プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:10「オペレーション:フルメタル・パニック!」

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1人目

「Prologue」

【決着・悪霊デスマッチ編】

 ロビンマスク、ウォーズマン、ヴァイオレット、クロウの4人は、
悪霊のリング上で連携が取れず焦りが募っていた。
ロビンマスクはヴァイオレットに向けて、全力で戦うように激励するも、
ヴァイオレットは、丸喜拓人が実現しようとしている世界、
即ちIFの世界に心引かれている。丸喜の望みを阻止する事は自分の大切なものを
再び手放さなければならない事と同義だからだ。

 冥鎧士が彼らに突進してくる中、ウォーズマンはロビンマスクが
自身の恩人であることを明かす。自分を絶望のどん底から救い上げてくれた恩人。
しかし、辛い過去や心の痛みを乗り越えるのは他ならぬ自分自身でしかない。
その言葉に心を動かされたヴァイオレットは、冥鎧士の攻撃からウォーズマンを守りたいと言う強い意志に呼応してペルソナ・サンドリヨンを呼び出し、
光魔法「マハコウガオン」を放つ事によって冥鎧士は弱体化。クロウやロビンマスクの
怒涛の追撃が重なり、最後はウォーズマンの必殺技、ダブルスクリュードライバーによって冥鎧士の胴体を貫通、コアである赤核を粉砕するのであった。

【カルマ教会編】

 神浜市に戻った七海やちよは調整屋でグリーフシードを補充していた。
黒江は街中で邪悪な気配を感じ、路地裏でOLの女性を襲っている異形の姿を発見する。
黒江は魔法少女に変身して交戦に入るが、突然の奇襲により体力を奪われてしまう。
しかし、そこにゲイルが現れ、黒江を危機からを助け出した。
アンドラスと名乗る敵は、ジェナ・エンジェルの関係者であり、
カルマ教会の一員であることを明かす。黒江は立ち上がり、ゲイルと共に戦うことを決意。ゲイルもヴァーユへと変身し、アンドラスとの戦闘態勢に入った。

 黒江とゲイルの連携攻撃によりアンドラスは倒されたものの、その最期の言葉は、ジェナ・エンジェルの計画が既に動き始めていることを示していた。
戦いを終えた黒江とゲイルは、この事を仲間たちに知らせるために神浜市の各地に向かう。

【悪霊事変 終焉】原文:霧雨さん、ノヴァ野郎さん

 遂に顕現した廃棄孔の怪物。
怪物は数を加速度的に増殖させる悪霊の軍勢、そして廃棄孔から脱出した焔坂と共にCROSS HEROESに最後の戦いを挑んだ。
圧倒的暴威と力に圧倒され、数多もの戦士が倒れ苦戦してゆく。
しかし、ここで怪物に道を譲れば世界は滅びる。
戦士たちは最後の力を振り絞り怪物の持つ5つの赤核の破壊に挑む――――!

 次々と現れる壊轟の絶魔獣軍団を相手に追い込まれていくGUTSセレクトと
二人のウルトラマン。
絶体絶命のその時、CROSS HEROESと幻想郷中の全ての者達の諦めない心が
奇跡を起こし、ウルトラマンネクサスが降臨、彼の協力もあって壊轟の絶魔獣軍団を
全滅させることに成功した。

 壊轟の絶魔獣の軍団を倒した彼らは廃棄孔の怪物と戦っている仲間達を助けに
すぐさま神の湖へと向かう。
そこで彼らが目にしたもの、それは廃棄孔の怪物と戦っているマジンガーに
よく似た謎のロボットだった。
その名はヒソウテンソク、廃棄孔の怪物を倒すためににとり達河童とスネーク達DDが
共同で開発した幻想郷初のスーパーロボットだ。

 ディルムッドの剣戟が、悟空の龍拳が、2人のウルトラマンの光が、
幻想郷の希望たる最終兵器『ヒソウテンソク』の一撃が怪物を追い詰める。
GUTSセレクトと3人のウルトラマンはヒソウテンソクと力を合わせて
廃棄孔の怪物が持つ5つの核のうち2つを破壊することに成功するのだった。

 一方その頃、彩香は港区での仇たる焔坂に戦いを挑んでいた。
港区で多くの同胞を彼女の手によって殺されている。故にこそ、
これは雪辱戦(リベンジマッチ)だ。
神體たる剣、アマツミカボシの剣戟と共に焔坂と互角の戦いを繰り広げるも相手は
やはり鬼種。少しずつ、されど確かに追い詰められつつあった。
嗜虐心と共にその槍の穂先を彩香の喉元に突きつけんとする。だが彩香はあきらめない。

 彼女の身体をつき動かすのは意志と遺志。数多の託されたものの為に身体を動かし……
アマツミカボシの力を完全に制御するに至る。
アマツミカボシの力を操れるようになった彩香は焔坂を圧倒。打倒に成功する。

焔坂が斃れたことに伴い、廃棄孔の怪物の力が弱体化。
ソロモンの指輪の力と幻想郷に住まう民衆、戦士たちの声援を受けた
ナポレオンの宝具によって、遂に廃棄孔の怪物と焔坂百姫は斃れ、
幻想郷での戦いはひとまずの区切りを迎えるのだった。



【トゥアハー・デ・ダナン編】原文:ノヴァ野郎さん

 幻想郷で激戦が行われてるその頃、リ・ユニオン・スクエアに残ったメンバーは
神浜市やクジゴジ堂などに向かうメンバーとトゥアハー・デ・ダナンの残るメンバーに
分かれていた。
トゥアハー・デ・ダナンに残ったメンバーが機体の整備や雑談などをしていると
メンバーが少なくなる時を狙ってたアマルガムによる奇襲を食らってしまう。
宗介はその場を他のメンバーに任せ、自身はテッサがいる艦長室に向かうと、
そこにはレナードと更には捕まってたはずのかなめがいたのだ。

 ソフィアに精神を乗っ取られているかなめは宗介とテッサの二人に
レナード達アマルガムに協力することを伝え、
レナードは計画がもうすぐで実行されること、そのためにジェナ・エンジェルと
手を組み更にかつてゼンカイジャーと戦ったトジテンドの技術を手に入れたことを伝える。
レナード達はその場で宗介達を殺そうとするがトゥアハー・デ・ダナンを離れていた
メンバーが戻って来ることを知り撤退、しかしかなめの精神が
ソフィアに乗っ取られてることを知らない宗介とテッサは大きなショックを受けてしまう。

 そんな二人の前に現れたルクソードやヴリトラは二人に何があったのかを
問いただすのだった。
一方他の待機メンバーはアマルガムの傭兵集団を相手していたが、
傭兵集団はクダックのコピーやカッシーンなどを引き連れ、
数でメンバーを追い込んでいた。しかしそこにクジゴジ堂から戻ってきた
ゼンカイジャーやソウゴ達が駆けつけクダックやカッシーンの軍団を撃破、
傭兵集団はその場を撤退しようとするもそのうちの一人を
なんとか取り押さえることに成功する。

 その後、宗介とテッサが無事かどうか確認するために一同は二人がいるであろう
艦長室へと向かうのであった。

2人目

「戦いの終わり、そして次なる戦いへ」

「廃棄孔の怪物の撃破を確認、幻想郷中に出現してた悪霊の反応も全て消えました!」
「よっしゃああああああ!」
「やったぞ!!」
廃棄孔の怪物を撃破し、喜ぶGUTSセレクトの面々、しかし……
「……え?」
突如としてナースデッセイ号ないの消灯や電子機器が停止、
そして……
「うわぁああああああああ!?」
ナースデッセイ号とガッツファルコンはまるで力が尽きたように地上へと落下していく。
「な、なんだぁ!?」
「もしかして故障かエネルギー切れ!?」
「このタイミングで!?」

「っ!?デェア!」
「デュワッ!」
トリガーとZ落下していくナースデッセイ号とガッツファルコンをすぐさまキャッチした。
『皆大丈夫!?』
「な、なんとか……」
「とりあえず地面に降ろしてくれ、原因を調査する」
『わ、わかった』
トリガーとZは、ナースデッセイ号とガッツファルコンを開けた場所に下ろすのだった。
「・・・」
一方ネクサスは廃棄孔の怪物の怪物が撃破されたことを確認すると、もう自分がやることはないと…あとはCROSS HEROESやこの幻想郷に住んでる者達だけで大丈夫と…そう判断したのか、何も言わずに光となって消えたのだった。



降ろしたあと、GUTSセレクトはすぐさまナースデッセイ号とガッツファルコンの点検を行った。
「……どうだった?」
「こりゃ酷えぜ、あっちこっちボロボロだ」
「あぁ、このままじゃもう一度飛ばすのは難しいだろうな……」
「そうか……修理にはどのぐらい掛かりそうだ?」
「どの部位もかなりのダメージを受けてることを考えると、DDの協力ありでも早くて数日は掛かるな……」
「そうか……なら仕方ない、アキトとマルゥルはDDと協力してナースデッセイ号とガッツファルコンの修理を頼む、残りのメンバーとハルキさんは修理が終わるまで幻想郷の復興作業を手伝うぞ」
「「「ラジャー!」」」



一方その頃、トゥアハー・デ・ダナンでは……
「……なるほど、そのようなことがあったのか……」
「はい……」
「・・・」
ルクソードやヴリトラは宗介やテッサから事の顛末を聞いていた。
「しかし……今だに信じられません……かなめさんがアマルガムにつくなんて……」
「……我々はその千鳥かなめという人物のことを知らないが、その反応を見るに余程信用してる人物ということか……」
「はい……少なくともアマルガムにつくような人ではなかったです……」
「そうか……」
4人が話をしているとそこに他のメンバーも駆けつける。
「ソースケ!テッサ!」
「二人とも大丈夫!?」
「私達は大丈夫です…ですが…」
「……なにかあったのか?」
「はい……神浜市に行った皆さんは?」
「まだ戻ってきてないけど、多分こっちに向かってる最中だと思う」
「そうですか……わかりました、神浜市に行った皆さんが戻り次第今ルクソードさん達に話したことを話します。今回のことは神浜市に行った皆さんにも関係してることですし……何よりも、私も宗介さんも少し心の整理をしたいですので……」
「……そう、わかったわ」

3人目

「戦いの終わりと始まり」

「き、ひ、ひ。寝覚め早々、面白そうな小僧に会えたものだの……やはり、人間は良い。
脆弱な生き物が己の命を最大限に燃やし、 足掻き、眼前に聳える苦難を
撥ね除けんとする姿は……わえにとって何よりの愉しみよ」

 邪竜の化身・ヴリトラはインド神話にまつわる「障害」を司る神の一柱である。
神に抗い、人に試練を与える……そんなヴリトラが宗介の背中を見つめ、
蛇のように長い舌をチロチロと出し入れし、妖しい笑みを浮かべている。
絶望の淵に立たされても尚、決して生きることを諦めず、困難と向き合う……
今ここに、そんな者達が集まりつつある……ヴリトラにとってはCROSS HEROESとは
言わば愉悦の満漢全席、これから起きる出来事に胸を躍らせるのだった。

「さて、このゲーム……既にダイスは振られている……果たして、どんな目が出るか……」

 ギャンブルを愛するルクソードもまた、ヴリトラ同様にCROSS HEROESが勝ち、
すべてを総取りするか、それとも敗北と共にすべてを失い、奈落に落ちるか……
ふたつにひとつのギャンブルの結末を心待ちにするのだった。


 ――幻想郷。

「……まったく、あれだけの大量の穢れを頭から被るなんて、
普通の人なら耐えられないわよ。信じられない」

 廃棄孔の怪物との決戦において、忌油の雨を浴びた悟空。
戦いが終わるなり、すぐさま診療所に担ぎ込まれたが……

「ふうーっ、あんがとな。随分楽ンなったよ」
「大したものだな。それをいとも簡単に治す薬を作れるとは」
「あら? 私はただ、自分の薬で治せるから治した。それだけよ。類稀なる天才ですので」

 そんな悟空に治療を施した八意永琳に対し、ピッコロは素直に賞賛の言葉を送ったが
永琳はそれを軽くあしらう。幻想郷全土を襲った悪霊の忌油に対するワクチンを
即席で作り出し、配布したのも彼女の仕業だ。「あらゆる薬を作る程度の能力」。
その手際の良さは流石は月の頭脳と言うべきものだった。

「でも、あなたのおかげでより強い抗体が作れた。その事については感謝してるわ」

 永琳の能力は、無から有を生み出せるものではない。
その薬にまつわる材料が必要となる。つまり、大量の悪霊の忌油を一身に浴びても
跳ね除けた悟空の強靭なる肉体と精神力が相まって
永琳はより強力な抗体を大量生産、幻想郷全土に余さず配布することができたのだ。

「貴様もあの油を浴びたのだろう……平気なのか、ペルフェクタリア」
「ああ……問題はない。孫悟空に比べれば、些細なものだ」

 ペル、そして月美も此度の戦いで負った傷の治療を受けていた。

「凄い戦いでしたね……今回ばかりは、もうダメかと思いましたよ」

 退魔師の名門の家系である月美とて、あれだけの数の悪霊と切り結ぶなどと言う
経験はなかっただろう。まさに最大規模の退魔戦に違いない。

「だが、貴様らはそれでも生き延びた。誇って良い。戦いにおいて、
最後まで生き残ることこそ何よりの経験値となるのだ。貴様らは確実に強くなっている」

 ピッコロのその言葉に、ペルや月美はどこか嬉しそうな顔をするのだった。

「ところで、あの娘……天宮彩香。とうとう神霊とやらの力に覚醒したようだな」
「ああ……」

 焔坂百姫との最終決戦の最中、彩香の内に眠る神霊・アマツミカボシの権能は
覚醒した。その時に、ペルは眼の前でその様を見ていたのだ。

「神との同化か……覚えが無くもないが……ただの人間が神の領域に近づく。
果たしてそれは、如何なる意味を持つのか……」

 ピッコロは感慨深そうに言う。
かつてピッコロも、先代の地球の神と同化したことがある。それは元々善と悪に
分かたれていたひとつの存在だったモノが、本来の姿へと戻ったと言う事。
だが彩香は違う。彼女は元々ただの人間だ。それが神霊と同化するなど、
前例のないことだった。
人を超越せしものを神と呼ぶのなら、神霊とひとつになった彩香は……

「で、でも、そのおかげでメサイア教団の鬼は斃されて
幻想郷も平和になったんですから……」
「強すぎる力は身を滅ぼす……かつて、ある男が言っていた言葉だ」

 月美がフォローを入れるも、ペルはどこか影のある表情をする。

「過ぎたる力を手にした者は、己を破滅させる危険と常に向き合い続ける事になる。
それは必然だ」
「そんなこと……ッ!?」

「だが、その力を御し切ることができれば……あるいは……」

 ペルはそこで言葉を切り、それ以上は何も言わなかった。

「そう言う事。若いのに感心だね」

 一同の前に、ヒビキが姿を現す。

「やあ」

 シュッ、と右手を額の前で振って月美に挨拶するヒビキ。

「その声……ヒビキか! おめえ無事だったんか。おかげで助かったぞ」
「いやいや、礼には及ばないよ。現役を引退して静かで長閑なこの幻想郷で
悠々自適に暮らすつもりだったが……正直、君らがいなかったら
俺だけじゃここを守りきれなかったかもしれないしね」

 ヒビキはそう言い、ペル達に視線を向ける。

「さっきの話だけど、強い力を手に入れた時、心も鍛えおかなくっちゃあ、
それに引きずられちまう。俺の鬼の力も、一歩間違えれば魔化魍と紙一重なんだ。
大事なのは、自分自身を信じること」

 一方、診療所の外では、幻想郷の住民とCROSS HEROSの面々が共同で荒れ果てた地の
復興作業にあたっていた。

「ふん、くだらん……」

 診療所の屋根の上で寝転ぶベジータはその風景をぶっきらぼうに眺めていた。

「わあ、立派なお野菜。お手伝いしますね」

 秀仁学園の屋上で家庭菜園を営んでいるノワールこと奥村春は率先して
復興作業を手伝っていた。

「おお、ありがとう。こりゃ助かるわい」
「ふふ、どういたしまして」

 畑を耕すのは、幻想郷に住まう老人達。
彼らの農作業を手伝いながら春は笑顔で答えるのだった。

「おにぎりを作りました。皆さん、どうぞお食べになってください」

 クィーン/新島真とフォックス/喜多川祐介が復興作業に勤しむ住民達に向けて
おにぎりを振る舞っていた。住民たちはおにぎりを受け取り、美味しそうに頬張っていた。

「たくさん作ってあるから、遠慮せず食べるといい」

 祐介がおにぎりを配りながら、幻想郷の住人たちに言う。

「やったーッ! おにぎりだァーーーーッ!!」

 スカル/坂本竜司が運んでいた機材を放り投げ、おにぎりを配っている二人に駆け寄る。

「お、おい……ッ!?」
「スカル、行儀が悪いよ。先に幻想郷の皆さんに……」

 祐介と真はそんな竜司を注意するが……ひょいひょいひょい、
欲張って3つもおにぎりを頬張る。

「うんめェーーーーッ!! なんだこのおにぎり!? 超うめえぞ!?」
「アンタは少しは遠慮しろッ……ってのッ!!」

 パンサー/高巻杏のフルスイングハリセンが、竜司の顔面に叩き込まれる。

「おぶへァッ!?」

 勢い余って空中で一回転し、土に頭から突き刺さってしまう竜司だった。

「まったく……スカルはもう少し、人の迷惑ってものを考えなさい」
「はははははは……」

 その様子を見て、周囲の皆が笑い声を上げる。

4人目

「Ghostry Actors」

「無事だったか!リク!!」
「ああ、何とかな。」

 リ・ユニオン・スクエアから援軍として来た、シャルル遊撃隊の仲間。
 幻想の聖騎士たるありえざる英霊、シャルルマーニュ。
 超高校級の絶望の名を冠する戦士、江ノ島盾子。
 心毅き闇にしてⅩⅢ機関の一人、デミックス。

 立場や過去は違えど、今は皆同じ方向を見て戦う仲間だ。
 彼らは幻想郷での戦いを終え、ひと時の休息を得ている。

「へっ、絶望的生存確率だって聞いてたからてっきりやられたかと思ったぜ。」
「いやいや江ノ島ちゃん、リクはそう簡単にはやられないよ。ソースは俺。」
「うわー、ぜつぼーてきに説得力あるー。」

 なかなかに粗野で不穏当なことを言う江ノ島だったが、その顔はどこか明るい。
 彼女なりの激励であり労いだったのだろう。
 江ノ島のそばにいるデミックスも、どこか楽しそうだ。

 それは日常の1ページが如き光景。
 友と語り合うという、どこにでもある当たり前の日々。
 そんな最中、唐突に何かを思い出したリクがシャルルマーニュにあることを問うた。

「そうだ、ルクソードから聞いてなかった、この後どうするんだ?」

 その刹那、シャルルマーニュと江ノ島の顔が強張る。
 特に江ノ島の顔は強張るどこからどこか曇りすら見せている始末。
 無理もない。何しろ次にこの4人が向かう場所は江ノ島盾子にとって因縁溢れるエリアなのだから。

「それなんだが……言ってもいいか?江ノ島。」
「いいよ。覚悟はできてる。」
「……これから俺たちは幻想郷を出て、4人でジャバウォック島という場所に向かう。」

 ジャバウォック島。
 リ・ユニオン・スクエア絶海にあるリゾート島。
 現在は解体され、封鎖されているこの島もコロシアイの物語を語るには必要不可欠な要素である。

「まぁ、着いたら説明する。何しろ……あたしもあそこは苦手だし、何より説明が難しいしさ。」
「そうか。じゃあその時に頼む。」

 重苦しい空気が流れる。
 正確には気まずい、というべきか。

「まぁ暗い顔してもアレだしさ。今は明るい顔で幻想郷復興の手伝いでもしようよ。」
「そうだね。」

 その空気を打破したのはデミックス。
 彼の一声でいつもの笑顔を取り戻す、江ノ島なのであった。



「木材はあっちに運んでくれ。それは俺が運ぶ。」

 人間の里の別エリア、復興のためにせわしなく動き続ける月夜。
 流星旅団を統率した実績もあり、責任感がある彼の事だ。

「兄さん。お疲れ。」
「ああ彩香、その眼は……?」
「アマツミカボシの影響みたい。」
「いや、怖くはないが……。」

 焔坂戦で遂にアマツミカボシの力を御せるようになり、遂に同化の域にまで到達した。
 不安があるかないかと言われれば、ある。
 だが確率的にはまだ考えられないし、あっても遠い未来の話だろう。と、希望的予想をしておく。

「兄さん。少し働きすぎだよ。休んだら?」
「む。言われてみると……よし、休もう。仮眠をとりに行くってみんなに言ってくれ。」
「……分かった。」

 そう言って、妹のそばを離れる月夜。
 兄の背を見送る彩香の顔は浮かない。

「兄さん……。」

 不安は的中する。
 足元がふらつく。
 酒を飲んだ訳でもないのに、己の身体がおぼつかない。

「ああ、くそ。限界か……。」

 廃棄孔、否。幻想郷に突入して以降彼は休む間もなく頭を動かし、身体を駆動させ、精神を削り、忌油の暴威に抗いながら戦いを続けてきた。
 そこから来る途方もない疲労は、確かに彼の身体を蝕んでいた。
 今まではそんな状況下から来る高揚感と使命感、そして不屈の闘志がその毒を和らげ、ごまかし、麻痺させてきた。

「あ」

 だがもう、ごまかせない。
 天宮月夜の精神は、気絶した。



 気が付くと、そこは長い長い階段が山脈が如く鎮座する領域。
 周辺は薄暗く、されど美しくも儚い灯篭の明かりが、その光景の儚さをより深みあるものとして演出している。

 一言でいうならば現世と冥界の挟間。死と生の境界線。

『なんだ、お前も”ここ”の新入りか?』

 空気を裂き、統制するかのような声。
 どこか荘厳でありながらも魂を馴染ませるような威厳あふるる声色。
 そんな声の主に、月夜は言い返す。

「新入り?どういうことだ?俺はお前の仲間になった覚えはないぞ。」

 声はなおのこと続ける。
 まるで、彼に試練でも吹っ掛けようかとでも言わんばかりに。

『いずれにせよ、お前も戦士だというならばその階段を駆け上がってこい。話はそれからだ。』

 ここは幻想郷における冥府。亡霊の姫が支配する死の域「白玉楼」。
 これは、大いなる混沌劇の裏で繰り広げられる「天宮月夜」という男のちょっとした付録噺である。

5人目

「新たなる魔法少女/ジェナ・エンジェルの狡猾なる罠」

――神浜市。

 黒江とゲイルは、ジェナ・エンジェルの息のかかったカルマ教会が
リ・ユニオン・スクエア……しかもこの神浜市に侵入しているという情報を
みかづき荘の面子に報せた。
何とか被害が発生するのを未然に防ぎ、撃退出来たものの、
神出鬼没のカルマ教会の後続部隊がいつまたやって来るか分からないのだ。

「やちよさん、トゥアハー・デ・ダナンと連絡は?」
「……ダメね」 

 やちよは早速トゥアハー・デ・ダナンに連絡をとろうとするが、繋がらない。
どうやらトゥアハー・デ・ダナンの回線も敵の妨害によって遮断されているようだった。

「もしかすると、もう敵と交戦状態に?」
「可能性は高いわね」
  
 やちよは眉をひそめる。

「カルマ教会……まったく気が付かない内にこちらの懐に忍び込んで来ていたとすると……ダナンの皆も奇襲を食らっているかも知れない」
「そんな……」
「まずいな。幻想郷とやらに向かった連中もまだ戻ってきた様子は無い。
戦力が落ちてる上に連絡を絶たれて分断状態になったなら、神浜市のあちこちで
敵の罠にかかる奴らが増えていくぜ」

「こちらは引き続き神浜の魔法少女達に警戒してもらうとして……
私達はトゥアハー・デ・ダナンと合流しましょう」
「自分も手を貸そう」
「十七夜……!?」

 いつの間にか、銀髪で理知的な雰囲気を醸し出す少女……
神浜市の「東」を取り仕切るベテラン魔法少女の和泉十七夜がそこにいた。
かつてはやちよと神浜の勢力図を争った事もあるが、現在では良好な関係を築いている。
何故かその格好はメイド姿で、胸元には「なぎたん」の名札が付けられていた。

「バイト帰りに怪しげな連中を二、三片付けてきたのだ。恐らくは君らの言う、
カルマ教会の手の者だろう。突然化け物に姿を変えてな……」
「やはり、カルマ教会はこの街に……」
「知り合いの魔法少女には既に声をかけている。後れは取るまい。
君らがCROSS HEROESなる組織と協力していると言う話は常々聞いていたからな。
環くんや黒江くんのような年少者ばかりを危険な鉄火場に立たせるのは
非常に心苦しいと思っていたところだ」

「十七夜さんが来てくれるなら心強いです!」
「私も、一緒に行きます。やっちゃん」
「みふゆ……あなたまで」

 やちよの盟友、梓みふゆも十七夜の後に加わった。
みふゆは十七夜と同じく神浜市内の魔法少女の中ではベテランであり、実戦経験も豊富だ。
十七夜とみふゆの加入で戦力的には大きく強化されたと言える。
だが、問題はダナンの状況をいかにして確認するかだ。
連絡が取れない以上、直接そちらに出向いて状況を確かめなくてはならないだろう。


 こうして、神浜市での休息も束の間……新たな仲間を戦列に加え、
いろは達魔法少女や承太郎、ゲイル達は一路、
音信不通となったCROSS HEROES旗艦トゥアハー・デ・ダナンとの合流を
目指すのであった。

「みんな、無事でいて……!」



 一方その頃、ジェナ・エンジェル一派は……

「――CROSS HEROESは現在、戦力の大多数を分散させている。
まずはアマルガムの連中が連中の旗艦を攻撃して消耗させた後、
お前たちの出番だと言うわけだ。カルマ教会からの増援要員も順次こちら側への転移を
進めているとの連絡が入っている」

 ジェナ・エンジェルは、同盟を結んだアマルガムを利用しての波状攻撃を企んでいた。
トゥアハー・デ・ダナンの戦力を分断させ、集中攻撃を浴びせた上に
伏兵として仕込んでおいた一騎当千の刺客達を送り込むと言うわけだ。

「カカッ、敵が全員揃ってねえってのが些か不満だが、
ちったぁ骨のある奴がいると良いがな?」

 アスラ・ザ・デッドエンドは迫る戦いの時を今か今かと待ち焦がれている。

「あの道化師は何処へ失せた?」

 ウラヌス-No.ζが周囲を見渡すが、アルターエゴ・リンボの気配はない。
特異点・黒平安京の戦いにて、CROSS HEROESに式神で拵えた分身を殺された事で、
身を潜めているようだ。

「さてな。元々信用のならん輩だ。当てにするだけ無駄というものだろう」
「誰が何処にいようが知った事ではないがな……」

「ヒート。貴様にも出てもらうぞ」
「……ああ」

 ヒートは、ただそう答えるのみであった。

「セラフィータに会いたくば、私に付いてくるがいい。
あれもまた、この世界の何処かにいるだろう。いずれ必ず姿を現す……」
「……」

 ヒートが、ジェナ・エンジェルの陣営に身をやつしている理由、それは……

(アマルガムか……奴らにはいつぞやの借りがある。CROSS HEROESが倒れようが、
アマルガムが倒れようが、私には利益でしか無い……)

 殺人鬼・吉良吉影はジェナの差し金により、
CROSS HEROESの命を幾度となく狙っていた。
その最中、アマルガムの傭兵たちによる銃撃に巻き込まれ、危うく死ぬところであった。
それを未だに根に持っていたのだ。

「CROSS HEROESには恐らく忌々しい空条承太郎の奴もいるだろう。
奴を始末しておけば、私は元の世界で平穏無事な生活に戻ることが出来る……」

 吉良の最終目的は、『平穏なる日常』。激しい喜びは無い代わりに深い絶望も無い。
あくまで一般人としての生活を続けながら、殺人を『趣味』として楽しみたい。
それが彼の望みだった。世界を飛び越え、吉良の行方を追い続ける承太郎を
この戦いの中で亡き者にすれば、吉良を脅かす不安材料は取り除かれる。

かくして、ジェナ・エンジェルの下に集った異端にして異邦の者たちは
各々の野望を胸にトゥアハー・デ・ダナンの攻略へと動き出す。

「さて、CROSS HEROES……よしんばアマルガムを退けたとしても、
その後には我々の相手をしてもらう。果たしてこの二重三重の罠に耐えられるかな?
くくくく……」

 天使は嗤う。悪魔の詩を紡ぎながら……

6人目

「Apocryphal Story_1:白玉楼階段にて」

 白玉楼まで続いている階段は、非常に長い。
 まるで楽園に至るまでの巡礼の道のような、或いは今までの己の在り方を悔い改めろとでも言わんばかりのような。
 幽霊の気持ちになって考えるのならばこの長い長い階段は、一段ずつ上りながら今までの人生を振り返り、悔悟する為の用途なのだろう。
 そんな冥府への悔悟の道を登りゆく――――一人の今を生きた人間。天宮月夜。

 一段一段と、周囲を見渡しながらその歩みを止めることなく登っていく。
 当然、未知のエリアを歩んでいるのだ。
 一本道であるがゆえに迷いはない。
 しかし、いつ敵が襲ってくるかの恐れはある。

「……!」

 警戒しておいて正解だった。
 侵入者を迎撃するかのように、鬼火数体が彼に弾幕を放った。
 とっさに弾幕を回避し、階段を一気に駆け上がりながらボウガンで鬼火を貫通する。

「当たるとは思えねぇが――――!」

 彼の予想は意外にも外れた。
 放たれたボウガンの矢は、浮遊する鬼火の中心目がけて飛んで行き貫通。一時的とは言え消滅させた。

「……鬼火でも、一応当たるのか。」

 ここは物理法則や神秘の境目があやふやなのか。と己を納得させながら、その場を逃げるように去り階段を再び駆けあがってゆく。

「薄気味悪いし寒気もする……肝試しに来た気分だ。」

 走りながらそんな呑気なことを言っている彼であったが、ここは幻想郷における冥府。死後の世界とでもいうべき場所であることに変わりなはい。
 その事実を、この後まざまざと突きつけられるのだから。

 白玉楼に至る階段 3合目付近

「どこまであるんだよこの階段。そろそろキレそうだ。」

 階段を上ってゆくと、次第に鬼火や幽霊のような影の数が増えてゆく。
 これだけでも、ここが現世とは明らかに隔絶した領域であることは誰の目から見ても明らかであろう。

「遂に過労死でもしたか?どうも実感が湧かないな。というよりも、人が死ぬときって案外あっさりとしているものなのか。」
「それはまちまちですよ。」
「そういうものか……っておい。」

 突如、見知らぬ女性に話しかけられる。
 周辺には誰もいない。
 しかして鼓膜を震わせる感覚。幻聴ではないことは明らか。

「姿が見えないのに話しかけられても普通に怖い。姿を見せろ。」

 努めて冷静にどこからかの声に語りかける。
 その問いに応じたのか、階段を一段ずつ降りてゆく声の主。
 正体―――2振りの刀を持った、真白い幽霊を連れている短い白髪のどこか幼い顔つきの少女。
 幼いながらも恐るべき剣気を放つ少女が、天宮月夜という男の前に立ちはだかる。

「……少女?」
「あなたが、天宮月夜って人ですか?」
「!?」

 名前を看破された。
 相手がどういう能力や技を使ったか。或いは先ほど己に語り掛けた声の主が彼女に教えたのか。
 いずれにしても、見知らぬ人間に名前を当てられ怖ろしくならない人はいない。

「そうだよ。それがどうかしたか?」
「ああ、あなたが主様の言ってた天宮月夜さん、でしたか……。」

 そう言いながら眼前の少女は目にもとまらぬ速度で2振りの刀を抜き、そのうち長い方の刀で斬撃を空に放った。
 空気を裂きながら、半月型の斬撃は飛んでゆく。
 咄嗟に回避したはいいものの、喰らってたら間違いなく胴体が真っ二つに裂けていただろう。

 しかし、攻撃をいきなり放たれて心身穏やかじゃないのはこちらの方。
 背にしまっておいたボウガンに手をかけ、警戒する。

「主様と『ある方』にあなたが来たら対応しろと言われているので。」
「何のつもりだ。」
「分かりやすく言うなら、ちょっとした『試練』です。あなたがあの方々に会うに値するかどうかの。勿論、”完全に”殺すつもりで見極めさせていただきますから。」

 死神に睨まれている気分とはこういうことか、と月夜は悟る。
 無表情。故にそこから放たれる殺気は本物。
 見せかけでも脅しでもない。
 彼女は間違いなく、己が命を刈り取るつもりだ。

「お前を倒し、その主様とある方とやらをぶっ倒さないと帰れないってなら……倒すだけだ。」

 対する月夜も武器たるボウガンを構え、白髪の少女に向ける。
 周辺数十メートルが殺気と殺気、闘志と闘志が坩堝の中の金属がが如く逆巻き蠢く戦場と化す。

「名前を教えてくれ。どういうトリックを使ったかはある程度察しはつくが、知らない奴に一方的に人の名前を言われたまま戦うのは癪だ。」
「―――魂魄妖夢。この白玉楼の庭師をやっております。そして再三になりますが、あなたを殺すつもりで戦わせていただきますので。」

7人目

「PROMISED BLOOD」

 神浜の魔法少女、承太郎、ゲイル達は連絡が途絶えたトゥアハー・デ・ダナンが
停泊している場所へとやってきた。

「……アマルガムが直接!?」

 レナード・テスタロッサ、そしてレナードの企みに賛同した千鳥かなめが
トゥアハー・デ・ダナンを襲い、そして去って行った事を聞かされるやちよ達。

「神浜にはカルマ教会……ジェナ・エンジェルの手の者が……」

 お互いに、敵からの強襲を受けた事を確認し合う。
一時的に通信妨害が敷かれていたのも、彼らの仕業であろう。

「これは偶然ではないだろう。いつぞやも、こちらの戦力が半減している所を
狙ってきたからな」

 先日、トラオムの攻略に向かった面々がダナンを離れ、
マジンガーZやゲッターロボが度重なる戦闘で修理と補給のために整備に回されていた所にアマルガムが攻めてきたのだ。
アンドレイ・セルゲイヴィッチ・カリーニン中佐の裏切りと共に……

「悟空さん達はまだ幻想郷から?」
「ああ、そうなんだ……きっと向こうも、すげえ戦いが続いてるんだろう」

 やちよの疑問に、クリリンが答える。
神出鬼没に転移してくるアマルガム、そしてカルマ教会……戦力が減退している今のCROSS HEROES側にとっては、かなり不利な状況である。


 その頃、神浜市からやや離れた二木市では……

「オラァァッ! 燃えろォォォォォォォッ!!」

 火炎放射器を携えた魔法少女が、カルマ教会の刺客と戦っていた。

「ギャアアアアアアアッ……」
「ヒィッ……」

 高威力の火炎攻撃に、刺客が次々と焼却されていく。

「ウェルダンに焼き上げてやんよ……っと、そこのテメェらもだ!!」

 黒く長い髪に、チャイナドレス風の上着を羽織り、
竜の翼と尻尾を象ったリュックサックから繋がるチューブと連結させた火炎放射器で
次々と刺客達を焼き払っていく。彼女の名は、大庭樹里。
その暴れっぷりは、火の海を闊歩する暴虐の黒竜を思わせた。

「ふぃー、最近ストレスが溜まっちまってよ、ついついぶっ放しちまったぜ……にひひ♪」

 溜め込んだストレスを火炎放射器の燃料とする樹里は、
少し落ち着きを取り戻したようだ。

「姉ちゃん、暴れすぎ……熱いんだけど……あっ、やった、SSR! これで2枚目……」

 眼前の惨状など気にも留めず、スマホの画面に夢中な少女が一人。
青い髪のツインテール、藍色のフリルが施された露出度の高い衣装。

「オオオオオオオオ……」
「んー、邪魔」

 画面から視線を外さぬまま、片手で握ったジャイアントアックスで迫る
刺客の首を刎ねる。

「こ、これが魔法少女……!?」

 その圧倒的な強さに、刺客達は恐れ慄く。

「魔法少女を知っているようねぇ……?」

 ダウナーな声で呟く小柄な少女。青白い生足が伸びる浅黄色の裾単衣に、
ソウルジェムをぶら下げた額の一本角、そしてガリガリとアスファルトに引きずる金棒は
まるで、鬼そのもの。

「こ、こいつは他の奴より弱そうだ!」

 刺客の一人がそう叫ぶと、一斉に少女に襲い掛かる。

「キエエエエエエエエエエッ!!」
「……」

 少女の頭をかち割らんとばかりに、刺客が剣を振り下ろす。
しかし、少女は微動だにせず……

「あがっ!?」

 何故か、別の場所にいた刺客の体に剣で両断されたような裂傷が走った後、
直後に爆発した。

「な、何が起こったんだ……!?」

「あーあ、馬鹿な奴」
「姉様が弱い? くすくす、いっちばん怒らせたらいけない人を怒らせたね」

 樹里やアオが、その様子を見てせせら笑う。

「う、うわああああああッ!!」

 刺客は逆上し、眼の前にいる少女を出鱈目に斬り付けるが、少女は微動だにしない。
それどころか、

「キエエッ!!」
「ぐわぁッ!?」

 やはり、少女の周りにいる刺客達が次々に爆殺されていく。
これこそが、少女の固有能力「対象変更」。
自身が受けるはずのダメージを別の対象に肩代わりさせる能力である。

「あ、あ……!?」
「お、おい、こいつ……!!」

 刺客達はようやく気付いた。この少女こそが、アオよりも、樹里よりも、強い事に……

「どうしたのぉ……? もう終わりぃ……?」

 少女の声には、露骨な落胆の色が見える。

「ぬ、ぬああああああああッ……!!」

 どどんっ……刺客の一人は、恐怖のあまり拳銃を抜き、少女に向けて発砲した。

「だからさぁ……」
「がっ……!?」

 次の瞬間には、銃口を向けた刺客が自身の腹から流れ出る血に塗れていた。
対象変更の発動である。

「ひ、ひいいいッ!!」

 恐怖に駆られた刺客の一人が、少女に背を向けて走り出した。しかし……

「どこに行くのぉ?」

 少女が投げた金棒が刺客の背中を貫き、そのまま壁に激突……
凄まじい爆炎と共に、金棒に貫かれたままの刺客は肉片と血煙と化した。

「ぐぼぇあッ……」

「終わったか……何なんだ、こいつら? 魔女でもねーみてえだけど」
「だったらグリーフシードもドロップしないじゃん。はーあ、無駄足だった」

 樹里とアオが、地面に撒き散らされた血と肉片を見て肩を落とす。

「ま、魔法少女とはこれほどの化け物ばかりか……!?」

「化け物? にひひっ……知ってるよぉ、その台詞は何度も聞いたからさぁ。
あたし達を『バケモノ』呼ばわりした奴等はみんな死んでったねぇ」

 首だけになった刺客を見て、樹里がせせら笑う。

「げー、首だけで喋ってる。そっちのがよっぽどバケモノじゃん。
あっあっ、姉ちゃん、見て! 虹回転!」

 アオが笑いながら、スマホの画面を樹里に見せる。

「あなたたちが何者なのかは知ったことではないけれどぉ……
この二木市にちょっかいを出す奴は誰であろうとぉ……」
「ひ、ひいいいいッ……!!」


「――潰す」


 細腕で振り上げた金棒を、刺客の首めがけて縦に振り下ろす少女。
風圧で、地面にへばりついていた肉片と血飛沫が舞い散る……

「……はあぁ……」
「だから言ったろ、一番怒らせたらいけねえって」

 金棒を担ぎ、少女――紅晴結菜は深いため息を吐いた。
目の下には濃いクマが出来、手足には血と泥が付着している。
手を当て、気怠そうに首を回す。

「帰るわよぉ……」

 三女・笠音アオ。次女・大庭樹里。そして……長女・紅晴結菜。
彼女らは「PROMISED BLOOD」。血の盟約を交わした姉妹であり
二木市を支配する魔法少女グループのトップ3だ。協力し合う神浜市の魔法少女たちとは
対象的に、血で血を洗う殺伐とした抗争に明け暮れる彼女ら。
神浜市とはまた違った魔法少女の暗部が、この二木市にはあるのだ……

「めっちゃ散らかしちゃったねぇ。どうする?」
「馬にでも始末させときゃいいだろ。それより、腹減った。ファミレス行こうぜ」

「あんだけ血だ肉片だ火炎放射だって暴れといて……ホント、姉ちゃんってば無神経」
「おめーだってゲームに夢中だったろうが」

「元気ねぇ……あなたたちは……」

 夜空の月を血で赤く染めるが如き、PROMISED BLOODの脅威度は
すぐさまカルマ教会に報告されたのであった……

8人目

「Apocryphal Story_2:天宮月夜 vs 魂魄妖夢」

 白玉楼階段 6合目

「はぁ!せいっ!!」
「ちっ、あぶねぇ!この!!」

 斬れる、斬れる、斬れる。
 階段の両隅に配置された灯篭がまるで鋏で切られる紙切れ、或いはチェーンソーで斬られる樹木が如く。
 妖夢の振るう長刀「楼観剣」の殺傷力は幽霊10匹分、しかも一切速度を落とさずに道中の障害物を切断しているから相当の得物と伺える。

「鬱陶しいな!」

 とっさの判断で閃光手榴弾を投げつける。

「目くらましだなんて無駄なことを!」

 その手榴弾すらも斬られる。
 階段を駆け上りながら、次々に放たれる攻撃をかわし続ける月夜。

 しかも弾幕を放ちながらの攻撃というのだから始末が悪い。
 弾幕を「銃弾避け」という技術で回避するはいいものの、体力も無限ではない。
 次第に月夜の顔にも疲弊が浮かび上がる。

「はぁ……はぁ……!喰らえ!」

 月夜も負けじと、ボウガンから数発矢を放つ。
 弾数こそ妖夢の放つ弾幕には圧倒的に及ばないが、その速度は決して負けていない。
 まるで弾幕の大海を貫く陽光の如き速度。
 魔理沙の手により強化されたボウガンは、下級妖怪であれば倒せるほどに強くなっている。

「無駄です!」

 しかし、その矢すらも切断され、弾かれてしまう。
 どれだけ速くとも、どれだけ強くとも、当たらなければ意味はない。
 返す刀で妖夢が身構え、月夜を睨む。

「来るか!スペルカード!」
「人符『現世斬』!」

 前方に思いきり踏み込み、敵を切り抜ける居合術。
 月夜は咄嗟に駆け上がりながら回避を試みるも。

(ヤバい、回避が遅れたか!)

 一手、遅かった。
 肌をかすめる斬撃。
 幻想の身体から鮮血が吹き出る。

「―――おおおああああああああ!!!?」
「かすめましたか、ですがその出血量です。もう大人しくしていた方がいいかと。」

 皮膚を撫で斬りにされ、血が噴き出る胸部を左腕で押し付け止血する。
 そんな月夜とは反対に、得意げに刀を構える妖夢。

「バカ言え、まだ足は動く……人間の底力なめんな……!」
(致命傷にはならなかったのはいいがクソ痛ぇ!もう少し遅れていたら真っ二つだった……!!)

 冷や汗が出る。
 しかし致命傷ではないしまだまだ身体を十全に動かせる。その体力もある。
 月夜は口でボウガンに次の矢をつがえ、階段を駆け上がっていく。



 何とか上がり続けて遂に頂上に至る。
 妖夢との距離はまだまだ余裕があるが、如何せん先ほど受けた攻撃の傷からの出血がひどくなってきた。
 それだけじゃない。
 眼前の扉は閂の類がないにも関わらずロックがかかっており、それが嫌でもある事実を突きつけられる。

「拙いな……。」

 月夜は着用していたパーカーを脱ぎ、胸のあたりに巻き付けて両袖を強く結ぶ。
 応急処置は十分。何とか妖夢を倒さないと開かない。

「追いつきましたよ、天宮月夜さん。」
「やっぱそんな気はしたが、お前を倒さないとこの扉は開かないと見た。」
「そうです。さぁ、来なさい。」

 身構える剣士と銃士。
 弩弓vs刀。勝負は一瞬。
 先に動いたのは天宮月夜。
 卓越した速射技術で、ボウガンから矢を放った――――。

「……殺す気だもんな仕方ないよな許してくれよ頼むぜオイ!!」
「!?」

 まくしたてるような言葉の羅列と共に月夜が放ったそれは――――一つの手榴弾付きの一矢。
 鏃にあたる部分には黒い金属で覆われた塊が取り付けられており、その表面には日本語で「テルミット榴弾矢」と書かれている。

「てる……みっと……?」

 剣術鍛錬によって鍛えられた動体視力は、その矢に書かれた文字を読み解いた。
 しかし、読み解いたところで意味は分からない。
 何せつい最近まで”技術”とは無縁だった幻想郷。
 外の世界より来た守矢の者や外の世界に良く行く八雲紫であれば、その意味を理解できたであろうが―――。

「外の世界で使われている”金属すら熔かせる温度を放つ”技術だよ……。最もその距離じゃ避けられないだろうな。」

 ボウガンの有効射程距離や榴弾の爆発の推定範囲を理解している月夜が勝利を確信する。
 その事実は刀という武器を重々熟知していた妖夢にも嫌でも分かってしまった。
 己が得物である武器、楼観剣と白楼剣の攻撃射程距離と能力。それを加味しても―――。

「拙い、この距離じゃ弾けない!!」
「さっきのお返しだ、暫く燃えてろ……!」

 着弾、発光、そして爆裂。
 白く激しく輝く光と共に2000度を超える熱量が魂魄妖夢を襲う!

「うあああああああああああ!!??」

 火の玉と化しながら、道中の壁に激突しそのまま転がり落ちる妖夢。
 火は幸いにも転げ落ちる道中で消火されたものの、そのまま気絶してしまった。

「……。」

 複雑な心境のまま、月夜はそのまま門の扉を開けて中に入った。



 白玉楼内部

「あいつ大丈夫かな……。」

 先に倒した妖夢の安否を心配しながらも、白玉楼の内部に突入する。
 中は先ほどの儚くも美しい光景とは裏腹に、満開の桜でできた大海とでもいうべき光景が広がっている。

「しかし、あまりにも綺麗だ。」

 つい目的を忘れてしまいそうな光景に目を奪われながらも、月夜は先に進んでいく。
 そして、彼はついに声の主であろう人物に出会った。

「あの2人のうちどっちかが……さっきの奴か。」

「妖夢嬢を倒しちまったみたいだぜ、あの少年。」
「あらまぁ残念。でもすごかったわねあの閃光。外の世界の人ってああいうものも使っているのかしら?」
「そりゃあ使うだろ、何せ外じゃいつもどこかで誰かが戦っているんだ。戦いの技術も進化するだろうさ。」

 月夜の眼前にいたのは、桜色の髪と幽霊の姫とでもいうべき服装の女と———黒い服に身を包んだ、声の主であろう金髪の謎多き男だった。

9人目

「想定外のウィーク・ポイント」

 ――トゥアハー・デ・ダナン・ブリッジ。

「レナード・テスタロッサがジェナ・エンジェルと通じている……確かなのか」
「ああ……間違いない。奴自身がそう語っていた。確証がある」

 承太郎の鋭い視線に臆することなく、宗介が頷く。

「これで決まったな。神浜とダナンへの同時襲撃……
偶然にしては出来過ぎだとは思っていたが、奴らが裏で繋がっているのなら納得できる。
次の戦い……下手すればアマルガムとジェナ・エンジェル一味の両方を
相手取らねばならんかも知れん……」

 一方、トゥアハー・デ・ダナンのデッキでは……

「してやられたな……」

 天津飯が腕を組みながら唸る。悟飯、天津飯、クリリン、ヤムチャ、餃子……
悟空と共に数々の死闘を潜り抜けてきたZ戦士もダナンの守りに回っていたはずだが、
千鳥かなめを伴ったレナードの内部侵入を防げなかった。その理由とは……

「アマルガムの連中は、潜入工作においては世界でもトップクラスの技術を持っている。
それに、奴らは武装こそしているが普通の人間……気そのものは小さくて、
見抜くことはまず無理だ」

 フリーザやセル、魔人ブウ……彼らが戦ってきた強敵たちは皆、
凄まじい気を有していた。相手の気を探る事によって、
その戦闘力や位置情報などを把握しての戦いに慣れているZ戦士にとっては、
それは大きなアドバンテージだ。それを逆手にとっての潜入工作。
気を悟らせないように忍び込み、さらにはカッシーンやクダックと言った物量による
人海戦術によってZ戦士をレナード達の元へ寄せ付けなくした。
力押しだけでは、決して勝つことのできないやり口だ。

「ちっきしょう、小狡い真似しやがって……! 腹が立つぜ!」

 怒りに震えるヤムチャ。レナードがその気になれば、
CROSS HEROESの中核であるテッサをもこの場で亡き者に出来たのだ。
アマルガムはこれまでの戦いで、CROSS HEROESの戦力を調べ尽くしていた。
超人めいた能力を持つ者たち相手に、通常兵器で対抗する事は不可能……
ならば、電撃作戦にて気配を悟られるよりも早く敵陣中央に一気に詰め寄れば良い。
そう考えたのだ。さすれば戦いは、鉛玉ひとつでもあれば雌雄を決する事になる。
向かう所敵無しのはずであったCROSS HEROESにとってのアキレスの踵とも
言うべき弱点が、ここにあった。

(情けない……)

 悟空やピッコロの留守を預かる身である悟飯も、
やきもきとした気持ちに胸が締め付けられる。

「ま、まあ、落ち込んでてもしょうがないぜ。みんな無事だったんだしよ。な?」

 クリリンが悟飯を励ます。暗い状況にあっても、ムードメーカーとして
明るさを失わない彼の存在はありがたいものだ。

「アマルガムの連中は、アーム・スレイブも有してる。
特にラムダ・ドライバ搭載機が相手じゃ、アンタらの攻撃でも仕留めきれないかも」

 メリッサ・マオ曹長が続ける。彼女の言葉は事実だ。

「ラムダ・ドライバ、とは?」
「まあ、簡単に言えば、イメージを力に変える兵器、ってとこかね。
指鉄砲でアーム・スレイブをぶっ壊してみせたり、爆発にも耐える壁を張ってみせたり、
馬鹿デカくて自走も出来ない巨大兵器のバランサー代わりにしたり……と、
使い方は色々さ」
「マジかよ……そんなトンデモ兵器があんのか」

 ヤムチャが唾を呑む。かつて、宗介の宿敵、ガウルンが搭乗していた機体には
その試作型が搭載されていた。そして、レナードの愛機、ベリアルには
それを高度発展させた改良型が搭載されているのだ。

「イメージの力……つまり、精神力がそのまま戦闘力に直結する。分からない話ではない。俺達も肉体と精神……その両方を鍛える事で気のコントロールを実現出来るからな……」
「ほう、そちらの御仁は話が分かるようだな。武道に精通していると見た」

 ベルファンガン・クルーゾー中尉が、天津飯に視線を向けて頷く。
アーム・スレイブを肉体の延長であると考える彼は、日々弛まぬ訓練に明け暮れており、
自身の機体で寸勁を放つことすら出来る。

「確かに我々は不覚を取った。だが、こうして生きている。ならば次にすべきは、
ここで我々を仕留めきれなかった事を、侮った事を死ぬほど後悔させてやることだ。
違うか?」

 クルーゾーが言うと、悟飯たちは力強く頷いた。
自分たちだってCROSS HEROESだ。どんな相手でも決してひるまないという矜持がある。
他の戦士たちも、その想いは一緒だ。絶望的な状況下にあって尚、
彼らの瞳には希望の火が消えていない……

(貴様とて、そうであるはずだ……サガラ)

 アマルガムとの決戦……その鍵となるのは、相良宗介。 

10人目

「Apocryphal Story_3:人が造りし救世/終末の神」

 白玉楼

「あ、あなた方は……?」

 目の前の2人の存在に話しかける。
 両者から発せられるオーラに身震いしそうだ。

「いやいや、そこまで恐れなくてもいいのよ~。」
「ここに来たってことは、あの嬢ちゃんを倒したってことだな。」

 そんな風貌とは裏腹に、両者とも気さくに話しかけてくる。
 つい面くらってしまうそうな気持ちに飲まれそうだが、それよりも畏怖の念が勝ってしまう。

「まぁ入って、そこで話しましょ。」
「あ、はい。」



 天宮月夜には、感じ取ったオーラだけで理解した。
 この2人、口では気楽にしろというが礼を失すれば間違いなくこちらが抹殺されてしまう、と。

「で、名前は……なんていうんですか?」
「私は西行寺幽々子。でこちらは。」
「テスカトリポカだ。よろしくな。」

 依然気さくに話しかける幽々子と名乗る女性とテスカトリポカと名乗る男性。
 敵意は感じられない。
 だが、それでも怖いものがある。
 まるで『優しいひとでも礼儀を失してはならない』という戒めを身体で体現しているような、そんな感じがする。

 月夜は冷や汗を流しながら、どこか震えた声で話しかける。

「なぜ、俺をここに連れてきたんですか?(こえーよ。)」
「それは……私よりも彼に聞いた方が早いんじゃないかしら。」
「その、テスカトリポカ、さん?なぜ俺をここに呼んだのか、教えてほしい、です。」
「もっと肩の力抜けよ。別に殺しに来たわけじゃないんだからな。」

 テスカトリポカと名乗る神霊は答える。
 幽々子と名乗る者と共に、彼をここに連れてきた理由を。

「まぁいい、理由はお前に未来を見せるためだ。それを踏まえたうえでお前が今後どうするかを決めてもらう。」
「未来?」
「ああ、この先に待つこの世界の運命だよ。」

 この世界の運命。彼は少なからずそれを知っている。
 この先自分たちがどういう運命をたどるか、このままではどうなるかを彼は知っている。
 ならば、知る必要がある。
 否。自分が今後どうするかをこの場で決めなければならない以上、知らなければならない。

「じゃあ、お願いします。」
「では―――未来を見せよう。そう遠くない未来の地球を。」

 そう言うと、閃光に包まれる2人。
 光が収まったその刹那、月夜は慄然とした。



 ―――炎、煙、曇天。
 逃げ惑う人、神に祈る人、死にゆく人。
 崩れる街並み、燃え盛る自然、終末を迎える星。
 まさにこの星の終焉。

 開いた口が塞がらない。
 膝から崩れ落ち、声も出ないまま月夜は眼前の惨状を見届けるしかできない。

「なんだよ……これ。」
「この星の終わりだよ天宮月夜。俺の『権能』で数十秒だけ今と未来を入れ替えた。そしてあの光を見ろ。」
「あれは?」

 テスカトリポカが指をさした先。
 そこには赫い曇天の中燦然と、まるで天使の降臨が如く輝く光。
 人々の一部はその光の足元に座し、崇め奉るかの如く拝謁していた。
 光はそんな彼らをその光で包み込み、遂にはこの世界から跡形もなく消滅させてしまった。

「お前たちの仇敵たるメサイア教団、その妄念が生んだ『女神』だよ。」
「女神……。」

 戦神は続ける。
 過去から続く因縁。
 今の戦乱。
 そして未来に来たる終焉。

「かつて多くの咎人を殺し続け、世界から悪を排除しようとした男『夜神月』。彼の意思を継ぎし者たちが作り出した『メサイア教団』。彼らの生み出した救済の女神。」
「夜神月の意思……その具現があれ、だと。」

 救済を騙る破滅。その具現たる女神。
 全てを終わらせるというその名は―――。

「名を『メアリー・スー』。救済を願った人間が生み出した、最も残酷な終末装置だよ。」

11人目

「相良宗介の決断」



「艦長、先程皆さんが捕獲してくれた捕虜からアマルガムが実行しようとしてる計画とその実行場所についての情報が手に入りました」

「わかりました。ではこれよりトゥアハー・デ・ダナンをその場所に向かいます」

「アイ・アイ・マム。トゥアハー・デ・ダナン、出港開始!」

こうしてトゥアハー・デ・ダナンはレナード達が計画を行おうとしている場所へと移動を開始した。





(……千鳥……俺は……)

トゥアハー・デ・ダナンが動き出した頃、宗介は一人

「……ねえ」

そんな宗介にソウゴが話しかける

「……どうした?」

「……いや、なんか悩んでるように見えて……」

「・・・」

するとそこにゲイツ達もやってきた

「……やはりかなめのことか?」

「……あぁ、そうだ……
……俺みたいな傭兵にとって仲間の裏切りはよくあることだ、カリーニン少佐の裏切りもそういうものだと思って受け入れた……だが彼女の……千鳥の裏切りだけはどうしても受け入れられないんだ……」

「……それって、当たり前のことなんじゃないかな」

「え……」

「俺は傭兵ってのはやったことがないからわからないけど、家族とか友達とか、そういった大切な人に裏切られたら、誰だって辛いし受け入れるのは難しいことだと思う。
……俺もウォズに裏切られた時はショックだったし、ゲイツとまた戦わないいけなくなった時とかとっても辛かったから……」

「そうか……」

「……ねえ、宗介はこれからどうしたいの?」

「どうしたいかだと?」

「うん、任務とかそういうのじゃない、宗介がこれからやりたいこと、きっとあるでしょ」

「やりたいこと……か……
……正直千鳥が本当に自分の意思でアマルガムについたのか、俺にはわからない……だがそれでも、俺は彼女を無理やりにでもあそこに……陣代高校に連れて帰る…!
例えそれが彼女にとって余計なお世話だったとしても、それが俺が今やりたいことだ…!」

「ふっ……なら話は早いな」

「うん、俺達で宗介のやりたいことを全力でサポートするよ!」

「いい……のか?」

「もちろん!きっと他の皆も話したら力を貸してくれるよ!」

「……感謝する…!」

話をしてるとそこにテッサがやってくる。

「……今の話は聞かせてもらいましたよサガラさん」

「大佐殿…!」

「今から皆さんを集めて作戦会議をするところです。そこで皆さんに伝えてください、サガラさんがやりたいことを…」

「……了解した…!」

(千鳥……お前がこの世界に対してどう思ってるかなんて俺にはわからない……だが、少なくとも陣代高校で過ごしたあの日々は……俺がお前と一緒に過ごしたあの日々は誰にも絶対に否定させない。
あの学生生活で君から受けた恩と暴力を返すためにも、必ず君をあそこへ連れて帰る…!)

12人目

「竜の魔女と竜殺しの勇者」

――特異点/リビルド・ベース。

「CROSS HEROESの皆さんはその後、ご無事でしょうか?」

 藤丸立香のマイルームに、マシュ・キリエライトが訪ねてきた。
超時空戦艦・アビダインがリビルド・ベースを発った後に幻想郷へ、
CROSS HEROES旗艦・トゥアハー・デ・ダナンが
ジェナ・エンジェル一味/アマルガム同盟軍との最終決戦へと臨む……
世界の壁を超え、今この時にも戦い続けている者達がいるのだ。

「うん。きっと、大丈夫だよ」

 マシュが淹れてくれた紅茶のカップに口を付けながら、藤丸は答える。
口の中には芳醇な茶葉の香りと、華やかな香りが入り混じっていた。
ゆっくりと口に含めば、その香りは更に広がり、心を落ち着かせてくれる……
そんな気がした。

「それより、いいのかな。ドラゴン退治に私もついていかなくて……」

 おずおずと、申し訳なさそうに藤丸は呟いた。

「確かに、マスターの魔力供給無しにはサーヴァントの皆さんは
十全な力を振るえません。ですが、こちらに残ってくださったCROSS HEROESの皆さんがそれを補ってくださいます。私達がここで成すべきは戦力の温存です」

 完成型神精樹がこの特異点の中心に聳え立っていた時の事を思い出す。
カルデアのサーヴァント達が分散し、近辺の調査、凶暴なモンスターの駆除など
人手がいくらあっても足りない程の大忙しだった。
そのすべてにマスターが自ら対処していてはたちまち魔力が枯渇してしまう……
先日の黒平安京での戦いでも、立香は坂田金時と源頼光に対して令呪を切るなど、
かなり無理をしてしまった。そのため、時間を置いて令呪の回復を待っているのである。
その間にも、他のサーヴァントはリビルド・ベース周辺を警戒しているし
有事に備えて情報の交換を行っているのだ。

「燃えなさいッ!!」

 あらゆるものを燃やし尽くす浄罪の炎。漆黒の甲冑、色彩を喪った灰が如き銀髪。
剣の切っ先に纏わせた炎を爛々と輝く金色の瞳に映し出しながら、竜の魔女――
クラス:アヴェンジャー/ジャンヌ・ダルク・オルタがワイバーン達を薙ぎ払う。
彼女の足元に転がる竜の死骸。その墓標代わりとばかりに、邪竜の紋章が刻まれた旗印を
地に打ち立てる。

「竜の魔女に歯向かおうだなんて、身の程知らずも良いところ……けどやっぱり、
マスターちゃんがいないと調子でないわァ」

 マスターと魔力のパスが繋がっていない今の状態では、ジャンヌ・オルタの火力も
大幅に下がってしまうのだ。周囲にいるワイバーン達を焼き尽くしても、
この不満感は解消されないのだろう。マスターの魔力供給があれば、竜の魔女の権能にて
戦わずして彼らを従わせる事さえ可能なのだから……

「グオオオオオン!!」
「おっと、出たわね。大物が」

 ジャンヌ・オルタの眼前に立ちはだかるは、屈強な肉体に堅牢な鱗を持つ
ワイバーンの上位種、 ドラゴンである。ジャンヌ・オルタの炎を恐れるどころか
その巨軀を震わせながら咆哮した。だが竜の魔女は怯まない。
それどころかその威容に興奮さえしていた。

「そうこなくっちゃ……ねッ!!」

 ジャンヌ・オルタは剣を構え直し、ドラゴンへと肉薄する。そして一閃。
だが、竜の鱗は硬く、ジャンヌ・オルタの炎と剣撃を以てしても容易には切り裂けない。
その剛脚を以て踏み潰さんとするが、ジャンヌ・オルタはひらりと身を躱す。

「デカいだけあって、しぶといわねぇ」
「キシャアアッ!!」

 ドラゴンは天に向かって咆哮する。それは威嚇ではなく攻撃の合図であった。
大口から次々と放たれる火の玉が重力に引かれて地上へと降り注ぐ。

「ちいっ……!」

 その隙間を縫うように、ジャンヌ・オルタは駆け抜ける。

「はっ……!」

 横薙ぎに振り回されるドラゴンの尻尾によって吹き抜ける風圧。
大地が抉れ、土煙が舞った。

「ううっ、ああっ!!」

 ジャンヌ・オルタの身体が宙を舞う。何とか受身を取り、体勢を立て直すが
既にドラゴンはジャンヌ・オルタの眼前にまで迫っていた。

「――むんッ!!」

 閃光が、眼前で弾ける。瞬間、ドラゴンの太い前足に突き刺さった魔剣・グラムに
蹴りを打ち込んでさらに深くへ押し込む。そして、その魔剣の持ち主は……

「助けが遅れた、竜の魔女よ」
「ったく、美味しいところに来てくれんじゃない。タイミング図ってたとか?」

 威風堂々、長身の美丈夫はマントを翻しながら剣に魔力を送り込む。
すると、剣身が煌々と輝き出し、ひとりでに男の手の中へと戻っていった。
男は自ら「叡智の結晶」と称する眼鏡をくい、と直すとドラゴンと対峙する。
その名はセイバー/シグルド。竜殺しとして名高い北欧の大英雄である。

「ドラゴン斬りッ!!」

 さらに、勇者アレクがそのドラゴンの頭上目掛けて跳躍し、渾身の力を込めて
剣を振り抜いた。ドラゴン属のモンスターに絶大な効果を発揮する剣技だ。

「見事」

 シグルドはその一撃を讃えた。
竜殺しの大英雄と、竜王を仕留めた勇者、そして竜の魔女……「竜」に縁深き者たちが
一同に介する。ドラゴンはよろめきながらも、翼を広げ飛び上がろうとする……
が、シグルドがそれを見逃すはずもなかった。

「離脱はさせん」

 剣を構えて突進し、ドラゴンの片翼を切り裂いたのだ。
断末魔のような咆哮を上げるドラゴンは墜落し大地に横倒しになる。
シグルドとアレクの背後で、竜の魔女はその邪気を放ちながら悠然と歩み始める――

「汝の運命は……既に断たれた!!」

 天を穿つように剣を突き上げると、その刃を標的たるドラゴンに向けて指し示す。
アレクとシグルドが左右に飛ぶのと同時、ジャンヌ・オルタの全身から
魔力の炎が迸る。

「剣は憎悪、竜は復讐、炎は応報! 刺し貫くは、何もかも――
『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』!!」

 怒りの形相のまま、ジャンヌ・オルタは剣を振り抜く。
その剣閃から放たれた魔力の奔流は、地の底から伸びる弾劾の槍へと姿を変え、
次々とドラゴンを串刺しにする。

「ガオオオオオオオオン……」

 圧倒的なまでの魔力の塊が、ドラゴンの体内で荒れ狂い、内側から破裂させる。
膨大な量の血飛沫と肉片を飛び散らせながら、焦熱地獄の如き猛る憤怒の炎に飲み込まれ、巨大な体躯は何一つ残さず燃え尽きた。ジャンヌ・オルタは剣を地に突き立てると、
大きく息を吐き、シグルドとアレクに向き直ると不敵な笑みを浮かべた。

「どうよ」
「マスターの魔力供給もなしに宝具とは……無茶をする」
「だが、ここはリビルド・ベースからそう遠くない場所だ。
ここに竜の巣を作られては、リビルド・ベースもただではすまない。お手柄だな」

 シグルドとアレクはジャンヌ・オルタの偉業を労いながらも、周囲に目を配る。
竜の巣ともなると、辺り一帯が危険地帯と化してしまう。その被害は計り知れないだろう。

「ひとまず、拠点へ帰還するとしよう。マスターに竜の討伐を報告せねば」
「2人とも。私に掴まれ。ルーラッ!!」

 アレクは瞬間移動の呪文・ルーラを唱え、リビルド・ベースへと帰還する。

13人目

「オペレーション:フルメタル・パニック」



トゥアハー・デ・ダナンの会議室に集められたCROSS HEROESの面々、ここでは現在向かってる島で行われるであろうアマルガムとの決戦のための作戦会議が行われようとしていた。

「皆さんお集まりいただきありがとうございます。早速会議を始めたいところですが……その前に、宗介さんが皆さんに言いたいことがあるそうです」

「宗介が?」

「はい、宗介さんお願いします」

テッサがそういう言うと宗介が一同に前に出てきた

「……誠に勝手ながら、皆に頼みたいことがある……」

「頼みたいこと……ですか?」

「……俺は……千鳥を連れ戻したい……」

「っ!」

「あいつが本当にこの世界が嫌になったのか、自分の意思でアマルガムについたのか、そんなことは俺にはわからない……だが、それでも俺は彼女を……俺や彼らと共に過ごした陣代高校へと連れて帰る!例えそれが彼女の意思を無視することなったとしてもだ…!」

「ソースケ……」

「お前……」

「その為にも、自分勝手な願いではあるが……皆の力を貸して欲しい…!頼む!」

そう言い宗介は頭を下げた。
このような自分勝手な願い、断られてもおかしくはない……それでも彼は藁にすがるような思いで彼に頼み込んだのだ。
そして、それに対するCROSSHEROESの答えはというと……

「……そんなの、断るわけ無いじゃん」

「え…」

「もちろん、協力するよ!」

「あぁ、俺達にも手伝わせてくれ!」

「私達も力を貸します!」

「いいのか…?」

「当たり前だ!」

「大切な人を助けたい気持ちを、見捨てるわけにはいかないよ!」

「その代わり、絶対に成功しろよ!」

CROSSHEROESには困ってる人を放っておけない、そんなお人好しが大勢いる。
そんな彼らが千鳥を本気で連れ戻したいという宗介の頼みを断るはずがないのだ!

「……感謝する!」

(良かったですね宗介さん)

「……それでは、皆さんが捕まえてくれた捕虜から手に入れた情報を元に、アマルガムの計画阻止とかなめさん救出の為の作戦を決めましょう!」

こうして作戦会議を始めたCROSSHEROES……





……それから数十分後、丁度話がまとまり作戦が決まったタイミングで会議室にマデューカス副艦長が入ってきた。

「失礼します。艦長、もうすぐで目的地へ到着します」

「わかりました。それでは皆さん、出撃の準備をしてください!」

「了解!」

(待ってろ千鳥…!)





一方その頃、アマルガムの計画が行われるとある島では、

「……ジェナ・エンジェルから連絡は?」

「はっ!先程こちらへ向けて移動を開始したとの報告が……」

「そうか……となるともう少し待つ必要があるか……」

既に計画の準備はほとんど終わっており、あとはジェナ・エンジェルがリグレットを連れてくるのを待つだけであった。

「……もうすぐで、この歪んで間違った世界が終わり、メサイア教団のような生きる価値のないゴミクズ共や、怪獣などの危険な存在、そして宇宙や異世界などからの脅威が一切存在せず、本来生きるべきだった者たちが生きている理想の世界が誕生する…!」

すると突然島全体に警報が鳴り響く

「っ!?なんだ!?」

「申し上げます!ミスリルものと思われる潜水艦を発見!こちらに向かってきております!」

「CROSS HEROESか……ジェナ・エンジェルと手を組んでることを知ったうえでそれでも邪魔しに来るとは……流石と言ったところか……」

「どうするの?」

「……バーチャドールリグレットなしで今すぐに実行するという方法もあるが……それだと計画を実行できても失敗する可能性がある。ここは今ある全戦力を使ってジェナ・エンジェルがリグレットをここに連れてくるまでの時間を稼ぐ方が妥当だろう」





一方その頃CROSS HEROESはというと。

「艦長、目的地へ到着しました」

「それでは皆さん、出撃してください!」

テッサが出撃命令を出すと、新装備である「XL-3緊急展開ブースター」を装備したレーバテインに乗った宗介を始め、CROSS HEROESのメンバーが次々出撃し島へと上陸する。

「敵は……まだ出てきてないようね」

「だが気をつけろ、恐らくやつらは所有してる全戦力をここの防衛にまわしてるはずだ」

「そうこう言ってるうちに、お出ましのようだぜ」

島に上陸したCROSS HEROESの目の前にアマルガムの傭兵達が乗るAS部隊をはじめ、量産型タイムマジーンやコピークダイテストといった巨大兵器や、コピークダックやコピークダイター、カッシーンなどの機械兵の軍団が現れた。

「なんて数だ…!」

「クダイターやクダイテストの偽物までいやがるぜ!」

「けどカルマ教会はいないみたい」

「となるとジェナ・エンジェル達はまだこの島には着いてないのか…?」

「でしたらプランBで行きましょう。
宗介さん、捕まえた捕虜からの情報通りなら大きな建造物があるはずですが見えますか?」

「あぁ、ここから目視で確認できるぐらい大きな建物を発見した」

「でしたら宗介さんはそこへ向かってください。千鳥さんやレナードはそこにいるはずです」

「了解」

「他の皆さんは宗介さんを全力で援護してください」

「任せろ!」

「全部スクラップにしてやらぁ!」

「なお、このあとジェナ・エンジェル達がこの島に来る可能性が高いです。ゲイルさん達はジェナ・エンジェル達が現れたら、すぐさま対処に向かってください」

「わかった」

「それでは皆さん、作戦名『オペレーション:フルメタル・パニック』、開始です!」

14人目

「Assassins to observe」

「おっ、おっ始めやがった」

 その頃、ジェナ・エンジェル一味はアマルガムの拠点が位置する島に上陸する
CROSS HEROESの様子をモニターで確認していた。
アスラ・ザ・デッドエンドは椅子の背もたれをギシッと軋ませ、足を組み替えながら
次々と戦場に突入していくCROSS HEROESの姿をモニターで眺め、
品定めするように呟く。

「へぇ~、なかなかいい面構えのやつもいるなァ。さて、どいつが一番強ええんだァ?」

『よろしいのですか? ジェナ・エンジェル』
「いつぞや言った通りだ、リグレット。レナード・テストロッサの計画は
お前が揃うことで盤石となる。奴の思い通りに事が運ぶのは面白くない。
それに、カルマ教会からの増援が間に合ったおかげで、アマルガムの戦力に
依存する必要もなくなった」

 レナードはアマルガムの戦力を貸与する事を条件に、
ジェナ一味との同盟をより強固なものにするつもりだった。
しかし、現在ではアマルガムはCROSS HEROESとの全面戦争状態にある。
恐らくはこの戦い、いずれかが全滅するまで終わらないだろう。

「だが、レナードだけにCROSS HEROESの相手を任せていては、不信を抱かせてしまう。あくまで同盟関係は継続されているのだと奴に思い込ませる必要がある。
アマルガムからの支援要請はギリギリまで引き延ばす」

「カカッ……どっちも簡単にくたばってくれるなよ……楽しみが減っちまうからなァ……」

「お前たち……怪我をしたくなければ、下がれ!」
「撃て! 撃てぇ!」

 CROSS HEROESを無数の銃弾が襲いかかってくる。
だが、その程度の攻撃は彼らの前では意味を成さず、次々と敵を倒していく。

「でえええええッ!!」

 天津飯の肘鉄がアマルガム傭兵の防弾アーマーの上から腹部を捉え、
大きく吹き飛ばした。

「ぐぇへぇぇえッ……」
「やめといた方がいいぜ。俺達、結構強いから」

 ヤムチャがそう言うと、別の傭兵が手に持つ銃で狙いを定め発砲する。
だが、やはりその銃弾はヤムチャには当たらず、一瞬で間合いを詰めると、
その傭兵の顎に強烈なアッパーカットを叩き込み、一撃で気絶させた。

「ぐへええええッ……」
「フリーザやセルを相手にするのに比べりゃ、テロリスト風情なんざ屁でもねぇ」
「お前はどっちとも戦ってないだろう……」

 調子の良い事を言うヤムチャに、天津飯は呆れ顔を浮かべるが、
何処からか自分たちを狙撃しようとしてくる敵兵に気付く。

「脳天をふっ飛ばしてやる……」
「!? あんな所から……」

「どどん波ーッ!!」

 指から放つ、速射性に優れたエネルギー弾で的確に狙撃兵が潜んでいた建物を破壊し、
そこに隠れている敵兵もろとも吹き飛ばす。餃子のファインプレーだ。

「ぐわあああああああああああッ……」
「やるじゃないか、餃子!」

「へへ……天さん、僕、役に立った?」
「あぁ、大手柄だ!」

 天津飯に褒められ、嬉しそうにする餃子。
しかし、そんな彼らの前に今度は無数のミサイルが飛んでくる。

「やべえッ!!」

 ヤムチャは急いで飛び上がると、ミサイルの弾幕を潜り抜けながら
敵陣へ突っ込んでいく。

「かめはめ……波ァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 そして、敵陣中央にかめはめ波を放った。ヤムチャのかめはめ波が
ミサイルの弾幕を飲み込んで、そのままミサイル発射砲台に直撃した。
爆発し、粉々に吹き飛んだ後にはクレーターが残るのみ。

「どうだ、やったぜ!」

「な、何だあいつら……! 化け物だ!」
「ひ、怯むな! 戦車隊! 撃てぇッ……」

「気円斬ッ!!」

 戦車が発射した砲弾をクリリンの気円斬が切り裂き、
そしてそのまま戦車隊に向かって飛んでいく。

「なッ……!」

 唖然とするアマルガムの兵士達……彼らが最後に見たのは、
高速で回転しながら向かってくる気円斬だった。

「うわああああああッ!!?」

 そのまま連鎖的に砲塔や機体を真っ二つにされた戦車隊は次々と爆発し、
周りにいた兵士達も爆発に巻き込まれて吹き飛ばされる。

「分かったろ? アンタらの武器じゃ、俺達には傷一つつけられない。諦めな」

 両腰に手を当て、不敵に笑うクリリン。
Z戦士の実力の一端を垣間見た兵士達は恐れおののき、後ずさりをする。

「ぐ、うう、て、撤退! 戦略的撤退だ!」

 アマルガムの兵士達は次々と撤退していく。

「あの調子じゃ、まだ諦めそうに無いな」
「うむ……歩兵に狙撃兵、戦車隊……次は例のアーム・スレイブとやらを
引っ張り出してくるつもりかも知れん」

 戦いはまだまだ続くのだろうと、天津飯やヤムチャもそう思った。その時……

「!?」

 天津飯は突然何者かの殺気を感知した。

「い、今のは……」
「へええ……俺の殺気を感じ取ったか、あの三つ目ハゲ。あの4人組の中じゃ
一番の使い手と見たぜ……」

 それは、アスラ・ザ・デッドエンドによるものだった。
遠く離れたモニターの向こうから戯れに飛ばした殺気を感じ取れる人物がいたことを
アスラは嬉しがる。

「どうした? 天津飯」
「い、いや……何者かは分からんが……気をつけろ。この戦い……
一筋縄ではいかんようだ」
「大丈夫だろ、俺達がいるんだからよ」

 天津飯はヤムチャの楽観的な言葉に苦笑いで返した。
どうやらヤムチャはまったく危機感を感じていないようだ。

「とにかく、油断はするな。確実に敵を倒していくぞ!」
「あいよ!」

15人目

「CROSSHEROESVSアマルガムその1」

「撃てぇ!」

アマルガムのAS部隊が弾幕を張って攻撃

「オープンゲェット!」

しかし竜馬達の乗るゲッターロボはオープンゲットで三機のゲットマシンに分離して回避

「なに!?」

「チェンジ!ゲッター2!」

三機のゲットマシンが合体しゲッター2になると、左腕に装備されたゲッタードリルで地面に潜った。

「消えた!?」

「探せ!」

AS部隊は地面に潜ったゲッター2を探し始める。

「気をつけろ!地面に潜った以上、いつどこで現れてもおかしくは…っ!?」

次の瞬間、AS部隊のうちの一機の足元からゲッター2が飛び出した。

「うぉりゃああああああああ!!」

地面から飛び出したゲッター2は目にも止まらぬ速さでAS部隊を次々と撃破していく。

「・・・」

そんなゲッター2に向けてコピークダイテストが顔から超高熱ビーム放った。

「オープンゲェット!」

が、これもオープンゲットで分離して回避する。

「チェンジ!ゲッター3!」

今度はゲッター3に合体し腕を伸ばしてコピークダイテストを捕まえる。

「うぉおおおおおお!大雪山降ろしぃ!!」

そして捕まえたコピークダイテストを思いっきりぶん回し他の敵に向けて思いっきりぶん投げた

「あんなデカいのを投げた!?」

「う、うわあああああ!?」

ぶん投げられたコピークダイテストが多くの敵が巻き込み大爆発を起こした。



「アトミックパンチ!」

「ロケットパンチ!」

マジンガーZとグレートマジンガー、二体のマジンガーがクダイテストに向けて腕を発射

「っ!?」

二体のマジンガーの拳がクダイテストの装甲を貫き風穴を開け、クダイテストは爆散した。

「Zカッター!」

ビューナスAはZカッターを飛ばして量産型タイムマジーン軍団やAS部隊を切り裂いていき

「どっせぇえええい!」

ボスボロットは両腕を伸ばしぶん回しながら量産タイムマジーン軍団やAS部隊を次々と撃破していく

「さやかもボス達も凄いじゃないか!」

「あたぼうよ!」

「甲児くんだけにいい格好はさせないわ!」

「ふっ、その意気だ。甲児、これを使え!」

鉄也がそう言うとグレートマジンガーは2本のマジンガーブレードを取り出しそのうちの一本をマジンガーZに渡した。

「サンキュー鉄也さん!いくぜ!」

マジンガーブレードを持った二体のマジンガーは先程倒したのとは別のクダイテストに接近

「「ダブルマジンガーブレード!!」」

そして2本のマジンガーブレードでクダイテストを真っ二つに斬り裂いたのだった。

16人目

「神浜・東西を仕切る魔法少女」

「天津飯さんたちも頑張ってるみたいだ……ようし!」

 悟飯は環いろはら魔法少女チームを援護しながら、 敵陣へと突っ込んでいく。

「たあああああああああああありゃッ!!」

 舞空術による低空飛行からのジェットアッパーが重戦車の装甲を貫き、 爆発させる。

「やッ!!」 

 更に着地するやいなや、気合砲で周囲の敵をまとめて吹き飛ばす。

「ぐおおおおおおおおおッ……」

 悟飯は魔法少女たちへの援護も忘れずに行いながら、着実に進軍していった。
 
「なるほど、噂に違わぬ戦闘力だ」

 馬上鞭を掌でパシパシと軽く打ち付けながら、悟飯を見据える和泉十七夜。
全身真白い軍服に身を包み、白い手袋と純白の軍帽を身に着けた
その姿は生来の銀髪も相まって清廉な印象すら与える。
右目のモノクルに埋め込まれたソウルジェムがキラリと光を放つ。

「さて……次はこちらの番か」
「随分と余裕だな、ねーちゃんよ!!」

 ザザッ、と十七夜を取り囲むアマルガムの傭兵達。肩を竦めながら、短い嘆息。

「今の私は労働時間外だ。つまり、ケチャップでオムライスにハートマークを
作ったりもしないし、お前たちを御主人と呼ぶ事も無い、と言うわけだ」

「何を言って……」
「構わねえ、やっちまえ!!」

「よく狙えよ。私の動きを追えるものならばな!」

 十七夜は銃を構えながら突っ込んでくる傭兵達に、優雅な動作で向き直り……
そして……目にも止まらぬ速度で鞭を振るった。鋼鉄の軍靴が地面を蹴りつけ、
土煙が上がる。

「ぐあああああッ……」
「な、何が起こった……ぎゃあああっ……」

 次々と倒れていく傭兵達。鞭で打たれた箇所が青痣となって浮かび上がり、
強烈な痛みが襲いかかる……そして倒れた者達は動けなくなってしまった。
十七夜の超高速の身のこなしに、傭兵たちの目はまったくついて行けず、
さながら嵐に見舞われているかのように錯覚する。

「動きが激甘だな。素人ならいざ知らず、神浜・大東の魔法少女たるこの私には
到底及ばぬよ」
「み、見えな……」

 更に加速し、残る傭兵達を鞭で薙ぎ払う十七夜。
瞬く間に前衛の兵士たちが倒れていくのを見て、後衛の者達は戦慄する……。

(コイツら! 今までとはレベルが違いすぎる!!)

 全員が銃を構えて一斉に引き金を引くも、魔法少女には当たらない上に
更に加速した十七夜の振るう鞭によって弾かれてしまう。

「相変わらず流石ね、十七夜……」

 かつては、やちよやみふゆらを相手取って神浜のテリトリー争いをしていた十七夜。
その実力は神浜の魔法少女の中でもトップクラスだ。

「わ、私達の出番、無いかも……」

 やちよの後ろで、十七夜の実力を目の当たりにした黒江といろはは呆然としている。
これまで、いろは達がCROSS HEROESとして各地を飛び回っている間
神浜の魔法少女たちを取り仕切り、街の防衛を密にしていたのは何を隠そう、
十七夜とみふゆだったのだから。

「もらったッ!!」
「!?」

 一瞬、動きを止めた十七夜に背後から強襲を仕掛ける傭兵。だが、次の瞬間……

「なっ……」

 十七夜の姿がぐにゃり、と歪み、陽炎のように揺らめいたと思うと、
傭兵の放ったマシンガンの弾丸は十七夜の体を通り抜け、後方の地面に着弾した。
消え失せた幻像から巨大なチャクラムが飛び出し、傭兵のマシンガンをバラバラに
切り裂く。

「ば、馬鹿なっ……」
「ふッ!!」

 驚いている隙に、悟飯が傭兵の首元に手刀を叩き込み気絶させる。

「ぐへっ……」

 消えた十七夜。それは梓みふゆの固有魔法である「幻覚」が生み出した虚像であった。
バックスピンがかけられたチャクラムは、みふゆの手元へと還る。

「流石ですね、おふたりとも」
「孫悟飯氏、だったか。貴方の話も環くんたちから聞かされていた。彼女らの窮地を
幾度となく救ってくれたと。代わって礼を言わせてもらおう」

 いつの間にか、悟飯の近くには本物の十七夜が移動してきていた。
みふゆと並んで、悠然と佇んでいる。
神浜の東西でトップクラスの実力を持つ魔法少女ふたりが組んでいるのだから、
アマルガムの寄せ集めの傭兵たちに勝ち目などなかったのである。

「いやあ、僕の方こそ、いろはちゃん達には助けられる事も多くて」

 悟飯が苦笑いしてそう言うと、十七夜は目を細めて口角を少し上げ……そして薄く笑う。
その表情はどこか楽しそうでもあった。

「それにしても、本物のテロリストと戦う事になるなんて、
やっちゃんも物騒な事に首を突っ込んでいるみたいですね……」
「アマルガムをここで叩いておかなければいずれは神浜もただでは済まないだろう……
私にとってもこれは好機だ」

 十七夜の脳裏には家族の顔が浮かんでいた。
貧しい家計を助けるためにバイトを掛け持ちして回る日々の傍ら、神浜・東西の魔法少女が力を合わせて戦う事など滅多に無い事だ。
これまでにも神浜も幾度となく戦火に巻き込まれている。この戦いは既に十七夜にとっても
他人事ではない。

(だから私はこの機会を無駄にはしない。平等と平和……それを乱す者は
誰であろうと叩き伏せる……)

 その為ならば仲間であるいろは達の手助けくらいは喜んでするつもりであった。
この戦いを制する事は、巡り巡って神浜を守ることにも繋がるのだ。

「……」

 そんな中、ひとり、やちよは険しい表情をしていた。底冷えのするような冷気が、
絶えず首周りに感じられていた。
まるで、何者かのの細い指がやちよの首を締めようとしているかのような。

「嫌な予感がする……この戦い、まだ何かが潜んでいる……!」

17人目

「CROSSHEROESVSアマルガムその2」※一部セリフ監修tさん

話は作戦会議中にまで遡る……

「そういえばウォズ、さっきアマルガムとクォーツァーがトジテンドのことを調べてたって言ってたけど、あれってどういうことなの?」

「そうだな……では話すとしよう。
まず何故アマルガムとクォーツァーはトジテンドのことを調べていたか、それはトジルギアの技術を手に入れるためだ」

「トジルギア?」

「なんなんだそれは?」

「トジルギアは世界をまるごと1つのギアに閉じ込めて封印しちゃうとんでもない兵器チュン」

「トジテンドのやつらはそれを使ってほぼ全ての世界を自分達のものにしちまったんだ」

「そんなとんでもない兵器が存在してたなんて……」

「けどなんでクォーツァーとアマルガムはそんなのを手に入れようとしたんだ?」

「確かに……クォーツァーは平成をやり直すことでアマルガムはこの世界を作り直すことが目的だったはず……世界を封印する技術なんて、どちらの目的にも関係ないはずよ……」

「そう、目的には関係ない……彼らがトジルギアの技術を手に入れようとしたのは目的を達成した後に使うためだ」

「目的を達成した後に…?」

「どういうことだ…?」

「君たちは既に知ってるだろ?この世界の外……つまりは別の世界や宇宙、次元には様々な脅威が存在していることを……」

「特異点やモンスター共のことか」

「そうだ、彼らは嫌がってたんだ。目的を達成して自分達の思い通りに作り変えたこの世界を他の世界の脅威によって再びめちゃくちゃにされることを……」

「……もしかして……アマルガムやクォーツァーがトジルギアの技術を手に入れようとした理由って……」

「あぁ……彼らは自分達の目的が達成した後、その世界が他の世界の脅威から守るために、この世界トジルギアで自ら封印するつもりだったんだ」

「なっ…!?」

「この世界を封印するだと…!?」

「なるほど、確かにトジルギアに閉じ込められた世界はギアが破壊されて開放さない限り永遠に他の世界との繋がりが絶たれた状態になりますからね」

「その通りだ。彼らはトジテンドが他の世界を自分達の物にするために使ったトジルギアを自分達の世界を守るために使おうと考えたんだ」

「奴らも奴らなりにこの世界のこと考えているってことか……」

「そういうことだ。そもそも彼らが平成という歴史やこの世界そのものを作り変えようとしたのも、今のこの世界は駄目だと、間違ってると思いそれを正してこの世界を良くしようとした」

「……けど、そんなこと間違ってるよ……」

「介人……」

「確かにどの世界も辛いこととか嫌なことって起きてるだろうしトジテンドとかみたいに他の世界に対して平気で酷いことをするような奴らもいるよ。
けど……だからと言ってその世界で今まであったことやせっかくできた他の世界との繋がりをなくそうとするなんて、絶対に間違ってるよ…!」

「俺もそう思うよ」

「我が魔王……」

「クォーツァーが言ってたとおりこの世界の歴史が凸凹で悪いこともいっぱい起きてたってのは本当なんだと思う……
……けど、それでもいいこともいっぱいあったし、なによりもゲイツやツクヨミ、皆と一緒に過ごした日々はとても楽しかったから。
それに……俺は最高最善の魔王になりたい。クォーツァーの企みも超えて、オーマジオウを超えて、まだ誰も知らない未来へ行く。
アマルガムに閉ざされた世界じゃ、それも出来なくなる!」

人間とキカイノイドが共存するゼンカイジャーの世界。
最初はオーマジオウを抹殺するために若き日のソウゴの命を狙って未来からやって来たゲイツとツクヨミ。
確かに異なるものが混じり合う事は時に、不和と混沌を生み出すのかも知れない。
だが、未知なる可能性を生み出し、独りでは辿り着けない領域へと踏み出す力となる事もある。
CROSS HEROESこそは、その体現であると言えよう。

「……全くお前は……だが、確かにそうだな」

「えぇ、そうね」

「でしたらなおさらアマルガムの…レナード達の野望は絶対に阻止しないといけませんね」

「うん!」





そして話は現在、CROSSHEROESとアマルガムによる最後の戦いが行われてる真っ最中に戻る。

「ちょあーっ!」

「クダッ!?」

ゼンカイジャーはアマルガムが用意したトジテンドの兵士達のコピーやカッシーン軍団と戦っていた。

「ねぇ、ちょっと数が多すぎない…!?」

「あぁ、っていうかこれ数だけなら下手したらクォーツァーとの最終決戦以上じゃね!?」

「ぬぬぬ、マジでヤバいッス!」

「はい、あの時はゴライダーの皆さんが助けに来てくれましたが、流石に同じようなことがまた起きるとは思えません……」

「それでも、諦めるわけにはいかない…!」

「クダーッ!」

コピー兵士軍団やカッシーン軍団がゼンカイジャー達に迫る…!

が、その時

《ジオウサイキョー!》

「だりゃああああああ!!」

「クダァアアアアアア!?」

ジオウがゼンカイジャー達の前にやって来て、サイキョーギレードでコピー兵士軍団やカッシーン軍団をぶった斬ったのだ。

「大丈夫?」

「ソウゴ!ありがとう!」

「クダッ!クダッ!」

「っ!」

撃破したのも束の間、増援がやって来た。

「まだ出やがるのか!」

「ここ俺達に任せて、介人達は宗介のところに行って!」

「え、でも…」

「大丈夫!それに介人達もレナードって人に言いたいことがあるんでしょ」

「……わかった、行こう皆!」

介人達ゼンカイジャーはその場をソウゴ達に任せて宗介と合流しに向かった。

18人目

「闇の奥に潜む者たち」

「撃てーッ!!」

 アマルガムの傭兵部隊が、一斉掃射を始める。

「しししっ、無駄無駄!」

 しかしその弾丸雨は、ゴム人間であるルフィの肉体に傷一つつける事すら叶わない。

「――ふんッ!!」

 ルフィはゴムの伸縮性を利用し、全身にめり込んだ弾丸を体表から放ち返す。

「ぎゃああっ!!」
「ぐえーッ」

 跳ね返ってきた弾丸の直撃を受けて、次々と倒れていくアマルガムの傭兵たち。

「ゾロ!!」
「応よ!!」

 傭兵たちが怯んだ隙に、ルフィの背後から躍り出るはロロノア・ゾロ。

「三刀流……!!」
「うっ……!?」

「鴉魔狩りッ!!」

 敵陣中央に飛び込み、周囲の傭兵をまとめて斬り捨てるゾロ。

「うあああっ!!」

 血飛沫が上がり、バタバタと傭兵たちが倒れていく。

「柔なき剣に、強さは無い――いつぞや、あいつも言っていたっけな」
「う、うぐぐ……!!」

 ゾロに斬られた傭兵たちは、皆一様に呻き声を上げていた。
動けないまでも、生きている。

「加減して斬るってのも、これはこれで骨が折れるもんだぜ……」

 傭兵たちの無力化を確認しながら、ゾロは呆れたように呟いた。

「どうする? お前らも同じ目に遭わなきゃ分からねェのか?
俺は他の連中みたいに優しくはねェ……死にてェ奴は望み通りにしてやるぜ」
「く……」

 残るアマルガムの傭兵たちは、ゾロとルフィに恐れを為して後ずさりする。だが……

「ぐふふふふ……!!」

 切り立った崖の狭間から、ぬう、と魔族・トロールが姿を現した。

「な、何……!?」

 アマルガムの傭兵たちは動揺する。ぎょろりとした目玉が傭兵たちを映し出し、
ニタリといやらしい笑みを浮かべる。

「ど、け……!!」

 トロールが傭兵達に襲いかかる。
巨体に似合わぬ速度で腕を振るい、棍棒で傭兵たちを薙ぎ払っていく。

「うぎゃあああああああああああああああッ」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおっ……」

 そんなトロールに蹂躙され、アマルガムの傭兵たちは次々と倒れていく。

「ひ、退けーッ!!」
「あいつにはこっちの言葉が通じん! 巻き添えを食らうぞ!!」
 
 バタバタと蜘蛛の子を散らすように退散していくアマルガム兵たち。
あっと言う間にトロールのみを残すのみとなった。

「なんだぁ、あいつ? 仲間まで見境なしかよ……」
「ぐふふ……!!」

 ルフィが呟くと、トロールは不敵な笑みを浮かべた。

「恐らく、悪魔……カルマ教会の手の者だろう」

 ゲイルが眉間にしわを寄せ、険しい表情で言った。

「そうか……ジェナ・エンジェルとアマルガムは手を組んでるんだったな……
これで奴らもこの戦いに介入しているのが確定したってわけか」

 承太郎がゲイルの隣に並び立って言った。

「だが、あの様子だとまともに連携がとれているようには見えねェな」
「所詮はお互いを利用しているだけだと言う事だろう……」

「ぐふ……!!」

 トロールが腕を振るい上げると、その剛腕がルフィたちに襲い掛かる……!

「避けろッ!!」

 咄嗟に身を躱したルフィたちの周囲に、トロールの拳が叩きつけられ土煙が上がる。

「見た目通りのパワータイプだな。だが、それだけで
俺たちをどうにかできると思うな……! スタープラチナッ!!」
『オラアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 スタープラチナが強烈なパンチをトロールの弛んだ横腹に叩き込んだ。

「ぐふうっ……」

 トロールは腹を押さえ、苦しげな声を上げた……が倒れない!

「ゴムゴムのォォォォォッ……銃ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 そこへルフィの拳が叩き込まれる。しかし……

「ぐふっ……」

 トロールは僅かに怯んだだけで、すぐに反撃に転じてきた!

「グオオオオオオゥッ!!」
「うひょっ……打たれ強ええ奴だなァ……!!」

 棍棒を振り回す風圧はまるで突風のよう。
ルフィは飛ばされそうになる麦わら帽子をしっかりと被り直しながら
トロールの反撃を躱して、距離を取った。

「ゴムゴムのォッ……銃乱打(ガトリングゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ)ッ!!」

 今度は無数のパンチがトロールに叩き込まれる!

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!』

 さらに反対側からは、スタープラチナの無数の拳がトロールを襲う。

「ぐッ……!? おおおお……」

 これにはたまらず膝をつくトロール……

「おおおおおおおおッ……!! つあああああああああああーッ!!」

 怒涛のラッシュの嵐に続き、ゲイルの「サマーソルト」がトロールの顎を打ち上げる。

「ぐほぁぁっぁあああああああああああああッ……」

 ずずんッ……と音を立てて、仰向けに倒れるトロール。

「ようやく沈んだか」
「しぶとい奴だったなァ」

「こいつ一体で、束になったテロリスト共とまとめて相手にするのと同等ってところか。
こんなのがわんさか出てこられたら面倒だな」
「テロリストの次は悪魔が相手とはな……やれやれだぜ」

 承太郎は帽子の鍔を下げて嘆息した。

「さっきから妙な感覚がしていたが……この事を暗示していたのか……?」

 確かに、それもある。しかし、CROSS HEROESを狙っているのは、
カルマ教会の悪魔だけではない。その背後にいる……
闇の底からこちらを覗き込む何者かの気配を、承太郎は感じ取っていた。

(油断は出来んな……)

 この戦いはまだ始まったばかりで、これから先どんな展開になるかは予測できない。

「みんな、徒に消耗するのは避けろ。何が出てくるか分からんぞ」

19人目

「幻想郷事変後1:後始末と脱落」

「モルヒネを追加だ!」
「衛生兵をこっちにも回してくれ!」

未だ戦いの傷跡残る人里に、引っ切り無しに怒号が飛び交う。
騒ぎの中枢は、人里の空き地に設けられたDDの臨時キャンプだった。
忙しなく行き交う兵士と、負傷したと思われる人々。
中には担架に乗せられる程の重傷者もいる。
そんな痛々しい光景を一瞥し、男が舌を巻く。

「ある程度の損害は覚悟していたが…」

幻想郷全土を震撼させた争いは、確かに終わりを告げた。
だが、ここは彼等にとっての現実(リアル)だ。
戦いが終わればめでたし、という訳には行かない。何事にも、後始末という物が付きまとう。

「暫く、部隊行動は無理だろうな。」

特に、DDの負った被害は尋常では無い。
その事は彼、オセロットの手元にある紙束、被害報告書の厚さが物語っている。

「ゾーン、ウーティ、エレファント…」

書かれているのは、夥しい数の戦死者や負傷者のリスト。
ざっと見ただけでも、前線部隊の大半の名が署名されている。
500万という悪霊の群を相手取った代償が、これだった。

「この規模だ、傭兵稼業からも長く手を引く事になるだろう。」

経費、収支、その他諸々の事項に気を揉むオセロット。
だが、一番の懸念事項は別にあった。

「"抜けた穴"から、新参に喰い荒らされる事になるな…」

結論から言えば、戦争秩序の悪化だ。

嘗ての冷戦の後に崩壊した諸国を起点とする、民族紛争やテロ。
様々な主義主張や正義・お題目が並べられ、しかし結局は武力に帰結する時代。
そこは兵士や傭兵という立場の人間からすれば格好の餌場、自らの腕をそのまま活かせる、対テロ・紛争という新たな「市場」だ。
冷戦に勝利した米軍が、その過程で肥大化させた軍備を世界中にばら撒き、それでも治めきれない規模。
そこに、民間の手が入る事になる。
民間戦争請負会社、PMCという概念の始まりでもあった。

DD、もといMSFはその先駆けだった。
一度はスカルフェイスの謀略によって壊滅し、復興するまでに後続のPMCに抜かされたが、再び大手に返り咲いた。
故に彼等が担っていた「市場」は膨大であり、他の追従を許さない規模だった。

それがこれから、丸ごと空白になる。

勘の鋭い、先見の明がある者がこの機会を見逃す筈が無い。その者が新参のPMCとして「市場」に入る事は確実だろう。
だが戦場という「市場」は、ただ人殺しをするビジネスの場ではない。

戦争にもルールがある。

戦争犯罪、交戦規定、人道、言葉にすればこんな所か。
古参のPMCはこれらを守るか、少なくとも表沙汰にはしなかった。
だが、新参はそうとは限らない。
寧ろ逆に、利益を優先してルール違反を犯す事さえ躊躇わないまであるだろう。

「マナーの成ってないビジネスマン程、質の悪い物は無い。」

民族の主義主張や各国の思惑が、戦場では複雑に絡み合っている。
異文化交流と円滑な事業運営の両立が、PMCを取巻く現実だ。
それ程までに癖のある「市場」は、生き残る事さえ極めて困難である。
そんな戦場に成ってない新参が参入すればどうなるか。

「市場が荒れる事になるぞ…」

オセロットにも、完全には想像が付かない。
ただ1つ確かなのは、テロ紛いのやり方が今後横行する事だ。
それは、国際秩序の低下をも呼び込む。

既にロンドンや日本の首都を巻き込んだ、メサイア教団の一件もある。
もし、これ以上秩序が著しく失われれば。
オセロットが把握している「あの計画」のきっかけとしては、十分過ぎた。

_CIPHERは銃を管理することを思いついた。

『_こちらマザーベース、応答せよ!』

不意に、無線機からノイズ交じりの声がオセロットの耳に届いた。
通信先は、マザーベースの通信班だ。
オセロットは先程までの思考を頭の隅に追いやり、すぐさま応答を返す。

「俺だ、どうした?」
「トゥアハー・デ・ダナンと神浜で問題が起きまして…」

向こう側から伝わる声色には、僅かな焦りがあった。
報告を受け、オセロットが幻想郷に来たのはつい先刻。
その僅か数時間の間に、一体何が起きたのか。
オセロットは報告に耳を傾けた。



「襲撃、か。」

曰く、神浜とトゥアハー・デ・ダナンが同時に襲撃を受けたとの事だ。
詳細は省くが、この二件が二つの組織によって計画的に行われた可能性が高いという見解が強い。
更にトゥアハー・デ・ダナンは、独自の作戦に赴いてるという。
そうなれば神浜が無防備に近くなる。
放置は、出来ない。

「…DDは、ここまでだな。」

今回の一件で、前衛戦力を失った事もある。
オセロットは、DDは暗黒魔界への行軍から脱落する決意をした。



一方で、人里の復興を手伝うのは怪盗団だけでは無かった。

「すげぇ!木の丸太が何本も!?」
「あれが超人だっぺか!」

ボディービルダーともタメを張れる筋肉量。
その膂力を遺憾なく発揮するのは、ロビンマスクだ。

「そこをどいてくれ、後2~300本運ばなければならない。」

言うが早いか、集まった人並みを掻き分けてズンズンと進む。
その動きにブレは無い、まるで人型の重機だ。

「よし、そこに置いてくれロビン。」
「任せたぞ、ウォーズマン。」

そうして運ばれた丸太が、ウォーズマンのベアクローによって裁断される。
鋭い爪先を振るう度に、丸太が次々と角材になっていく。

「もう皆木材になっちまったべ…!?」

職人技めいた手捌きで、瞬く間に変貌を遂げた大量の丸太を前に、住民も脱帽物だ。
恐らく、この調子で復興は早く進む事だろう。

「おぉ~、ロビン!ここにいたんか!」

そんな折だった、キン肉マンが声を掛けたのは。

「いやぁ、あの悪霊とやりあったというのに精が出てるのう!」
「ふっ、人を助けるのが正義超人だからな。」

作業から眼を離さず、当たり前だと言わんばかりに語るウォーズマン。
その横から、ロビンが口を挟む。

「今回の一件で、多くの家屋が破壊された。一刻も早く立て直さねばならぬのだ。」

その言葉には、何か重い使命感が漂っていた。

20人目

「戦え天津飯! 襲来、アスラ・ザ・デッドエンド」

 CROSS HEROES旗艦、トゥアハー・デ・ダナンでは
アマルガム拠点の各地で繰り広げられる戦闘が映し出されていた。
目まぐるしく動く戦況……

「報告します。アマルガムの傭兵部隊が戦線を離脱、逃走しています」
「ですが、正体不明の勢力が介入しているとの事で、かなりの被害が出た模様」
「謎の勢力……?」

 司令官、テレサ・テスタロッサは眉を顰めた。

「恐らく、アマルガムと協力関係を結んでいると言う、ジェナ・エンジェル率いる
カルマ教会が介入しているものかと思われます」

 副長・リチャード・ヘンリー・マデューカスは淡々と報告を続ける。
テッサは三つ編みを弄りながら、暫く考え込んでいた。彼女が物事を熟慮する時の癖だ。

『報告。ゼンカイジャーが先行するウルズ小隊との合流を開始しました。
第一次防衛線を突破、現在交戦中』
「そうですか……引き続き監視をお願いします」
『アイ・アイ・マム!』

「艦長、どうされますか?」

 マデューカスは眼鏡をくいと上げながら訊ねた。
彼は司令官であるテスタロッサの副官であり参謀だ。

「このまますんなりと目的地点に辿り着けるとは思っていませんが……」

 アマルガムを指揮するのはテッサの兄、レナードだ。
そしてそのレナードが拠点としているのは、島の最奥に築かれた山岳地帯。
海と山。お互いに相反する地形に陣取っている。

「恐らく、ゲリラ戦で持久戦を仕掛けるつもりでしょう。それもかなり入念に……
こちらを消耗させようとしているのが見え見えです」

 テッサは懸念の色濃い表情で言った。実際これまでの戦いでも、
アマルガム側は巧妙にこちらの戦力を分断し各個撃破を狙って来たものだ。
今回もその線だろうと考えるのが妥当だと思われるのだが……?

(これはむしろ罠かもしれない)

 そんな時だ。潜水するトゥアハー・デ・ダナンに向けて、
アマルガムからの攻撃が仕掛けられた。

「アマルガムからの攻撃です!」
「迎撃を!」
「はっ」

「ここで私達が沈められるわけにはいきません。何としても持ちこたえるのです」
「アイ・マム!」

 テッサは力強く言い放ったが、内心焦りを感じていた。

(急に攻撃の手が強くなった……まさか……)

 戦況を映し出すモニターを睨むように見据えながら、テスタロッサは唇を嚙んだ――
そしてこの予感は後に現実のものとなるのである……!

「!? 強い気を感じる……!!」

 天津飯らZ戦士は、その方向を振り向いていた。

「ぐげぇぇぇああああッ……」
「敵にケツ捲って逃げるなんて、白ける真似はすんなよなァ……
祭りは騒いで楽しんでナンボだろうが」

 サングラスをかけたその赤毛の男は、ポケットに手を突っ込んだまま、
逃走するアマルガム兵の中を悠々自適と歩いている。
男が一歩歩く度、周囲の傭兵たちがまるで内部から破裂するように弾け飛んでいった。

「お、おい、何が起こってるんだ……!? お前は一体……」

 ヤムチャが焦りと恐怖の入り混じった表情で男に訊ねる。

「奴に近づくな、ヤムチャ! くっ……こんな所で新手の敵が現れるとは……!」

 天津飯だけは違った。その赤毛の男を一目見て何かを感じ取っていたのである……!

「貴様だな……俺達が戦っている間、何処からか刺すような殺気を
ぶつけてきていた奴は……」
「そうよ。その通りよ。やっぱり感じてくれてたかい。カカッ、嬉しいねェ。
俺が見込んだだけの事はあるぜ」

 男はニヤリと笑いながら言った。
その笑みはどこか、狂気を孕んでいるようにも見える……
天津飯が抱いていた嫌な予感の主が、この男であると確信した。

「お、お前は一体誰なんだ!? アマルガムの仲間じゃないのか!?」

 クリリンが男に向かって叫ぶ。
すると赤毛の男は肩を竦め、サングラスを外しながら答えた。

「俺か? 俺の名はアスラ・ザ・デッドエンド。なかなか良い名前だろ? 
自分で名付けた割には結構気に入ってんだぜ。カカッ。
それにしても暫くの内に、随分と美味そうに育った奴らが集まったじゃねえかよ、
CROSS HEROES。喰い応えがあるってもんだ」

 天津飯たちがCROSS HEROESに接触する前……神浜市に出現したアスラ。
承太郎やゲイル、ジョーカーらを相手に猛威を振るった男。
ジェナ・エンジェルと行動を共にしていたアスラが、アマルガムとの決戦の最中と言う
この状況で今再び姿を現したのである。

「熟した果実の収穫時って奴だぜ。俺は今、最高に機嫌が良いんだ……
興奮してどうにかなっちまいそうにな。だからよ、お前らも俺に最高の闘争ってヤツを
味わわせてくれよなァ?」

 アスラはニヤリと笑いながら言った。その笑みは狂気と殺意に満ちていた……!

「この男……危険だ。全身から漂う殺気。血の匂い。
かと言って憎悪や怨恨の類でもない……まるで、そう。
戦いそのものに快楽を見出しているかのような……」

 そんなアスラを一目見て天津飯は戦慄した。アスラはただ純粋に闘争を愉しんでいる。

「……戦闘狂ってヤツか?」

 そんな天津飯の傍らで、ヤムチャはポツリと呟いたが――それは当たっていたのである!
アスラは戦いに飢えていた。いつも何かが足りないと感じていたからだ……!

「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり……ってな。
どうせ短い命ならよ、楽しまなきゃ損じゃねえか?」

 ジェナ一味に身をやつす前、スラム街のトップに君臨していたアスラは
常に「闘争」に明け暮れていた。「殺し合い」と言う名の、戦いの日々……
血で血を洗う、暴力と狂気の日々に生きてきた。
そんな日々を送っている内に彼はいつしかこう思うようになっていった――
もっと強い相手と戦いたい。命を賭して戦うに値するような敵が欲しい、と……!

「この世界は本当に退屈しねえ……てめえらみたいな強者がゴロゴロいやがる。
死ぬ寸前まで笑いたいのさ、楽しみたいのさ、俺は。
てめーらはどうなんだ、CROSS HEROESの皆さんよ?」
「やれやれ……孫の奴も相当の戦闘狂だとは思っていたが、こいつはその比ではないな」

 ざっ……天津飯は地を踏み締め、仁王立ち。アスラを迎え撃つべく構えた。

「て、天さん……!?」

 餃子が慌てて声をかける。しかし天津飯は振り返らずに言った。

「こいつは俺でなければ抑えられん……! お前達は他の敵を頼む……!」

 この男を野放しにしてはいけない。そんな予感が天津飯にはあったのである……!

「俺には分かってたぜ。アンタが一番の使い手だって事はよ……」
「褒め言葉として受け取っておこうか……この天津飯が相手になる! 
さあ、かかって来な! アスラ・ザ・デッドエンド!!」

21人目

「幕間:或いは救世/破滅/反撃の始まり」

 その頃、存在しなかった世界では

『……もうすぐで、この歪んで間違った世界が終わり、メサイア教団のような生きる価値のないゴミクズ共や、怪獣などの危険な存在、そして宇宙や……』
「ふん。『生きる価値のないゴミクズ共』、か。その称号はカルネウスに食わせろという。」

 円卓の間の中心に配置された、巨大な遠見の水晶玉から地上の様子を見る大司教エイダム。
 彼は忌々し気に、水晶に映されたジェナ・エンジェルの姿を睨んでいる。
 そして頬杖をつき、思案。そして視線はジェナ・エンジェルから別の方へと向いた。

「焔坂が死に、天宮彩香の持つ神體が完全に適合した。貴様が廃棄孔から逃げなければ未来は少し違っていたと思うが?ゼクシオンよ……!」
「ええ、私は確かに逃げましたよ?ですが……ただで逃げたとお思いで?」

 エイダムの視線の先、円卓の席に座る黒いコートの男ゼクシオン。
 ふつふつと湧く怒りを、すんでのところで抑えた声色で彼を叱責する。
 しかし、当のゼクシオンは幻想郷から「敗走」したにもかかわらず「してやったり」という顔だ。

「私が逃げたのは焔坂の勝利を信じての事ですし、何よりもビショップ同志と同時に開発していた『ある兵器』を基としたセカンドプランの為です。」
「何が『勝利を信じて』だ?何の『セカンドプラン』だ?ふざけたことを、心持たぬノーバディでも下らん冗談は言えるらしい。」
「信じずとも信じようともそれはあなたの判断ですよ。」

 6番目に高い位置にある玉座に腰掛けるゼクシオンは、ため息交じりに話す。

「そも、メサイア教団最高戦力その首魁たるあなたが存命している以上、これ以上の不安を感じることはないでしょうに。大司教の抜け落ちた穴は我々で埋めればいい。それに通常兵士の人数や兵器の量ならこちらの方が上だ。これから地上への大規模な『布教』を始めるのに、大司教たるあなたが不安がられては……面子丸つぶれですよ。兵士の士気も下がる。」
「言われてみるとそうだな。―――で、魅上はどうしている。」
「ビショップと、オモヒカネの力で召喚した英霊アルキメデスと共に『女神』の調整をしているところですよ。大帝の天声同化の修復も行っている以上以上、手を離せないかと思われます。」

 女神:メアリー・スーと大帝の持つ人類救世の異能『天声同化(オラクル)』。
 彼に賛同する者を己に隷属させ、人格をそのままに己の意思、己の想いのままにさせる人類洗脳の力。
 月の戦いで激闘の果てに大帝は敗北。この能力も破壊された筈だが、メサイア教団の手により修復が行われている。

「女神か。カール大帝の異能『天声同化』の修復に手間がかかっているがゆえに用意したプランだが……女神の方が現実的か?」
「修復は絶望的です。仮に修復できたとしても、大帝では使えないかと思われます。」
「そうか……。」

 と、どこか哀し気に物を言うエイダム。
 しかしてその顔は、どこか悪い笑みを浮かべていた。

「ところで、貴様の言うその『兵器』とは?」
「ああ、あれですか。廃棄孔崩落の前に回収した廃棄孔の『偽・■■■■■■』のデータ。これを元に作り上げた『兵器』は必ずCROSS HEROESを絶望させることでしょう。特に―――彼女には有効かと。」



 場所は戻って、白玉楼

「はぁ……はぁ……なんて光景だ……!これが、この先に起きる未来だというのか!」
「ああ、いつ頃起こるかは俺にもわからん。だが確実に起きる破滅の未来だよ。」

 某然、愕然、慄然。
 恐怖すら通り越し絶望。

「まぁ深呼吸でもして落ち着きなさいな。」
「落ち着こう……。」

 深呼吸をする。
 しかし思考が追い付かない。
 それもそうだ、あのような破滅、あのような未来を見せつけられて動揺しない奴はいない。
 荒い呼吸をどうにかこうにか整えながら、月夜は言った。

「……俺にわざわざこの光景を見せたってことは。まだ、この未来を変えれる可能性はある、という解釈でいいんだろ?」

 神ともあろう御方が、わざわざあんな絶望的破滅の光景を見せた。
 きっと何かの意味があって見せたに違いない。
 その問いに

「ああ。努力次第で未来はいくらでも変えられる。だがどういう方向性でどういった未来にするかはお前たちが決める話だ。俺が決める話じゃあない。」

 そうだ、まだ希望はある。

「…………ありがとう。それを聞けただけで、十分だ。俺は……俺たちは、このクソッタレの未来を変える。変えて見せる!!」
「では、どうやって?」
「―――女神メアリー・スー。確か『人間が生み出した』と言ったはず。不完全な人間が生んだんだ。どこまで言っても完璧ではない。」

 意地悪な質問に、彼は何とか言い返す。
 女神メアリー・スー。
 メサイア教団の信仰と狂気が生み出した存在。

 しかし、どこまで完璧に近づけようとも完璧ではない人間たちが作り、完璧な世の中ではない環境で作っている以上、真の完璧には届かない。
 決して完全ではない人間たちが生んだ、完全ではない擬神に過ぎない。
 であれば、きっとつけ込む隙がある。
 今までの彼らの行動から察するに、メサイア教団は女神の力をより完璧なものにするために、かの魔術王が遺したアーティファクト「ソロモンの指輪」を集めているのだから。

「メサイア教団があの『女神』のために集めているソロモンの指輪を回収し、奴らより先んじて女神の力を弱めれば、勝算はある。未来を、変えられる。」

 固まった決意と裏付けされた論理を、テスカトリポカに言う。
 天宮月夜は決して諦めない。
 まだ未来が見えるなら、やれることは山ほどあるのだから――――。

「そうか、それがお前の返答か。ならば――――」

 真剣味を帯びた声で、戦士/神霊は言う。

「力を示せ、と。」
「―――お前の妹は幻想の地で神を宿す戦士となった。その兄たるおまえはどうだ?天宮月夜。力なきお前が真に未来を変えるというなら、せめて俺に示してみろ。」
「……!」
「――――戦いだ、未来を見る流星の主。その在り方が地に落ち燃え尽きる程度のものか、或いは彗星の如く輝き続けるか、見せてもらおう。」

 周囲に煙のような魔力を放ち、力を誇示しようとする神霊。
 対する月夜は、ボウガンを構え戦闘態勢をとる。

「っ!」
「一撃でも当てられたらお前の勝ちにしてやる。さぁ来い!」

22人目

「神浜マギアユニオンVS仮面の氷結姫」

「――!!」

 アスラ・ザ・デッドエンドの出現。
魔法少女たちと共にZ戦士たちとは別行動していた悟飯は即座にその気を感知した。

「天津飯さんたちのいる位置にひとつの大きな気が現れて……
たくさんの気が同時にき、消えた……」

 一瞬の間にアスラによって刈り取られたアマルガムの傭兵達の命。
悟飯は天津飯やヤムチャたちの身を案じていた。しかし……

「うっ……!?」

 凍りつくような冷気が、戦場に吹きすさぶ。
やちよは、その冷気の根源が誰なのか、即座に理解した。

「これは……!?」

 忘れるはずもない。かつてやちよが命懸けで戦った、あの最強の敵――!

「う、うわあああああああッ……」
「か、身体が……動かねえ……ッ」
「な、何なんだ……こいつは……!!?」

 アマルガムの傭兵達が悲鳴にも似た叫びを上げた。
そうしている間にも次々と彼らの身体が氷漬けになってゆく――その氷の塊の中には、
まだ辛うじて意識のある者もいたが、程無く言葉を発する事すらままならなくなった。
そんな傭兵達の様子を冷たく見やりながら、その女はゆっくりと口を開く。

「耳障りだ。悲鳴も慟哭も要らない。粛々と、ただ死ね」

 足音と共に、氷漬けになったアマルガム兵たちがガラスが割れるような
甲高い音を立てて次々と砕け散る。

「そう。それでいい。生命の砕ける音。心地良い。私の耳を愉しませろ」

 傭兵達が最期に見たものは、己を刈り取った死神の嗤う口元だった。
そして――次の瞬間には、全ての傭兵達の氷漬けになった身体は
粉微塵に砕け散っていたのである……。

「ひ、酷い……!」
「出たわね……! 神浜の一戦以来かしら……」

 トライデントを油断なく構えながら、やちよが言う。

「はて? 劣等種の顔など、いちいち覚えていられんな」
「ああ、そう……! 相変わらずなようで、何よりだわ……」

「あの人は……!!」

 いろはは戦慄していた。あの時、やちよを死の淵まで追いやった強敵……
ウラヌスNo.ζ。絶対凍結を司る、仮面の氷結姫(ピリオド)。

「あの女性は……!?」
「ジェナ・エンジェル一派のひとりです……! とてつもなく、強い……」

 初見である悟飯は訝しんだが、やちよといろはにとっては因縁の相手だ。

「なるほど……只者でないのは分かる……」
「こうして向かい合っているだけで、凄まじいプレッシャーを感じます……」

 十七夜やみふゆも、厳しい表情でウラヌスに対峙する。

「それじゃあ、もしや天津飯さんたちの所に現れた大きな気も……」
「敵である可能性、大ですね……」

 悪い予感が過ぎる。悟飯は天津飯達の身を案じた。

「悟飯さん、あの女は私達が引き受けます」
「しかし……」
「こちらは環くんや黒江くんも合わせて魔法少女5人。抑え込んでみせよう」

 十七夜が力強く言う。やちよはいろはに目配せし、頷いた。いろはも頷き返す。
迷っている暇はない。悟飯は覚悟を決め、天津飯たちの元へ向かう事に決めた。

「……すぐに戻ってきます! ご無事で……」
「好きにやらせると思うか?」

 ウラヌスが、離脱する悟飯を追撃すべく右手を前に出す。
その途端、無数の氷塊が出現し――連なって大蛇の形に変化した。

「――!!」

 しかし、その氷塊を両断したのはやちよのトライデントであった。

「はあああッ!!」

 すかさず、みふゆが死角からチャクラムを飛ばす。
やちよとみふゆ。初めて魔法少女になった時からの付き合い。
物言わずとも通ずる阿吽の呼吸。

「ふん……」

 ウラヌスは、チャクラムの軌道上に氷の壁を出現させ、その攻撃を防いだ。
その隙に、悟飯は飛翔し、天津飯達の元へ急行する。

(急がなくちゃ……!!)

 悟飯の脳裏に、仲間たちの安否が気にかかる。焦りが募った。
早くしなければ……! その想いに呼応するかのように、悟飯は更にスピードを上げる……

「チッ……」
「残念だったわね。あなたの相手は私達よ」

「劣等種如きが……!」

 歯噛みするウラヌス。いろは、黒江、みふゆ、十七夜…… やちよを中心として、
魔法少女5人がウラヌスに対峙する形となった。

「その悔しそうな顔。少しは溜飲が下がったわ。
あの日あなたに負けてからと言うもの、徹底的に自分を鍛え直して来たんだから……」

 神浜市でウラヌスに敗れたやちよは、絶対安静の状態にあった。
完膚なきまでの敗北を喫し、一度は絶望の底にまで叩き落とされたのだ。
しかし、そこからやちよは這い上がった。肉体を苛め抜いて鍛え上げ、
再び戦場に舞い戻る為の力を身に付けた。そして今ここに居るのである。
かつて己を死の淵まで追いやった最強の敵と再び相まみえたのだった。
そう――長らくの雪辱を果たす為に……

「劣等種、劣等種と……自分は初めてお目にかかるが、確信した。自分は、奴が嫌いだ」
「同感ですね」

 そして今は、十七夜とみふゆ……

「私達だって、あの時とは違います……! そうだよね、黒江さん」
「うん。やろう、環さん……!」

 いろはも黒江も、CROSS HEROESとして数々の戦いを潜り抜け、経験を積み、
そして更なる力を身に付けていた。
今こそ、その集大成をここで見せる時だ。いろは、黒江、十七夜、みふゆ、やちよによる
5人の魔法少女「神浜マギアユニオン」がウラヌスに挑む……!

「小賢しい……わらわらと集り群がる蛆虫共めが!!」

23人目

「幻想郷事変後2:後悔と後の祭り」

「やけに力強く語るのぅ?」

何時もとは違った雰囲気を醸し出すロビンに、どこか困惑するキン肉マン。
対してロビンは、ある方向へ顔を向け視線を促した。

「見ろ、キン肉マン。」
「むっ、なんじゃい?」

そこには、幾人もの子どもが空き地を走り回る姿。
戦いで狭い場所に避難していた鬱屈さから解放されたからなのか、その顔には笑顔が溢れている。

「おーおー、子ども達も元気ではないか!」
「今はな、だがその横の大人達は違う。」
「何…?」

一方で、その親であろう人達の顔色は酷く暗い。
あの地獄を超えたとはとても思えない程の沈み具合だ。

「彼等は帰る所を、衣食住全てを失ったの事を憂いているのだ。」

本当の苦難がこれからである事を、彼等は分かっているのだ。
ロビンの言う様に、今回の一件で家を失った世帯は多い。
それだけでは無く、食料や仕事道具といった物も。
古風の文明に根付いて生活している幻想郷において、それは余りにも、致命的過ぎた。

「帰る家が無いというのは、想像以上に人の心を追い込める物なのだ。嘗ての私…バラクーダだった頃もそうだった。」
「ロビン、それは…!」

『バラクーダ』、その名を出した事に、さしものキン肉マンもただならぬ気迫を感じ取った。
ロビンにとって忘れがたい、いや忘れまいと戒めるべき過去。

「当時は2度も敗北を喫した上、暫くは戦えぬ身体になった事に、酷く衝撃を受けたよ。」
「……」

彼の栄光と同期するが如くボロボロになった身体、戦いの場に立つ事すら出来なくなったという事実。
だが、当時のロビンにとってその現実は受け入れがたく。

「それでも…いや、だからこそ打倒キン肉マンの夢が諦められなかった。しかし根無し草の野営の日々は、私から何か大切な物を削ぎ落していった。」

満足に動けぬ体で彷徨う流浪の日々。
これまでのチャンピオンとしての日々が、どれだけ自分の心に余裕を持たせていたかを思い知るには十分で。
その有難みを知るには、とうに遅く。

「そうしてウォーズマンを育てる上で倫理のタガも外れ、バラクーダとして再びお前の前に現れた私は、酷い物だった。」
「…あぁ、そうだったな。」

超人オリンピック決勝戦の時に残ったのは、復讐心と呼べる様な物だけ。
あの時見せた異様な妄執は、キン肉マンやウォーズマンの脳裏にも、未だに深く刻まれていた。

「言い訳する訳では無いが、家無き日々が、帰る所の無い現実が私をあの様に変貌させたのだ。」

酷く冷たい何かを感じさせる重みが、キン肉マンに圧し掛かる。
それ程までに、ロビンの言葉には説得力があった。

「私がそうなった様に、何もかも失った人々は心を摩耗させていってしまう。安心を再び得るまでな。」

ロビンが再び視線を動かす。
その先には、崩れた家の軒下で呆然と立ち尽くした男がいる。
彼の家だったのだろうか、今は見る影も無い。

「彼は今、これからの人生の交差路に立っている…いいや、彼だけではない。」

見渡せば、似たような状態の人がちらほらと散見される。
何と痛ましい光景だろうか。

「人は心の拠り所を無くせば摩耗し、良心も無くしてしまう。そしてやがては、犯罪と言う選択肢が浮かび上がる。」
「…信じたくは無い。が、そうなってしまうのやもしれぬ、か。」

先のバラクーダの話、そして人里の現状。
この二つを聞かされれば、キン肉マンとてどうなるか理解出来た。
同時に、人里を取り巻く現状をも。

「そして一度道を踏み外せば、戻る事は容易ではない。特に生きる環境が限られたここ幻想郷ではな。」

幻想郷でただの人間が生きられるのは、人里ただ一か所のみ。

「例え生きる為だとしても、一度犯罪等に手を染めれば、もはや取り返しは付かない。」

一目を盗んでいく日々か、心が耐え切れず妖怪の餌となるか。
何れにせよ、碌な未来は無い。

「居場所を、心を失うというのは、そういう事なのだ。」

嘗てのロビンが、殆どそうだった様に。

「だが一度堕ちきった私を救いあげたのはキン肉マンとウォーズマン、お前達なのだ。」
「俺達が?」

そんな鬱屈とした話の中、希望を齎す口ぶりでロビンが言う。

「あの戦いを経て、私は完全に目が覚めた。過去の栄光に縛られた『バラクーダ』から解き放たれたのだ。」

あの戦いで他人を尊重しリスペクトする精神を得たロビンは、最早嘗てのバラクーダに堕ちる事は無い。

「だから今度は私の番なのだ。未来ある若者に道を踏み外させず、心を守る事が今の私の使命だ。」

「人々を安心させるとは、人の心を守るという事なのだ。」

そこで言葉を切るロビン。
叩きあげられた鋼の様な、硬い覚悟が垣間見えた。

「か…」

それを前にして、キン肉マンは微かに震え。

「感動的じゃあーーーッ!!」
「ぐぉ!?」

感極まって、ロビンを抱き締める。
鎧の上からミシリと鳴る筋力に、若干呻き声が上がった。
しかしそんな細事等気にせず、キン肉マンは感涙して続ける。

「ロビン、お前って奴は! 本当に良い漢だッ!!」
「く、苦しい…!」

大袈裟とも言うべき喜び具合。
ロビンとしてもキン肉マンの反応は悪く無いのだが、それはそれとして苦しい。
ウォーズマンが間に割って入る形で静止を掛けた。

「キン肉マン、ロビンが苦しがってる!」
「おぉすまんすまん!」

そう言って、漸くロビンを解放するキン肉マン
その様子にウォーズマンはやれやれと肩を落とした。

「しっかし、そこまで先を見越してたとはのぉ!どれ、私も加勢して…」

未だ収まらない感動に突き動かされ、手助けを申し出るキン肉マン。

「いや、キン肉マン。お前は、他の皆と共に療養を優先してくれ。」
「あぁ、俺も同じ意見だ。」
「へっ?」

だが、当のロビンとウォーズマンに待ったを掛けられてしまう。
これにはキン肉マンも困惑した。

「な、何故じゃ!?今しがた、人里の復興に全力を注ごうという話をしたばかりではないか!わし等じゃ力不足か!?」
「いや、寧ろ力不足は私達の方だ。」
「な、どういう…?」

次いで出てきた言葉に、流石に混乱し始めたキン肉マン。
そんな彼に言い聞かせる様に、ロビンが口を開いた。

「キン肉マン、あの悪霊の超人は覚えているな?」
「あ、あぁ!ロビンやクロウ達が抑えたアイツじゃな!」

憎悪の冥鎧士の事は、彼等の記憶にも深く印象付いてる。

「奴との戦いで、私達は浅くない傷を負った。」

そう言いながら鎧を脱ぐロビン。
露わになった素肌には、少なくない数の殴打や内出血の痕が付いていた。

「なっ…!」
「ロビンと同じ様に、俺もあの戦いで体にガタが来てる。」

続く様にウォーズマンも自身の状態を述べた。

「恐らく私達の回復は、暗黒魔界に行くまでには間に合わん。行っても足手纏いになるだろう。」
「だから俺とロビンは、幻想郷に残って復興支援に回ろうと決めたんだ。」

二人の固い決意に、キン肉マンは息を飲む他無かった。

「なに、ただ残ろうという訳では無い。この幻想郷には、まだ見ぬ猛者が居るそうだからな。」
「すぐにでも特訓して、追いついてやるさ。」

24人目

「今は遠けきニルヴァーナ - 風と炎・ゲイルVSヒート -」

「何やら騒がしいな……」

 アスラ・ザ・デッドエンド、ウラヌスNo.ζ……続々と戦場に出現する
ジェナ・エンジェル一派の強豪たち。
ルフィやゾロは見聞色の覇気を展開し、異変を察知する。

「さっきから嫌な予感が拭えないのもそれなのか……んッ!?」

 先程撃破したトロール。仰向けに倒れ込んだまま、事切れているかに思われた巨体。
承太郎は、その巨体が微かに動き始めた事に気付いた。
いや、トロール自身の意志によるものではない。それは、膨張。

「何かヤバいッ!! みんな、このデカブツから離れろッ!!」
「えっ……!?」

「もう遅い……『点火』ッ!!」

 瞬間、トロールの巨体が一気に膨張した。そして……大爆発を起こす!

「――スター・プラチナッ!! ザ・ワールドッ!!」

 まさに間一髪……「星の白金」の時を止める能力。
トロールの周囲にいたルフィ、ゾロ、ゲイル……
皆、承太郎の声にいち早く反応していたが、突然の膨張による爆発の炎は、
承太郎が時を止めていなければ躱し切れない距離にまで迫っていた。

「やれやれ……間一髪だったぜ……まずはルフィ達を爆発から遠ざけなけりゃあな……」

 スター・プラチナの時を止める力は保って数秒……急いで、ルフィ達の元へ駆け寄る。
まずは3人を遠く離れた場所まで運び出す。

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……』

 さらにスター・プラチナのラッシュを地面に叩き込んで爆風を凌ぐ為の塹壕を掘る。

『オォォォォラァァァァァァァァァァァァァァッ!!』
「よし……ッ! そして『時は動き出す』……」

 時を再び動かした瞬間、凄まじい爆風が承太郎達を襲う。

「な、な、何だァッ!? 何が起こったァッ!?」
「良いから身を伏せてろッ、ルフィ!!」

 ルフィ達からしてみれば、時が止まっていた数秒の間に、
自分達が何が起こったのかも分からないだろう。
だがそんな事に頓着している場合ではない事は、流石に理解していたらしい……

「そ、そうか……! 分かったッ!!」

 とルフィは咄嗟に地面に伏せた。ゾロやゲイルも同じだった。

(…………)

 数秒ほどの刹那の後――炎は完全に消え去っていたが……
衝撃の凄まじさが見て取れた。

「あのデカブツが爆発しやがったのか……アンタが助けてくれたって事かい」
「ああ……そう言う事だ……」

 ゾロの問い掛けに、承太郎が答える。塹壕から身を乗り出すと、
トロールの巨体は跡形も無く消え去っていて、その爆発の規模の大きさを物語っていた。

「こんな事をやりやがる奴は、おいそれとそこらには居やしねえ……」
「チッ、空条承太郎め、死に損なったか……」


「吉良吉影ッ!! 見ているなッ!?」


 承太郎が物言わぬ殺人鬼に向かって吠える。
そう、トロールそのものを「爆弾」と化し、承太郎たちを亡き者にしようとした犯人……
それはアスラ、ウラヌスと同じくジェナ一派に名を連ねる殺人鬼・吉良吉影のスタンド、
キラー・クイーンの能力だ。

(くくく……流石と言っておこう、空条承太郎。爆発から逃げただけでなく、
キラー・クイーンの能力を瞬時に見抜くとはな……)
(スタンド使い同士の戦いは情報戦でもある……ある程度相手の手の内は
見抜かなきゃあならねえからな。だが、これでハッキリしたぜ!
吐き気を催す邪悪な気配の正体ッ……吉良吉影がこの戦場に居るッ!!)

 自身は身を隠し、キラー・クイーンを使って他者を攻撃させる……
吉良吉影の姑息なやり口を目の当たりにし、承太郎は怒り心頭だった。

「キラ、って何だ!? 敵か!?」
「ああ、気をつけろ。イカれた殺人鬼だ。俺と同じく……スタンドを使う。
遠隔操作で爆弾を作り出す……さっきの爆発も、吉良があの化け物そのものを
爆弾に変えたんだ……」

「バロック・ワークスにも似たような奴がいたな……悪魔の実を食った爆弾魔が」

 ゾロが言う。ボムボムの実の能力者、バロック・ワークスのエージェント、Mr.5。
こちらは吉良とは正反対に自分自身の肉体を爆弾に変えて起爆させると言う能力であった。

「よう、ゲイル」
「!? ヒート……」

 さらに、崖の上からゲイルを見下ろすようにして現れたのは……マントに身を包む、
燃える炎が如き赤毛の男。

「こうして直接顔を突き合わせるのは随分と久しぶりだな、ゲイル。
カミハマとか言う街でやり合って以来か。その後ぱったりと音沙汰が無いもんで、
くたばったのかと思ってたぜ」

 神浜での戦い以来、ゲイルは長らく特異点で活動していたため
ヒートと相見える事はついぞ無かった。

「それは生憎だったな。俺もまだ死ぬわけにはいかない……」

 ヒートとゲイル。
ジャンクヤードのトライブ「エンブリオン」で共に戦っていた時期もある、 言わば戦友。かつては死線を潜り抜けてきた2人であるが……今は敵同士だ。
ゲイルは無言のままヒートを睨みつけている。

「未だにジェナ・エンジェルに手を貸しているのか……ヒート」
「そう言うこった。悪く思うな。どの道、いずれはこうなる運命だったって事だ」

 ざざっ……ヒートの背後には、カルマ教会の構成員が続々と集まって来た。

「カルマ教会……既にアマルガムとの合流を果たしていたか……!」
「サーフの奴もいれば言う事は無かったんだが……
曲がりなりにもエンブリオンで一緒に戦ってたよしみだ、どちらが強ええか……
ここいらで決着を着けようじゃねえか、ゲイル」

 ヒートが拳を構えながら言う。かつての戦友と言えど、今は敵同士。
ゲイルも覚悟を決めて拳を握った。

(これもセラに会うためだ……恨むなよ)

 その時、ヒートは内心でゲイルに詫びていた。届かぬと知りながら。
しかし、残酷な運命は2人を囚えて離さない。

「クケケケケケ……!!」

 カルマ教会の構成員達が次々に悪魔へと変貌していく。

「チッ……あれも悪魔か……うじゃうじゃ出てきやがって……
起きて欲しくねえ事ほど起きるってか? しゃあねえ、やるぞ、ルフィ!」
「おう!!」

 並び集う承太郎、ルフィ、ゾロ、ゲイル……
対するは、元・エンブリオンのアタッカー、ヒート。
そしてスタンド使いの殺人鬼・吉良吉影。

「吉良吉影……あくまでも身を隠してこちらを一方的に攻撃するつもりか……
必ず見つけ出してブチのめしてやるぜ……!!」
「ふふふふふ……私は絶対に見つけられんよ、承太郎ッ! 
今日こそ貴様を亡き者とするッ!!」

「ゲイルウウウウウウウウッ!!」
「ヒートォォォォォォォォッ!!」

 風を司るヴァーユと、炎を司るアグニ。
ゲイルとヒートは互いに悪魔化し、真正面からぶつかり合う。
吹き荒れる風は燃え滾る炎の勢いを増すと言う。これから始まる二人の激しい戦いの行方を
暗示するかのように……

25人目

「不死身!? アスラ・ザ・デッドエンドの恐怖」

「はっはァッ!!」

 アスラは歓喜の表情で天津飯へと向かって行った――!!

(気をつけろよ、天津飯……! あいつは、何かヤバい……)

 クリリンは天津飯の後ろ姿を心配そうな眼差しで見送っていた。
アスラ・ザ・デッドエンド……この男は得体が知れない……! 
先程、逃げようとしていたアマルガムの傭兵たちを両手も使わずに、爆発四散させた。
その常軌を逸した現象から察するに、奴の力は気功波や魔力とは違う……
超能力か何かだろうか……? 
それとも、クリリン達にさえ見えないほどの速さで動いたのか……?
とにもかくにも、アスラは只者ではない。それだけは間違いない事実だ。

「ずあッ!! はッッ!!」

 アスラは天津飯に連続攻撃を仕掛ける!
その攻撃はまるで拳法の達人の如く、繰り出される突きと蹴りは速く、また精密だった。
だがしかし――天津飯は卓越した格闘センスでその猛攻を捌く!

「……!! ……!!」
「いいぞ……! 天津飯! その調子だ!」

 天津飯の戦闘センスに目を見張るヤムチャ。
彼は天津飯がアスラと互角に渡り合っているのを見て、やや安堵した様子を見せていた。

「さっすが天さん!」

 餃子は目を輝かせている。

(この男、強い……だが、まだ本気とは思えん)

 天津飯はアスラと攻防を繰り広げながら、警戒を緩めない。
まだこの男は実力の全てを出していない……そんな気がしたのだ。

(奴の力の謎が分からない内は、まともに攻撃を受けるわけにはいかんな……!)

「やるねェ! 兄さんよ……! もっと楽しませてくれや!」
「……だが、守っているだけではジリ貧か……ならば!!」

 アスラの実力を測るため、守りに徹する天津飯だったが
このままでは埒が明かないと思ったのだろう。天津飯はあえて攻撃に転じた!

「悪いが手加減はしてやれん……受けるが良いッ!!」

 常人なら目にも止まらぬスピードで、アスラの懐に意を決して飛び込む!
そして拳の連撃を繰り出した――!!

「つおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 速射型マシンガンかのような指突の嵐。
天津飯は間髪入れずに無数の突きを繰り出して行く!

「――!!」
「き、決まった!!」

「せぇやあああああああッ!!」

 そして最後に渾身の突きをアスラの鳩尾に叩き込む――

「無益な殺生はしたくはなかったが……」

 沈黙。アスラは顔を俯かせたまま一切動かない。だが……

「――はっはァッ!! お優しい事でなァ!! 安心しな、生きてるからよォ!!」
「何ッ!?」
「きええええええええええええええーッ!!」

 突如、アスラは動き出すと天津飯に向かって回し蹴りを繰り出した!
天津飯は咄嗟に防御態勢を取り、蹴りを防いだ。

「……ぐっ……!?」

 蹴りを受け止めた左腕に鈍い痛みが走り、天津飯は歯を食いしばる。

(な……何だ、今の蹴りの威力は……!)

 アスラの蹴りを受けた左腕に痛みが走る。

「そらそらァッ!! まだまだ行くぜェッ!!」

 アスラは容赦のない乱打を天津飯に繰り出す。
その猛攻に対し、天津飯は何とかガードを固めて耐え凌ごうとするが……
防戦一方となり、アスラの拳と蹴りを受ける度に後退を余儀なくされた。

「ま、まずいぞっ! 天津飯が押されてる!!」

 ヤムチャは焦りの声を上げる。

「もらったァッ!!」

 天津飯のガードが一瞬緩んだその隙に、アスラは強烈な一撃を繰り出した。
それはまるで弾丸のように速く、そして重い拳だ!
この拳を喰らえばただでは済まない……そう判断した天津飯は咄嗟に防御を解き、
上体を反らして額にある第三の目からビームを発射。

「でぇいッ……!!」

 紙一重で攻撃を避けるアスラだったが、体勢が崩れてしまう……!

「ぅおっと?」
「ぃやあああああああああああああーッ!!」

 それを見逃さなかった天津飯は、渾身の蹴りをアスラの腹に叩き込む。
完全にクリーンヒットだ……! アスラは弾かれるように吹き飛び、
地面の上を 二転三転と転がって行く。

だがしかし――まだアスラは倒されていない! ゆっくりと立ち上がったのだ。

「ば、馬鹿な……!?」

「う、嘘だろ……!?」
「天さんの攻撃が、効いてない……!?」

「へ、へへへ……」

 その表情には笑みが浮かんでいる……まるで戦いを楽しんでいるかのように……!  

「目からビームか。へへっ、次から次に面白ぇ事しやがるなァ。
次はハトでも出してみるかい? えぇ?」
「はぁ、はぁ……! ど、どう言う事なんだ、一体……!!」

 そして息を切らしながらも、天津飯も構えを解かずに言う。

「強い……! この男、やはりただ者ではないな……!」

「な、何でだ……!? 天津飯の攻撃は全部決まってたじゃないか!
なのに何であいつは倒れないんだよ!」

 ヤムチャは天津飯とアスラの戦いを見守りながら、困惑の声を上げた。
そう。天津飯の攻撃は完璧だったはずだ。それなのに何故……?

「や、やっぱり……あいつには何か秘密があるんだ……」

 クリリンもヤムチャと同じ気持ちだった。
この男、アスラ・ザ・デッドエンドには何かがあるのだと……
天津飯の攻撃によるダメージはほぼまったくと言っていいほどになかった。
その反面、天津飯がアスラから受けたダメージは想定以上に大きい。

「ま、まずいぞ……あいつの秘密を解かない事には、て、天津飯は……!!」

 天津飯、危うし! 
果たして、強敵・アスラ・ザ・デッドエンドを攻略する術はあるのであろうか!?

26人目

「悠久に咲き誇る氷の華」

 アスラ・ザ・デッドエンドの力の秘密が今だ判明しないまま、攻め手を欠く天津飯……
その頃、環いろは、黒江、七海やちよ、梓みふゆ、和泉十七夜ら5人の魔法少女と
ウラヌスNo.ζの戦い……

「こおおおおおお……」

 ウラヌスの全身から凄まじい冷気が放たれる。
それは忽ち周囲の全てを氷漬けにした……!

「わっ……!」
「下がって! 距離を取らないと巻き込まれるわよ!」

 やちよがいろは、黒江を庇い前に出る。みふゆと十七夜も既に散開していた。

「ふふふふふ……」

 氷柱がいくつも連なり、美しい花弁の形となった。
その中心でウラヌスが舞踏のステップを踏み、右手が真円を描く軌跡に添って
等間隔に生成された氷の杭の先端部分が反時計回りに次々と回転してゆく……!

「!!」

 全方位に射出される氷の杭。それは散開した魔法少女達へと無差別に飛んでくる。

「来る!!」

 やちよはトライデントを回転させ、その攻撃を全て叩き落とした! しかし……

(何て……重い一撃なの!?)

 弾き落とされた氷の杭の破片が地面に突き立つと、更に新たな氷柱が生える……!

「うっ……!?」

 トライデントの切っ先が凍結して、その機能を失っている。やちよの顔色が変わった。

「ははははははははは!!」

 間髪入れずに、氷の杭が再び射出される!

(まずい!! このトライデントはもう使えない……!)

 投げ捨てたトライデントは空中で氷の杭によって無惨に粉砕された。
やちよは受け身前転を取り、その場から逃れる。

「くっ……! 前の神浜での戦いの時は全然本気じゃ無かったって事……!?」
「ふふふふふ……誤算だったな? 数で攻め立てれば勝てると言う安い考えだったか」

 あの戦いの雪辱を晴らすため、やちよは懸命に特訓を重ね、遥かに強くなったと言う
自負もあった。それが、脆くも崩れ去る。だが、諦めるわけにはいかない。

「――まだまだ!!」

 やちよも負けじと、大量のトライデントを魔力によって生成し、
次々に射出して応戦する。

「行けッ!!」

 右手を前に突き出すと同時、やちよのトライデント群がウラヌスに向けて
一斉に飛びゆく。正面衝突し砕け散るトライデントと氷柱。
両者の勢いは拮抗している、かのように見えたが……

(私だって、これだけのトライデントを一度に生成して射出するのは、
結構キツいって言うのに……あいつは……!)

 消耗を意識せざるを得ないやちよに対し、ウラヌスは相変わらず仮面の下で
余裕の笑みを浮かべながら、軽やかな舞いを踊り続け、
尚且つやちよのトライデントを上回る勢いで氷柱を大量生産し続けている。

「くそっ……! 何て奴だ……!!」
「近づけない……!」

 みふゆや十七夜も飛んでくる氷杭を必死に回避、或いは撃ち落としている。

「えいっ! えいっ……!!」

 黒江はクラブで、いろははボウガンで、それぞれ氷の杭を迎撃していた。
しかし、明らかに劣勢だ。

(このままじゃジリ貧だ……)
「足掻け、足掻け。虫けららしく、みっともなくな……」

「奴の力は底無しか……!?」

 5対1であるにも関わらず、数の差を単騎で覆して見せるウラヌスNo.ζ。
美しき戦士たちの戦いの行方は……?

27人目

「CROSSHEROESVSアマルガムその3」

一方その頃、宗介達ウルズチームは着々と目的の場所にまで近づいていた。

「よし、この調子ならあと少しで目的地につけるはずだ」

「あぁ、他のメンバーが敵を引き付けてるおかげで、こっちは敵が少なくないからサクサクいけるぜ!」

「そうね、このままいけば…」

「っ!」

しかし、そんな彼らを囲むように敵が次々と現れる。

「伏兵か!」

「かなり多いわね…」

「チッ…!仕方ねえ、ソースケ!お前は先に行け!」

「なに!?」

「ここは我々が引き受ける!」

「あんたはさっさとかなめのところに!」

「……すまない、頼んだ!」

宗介の乗るレーバテインはブースターで飛行し単独で目的地へと移動を開始した。

「逃がすか!」

ASに乗ったアマルガムの傭兵のうちの1人がレーバテインを撃ち落とそうとアサルトライフルを構えるが…

「そうはいくかよ!」

「っ!?」

とっさにクルツがアサルトライフルを撃ち落とした。

「テメェらの相手は俺達だ!」

「ソースケには近づけさせないよ!」

他のウルズチームのメンバー、クルツ、マオ、クルーゾーの3人は宗介がたどり着く為の時間稼ぎをするためにその場に残り敵の足止めを行うことにした。





宗介の乗るレーバテインが上空を移動していると、大きな建物がすぐ間近まで迫っていた。

『軍曹、まもなく目的地に到着します』

「わかってる、こちらの視界にもはっきりと見えている」

(情報が正しければあそこに千鳥が……)

やっと目的地へと辿り着けるかと思ったその時

「っ!?狙撃か!?」

『ブースター破損、これ以上の飛行は不可能です』

「クッ…やむを得ん…!」

宗介はレーバテインに装備してた飛行用ブースターを切り離し、地上へと着陸した。

「今の攻撃…いったいどこから…?」

「驚いたよ、まさかあれだけのことを知っておきながら、君がここに来るなんてね」

「っ!この声は…!?」

するとレーバテインの目の前に、まるで孫悟空の瞬間移動のようになんの前触れもなく一機のASが現れたのだ。

「っ!あの機体は…!」

「この機体を君に見せるのは特異点以来だったな、サガラソースケ…!」

「レナード…!」

28人目

「風に揺れ動くヒートの猛き心炎」

「うおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 炎と風。アグニと化したヒートとヴァーユと化したゲイル。
互いに相容れぬ属性を備える者同士の拳と拳が空中で激突する。
急激な温度差によって吹き荒れる炎熱の嵐が戦場を包み込む。

「うおっと!」

 それはルフィやゾロ、承太郎達をも分断させた。それは開戦の狼煙……

「かかれェ!!」
「グルルルルォォォォッ……!!」

 カルマ教団の悪魔達が崖を滑り降りて迫り来る。

「来るぞ!!」
「吉良吉影が何処に隠れているか分からん……そっちにも注意しろ!!」

 承太郎は吉良吉影の存在を探すも、これだけの密集状態ではそれも敵わない。
カルマ教団の悪魔達を相手にしながら、吉良の奇襲にも留意しなければならないと言う
厳しい状況だ。

(フフフ……乱戦になれば私を探すどころではあるまい、空条承太郎……
奴らが消耗するのをじっくりと待とう……)

 スタンドは常識を超越した存在であるが、スタンド使い本人は至って普通の人間である。
つまり、如何に強力なスタンドを所有していたとしても
スタンド使いが戦闘不能(リタイア)となればスタンドも消失し、即ち決着となる。

「うおおおおおおおおおおおッ……!!」

 一方、ヒートとゲイルの戦いも続いていた。
その激しさによって生じた竜巻の中に飲み込まれたまま、互いに攻撃をぶつけ合い、
一歩も譲らぬ攻防。

「へへ……こうやってお前と全力でやり合うってのも、悪くねえ気分だぜ、ゲイル!」
「ヒート! これ以上ジェナ・エンジェルに手を貸すのはよせ……! 
奴らが、カルマ教会がジャンクヤードで何をしでかしたか、忘れたわけではあるまい!
このままでは、この世界までも奪い合い、喰らい合い、殺し合う地獄と化してしまう……」

「うるせええええッ!!」

 ヒートは炎を纏った拳でゲイルを殴る。

「ぐううっ……」

 ゲイルは吹き飛ばされ、竜巻を突き抜けて岩壁に激突した。

「ヒート……お前……」
「セラを取り戻すためには……これしかねえんだ……!」

「セラ……? セラフィ―タの事か!?」

 ゲイルやヒートと同じく、エンブリオンのメンバーであった少女、セラ。
一匹狼であったヒートが人一倍気に掛けていた存在だ。

「そう言う事か……お前がジェナに手を貸していた理由……
まさか、セラまでもがこの世界に来ているとはな……」
「そうだ、セラはこの世界のどこかにいる。俺はそれを探し出さなきゃならねえんだ……」

「ジェナはセラの居場所を知っているのか?」
「……そいつは……」

「ならば尚更俺達が戦う意味などない! CROSS HEROESに来い、ヒート! 
セラがこの世界の何処かにいると言うのならば、俺も協力を惜しまん!」
「……!!」

「奴はお前にセラの名をチラつかせて、利用しているに違いない。今のままでは、
お前はずっと奴の操り人形だ。それでいいのか!?」
「ゲイル……セラ……お、俺は……!!」

 揺れるヒートの心。ゲイルの言葉は、盛る炎を吹き消す風となるか……?

29人目

「そして、カレは目覚める」

 幻想郷 人間の里

「兄さん!兄さん!!」
「過労で再起不能だなんて絶望的に笑えねぇぞ!?」
「しっかりしろ!!」

 天宮月夜が倒れて数時間後。
 仮眠にしては眠りすぎだと彩香とリク、そして江ノ島盾子が駆け付けてきた。
 疲労により、げっそりした顔で眠る月夜。
 傍から見れば過労死したように見えて、皆心配している。

「兄さんが倒れたら……ボク……!!」

 何よりも一番心配しているのは、妹である彩香。
 泣きそうになりながら、兄である月夜の体をゆする。
 その時だった。

「うぅ……頭がいてぇ……。」

 うめくような声と共に、月夜が目覚めた。
 疲労でガタガタになっている身体を無理に起こそうとする。

「あ、彩香。それに江ノ島とリクか。」
「兄さん!良かった……!」
「おう、ビビらせんなよ……無事でよかったけど。」
「おい大丈夫か、何があった!?」

 痛そうに頭を抱えながら、月夜は今までにあったことを思い出す。

「えっと、確か……。」

 ◇

 以下、天宮月夜曰く。

 俺が倒れて、気が付くと白玉楼ってところに着いて、だ……その道中で妖夢っていう庭師と戦い、何とか勝利したはいい。
 だが問題はその後、白玉楼内部でテスカトリポカって人と幽々子って人に会ってだ。結論から言って、この世界が近い将来滅ぶって言う未来を見せられた。
 んで、俺は誓ったんだよテスカトリポカに。『この絶望的な未来をねじ曲げる』ってな。
 その後は「特訓と試験」って名義でテスカトリポカと戦う事になった。

「おおおお!!」
「Foooooaaaaa!!」

 ガチの殺し合いではない、だが戦闘には変わりない。
 銃弾飛ぶわ天変地異は起きるわで大変だったよ。

「落雷に烈風、無数の銃弾(3~40発撃ってきたのに何故か3発程度しか当たらない)に砂塵にまた落雷!神霊、怖ろしいな!!」
「おいおい、その程度で弱音かぁ?その調子じゃあ、あの女神に負けるぜ!」
「ちっ!!」
「挑発には冷静に、だ!」
「うるせぇ!あんな未来見せられて、冷静でいられるかっての!!」

 特訓とは名ばかりの勢いでエキサイトしまくった俺たちは白玉楼を駆け回りながら、激しく戦った。

「見えた!必殺の射線!」
「くそっ!だが甘い!」

 そして数分間の特訓の果て、何とかボウガンの矢(刺さらないもの)を2発、テスカトリポカの足元に当てた。

「はぁ、はぁ、当たったか!?」
「ああ。2発も当たっちまったなら文句のつけようがない。約束通り俺の負けだ。お前を戦士として認めよう。妖夢戦での立ち回りを加味して、な。」
「……感謝します。」
「んじゃあ、帰る前に妖夢の手当てしていいか?流石に後始末つけておかないと個人的に胸くそ悪くてな。ここに救急箱は?」
「ええ、ありがとう。今救急箱を持ってくるわ。それと、終わったら荒れた庭の掃除してくださる?」
「あっ……。」「マジかよ。」

 荒野が如く荒れ果てた枯山水庭園を前に、月夜の眼とポカニキのサングラスが曇る
 そして、笑顔で取り繕ってい入るが内心キレているであろう幽々子。
 その前には神霊とてかなわず。 

「あれだけ大立ち回りしたんですもの、掃除くらいしても罰は当たらないんじゃないかしら?」
「「引き受けた。」」



 と、いう話でした。
 と締めくくるように月夜は冥界での話をした。
 三者三様、月夜から与えられた情報を整理し始める。

「兄さんの子と疑うつもりはないんだけど、さ。きっと疲れてんだよ……。」
「流石に情報量が多いな……特に『女神』。月夜、体調がよくなったらその女神について詳しく話してもらってもいいか?」
「ああ、そのつもりだ。だが今はもう少し休ませてくれ。正直疲れた。」
「いやいやいやいや!あんた疲れてんだよ!流石に夢だろ!いや、でも夢にしては随分とリアリティ……があり……す……ぎ……?あれ?なぁ彩香。こいつって嘘つき?」

 彩香とリクは比較的冷静だったが、江ノ島だけは違った。
 あまりにも非現実的な話に、江ノ島ですら混乱するばかりなのだ。

「いや、兄さんはこんな嘘つけない。」
「ゑ?」
「倒れたって聞いて何事かと思ったら、幽々子に会ってきたんだ。月夜くん、あの子元気にしてた?」
「ああ、元気でしたよ紫さん。彼女からもよろしくと。」

 突如現れた八雲紫の言が、この非現実に強烈な現実味を帯びさせる。
 そして迎える沈黙と、驚愕。

「マジかよ?!じゃあつまりはその……何とかポカってやつと幽々子ってのに会ったのは事実で!!ってことは、その、つまりは……。」
「過労で臨死体験した、らしい。……あっ、ついでに庭師、妖夢っていうんだが。彼女の傷も手当てしてから帰ったよ。」
「いや、さっきはごめん。その、にわかには信じがたいな……。」
「いいんだ。正直俺も今以て信じ難い経験だ。我ながら、今も信じられないかと思っているよ。」

「あー、まぁ世の中UFOに連れ去られたって人もいるらしいしな!そういうのもアリか!!」



 おまけ その頃掃除の終わった白玉楼では

「ところで、あなた40発ぐらい撃って、3発しか当たらないって。ほんとに当てる気あったの?銃弾。」
「…………やめてくれ。その言葉はシンプルに来るものがある。」
(あったのね……。)

30人目

「Epilogue:復興と繁栄」

「どうする?」

人里では、ある問題が表面化していた。

「流石に作り過ぎたな…氷。」

今回人里の要塞化をするに際し、凍らせた土嚢を村の要所に張り巡らせた。
氷壁もある。
拠点とした寺子屋に至っては、氷のトーチカを増築してある。
結果、出来上がったのが氷の山だ。
詰まる所、氷の処理に困っていた。

「溶かしたら、水になるよな?」
「そりゃあな。」
「じゃあ、川に流して捨てるのが無難か。」
「いや、川は畑の水源だ。冷えた川の水で、作物がやられかねない。」
「む、そうか…」
「それに量が多すぎる。詰まったりすれば最悪洪水になる可能性もある。」

オセロットの指摘は的確だった。
川が融け水で増水してしまえば、畑へ多量の水が流れ込む事になる。
それだけでも作物にとっては酸欠状態に陥り、結果腐る等の被害が起こる。
その上冷水だ。人々の主食となる稲は温暖な気候を好む為、冷害に弱い。
そして洪水が起きれば作物が丸ごと流される可能性もある。
そうなれば、人里は前代未聞の飢饉になるだろう。

「じゃあ、このまま自然に溶けるまで放置するのは…」
「それもまた厳しいな、今度は人里に住む人間が冷気でやられかねない。」

またもオセロットの厳しい指摘が入る。
悪霊の浮遊する…即ち上空から攻め込めるという性質を考慮して、人里のあちこちに氷のトーチカを敷設していた。
これが猛烈な冷気を発している。
戦う最中は頼もしいが、日常生活に戻る上では非常に厄介になる。
今はまだ朝の日差しから来る熱で相殺されていなくも無いが、このまま放置して日が傾けば気温が下がり、そこで一気に冷気が人々を襲うだろう。

「外に持ち出すのも、難しそうか。」
「あぁ、量が余りにも多い、ウチの人員だけじゃ時間もコストが掛かり過ぎる。」

DDのワームホール転送も、万能ではない。
何十年先、下手すれば百年レベルで通用するオーパーツ故に、相応以上のコストが掛かる。
深手を負った今のDDが負担するには、とてもでは無いが厳しい物があった。

「壁になってる物は一度壊さないとそもそも転送が出来ない。」
「悪霊相手じゃ他に手が無かったとは言え、余りにやり過ぎたな…」
「戦いにおける一番の悩みの種は、いつだって戦後処理だ。」
「だな、せめてチルノが元気なら能力である程度溶かして貰う事も出来ただろうが…」

では作った本人に溶かして貰おうか、と思うも。

「ア"タ"イ"、げんかい~…」

当の本人に顔を向ければ、見えるのは疲れ果てた末の五体放棄の姿。
さながら数日もの徹夜の末に仕事を終え、糸の切れた社会人のよう。

「ありゃ、今日一杯は動けんな…」
「あぁ。戦いと工作とを、同時に行って貰ってた訳だからな。」

というのもチルノは先の悪霊戦にて、表向きは戦力の一端として大立ち回りし、その裏で縁の下の力持ちとしても働いていた。

「悪霊との戦闘、壊された氷の壁の補修、味方の撤退の援護…逐一出した指示を全部やったんだ、ああもなる。」

氷の妖精であるチルノにしか出来ず、かつこの戦いで欠かせない事。
故に彼女の消耗はすさまじく、この状態も納得がいく。
寧ろよく終戦まで持った方だと、本来は賞賛されて然るべきだろう。
実際、今は人里を救った英雄として崇められている。
しかし、だ。

「…このまま問題が解決しなければ、チルノと住民の関係は宜しくない事になる。」

既に冷気による問題が出始めてる以上、問題が解決しなければ次第に忌み者扱いになっていくだろう。
もし何かしらの大きな被害が起きれば、それを皮切りに…

「戦後に英雄の居場所は無い、か。」
「チルノにそうなって欲しくないな。」

オセロットがそう呟き、スネークが返す。
単なる同情心というだけでは無い。
自分達戦争屋の日常を重ねたが故の言葉だった。

「今の人里で誰よりも活躍したんだ、そんな目に合わせられん。」

彼女を巻き込んだ末に主力を担わせたその責任は、DDが取って然るべきだと。
少なくとも、スネーク達はそう考えていた。

「だが実際、ろくな解決手段が無いのも事実だ。あちこちに作った関係で、囲いを作る人手も足りない。」
「あぁ、せめて人里の手を借りれればな…」

周りにいる人里の人間も、自分達の事で一杯だ。
先にも述べた様に衣食住を失っている、故にそれを第一に動く。
そうなると氷は置き去り、後に来る冷害でチルノへの顰蹙は免れられない。
どうするか?
そんな時だった。

「_こんままじゃ、食いもんが…」

断続的なざわつきの中で、ふと聞こえた言葉。
何故か耳に付いたその声の方向に目を向ければ、崩れた建物の前で膝を付く者が一人。
何事かと近づいて、スネーク達は事情を聞いてみる事にした。

「おいお前さん、どうした?」
「あぁ、あんたは…あいや、それより大変なんだ!」

男はそう言って、廃屋の隙間から見え隠れする肉や野菜類を指差す。

「里に回す食糧を保管してた冷暗所が壊れちまって、このままじゃ飢饉になっちまう!」
「そいつは不味いな…!」
「見た所、生の食材が多い。仮に直ぐに建て直してもその間に痛んで、持って数時間…」
「あぁ、新鮮なのを数日掛けて市場に回して、後は干物で繋ぐつもりだったんだが…」
「その貴重な数日が腐敗で稼げない上に、上の方にあった干物の大半は倒壊でやられてる、か。」

オセロットの賢眼は正しい。
干物に出来ない類の食材は、低温の保管庫という環境で漸く数日ほど持つようになる。
それが壊れた以上腐敗が進む為、せいぜい数刻しか食料として消費出来ない。
その上干物も大半が潰れたとなると、次の収穫まで人々が食い繋げない。
即ち飢饉だ。

「このままじゃ、餓死者が…!」
「_冷暗所…食料…氷!これだ!」

改めて鑑みたこの状況に頭を抱える男。
だが、スネークは逆にそこへ光明を見出した。

「これなら里の人間を氷の処理に動かせる口実になる!」
「ボス、一体何を…?」
「話してる時間が惜しい、まずは人を集めてくれ!」

興奮した様子のスネークに気圧され、二人は言われた通り人を集め始めた。



そこからは怒涛の展開だった。
村中の人々に食糧難の事を伝え、次にこれを乗り越える為と言って里中の氷を搔き集めるよう指示を出した。
自分達の衣食住に関わるならと、里の人々は一旦自分の事を置いてクワ等で氷を砕き、剥いでいく。
その間にDDの開発班が即席の建築物を旧冷暗所に建て始めた。
そこに砕いて集めた氷を無事だった食料と共に入れていく人々。
一連の流れを見て、オセロットは漸く理解した。

「成程、『氷室』か。」

氷室。
文字通り氷で覆われた部屋を指し、冷暗所よりも更に低温で食材を保管出来る。
人が活動できる環境が限られている関係で氷雪の大量保管が難しく、故に大半の人間は存在すら知らなかった。
しかしこの一件で、その有用性は知れ渡る事となる。

「健康を脅かしかねない氷が一転、村の生命線に早変わりか。」
「あぁ、これならアイツは除け者どころか、救世主だな。」

その要となる、氷の妖精チルノの名と共に。
人里は、争いと復興を超えて更なる繁栄の道を進む_