分はただ、この星に自分と同等の力を持つ戦士がいると
聞いたからここに来た。ただそれだけだ。
問いかけの返答代わりに、虹色の破壊光線を放つ。

「きゃああああっ!!」
「こ、攻撃してきた!?」

 これが答えだ。生き残りたければ、自分を倒せ。
自分を倒さぬ限り、この星に安息は無い。

「戦うしか無いの……!?」
「仕方ない……みんな、行くよ!!」

 プリキュアたちが攻撃を開始する。だが、無駄だ。自分は不死身だ。
どんな攻撃をしようとも、殺せない。
彼女等の攻撃は、自分に大したダメージを与えていない。

「これだけ攻撃してるのに、全然効いてない!?」
「そんな……」

「さあ、見せてくれ。プリキュア。伝説の戦士の力……
それを打ち砕いてみせれば、今よりもっと強くなれる」

 不死身の化け物との戦いに、プリキュアたちは疲労し、傷つき、敗れていく。
だが、何度も立ち上がってくる。諦めずに、向かってくる。
なぜだ……何故そうまでして戦う? 戦力差が圧倒的である事は分かっているはずだ。
それでもなお向かってくるのは何故だ。

「はああああああああああああああああッ!!」

 黒いプリキュアが自分に鉄拳を放つ。

「えええええええええええええええいやッ!!」

 それに続いて白いプリキュアが回転を加えた蹴りを繰り出す。
――これは……?! 初めて経験する感覚だ。
この、自分をここまで追い込むほどの力を持つものがいるなど……信じられなかった。
なるほど、これが伝説に聞く伝説の戦士か……! 黒と白のプリキュア……
この2人からは特に他のプリキュアたちとは比べものにならない力を感じる。

「私達は、絶対に負けられない!!」

 そして、何度傷つき倒れようとも、何度でも立ち上がってくる。
黒いプリキュアが先陣を切り、白いプリキュアがその背後から援護するように攻撃する。
自分がいかに不死身でも、この2人に同時に攻撃されたらひとたまりも無いだろう。
だが……

 ――やはり、良い……! 自分は今、この上ない喜びを感じていた。
こんな気持ちになったのは初めてだ。
これまでは破壊することだけを目的としていた中で初めて出会った、
自分を殺せるかもしれない存在。倒さねばならない、絶対的な強者。
それが今、自分の前に立ちふさがっている。さあ、もっと楽しませてくれ!!

「ま、まだパワーが上がってる……!?」

 無限に力を増し続ける自分に対し、プリキュアたちの力は次第に衰えていく。
当然だ。自分が今この瞬間にも強くなっているのだから。
だが、2人は必死に抗った。自分の圧倒的な力の前に膝を着きながらも、
何度も立ち上がり挑みかかってきた。
その姿に後押しされ、他のプリキュアたちも続々と向かってくる。
こんな相手は初めてだ……そしてこれが最初で最後であろうこともわかっていた……
だからこの一瞬が永遠に続けば良いと思った。
だが、やがて限界はやってきた。
力尽きたプリキュアたちは地面に倒れ伏していく。

「これだけ力を使ったのは……初めてだ」

 プリキュア達の心を完全に折るべく、全力を込めた破壊光線を放つ。
この攻撃に耐える事は、最早不可能だ。

「きゃあああああああああああああああああああッ……」
「うわあああああああああああああああああああッ……」

 すべてが真白い光の中に消えていく……。
固く握り合った手と手が、無慈悲に引き裂かれ、離れていく……。

「噂に違わぬ強さだった。礼を言おう……伝説の戦士たち」

 破壊の光が消え去ると、そこには何も残されていなかった。
あれだけたくさんいたプリキュア達も、彼女らが守ろうとした地球と言う星も……
すべてが消え去っていた。
自分の眼に映っていたのは、無限に広がる闇と、静寂だけだった。虚しさだけが残った。

「プリキュア……本当に強かった。だが、何故あれだけの力を持っていたんだ。
どうやったらあの力を得られる?
手と手を繋ぎ合っていたのには何か意味があったのか?」

 もっと知りたかった。彼女たちの力を、その根源を。

「その秘密を解き明かせたなら、さらなる力を、かつてないほどの最強の力を、
手に入れられるだろうか……?」

 疑問ばかりが浮かんでくる。

「知りたい……プリキュアをもっと知りたい……」

 そうだ。もっと知らなければ……。そうして自分は、「ある実験」を思いついた。

8人目

「激神のF! フリーザVSキュアシュプリーム」

 かつて、宇宙の帝王と称され、悪逆の限りを尽くした者。その名はフリーザ。
その悪事の報いを受け・伝説の超サイヤ人と化した孫悟空、
そして未来からやって来た戦士・トランクスに相次いで敗北を喫し、
地獄へと送られた……はずだったのだが、
フリーザ軍残党によって集められたドラゴンボールによって復活を果たしてしまった。

 悟空たちはその後もさらなる強敵たちとの闘いによって
飛躍的な強さを身に着けている事を知ったフリーザは生まれて初めての特訓を己に課し
更なる力を得た後、新生フリーザ軍を引き連れ、地球へと飛来したのだ。
だが、誤算があった。

「ば、馬鹿なァッ……ベジータ如きに、この私が手も足も出ないなど……」

 悟空を追い詰めたフリーザであったが、かつては部下として見下していたはずの
ベジータもまた、悟空に匹敵する力を手に入れていたのだ。

「カカロットを倒すのはこの俺の役だ。貴様になぞやらせてたまるか」

 ベジータもまた、己を極限まで追い込む事によって更なる力を得る方法を
確立していたのだ。新生フリーザ軍もZ戦士の活躍によって壊滅状態……
フリーザも悟空との戦いで持てる力を出し尽くしていたのが祟り、
もはやこれまでかと思われた……その時だった。

「じゃあな。二度と化けて出てくるんじゃないぞ……」

 跪くフリーザにトドメの一撃を食らわせようと
ベジータが掌にエネルギーを集中させる。だが……フリーザは笑っていた。

「フフフ……」
「何がおかしい」
「この勝負、私の勝ちですね……キエエエエーッ!!」

 フリーザは地面にエネルギー波を放ち、地球のコアに直接衝撃を伝達させる。
即座に激しい地割れが発生、空は裂け、海は荒れ、山は崩れ、
地球のバランスは瞬く間に崩壊していく。

「この地球が壊れても、私は宇宙空間で生き延びる事が出来ますが……
くくく、あなた方は果たしてどうでしょうね……ほーっほっほっ……」
「き、貴様……うわあああーッ……」
「しまったァッ……オラが一思いにやってりゃあ……フリーザアアアアアアーッ……」


 ――こうして、地球は破壊されてしまったのだ。

「勝った……! 孫悟空も、ベジータも……みんな地球もろとも消えちまったぞ! 
ざまあみろ……!! はーっはっはっはっは……!!」

 孫悟空への復讐と言う、フリーザの悲願は達成された。

「ふゥん……何とも呆気ない幕切れだねぇ」

 破壊神ビルスとウィスはその様子をビルス星にて見ていた。

「孫悟空、ベジータ……少しは見どころがあるかと思っていたんだけどねぇ……
所詮はこの程度だったか……」
「いかがなさいます? ビルス様自らフリーザを始末なされますか?」

 ウィスの提案に対し、ビルスは意外な返答をする。

「いや、もうひとつ……気になる奴がいる。どうやら別の宇宙から来てるらしい」
「別の宇宙から……ですか」

「そう遠くない内に、それはフリーザとぶつかり合う事になるだろう。
勝った方がこの宇宙を乱すのであれば……その時は、ね」

 ビルスのこの予言がは的中する事となる。地球崩壊から数ヶ月後……
すっかり勢力を盛り返したフリーザ軍は、宇宙の至る星を襲っては滅ぼし、
恐怖のどん底に叩き落として行った。そんな折……

「な、何だ、こいつ、とんでもなく強いぞ……!」
「うろたえるな! みんなで一斉にかかれば倒せるはずだ!」

 フリーザ軍の前に立ちふさがったのは、1人の戦士だった。
真っ白なドレスに、エメラルド色の髪に毛先がピンク色のツインテール、
虹色の瞳は自信に満ち溢れている。

「かかれッ!!」

 フリーザ軍が一斉に飛び掛かるも、まるで歯が立たない。
1人、また1人と戦士たちが倒れていく。

「弱いね。歯応えが無いよ。君たちみたいな雑魚じゃあ、ボクの相手にすらならない」
「ば、馬鹿な……つ、強すぎる……」

 嵐のような戦いぶりからは想像もつかないほどの無機質な声で、語りかける。

「君たちのような下っ端に用はないんだ。ボクが知りたいのは……
フリーザってヤツの事さ」

 戦士たちの1人が彼女を嘲るように笑う。

「様をつけろよ、ガキが。フリーザ様は我々のボスだ!  
お前のようなガキが知る事は無い!」
「ああ、そう……ならもういいや。じゃあね」

 2本指でピースサインを形作り、それをフリーザ軍に向けると、
そこから高出力のビームが放たれ、 激しい雷とともに辺り一面を焼き尽くす。

「うわああ……フリーザ様ああぁ……」
「ん……」

 草一本残らない焦土の上で立ち尽くしていると、上空に飛来する宇宙船。

「来たか……!」

 宇宙船のハッチが開くと、フリーザが腕組みをした状態で浮遊し、
フリーザ軍を壊滅させた戦士の前に降り立つ。すぐさま取り巻きの戦闘員達も現れ
フリーザの背後に集結する。

「ほっほっほ、この宇宙にまだ、私に歯向かう者がいたとは……
あなた、なかなかお強いですねぇ」
「キミがフリーザか……」
「そうですが……それがどうかしましたか?」

 フリーザを前にした戦士は、どこか遠い目をして、何かを考え込んでいる様子だった。

「キミがこの宇宙で最強の存在なのかい?」
「こ、このガキ! フリーザ様になんて口の利き方を……」
「およしなさい……ええ、確かにそうです。このフリーザは宇宙で最強の存在。
それが何か?」

「ふーん」
「ところであなたのお名前を聞かせていただきたいのですが」

「……シュプリーム。キュアシュプリームだ。ボクは自分が最強の存在である事を
証明するため、あらゆる宇宙を飛び回り、 強い戦士達と戦ってきた。
その過程で、ボクは「伝説の戦士」と呼ばれる存在をたくさん知った」

「ほう……? それは遠路はるばるご苦労様でした」
「別に。そんな事はどうだっていい。僕が知りたいのはたった1つだけ……
キミが、ボクの相手に相応しいかどうか、だ」

 瞬間、フリーザの指先から、超光速のデスビームが放たれる。
シュプリームはその場から微動だにせず、ビームを払いのけていた。

「ほう……私のビームを払いのけるとは、大したものですねぇ……」
「……フフ」

「ほっほっほ。サイヤ人もナメック星人もこの私には敵わなかった。
私こそが宇宙最強なのです!!」
「ふーん。じゃあさ」

 シュプリームが目にも止まらぬスピードでフリーザの背後を取る。
そして、気を纏ったチョップでフリーザの首を叩き落とした……はずだったが、
そこにフリーザの姿はない。

 振り返るとフリーザが尻尾を振り乱し、シュプリームに襲い掛かる。

「ふっ……!」

 バク宙から、地面に手を着いての軸回転で尻尾の一撃を回避した。
標的を失った尻尾はそのまま大地を抉り、巨大なクレーターを作り出す。

「な、なんて奴だ……フリーザ様を相手に……あいつ只者じゃ無いぞ……!」

「ほっほっほ……面白くなって来ましたねぇ」
「ボクもだ。こんなに手応えがありそうなのは、プリキュアと戦った時以来だ……!」

 孫悟空を倒したフリーザと、プリキュアを全滅させたキュアシュプリーム。
勝った方が、この宇宙の脅威となる。

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