プライベート タフ外伝 尼崎のS ③
最大文字数を500字に増やして見ました。
今まで通り、マックスで使ってももちろん100文字程度でもどちらでもOKです。
「しゃあっ」
パァンと破裂したような音が響く。ここはキー坊の親父さんが所有している道場だ。
「今日は張り切っとるなぁ熹一。友達が見とるからか?」
そう微笑みながら言うのはミットを持ったキー坊の親父さんだ。
大人というのもあるが、側から見ても強烈なキー坊のハイキックを受け止めて、一切体幹がブレていない。
そして、父親の所作には古武術を彷彿とさせる強かな美しさがあった。
「関係ないわっ」
照れ隠しのように二撃、三撃と見舞うキー坊。それを難なく、しかしどこか噛み締めるように受け止める親父さん。
格闘技という暴力で紡がれる少し変わった関係。だが、そこには親子の絆が確かにあった。
無邪気にキー坊と親父のスパーリングを眺めてる弟。それを見て僅かに兄の心は痛んだ。弟ももうすでに地獄への入り口に立っているのだ…
染谷狂一はヤクザの構成員だ。
仮にシマキンが狂一を倒したとしてもシマキンは構成員に手を出したことでヤクザに狙われることになる。それが兄の計画だった。
そんなことをすればシマキンの家族である自分達も狙われることになる粗だらけの計画といえる。
しかし家族全員が狙われることも承知の上での計画だったのだ。小学生であるシマキンに服従し男としての尊厳を奪われた。年頃の男子にとっては耐え難い屈辱だ。
自分の屈辱的な姿を知る者は自分含めて全員消えてほしい。兄は家族全員を巻き込んでシマキンを倒す策を実行したのだ。弟は兄を信頼しきっており作戦の真の全貌を知らないでいた。親には作戦を知らせていない。
羞恥心と屈辱は兄を狂わせていた。
「シマキンさえ消えれば俺があいつに犯されたことを知るのは俺だけになる。」
「俺がシマキンの宿題をやったり遣いパシリやらされてヘコヘコしてたのは家族全員が知ってる。みんな消えろ」
狂気は伝染していた。弟達も知らない兄の本性。
タトゥー連合"血染めのナイフ"オソメ・ブラザースが小学生に負けた。
この驚くべきニュースは、瞬く間に尼崎のアウトロー界隈に広がった。
マネキンのような顔をしたモブアウトローたちは、これを下剋上だと声高に主張した。島木暴走族を讃え、タトゥー連合を嘲笑したのだ。
タトゥー連合の面々はこの屈辱に殺気立ち、シマキンはもちろん、その家族や友人に至るまでに牙を剥く勢いだった。
「おいっ染谷」
入院中のはずの染谷兄弟が跪いている。
「はいっ」
「おどれらがあんなガキにいてこまされたせいでワシらの面目丸潰れや」
葉巻を燻らせ、染谷兄弟を冷たい眼で見るのは、タトゥー連合組長、鬼塚竜だ。
身体にはびっしりと大小様々な傷跡が刻まれており、それがこの男の肉体が歩んできた凄惨な歴史を物語っている。
「どう責任取るんや? あーっ?」
ぎろりと二人を睨みつける鬼塚。側に立つ側近たちは、場が絶対零度に置かれたのかと錯覚した。
それほどの眼力を向けられているのにも関わらず、染谷兄弟の身体は微塵も震えていない。
「無論、命で贖わせていただきます」
染谷兄弟は揃って組長を見つめる。
「ただし、島木とその家族の命で以て」
許された染谷兄弟だが面子は丸潰れだ。
殺人を厭わない勇猛さが評価され異例の若さで組での出世ができそうだったのに島木の奴らをなんとかしない限り無理だ
それにシマキンを殺さない限り兄弟は死んだように生きるような人生になる
喧嘩の強さだけが取り柄だったのにシマキンの暴力に身も心も屈したのだ…あの時の光景を思い出すだけでも殺意が湧く
シマキンに執拗に痛めつけられ狂二は洗いざらい話した
「あー?おかしいのう なんで兄貴は家にキー坊とかいうババタレがいるなんて嘘ついたんじゃ?なんでわざわざハナクソみたいなヤクザもんを家に来させるようなことを言ったんじゃ…」
次の瞬間シマキンは腹の底から響くような重低音の唸り声をあげた
「あいつ…ワシに逆らったんか…!」
シマキンは染谷兄弟を捨て置いてどこかに駆け出した。
「あいつはいらん…逆らったらどうなるかたっぷり分からせてから犯して殺してあの世に送ったるわ…!」
兄貴がどこにいるか分からなかったが兄貴と関係してる奴らを片っ端からぶちのめせば何か聞き出せるはずだ
シマキンは兄の部屋から見つけたクラス写真を手に取り兄が通ってる学校に向かった