男が家に帰るまで
俺は今から家に帰ろうと思う。
厄介な事に今朝通勤中にみたのだが、今日は工事をしていていつもの近道が使えないらしい。
だからいつもとは違う道を歩かないとならないか
普段なら右に行く所を左に行ってみれば、いままで気づかなかった大きな公園があった。
子供を連れてきて遊ぶには十分広そうだが、今は夕方すでに人影は一人もない。
見た所公園を突っ切ったほうが近道らしいので、俺は家に帰るべく公園の中へ足を踏み入れた。
「お嬢ちゃん…私が見えてるのって…ここにいるじゃないか」
我ながら冷淡な答えだ。少し考えれば透明人間ごっこ()的な何なの戯れだとわかる。なのに俺はなんて生真面目…いやかなり嫌な返事をしたのだろう……
「私、宇宙人なの。そしてね、光学迷彩してた筈なんだけど、なんでおじちゃんは見えるの?ひょっとしてこの星のひとって皆見えるの?」
「はは。宇宙人ごっこか?幼稚園でそういうの、流行ってるの?」
確かに、最初公園を一瞥したときは誰もいない様子だった。この女の子はいつからブランコにいた?
ふしぎに思いつつも、こんな小さな子がこの時間帯に一人でいるのはまずい。
「もうすぐ日が暮れる。親御さんは近くにいるの?」
女の子は空を指差す。
「あの赤いお星さまがお父さんで、一番ピカピカって光ってるのがお母さんだよ。」
と少女は天真爛漫に空を指す。
「……あのねお嬢ちゃん、遊びたい気持ちはわかるけど、もうこんな時間なんだよ。おじさんと一緒におまわりさんのところへ行こう。」
そう言い少女に立ち上がるよう促す。
「……?おじちゃん“おまわりさん”って場所に連れて行ってくれるの?」
「んーまぁそんなところだ。」
「わかったー!」
と愛らしい元気な返事をし、ブランコから降りた少女は勢いよく俺の腕を掴んできた。
「っちょ、おい!……って……」
少女に腕を掴まれた勢いで一瞬反応が遅れたが、その少女には明らかな異変があった。
「冷たっ……」
少女の手は人間どころか生物ではありえない、そう思うほど冷たかった。確かに掴まれてる感覚はある、だがまるで少女が触れた箇所だけ氷に包まれているような、極端な冷たさだけがあった。