僕と彼女が付き合うまでの物語

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  • 恋愛
  • 自由に続きを書いて
  • ラブコメ
  • ヒロイン増やすのあり
  • 残酷描写無し
  • 登場人物が死ぬの無し
1人目

僕は彼女に恋をしている。
「夏坂クレア」──外国人とのハーフで、髪色は生徒指導の先生に毎日怒られるような美しいブロンド。
容姿は淡麗、美しいっていうのは陳腐な表現だけど、やっぱりそれが一番似合う表現だ。
僕が惚れた理由は恥ずかしいから聞かないで欲しいんだけど──はっきり言って、一目惚れだった。
そんな一目惚れから一週間、僕は彼女を待っていた。
我が高校の、町が良く見える──そんな屋上で。

三日前、下駄箱にラブレターをぶち込んだ。僕がこれまで過ごした薄っぺらな16年で持てる限りの語彙を尽くした最高傑作だった。
そしてそこに書いたのだ。『今日、屋上で貴方を待つと』

果たして彼女は来てくれるのだろうか?ドキドキしながらその時を待って──待ち続けて──心臓に早鐘を打たせ続けて──。

ガチャリと、眼の前の扉が開いた。
そこにいたのは──

2人目

教頭の吉田純一(54)だった。なんでだよ。いや、本当になんでだよ。ちなみに僕が年齢を知っているかってそりゃ毎回、朝礼で

「今年54になる教頭です」って言うからだ。いや興味ないから!?てか、なんで教頭いるんだよ!夏坂さんか、夏坂さんの代理の友達いるだろ!なんで、教頭!?もう、ここだけで青春の淡い思い出が灰色通り越して真っ黒になりかけてますよ!?え、今から僕教頭とラブストーリー始めるんですか??勘弁してください。いや、冗談抜きで真面目に。

そんな、頭がショートしかけた僕を見て教頭は気まずそうに言う。

「あー、屋上でタバコ吸ってたの黙ってくれるか?ほら、飴ちゃんあげるから?学校中禁煙で喫煙者には辛いんだよ。じゃあ、私は行くからね。本当に言わないでくれよ!最近厳しいんだからな」

そう言って、既にズレているカツラを左手で押さえながらドタバタと階段を降りていく教頭。

「はぁぁぁ、緊張したぁ!てか、このタイミングで教頭とか……」

そんな独り言を言っていると階段の方からこちらの方に登っていく音がした。

「やっほー、今教頭がめっちゃ焦って降りてきたんやけどどしたん?」

そして、彼女は

3人目

そして、彼女は僕にニコリと微笑みかける。
「それが教頭の奴、ここでタバコ吸おうとしてるのを僕に見られて、「黙っててくれないか」ってズレたカツラにも気が付かずに言ってきたんだ」
僕がそう言うと、彼女はおかしそうに腹を抱えて笑った。
「あはは!なにそれ、教頭めっちゃ天然じゃん!」
ひとしきり笑った彼女は目じりに溜まった笑い涙を拭った。
「それで、私にこんな臭いラブレターを送ったのは君かなぁ~?」
彼女は悪戯っぽくニヤリと笑いながら僕の書いたラブレターを取り出して僕に見せつけた。
きっと、僕の顔は今、すっごく赤くなっているだろう。彼女は僕の表情を察したのか更にニヤニヤと笑い僕に詰め寄って来た。こんな恥ずかしい思いをするくらいならいっそ殺してくれ。そんなこと思った。
「でも、まあ、君みたいに素直に好意を伝えてくれる人、嫌いじゃないよ?」
そう言い屋上に来た時と同じような優しい表情で僕に微笑みかける。その言葉を聞いて、その表情を見て、僕は思わず舞い上がってしまい─
「あ、貴方が好きです!!」
昨夜、徹夜で考えたセリフなんか忘れてそんなことを言ってしまった。
そして、彼女は言う─

4人目

「だめだよ。」

一瞬、時間が止まったような心地だった。
体の熱が急激に冷めていくのを感じる。

酷い耳鳴りで、幸いにもその後に続く言葉は聞こえなかった。

今、僕はどんな顔をしているんだろう。

「あ、え、あはは、まあ、そうですよね...。」

顔を二の腕で隠して、一二歩、彼女から後ずさりする。
当然と言えば当然。成功する自信なんてなかった。
失敗するだろう、って予測はしていて、でもそれも含めて彼女の前に立ったつもりだった。

情けない、泣いている。
ぼやけた視界から彼女が近づいてくるのが見えた。



「ーーーえ、ちょ、なに泣いてんの!?アタシの話聴いてる?」


顔を隠した腕を掴んで、翻す。
空の青さを写した瞳が宝石のように輝いて、僕を刺す。

その光から逃げられない程近くに寄って、彼女は言った。


「"まだ"、だめ!って言ってんの!!」


再び、耳鳴りがした、けれども、それを貫くほどの大声で彼女は言う。

「私のことが好きなら!私も君のことを好きにさせて!!」


目一杯に映る彼女の白い肌が、少し赤みを帯びている気がした。

「...返事!!」

答えは、言うまでもない。

5人目

「おせち!」
返事を言いかけていると、不意に空から何かリズミカルなよく通る声が聞こえてきた。
「おせち!」
そう、羽を生やした和田アキ子が軽やかにオシャレースのステップを踏みながら飛来してきていたのだった。
「おせ……」