ストラップ
空が夕暮れに染まる学校の帰り道。
私は帰り道の途中にあるゲームショップの外に置いてあるガシャポンにふと目が行った。
それは『謎ガチャ』というタイトルのガシャポン。
何が出てくるのか、開けるまでは分からないらしい。
興味を持った私は、ガシャポンに百円を入れ、ガチャを回した。
ーーガラ、ガラ、ポン
出てきたカプセルを開けて、中身を確かめるとそれは青いストラップであった。
ストラップか......
もっと珍しいものが出てくると期待していたせいか、少し残念な気分になった。
残念な気分になった、ああ、残念だ。
しかし百円のストラップだ、百円の分の働きをしてもらおうではないか。
友達にあげようと思う、もちろん女だ。
ストラップみたいなチャラチャラしたものを好むのが女だからな。
この男子トイレのマークみたいな青いストラップをあげれば大喜びだろう。
男子たる者、女子の1人や2人をはべらせたいからな。
「ただいま戻りました!」
「なんか雰囲気変わった?」
「男子3日会わざれば刮目して見よ!ですよ母さん!」
「そう、3日どころか朝ぶりだけど。」
「行ってきます!」
「行ってきます」と息巻いたのは良いものの、私に百円のガシャポンから出たストラップを渡す友人などいないため、十歩進んだところですぐに足を止めることになるのだが。
まだ男女問わず遊ぶ年齢ではあるが、家まで向かう友人となると、候補は男に絞られてしまう。
しかし女に渡さなければ、このストラップは百円の価値がなくなってしまうのもまた事実なのだ。
私の脳が家のおおまかな場所がわかる女の名前を挙げようとした時、後ろから名前を呼ばれる。
考え事をしている最中に私の名前を呼んだ者の姿を確認し、私は辟易した。
記憶力には自信がある。指名手配されている山田太郎だ。間違いなく、俺の目の前には、5歳の内藤りかちゃんの顔面を酸でドロドロに溶かした後釘バットで殴り殺し、それを姉のみかさんに見せた後で同じことをし、二人の残骸をS湾に沈めた凶悪殺人者が立っている。似顔絵の通り邪悪な顔つきだ。全身から邪気を放っている。一番恐ろしいのは、明らかに俺を殺すためのナイフを持っていることだ。運動能力が壊滅的な俺は、こいつに殺されると本能的に悟った。それもえげつないやり口で。刺される直前、青いゴミが鋭い光を放った。
遅いーーー
ーーーー遅すぎるーーー
刺される直前、そのストラップは何か覚醒したかのような光を放ち、熱を帯びたが、刺される直前では何の助けにもならなかった。
衝撃。熱。鉄色の吐き気。
視界が暗転しーーーーー
ーーガラ、ガラ、ポン
俺は、ガシャポンを回していた。
「!???」
出てきたのはあのストラップ。
(や、やれやれ、熱中症にでもなっていたか?ずいぶんな白昼夢じゃないか……)
と思ったのも束の間、今度はゾンビの大群が押し寄せてきた。
「う、うへぇ……!? うひゃああああああああ!!」
俺は情けない叫び声を上げて逃げ出した。なんでいきなりゾンビが現れんだよ!?
俺は全力疾走で外に出た。
「な……なんだよ、こりゃあ!?」
外に出て、さっきの一億倍は驚く。
「みんな、ゾンビになってる……!」
街行く人は全てゾンビと化している。
「ど、どうなってんだよ……」
その時、ストラップが再び光を放つ。
あまりの眩さに俺は思わず目を閉じた。
また、ガチャポンを回していた。
ーーガラ、ガラ、ポン
カプセルを拾い上げることもできず、頭の中で思考が大渋滞していた。これは夢か?現実か?
とりあえずカプセルを……待て。ストラップを触るとさっきの二の舞になる可能性が高い。
ゆっくりとしゃがみ、念の為ハンカチ越しにカプセルを手に持つ。半透明の殻越しのストラップは、青く透明感のあるプラスチックのようで、人型をしている。これはなんの形を模しているのか?改めて見ると、男子トイレのマークというよりは、むしろ女子的な雰囲気が
ネ、ソウ ダヨ