プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:3

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1人目

「Prologue」


【亡失ノ理想郷 幻想郷編】原文:霧雨さん

 八雲紫の依頼により、ソロモンの指輪の譲渡を条件に幻想郷に向かうことになったCROSS HEROES。
先行隊として流星旅団の天宮兄妹、月美、ペルフェクタリアの4人が向かうことになった。
DDの持つワームホールによる転送技術、そして紫の支援により無事彼らは幻想郷に到着する。

 幻想郷。忘れ去られたものが集うこの地は今『悪霊異変』なる事件が発生していた。
それを解決する為に4人はまず、博麗神社の巫女『博麗霊夢』とその友人『霧雨魔理沙』の2人に事情を聴くことになった。

 そこで知ったのは「3か月前、赤い角を持った鬼が外から来た」ことと
「それを境に『悪霊』なる存在が出現するようになった」こと。
4人は手分けして幻想郷の調査をすることになり、まず近くにあるという紅魔館へと
向かうことになった。

 2人残って博麗神社の守衛をすることになった魔理沙と月夜。
月夜の自嘲するほどの戦闘力不足を危惧した魔理沙の計らいにより、
彼の武装であるボウガンを妖怪が相手でも通用する程の改造を施し、彼に渡した。
それと時を同じくして、博麗神社に悪霊が出現。
黒い身体、滴る悪性の油、そして異形の腕。
幻想郷に出現した新たなる脅威を相手に、魔理沙と月夜は勝利出来るのだろうか?

 そのころ、紅魔館に向かっていた霊夢たちの眼前には、
ソロモンの指輪によって召喚された人理の英霊『ナポレオン』と彼を疑っている
紅魔館のメイド長『十六夜咲夜』が喧嘩まがいの戦闘を行っていた。
さらに妖怪の山にある神社、守矢神社では風祝の少女『東風谷早苗』によって
保護されたもう一人の人理の英霊『ディルムッド』が目覚める。

 少しずつ、しかし確実に動き出す幻想郷の勢力。
果たしてCROSS HEROESは焔坂のところまでたどり着けるのだろうか……?

【ヒーローズ・パレス防衛編】原文:霧雨さん

 CROSS HEROESの特異点攻略のための拠点として、
着実に建て直しが進行するクォーツァー・パレス。

 そこへ、教団の大司教芥志木の仇を取るためにやってきた、100体からなる雀蜂部隊。
例え彼を殺したのがCROSS HEROES出なくとも、
せめて彼の、教団のためにパレスにいる者たちを殺しつくそうとする狂信が牙をむく。

 パレス防衛のために相対するはアタランテと罪木オルタ、森長可、そしてアビィの4人。
迫りくる雀蜂の攻撃を、彼らは凌ぎきれるのだろうか―――――?

【Vengeance Bullet Order Ⅱ】原文:霧雨さん

 アメリカの海岸を、一艘の船が走る。
目的地はジャバウォック島。そこにメサイア教団が江ノ島盾子に接触した理由が
あるという。

 謎の人物『N』からの連絡を受けるファルデウス。
メサイア教団に憎悪の目を向ける霧切響子。

 ――――メサイア教団の解体と魅上照たちの逮捕を目的とする謎の組織
『SPM』の正体とは何なのか?
そして、ファルデウスと霧切は果たしてCROSS HEROESの味方になるのだろうか―――?

【黒平安京・心の怪盗団編】原文:AMIDANTさん

 安倍晴明が生み出した黒平安京にてリンボの策謀に貶められ、
正気を失った頼光は丑御前へと化した。敵味方の区別無く暴れ回る丑御前。
その光景を垣間見たナビ、ノワール、そしてスカルは、
認知世界にて頼光の正気を戻す作戦を敢行する。
激戦の末、頼光の精神に取り付いていた瘴気を払う事に成功し、頼光は正気を取り戻せた。
だが、安倍晴明の次なる一手が繰り出されようとしていた。

【暗黒魔界編】原文:AMIDANTさん

地上では、ドラゴンボールの行方を追う者がいた。
そこに人造人間21号が現れ、なんとドラゴンボール7つ全てを差し出した。
彼女の思惑は、一体?

【異端者組とカリギュラ2編】原文:渡蝶幻夜さん

 地元が大変なことも知らずに呑気に塔を登る5人(1人)、
そんな中月影夢美の過去を語ったのだが、過去があっという間に終わったのだ……。

2人目

「時空を超えて、クライマックス鬼退治!!」

 黒平安京に現れたゲッターロボとGUTSセレクト。
安倍晴明の操る鬼獣との戦いが始まる!

「キシャアアアアアアッ……」

 晴明の呪力によって、魑魅魍魎達が集結していく。

「チッ、デカブツだけじゃなくワラワラと出てきやがった!」
「――令呪を以って、我が戦友に捧ぐ!」

 立香は右手にある令呪の内の二画を傷ついた金時と頼光の支援を行った。

「おお……! 力が溢れてくる……! これならやれるぜ、大将!」
「申し訳有りません、この頼光……不覚を取りました……
マスターを守護すべき立場のはずが、己を見失い、あまつさえ貴重な令呪まで……!」

「そんなこと気にしなくていいんだよ。
むしろ、今まで一人で沢山頑張ってたのに気付けなかった。ごめんね……」
「……! いいえ、お心遣い、痛み入ります……! ですが、もう心配は要りません。
私は……母として、そして貴方のサーヴァントとして、
必ずや勝利してみせましょう……!」

 金時と頼光は立ち上がり、群れ成す魑魅魍魎達に刃を向ける。

「へっへぇ、負ける気がしねえや……」
「ふふ、私も同じ気持ちですよ。さぁ、参りましょう……!」

 金時は斧を振りかざしながら突っ込み、頼光はその刀で敵を薙ぎ払う。

「はああああっ!」
「うおおおおお!」

「お誂え向きに俺の黄金喰いも新品同然にピッカピカだ! オラオラァッ!! 
真っ二つにしてくれるぜ!!」
「神秘殺しの二つ名……その身で味わっていただきましょう、十把矮小ども!!」


「ハッハッハッハッハ……ハァーッハッハッハッハ……」
「!? この笑い声は……」

 
 超高速で子鬼達を一太刀の下に次々と斬り伏せていくその男の姿を見た
いろはは驚きの声を上げた。

「あの人です! ドンモモタロウさん!」

 前回の黒平安京の戦いに突如乱入した後、その後姿を眩ませた謎の戦士、
ドンモモタロウが再び戦場に躍り出た。

「また会ったな、お前たち! よほど縁があると見た!!」
「確かに、スーパー戦隊っぽい!」

 ゼンカイザーは思わずそう言って、ドンモモタロウに加勢した。

「俺、ゼンカイザー! 機界戦隊ゼンカイジャーやってんだ! 
アンタは? 仲間とかいないの!?」
「仲間……? そんなものは必要ない……お供だけで十分だ!」

 すると、青い猿、黒い犬、桃色の雉、黄色の鬼……と言った
ドンモモタロウに似通った姿をした面々が何処からともなく現れては、
戸惑いながらも戦い始めた。

「出番だ、お供たち! 派手に暴れろ!! ハッハッハッハ……」
「は? えっ? なに!? 急にどこから来たんですか!?」

「こっちの台詞だ……また勝手に呼び出しやがって……」
「営業の途中だったんですけどォ!? ケンケンケーンッ!!」
「ここで一句。『夏の夜 渡る世間は 鬼ばかり』。うーむ、いい出来だ」
「漫画のネーム考えてたらいきなり呼び出されたんだが!?」

 皆、一様にドンモモタロウに呼び出された事を嘆きながら、鬼たちを相手にする。

「なんか、いろんな事情があるみたいだけど、ここは一緒に戦おうよ!」

「まぁ、別に構わないけど……」
「そういうことなら、仕方ねえか」
「わたくしも及ばずながら力になりましょう」
「ええ、よろしくお願いします!」

 ドンモモタロウ、サルブラザー、キジブラザー、イヌブラザー、オニシスターの
5人からなる、暴太郎戦隊ドンブラザーズ。
スーパー戦隊らしからぬチームワークの無さは否めないが、その実力は確か。

「グオオオオオオッ!!」

 巨大な鬼獣がCROSS HEROESの頭上から襲いかかる。

「危ないっ!」
「っ!」

 地面を踏みつける鬼獣の右足。足元にいた妖怪たちを構わず踏み潰す。

「ギャアアアアアッ」
「見境なしかよ、コイツ……!」

 鬼獣は尚も、CROSS HEROESに向かっていく。そこへ……

「グアアアアッ!!」

 空中に架かる線路の上を走る白い列車が鬼獣を撥ね飛ばした。
地響きを立てて背中から落下し、地響きを起こす。

「あれは……」

 ディケイドにはその列車の車体に見覚えがあった。

「ここかァ!? デンライナーの偽物がいるってのは!?」

 列車が地上スレスレを走っていくタイミングで中から降り立つ、人語を話す赤鬼。

「出たな、鬼め!!」

 綱がすぐさま、臨戦態勢に入った。鋭い剣閃の乱舞を紙一重スレスレで避ける赤鬼。

「ぬおっ!? ほっ!? おわっ!? な、何だお前! 誰だ!? 危ねえッ」
「問答無用ッ!!」

「待て。そいつは確かにどこから見ても赤鬼にしか見えんが、味方だ。一応な」
「何……?」
「誰が鬼だ、てめえ! ……って、お前、見た事あんな……
あのー、あれ、名前何だっけ?」

 士が過去に巡った数々の世界のうちのひとつの中で、彼らは出会い、そして共に戦った。

「相変わらず物覚えが悪いみたいだな、お前は……覚えられないなら覚えなくていい。
漫才をしてる場合じゃない。お前も手伝え」

「ウオオオオオオッ!!」

 一際図体の大きな緑鬼が、金棒で大振りに殴りかかる。

「危ねっ!?」

 一箇所に集まっていた綱、ディケイド、赤鬼――の姿をしたイマジン、モモタロス――は
一斉に散り散りになってそれをかわした。

「こんの野郎、デカい図体して危ねえことしやがるぜ……アッタマ来た!!」

 モモタロスはデンオウベルトを腰に巻きつけ、変身ツール・ライダーパスを手に取った。

「変身ッ!!」

【SWORD FORM】

 電子音と共にモモタロスは仮面ライダー電王(ソードフォーム)に変身する。

「俺、参上!! へへっ、覚悟しやがれ!!」

 桃が割れたようなデザインの赤い複眼。
腰を深く落として構える独特のファイティングポーズ。

「変身した? もしかして、アンタ、仮面ライダー?」

 過去・現在・未来を渡る列車・デンライナーに乗り込む、
時の守護者・仮面ライダー電王。
人の記憶から生み出された存在・イマジンのひとりであるモモタロスは、
特異点・野上良太郎との契約によって実体を手に入れ、
日夜、時間の乱す者たちによる歪みの修正の為に戦っている。

「そう言うこった! 一丁、鬼退治と洒落込むかァ!! 
行くぜ行くぜ行くぜえええええええええッ!!」

 ドンモモタロウ、電王、頼光四天王、ゲッターロボ……
時空を超えて出会った戦士たちが黒平安京に溢れ返った鬼退治に挑む!!

3人目

「アビィも来る、蛇も豚も来る」

宮殿の一角、人目に付きにくい物陰へと、次々に集められる死体。
その正体は、雀蜂と呼ばれた兵士の成れ果てだ。
装備の類いはある程度剥がされている。
特に爆発物は入念にだ。

「よいしょっと、これで半分かな?」
「あぁ、残りは出方を伺っているだろうな。」

20、30と積もり積もって山と化していく様は、死屍累々と言った所か。
しかし、これだけの死体が有っても、襲撃時のような血の臭いが広がる事は無い。
血が無いのだ、まるで血抜きをされた動物の様に。
それもその筈、彼等の血は一滴に至るまで焼かれて蒸発してしまった。

「次が来る前に、とっとと終わらせないとね。」
「…つくづくよく分かんねぇ奴だな、お前。」
「どうも、それとアビィと呼んでくれたまえ。」

少年の姿をしたこの男、アビィによってだ。
この死体の山の大部分、特に頭が陥没したものは、彼の仕業である。
小柄な体躯からは想像出来ぬだろうが、事実だ。

「とっとと燃やすとしよう。」

彼の放つ蒼炎は、普通の炎からすればとても異質な物だ。
燃料も無く着火し、意志を持つかの如き挙動を取り、後には煙すら残さない。
時にはアビィを異常なまでに加速させ、或いは保護する。
化学的な燃焼とは明らかに違う。

「それじゃ、蝋燭に火を灯すぞ。」

例えば、これ程に溜まった死体の山も。
彼の指から水の様に滴り落ちた蒼炎が、死体を媒体にキャンプファイヤーめいて燃え盛る。
当然、死体は骨肉が焼き付き、衣服も赤熱して塵灰と化してく。
にも拘らず、煙の一つも炎より外へは出ていない。
通常の火葬ですら多少は燃え残る筈の骨すら消える始末だ。
立ち昇るべき燃焼の証は、虚空に消える様に消滅してしまった。

「…消えた。」

やがて、残ったのは何もない空間のみ。
死体の痕跡など、何処にも有りはしない。
精々、床と壁の焦げた跡がその事実を主張するのみ。
罪木オルタ達からしても、異質な瞬間だった。

「さて、残りを片付けるとしよう。掃除は最後までキチンとしないとね?」

しかし、アビィはそれを気にする素振りも無い。
寧ろ、この場には似つかわしく無い笑みを浮かべている。
不気味さが、より一層増す。

「お、おう。」

思わず、引きつった返事をする罪木オルタ。
だが、次の瞬間には気を引き締め直す。
戦いはまだ終わっていないのだから、当然と言えば当然だ。
だが、どうにもこのアビィという者は戦いに今一つ身が入ってない様に思えた。
いや、戦いと言うより作業をしている様にも見える。
さながら、淡々と罪人を罰する処刑人のよう。
とにかく、戦いに身を置いている筈の彼から、その心境の奥底を推し量る事は叶わなかった。

「うん?」
「地震か?」

そんな時だった、宮殿一帯を襲う揺れが起きたのは。
最初は小さなものだったが、徐々に大きくなる振動音と共に、天井の一部が崩れ落ちる。
その瓦礫の向こう、遥か彼方に見えたのは、黒平安京から這い出る異形の姿。

「何だ、でっけぇ鬼…?」

正しく東洋の物の怪、名を鬼獣。
安倍晴明が呼び覚ました、太古の鬼だ。
ソレが、幾多もの群れを成して露わになる。

「オイ、あそこってCROSS HEROESが向かった場所じゃねぇか?」
「あんなのに踏み潰されたら、一溜りも無いぞ!」

途端に、慌ただしくなる。
無理もない、あの巨体が暴れ回れば、仲間が無事では済まないのだから。
そうこうしている間にも、黒平安京から続々と湧き出てくる。
事態は一刻を争っていた。

「…ふむ、よし決めた。」
「オイ、どうするんだ?」

言うが早いか、身を翻してその場を去ろうとするアビィを罪木オルタが問い詰める。
アビィは、顔だけ向けると一言答えた。

「僕の船で出る。」



「チクショー、あたいを叩いた上に無視しやがって!」

白い頬を真っ赤に染めて、チルノが池を突き進む。
何時もは冷気を放つチルノが、今日に限っては蒸気を上げていた。
相当頭に来ているのだろう、飛ぶことも忘れている。
或いは四肢を冷やして間接的に頭を冷やすつもりかもしれないが、恐らく無い。
少女の頭の中には、ある人物しか居なかった。

(霊夢の奴、絶対ぶっ飛ばしてやる!)

霊夢である。
先程、自分を殴り飛ばした挙句放置した彼女の事を、許す筈も無し。
怒り心頭といった形相で、霧を掻き分け池の縁へと歩む。
後の事だか事情だかは知った事ではない、一度ギャフンと言わせなければ気が済まないのだ。
そんな単調さがチルノの僅かな長所であり、同時に致命的な短所だった。

_スッ。
「うん?」

故に水際に辿り着いた時。
霧の向こうから不意に差し出された『黒い手』を見て、取った行動は粗暴なものになった。

「霊夢か!?今更謝っても遅いんだからなーっ!」

手を手で払う。
相手を霊夢と思って感情に任せた、半ば攻撃に近い所作。

_パシンッ!

最も『手の正体』を考えれば、半分正解の行動だった。

「あぅっ…!!?」

手が触れた途端、背筋に言いようの無い悪寒が走る。
寒さによるものでは無い、そも氷の妖精が寒さにやられる筈も無い。
にも拘わらず、四肢が凍てついた様な錯覚さえ覚える程のおぞましい何かが、チルノの脳裏を過ぎる。
先程まで茹だっていた憤怒の感情は、一瞬にして塗り潰されていた。

「何、これ…!ていうか、お前、は…!?」

堪らず尻もちを付き、手の主を見上げて、そうして初めて正体に気付く。
霊夢では無い、まず人の手とは思えない黒い光沢を放っている。
油の様に淀んでおり、丸みを帯びながらも何処か枯れ木を思わせる左手だ。
代わりに右手は鎌の様な鋭さを持ち、背中には尻尾めいた手が。
肝心の身体に肉は無く、黒焦げた骨の様な物がさらけ出されている。
顔は、塗り潰されたかの如く読み取れない何かだった。

「あ、あぁ…!?」

チルノは気付かない。
己を内から蝕む感情の正体が恐怖だと。
畏怖、嫌悪感。
それらを綯い交ぜにして出来た負の電気信号。
本能の大部分を占める存在と言っても良いそれに、チルノは囚われていた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…!」

身体がへたり込んで、言う事を聞かない。
力がピクリとも入らず、ただ震えて硬直するばかり。
対し、黒い影は掴み損ねた左手を戻し、代わりに右腕を振り上げる。
目に見えた敵対行為だ。
にも拘らず、体はちっとも動かない。
このまま串刺しにされる未来は、容易に予期出来た。

_パパパパッ!

そんな未来を、数発の乾いた音が打ち破った。
幻想郷では聞き慣れない音を前に呆然と見上げれば、黒い影の身体に幾つかの穴が空いている。
そこから覗く赤い何かが、罅割れて砕け散る。
瞬間、影は水泡の如く消えてしまった。

「お前さん、大丈夫か?」

次いで、男の声が掛けられる。
人の物と思しき声を聞き、緊張の糸が切れた身体は途端に動くようになった。
水際を這い擦りながら近づけば、そこには白馬に乗った王子様。

「…おっさん?」
「オイオイ、いきなりおっさんは無いだろ?」
「しょうがねぇだろ、その無精ひげじゃあ。」
「馬が喋った!?」
「あ、やべっ。」

では無く、軍服を着こんだ老兵と、馬に化けた豚が居た。

4人目

【ー四季彩の街ー 遂に終わるってよ】

ここは秋雨の街
年がら年中飽きもせずに雨が降っているからそう呼ばれている。
元々別の名前があったらしいが秋雨の街と呼ばれることが多くなった為変更されたのだ。
そんな秋雨の街の郊外にある館、名前無きギルドの話である

「いやー、今日は最高だなー・・・」

いつもよりハイテンションなギルドマスター レスト
気まぐれで空を見上げるといつもの、雨雲ではなく見知らぬ空だった
その事に気がついたレストは戻ってそっとドアを閉めて2人にこう言った


「はーい、そういうわけだから明鏡カナタ 明鏡ヒスイお前ら兄妹2人に告げる!世界の終わりに何したい?」

《課題:世界の終わりに何したい?》(例のSE)
ー明鏡兄妹編ー
急に世界の終わりだとか言われて顔をポカーンとさせるしかし2人の心は共通して半信半疑だった。

何故やら、レストの冗談だっていうことに

「そうだな、とりあえず俺達兄妹を虎の子落としをした明鏡家(実家)をぶん殴りに行く」

「粗方破壊尽くしたら、その後お兄ちゃんと一緒に焼肉を食べに行きます」

2人の顔は凄く活き活きしていた。
親父をぶん殴りに行く、この言葉にちょっと驚いていた

「いいな〜それ、お前らが殴り終わったら焼肉食べに行こうぜ」

「奢んねぇからなぁ!?」

「俺の奢りだよぉ〜!?」

何故かキレられたので咄嗟に別の場所に行くレストその後ろ姿を見送った

「レストさん、素寒貧だろどうせな」

「うんうん、前に一緒に行った時はあ、金ないわなんて言われたからビックリしちゃった」

「だよな〜、まあそういう仕方ない所に俺達兄妹は惹かれちまったのかもしれねぇな」



小言を言われそうな気がしたので咄嗟に逃げたるレストであったがその間に色々な質問を色々な人達に吹っかけた

中には空の異変に気がついている者

そんなことよりおうどんたべたい者がいて

終わりではなく 始まりなのではないかと思っている者もいたりと
やっぱり変なやつらばっかだな・・・

「でも、いやーみんな三者三葉だな〜」

《課題:世界の終わりに何したい?》(例のSE)
ー耀蝉 煌綟編ー

「おーい煌綟、耀蝉 煌綟(ヨウゼン コウライ)?あー、いないのか・・・?桃鉄99年でもやてんのか?」

最後に名前を呼んだが、そいつは出てこなかった後で話をすればいっかそうと思ったレストだったのだ





さて場所は変わって桜ふふふん街・・・では無く永遠に桜が咲き誇り続ける桜吹雪街
4つの街の内、1番過ごしやすく安全地帯らしい
ちなみに改めて説明すると異端者3人が別世界にカチコミしに行って物語が始まった原因の街
ちなみに雪が積もっていたところはやっと溶けたらしい

「太陽さん達、大丈夫かな」

コンビニ行ってくる感覚だったのにいつの間にか安否不明の状態になっているそのせいなのか突撃していった者達の身を案じていた


一方その頃、名前を呼ばれた太陽はこんな事していた

「神に祈る間も無くここで俺に倒されてくれ、ガンヴォルト!」

「なんだろう、君のそのセリフ・・・不安な感覚がするよ」

『GVが負けるわけないわ!がんばってね!』

ーGVは███との心の繋がりを感じたー

「うえーい!タイトルマッチだ!やれやれー!」

「・・・ただの組手なんだけどな」

GVが言った通りである。
やれやれこいつら、攻略する気はあるのだろうか・・・しかし、至って真面目である。


「きっと大丈夫だよ!ところであの空どうしてあんな感じになっちゃったんだろつね?」

不安な顔を浮かべ空を見上げている桜花と考え込むエクス

「あれは、きっと別世界の背景ではないか・・・? 」

「流石!よく分かるな」

「ふむ・・・あ、いや、やっぱり世界の終わりかもしれぬ!」

2人は同時にズッコケる

5人目

「悪霊増殖:ダークスピリッツ・アウトブレイク」

 紅魔館 庭園

 迫りくる『悪霊』の群れ。
 紅魔館に出現したそれは、まさしく霊夢たちの言っていたそれに酷似していた。
 いきなりの出現に驚きつつも、戦闘を開始する。

「来たわね!」
「行くぞ!!」

 英霊ナポレオンの号令と共に、悪霊への攻撃を開始する。

「気を付けてください!あの油に触れると下手したら死にます!」
「忠告感謝する!」
「ですので、なるべく遠距離からの攻撃を!」

 咲夜の忠告を聞いた全員は、悪霊の赤い核目がけて砲撃、呪符による攻撃、弾幕による乱射、刀から放つ衝撃波。
 その全てが迫りくる悪霊の、赤い核を破壊する。
 当然、残された彩香も観ているだけではない。

「ボクも、やるしかない!!」

 自分だけ、じっとしているわけにはいかない。
 彩香は深呼吸をし、神體の刀を構える。 
 しかし。

「やば……!」

 一手早かったのは悪霊。しかしてそれは卑劣な不意打ちか。
 驚愕と、その直後に来る恐怖のあまり回避することすら忘れてしまう一瞬。
 そして、数秒先に迫る死。
 もはやこれまでか―――――と思った時だ。

『何を呆けている!避けろ!!』

 己が裡に宿る『声』が、心と脳に響く。
 この声は、間違いなく『アマツミカボシ』だ。

「……!」

 攻撃を避けながらも、彩香は無言を貫く。
 まるでアマツミカボシを”忌避”しているかのような。

『なぜ黙る!?オレに身を窶せ!出なくば死ぬぞ!!』
「どうせ暴走するだろ!ボクがあの時どれほど……ッ!!」

 憤るような自問自答。
 忘れもしない。ロンドンでの一件。
 敵だったとはいえ、無辜の子供たちを攻撃し重傷を負わせてしまった。
 彼女の意思によるものではなかったとはいえ、己が意思を制御できなかった自分の責任である以上。

「ボクはこれ以上、誰かを傷つけたくはないんだよ!子供を傷つけるだなんて、不本意だ!」

 回避をしつつ、まるで慟哭のような自問自答を繰り返す。
 そうだ、敵とはいえ相手は子供だった。意志に反してでも傷つけるだなんて胸糞が悪すぎる!!
 自問自答の果て、アマツミカボシは―――。

『そうか、お前は……優しいんだな。』
「何をいまさら!!」

 納得する。そして感心する。
 それは軽蔑の意味ではなく、純粋な優しさへの称賛。
 であるのならば、すべきことは試練を与えし悪神でも一つ。

『ふふ、なおさら気に入ったぞ!なればオレもやり方を変えよう。”加減するからオレの動きに合わせろ”!これなら誰も傷つけまい!』
「ッッ……分かったよ!その代わりボクが『止まれ』って言ったら、止まれよ!?』
『フッ、当然!!』

 その刹那。悪霊も、仲間たちも、そして紅魔館内部のレミリアすらも驚くことになる。
 わずか1秒という刹那、その間に斃れた夥しい悪霊の数と彩香の目の変色が異変を看破させた。
 人智を超越した超高速の駆動と高速の斬撃の一つ一つが、悪霊の核を衝撃波だけでも破砕する。

「彩香!?その眼は!?」
『ボクは"まだ"大丈夫!抑えられているうちに、攻撃を!!』
「わ、分かった!!」
「なんだ……あの嬢ちゃんは!?」

 ペルとナポレオンは、驚愕と危機を感じていた。
 前者……ペルフェクタリアは彩香の暴走という危険に危機感を。
 後者……ナポレオンは周囲の悪霊を圧倒する、仲間たちの実力に驚愕を。

 やがて悪霊は、その悉くが油の一滴も残さずに消滅した。

(”止まれ”!)
『相分かった!!』

 そうして、赤く光る眼を元の青色に戻し、その速度を人間の範疇に落とした。
 当然久々の励起だ。その疲れも大きい。

『つ……つかれた……。」
「おいおい。あまり無理はするな。」

 疲れからか、彩香はふらつきナポレオンの近くで膝をつく。
 ナポレオンは、彼女をただ心配そうな目で見る。

「彩香……強くなったな。」
「ちょっとだけだけどね……ほんの少し、あいつに抗えた。」
「そうか……それは、良かった。」
(さっきの自問自答もそうだが……少しずつだが”制御できるようになっている”んだな。)

 その様子をペルフェクタリアはじっと見つめていた。
 しかしてその心境の内実は「彩香の成長」と「謎の不安」。

(彩香、お前が強くなっているのは分かる。アマツミカボシの力を抑え始めているのも分かる。だが……なんだ?この胸を支配する不安な気持ちは?)
「しかし。すげぇなお嬢さん方……。」

 ナポレオンは、初めて見る光景に驚きを隠せない。
 自分も人理に選ばれた英霊として、己の強さには自信がある。
 しかし、まさか!ああ!何ということか!

「世の中にここまで、強い者たちがいるとは!俺は惚れそうだ!」



 そのころ、霧の湖では

 ウーロンとスネークは、眼前にいる妖精チルノの安否を確認する。

「怪我はないか?」
「へん!これくらいさいきょーのあたいにはへっちゃらだもん!」

 いつもの元気と能天気さを取り戻したチルノは、スネークたちにいつものように話しかける。

「変わり身の早い奴……。」

 ウーロンはチルノのノリとテンションに呆れる。
 それとは対照的にスネークは、冷静に質問をぶつける。

「早速で悪いがここは初めてでな、博麗神社ってのはどこにあるんだ?」

 先行隊の4人の安否を確認するために、
 チルノは少し考え、方角を確認した後に指をさす。

「あっちだけど……。」
「あそこか……。」

 チルノが指さした先。その方角には……。

 博麗神社

「はぁ……はぁ……思っているより、強いな。」
「まったく……どこで力つけてるんだこいつら!」

 月夜と魔理沙が、悪霊を倒しきった後なのか大地に横たわっていたり、膝をついていたりしている。
 その周囲には、戦闘の爪痕が残っていた。

6人目

【ー閑話ー 人手不足定期女神の龍の瀧登り】

場所は存在するけど存在しない曖昧の様な作りかけのような真っ白な空間にて、5人揃っていた

「久しぶりの招集、珍しいっすね」

(ドンドン…)
忘れ去られた煌
 耀蝉 煌綟(ヨウゼン コウライ)

「女神が人手不足と言うらしいらの」

(ドンドン…)
水を操りし黒龍
沈竜狩 龍華御(ジンリュウガ リュウカゴゼン)

「人手不足定期、そろそろ人材増やそうぜ。なあ、そう思うだろ 時 詠子?」

(ドンドン…)
輝く焔の使い手
  紅 赫々(クレナイ カッカク)


「うるさい、気が散る」

(ドンドン…)
時を操る程度の能力(?)
   時 詠子

悲しいことに、女神陣営の人員が1人(エーテル・クラウディア)以外誰もいないらしく残ったのがこの4人である

「釣れないねぇ・・・」

「皆さん、あの空を見ましたね? 」

(ドンドン…)
エレメントマスター
  女神

「ねえ、さっきっからこの自己紹介は一体?」

どこかで見たことのある紹介文で苛立ちを隠せない詠子

「あー、オレがこの自己紹介分かりやすいよなってことで茶番予算を使った」

預金通帳を見せるとそこには───────!
シュウチュウセン 500エン          5000円
スキナシンサクノサイシンカン 480エン 4520円
ショウカイブン 2000エン 2520円
スタッフノオヒルゴハンダイ 300エン 2220円
ヒツヨウケイヒ(ゴクヒ) 2220エン      20円

      ー 残り残高20円 ー

             と、書かれていた

その瞬間、その場にいるほぼ全員が凍りついていた
茶番予算とは、なんなのかよく分からないが多分ろくでもない使い方をされたのだろう。

「はぁ・・・これでどうやって生きていけばいいんのだろうか」

「マージで良くやれてたな」

「全国の皆さん、今がチャンスです!暗証番号は2828(ニヤニヤ)!2828(ニヤニヤ)です!猫がにゃーにゃーです!」

「おおう、使い古されたネタを使うのやめろやめろ!!!いつの時代だよ!?20円しょっぱいだろ!?」

ウキウキで情報公開する煌綟に必死にツッコミを入れる赫々
そんな中、預金通帳をじっと見つめる龍華御

「おお、よく見ると最近大金が使われた形跡があるではないか」

_人人人人人人人人人人人人_
<ソウキン カイハツヒヨウ 3000000エン>
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

再び、凍りつく煌綟 赫々 詠子の3人

「これは女神であるな?」

「・・・バレてしまいましたか」

「なんてことしてくれたんですか、女神さんよぉ…これじゃあスタッフのお昼ご飯代が支払えねぇじゃねぇか!」

「そ、それは後で支払いますよ・・・ごほん、こんな事もあろうかと大空宇宙の特注品仮ボディを作っておいてもらいました。」

スタッフのお昼ご飯代が無いとストライキ起こされることを危惧した嚇々
仮ボディをよく見ると、そこには私が作りましたのピースサインしたマークが入っている

「これなら大気圏突破は可能だな」

「生きた身体ではないからこそ為せるやつ!」

「でも、帰りは証拠隠滅として燃やしますけどね」

「うわっ300万勿体ねぇ!」

確かに300万円勿体無いがそんなこんなで・・・

「それでは、龍華御お願いしますね」

「あい分かった」

人の姿から黒龍に変身し女神を乗せ飛び立つ
女神の権限と夢空間と四季の狭間に穴を開けるとあっという間に成層圏を抜ける

四季彩の世界からはるか遠くぼやけて見える名前も知らない場所へと2人は向かっていく

7人目

「幕間:神が星を見た日」

 少し前のお話。
 私、東風谷早苗が幻想郷に行く7年ほども前の話だ。

「ねぇさなちゃん。これ知ってる?」
「何々?」

 高校時代のクラスメイトが、一枚の新聞を私に見せてきた。
 最近活動が活発化している『キラ教団』の事件が書かれた記事だ。内容は確か『教団のメンバーが「キラ万歳、警察や日本政府はキラを認めるべきだ」といったデモを起こしている』とのことだ。
 私たちは当時のキラ教団がどんなものかはそこまで知らない。だがそれでも『”キラ”なる犯罪者を裁く、殺人鬼まがいの人物を崇める過激な組織』くらいは知っている。

「キラ教団、こわーい。」
「早く捕まらないかな……。」

「あれ……この男の人……!」
「知りあい?」
「てか、そこ別の記事だよ?」

 その時、私の興味の中心はカルト教団より別の記事の写真に映っていた。
 何のことはない、その辺の風景を捉えた写真だ。
 そこに映っていた銀色の片目が隠れた男の顔に、私は惚れてしまったのだ。

「かっこいい……。」
「えー、この銀髪の子がカッコいいって?」
「チャラそうだよ?別の記事に映るといい、やっぱずれてるよ早苗ちゃん。」
「そ、そうかなぁ?ははは……。」

 なんて、よくいじられながらも私は学校生活を楽しく過ごしていた。

 余談だが――――私はよく『ズレている』と言われる。
 別に言われることに関しては気にしてはいないし、むしろ人間はズレていた方が人生は楽しいと思っている。
 でも、本当にこの銀髪の少年に関してはカッコいいと思ってしまったんだ。それをチャラいと言われたのは、彼に好意を抱いてしまった私としては少し悔しい。

 とにもかくにも、学校の道徳の授業で『キラ教団について思うこと』という作文を書くために、私は友人からその記事が書かれた新聞を借りキラ教団について調べることにした。



「借りた借りた。」

 学校近くの図書館から、本を数冊借りる。
 カルト教団に関係する本とか世界の犯罪記録の本といった、まるで警察の人かサスペンス小説でも書く人が借りそうな本ばかり借りてきた。

 いざこれを持って家に帰り、作文を書こうとした時だ。

「~~ぅうわぁあ!?」

 重さに手が耐えきれず、つい抱えていた本を数冊落としてしまった。
 周囲には人はそこまでいない。自分で本を拾い、今度は落とすまいと鞄の中にいれようとしたその時だ。

「落としましたよ。」
「え?あなたは……。」

 その日、私は運命に出会った気がした。

 銀色の片目が隠れた、特徴的な髪。
 どこか影のある顔には不釣り合いな、優しいまなざし。どこか引き寄せられるような感覚すら覚えさせる。
 きっと、彼の裡に宿る「善性」だろう。

 しかしそんなことよりも驚きだったのは。私がさっき見た『記事の男』とほぼ同じ顔の男が目の前にいたのだ。
 夢なんかじゃない、奇跡のような偶然。

「あなたは……あの記事の!?」
「記事?俺記事に乗るようなことでもしたかな……。」

 その後、私は事情を説明する為に近くの公園のベンチで事情を説明した。

「実は……あなたの顔を見たんです。記事にあなたの顔が乗っていて……迷惑ですよね、なんかすみません。」
「いやいいんだ。しかし……すごい奇跡だな。記事に映っていた匿名の日本人を、調査をすることもなく偶然出会ってしまう。俺からすれば、恐るべき奇跡だ。」

 冷静な言葉遣いと口調とは裏腹に、その男の眼は驚きで満ちていた。
 それに対して、私はつい口が滑ってしまった。

「多分奇跡じゃないと思いますよ。だって私は……現人神ですから。」

 彼との会話が楽しくて、つい自分の秘密を話してしまった。
 そうだ、私は人間の域を超えた現人神だ。誰もが恐れる神の力を持った女だ。
 しかし彼は恐れることもなく、一人の人間として話していた。

「現人神、マジでいるとは……恐れ入るな。」
「昔、この力を制御できなくて苦労ばっかりしていたんですよ。小学校のときなんかそれこそ家を巻き込んで……。」
「強大な力は、うまく制御できないと破滅しか呼ばないからな……。」

 まるで自分も経験したかのような、或いはそれ以上の苦労をしょい込んだようなまなざしを浮かべつつ、彼は自身の略歴を話し出す。

「俺達は、キラ教団を追っているんだ。家族を殺されてな……。」

 家族を殺された。 
 あまりの重みに私の目も曇る。

「それは……殺した人への復讐のために?」
「それもあるが何よりも知りたいだけさ。『なんで俺たちの家族を殺した』のかって。俺と妹一人を残して、な。」
「哀しいですね……。」

 哀しい過去を背負った苦労人。それが彼の正体の一つだった。
 そしてふと、気になったことを聞いてみた。

「さっき、『俺達』と言っていましたが……組織単位で行動しているんですか?」

 彼はハッとした顔を浮かべるも、即座に元の顔に戻る。
 そして、私の質問に答えてくれた。

「俺達は『流星旅団』って言う組織で行動しているんだ。もしかしたらまた会うことも、あると思う。」

 流星旅団。キラ教団を追う正義の組織。
 まるで日曜の朝か深夜のアニメにでもありそうな組織の在り方に、つい興味と関心の笑みが顔に出てしまう。

「こっちからも聞いておきたいことがあるんだ。名前、なんて言うんだ?俺は天宮月夜。変わった名前だろ?興味がある。」
「私は―――早苗。東風谷早苗です。」
「早苗、か。いい名前だな。」

 ふと、月夜さんは立ち上がってこちらに約束を投げかけてきた。

「なぁ早苗。もし、だ。お前が俺の事を覚えていてまた会うことがあったらその時は。神様の奇跡ってのを見せてくれよ。お前現人神の力を宿しているんだろ?興味があるんだ。」
「ふふっ、分かりました。また会うことがあったら、その時は。」

 なんて笑いながら、私たちは別れるのだった。
 その後私は『彼』に合うこともなく、神奈子様たちによって幻想郷に『転校』することになり、今に至るのだが……。

 彼のあの笑顔とあの眼差し、そして名前を忘れたことは今の今まで一度もなかった。



 守矢神社

「なるほど……そんなことが。」
「変な過去話ですよ。」

 眼前にいる騎士、ディルムッドはそんな私の話を黙って聞いていた。
 そして、何か思うところがあるかのように彼は続ける。

「いつか、彼のような人ともう一度出会えると……いや、これはこのディルムッドの勘になりますが。」
「え?」

 それは、妙な予言だった。

「もしかすると、もうすぐ会えるかもしれませんよ?」

8人目

「鬼出ずる黒平安京」

黒い瘴気に包まれた古めかしい都。
その地中より這い出ずる鬼の群れ、塀を割り露わになる鋼の鬼の姿。
正しく、百鬼夜行と形容するに相応しい地獄絵図だった。

「うおっ!これってシャドウじゃねぇのか!?」
「シャドウの気配を感じない、本物の生物だぞソイツは!」
「何て、禍々しい姿…巨大な物もあるなんて…!」

その渦中にて、スカル達心の怪盗団は冷や汗を流す。
それも当然だろう。
数、質量、いずれかも兼ね備えた鬼の軍団を前にしたのだから。

「シャドウの鬼とはまるで違うぞ、気を付けろ!」
「わかぁってらぁ!つったってこの数はよぉ!」
「多勢に無勢、ですね…!」

互いに背を合わせ、囲む様に現れた鬼を迎え撃つ構えを取る。
すかさず、鬼が群れを成して襲い掛かってきた。

「オラァッ!」

そこを、ハンマー一振り。
瞬間、雷鳴が轟いた。

「おわぁっ!威力たっか!?」

轟雷と共に消し炭になる鬼達。
思いがけないラッキーショットに、思わず己の武器を見るスカル。
ミョルニルは、先の丑御前との戦いよりも輝かしい紫電を走らせている。
共鳴したのだ、雷神の力と。
淡いながらも恐ろしい光を放つミョルニルを見て、スカルの口角が上がる。

「何だか分かんねぇが、力が湧いてきやがる!うおぉぉぉ!掛かってこいやぁー!」
「頼もしいですね、後ろはお任せします!」

雷と共に豪打を振り落とすスカルを横目に、ノワールも斧を構え一歩前に出る。
所詮女とばかりに舌なめずりする鬼が、先行して襲い掛かる。
人の肉を容易に断てる凶手が付き出され。

「甘く見ないで!」

直後、斧の一薙ぎが諸共に粉砕した。
一瞬にして命を落とす鬼。
そこから飛び散る血肉を優雅に避け、舞台の舞いめいたステップで後続の鬼へと強襲を掛ける。
右へ左へ揺れ動くノワールに狙いが定まらず、たたらを踏む鬼。
彼もまた、彼女の振るう斧によって葬られた。

「ノワール、右に集団!」
「OK、ナビ!」

そこに指示を飛ばすのは、上空に浮かぶネクロノミコンに乗ったナビだ。
言われるや否や、懐からバズーカを取り出し躊躇無く撃ち出す。
狙い通りの場所へ吸い込まれる様に打ち込まれたロケット弾は、見事鬼の集団を一掃する。
指示伝達から流れる様な攻撃は、彼等の連携が如何に優れているかを表していた。

「包囲が解かれていく、抜け出すなら今だ!」

周囲の敵反応を見て、声を上げるナビ。
それを合図としたのか、二人が勝負に出る。
薄くなった鬼達の壁へ軽々と躍り出て、スカルがショットガンを、ノワールがペルソナのガトリング砲を構える。
立ち並ぶ火砲が、一斉に火を噴いた。

「おらおらおらおらぁ!」

無数に飛ぶ弾丸の嵐に、鬼達の身体が穴だらけとなり、血飛沫を上げて散り散りになっていく。
スカルは止まらない、更に撃鉄を起こし、銃口を回す。
辺り一面を埋め尽くす黒い影が、徐々に数を減じていく。
次第に硝煙が立ち込め、血霧が漂い始めた頃。

「道が開けた!今だ、逃げ込め!」
「おっし、行っくぞぉー!!!」

完全にがら空きとなった通路目掛けて、全員が駆ける。
鎧袖一触とはこの事か、あれだけ居た鬼も、最早半分もいない。
とは言え、他の場所はそうはいかない。
油断はまだ禁物。
故に、ナビが気付けたのは僥倖だった。

「!待って、デカいのが来る!?」
「うぉい、マジかよ!?」

誰もが振り返り、その巨躯を視界に入れる。
数十mはあろうかという巨大な鬼もいるのだ。
巨体故に動きそのものは鈍重だが、歩幅は並の鬼を遥かに上回る速度を叩き出していた。

「あんなデカブツに踏まれたら一溜まりもねぇ!」
「分かってる、逃げるにしてもデカすぎる!」

どうするか、と皆が思案する。
しかし、それを待つ程、相手は優しくない。
地面が一瞬、揺れる。
振り返った先には、足を振り上げ、踏み付けんとする鬼獣の姿があった。

「っやらせっかよ、キッドォ!!」
「スカル!?」

一瞬の躊躇いも無く、スカルが殿を打って出た。
ペルソナの力を纏い、凄まじい轟雷を呼び寄せる。
それをそのまま、ボールを打つ様にミョルニルを振るって撃ち出した。

「しゃあぁ!!」

轟音、爆裂。
鬼獣の足が、電熱によって焼き焦げ、血肉を舞い散らせる。
だが。

「…と、止まんねぇ!?」

あくまでも、それは表皮までの話。
一瞬の間を生むも、攻撃を封じるまでには至らない。
元より鬼獣に電撃は通じにくい。
人型サイズに対してはあくまでもステータスの暴力でねじ伏せれただけ。
それが引っ繰り返れば、当然効かなくなる。

「グオォォォォ!!!」

当然、鬼獣は攻撃を辞めるつもりは毛頭ない。
山の如き脚が、振り下ろされる。

「させません、ペルソナ!」

だが、その一瞬がスカルを救った。
ノワールの放ったサイダインの念動力場が、鬼獣の足を真横へ滑らす。
必然、その足に荷重を掛けていたが為に重心を持っていかれ、すってんころりんと宙を舞う。
刹那の間の後、その巨体が重力に惹かれて倒れ伏した。
見事なジャイアントキリングに呆然とするスカル。
そこに、ノワールの叱咤が飛んだ。

「一人で無茶し過ぎです!」
「わ、わりぃ…」
「仲間なんです、もう少し頼ってください!」

珍しく声を荒げるノワールに、スカルは少しだけ申し訳なさそうな顔をして、そして、笑みを浮かべた。
こんなにも自分の事を想ってくれている、頼もしい仲間がいる。
その事を嬉しく思いながら、改めて鬼獣と向き直る。
見れば、既に立て直さんとする寸前だった。

「ノワール、アイツの頭に一発ぶちかましてやれ!」
「了解!」

すかさず、ロケット弾が頭部へと叩き込まれる。
血肉を舞い散らせ、堪らず頭を抑える鬼獣。
だが、その表情は鬼気迫る物があった。

「野郎、まだ来るってのか!?」
「バズーカ、装填までまだ掛かります!」
「分かってる、今度こそ俺が!」

デカブツにはデカブツを。
ショットガンを構え、乱射するスカル。
意地でもここで止めねばならぬという使命感が、スカルを駆り立てていた。

「うおぉぉぉぉ!!!」

連射、連射、連射。
ノワールが空けた脳天へと無数の散弾を叩き込み、反撃を許すまいと銃撃を続ける。
だが、無常にもカチリという音が鳴った。

「やっべ、弾切れ…!?」
「スカル!?」

悲鳴にも近い叫び声。
血塗れになりながらも巨大な腕を振るい、今にもスカルを潰さんとする鬼獣。
瞬間、スカルの意識が僅かな時間を永劫に近しく引き伸ばす。
走馬灯だ。

(やっべ、間に合わねぇ…!)

最早、死を覚悟していた。
思い返すは怪盗団の日々。
あの日全てを変えた頼もしい男、彼を皮切りに増えていく仲間達。
彼等との絆を、想いを、忘れた事など一度たりとも無かった。
だからこそ、この命を、簡単にはくれてやれない。
だがその意思とは裏腹に、身体は全く動かない。

(畜生、ここまでか_)

直後、後ろから突き出された巨腕が、烈風を伴って鬼の脳天を貫いた。
血に染まる鋼の腕。
見上げれば、そこには一機のロボット。
そこから、聞き慣れた懐かしい声が響いた。

『やぁ、余計なお世話だったかな?』
「_アビィ!」

9人目

【ー四季彩の街ー 終わって・・・ない!かも】

ここは、氷結の街
永久凍土に覆われており何者でさえも阻む
お前は通すがお前は通さないは通用しないのだ
何故ならばこの街全ての生命を凍らせてしまうのだから
冗談です、凍ったバナナはトンカチなので作り放題という意味ですからね

しかし、残念ながら該当者 星乃 雪 しか居なかった為日曜夜21時にやる世界○車窓っぽい感じのやつでお送り致します

(例のBGMが流れ出す)

今夜はここ、氷結の街から
でも電車も列車なんてないんですけどね・・・交通する人がいないもんですから
ロボットと氷魔ならいるんですが取材を試みたけどダメでした

寒すぎるのでちょっといいですか?
・・・というか、未知の領域過ぎるため他の場所を見に行きましょう。




次に向かうのは夏風横丁と呼ばれる場所
何もしてないのに溶けそうなレベルの暑さ
思わず、動いてないのに暑いよ〜…とか言っちゃいそうですね。
いやー、ナレーターでよかったと思いましたね!

それでは、成り行きってことで家庭を少し覗いちゃいましょう!

「はぁー、太陽は大丈夫かなー」

「大丈夫大丈夫!だってほら、何日も居なくなるのは初めてのことなのだから・・・ね?」

2人はのんびりお茶を飲んでいた

「それでも私は心配なんだ〜〜〜〜!」(したばたじたばた)

薄浅葱の髪に探偵のような服装をした彼、名前は大空宇宙
天体のような瞳をして夏に相応しい服装をした彼女は大空天音
所謂、夫婦というやつです


遡ること23-2辺りの会話

太『父さん、夢美がフィールド変換のアレを魔導具にしたいと言ってるんだが大丈夫か?』

『あー、完全に自己責任だね〜。でも分かった、いいよ!あ、後でもその魔導具になったフィールド変換専用起動端末のサンプルとしてくれるなら次のを造っておくけど、どうかな?』

『(保証が出来ないけど)OK!』

「"OK"だってさ』

それに頷く夢美

『あっはは!月影家の魔力だからバラッバラになっちゃいそう…ごめんね、不甲斐な製作者で・・・でも僕諦めないからね!いつか魔法を科学d』《ピッ》


って感じで登場していたのでした。


「この頃仕事が大変だから変なテンションなのは分かるの、でもね」

「うん?」

「息子が離れるって寂しいけど…嬉しいと・・・私はそう思うの」

「・・・まだ18歳だよ?でも、私は分かる。何かに巻き込まれてる気がする。感がそう言っている」

「奇遇ですね、実は私もなのですよ。うーん、あの子大丈夫かな〜」

「大丈夫さ、太陽は強いから・・・なにより他人を守るためならもっと強いからね」

「ふふふ、なんだか妬けちゃうね〜」

「ははは、全くだよ〜」


ちょっとの間、無言になる2人


「「(ツッコミが居ないと悲しい(寂しいわ)」」


2人は空を見上げ、同時にビックリする


「「!?」」

「これは、ちょっとマズイね。ヘタしたら上の人達が動き出す可能性が出てきたよ」

「まさかだけど、帝国…?それとも月面都市の・・・」

「うーん、違うね全く違う・・・」

天音は、はてなマークを浮かべていた

「何か別の・・・何かとてつもく強大で私達では到底不可能なことを引き起こすような・・・そんな存在に・・・巻き込まれたんじゃないかなって」

「じゃあ、月面都市じゃない?」

「チガウヨー」

「じゃあ、私達もここを出る準備しましょうか」

「んー・・・いや、大丈夫じゃないかな?」

「え?」

懐中時計を見ていた

「時間的には上の人達が動くから大丈夫だよ、イマイチ信用は出来ないけど」

「本当に大丈夫なのでしょうか・・・?」





「さあ・・・ね」

空を見上げてもやっぱり不安だった。

10人目

「紅い館の会談」

 悪霊との戦いの後、咲夜に案内され紅魔館内部に入る霊夢たち。
 中も当然というべきか予想通りというべきか、殆どの家具や装飾品が赤で構成されている。
 道中は何事もなく、悪霊が出ることもなかった。かくして彼女たちは最奥にある謁見の間に到着する。

 紅魔館 謁見の間

「お嬢様の前では失礼のないように。」
「あ、ああ。」

 咲夜は一歩下がり、『お嬢様』なる人物を紹介する。
 すると謁見の間の玉座に少女が座っているのが見えた。

 水色とも紺色ともとれる奇妙な髪色。
 小柄ながらもただ者じゃないと思わせるカリスマ性と威圧感。
 そして、特徴的な小さい黒い羽根。

「先の戦い、楽しく見させていただきました。あなた方も相当の手練れと見たわ。」
「あなたは……?」
「私はレミリア・スカーレット。吸血鬼にしてヴラド・ツェペシュの末裔よ。よろしく。」
「本物の吸血鬼!?」

 彩香が驚く。
 今までハロウィンでしか見たことのない吸血鬼が、実在のものとして眼前にいるとはという事実に驚愕しているのだ。
 その様子を見たレミリアは満足げにほほ笑む。

「ふふ、驚いたかしら?」
「……吸血鬼は本当のようだが、ツェペシュの末裔は嘘だな。匂いで分かる。」
「あなたねぇ……。」

 ペルフェクタリアに文脈内の嘘を看破され、少し不機嫌な顔になるレミリアと言う名の吸血鬼。
 喧嘩にはさせまいと2人をたしなめ、霊夢は続ける。

「はいはい分かったから。早速で悪いんだけど、あの悪霊について知っていることはある?」

 もともと、近くにある紅魔館に住むものなら悪霊の事について知っているのではないかと思い聞き込みに来たのだ。
 何しろ悪霊も吸血鬼も鬼種も魔性のもの。
 引かれるものがどこかにあるはずなのだ。

「悪霊……あの真っ黒いの?」
「そう。何か知っていることある?」
「そうね……悪霊自体についてはまだわからないことだらけだけど、地下間欠泉センターに最近大穴が開いてそこから悪霊がいっぱい出てきているってのは知っているかしら?」
「地下間欠泉センターね。この先にあるあそこか……。」

 悪霊の正体が何者かは謎だが、現在『地下間欠泉センター』なる場所に悪霊が出現しているという話を聞いた。
 これだけでも十分すぎる収穫だ。

「俺もあんたにどうしても聞きたかったことがある。あんた、俺みたいな奴の気配とかは感じるか?或いはそう言った話を聞いたか?」

 ナポレオンも同じように質問を投げかける。
 しかしその内容は悪霊とは別で『自分と同じ人理の英霊を見たり聞いたりしたか?』ということだ。

「それは分からないわ。でも……妖怪の山で剣を二本持った妙な男を見かけたってのは聞いたことがあるわね。確認してみるのもいいかも。」
「妖怪の山……早苗のところね。」
「知りあい?」
「ちょっと前に小競り合いした仲よ。和解したけど。」

 どうやら、霊夢と早苗には過去に因縁があるようだ。
 今は和解しているようだが、やはり当事者である霊夢には思うところがあるようで、その顔は険しい。

「性格は悪くないんだけどねぇ……ごめん、閑話休題。」

「もう一つ、あなた……『金色の指輪』は持っているの?」

 最後に月美が、ソロモンの指輪の所在を聞いて見る。
 もしや幻想郷にもう一つあったとしたらと、予想をしていたのだ。

「え?それってもしかして……これの事?」

 その予想は的中する。
 レミリアは側に置いていた金色の指輪を見せびらかすように掲げる。
 金色の輝き、肌がぴりつくほどの魔力の流れ。

「あの魔力量……ソロモンの指輪ね。」
「最近庭で拾ったんだけど、すごい力持ってて私にも持て余してたのよ。危険がないか解析させている途中だから今は渡せないわ。」
「今は?それってつまり……。」
「もし悪霊と決戦に挑むって時になったなら、言ってくれたら後で渡すけど。渡すタイミングはそれでいいかしら?」
「問題ないわ。彼らの旅路にはどうしても指輪が必要なのよ。」
「ふふ、感謝しなさい。」



「とりあえず今日は帰った方がいいわ。また悪霊に襲われても責任取れないし……。」
「そうね、決戦の時になったらまた来るわ!途中で”気が変わった”だなんて言わないでよね~!」

 かくして会議は終わり、皆は博麗神社への帰路に就く。
 その様子を見ていたレミリアは、指輪を見て考え事をしていた。

「……しかし、この指輪。」
「無用の長物とはいえ、こんなもの集まったら大変なことになりそうね。」



 夕暮れ 博麗神社

「終わったか?」
「おう。掃除完了だぜ。」

 悪霊との戦いを終えた魔理沙と月夜は、神社の掃除をしていた。
 立つ鳥跡を濁さずとは言ったもの。
 外れた矢を抜いたり、倒れた家具や装飾品を元の位置に戻していたのだ。

 その時だった。

「ここか……博麗神社は。」
「?」

 スネークとウーロンが、博麗神社にやってきた。
 突然の来訪者に、2人は驚く。

「あなたは……って、豚?」
「失礼だな!本日2度目だぞそんなこと言われたの!!」

11人目

「Double-Heroes-Action - 電王&ドンブラザーズ -」

「言っとくが俺に前フリはねぇ……俺は最初から最後までクライマックスだ!!
うおおおおうりゃあああああッ!!」

 デンオウベルトの腰元にある4つのパーツを組み合わせて、
デンガッシャー・ソードモードに変形。電王がすれ違いざまに子鬼たちを斬り伏せていく。

「グウッ……!」
「ギャアッ」

 電王の繰り出す斬撃は鋭く速く、それでいて一撃必殺の威力を誇る。

「グバァァァァァァッ」

 目の前に立ちはだかる大鬼が口から吐き出す火炎放射。

「おわっち!!」

 身を翻してそれを避け、飛び上がりながら宙返りをすると同時に、
デンガッシャーの回転斬りを振り下ろす。

「だぁぁぁぁありゃッ!!」
「グオォォッ」

 頭部を真っ二つに切り裂かれた大鬼はゆっくりと崩れ落ちていった。
デンガッシャーの刃を肩のアーマーに担ぎ、勝ち誇る電王。

「へへっ、どーだ!」

「な、なんという太刀捌き……お見事です!」
「当然だろ。なんてたって俺は……」
「おい、気を抜くな!」

 その時、横からイヌブラザーが声を掛けた。指差す方向を見ると、
黒武者が巨大な刀を振り上げながら突進してきた。
電王は咄嵯に身をかわす。直後、地面を穿つ凄まじい衝撃音が響いた。

「我、活殺自在、也!」

 上半身が異様に発達し、下半身が異常に細いバランスの悪いフォルムをした
異形の黒い鎧武者が、2本の金色の角のような兜飾りを生やしている。
真っ赤な面鎧の奥にある筈の素顔は窺えない。

「チッ、新手か!」

 ディケイドはライドブッカーをガンモードにし、連射する。
だが、黒武者は素早い身のこなしで弾丸をすり抜けていく。

「速いな……デカい図体の割に」
「ハハァッ……!!」

 ジグザグに素早い動きで黒武者はディケイドを攪乱、その隙に背後へと回り込み、
ディケイドの背中目掛けて巨大な刀を横に薙ぎ払う。

「士さん!」
「士!!」
「どぉうりゃっ!!」

 その攻撃を寸でのところで、モモタロスがデンガッシャーで受け止める。

「こンの野郎……! チョーシくれてんじゃねェぞ!!」

【ドン! ブラスター!!】

「グゥアッ……!!」

 電王と鍔迫り合いをしていた黒武者に向かってドンモモタロウがドンブラスターを
発砲すると、黒武者は思わずその反動でよろめいて後ずさる。

「っしゃあ! 今だぜ、お前ら!!」
「お供達! 必殺奥義だ!!」

【ドン! ドン! ドン! ドンブラコ!】

「桃代無敵……!!」

【モーモタロ斬♪ モモタロ斬♪ モーモタロ斬♪ モモタロ斬♪】

「よいしょ、よいしょ……」
「まったく人使いの荒い事だ……」

 ドンブラザーズのメンバーたちが何処からともなく出現したハンドルを回すと、
ドンモモタロウの足場がせり上がっていく。
そして、ある程度の高さまで上がると、ザングラソードに虹色の光が宿った。

「何だか派手派手しい連中だなァ、そんじゃあこっちも……」

 ライダーパスをベルトにセタッチし、デンガッシャーにエネルギーをチャージした電王が柄を握る手に力を込める。

【FULL CHARGE】

「必殺! 俺の必殺技、パート2!!」

 デンガッシャーの剣部分が射出され、赤い稲妻が本体とを繋ぎ合わせる。

「ずぇぇぇぇぇりゃッ!!」

 電王の意のままに空中を縦横無尽に駆け回る刃。

「グワァァァッ」

 黒武者の身体に次々と斬り傷が刻まれていく。

「桃代無敵……アバター乱舞ッ!!」

 電王の必殺技によって弱ったところに、ドンモモタロウがお供たちの援護射撃を
背に受けながら、暗転した空間ごと敵を叩き切る。

「必殺奥義! アバ・タロ・斬ッ!!」
「こいつでトドメだあああああああッ!!」


 さらに電王がデンガッシャーを天高く掲げ、刃を黒武士の脳天に振り下ろす。


「グオオオオオオオオォォッ……!!」

 右膝を下ろし、残心を決めるドンモモタロウの背後で、ゆっくりと倒れ込む黒武者。

「グウウッ……! おのれええッ……!!」

 怨みの声を上げながら、黒武士は黒い粒子となって消え去った。

12人目

「ハクレイ・ベース設立/嗣章:女神降臨」

博麗神社にて相対する二人組。
片や私設武装組織のリーダーと、変化する豚。
片や魔法使いと、同じく私設武装組織のリーダーだった。

「む、よく見れば新宿であった様な…?」
「そうだよ、つってもあの空飛ぶ船が旅立つ時にチラっと顔見たぐらいだけどよ。」

真っ先に飛ぶ指摘で、漸くウーロンの存在を思い出す月夜。
思い返せば、確かに記憶の中にあった。
最も、周りもまた濃いが為に埋没するのも頷けるのだが。

「何だ、この妖怪と知り合いなのか?」
「誰が妖怪だ、これでも立派な生物だよ。」
「いや普通の豚は流暢に喋らねぇよ。」
「何だよ不服か?」
「そうじゃねぇんだよなぁ。」

魔理沙の言葉に心外だとウーロンは反論するが、どう見ても喋る豚など妖怪の類いに見られても仕方無いだろう。
そんなやり取りを呆れたように見つめる月夜だったが、不意に後ろから肩を叩かれる。
気付けば、スネークが後ろに立っていた。

「うわっと!何時の間に!?」
「む、済まない。気配を消していた、癖でな。」

仕事柄、無意識に気配を消すのが染みついているのだろう。
驚く月夜に申し訳なさそうに謝罪しつつ、スネークは本題に入る。

「先に来ていた他の連中は何処だ?」
「あぁ、俺以外の人達は紅魔館という所へ向けて、あっちへ…あれ?」

月夜の指差した方向、そこはスネーク達が来た方角だった。
恐る恐るといった様相で、スネークが問う。

「…その道中に、霧の掛かった湖はあるか?」
「うん?紅魔館に用があるのか?それなら霧の湖を超えた先だぜ。」

代わりに魔理沙が答え、スネークとウーロンは頭を抱えて落胆する。
行き違いが発生した事実に到達するのに、そう時間は掛からなかった

「入れ違ったか…」
「ま、まぁそう落ち込むなって、ほらあそこに何かあるぞ?」
「あぁ…あれは!」

気を取り直そうとウーロンが差した先には、鉄製のコンテナがあった。
表面はペンキの鈍い光沢を放ち、新品であることを強調している。
隅には、DDのマークが塗装されていた。

「おぉ、先遣隊のコンテナベース!これがあるなら…!」

すっかり顔色を変え、コンテナの中へと入っていくスネーク。
余りの身の変わりように、心配損だったかと眉尻を下げた。

「おい、あれ良いのか?」
「あぁ、というか元々はアイツのもんだよ。」
「そうなのか?外の世界の奴等は大層なもん持ってるな~。」

そう話し合っている間に、コンテナにアンテナが立つ。
次いで黒いネットが張られ、草木が被せられる。
あっと言う間に、野戦テントの完成だ。

「ふぅ…」
「鉄の箱が一軒家に早変わりしたぜ!」
「よし、後は電力だ。ウーロン、100Whになってくれ。」
「出来る訳ねぇだろタコ。」

仮になれたとして消耗するだろというツッコミが飛ぶ。
スネークは冗談だと笑い飛ばしながら、コンテナ内の発電機を起動させた。

「さて、アイツ等にはロンドン行きの時から持たせた無線機がある。ソレが生きていれば、ここから通信出来る筈だ。」
「何だか分からねぇが、便利そうだな。後で借りとくか。」
「止めとけ止めとけ、お前には使えっこねぇ。」
「んだと?」

ギャーギャーワーワーと言い争っている間に、無線機が起動し、電波が確立する。
一通りチェックを終えたスネークは、無線機のツマミを回し、周波数を合わせ、問いかけた。

「此方スネーク、聞こえるか?」



「何か打ち上がったな、次元。」
「あぁ。」

四季彩世界から上昇する何かを望遠鏡で観察するルパン。
素っ気なく返す次元の態度も気にせず、望遠倍率を上げていく。

「…ありゃ龍か?」
「何?」

その言葉を聞き、同じく望遠鏡を向ける。
肉眼では確認出来ない距離だが、確かに何かが見える。
鱗に覆われた巨体、長い胴体、大きく開かれた口、鋭い牙。
明らかに、龍と呼ばれる空想上の怪物だった。
龍は、瞬く間に成層圏を離脱している様だった。

「あんなのが居るなんざ、とんでもねぇ世界に来ちまったようだぜ~俺達?」
「全くだ、話半分で来るもんじゃなかった。」

普段から準備を欠かしている訳では無い。
さりとて、空想上の化け物とやり合えるような装備をしている筈も無し。
先の襲撃以降"まるで急に治安が良くなった様に"物騒な気配は殆ど無くなったが、消耗はしている。
廃墟を漁ろうとして、眼前で"突然活気あふれる街"に変化したが故に納得したが、これはこれで補給しづらい。
さてどうするかと悩んだ所で、ルパンが次に発する言葉に行きついて、溜息を付いた。

「あそこ行くか~!鬼の居ぬ間にって奴だ!」
「だろうなぁ、お前ならそう言うと思った。」
「さっすが次元!」
「誉めてねぇ。」

この相棒、自分の興味ある事以外は眼中に無い。
そんな事は、とうの昔に理解している。
そう言い聞かせ、再び彼方を見通す。
そこには、四季彩色溢れる世界が薄らぼんやりと映っていた。



「む、戻ったか。」
「奴等、逃げちゃったよ。朝練にもならないね、ふぁ~…」

トキトキ都では、戦闘獣と激闘…もとい蹂躙を繰り広げたビルスが帰還を果たしていた。
彼の顔付きは拍子抜けと言わんばかりで、あくびさえ上げる始末だ。

「我々が出る幕では無かったかもしれませんねぇ?」

随伴するウィスもまた、退屈そうに声を上げる。
それもその筈、ミケーネ神はビルスが来たと知るや否や、尻尾を巻いて逃げてしまった。
_他の宇宙にも破壊神は居ると言うのに。
にも拘らずあの言動ならば、最早手出しせずとも良いと判断した。
故にビルス達は帰ってきた。

「何か面白いの無いの?僕まだ破壊し足りないんだけど?」
「おっと、ここは壊さないでくださいよビルス様?」
「わぁーってる、分かってるよ、ふぁ~…」

うつらうつらと返事する様相は、何処か危うげな雰囲気を漂わせる。
そんな時だった。

「丁度此方で、特異点から来訪する龍を捉えた。」
「…何だって?」

寝耳に水、とはこの事か。
緩んだ表情を引き締め、彼等の視線の先を見据えるビルス。
映るのは、彼方より来訪してくる影。
よく見れば、龍の姿をしていた。

「遂に来たか、特異点からの使いが。」
「そうですね、いよいよ本格的にあの世界の行く末が決まるのでしょう。」

そう会話を交わしている間に、既に龍の姿がハッキリ見えるまでに迫っている。
全長は、少なくとも20mはあるだろうか。
翼を広げ、大気の抵抗をものともせずに悠々と飛翔する姿は、正に神秘的だ。
そして、最も目を惹くのは、その背に乗る人影だ。
一見、只の人間に見えるが、ならば成層圏を抜けられる筈も無し。
ましてや時の巣になど来られる訳も無く。
彼、或いは彼女が、超常の類いなのは、火を見るよりも明らかだった。

「さぁ、僕を楽しませてくれるかな…?」
「さて、それは相手の出方次第だろうな。」
「穏便に済むと良いねぇ~。」
「座して待つのみだ。」

超常者4人が、来訪を待ち受ける。
そうして、龍が時の巣へと侵入する。

『_300万ボディ、届いたーーーっ!』
「…へっ?」
「300万…?」

同時に、神秘感は崩れ去った。

13人目

「博麗神社から世界へ」

「此方スネーク、聞こえるか?」
「……ザザッ……。」

 しかし、うまく電波が通じない。
 難しい顔を浮かべる4人。

「おかしいな……八雲紫がパスは開けているから通じるはずなんだが……。」
「もう一度やってみたらどうですか?」
「そうだな……。」

 ここで諦めるわけにもいかず、スネークはもう一度通信機を起動させる。
 ダイアルを回し、周波数を合わせながら通信を開始する。

「此方スネーク。誰か応答してくれ。」
「ザザッ……きこ……か……?」
「ん?」

 ノイズの奥で、男の声が聞こえる。
 しかしそれはオセロットではなく、別の男の声だった。

「……こち…燕青、聞こえ…すか?」
「燕青か。成功したようだ。こっちは聞こえるか?」

 流星旅団の同志燕青が通信に出たようだ。
 一応は成功したようだが。

「ノイ……じりだが、頭で…完で……くらいには聞…えるぜ。オセロット氏……用事…いな…ぜ。」

 距離と結界を隔てているせいか、ノイズ交じりでよく聞こえない部分がある。
 しかし通信自体に問題はなさそうだ。

「分かった、ありがとう。通話を切るぞ。」

 通信を終えたスネークは、依然難しい表情をする。
 通信機を見つめながら、下唇を親指と人差し指で挟む。

「ノイズ交じりか……。」
「間違って伝わったら大変なことになりそうだな。」
「そう、ノイズが走っていると重要な情報がうまく通じないという懸念点がある。うまく伝わらないと作成行動に支障が出るからな。こいつの改良も重要になってきそうだ。」

 そう言って、スネークは通信機をポンポンと優しく叩く。

「幻想郷に機械いじりが得意な技術者っているのか?魔理沙。」

 月夜の質問に、魔理沙は即答する。

「ああ、1人いるぜ。河城にとりってやつがな。」
「そいつはどこにいる?」

 幻想郷随一のメカニックである『河城にとり』なる人物、ないしは妖怪。
 この人物がどういう素性なのかも聞いて見ると。

「あいつは人間が好きだからな、でも人見知りだし、妖怪の山ってところにいるけど……道が補修されているとはいえ人間の身じゃ危険だしなぁ……。何なら、呼んでこようか?」

 などとどうするかについて話をしていた、その時だった。

「ただいまー……ってちょっと、そこで何してんのよ!」

 紅魔館から霊夢たちが帰ってきた。
 霊夢は、神社に鎮座されたコンテナを基地みたいに改造されたので憤っている。
 ただでさえ内心コンテナの処理に困っていたのに、こんな風に基地みたいにされてしまったらさらに困っているのだ。

「外の世界と通信したりするために置いたんだ。終わったら片付ける。」
「そこまで言うなら……。」

 内心呆れつつも、霊夢はコンテナのベース化を認めた。
 その後、全員はそれぞれの情報をまとめるために話し合いを始めた。



「で、紅魔館で何か分かったことは?」
「間欠泉センターってところに悪霊が集まっているってことと、妖怪の山にある『守矢神社』に謎の男がいるってくらいね。」
「ソロモンの指輪は?」
「レミリアって奴が持っていて渡す事は決まったけど、今はまだ渡せないそう。」
「そうか……。」

 紅魔館で集まった情報は決して少なくはない。
 それどころかソロモンの譲渡の約束まで取り付けてくれた。

「霊夢、じつはな……ここにも悪霊が出たぜ。」
「嘘ッ!?」

 魔理沙が霊夢に、博麗神社で起きた出来事を話す。
 その内容にさすがの霊夢も驚きを隠せない。

「もう安全地帯はなさそうね……黒幕を倒さない限りは。」
「あの時は何とか俺達で追い払ったが、今後ここにも守衛が必要になるな。」
「ちょっと待って、魔理沙さんはともかくとして、兄さん……どうやって追い払ったの?」

 彩香からの問いに、月夜は敬意を込めてその経緯を話した。

「魔理沙さんに、ボウガンを改造してもらったんだ。今なら悪霊とか弱い妖怪とかなら倒せると思う。」
「ふふん、感謝してくれよな!」

 魔理沙の支援により、ボウガンを改造してもらった月夜。
 彼はもう、ただのお荷物ではない。自身の生存と誰かを守るという目的のために大勢の人たちに協力してもらいながら、少しずつ強くなっているのだ。

「俺だってじっとしてられないんだ。お前たちを守るためにも、な。」
「そうか……良かった。」

 兄の成長に、何処か泣きそうになる彩香。
 と、その時神社のふすまを勢いよく開ける音が。

「そっちも妖怪の山か。いつ出発する?俺も同行するぜ!」
「そうね同行するなら……って、はぁ!?なんであんたがいるのよ、ナポレオン!!」

 ふすまの奥にいたのは、燃える太陽が如き快男児。
 紅魔館からやってきた英霊、ナポレオンだった。

「レミリアの嬢ちゃんから『霊夢たちについていってやれ』って言われてな!まっ、よろしく頼むぜ!」

 呵々と、炎のように笑うナポレオン。
 その明るさもそうだが、何よりも歴史上の人物でしか見たり聞いたりしたことのないナポレオンという存在に月夜が驚く。

「な、ナポレオン?本物の?」
「おう、俺は本物の英雄ナポレオンだ!」
「……卒倒しそうだ。」

 月夜くん 卒倒するまで あとわずか 詠み人知らず

14人目

「不老不死を巡って・徐福とガーリックJr!」

 メメントスの中枢……CROSS HEROESとカルデアの面々の記憶の奥底に眠る
強敵たちとの記憶が、実体を伴なって顕現する。

「ぐはははははははは……!!」

 巨大化したガーリックJrが笑い声を上げながら、両腕を振り上げ突進してきた。

「来るぞッ!!」
「ぜええええあッ!!」

 大振りの一撃をバックステップで避わすピッコロ。掠っただけで道着が裂ける。

「ぬおっ……!?」
「ちぇああああああああありゃッ!!」

 悟空が右側面から地面を蹴って突っ込む。

「見えているぞッ!!!」

 だが、ガーリックJrは右腕を素早く振るいその身体を叩き落とした。
悟空は地面に激突し砂埃が上がる。

「ごはっ……」
「孫! おのれぇ……!!」

 ピッコロが間髪入れず、正面から攻撃を仕掛ける。

「でぇありゃりゃりゃりゃりゃッ……ほおおおおッ!! でぇやったァッ!!」

 拳打の嵐。連携からの肘打ち。ダメ押しのハイキック。
だが全てガーリックJrはその分厚い筋肉に覆われた鋼の肉体を以って
余裕の表情で受け止める。

「ふへへへ、それで終わりか?」
「こいつッ……!?」

 次の瞬間、ガーリックJrがニヤリと笑う。
そしてその口から大規模な破壊光線を吐き出す。

「ごばああああああああああああッ!!」
「ぬうッ……おわああああああああああああああッ……」

 両腕を十字に組んでガードしたが吹き飛ばされる。

「ぐわはッ……!!」

 壁にまで押し込まれ、大きなクレーターが出来上がった。

「ぬ……お……!!」

 ぶすぶすと体から煙を燻らせながら、地面に落下したピッコロ。

「ピッコロ!! この野郎ーッ!!」

 片手ブリッジで起き上がり、超スピードで移動して背後を取る悟空。

「界王拳んんんんんんんんんんんんんんんーッ!!」

 真っ赤なオーラを身に纏い、戦闘力を倍加させてラッシュを仕掛ける。

「だりゃりゃりゃりゃりゃッ!!」

 ガーリックJrは防御も回避もしようとせずただひたすらに攻撃を受け止める。

「どうした? そんなものか?」
「くっそーッ!!」

 攻撃の最中に割り込み、悟空の頭を鷲掴みにする。

「おわっ……!!」
「そぉぉぉぉうりゃあああああああああッ!!」

 そのまま悟空の顔面をホームの壁に押し付けながら走り続ける。
壁がズタズタに崩壊してゆく。

「ぐはははははははははははは!! もがけ、苦しめ!!」
「うわぎぎぎぎぎぎッ……!! どわああああああああああああっ……」

 顔を引き裂かれるような痛みの中、必死でもがくが、
ガーリックJrはその手を決して離そうとしない。
やがて、壁を突き破り瓦礫に埋もれる悟空。

「ふふ、他愛も無い。二人がかりでこのザマとは!」
「馬鹿な……! いくら何でも俺たちが知るガーリックJrとはまるで桁が違う……!」

 ピッコロが身を起こし、驚愕の色に染まった眼差しをガーリックJrに向ける。

「何なの、あの怪物は……あんなのさっさとやっつけちゃえばいいじゃない!」

 身を潜めていた徐福がしれっとピッコロの近くにやって来て、
道術による治療を施しながら愚痴を零す。

「お前……こんな事が出来たのか……」

 すっかり塞がった傷を見て、ピッコロは徐福の意外な一面を知り唖然とする。

「まあね。伊達に不老不死の研究をウン千年も続けてきた訳じゃないってね」
「不老不死……か」

 かつて、ガーリックJrはドラゴンボールによって不老不死の命を手に入れた。
何事があろうとも死ぬ事の無い肉体。だが、幼少期の悟飯の潜在能力によって
一寸の光も差さない闇の牢獄「デッドゾーン」へと叩き落とされてしまった。
出口の無い永遠の暗闇の中でどれだけ死を願っても叶う事も無い。
それは終わる事無き地獄の責め苦であるのだろう。
本物のガーリックJrは今現在もそうやってデッドゾーンの奥底を彷徨っているのだ。

 対して徐福は信奉している仙女・虞美人の不老不死の力を殺すべく、
弟子達を連れて日本の山奥で不老不死に関する研究に没頭していたと言う逸話が
数多く残されている。
不老不死を望んだ者と、不老不死を疎んじる者。この巡り合わせは果たして偶然だろうか。

「ぬう……? ピッコロが復活した……?」

 念入りに痛めつけてやったはずのピッコロが再び立ち上がってくる……
その光景を目の当たりにして、流石のガーリックJrも僅かに動揺を見せた。

「大人しく寝ていればよかったものを……」

 しかしガーリックJrはすぐに平静を取り戻し、再び戦闘態勢に入る。

「わ、来た。そんじゃあ、そゆことでー。そそくさー」

 ガーリックJrがこちらに気を取られている隙を突いて、こっそりその場を離脱する徐福。
サポート能力に関しては一目置かれる存在である彼女であるが、
こと戦闘に関してはまったくの素人である。

「ててててぇ……力任せに暴れ回りやがって……おー、いちち……」

 悟空も瓦礫の中から脱出を果たし、ふらふらと立ち上がったところだった。

「ガーリックよぉ。おめぇ、しばらく見ねえ内にとんでもなく強くなってんじゃねぇか。
オラぶったまげちまったィ」
「そっちもか……くくく、まだまだ楽しませてもらえそうだな……」

「正直、舐めてかかっていたらしい……こっちも本気でやろう」

 気を高める悟空とピッコロ。

「ふおおおおおおおおおおおおおおおお……!!」
「はああああああああああああああああ……!!」

「いいぞ、そうでなくてはな! くははははははははははははははは……!!」

15人目

「激闘!黒平安京!」

「行きましょうハルキさん!」
「押忍!」

「未来を築く、希望の光!」
『ご唱和ください我の名を、ウルトラマンゼェエエエエエエット!』
「「ウルトラマン!トリガァアアアアアアアアアアアア(ゼェエエエエエエエエエエエエット)!!」」
《ウルトラマントリガー!マルチタイプ!》
《ウルトラマンZ!アルファエッジ!》
ケンゴとハルキはウルトラマントリガーとウルトラマンZへと変身し、鬼獣に立ち向かう。

「よし、ガッツファルコンも発進だ!」
ナースデッセイ号の船体下部にドッキングされたガッツファルコンが分離し出撃、ナースデッセイ号と共に鬼獣へ攻撃を仕掛ける。

「死にやがれ!晴明!」
竜馬の乗るゲッターロボはゲッタートマホークで晴明をぶった斬ろうとする
「フン!」
がしかし、晴明は結界のようなものを生成しゲッタートマホークを防いだ。
「チィ…!相変わらず面倒な力を使いやがって…!」
「おっと、我にばかり構ってられるほどの余裕がありますかね?」
「グギャアアアアアアアアア!」
「っ!」
後ろから襲って来た鬼獣の攻撃をゲッタートマホークで防ぐ。
「テメェ…!邪魔すんじゃねえ!」
竜馬はそう言いながら攻撃してきた鬼獣を思いっきり殴り飛ばした。
「竜馬、敵の数が多すぎる。まずは鬼共を減らすぞ」
「チッ、仕方ねえ…いくぜ!」
竜馬達の乗るゲッターロボはまずは邪魔な鬼獣達を倒すことに決め、ゲッタートマホークで鬼獣を次々と切り裂いていく。

「デェアアア!」
「デュワ!」
トリガーとZによるダブルキックが鬼獣に炸裂する。
「ギャオオオオオオオオオン!?」
「よし!」
二人のウルトラマンのキックにより後ろへ倒れた鬼獣にZが追撃しようとするが、
「ギャオオオン!」
「デュワッ!?」
空から襲ってきた鳥形と円盤形の二体の鬼獣からの攻撃を受けてしまう。
『大丈夫ですかZさん!?』
「いった!?痛いよぉ…!?あの怪獣、完全に腰を正確に狙ってきたであります……」
『……すいませんZさん、あれ怪獣じゃなくて鬼らしいです』
「え?あ、マジ?」
「キシャアアアアアアアアアッ!」
『ハルキさん、あの空を飛んでるのは僕がなんとかします』
『すいませんケンゴくん、頼みます!』

《ウルトラマントリガー!スカイタイプ!》
「デュワッ!」
トリガーはスカイタイプへとタイプチェンジし、空へ飛び立った。

「よーしハルキ!ちょっとまだ腰が痛いでありますが、こっちは地上の鬼を相手するぞ!」
『押忍!』
トリガーが空の鬼獣と戦う間、自分達は地上の鬼獣を倒そうとZとハルキは意気込んだ。

16人目

「怪物と英雄、地を駆ける女帝」

「ヌウウウウウンッ!!」

 ジャイアントジオングが右手を伸ばし、バーサル騎士ガンダムを掴み上げる。

「うおっ、しまったッ……!」
「ふははっ! このまま握り潰してやる!」

「ぐあああああああッ……」

 バーサル騎士ガンダムが締め付けられ、苦悶の表情を浮かべる。

「……ッ!!」

 メドゥーサがジャイアントジオングの腕の上に飛び乗り、鎖付きの短剣を突き刺した。

「ぐおッ!?」

 冴えた痛みが走り、バーサル騎士ガンダムを手離すジャイアントジオング。

「か、かたじけない……」
「気にしないで」

 メドゥーサは微笑んで答えた。両目を覆うバイザー。
それが邪魔をして表情は読めないが、どこか頼もしさを感じる。

「ぬううううううッ……!!」

 頭部に生えた角を引き抜き、ブーメランとして投擲するジャイアントジオング。
メドゥーサとバーサル騎士ガンダムはそれを回避し、すかさず反撃に移った。

(英雄に討ち果たされるべき悲しき怪物……私もさして違いは無いのかも知れない……)

 メドゥーサは自分の過去を想っていた。
ギリシャ神話において、ポセイドンの寵愛を退けた事による怒りを受けたメドゥーサは
怪物に成り果てる呪いを受け、名もなき島に追いやられたものの、
女神である2人の姉と共に静かに暮らしていた。
しかし、女神の権能を求めて島にやってくる人間達を手にかけていく内、
身も心も完全なる怪物になってしまった彼女は、やがて最愛の姉たちの事さえも
分からなくなり、ついには……

「オオオオオッ!!」
「!!」

 物思いに耽っていたその時、ジャイアントジオングの指先がバルカン砲に変形し、
その砲口がメドゥーサに向けられていた。

「しまった……!」
「これでトドメだぁッ!!」
「ッ!!」

 メドゥーサに向けて無数の弾丸が放たれる。その時、

「危ないッ!!」

 バーサル騎士ガンダムがシールドをかざして彼女を守る。

「な、何故……私などを庇って……私とて、あの怪物と紙一重の存在……」
「貴女が私を守ってくれたように、私もまた仲間を守ろうとしただけだ」

 バーサル騎士ガンダムは静かにそう答える。

「……」

 そんな彼の言葉を聞いている内に、メドゥーサは不思議とその表情を綻ばせる。

(この人は私の事を怪物ではなく、1人の『人』として見てくれているのか……
ならば私はせめてもの礼として、この人に力を貸したい……共に戦おう……)

「行きます……!!」

 血の魔法陣を浮かび上がらせ、翼の生えた天馬を召喚する。

「ヒヒィィィィィーンッ!!」

「この仔の背中に。騎士よ、私が援護します」
「ありがとう! はっ!!」

 2人が話している間に再び動き出したジャイアントジオング。
メドゥーサを狙っていたバルカン砲をバーサル騎士ガンダムに向け直し、
至近距離から発射しようとした瞬間。
天馬に跨ったメドゥーサとバーサル騎士ガンダムの姿が消えていた。

「消えた!? どこへ行ったのだ!?」

 動揺するジャイアントジオングの上空から、メドゥーサの声が聞こえてきた。

「終わりです……! 騎英の手綱【ベルレフォーン】ッ!!」

 逸話において英雄ペルセウスにメドゥーサがその首を撥ねられた際に
飛び散った血から生まれたとされる天馬。そして騎乗する事が出来る物であれば
如何なるものをも御し、その力を高める事が出来る宝具たる黄金の鞭と手綱で以って
天馬を駆り、見上げるジャイアントジオングへと攻撃を仕掛ける。

「ぬおおおっ!? おのれぃ!!」

 ジャイアントジオングは両手をロケットパンチのように次々と飛ばし、
天馬を打ち落とそうとする。
だが、ペガサスは巧みにそれを掻い潜りながら突っ込んでいく。

「今ですッ!! 必殺の剣を……!!」
「ああ!!」

 バーサル騎士ガンダムが天馬の背から飛び降り、バーサルソードに闘気を込め始める。

「我が心、正義と共にあらんことを……でやああああああああああああああーッ!!!」

 闘気が刀身を包み込み、その長さを伸ばしていく。それはまるで超巨大な剣。

「バ、バカなッ!? 巨大化しただとォッ!?」
「はあああああああッ!!」

 メドゥーサを乗せて突撃した天馬がジャイアントジオングの腹を貫通したのと
ほぼ同時にバーサルソードを振り下ろし、
ジャイアントジオングを脳天から真っ二つに斬り裂く。

「ぐほおおおっ、こ、こんな事が……ッ」
「さらばだ、ジャイアントジオング!」

「ぐっ……くくく、だが、騎士ガンダム……貴様はあの御方に……
ネオブラックドラゴン様には勝てぬぞ……!!」
「いや、勝つ。勝って見せる。それこそが、私の使命だ」


「うわあああああああああああああああああッ……」


 ズドオオオンッ!!!
断末魔の叫びと共に爆発四散するジャイアントジオング。

「やった……」
「くっ……」

 マスターの魔力供給の無い状態では、宝具を連発する事は出来ない。
一度限りの切り札を使い果たしたメドゥーサは膝をつく。
たった一度の奇跡を、バーサル騎士ガンダムのために捧げたのだ。

「大丈夫か?」

 バーサル騎士ガンダムが駆け寄り、メドゥーサの身体を肩に担ぐ。

「ええ……なんとか……」
「よかった。さあ、行こう」
「……はい……貴方たちに勝利を……」

「it@ru! kbor@b\p! b\dzhp!」
「はっ……!」

 ジャイアントジオングを倒したのも束の間、消耗した2人をラフムが取り囲む。

「くっ……ここまでか……!!」

 万事休す。メドゥーサがそう思ったその時。

「ヨハンナッ!!」

 女教皇の上半身がマウントされた大型バイク型のペルソナに跨って、
クィーンがラフム達を轢き潰しながら駆けつけて来た。

「ッ!!」
「助太刀するわよ!」
「感謝する!」

「そのバイク……」
「はい?」
「少し……興味が……」

 ライダークラスで現界した影響か、メドゥーサは高速で走る乗り物に興味を
持つようになっていた。

「そ、そうですか……これは私のペルソナなんですが……
それより、奴らを何とかしましょう!」
「え、ええ……」

「3qode 5mkq@! 7zm b\p!」

 ぞろぞろと集まり始めたラフムを前に、クィーンとメドゥーサ、
バーサル騎士ガンダムが構える。

「2人とも、目を閉じて! 金剛発破ッ!!」

 クィーンが叫ぶと同時に、ラフムたちの頭上に眩い光の塊が現れ、
次の瞬間には弾け飛んで大爆発を引き起こした。

「g@73333333333333!!」

 千々に砕け散り、黒光りするその甲殻ごと焼かれていくラフムたち。

「ふん、密集していたのが運の尽きね」

 格闘技のみならず、複数の敵を一度に攻撃する全体攻撃を数多く持ち合わせるのが、
クィーンの長所だ。

17人目

「幻想郷調査 壱:間欠泉の大穴」

 翌日 幻想郷

 手分けして幻想郷の謎を解くことになった霊夢たち。
 先日レミリアが言っていた『間欠泉センター』と『妖怪の山』に向かう組と、物資などを調達するために『人間の里』に向かう組、そして博麗神社を守衛する組に分かれての行動だ。

『こちらゆかりん、聞こえます?』
「こちら彩香。充分聞こえます紫さん。どうぞ。」
『つれないわねぇ……。』

 博麗神社にて、スネークが設置した無線機で通信をするゆかりんこと八雲紫。
 その性質上外の世界の文明に触れることが多い彼女だ。その操作も手馴れている。

 間欠泉に向かうのは霊夢、ペル、彩香、月夜、そしてナポレオンの5人。
 彼女たちの目的は「間欠泉の調査」と「妖怪の山にいる『河城にとり』なる人物、ないし妖怪との接触」、そして「守矢神社に最近現れたという謎の男との接触」。
 手始めに、彼女たちは間欠泉へと向かうことになった。

「段々暑くなってきたな。」
「そろそろね……!」

 6人は身構える。
 レミリア曰く、間欠泉は悪霊がよく出る区域。
 であるのならば、当然悪霊に対して警戒するのは必然。

 ―――しかし。



 間欠泉前

「ここが……間欠泉?」
「間欠泉、ってよりかは……」
「ただの大穴だな。逆に壮観だが……。」

 普通、蒸気ないしは温泉が吹き出ているはずの間欠泉。
 しかしてそこにあったのは――――見るも壮観な、巨大な大穴だった。
 ナポレオンですら壮観だという穴。

「普通間欠泉ってアレだろ?温泉が噴き出ているとかいう。」
「ああ、温泉宿を建てるにしては不釣り合いな大穴だが。」
「にしてもおかしいわね。前までこんな孔なんかなかったはずなのに……。」

 ナポレオンと月夜の言っていることは正しい。
 ふつうここには温泉が噴き出ているはずなのだ。しかし現実問題としてここには巨大な穴が口を開けている。
 直径にして30メートルはありそうなほどの大きさ。光を当てても底が見えない点を見ると、深さは相当にありそうだ。

 底無き奈落へと通じる大穴を前に、霊夢は訝しんでいた。

「で、ここから例の『悪霊』が湧いてくるって話だったはずだけど……あいつの情報に間違いでもあったのかしら。」
「悪霊の影すらない。変だな。」

 悩みだす霊夢。
 確かに、間欠泉の周辺には悪霊の『あ』の字すらない。

「黒幕側が仕掛けたダミーの可能性とかは?」
「この穴が偽物ってこと?それは……可能性としては充分あるわね。地霊殿のあいつらなら何か知っていることあるかしら……?」
「地霊殿?」
「幻想郷の地下にある、今は使われていない地獄よ。そこにいる連中ともちょっと前に戦ったのよ。」

 目頭を押さえつつ、霊夢は過去に起きた戦いを語る。
 その苛烈な内容は『あの時の戦いは本気で苦戦』した、と言わんばかりだった。

「心を読む妖怪、か。私みたいだな。」
「それで嫌われているのよ。その子。」
「でも、すごいな……霊夢さんはいつも、そんな連中と戦っているの?」
「1年に数回のペースで起きるからね……私だって休みたいときは休みたいんだけど、ここじゃ妖怪も神様も人間も身勝手だから。身勝手な人間なりに、誰かが止めないといけないのよ。」

 気苦労が絶えないと言わんばかりの台詞を吐きつつも、その顔にはかすかな笑みが浮かんでいる。
 笑みの正体は、歴戦の戦士としての余裕か。

「とにかく、ここは保留ってことにしておきましょう。」
「そうね、現状ここが『悪霊の巣』ってことではなさそうだ。妖怪の山に向かおう。」

 かくして、霊夢たちは間欠泉の大穴を後にした。



「へっ、あいつら変に悩んでやんの。そのまま苦しみすぎて窒息すればいいのによもう。」

 霊夢たちの背後を、一人の妖怪が悪辣な目で見ていた。
 どこか他人の不幸を嗤う天邪鬼な物言いは、一体。

18人目

「羅生門、突破/イマジン・チェンジ・フィーバー」

「頼光サン! 行くぜ!!」
「ええ、金時!!」

 坂田金時と源頼光が同時に宝具を展開する。

「牛王招来・天網恢々ッ!!」

 頼光の力の根源である牛頭天王の権能を以って、頼光四天王の魂を再現。
渡辺綱、卜部季武、碓井貞光、坂田金時……彼らが携えた武具を次々と召喚し、
黒平安京への進行を阻む羅生門へ向けて一斉掃射する。
放たれた弓矢や銃弾がまるで吸い込まれるかのように、1発たりとも外れることなく、
すべて正確に撃ち込まれ、破壊していく。

「あの羅生門はアルターエゴ・リンボの呪術によって作り出されたモノ……
つまり物理的にではなく、我らのような神秘殺しの業にて打ち砕くことでしか、
突破できません。合わせなさい、金時、綱!!」

「御意に……!!」
「合点だ!!」

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前――」

 九字を切り、鬼切の刃に霊力を込めた綱が羅生門へと飛び込んでいく。

「はあああああああッ!!」

 一方の金時は、復活した黄金喰いをフル稼働させ、
巨大な羅生門の頂に届くまでの跳躍で大きくジャンプする。

「大江山・菩提鬼殺ッ!!」

 その昔、渡辺綱が茨木童子の腕を断ち切った際の一撃が、
怪異殺しの宝具にまで昇華されたもの。この世に蔓延る悪鬼を断ち、
焼き尽くす浄化の炎を纏った一太刀が羅生門を横一文字に両断した。

「行け! 金時!」 
「道は拓きました!」
「任せときなッ!! 吹き飛べ、必殺!! 黄・金・衝・撃!!」

 そこに黄金喰いを両手持ちで振り下ろす金時が、
羅生門を真正面から縦に叩き割っていく。
まさに、天を裂く「神鳴り」が如き轟音が響き渡る。

「やったッ……!」

 綱、頼光、そして金時による見事な連携プレーで、ついに羅生門は崩れ落ちた。

『あの真っキンキンの男、やるやないか! 泣けるで!!
俺のダイナミックチョップもかくや、っちゅう所やな!』

 電王の背後を飛び回る、巨漢の熊イマジン。キンタロスだ。
坂田金時とキンタロス。奇しくも童話「金太郎」をモチーフにして生まれたキンタロスと
その原典である金時がこの黒平安京で集ったのだ。

「おわっ、びっくりしたァ! 急に出てくんじゃねえ、クマ公!!」

 キンタロスの大きな声で、敵襲を疑ってしまった電王は
おっかなびっくりした様子で吠え立てる。

『モモの字、俺に代われ!! こんな戦い見せられたら、じっとしてられん!』
「おい、やめろ……わあああッ……」

 キンタロスはモモタロスを追い出し、フォームチェンジする。

【AX FORM】

 アーマーが展開し、パワータイプの電王・アックスフォームへと変わった。

『――むんッ!!』

 首をコキリ、と鳴らし、デンガッシャーもソードから手持ち斧へ。

『てめえ、勝手に変わってんじゃねえ!!』
「もう十分暴れたやろ、お前ばっかりズルいで!」

 今度はモモタロスが実体を失い、電王アックスの周りを忙しなく飛び回る。

『くうう~っ、これからが本番だっつうのによォ!!』
「諦めてデンライナーん中でコーヒーでも飲んどれ!」

 モモタロスとキンタロスが言い争いをしてる中、羅生門が崩れた事で
安倍晴明が待ち受ける黒平安京への道が拓けた。

「ようし、これで中に突入できるぞ!!」
「安倍晴明は都の奥です! 突撃!!」
「はっ……!」

 頼光の合図で一斉に駆け出していった一同。
しかし、一行の前に突如として現れた無数の骸骨兵士と髑髏武者の群れ。
彼らは手に持った槍を突き出しながら、凄まじい勢いで迫ってきた。

「早速出て来おった!! 俺の強さにお前が泣いたッ!!」

 電王アックスフォームがすぐさま、迫りくる敵に応戦、
骸骨兵士たちを次から次へと倒していく。だが、骸骨たちは数が減ることなく
次々と現れてくる。
頑強な装甲は、骸骨達の攻撃をものともせずに強引に薙ぎ払っていく。

「ははは、こそばゆいで!」
「数が多い……私が行きますッ! ストラーダ……! フトゥーロッ!!」

 いろはのマギア……天に放たれたボウガンの矢が、光を纏って雨のように降り注ぐ。

「ギャアアアアッ!」
「グゥアアッ……!」

 いろはが光属性であるならば、骸骨兵士たちは言わずもがな闇属性。
対となる属性によって、瞬く間にその軍勢が消滅させられていく。

「環さん、凄い……!」
「属性には相性がある……火には水、闇には光……シャドウと戦った時に分かったんだ」

 クォーツァー・パレスでの戦い……敵との相対において、
最も重視すべきなのは己の武器や技をどう活かすかということ。
敵の情報を知ることこそが重要だと知った今、いろははまたひとつ強くなったのだ。

「やるねぇ、お嬢さん。強く、そして美しい……」
「えっ……? また、変わった……」

 いろはの手を取る電王の姿は、また変わっていた。
電王ロッドフォーム。女の子に目が無く、ナンパ性で言葉巧みに人を惑わせる
嘘つきの亀イマジン、「ウラタロス」が憑依したものだ。
キンタロスが気づかぬ内に電王の主導権を乗っ取るのもお手の物。

『あーっ、いつの間に!! まったく気づかへんかった……』
『このスケベ亀!!』

「おっと、タチの悪い悪霊がいるみたいだ」

 長槍形態のデンガッシャーでモモタロスとキンタロスの幻影を払うように振り仰ぐ。

『ぎゃあああああああっ』

 邪魔者たちを霧散させ、いろはにぐいぐいと迫る電王ロッド。

「あ、あの、その……」
「さあ、もう大丈夫。それじゃあ、楽しいおしゃべりの続きを……」
「おい」

 ディケイドに後ろから尻を蹴られ、いろはから遠ざけられる。

「ぁ痛ッ、ちょっとちょっと、レディの前でそう言う粗野な振る舞いはやめてもらえる?」
「そんなものは戦いが終わった後にしろ」

(ド、ドキドキした……)
「良くわからないけど、いろはの教育に悪そうな気配がするわね……」

 やちよはいろはを背に隠し、ウラタロスを警戒した。

「わぁお、こっちのお嬢さんもトレビアン。選り取り見取りって奴?」
「二度も言わせるな」

「はいはい、分かってますって。さっさと終わらせてよね、センパイ。
戦いで汗かくのとか嫌いだからさ。僕の本番は、その後で……また後でね、レディたち♪」

 ディケイドがブッカーガンに手をかけるのを悟るなり、
ウラタロスはモモタロスに再び主導権を移譲した。

「……ったく、くだらねぇ事に時間使いやがって!」
『ねえねえ、何か面白そうな事やってるね! 僕も混ぜて!』

「げ!? 今度はお前かよ、鼻垂れ小僧!!」
『僕も行くけどいいよね? 答えは聞いてない!!』

 モモタロスが復帰したのも束の間、今度はイマジンの最年少、リュウタロスが乱入して
電王ガンフォームとなる。

「わ、何かいっぱいいる。何してんの、アンタたち?」
「忙しいな、こいつ……」

 ダンスとお絵描きが好きなリュウタロス。イマジンが憑依する度に
人格とフォーム形態が丸ごとガラリと変わってしまう。それが電王の特色だ。

「ウウウウウ……」
「あいつら、倒せばいいの? ゾンビゲームみたいで、楽しそう!」

19人目

「追憶:憶測は確信へ昇華する。」

白、白、白。
漂白された様にまっさらな白い大部屋。
天井が見えない程の大広間だ。
にも拘らず隅々まで潔白な雰囲気を感じさせる、ある種の矛盾が成立した空間。
只人が見れば、真っ先に病院の待合室辺りを思い浮かべるだろうか。
そこに置かれているのは、穴開きの仕切り板にポスターが幾つか。
その周囲に人影が犇き、それぞれが声を上げている。
普遍的な外着を着た彼等の顔に張り付く表情は、歓喜に満ちている。
口々にする言葉もまた、感嘆に満ちた物ばかりだった。
曰く、これで幸せになれる。
曰く、不幸はもう無い。
質の悪い宗教か、或いは洗脳でも施された様に、恍惚とした声色で繰り返す。
そんな異質な空間を、異色が横切る。
純白の大部屋を駆ける四人組。

「_ここも、異常だな。」
「みーんなじぃーっと紙なんぞ見て、どうなっとるんじゃ?」

誰あろう、このパレスに潜入したジョーカー達であった。
一先ずとばかりに入った大部屋の光景を見て、異常と評したジョーカーとキン肉マン。
パレスは人の心情風景と言える世界なのだが、数々の認知世界を攻略してきた彼等の観点からも、異質と言える物だった。
認知世界での人々という者は、大抵がパレスの主にとって都合の良い見方をされた存在だった。
奴隷であったり、金のなる木だったり。
それがこうも一様に、現実逃避し幸福を求める様を見せられるとは。
今こうして見ている最中にも、大部屋に居る人達は歓喜の声を上げている。

「おぉっ! 何と、素晴らしい!」
「おお、ああ、あぁ!」
「神様、神様、ありがとうございます!」

一人、また一人と、何かを見た人々が歓声を上げる。
まるで、何かを見出して喜んでいるかの様に。

「皆喜んでいますね。余程良い事があったのでしょうか?」
「さて、どうだろうな。」

盲目的に喜ぶ人々を見てそう零すとミート、訝し気なモナ。
確かにパレスの深層心理として、主が望む光景を見せる事がある。
しかし、ならばこれは何を指し示しているのだろうか?
少なくとも、この場にいる人間は正常じゃない。
モナの心中が困惑に染まる。

「パレスの主は、コイツ等をどう認知しているんだ…?」

宗教の主として単に従順な教徒と見ているのか、或いは科学の実験に使う無垢な材料と見ているのか。
それとも、もっと別の何か得体の知れない産物なのか。

「どれどれ、何が書いてあるんじゃ?」

興味深げに、キン肉マンが貼られたポスターを見る。
見出しには、心が幸せになる法則。

「_ゲッ!」
「どうだ、キン肉マン?何か分かったか?」

暫しの熟読の後、目を剥いて驚愕した。
それも当然、そのポスターには。

「…難しい漢字が多くて分からんわい!」
「だぁっ!!」

思わずズッコケるジョーカー。
読めない、つまり理解していない事がモロバレである。
呆れ果てた様子で、代わりにジョーカーがポスターを読み上げる。

『人は幸福になる為に、様々な手段を用いる。しかしその方法を「知る」「得る」「感じる」の三つだけしか知らない。また四つ以上知っていても、その全てが中途半端になっている、というのは非常に危険な状態だ。誰かの幸福を犠牲にするかもしれないし、空回って己の幸福を見失うかもしれない。もしその全てを知り実行する手段を得た時、貴方は必ずや幸福になれる。』

大雑把に読み取れたのは以上の内容だ。
これ以上は専門用語が多く、ジョーカーにも意訳が難しい代物となっている。

「知る、得る、感じる、か。中々面白い事を言っているじゃねーか。」
「成程、そういう内容でしたか。それにしても、何だか胡散臭いですねぇ。」

このポスターの内容をどう捉えたのか、各々の意見を言うモナとミート。
キン肉マンはオーバーヒート状態だ。
対して、ジョーカーは難しい顔のまま黙り込んでしまった。

(なるほど、これは確かに厄介なネタだな。)

最初、パレスは幸福を得る為に必要な情報を引き出す為の、一種のカウンセリングの様な機能を果たしていると想定していた。
だが、このポスターの内容を踏まえると、違う意図も感じられる。
例えば、洗脳等による幸福誘導を疑うべきだろう。
幸福は誰もが求めるもの。
それを他人から与えられれば、例えそれが偽善であっても、信じてしまうものだ。
ましてや、パレスは認知世界。常識など通用しない世界。
こんな怪しげなポスターの内容も、認知世界に存在する以上は、現実に何かしらの手段で実行できるという事だ。
何らかの方法で、人の幸福を誘導する。
そんな可能性を考慮すると、一筋縄ではいかない相手だという事になる。
_何より。

(認知訶学…)

専門用語の羅列の中に合った単語の一つ。
それが、ジョーカーの胸にどうしても引っ掛かっていた。
彼の転校生活の中で、短いながらも太く強い絆を紡いだ間柄だった"彼"の存在が、頭を過ぎったからだ。
_パレスの主は。
まさか、とは思っている。
論理的に正しいと感じる自分がいて、それを否定したい自分もまたいて、所謂疑心暗鬼に陥っている。
彼を疑いたくはない、だが真に信じるなら疑わなければならない。
突き当たった疑惑にたじろいで、身動き出来ないのが今の心境だ。
出来る事なら、全てを投げだしてしまいたいとも思っている。
恐怖が、ジョーカーの喉物を緩やかに締め付ける。

(_それでも。)

それでも、確かめなければならない。
知らなくてはならない。
真に信じたいと思うならば、尚更疑うべきだと。
仮に赤の他人なら、何の呵責も無く改心を促すのみ。
だがもし彼が、本当にパレスの主ならば。
それこそ、友として自分が止めなければならないと、確信しているから。
刹那の悩みの果て、ジョーカーは覚悟を見出した様に目付きを変えた。

「…ジョーカー?」
「_行こう、調べない事には始まらない。」

重圧の籠った言葉に仲間達は少しばかり困惑するも、無言の肯定を示した。
ジョーカーの顔付きを見て、只ならぬ決意を感じたのだ。
ならば黙ってリーダーに付いて行くというのが、仲間としての敬意だ。
一行はポスターの前から離れ、大部屋を抜けて更に奥へと進んだ。



隅々まで探し回った。
大部屋、小部屋、換気ダクトの先に至るまで。
そうして、辿り着いた。

「こりゃ、ビデオテープカセットではないか!」
「ビデオ、テープ…?」
「何じゃ、最近の子は知らんのか…!?」
「王ったら、今はブルーレイの時代ですよ?」

ここは中央にテレビとカセットがある部屋。
VTSカセット挿入口の付いた、ブラウン管式のディスプレイモニター。
まるで骨董品とも言える古びた映像機器が、そこには鎮座していた。
部屋には誰もいない。
どうやら、この場は放置されている様だ。

「良いか?ここにカセットをこう入れれば、映像が流れるのじゃ!」

キン肉マンが解説をしながら、カセットの再生を試みた。
再生機器は音を立てて稼働し、映像をディスプレイへと映し出す。
そこには、二人の人影。
果たして、疑惑は確信に変わる。
_見間違いようが無かった、その姿は。

「_丸喜先生。」

20人目

「メメントスからの帰還」

「ようし、冥界の女主人たるこの私の力、見せてあげる!」

 エレシュキガルが冥界の神・ネルガルの別名を冠した槍「メスラムタエア」を
頭上で振り回すと、それに呼応するかのように地面にヒビが入り、
その隙間から黒い炎が噴き出した。

「天に絶海、地に監獄。我が踵こそ冥府の怒り! 出でよ、発熱神殿ッ!!」

 メメントスの風景が地下鉄のホームから冥界そのものへと塗り替えられていく。

「反省するのだわ! 『霊峰踏抱く冥府の鞴(クル・キガル・イルカルラ)』ッ!!」

 冥界である限り、エレシュキガルは如何なる相手であろうが
絶対的な権能を振るう事が出来る。

「4、403333z、6、6a.!!」

 次々と地面に走る亀裂に吸い込まれ、消え去っていく無数のラフム。
彼らが落ち行くは冥界の底。死者の魂が囚われている奈落だ。
ラフム達が一掃されると、景色がメメントスへと戻っていき、
宝具を発動したエレシュキガルはメスラムタエアを杖代わりにして息を荒げる。

「はあっ、はぁっ……」
「大丈夫か!?」
「ええ、平気……ふぅっ、宝具を使ったものだから……」

 ジャイアントジオング、ラフムの大群は倒された。残るはガーリックjrのみ。

「だあありゃあああああああッ!!」
「ぬおああああああああああッ!!」

 悟空とピッコロが同時に仕掛けた連携攻撃を、ギリギリで回避するガーリックJr。

「な、何というスピード……! まるで目で追えん……!」
「おおおおりゃああああッ!!」

 超サイヤ人と化した悟空が、ガーリックjrの顎目掛けてアッパーカットを放つ。

「あぐおおおおッ!?」
「喰らえィッ!!」

 仰け反ってよろめいたガーリックjrの身体に、追い打ちをかけるように
ピッコロが連続回転を加えたオーバーヘッドキックを脳天に叩き込む。

「だりゃりゃりゃッ!!」
「くぉあああああッ!!」

 さらに休む事なく怒涛の連係プレーによる猛攻を仕掛け、
反撃の暇を与えない。

「ぐぐぐ……なんというパワーだ……! この私が圧倒されているだと……ッ」
「オラたちは今まで、何度も死にかけながら戦ってきたんだ……
今更、こんなピンチで怯むかってんだッ!!」
「そう言う事だ。貴様など、単なる通過点に過ぎん!!」

「おのれ……ずああああッ!!」

 気合一閃。ガーリックは両腕を広げて衝撃波を放ち、悟空とピッコロを吹き飛ばす。

「ぐっ!」
「うおっ……!」

「ふふふふ……確かにお前たちは強い。だが、忘れたか? 私には不老不死の……」
「それー」
 
 隠れて戦いを見守っていた徐福が、突然背後から謎の仮面のようなものを
ガーリックに被せる。

「ぐおっ……な、何だ、これは……ッ」
「不死殺しの仮面。虞っさまのために研究を続けてきたもの。未完成ですけど。
今のアンタにはそれなりに効くと思いますよ」

 あらゆる「死」の概念を蒐集し、その面を被せたものの「生存確率」を
著しく低下させる呪いの面。

「むう、ガーリックjrの気が……!」

 ガーリックが纏っていた不老不死の力が見る間に衰えていく。

「はっはー、やるじゃねえかおめえ!」
「当然です。天才ですので。ほら、やるなら今ですよ」

「やるぞ、孫!!」
「おう! か……め……は……め……!」

 徐福の仮面を無理矢理に剥ぎ取ろうとするガーリックの隙を突き
悟空とピッコロが必殺技の構えを取る。

「お、おのれッ……ぬおおっ!?」

 冷気とともにガーリックJrの両足が凍りついている。
フォックスの氷結魔法による攻撃だ。

「悪く思うな。この戦い、俺たちが勝たせて貰う!」
「こ、これしきの事で……むおおっ!?」

「爆力魔波ーーーーーーッ!!」
「波あああああああああッ!!」

 悟空とピッコロが同時に放つ合体技がガーリックに直撃した瞬間、
凄まじい大爆発が巻き起こった。

「ぐおおおおおおあああああーッ……!! 
お、おのれぇぇぇぇぇえええええええッ……!!」

 不老不死を封じられた事で、全身を消し炭にされたガーリックJrが
断末魔の叫びを上げる。

「く、くくくく……だが、私の本体は今もデッドゾーンの暗闇の中で、
じっと時を待っている……いつか復活する日を……!!
この恨み、晴らすまでは絶対に諦めはせん!! くぁーーーーーーっはっはっはっは……
げはッ!!」

 爆発の煙の中から放たれた捨てゼリフが、メメントスに響き渡った。

「ふいーッ……何とかなったな……」
「メメントス……入った者の心情を映し出す迷宮か」

「シャドウのように、我々の心の奥底にある闇が実体化したと言う事ですね」
「うむ。俺や孫は心の何処かに驕りや慢心があった……
それがガーリックJrの姿となり、奴を蘇らせたのだろう。
あの頃よりも強くなった、と言う自負……それが己の力を過信させていたかも知れん」

 その場に居た誰もが、自分自身の弱さを思い知ったメメントスでの戦い。
それは己を見つめ直す機会であったのかも知れない。

「ところで、あの扉は……」
「ん?」

 いつの間にか出現していた謎の扉に、一同の視線が集中する。

「おい、あれって……」
「ええ。先に進むためのものでしょう。行きましょう、皆さん」

 バーサル騎士ガンダムが先頭に立つ。

「ぬっ、ううっ……駄目だ、びくともしない」

 しかし、扉は固く閉ざされていた。

「モルガナが言っていました。メメントス最深部に眠る真実に辿り着くには
人間の深層心理……すなわち、自分の心を知る事が重要だと」
「??? 良く分かんねぇな……」

「つまり、俺たちはまだまだその段階には達していない、と」
「はい。まだ私たちの知らない事があるはずです」

「要するに、これ以上先には進めないって事か? まあいいや。
そんじゃあ今日のところはこの辺にしとくか」

「ねえねえ、宝箱!」

 徐福が鍵付きの宝箱を見つけてきたようだ。

「お、ラッキー! 私、キーピック持ってるよ!」

 パンサーが懐から取り出した鍵開け道具を使って宝箱の解錠に成功した。

「何が入っているんだろう……ん、これは……!」
「んん……?」

 中に収納されていたのは……

「イヤリング?」

 それは、両耳に装着するタイプの耳飾りだった。

「あっ、これ……ポタラじゃねえか!」

 悟空が嬉々としてそれを手に取った。

「なぁんでこんなもんがこんな所に」
「あらゆる世界が入り混じった特異点に発生したメメントスだから、
このようなアイテムが発生するのかもしれません」

「ふーん、そうなんか。とりあえずもらっとくかな」
「では、一旦地上に戻ろう。皆、結構消耗しているようだからな」

 フォックスの提案に全員が同意した。

「そうだなぁ。オラ、腹減っちまったもんな。拠点に帰ってメシ腹いっぱい食いてえや」

 こうして、メメントスで思わぬ収穫を手にした彼らは現実世界へと帰還した。

『メメントスより帰還します。お疲れ様でした』

 イセカイナビを起動し、メメントスの最深部から帰還した彼らはまだ知らない。
地上では、黒平安京を始めとした大異変の数々が既に進行していた事を。

21人目

「幻想郷調査 インターミッション:迷いの竹林」

 霊夢たちが紅魔館を出たのと同時刻の話。

 特異点から、メサイア教団大司教のゼクシオンを追うために幻想郷に向かったリクがやってきた。

「うわああ!?」

 八雲紫のスキマより、リクがはじき出されてきた。
 結界の強化作用による影響か、落ちる場所がランダムになってしまったのはご愛敬か。

 尻もちをつきつつも、リクは何とか立ち上がる。

「と、とりあえずは到着したけど……どこだ此処。」

 周囲を見る。
 竹、竹、筍をはさんで、また竹。
 文字通り竹林というべき空間が広がっている。
 あまりの広大さと複雑さに、ここにいるだけで迷子になってしまいそうだ。

「とりあえずここを出て皆と合流するか……。」

 竹林を、周囲を警戒しながら出ようと試みる。
 しかし妙だ。

「なんか同じところをぐるぐる回っている気がする……。」

 リクの予想、予感は的中していた。
 この時の彼はまだ知らないが、ここは『迷いの竹林』と呼ばれるエリアと呼ばれており、妖精や妖怪がいたずらに入ったものを迷わせ、手練れの妖怪でも迷うことがあるのだ。
 その在り方ときたら、まさに自然のラビリンスと言えるだろう。

「早く出ないと、もうそろそろ夜だ。」

 彼は急かされるように走る。
 早く出なければ、或いは何か建物を見つけて避難しなければ妖怪や魔物に袋たたきにされる。
 リクに妖怪とかの予備知識はないが、彼の戦士としての勘がそう思わせていたのだ。

 日没前に出ようと試みるリク、しかし。

「うわっ!?」
「にしし、引っかかった引っかかった!」

 突如、リクが下に落ちる。
 その正体は、あまりにも単純な罠である『落とし穴』。
 あまりにも単純な割にかなり精巧にできていたのか、リクが焦っていたのか、この落とし穴に落ちるまで彼が気づくことがなかった。
 いたずらに引っかかったリクを嗤う声が聞こえる。

「くそ、敵か!?」
「敵かどうかは自分で判断しろウサッ!」

 幸い穴の深さはそうでもなく、穴から出た彼は咄嗟にキーブレードを構える。
 彼の眼前に現れたのはウサギの耳を生やした、幼い見た目の妖怪だ。

 しかして彼女も妖怪。ただ者ではない感覚を肌で感じる。

「勝負だ!来い!」
「ハッ!鍵程度でウチが倒せるか!」
「鍵じゃない!キーブレードだ!」
「どう見たって何かの鍵だろ!金庫でも開けてろウサッ!」

 リクの得物たるキーブレードのデザインを小ばかにする謎のウサギ妖怪。
 確かに彼の持つキーブレード『ブレイブハート』はどう見たって巨大な車の鍵そのもので、ぱっと見剣というよりかは鈍器らしい見た目なのだが……。

「どうした!来ないならこっちから行くぞ!」
「それはこっちの話ウサッ!!」

 大量の弾幕を放つウサギ妖怪。
 回避できるスキマこそあれど、その密度はなかなかのもの。
 しかし相手は歴戦の勇士たるリク。迫りくる弾幕を上に横にと弾く。

「弾幕を弾くだなんてずるいぞ!」
「昔弾幕を撃ってくる敵と戦ったことがあってな、これくらいなら慣れてる!」
「こうなったら……!!」

 嫌な予感を察し、リクが身構える。
 その予感は的中し、眼前のウサギ妖怪が必殺技(スペルカード)を放とうとしたその時だった。

「おい、何やってんだ?てゐ?」
「?」

 リクは背後にいる何者かを見て何かを察したのか、キーブレードの構えを解いた。
 いきなり戦闘態勢を解かれ、妖怪は混乱する。

「おいなんだよその変な眼?」
「何って……後ろに誰かいるんだが。」
「後ろってなn……うわぁ妹紅だぁああああ!!」

 謎のウサギ妖怪は、背後にいる女の姿を見て『妹紅』と叫び、一目散に逃げていった。
 そして妹紅なる人物は、リクに話しかける。

「大丈夫か?って言うほどでもないな。」
「あ、はい。ここに迷ってしまって。」
「その恰好……うし、外まで案内してやるよ。」

 渡りに船、とはこういうことか。
 妹紅に案内され、竹林を歩き始める。
 外まで案内してやると言われたのか、リクの顔には安心感がある。

「あいつ一体何だったんだ?」
「あーあの妖怪か?初回でアレに会うだなんて運がいいんだな。」
「運がいい?」

 妙な回答が返ってきた。
 チープ極まる落とし穴に引っかかって、小ばかにされたのに『運がいい』とはこれ如何に。

「あの兎……『因幡てゐ』ってんだが、その能力が『人間を幸運にする程度の能力』。出会ったものは少なくとも竹林から出れるようになるくらいには運が高まるんだよ。ほら、な?」

 妹紅の言う通り、話しているうちに竹林を出てしまった。
 恐るべきは彼と邂逅したてゐの能力か。

「あー、つまりあの兎がいなければ俺は……。」
「普通に飢え死にだな。まぁあいつああいう性格だし……好き嫌いは分かれる。」

 竹林の先には、草原に開かれた一本道がある。
 その奥には小さいながらも里がある。
 時間的にも距離的にも普通に日没までには間に合うだろう。

「んじゃ。この先に『人間の里』があるから今日はそこで泊まんな。こっから里までは普通に間に合う距離だぜ。」

 と、リクをおいて妹紅は来た道を戻ろうとする。

「あ、ありがとうございます。妹紅さんはどこへ?」
「ちょっと犬猿の仲の奴と殺し合いをだな。」

 これ以上内情を聞くのはやめたリクだった。

22人目

「Thunderbolt-Action」

羅生門が崩れたのを皮切りに、魑魅魍魎が跋扈し始める。
太古の脅威、鬼の存在も合わさり。脅威が膨れ上がる。
黒平安京が本性を露わにし、CHに牙を剥く。

「デェヤァーッ!」
「デュワッ!」

対するは、古代と異世界からの光の巨人。
迫る鬼獣に負けじと拳を振るう。
次いで、人類の叡智の結晶GUTセレクトも戦いに身を投じる。

「行っけぇーー!ファルコンちゃん!」

空を駆け銃弾の雨を降り注がせるGUTファルコンと、ナースデッセイ号。
機械の巨体が鬼獣を穿つ様は、鬼退治の現代アートと言えるだろう。
そして。

「ゲッタートマホーク!オリャアァ!!」

悪鬼滅殺。
まさにその言葉を体現するが如く、武神めいて鬼を斬る紅白色の巨人。
ゲッターロボ。
三つの力を一つの意思に変え、百万の力を生み出す超兵器。
不撓不屈の巨大な戦士が、鉞担いで鬼を断つ。
5、10と斬り伏せられる鬼獣の群れ。
負けじと襲い掛かるが、ゲッターの敵では無い。
さりとて、その脅威は無視できるものでも無かった。

「チィ!こう数が多いんじゃ埒が明かねぇ!」

ゲッターを駆るのは竜馬であり、彼等は人間。
長期戦や集団戦になれば、消耗もする。
体力も精神力も無限ではないのだ。

「竜馬、このままじゃ嬲り殺しだ!」
「言ったってよぉ、奴さん見逃す気はサラサラねぇみてぇだぜ?」

だが、だからと言って諦めるという選択肢など存在しない。
背後から襲い掛かる鬼を、振り向き様にゲッタービームで撃ち、吹き飛ばす。
ジリ貧でも、ゲッターチームの目は死んでいない。
例え死地であっても、決して諦観などしない。
宿るのは、闘志ただ一つだった。

「おのれ、ゲッターロボ…!」
「次はテメェがこうなる番だ、晴明!」

憎々しげな怨念の声を上げる晴明。
しかし、相手もまた、此方の事を忘れてはいない。
無数の式神を放ち、包囲しにかかる。
数の暴力で押し潰すつもりだ。

「これで潰れてしまえ!」

やがて取り囲んだ式神達が光を帯びて、輪を狭めて一斉に襲い掛かる。
まともに食らえば、圧死は免れない。
迫り来る死の壁。

「チェンジ、ゲッター3!」

それが、掛け声一つと共に吹き飛ばされる。
チェンジしたゲッター3の長腕が竜巻めいて渦を巻き、竜巻を作り上げる。
大雪山降ろしだ。
巻き上げられた式神が、風に乗せられ一固まりに圧縮される。

「オープンゲット!」

直後、ゲッターが三つのゲットマシンに別れる。

「お次はコイツだ!チェンジ、ゲッター2!」

刹那の間を置いて、空中で合体を果たしたゲッターロボ。
白を基調とした形態が、ドリルを突き出し式神に迫る。
そのまま式神の塊を穿ち、紙切れを舞い散らせながら式神の中へと入っていく。

「馬鹿め!そのまま死ぬが良いわ!」
「はん、まだ気付かねぇのか?」
「何?」

それを好機と見た晴明の歓喜を、竜馬の声が否定する。
瞬間、式神の内側から何十にも刃が突き出て、斬りきざまれる。
そうしてバラバラになった式神の中から、トマホークを担いだゲッター1の姿が露わになった。
チェンジしたというのか、あの僅かな穴の中で。
恐るべきはその技量か。

「俺達はな、目を瞑ってても合体出来るんだよ!テメェの小細工なんざ幾らでも細切れにしてやらぁ!」
「抜かせ!ならばこれはどうだ!?」

直後、ゲッターロボを取り囲む様に何十もの鬼獣が地面より露わになる。
更には、何時の間にやら集まっていた鬼獣が空をも覆う。
四方八方、隙が無い陣形だ。

「式神は只の目晦ましよ、今度こそ潰れてしまえぃ!」
「クソッ、コイツはちぃとヤベェかもな…!」

流石の竜馬も、悪態を付く。
四方の鬼獣に加え、上空からも大量の鬼獣が押し寄せる。
先程の様に大技を使っても、全てを倒すには至らないだろう。
果たして、このままでは数に押し切られるのか。

「隼人、弁慶、腹括れよ!ゲッター_」

そんな窮地に。

『サンダー・スレッジ。』

光が、鬼目掛けて迸った。
その光は、蒼き雷。
眩いばかりの輝きは、鬼の包囲の一角を一瞬にして塵灰へと化す。

「何奴!?」
「何だ!?」

両者共に驚嘆し、光の源を見る。
彼方を見上げれば、そこには蒼白の機兵の王。
アビダイオーが、宙に佇んでいた。

『おっしゃ、見たか俺の電撃!』
『全く、衰えを知らないねぇ竜司。』

そのコクピットでは、スカルが剥き出しのコードにミョルニルを突き立て、電撃を流していた。
先の一撃は、アビダイオーとスカルのペルソナによる超高圧の雷撃だ。
両の腕から放たれたその一撃が、敵陣の注意を一身に向けさせる。
向かざるを得ない。

『さて、月並みな台詞だけどここは僕達に任せてもらおうか?』

それを好機と見たアビィが、ゲッターチームに告げる。
鬼を迎え撃つのは自分達だと、晴明は己の手で葬れと。

「ありがてぇ、このまま野郎をぶっ殺してやらぁ!」

無論、ゲッターチームにとって、それは願っても無い事だった。
礼を言い、竜馬が意気揚々とゲッターロボを走らせる。
それに合わせて、晴明もまた動き出した。

『それじゃ、それなりに働くとしますか。』

そんな彼等を見届け、鬼へと向き直るアビダイオー。
特徴的な巨腕を構え、迫り来る鬼に備える。
その構えは、まるで挑発の様だった。

『眠りたい奴から前に来な。』

その言葉に、多くの鬼が怒りの声を上げる。
同時に、一斉に突撃を開始した。
鬼獣が、アビダイオーを食い千切らんとする。
だが。

『Slowly.(遅い。)』

轟く雷鳴。
甲高く鳴る駆動音。
アビダイオーの両の掌から雷光を纏った一閃が放たれ、鈍い打音と共に鬼の軍勢が一挙に消し飛ばされる。
砂山を蹴り飛ばしたが如く舞い散る鬼獣。
その一体の頭を、アビダイオーが捕まえる。
追撃だ。

『Good night.(おやすみ。)』

ぐしゃり、と左手で握り潰された頭部。
次いで、丸ノコめいて回転する右腕が胴を穿つ。
一瞬にして、四肢がバラバラになった。
この光景に、先の一撃から這い上がった鬼達へ動揺が走る。
その視線に気付くと、再び腕を構えて、告げた。

『Come on next!(次!)』

23人目

「安倍晴明の真実」

 超時空戦艦・アビダイオーの参戦により、一気に勢いづくCROSS HEREOS。

「なんじゃあ、バカデカいロボットは!?」
「あれは……アビダイン! 私達の味方です!」

 いーじゃん♪ いーじゃん♪ すげーじゃん♪

「へへーん、ばーん!!」
「ギャワッ」

 ダンサブルなリズムに乗って、電王ガンフォームが並み居る悪霊たちを
次々に蹴散らしていく。
ガンモードに切り替えたデンガッシャーの射撃はすべて百発百中だ。

「それそれそれーっ!!」

 豪快なブレイクダンスを織り交ぜた銃乱射。デンガッシャーから放たれた弾丸が、
まるで竜巻のような軌跡を描き、次々と敵を貫いた。

「ギャアアアアアッ!!」

「す、凄い……踊りながら……」
「イェーイ! 勝ったーッ!! ね、ね、お姉ちゃん見てた? ぼくのカッコイイとこ!」

 身の丈は成人男性の平均よりも頭一つ高い。鍛え抜かれた肉体はしなやかで、
俊敏かつ強靭だ。しかしそんな鋼の肉体とは裏腹に、
リュウタロスの性格は無邪気そのもので、好奇心旺盛な子供っぽい一面もある。
いろはの手を取り、ぴょんぴょん跳ね回っている。

「う、うん、見てたよ……! 本当に凄かったよ」
「えへへへーっ! そっかあ~~♪ 褒められたぁ~!! ははっ」

 心の底から嬉しそうに喜ぶその様を見て、いろはもなんだか嬉しくなってしまう。

(お姉ちゃん、か……)

 リ・ユニオン・スクエアに残してきた妹・ういのことを想いながら、
いろははふと胸の奥がきゅっと締めつけられる感覚を覚えていた……。

「ようし、雑魚は粗方片付いた!」
「晴明はこの京の一番奥……黒平安宮にいるはずだ!」

「もしかしなくても、ドス黒い妖気がプンプン臭ってくらァ……」

 CROSS HEROESたちの活躍もあり、敵は残すところあと僅かとなっていた。
黒平安宮に陣取る晴明を仕留めない限り、ゲッターロボやウルトラマン、
アビダイン達が交戦する鬼獣たちは際限なく出現するだろう。

「我ら頼光四天王! いざ参る!!」
「応さ!!」

「お供たち、殿は頼んだぞ! ハッハッハッハーッ!!」
「もう、勝手なんだから! ヤァーッ!!」

 ドンモモタロウの傍若無人っぷりにオニシスターはぶつくさ言いつつも、
後続の鬼達に金棒をブン回して薙ぎ払っていく。

「先輩、私達も頼光さんたちの援護に!」
「うん!!」

「安倍晴明……神浜をメチャクチャにしてくれた内のひとり……
あの時の借りを返させて貰うわ」

 立香、マシュ、いろは、やちよ、黒江……次々と黒平安宮の中に乗り込んでいく。

「おっとぉ、あいつらの後は追わせねえぜ?」
「しゃあないな、俺たちも混ぜてもらおか!!」

 モモタロス、キンタロス、ウラタロス……実体を得たイマジン達が、
突入したCROSS HEROESたちの殿を務める。

「お前たち……僕に釣られてみる? ……って、そんな知能があるようには見えないけど」
「モモタロスと一緒だね!」
「何だと、小僧! もういっぺん言ってみろォ!?」
「モモタロスはバカ!」
「さっきと変わってんじゃねえか!!」

「ウウウウウウ……」
「けっ、こんなバケモノ共と一緒にされちゃ敵わねえや。
ぶっ倒してやるからさっさとかかってきやがれ!!
行くぜ行くぜ行くぜえええええええええええええええッ!!」

「みんな、賑やかだね。まるでジュラン達と一緒にいるみたいだ。
俺も頑張るぞ!! ちょわーっ!!」

 赤、青、黄、紫……色取り取りのカラーリングと個性的な性格を併せ持つイマジン達と
ゼンカイザーが共に肩を並べて、鬼たちへと向かっていく。

 一方で、黒平安宮の内部は不気味なほど静寂が支配していた。
先刻まで暴れまわっていた怨霊や悪霊たちの気配もまったく感じられない。
だが、この先に確かに何かがいる……そう感じることが出来た。

「みんな、気を付けて……! この先にいるよ!」
「ぉおうらああああああああああああッ!!」

 金時が襖を豪快に蹴破ると、その向こうで待ち構えていたのは、安倍晴明本人だった。

「ぬう、ここまで辿り着くとは……流石だな、CROSS HEROES、そしてカルデア……
やはりCROSS HEROES……貴様らとはつくづく因縁があるようだ。
そう、前世から続く、な……」

「前世?」
「そう……我はかつてゲッターロボに敗れ、死に絶えた……
それも一度では無い。幾度となく敗北を喫してきたのだ。
その無限にも似た輪廻の中で……CROSS HEROES……その名を刻み込まれた」

「何? つまり……どういうことだ……?」
「CROSS HEROESと言うチーム名は、ミスリルのテッサ大佐が
数多の並行世界に関する知識情報から得たものだと聞きました。
つまり、この人は……別の世界のCROSS HEROESと出会っていた、
と言う事なのかも……」

「座に刻まれた英霊が、前世の記憶を部分的に引き継ぐ事が稀にあると言いますが……
それと似たような現象が安倍晴明にも起きた、ということなのでしょうか」

「晴明、あんたは一体、どの世界の記憶を持ってるってんだ……?」
「さあな……それは我にも定かではない……我が術は天地陰陽……
すなわち表と裏を司るもの……そして、陰は陽を生み、陽はまた新たな陰を生み出す……
我が式神の召喚は、言わば輪廻転生……我が生み出す式神は全て、
かつて我と同じく敗れていった者たちの恨みの魂を模したものである……
今、ここに蘇るが良い。忌まわしき鬼どもよ……!!」

 晴明の言葉に呼応して、黒平安宮の壁や床のあちこちに突如として
魔法陣のようなものが出現したかと思うと、巨大な影たちが次々に姿を現した。
そして次々に晴明の肉体へと取り込まれていく。

「オオオオオオオオッ……!!!」

「うお、何だありゃ!?」
「あいつ、鬼や悪霊どもと融合しやがった!!」
「やべえ、平安宮が崩れるぞ! みんな、早く外に逃げるんだ!!」


「ビッグバンッ!! アタァァァァァァーックッ!!」


 ベジータがゲッターロボを取り巻く鬼獣に必殺の超エネルギー弾を撃ち込み、
破砕する。

「グギャエェェェェェェッ……」

「どう言う原理だ……? 人が宙に浮いて、手からビームを撃ってやがるぞ」
「へっ、今になると新鮮なリアクションだな、隼人よ。
俺ァCROSS HEROES入りしてからと言うもの、
とんでもねえ奴らを腐る程見てきたからな。もう慣れっこよ」

「むう、この恐ろしく邪悪な妖気……! 竜馬! 隼人!
晴明が何かを仕掛けてきやがるみてえだぞ!!」

 弁慶の声と同時、崩れ落ちる平安宮の中から飛び出す、巨大な影……

『ふはははははは……リンボの奴の置き土産……大いに利用させてもらおう!!』

 これまでの黒平安京を巡る戦いの中で集まった負のエネルギーをも取り込み、
安倍晴明はいよいよ最大最後の賭けに出る。

「上等じゃねえか……もはや小細工は要らねえ! 引導を渡してやるぜ、晴明!!」
『出来るかなァ!? 貴様にィィィィィィィィッ!! 
我はもはや今までの我に非ず!! 殺してくれるぞ、流竜馬ァァァァァッ!!』

24人目

「幻想郷調査 弐:妖怪の山の天狗」

 妖怪の山 ふもと

「これは。」
「思った以上に整備されてんな。」

 霊夢と月夜の意見は同じだった。
 地面には、まるで『さっき完成しましたよ』と言わんばかりの、均整の整った石レンガ造りの道が出来ている。
 道中も灯篭が置いてあったり、獣、妖怪除けの結界すら霊夢には見えるという。
 彼女が知る限りでは、前まではここまで整備されてなかったとのことだが。

「あいつらなら考えられるのかな……。」
「何か心当たりでも?」

 霊夢はため息交じりに、過去の戦闘についての話をする。

「ちょっと前に、ここの『守矢神社』の連中と小競り合いしたって話はしたわよね?そこの二柱の神様が天地創造の能力を持ってて……もしかしたら、って思ったのよ。新しく来たから信仰集めるのにも必死だろうし。」
「神様も世知辛いな。」
「信仰集めないと消えちゃうからね……。」

 どうやら弱肉強食の幻想郷でも、そう言った世知辛い事柄は神様レベルであるようだ。
 しかし、月夜だけはそれとは別にどこか引っかかるところがあったようで。

「『守矢』……?確かどっかで……気のせいか?」

 過去の記憶、存在したはずの■■■■■との出会いが思い出せない。
 遥かな昔話だ、無理もないと言えば簡単な話だが『思い出せそうで、思い出せない』というのがまたもどかしい。

「兄さん、もしかして知りあい?」
「確かな。んで、再会したら何かの約束はしたはずなんだが……妙に思い出せない。」
「行きましょう。もしかしたら会ったら思い出すかもだし。」
「……そうだといいんだが。」

 おぼろげな記憶を頭の中で反芻しながら、まるで難しい知恵の輪でも解いているかのように難しい顔をする月夜。
 道中でも脳内書斎の中で記憶の本を漁る彼とは対照的なのは妹の彩香。
 否。彼女の裡に宿るものは不満げだった。

『むぅ、試練の味がしないな……。てっきり筋力だけで山登りするとかと思ったんだが……何か、な。』
「いいから、そう言うの良いから。ここは恩恵にあずかるとしよう。」
『む……。』

「一応神様だから失礼のないように頼むわよ。後で揉めたくないし。」

 かくして5人は、守矢神社へと通じる階段を上っていく。
 道が整理されているというのもあって、何も起きることなく

「あーっ!霊夢さんじゃないですか!」
「あちゃー。文の奴が来たわ。」

 眼前の妖怪の名―――射命丸文。
 幻想郷最速の妖怪、という異名を持つ天狗で現在は新聞屋を営んでいる。
 やはりというべきか、その目的は。

「外の世界からいっぱい人が来たって言うんで、取材に来ましたー!」

 新聞屋を営んでいるならばやるべきことは一つ。取材である。
 しかし仕事ないし調査中の人間にずかずかと取材をするというのは如何なものか。

「……逃げるか?」
「多分無理よ。こいつ幻想郷で一番速いから。」
「ちぇー。」

 彼女に敵意がない事は分かるが、悪霊の件もある以上取材に付き合っている時間はない。
 しかし何とか振りほどこうにも、彼女は付きまとってくるだろう。
 どうにも乗り気じゃない5人だが、たった一人だけ乗り気な人物がいるようだ。

「まぁいいじゃないか、悪霊も来ていないし時間もまだまだある。受けよう、何が聞きたいんだお嬢さん?」
「あ、はい早速……。」

 道中で話しながらだが、ナポレオンは自分の武勇伝を話していた。

「……で、俺はスフィンクスを破壊したってわけだ!」
「あー、スフィンクス?なんですそれ?」

 ナポレオンが語る武勇伝の、あまりの規格外ぶりに文はただただ混乱している。
 取材をするつもりが、逆にここまで驚かされるとは。

「しかしすっごいですね……ウソかホントか分からないですもの。他の皆さんも経歴とか教えてもらっても?」
「文さん。答えるがこっちも質問があるが、いいか?」
「質問ですか?答えられる限りで良ければ……。」

 月夜は、文に質問を投げかける。
 彼女は新聞屋だ。きっと何かを知っているはずだ。

「守矢神社にいるという謎の人物、そいつについて知っていることはあるか?」

 その瞬間、文の顔がぴくっとする。
 間違いなく、何かを知っているという反応だ。

「確かに、知ってますが……何か用事でも?」
「これから会いに行こうと思ってな。名前とか素性とかを知りたいんだ。得体が知れない以上、事前にどういうやつかを知っておきたい。」
「えーっと、少なくともこっちを攻撃してくるような人ではなかったですね。物腰も丁寧で優しい人でしたよ。よっぽどの悪人でもない限り警戒は必要ないかと思います。」
「それは良かった。」
「で、名前は確か……セイバーのディルムッドとかって言ってましたね。」

 文の言っていることは合っている。
 剣を振るう神話の騎士、英霊ディルムッドとの邂逅の時は近い。

「ディルムッド、か。フィオナ騎士団の一番槍だっけか。でもセイバー?ボクが知る限りじゃ二振りの槍を使ってたはず……。」
「ディルムッドは『モラルタ』と『ベガルタ』という剣も持っているんだよ。で、今回召喚されたのがその二振りの剣を振るう、セイバークラスのディルムッドってことか。レミリアが言ってたのはきっとそいつの事だな。」

 彩香とナポレオンは思案する。

「うわぁ、ナポレオンさん物知りですね。」
「なに、『座』からの情報だ。」
「『座』?」
「ちょっとした神様みたいなもんだ。」

 ディルムッドがこちら側に敵意がないことは分かった。
 月夜はもう一つ質問をする。

「もう一つ質問がある。『河城にとり』なる人物、ここにいるんだってな。どこにいるかとか知ってるか?」
「あの河童ですか?多分すれ違っちゃいましたね。さっきこの辺りで見ましたもの。あの調子だと人間の里か魔法の森付近に行きましたが……彼女にも用事が?」
「そうかすれ違ったか……ちょっと機械の修理をだな。」

 残念ながら、すれ違ってしまったようだ。
 しかしくよくよしている時間はない。月夜は通信機で神社にいる紫に連絡する。

「此方月夜。河城にとりとはすれ違ってしまった。人間の里部隊に伝えてくれ。そっちにいるかもしれないって。」
『分かった。スネークたちにもそう伝えておくわ。』

 歩みは止まらない。
 結界のおかげか妖怪約1名と巫女1名、外の世界の戦士4名を除いて周囲に妖怪や獣の気配はない。

「で、いつまでついてくるの?てか、結界はどうしたのよ。」
「天狗はこれくらいじゃ追い払えませんよ。」
「あー、はいはい。」

25人目

「追憶:憧憬の介入者」

「マジかよ…!?」

モナが、呆然と口を開ける。
ジョーカーもまた、顔色を驚愕一色に染め上げていた。
他人の空似と思いたかったが、見間違いようが無かった。

「丸喜、先生…?」
「何じゃ、知り合いか?」

何も知らないキン肉マンが無遠慮に聞いてくる。
空気を読んだのか、ミートが「ちょっと王ったら!」という静止を掛ける。
だが、ジョーカーは構わないと言って続けた。

「彼は、俺達秀尽学園でメンタルカウンセラーをしていた先生だった。名前は、丸喜拓人。」
「何、メンタルカウンセラー?」

表情を一変させ、驚愕の声を上げるキン肉マン。

「…って何じゃ?」
「だぁ!?」

予想可能回避不可能。
ある意味と言うか予想通りの言葉に、堪らず気が抜ける一行。

「全く、そんな事も知らないんですから!」
「おうおう、じゃあミートは何なのか知っとるのか?」

訝し気な声色のキン肉マンに、ミートは自信満々で答える。

「勿論ですよ。メンタルカウンセラーは対話を通じて心の病気や精神病の緩和や治療を行う、心のお医者さんなんです。」
「ほー、心の!僕ちんの臆病さも治るかなぁ?」
「それは性格なので無理ですね。」
「ぐぬぅ。」

冗談半分の言葉をピシャリと断つミート。
それよりも、と話題を戻す。

「かなり驚かれてましたが、どういった関係なんですか?そのカウンセラーさんと。」

当然の問いだ。
ミートからすれば未知の人物であり、同時にジョーカー達と深い関係にあると睨んでいる。
そんな人物がパレスの中に出てきたのだ。
人物像が欲しくなるのは必然だった。
その問いに、ジョーカーが暫し目を瞑る。
1年以上もの前の歳月で廻った彼との思い出に、想いを馳せる。
そして、強い意志の籠った言葉で告げる。

「共に人々の為に心を救う事を誓った、友だ。少なくとも、俺はそう思っている。」

今でも脳裏に熱く焼き付いている、丸喜との日々。
今の自分を形作った存在と言っても過言では無いと、言外に語っていた。

「友、か…それほどの男なのだな、丸喜というのは。」

ジョーカーの熱意に、キン肉マンも熱い思いが込み上げてくる。
友という者は、いつの時代も良き存在だと信じている故に。

「その丸喜さんが、何でこのパレスのビデオに出てくるんでしょう?」
「そこだ。丸喜拓人がパレスとどう関わっているのかが謎だ。」

モナも、意外な人物の存在がこのパレスで露点した事には疑問を持っていた。
彼の様な人物が、世界を巻き込んだ騒動の中心にいるとは考え難かった。

「ワガハイ達の知る丸喜拓人は、虫も殺せない様な心優しい人間だ。とてもパレスに関わっているとは…」
「いや、むしろ逆だ。」

しかし、彼を一番に知るジョーカーの意見は他とは違った。
重い声色で注目を一身に集め、己の考えを告げる。

「恐らく、このパレスの主は丸喜先生だ。」
「なっ…嘘だろ!?」

あり得ないと切り捨てていた可能性。
それを真っ向から突き付けられ、モナは今日一番の驚愕を見せる。
その理論に辿り着いたジョーカーにもまた、驚きを隠せなかった。
ジョーカーから聞かされた丸喜拓人という人物像と、今起きている異常現象の主犯。
この二つを、偏見を捨てて繋げた事に。

「何故、そう思うんだ?」

次に問いを投げたのは、キン肉マンだった。
先程友と言ってのけた相手を疑うのならば、相応の理由がある筈だと。
ジョーカーは、少しの間を置いて答えた。

「さっき見たポスター、あれは認知訶学に基づいた記述が成されていた。」
「認知訶学?」
「人の認知・認識が心身に及ぼす影響を考察する訶学だ。あれを取り扱っているのは、丸喜ぐらいだ。」

そして、と付け足して、最大の根拠を告げる。

「何より、新宿で見た認知を歪めて幸せを見せる現象。今考えれば、あれは丸喜が考えたある種の救いだったのかもしれない。」
「なっ…!」
「竜司の事を想えるのも、そして実行できるのも、丸喜だけだ。」

新宿にて竜司の認知を歪め、幸福を与えた現象。
これを実行するには、竜司と言う人間を知っている人物でなければならない。
そして秀尽学園で、竜司達は丸喜のメンタルカウンセリングを受けていた。
これが決め手だった。

「友だと思いたいからこそ、疑わねばならんとは…」

ジョーカーとて、悪戯に疑いたい訳では無い。
寧ろ心苦しい位なのだ。
その心情は、キン肉マンにも分かる。

「とにかく、続きを見てみましょう。」

沈黙が場を支配する中、ミートの提案が飛ぶ。
とりあえず見なければ始まらないと、映像に視線を向けた。

『_すみれさん、だよね?カウンセラーの丸喜です。まずは、来てくれてありがとう。』

映像の初めは、何気ない挨拶から始まった。
少しだけ間を空いて、対面に座る少女が語り出す。
赤髪をした少女に浮かぶ表情は、何処か儚げだった。
同時に、何処か見覚えがあった。

「…?」

何処か小骨の引っ掛かるような感覚がした。
だが悩む間も無く、映像は続く。

『えっと、すみません。話す事、思いつかなくて…』
『構わないよ。なら、時間まで雑談でもする?』

罪悪感を含んだ声色で謝罪する少女。
対する丸喜は明るげで、なんて事は無いと言った陽気さを醸し出している。
如何にも手馴れた言葉遣いで、少女と話題を広げていく。

『昨日のお昼何食べた、何てどう?僕はね_』

丸喜が話を続けている内に、少女の顔に明るさが少しだけ浮かぶ。
俯き気味だった顔が前を向く。
ここまでは、特に可笑しな所も無い普通の映像だ。

「…只のカウンセリング、か?」

蓮もそう思ったのか、不思議そうな顔をしている。
今この時点までの映像から何かを読み取るとしたら、それは丸喜の仕事ぶりについてだろう。
少なくとも、隠す意味など感じられない。
映像は更に続く。

『芳澤さん、料理出来るんだね。それに栄養バランスなんて、しっかりしてるなぁ。』
『_コーチに言われてて…』
『そっか…練習は苦手?』
『苦ではありませんでした。でも、上手く行かなくて。』

次第に、少女の、芳澤すみれの言葉が多くなる。

『姉と約束したんです、新体操で世界を獲ろうって。でも…』

そして、彼女が抱えている心の闇も。

『姉は、亡くなりました…私が、かすみの夢を奪ったんです…!』
「なっ…かすみ!?」

またしても、思わぬ人物の名にジョーカー達が驚嘆する。
少女の姉、即ち芳澤かすみは_

「何者だ!?」
「っ!しまった、声を上げ過ぎたか!?」

突然の来襲。
パレスを徘徊するシャドウの声に、迂闊だったとジョーカー達は焦る。
想定外の事が多かったとはいえど、これでは自分の位置を教えている様な物だった。

「囲まれる前に逃げるぞ!」
「えぇー!?まだ映像が残っとるのにか!」
「それどころじゃないですよ!」

身を隠し、足早にその場を去る一同。
残されたブラウン管には、映像が引き続き流れていた。

『丸喜先生、私『かすみ』になりたいです。』
『きっとなれるよ、信じて。』

暫しの間、映像が続く。
そうして漸くやってきたシャドウがブラウン管を消す瞬間。

『よし…何ていうか、生まれ変わった気分です_』

26人目

「幻想郷調査 参:危うし、人間の里」

 人間の里

「ここが……さっきの人が言ってた人間の里か……。」

 何とか日没まで到着したのは僥倖だった。
 リクは人間の里の門をくぐる。

 人間の里。
 幻想郷という閉鎖されたエリアにしてはかなり広大なエリアで、集落や村などというレベルではないくらいに広い。
 内部は江戸末期から明治時代初期の頃の日本風の都市が展開されており、日本文化に触れたことがないリクの異邦性を際立たせている。

「そこまでか……?」

 リクの風貌が齎す、周囲環境との乖離もそうだがそれ以上に異常なのは周囲の目だった。
 誰も彼もが、彼を見ては警戒しているかのような目線をぶつけてくる。
 というより、その大半が彼の姿を見るなり急いで家屋の中に入り警戒の目を向ける。

「おい、そこの。」
「?」

 そんなリクの背後に立つ、一人の女性。
 青い服を着て、薄い水色の長い髪をたくわえた気骨溢れる女性が立つ。
 その風貌と言い覇気と言い、まるでこの里を支える女傑だ。

「一つ聞く。貴様もあの悪霊に関係するものか?あの男の仲間か?」
「違う!俺は悪霊を倒す為にここに来た!」

「し、信じられねぇ!」
「あんた子供だろ!?本当にあの悪霊を倒せんのか!?」
「あの黒い男の仲間じゃないのか!?嘘つくな!」
(警戒されるのも無理はないか……何せ悪霊がはびこるようになったのは3か月前。しかも黒い男……ゼクシオンのことか?多分そいつがここに来ていて悪霊を召喚しているのなら……なおさら警戒されるのも無理ないか。)

 謎の女性と里の男集団に囲まれるリク。
 きっと一歩行動を、一言いう言葉を間違えれば袋たたきにされる。
 ぴりつく空気。しかしここで余計な嘘をつくわけにはいかない。
 自分の目的と意思を、正直に伝える。

「……俺は外の世界から、あなた方の言う男とその仲間。そして、悪霊を倒しに来たんです。証拠はありませんが俺はこちらを攻撃するつもりはありません。どうか信じてください。」

 沈黙の時間、その直後に来るざわめき。
 リクはただ一礼、頭を下げる。

「どうする?」
「どうするって言われてもよ……。」

 口々にリクをどうするかと話しざわめく。
 しかし、それを一瞥するかのように止めたのはやはり……彼らを従えている女性だった。

「まて、大体の話は分かった。お前の事を信じる事にしたよ。」
「しかし慧音先生!もしかしたらこいつ、俺達をだましているかも……」
「その時は私がこいつを仕留める。疑いたくなる気持ちはわかるが、これ以上文句は言わせない。」
「そこまで言うなら……分かりました。」

 男衆はリクを依然警戒しつつもゆっくりと引き下がる。
 女性は頭を下げるリクの前に立ち、さっきとは違い優しい声で話し出す。

「お前、名前は?」
「リク。どうかよろしくお願いします。」
「謝罪すべきはこっちの方だ。そちらの事情も知らないでこんなことをしてしまった。どうか、許してくれ。」
「いえ、警戒されるのは無理のないことです。」

 かくしてリクは人間の里の守護者である「上白沢 慧音」なる人物にここ3か月間の事情を聴くことになった。
 周囲の人間もリクの事を少し信じることにしたのか、いつも通りの生活に戻っていった。



 その後、リクと慧音は彼女が教師を務める寺子屋、即ち学校で話を聞くことになった。

「3か月前、ここに黒い外套を守った男が来たんだ。そいつが……例の悪霊と共にここを襲った。」
「そして、そいつは里の人間を大勢殺したと。」
「見境なくな……。顔も分からなかったが、お前の言う『ゼクシオン』という人物で間違いないだろう。」

 ふと、リクが気になったことを聞く。

「今、ここの防衛とかは……?」

 リクの一言は的を射ていた。
 悪霊がはびこっている幻想郷。あの脅威性を知っているのならば3か月の間に大損害を負っているに違いない。

「それができたら苦労はない。」

 慧音先生の言うことを戦闘に、近くにいた男たちは口々に内情を話し出す。

「あの後俺達だって、勇気出して近くに来る悪霊と戦ってみたんだが如何せん……。」
「力自慢の男どもは皆奴らに殺された。それ以降俺達は慧音先生達に頼ってばかりだが、あいつら強くなっていくばかりでこんな状態がいつまでも続くとは思えない。」
「何か武器があればまだ抵抗できなくもないが……情けない限りだ。」

 弱気なセリフを吐き出す。
 無理もない。そも、彼らは戦士ではない。
 幾ら力自慢でも、戦闘技術が悪霊のそれに追いついていないのだろう。

「武器か……。」
「今あるもので精々武器になりえるものとしたら農作業用の鋤とか鍬とかで、まともに戦えるとは……。」

「なるほど武器か、話は聞かせてもらった。」

 武器、という一言を聞いてリク達の前に立つ人物。
 それはもう2人と1匹の里の救世主だった。

「一人は……魔法使いの魔理沙なのはわかるが……その横のおっさんは!?」
「なぁおっさん、あんたリクの仲間か?」
「そこの豚は一体!?」

「そうだ。俺達は――――。」

27人目

「追憶:惹かれ合う者達/幻想郷調査 四:蛇と豚の人身術」

カツン、カツンと鳴る足音。
暗闇の中、階段を登る幾人もの人影。
何人かを除いて、いずれも黒一色に身を包んだ者たちだった。
そのシルエットは大柄な体躯である事のみが分かる。
ただ一人、彼等を率いる様に進むストロング・ザ・武道を除けば。

「お前達、抜かりはないな?」

武道の言葉に、ただ無言で一同に会釈する者達。
その反応から、所謂オーバーボディに身を包んだ超人だと分かる。
彼等はひたすら純粋に、武道に付き従うだけだ。
彼等の関係は事実上の縦社会、明確な上と下に別れたものだった。

「君達がそんなに肩肘張る必要は無いさ、これは僕の決戦だからね。」
「ふっ、そうであったな。グロロ~。」

そんな武道と肩を並べて語り合うのは、白衣を着た丸喜の姿だ。
気兼ねなく言葉を交わす二人。
そこに先の様な地位的格差は見受けられず、ただ友人同士の様に親しげである。
武道の面から覗くギラついた目付きも、丸喜の前では和らいで見えた。

「ねぇ丸喜~!」

そんな彼の気を引く様に、白衣の端を引っ張る少年の姿。
帽子の陰に隠れ顔は良く見えないが、にへらと笑う口からは無邪気さが見て取れる。
暗がりの中で金色を放つ瞳孔は、人ならざる雰囲気を漂わせていた。

「少しでも困ったら僕に頼る約束、覚えてるよね?」
「あぁ勿論さ、君は秘密兵器だからね。いざって時は呼ぶからさ。だからそんなに引っ張らないでね?」
「は~い!」

服を引っ張るのは止めたが、それでも彼に引っ付き、離れる様子は無い。
そんなお転婆な子どもの如き言動に、丸喜はたじろいでる。
手を焼くとはこの事だろうか。
といった所で、浅く焼けた肌を持つ手が少年の首元を引っ張って引き剥がす。
ぶー垂れた少年が睨む先には、白髪の青年が居た。

「こら、丸喜先生が困ってるじゃないですか。くっ付くんじゃありません。」
「むー、けち臭い事言わないでよ!丸喜もこんなの困らないよね?」
「えっと、それは_」

思わず言葉を濁す丸喜

「はいはい、困惑してるでしょう~?」
「あ~!」

代わりに此方は手馴れているのか、諭す様に二人を離す。
少年に気付かれないよう、丸喜がコッソリと感謝の念を送る。
すると青年もコッソリと大丈夫だとウィンクして返す。
此方は此方で、気遣いのし合える間柄を思わせた。

「ほら、そろそろ着くみたいですよ。」

言われて、一同に見上げる。
階段の先にある扉は、もう目前まで迫っていた。
丸喜、そして他の者共に、一様に覚悟を決めた面持ちをする。

「この先に侵入者…恐らく"彼等"が居る。」

丸喜の声には緊張が混じる。
無理もない、今からどんな顔をして会えば良いか分からない間柄の相手なのだから。
しかしそれと同時に丸喜の顔に浮かぶのは、懐かしさと安堵の色だった。
何処か、自分の行いを分かってくれると一縷の望みを見出しているからだろうか。
ここに集った仲間の様に。

「僕は出来るだけ、対話を望む。皆、手出しは最後の手段にしてくれ。」
「うむ。」
「丸喜が言うなら、そーするよ。」

満場一致の異議無し。
その光景を眺めながら、丸喜は意を決して目の前に迫った扉に手を掛け、開く。
ギィイイイイという軋んだ音と共に、暗闇に包まれた踊り場に光が差し込む。

「_!」

開けた視界の先には、黒塗りの大広間。
その部屋の一面を、横長の舞台が占めている。
中央には巨大なモニターが吊り下げられており、如何にもステージと言った具合の部屋だ。
照明は舞台周辺に限られており、所謂観客席側は暗い状態だ。
丸喜達は、舞台の隅に立て付けられた扉にいた。

(ここまで、来たんだね。)

今更ながら怖気づいてる自分がいる事を、丸喜自身は再認識する。
やはり彼の支えが有ったからこそ、現実の改変なんて荒業を成せたのだ。

(…だからこそ、否定されるのが怖い。)

そう思いながらも、彼は進むしかない。
人々の為、己の夢の為、そして何より彼等の為に。
その一歩を踏み出す為に、もう一度決意を固める。

(大丈夫、僕ならやれる。)

心の中で、強く、言い聞かせるように。
そして、ついに丸喜は、舞台へと足を踏み入れた。
同時に、部屋の奥で扉が開き、足音が響く。
コツ、コツ、と規則正しく、それでいて重々しい足取り。
そして丸喜の前に、それ等は薄らぼんやりと姿を現す。
ここまで来たのだと、改めて覚悟し、口を開く。

「…よく、ここまで来たね。雨宮く_」

響く銃声。
丸喜の前に吹く突風。
見れば、武道の一突きが丸喜へ放たれた光弾を四散させていた。
武道は静かに、怒りに満ちた視線を向ける。
丸喜もまた、内心穏やかではいられなかった。

「随分な挨拶じゃないか、君らしくも無い。」
「_会った事も無いのに、僕らしさなんて分かるんですか?カウンセラーさん。」
「…誰だ?雨宮君じゃないのか?」

響いてきたのは、ドスの効いた声。
思わず、問いを投げてしまった。
彼じゃない、”雨宮君”じゃない。
その事実に軽い驚愕を覚える。
そこで漸く、暗闇に慣れた目が侵入者の姿を明確に捉えた。

「雨宮なら、まだ上の方だと思いますよ。騒ぎを起こしたみたいでね、囮になったお陰でここまで侵入出来たよ。」

そう告げるのは、カラスの様な仮面を付けた道化の様な少年だ。
間違っても雨宮蓮、つまりジョーカーでは無い。

「先輩には悪いですが、貴方達の悪行を見逃す訳には行きません!」

その少年の横で息巻くのは、赤毛をした少女だ。
間違ってもキン肉マンでは無い。
言ったら怒られるなこれ。

「あぁ、紹介が遅れましたね。」

と、銃口を再び向けながら、彼は挨拶と共に引き金を引く。

「僕は明智吾郎です。」

撃鉄が降ろされ、銃口が火を噴いた。



_パァンッ!

鉛玉が、的を砕く。

「うひゃぁ!?こりゃおったまげたべ、なんて威力だ!」

農家の男は、その威力と反動にあんぐりと口を開けた。

「こんなもん、貸してもらってもホントにええべか!?」
「あぁ、ウチじゃ型落ち品だからな。問題無い。」

そうスネークが告げると、農家の男は財宝を抱える様に大喜びで走っていった。
ここ幻想郷にある人間の里では、DDによる対悪霊用の武器の供給が大々的に行われていた。
配られているのは小銃や軽機関銃といった細々とした物だが、悪霊の特徴からすれば十分な代物だった。

「ありがとう、スネークさんにウーロンさん。貴方がたのお陰で、里が守れそうだ。」
「礼ならいい、うちの技術部連中の代物だからな。もし会ったらそいつらに言ってやれ。」

スネークの言葉に、感無量といった様相の慧音。
一方のウーロンは、一枚の折りたたまれた紙を広げて読み漁っている。
その様子を、慧音は尋ねた。

「所でウーロンさんは一体何を…?」
「何でも、新しい装備の説明を見ているらしい。ただ難航してるみたいだがな。」

見ているのは、トランスボールに付属した説明書だ。
難解な単語を、何とか解釈しながら読んでいる様子が見て取れる。

「失礼ですが、彼は強いのですか?」

ひ弱な見た目から来る当然の問い。
対し、スネークはにべもなく答えた。

「あぁ、強い。」

28人目

「幻想郷調査 五の一:果たされるは数年前の約束」

 妖怪の山 守矢神社

「いやー話した話した!俺の伝説も新聞になって幻想郷中に伝わるかと思うと、何か心に来るものがあるな!」
「あんたね、そんな調子だと文の奴にあることないこと書かれて後悔することになるわよ?」

 妖怪の山も中腹。
 そろそろ目的地の守矢神社が見えてくるころだ。

「なんか……長かったな。」
「幻想郷にはここよりもっと長い階段があるけど、登ったり降りたりしてみたい?」
「……勘弁してくれ。」
「ちょっとした冗談よ。」
「わらえねー。」

 皮肉を交える余裕を見せる霊夢。
 しかして妖怪の山に架けられた長い長い階段を踏破し、遂に守矢神社の境内に入ることになった。

「そろそろね……。」
「出るのは鬼か蛇か……!!」

 かくして5人は鳥居をくぐる。
 本来神社に入る、という行為に対して『何もここまで警戒する必要はない』のだが、やはり悪霊の件と言い焔坂の件といい、そういった要因が彼らに警戒という選択を取らせた。

 ―――守矢神社。
 まるで遥か太古、それこそ神代の日本の神社風景を切り取ったかのような光景が広がっていた。
 奥に見えるのは鬱蒼とした樹海、青々と生い茂る樹木は悠久の時すら感じさせる。
 勿論、妖怪の山の風景もまさに日本の原風景といった感じではあったが、ここまでくると一種の神聖さすら感じる。

 霊夢たちは鳥居をくぐり、周囲を見る。
 上下左右前後、全てに古代の神秘的なオーラを感じる。本来魔力とはほぼほぼ無縁であるはずの月夜ですら

「あれ……?誰かいるな?」

 神社境内の中心。
 そこに、騎士風の恰好をした美男子が、二振りの剣を手にして鍛錬をしていた。
 虚空に素振りをし、その耀く双眸には一切の曇りも、迷いもない。

「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」
「失礼。」

 文の言う通りだ。
 本当に物腰が低く、敵意すら感じない。
 悪意も、此方への攻撃意思もない様子を見ると、彼こそ……。

「あなたが……ディルムッド?」
「いかにも。私がディルムッドですが……少々お待ちください、神奈子様たちを呼んできます。」

 ディルムッドであろう男は素振りをやめ、守矢神社の拝殿に入った。
 しばらくした後、彼は2人の女性をつれてくる。

「おっ、これまた御大層な人数じゃないか!参拝客か?」
「あっ!霊夢さんひさs……へぁ!?」

 大柄なしめ縄を背にした、どこか荘厳で神々しい女性。
 天宮兄妹と同い年くらいの、緑の長髪が特徴の華奢な少女。

 ディルムッド含め、霊夢たちと同じレベルの実力者だ。

「あ……あな……たは…………!?」
「おま……え……思い出した!!」

「「あぁーーーーーーーーッ早苗/月夜さんだァーーーーーーーーーッッ!!!」」



「し、知りあいだったのね……。」
「むふー。(特別意訳:兄さん、早苗さんとあんなに仲良さげに……羨ましいなぁ、そして笑ってる兄さんは尊いなぁ)」
「……まぁあの2人はほっといて、あんたらに話があるのよ。」

 昔の再開を歓喜と驚愕で喜ぶ早苗と月夜。
 それを確認した霊夢はディルムッドへの話を続ける。

「御客人です。何か用事があるようで……。」
「ディルムッドだっけ?あんたが最近ここに出てきたってのは知っているのよ。だから……それを見込んで質問。」
「何でしょうか?」
「悪霊について知っていることってある?」

 その内容は、やはり悪霊に関係する話だ。

「悪霊?ここに召喚されて以降何度か戦闘をしたことはありますが……詳しいことは、何も。」
「そう……。神奈子たちは?」

 ディルムッドは悪霊の事についてはあまり知らないようだ。
 
 しかし、眼前の神「八坂神奈子」は――――。

「あー、あの黒いのか?」
「目星はついてる、だが……ただで教えるわけにはいかないね。」
「知りたければ力を見せろってこと?」

「そうだ。そこの奴らが果たして本当に悪霊に勝てるかどうかの実力を見せな。」
「で、力を見せる方法は?総力戦か?」

 神奈子は腕を組みながら少し考え、そして提案する。

「私、そこで話してる早苗、そしてディルムッドの3人vs.そこの霊夢除いた5人で三番勝負ってのはどうだ?何回かタッグで挑んできてもいいぞ。」
「ちょっ!?なんで私だけハブ!?」
「私は今回外の世界から来たであろうこいつらに興味があるんだ。安心しな、別にこいつらが負けても食う訳じゃねぇから。」

 神奈子の意思は明確だった。
 彼女は神として、CROSS HEROESの力を裁定しようとしているのだ。

「それならいいけど……死なない程度に手加減しなさいよ?」
「勿論。神様、嘘つかない。」

 かくして、CROSS HEROES対守矢神社&ディルムッドの3番勝負が始まった。

「先鋒は私が行きます。神奈子様。」
「おう、行ってこい。」

 先鋒として出たのは、風祝たる東風谷早苗。
 対するCROSS HEROESは……? 

「俺が相手だ。かかってこい。」
「月夜!?いや戦うなとは言わないけど……いいの!?相手は……!」
「現人神だろ?知ってるさ。その顔を見てやっとこさ全部思い出したからな。積もる話もあるだろう。」

 でも、と言いかける霊夢。
 しかして月夜の決意は固い。

「あいつとは……結構前に約束してたからな。果たさせてくれ。」

 かつての約束。
『次に会ったら、その力を見せてくれ』。
 その約束の成就の時。

 戦闘という形である以上、早苗の手により月夜が死ぬ可能性だってあるのに。
 それでも彼は歩みを止めない。

 その在り方は、もはや弱さを呪うあまり人の道を捨てようとしたときの月夜ではない。
 決意新たに、迷いなく戦う戦士の目だ。

「分かった。そこまで言うなら止めないわ。でも……。」
「死んでも助けない、か?」
「逆ね、『生きることを優先しろ』よ。勿論本気でヤバかったら助けるから。」

 霊夢は、月夜の死を恐れていた。
 彼に何かしらの行為を抱いているわけではない。
 幻想郷を守る一人の仲間として、喪うのが怖いのだ。

「心配すんな。生き延びればこっちのもんだ。」

 魔理沙に改造してもらったボウガンを構える。
 浮かべるは不敵な笑み。
 幻想郷において弱者たる人間―――天宮月夜。

 もっとも弱き者が、その剣(力)を見せる時―――!

29人目

「追憶:暴かれる真実」

明智、もといクロウと少女の持つ銃の引き金が引かれる度に、乾いた音を立てて丸喜へと放たれる。

「フンッ!」

それを一身に庇い、竹刀で薙ぎ払う武道。
振るう仕草は一振りで弧を描き、一発たりとも通しはしない。
更には他の者も後ろに控えている現状、丸喜を守る絶対防衛線は盤石だと言えた。

「クソッ、このままじゃ埒が明かねぇ!」
「小手調べは仕舞いか?ならば此方から行かせてもらうぞ!」

次は、武道が攻める番だった。
巨体に見合わぬ寄り身で、10mは離れていた間合いを瞬き一つの間に詰める。

「なっ_」
「遅いわっ!」

武術における瞬歩だ、武道の名は伊達でも驕りでも無い。
最早、瞬間移動の域に達している。
幾億年の鍛錬が齎した成果が垣間見える。
だが、それすら氷山の一角でしかない。

「ぬおぉーっ!!」
「がっ…!?」
「明智さん!?」

ラリアット一閃。
武道の腕が尾を引いて、クロウの胴へとめり込む。
正確無比の一撃は、武道の巨体に込められた運動エネルギーを是正無く集約して撃ち込み、クロウを砲弾めいて撃ち出す。
ゴウッ、と烈風を巻き起こし、そのまま向かいの壁まで。
激突、とは至らない。

「…手応えが浅い、直前で体を逃がしたな?」
「ご名、答っ!」

歪んだ口角をかっぴらいて、クロウが返す。
武道服の腕部分に付いた蛇腹の痣を見て、防御まで挟んだ事を悟る。
くるりと身を翻し、壁へ強引に着地、両足が壁へめり込む。
3mはあろうかという罅割れを生んだ衝撃を活かし、バネの如く跳ね返って反撃に転じる。
弾丸めいた風切り音と共に、クロウが袈裟斬りの体勢に入った。
振り上げられた蛇腹剣が、怨念を纏う。

「見え透いた攻撃だな。」

それを見届けるまでも無く、武道は血走った眼を細め両手を左右に構える。
白刃取りの体勢だ。
芸と言われるそれさえ、武道の手練に掛かれば実戦レベルの技になる。

「だったら大人しく喰らいなぁ!」

そのまま振り上げた蛇腹剣を振り下ろす。

「サンドリヨンッ!」
「ぬぅ!?」

その刹那、眩い光の奔流が武道を包み、視界を白く染め上げる。
少女のペルソナが放つコウガオン。
威力は武道を怯ませる程度にしかならず、しかし隙と呼ぶには十分過ぎた。

「はぁーーーっ!!」

武道の視界が遮られた瞬間、寸での所で着地。
一転して斬り上げへ転ずるクロウ。
防御を掻い潜った懐からの攻撃だ。
太刀筋それ自体は、武道の胴を確かに捉えていた。

「っそこかぁ!」

だが、直前で、武道は咄嗟に防いで見せる。
紙一重で割り込んだ二本の指先が、クロウの攻撃を阻んだ。

「ふざけた力だなぁ!?」
「貴様とは年季が違うわ!」
「だったら、今度は私が!」

両者の力が拮抗する中、少女が動く。
クロウと挟み撃ちになる立ち位置へ回り込み、レイピアを振るう。
今ならば、と武道の背中へ向け、一閃が走る。

「喰らわぬわぁ!!」
「なっ…!?」

だが、それさえも開いた手一つで掴み取り、防いで見せる。
武道の反射神経も尋常では無い。
予知能力でも持っているかのような動き、そして動体視力である。
武道の超人じみた技量を前に、少女は思わず驚嘆する。

「続けろ、ヴァイオレット!」
「っはい!」

しかしクロウの叫びに、少女、もといヴァイオレットが仮面を剥がす。
再び顕現するペルソナ、サンドリヨン。
同時に、その素顔が露わになる。
丸喜に、動揺が走る。

「っ!」
「何かと思えば、年端も行かぬ少女とはな!」
「現地協力者でね、選ぶ余裕も無いからついて来て貰ったのさ。」

クロウの言う通り、彼女の正体は女子生徒。
恐らくは、まだ高校生だろう。
こんな子どもを、と武道の顔に憤りが宿る。
だがそれ以上に、二人の言動がヴァイオレットの頭にキた。

「甘く見られては困ります!」

ヴァイオレットが、武道の顔面目掛けて回し蹴りを放つ。
それは武術では無く、喧嘩殺法だ。
洗練された美しさなど微塵も無い、ただの暴力。
しかしペルソナに後押しされた力は、十分な威力を秘めている。
_武道でなければ、これで終わっていた。

「どぉりゃあぁ!!!」
「きゃあっ!?」
「があぁぁぁ!!?」

打ち込んだはずの足が、一方的に押し返される。
頭突きだ。
骨の髄まで響く衝撃が、ヴァイオレットを怯ませた。
そのまま拳で捉えていた剣諸共、ヴァイオレット達を振り回す。

「本気と言うのならば、この武道一切の容赦も手心も加えぬ。覚悟せよ!」

そのままクロウを投げ飛ばした後、ヴァイオレットと共に宙に飛び、四肢を両手で捉える。
そこから背中に膝を宛がう体勢、ペンデュラム・バックブリーカーだ。
決まれば、背骨の破砕は免れられない。
急降下する武道とヴァイオレット。
絶体絶命か。

「_待ってくれ、武道!」
「_ぬぅ。」

止めたのは、意外な事に丸喜であった。
咄嗟にヴァイオレットを放り投げ、技を放棄する武道。
地面を跳ねて転がるヴァイオレットの元に、丸喜が立ち寄る。
何故かは分からない事態に困惑しながらも、再び立ち上がり、剣を構えて。

「…丸喜、先生?」
「そうだよ、芳澤さん。」

思わぬ対面に、ヴァイオレットは、芳澤は剣を落とす。
どうして、何が起こっているのかと、訳が分からず混乱するばかり。
何故なら今、目の前にいるのは、紛れもなく。

「あの日、君をカウンセリングした丸喜拓人だ。」
「先生…私です、芳澤、です。」

恩師、なのだから。

「武道、彼女と二人にさせてくれ。二人とも、救いたいんだ。」
「相分かった。」

救う、その言葉を聞いた武道に異論は無い。
クロウたった一人に、武道という壁が襲い掛かった。

「どうして…?」
「驚かせてしまったね。済まない、こんな形で会いたくは無かった。」

困窮する芳澤を前に、申し訳なさそうに眉尻を下げる丸喜。
でも、と前置きして、続ける。

「これは君達を救う為なんだ。芳澤さんも含めてね。」
「何を…一体何を言っているんです…?"途中で見たアレ"について、何か知っているんですか!?」

軽いパニックに陥った芳澤が、襟首を揺すって問い詰めようとする。
だが、即座に飛び出した黄色い影が、芳澤の手をはたき落とした。

「っ!」
「丸喜に触るなよ、救われてる分際で。」

見れば、120cm程の少年の姿。
そんな子どもから向けられた、ドロリとした殺意に近しい敵意に、芳澤が一瞬固まる。

「コラ、駄目じゃないか。」
「あいたっ!も~、丸喜が飛び出すからさ~!」
「それでも暴力は駄目だ、分かった?」
「は~い。」

だが丸喜の言葉で、視線は一瞬にして氷解する。
次いで、丸喜が再び芳澤に向き直った。

「…そうだね。出来れば知らないままが良かったけど、一度思い出して貰う必要があるみたいだ。」
「えっ?」
「君が芳澤かすみである意味を。」

同時に、ステージ中央のモニターに映像が流れる。
映るのは、なんて事の無い交差点。
だが不思議と、見ている芳澤の鼓動が荒くなる。

「オイ、何突っ立っている!?」
「貴様の相手はこの私だ!」
「クソッ、邪魔だ!」

クロウの言葉を余所に、映像は流れて行く_

30人目

「Epilogue」

黒平安京にて
「っ!なんだありゃ!?」
「で、デカすぎる…!?」
安倍晴明はなんとゲッターロボよりも何倍も大きな鬼獣になったのだ!
「あの姿……俺たちの世界の新宿に出現した時のやつか!」
「へっ!こちとらあの頃よりも強くなってんだ。今さらあん時と同じ姿で来ようと返り討ちにしてやらあ!」
「笑止!あの時よりもパワーアップした我が力……思い知るがいい!」
巨大な鬼獣と化した晴明は無数の食手でゲッターロボを叩き落とした。
「うぉ!?」
「今の攻撃のスピード……あの時よりも速いぞ…!」
「本当にあの時よりもパワーアップしてるのか!?」
「どうした?完全な状態でありながらその程度か?ゲッターロボよ」
「チィ…!」

「なんて強さだ…!」
「あれじゃいくらゲッターロボでもまずいぞ!?」
「ゲッターロボを援護するぞ!」
「「「ラジャー!」」」
「俺たちも彼らを援護するぞ!」
『押忍!』
ナースデッセイ号、ガッツファルコン、ウルトラマントリガー、ウルトラマンZも晴明を攻撃するが。
「無駄無駄無駄ぁ!」
が、全然効いておらず逆に晴明が放った無数の槍によりトリガー達はダメージを負ってしまう。
『ガハッ!?』
「う、ウルトラ強え…」
「いくら光の巨人であろうと、今の我には勝てん!」
『クッ…!』



「おい!なんかやばくねえか?」
晴明とゲッターロボやトリガー達による戦うの様子は鬼たちと戦っていたゼンカイジャーとドンブラザーズの目にも写っていた。
「めっちゃピンチじゃん!どうしよう…」
「・・・お前達、1つ質問がある」
「え?俺たち?」
「そうだ。お前達も戦隊なら……アレはあるんだろうな?」
「アレ…?……あぁ!アレか!もちろんあるよ!」
「そうか、なら話は速い。お供たち!合体だ!」
「え!?今!?」
「けどまだ鬼が残って…」
「いいから行くぞ!」

「皆!俺たちも行こう!」
「おうよ介人!」
ゼンカイザー以外のゼンカイジャーの四人は自身のギアを裏向きにしてギアトリンガーにセットしハンドルを回す。
ドンブラザーズの5人もそれぞれドンブラスターに自身のロボタロウギアをセットする。
「アバターチェンジ!ロボタロウ!」
《いよ〜っ!ドン!ドン!ドン!ドンブラコー!》
「「「「「「「「「ハァ!」」」」」」」」」
《ビッグバン!》
それぞれドンブラスターもといギアトリンガーのトリガーを引くと、ドンブラザーズの5人はそれぞれロボタロウになり、ゼンカイジャーの4人は巨大化してそれぞれジュランティラノ、ガオーンライオン、マジーヌドラゴン、ブルーンダンプに変形した。
「え!?あっちは合体する前から巨大化してるの!?」
「ややっ!?そういうそちらは合体する前は元の大きさのままなんですね」
「そうですね。こっちは合体した後に巨大化を…」
「説明は後だ!お供たち!大合体だ!」
《ドン!ドン!ドン!ドンブラコ!大合体!》
するとイヌブラザーとオニシスターが両足になり、サルブラザーが両腕なり、キジブラザーが両肩になりドンモモタロウと合体!
《完成!ドンオニタイジン!》
「いざ、出陣!」
《いよっ!銀河一!》
ドンブラザーズの5人はドンオニタイジンへと合体し、更に巨大化した。
「ウォオオオ!かっこいい!よーし!だったらこっちも!」
そう言いゼンカイザーは先程の他のゼンカイジャーと同じように、自身のギアを裏向きにしてセットし、ハンドルを回した。
《ビッグバン!》
「全開合体!」
《全開合体!!ゼンカーイ!》
すると既に巨大化&変形してた他の4人が再度変形し、それぞれジュランとガオーン、ブルーンとマジーヌの組み合わせで合体!
《ガッシーン!ゼンカイオー!ジュラガオーン!ブルマジーヌ!》
「「ゼンカイオー!ジュラガオーン!」」
「「ゼンカイオー!ブルマジーヌ!」」
それぞれゼンカイオージュラガオーンとゼンカイオーブルマジーヌに合体した。
「ちょわー!」
そしてゼンカイザーはゼンカイオージュラガオーンに乗り込んだ。

「なんだありゃ!?」
「あれもCROSS HEROESのものか?竜馬」
「いや知らねえよあんなロボット!」
「ほう…まさかゲッターロボ以外にも合体するロボが存在するとは……面白い…!」

「いざ、尋常に…勝負勝負ー!」
「全力全開だー!」